琉球新報社説(5月24日)・沖縄タイムス関連記事(5月25日)

米軍再編推進法・これで理解得られるか/関係地元より対米合意優先

 在日米軍再編への協力度合いに応じて関係する地方自治体に再編交付金を支給することを柱にした米軍再編推進法が23日、成立した。日米両政府が2006年5月に合意した在日米軍再編計画の円滑な実施が狙いである。

 同計画は基地所在市町村の「負担軽減」につながるとされている。しかし、米軍普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設するなど「負担軽減」には程遠い。

 再編が計画通り終了したとしても、沖縄の在日米軍専用面積は75%から70%になるだけ。負担軽減といいながらも、嘉手納基地にはミサイル防衛のためのパトリオットの配備、最新鋭ステルス戦闘機F22Aの一時配備など抑止力強化の押し付けだけが目立つ。

 障害は政府の姿勢

 同法は、防衛相が関係自治体を「再編関連特定周辺市町村」に指定し(1)再編計画受け入れ(2)環境影響評価の着手(3)施設整備の着工(4)工事完了・運用開始-の4段階に分けて「再編交付金」を上積みするのが柱。特に負担の重い市町村には、公共事業での国の補助率をかさ上げする。

 協力する自治体に再編交付金を与え、反対する自治体には交付しない「アメとムチ」を制度化している。地方自治の面からも大きな問題をはらんでいる。

 1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、普天間飛行場の返還、移設を決定し、地元に振興策を提供したものの、移設作業が進展しなかった「反省」が新たな制度創設の背景にあるといわれる。

 SACO合意が実施できなかったのは、県民から県内移設への反発があったからにほかならない。

 今回の再編計画でも普天間飛行場は県内移設であり、県民の反発は依然として根強い。県内移設は県民の多くが望んでいないことを政府は理解するべきだ。

 政府は再編計画を基本的に受け入れた名護市の修正要求にさえ、応じていない。かたくなな姿勢を改めるべきである。「円滑な実施」の障害は海上自衛隊の掃海母艦まで動員して強力に作業を進めるような政府の姿勢にある。

 成立した再編推進法は問題点を残したままだ。

 交付金を支給する自治体の選定基準は明確でない。名護市を支給対象にするかでは久間章生防衛相と同省幹部で一致していない。客観的な基準作りはこれからである。

 日本が負担する在沖米海兵隊のグアム移転費の59%(約7200億円)の具体的な内訳も明らかではない。

 それに、法案審議に要した時間は衆院安全保障委員会は約16時間半、参院外交委員会は約16時間でしかない。これで十分に審議を尽くしたといえるだろうか。

 自治体の要望配慮を

 航空自衛隊のイラク派遣を2年延長するイラク復興支援特別措置法改正案の審議を控えていることが成立を急いだ要因に挙げられている。

 安倍晋三首相の日米関係を重視する姿勢も性急な成立につながったといえよう。安倍首相は4月末のブッシュ米大統領との会談で、米軍再編の着実な実施を約束した。

 その直後に開かれた外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも、それを確認している。

 米国との合意の円滑な実施が関係自治体の理解を得ることより、最優先すべきということなのだろうか。

 再編計画に異を唱えているのは沖縄だけではない。

 山口県岩国市は神奈川県の厚木基地からの米空母艦載機移転に反対している。

 「アメとムチ」が再編推進法の本質であり、久間防衛相は岩国市に対して交付金を支給しない考えを示している。

 しかしながら、同法は基本理念として「駐留軍等の再編に対する幅広い国民の理解が得られるよう配慮されなければならない」と明記している。

 仲井真弘多知事は再編計画の実施について「地元の理解と協力が不可欠で、普天間飛行場の移設問題をはじめ、地元の意向に配慮して進めることが円滑な実施につながると考えている」と述べている。

 それは、多くの関係自治体が政府に求めていることである。法の基本理念にのっとり、関係自治体の要望に十分に配慮することを政府に求めたい。

 

(琉球新報 5/24 10:48)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24024-storytopic-11.html

 

 

沖縄タイムス

2007年5月25日(金) 朝刊 25面

海自投入「法を逸脱」/大学教授ら21人が声明

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)に海上自衛隊が派遣されたことに対し、県内の大学教員二十一人は二十四日、県庁で記者会見し、「自衛隊法の枠を逸脱し、拡大解釈につながる極めて危険なことだ」と抗議声明を発表した。

 

 琉球大学の高良鉄美教授、我部政明教授、沖縄国際大学の佐藤学教授らの呼び掛けで、「自衛隊の政治利用を憂慮する大学人有志」として声明を出した。

 

 「米軍再編協議における日米合意の実施において、地元沖縄での支持を得る努力をするという政府の言葉とは懸け離れている。自衛隊は国民の安全のために存在すべきで、国民を抑え込む行動は禍根を残す暴挙」と指摘した。(1)法的根拠を欠く(2)地元無視(3)政治利用-などの理由から自衛隊派遣に抗議し、事前調査の中止などを求めている。

 

 我部教授は「自衛隊をどう使うかは国民の監視、信頼の下に置かれるべきだ」、高良教授は「出動の根拠があいまいで、法的に問題」、佐藤教授は「米国に対し、やるだけのことをやったとみせる意図があった」などと述べた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251300_05.html

 

2007年5月25日(金) 朝刊 24面

教科書検定撤回を/大阪で/集団自決シンポ

 【大阪】沖縄戦時に慶良間諸島で起きた住民の「集団自決」への軍命の有無などをめぐる訴訟の第九回口頭弁論が二十五日に大阪地裁で開かれるのを前に、シンポジウム「沖縄戦集団死の書き換えを許さない」(主催=大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会)が二十四日夜、大阪市内で開かれた。研究者や教師、出版関係者ら約百五十人が参加。文部科学省の検定撤回や、同訴訟で旧日本軍による命令があったと主張する被告側の支援に向け、全国規模の運動を実現する重要性を確認した。

 

 沖縄国際大の津多則光講師は文科省の教科書検定を「沖縄戦からこれまで六十数年の学問の集積をすべて否定するものだ」として、撤回のために沖縄と本土が連携するべきだと述べた。

 

 大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長は、一九八二年に高校の日本史教科書で「日本軍による住民殺害」が削除された際に、次回検定から記述が復活した経緯を説明。

 

 「当時は運動の盛り上がりがはね返して(文部省が記述を)元に戻した。検定の誤りを(教科用図書検定調査)審議会に認めさせるための運動が大事で、大阪の県人会組織にも協力をお願いしたい」と述べた。

 

 フロアとの質疑応答では作家の目取真俊さん、沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授らが意見を述べた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251300_09.html

 

 

2007年5月25日(金) 夕刊 7面

訓練移転 負担減ならず/1日の騒音回数 5月最多

 【嘉手納・北谷】騒音被害の軽減を目的に米軍戦闘機が本土で訓練を実施した十六日からの七日間に、多くの人が不快に感じる七〇デシベル以上の一日の騒音発生回数が嘉手納町で百七十五回(二十一日)、北谷町で二百一回(十七日)を計測し、五月(二十四日現在)の最多を記録した。訓練移転により騒音が減り、日米両政府が訴えた"負担軽減"につながるはずだったが、住民の期待を裏切る結果となった。(福里賢矢、銘苅一哲)

 

 今回の訓練移転は、嘉手納基地所属のF15五機が航空自衛隊小松基地(石川県)に出向き、空自と共同訓練を実施した。

 

 嘉手納町によると、屋良地区で計測した騒音は二十一日に百七十五回で期間中の最多、次いで十六日百五十八回、二十二日百四十五回、十七日百三十八回と続き、いずれも二〇〇六年度の一日平均(百九回)を上回った。

 

 一方、北谷町砂辺地区では、十七日に五月最多の二百一回を計測。期間中の一日平均は百一回だった。

 

 両町の担当課は嘉手納基地に一時配備された最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター、頻繁に飛来するAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機など、外来機が同基地を日常的に使用する現状を指摘。その上で、「移転が必ずしも騒音軽減につながるとはいえない」としている。

 

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「米軍の第一目的は自衛隊との共同訓練。騒音負担軽減は二次的なものでしかない。住民の望む負担軽減は部隊の完全撤去でしか実現しない」と厳しく批判した。

 

 北谷町議会基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「砂辺で生活していて、二度の訓練移転では軽減を感じられなかった。沖縄は変化がなく、移転先で騒音を増やす。訓練移転は被害を拡大するだけだ」と憤った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251700_01.html

 

 

2007年5月25日(金) 夕刊 1面

名護市は「受け入れ分」/再編交付金

 【東京】久間章生防衛相は二十五日の閣議後会見で、米軍普天間飛行場代替施設の沖合移動を求めている名護市への再編交付金の支給について、「受け入れは一応表明している」として、支給対象になるとの考えをあらためて示した。

 

 ただ、同交付金制度が再編の進ちょくに応じて四段階に分けて積み上げる方式であることを念頭に、「百パーセント(全額)ではない」と述べ、現段階では第一段階の「再編案受け入れ」に相当する額が交付されるとの認識を示唆した。

 

 その上で久間防衛相は「事前調査についても名護の同意が付いている。法律(再編推進法)を素直に読めば、そういう協力をしてもらっているところが対象にならないというのは考えられない」との認識を強調した。

 

 法案は防衛相が関係自治体を「再編関連特定市町村」に指定。(1)再編案受け入れ時に総額の10%(2)環境影響評価(アセスメント)実施時に30%(3)基地着工時に60%(4)完成時に全額-の四段階で交付金を上積みする仕組みだが、久間防衛相は第一段階の条件は満たしているとの考えを示したものとみられる。第二段階以降については「これから具体的な市町村を指定していく。手続きが終わった段階ではっきりすることになると思う」と述べるにとどめた。

 

 久間防衛相の認識について防衛省首脳は「(修正を求めるなどの)意見を言うのはいいということ。それを採用するかどうかはこちらが判断することだ」と語った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251700_02.html

 

2007年5月25日(金) 夕刊 7面

浦添議会も意見書/「集団自決」修正

 【浦添】教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍の関与が高校の歴史教科書から削除された問題で、浦添市議会(大城永一郎議長)は二十五日午前、臨時議会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は内閣総理大臣、文部科学大臣、衆参両議院議長ら。

 

 意見書では「日本軍の『集団自決』の強制を否定する学説や元軍人らが起こした係争中の裁判などを理由に、一方の当事者の主張のみを取り上げた文科省の検定は自らの検定基準を逸脱しており、体験者の証言や歴史的事実を否定するものだ」と批判した。

 

 その上で「沖縄戦の『集団自決』が日本軍による命令・強制・誘導などなしに、起こり得なかったことは紛れもない事実で、そのことをゆがめることは県民にとって到底容認できない」と抗議した。沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさないためにも、速やかに検定意見を撤回するように要請している。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705251700_03.html

 

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