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基地負担今もなお、きょう復帰36年 「5・15平和行進」、1日め1200人余、2日め2000人参加 暴行米兵に懲役4年など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月15日から17日)

2008年5月15日(木) 朝刊 1・27面

基地負担今もなお/きょう復帰36年

 沖縄県は十五日、本土に復帰して三十六年を迎える。国からの九兆円を超える振興開発事業費による振興策が図られる一方、米軍専用施設の約75%が集中する基地負担や米軍による事件・事故が多発する構図は変わらないままだ。県民所得は全国最下位、失業率は全国の約二倍で推移しており、県が目指す「経済の自立」への模索が続く。

 普天間飛行場の移設をめぐっては、移設先での環境影響評価(アセスメント)が進む一方、滑走路位置の沖合移動を求める県、名護市と政府との溝は埋まっていない。

 今年も米軍による事件・事故が相次いだ。女性暴行やタクシー強盗などの事件のほか、嘉手納基地での未明離陸など県民生活を無視するかのような被害は後を絶たない。仲井真弘多知事をはじめ、県内の各政党や関係団体などが強く求めている日米地位協定改定の実現に向けた取り組みが求められる。


     ◇     ◇     ◇     

「本土並み」遠く/きょう復帰36年


 「基地も所得も本土並みになっていない」。本土復帰して十五日で三十六年目を迎える沖縄。基地も、雇用も、所得水準も本土との格差が埋まらない現状に、復帰前を知る人々から不満の声が聞かれた。一方、「五月十五日」そのものを知らない若者も。県内各地で復帰への思いを拾った。

 今年の「5・15平和行進」は十六日から始まる。同実行委は「議論はいろいろあったが、多くの人が参加しやすい日程を優先した」と説明する。

 沖縄県祖国復帰協議会に長くかかわった石川元平さん(70)は、現在の運動を一定評価しながらも「五月十五日の本質、根本的意味を考えてほしい」と話す。復帰は「勝ち取った」ものである一方、基地の存続を許したことで「欺瞞に満ちたもの」とみる。

 県民が求めた「核も基地もない平和な沖縄」でなく、政府が約束した「核抜き本土並み」すら現在まで果たされていない、と語る。「沖縄が二度と捨て石にならないこと、被害者にも加害者にもならないことを誓う」と五月十五日を位置付けている。

 前県婦人連合会会長で顧問の小渡ハル子さん(79)は「やっと復帰した、暮らしはよくなると思った」と振り返る。基地も所得も本土並みになっていない、と憤る。

 小渡さんは婦連会長として、昨年から今年にかけ教科書検定問題や米兵による暴行事件に抗議する県民大会の実行委員として、奔走。教科書検定問題も地位協定改正も、何度要請しても国は動かない。「裏切られた。期待が大きかっただけに残念」と悔しさを語る。

 北谷町の松田正二砂辺区長(62)は、復帰時「日本人並みの権利が与えられ、やっと人間になれる」と涙を流したというが、米軍嘉手納基地から離着陸する戦闘機の騒音に悩まされる日が続いている。「尊厳は回復されず、むしろ逆行している」と語気を強めた。

 一方、那覇市の医療技術職員、牧泉さん(23)は「復帰の日だとは知らなかった」。旅行が好きといい、「『内地』に行くという感じはしない。県外との差はそんなに感じない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151300_02.html

 

2008年5月15日(木) 朝刊 27面

平和願い 体験絵本に/南風原さんら元教諭3人

 県退職教職員会女性部(大嶺初子部長)と県教職員組合(沖教組)教育研究所は十五日、沖縄戦の体験や平和の尊さを訴える平和絵本三冊を発刊する。「火種を消すな」「サトウキビがたべたい」「古鉄ひろい」の三冊で、復帰三十六年に合わせた。自身や恩師などの体験を基に作製した三人の元中学教諭らは「子どもに戦争の悲惨さを伝えていきたい」と話し、平和学習での積極的な活用も呼び掛けている。

 三人は二年前に始まった沖教組教育研究所が主催する「平和絵本作り講座」を受講し、昨年十二月から本格的に制作を始めた。

 南風原春子さん(71)=糸満市=は、糸満市摩文仁で日本兵から壕を追い出された自らの体験を「火種―」につづった。

 「サトウキビ―」を執筆した松原慶子さん(68)=糸満市。小学校時代の恩師で、元ひめゆり学徒の上原当美子さん(80)の体験を何度も聞き取り、完成させた。「戦争体験を伝えるのは私たちの務めだと思った」と力を込めた。

 「古鉄―」の作者のたかはしのぶこさん(65)=豊見城市=は戦後、不発弾や砲弾の破片を拾い集めた、いとこの体験をまとめた。

 一冊千円(セットで二千四百円)。問い合わせは学校用品、電話098(867)3683。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151300_03.html

 

2008年5月15日(木) 朝刊 2面

再編交付 13億円内示/5市町村に1次分

 【東京】政府は十四日までに、在日米軍再編への協力に応じて関係自治体に支払う二〇〇八年度再編交付金の一次内定額を固め、関係自治体に通知することを決めた。全国三十八市町村に六十一億六千八百万円を内定。県内分は米軍普天間飛行場の移設や陸上自衛隊の米軍キャンプ・ハンセン共同使用、那覇港湾施設の移設で、五市町村に計十二億九千五百万円を配分する。

 このうち、普天間飛行場移設先の名護市に九億七千万円、宜野座村に一億六千百万円をそれぞれ内定。環境影響評価(アセスメント)調査の開始に伴い、移設完了時に支払われる上限額の25%分を支給し、二次内定分で追加される見込み。

 名護、宜野座への再編交付金をめぐっては、政府が三月に「理解と協力が得られた」として凍結を解除。まだ執行していない〇七年度分約四億六千万円(名護市約三億九千七百万円、宜野座村約六千七百万円)も配分される予定。

 一方、陸自のキャンプ・ハンセン共同使用では、金武町に八千五百万円、恩納村に三千三百万円、宜野座村に二千万円をそれぞれ内定。三月に共同使用訓練が始まったことで「再編の完了」と見なされ、上限額が支給される予定。本年度分は最終的に三町村で二億円となる見通し。

 そのほか、那覇港湾施設(那覇軍港)の移設受け入れを表明している浦添市に二千六百万円を内定。最終的には前年度と同額の三千七百万円となる見込みだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151300_06.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 1面

グアム移転 5000人増検討/米軍再編

 在日米軍再編に伴いグアムに移転する在沖米海兵隊の規模について、二〇〇六年に日米両政府が合意した八千人から一万二千八百四十九人への増加が検討されていることが十五日、分かった。北マリアナ諸島のサイパンで発行するマリアナ・バラエティーが同日、「〇八年四月グアム・北マリアナ諸島軍移転に関する環境影響評価(アセスメント)準備書」を引用して報じた。

 移転する軍人の家族も、当初予定の九千人から一万三百五十人に増加するとしている。同計画は一〇年QDR(四年ごとの国防計画の見直し)に提案される予定。防衛省は「まったく聞いていない」としている。

 同紙によると、北マリアナ諸島地方議会に提出された報告書では、民間人五千人のグアム移転も盛り込まれているという。アセスは一〇年に完了する見通し。

 同準備書では「軍事施設や隊員の移転、最大限の運用や効率的な土地利用など、複数の配置計画が検討されている」と報告。沖縄の第三海兵遠征軍(MEF)の隊員一万二千八百四十九人と家族一万三百五十人の移転を一四年までに完了するため、グアムで施設の建設や改築も検討している―と記述されているという。

 日米両政府は〇六年五月一日、外務・防衛両閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で在日米軍再編の最終報告に合意。グアム移転の海兵隊は八千人と決めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151700_01.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 1面

ガマに誓う平和の歩み/復帰36年 行進参加者

 5・15平和行進(主催・同実行委員会、沖縄平和運動センター)に参加するために沖縄に来た大阪市職労ユース部の組合員約六十人が十五日、南城市玉城の糸数壕(アブチラガマ)を見学した。沖縄県が本土復帰して、この日で満三十六年。参加者は四日間にわたり、戦争の記憶と米軍基地の存在に苦悩する沖縄の現状を学ぶ。

 参加者らは、狭い入り口につまずきながら洞穴に入ると、足元を懐中電灯で照らし、ガイドの説明に聞き入った。米軍の攻撃で焼け焦げた天井や壁について説明を受けると「うわあ」と驚きの声を上げ、全員が電灯を消して暗闇に沈むと、水の滴る音が響く中で一行はしんと静まり返った。

 初めて沖縄を訪れた小河原あずささん(22)は、祖母の兄が沖縄戦で亡くなった。大阪を出発する前、長崎県・五島列島に住む祖母に「沖縄を見てくるね」と電話で伝えると、祖母は、兄が母親とほおずりをして故郷を出発した当時の様子を語った。祖母は「よろしく頼む」と涙声で話したという。

 小河原さんは十四日に訪れた「平和の礎」に名前を見つけ、「戦争が過去のものでないと実感した」という。一方で、糸数壕では軍人が洞穴の奥に居座り、住民は危険な入り口付近に追いやられていたことも知った。

 小河原さんは「恐怖で鳥肌が立った。平和と簡単に言うが、平和の本当の重みは今まで分かっていなかったのかもしれない。平和行進で基地を見る前に、沖縄の過去を学べてよかった」と話した。


5・15平和行進 今夕結団式


 5・15平和行進は、十五日午後六時から、名護市役所前広場で結団式を行い、十六日午前九時、三コースに分かれて出発する。十八日午後三時、三コースが宜野湾海浜公園で合流し「復帰三十六年 平和とくらしを守る県民大会」を開く。

 東コースは、名護市辺野古から宜野座村、金武町、沖縄市、北中城を通る。西コースは名護市役所前を出発し恩納村、読谷村、嘉手納町の沖縄防衛局、北谷町などを回る。両コースは十七日午後、北谷町で合流し「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開く。南コースは、那覇市役所前をスタート、糸満市、南城市、南風原町、浦添市などを行進する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151700_02.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 5面

復帰36年 沖縄駆ける/写真家 名護から発信

 【名護】「沖縄の犠牲で成り立つ不条理が解決されていない」―。一九六○年代から沖縄の米軍基地などを撮影してきた写真家の栗原達男さん。世界各国を駆け回ってきたが、七十歳を迎え、米軍普天間飛行場の移設問題で揺れる名護に先月移り住んだ。復帰後三十六年を経ても依然、基地が集中する沖縄。「生活者として沖縄を撮りたい」と決意を新たにしている。

 栗原さんは大学時代の六一年、八重山の島々を訪ねたのが沖縄との出会い。朝日新聞を経てフリーとなり、七○年に「写真報告オキナワ1961―1970」を出版した。

 ベトナム戦争が激しさを増していたころ、キャンプ・シュワブなど北部の米軍演習場では“ベトコン”の標的を撮影。嘉手納では、B52爆撃機のごう音に耳をふさぐ母子の姿―。

 県民が基地撤去や大幅な整理・縮小を願った復帰を経ても基地被害は変わっていない。

 普天間飛行場の辺野古移設には「結果的に米軍の思い通りになってしまう。基地集中が既成事実のようになっている」と指摘。

 世界百カ国で撮影してきたが「常に沖縄の事が頭にあった。基地問題を避けることはできない」と四年ぶりに住む名護を拠点に取材を続けたい、と誓っている。(知念清張)

 

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韓国バンド 行進参加/社会派のコッタジ「平和を守る」


 韓国の民主化運動で活躍し、現在も市民運動を歌で支える人気バンド「希望の歌コッタジ」と、伝統芸能集団「トヌム」のメンバー十一人が、5・15平和行進に参加するため十五日午後、来沖する。五―六日間滞在し、各コースを歩くほか、県内の市民団体と交流する予定。メンバーらは「米軍基地を抱える韓国と沖縄が連携し、共に平和のメッセージを発信したい」と意気込んでいる。

 「コッタジ」(平和コンサート実行委提供)は一九九二年結成。社会派バンドの中では韓国一の人気という。今回は平和フォーラム(本部・東京)が呼び掛け、来沖が実現した。

 バンド元代表で文化活動家のイ・ウンジンさんは、「世界全域で平和と環境を守る闘いは続いている。沖縄に集まり平和行進する多くの人々を見ると、小さな流れが川となり大きな海になるのだと確信する」と話した。

 十九日には桜坂劇場で県内ミュージシャンと共演するコンサートも開かれる。


  

本土復帰前に撮影した米軍基地や開発現場の写真を前に新たな取材活動に意欲を見せる栗原達男さん=14日、沖縄タイムス北部支社

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151700_03.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 5面

地デジ 米軍ヘリで障害/普天間飛行場周辺地域

 【宜野湾】宜野湾市の米軍普天間飛行場周辺でヘリや飛行機が飛行する際、地上デジタル放送のテレビ画面が乱れるなどの障害が発生していることが十四日、分かった。地デジ放送では、アンテナ近くで物体が動くと、映像が途切れる現象が起きることから、テレビ画面の乱れは米軍のヘリなどの訓練によるものとみられている。市はアナログから地デジに切り替わる二〇一一年以降、テレビ画像の障害が増えることを懸念、実態を調べる方針。(銘苅一哲)

 沖縄総合通信事務所によると、地デジ放送はアンテナ付近の空中で物体が動くと、信号がさえぎられる「フラッター現象」が発生。受信映像が途切れて画像が消えたり、止まるなどの障害を引き起こすことがあるという。

 同市基地政策課には〇七年末ごろから、市内の嘉数、野嵩、大山の住民から「ヘリが飛ぶときに地デジ放送が途切れる」などの苦情が寄せられている。普天間飛行場から離れた地域からの苦情はないという。

 飛行場の滑走路延長線上に位置する同市の野嵩地域。宮城恵子さん(40)は二年前に地デジ放送用のテレビに買い替えたが、ヘリや飛行機が家の上空を通過すると映像と音声がストップするという。

 「高い買い物だったけど、きれいな映像を見られると思い楽しみにしていた」と話す宮城さん。子どもたちの好きなバラエティー番組を見ながらの家族だんらんは、米軍機が通るたびに邪魔される。「騒音だけでも迷惑なのに、家族の楽しみまで奪ってほしくない」と憤った。

 沖縄総合通信事務所によると、県外の米軍三沢基地(青森県)、航空自衛隊千歳基地(北海道)周辺で、国の補助によって受信が良好な地域のアンテナから、障害の発生している地域へケーブルをつなぐ対策が取られているという。同事務所は県内で同飛行場や嘉手納基地周辺で障害が出る可能性はあるとしているが「実態把握や具体的対策のめどは立っていない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151700_04.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 5面

米兵、基地内に転居/砂辺の騒ぎ

 【北谷】北谷町砂辺の民間地域に住む米兵が未明まで騒いでいた問題で、住宅を管理する不動産会社は十四日、事態を知った男性米兵の上司の決定で今週中に米兵が基地内に引っ越すことを確認した。不動産会社の社員が同日、周辺住民に報告した。米軍人男性の上司は周辺住民に謝罪することを希望しているという。

 説明を受けた住民によると、家主から米兵の退去を求められた不動産会社は、米兵の上司に連絡し苦情内容と退去要望などを伝えた。状況を把握した上司は、住居からの退去と基地内への転居を決めたという。

 住民らは四月二十七日と五月十一日に沖縄署に通報し、米兵らに注意していた。同署は十三日に在沖海兵隊や空軍、陸軍へ地域住民に迷惑をかけないよう指導することを申し入れた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151700_05.html

 

2008年5月15日(木) 夕刊 5面

ドル偽造 米兵有罪/那覇地裁判決

 米二十ドル札を偽造・使用したとして、外国通貨偽造・同行使罪に問われた在沖米海兵隊キャンプ・キンザー所属の一等兵フィリップ・シー・スコット被告(20)に那覇地裁の〓井広幸裁判長は十五日、「判別のつきにくいタクシーで使うなど犯行は計画的で巧妙」とする一方で、「被害は全額弁済され、反省している」などとして、懲役三年執行猶予四年(求刑懲役三年)の判決を言い渡した。

 判決などによると、スコット被告は昨年十一月、基地内の自宅で、パソコンのプリンターを使って本物の二十ドル札を四十二枚複写。同月十日と十二日、浦添市内の飲食店やタクシー運賃の支払いに計四回、八枚使用し、それぞれ釣り銭を受け取った。

 動機について、スコット被告は四月の初公判で「米国にいる婚約者への生活費の送金や、パーティー用の礼服を買うため」と説明していた。

※(注=〓は「吉」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805151700_06.html

 

2008年5月16日(金) 朝刊 1面

平和実現訴え31回目の行進/きょう出発18日合流

 【名護】県内の米軍基地や沖縄戦の戦跡などを歩き、平和や基地問題について考える「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)結団式が十五日、名護市役所前広場で開かれた。県外からの約七百人を含む約八百人(主催者発表)が参加。十六日から始まる行進に向け気勢を上げた。行進は今回で三十一回目。

 実行委員長の崎山嗣幸沖縄平和運動センター議長は結団のあいさつで「米軍再編で軍事要塞化する北部の基地、基地の爆音被害に苦しむ住民、そして基地機能強化による米兵の事件・事故。これが本土復帰してから三十六年目の沖縄の現実だ。教科書検定問題など、沖縄戦の歴史を歪曲することも許してはならない。平和な島を取り戻すために全国の皆さんの力をお借りしたい」と話した。

 行進は三コースに分かれて名護市辺野古(東)、名護市役所(西)、那覇市役所(南)をそれぞれスタートする。最終日の十八日に宜野湾市海浜公園屋外劇場で合流し、午後三時から「復帰三十六年 平和とくらしを守る県民大会」を開く。

 十五日は八重山でも平和行進と地区集会が行われた。宮古は十八日に行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161300_02.html

 

2008年5月16日(金) 朝刊 2面

脱走米兵情報 政府にも提供/出国防止へ日米合意

 【東京】日米両政府は十五日の合同委員会で、米側から日本側への脱走米兵に関する通報体制について協議した。米政府が都道府県警に逮捕要請すると同時に、日米合同委員会を通して逮捕要請の写しを日本政府に提供し、脱走兵の無許可出国を防止する対策を取ることで合意した。

 米側は脱走兵を認定後、直ちに関係都道府県警に逮捕要請し、可能な限り脱走兵の氏名、生年月日、国籍、階級、写真などの関係情報を含めることでも合意した。

 脱走米兵をめぐっては、横須賀市のタクシー運転手強盗殺害事件で逮捕された脱走米兵について、事件前に日本側へ通知がなかったことから、日米が未然防止策を検討していた。

 両政府は、四月十一日、在日米軍に所属する米兵が「脱走兵」と米側に認定された場合、すべてのケースで日本側の関係都道府県警に通報・逮捕要請することで基本合意していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161300_04.html

 

2008年5月16日(金) 朝刊 2面

「先端医療施設」変更へ/金武・ギンバル訓練場跡地計画

町と国、地域型を検討

 【東京】金武町の米軍ギンバル訓練場の跡地に、米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)で整備が計画されていたがんの早期発見・治療が可能な「先端医療施設」が、病院経営の見通しが厳しいことから、地域を対象とした一般の医療施設へと機能を変更する方向で、町と内閣府などが検討していることが十五日までに分かった。

 同町の跡地利用計画は、がんの早期発見・治療が可能な先端医療施設の整備を琉球大学と連携して進め、PET―CT(陽電子放射断層撮影装置)や、県内で設置例がない外科手術を伴わないFUS(集束超音波装置)など先端医療機器を導入する構想。

 だが、先端医療機器が扱える専門性の高い医師にかかる人件費や、数年後、新たな医療機器が出た場合に再び導入する費用など、高額な維持管理費が必要になる。

 先端医療の利用者の推移など病院経営の見通しを懸念する見方もあり、機能変更の案が打ち出された。

 本年度から始まった「特定健康診査」制度を踏まえた一般的な検診センターやメタボリック対策機能を備え、気軽に住民が足を運べる「地域還元型」の病院への代替案が浮上している。

 内閣府は本年度予算で、「ふるさとづくり整備事業」の関連経費として十五億六千九百万円を計上。町はがんの先端医療施設を核とした跡地利用計画を進めていた。

 沖縄タイムス社の取材に対し、金武町は「医療施設の内容については、現在検討中である」とコメントした。

 内閣府は「町関係者が目指すべき将来像を議論する中で構想が変更することもあり得る。事業主体である町の判断であり、内閣府として支援する立場に変わりはない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161300_05.html

 

2008年5月16日(金) 夕刊 1・7面

内実問い平和行進 3コースに1200人余参加

 本土復帰三十六年を迎え、沖縄から平和を発信する「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)が十六日午前、スタートした。県内外から計千二百二十五人(主催者発表)が参加し、名護市辺野古、名護市役所、那覇市役所の三カ所を出発。本土復帰の内実を問い、米軍基地の県内移設や憲法改正への反対を訴える三日間の歩みを踏み出した。

 一九七八年に始まった平和行進は今年で三十一回目。参加者は三コースに分かれ、米軍基地や南部戦跡などを回る。最終日の十八日、宜野湾市海浜公園野外劇場で開かれる「5・15平和とくらしを守る県民大会」で合流する。東コースは、変わらぬ米軍基地の重圧に警鐘を鳴らしながら、名護市辺野古をスタート。上江洲由直団長は「三日間の行進で辺野古の海を守り、基地を撤去させる声を上げ続けよう」と決意を示した。

 名護市役所を起点にした西コースでは、沖縄平和運動センターの当山勝利副議長が「西コースでは美しい海が見られる。しかし基地のある東海岸も感じながら歩いてほしい」と呼び掛けた。沖縄戦の激戦地となった本島南部を巡る南コースは那覇市役所から歩きだした。國吉司団長は「南コースは歴史的教訓を学ぶ道。軍は住民を決して守らないということを再確認しよう」と訴えた。


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沖縄歩く 平和願い

韓国一行 連携訴え歌舞


 「新たな基地負担は許さない」。31回目の「5・15平和行進」が16日、3コースに分かれて始まった。国内だけでなく韓国からも集まった1200人余りの参加者は、新たな基地建設予定地や日々、基地被害を受けている土地、63年前の戦場を間近に見て、感じる。戦争や平和を考え訴えるための3日間にわたる歩みを踏み出した。


東コース

5・15行進スタート


 【名護】東コースは米軍普天間飛行場の代替施設建設予定地の名護市辺野古からスタートした。約四百四十人の参加者は、新たな基地の建設に反対し、「新たな基地負担は許さない」と、決意を込めて歩を進めた。東コースはこの日、金武町までの十八キロを歩く。

 午前八時すぎ、新基地建設が進む辺野古の海岸に、県内外の参加者が続々と集まりだした。今回は、沖縄と同じく米軍基地のある韓国からも約二十人が参加。出発式では、「トヌム」や「希望の歌コッタジ」のメンバーが民族舞踊や歌を披露し、国境を超えた平和を訴えた。

 トヌムのイ・チャニョンさんは「県民と一緒に真実の平和を築きたくて参加した。アジアに生きるすべての人たちが連携して、新基地建設に反対したい」と、意気込みを語った。


西コース

「憲法守る」気勢上げ


 【名護】名護市役所前広場には、西コースの参加者約三百七十人が集まり、出発式では「平和憲法を守ろう」などとシュプレヒコールで気勢を上げた。フォーラム平和の藤本泰成副事務局長は連帯あいさつで「軍隊の本質は暴力的なもの。基地撤去を求めて皆さんとともに戦いたい」と訴えた。

 兵庫から参加した井上奈美さん(26)は「日焼け、雨天対策はばっちり。平和活動に力を入れているので、行進で何かを感じたい」と話した。

 午前九時半ごろに出発した一行はこの日、恩納村の万座ビーチまで約二一・六キロを歩く。


南コース

「命どぅ宝」原点振り返り


 那覇市役所前で開かれた出発式には、南コースを歩く四百十五人が参加。鉢巻きを締め、「命どぅ宝」や「軍事基地撤去」などのゼッケンを着けて出発した。

 5・15平和行進実行委員長の崎山嗣幸・沖縄平和運動センター議長は「復帰前も後も、沖縄の現実は何ら変わらない。平和を取り戻すため運動を高めていこう」とあいさつ。

 参加者は「頑張るぞ」と気勢を上げ、糸満市のひめゆりの塔までの二〇・五キロの行進へ歩きだした。

 山梨県中央市の浅川幸一さん(45)は二十年ぶりに参加した。「若いころは燃えるものがあったが、年を取ると少しずつ保守的になってしまう。平和の原点をもう一度振り返りたかった」という。「街の風景は一変したが、沖縄の人々の平和を願う気持ちはまったく変わっていない。六十三年前に南部へ逃れていった住民を思いながら、気持ちを新たにしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161700_01.html

 

2008年5月16日(金) 夕刊 1面

暴行米兵に懲役4年/キャンプ瑞慶覧軍法会議

司法取引で3年に

 二月に本島中部で起きた米兵暴行事件をめぐり、県警に強姦容疑で逮捕された後、被害者の告訴取り下げで不起訴処分となった在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹(38)の高等軍法会議が十六日、キャンプ瑞慶覧で始まり、同軍曹は少女への暴力的性行為を認めた。八年の求刑に対し、判事は懲役四年を言い渡した。しかし、司法取引で一年猶予となり、三年の懲役が確定した。

 ハドナット二等軍曹は十六歳未満の少女への強姦や、誘拐、偽証など五つの統一軍法典違反に問われていた。このうち、十六歳未満への暴力的性行為を認めた。司法取引が成立し、残りの四つの罪については検察が取り下げた。

 検察側が八年の懲役を求めたのに対し、弁護側は九カ月以内を主張していた。

 法廷でハドナット二等軍曹は「被害者や家族、日本の人たちに申し訳ない。自殺も考えた」と謝罪した。

 軍法会議は「高等」「特別」「簡易」の三種類があり、高等軍法会議は最も重い罪に適用される。公判では、米軍の中佐が判事を務めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161700_02.html

 

2008年5月16日(金) 夕刊 7面

沖縄戦資料ネットで/19日から 内閣府が1480点全文

 【東京】内閣府の沖縄戦関係資料閲覧室は十九日から、利用者の利便性向上のため、各省庁が所管する公文書の全文をインターネットで公開する。公文書の約半分から始め、七月末をめどに約千四百八十点の全文閲覧化を進める。

 これまではネット検索で表紙しか閲覧できなかった。同室の場所も東京都港区から千代田区へ移転し、床面積も約一・五倍に広がる。内閣府は「東京に来られない人にも幅広く利用してほしい」と話した。

 同室は、沖縄守備部隊陣中日誌や戦闘詳報など国などが保有する沖縄戦関連の公文書や一般図書、映像資料などを収蔵している。

 移転先は東京都千代田区永田町一ノ一一ノ三九永田町合同庁舎二階。ネットのアドレスはhttp://www.okinawa-sen.go.jp/

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805161700_04.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 1・29面

暴行米兵に禁固4年/「瑞慶覧」軍法会議

 二月に本島中部で起きた米兵暴行事件をめぐり、強姦容疑で県警に逮捕された後、被害者の告訴取り下げで不起訴処分となった在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹(38)の高等軍法会議が十六日、キャンプ瑞慶覧であった。ハドナット二等軍曹は少女への暴力的性行為を認め、禁固四年と不名誉除隊などの処分が言い渡された。司法取引で刑期の最後の一年は保留され、実質的には実刑三年になる可能性がある。

 検察側が禁固八年を求め、弁護側は九カ月以内を主張していた。判事は米軍のデイビッド・オリバー中佐。

 法廷で同軍曹は「被害者や家族、日本の人たちに申し訳ない。許してもらえるなら、できることは何でもする。自殺も考えた」と謝罪した。

 同軍曹は十六歳未満の少女への強姦や、誘拐、偽証など五つの罪に問われていた。このうち、十六歳未満への暴力的性行為を認めたが、ほかの四つは否認。同軍曹が一つの罪を認めて有罪を確定させる代わりに、検察側が残りの罪の訴追を取り下げる司法取引がなされた。同軍曹は軍法会議に先立ち、予備審問を開いて証拠などを開示する権利を放棄。陪審員制ではなく、判事一人による審理を選択した。


一層の粛正必要


 高等軍法会議の結論を受け、仲井真弘多知事は同日午後、「どんな判決が下されたにせよ、このような事件は決して許されることでなく、二度と起きないよう一層の綱紀粛正が必要である」とのコメントを発表した。


     ◇     ◇     ◇     

割り切れぬ 憤りと不信


 「米兵が罰せられるのは当然」。今年二月に本島中部で起きた暴行事件で米軍法会議は十六日、米海兵隊二等軍曹に禁固四年などの判決を言い渡した。本島中部の首長らは冷静に受け止めたが、その後も相次ぐ米軍事件に憤りと不信感は高まるばかり。複雑な経緯をたどった末の「決着」に割り切れない思いが色濃く残った。

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」の実行委員長を務めた玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会会長は「被害者の心に大きな傷を負わせた兵士が罰せられ、軍法会議の公開も当然だ。かつての米軍ならこっそり開いていただろう。三月の県民大会に集まった六千人の声が、影響したと思う」と話した。

 その上で「日米地位協定が不平等なままなら米兵の特権意識は改められず、同じような事件はまた起こり得る。基地の外では日本の法律が適用されるとはっきりさせるよう、日米両政府に協定改正を求めていく」と語った。

 日米地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「軍法会議の公開はそれなりに評価できるが、公開するかどうかは米軍の裁量次第。日本人が被害者となった事件の軍法会議は、すべて公開されるように規定すべきだ」と指摘。

 二等軍曹が住んでいた北中城村の新垣邦男村長は判決について「身勝手な事件で、当然」と言い切った。「これまでも再発防止策が行われてきた。米兵の中に、沖縄は治外法権との意識はないか」と効果を疑問視した。北谷町の野国昌春町長は「事件後も米兵による事件・事故が多発している。県民が再発防止策に納得できるよう、実行していくべきだ」とした。

 東門美津子沖縄市長は「軍法会議を開いたから、良いということにはならない。事件以降も(米兵による事件・事故が起こる)状況は変わっておらず、再発防止を訴え続ける」と強調。知念恒男うるま市長は「刑の軽重は判断できないが、人権が踏みにじられた事件だけに割り切れない思いだ。有罪という結果が、再発防止につながれば」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_01.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 1面

海兵隊全階級の夜間外出制限へ/在日米軍が再発防止策

 【東京】在日米軍トップのライス司令官は十六日午後、都内で沖縄タイムス社などと会見し、米兵暴行事件を受けた教育プログラムなど、米兵犯罪再発防止策の見直し作業が終了したことを明らかにした。在日米海兵隊の生活安全指導を見直し、夜間の外出を制限するリバティーカード制度を全階級に適用する方針を示した。実施時期は明言しなかった。

 一方、在日米陸軍は新兵のオリエンテーションを一週間延長。指揮官による定期的な指導、検査などを強化すると説明した。そのほか、在日米海軍は暴力防止・危機対応チームを設置。新たに所属する米兵の身辺調査を徹底するという。

 在日米軍の再発防止策に関しては「国防総省の定める性犯罪防止策などの規定を完全に満たしていた」と指摘した。

 ライス氏は、米高等軍法会議が暴行事件を起こした海兵隊員に有罪判決を言い渡したことについて「米軍が罪を犯した米兵にきちんと責任を負わせる見本だ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_02.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 1面

戦没画学生の生きた証し/きょうから「無言館」展

 戦没画学生の作品や、沖縄戦で生き抜いた画家たちの作品を紹介する「情熱と戦争の狭間で―無言館・沖縄・画家たちの表現―」(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館)が十七日、同館で始まる。一般参観は午前十時三十分から。六月二十九日まで。開幕に先立ち、十六日に関係者らに向けて内覧会が開かれた。

 同展は戦没画学生の作品を収集する長野県の「無言館」の協力で実現、約百二十点が出品された。過去最多となる五十五人の画学生の作品を展示。会場には画学生らの写真やスケッチブック、絵の具箱なども展示、「描くこと」へのひたむきな姿が紹介されている。また、激しい地上戦となった沖縄戦への思いを表現した画家たちの作品約四十点も並ぶ。

 十七日午後一時からは、「無言館」館主の窪島誠一郎氏の講演が開かれる。問い合わせは県立博物館・美術館、電話098(941)8200。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_03.html

 

2008年5月17日(土) 朝刊 28面

激戦地反戦誓う/平和行進

 「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)の第一日は十六日、県内外から約千二百人が参加し、三コースで行われた。名護市辺野古から金武町までの東コース、名護市役所前から恩納村万座ビーチまでの西コース、那覇市役所から糸満市ひめゆりの塔までの南コースで、平和や基地撤去を訴えた。行進は十七日も続き、午後三時から北谷町砂辺馬場公園で東コースと西コースが合流し「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開く。

 沖縄戦の激戦地となった南部路を歩く南コースには、県外からの三百人を含む約五百人が参加した。那覇市役所を出発、糸満市の白梅之塔を経てひめゆりの塔までの二〇・七キロを七時間かけて歩いた。

 コース途中の小中学校の壁面には、子どもたちの寄せ書きが掲げられ、参加者を激励した。

 國吉司団長(47)は「戦跡の多い本島南部を歩くことで、悲惨な沖縄戦の実相を学んでほしい」と強調。鈴木勝幸さん(29)=東京=は「子どもの未来のためにも大人が頑張らなきゃと思った」と汗をぬぐった。

 ひめゆりの塔で一行を出迎えた元ひめゆり学徒隊の島袋淑子さんは「戦争を知らない若い方々が旗やプラカードを掲げながら平和を訴える姿に、私たちも励まされた」とあいさつ。

 県外からの参加者は資料館を見学したり慰霊塔に手を合わせて反戦平和を誓った。


     ◇     ◇     ◇     

真剣な思い

平和に向き合う意味問う


 午前十一時ごろまでは曇り。このままの天気を願いつつも、その後は太陽が照りつける真夏日。直射日光が肌を刺し、ヒリヒリした。見渡すと真っ赤に日焼けしたたくさんの顔。名護市辺野古から金武町営グラウンドまでの十八キロを歩き、平和を真剣に考えている人々がいることを実感した。(西里大輝)

 横浜市に住む大橋紀子さん(68)。「五歳の時に終戦を迎え、道路に焼け焦げた人の死体が並ぶ光景を見た。厚木基地から飛んでくるヘリコプターの音に戦争を思い出す。静かで平和な日本にしたい」と願った。

 初めて来県し、交通整理に飛び回った木崎宏哉さん(25)は「沿道の人が手を振ったり声援を送ったりしている。この行進が支持されていると感じた」。北海道から参加、地元の思いに触れたという。

 辺野古で座り込みを続けている嘉陽宗義さん(86)は「毎年ありがとう。涙が出る思い」と早くから出発地を訪れ、思いを託すように参加者を見送った。

 行進初日、県民の姿は少なかった。平日で仕事がある、仕方がないのか。関心が薄れているのか。歴史を知らない結果なのか。

 深く考えず参加したが、多くの人と話し、沿道の人々を見ながら、平和に向き合う意味を突きつけられた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月17日朝刊)

[暴行米兵に判決]

取引には納得いかない


 米軍は、罪を許さぬ姿勢を演出したかったに違いない。軍法会議を異例の公開とし、裁判の公正さや綱紀粛正に向けた取り組みをアピールしたかったはずだ。

 沖縄本島中部で今年二月に起きた米兵暴行事件をめぐり、キャンプ瑞慶覧で開かれた高等軍法会議は在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属のタイロン・ハドナット二等軍曹に禁固四年(求刑同八年)の判決を言い渡した。

 二等軍曹は十六歳未満への暴力的性行為を認めた。判決は禁固四年だが、司法取引が成立し一年猶予され実質は禁固三年になるという。判決は確定し不名誉除隊も盛り込まれた。

 とはいえ、判決は釈然とせず、とても納得できるものでない。軍法会議は判事、検察官が軍人であり、いわば身内による裁判だ。日本にはない司法取引もまた事件を化することにつながるので矮小

はないか。

 二等軍曹は強姦、暴力的性行為、偽証、姦通、巧妙な手口による誘拐の五つの罪に問われていた。

 だが、暴力的性行為の罪を認めたため、検察側が残り四つの罪を取り下げたという。

 県警に強姦容疑で逮捕された二等軍曹は、被害者が告訴を取り下げたことで不起訴処分となり、釈放された。強姦罪が親告罪であるためだ。その後、米軍が身柄を拘束していたのである。

 事件を受け、米軍が出した夜間外出禁止などの綱紀粛正策が実効性が伴わないことは、その後も事件・事故が一向に後を絶たないことからも分かる。

 嘉手納基地からF15戦闘機が未明離陸し、北谷町砂辺の民家では深夜・未明にかまわず大騒ぎするなど組織としても個人としても効果がないことを証明している。

 広島市で日本人女性を集団暴行したとして四人が訴追された事件でも、米軍岩国基地の軍法会議は米海兵隊兵長の裁判を公開した。

 ここでも兵長は有罪を部分的に認めるなどの司法取引に応じ、判決は、禁固二年(求刑十年)と不名誉除隊を言い渡している。

 沖縄も岩国市も米軍基地再編問題を抱えている。事件・事故の取り扱いを誤ると、再編作業に影響が出かねない。米軍はそう考えて軍法会議を公開したのだろう。

 沖縄は本土復帰三十六年を迎え、「5・15平和行進」が県内三カ所からスタートしたが、当時と何が変わったのだろうか。基地負担は軽減されず、事件・事件は多発している。

 沖縄に基地が集中し、日本政府がその構図をあらためるつもりがないからだろう。

 沖縄の米兵はアフガニスタン、イラクに派遣されている。

 元米陸軍大佐で元外交官のアン・ライトさんは「帰還米兵の80%が精神的ダメージを受け、正常に判断できる状態ではない」と統計データなどを基にショッキングな報告をしている。

 米軍がどんなに綱紀粛正を叫んでも、基地がある限り、事件・事故はなくならないというわけだ。

 私たちは基地と決別するため、覚悟を決めてかかる時期に来ているのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080517.html#no_1

 

2008年5月17日(土) 夕刊 5面

「基地いらぬ」2000人訴え/5・15平和行進2日目

 本土復帰三十六年「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)二日目の十七日午前、県内外から参加している千九百十五人が、糸満市の摩文仁平和祈念公園平和の火前など三地点から出発した。戦跡を巡り、米軍基地の周辺を歩いて、沖縄戦の実相や基地被害の現状を考え、沖縄と全国との連携強化を目指す。

南コース


 糸満市摩文仁の平和祈念公園を起点とする南コースには約八百人が参加。「平和憲法を守れ」「新たな基地建設を許すな」などと繰り返しながら、同公園の「平和の火」を出発した。

 南城市のアブチラガマ(糸数壕)や南風原町の沖縄陸軍病院南風原壕群などの戦跡を訪ね、十六・六キロを歩く。

 出発式で沖縄平和運動センターの大浜敏夫副議長は「復帰三十六年がたっても基地の重圧は変わらず、米軍の事件事故は絶えない」と強調。「今の沖縄を歩くことで、将来の日本の在り方を考えてほしい」と述べた。


東コース


 米軍嘉手納基地を目指す東コース二日目は、沖縄市役所前で出発式。初日を上回る六百六十五人(主催者発表)が「静かな沖縄を返せ」などと訴えながら、同基地を臨む通称「安保の見える丘」に向かった。

 出発式では、沖縄市の東門美津子市長、同市職労の宮島岩寿執行委員長らがあいさつ。「基地から派生する被害は減らない。市民の安心・安全を確保するため、共に声を上げていこう」と呼び掛けた。

 妻と、五歳と七歳の息子と参加した小学校教員の照屋耕さん(38)=沖縄市=は「今年は特に米軍の事件・事故や未明離陸など、やりたい放題に憤りを感じる。基地はいらないと訴えたい」。初めて来県した札幌市の公務員、上月閑加さん(38)は「戦争体験者や辺野古で座り込みを続ける高齢者の話を聞き、沖縄のリゾート地以外の側面を見た」と語った。


西コース


 読谷村役場前から始まった西コースは、約五百人(主催者発表)が米軍トリイ通信施設近くや国道58号沿いの嘉手納弾薬庫地区のフェンス沿いを歩き、基地の整理・縮小や日米地位協定改定のシュプレヒコール。

 同村職員の新垣学さん(38)は「基地に土地を奪われ、元の集落に帰られない人も多い。やはり基地は縮小してほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171700_02.html

 

2008年5月17日(土) 夕刊 1面

戦没画学生の声 耳澄まし/「無言館」展 大勢が参観

 長野県上田市の私設美術館「無言館」が収集した戦没画学生の作品などを展示する沖縄タイムス社創刊六十周年企画「情熱と戦争の狭間で―無言館・沖縄・画家たちの表現―」展(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館、共催・沖縄タイムス社)が十七日午前、同館企画展示室で始まった。太平洋戦争で戦死した若者たちが出征前に描いた風景画や人物像のほか、沖縄戦を生き延びた沖縄の画家たちの作品計百六十点が並び、大勢の人が見入っていた。

 開会式で、無言館の窪島誠一郎館長は「彼らの絵は短兵急に反戦平和でくくれるものではなく、親や兄弟など、ただ愛する人を描き、日本人が戦後六十数年で失ってきた掛け替えのない風景を刻んでいる。無言館の絵が沖縄で何を発言しているか、耳を澄ましてほしい」と訴えた。

 沖縄タイムス社の岸本正男社長は「作品は私たちに今の時代を考えさせてくれる。多くの県民に見てほしい」と述べた。同展は無言館の全国巡回企画展の一環。六月二十九日まで。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171700_03.html

 

2008年5月17日(土) 夕刊 4面

野沢記者(琉球放送)に奨励賞/放送人グランプリ

 【東京】放送業界で優れた業績を残した人に贈られる第七回「放送人グランプリ」(主催・放送人の会)の贈賞式が十六日、都内であり、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題をテーマにした番組を担当した琉球放送の野沢周平記者と、琉球朝日放送制作の報道特別番組に奨励賞がそれぞれ贈られた。

 野沢さんはドキュメンタリー「揺さぶられる歴史?教科書検定をめぐって」を担当。琉球朝日放送制作は「消したい過去 消せない真実?文科省 疑惑の教科書検定」。二つの番組は、体験者の証言などで「集団自決」の実相に迫り、日本軍の関与を削除しようとした教科書検定の背後にある思惑などを追及した。

 野沢記者は「住民がなぜ、集団死に追い込まれていったかを描きたかった。(今回の)教科書検定の背景に、沖縄戦の記憶を消そうという危険な動きがあることを伝えたかった。受賞はこれからの励みになる」と喜びを語った。

 琉球朝日放送の島袋夏子記者は「生き延びた人の話で『軍の強制がなかったというなら、(私は)殺人者として死ぬしかない』という言葉が突き刺さった。今後も沖縄戦をどう伝えていけるのか考えていきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805171700_06.html