月別アーカイブ: 2008年9月

北海道で沖縄問題を熱く語る?パネル展と講演会



 北海道に来ています。昨日、一昨日と「憲法上その存在を許すべからざるもの?憲法9条と沖縄・基地」というタイトルで当麻と旭川で講演を行わせていただきました。講演のために送っておいた「沖縄戦と基地」のパネル展も会場や市民ホールロビーを使い開催してくれました。

 講演では、11万余を集めた「集団自決」否定の検定意見撤回県民大会や東京六本木米軍ヘリ基地DVDの放映をはじめ、イラク攻撃の基地でもある在沖日米軍基地が日本国憲法9条に規定する「戦力」に間違いなく該当すること(伊達判決)などを紹介。

 奇しくも解散を前提にした麻生新内閣の誕生の日となったので、基地提供の安保条約をなくす政府、基地をなくす政府をつくろう、そのためには、三つの共同?沖縄本土?超党派?国際的共同をつくろうとのよびかけもしました。

 旭川は軍都として、自衛隊員やそこに依存して商売をしている人が多そうですが、駅前の「師団通り」が今は「平和通り」に変わったように、自衛隊を「災害救助隊」に変えよう、という運動を旭川から起こして欲しいと訴えました。



24日は当麻町、農繁期にも関わらず集まって下さいました

 

 



旭川でのパネル展は市民ホールのロビーで行いました

 

 



みなさん熱心にご覧になっていました

 

 



好評だった教科書問題の沖縄新報と琉球タイムス紙面

IUCNでジュゴン保護勧告求める/6NGOが来月提案 那覇空港拡張/豊見城市長、騒音など懸念 自衛隊誘致を要請/与那国町議会が決議 原潜寄港29回、最多更新/ホワイトビーチ/抗議決議、歯止めならず 自民総裁に麻生氏 県内で初の普天間移設作業班会合 座間味で壕群確認/旧日本軍本部跡か ギンバル訓練場、早期返還を決議/金武町議会 など 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(9月20日から24日)

2008年09月20日【朝刊】 社会 

IUCNでジュゴン保護勧告求める/6NGOが来月提案

 十月にスペイン・バルセロナで開かれる国際自然保護連合(IUCN)の第四回世界自然保護会議で、国内の非政府組織(NGO)六団体は、日米両政府にジュゴン保護の取り組みを求める勧告案を共同提出する。ジュゴン保護キャンペーンセンターが十九日、県庁での記者会見で発表した。会議で採択されれば、二〇〇〇年、〇四年に続く三度目の勧告となる。

 同センター、世界自然保護基金(WWF)ジャパン、日本自然保護協会、日本雁を保護する会、エルザ自然保護の会、日本湿地ネットワークの六団体が共同で提案する。

 勧告案は日米両政府に対し、名護市辺野古沿岸域での米軍普天間飛行場代替施設建設で、建設中止も選択肢に入れた環境アセスメントを共同で実施するよう要求。ジュゴンが生息するすべての国に対し、移動性野生生物の保全について定めたボン条約の「ジュゴン保護のための覚書」に参加するよう求めるほか、一〇年を「国際ジュゴン年」に設定することも提案する。

 ジュゴン保護キャンペーンセンターは現地で、ボン条約の「ジュゴン保護覚書」に日本政府の参加を求める署名活動や音楽演奏で保護を呼び掛ける予定。海勢頭豊代表は「ジュゴンは古代から沖縄、日本の文化的資産だと、スペインで訴えたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-20-M_1-024-1_001.html

 

2008年09月20日【朝刊】 政治 

滑走路1310メートル以上沖に/那覇空港拡張/豊見城市長 騒音など懸念

 【豊見城】豊見城市の金城豊明市長は十九日、市役所で会見し、国が進める那覇空港の滑走路増設計画について、瀬長島への影響や飛行機騒音などを懸念し、「現滑走路より千三百十メートル以上沖合に整備するよう強く求める」と表明した。

 仲井真弘多知事も六月に、町村信孝官房長官らに、千三百十メートル案を要望している。

 八月に発足した沖縄総合事務局長、国交省大阪航空局長、副知事で構成する「那覇空港構想・施設計画検討協議会」では、現滑走路との間隔が千三百十メートル、九百三十メートル、二百十メートルの三案について協議し、十月中に新滑走路の位置や規模の絞り込みを行う方針。

 金城市長は瀬長島に多くの文化財が残されていることや、観光活性化に向けて島内の市有地で民間業者が温泉施設つき宿泊施設の建設計画に取り組んでいることを説明。島の一部を切り取る必要がある二百十メートル案は「到底容認できない」と強く反対した。

 瀬長島への影響が少なくなる九百三十メートル案についても「県全体の観光、経済振興のためには、二本の滑走路で同時着陸、同時離陸が可能なオープンパラレル化が重要」とし、オープンパラレルの国際基準を満たさない同案を支持しないことを強調した。

 また今後の離着陸回数の増加や、本年度末に航空自衛隊が那覇空港にF15戦闘機を配備する計画があることから周辺住宅への航空機騒音を懸念。騒音軽減のためにも千三百十メートル以上沖合への増設を求めた。

 金城市長は二〇〇七年以来市議会で沖合への滑走路展開を重ねて主張。また七月には同市議会が千三百十メートル案を求める決議を可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-20-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月20日【朝刊】 政治 

自衛隊誘致を要請/与那国町議会が決議

 【与那国】与那国町議会(崎原孫吉議長)は十九日の九月定例会最終本会議で、町への自衛隊誘致に関する要請決議を賛成四、反対一の賛成多数で可決した。町と町議会には、与那国防衛協会(金城信浩会長)から五百十四人分の署名とともに、自衛隊誘致を求める陳情書が提出されていた。

 外間守吉町長は「五百十四人の意向を重く受け止めるが、反対もあり、町民の意見は一つではない」などと述べ、慎重に対処する姿勢を示した。要請決議では「自衛隊という国家の防衛力で身を守りながら、充実した国家予算を獲得し、関連事業で雇用促進を図り、島民全員が安定した生活基盤を築き、子孫に繁栄をもたらす方策は自衛隊誘致しかないと言い切っても過言ではない」としている。

 反対した小嶺博泉議員(37)は市町村合併をせずに自立する道を選んだことを踏まえ、「交付金などをあてにした考えは他力本願で自立ではない。人口千六百五十人の島で、二週間足らずで五百十四人の署名を集めたというが、メリットやデメリットを示していない」などと意見を述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-20-M_1-025-1_003.html

 

2008年09月20日【朝刊】 社会 

検定撤回県民大会1周年で27日に集会/再訂正を要求へ 

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から、日本軍の強制を削除した文部科学省の教科書検定問題に抗議し開かれた県民大会から二十九日で一年を迎えるのに合わせ、「教科書に沖縄戦の真実を―県民大会一周年集会」(主催・沖縄から平和教育をすすめる会、6・9県民大会実行委員会)が二十七日午後二時から、那覇市古島の教育福祉会館で開かれる。

 集会では、文科省に検定制度の見直しと検定意見の撤回、教科書会社には「軍の強制」の記述にするよう再訂正申請を求める県民アピール、要求書を採択する。

 また、教科書執筆者で歴史教育者協議会の石山久男委員長が「教科書問題の現在とこれから―教科書再訂正申請にむけて」をテーマに講演する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-20-M_1-024-1_006.html

 

2008年09月21日【朝刊】 社会 

原潜寄港29回 最多更新/ホワイトビーチ/抗議決議 歯止めならず

 

沖合で停泊後、出航する米原潜アッシュビル(右)とホワイトビーチに向かう強襲揚陸艦エセックス=20日午後2時35分、うるま市勝連・ホワイトビーチ沖合

 米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦アッシュビル(六、〇八二トン)が二十日午後一時五十六分、うるま市勝連平敷屋の米軍ホワイトビーチ沖合で、「補給・維持」を目的に停泊した。原潜寄港は今月六日以来で今年に入って二十九回目。年間最多寄港数をさらに更新した。県内へは復帰後三百七回目の寄港となった。

 県議会は十七日に、原潜の原子炉冷却水漏れ事故への抗議決議と意見書を全会一致で可決したばかり。

 二十二日には外務省沖縄事務所や在日米軍沖縄調整事務所などへの抗議行動を予定しているが、決議が寄港増加の歯止めになっていないことが浮き彫りにされた。

 同原潜には、タグボートから物資などを積み込む様子が確認され、同日午後二時八分に出港した。文部科学省から県に入った放射能の調査結果は、平常値だったという。

 県は今回の寄港について、外務省日米地位協定室から十九日に電話で伝えられていた。又吉進基地対策課長は「ヒューストンの二年におよぶ放射能を含む冷却水漏洩で、県民は大きな不安と米軍の安全管理体制に疑念を抱いている」と述べ、安全性の確保と寄港増加要因を明らかにするよう求めていた。

 うるま市の知念恒男市長は「(放射能についての)安全が確認されない中での入港は許されない。うるま市議会や県議会の抗議に聞く耳を貸さない米軍の対応に怒りを感じる」と抗議。沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「米軍のやりたい放題の状況が腹立たしい。ここまでくると地域住民を巻き込んでの監視活動が必要だ」と憤った。

 アッシュビルの寄港は今年四回目。七月二十二日から三十日にかけては百九十時間三十六分接岸し、一九六八年以降、二番目に長い寄港を記録していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-21-M_1-001-1_003.html

 

2008年09月21日【朝刊】 社会 

県、戦没遺骨を確認/那覇 遺族返却へ国と連携

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」(具志堅隆松代表)などが那覇市真嘉比の土地区画整理地区で発掘した、日本兵とみられる遺骨や複数の遺品について、県福祉・援護課援護班の職員が二十日、同地区を訪れ、発掘地点や遺骨などを確認した。発掘品の遺族への返却について、同課は「厚生労働省と連携して作業を進めている」とした。

 遺族を特定する手続きとして、遺骨のDNA鑑定などの必要があるため、具志堅代表と同課は、同地区に保管している遺骨や遺品を県に引き渡す方針を確認した。

 同日は、具志堅代表が飯ごうやせっけん箱、かぶとなどの遺品や遺骨を同課職員に示しながら、発掘時の様子を説明した。

 具志堅代表は「国策で戦場に送り込まれて戦死した人間なのに、遺骨が見つかっても市民任せで、国からは何のアクションもない。早く遺族のもとへ返せるようにしてほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-21-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月22日【朝刊】 社会 

沖縄訓練場 今月完成/陸自射撃場/年度内に運用開始

 米軍の旧東恩納弾薬庫地区(沖縄市池原)に建設が進む、陸上自衛隊の射程三百メートル射撃場「沖縄訓練場」が今月中に完成し、第一混成団(那覇市)が年度内に運用を開始することが、二十一日までに分かった。施設本体はほぼ完成しており、道路や外灯などの付帯設備が整い次第、沖縄防衛局から陸自への引き渡し手続きが行われる予定だ。

 第一混成団はこれまで勝連分屯地内の射程二十五メートル射撃場しかなく、九州で転地訓練をしていた。今後、県内の演習機会が増える。

 同訓練場は二〇〇七年一月に着工し、今年三月に完成する予定だったが、現場で発見された不発弾処理や天候不良で長引いている。

 敷地面積約五八・四ヘクタールに屋根付き鉄筋コンクリート造の覆道式で、約九千平方メートルの射撃場と二百十平方メートルの管理棟を整備。小銃や拳銃などの小火器射撃訓練を行う。年間の使用日数は約百七十日、延べ射撃人数は約七千人を想定している。

 第一混成団は昨年、隷下の第一混成群が九州で約六十日、第六高射特科群が約七十日、そのほかの部隊で年間約四十日の転地訓練を行ったが、沖縄訓練場の運用開始後、部隊移動は減少する。

 防衛省は第一混成団を〇九年度中に「第一五旅団」に格上げ、定員を約三百人増強し、約二千百人体制とする方針。混成群を廃し、普通科連隊や偵察隊、化学防護隊を新編するなど組織を大幅改編。国内唯一の「離島タイプの即応近代化旅団」に変容する。

 昨年三月から始まったキャンプ・ハンセンの共同使用と併せ、沖縄訓練場の運用開始は増強される旅団の受け皿整備の進展を示す。(吉田伸)

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-22-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月22日【朝刊】 社会 

平和運動 連携呼び掛け/イラク空自「違憲」原告団・川口さん

判決「沖縄に生かせる」

 航空自衛隊のイラクでの活動が「憲法九条に違反する」とした四月の名古屋高裁判決について、同訴訟原告弁護団の川口創事務局長らが二十一日、県男女共同参画センターてぃるるで講演した。

 川口さんは、空輸活動を「他国による武力行使と一体化した行動」と認定した意義を強調。平和的生存権について、戦争の遂行などへの加担・協力を強制される場合に差し止め請求などができる具体的権利と明記されたことで、米軍基地の集中する沖縄の平和運動に生かせる、と述べた。

 判決が「傍論」でなく、正面から憲法問題を論じている点を列挙。結審時点(今年一月末)で「イラクは多くの民間人が死傷し生活基盤を破壊され、泥沼の戦争状態」にあり、米軍が「国際的に使用が禁止されている化学兵器を使用した」と認定したことを重視した。

 その上で、航空自衛隊が二〇〇六年からC―130H輸送機で定期的にバグダッド空港へ武装した多国籍軍兵員を輸送し、同時期に米軍が掃討作戦を一層強化したことを挙げ、「自らも武力行使したとの評価を受けざるを得ない」と断じている点を強調した。

 川口さんは、米軍の大規模掃討作戦に基づき、自衛隊が兵員を送り込み、バグダッドで市民を虐殺していることが認定されたとし、「私たちも加害者であり、人ごとではない」と訴えた。一方で、米軍再編による辺野古新基地建設、基地機能強化など、イラク戦争に端を発した日本の軍事国家化に「司法がノーを突き付けた」と述べた。また、判決に明記された平和的生存権の具体的権利を、「平和運動へ豊かに使っていくため、互いに連携しよう」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-22-M_1-018-1_001.html

 

2008年09月22日【夕刊】 政治 

点検結果公表を要請/原潜放射能漏れ/県議会、日米両政府に

 米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが約二年間にわたり、放射性物質を含んだ冷却水を漏らしていた問題で、県議会(高嶺善伸議長)は二十二日、沖縄防衛局など日米両政府機関に要請行動を行った。要請には、米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)の委員らが参加した。

 沖縄防衛局の真部朗局長は、米軍が二〇〇六年に発表したファクトシートを挙げ「『米国の政策として領海の範囲内で一次冷却水の放水は行わない』と米側が言っている」と説明。原潜の寄港増加については、原潜の秘匿性を挙げ、政府として理由を「承知していない」と述べた。

 県議会は十七日の本会議で、米海軍原子力潜水艦の原子炉冷却水漏れ事故への抗議決議、意見書を全会一致で可決した。決議や意見書は(1)ホワイトビーチに寄港した原潜すべての定期点検時期や内容、結果の公表(2)冷却水放水を日本領海で行わない(3)入出港通報の事前公表中止措置の解除(4)安全が確認されない限り本県に寄港させない―など六項目を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-22-E_1-001-2_002.html

 

琉球新報 社説    

増える原潜寄港 「死の海」と化す前に  2008年9月22日

 沖縄の言葉「うるま」には、サンゴの島という意味がある。景観豊かな沖縄の島々を指す言葉としても知られるが、幸多い海に面した4市町が合併して誕生したのが沖縄本島中部のうるま市だ。

 そのうるま市が、放射能漏れで「死の海」と化すかもしれないという不安に包まれている。住民が恐れる“正体”は、同市の米海軍ホワイトビーチに繰り返し姿を見せる原子力潜水艦だ。

 県議会は17日、この間の原子炉冷却水漏れ事故に抗議し、安全が確認されない限り本県に寄港させないことを求める意見書を全会一致で可決した。しかし、不安がる県民をあざ笑うかのように20日、問題のロサンゼルス級原潜がまた、同ビーチに寄港した。

 米原潜の沖縄寄港はことし29回目で、最多記録を更新中である。放射能漏れが判明した8月以降に限っても、3度目の停泊だ。米大使館は「(この間)漏出した放射能は微量で、人体や環境に影響はない」と説明するが、額面通り受け取るわけにはいかない。

 微量というのは米側の言い分であって、日本政府にこれを検証する手だてがない。仮に、放射能を含む原子炉冷却水が「垂れ流し」だったとしても、米側が「水の染みだし程度」と言えば、外交的には後者に落ち着く。残念だが、それが日米同盟の現状だ。

 しかし、現状の“うのみ外交”はおかしい。国防的にも問題だろう。人命にかかわる事案だけに、一方的に「米側を信用しろ」と言われても住民としては困る。

 日本への米原潜の寄港をめぐっては1960年代から、放射能漏れの危険性が指摘されてきた。実態を解明することなく、密約文書などで事実上放置してきたことが「すべては霧の中」という事態を招いたともいえよう。

 「死の海」に変わってからでは遅い。政府は米原潜の安全神話が崩れていることを踏まえ、より主体的に実態の解明と危険性除去に取り組むべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136427-storytopic-11.html

 

2008年09月23日【朝刊】 政治 

自民総裁に麻生氏/地方配慮に期待の声

県、懸案進展に望み

 自民党は二十二日午後の両院議員総会で麻生太郎幹事長(68)を第二十三代総裁に選出した。所属国会議員と都道府県連代表による投票の結果、麻生氏は投票総数五百二十七票(無効二票)の66%強の三百五十一票を獲得し、ほかの四候補を大差で破った。二十四日に福田康夫首相(72)の後継となる第九十二代首相に指名され、同日中に新内閣を発足させる。

 次期首相となる自民党総裁に麻生太郎氏が選出されたことについて、県幹部らは「腰を据えて政治を安定させてほしい」「地方に配慮した政策を進めてほしい」など期待を寄せた。一方、首相辞任が続いたことや解散・総選挙を控えていることで「だれがなっても変わらない。選挙を経ないと本格政権はできないのではないか」との声も漏れている。

 ある幹部は「二度も総理が辞めてしまったが、麻生さんには二の舞いはしないという決意を感じる」と指摘。「単刀直入に語る人という印象だ。仲井真知事もはっきりものを言うタイプなので、いい緊張関係がつくれれば、懸案が進展するのではないか」と期待した。

 米軍普天間飛行場移設など米軍基地問題への対応について幹部の一人は「政府間合意であり、総理が代わっても(辺野古移設は)変わらない」と強調する。

 麻生氏は二〇〇三年の政調会長当時、辺野古移設案に懐疑的な発言をした経緯があるが、別の幹部は「その後、外務大臣も経験し、日米合意の内容や重要性は認識している」と話す。

 また、県は原油高騰対策など政府の早期対応を求めており、「総裁選で麻生氏は地方の景気悪化を強調し、景気対策の重要性を訴えていた。沖縄をはじめ、地方に目配りした政策を進めてほしい」と早期の補正予算成立に期待した。 

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-23-M_1-002-1_010.html

 

2008年09月23日【朝刊】 政治 

県内で初の普天間移設作業班会合/宜野湾市から意見聴取/来月15日軸に

 【東京】政府は二十二日までに、米軍普天間飛行場の「危険性除去」と、「代替施設の建設計画・環境影響評価」に関する二つのワーキングチームの第二回会合を県内で開く方向で調整に入った。危険性除去のワーキングチームでは、同飛行場を抱える宜野湾市から同飛行場の運用や騒音の問題などについて意見を聴取する予定。開催日は十月十五日を軸に検討しているが、不安定な政情などで流動的な要素もある。

 ワーキングチームでは、「昨年八月に公表した場周経路が守られていない」との県や宜野湾市の指摘を受けて防衛省が八月二十八日から九月三日まで実施した、航空機の航跡調査についても報告される見通し。 ワーキングチームは、普天間移設問題に関係する閣僚や首長でつくる「普天間移設協議会」(主宰・町村信孝官房長官)の下に設置された実務者レベルの組織。今年七月に開かれた「協議会」で、町村氏が設置を表明し、八月に第一回会合が防衛省で開かれている。

 防衛省地方協力局の次長が主宰し、同省、外務省、内閣官房、内閣府の課長レベル、地元側の県知事公室長らで構成され、必要に応じ構成員以外の出席を求めることが可能になっている。

 次回会合をめぐっては、県が地元開催を打診していたほか、宜野湾市の伊波洋一市長や市議会が同市の意見を反映し、市民の被害実態や意見を聞く公聴会を開くよう求めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-23-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月23日【朝刊】 政治 

米軍提供水域一部除外へ支援要請/県内漁業団体/「迂回で高燃費」

 県漁業協同組合連合会の下地敏彦会長、県漁業協同組合長会の棚原哲也会長らは二十二日、県庁に仲井真弘多知事を訪ね、米軍提供水域・空域の一部除外措置や久米島町の鳥島、久米島の両射爆撃場の返還に取り組むよう求めた。

 下地会長は、燃油高騰や漁獲量の減少などで漁業者が存続の危機にあると指摘。さらに制限水域によって漁場が制限され、燃費もかさんでいるとして、除外措置への協力を求めた。

 仲井真知事は「一緒になってしっかり取り組んでいこうと思う」と述べ、今後政府と交渉していく姿勢を示した。

 同連合会などが除外を要望しているのは、沖縄本島東海上に設定されたホテル・ホテル水域(約二万八百四十三平方キロメートル)のうち、カツオ・マグロ漁やソデイカ漁の好漁場となっている本島に近接する海域約三千六百平方キロメートル。

 同海域周辺では、最短百二十キロの漁場間の移動が、制限水域を迂回するため、二百キロから三百五十キロに達する例があるという。

 鳥島など射爆撃場周辺海域についても、パヤオやモズク養殖場が隣接し、漁業活動に支障があるとして返還を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-23-M_1-002-1_005.html

 

2008年09月23日【朝刊】 社会 

政争より暮らしを/「基地」認識に疑問・経済を立て直して/県民、期待と懸念

 経済不安や雇用、社会保障。山積する課題の中で二十二日、「麻生自民」が船出した。「沖縄問題にしっかり向き合ってほしい」「政争よりも国民生活に目を向けて」。基地問題など、国の政策が住民生活を直撃する県内で、それぞれの問題に現場で取り組む関係者の期待と懸念が交錯した。

 米軍普天間飛行場の移設問題で揺れる名護市。移設を容認する島袋吉和名護市長の後援会長、荻堂盛秀名護市商工会長は「沖縄に対してどの程度の認識があるのかまだ分からないが、外相経験もあり、しっかりやる、という意識は持っていると思う」とし、「首相に選ばれた後は、沖縄に思いのある閣僚を選んでほしい」と期待した。

 一方、辺野古で座り込みを続けるヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は「今の自公政権では誰が首相になっても同じ」と厳しい見方。麻生新総裁について「これまでの発言、行動を見ると沖縄問題をあまり知らないようだ。(麻生氏にとって)沖縄が重要課題でなければ、基地問題の悪化もありうる」と危機感もにじませた。

 「零細企業は悲鳴を上げている。一刻も早い対策を」。県石油商業組合の前原政信副理事長は、原油高騰に対する国の安定化策を求めた。世界的問題だが、価格調整などの政策が必要と指摘。「国民生活をないがしろにするなら、誰がやっても同じだ。政治を安定させ、経済問題に全力を挙げてほしい」と訴えた。

 後期高齢者医療制度の廃止を求める県老人クラブ連合会の花城清善会長は、「抜本的に見直すという発言通りの政策を信じる。高齢者が不安を感じる社会は日本全体の問題。党利党略でなく、国民のための政治に期待する」と力を込めた。

 多重債務など生活困窮者の支援に取り組む県司法書士青年の会。楠和起会長は、「麻生氏は経済対策を強調しているが、被雇用者、生活者の目線に立ってほしい」。ワーキング・プアや生活保護費削減問題を挙げ「教育、医療、福祉などの各分野で、困窮者が生活再建できる社会保障制度が必要。一時的な景気浮揚策では暮らしは守れない」とくぎを刺した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-23-M_1-023-1_001.html

 

2008年09月23日【朝刊】 政治 

沖縄との関わり薄く/嘉手納統合案 政調会長時に主張

 【東京】自民党総裁に選出された麻生太郎氏は、政府・党の重要ポストを歴任。外相時代に米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設案(V字案)などを盛り込んだ在日米軍再編の最終報告に署名した関係などから、国会などで沖縄に関する発言の機会は多かったものの、「沖縄との直接的なつながりは薄い」(県関係議員)との見方がもっぱらだ。

 麻生氏は、日本青年会議所(JC)会頭時代に、一九七九年の全国大会を初めて沖縄で開催することを決めた立役者。石油ショックの影響が残る時期、沖縄を盛り立てようと「省エネルック」での開催を呼び掛けたが、最近では沖縄との関係で目立った交流はない。

 失言癖がしばしば指摘される麻生氏だが、外相時代の国会答弁で、日米安全保障条約で在日米軍出撃などの際に求められている「事前協議制度」の適用例について、「沖縄が爆撃されたことに対し、沖縄の米軍基地から攻撃するというときにはあり得る」と、他国軍による沖縄侵略を例に挙げ、県民の反発を買った。

 政調会長を務めた二〇〇三年にも、普天間飛行場の移設先について「常識的には嘉手納基地だ。滑走路も二本ある」などと嘉手納統合案を主張して、当時の辺野古沖移設案を否定。

 これに対して野中広務元幹事長が強く反発し、自民党沖縄振興委員会委員長を辞任する騒ぎにまで発展。麻生氏は事後に「沖縄の問題は難しいな」と周辺に漏らしていた。

 麻生氏と親交のある県関係の国会議員は「基地問題では『沖縄側は感情的ではなく、もっと合理的になる必要がある』と考えていた」とし、「今後も役人主導ではない政策を打ち出す可能性もある」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-23-M_1-002-1_002.html

 

2008年09月24日【朝刊】 社会 

座間味で壕群確認/旧日本軍本部跡か

 

日本軍の本部と見られる壕の前に立つ宮村文子さん(右)と吉田春子さん=23日、座間味タカマタ

4カ所最長6メートル/住民ら、63年ぶり

 沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」が起こった座間味島で、日本軍の海上挺進第一戦隊が使ったと見られる壕跡群が二十三日までに見つかった。戦時中安全な場所を求め周辺の壕に隠れた宮村文子さん(82)=座間味村=らが六十三年ぶりに確認した。宮村さんや、近くまで登った山城功さん(75)=宜野湾市=は、奥行きが六メートル余りある最長のものが「本部壕ではないか」と証言している。(安里真己)

 壕は座間味小中学校から東側のタカマタと呼ばれる丘陵部の急な斜面にあった計四カ所。

 内部が確認できる三カ所は硬い地面を掘り、いずれも天井はアーチ状で、高さ百八十センチ弱、幅九十センチ程度。奥行きは一メートルほどのものから六メートル余りで内部は直線だった。ほかの一つは入り口がふさがっている。二つの壕は三メートルほど離れて並び、あと二カ所はさらに斜面をよじ登った位置にあり、入り口の前は平らな広場状。

 座間味の戦争体験の聞き取りをしている沖縄女性史家の宮城晴美さんによると、日本軍の壕の周辺には地元の人が安全だと思い壕を掘ったが、米軍上陸前に危険だと日本兵に言われ別の場所に移動したという。

 宮城さんは「日本軍の壕と住民の壕の位置関係がはっきりすれば、軍と民との関係がより明確に浮かび上がるのではないか」と話した。

 当時壕の周囲は段々畑で戦後は焼け野原になっていたが、現在では木が生い茂って枯れ葉が積もっており壕の入り口まで、簡単に登れなくなっている。

 宮村さんは、教科書検定問題などで「集団自決」が取り上げられ、昨年から長男らと壕の確認を始めた。今年春にも一度、捜しに来たが、方角を見失い、たどり着けなかったという。

 この日、吉田春子さん(82)=座間味村=らと壕を確認した、宮村さんは「当時を知る人が少なくなっている。もっと早く確認するべきだったかもしれない」と話した。

 山城さんは「ずっと未確認だったので発見されてよかった。記憶通りだった」と指摘。その上で「昨年の教科書問題以降、関心は高まっている。子や孫にきちんと事実を伝えていくためにも調査や整備をする必要がある」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-24-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月24日【夕刊】 政治 

ギンバル訓練場 早期返還を決議/金武町議会

 【金武】金武町議会(松田義政議長)は二十二日の九月定例会で、ギンバル訓練場の早期返還に関する要請決議を賛成多数で可決した。あて先は沖縄防衛局長、在沖米国総領事など。

 決議文は、「町土の約60%を米軍基地に接収され、残りの狭い土地で町づくりを余儀なくされ、企業誘致や雇用の確保でも地域経済の発展の障害となっている。町は、ギンバル訓練場の跡地利用を促進し、雇用の創出を図るべく企業誘致などを計画しているが、返還作業の目処が立たないため、計画推進に障害を来している」と指摘。

 「金武町議会は、ギンバル訓練場の跡地利用計画を推進する立場から、返還期日を明確にし、速やかに返還を実行する様、強く要請する」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-24-E_1-004-2_002.html

闘い21年、勝利胸に/P3C・建設断念/住民ら200人 第一次琉大事件、米が圧力 在沖米海兵隊イラク派兵8000人/なお2000人 県議会、原潜事故に抗議、決議を可決 資料非公開見直し要請/米兵事件処理/図書館問題研「使命に反する」 など 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(9月14日から19日)

2008年09月14日【朝刊】 社会 

闘い21年 勝利胸に/P3C・建設断念/住民ら200人 国の責任糾弾

【本部】防衛省が本部町豊原に計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設断念を発表したことを受け、反対運動を続けてきた住民らでつくるP3C阻止対策委員会(川上親友委員長)は十三日、上本部中学校体育館で勝利を祝う集会を開いた。住民など二百人余りが二十年越しの勝利を祝った。

 現場で反対運動の先頭に立った喜納政豊前委員長(83)が「実に長い闘いだった。本当にありがとう。しかし、終戦から六十三年たっても基地は変わっていない」と述べ、コーラルを敷き詰めたままの旧上本部飛行場を放置し続ける日米両政府を批判した。

 同町の高良文雄町長は「町の発展のため、跡地利用に全力を挙げたい」と述べた。

 集会では「地元の反対にもかかわらず二十一年も住民に苦渋を強いてきた国の責任は重大だ。戦争のための軍事施設は、沖縄にはいらない」と訴えるアピールを採択した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-14-M_1-023-2_003.html

 

琉球新報 社説    

本紙創刊115年 ともし続けたい「言論の灯」 2008年9月15日

 「平和を祈る者は針一本をも隠し持ってはならぬ。武器を持っていては平和を祈る資格はない」。長崎市で戦後、被爆者救護に尽力した医学博士永井隆氏の言葉だ。自身も被爆し、苦しみもだえただけに説得力がある。

 糸満市摩文仁の平和祈念公園にともる「平和の火」は、その長崎市から届いた「誓いの火」と広島市の「平和の灯」、沖縄戦最初の上陸地・座間味村阿嘉島で採取した火が“合体”したものだ。

 不戦の誓いは全国共通だと実感すると同時に、県紙である本紙も県民と共に、さらには県外の人々とも連携してこれを実現していく使命を再認識させられる。

 琉球新報は15日、創刊115年を迎えた。明治中期から大正、昭和、平成と続く激動の中で県民の利益、人権を守る報道、主張を刻んできた。明治期は沖縄社会を文明開化に導く原動力となり、戦後の米国統治下では米軍に抗し復帰運動を支えた。施政権を取り戻す一翼を担ったとの自負もある。

 社是では「沖縄の政治、経済および文化の発展を促進し、民主社会の建設に努める」とうたっている。県民の声を代弁したからこそ一定の信頼を得たと考えるが、ネット時代を迎え、今後は県外にどう発信するかも問われよう。

 批判は謙虚に受け止めたい。戦時の新聞統制下で、多くの新聞は国民を戦争に駆り立てる紙面を作った。ペンが軍部に屈したのは事実で、沖縄の新聞とて免責されまい。その反省から本紙が企画したのが、現在の視点で再構成した「沖縄戦新聞」で、2005年度の新聞協会賞を受賞した。

 本紙の前身、うるま新報の社長も務めた瀬長亀次郎氏は復帰前の国会で「沖縄の大地は、再び戦場となることを拒否する」と訴えた。沖縄は今も基地や経済格差などに悩まされるが、本紙は「言論の灯」をともし続け、平和な沖縄を築く決意である。同時に、人々の喜怒哀楽をきめ細かく伝え、より深みのある紙面作りに全力を挙げたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136236-storytopic-11.html

 

2008年09月16日【朝刊】 政治 

第一次琉大事件 米が圧力/県公文書館に派遣教授の手紙

「軍諜報部隊が関与」/大学側、調査へ

 一九五三年に平和運動にかかわり謹慎処分を受けた学生四人が問題を学外集会で公表し退学となった「第一次琉大事件」に関し、処分の背景に当時沖縄を統治していた米国民政府(USCAR=ユースカー)や米軍諜報部隊(CIC)による圧力があったことを示す文書が見つかった。県公文書館が所蔵する「ミシガン州立大学支援事業関係資料」の中に含まれていた。ミシガン側代表が米国民政府に情報提供をしていたこと、「CICはかかわっていたが黒子に徹していた」などの記述があった。識者は「アメリカの圧力があったことが裏付けられた」「占領者の意図でつくられた大学で、米関係者が背後で暗躍する状況が分かる」と指摘する。(謝花直美)

 文書は、ミシガン州立大派遣教授団(ミシガン・ミッション)のラッセル・ホーウッド団長が、五三年五月十三日付で同大のミルダー学部長へ送った手紙。ミシガン州立大は、米陸軍省との契約で、五一年から琉大支援のために教授陣を派遣していた。

 手紙は、五二年六月から琉球大学内に「危険分子的」な活動が見られたことを端緒に、五三年の「第一次琉大事件」に対する大学側の対応が、「東洋人の意思決定の難しさ」「(米国民政府が)強力な意見を述べたが、助言は役立てられなかった」「断固たる対応をとらなかった」として批判。このような琉大側の態度が「大学と大学に関わっている米国人をひどく傷付けた」と記している。

 その過程で、第一次琉大事件の学生が学外のメーデーで問題を訴えた時に「大学当局と米国民政府はこの四人の学生について、もっと踏み込んだ措置を取るべきだと感じました」と記述。米国民政府も問題の動向に関心をよせ重い処分を求めていたことが分かる。

 当時は沖縄の企業で労働争議が多発、米軍側は徹底的な反共政策をとり、メーデーを強く警戒していた。実際に琉大は教職員全員を集めた会議の後に四人の退学を発表している。

 「私(ホーウッド)は黒子に徹し、アドバイザー的な役割を果たした。そして(米国民政府民間情報教育部)ディフェンダファー氏に絶えず情報を知らせていました」と、派遣団と米国民政府が緊密に連携していたことも分かる。

 また「CICは、この問題にかかわっていましたが、これまで黒子に徹していました。(琉大副学長の)安里(源秀)氏、ディフェンダファー氏とCIC代表が今夜、会議を持つ予定です。ディフェンダファー氏は(今回の問題で)これからしなければならないことについて述べるつもりだと言っていました」と記述。CIC、米国民政府という米側が、琉大の対応が不十分であるという見方をしていたことが分かる。

 第二次琉大事件の処分を撤回した調査委員会の委員長を務めた新里里春琉球大学副学長は「あの時の理解では(大学側の第一次事件の処分は)合法であるという見解だった。そのため二次事件だけを調査対象にした。(今回のように)後から出てきた資料があるとすればあらためて事実関係を調べる必要がある」と話した。

[ことば]

 第一次琉大事件 1953年、原爆展、沖縄の「日本復帰」を訴える小冊子を作った学生ら4人を、琉球大学は謹慎処分にした。学生らが大学の対応について労働者の祭典「メーデー」で批判したため、大学当局は4人を退学処分に。56年に「反米的」なデモや文学活動をしたとして学生を退学・謹慎にした第二次琉大事件は、米側の圧力があったとして琉大が2007年になって処分を撤回している。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-16-M_1-001-1_001.html

 

2008年09月16日【朝刊】 社会 

透ける占領者の意図/「琉大を支配の道具に」/識者、歴史問い直す必要

 第一次事件の時に琉球大学に在学し、第二次事件では沖縄タイムス記者として取材したジャーナリストの新川明さんは「米国民政府やミシガンミッションも絡んでいたことは想像できたが、アメリカの圧力があったことがこの資料で裏付けられた」と話す。

 第一次事件の元学生らの処分について「琉大当局の処分理由は(学生が守るべき規則である)『学生準則』違反だったが、その適用はあいまいだった。問題なのは、違反だったとしても、それが除籍という最も重い処分に値したのかどうか」と指摘。「米軍の圧力という第二次事件の場合と本質は全く同じ。大学当局は第二次事件の名誉を回復する時に、第一次事件の当事者も回復すべきだった」とする。

 それは当事者のためだけにとどまらず「沖縄を含め、日本全体が、たとえば戦後史をとっても、過去の自らの犯した歴史的な出来事に対し、批判的に振り返って、正しく受け止めようとする姿勢が弱い。琉大事件を考えることは、大学という場所がありきたりの言い方ではあるが、真理を探究する場所であり、歴史をとらえ直す場であるという意味からも必要なことだ」と意義づけた。

 沖縄戦後史研究者の新崎盛暉沖縄大学名誉教授は、

「この文書は、占領者の意図をもってつくられた大学のもとで、ミシガンミッションや米国民政府などの状況と、学生の状況、占領とは何かを映し出している。当時、琉大では限られた人間で会議をしていてもすぐ後にも皆知っている状態だった。その時代の琉大で後ろに(米軍関係者が)暗躍している状況が分かる」と文書を分析する。

 島ぐるみ闘争の中で社会的支援があった第二次琉大事件に比べ第一次琉大事件は「いわゆる沖縄の暗黒時代といわれる一つ前の時代で、時代とのかかわりが見えない状態で起こった」と強調。「米側は琉大を軍事植民地を支える中堅官僚づくりのため、本質的な支配のための道具としてつくった。しかし、知識や教育を与えると目的とは違う人間が出てくるその中で反乱者が出てくる。(植民地、占領下では)思考を持っている人間はそこでしか学ぶ場がなく、自分の手でその場を変えていこうとする」と、当時の学生たちの動きを説明する。

 「学生処分については琉大側が主体的に処分した。しかし、学生処分をするために(学生準則まで)つくらされたのは意識していない。だからこそ(第一次事件も)処分を撤回しないといけない」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-16-M_1-022-1_003.html

 

琉球新報 社説    

米印原子力協力 核不拡散に逆行する愚行 2008年9月16日

 国際ルールを骨抜きにする「二重基準」を認めたに等しい。原則が消し飛んでしまう。国際社会の努力で積み上げてきた核の不拡散・核軍縮体制を危うくする愚かな決定と言わざるを得ない。

 日本や米欧など45カ国でつくる原子力供給国グループ(NSG)が、インドへの民生用核関連技術・資機材の移転を認めたことだ。

 インドは核兵器保有国だ。にもかかわらず核拡散防止条約(NPT)に加盟していない。それだけではない。NSG指針である国際原子力機関(IAEA)の包括的保障措置(査察)協定も拒み続けている。

 NSGの原則では、NPTへの未加盟国やIAEAの核査察を受け入れていない国に対しては、核燃料の輸出や核関連の技術移転などを厳しく規制している。たとえ原発など平和利用目的であってもである。

 NSGの今回の決定は、参加国が共有してきたこのような厳格なルールを踏み外すことになるばかりでなく、核開発計画を進める北朝鮮、イランに誤ったメッセージを送りかねない。

 既に核兵器を手にしているインドの隣国・パキスタンに対しても、核不拡散を訴えるカードの有効性を自ら薄めるものだ。

 そもそもNSGが設立されたのも1974年のインドの核実験がきっかけだったはずだ。インドが特別扱いされるのは、どう考えても不合理である。

 承認された背景には、米国からインドへの原発技術やウラン輸出などを可能にする米印原子力協定に両国が合意している事情が働いている。インドを取り込むことが核流出防止に役立つと判断した米国の論理にNSGが押し切られた側面もある。

 だがインドにNPTへの加盟などを求めるのが、本来は筋だったのではないか。その点で明確に反対せず結論を容認した日本政府の対応は疑問だ。核廃絶を主張し続けてきた被爆国の大義が揺らぎかねない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136256-storytopic-11.html

 

2008年09月17日【朝刊】 社会 

在沖米海兵隊イラク派兵8000人/なお2000人/死者計19人

二〇〇三年三月に開戦したイラク戦争で、沖縄を拠点とする米海兵隊の第三海兵遠征軍(?MEF)が、これまでに約八千人をイラクに派遣していたことが十六日までに分かった。在沖米海兵隊報道部が沖縄タイムスに明らかにした。現在は約二千人が「イラクの自由作戦」に加わっているという。また在沖海兵隊員のイラクでの戦死者は、今年八月まで十九人に上っていることも分かった。

 在沖米海兵隊は〇四年二月、普天間の軽攻撃中隊や大型輸送ヘリ中隊を含む約三千人を初めてイラクに派遣した。

 同報道部によると、第一海兵航空団以外に、キャンプ・シュワブなどに歩兵部隊を持つ第三海兵師団やキャンプ・キンザーを拠点にする第三海兵役務支援群などの部隊をイラクに展開してきたという。

 同報道部は「在沖海兵隊はイラクの自由作戦に貢献しているが、最優先任務の日米安保体制に基づく責任遂行は変わらない」と説明している。

 イラクではこれまでに四千百人以上の米兵が死亡。英米系非政府組織(NGO)「イラク・ボディー・カウント」の統計によると、開戦以降、イラクの民間人死者数は八万七千人以上に上っているという。

 米政府は今月九日、十四万人余りのイラク駐留米軍を来年二月までに計約八千人削減する一方、アフガニスタンには増派する方針を表明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-17-M_1-002-1_005.html

 

2008年09月17日【朝刊】 社会 

問われる当事者の姿勢/第1次琉大事件米圧力

職員会、徹底調査求める/「大学当局が見解示せ」

 一九五三年の第一次琉大事件で学生処分の背後に米側の圧力を示す米文書が見つかったことを受けて十六日、琉球大学教授は「当事者として取り組む」と決意を新たにし、識者らはこの問題への対応が「琉大、そして沖縄社会のあり方が問われている」と指摘した。

 琉球大学教授職員会の辻雄二教授は「(大学側は)資料が出てきたら考えるという受け身な態度ではなく、当事者として全力で取り組むべき」と語る。

 今月末までに、学長あてに第一次琉大事件の調査研究の徹底を求める予定だ。

 二〇〇七年七月に専門委員会を立ち上げた同会は、退学処分となった県内在住の当事者への聞き取り調査を始めている。「資料が出てきたことで処分を取り消し、大学が謝罪すればいいということではない。琉大が歩んでいく先に何が必要なのか学ばなければならない」と事実を検証・記録する必要性を訴える。

 屋嘉比収沖縄大学准教授(沖縄近現代思想史)は、同事件について「ひとつは琉大の問題であるが、沖縄社会がどう考えるかが問われている。米軍占領下で、琉大学生は先鋭的な動きを支えていた。この問題をどう考えるかは、米軍占領下をどう考えるかという大きな問題提起だ」と指摘する。

 沖縄戦後史が専門の大学非常勤講師、鳥山淳さんは「一九五〇年代の占領当初の資料が潤沢にない中、米国民政府や米軍諜報部隊が圧力をかけていたことを示す文書が見つかったことは驚きだ」と評価。

 さらに「大学当局が第一、第二琉大事件に対してどのように向き合うのかがいま問われている。大学側に残る資料を整理し、きちんと見解を示すべきだ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-17-M_1-028-1_002.html

 

2008年09月17日【夕刊】 政治 

県議会、原潜事故に抗議/9月定例会開会 決議を可決

 県議会(高嶺善伸議長)九月定例会が十七日午前、開会し、米海軍原子力潜水艦の原子炉冷却水漏れ事故への抗議決議、意見書を全会一致で可決した。県は、仲井真弘多知事の訪米費用などを盛り込んだ三十一億四千五百七十七万円の一般会計補正予算案など四十二議案を提案した。会期は十月十日までの二十四日間。

 抗議決議と意見書は、原潜ヒューストンが約二年間にわたり放射性物質を含む冷却水を漏らしていた問題を受け、米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)の議員らが提出した。

 「微量であっても放射能が漏れ続けたまま県内へ寄港を繰り返したことは看過できない」と抗議。米軍の安全管理体制を批判した。

 また、ホワイトビーチへの年間寄港回数が現時点で過去最多の二十八回と増えていることに「県民は放射能汚染という目に見えない脅威にさらされる不安を持ち、基地機能強化と沖縄近海での米軍の活動に強い懸念を覚える」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-17-E_1-001-2_002.html

 

2008年09月17日【夕刊】 社会 

米軍、知事名で手続き/泡瀬共同使用 沖縄市長拒否で

中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業のための米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、更新時の新たな署名を拒否している東門美津子沖縄市長に代わり、仲井真弘多県知事名での協定更新手続きを米軍が進めていることが十七日、分かった。協定更新日は未定。期間は県が要請した五年間になる見通しだ。

 協定は昨年、沖縄市が更新した期限の九月八日を過ぎているが、更新手続き中は継続状態となる。県が今月上旬、沖縄防衛局に確認したところ、「県の意向に沿った形で手続きを進めていると米軍側から聞いている」と回答があった。東門市長は「推進困難」と判断した同事業の第二区域が保安水域にかかるため、「新たな基地の提供につながる」として、新たに協定に署名しないことを四月に国と県へ通知した。

 これを受けて県は、県知事名での署名を沖縄防衛局を通じて米軍に求めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-17-E_1-004-2_001.html

 

2008年09月17日【夕刊】 社会 

公文書保存の重要性を強調/専門家の仲本さん講演

米国で約十年間、公文書専門家の経験を積んだ県文化振興会公文書専門員の仲本和彦さんが十六日、那覇市の南西地域産業活性化センターで講演した。米国に比べ日本では公文書保存の意識が低いとし、「記録がなければ歴史の経緯も分からず、個人の人権も守れない」と訴えた。

 仲本さんは、外務省機密漏洩事件などを例に、米国公文書があっても、日本側が「米側文書なので関係ない」と否定すれば、現状では真実を確かめる方法がないと指摘。年金記録紛失や、海上自衛隊インド洋活動の航海日誌廃棄問題を挙げ、「人権や財産、現在の政治問題に深くかかわる」と記録保存の重要性を強調した。地方自治体についても、「大量の文書が公文書館に届くが、起案、決裁書ばかりで、経緯が分からず検証もできない」と疑問視した。

 米国が厳密に文書保存することについて、「なぜ、どういう状況で、(政治的)決断したか、将来への教訓として残すため」と説明。

 一方で、日本でも「文書管理法」が近く国会提出されるとし、審議の行方に注目していると話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-17-E_1-004-2_003.html

 

2008年09月18日【朝刊】 政治 

外務省、法務省と解釈違い/米軍機墜落時 立ち入り許可

資料全文本社入手 秘密合意 克明に

 【東京】在日米軍人・軍属とその家族の事件処理に関する法務省の秘密資料の全容が十七日、明らかになった。沖縄タイムス社は同日までに、資料の全文を入手。資料には、重要事件以外は裁判権を行使しないよう求めた一九五三年の同省刑事局長通達など、事件処理についての具体的な指示のほか、その根拠となる日米間の秘密合意が克明に記述されている。米側に追従する日本政府の姿勢が如実にあらわれており、従来の政府の見解との矛盾も浮かび上がっている。

 資料は法務省刑事局が七二年に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」。表紙に「秘」と記された資料は四百九十一ページに及び、個別事案ごとに具体的な対応を指示している。

 米軍機墜落事故の現場処理に関する五三年の日米合意では、米軍の民間地立ち入りについて「事前の承認なくして…立ち入ることが許される」と記載。

 しかし、外務省がホームページで公表している記述は「事前の承認を受ける暇がないときは…」となっており、内容が異なる。外務省の記述については「without prior authority(事前の承認なくして)」と記述された英文資料との違いが国会などで指摘されていた。

 外務省は「日米合意は原則、事前の承認を得ることになっている」と説明をしてきたが、法務省が英文通りに解釈していることで、外務省の姿勢があらためて問われそうだ。

 また、墜落現場の警備について警察庁が五八年に道府県警本部長などに発した通達では、「証拠保全、機密漏洩の防止等をも考慮してあたらなければならない」と指示。五九年には事故現場の写真撮影について、米側が中止を求めた場合は、報道関係者などに米側の意向を伝えるよう指示し、米軍の機密保全に積極的に協力する姿勢を打ち出している。

 これらの内容を含む秘密資料は国立国会図書館に所蔵されているが、法務省の要請を受け、六月から国会議員以外の閲覧が禁止された。今月十日に資料を閲覧した照屋寛徳衆院議員(社民)は十七日に会見し、事故現場立ち入りに関する記述の違いに「外務省は意図的に誤訳し、真実を覆い隠そうとしている」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-18-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月18日【夕刊】 政治 

「那覇空港は民間専用に」/空自機事故で市議会意見書/抜本策を要求

那覇市議会(安慶田光男議長)は十八日午前の九月定例会冒頭で、那覇空港で十一日発生した航空自衛隊那覇基地所属のF4ファントム戦闘機のタイヤパンク事故について、事故の再発防止と那覇空港の民間専用化を求める意見書を全会一致で可決した。

 事故に強く抗議するとともに、政府が速やかに事故原因の究明と結果を公表、抜本的な再発防止策を講じ、早期に同空港の民間専用化を実現するよう要請している。

 あて先は衆参両院議長、首相、国交相、防衛相、沖縄担当相。

 意見書は、タイヤパンク事故で「滑走路が約一時間にわたり閉鎖され、民間航空機約八十便が目的地の変更や出発遅延を余儀なくされ、乗客約一万五千人に大きな影響を与えた」と指摘。「空港は過密化の状態にあり、同空港が依然として事故の危険性にさらされていることで生じる、観光・経済産業に与える負の影響は大きなものがある」としている。

 同市議会は二〇〇〇年七月に起きた自衛隊機(T4型練習機)のオーバーラン事故による那覇空港滑走路閉鎖に対しても、再発防止と同空港の早期民間専用化を求める意見書を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-18-E_1-005-2_002.html

 

2008年09月18日【夕刊】 社会 

沖縄のルーツ学ぼう/「歴史検定」本を発刊/沖縄歴史教育研

文化・経済・基地問題も網羅

若者に沖縄の歴史や文化への興味・関心を深めてもらおうと、「沖縄歴史検定」を実施している沖縄歴史教育研究会(新城俊昭代表)は十七日までに、同検定の解説付き過去問題集を発行した。出題範囲が原始・古代から現代までと幅広く、自然や平和、時事問題も含む。同研究会は「多くの人が沖縄の歴史を学ぶきっかけになれば」と期待を込める。

 二〇〇五年度に始まった同検定は歴史・文化を中心に構成。現代沖縄の政治や経済、米軍基地問題も網羅する。検定は無料。

 同研究会の仲村顕さん(35)は「問題集が出ることで、より多くの人が沖縄の歴史を学ぶようになればうれしい。詳しい解説もついているので、沖縄・琉球の歴史を学んで、検定にもチャレンジしてほしい」と呼び掛ける。

 問題集は、A4判六十ページで六百円(税込み)。県内各書店で販売されている。検定は受検日は設定されておらず、〇八年度は十一月から来年三月まで各高校・団体などで実施する予定。

 問い合わせは新城代表(宜野湾高校教諭)、電話098(897)1020。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-18-E_1-004-2_001.html

 

2008年09月19日【朝刊】 社会 

資料非公開見直し要請/米兵事件処理/図書館問題研「使命に反する」

 【東京】国立国会図書館が法務省の要請を受け、六月から在日米軍人・軍属とその家族の事件処理に関する資料を非公開にしている問題で、司書や研究者らでつくる図書館問題研究会(中沢孝之委員長)は十八日までに、非公開の見直しを要請した。「国会図書館の存在意義をゆるがせにする。全国の図書館の資料提供の独立性に深刻な影響を与えると予想される」と批判した。

 同研究会の西河内靖泰副委員長が十七日夕、同図書館収集書誌部の吉本紀副部長に要請書を提出。閲覧禁止措置について「行政府の要請に機械的に応じたもので、閲覧と同様の結果をもたらす自己規制。戦後の図書館の自由の歴史においても類例のない事態だ」と非難した。

 資料に日米の秘密合意などが記されている点に触れ、「(閲覧禁止は)密約を密約のままとすることに加担することで、重大な政治的行為であることを自覚すべきだ」と指摘。外部の圧力から独立して資料を収集し、国民に提供するという図書館の使命に反するとした。

 非公開とされた資料は法務省刑事局が一九七二年に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」。

 重要事件以外は裁判権を行使せず「起訴猶予」とするよう指示した五三年の刑事局長通達や、日本側の第一次裁判権が及ばないとされる「公務」の範囲を通勤や職場の飲酒にまで拡大した通達文書が含まれている。

 同研究会は全国の司書や研究者らで組織、会員数は約千百人。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-19-M_1-028-1_001.html

 

2008年09月19日【朝刊】 政治 

基地の騒音軽減を要請/県幹部 米軍「取り組んでいる」

 県文化環境部の友利弘一環境企画統括監らは十八日、キャンプ瑞慶覧の在日米軍沖縄調整事務所を訪れ、米軍嘉手納基地や普天間飛行場周辺の航空機の騒音軽減を要請した。

 友利統括監によると、バーノン・ボーン所長は「地元の負担はよく理解している」と述べた上で、二〇〇四年に起きた沖国大への米軍ヘリ墜落事故に触れ、「事故後、研究を進め、安全と地元の負担を軽減するよう取り組んでいる」と説明したという。

 同行した知事公室の平良宗秀基地防災統括監は「普天間飛行場周辺自治体の住民からも苦情が寄せられている」とも訴えた。

 県の〇七年度調査では、嘉手納町役場庁舎の測定地点で、日米が合意した航空機騒音規制措置によって飛行が制限されている時間帯の午後十時―午前七時の騒音発生回数が、前年度より増加している。

 夜間早朝の飛行について、ボーン所長は「運用上、必要でやむを得ない場合もあるが、極力飛行しないようにしたい」と説明。普天間飛行場でのタッチアンドゴーや周辺での低空飛行について、「飛行場上空で行っており、人口密集地を避けるように訓練している」との認識を示したという。

 県は、四軍調整官あてに(1)騒音が環境基準を達成するよう航空機騒音の軽減措置(2)騒音規制措置の厳格な運用―などを盛り込んだ要請文を手渡した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-19-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月19日【朝刊】 社会 

空自機が嘉手納着陸/計器に異常表示

 【嘉手納】十八日午後四時四十五分ごろ、航空自衛隊那覇基地第八三航空隊所属のF4戦闘機一機が飛行訓練中、計器に異常な表示が出たとして、米軍嘉手納基地に着陸した。

 目撃者によると、同機は北側滑走路上に張られたワイヤに機体のフックを引っかけて着陸、停止。消防車などの緊急車両に囲まれ、点検を受けたという。点検後、同機は自走して同基地内の駐機場に移動した。

 F4は、十一日にも那覇空港に着陸した際にタイヤがパンクし、破片回収などで滑走路が約一時間閉鎖された。空自那覇基地は事故後、同基地配備の約二十機を点検し、十八日から飛行訓練を再開していた。

 空自那覇基地は「(嘉手納基地へは)大事をとっての着陸だった。那覇空港でパンクした機体とは別で、関連性はない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-19-M_1-029-1_003.html

 

2008年09月19日【夕刊】 社会 

真実正しく伝えたい/教科書検定撤回 県民大会から1年/問題契機に歴史本

 

「歴史と実践」を発刊した県歴史教育者協議会事務局長の山口剛史琉球大准教授=琉球大学


若者向けテキスト新城俊昭教諭(宜野湾高)「若い世代に沖縄の歴史を理解してもらいたい」と語る新城俊昭教諭=宜野湾高校

沖縄戦など解説

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の強制を示す記述が削除された文部科学省の教科書検定に抗議した県民大会から二十九日で一年。県内では、米軍基地問題の実態や沖縄戦の史実を次の世代に正しく伝える取り組みが始まっている。教科書検定を分析し、沖縄の歴史を分かりやすく教える二冊の本を研究者らが刊行。歴史から学ぶ大切さを沖縄から全国へ発信する。

 県歴史教育者協議会(平良宗潤委員長)は、沖縄戦や米軍基地問題などについて研究者らの論文や平和学習の実践案をまとめた機関誌「歴史と実践二十九号」を発刊。特集「今こう教えたい沖縄戦・基地」のテーマで、同会の会員らが二〇〇八年度に使用されている高校の日本史教科書十八種類の沖縄戦記述の分析結果や「集団自決」訴訟の一審判決に関する見解なども伝えている。同訴訟や教科書検定問題の経過を伝える資料などもまとめられている。

 同会事務局長の山口剛史琉球大学准教授は、〇六年度の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」から日本軍の強制を示す記述が削除され、その後「軍の関与」という形で教科書会社から訂正申請が出された六社八冊を含む高校日本史教科書の記述内容を分析した。山口准教授は「歴史歪曲の動きのある中、住民を守らない軍隊の本質などを教科書の中できちんと記述する必要がある」と指摘。その上で「県民大会で決議した検定意見の撤回を訴え、『集団自決』に軍の強制を示す記述を回復させる必要がある」と話す。

 同書は五百円。三百部を発行した。問い合わせは同協議会、ファクス098(834)5830または電子メールt-yama@edu.u-ryukyu.ac.jp

 宜野湾高校の新城俊昭教諭(沖縄歴史教育研究会代表)は「ジュニア版 琉球・沖縄史―沖縄をよく知るための歴史教科書―」を発刊する。中学生以上の若い世代や県外の人に琉球・沖縄の歴史や現状を知ってもらおうと、県民大会が開かれた経緯や大会の様子を盛り込んでいる。

 〇七年に沖縄歴史教育研究会が実施した「沖縄歴史に関する高校生の知識・意識調査」で、県内の高校生が沖縄の歴史について解答率が低かったことに、「沖縄から沖縄を発信する力が弱かった」と振り返る。

 「テキストを作っていつでも学べる条件をつくるのが私たちの役割。感情論ではなく、歴史から学ぶ大切さを伝えたい」。発刊日は昨年県民大会が開かれた九月二十九日にした。

 県民大会を「十一万人もの県民が集まったが、感情的な部分で反発するのではなく、歴史的な裏付けを知ってほしい」と新城教諭。

 通史だけでなく、沖縄の歴史に関連するクイズを盛り込むなど「読み物として手にとってほしい」と話す。A5判フルカラー全三百六十八ページ、定価千五百円(税別)。二十九日までに県内の書店に並ぶ予定。問い合わせは編集工房東洋企画、電話098(995)4444。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-19-E_1-007-2_001.html

非公開文書、議員には開示/米兵の事件処理資料 「大江訴訟」結審、「政治的目的」自体が不当 空自機パンク、那覇空港滑走路閉鎖 非公開資料で判明、軽い少年事件、裁判権放棄/米兵事件処理 防災訓練で県、米軍参加要請を検討/09年度以降 など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(9月11日から13日) 

2008年09月11日【朝刊】 社会 

非公開文書 議員には開示/米兵の事件処理資料 国会図書館

記者の閲覧は拒否/「二重基準で国民差別」

 【東京】国立国会図書館が、法務省の要請で五月から非公開にしている駐留米兵の事件処理に関する資料を、国会議員に限って閲覧を許可していることが十日、分かった。同日、社民党の照屋寛徳衆院議員が同図書館の許可を得て資料を閲覧。照屋氏は「一般には閲覧を禁じながら、国会議員にだけ閲覧を許可するのはおかしい」と指摘。八月下旬に同資料の閲覧を拒否されたジャーナリストの斎藤貴男氏は「ダブルスタンダードにより、国民を差別している」と非難した。(島袋晋作)

 照屋氏が閲覧したのは法務省刑事局が一九七二年に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」。重要事件以外は裁判権を行使せず「起訴猶予」とするよう指示した五三年の刑事局長通達や、日本側の第一次裁判権が及ばないとされる「公務」の範囲を通勤や職場の飲酒にまで拡大した通達文書も含んでいる。

 「公務」の範囲を拡大した文書をめぐって政府は、今年の六月下旬、照屋氏の質問主意書に対する答弁書で「通達を発出したかどうかを含め、これを公にすることにより、米国政府との信頼関係が損なわれるおそれ、および公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす」と存在の有無さえ明らかにしていなかった。

 政府と国会図書館で対応に違いが出るいびつな構図も浮き彫りになった。

 国会図書館は斎藤氏に対しては「プライバシーや人権を侵害する資料など」の閲覧制限を認めた利用規則を理由に閲覧を禁止。

 しかし、照屋氏の事務所によると、国会図書館は「一般利用者には制限を設けたが、議員は国会審議などで利用してもらうためにも、閲覧を許可する」と説明。コピーは不可だが、メモを取ることは許可されたという。

 照屋氏は「文書の存在を明らかにしなかった質問主意書での対応と今回の閲覧許可も矛盾する」と指摘。十一日に都内で会見し、閲覧した内容について明らかにする予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-11-M_1-023-1_001.html

 

2008年09月11日【朝刊】 政治 

嘉手納・普天間航空騒音軽減 外務省に要請/県、発生回数が増加

 県文化環境部の知念建次部長らは十日、外務省沖縄事務所や在沖米国総領事館を訪れ、米軍嘉手納基地や普天間飛行場周辺の航空機の騒音軽減を要請した。外務省沖縄事務所の久野和博副所長は「周辺住民には深刻な問題と認識している。騒音規制措置の順守を求め、地元の負担が最小限になるよう、米側に働き掛けを続けたい」と説明した。

 県の二〇〇七年度調査で、うるささ指数は嘉手納基地周辺の十五測定地点のうち九地点、普天間飛行場周辺は九地点のうち三地点で環境基準を超えた。騒音発生回数は普天間周辺の九地点すべてで前年度より増加している。

 同行した知事公室の平良宗秀基地防災統括監は米軍機の騒音について「飛行場所在の市町村だけでなく、周辺の那覇市や西原町の住民からも苦情が寄せられている。運用の問題もあるかもしれないが、規制措置を順守してほしい」と念を押した。

 沖縄防衛局の赤瀬正洋企画部長は洗機場移転や防音工事などで実施している対策を挙げ、「さらに何ができるか。日米合同委員会で協議している」と述べた。

 総領事館で対応したクレア・カネシロ首席領事は七月に着任したばかり。「来たばかりなので、これからいろいろ勉強したい」と述べるにとどめた。県は当初、在日米軍沖縄地域調整官への要請も予定していたが、米軍の都合で延期となった。

 一行は那覇空港周辺の騒音の軽減措置について、航空自衛隊那覇基地司令に対しても要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-11-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月11日【朝刊】 政治 

知事訪米 目的追及へ/県議会 野党、補正予算修正も

 県議会野党六会派は十日、代表者会議を開き、十七日開会の九月定例会に向けた対応を話し合った。補正予算で計上されている仲井真弘多知事の訪米経費について、代表・一般質問などで目的や考え方をただし、その是非を判断する方針を確認した。

 ただ、野党は六月定例会で米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に反対する決議をしており、仲井真知事が訪米先で移設推進の立場を主張するとした場合、多数を占める野党に補正予算を修正される可能性がある。

 仲井真知事は五日の定例会見で「普天間飛行場の移設に関する県の考え方」を発表。野党決議に「決議でいう『新しい基地建設』とは性格が異なる」などと反論。普天間の危険性除去のため、あらためて移設推進の考えを表明した。

 野党最大会派である社民・護憲ネットの新里米吉団長は「知事の出した考え方はわれわれの決議への挑戦。民意は辺野古移設に反対であり、それに反する訪米行動なら、容認できない」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-11-M_1-002-1_003.html

 

琉球新報 社説

「大江訴訟」結審 「政治的目的」自体が不当 2008年9月11日

 沖縄戦中に座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)に「軍命」があったとする作家大江健三郎さんの「沖縄ノート」などの記述をめぐり、座間味島元戦隊長らが大江さんと版元の岩波書店に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審は9日、大阪高裁で結審した。

 弁論2回、2カ月足らずでの結審は「集団自決に軍が深く関与したことは認められる」との一審大阪地裁判決を覆すだけの新たな証拠がなかったことの表れと言えよう。

 最終弁論で見逃せないのは、提訴の目的として原告側が名誉回復だけでなく「大きな政治的目的」を併有していたと明言したことである。

 原告側は「昨年の教科書検定を通じて教科書から『命令』や『強制』が削除されたことは、勇気を持って提訴に及んだ訴訟の目的の一つを達したと評価できる事件だった」とし「世間の耳目を集める訴訟が個人の権利回復にとどまらず、より大きな政治的目的を併有していることは珍しいことではない」と述べた。

 提訴によって教科書検定で「集団自決」への日本軍の関与が高校歴史教科書であいまいにされた。原告側はそれを「大きな政治的目的」の成果としているのである。

 座間味島以外の「集団自決」でも「軍命」「強制」があったことは、これまでの多くの関係者の証言で明らかである。

 提訴することで、すべての「集団自決」に「軍命」はなかったとの自らの主張を当てはめようとすることは乱暴に過ぎる。にもかかわらず、文部科学省は結果として原告らの思惑通りに動いたことになる。

 原告側があずかり知らない「集団自決」についてまで、事実をねじ曲げる政治的目的で提訴すること自体、不当と言わざるを得ない。

 歴史的事実をしっかり受け止め、過ちを繰り返さないことが戦後日本には求められてきた。判決は10月31日に言い渡される。歴史的事実に即した判決を望みたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136118-storytopic-11.html

 

2008年09月11日【夕刊】 社会 

空自機パンク 那覇空港滑走路閉鎖

民間機、嘉手納へ

 十一日午後零時五十分ごろ、航空自衛隊那覇基地所属のF4戦闘機が那覇空港に着陸した際、左タイヤ部分がパンクした。タイヤの破片回収のため、滑走路が一時閉鎖され、午後一時五十二分に再開された。

 この影響で民間機数機を嘉手納基地に着陸させる措置がとられた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-11-E_1-005-3_003.html

 

2008年09月11日【夕刊】 社会 

高速道を逆走 憲兵隊車両と正面衝突/金武町屋嘉

 

レッカー車で現場から運び出される事故車両=11日午前9時15分、屋嘉インター南向け入り口合流地点付近

運転の男性重体

 十一日午前五時五十分ごろ、金武町屋嘉の沖縄自動車道南向け車線で、男性(43)=北谷町吉原=が運転する普通乗用車が北向けに逆走し、米軍の憲兵隊パトカーと正面衝突した。男性は全身を強く打ち、意識不明の重体。パトカーを運転していた在沖米海兵隊上等兵の男性(23)は両足骨折などの重傷を負った。県警が逆走した地点や事故原因を調べている。

 県警交通機動隊によると、男性は高速道路を石川インターから金武インター向けに逆走中、内側の追い越し車線で米軍パトカーと正面衝突した。

 男性の車から那覇インターで自動車道に乗り入れたことを示す通行券が見つかった。事故前に北中城インターの料金所手前でUターンする車両を西日本高速道路の職員が目撃。北中城―沖縄南の間で「逆走車両がある」との一一〇番通報もあり、関連を調べている。

 衝突した二台は前部が大破。金武地区消防本部のレスキュー隊などが二人を救出した。

 この事故で自動車道は金武インターから石川インター間が約三時間にわたり通行止めとなった。金武インターの南向け車線で一時、二百メートルの渋滞となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-11-E_1-005-2_002.html

 

2008年09月11日【夕刊】 社会 

「すべての地域 不祥事ゼロに」/米軍事件事故 日米会合で共同議長

 米軍関係者の事件・事故の再発防止策について、日米の関係機関が話し合うワーキングチームの第十七回会合が十一日午前、那覇市の外務省沖縄事務所で開かれた。議題は(1)事件・事故の発生状況(2)日米双方の取り組み―など三項目。会合は冒頭を除いて非公開で行われた。議長を務める同事務所の久野和博副所長は「二〇〇三年まで増加傾向にあった米軍関係者の事件・事故は〇四年から減少している。議論を重ねて取り組みに生かしたこれまでの会合が実を結んでいる。今回も日米共通の目標に向け有意義で生産的な話し合いにしたい」とあいさつ。

 共同議長のバーノン・ボーン在日米軍沖縄調整事務所長は「在日米軍は軍関係者の不祥事を一切容赦しない。すべての地域で不祥事をゼロ%にすることを目標とし今後も真剣に取り組む」と話した。

 会合には県や県警、在沖米四軍、在沖米国総領事館、沖縄防衛局、県内米軍基地所在市町村、商工会など関係団体の責任者ら約三十人が出席した。

 ワーキングチームは原則年一回開催。ことしは二月の米兵暴行事件を受けて、急きょ三月に全体会合を、六月にはメンバーを限った小会合を開いており、三度目の開催となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-11-E_1-004-2_002.html

 

2008年09月12日【朝刊】 社会 

空自機パンク 那覇空港滑走路閉鎖

 

嘉手納に民間機・那覇空港の滑走路閉鎖で着陸した嘉手納基地から飛び立つ民間機=11日午後4時、同基地

80便1万5000人に影響/F4機20機訓練停止

十一日午後零時五十分ごろ、航空自衛隊那覇基地所属F4戦闘機の左主翼下にある車輪のタイヤが那覇空港に着陸した際、パンクした。飛散したタイヤの破片を回収するため、同空港滑走路が約一時間閉鎖された。民間機約八十便に目的地変更や出発遅延などがあり、乗客約一万五千人に影響が出た。空港関係者や戦闘機の乗員二人に、けがなどはなかった。同基地はパンクの原因を調べており、安全確認までF4戦闘機約二十機の訓練を停止する考えを示した。

 飛散したタイヤの破片は同基地の隊員らが回収。滑走路の閉鎖は同日午後一時五十二分に解除された。

 那覇空港ターミナルの搭乗手続きが一時ストップ。出発便と到着便でそれぞれ最大約三時間半の遅れが出た。民間機九便が米軍嘉手納基地や鹿児島空港などに目的地を変更して臨時着陸。嘉手納基地に着陸したJAL二便とJTA二便の計四便は、同日午後五時三十分までに那覇空港へ到着した。

 航空自衛隊那覇基地渉外室によると、タイヤがパンクしたF4戦闘機は同日午前十一時五十九分ごろ、他の同型二機と三機編隊で那覇空港を離陸。沖縄北部訓練空域での訓練を終えて戻ったところだった。飛行前点検ではタイヤの空気圧に問題はなく、摩耗具合も交換時期に達していなかったという。編隊を組んでいた二機を含め、F4三機は嘉手納基地に緊急着陸しており、那覇空港に戻るめどは立っていない。

 那覇空港は滑走路が一本で、民間機と自衛隊機が共同で使用している。二〇〇五年九月にも宮崎県新田原基地所属のF4戦闘機が、那覇空港に着陸後にタイヤがパンクし、滑走路が約一時間閉鎖した。

原因究明 県が要請

 F4戦闘機のパンク事故を受け、県の又吉進基地対策課長は同日午後、航空自衛隊那覇基地渉外室に対し、電話で「一歩間違えれば重大な事故につながりかねない」として(1)事故原因の究明(2)安全管理の徹底(3)実効性ある再発防止策を早急に講じる―などを要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-12-M_1-001-1_004.html

 

2008年09月12日【朝刊】 社会 

南国旅情 最後に台無し/那覇空港 滑走路閉鎖で大混雑

 十一日、航空自衛隊那覇基地所属のF4戦闘機のタイヤパンクで滑走路が閉鎖された那覇空港。離着陸便の遅延が相次ぎ、空港内は乗客や出迎えの人などでごった返した。約二時間待ちの乗客もいて、「疲れた。迷惑だ」など、不満の声が上がった。

 出発ロビーは各航空会社窓口に問い合わせが殺到。係員が乗客への説明や便の振り替え作業に追われた。

 搭乗予定の神戸行きの便が遅延となり、約二時間床に座り込んでいた兵庫県の大学生、森谷百絵さん(19)は「とりあえず早く帰りたい」と疲れた表情。東京都の会社員、比留間紀子さん(34)は「小さな子どもを連れているので大変。とにかく無事に帰れればいい」とあきらめの表情だった。

 一方、鹿児島空港を経由したため到着が約二時間遅れたという東京都の会社員男性(29)は「家族と一緒に観光で来たが、疲れてしまった。滑走路閉鎖の理由をきちんと説明してほしい」息子の乗る便が大幅に遅れた大阪府の無職女性(63)は「本当に迷惑な話。息子とも連絡が取れず身動きできない。一緒に観光するのを楽しみにしていたのに」と困惑した表情を浮かべた。

安全策を求める

 翁長雄志那覇市長 航空自衛隊那覇基地から、空港の一時閉鎖の連絡があった。事故原因等の詳細は把握していないが、民間航空機の離発着への影響もあったことから、誠に遺憾。航空自衛隊那覇基地には、機体の安全点検等について、最善を尽くしていただくよう、早急に申し入れたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-12-M_1-027-1_002.html

 

2008年09月12日【朝刊】 社会 

軽い少年事件 裁判権放棄/米兵事件処理 非公開資料で判明

【東京】国立国会図書館が非公開にしている米兵の事件処理に関する資料の中で、重要事件以外は裁判権を放棄するよう指示した法務省刑事局長通達(一九五三年)などの全文が十一日、明らかになった。十日に同図書館で資料を閲覧した照屋寛徳衆院議員(社民)が明らかにした。同通達では少年事件について、軽微な事件であれば家庭裁判所に送致せず、第一次裁判権を放棄するよう指示していることなどが新たに分かった。

 資料は法務省の要請を受けた国会図書館が、「プライバシーや人権を侵害する資料など」の閲覧制限を認めた利用規則を理由に一般の閲覧を禁止し、国会議員にだけ公開している。照屋氏は十日、同図書館を訪れ、資料を閲覧、秘書が一部をパソコンで書き写した。

 照屋氏のメモによると、刑事局長通達には、軍隊構成員や家族の起こした少年事件の取り扱いを「起訴を必要としないと認められる事件、及び、罰金以下の刑に該る犯罪に係る事件については家裁送致することなく、第一次裁判権を行使しないこと」と指示している。

 照屋氏は、日本側に第一次裁判権がないとされる「公務中」の範囲を通勤や職場での飲酒にまで拡大した、合同委員会刑事裁判権分科委員会の議事録も閲覧。公の催事で飲酒した場合、帰宅中に交通事故を起こしても「公務」になると解釈できる合意があった。照屋氏は「日本が米国の言いなりになっているのがよく分かる」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-12-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月12日【朝刊】 政治 

中東用新装甲車 米軍、県内で訓練

 イラクやアフガニスタンに部隊を派兵している在沖米海兵隊が五月から、即席爆発装置(IED)に対応する新型「対地雷奇襲攻撃防護型装甲(MRAP)車」を導入している。在沖米海兵隊報道部は九日、沖縄タイムスに対し、中東でのテロとの戦いに備え、隊員がMRAP車を使って県内各基地や岩国基地(山口県)、キャンプ富士(静岡県)で訓練すると説明した。

 同報道部によると、在日海兵隊基地は三十五台を配備予定。県内にはすでに十九台が搬入されており、那覇軍港では、九月から砂漠用塗装のMRAP車が停車している様子が見られる。搬入の完了時期は「運用上の安全確保のため明かせない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-12-M_1-002-1_003.html

 

2008年09月12日【夕刊】 政治 

原潜事故に抗議決議/軍特委、県議会提出へ

 米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが約二年間にわたり、放射性物質を含んだ冷却水を漏らしていた問題で、県議会米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)は十二日午前、「米海軍原潜の原子炉冷却水漏れ事故に関する」意見書と抗議決議を十七日に開会する九月定例会本会議に提出することを全会一致で決めた。

 軍特委は(1)原潜の安全性が確認されない限り、本県には寄港させない(2)冷却水の放水を日本の領海で行わない―など六項目を求めることを決めた。

 上原昭知事公室長は「安全性の確認」については、「日米両政府が行うべきだ」との見解を示した。しかし、その上で、「今回、日米両政府が公表したコメントでは、具体的な安全性が確認されていない」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-12-E_1-001-2_002.html

 

2008年09月12日【夕刊】 政治 

辺野古移設持ち出さず/知事 訪米時の要請で

 仲井真弘多知事は十二日午前の定例記者会見で、年明けに予定している訪米について、「(普天間飛行場の辺野古移設は)私が直接、米国の当事者とやるべき性格のものか疑義を持っている。米国に行っても、よほど質問でもなければあえて持ち出す必要はない」と述べ、日本政府との国内問題であるとの考えをあらためて示した。

 県は県議会九月定例会に知事訪米費約千五百万円を計上する。野党は、知事が辺野古移設を主張する場合、予算の削除・修正を視野に入れている。

 仲井真知事は「訪米では地位協定改定を求め、企業誘致もやりたい。野党がどこに反対、賛成されるか議会を通じて聞きたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-12-E_1-001-2_003.html

 

2008年09月13日【朝刊】 政治 

米軍参加要請を検討/軍特委/09年度以降 防災訓練で県

県の上原昭知事公室長は十二日、二〇〇九年度以降の県の総合防災訓練に、米軍の参加要請を検討する考えを示した。米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが放射性物質を含んだ冷却水を漏らしていた問題を受け、同日開かれた県議会米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)で、具志孝助氏(自民)に答えた。

 長崎県佐世保市が実施している原子力艦原子力防災訓練に、長崎県議会などが米軍参加を求めていることについて認識を問われ、「次年度以降の訓練を計画する中で、米軍がどのような形で参加できるかを検討していきたい」と述べた。

 友利弘一環境企画統括監は原潜の入港について、文部科学省や海上保安庁などと行う放射能測定調査や監視体制を説明。(1)入港前(2)入港時(3)停泊や接岸中(4)出港時(5)出港後六十分(6)出港後翌日の六回それぞれで、海水や大気中の放射線量などを測定していると説明した。桑江朝千夫氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-13-M_1-002-1_002.html

 

沖縄タイムス 2008年09月13日 社説 

[裁判権放棄密約]

「非公開外交」は限界だ

 よりよい未来を築くには過去の歴史から学ぶことが不可欠だ。負の遺産であればなおさらである。過去の政策決定過程を綿密に検証することができれば、現状を変更することが可能になるし、それはまたあるべき未来の道しるべにもなろう。

 その基礎となるのが歴史的な政府の公文書である。現在から過去の意味を問い返し、国の未来の在り方を考える。そういう意味で公文書は国民の「財産」といっていい。

 過去から学ばなければ「思考停止」に陥る。現状を変えることなど到底できないだろう。日米関係についてもそうだ。過去の検証なくしては対等な日米関係を築くことはできない。

 重要事件以外は裁判権を放棄するよう指示していた法務省刑事局長通達(一九五三年)などの全文が明らかになった。少年事件は軽微な事件であれば家庭裁判所に送致せず、第一次裁判権を放棄するよう指示していた。

 照屋寛徳衆院議員(社民)が明らかにした。

 米兵の事件処理に関する文書が報道された後の六月以降、国立国会図書館は国民には非公開にしながら国会議員には閲覧を許していた。コピーは許されず、秘書がパソコンで書き写したという。

 照屋氏は日米合同委員会の議事録(五六年)も閲覧。米軍人らが公の催事で飲酒した場合、帰宅中に交通事故を起こしても「公務」になると解釈できる合意もあった。

 裁判権は主権国家の根幹の一つであり、当時の日米の関係を如実に示すものだ。

 それにしても、国立国会図書館の対応は、ちぐはぐだ。同図書館は法務省の要請を受けて国民には非公開にする一方、国会議員には閲覧を許可していた。

 国民の知る権利に応えようとしない。逆に積極的に封じ込めようとしているとしか見えない。

 国会議員は国民によって選ばれる。国会議員に許可して国民に認めないというのは本末転倒ではないか。

 「公務」の範囲を拡大した文書について政府は、「米国政府」との信頼関係を理由に「通達を発出したかどうかを含め」存在の有無さえ明らかにしていない。

 米国では一定期間を経た政府文書は、情報公開するのが原則だ。日本関係文書も相手の米側公文書から明らかになる場合が多い。

 都合の悪い公文書を公開しない日本政府の姿勢は今も続く。

 米側から次々と公文書が出てきても、日本政府は説明するどころか逃げを打つばかりだ。この姿勢は政治家の言葉が信を失うことと対をなすものと思えてならない。

 政治家の言葉が軽くなり、もっと言えば、うそに近い感じを私たちが受ける素地をつくっているのではないか。

 政治家自身が言葉をいかに損なっているか。過去から学ぶことなくして未来もない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-13-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説    

空自イラク撤収 復興支援の論議深めよう 2008年9月13日

 政府は、イラクで空輸に当たっている航空自衛隊を年内にも撤収する方針を発表した。陸上自衛隊の2006年のイラク撤収以降も続いていた空自活動が終われば、04年に始まったイラクでの自衛隊活動は完全に終了する。

 イラク復興支援特別措置法に基づく空輸活動は、空自が参加する多国籍軍の駐留根拠となっている国連決議が年末に期限切れとなる。このため、政府は年明け以降も活動に必要な、イラク政府との新たな地位協定の締結を模索した。

 が、参院の与野党逆転による国会審議が紛糾することを懸念したものとみられる。

 空自のイラク活動はC130輸送機3機がバグダッド空港など3空港で国連と多国籍軍の兵士や物資を空輸。任務飛行は700回を超え、600トン超の物資を輸送した。

 イラクでの空自活動をめぐっては、4月に名古屋高裁が憲法9条に違反すると判断した。高裁は、バグダッドが戦闘地域に当たるとして、空輸活動も外国軍の武力行使と一体化だと指摘した。

 高裁判断に対し、政府は傍論部分の指摘だとして拘束力はない、とその後も活動を継続してきた。

 ここにきて撤収方針を発表した背景には、空自活動を終えることで、テロとの戦いへの貢献策は「インド洋での海上自衛隊による給油活動しかない」とする狙いがあるとされる。自民党総裁選や次期衆院選で給油問題を争点化し、継続への国民理解を促そうというシナリオが透けて見える。

 憲法9条に違反すると高裁が判断した空自のイラク撤収は歓迎したい。国論を2分した復興支援に対し、あらためて憲法論議を含め検証すべきだろう。よもや空自撤退を給油活動につなげるカードにしてはならない。

 次期衆院選で、与党が過半数を占めても衆院再議決に必要な3分の2以上の勢力維持は厳しいとする見方がある。与党だけで衆院選後の対テロ新法改正案の成立は厳しい。空自撤退の検証を含め、徹底的な国会論議を求めたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136185-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説    

空自機パンク 軍民共用の限界を示した 2008年9月13日

 那覇空港が抱える致命的な欠陥をあらためてさらけ出した。無理に無理を重ねてきたのが「軍民共用」の実態だ。だが一本の滑走路を自衛隊機と民間機が共同使用するのはもはや限界だ。「軍民共用」では立ち行かなくなっていることを、今回の事故は図らずも示した。

 航空自衛隊那覇基地所属のF4ファントム戦闘機が那覇空港に着陸した際、左主脚のタイヤがパンク。自走して滑走路を出たものの誘導路上で立ち往生した。11日昼すぎのことだ。

 滑走路は約1時間閉鎖。ダイヤは大幅に乱れ、約95便、1万5000人に影響を及ぼした。

 人身への被害がなかったのは幸いだった。だがそれで済ませるわけにはいかない。機体の安全点検に抜かりはなかったか。事故原因などを徹底的に調査し、結果を速やかに公表すべきだ。

 それにしても民間機が米軍基地への着陸を余儀なくされ、およそ目的地とは遠く離れた他空港に変更を迫られるのは異常だ。遅延は最大5時間にも及んだ。

 これが単なるパンク事故ではなく、もっと重大な事故やトラブルだったらどうなっていたか。

 自衛隊機をめぐっては1985年5月、着陸直後の全日空機に離陸体勢に入った自衛隊機が接触し、全日空機のエンジン下部がもぎ取られる事故が起きた。2005年にはF4戦闘機がパンク、今回同様、滑走路が閉鎖された。

 那覇空港は、沖縄観光の象徴であるほか、県民の生活路線、さらには産業経済活動に欠かせない基盤、島しょ県沖縄の「ライフライン」である。

 那覇空港の「軍民共用」は既に限界に達している。沖縄の玄関口の安全性と利便性を確保し、民間専用空港を実現するための議論を一段と加速する必要がある。

 空路の安全確保なくして沖縄の振興は考えにくい。まして県政の一大目標である「年間観光客1千万人」など絵に描いたもちに終わりかねない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136186-storytopic-11.html

ホワイトビーチ、米原潜が30分停泊 無念の死、記憶後世へ/宮古島市に「慰安婦」祈念碑 寄港中止を国に要請/原潜放射能漏れ 「集団自決」訴訟結審/「玉砕命令」で新証言 嘉手納基地、洗機場、月内にも移転 など  沖縄タイムス関連記事・社説(9月7日から10日) 

2008年09月07日【朝刊】 政治 

米原潜が30分停泊 ホワイトビーチ

文科省 放射能は平常値

 米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦シティ・オブ・コーパス・クリスティ(六、〇八二トン)が六日午後一時五十分、うるま市勝連平敷屋の米軍ホワイトビーチ沖合で停泊し、同二時二十分、出港する様子が確認された。文部科学省から県に入った放射能の調査結果は平常値だったという。

 グアムが母港のシティは午後一時すぎ、ビーチ沖合に姿を見せ、港内を航行。沖合停泊した後、タグボートから補給を受けた。

 県基地対策課によると、外務省から五日、二十四時間前通報として「午後二時に入港し、同三時に出港する」という連絡があったという。目的は補給・維持。

 原潜の寄港は八月十三日以来、今年に入って二十八回目で、年間最多寄港数を再び更新した。県内へは復帰後三百六回目の寄港。

 又吉進基地対策課長は同省日米地位協定室に対し五日、「県民はヒューストンの放射能漏れで安全管理に不信感をもっている。安全確認を徹底し、寄港は最小限にとどめてほしい」と求めたほか、寄港回数増加の理由をあらためてただした。

 県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)は八、九の両日に上京し、日米両政府に対し「安全が確認されない限り、本県に寄港させない」ことなどを求める。

改善ないと抗議

知念うるま市長

 知念恒男うるま市長は「安全確認をはじめ、市の要望がまったく改善されていない。すべての原潜寄港に反対する」と抗議した。同市は五日に沖縄防衛局などに対し、米原潜入港の中止を申し入れたばかりだった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-07-M_1-001-1_002.html

 

沖縄タイムス 2008年09月07日 社説 

[「普天間」知事声明]

まだ説明が不十分だ

 県知事が自らの考え方を県民に説明することは大いに結構なことだ。

 県民が県の施策や方針を知る機会になったり、よりよい地方自治の在り方を考えるきっかけになり得る。ただ、十分で詳細な説明がなければ、真意は伝わらない。

 仲井真弘多知事は五日、「普天間飛行場の移設に関する県の考え方―県民のみなさまのご理解とご協力を求めて」と題する声明を発表した。県議会が六月定例会で「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議」を可決したことに対し、「私の姿勢が十分に理解されていない」ことが理由という。

 知事は声明で(1)普天間飛行場を名護市の辺野古に移す計画は、キャンプ・シュワブに施設をつくるもので、飛行場の面積や滑走路の長さが縮小されるなど、決議でいうような「新しい基地の建設」とは性格が異なる(2)県外や国外へ移すことは理想論で、日米両政府や県、名護市等の間で行ってきた検討の積み重ねを振り出しに戻すようなもの。その結果、普天間の危険な状態がそのまま放置される―などと主張する。

 その上で、(1)普天間飛行場の三年目途の閉鎖状態(2)代替施設の沖合移動―の実現を「現実的な選択肢」としている。

 声明は仲井真知事の従来の姿勢を示したものだが、疑問は多々ある。まず、今、キャンプ・シュワブに千八百メートルの滑走路を二本備えたヘリ基地はない。そこに一部とはいえ、沿岸部を埋め立てて造られる基地を、「新しい基地の建設とは性格が異なる」と言うのは納得できない。

 基地の県外・国外移設を「理想論」と切り捨てる考えも理解に苦しむ。戦後、米軍基地が集中し、過重な負担を強いられ続けてきた沖縄県内に、飛行場を移設しようとすることに無理があることは明らかだ。

 一九九九年に普天間飛行場代替施設の県内移設を容認した稲嶺恵一知事は「十五年使用期限」と「軍民共用」を受け入れの条件にし、それがだめなら県外移設だ、とあえて高いハードルを日米政府に突きつけた。

 「理想論」だからと言って退けるのではなく、現実を踏まえ理想に近づけるための努力も重要ではないか。

 仲井真知事は、普天間飛行場の閉鎖や代替施設の沖合移動に政府の理解が進んでいるとし、「危険性除去について米側と調整することも必要」「沖合移動も念頭に早めに決着したい」といった官房長官発言を列挙しているが、これも首をかしげざるを得ない。

 日米政府は現行計画が最善との方針を変えていないし、官房長官発言に「閉鎖」や「沖合移動」などの具体的な文言はない。

 そもそも、沖合建設そのものが、これまでにいくつも検討され、環境に与える影響をクリアできず計画変更を余儀なくされた経緯があるではないか。

 知事は、「沖合移動」による環境への詳細な影響についても十分に説明すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-07-M_1-005-1_001.html

 

2008年09月08日【夕刊】 社会 

無念の死 記憶後世へ/宮古島市に「慰安婦」祈念碑

 【宮古島】太平洋戦争中に、朝鮮から強制連行され、無念の死をとげた「従軍慰安婦」たちを悼み、戦後も苦難に満ちた人生を生きる元慰安婦らの記憶を後世に伝えようと、宮古島市上野野原で七日、慰安婦の祈念碑が建立された。除幕式で参加者らは戦争のない世界の実現へ向け「平和運動の出発地にしよう」との思いを新たにした。(伊集竜太郎)

 碑文は「慰安所」が沖縄には百三十カ所、宮古島には少なくとも十六カ所あったことなどを記録。「彼女たちの記憶を心に刻み次の世代へ託します」と誓った。

 慰安婦の出身国十一カ国と、戦禍の中で女性への性的虐待があったベトナムの計十二カ国の言語で平和希求の思いが書かれた。三つの祈念碑のうち、中央の碑には慰安婦が好きだったという桔梗の花が刻まれた。

 除幕式には、中国に強制連行された韓国出身の元慰安婦、朴順姫さん(85)や慰安所の存在を証言した住民らも参加。朴さんはアリランの唄を涙を流しながら歌い、「安らかに眠ってください」と、アリランの碑へ献花した。

 昨年、日韓の合同調査団が同市内で、地元住民から慰安婦の置かれた状況などを聞き取りした。

 証言者の与那覇博敏さん(75)が被害の事実を後世に伝えようと祈念碑建立を提案、所有地を無償提供した。

 今年二月に市民や日韓研究者らで「宮古島に日本軍『慰安婦』の祈念碑を建てる会」(尹貞玉、高里鈴代、中原道子共同代表)を発足。十二カ国から約六百の個人・団体が賛同し、碑建立に取り組んだ。

 洗濯帰りの慰安婦が休んでいたのを与那覇さんが目撃した場所の目印として、祈念碑の手前に「アリランの碑」と名付けた岩が置かれた。

 与那覇さんは「小五のころ、この近くに日本軍の慰安所があった。その事実を知っている者として後世へ残す責任の重さを感じている。この場所を平和運動の出発地として活動していく」と決意を語った。祈念碑横に「平和の森」を五年以内に建設予定という。

 参加者は当時、慰安婦が口ずさんでいたというアリランの唄を歌い、桔梗の花を献花して、故人の霊を慰めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-08-E_1-007-2_001.html

 

2008年09月08日【夕刊】 社会 

小湾地主会 前会長らを提訴/基金不正流用

 浦添市の字小湾共有地地主会の基金が、県出資のトロピカルテクノセンター(TTC)前社長、比嘉実氏に融資の形で不正に貸し付けられていた問題で、同地主会は八日までに、地主会の同意を得ることなく基金を流用したとして、同会の宮平忠一前会長と宮城安次郎元副会長に、未返済になっている計一億五千五百三十万円余りの支払いを求める損害賠償訴訟を那覇地裁に起こした。七月に開催された同会の定期総会で、提訴の方針が満場一致で承認されていた。

 比嘉清同地主会長は「比嘉実氏の責任も今後問うことになるだろう」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-08-E_1-007-2_003.html

 

2008年09月09日【朝刊】 政治 

米、事前公表認めず/原潜寄港情報

「安全上の理由」堅持/関係自治体の解除要請も

 【東京】米原子力潜水艦ヒューストンの冷却水漏れ事故を受け、原潜寄港地を抱える国内の自治体が解除を求めている寄港情報の事前公表中止措置について、米側が今年八月以降も、「安全上の観点から不公表を維持したい」と外務省に説明していることが八日、分かった。

 事前通報制度は、米原潜の国内への寄港の是非が議論された一九六四年、米側自らが、寄港の二十四時間前に到着予定時刻を通知することなどを声明で約束。以来、事前の寄港情報は報道機関などに公表されてきた。

 しかし、二〇〇一年九月十一日の米同時多発テロ後、米側は基地警備の強化を目的に、寄港に関する事前通報の公表を控えるよう関係自治体に要請。これを受けて、自治体は事前に寄港情報を受けながらも公表は控えている状況だ。

 県内でも同年九月二十一日から報道機関などへの非公表措置が取られたまま、約七年が経過している。

 だが、ヒューストンの冷却水漏れ事故を受けて、今年の八月五日に金子原二郎長崎県知事が事前公表中止措置の解除を要請した。外務省は複数回にわたって米側に同県の意向を伝えたものの、米側は依然として不公表維持の方針を堅持しているという。

 寄港情報の事前公表中止措置をめぐっては、国会などでも「基地警備が平常化し、市民への基地開放も再開している中で、必要性や合理的な理由がない」などの指摘がされている。(島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-09-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月09日【朝刊】 社会 

「集団自決」訴訟 控訴審第2回弁論/きょう結審の可能性

沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、書籍に命令を出したと記されて名誉を棄損されているとして、座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎氏(73)と発行元の岩波書店に、出版の差し止めや損害賠償などを求めている訴訟の控訴審の第二回口頭弁論が九日、大阪高裁(小田耕治裁判長)で開かれる。

 原告の戦隊長側は、今年三月の一審・大阪地裁判決が戦隊長命令を断定しなかった一方で、「沖縄ノート」の増刷・販売を継続しているのは違法と主張。座間味島の「集団自決」の生存者が、梅澤裕氏による命令を否定する証言を新たにしているとして、一審判決の取り消しを求めている。

 被告の大江・岩波側は、隊長命令があったことには合理的な資料や根拠があるとして、出版の正当性を認めた一審判決は正当と反論。梅澤氏による命令を否定する原告側主張の住民証言については、これまでの証言や母親の証言と重要な部分で食い違い、信用できないと指摘している。

 大阪高裁の訴訟指揮によっては、同日の弁論で結審する可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-09-M_1-023-1_003.html

 

2008年09月09日【朝刊】 政治 

寄港中止 国に要請/原潜放射能漏れ

軍転協 防衛省は困難視

 【東京】米原子力潜水艦ヒューストンの冷却水漏れ事故を受け、県と基地所在二十七市町村長でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(会長・仲井真弘多知事)の要請団は八日、防衛省や在日米国大使館などを訪ね、「原潜は安全が確認されない限り本県に寄港させないこと」など六項目を要請した。

 団長の儀武剛金武町長によると、防衛省で対応した山内正和地方協力局次長は、県内への寄港中止要請を困難視したという。儀武町長は要請後、「残念だ。再度、強く要請していきたい」と語った。

 要請団は、寄港に際して報道機関などへの事前公表が中止されている措置の解除や、ホワイトビーチ桟橋に設置された海域の放射能を検出する機器「海水計」三基のうち、停止している一基の早期再開―なども求めた。

 九日も引き続き、在日米軍司令部や外務省に同様に要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-09-M_1-002-1_002.html

 

2008年09月09日【朝刊】 社会 

米、軍事制約拒む/原潜放射能漏れ・日本対応に介入

寄港条件 空文化に懸念

米国の原子力艦船の日本寄港をめぐり、50メートル内の放射能探査は行わないとの日米了解や、高放射能値に関する国会答弁への介入を示す1970年前後の米側公文書が相次いで見つかった。原子炉の冷却水放出の中止など安全管理の徹底を強く求めた日本側が、米側の軍事優先の姿勢に妥協してきた構図が明らかになった。専門家は「過去の文書として片付けてはならない」と指摘。今年発覚した原潜放射能漏れ、原子力空母火災で、米側の発表に任せきりだった政府の対応について「原潜の国内寄港の条件が、国民の知らないうちに、なし崩しにされている可能性がある」とみる。(嘉数浩二)

 「原子力艦船が日本の港にいる間、(原子炉)冷却水放出を決して行わないというのは技術上、作戦上、実行不可能」(六八年駐日米大使公電)、「日本寄港の一時中止が公表されたら世界中の原子力艦入港に深刻な困難がもたらされる」(同年、国務長官公電)。

 六八年五月、佐世保市の米原潜付近で放射能が検出された問題をめぐる日米交渉で、米公文書に記された米側の認識だ。日米関係史研究者の新原昭治氏が二〇〇七年までに入手した。

 文書では、日本側が世論の反発を背景に五カ月間「冷却水の放出中止」を求めたことに、米側が軍事上の制約を受ける「約束」を拒否した経緯が浮き彫りになっている。

 当時の三木武夫外相は、寄港中止も辞さない姿勢で交渉したが、結局、同年十月二十二日に公表された日米「会談覚書」に「放出中止」の文言は盛り込まれず、「米国は不安解消に最善を尽くす」の表現で決着した。

68年交渉は歯止め

 日本政府は一九六四年、米原潜の国内寄港について(1)冷却水放出は例外的で通常は行わない(2)放射性廃棄物の厳重管理(3)責任ある環境調査―などの条件付きで容認した。

 軍事評論家の前田哲男氏は、当時の技術でも冷却水を出さないことは十分可能だったとし、「非常事態に備え、軍事的制約を断固拒否する米軍の姿勢は、現在まで一貫している」と分析。日本側が条件の厳格化を求めた六八年交渉について、「対等でない日米安全保障体制では、黙っていれば米軍の都合が拡大される。強い姿勢を見せたことで、一定の歯止めになった」とした。

強まる従属性象徴

 一方で、今年の原潜事故で米側に安全管理など具体的な対応を求めなかった政府の姿勢を批判。「積み重ねた条件、政府間合意がほごにされている可能性がある以上、政府は、外交交渉で問いただす義務がある」。ホワイトビーチへの寄港が激増している状況を挙げ、「住民の安全に直結する問題で何も行動しない。二〇〇一年テロ以降の米軍戦略に完全に組み込まれ、日本の従属性が極まった事態を象徴している」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-09-M_1-023-1_005.html

 

2008年09月10日【朝刊】 社会 

「集団自決」訴訟結審/「玉砕命令」で新証言

大阪高裁/判決10月31日

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、著作に命令を出したと書かれて名誉を傷つけられているとして、座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長とその遺族が、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎氏(73)と発行元の岩波書店に、出版の差し止めや慰謝料などを求めている訴訟の控訴審は、大阪高裁(小田耕治裁判長)で九日に開かれた第二回口頭弁論で結審した。判決は十月三十一日午後二時に言い渡される。

 被告の大江・岩波側は「『米軍が上陸したら軍の足手まといにならないために、村の幹部は住民を玉砕させるよう軍から命令されていた』と、当時の座間味島の郵便局長が話していた」とする、元村議会議員の垣花武一さん(78)の「新証言」を証拠提出した。

 座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)の命令を否定する根拠の一つとして、原告側が提出していた座間味島住民の証言は、本人のこれまでの証言内容や実母を含めた他の体験者の証言と、重要な部分で大きな食い違いがあるとして、信用性を否定した。

 垣花武一さんの証言について原告の元戦隊長側は、これまで語る機会があったのに、沖縄県史や座間味村史などの証言録には一切記録されておらず、内容の重要性に照らして不自然と反論。座間味島住民の証言については、新しい歴史教科書をつくる会の会長で拓殖大教授の藤岡信勝氏の「意見書」を提出、被告側の指摘に反論した。

 同日の弁論で被告代理人秋山幹男弁護士は「座間味島や渡嘉敷島に駐留していた日本軍は、米軍上陸の際は捕虜になることなく、住民に自決するよう指示・命令していたことは明らか」と指摘。最高指揮官だった戦隊長の意志に基づかないことはありえず「集団自決」は隊長命令によるものというべきである、と述べた。

 原告代理人の徳永信一弁護士は、「集団自決」は米軍の無差別攻撃や皇民化教育のほか、家族愛や戦陣訓、いざという時のために渡された手りゅう弾などの複数の要因があり、軍命令という単純な理解はできないと主張した。

 一審大阪地裁はことし三月、「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘。請求を棄却した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-10-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月10日【朝刊】 社会 

軍命記述へ決意新た/支援者集会

「集団自決」控訴審結審/政治目的提訴に反発/原告新証言も批判

【大阪】「『自決』は軍命以外にはない」。沖縄戦をめぐる「集団自決」訴訟控訴審が結審した九日、被告側の支援者らは大阪市内で集会を行い、決意を新たにした。第二回弁論の中で原告側が、提訴の狙いは、名誉棄損を求めるだけでなく「政治的な目的もある」と発言したことにも反発。「もう一度原点に立ち返り、昨年の県民大会決議の実現を目指そう」と声を上げた。

 岩波書店編集部長の岡本厚さんは、原告側が軍命を否定するために持ち出した座間味島住民の新証言について「ほかの島民や昔の自分の証言と矛盾している。つじつまを合わせるためにうそを重ねている」と批判。

 一橋大学名誉教授の中村政則さんも「証言の重要性に気づき、自分たちの考えに合う証言を探したが見つからず、『新証言』にこだわったのではないか」と分析した。

 一方、原告側が弁論の中で、今回の提訴には、軍命で「集団自決」は起きたとする考え方を放置させない、という政治目的を併せ持っていると“表明”したことへの批判が聞かれた。

 社会科教科書懇談会の石山久男委員長は「(原告側は)検定で軍命の記述が削除されたことで目的の一つが達成されたことを認めた」と驚きを隠さなかった。

 沖縄の「平和教育をすすめる会」の山口剛史事務局長は、教科書検定意見撤回を求める県民大会から一周年を迎える九月二十七日に那覇市内で約二百人規模の集会を計画していると説明。運動の盛り上がりの必要性を訴えた。

 教科書記述の再訂正申請に向けた動きについて、教科書執筆者の坂本昇さん(東京都)は「教科書会社は文部科学省との関係をこれ以上悪化させなくないという思いがある。早めに取り組みたいが、どの程度できるか各社で検討中」と難しい現状を明かした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-10-M_1-029-1_001.html

 

2008年09月10日【朝刊】 政治 

外務省、前向き回答なし/原潜放射能漏れ

軍転協要請「思い伝わらず」

 【東京】米原子力潜水艦ヒューストンの冷却水漏れ事故を受け、県と基地所在二十七市町村長でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(会長・仲井真弘多知事)の要請団は九日、外務省や在日米軍司令部を訪ね、安全が確認されるまでの原潜寄港中止など六項目を要請した。

 しかし、前向きな回答はなく、団長の儀武剛金武町長は「われわれの思いが全然伝わっておらず、不満を感じる」と憤りを見せた。

 儀武町長によると、外務省で対応した羽田浩二北米局審議官は、事故について「遺憾だ。二度と起こらないような体制を取っていく」と述べつつ、原潜寄港については「米側の最終報告で安全性が再確認された」との立場を示したという。

 儀武町長は県内への原潜寄港回数増加理由も尋ねたが、羽田審議官は「運用に関することで明らかにされていない」と述べるにとどめたという。寄港情報の事前公表中止措置の解除については「(米側が)まだそういう状況にない」と述べ、米側が拒否していることを説明したという。

 在日米軍司令部ではバン・サイド第五部副部長(中佐)が対応したが、「関係機関、日本政府と調整したい。申し入れについては上に報告する」と回答しただけだった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-10-M_1-002-1_005.html

 

2008年09月10日【朝刊】 社会 

[解説]一審判決の維持が焦点

「集団自決」訴訟の控訴審は、新たな証人調べをすることなく、二回の弁論で結審した。十月三十一日の判決は、住民の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の深い関与を認め、座間味と渡嘉敷の両戦隊長による関与についても、「十分に推認できる」とした一審・大阪地裁判決の枠組みが、どれだけ維持されるかが焦点となる。(社会部・粟国雄一郎)

 控訴審で原告の元戦隊長側は、軍命令の記述を容認していた文部科学省が、直接的な軍命令を否定する立場に変わったことが、昨年十二月の一審終結後に確認されたと強調。一審判決が軍命令を容認していた旧来の文科省の立場を判断の根拠にしているとして、「判決は誤りだ」と訴えている。

 この主張が認められれば、教科書会社から訂正申請が出された後も、文科省が直接的な軍命令を否定する立場のままであることが、司法の場で認定されることになる。原告側にとっては、訴訟の提起をきっかけに、それを引き出すことが何よりもの成果だ。

 実際に原告側の代理人は、九日の弁論の口頭陳述で、同訴訟が原告個人の名誉回復とともに、政治的な意図を併せ持つことを認め、教科書から軍の強制性が削除された二〇〇六年度の教科書検定を「大きな成果の一つだった」と述べた。

 住民の「集団自決」には、皇民化教育や戦陣訓、日本軍による手榴弾配布などさまざまな要因があり、軍命令だけに単純化できないという原告側の主張は、同じ論理で「集団自決」における日本軍の存在と役割をぼかした〇六年度の検定にも重なる。

 被告の大江・岩波側の代理人は口頭陳述で、「この訴訟が、住民は国を守るために美しく死んだとして、『集団自決』を殉国美談にしたい人たちに利用されないように」と訴えた。原告の単純な名誉回復にとどまらない同訴訟の背景を、大阪高裁がどう読み解くかも判決の焦点となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-10-M_1-028-1_001.html

 

2008年09月10日【朝刊】 社会 

棄却求め高裁に署名提出/市民団体、累計2万3000人分

【大阪】「集団自決」訴訟の被告側を支援する三つの市民団体は九日、控訴棄却を求める全国からの署名千四百三十九人分と要請書を大阪高裁に提出した。署名数は累計で二万三千六十四人分に上っている。

 要請は、沖縄戦研究の成果と体験者の悲痛な証言を踏まえ、控訴人の請求を棄却するよう求めた。

 提出したのは、大阪の「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会」、東京の「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」、沖縄の「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-10-M_1-028-1_006.html

 

2008年09月10日【夕刊】 社会 

洗機場 月内にも移転 嘉手納基地

 

シャワーを噴射させP3C対潜哨戒機を洗う洗機場=2006年9月9日午前6時ごろ、米軍嘉手納基地

新施設運用開始で/宮城町長「次は駐機場」

 米軍嘉手納基地内で移転が進められている大・中型機用新洗機場の運用が今月中にも始まる見通しであることが十日、分かった。施設は完成しており、近く日米合同委員会で米側に引き渡し手続きが行われる。同施設の移転が実現することについて、地元は「長年の基地被害がようやくひとつ軽くなる」と受け止めた。

 県文化環境部の知念建次部長らが同日、米軍嘉手納基地や普天間飛行場周辺の航空機の騒音軽減を要請したのに対し、沖縄防衛局の赤瀬正洋企画部長が洗機場移転について説明した。

 現洗機場は嘉手納町屋良の住宅地に隣接し、騒音のほかに大量の水しぶきが飛散する被害が発生。嘉手納町は長年にわたり早期移転を求めてきた。

 同施設は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、隣接する海軍駐機場とともに沖縄市側への移設が決まっていた。しかし、移設完了が二〇一〇年度以降となるため、同町が駐機場と切り離して洗機場の移設を前倒しで実施するよう求めていた。

 宮城篤実嘉手納町長は「駐機場移転がなかなか進まない中、せめて洗機場だけでも住宅地から遠い町域内の別の場所へ移そうと現地レベルで交渉した成果だ」と歓迎。引き続き駐機場の早期移転を政府に働きかけていく方針を強調した。

 洗機場近くにある栄光幼稚園の池原厚子園長(64)は「恒常的に米軍機のエンジン音が響き、子どもたちにとっても大変な負担だった。ここに来るまで何年かかったことか」とほっとした口調で話した。

 県道74号を挟んで洗機場と向かい合う同町東区は水しぶきで洗濯物がぬれる被害に悩まされてきた。島袋敏雄区長は「ぜひ移動してほしかった。地域にとって負担軽減は良いことだ」と歓迎した。

 自動車販売会社従業員、仲本兼作さん(35)は「車がぬれる被害は確実に減る。でも、スペースが空いたことで大型機がエンジン調整しないか、不安もある」と懸念した。

 県の知念部長らは要請の中で、(1)騒音規制措置の厳格な運用(2)環境基準を達成するよう騒音軽減措置―などを同局が米側に働き掛けるよう求めた。

 赤瀬部長は、防衛局が普天間飛行場周辺で先月から今月にかけて実施した航跡観測調査に言及し「結果はまだ出ていないが、地元にも伝えたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-10-E_1-005-2_001.html