日本沖縄から米軍基地をなくす草の根運動機関紙「草の根ニュース」編集部から、岡山博医師に、原稿を依頼し執筆していただきましたので、掲載いたします。

岡山 博(医師)

【沖縄では、新型コロナ蔓延が突出している】
沖縄では5月11日以降、新型コロナ新規感染者数が1日当たり平均100名を超え、10万人当たり新規感染者数は大阪や東京を始め、どの府県よりもはるかに高い値が続いています。
沖縄は海で他県から隔てられて、経済は主に他県からの観光客に依存し、日常生活における隣県との往来は少なく、コロナウイルスも多くは県外からの観光客によってもたらされたと考えられています。県の財政が豊かでないことや、島しょが多いことなどによって医療体制も十分でなく、県民の収入も沖縄県の財政も豊かではないという状況の下で、新規感染者と重症感染者の高値が続いています。

【沖縄の コロナ感染解決のためには、国が緊急重要課題として取り組むことが必要だ。】
このような中でコロナ蔓延が持続しており、沖縄県の努力だけで、コロナ感染を解決することは困難です。
沖縄の新型コロナ対策は、全国と同等の対策ではなく、国の重点政策として必要な資材と人員と十分な資金を提供して沖縄県を援助してコロナ対策にあたるという緊急対策が必要です。

【新規感染者数を減らすために必要なこと。殊にワクチン接種】
新規感染を減らすために必要なことは、迅速にワクチン接種を進め完了することと、感染機会を減らす(行動制限)こと、早期発見と他者への感染予防です。
イギリスやイスラエルは、厳重な社会活動制限と、急速なワクチン接種によって、コロナ蔓延を劇的に鎮静化させることに成功し、感染防止とワクチン接種が極めて有効であることを証明しています。
沖縄県の主要産業は観光業であり、コロナ蔓延による県外からの観光客激減による収入減は、県民全体の経済を悪化させており、沖縄の経済困窮に対し、限られた範囲の個別休業補償では解決困難です。
県外からの収入が断たれて生じている深刻な状況を保障して初めて、コロナ蔓延解決と沖縄県民の生活を含めた解決が可能です。

医療現場のひっ迫の原因は、患者数と重傷者数増加です。
医療現場のひっ迫を改善する最大の方針は患者数を減らすことです。
全国的にも、患者数が増加して、医療現場が対応しきれていません。
現在、日本社会の一部は「感染して病態が悪化した場合に、酸素吸入という初歩的医療さえ受けられない状態で重症化したり死亡する」という異常な社会になってしまっています。

コロナワクチンは(インフルエンザワクチンと違って)感染予防効果が強く、感染した場合でも、重症化抑制作用も強く、接種することによって新規感染と、重症化の両方を強力に改善します。

ワクチン接種によって、非常に感染しにくくなるので、接種された個人にとって大変な利益がありますが同時に、感染者が減ることは感染させる原因が減ることになり、たくさんの人がワクチン接種を受けることは、コロナ感染克服のために最も有効で重要な対策です。

新型コロナワクチンは接種された個人にとっても、社会全体の集団免疫にとっても非常に有益であり、新型コロナ問題克服するために最も重要です。
日本は、世界の中で新型コロナワクチン接種実施が著しく遅れていましたが、ワクチンが確保されて、積極的なワクチン接種活動が始まりました。
ワクチン接種の取り組みは、人的にも経済的にも能力が高い自治体や、ワクチン接種に参加する能力がある大企業が沢山ある地方でワクチン接種が加速されています。
沖縄県は医療で対応しきれないほど、人口当たりの感染者数がとびぬけて多く、他の地方以上にワクチン接種を進めることが重要ですが、県民と自治体の経済的体質が弱く、医療体制も弱い沖縄では、ワクチン接種が遅れています。
新規感染者が多く医療が切迫している沖縄でこそ、他県よりも早く、特別に強力・迅速に実施しなければいけません。
全国的には経済力がある地方自治体や、集団接種に参加できる大企業が多い地方でワクチン接種が進み始めましたが、これらの条件がない沖縄では、自治体の経済力や接種活動ができる大企業に依拠した ワクチン実施の劇的拡大は不可能です。
 
【沖縄でこそ、迅速なワクチン接種を】
一日当たりの感染者が極めて多く、医療切迫も著しい沖縄では、他県と同様にワクチン接種の取り組みをするのではなく、洪水などの自然災害と同様に、国の緊急の重点施策として実施することが必要です。
イギリスをはじめ、急速にワクチン接種に成功した国は、接種を受ける際の手続きを簡素化したり、職場や学校、地域やスーパーマーケットなど希望者が簡単に接種できる場を作るなどの取り組みをすることで急速なワクチン実施を実現しています。
沖縄でそれを行うために必要なことは、法令や規則を弾力的に運用して実務的作業を簡素化する事、ワクチン接種の場を設定することができる人材と組織を集中させてワクチン接種の場を増やすこと、十分な日当を出して看護師や医師の協力を得ることです。
世界の多くの国が実現していることですから日本でもできるはずです。

県民4割のワクチン接種完了を早急に実現すべきです。40万人(40万件)接種するには、1日1万人接種を40日続けて初めて40万件接種が可能となります。
法令や経済、様々な要因をほとんど無視して、文字通り戦争に突入するくらいの「緊急事態」の決意と体制で取り組まないと、1日1万件接種はほぼ不可能です。
それができないのであれば、1日4000件接種を行い、50日で2割接種を実現し、その後さらに50 日かけて40万人実施を達成すべきです。その後もさらに多くの県民のワクチン接種を進めることです。
1日4000人ワクチン実施を行うためには、決意と体制準備が必要ですが、困難を乗り越えて実施すべきです。

【医療ひっ迫を緊急に改善すること】
   (これは沖縄だけでなく、全国共通の課題です)
既に感染し重症化した感染者に対する医療を提供することも緊急の課題です。
「医師の診察も受けずに観察中の感染者」が、酸素吸入さえされないで死亡することが全国的に繰り返されていますが、簡単な酸素吸入も受けられずに死亡することがあってはいけません。
非入院の感染者の死亡を防ぐためには、
・呼吸状態が悪化した場合、直ちに酸素吸入をする体制をつくることと、
・酸素吸入しても悪化傾向続く場合はただちに入院の体制を作ること、が緊要です。

【感染者が呼吸状態悪化/低酸素血症を生じた際になすべきこと】
全国共通です。具体的には、
・感染者全員に、パルスオキシメーターを全員に貸与して、毎日数回酸素分圧を測定する。
・非入院の施設には酸素濃縮器を設置し、
・酸素飽和度が92~93%に軽度低下した場合は、酸素吸入を準備あるいは開始する。
・酸素吸入して酸素飽和度が改善してもそれを維持できずに、その後さらに酸素分圧低下傾向が続く場合はただちに入院。
(在宅酸素療法で使っている酸素濃縮器を、医療機関以外の非入院施設に配置する。在宅の場合は、酸素分圧が軽度低下したら施設に移動して酸素吸入体制に移行する。酸素濃縮器使用はさほど高額ではなく、COPD等慢性呼吸不全の患者は在宅で日常的に使われている)

国は、沖縄の新型コロナ感染に対し、大洪水などの甚大な自然災害と同様に、国の重点施策として、緊急に沖縄のコロナ対策をすべきです。
具体的には、全国一律の対策の一つとしてではなく、沖縄県が主体になって対策を行い、国が国策として、自然災害に準じて、必要な資材と人員派遣し沖縄県を援助し財政的に保障することが必要です。

【まとめ】
・沖縄の新型コロナ感染を克服するためには、国の緊急課題として 沖縄のコロナ問題に取り組むことが必要です。
・緊急時にふさわしい取り組みをして、ワクチン接種を迅速に進める。
・酸素吸入がされないまま死亡することをさせない取り組みが必要だ(パルスオキシメーターと酸素濃縮器の設置。増悪時ただちに入院)。
・3密など、他人との接触機会を強力に減らす。そのために県民と関係業者に補償を充分に行う。