月別アーカイブ: 2007年5月

沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報・社説(5月26日?30日)

2007年5月26日(土) 夕刊 1面
沖国大ヘリ墜落 捜査終結
 宜野湾市の沖縄国際大構内に二○○四年八月、米軍普天間飛行場所属の米海兵隊の大型輸送ヘリコプターが墜落、米兵三人が重軽傷を負った事故で、県警が航空危険行為処罰法違反の疑いで被疑者不詳のまま書類送検する方向で最終調整していることが二十六日、分かった。県警は八月の時効成立をにらみ、六月下旬にも処理する方針。捜索や差し押さえに米側の同意を必要とする日米地位協定が壁となり、容疑者を特定できないまま捜査は終結する見通しだ。
 事故をめぐっては日米両政府が原因究明のため、日米合同委員会の事故分科委員会を事故直後から開催。米兵の整備員が後部回転翼を固定するボルトにピンを付け忘れたため、飛行中にボルトが緩んで外れ、回転翼が制御不能になり墜落したと結論付けている。
 一方、県警は事故当日、同法違反容疑で現場検証の令状を取ったが、米軍が地位協定に基づき拒否。検証を実施できたのは米側がヘリの残骸など機体すべてを撤去した六日後だった。整備員ら関係者の事情聴取もできず、捜査は当初から難航していた。
 事故は○四年八月十三日午後、訓練のため普天間飛行場を離陸した米軍のCH53D大型輸送ヘリが、隣接する同大構内に墜落し炎上。学生や住民にけが人はなかったが、近隣の家屋などにヘリの部品やコンクリート片が飛散し、ヘリが激突した同大の校舎壁面も焼け焦げた。
 事故後、県内では普天間飛行場の閉鎖や返還を求める声が一段と強まった。
 昨年五月、日米両政府は同飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部移設に合意した。
法律調べ見解
県幹部
 沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故で、県警が被疑者不詳のまま書類送検し、捜査を終結する方針を固めたことについて県幹部は二十六日、「日米地位協定や刑法など法律面でのことを調べた上でないとコメントできない」と述べ、現時点での見解表明は控える意向を示した。
[ことば]
 日米地位協定 日米安保条約に基づき1960年に発効。在日米軍、軍人らの地位、基地の管理や運用について定める。23条で「日米両国は在日米軍の財産の安全を確保するため必要な措置を取ることについて協力する」と規定。協定実施に伴う刑事特別法では「米軍財産の捜索、差し押さえ、検証は米軍の同意を得て行う」としている。米軍ヘリ墜落事故では、県警が検証令状を取り米側に同意を求めたが、米軍は協定を根拠に拒否し、県警を交えず事故機を検証。日本側に協定見直しを求める声が高まった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705261700_01.html

2007年5月26日(土) 夕刊 5面
県警にじむ悔しさ/ヘリ墜落捜査終結
初動阻んだ現場封鎖
 「日本で起きた事故は日本の警察が責任を持って解明する」と、米軍ヘリ墜落事故の捜査を続けてきた県警。被疑者不詳のまま書類送検し、捜査が幕引きとなる方向が強まったことに、ある幹部は「時効まで粘り強く米側に協力を求めたいが、劇的な変化がなければ被疑者特定は困難だ」と悔しさをにじませる。
 二○○四年八月十三日の事故直後、県警の捜査員五、六人が現場に駆け付けた。簡単な捜査はできたものの、米軍はすぐに現場を封鎖。その後は事故機体の検証や米軍関係者の事情聴取もできなかった。ようやく検証に着手したのは、米軍が機体を持ち去った六日後。県警側には乏しい証拠しか残らなかった。
 事故の翌月、米海兵隊がまとめた報告書は、機体の整備を担当していた二等軍曹と伍長らのミスを指摘。県警は事情聴取のため米側に再三協力を求めてきた。
 いくつかの関係書類は届いたが「名前も階級も判明しない段階にとどまる」(捜査関係者)という。
安保体制の現実 思い知らされた
沖国大・来間教授
 米軍ヘリ墜落後、沖縄国際大学では来間泰男教授らが同大の教員約百二十人に呼び掛け、毎月、墜落した日時と同じ十三日午後二時から、米軍ヘリ墜落事故を考える会を開いている。
 県警が被疑者不詳のまま書類送検し捜査が終結する見通しであることについて来間教授は「事故後、日米地位協定に阻まれ県警は現場検証や米兵の事情聴取など捜査ができなかった。その米軍の壁を今回も同じように思い知らされた。あらためて日本の置かれている日米安保体制の現実を突きつけられた思いだ」と、悔しさをにじませた。
現場住民も不満
 事故現場の宜野湾市宜野湾区の仲村清自治会長は「事故の原因や容疑者をはっきりさせてほしかった。事故の後もヘリは区の上空を飛んでおり、また事故が起こるんじゃないかという心配の中で生活している」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705261700_02.html

2007年5月27日(日) 朝刊 21面
「うやむや」住民落胆/沖国大ヘリ墜落・書類送検
 二〇〇四年八月の米軍ヘリの沖縄国際大墜落事故で、県警が航空危険行為処罰法違反の疑いで被疑者不詳のまま書類送検する方針であることが二十六日分かり、地域住民や専門家から疑問の声が上がった。「同じことが起きてもまたうやむやになる」「現実は何も変わらない」といった落胆も聞かれた。
 事故後、県警は米軍に事故機を含めた現場検証を求めたが、「公務上の事故」や「軍事機密」などを理由に拒否され、独自の捜査権を行使できなかった。
 事故発生時、自宅にコンクリート片が飛び込み、乳児を抱えて逃げた中村桂さん(34)は「被害を受け続けているのは住民なのに、捜査が終わってしまう。何も変わらない現実を再び突き付けられた」と話す。「米軍はただの航空機事故としかとらえていないし、ヘリは住宅地上空で飛び続けている。根本的に日米地位協定を変えないと同じことの繰り返しだ」とため息を漏らした。
 事故にかかわった防災関係者の男性は「米軍は現場の土まで持って帰った。日本国内なのに火災原因を調査する権利を執行できなかった」と振り返る。「米軍は騒音防止協定などの約束事は守らないのに、地位協定は持ち出す。再び事故が起きても、うやむやになってしまう」と焦燥感をにじませた。
 地位協定に詳しい法政大学の本間浩教授(国際法)は「住民の安全確保や損失の回復より、米軍の軍事機密が優先されているのが大きな問題」と指摘。事故を教訓に日米両政府が米軍機事故の対応を定めたガイドラインを策定したことを「一定の前進」と評価しつつも、「これで問題が終わったという雰囲気になっている」と懸念する。
 本間教授は今後の対応として「実際にどういう問題点があったかを検証し、地元の警察や自治体が具体的な改善要求を政府に示し続けることが重要だ」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705271300_05.html

社説(2007年5月27日朝刊)
[ヘリ墜落捜査終結]
不平等過ぎる地位協定
被疑者、原因も分かるのに
 宜野湾市の沖縄国際大学構内に二〇〇四年八月、米軍普天間飛行場所属の米海兵隊の大型輸送ヘリコプターが墜落、米兵三人が重軽傷を負った事故で、県警は航空危険行為処罰法違反の疑いで被疑者不詳のまま書類送検し、捜査を終結する方針を固めた。
 「被疑者不詳のまま」とは、容疑者を特定できないことで、県警は八月の時効成立をにらみ、六月下旬にも処理し捜査を幕引く見通しだ。
 被疑者が米兵であるのは明らかである。にもかかわらず、その氏名さえも特定できずに起訴できなければ航空危険行為処罰法違反の罪には問えないことになる。
 事故の翌月、米海兵隊がまとめた報告書は、機体の整備を担当していた二等軍曹と伍長らのミスを指摘。日米合同委員会の事故分科委員会は、整備員が後部回転翼を固定するボルトにピンを付け忘れたため、飛行中にボルトが緩んで外れ、回転翼が制御不能になり墜落した―と結論付けている。
 被疑者も事故原因も分かっているのに、米側が被疑者の氏名を明らかにしないために、捜査がうやむやのまま終わってしまうのは腑に落ちない。
 何よりも、墜落現場は基地の外の民間の大学敷地であり、「また、事故が起こるのでは」と不安を抱いている住民に情報開示されないのは、県民軽視としか言いようがない。
 今回の事故では、学生や住民にけが人はなかったが、近隣の家屋などにヘリの部品やコンクリート片が飛散し、ヘリが激突した同大の校舎壁面も焼け焦げた。
 基地の外であり、日本の警察が責任を持って捜査するのは当然である。さらに、事故によって米側は日本側の財産に被害を与えており、日本側は被疑者を日本の裁判にかけて罰することができる。その手続きとしては、日本側が事故を調べて起訴状を作ることが不可欠だ。
 だが、米側は事故から三年になろうとしても、事故機の搭乗員や整備員の氏名などを明らかにせず、日米地位協定を盾に日本側の捜査を「拒否」している。
米軍の組織として責任残る
 地位協定二三条は「日米両国は在日米軍の財産の安全を確保するため必要な措置を取ることについて協力する」と規定。協定実施に伴う刑事特別法では「米軍財産の捜索、差し押さえ、検証は米軍の同意を得て行う」と定めている。
 県警は事故当日の八月十三日、同法違反容疑で現場検証の令状を取り米側に同意を求めた。しかし、米軍は現場を封鎖し、県警の現場検証や宜野湾市消防本部の調査などを拒んでいる。
 県警がようやく検証に着手できたのは、米軍がヘリの残骸など機体のすべてを撤去した六日後で、乏しい証拠しか残らなかったという。
 その後も、米側に再三協力を求めたが、整備員ら関係者の事情聴取もできず立件捜査は難航を極めた。
 捜索や差し押さえに米側の同意を必要とする日米地位協定が大きな壁となり、容疑者を特定できないまま捜査は終結する見通しだ。
 事故原因が整備員の個々の人為的ミスであったにしても、米軍には組織としての責任があるのは明白だ。整備や管理を徹底し、公共の危険を発生させたことに対し県民に誠意を示す必要がある。
 その誠意が見えない。基地外の民間地域での事故であり、本来なら県警の捜査権や大学の自治に基づく管理権が行使されるべきだが、地位協定を盾にはねつけた。日本政府も、これを容認したのが情けない。
対等独立の捜査権が必要
 これでは、民間地域における事故現場も「治外法権」であり、日本の主権が侵害されたのに等しい。復帰前の米軍占領下と変わらず、主権国家とは言えまい。
 今回の事故は、ヘリ搭乗員以外に負傷者はなく、奇跡的といえるほどに住民の負傷者はなかった。しかし、被害が住民の生命に及んでいたら、果たして日米両政府はどう対応したのか。地位協定を盾に、米軍は何をやっても許される、というわけではないはずだ。
 日米が平等な立場で事故原因を究明するための現場管理や捜査が必要である。現行の地位協定はあまりにも不平等過ぎると言わざるを得ない。
 運用改善ではなく、「対等独立の立場に立った刑事裁判権および捜査権」を確立すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070527.html#no_1

社説
ヘリ墜落捜査終結・「治外法権」こそ終止符を
 宜野湾市の沖縄国際大学構内に2004年夏、米海兵隊の大型輸送ヘリコプターが墜落炎上した事故で、県警が被疑者不詳のまま書類送検する方向で最終調整していることが分かった。米側が日米地位協定を盾に捜査協力を拒み続けたことが大きいが、責任の所在を明らかにできないまま捜査が幕引きになれば、県民にとって屈辱以外の何物でもないだろう。
 米国に対し、占領下の治外法権のような状態をいつまでも許す日本は主権国家だと胸を張れまい。地位協定の「運用の改善」が非常にあいまいで、限界があることは繰り返し指摘してきた。もう待てない。日本政府が県民の生命と財産を守る基本に立つなら、屈辱的な状態にこそ終止符を打つべきである。
 それにしても不可解だ。ヘリ墜落の現場写真もあるし、搭乗していた海兵隊員3人が重軽傷を負ったことも分かっている。事故原因を特定する米側の報告書も日米合同委員会に出された。それなのに肝心の事故機の整備士、操縦士らが分かっていない。墜落したのは米軍ヘリではなかった―とでも言うのだろうか。
 米国は2001年の同時多発テロで、ニューヨークの超高層ビルやワシントンの国防総省などに国籍不明の航空機が突っ込んだ際、国の威信にかけて捜査し、被疑者を特定、公表した。至極当然の行為だ。ところが、その当然の行為を沖縄では認めないという。他国の罪は徹底して裁き、自国の罪はうやむやにする。そんな勝手が許されていいのか。それを容認する日本政府の姿勢も問われよう。
 日本政府の腰が引ける理由に、地位協定の存在がある。日米安保条約に基づき1960年に発効した協定で、23条で「日米両国は在日米軍の財産の安全を確保するため必要な措置を取ることについて協力する」と規定。協定実施に伴う刑事特別法では「米軍財産の捜索、差し押さえ、検証は米軍の同意を得て行う」としている。
 沖国大でのヘリ墜落事故は、まさにこれが適用された。検証令状を取り同意を求めた県警に対し、米側は拒否、事故機は県警を交えずに検証が行われた。協定の運用改善で導入された米側の「好意的考慮」などあってなきに等しく、期待できない証しであろう。
 状況は厳しい。事故から3年近く経て、航空危険行為処罰法違反の時効日が迫っている。米側に協力する考えはないようだ。
 しかし、米軍の財産の安全は確保しても、県民のそれは確保しないというのはおかしい。ここは日本であり、沖縄である。治外法権は筋違いであり、それがまかり通るようでは困る。地位協定の改定は県民の譲れない要求だ。
(琉球新報 5/28 9:46)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24130-storytopic-11.html

2007年5月28日(月) 夕刊 5面
沖縄市議会 F22未明離陸 抗議決議可決
 【沖縄】米軍嘉手納基地に一時配備されていた米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター十機が、米本国に帰還するため十日未明に離陸を強行したことに対し、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は二十八日午前の臨時会で、未明離陸の禁止を求める抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705281700_02.html

2007年5月29日(火) 朝刊 1面
撤回意見書 相次ぐ/集団自決で県内議会
 文部科学省の検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除された問題について、検定意見の撤回を求める意見書を可決する動きが県内の市町村議会で広がっている。
 十四日の豊見城市を皮切りに二十八日までに那覇市、浦添市、糸満市、沖縄市、うるま市、北谷町、与那原町、南風原町、恩納村、渡名喜村の十一市町村議会が意見書を可決した。
 また、座間味村が二十九日、久米島町が六月四日、中城村が五日、臨時議会を開き、意見書案を採決する。
 今帰仁村も五月二十九日に議会運営委を開き、それを踏まえ同日にも臨時会を開く方針だという。
 このほか、名護市や南城市など十六市町村議会が臨時会や六月定例会での意見書の提案が決まっていたり、提案の方向で議論が進んでいる。
     ◇     ◇     ◇     
渡名喜議会も意見書
 【渡名喜】教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与した記述が高校歴史教科書から削除された問題で、渡名喜村議会(上原睦夫議長)は二十八日、臨時会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は首相と文科相。
 同議会は「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による命令、強制、誘導なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。「この事実がゆがめられることは悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられてきた県民にとって到底容認できない」と批判した。その上で「悲惨な戦争が再び起こることがないよう、検定意見が速やかに撤回されるよう、強く要請する」と結んでいる。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705291300_02.html

2007年5月29日(火) 朝刊 23面
38カ国から署名1400筆/辺野古調査
 ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹さんら環境保護団体メンバー六人が二十八日、那覇防衛施設局を訪れ、米軍普天間飛行場の代替施設建設に向けた海域現況調査(事前調査)の情報開示を求める国際署名千四百三十二筆を提出した。今月一日からインターネット上で募り、二十八日までに日本を含む三十八カ国から集まった。
 署名は「国際社会に恥じない環境アセス」や「科学的根拠、環境に対する責任、透明性」を掲げた。具体的には事前調査の資料を日英両文で公開するよう求めている。
 吉川さんは「当初三千筆を目標にしていたが、どんどん広がっており、最終的に一万筆に達するのではないか」と話し、施設局への申し入れでも「世界がこの調査に注目している」と強調した。
 WWF(世界自然保護基金)ジャパンの花輪伸一さんも「IUCN(国際自然保護連合)の勧告通り、基地建設をしない選択肢も含めてアセスを実施するなら、誰も邪魔はしない」と指摘した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705291300_04.html

2007年5月29日(火) 夕刊 5面
検定前・後の教科書比較/「集団自決」修正
 文部科学省の教科書検定で、高校歴史教科書から沖縄戦「集団自決」記述に関する日本軍の関与が削除・修正された問題で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(共同代表・高嶋伸欣琉大教授ら)が、「見本本」や「白表紙本」などを集めて独自の教科書展示会を開く準備を進めている。検定本関係の展示会が開かれるのは県内で初めてという。
 六月九日に那覇市で開かれる「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」前の開催を目指している。場所は未定。
 展示会は、仲井真弘多知事が削除・修正に「疑義」を示し、県内の市町村議会で検定意見撤回を求める意見書の採択が相次ぐ中、県民世論を高め、修正前の内容に書き換えさせる運動につなげるのが狙い。
 「すすめる会」事務局長の山口剛史琉大准教授は「検定の問題点が広く分かるようにしたい」と展示会の意義を話す。
 「白表紙本」は教科書案と呼ばれ、教科書会社が文科省の検定を受けるために作成する。「見本本」は検定に合格したもので、各学校は「見本本」の中から使用する教科書を採択する。今回、同省の修正意見によって日本軍の関与の表現が削除・修正された内容が記載されている。通常「見本本」はそのまま「供給本」となって印刷される。
 「すすめる会」は検定意見を受けた五社、七冊のすべての「見本本」と一部の「白表紙本」、同省の修正表などを展示する予定。
 「すすめる会」は今年四月、毎年全国数カ所で開催されている検定資料の公開を沖縄でも実施するよう同省に求めたが実現しなかったため、独自に「見本本」などを集め展示することにした。
 山口事務局長は「記述部分をパネルにして展示したい。希望があれば意見書を採択した議会のある自治体庁舎などでの出前展示も考えたい」と話している。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705291700_01.html

2007年5月29日(火) 夕刊 1面
座間味議会が意見書/「集団自決」修正検定
 【座間味・今帰仁】座間味村議会(金城英雄議長)は二十九日午後、臨時会を開き、文部科学省の検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除された問題について、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。また、今帰仁村議会(喜屋武治樹議長)も同日午前の臨時会で、同問題について、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。
 沖縄戦当時、座間味村には日本軍の海上特攻の任務を帯びた海上挺進隊が駐屯。米軍が上陸した一九四五年三月二十六日に座間味島、慶留間島などで「集団自決」が起こり、大勢の住民が犠牲になった。「集団自決」における日本軍の関与について、生き残った住民らが軍命や誘導の存在を証言している。
 文科省は、今回の検定で日本軍関与を削除した理由の一つに、座間味に駐屯した日本軍元隊長の係争中の裁判証言を挙げている。
 座間味村議会は「『集団自決』が日本軍による命令、強制、誘導などなしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。今回の検定意見について「係争中の裁判を理由に、一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文科省自らが課す検定基準を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や歴史的事実を否定しようとするものだ」と批判している。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705291700_02.html

2007年5月29日(火) 夕刊 5面
「住民軽視の判決」/新横田基地訴訟
 【中部】新横田基地訴訟の上告審で二十九日、二審判決が賠償を命じた結審後の損害分について算入を認めないとする判決を言い渡したことについて新嘉手納基地爆音訴訟原告団の仲村清勇団長は「住民の声をしっかり受け止めない判決で、でたらめだ。住民は結審後も、判決後も、そして将来にわたって静かになってほしいという強い思いがある。その分に対して補償が得られないというのはおかしい」と強く批判した。
 普天間爆音訴訟原告団の島田善次団長は「結審後も住民は毎日爆音にさらされている。なぜ裁判所は損害を認めないのか。住民を軽視した判決だ」と指摘した。
[解説]
損害立証、原則確認
 新横田基地訴訟の二十九日の最高裁判決は、証拠に基づき損害を算定するという大原則を超えた救済は許されないとの司法の立場を再確認した。一方で、五人中二人の裁判官が反対意見を示した事実も重く、行政側は救済策の再考を迫られたといえる。
 裁判所は当事者同士の主張、立証で損害の有無や額を決めるため、損害が継続していても、賠償額は通常、審理が終わる結審日までしか算定されず、それ以降の「将来分」は認められない。
 ただ建物の明け渡し訴訟では、実際の明け渡しまで賃料相当分の支払いが命じられるように、損害額が客観的に明確なら将来分が認められるケースもあり、今回の訴訟で住民側は同様の手法を適用すべきだと主張。東京高裁は結審から判決までの一年程度なら被害は変わらないとして一部にせよ住民の救済を図った。
 しかし、大阪空港の騒音被害をめぐる一九八一年の最高裁大法廷判決が将来分の損害算定は困難と判断。これに従った同種訴訟判決と比べ、東京高裁の判断は特異さが際立っていた。二十九日の最高裁判決は、東京高裁の判断を見直して、判例通り損害算定時期を引き戻し、司法の役割を法の原則通りに限定した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705291700_05.html

2007年5月30日(水) 朝刊 1・2面
米軍再編 閣議決定から1年/「普天間」こう着続く
 【東京】在日米軍再編に関する閣議決定から、三十日で満一年を迎える。今月二十三日には「米軍再編推進法」が成立し、政府は再編を実行するための法的枠組みを整えた。普天間飛行場代替施設の建設に伴う海域の現況調査(事前調査)にも着手するなど、普天間飛行場の移設作業にも一定の進展は見られるが、県側が求めるV字形滑走路の沖合移動などをめぐって政府側は厳しい姿勢を崩さず、こう着状態が続いている。
 今後、政府は正式な環境影響評価(アセス)の手続きを目指すが、先行きは不透明な情勢だ。
 閣議決定では、建設計画などを話し合う協議機関の設置を明記。
 同決定で廃止とされた北部振興策の継続にも道筋をつけるなど、昨年十二月の第二回協議会までは県側の思惑通りに進行した。
 しかし、今年一月の第三回協議会で名護市が滑走路の沖合移動を要求してから状況が一変。名護市の要求を公式議事録に記載しないなど、県側とのスタンスの違いが鮮明化した。
 以降、互いに着地点を見いだせないまま、協議会は「次回の予定が立たない」(防衛省幹部)状況に陥っている。
 七月の参院選で与党推薦候補が優位に戦うためにも、県側は何らかの進展を得たい考えだが、五月上旬に開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で再編の「着実な実施」を再確認した直後であるだけに、厳しい状況が予想される。
     ◇     ◇     ◇     
「沖合要求」軟化の兆し
 在日米軍再編に関する閣議決定から一年。焦点の米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設の行方は、県や市が政府に求めているV字形滑走路の「沖合移動」が鍵を握る。だが、日米両政府は環境影響評価(アセスメント)前の位置修正には応じない姿勢を崩さず、地元には実現に懐疑的な見方も広がる。再編の協力度合いに応じて交付金を支払う米軍再編推進法の成立を受け、予定地近くの辺野古区や島袋吉和市長を支える地元経済界には「軟化」の兆しも見え始めた。足元が揺らぐ沖合移動要求の背景と経緯をまとめた。
「地元の地元」
 辺野古区が一九九六年の「ヘリポート移設反対決議」の撤回を決議した今月十五日。
 大城康昌区長は、名護市幹部から「沖合移動を求める」決議をするよう打診があったことを明かし、「(振興策など)国側との調整が難しくなるとして(沖合移動要求)決議は見送った」と説明。その上で「平行線でどうにもならないときは市長の判断に任せる」と柔軟姿勢をにじませる。
 市幹部が沖合移動要請決議を働き掛けた背景には、振興策を呼び水に辺野古区に「軟化」を促す那覇防衛施設局の動きへの警戒感がある。
 防衛省幹部は「地元の地元である辺野古区のスタンスが重要」と指摘。四月の参院補選以降、施設局職員が頻繁に区に入り、早期移設には地元の政府案容認が不可欠と「攻勢」をかけた。
 再編交付金は今後三カ月をめどに政令や省令で細則が規定され、地元との調整も活発化する。同幹部は「名護市は支給対象になるが、アセスに着手できない状況では辺野古区が期待する事業は難しい」と地元への「揺さぶり」ともとれる口ぶりを隠さない。
 辺野古区有志でつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「久間(章生)大臣の『修正』発言で期待したが(基本合意から)一年たっても現実味を帯びない。時限のある米軍再編推進法もでき、作業の遅れで地元に及ぶ損失を考えれば早急に進めてほしい」とこぼす。
落としどころ
 名護市が「沖合移動」を求める端緒となったのは「地元の意向」だ。
 昨年四月に市が政府とV字形滑走路案で基本合意した直後、辺野古区行政委は「着陸用滑走路が辺野古集落に近過ぎる」とし、沖合側に寄せるよう市や国に要請した。
 同十一月に「現行のままの政府案(V字案)では賛成できない」との公約を掲げた仲井真弘多知事が誕生。知事に配慮した久間防衛相が「修正」を示唆すると、地元で沖合移動の期待が一気に高まった。
 市は今年一月の政府との第三回協議会で滑走路を南西側沖合に寄せる案を提示。同二十四日には同市議会が「可能な限り沖合に移動するよう」求める意見書を可決し、島袋市長を後押しした。
 沖合移動をめぐって政府とこう着状態にある現状について、市長の後援会長の荻堂盛秀市商工会長は「市長の考えで防衛省や米国を説得できるのであれば押し通せばいいが、沖合移動の議論は一通り済んだと思う。後は落としどころを見極めてやるだけだ」と市長の決断を促す。
 一方、同市幹部は「地元から沖合移動の要望を下げることはない」との見方。「こう着状態の打開は政府が動かない限り進展はない。移設作業の遅れで困るのは米国と合意している政府側だ」と強調。あくまで政府側に柔軟な対応を求める考えだ。(北部支社・石川亮太)
額賀前防衛庁長官に聞く
 在日米軍再編に関する閣議決定から一年―。普天間飛行場の移設作業が着々と進む一方、V字形滑走路の沖合移動をめぐり政府と県側の対立も生んだ。当時、防衛庁長官として、県や名護市と協議した額賀福志郎衆院議員に、これまでの経緯と今後の在り方を聞いた。
 ―昨年五月の閣議決定を振り返って。
 「閣議決定を経て、在日米軍再編は『協議』から『実行』に移していく段階になった。協議会が発足し、自治体とよく協議した上で着実に実行していくことの約束であり、スタートだった。今後も関係者とは意見交換し、理解を得ていくことが大事だと思う」
 「再編を着実に実行していくことが沖縄の負担軽減にとって重要だ。一方、返還された基地跡地をどう活用するか。経済的な安定を図っていくための施策の転換が大きな課題だ。むしろそこに重点を移していくべきだ」
 ―閣議決定では、県が「V字案は容認していない」と強く反発した。
 「名護市の条件は住宅上空にヘリを飛ばさないでほしいというものだった。それを最大限に生かすことを集中的に考えた結果、ある日の明け方にV字案がひらめいた。専門家やパイロット、土木技術者らに専門家の立場から考えてもらい、問題がないということなので提起させてもらった」
 「地元の理解を得る過程では、辺野古区の婦人部や青年部、区長らともよく語り合い、理解を得たと思っている。その上で名護市とも基本合意書を交わした。『基地を造られる側』が理解を示し、市長も合意したということで、私はきちんと政治の原則を踏まえてきたと思っている」
 ―今、県側はV字案の沖合移動を求めている。
 ―「米国と合意した後に地元を説得したわけではない。地元からまず説得して米国に理解してもらったという経緯をよく考えてほしい。名護市長とは何度も会った上、合意書を交わした時は数時間にわたって話し合い、互いに一本化していこうという政治家としての努力を積み重ねた。地元が理解をしてくれるということが最も大事なことだと思ってやってきた。名護市長がぶれるようなことはないと信じたい」
 ―「廃止」とされた北部振興策は継続されるが。
 「北部振興策をノーと言っているわけではない。もともと地域振興策については、県が自主的な経済圏をつくっていくのが一つの発想だが、同時に、基地の負担との絡みで考えられた経緯もある」
 「基地返還の進展が見込まれる中で振興策が投じられているのに、基地が全く動いていないということは、財政目標としてはどうだったのかという問題提起が当時あった。そこで、国民の税金なので、使い方に整合性を持つようにしていく仕組みを考えた。北部振興策は十カ年計画ですでに終わっているところもある。どんな効果をもたらしたかを点検する必要がある」(聞き手=東京支社・島袋晋作)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705301300_02.html

社説(2007年5月30日朝刊)
[検定撤回意見書]
住民こそ歴史の証言者
 文部科学省の検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に旧日本軍が関与したとする記述が削除されたことに対し、検定意見の撤回を求める議会が増えている。
 二十九日までに那覇市、浦添市、渡嘉敷村、座間味村など十を超える市町村が「『集団自決』が日本軍による命令、強制、誘導なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」(座間味村議会)などとする意見書を採択した。
 六月に開かれる定例会や臨時議会でも、意見書を提案し採択する方向で議論が進められているという。
 当然であり、今回の検定は、県民の記憶の中に厳然として残る歴史の事実を強く思い起こさせたと言わざるを得ない。
 それは、たとえ記憶から消し去りたい「負の遺産」であっても、その後に生きる私たちが乗り越えるべき歴史といってよく、そこにこそ「歴史を学ぶ」意義があるからだ。
 各自治体が編さんした市史、町史、村史には、戦時下における住民の実体験が生々しく記されている。証言の一つ一つは当時の苦しさや恐怖、悲しさ、悔しさを表していると言っても過言ではない。
 議会が文科省の検定に異議を唱えるのは、県民が体験した歴史の事実を隠ぺいしゆがめようとする動きが見られるからであり、それをまた風化させようとする意図を覚えたからでもある。
 沖縄戦における“忌まわしい事件”は、方言しか話せない人がスパイに疑われたり、避難壕から大勢の住民が追い出されたことと軌を一にする。
 少なくとも、住民らの「集団自決」は、決して上陸した米軍に追い詰められた結果として起こったのではない。
 そこには、戦陣訓の「生きて虜囚の辱を受けず」という教えとともに、軍と官、民が一体となった「共生共死」の考えがあったとみていい。
 検定で文科省は「軍が命令したかどうかは、明らかとは言えない」とコメントしている。だが、渡嘉敷島などで非戦闘員である一般住民に手りゅう弾を渡したのは紛れもなく兵士であったという事実を無視してはなるまい。
 「現在係争中の裁判を理由に、元隊長である原告の主張のみを一方的に取り上げることは、文科省が自ら課している検定基準を逸脱しているばかりでなく、これまでの体験者による証言や『県史』を否定しようとするものだ」
 県民の思いは、この恩納村議会の意見書と深く重なる。歴史的事実は直視すべきであり、教科書をつくる場合にはなおのこと、その重要性をしっかり踏まえて編さんするべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070530.html#no_1

2007年5月30日(水) 夕刊 4面
ジュゴンサポーター募集
 【名護】「ジュゴンサポーター募集中」。米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沖周辺に生息する国の天然記念物ジュゴンの生息環境調査を行っている市民団体「北限のジュゴンを見守る会」(鈴木雅子代表)が、六月三日に実施する目視調査に協力するボランティアを募集している。
 「マンタ法」と呼ばれる時速三キロ程度で進む船からボランティアダイバーをえい航し、ジュゴンの餌である藻場の目視によるモニタリング調査を行う。米サンフランシスコ州立大学のエレン・ハインズ博士らが指導する。
 鈴木代表は「シュノーケルで泳ぐことができれば誰でも参加できる。経験者がサポートするので、辺野古の海がどんなにきれいかを実際に見てほしい」と話している。
 当日午前九時に、辺野古・命を守る会事務所前集合。参加の問い合わせは鈴木、電話090(8032)2564。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705301700_05.html

琉球新報社説(5月24日)・沖縄タイムス関連記事(5月25日)

米軍再編推進法・これで理解得られるか/関係地元より対米合意優先

 在日米軍再編への協力度合いに応じて関係する地方自治体に再編交付金を支給することを柱にした米軍再編推進法が23日、成立した。日米両政府が2006年5月に合意した在日米軍再編計画の円滑な実施が狙いである。

 同計画は基地所在市町村の「負担軽減」につながるとされている。しかし、米軍普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設するなど「負担軽減」には程遠い。

 再編が計画通り終了したとしても、沖縄の在日米軍専用面積は75%から70%になるだけ。負担軽減といいながらも、嘉手納基地にはミサイル防衛のためのパトリオットの配備、最新鋭ステルス戦闘機F22Aの一時配備など抑止力強化の押し付けだけが目立つ。

 障害は政府の姿勢

 同法は、防衛相が関係自治体を「再編関連特定周辺市町村」に指定し(1)再編計画受け入れ(2)環境影響評価の着手(3)施設整備の着工(4)工事完了・運用開始-の4段階に分けて「再編交付金」を上積みするのが柱。特に負担の重い市町村には、公共事業での国の補助率をかさ上げする。

 協力する自治体に再編交付金を与え、反対する自治体には交付しない「アメとムチ」を制度化している。地方自治の面からも大きな問題をはらんでいる。

 1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、普天間飛行場の返還、移設を決定し、地元に振興策を提供したものの、移設作業が進展しなかった「反省」が新たな制度創設の背景にあるといわれる。

 SACO合意が実施できなかったのは、県民から県内移設への反発があったからにほかならない。

 今回の再編計画でも普天間飛行場は県内移設であり、県民の反発は依然として根強い。県内移設は県民の多くが望んでいないことを政府は理解するべきだ。

 政府は再編計画を基本的に受け入れた名護市の修正要求にさえ、応じていない。かたくなな姿勢を改めるべきである。「円滑な実施」の障害は海上自衛隊の掃海母艦まで動員して強力に作業を進めるような政府の姿勢にある。

 成立した再編推進法は問題点を残したままだ。

 交付金を支給する自治体の選定基準は明確でない。名護市を支給対象にするかでは久間章生防衛相と同省幹部で一致していない。客観的な基準作りはこれからである。

 日本が負担する在沖米海兵隊のグアム移転費の59%(約7200億円)の具体的な内訳も明らかではない。

 それに、法案審議に要した時間は衆院安全保障委員会は約16時間半、参院外交委員会は約16時間でしかない。これで十分に審議を尽くしたといえるだろうか。

 自治体の要望配慮を

 航空自衛隊のイラク派遣を2年延長するイラク復興支援特別措置法改正案の審議を控えていることが成立を急いだ要因に挙げられている。

 安倍晋三首相の日米関係を重視する姿勢も性急な成立につながったといえよう。安倍首相は4月末のブッシュ米大統領との会談で、米軍再編の着実な実施を約束した。

 その直後に開かれた外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも、それを確認している。

 米国との合意の円滑な実施が関係自治体の理解を得ることより、最優先すべきということなのだろうか。

 再編計画に異を唱えているのは沖縄だけではない。

 山口県岩国市は神奈川県の厚木基地からの米空母艦載機移転に反対している。

 「アメとムチ」が再編推進法の本質であり、久間防衛相は岩国市に対して交付金を支給しない考えを示している。

 しかしながら、同法は基本理念として「駐留軍等の再編に対する幅広い国民の理解が得られるよう配慮されなければならない」と明記している。

 仲井真弘多知事は再編計画の実施について「地元の理解と協力が不可欠で、普天間飛行場の移設問題をはじめ、地元の意向に配慮して進めることが円滑な実施につながると考えている」と述べている。

 それは、多くの関係自治体が政府に求めていることである。法の基本理念にのっとり、関係自治体の要望に十分に配慮することを政府に求めたい。

 

(琉球新報 5/24 10:48)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24024-storytopic-11.html

 

 

沖縄タイムス

2007年5月25日(金) 朝刊 25面

海自投入「法を逸脱」/大学教授ら21人が声明

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)に海上自衛隊が派遣されたことに対し、県内の大学教員二十一人は二十四日、県庁で記者会見し、「自衛隊法の枠を逸脱し、拡大解釈につながる極めて危険なことだ」と抗議声明を発表した。

 

 琉球大学の高良鉄美教授、我部政明教授、沖縄国際大学の佐藤学教授らの呼び掛けで、「自衛隊の政治利用を憂慮する大学人有志」として声明を出した。

 

 「米軍再編協議における日米合意の実施において、地元沖縄での支持を得る努力をするという政府の言葉とは懸け離れている。自衛隊は国民の安全のために存在すべきで、国民を抑え込む行動は禍根を残す暴挙」と指摘した。(1)法的根拠を欠く(2)地元無視(3)政治利用-などの理由から自衛隊派遣に抗議し、事前調査の中止などを求めている。

 

 我部教授は「自衛隊をどう使うかは国民の監視、信頼の下に置かれるべきだ」、高良教授は「出動の根拠があいまいで、法的に問題」、佐藤教授は「米国に対し、やるだけのことをやったとみせる意図があった」などと述べた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251300_05.html

 

2007年5月25日(金) 朝刊 24面

教科書検定撤回を/大阪で/集団自決シンポ

 【大阪】沖縄戦時に慶良間諸島で起きた住民の「集団自決」への軍命の有無などをめぐる訴訟の第九回口頭弁論が二十五日に大阪地裁で開かれるのを前に、シンポジウム「沖縄戦集団死の書き換えを許さない」(主催=大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会)が二十四日夜、大阪市内で開かれた。研究者や教師、出版関係者ら約百五十人が参加。文部科学省の検定撤回や、同訴訟で旧日本軍による命令があったと主張する被告側の支援に向け、全国規模の運動を実現する重要性を確認した。

 

 沖縄国際大の津多則光講師は文科省の教科書検定を「沖縄戦からこれまで六十数年の学問の集積をすべて否定するものだ」として、撤回のために沖縄と本土が連携するべきだと述べた。

 

 大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長は、一九八二年に高校の日本史教科書で「日本軍による住民殺害」が削除された際に、次回検定から記述が復活した経緯を説明。

 

 「当時は運動の盛り上がりがはね返して(文部省が記述を)元に戻した。検定の誤りを(教科用図書検定調査)審議会に認めさせるための運動が大事で、大阪の県人会組織にも協力をお願いしたい」と述べた。

 

 フロアとの質疑応答では作家の目取真俊さん、沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授らが意見を述べた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251300_09.html

 

 

2007年5月25日(金) 夕刊 7面

訓練移転 負担減ならず/1日の騒音回数 5月最多

 【嘉手納・北谷】騒音被害の軽減を目的に米軍戦闘機が本土で訓練を実施した十六日からの七日間に、多くの人が不快に感じる七〇デシベル以上の一日の騒音発生回数が嘉手納町で百七十五回(二十一日)、北谷町で二百一回(十七日)を計測し、五月(二十四日現在)の最多を記録した。訓練移転により騒音が減り、日米両政府が訴えた"負担軽減"につながるはずだったが、住民の期待を裏切る結果となった。(福里賢矢、銘苅一哲)

 

 今回の訓練移転は、嘉手納基地所属のF15五機が航空自衛隊小松基地(石川県)に出向き、空自と共同訓練を実施した。

 

 嘉手納町によると、屋良地区で計測した騒音は二十一日に百七十五回で期間中の最多、次いで十六日百五十八回、二十二日百四十五回、十七日百三十八回と続き、いずれも二〇〇六年度の一日平均(百九回)を上回った。

 

 一方、北谷町砂辺地区では、十七日に五月最多の二百一回を計測。期間中の一日平均は百一回だった。

 

 両町の担当課は嘉手納基地に一時配備された最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター、頻繁に飛来するAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機など、外来機が同基地を日常的に使用する現状を指摘。その上で、「移転が必ずしも騒音軽減につながるとはいえない」としている。

 

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「米軍の第一目的は自衛隊との共同訓練。騒音負担軽減は二次的なものでしかない。住民の望む負担軽減は部隊の完全撤去でしか実現しない」と厳しく批判した。

 

 北谷町議会基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「砂辺で生活していて、二度の訓練移転では軽減を感じられなかった。沖縄は変化がなく、移転先で騒音を増やす。訓練移転は被害を拡大するだけだ」と憤った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251700_01.html

 

 

2007年5月25日(金) 夕刊 1面

名護市は「受け入れ分」/再編交付金

 【東京】久間章生防衛相は二十五日の閣議後会見で、米軍普天間飛行場代替施設の沖合移動を求めている名護市への再編交付金の支給について、「受け入れは一応表明している」として、支給対象になるとの考えをあらためて示した。

 

 ただ、同交付金制度が再編の進ちょくに応じて四段階に分けて積み上げる方式であることを念頭に、「百パーセント(全額)ではない」と述べ、現段階では第一段階の「再編案受け入れ」に相当する額が交付されるとの認識を示唆した。

 

 その上で久間防衛相は「事前調査についても名護の同意が付いている。法律(再編推進法)を素直に読めば、そういう協力をしてもらっているところが対象にならないというのは考えられない」との認識を強調した。

 

 法案は防衛相が関係自治体を「再編関連特定市町村」に指定。(1)再編案受け入れ時に総額の10%(2)環境影響評価(アセスメント)実施時に30%(3)基地着工時に60%(4)完成時に全額-の四段階で交付金を上積みする仕組みだが、久間防衛相は第一段階の条件は満たしているとの考えを示したものとみられる。第二段階以降については「これから具体的な市町村を指定していく。手続きが終わった段階ではっきりすることになると思う」と述べるにとどめた。

 

 久間防衛相の認識について防衛省首脳は「(修正を求めるなどの)意見を言うのはいいということ。それを採用するかどうかはこちらが判断することだ」と語った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251700_02.html

 

2007年5月25日(金) 夕刊 7面

浦添議会も意見書/「集団自決」修正

 【浦添】教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍の関与が高校の歴史教科書から削除された問題で、浦添市議会(大城永一郎議長)は二十五日午前、臨時議会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は内閣総理大臣、文部科学大臣、衆参両議院議長ら。

 

 意見書では「日本軍の『集団自決』の強制を否定する学説や元軍人らが起こした係争中の裁判などを理由に、一方の当事者の主張のみを取り上げた文科省の検定は自らの検定基準を逸脱しており、体験者の証言や歴史的事実を否定するものだ」と批判した。

 

 その上で「沖縄戦の『集団自決』が日本軍による命令・強制・誘導などなしに、起こり得なかったことは紛れもない事実で、そのことをゆがめることは県民にとって到底容認できない」と抗議した。沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさないためにも、速やかに検定意見を撤回するように要請している。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251700_03.html

 

沖縄タイムス関連記事(5月24日)

2007年5月24日(木) 朝刊 3面
シュワブ調査「サンゴ大幅な破壊ない」/北原長官が答弁
 【東京】北原巖男防衛施設庁長官は二十三日の衆院外務委員会で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に伴う現況調査のため那覇防衛施設局が海底に設置した機器によってサンゴの一部が損傷を受けた問題について「サンゴを大幅に破壊したとか損傷したとは考えていない」と述べ、被害は軽微との認識を示した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。
 海底への機器設置作業に海上自衛隊の潜水士が参加した法的根拠は、防衛省設置法四条一九号とした。
 設置法四条は防衛省の所掌事務を規定し、一九号は「条約に基づいて日本国にある外国軍隊(駐留軍)の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること」とされている。
 北原長官は条文の解釈について「一九号に基づいて行うところの(普天間飛行場の)移設の一環」として、海自が「官庁間協力」したとの見解を説明した。
 照屋氏は「一九号を縦からも斜めからも表からも裏からも読んだが、三十五年間弁護士をした僕でもそんな解釈にはならない」と批判。官庁間協力についても「防衛施設庁は防衛省の外局だ」と指摘し、適用を問題視した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705241300_05.html

2007年5月24日(木) 朝刊 2面
野党反発「自治体分裂」/米軍再編法成立

西銘氏 出来高払いに反対

 【東京】「米軍再編推進法案」が二十三日の参院本会議で可決、成立したことを受け、県選出、出身の国会議員のうち民主、社民の野党各党はそろって反発。「出来高払い」の交付金制度の在り方などをめぐって、自民党の西銘順志郎氏も問題点を指摘、異例の反対姿勢を示した。無所属の島尻安伊子氏は賛成した。

 七月の参院選に立候補する西銘氏は地元での選挙活動のため本会議を欠席したが、交付金制度について「いろいろな議論があったと思うが、防衛省のさじ加減で交付金が決められ、恣意的な運用が懸念される。もう少し練ってもいい法案だと思う」との認識を示した。
 喜納昌吉氏(民主)は「アメとムチをちらつかせる手法は、自治体の分裂を起こす。それ以前の問題として、県内に基地負担を押し付け続ける米軍再編は問題だ」と強調した。
 大田昌秀氏(社民)は「成立したことを極めて残念に思う。政府は基地負担の軽減をしきりに強調するが、実態として外来機が移駐するなど、負担が続く状況は変わらない」と述べ、法案の実効性に疑問を呈した。
 島尻氏は「海兵隊のグアム移転を含めた沖縄の負担軽減のため、賛成した」とする一方、「全国の基地を抱える自治体が同じ思いを持っていると思うが、感情を刺激するような感想は持っている」と語った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705241300_06.html

社説(2007年5月24日朝刊)
[米軍再編法成立]

地域の自立心むしばむ
 在日米軍再編への協力の度合いに応じて関係自治体に交付金を支給することを柱とした米軍再編推進法(駐留軍等再編円滑実施特措法)が参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。
 同法では防衛相が関係自治体を「再編関連特定周辺市町村」に指定し、(1)再編計画(政府案)の受け入れ(2)環境影響評価(アセスメント)の着手(3)施設整備の着工(4)工事完了・運用開始―の四段階に分け、「再編交付金」を上積みする仕組みになっている。
 再編計画に協力する自治体に交付金を支給し、拒む自治体は冷遇し圧力をかける「出来高払い」方式であり、日米合意の受け入れを強く迫る「アメとムチ」の政策としか言いようがない。
 同法には、特に負担の重い市町村を「再編関連振興特別地域」に指定し、公共工事の補助率に特例を設け、沖縄の場合、国の負担を最大95%とする沖縄振興特別措置法適用も盛り込んだ。

 また、在沖米海兵隊のグアム移転に伴う融資などを可能にするため、国際協力銀行(JBIC)の業務に特例も設定している。
 一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で普天間飛行場返還などに合意したが、進展がなかったとして、政府は再編計画を推進する立法措置が必要と判断した。
 まずは昨年五月に合意した米軍再編最終報告の実施ありきだ。だが県内では地元の頭越しの日米合意という手法に批判の声が強い。地元に配慮した十分な審議が尽くされたとは言えまい。
 この問題では名護市が政府のV字形案の沖合移動を求めたのに対し、防衛省首脳が名護市への交付は「ゼロ」と発言し、久間章生防衛相は交付対象になるとの考えを示すなど、防衛省の姿勢や認定基準はあいまいだ。
 普天間飛行場の移設先の環境調査に掃海母艦など海上自衛隊の投入の動きも合わせると、米軍再編の日米合意を優先する政府の強硬姿勢が際立つ。
 同法は二〇一七年三月末までの時限立法。再編実施が遅れる場合は交付金の交付期間を最大五年間延長する。だが、地元の摩擦を強める強硬姿勢だけで再編が進展するかどうか疑問だ。
 最も懸念されるのは住民同士の対立だ。反対する自治体や住民に賛成派の矛先が向けられることも考えられる。その実態は沖縄狙い撃ちの法律であり、沖縄の基地負担の経緯を軽視するような強硬姿勢には憤りを覚える。
 分権が進む一方、地方の財政事情は悪化している。再編交付金は基地関係自治体の国依存をより強め、地域の自立心をむしばむ結果を招くだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070524.html#no_1

2007年5月24日(木) 夕刊 5面

与那原議会も意見書/「集団自決」修正検定
 【与那原】教科書検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍の関与が削除された問題で、与那原町議会(又吉忍夫議長)は二十四日午前臨時会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は内閣総理大臣、文部科学大臣、衆参両議院議長ら。
 意見書では、文科省の検定姿勢変更について「沖縄戦体験者の数多くの証言による歴史的事実を否定しようとするもの」と批判。過去の教科書検定裁判の判決を引用しながら「軍による『自決』の強制は明確」と述べている。
 さらに「検定結果は沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を覆い隠すもので、沖縄の未来を担う子どもはおろか、日本全国の子どもたちにこのような教科書が渡ることは到底容認できない」と抗議。その上で、検定意見の速やかな撤回と記述の復活を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705241700_05.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事(5月23日夕刊)

沖縄タイムス 2007年5月23日(水) 夕刊 1面
参院で可決 米軍再編法が成立
 【東京】在日米軍再編への協力度合いに応じて地方自治体に交付金を支給することを柱とした「米軍再編推進法」が二十三日午前の参院本会議で、自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。同法では防衛相が関係自治体を「再編関連特定市町村」に指定し、(1)再編(政府案)の受け入れ(2)環境影響評価(アセスメント)着手(3)施設着工(4)再編実施―の順の四段階で交付金を上積みする仕組みを明記。二〇一七年三月末までの時限立法だが、再編の実施が遅れる場合は交付期間を最大五年間延長する。
 反対討論で喜納昌吉氏(民主)は交付金制度の在り方について「政令委任が多く、このままでは国会の関与なくして金を出す権限を政府に与えてしまうことになり、透明性を欠き、極めて不適切」と批判した。
 投票総数は二百で賛成が百十二、反対が八十八だった。県関係議員四人は、西銘順志郎氏(自民)が欠席、島尻安伊子氏(無所属)が賛成、喜納氏、大田昌秀氏(社民)がそれぞれ反対した。
 米軍再編推進法の成立後、久間章生防衛相は二十三日午前、在日米軍再編に協力する自治体に支給する再編交付金について、米軍普天間飛行場の移設先である名護市は支給対象になるとの考えを示した。国会内で記者団に答えた。
 名護市は現行のV字形滑走路案を沖合にずらすよう修正を求めているため、防衛省内には対象自治体に該当しないとの意見があるが、久間氏は「名護市は(基本的に政府案を)受け入れている」と述べた。
 政府は同法に基づき、〇六年五月に米国と合意した米軍再編最終報告の具体化に向けて調整を本格化。再編計画を受け入れる自治体だけを対象にし、事業が進んでいれば、交付金を上積み、滞れば凍結する「出来高払い方式」に、野党側からは「アメとムチで基地負担を迫る手法は問題」などと批判が集中している。
 また、特に負担の大きな市町村を「再編関連振興特別地域」に指定して公共工事の補助率に特例を設け、沖縄の場合は、国の負担割合を最大で95%とする沖縄振興特別措置法の適用も盛り込んでいる。そのほか、在沖米海兵隊のグアム移転に伴う融資などを可能にするため、国際協力銀行(JBIC)の業務に特例も設定している。
知事「地元配慮を」
 米軍再編推進法が参院本会議で可決、成立したことを受け、仲井真弘多知事は二十三日午前、「同法に基づき、再編交付金などの特別措置や在沖米海兵隊のグアムへの移転が確実に実施され、基地負担の軽減が図られることを期待している」とのコメントを発表した。
 再編交付金の交付に向けては「政令で定めることとなっているが、今後、地元自治体の意向を十分踏まえて対応していただきたい」と要望。その上で「在日米軍再編に当たっては、地元の理解と協力が不可欠。普天間飛行場の移設問題をはじめ、地元の意向に配慮して進めることが円滑な実施につながる」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705231700_01.html

沖縄タイムス 2007年5月23日(水) 夕刊 5面
「アメとムチ」鮮明/米軍再編法成立
基地所在住民当惑「支給当然」賛成も
 米軍再編への協力の度合いに応じて地方自治体に交付金を支給する「アメとムチ」を鮮明にした米軍再編推進法が二十三日、参院本会議で可決、成立した。「市民をばかにしている」「支給は当然」。普天間飛行場代替施設建設予定地の名護市では、怒りと歓迎の声が上がった。
 「ヘリ基地いらない二見以北十区の会」共同代表の浦島悦子さん(59)は「足元を見る卑劣な法律。どこまでばかにすれば気が済むの」と憤った。一九九七年の名護市民投票以後、同十区には市から毎年六千万円が交付されている。「部落の共同作業に参加すると、前はお茶を飲んで解散だったのが、弁当は出るわ、ビールは出るわ」
 豊富な金が地域に浸透していくさまを間近で見てきて、「お金にまつわるトラブルもある。一つ一つは小さなことだけど、じわじわとコミュニティーが壊される感じがする」。浦島さんは「もともと毎月の区費だけで運営していた。既得権を失うのが怖いのは分かるが、市民がもう一度きちんと考えて、自立した精神を養うべきだ」と嘆いた。
 辺野古区出身の島袋権勇名護市議会議長は「再編によって基地の負担を受ける地域への交付金の支給は当然のこと。国防のために沖縄が負担を強いられていることを国は認識し、基地が存在する限り生活補償など十分な支給をするべきだ」と、法案を歓迎した。
 普天間基地を抱える宜野湾市。アメとムチを堂々と振りかざす国のやり方に、関係者からは怒りの声が上がった。
 市職員OBで基地政策担当経験のある市議の森田進さん(54)は「基地と振興策はリンクしないといいながら実際はアメとムチを使い分けるのが政府のやり方だ」と怒りをあらわにした。「政府に協力しなかったからといって交付金を支給しないのはおかしい。市には普天間基地が六十二年間横たわる事実があり、政府は跡地計画を含め地元の振興を考えるべきだ」。
 一九九八年に当時の大田昌秀知事が政府の意向に反し普天間移設を正式拒否した。出納長を務めた山内徳信さん(72)は「政府は当時から、米軍基地問題と地方への財政補助をセットにして、県への懐柔、恐喝を繰り返していた」と振り返る。沖縄振興開発事業について交渉する席上でも、政府高官が「米軍基地再編に進捗がなければ、予算交付は認められない」とどう喝してきたといい「その手法はいまでも変わらないのでは」と話す。「基地で地方財政が潤い、自立につながるということはない。住民や首長が毅然とした態度を示すことが大事」と訴えた。
 再編法の交付金は原発交付金がモデルだ。石川県珠洲市で原発に反対してきたルポライターで市議の落合誓子さんは「お金を一度もらうともう駄目」とアメの怖さを指摘。効果的に金を落としてくるので、反対だった人も脱落し賛成に回るようになる様子を原発ができた地域で見てきた。「だけど、できてしまえば、いつまでも金は出ない。本当に豊かになるわけではない」とくぎを刺した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705231700_02.html

沖縄タイムス 2007年5月23日(水) 夕刊 1面
座間味・渡嘉敷 撤回要求へ/「集団自決」軍関与削除
検定に意見書
 【座間味・渡嘉敷】教科書検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍の関与が削除された問題で、座間味村議会(金城英雄議長)と渡嘉敷村議会(島村武議長)は二十二日、それぞれ全員協議会を開き、検定意見の撤回を求める意見書案を本会議に提案することを決めた。
 座間味村は二十九日に臨時会で、渡嘉敷村は定例会初日の六月十四日に提案。
 いずれも全会一致で可決する見通し。
 沖縄戦で日本軍の海上特攻艇の秘密部隊が駐屯し、米軍の最初の上陸地となった慶良間諸島の座間味村では、一九四五年三月二十六日に座間味島、慶留間島などで「集団自決」が起こり、大勢の住民が死亡。渡嘉敷村では同月二十八日、「集団自決」によって三百人以上が犠牲になったとされる。
 「集団自決」をめぐっては、生き残った住民らが日本軍の軍命と誘導を証言している。
 文科省は、検定で「集団自決」に対する日本軍関与を否定した理由の一つに、日本軍元戦隊長の軍命を否定する訴訟証言を挙げている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705231700_03.html

環境相、サンゴ損傷把握せず 島尻氏が初質問
 【東京】若林正俊環境相は22日午後の参院環境委員会で、米軍普天間飛行場移設先の海域で行われた環境現況調査(事前調査)の機器設置に伴いサンゴが損傷したことについて「報告を受けていない。(調査は)防衛施設庁が行うので、事実確認をするよう指示をしている」と述べた。島尻安伊子氏の初質問に対する答弁。
 島尻氏は「代替施設建設に当たっては環境保護とのバランスが大変重要になるので、ぜひ環境大臣の配慮をお願いしたい」と要望した。
 島尻氏は質問後、「サンゴに傷が付けられたという件を環境省が把握していないのは問題だ」と指摘。防衛省に対しては「環境現況調査への海上自衛隊の動員も含め、県民への配慮が足りない」とした上で、事実関係の確認を求めた。
(琉球新報 5/23 16:02)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24007-storytopic-3.html

米軍再編法が成立 仲井真知事「地元配慮を」
 23日午前の参院本会議で米軍再編推進法が賛成多数で可決、成立したことを受けて仲井真弘多知事は同日「再編交付金などの特別措置や在沖米海兵隊のグアムへの移転が確実に実施され、基地負担の軽減が図られることを期待する」とのコメントを発表した。
 コメントでは交付金の交付について「今後地元自治体の意向を十分踏まえて対応していただきたい」と注文した。さらに在日米軍再編の内容実施に対しても言及し「地元の理解と協力が不可欠で、普天間飛行場の移設問題をはじめ、地元の意向に配慮して進めることが円滑な実施につながると考えている」と述べ、普天間飛行場移設をめぐる県や名護市の要望を聞き入れるようあらためて政府の対応を促した。
(琉球新報 5/23 16:03)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24006-storytopic-3.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事・社説(5月23日朝刊 その2)

沖縄タイムス 社説(2007年5月23日朝刊)
[サンゴ損傷]
本末転倒の破壊行為だ
 本末転倒の破壊行為といわざるを得ない。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で、那覇防衛施設局による海域の環境現況調査(事前調査)で生きたサンゴが損傷された。
 ジュゴンネットワーク沖縄とジュゴン保護基金委員会が撮影し公表した写真は、施設局が海底に設置した調査機器の鉄柱がサンゴに突き刺さり、割れているのがはっきり確認できる。
 施設局の現況調査の目的は、これから始まるサンゴの産卵状況を調べることにあったはずだ。
 新聞に掲載された痛々しいサンゴを見ると、サンゴを破壊しておきながら産卵状況を調べるという施設局の説明に異議を唱えたくなる。慎重さと配慮に欠けた調査と、自ら証明したものと思うからだ。
 普天間飛行場の移設をめぐる最近の防衛省は、県民を上から押さえつける強硬姿勢ばかりが目立つ。
 調査支援目的のために法的根拠もあいまいなまま海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を派遣し、潜水要員を投入した。これでは県民を掃海母艦で脅していると見られても仕方がない。
 掃海母艦にしろ、潜水要員にせよ、防衛省も県民の怒りの度合いを予測した上での決定であれば、この程度は、まだ沖縄の許容範囲ととらえているのかもしれない。
 裏を返せば、県民がそのように見られているということである。県民に対する自信とおごり。それが怒りの目で見られていることを忘れては、しっぺ返しを食うことになるのではないか。
 サンゴ損傷で抗議を受けた那覇防衛施設局の佐藤勉局長は「事実関係を調べたい」と答えている。当然だろう。
 施設局は同海域百十二カ所に調査機器を設置している。サンゴ損傷の経緯を調査し公表するとともに、残りの点検も、反対派が抗議行動を繰り返す中で実力で移設作業を進める事業者としての最低限の務めである。全カ所の結果を明らかにするまでは、海域の調査は中止するべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070523.html#no_2

県、施設局に報告要求へ 辺野古沖サンゴ損傷
 米軍普天間飛行場移設先の環境現況調査(事前調査)の機器設置でサンゴを損傷させたと環境保護団体が指摘している問題で、県は22日午後、関係各課で会議を開き、那覇防衛施設局に設置状況を文書で報告するよう求めることを確認した。調査海域の使用同意の際に県が求めた配慮事項でも、施設局が報告することになっていた調査機器の設置方法や工程などがまだ報告されておらず、
こちらも併せて督促する。
 県が4月末に施設局の海域使用に同意した際、添付した配慮事項では「調査の具体的な調査工程、調査期間、調査時期、調査機器設置方法、環境配慮の内容については、決定次第、県に報告すること」と求めていた。だが18日からの機器設置着手後、22日現在も施設局から報告されていない。
 県によると、施設局からは「同時並行で実施しており、報告項目がそろっていない」との回答があった。機器設置の18日にも県は報告を求めていた。
 県の配慮事項では、藻場・サンゴ類への配慮として「調査地点付近の藻場・サンゴ類および海底地盤の状況について、写真とあわせて図示し記録すること」と要望していた。
 施設局はこれまで、機器の設置などについては県と調整して進めていくと説明していた。
 22日の会議には、海域使用に関係する返還問題対策課と文化課、水産課、環境政策課、海岸防災課から担当者が出席した。(滝本匠)
(琉球新報 5/23 9:45)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23981-storytopic-3.html

琉球新報 社説
サンゴ損傷・作業方法は適切だったか
 自然環境を調べるために自然を破壊したのでは本末転倒としか言いようがない。那覇防衛施設局が普天間飛行場代替施設移設先の環境現況調査(事前調査)のため名護市辺野古沖に設置した機器によって、サンゴが損傷していたと環境保護団体が明らかにした。
 ジュゴンネットワーク沖縄、ジュゴン保護基金委員会の両団体が公表した写真によると、サンゴの産卵状況を調べる着床具を固定する鉄筋が、生きたサンゴを貫通、亀裂を生じさせていた。
 那覇防衛施設局は、早急に事実関係を調査し、詳細を明らかにすべきだ。
 そもそも、この環境現況調査自体、機器の設置場所など詳細を一切公表しないままに実施されていることが大きな問題だ。これでは作業の仕方や調査方法が適切なのかどうか、誰にも分からない。
 作業に協力したとされる海上自衛隊の潜水士が具体的にどのような作業に携わったのか、何人が参加したかについても防衛省は明らかにしていない。
 分かっているのは、サンゴ調査機器39カ所、海生生物調査用ビデオカメラ14カ所、パッシブソナー(音波探知機)30カ所、海象調査用機器29カ所の計112カ所に機器を設置するということぐらいだ。
 しかも、これらを発表したのは施設局ではなく公共用財産使用協議に同意した県である。政府は説明責任を一切果たしておらず、事前調査の全容は秘密のベールに包まれている。
 県は、海域使用に同意した際、ジュゴンやサンゴへの配慮を要望した。その中で「調査機器の設置に当たっては、調査地点周辺の藻場・サンゴ類および海底地盤への影響を低減するため、調査機器設置前の現地踏査の結果を勘案して設置位置の調整を行うこと」などと求めていた。
 施設局は、これをどう受け止めたのか。サンゴを傷つけないための適切な対策を講じたのか、あるいは講じなかったのか。
 那覇防衛施設局は「機器を設置するときはサンゴのない場所を選んで作業するという手順になっている」と説明しているが、作業手順が守られていなかった可能性がある。
 環境団体の間からは「サンゴに詳しい業者ではなく、自衛隊員が作業に入ったためサンゴを損傷したのではないか」と指摘する声さえ出ている。疑問は尽きない。
 施設局は調査機器の設置場所を公表すると同時に、自衛隊、民間の潜水士の数、それぞれが担当した地点などを含め、明らかにすべきである。すべてを覆い隠した秘密の調査では、県民の不信を増幅させるだけだ。
(5/23 9:52)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23987-storytopic-11.html

「集団自決」の軍関与削除 座間味、渡嘉敷撤回意見書へ
 【座間味・渡嘉敷】座間味村議会(金城英雄議長)、渡嘉敷村議会(島村武議長)は22日、全員協議会を開き、教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する記述で日本軍による命令などの表現が削除されたことに対し、検定意見を撤回するよう国に求める意見書を提案することを決めた。座間味村は29日に臨時議会を開き、意見書を全会一致で可決する見通し。渡嘉敷村は6月14日開会の6月定例会に提案。初日の14日に全会一致で可決する見通し。
 沖縄戦で旧日本軍の秘密部隊、海上特攻隊が置かれた座間味、渡嘉敷の両村では「集団自決」が起きた。座間味村は米軍が上陸した1945年3月26日、座間味島、慶留間島、屋嘉比島で手りゅう弾やかみそりなどを使った「集団自決」が発生。
村長をはじめ村職員、住民ら多数が死亡した。
 渡嘉敷村では同月28日に「集団自決」が起き、人口1500人のうち、200―300人が犠牲になったとされる。「軍命があった」と証言する住民もいる。
 文科省は検定姿勢変更の理由の一つとして、当時の座間味島の指揮官の「自決命令はない」との訴訟提起を挙げている。
(琉球新報 5/23 10:02)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23993-storytopic-1.html