月別アーカイブ: 2007年11月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月25日から28日)

2007年11月25日(日) 朝刊 1・2・27面

北部振興費執行へ調整/移設協議題合意条件

 【東京】政府は二十四日までに、本年度分の執行が凍結されている北部振興事業費(百億円)を、次回の普天間飛行場移設協議会の議題で関係省庁と地元が合意することを条件に、解除する方向で調整に入った。この条件が整えば、二〇〇八年度予算にも百億円を計上し、振興策の枠組みを継続する。防衛相や沖縄担当相ら閣僚レベルではまだ認識が一致していないが、県や名護市との「対話路線」を重視する首相官邸の意向とみられる。

 十一月七日に第四回協議会が十カ月ぶりに開かれ、政府と地元は次回の協議会を十二月の第三週(十日―十四日)に開く方向で日程調整している。

 政府関係者は二十四日、沖縄タイムス社の取材に「次回協議会の議題と日程が正式に決まることが、執行の条件だ」との見通しを示した。

 北部振興費の執行条件は「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」こととされる。

 内閣府幹部は「十一月、十二月と間を置かずに関係者が同じテーブルに着けば、協議が円滑に進んでいるといえる」と判断している。

 一方、複数の防衛省幹部は「協議会で地元が普天間移設に関して、何らかの譲歩や妥協を表明することが条件だ」として、議題の中で、従来より踏み込んだ移設への協力姿勢を示す必要があるとの考えを崩していない。関係者によると、予算凍結の解除には、財務省も難色を示しており、関係省庁間ではまだ認識が一致していない。

 ただ、政府内の調整役を務める首相官邸は、県と名護市が普天間代替施設のV字形滑走路案(政府案)の沖合移動を要求している現状に危機感を募らせている。このため、政府案に理解を求める手段の一環として、北部振興事業費の執行に傾いているもようだ。


[ことば]


 普天間飛行場移設問題 日米両政府は1996年、米軍普天間飛行場の返還、移設で合意。99年、移設先は名護市辺野古沿岸域と決まった。しかし着工が遅れ、両政府は2006年、移設先を同市のキャンプ・シュワブ沿岸部に変更、V字形に滑走路2本を建設すると合意した。これに伴い、政府と県などは建設計画や振興策などを話し合う協議会を設置した。


     ◇     ◇     ◇     

解説/北部振興費執行


 政府が予算執行を凍結している北部振興事業費を解除する方向で調整を始めた背景には、首相官邸の意向がある。普天間飛行場移設で地元の軟化を促すため振興予算を?カード?に事態打開を模索しているのが現状だ。一方、防衛省や財務省は地元の譲歩がないまま「執行ありき」で協議を続けることに強く難色を示しており、政府内で調整が難航するのは必至だ。

 今月七日に約十カ月ぶりに再開した普天間移設協議会は、主宰者を町村信孝官房長官に変更し、官邸主導を鮮明にした。

 首相官邸が進展を急ぐのは、北部振興費の凍結が続けば、公有水面の埋め立て許可を持つ仲井真弘多知事が態度を硬化させ、普天間移設そのものが頓挫しかねないとの危機感があるからだ。

 地元にとっても来年度予算の計上まで止められると、北部振興事業の枠組みそのものが消滅する恐れがあり、十二月下旬の予算編成直前がぎりぎりのタイミングとなる。

 しかし、名護市辺野古沖移設の従来案を進める過程で、二〇〇〇年度から年間百億円の予算が毎年計上されたにもかかわらず、移設が進まなかった「反省」から、防衛省などの警戒感は強い。

 ゲーツ米国防長官も町村氏に沖合移動に強い難色を示しており、政府の譲歩は困難な情勢だ。

 県政、市政とも国と激しく対立するのは本意ではなく、次回協議会で何らかの歩み寄りを示す可能性もある。(東京支社・吉田央、島袋晋作)


名護市長は期待感


 米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり政府が凍結していた本年度の北部振興策百億円を執行をする方向で調整に入ったことに、島袋吉和名護市長は二十四日「政府から連絡がないのでコメントはできない」とした上で、「北部各市町村はそれぞれ事業を計画しており、早めに予算執行してほしいというのは以前から申し上げている通りだ」と期待する考えを示した。

 上原康作北部振興会会長(国頭村長)は「政府が継続を決めたのなら大変喜ばしい。当初は十年間の予定だった北部振興策。いろいろ利害関係はあるが、まずは信頼関係を築かなければならない。これが大きなきっかけになって(移設問題も)、いい方向に動くのではないか」と話した。

 県の仲里全輝副知事は「政府からはまったく聞いていない」と断った上で、「普天間代替施設については、県も名護市も日米合意を踏まえるという立場であり、北部振興策の凍結解除は当然」との認識を示した。一方で「(普天間移設問題と)バーターにしようというのであれば話は別。凍結解除されようが、知事はこれまでの(沖合移動の)主張は譲らないと思う」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_03.html

 

2007年11月25日(日) 朝刊 2面

F15あす飛行再開/米判断「見切り発車」

 米国内でのF15戦闘機墜落事故を受け四日以降、同型機全機の飛行を停止してきた米空軍は二十一日に解除を発表。嘉手納基地所属のF15戦闘機は二十六日から点検を終えた機が順次飛行を再開する。今回の事故が約三週間に及ぶ飛行停止を招いたのは、機体の「構造的欠陥」の可能性が指摘されたためだ。三十年以上に及ぶ運用実績や構造検査技術の向上で、耐用期間(距離)が延長されてきたF15の性能への「過信」はないのか。老朽化との因果関係が解明されないまま、飛行再開に踏み切る米空軍の判断には「見切り発車」の懸念もぬぐえない。(政経部・渡辺豪)

 事故は十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。「操縦席の後方付近の胴体が損傷したため飛行不能となって墜落した」という。事故原因について米空軍は「初期段階の調査は、航空機に構造上の欠陥が起きた可能性を示している」と指摘した。


構造上の欠陥


 「構造上の欠陥」について航空評論家の青木謙知氏は「設計や素材の不適切など本質的な問題を指す。今回は広く『老朽化』の意味で使われたのではないか。F15の設計寿命が予測以上に持たなかったという懸念が生じた可能性もある」と解説する。

 米空軍は一九七四年にF15の配備を開始。米本土以外に日本、アラスカ、ハワイ、英国、中東に配備し、約七百機を保有している。このうち約五百機は約二十五年前に製造された旧型。ミズーリ州の墜落機も二十七年前に製造されたという。

 F15C、D型機を保有する嘉手納基地は昨年一月、全五十四機の機体更新を発表。七八年に製造された機体を、米国ラングレー基地の別タイプのエンジンの機種に順次更新しているが、機体の製造年は七八―八五年。更新後もミズーリ州の事故機と同型、同製造年代の機体を含んでいる可能性がある。

 F15は全国に約二百機を配備している航空自衛隊の主力戦闘機でもあり、二〇〇八年度中には空自那覇基地にも配備予定。事故と経年劣化の因果関係の解明は米軍機への影響にとどまらない。


リスク承知で


 「われわれは最優先の義務である自国の防衛のため、危険を受け入れる」 事故調査委員会による調査の「継続中」に飛行再開が決まった二十一日、ラングレー基地のコールリー大将はパイロットらに「リスク」を承知で任務を再開するようげきを飛ばした。

 米空軍の飛行停止措置が約三週間に及ぶのは極めて異例だ。これは米軍自らが今回の事故の深刻さを認識している証しでもある。だが、米空軍としては運用面で飛行停止の長期化には限界があり、早期に解除せざるを得ない状況に置かれていたのが実情だ。

 飛行停止期間が長期に及んだ理由について青木氏は(1)事故機が予備役の州空軍が使用する、かなり古い型の機体だったため、老朽化の影響を慎重に判断する必要に迫られた(2)「空中分解」という事故の特異性―を指摘。その上で、米空軍が飛行再開に踏み切った経緯については「事故原因は調査中でも、問題が疑われる部位の特定は可能。同型機の非破壊検査で異常が見つからず、事故機固有の問題である可能性が高いと判断したのだろう」とみる。

 しかし、「事故機固有の問題」と結論付ける証拠が提示されない限り不安は解消されない。

 米空軍は〇四年にF15の購入を中止し、F22への更新を図っている。だが、予算の制約のため、米国議会は米空軍からの三百八十一機の更新要求に対し、百八十三機のF22の購入認可にとどめている。F22はこれまでに九十七機導入されているが、今回のF15の事故で「F22の導入が促進される」との見方も出ている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_08.html

 

2007年11月25日(日) 朝刊 26面 

「軍は国体守る組織」/平和大会「集団自決」シンポ

 国内の米軍基地の撤去を訴える「2007年日本平和大会IN沖縄」(主催・同実行委員会)は二十四日、県内各地で分科会やシンポジウムを開いた。

 そのうち、那覇市内では「『集団自決(強制集団死)』問題をどう考えるか 戦争の真実をゆがめる動きを許すな」シンポジウムがあり、県内外から参加した約八十人が沖縄戦の実相を学び、高校歴史教科書の「集団自決」記述から日本軍による強制を削除した検定問題について意見を交わした。

 パネリストには沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授、沖縄タイムス社の謝花直美編集委員、琉球大の山口剛史准教授、県平和委員会の大久保康裕事務局長が参加。安仁屋名誉教授と山口准教授はそれぞれの研究から、「軍隊は住民ではなく国体を守る組織だ」と主張した。

 「集団自決」生存者への取材を重ねてきた謝花編集委員は「生き残った苦しみがある中で、語ることの意味を受け止めながら真実を伝えたい」と話し、大久保事務局長は「有事法制の整備を進めたい日米両政府にとって、戦争を経験した沖縄県民の存在が長年の課題になっている」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_10.html

 

2007年11月26日(月) 朝刊 1面

米F15きょう飛行再開

嘉手納基地3週間ぶり周辺自治体反発強く

 【嘉手納】米本国での墜落事故を受け、飛行停止していた米軍嘉手納基地のF15戦闘機が二十六日、三週間ぶりに飛行を再開する。同基地は「入念な点検を終えた機体から順次再開する」としているが、周辺自治体は事故の詳細や原因が明らかにされないままの飛行再開に、反発を強めている。

 事故は今月二日に米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属のF15戦闘機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。米空軍は「構造上の欠陥が起きた可能性がある」とし、世界各地に展開しているF15に飛行停止命令を出した。嘉手納基地では四日から飛行を停止していた。

 同基地は十七日から、詳細な整備調査チェックリストと照らし合わせ、一機に付き十五時間以上かけて点検している、と説明。飛行性能を確認後、二十六日から順次飛行を再開するという。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十二日にF15の飛行再開中止、同機の撤去を求めて同基地司令官らに抗議、要請した。嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十六日に基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261300_01.html

 

琉球新報 社説

北部振興策 格差是正が原点のはずだが

 北部振興策はいつから変質したのであろうか。戦後長きにわたる苦難の歩みで生じた県外との経済格差や、県内における地域格差の是正が原点のはずだが、「軍事基地の負担増」と引き換えという政府側の切り札にされてしまっている。

 これはおかしい。外交努力を怠り、半世紀余も県民に基地の重圧を強いていながら、政府が沖縄に対して高圧的な態度に出るのはどういうことだろう。地元に「アメとムチ」をちらつかせ、予算を凍結するとか、解除するとかいう手法は理解に苦しむ。

 問題の本質をすり替えては、事は永遠に解決しない。基地受け入れと経済振興策は基本的にリンク(関連)しないということを、関係各省にはあらためて確認してもらう必要がある。

 米兵による少女乱暴事件から1年が経過した1996年9月。当時の橋本龍太郎首相は「沖縄問題についての首相談話」を閣議決定し、沖縄政策協議会の設置を表明した。談話にはこうある。

 「過ぐる大戦で沖縄県民が受けた大きな犠牲と、県勢の実情、今日まで県民が耐えた苦しみと負担の大きさを思うとき、私たちの努力が十分なものであったか謙虚に省みるとともに、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを痛感している」

 さらに「地位協定の見直しや米軍基地の整理・縮小を求める県民投票に込められた県民の願いを厳粛に受け止める」とし、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国と協議していく姿勢を強調した。

 首相談話は「反省」と「痛みの解消」を基調としており、アメとムチ論は読み取れない。実際、基地と振興策のリンクを問う記者団に、橋本氏は「(そんな質問は)悲しい」と答えている。首相の姿勢に、県民は沖縄政策の新しい出発点を感じたものだ。

 確かに、基地と振興策は切り離せないとの見解はあるだろう。しかし、それは、振興策が基地の整理・縮小につながるという意味でのリンク論であり、負担増と引き換えということではあるまい。

 こうした原点は、なし崩しにされていく。小泉政権になると、普天間飛行場移設計画の進み具合に応じ、北部振興策を講じる出来高システムが表面化。安倍政権では沖縄担当相が「移設問題は進まないのに、北部振興は国で受けるという形にはならない」と、堂々とリンク論を張る変質ぶりだ。

 そこには、県民の思いを「謙虚に省みる」姿勢がみじんも感じられない。北部振興策は、県内の均衡ある発展のために講じられるものである。予算の凍結解除は当然だ。明確な理由もなく当初方針を変えないでもらいたい。

(11/26 9:40)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29230-storytopic-11.html

 

2007年11月26日(月) 夕刊 1面

F15 3週間で飛行再開/事故原因は未公表

 【嘉手納】米本国でF15戦闘機が墜落したことを受け、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15が二十六日午前、約三週間ぶりに飛行を再開した。午後一時までに、約十五機が離陸し、このうち、一機が緊急着陸した。さらに一機が同基地着陸後にトラブルが発生したとみられ、機体のチェックを受けた。嘉手納町屋良では、離陸時に最高で九四・六デシベル(騒々しい工場内に相当)の騒音を計測。事故当時の詳細や原因を公表しないまま、飛行を強行した米軍に対する周辺自治体や議会、住民の反発は一層強まっている。

 F15は同基地南側滑走を使用、同日午前九時二十分ごろ、二機が相次いで離陸したのを皮切りに、飛行訓練を再開。いずれも沖縄本島周辺の訓練区域で飛行訓練を実施したとみられる。

 離陸時の騒音は、ほとんどが多くの人が不快に感じる八〇デシベル(地下鉄の車内の音に相当)以上を計測した。

 嘉手納基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで組織する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は同日午前会見し、「米軍は三週間で機体の点検をしたというが、我々と米軍の安全の認識にずれがあり、住民の不安は解消されていない。点検内容や事故原因を情報公開すべきだ。三連協で抗議を検討したい」と述べた。

 出張中の東門美津子沖縄市長は「周辺自治体の強い中止要請の声を無視し、いまだ事故原因が確定しない中での運用は断じて容認できるものではない」とコメントした。

 三連協は今月二十二日にもF15を「欠陥機」と指摘し、嘉手納基地から撤去するよう同基地司令官らに抗議、要請していた。

 墜落事故は二日に米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属のF15戦闘機が戦闘訓練中に墜落した。

 米空軍は当初「初期段階の調査は、航空機に構造上の欠陥が起きた可能性を示している」と指摘。世界各地に展開しているF15に飛行停止命令を出し、嘉手納基地のF15も四日から飛行を停止していた。

 沖縄平和運動センターなどの市民団体は、二十六日正午すぎから嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で集会を開き、事故原因を明かさずに飛行を再開した米軍に抗議した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261700_01.html

 

2007年11月26日(月) 夕刊 5面

安全に疑問 怒る住民/強行米軍に不信感

 【中部】本当に安全なのか―。嘉手納基地のF15戦闘機が二十六日午前、事故原因を明かさないまま約三週間ぶりに飛行を再開し、住宅地に騒音をまき散らした。午後一時までに一機が緊急着陸、別の一機も着陸後にトラブルを起こし、安全性になお疑問も。周辺住民らは「理解し難い」「沖縄で墜落する可能性もある」と不信感を募らせている。同機の訓練移転先の県外住民からも「納得し難い」の声が上がった。

 F15は、沖縄市方面へ飛び立ち、爆音がとどろいた。同市議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝会長は「墜落原因も分からない中で飛行再開し、緊急着陸も引き起こした。市民の不安は大きくなるばかりだ」と話し、二十七日に基地特委を開催し抗議する方向で対応を協議する。

 飛行ルート下にある沖縄市知花自治会の田島清信会長(61)は、トラブルを繰り返したことに「問題を抱えるF15の飛行再開はけしからん話だ。住民を軽視してはいないか」と憤った。

 北谷町砂辺区に住む主婦の宮平弘子さん(67)は、騒音被害に苦しみ、二月に区内の別の場所に引っ越した。「事故の原因も分からず、住宅の上を飛ばれるのは不安でしょうがない。住民はいつも無視されている」と怒りをあらわにした。約千世帯、三千人が暮らす嘉手納町東区の島袋敏雄自治会長(62)は「事故原因などが見えない中で、地域に何の説明もなく再開するのは理解し難い」と強調した。

 一方、県外の関係者からも飛行再開に批判の声が上がった。

 米本国での墜落事故直後の五日から、嘉手納基地のF15が参加して訓練が行われる予定だった空自小松基地(石川県)。小松基地騒音訴訟原告団長の広瀬光夫さん(73)は「小松のF15はまだ飛行再開していないが、いくら抗議しても対応してくれない」と強調。

 「黙っていたら何をするか分からない。絶えず声を上げていきたい」と話した。


消防車出動 一時騒然と

緊急着陸


 【嘉手納】二十六日午前に飛行を再開した米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機のうち、二機に相次いでトラブルが発生した。午前十時三十五分ごろに一機が緊急着陸。正午ごろには、着陸したもう一機の機体にもトラブルが発生した。両機ともに基地内の消防車など緊急車両に囲まれ、一時騒然とした。

 両機ともに北谷町方向から南側滑走路に着陸。同基地によると、緊急着陸した機体は「予防的な着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明している。

 目撃者によると、正午ごろに着陸したF15は、装備していた訓練用照明弾(フレアー)にトラブルが発生したとみられ、兵器を扱う要員がフレアーを回収している姿が確認された。両機とも、消防車からの放水はなく、自走して格納庫に戻った。


「欠陥機」撤去訴え

市民団体が抗議集会


 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行再開に対し、沖縄平和運動センターと中部地区労は二十六日、嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で緊急集会を開き、F15の撤去を求めて抗議した。集会に参加した県内の労組メンバーや議員ら約六十人は、滑走路に向かってこぶしを突き上げ、「F15を即時撤去せよ」「住民を危険にさらすな」とシュプレヒコールを上げた。

 同センターの山城博治事務局長は「欠陥機F15はいつ住民の頭上に墜落しないとも限らない。米本国での事故原因を明らかにしないまま、飛行を再開した米軍に怒りをもって抗議する」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261700_02.html

 

2007年11月26日(月) 夕刊 4面

「泡瀬」是非の声 市長に届けよう/若者が市民の意見募集

 【沖縄】「泡瀬の海の埋め立てについて、市民の声を市長に届けたい」沖縄市の中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業について「市民みんなで考えよう」と、市内に住む二十代から三十代の若者らで組織するグループが二十五日、市上地のコザ・ミュージックタウン前で買い物客や通りを行き交う人たちから東門美津子沖縄市長あてのメッセージを募った。

 事業の是非について東門市長は「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて年内に結論を出す」と公約。早ければ十一月末にも結論を出すとみられることから「『推進』とか『中止』の立場ではなく、まずは市民みんなで考える時間も必要」と企画。集まったメッセージは結論の判断材料にしてほしいと、二十八日にも東門市長に手渡す。

 用意したメッセージ記入用紙は二千五百枚。二十五日は中高生や親子連れから約六十人分のメッセージを回収した。

 思いを書き込んだ比嘉柳斗さん(19)=市安慶田=は「埋め立てるお金を、福祉などもっとほかのところに使ってもいいと思う」。一番街で働く男性は「自然を壊すのは良くないが、活性化し食べていくためには必要」とそれぞれの思いをつづった。

 企画した桑江直哉さん(33)=市泡瀬=は「政治家や学識経験者などが環境や経済で議論しているが、将来を担う若い人たちが意見を言える場がない。民主主義がないのが問題だと思う」。久場良美さん(24)=市嘉間良=は「市の将来を左右する事業なのに市民の関心が薄いのは問題。みんなが関心を持ってほしい」と呼び掛けた。

 メンバーは引き続き十二月二十五日までメールやファクスなどでメッセージを募り、同二十八日に東門市長に手渡す予定。

 ファクスは020(4622)2741、メールアドレスはinfo@193-project.com

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261700_04.html

 

2007年11月27日(火) 朝刊 29面

「体験者の参考人出席を」/県民大会実行委員

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の一部主催団体が、「集団自決」体験者らの国会への参考人出席を目指して、準備を始めた。「集団自決」への軍の強制があったことを示す証言を国会議事録に残し、同じ検定が繰り返されないようにすることが狙いだ。

 県子ども会育成連絡協議会(沖子連)や県婦人連合会などが中心となり、「集団自決」体験者の吉川嘉勝さんや県民大会実行委員長の仲里利信・県議会議長、沖縄戦研究者の安仁屋政昭・沖縄国際大名誉教授の国会への参考人出席を目指して動いている。

 大会実行委は十月中に二度にわたり上京し、渡海紀三朗文科相らに検定意見撤回と、「集団自決」への軍の強制を示す教科書記述の回復などを要請した。国は記述回復には前向きな姿勢をみせたが、検定意見撤回などには難色を示した。

 沖子連の玉寄哲永会長らは、「集団自決」体験者らの軍の強制についての証言を国会議事録に残し、沖縄戦について、同じような教科書検定が繰り返されることへの歯止めにしたいと考えた。

 すでに、県選出の超党派の国会議員から協力の約束を取り付けた。仲里議長らも了承しており、今国会中に、沖縄北方問題特別委員会への参考人出席が実現するよう働き掛けを強めている。

 玉寄会長は「教科書会社も軍強制を示す記述で訂正申請している。私たちもできる限りのことをして、沖縄戦の本当の姿を伝えていかなければいけない」と話した。

 また、琉球大の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授は二十六日までに、この教科書検定問題をめぐり沖縄で、十一万六千人が参加した県民大会が開催されたことを、小・中・高校の社会科教科書の年表などに付け加えるよう、各教科書会社に要請文を送った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271300_02.html

 

2007年11月27日(火) 朝刊 29面

騒音70デシベル以上92回/F15飛行再開

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した二十六日、嘉手納町屋良では多くの人が不快に感じる騒音(七〇デシベル以上)を午後五時までに九十二回計測した。同日は少なくても約二十五機のF15が離陸、うち二機にトラブルが発生するなど、安全面にも疑問を残す結果となった。

 同基地では二十六日、F15のほか、FA18戦闘攻撃機、P3C対潜哨戒機などが離着陸を繰り返した。嘉手納町によると、同町屋良に設置している騒音測定器は、二十六日午前零時から十七時間で九十二回の騒音を計測。最高値は午前十一時五十七分に九四・六デシベル(騒々しい工場内に相当)だった。

 飛行を停止していた今月四日―二十五日までの期間中、一日平均の騒音発生回数は六一回。十月の一日当たりの平均騒音発生件数は九〇・八回で、同町は「通常の基地運用に戻りつつある」と指摘した。

 F15は午前十時三十五分ごろに一機が緊急着陸。正午ごろには、別の機体が着陸後にトラブルを起こした。目撃者によると、訓練用照明弾(フレアー)を取り外す様子が確認されたという。

 同基地報道部は緊急着陸について「予防的な着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明した。

 沖縄平和運動センターと中部地区労は二十六日、通称「安保の見える丘」で緊急集会を開いた。同センターの山城博治事務局長は「いつ住民の頭上に墜落しないとも限らない。米本国での事故原因を明らかにしないまま、飛行を再開した米軍に大きな怒りをもって抗議する」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271300_03.html

 

2007年11月27日(火) 朝刊 28面

「干潟守れ」300人集会/泡瀬埋め立て

 【沖縄】「世界に誇れる泡瀬干潟を守ろう!」市民集会(主催・市民集会実行委員会)が二十六日夕、沖縄市農民研修センターで開かれた。中城湾港泡瀬沖合を埋め立てる東部海浜開発事業に反対する市民ら約三百人が参加。東門美津子沖縄市長に一期工事の中断、見直しを要請するアピール文を採択した。

 大会はパネルディスカッションなどを通し、同干潟が希少種の生息地であるほか、埋め立て事業が市民に財政的な負担を押し付けると指摘した。

 桑江テル子実行委員長は「泡瀬干潟を破壊してはいけない。東門市長は多角的な視点で精査し、勇気を出して計画を抜本的に見直してほしい」と要望した。

 アピール文は、沖縄市や県の将来、自然環境保全にとって何が大切なのかを根本から問い直そうと呼び掛けている。那覇市から参加した宇地原睦恵さん(54)は「自然は一度壊したら戻らない。将来に残すためにも、止められるものは止めたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月27日朝刊)

[F15飛行再開]

地域住民を軽視するな

 米国での墜落事故を受けて、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が三週間ぶりに飛行を再開した。

 米軍は事故原因などについて詳細を明らかにしていない。F15の未明離陸が度々強行された後だけに、基地周辺の住民や自治体が不安や米軍不信を増幅させ、憤るのは当然だ。

 米ミズーリ州空軍所属のF15が今月二日に事故を起こした際、機体は空中分解して墜落した。米空軍は「航空機に構造上の欠陥が起きた可能性」を示唆していた。

 F15戦闘機は一九七四年から配備が始まった。米空軍は約七百機を保有しており、このうち約五百機が約二十五年前に製造された旧型とされる。

 米空軍が飛行停止措置に踏み切ったのは、ミズーリ州での墜落事故が単純な事故ではなく、F15の構造上の欠陥が関与していると事態を深刻に受け止めた証左ではないのか。

 専門家らが指摘するように、F15の設計寿命に絡む「老朽化」が原因だった可能性は捨てきれない。米国内の報道によると、事故調査は継続中で、墜落原因について決定的な証拠はないと米軍も認めている。

 嘉手納基地にはF15五十四機が配備されており、エンジンの機種更新などを進めている矢先の事故である。事故原因が判明しないにもかかわらず飛行を再開したのであれば、住民を軽視した乱暴な決定としかいいようがない。

 これまでの米軍の説明を総合すると嘉手納基地所属のF15の半分近くが機体変更を終えていないことになる。同報道部によると、米空軍のチェックリストと照合し、一機に約十五時間以上かけて点検作業をしたようだ。

 しかし、老朽化によるものか、事故機固有の原因によるものかがはっきりしない中で、軍事上の理由から飛行再開に踏み切るというのは一体どういうことなのか、理解し難い。

 F15墜落事故を受け、嘉手納町議会、沖縄市議会はF15の撤去を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決。嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は事故原因が特定されていないことを問題視した上で、同機の飛行中止と即時撤去を嘉手納基地司令官らに要請した。

 要請の中で、F15は欠陥機だと指摘し「安全性が保障されたとは言えず、周辺住民の不安を払しょくし得る状況にはない」と反発している。

 米軍は住民を軽視することなく事故原因について情報を公開し、原因が不明であれば飛行を中止すべきである。政府も米軍に事故原因についての詳細な説明を強い姿勢で求めるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071127.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15飛行再開 即時中止を強く求める

 米空軍は26日、嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行を再開した。

 米国でのF15C型戦闘機の墜落事故を受けたF15機の飛行全面停止措置から約3週間。事故原因が明らかにされないまま飛行再開に踏み切った。露骨な「軍の論理」優先主義だ。

 地元住民や自治体が強く求めた原因究明までの飛行再開中止に耳を傾ける姿勢はみじんもない。直ちに中止するよう求める。県民の安全を全く顧みないF15戦闘機部隊は嘉手納基地から撤退させるほかない。

 F15戦闘機のトラブルは今に始まったことではない。2000年に墜落事故を起こしたほか、04年には空中での接触事故が起きている。うるま市伊計島の海上に墜落した昨年の事故は、記憶もまだ生々しい。

 F15機は使用開始から35年が経過している。老朽化した戦闘機の運用には安全性を懸念する声が根強い。

 うるま市の事故の際には、墜落からわずか2日後に飛行再開を強行するなど、目に余る米軍の対応が県民の強い憤りを買った。パイロットが緊急脱出するほどの事態だったにもかかわらず操縦に問題があったのか、機体に構造的な欠陥があったのか、米側から明確な説明はなかった。

 今回のF15飛行停止措置は、今月2日に米ミズーリ州で発生した空中分解の末に墜落した事故がきっかけだ。

 すべてのF15機の飛行を止める前代未聞の措置に踏み切ったのだから、よほどの異常事態であったに違いない。そう推察するのが常識である。

 再開までの約3週間、米国でどのような調査が行われ、機体の検査・分析結果から何が判明したのか、米軍は詳細を明らかにする責任がある。

 政府も政府である。国内民間機が事故やトラブルを起こせば、たとえ小さなトラブルでも徹底的に原因を調べ、疑いがあれば同型機への入念な点検を欠かさないはずだ。

 航空機の場合、万に一つのミスも許されない。飛行の安全性が保証されなければならないのは、民間機であれ軍用機であれ何ら変わりない。少なくとも飛行再開について県民を納得させるだけの合理的な説明を求めるのが筋である。

 嘉手納基地では飛行再開のこの日の朝、F15 13機が次々に飛び立った。その際、嘉手納町議会の基地対策特別委員会が離陸準備をしていたうちの1機が何らかの原因でUターンしたことを確認している。

 危険極まりない飛行を認めるわけにはいかない。即時中止を強く求める。

(11/27 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29266-storytopic-11.html

 

2007年11月27日(火) 夕刊 1面

名護市がアセス意見書/普天間代替

 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)で、名護市は二十七日午後、アセス方法書に対する知事意見の判断材料となる地元意見を県に提出する。宜野座村は二十八日に提出する。

 仲井真弘多知事は、アセス方法書について県環境影響評価審査会に諮問しており、同審査会の答申と名護市などの意見を合わせ、十二月二十一日の提出期限までに知事意見をまとめる。

 名護市の意見は、安全性や騒音の影響軽減の観点から可能な限り、代替施設の沖合への移動を求める。

 また、ケーソン(コンクリート箱)や護岸ブロック製作場設置のために大浦湾西側海域と辺野古漁港周辺を埋め立てることによる影響、辺野古ダム周辺での埋め立て用土砂採取のための掘削作業によるダムへの影響などの懸念を盛り込んでいる。意見は前文を含めて全八ページ。

 意見素案の検討に当たった基地対策委員会委員長の末松文信副市長は「住民意見概要や地域の要望を網羅した形で意見を述べている。知事にはこの意見を踏まえてやっていただきたい」と話した。市基地対策室の担当者らが二十七日午後、県庁を訪ね、意見を提出する。

 宜野座村は、政府との基本合意を基に「村内上空を飛行しないように調査を行ってほしい」との意見を盛り込む。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271700_03.html

 

2007年11月27日(火) 夕刊 5面

林教授、意見で「軍の強制」強調/「集団自決」問題

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、沖縄戦を含めた日本軍の戦争犯罪について研究している林博史関東学院大教授が二十七日、教科用図書検定調査審議会に提出した意見を自身のホームページで公表した。文科省は教科書会社からの「集団自決」に関する記述の訂正申請について、可否を判断するため林教授らから意見を聴いている(公表内容の詳細は二十八日朝刊に掲載)。

 林教授は、文科省から公表を控えるよう求められていたが「秘密裏に検定を行ったことが、今回のようなゆがんだ検定につながった」と考え、「検定過程を広く市民に公開し、その中で検定手続きが行われるべきだ」と公表に踏み切った。

 林教授は提出意見の中で、自著「沖縄戦と民衆」(大月書店)では、日本軍がアジア各地で現地住民に行った残虐行為が日本軍将兵らを通じて沖縄住民らに伝えられ、米軍につかまる恐怖心をあおった影響も「集団自決」の背景にあったと指摘していること、日本軍がいた地域では、スパイとして殺されるため住民が自主的な判断で投降できる状況になく、日本軍の存在が「集団自決」に重要な役割を果たしたと結論付けていることなどを説明した。

 また、多くの日本軍将兵が住民にあらかじめ手榴弾を配り「いざというときには自決せよ」と言い渡していたことは、実質的に日本軍による命令だと指摘。「集団自決」が日本軍の強制と誘導によるものであることを繰り返し強調した。その上で、教科書審議会は検定意見を撤回し、「集団自決」への日本軍の強制を明記した記述を認めるべきとの考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271700_05.html

 

2007年11月27日(火) 夕刊 5面

北谷でも騒音146回/F15飛行再開

 【北谷】米本国での墜落事故を受け、飛行を中止していた嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した二十六日、北谷町砂辺での騒音発生回数が飛行中止期間の一日平均の約三・四倍に当たる百四十六回を記録していたことが分かった。同日午後四時ごろには、今月最大となる騒音レベルの一一一・六デシベルが計測された。

 同町によると、飛行中止していた今月四日から二十五日までの二十二日間、データが取得できなかった三日間を除く十九日間の、一日平均騒音発生回数は四十二回だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271700_07.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 1・2面

県審査会 普天間アセス追加質問へ/防衛局に事実上の書き直し要求

 米軍普天間飛行場の代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は二十七日、方法書の不備とみなされた三十二項目六十九問について、事業者の沖縄防衛局に追加説明を求める質問書の提出を決めた。事実上の方法書書き直し要求にあたる異例の措置。質問書前文には「誠意ある回答がなければ方法書としてみなせない」趣旨の条件も付け加えるという。

 質問書では(1)使用する航空機の飛行航路と訓練内容や機種の詳細(2)滑走路を千六百メートルやV字にした根拠(3)大浦湾を大規模に埋め立てる作業ヤードの必要性―など、方法書で示されていない事業内容の詳細と環境影響評価の具体的方法について説明を求める。

 委員からは「事実上の書き直しであり、(回答があれば)住民などへ公開する必要がある」との意見が出た。

 津嘉山会長は「方法書と同様の公告縦覧による公開は時間的に厳しいが、公開方法は検討する」と述べた。

 同方法書に関してはこれまで「事業内容が何一つ示されておらず、審査のしようがない」「国会で明かされる事業内容との整合性がない」などの批判が相次いでいた。

 県は質問書の回答期限を、次回審査会が開かれる三十日に予定。審査会は、飛行場施設に関する方法書への知事意見提出が十二月二十一日に迫っているため、埋め立て部分(知事意見提出締め切り来年一月二十一日)と分離して答申を出す可能性も示唆した。


     ◇     ◇     ◇     

沖合移動へ合理性構築


 米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)手続きで、名護市がアセス方法書に対する意見を県に出した。使用航空機の機種や運用、航空機弾薬搭載場など関連施設の情報開示、施設建設による環境への影響を厳しく問う内容だ。背景には、「方法書の内容では十分理解できない」(名護市)との国への不信がある。


詳細調査求める


 最も多い要求項目を並べたのは、名護市が求める「沖合移動」の根拠となる航空機騒音の軽減に関する調査だ。

 アセスでの騒音データに関して、沖縄防衛局が新たなデータ収集をしない考えを示していることを懸念。

 名護市試案の位置を含めて可能な限り沖合に出した位置での予測・評価を要求し、新たに航空機による試験飛行の実施を求めている。

 その上で、普天間飛行場の航空機騒音の現況把握を求め、定常状態のみならず、複数編隊の飛行や施設上空でのホバリングなど「最も大きな影響を受ける条件も対象」とした。

 玉城政光政策推進部長は「(軍民共用空港の)沖合案では約二キロの位置で地元住民は了解した。政府案の位置では地元は納得しない」と説明。試験飛行の実施により「(沖合移動の)合理的根拠を構築する」考えだ。

 加えて、航空機の種類、飛行時間、回数、経路を明らかにし、準備書に記載することを求めた。

 人間の耳には聞こえにくいが、不眠や頭痛などの影響を受けるとされる低周波音の調査も要求している。


政府主導に反発


 埋め立て用土砂を採取する辺野古ダム周辺では、環境アセスを実施する必要があるとしている。海域生物や生態系についても、作業ヤード設置での潮流変化の恐れから調査地点の追加、ウミガメ類の上陸調査、絶滅が危惧されるジュゴンの環境保全措置の策定を求めている。

 昨年四月の政府との基本合意以降、移設計画は政府主導で進められてきた。政府から情報が開示されない中で、米国側から訓練時の住宅地上空の飛行や最新鋭機オスプレイの配備計画が明らかになった。基地移設には市民から根強い反発があり、市長支持者の中にも、政府の強引な手法に対する反発が広がりつつある。名護市は、地元の理解を得るためにはこうした要望が不可欠だと判断した。(北部支社・石川亮太)


名護、試験飛行を要求


 【名護・宜野座】米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)手続きで、名護市と宜野座村は二十七日、アセス方法書に対する知事意見の判断材料となる地元意見を県に提出した。

 島袋吉和名護市長は、安全性や騒音軽減など住民生活への影響を最小限に抑える観点から「可能な限り沖合に移動する必要がある」と強調。試験飛行の実施による騒音検証を求めている。

 また、「(方法書に)記載されている事業内容では、どのような環境影響があるのか十分理解することができない」とも指摘。

 使用航空機の機種、飛行経路、関連施設の構造、事業の具体的内容を明らかにした上で、アセス項目や手法の選定、効果的な環境保全措置を検討することを求めた。

 東肇宜野座村長は、政府との基本合意書に基づき、村民の生活、教育、自然環境に悪影響を与えず、農業、漁業、観光産業やIT産業へも影響がないよう、宜野座村上空の飛行ルートからの回避を県知事意見に反映するよう求めている。

 仲井真弘多知事は、諮問している県環境影響評価審査会の答申と、名護市などの意見を合わせて知事意見をまとめ、来月二十一日までに沖縄防衛局に提出する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_02.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 1・27面

岩国から海兵隊600人/3日開始米軍訓練

 【中部】米軍嘉手納基地は十二月三日から七日までの五日間、同基地と米海兵隊普天間飛行場を拠点に即応訓練を実施すると、周辺自治体や県に事前通告していたことが二十七日、分かった。同基地の第一八航空団に加え、米海兵隊岩国航空基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加する。空軍と海兵隊が共同で行う大規模な即応訓練は異例。

 嘉手納基地では、米本国での墜落事故に伴い飛行を停止していたF15戦闘機が飛行再開を強行したばかりで、周辺自治体の反発が強まりそうだ。

 県は二十七日、周辺住民へ影響が及ばないよう同基地に申し入れた。米軍からの通知を受けた嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)と宜野湾市は米軍への抗議を検討している。

 米軍は訓練の規模など詳細を明らかにしていない。即応訓練は来月三日に開始され、同四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などの使用が予定されている。米軍は「使用器具は地元地域への影響を抑える場所に設置する」というが、どこに、どのような訓練器具が設置されるかは不明だ。

 野国会長は「米軍再編以降も基地負担は増加している。これほどの大規模訓練を本土の米軍基地で実施すれば大問題になる。なぜ沖縄のみが差別的基地負担を強いられるのか」と語気を強めた。


     ◇     ◇     ◇     

「負担軽減に逆行」


 【中部】「負担軽減に逆行する」―。二十七日、米軍が発表した来月三日からの嘉手納基地と普天間飛行場での即応訓練。県外の基地から三十機の戦闘機と六百人の米兵も加わる大規模な訓練に、周辺自治体の住民や議会関係者は驚き、怒った。米本国での墜落事故を受け飛行停止していた嘉手納基地のF15戦闘機が二十六日から飛行を再開したばかり。訓練激化の動きに住民の不安はピークに達している。

 嘉手納町屋良の知念正直さん(72)は空軍と海兵隊の共同即応訓練について「軍事ばかりが優先され、住民は軽視されている」と語気を強めた。

 普天間飛行場に隣接する宜野湾市宜野湾区。区内に沖縄国際大学があり、三年前のヘリ墜落事故の記憶は今も消えない。仲村清区長は「住宅街に近い場所で訓練をするのではなく、国外でやってほしい」と訴えた。

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「再三抗議決議をしても米軍には届かないのか。負担は増えるばかりで、生活が脅かされている」と批判。二十八日にも議会の対応を協議する。

 嘉手納町議会は十二月議会でF15飛行再開に抗議決議することを決定している。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「立て続けの大掛かりな訓練はもってのほか。F15が飛び、FA18が飛ぶことになれば爆音被害が余計にひどくなる。本当に腹立たしい」と怒り心頭だった。

 北谷町議会の照屋正治基地対策特別委員会委員長は「F15が訓練移転してもFA18が来るのであれば、基地の機能強化だ」と反発した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_03.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 2面

第1区域 埋め立て続行/沖縄市・東部海浜開発

 【沖縄】「東部海浜開発事業」について、沖縄市は二十七日までに、工事が進む第一区域(約九十六ヘクタール)を現行通り進めることを決めた。市議会十二月定例会が始まる来月六日までに全市議三十人に説明し、その後に記者会見を開いて同事業に対する考えを発表する。

 二〇〇二年に始まった国の埋め立て工事は、外周護岸全延長約四千五十メートルのうち約千五百メートルが暫定竣工。第一区域は、早ければ〇七年度に外周護岸の工事を終え、一二年にも埋め立てが完了する。

 複数の関係者は「第一区域は工事が進んでおり中止は難しい」との見解を示した。

 しかし、一三年ごろ着工予定の第二区域については、一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかり、絶滅危惧種の生息地が含まれるため、事業中止の可能性も含めて、県や国と調整を進めるとした。

 また、バブル期の一九九二年調査を基に推計され、大型ホテルなどが予定されている土地利用計画についても今後、時代に合った見直しを検討する。

 東門美津子市長は、早ければ三十日にも開かれる市議会全員協議会や記者会見の場で、最終結論などを発表するとみられる。

 同事業について沖縄市民は、環境問題で「中止」を求める意見と、市の活性化につながるとして「推進」する意見で二分されている。

 東門市長は「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ、二〇〇六年四月市長選で推進派候補を破って当選した。

 就任後は、公募で選んだ市民と学識経験者で組織する東部海浜開発事業検討会議を設置。今年七月には同検討会議から埋立後の企業立地の見込みや環境問題などの情報を精査した報告書を受け取り、「年内に結論を出す」としていた。


160億円投入 中止できず


 東部海浜開発事業について、沖縄市は第一区域の埋め立てを認めることを決めた。同区域が二〇一二年にも埋め立てが完了するほか、すでに〇五年度までに沖縄市だけで約十九億五千万円、県と国を合わせると総額約百六十億円もの税金が投入されており、「後戻りできない」と判断した。

 「推進」「中止」の要請を相次いで受けた東門美津子市長は、八月には市の部長クラス全員から意見聴取した。

 意見のほとんどが「推進か事業縮小を含めた見直し」で、中止は一人もいなかった。その点も、第一区域については認めざるを得ないと判断する要因になったとみられる。

 一方で、第二区域については(1)一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる(2)絶滅危惧種の生息地域―との理由から、埋立事業者の国、県などと調整を続ける構えだ。市幹部や市議からは、二〇一三年ごろに工事が始まる第二区域は「市長の任期を越える話」だとして、結論先送りを唱える意見もある。

 東門市長は、早ければ三十日にも市長判断を正式発表するが、来月六日からの市議会定例会では、反対派議員の反発が予想される。

 加えて、「第二区域も推進すべきだ」と考える野党議員も追及の姿勢を見せている。

 東門市長は、結論に至るまでの経緯、市の財政負担、土地利用の見直しなどを含めたすべての課題を詳しく説明する必要がある。それが、「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断」するとした公約を果たすことになる。(中部支社・吉川毅)


[ことば]


 東部海浜開発事業 国と県が中城湾港新港地区の港湾整備のために浚渫した土砂を利用して約187ヘクタールの人工島をつくり、その後、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して市経済の活性化を図る計画。埋立造成の総事業費は約489億円。沖縄市の負担は、土地購入費約184億円、インフラ整備約91億円が見込まれている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_04.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 2面

全駐労、30日に再スト/団交不調で方針

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円削減を提案した問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千八百人)は二十七日午後、防衛省と四回目の団体交渉に臨んだ。

 全駐労側は手当削減分の補償を求めたが、防衛省側から前向きな回答はなく、全駐労は三十日に第二波の全国統一ストライキを決行する方針を固めた。

 ストの対応は三役に一任された。二十九日予定の防衛省との最終交渉が決裂した場合、三役がストを正式決定する。二十一日の前回ストは始業時から四時間だったが、三十日は一般職種の就労時間となる八時間に延長し、実質的に終日二十四時間ストになる。

 全駐労によると、二十七日の団体交渉で防衛省は「政府内の調整が進んでいない」として回答を保留。全駐労側が引き続きの調整を要望したのに対し、「努力する」と述べるにとどめたという。

 全駐労側は「前向きな回答は得られておらず、ストは避けられない」と判断した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_09.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 26面

訴訟にもっと関心を/「集団自決」シンポ

 大阪地裁で行われた「集団自決」訴訟の本人尋問の様子を傍聴者が報告し、新たに浮かんだ訴訟の問題点などを話し合う緊急シンポジウム「沖縄戦の実相を問う」(沖縄戦の歴史歪曲を許さず沖縄から平和教育をすすめる会主催)が二十七日、那覇市の教育福祉会館で開かれ、約五十人が参加した。

 今月九日の本人尋問を傍聴した沖縄平和ネットワークの津多則光・沖国大非常勤講師らが報告した。

 津多さんは、原告の座間味島・海上挺進第一戦隊の元隊長、梅澤裕さん(90)の証言とほかの証拠の矛盾点などを指摘し、「六十二年後の今でも戦隊長の意識のままでいることが表れている」と批判した。

 同ネットワークの村上有慶共同代表は、「集団自決」教科書検定問題とも連動している訴訟への県内外の関心が低い現状を話し、「この訴訟にもし負ければ、沖縄戦の真実がゆがめられることになる。法廷内だけの戦いに任せるのではなく、沖縄が声を上げ全国に伝えなくては」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_10.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 26面

日米共同使用の受け入れ撤回を/金武町で反対集会

 【金武】米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊による共同使用を、地元の儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長が受け入れたことを受け、市民団体のメンバーら約五十人が二十七日、金武町役場で抗議集会を開いた。参加者らは「軍事演習強化反対」「日米の軍事一体化反対」などとシュプレヒコールを繰り返し、受け入れ撤回を求めた。

 沖縄平和運動センター、北部地区労、自治労北部総支部が主催。同センターの崎山嗣幸議長は「三首長の受け入れは住民を裏切る行為。日米の軍事一体化は許されない」と三町村長の姿勢を批判。北部地区労の仲里正弘議長は「金で受け入れる行為は許されない」。自治労北部総支部の宮城保委員長は「北部への基地の集約は許されない」と強調した。

 集会後各団体の代表者らが、出張中の儀武剛金武町長に代わって比嘉貴一企画課長に撤回を求める要請書を手渡し、あらためて儀武町長との面会を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_11.html

 

2007年11月28日(水) 夕刊 1面

FA18嘉手納に4機着/海兵隊・空軍合同訓練

 【嘉手納】十二月三日から七日まで、米軍嘉手納基地と普天間飛行場を拠点に、米海兵隊岩国基地(山口県)所属の部隊が参加して行われる空軍と海兵隊の合同即応訓練に使用するとみられるFA18戦闘攻撃機約三十機の一部が二十八日午前までに嘉手納基地に到着していることが分かった。

 同基地報道部は、訓練に使用するFA18が到着していることは認めたが、機数や到着期日は明らかにしていない。

 嘉手納町屋良の「道の駅かでな」からは、外来機がよく使用するという同基地内の駐機場に、少なくとも四機のFA18が駐機しているのが確認された。

 目撃者などによると、二十七日午後三時すぎまで、同駐機場にこの四機は駐機していなかったという。別のFA18に、訓練用の模擬爆弾を装着している様子も見られた。

 今回の即応訓練は、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機三十機と、海兵隊員約六百人、嘉手納基地の第一八航空団が参加する。海兵隊員は二十九日に到着する。空軍と海兵隊が共同で実施する大規模な即応訓練は極めて異例という。

 即応訓練は来月三日に開始。四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などが使用される予定。FA18は即応訓練終了後、来月十二日まで同基地を拠点に別の訓練を行うという。


 米軍からの通知を受けた嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)と宜野湾市は即応訓練の情報収集を急いでおり、米軍への抗議を検討している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281700_01.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(11月21日から24日)

2007年11月21日(水) 朝刊 1面 

落下傘訓練 6米兵、民間地に降下

伊江島 集落まで100メートル

 【伊江】二十日午前九時四十五分ごろ、伊江村西崎の伊江島補助飛行場上空でパラシュート降下訓練を行っていた海兵隊員六人が、施設フェンスを最大約二百五十メートル外れ、サトウキビ畑やタバコ畑の民間地に降下した。最も近い住宅地までは約百メートルだった。降下ミスによるけが人はいなかった。海兵隊員の所属は、沖縄防衛局が米軍に照会している。

 同村では、昨年十月と今年二月にも米兵がフェンス外の黙認耕作地や民間地へ誤って降下している。事態を重く見た大城勝正村長は、現地を視察した内間博昭村議長らとともに二十一日、沖縄防衛局を訪れて再発防止を申し入れる。

 沖縄防衛局や事故を目撃した照屋徳治西崎区長(53)らによると、二十日午前九時半ごろから始まった降下訓練中、強風にあおられた六人が、提供施設外の牧草地やタバコ畑に降下した。兵士はパラシュートを丸め、迎えに来た米軍車両に乗り込みその場を立ち去った。

 畑ではまだ何も栽培されていないため農作物の被害はなかったものの、集落から約百メートルしか離れていない。風向きによっては住宅地に降りた可能性もあった。照屋区長は「毎回のことだが、住民にとっては非常に迷惑だ。村長に対策を求めたい」と憤った。

 提供施設外へのパラシュート降下は、北風が強まる冬場になると、毎年のように起きている。大城村長は「畑を耕している人、歩いている人の上などに降りた場合、事故になる危険性も十分ある。沖縄防衛局を通じて米軍に再発防止を求めて抗議する」と話した。

 沖縄防衛局は、在沖米海兵隊外交政策部(G5)のラリー・ホルコム部長(大佐)に口頭で、安全管理の徹底管理と再発防止を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711211300_02.html

 

2007年11月21日(水) 朝刊 1面

米軍F15 近く飛行再開/空自、すでに実施

墜落調査継続中

 【東京】米空軍のF15戦闘機が米国で墜落事故を起こし、国内すべてのF15が飛行を見合わせている問題で、米空軍が十八日(現地時間)に飛行再開に向けた指示を各部隊に出していたことが二十日、分かった。関係者によると嘉手納基地は飛行再開に向け、点検要領に基づく準備作業に着手している。近く飛行を再開するとみられるが、具体的な時期について米側は、二十日現在、「決まっていない」としているという。

 墜落事故は、訓練飛行中に操縦席後方付近で機体が分離したために起きたことも関係者の話で分かった。事故の詳しい原因について、米側は「調査を継続中」と説明しているという。

 一方、航空自衛隊は保有する約二百機すべての機体について、米空軍が事故調査の状況に基づいて作成した点検要領などに基づく安全対策が終了したとして、四日から中止していた飛行を二十日に再開した。

 事故は、米ミズーリ州中南部で二日に起きた。訓練飛行中だった州空軍の一人乗りF15が墜落し、パイロットは墜落前に脱出したが、負傷した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711211300_03.html

 

2007年11月21日(水) 朝刊 2面

全駐労きょうスト

 在日米軍基地で働く日本人従業員ら約一万六千八百人で組織する全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長)は二十一日、十六年ぶりとなる全国統一ストを行う。

 県内では全基地従業員の七割に当たる約六千三百人が、それぞれ始業時間から四時間の時限ストを行う。

 全駐労は、今後の防衛省との団体交渉で、国側が提案する基地従業員の諸手当削減問題の進展がなければ、十一月末以降、第二波、第三波のストを行う方針を決めており、交渉はヤマ場を迎える。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711211300_04.html

 

2007年11月21日(水) 夕刊 1・5面

全駐労、16年ぶりスト 県内6000人が参加

 政府が米軍基地で働く日本人従業員の格差給(基本給の10%)廃止などを提案している問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千人)は二十一日午前、全国の米軍施設で職種ごとに四時間の時限ストを行った。全駐労の全国ストは一九九一年九月以来、十六年ぶり。

 県内では、沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)の組合員六千人余りが参加。午前五時半から、通常使用されている四十カ所のゲート前でピケを張り、うち三カ所で決起集会を開いた。嘉手納基地第一ゲート(北谷町)の集会には、組合員のほか、地区本部の政治顧問でもある上原康助・元衆院議員、支援する連合沖縄の代表など組合集計で約三百七十人が参加した。

 與那覇委員長は「(国側は)10%以上の給与カットを一方的に押し付けようとしているのに合理的説明がない」とストの正当性を強調。

 石破茂防衛相が二十日、賃金水準の低い沖縄では全駐労の給与は相対的に高いとの趣旨の発言をしたことに対して「格差解消は政府の責任。それを放置したままの発言は暴言で、責任放棄だ」と批判した。

 組合員らは、時折響く軍用機の爆音の中、「格差給廃止は許さないぞ」「公務員との格差を是正しろ」などとシュプレヒコールで気勢を上げた。


     ◇     ◇     ◇     

手当削減「生活直撃」


 【中部】「従業員の生活を守れ」「防衛省は雇用主の責任を果たせ」。二十一日午前に行われた全駐労の全国統一ストライキ。北谷町砂辺の米軍嘉手納基地第一ゲート前、宜野湾市野嵩の普天間飛行場第三ゲート前にも大勢の労働者が集まり、国側が提案する基地従業員の諸手当削減に対し、怒りのシュプレヒコールを繰り返した。

 嘉手納基地内の住居メンテナンスを行っている阿嘉健さん(30)=嘉手納町=は「六人の子どもをしっかりと育て、生活を守らなければいけないという責任がある。防衛省は誇りを持って仕事も頑張っている現場の声を聞いてほしい」と訴えた。

 「一度許すと、ずるずると待遇が改悪されてしまう」。同基地内で通信業務に当たっているという野崎旬子さん(48)=北谷町=と知念峰子さん(32)=沖縄市=は「格差給(基本給の10%)の廃止は直接生活に影響する。住宅ローンや子どもの養育費など、描いていた将来設計が崩れてしまう」と、それぞれ切実な思いをぶちまけた。

 勤続二十五年の佐次田実さん(60)=うるま市=は嘉手納基地内の電話設備の維持、管理業務に従事している。「給料は下がる一方なのに、防衛省はさらに追い打ちをかけてきた。基地を運営するために、労働者の賃金を削るという単純な発想は受け入れられない」と声を荒らげた。

 普天間飛行場第三ゲート前でのストに参加したボイラー技士として十四年勤務している徳山勝さん(36)は「人件費削減は寝耳に水みたいな話。われわれの人件費を下げるよりも、基地内の電気代や水道代を負担している思いやり予算を止めるべきだ」と批判。「原油高で物価は高騰するし、これから子どもの教育費も多くなる。生活できない」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711211700_01.html

 

2007年11月22日(木) 朝刊 1面

嘉手納基地 F15 26日飛行再開

米軍、事故原因明かさず

 【嘉手納】米軍嘉手納基地報道部は二十一日、米本国で起きたF15戦闘機の墜落事故を受け、飛行停止していたF15の飛行訓練を二十六日から順次再開すると発表した。事故原因は明らかにしていない。同機を「欠陥機」として撤去を求めていた周辺自治体は事故原因を明かさずに飛行再開する米軍に不信感を募らせている。

 同基地は十七日から、米空軍のチェックリストと照らし合わせ、一機に十五時間以上かけて点検していると説明。飛行性能を確認し次第、飛行を開始するという。

 北谷町と沖縄市は二十一日、北谷町役場で、飛行再開を通知した沖縄防衛局に、事故原因を明らかにするよう要請した。

 米空軍は今月二日の墜落事故でF15に「構造的欠陥の可能性がある」として飛行停止命令を出し、嘉手納基地は四日から飛行停止していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711221300_02.html

 

2007年11月22日(木) 朝刊 2面

伊江村長、米軍に抗議/落下傘民間地降下

 【伊江】伊江島補助飛行場でパラシュート降下訓練中の海兵隊員六人が、提供施設外の民間地に降下した問題で、大城勝正伊江村長や内間博昭村議長らは二十一日、沖縄防衛局を訪れ、米軍へ強く抗議するとともに、再発防止を求めるよう要請した。

 大城村長は「被害がなかったのはよかったが、一歩間違えれば、大事故につながるところだった」と指摘。

 その上で「一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)合意でパラシュート訓練を受け入れて以来、十九件の事故が起きている。米軍に対して、強く抗議し、再発防止を訴えてほしい」と求めた。

 応対した岡久敏明管理部長は、事故が発生した二十日に、米海兵隊外交政策部(G5)のラリー・ホルコム部長に抗議し、天候などに配慮した訓練の実施と再発防止に努めるよう求めたことを伝えた。

 二十日午前九時四十五分ごろ、同補助飛行場でパラシュート降下訓練を行っていた海兵隊員六人が、強風にあおられて施設フェンスから最大二百五十メートル、住宅地から約百メートル離れた提供施設外の畑などに降下した。

 当時周辺では、耕運機で畑作業をしていた住民もおり、大きな事故につながる恐れがあった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711221300_03.html

 

2007年11月22日(木) 朝刊 26面

教科書検定問題「来月初旬までに結論」/波多野審議委員が見解

 【東京】「教科書問題と沖縄・韓国」をテーマにしたシンポジウム(主催・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科)が二十一日、早稲田大学で開かれ、教科書検定意見を審議する教科用図書検定調査審議会の波多野澄雄委員(筑波大副学長)らが登壇した。

 波多野委員は沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定問題で、教科書会社六社からの訂正申請を審議会(日本史小委員会)で審議していることを説明。来年春に印刷を間に合わせるため「十二月初旬までに何らかの結論を出し、会社側に伝える必要がある」との見通しを明らかにした。

 審議の状況では「なかなか難しい対応を迫られている」とし、各社が申請した記述通りに審議会で承認することは困難との認識を示唆した。

 教科書会社が検定結果に不服がある場合「意見申立書」で異議を唱えることができるが、今回の検定では「すべての会社が(検定)意見に従って(修正表を)書き、軍の存在や関与が一斉になくなり、びっくりした」と述べた。

 その上で「文科省だけでなく、執筆者や出版社にも一端の責任がある。裏付けがあるなら自信を持って書くべきだ」と強調した。

 「集団自決」への日本軍の強制が削除された検定後の記述については「軍(の関与)を否定しているわけでないと解釈できなくもなく、検定意見の範囲と言える」とし、検定意見に即した記述だと説明した。

 山梨学院大の我部政男教授は「沖縄戦と歴史教科書」をテーマに報告した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711221300_05.html

 

琉球新報 社説

落下傘降下ミス 訓練の適地は県内にない

 米軍伊江島補助飛行場上空で実施されたパラシュート降下訓練中、米兵6人がサトウキビ畑など基地フェンス外の民間地に降下した。

 2003年5月には、米兵5人が提供地域外の民間地に降下。その際、米軍は訓練時には風向や風速の調査を実施するなどの改善策を示した。

 改善策を順守しても、民間地への降下ミスが続くのならば、伊江島補助飛行場がパラシュート降下訓練には適していないということにほかならない。

 1996年12月のSACO(日米特別行動委員会)最終報告で、パラシュート降下訓練は読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場へ移転することが合意された。伊江島以外では本来、降下訓練は認められていない。

 合意施設で降下ミスが後を絶たない現状からして、住民の安全を確保した上で、降下訓練を実施できる適地は県内にないということである。

 降下ミスの多さは異常である。過去1年だけでも06年10月に1人、ことし2月に4人が民間地域などに降下。訓練するたびにミスが起きている状況にある。米軍は安全に万全を期していると言えるのだろうか。

 今回は人的被害や農作物の被害はなかった。だからといって「問題なし」ということにはならない。何ら改善される兆しのない降下訓練は、重大事故発生の危険性をはらんでいる。

 大城勝正伊江村長は沖縄防衛局への抗議で、降下ミスした米兵から約20メートル離れた畑で耕作者がいたとして「一歩間違えば大惨事になる可能性があった」と指摘している。

 同席した内間博昭同村議会議長は、降下ミスが11年間で19件発生しているとした上で「SACO合意で土地を提供し、訓練に同意したが、生命まで提供したつもりはない」と述べている。

 政府は米軍にその声を伝えるだけでなく、少なくとも実効性のある改善策が示されるまで訓練しないよう、米軍に求めるべきである。

 米軍は98年5月と99年4月、さらにことし1月と10月の計4回、地元の反対を押し切って嘉手納飛行場で降下訓練を実施している。伊江島補助飛行場での降下訓練ミスの続発を逆手にとって、嘉手納飛行場での訓練実施の口実にすることがあってはならない。

 ことし10月に嘉手納飛行場で実施した降下訓練では2人が降下目標地点を外れ、うち1人が林に突っ込んでいる。嘉手納でも一歩間違えばとの危機感を周辺住民は抱いている。

 降下訓練は住民への重大な脅威となっている現実を、米軍は認識するべきだ。

(11/22 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29134-storytopic-11.html

 

2007年11月22日(木) 夕刊 5面

F15飛行再開 三連協が抗議方針

 【中部】米国での墜落事故に伴い、飛行停止措置を講じていた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が二十六日から飛行を再開することを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十二日午後、幹事会を開き、対応を協議する。

 幹事会では、事故原因を明かさないまま飛行を再開する米軍に対し、抗議する方針で対応を協議する。三連協は墜落事故を受け今月六日、同基地司令官に抗議文を送付し、F15の撤去を求めている。


墜落原因で米軍「決定証拠ない」/依然調査中認める


 【嘉手納】米経済通信社ブルームバーグによると、米空軍はF15戦闘機の飛行再開をめぐり、「事故調査は継続中で、墜落の原因について決定的な証拠はない」と認めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711221700_05.html

 

2007年11月23日(金) 朝刊 1面

嘉手納ラプコン返還は来年4月以降

再編進ちょくに影響か

 在日米軍が沖縄の本土復帰後も管轄を続け、今年十二月をめどに返還されるはずだった沖縄本島周辺空域の航空管制システム「嘉手納ラプコン」の返還時期が、来年四月以降にずれ込む見通しであることが二十二日、分かった。日米の政府関係者が明らかにした。

 米軍再編をめぐる昨年五月の日米合意では、関東地方など一都八県にまたがる横田ラプコン全域の返還条件について「嘉手納ラプコン返還の経験から得られる教訓を考慮する」としている。日米両政府筋には返還について「少なくとも数年かかる」との見方もあり、再編の進み具合や、同様に米軍が管轄する岩国ラプコン(山口県)の返還交渉にも影響しそうだ。

 国土交通省と在日米軍司令部(東京都)は、嘉手納ラプコンの具体的な返還時期について「日米で協議中であり話せる段階にない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711231300_03.html

 

2007年11月23日(金) 朝刊 2面

三連協、中止を要求/F15飛行再開

 【中部】米国での墜落事故に伴い、飛行が停止されていた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が二十六日から飛行を再開することを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十二日、「事故原因が特定されていない」などとして、飛行中止と同機の即時撤去を求める要請文を同基地司令官らに送付した。

 要請文は「F15は半年間で四件の墜落事故を起こした欠陥機であり、飛行が開始されることで、嘉手納基地周辺での墜落事故が懸念される」と住民の不安を訴えている。

 同基地報道部は「入念な点検後、各機体の飛行性能を確認し、順次飛行を再開する」と説明しているが、要請文は事故当時の状況が明らかにされず、事故の原因も特定されていない中での点検は「無意味」と指摘。「安全性が保障されたとはいえず、周辺住民の不安を払拭し得る状況にはない」として、F15飛行再開の中止、同機の撤去を求めた。

 要請文は沖縄防衛局、外務省沖縄事務所にも送付。三連協は今月六日にも、F15を撤去するよう同基地司令官に抗議していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711231300_04.html

 

2007年11月23日(金) 朝刊 2面

渡海文科相 何をもって「軍命」?/「教科書検定」県民大会後に雑談

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相は二十二日午後の閣議後会見で、沖縄の県民大会後に石破茂防衛相と意見交換した際、石破防衛相が「『軍命』とは通常は隊長が出したことをいうのかな」などと話していたことを明らかにした。渡海文科相が「軍命」の意義を問うたことに答えたという。

 渡海文科相は「学説がどうか分からないが、何をもって軍命というのか、と雑談した。自衛隊も軍隊といえば軍隊だから、どうなっているのかを聞いた。明快な回答を求めたわけではない」と説明した。

 また、県民大会後に所属する派閥の山崎拓会長(前副総裁)から電話があったことを明らかにし、「この問題を文科相として適正に処理してくれということだった。『ちゃんとやれ』という内容だった」と話し、検定意見見直しへの働き掛けがあったことを認めた。

 山崎前副総裁は同問題に関し、大会前日の県内での講演会で「検定に過誤があった場合、文科相は(省令で)見直しを勧告できる。文科相と話し合う」などと述べていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711231300_05.html

 

2007年11月23日(金) 朝刊 30面

普天間の危険訴えたビデオ 国際的賞を受賞

 【宜野湾】住宅街の中心に位置する米軍普天間飛行場の危険性を住民の証言などを通して描いたドキュメンタリーフィルム「Why Okinawa?(ホワイ オキナワ)」がこのほど、国際的なビデオコンテストのテリー賞やコミュニケーター賞などを受賞した。制作した米国人夫妻が二十二日、宜野湾市役所を訪れ、出演、取材に協力した伊波洋一市長(55)らに賞状などを伝達した。

 恩納村出身の絹枝・大城・エイブリーさん(46)と夫のロバート・エイブリーさん(66)が三年がかりで制作した。

 米カリフォルニア州在住の二人が二〇〇四年に来沖した際、沖国大へのヘリ墜落事故が発生、絹枝さんが夫に作品化を持ち掛けたという。

 沖国大の学生が撮影した事故直後の生々しい映像や住宅上空を飛行する米軍ヘリのほか、基地建設で破壊された墓を映し出している。

 陸軍に所属し、沖縄に駐留したこともあるというロバートさん。「私は米軍を支持しているが、取材を通して何が正しく、正しくないのかという信念が揺さぶられた」と述べた。

 絹枝さんは「受賞はみんなの努力が実った成果」と喜んだ。

 作品は約六十分。ニューヨークのテレビ局ITNで放送を予定しているほか、字幕を付け日本でも放映したいという。

 賞の伝達式で、夫妻から宜野湾市と伊波市長、市基地渉外課の平良瞳さん(45)、沖国大の佐藤学教授(49)に、賞状などが手渡された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711231300_06.html

 

琉球新報 社説

F15飛行再開 県民を危険にさらす暴挙

 飛行中にいきなり空中分解を起こす米軍F15戦闘機が、事故原因の解明を待たず、26日から飛行を再開する。県民を危険にさらす暴挙である。飛行再開に断固反対するとともに、この際、老朽欠陥機の嘉手納基地撤去を米軍に要求したい。

 米軍首脳部は、どのような安全感覚であろうか。いつ空中分解し墜落するかしれない危険な戦闘機の飛行を、自らの家の上空でも、果たして許すのであろうか。搭乗させられる操縦士や乗員は、どんな思いであろうか。

 飛行再開に当たり米軍は、通常飛行任務の再開が「アジア太平洋地域における平和と安定の維持に引き続き貢献する」と豪語している。しかし、それは米軍自ら「最重要視している」と強調する「安全な飛行運用」が大前提である。

 敵を迎撃する前に、いつ空中分解し墜落するかしれない欠陥機では、平和維持に貢献するどころか、むしろ国民を墜落の危険にさらすことになる。

 F15戦闘機は米軍の主力戦闘機で、初飛行は沖縄が本土に復帰した1972年。以来、35年間も使用されてきた。

 その主力戦闘機が実戦任務を除く全機の飛行停止措置となったのは、2日に起きた米ミズーリ州の州兵部隊所属機の空中分解墜落事故が原因である。

 事態に米空軍は事故原因の調査、

機体の検査・分析が完了するまで全機飛行停止という前代未聞の措置を取った。しかし現在に至るま

で事故原因の解明は進んでいない。

 事故機は生産から27年が経過していた老朽機であったことから「経年劣化」が原因との見方も出ているが、不確かだ。

 米空軍は、超音波や電磁波を使う「非破壊検査」などで、目視では確認できない機体のひびや腐食の有無を点検し、問題がなければ飛行できる、と説明している。

 ただでさえ昼夜を問わず爆音をまき散らし、早朝・未明の離着陸を強行し、反発を招いている問題機である。

 この際、飛行再開の中止にとどまらず、老朽欠陥機F15の撤去を要求したい。

(11/23 10:08)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29161-storytopic-11.html

 

2007年11月24日(土) 朝刊 1面

沖縄市長、近く結論/泡瀬埋め立て

市幹部と緊急会議「まだ話せない」

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業の是非について、東門美津子沖縄市長が早ければ、十二月六日から始まる市議会十二月定例会前にも結論を出す可能性があることから、東門市長、島袋芳敬副市長らは二十三日、市役所で緊急会議を開き対応を協議した。会議では東門市長の結論として「推進」「中止」「第一区域の工事は認め、第二区域は中止」「第二区域は人工島の形の見直し」の四つのシナリオを想定し、事務方として市長を支える態勢を確認した。

 東門市長は「年内に結論を出す」方針を示しているが、二十三日「できるだけ早く公表したいが、まだ話せる状況にない」と強調。いずれの結論を出したとしても反対、推進両派から反発が出るのは必至で、表明のタイミングを慎重に見極めている。

 海上工事は二〇〇二年にスタート。工事が進む第一区域は、早ければ〇八年に外周護岸の工事を終え二〇一二年にも完了予定だ。その後、土地需要の見通しなどを検討した上でおおむね二〇一三年以降に工事が始まる第二区域は、米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる問題があり、東門市長は今年九月に共同使用の更新期限を迎えたことから、「一年期限」で更新手続きを行った。

 島袋副市長は「第二区域は米軍基地問題があり、絶滅危惧種のクビレミドロやトカゲハゼの生息地域でもあることから、この部分を避けた島の形の計画修正や中止もあり得る」と説明。「市長の決断に応じて埋め立て事業者である県や国、関係団体とスムーズな調整が図れるよう準備している」と述べた。各団体や政党から賛否の要請が相次ぎ、東門市長は八月には部長クラス全員から意見聴取。意見は「推進か事業縮小を含めた見直し」がほとんどで、「中止」は一人もいなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711241300_01.html

 

2007年11月24日(土) 朝刊 26面

普天間代替で政府批判/市民投票10年シンポ

 【名護】大学人九条の会沖縄の第六回シンポジウム「1997市民投票から10年〈民意〉はどこにあるのか―憲法九条を守るために―」が二十三日、名護市労働福祉センターで開かれた。基調講演で沖縄国際大学の照屋寛之教授(行政学)は「振興策と基地は別物であるはずが、振興策によって民意がつぶされてきた十年だった」と、振興策と引き換えに米軍普天間飛行場の代替施設受け入れを進めようとする政府の姿勢を批判した。

 同シンポジウムは、米軍のヘリポート建設の是非を問う名護市民投票から十年を迎え、基地建設をめぐる「民意」を問い直そうと企画された。照屋教授のほか、琉大大学院の高作正博准教授(憲法学)と沖縄大学の宮城公子准教授(比較文学研究)が基調講演した。

 照屋教授は、市民投票以降について「本来は地域を良くするための振興策を政権が悪用し、選挙結果などに影響を与えている」と指摘。「操り人形を動かすように、政府は補助金で民意を思う方向に誘導している」と、「アメとムチ」で在日米軍再編を進める政府の在り方に疑問を投げ掛けた。

 高作准教授は市民投票の結果について、「基地建設反対の意思は明確だった」と、現在もその効力があると強調。名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設案は民意を得ていないとした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711241300_06.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月16日から20日)

2007年11月16日(金) 朝刊 2面

住民・観光業アセスに不満/普天間移設

 県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十五日、米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書について二回目の審議を県庁で行い、建設予定地周辺の住民やリゾート施設など六団体の代表から意見を聞いた。

 名護市辺野古の大城康昌区長は、建設予定地の沖合移動で騒音軽減が保障されると思うかとの問いに「残念ながらこれまでの経験から、米軍は(軽減保障を)守らないと思う」と述べ、運用に不安感を示した。その上で、沖合移動は「(辺野古崎沖の)平島に住民が自由に出入りできる範囲にしてほしい」と話した。

 宜野座村松田の當真嗣信区長は「米軍ヘリは今でも頻繁に飛んでいるが、これ以上頻繁に飛んだ場合どういう影響が出るのか」と話し、アセス方法書で具体的な飛行ルートや航空機の種類を提示するよう求めた。

 カヌチャベイリゾートは「基地建設で観光事業に大きな影響が生じる」として、工事中の大気質や騒音、水の汚れ、景観など十一項目にわたりアセス見直しを求めた。満園武雄顧問は「代替施設計画との関連で、予定している観光計画の実行も憂慮される。しかし方法書では当リゾートが調査対象から外れている」と不満をあらわにした。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の推薦で発言した桜井国俊沖縄大学学長は、方法書について(1)対象事業の目的や内容が不備(2)アセス手続きを得ないままアセスに反映させる事前調査を実施している―などの点から「アセス法が定める要件を満たしていない欠陥方法書。書き直しを求めるべきだ、との答申を提出してほしい」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

沖合移動重ねて難色/外務・防衛省側が認識


 【東京】高村正彦外相と防衛省の江渡聡徳副大臣は十五日の衆院沖縄・北方特別委員会で、県と名護市が求める米軍普天間飛行場代替施設(V字形滑走路)の沖合移動に相次いで難色を示した。仲村正治氏(自民)への答弁。防衛省経理装備局の長岡憲宗局長は、大浦湾の一部を埋め立てて設置する作業ヤード置き場のケーソン(コンクリート箱)について「確かに大きなものだ」と述べ、大規模な構造物になることを認めた。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。

 高村外相は沖合移動について「よほど合理的理由がないと米国に持ち出せない」と、米側への提案さえ困難との認識を強調。一方で「今、環境影響評価(アセスメント)をしており、米国を説得できるような合理的理由が出れば、絶対にあり得ない話ではない」とも述べ、アセスで沖合移動の必要性が示されれば検討する考えを示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月16日朝刊)

[守屋氏再喚問]

疑惑解明にはほど遠い

 「(宴席に)一緒にいた政治家は久間(章生)先生と額賀(福志郎)先生ではなかったかと思う」

 参院外交防衛委員会で行われた守屋武昌前防衛事務次官に対する証人喚問で、前次官は防衛庁(当時)長官経験者である二人の名前を挙げた。

 両氏は、防衛商社「山田洋行」の宮崎元伸元専務から接待を受けたのではないかといわれていた四人の長官経験者として名前が浮上していた。

 昨日の証言に額賀氏は「接待を受けたことはない」とし、久間氏は「二、三年前のことだからあるかもしれない」と述べている。だが、名前が出た以上「知らぬ存ぜぬ」で済ませてはなるまい。

 実際はどうなのか。「山田洋行」が防衛庁の装備などの売り込みにかかわる業者で、宮崎元専務が担当者であったことを知った上で接待を受けたのかどうか。久間、額賀両氏は国会の場できちんと説明する責任がある。

 午前中に参考人として招致された山田洋行社長の米津佳彦氏は、宮崎元専務による守屋氏へのゴルフ接待が一九九八年から昨年までに三百回を超えていたと証言した。

 これは衆院テロ防止特別委員会で守屋氏が証言した「二百回以上」より多い。しかも一組当たりの合計で千五百万円以上になるというから開いた口がふさがらない。

 守屋氏は「ゴルフの回数について、米津氏が話した数字を変えるだけのものを持ち合わせていない」と述べているが、当然だろう。

 守屋氏はまた、航空自衛隊の次期輸送機用エンジンに米ゼネラル・エレクトリック製を選定した際に、「山田洋行」が同社の代理店だったことを知らなかったのはおかしいと問われ、「そのような記憶はない」と答えている。

 同社の水増し請求疑惑や天下りについても「私が関与することは絶対にあってはならないこと」と述べた。

 しかし、ゴルフや酒席などの凄まじい接待ぶりを考えれば、見返りがないと思う方が不自然ではないか。

 国政調査権は憲法で認められた国会議員の権利であり、「伝家の宝刀」である。にもかかわらず、今回の証人喚問でも疑惑を解明するには至らず、むしろもやもや感だけが残った。

 追及は甘く、国民が知りたいと思っている接待の向こう側にある「便宜供与」という核心部分に手が届かなかったのは残念というしかない。

 疑惑は深まり、真相を求める国民のいら立ちは募るばかりだ。疑惑を解明するためには久間、額賀両氏からも話を聞くべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071116.html#no_1

 

2007年11月16日(金) 夕刊 2面

沖縄市議会、F15撤去求め決議/飛行停止問題

 【沖縄】米本国での墜落事故を受け、米軍嘉手納基地のすべてのF15戦闘機が飛行を停止している問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十六日午前、臨時会を開き、「欠陥機と指摘されているF15を即刻撤去せよ」とする抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。

 冒頭、市議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は、米軍嘉手納基地広報局長の「F15は最も安全な戦闘機」発言について、「安心安全を求める市民の思いを踏みにじる発言であり、断じて許せない」と厳しく批判した。

 抗議決議文では「周辺自治体や住民はF15について以前から欠陥機と指摘しており、今回の事故で反発の声は強まるばかりだ。市民の生命、財産、平穏な生活を守る立場から厳重に抗議する」と糾弾している。

 さらに、十月三十日に強行された同基地でのF15戦闘機の未明離陸についても「米軍は例外規定を盾に未明離陸を繰り返しており、騒音防止協定が形骸化している」と指摘。軍用機などの早朝・夜間訓練の全面中止と同協定の抜本的な見直しも求めた。

 抗議決議のあて先は同基地司令官、駐日米国大使、在沖米国総領事など。意見書は首相、外務省沖縄担当大使、沖縄防衛局長ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161700_02.html

 

2007年11月16日(金) 夕刊 1面

港湾機能も検討/普天間代替施設

 【東京】石破茂防衛相は十六日午前の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場の代替施設でヘリが故障した際の船舶を使った移送について、「それによって港湾施設というか、船舶に関する施設の所要も異なる。どのようなものが最も所要を満たし、かつ環境への負荷が軽減されるかということは、きちんと詰めていきたい」と述べ、代替施設の港湾としての機能も検討することを明らかにした。

 赤嶺政賢氏(共産)への答弁。

 政府はこれまで、米側が要求していた二百メートル級大型岸壁に関し、「大浦湾に建設予定の桟橋はあるが、これは普天間代替施設で使用される航空燃料のためのものだ」(鎌田昭良沖縄防衛局長)と説明。

 港湾機能について言及していなかった。

 同省防衛政策局の松本隆太郎次長は「現在の計画において、兵員や物資の恒常的な積み下ろしを行うような軍港としての機能を有するものを建設する計画はない」と従来の見解を強調しつつ、故障ヘリの輸送手段については「今後、米側と協議していく課題だと認識している」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161700_03.html

 

2007年11月16日(金) 夕刊 7面

全駐労、手当減に抗議/防衛省前で70人アピール

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、全駐労(山川一夫委員長、約一万六千八百人)は十六日午前、防衛省前で提案見直しを求めるアピール行動を展開した。約七十人が集まり、「生活を破壊する一方的不利益変更は撤回せよ」と訴えた。

 要求に応じなければ、二十一日から四時間の時限ストを実施すると防衛省に通告している全駐労は十六日午後、同省で最後の団体交渉に臨むが、政府側は提案を見直す考えを示しておらず、決裂は必至。このためストは確実視されている。

 山川委員長は「基地従業員は国家公務員より高給であると受け止められかねない政府の今回の対応は官製の悪質なキャンペーンだ。このままではストを行うほかない。その中から打開の道を開いていこう」と連帯を呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161700_06.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊 1面

地元説明「必要ない」/普天間移設・民間上空飛行

V字案の意義強調

 【東京】防衛省の金澤博範防衛政策局長は十六日の衆院安全保障委員会で、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に建設が計画されている米軍普天間飛行場の代替施設(V字案)の運用について、米軍機が訓練で住宅地上空を例外的に飛ぶ可能性にあらためて言及した上で、地元への説明は「必要ない」との見解を示した。何が例外的な飛行に該当するかは、米側と具体的に協議していないことも明らかにした。名護市や宜野座村など地元からは、強い不満と反発が広がっている。

 辻元清美氏(社民)への答弁。

 金澤局長は、住宅地上空の飛行について「基本的には飛ばない」としつつも、「緊急のときには飛ぶことあるし、また、訓練の形態によっては、ないとはいえない」と答えた。

 その上で、米側との交渉について「例外的に(住宅地上空を)飛ぶ場合がどういう場合か、と細かく考えてレク(説明)するというのは今の段階で必要ないし、してもいない」と言明。

 地元説明については「大切なことはV字が、地元の要望を受けて基本的には飛ばないようにするためにつくられたということだ。わざわざ細かいことまで説明する必要はない」との考えを示した。

 今月七日に開かれた普天間移設に関する協議会で東肇宜野座村長は「陸域の飛行ルートや有事の際の飛行といったような報道があり、地域は不安を抱いている。国は建設計画の検討に必要な情報を明らかにしてほしい」と要望。

 また、仲井真弘多知事も「情報は可能な限り公開してほしい」と求めていた。

 一方、石破茂防衛相は同委員会で「地元の不安を払拭するような説明は丁寧に行っていきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_01.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊 1面

空自 週明けにも再開/F15飛行見合わせ

 【東京】防衛省の田母俊雄航空幕僚長は十六日の定例会見で、米空軍のF15戦闘機が米国内で墜落事故を起こしたことを受け、航空自衛隊のすべてのF15が飛行を見合わせている問題について、早ければ週明けにも飛行再開する可能性を示神

した。田母神空幕長は、「米側が機体の点検要領を固めた」としており、米軍嘉手納基地のF15も近く飛行再開するものとみられる。

 田母神空幕長は、「米国で機体の点検要領が固まったようだ。十六日中に情報が得られるのではないか。それを見て点検、調整を実施して早くフライトにつなげたい。来週早めにフライトが可能になるかもしれない」と語った。

 愛知県営名古屋空港でF2支援戦闘機が墜落、炎上した事故もあり、空自は、百里基地(茨城県)に那覇基地からF4を展開するなどして領空侵犯対処をF4戦闘機だけで行っていた。

 一方、嘉手納基地報道部は十六日、「(同基地に所属するF15C、D型の)飛行再開に関する情報は入っていない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_03.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊 2面

港湾機能も検討/普天間代替施設

故障ヘリ移送手段で

 【東京】石破茂防衛相は十六日午前の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場の代替施設について、港湾としての機能も検討する考えを示した。石破防衛相は、代替施設でヘリが故障した際の船舶を使った移送について、「それによって港湾施設というか、船舶に関する施設の所要も異なる。どのようなものが最も所要を満たし、環境への負荷が軽減されるかということは、きちんと詰めていきたい」と述べた。

 赤嶺政賢氏(共産)への答弁。

 政府はこれまで、米側が設置を要求していた二百メートル級の大型岸壁に関連し、「大浦湾に建設予定の桟橋はあるが、これは普天間代替施設で使用される航空燃料のためのものだ」(鎌田昭良沖縄防衛局長)と説明。港湾機能については否定的だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_04.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊

全駐労、21日統一スト

団交決裂16年ぶり

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、全駐労(山川一夫委員長、約一万六千八百人)は十六日、十六年ぶりとなる全国統一ストライキを二十一日に決行することを決めた。十六日、防衛省と三回目の団体交渉に挑んだが、決裂。夕方の中央闘争委員会で、今後のスト日程や対応策を確認した。

 山川委員長らによると、全駐労は防衛省に対し提案見直しを引き続き求めたが、防衛省側も国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」の削減など従来の提案を繰り返し、議論は平行線に終わったという。

 これを受け開かれた中央闘争委員会では、全国九つの地区本部、支部すべてで投票によるスト権が確立したことを確認。引き続き団体交渉を行いながら、状況に応じて第二波、第三波のストを実施する方針も決めた。

 二十一日は、職種に応じて始業時から四時間の時限ストを決行する。沖縄地区本部の與那覇栄蔵執行委員長は「今回の諸手当の削減は労働者の生活を破壊する提案で許せない。従業員数の多い沖縄では特に地域の雇用や経済への影響も懸念される」と述べ、政府の今回の対応に強い不満を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_05.html

 

2007年11月18日(日) 朝刊 27面

沖縄戦継承 若者同士で/大学生、中高生向けガイド

県民大会受け「やるなら今」来月本番

 県内の中高校生に沖縄戦を見つめ直すきっかけにしてほしいと、県内の大学生が中高校生を対象にした沖縄戦戦跡ガイドを十二月十五日に行う。元ひめゆり学徒隊の女性たちと若者が語り合い、戦争の記憶を受け継ぐ活動を続ける「虹の会」(赤嶺玲子代表)が中心となり、琉球大学の「学生平和ガイドの会」のメンバーらが十七日、同大学内で勉強会を始めた。「大学生から中高校生へ」という若者たちによる沖縄戦の継承。学生らは息の長い活動にしたいと意気込んでいる。

 大学生らは、これまで主に修学旅行生を対象に戦跡を案内していたが、県内の中高校生にも沖縄戦への関心を持ってもらおうと初の取り組み。

 「虹の会」の北上田源さん(25)は、入会した三年前から県内の中高校生向けのガイドを考えていた。九月の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の後、「中高校生の問題意識が高まった。やるなら今だ」と思い立った。

 中高校生の素朴な疑問や質問に答えながら、壕や県平和祈念資料館など南部戦跡を巡るこのガイドでは、ひめゆり資料館で証言者を交えた交流会も予定している。

 琉大での勉強会は、「沖縄戦研究はどのように日本軍の『集団自決』強制を明らかにしているか」をテーマに、中高校生からの質問を想定し、新聞記事や沖縄戦関係資料を参考に一人一人に意見を求めながら進められた。

 「集団自決」の新たな証言や教科書問題の動きなどが、報道で取り上げられる機会が増え、メンバーらは「沖縄戦の歴史を語り継ぐために、もっと若い人が学んでほしい」と語る。

 昨年、初めて戦跡ガイドとして県外の修学旅行生を案内した同大四年の田真健弥さん(22)は「初めはそれほど関心がない人にも、沖縄戦の悲惨な過去と教科書問題や辺野古の基地移設など現在の沖縄とつながっていることを伝えたい」と語った。定員は三十人(先着順)。

 問い合わせは虹の会、電話090(9786)5237、メールはnijinokai2004@yahoo.co.jp

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711181300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月18日朝刊)

[日米首脳会談]

実質的な中身が乏しい

 福田康夫首相とブッシュ米大統領は初の首脳会談を行い、日米同盟関係の重要性を確認し、北朝鮮の核計画の完全放棄、イランの核開発阻止などに協力して対処することで一致した。

 北朝鮮の核無能力化に伴う米政府のテロ支援国家指定解除問題に関連して、福田首相は「核、ミサイルと並び、拉致問題の解決が重要だ」とし、米側の解除姿勢に懸念を示したという。

 だが、ブッシュ大統領は「被害者と家族を置き去りにはしない」としつつ、「拉致問題の解決は必ずしも解除の前提条件にはならない」と述べたと伝えられている。

 実際にはどうなのか。この問題で両首脳がどのように突っ込んだ話し合いをしたのか、明白になっていない。両首脳はなぜ会見の場でその内容を伝えなかったのだろうか。

 首相同行筋は「指定解除をめぐる詳細なやりとりは公表しないことを申し合わせた」としている。だが小泉純一郎元首相、安倍晋三前首相の場合はそのようなことはなかったはずである。

 政府筋から漏れてくる会談内容は具体的内容に乏しい。もし、首相が拉致問題が最大の懸案事項と考えたのであれば、米側のスタンスとどこが隔たっていたのか。記者の質問を受けてきちっと答えてもよかったのではないか。

 両首脳は同盟関係を「死活的に重要」と確認したという。が、むしろ双方の溝が浮き彫りになったのも確かだ。首相は討議内容を国会の場で明らかにしてもらいたい。

 ブッシュ大統領が求めた米国産牛肉や牛肉製品の輸入条件撤廃に対し、首相は従来の見解を踏襲した。

 「科学的知見に基づいて対応していく」姿勢を変える必要は全くない。食の安全を維持するためにもハードルを下げなかったことは評価したい。

 県民にとっては普天間飛行場の危険性の除去や海兵隊のグアム移転などの問題がテーマに上らなかったのは残念である。

 実質的な中身の乏しい首脳会談だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071118.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月18日朝刊)

[民間上空飛行]

なぜ説明を避けるのか

 防衛省は、地元への説明責任を果たすことなく米軍普天間飛行場の移設計画を進めようしているようだ。あまりの見識のなさに怒りを通り越し、あきれてしまう。

 金澤博範防衛政策局長が名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に計画されている普天間飛行場の代替施設(V字案)で訓練する米軍機の住宅地上空を「基本的には飛ばない」としつつ、「緊急のときは飛ぶこともある」と言明、例外的に飛行する可能性を認めた問題である。

 地元説明についてはV字案の意義を強調し、「わざわざ細かいことまで説明する必要はない」と述べている。国の防衛政策を立案する防衛省の担当局長がその程度の認識しかないのか。実に情けない。

 防衛省は今年九月一日の組織改編にあたって、「防衛省は変わります―平和と安全を支えるために―」と内外に宣言していた。

 「有事の際の国民の保護、大規模災害、米軍再編などの基地問題に適切に対応するため、地方との緊密な関係を大切にします」ともうたい、地方との緊密な関係構築を柱の一つに据えていたはずである。

 言うまでもないが、地方との緊密な関係構築とは、「わざわざ細かいことまで説明する」きめの細かい対応をいう。防衛政策局長がすべきことは地元への丁寧な説明であり、「説明する必要はない」と開き直ることではあるまい。

 防衛省は、これまでも米軍再編を進める際、地元の意向に配慮することなくひたすら強行一辺倒だった。

 普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)をめぐっては、県や名護市などの反対を押し切って住民意見概要を送付、一方的に手続きに着手した。

 また、政府案の沖合への移動を求める名護市や宜野座村を再編交付金の指定対象から外したほか、本年度分の北部振興策の執行を凍結したり、キャンプ・シュワブ沿岸部の事前調査に自衛艦船を派遣するなど、地元の反発や要望を無視してきた。

 仲井真弘多知事が全国知事会議の場で福田康夫首相に対し、一連の防衛省の対応を「ひどい仕打ち」と直訴したのは、「地元無視」を続けてきた防衛省に県民の憤りと不信感が広がっていることを示すものだ。

 防衛省は、普天間飛行場の移設計画について情報を公開し、十分に説明責任を尽くす必要がある。それがなければ基地政策そのものが破たんすることを認識すべきだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071118.html#no_1

 

琉球新報 社説

基地労務費削減 思いやり予算の見直しを

 在日米軍基地で働く日本人基地従業員の格差給廃止など、諸手当の一部削減を政府が提案している問題で、全駐労中央本部(山川一夫員長)と防衛省の団体交渉は16日に決裂。これを受けて21日には全国約1万6000人の組合員が、各自の就業時から4時間の時限ストを打つことを決定した。最大の組合員数を抱える全駐労沖縄地区本部(与那覇栄蔵委員長)も、約6000人がストに参加する。全国規模のストは16年ぶりとなる。

 沖縄地区本部によると、政府の提案通りになると、県経済に年間33億円余もの経済力ダウンをもたらすという。県経済の脆弱(ぜいじゃく)性などを考えると、この額は無視できない。何より、米軍駐留経費(思いやり予算)を抜本的に見直すことをせず、削りやすいところから実施するという政府の姿勢は受け入れられない。

 思いやり予算とは、防衛省予算の在日米軍駐留経費負担の通称だ。米軍隊舎や家族住宅など施設整備を図る地位協定分と、基地従業員の労務費や米軍が使用する光熱費などの、特別協定分に分かれる。2007年度の総額は2173億円で、うち特別協定分は1409億円。基地従業員の基本給1150億円のほか、在日米軍が使用する光熱費などが含まれる。

 日米両政府の思いやり予算に関する新特別協定締結協議の中で、米側が軍事負担増を理由に電気、ガス、水道などの光熱水費の大幅な増額を求めていた。逆に、日本側は基地従業員の諸手当約100億円の削減を提案、組合に示していた。

 提案内容は(1)格差給(基本給の10%)・語学手当の廃止(2)退職手当支給率の引き下げ(3)枠外昇給制度の廃止―となっている。特に格差給の1割削減は、基地従業員にとって死活問題だ。沖縄地区本部の試算によると、現在の従業員の平均月給は約31万7000円、年収が約530万円。これから1割も削減されると、月収は29万1900円となり、国家公務員の平均月給40万円余と比べると、10万円以上の格差が生じる。勤務条件は国家公務員準拠が基本とされながら、あまりに理不尽だ。

 そもそも、地位協定では米軍への施設の提供は日本側に義務付けているが、施設を維持する費用(光熱費)や基地内で働く人の給料の提供は、何ら定めがない。つまり維持費や給与なども本来、米側が負担すべきものだ。

 日本はかつてない財政赤字を抱えている。法律的に根拠のない無駄な思いやり予算は抜本的に見直す時期だ。光熱費などは本来負担すべき米側に要求すべきだ。従業員の待遇については法律上の位置付けを明確にし、日本側が最後まで責任を持ったらどうか。国家公務員準拠も再度、確認すべきだ。

(11/18 10:06)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29038-storytopic-11.html

 

2007年11月19日(月) 夕刊 1面

陸自共同使用容認の北部3町村 再編交付金対象に指定

 【東京】石破茂防衛相は十九日、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の対象となる「再編関連特定周辺市町村」に、米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊の共同使用受け入れを表明した金武、恩納、宜野座の三町村を新たに指定した。同日付の官報で公示した。

 三町村は、全国三十三自治体が指定された十月三十一日の官報では政府案に反対し、米軍再編推進法で規定する「再編の円滑かつ確実な実施に資する」との要件を満たしていない、として対象から外れていた。三町村は今月十三日、「受け入れ」に転じたことから、防衛省も同日中に「再編関連特定周辺市町村」に指定する方針を決めていた。

 県内では那覇港湾施設の代替施設の受け入れを容認している浦添市と合わせて四市町村が交付対象となった。普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で政府案(V字案)の沖合移動を求めている名護市と宜野座村は、指定の見通しが立っていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711191700_02.html

 

2007年11月19日(月) 夕刊 7面

環境面の影響懸念/普天間移設アセス審議

 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)方法書について審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十九日午前、建設予定地の名護市キャンプ・シュワブ周辺での現地調査を始めた。津嘉山会長らメンバー五人が参加。知念建次県文化環境部長や沖縄防衛局担当者らも同行した。

 同市二見の大浦湾西岸作業ヤード設置場所の調査では、沖縄防衛局の担当者が作業ヤードについて、幅二百メートルで、陸から沖合三百メートルまでを埋め立てる計画であることを説明。委員からは「埋め立てによる生物への影響はシビアなものがある」などの指摘が出され、大規模埋め立てによる環境への影響を懸念した。その後、マングローブが群生する大浦川河口部や代替施設滑走路延長上に位置する同市安部のリゾートホテルなどを調査した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711191700_04.html

 

2007年11月20日(火) 朝刊 27面

沖縄戦研究者に意見打診/文科省、県内外2氏へ文書求める

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、沖縄戦や琉球史の研究者らに意見提出を求めていることが十九日までに分かった。教科書会社からの訂正申請を受けて開かれる教科用図書検定調査審議会での参考意見にするとみられる。人選や経過が不透明なうえ、沖縄戦の専門家が審議会に直接加わらない形での意見聴取に「また歴史解釈を歪曲する審議が繰り返されるのでは」と懸念の声も聞かれる。

 意見提出を求められているのは、沖縄戦を含めた日本の戦争責任を研究している林博史・関東学院大教授や、県内の琉球史研究者らとみられる。

 文科省は今月中旬に意見提出を打診した。文書を提出するか、文科省職員が意見を聞いて審議会に伝える方法を示したという。今月最終週までに意見提出される予定で、訂正申請の是非を話し合う教科書審議会の開催はその後になる見込み。

 二〇〇六年度の教科書検定では、林教授の著書「沖縄戦と民衆」(大月書店)も参考にされた。林教授は同書の中で、日本軍が住民に手榴弾を配って「自決」を指示していた実例などを示し、「(『集団自決』には)日本軍の強制と誘導が大きな役割を果たした」と結論付けている。

 だが、検定意見案を審議会に提出した文科省の教科書調査官は、同書の名を挙げ、ごく一部の記述だけを引用し「『日本軍から公式な命令があって起きたわけではない』となっている」と自らの意見を述べて、教科書会社に日本軍の強制を表す記述を削除させた。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「文科省は誰がどうやって選ばれたのか明かさない。すべて終わった後に公開されても取り返しがつかない」と心配する。「『公平性、透明性』を確保するため、人選過程を明らかにしたうえで、審議会で直接、その人から意見を聴くべきだ」と訴えた。

 山口剛史・琉球大准教授も「意見書を提出させるのではなく、審議会に招いて審議委員への説明や議論を認めるべきだ」と話す。「文書提出だけでは、読み違いが生じる恐れもある。今回の検定と同じことが繰り返されない保証はない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711201300_04.html

 

2007年11月20日(火) 朝刊 2面

県内従業員7割参加/全駐労21日時限スト

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)特別協定協議に関連し日本側が基地従業員の諸手当削減を提案している問題で、全駐留軍労働組合(全駐労)沖縄地区本部の與那覇栄蔵委員長が十九日、県庁内で記者会見し、二十一日に行う全国統一ストの同地区本部としての対応を明らかにした。

 県内基地従業員の七割に当たる約六千三百人(保安要員除く)の組合員が、各職種ごとに始業から四時間の時限ストを実施。通常使用されている四十ゲートすべてにピケを張り、最も出入りの多い国道58号沿いの嘉手納基地第一ゲートなどでは一般県民向けにアピール行動も行う。

 與那覇委員長は「現状でも基地従業員の収入は国家公務員と比べ20%低く、削減が実施されれば格差はさらに拡大する」として、全国規模では十六年ぶり、県内でも十一年ぶりとなるスト実施に理解を求めた。

 ストによる影響について與那覇委員長は「(軍用機離発着など)軍機能には影響ないが、基地間の物資運搬や兵員の食事などはスト時間中、ほぼまひする」とした。またピケを張る関係で、二十一日朝はゲート周辺が交通渋滞する可能性があるという。

 與那覇委員長らは記者会見後、仲井真弘多知事と面会し、「諸手当削減が実行されれば県経済にも影響する」として協力を求めた。仲井真知事は「県として直接かかわる立場にないが、いろんな形で役に立てるようにしたい」と応じた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711201300_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月12日、13日、14日、15日)

2007年11月12日(月) 朝刊 2面

沖縄の理想像明確に/米軍再編シンポ

「普天間閉鎖」具体化必要

 沖縄平和協力センター(OPAC)主催の公開シンポジウム「米軍再編後の日米安全保障協力」が十一日、那覇市厚生会館で開かれ、日米関係と沖縄をテーマに、専門家が見解を報告した。大阪大学のロバート・エルドリッジ准教授は「沖縄が求める理想像を明確に示す必要がある。明確に示さないと、国が一方的に決めるしかない状況をつくってしまう」と指摘し、沖縄側のリーダーシップの必要性を強調した。

 エルドリッジ准教授は、米軍再編合意について「沖縄にとってマイナスが大きい。この二年間で県民の多くは批判的であることが分かってきた。防衛政策は、最終的に影響を受ける自治体が納得する形でなければいけない」と指摘。一方で、仲井真弘多知事が求める「普天間飛行場の三年めどの閉鎖状態」について、「具体的に示していないのは大きな問題。過去も含め、沖縄が何を求めているのか外部からは見えにくい」と主張した。

 これに対し、ブセナリゾートの比嘉幹郎社長は「沖縄の政治文化として、差別と犠牲の強要への反発がある。そういう観点から見れば、分かりやすい部分もある」と解いた。

 同志社大学の村田晃嗣教授は、福田康夫首相の初訪米の焦点について(1)インド洋給油の再開(2)米国の北朝鮮のテロ支援国家解除の時期(3)思いやり予算の削減(4)米軍再編の実施―などを挙げた。このうち、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除の時期については、来年一月一日が有力との見方を説明。米側は、日本の国会でインド洋給油の再開に向けた新テロ対策特別措置法案の通過後、指定解除を発表する可能性がある、と指摘した。

 渡部恒雄三井物産戦略研究所主任研究員は、東シナ海のガス田開発や領土問題をめぐるトラブルは沖縄の安全に直結する問題と指摘。「日本政府として、沖縄の安全確保はきちんと考えておくべき課題」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711121300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月12日朝刊)

[瀬長・仲宗根両氏]

先人の生誕100年に学ぶ


「赤い市長」誕生で騒然

 今年は、カメさんの愛称で親しまれた「反米の闘士」瀬長亀次郎氏と、ひめゆり学徒隊を引率した言語学者仲宗根政善氏の生誕百年にあたる。

 生きてきた道筋も考え方も異なる二人を、同じ年(一九〇七年)に生まれたというだけで一緒に論じるのは、無理がある。

 けれども、今年に入って、同時代を生きた二人の名前が、半世紀前の過去から呼び戻されるという印象的な出来事があり、米軍政時代の過去が過去として完結しているわけではなく、姿形を変えて今も重くのしかかっている、ということを強く感じた。そのことを取り上げてみたい。

 瀬長氏が那覇市長に当選したのは一九五六年十二月のことである。

 軍用地問題をめぐる島ぐるみ闘争が米民政府の切り崩しにあって収束に向かいつつも、なお火種がくすぶっている時期だった。

 選挙期間中、相手陣営から激しい攻撃を受け、当選後も、執ような反瀬長キャンペーンにさらされた。

 多数を占める市議会野党議員のほとんどが瀬長市政への非協力声明を発表。市の部長、課長ら幹部もこれに同調した。

 金融機関は、都市計画事業に対する融資の中止や市の預金の凍結を伝え、「人民党員とその同調者に対しては融資せず、預金も受けつけず」の姿勢を示した。

 都計事業の停滞に危機感を持った建設業団体も「人民党の同調者を雇用しない」との声明を出した。水源地を抱える南部の自治体は那覇市への水の供給を思いとどまった。

 すさまじいまでの兵糧攻めである。選挙で選ばれた首長に対する露骨な包囲網は、復帰後に生まれた世代には想像もできないだろう。

 反瀬長キャンペーンは、米民政府が各方面に働きかけ、仕組んだものだった。

 四面楚歌の市長を支えたのは、ごく普通の庶民である。市政の窮状を救うため積極的に税金を納めたり、全国からカンパが寄せられたことは、よく知られている。

 半世紀前、米軍政下の沖縄で起きた出来事だ。


51年後に処分取り消し


 その瀬長氏の市長体験が米軍再編問題にからんで、再び想起されるようになったという。

 米空母艦載機の岩国基地への移転問題を抱える岩国市は、住民投票の結果を受けて、今も反対の姿勢を崩していない。

 政府は米軍再編交付金の交付対象から同市をはずし、新庁舎建設のための補助金支給を見送った。露骨な兵糧攻めだ。

 窮地に追い込まれた岩国市を支援するため、「沖縄の瀬長市政を思い起こそう」と、全国から激励の声が寄せられているという。

 自治体の自主性を破壊するようなアメとムチ政策が、かって米軍政に抵抗した瀬長氏の名前を歴史の過去から呼び戻したというわけだ。

 軍用地問題をめぐるデモや集会に参加したとして琉大の学生七人が除籍(六人)・謹慎(一人)処分を受けたのは、五六年のことである。

 米軍政府は大学への援助打ち切りをちらつかせ、処分を迫った。学生をかばいつつも打つ手がなく、日々、悩み続けた副学長の仲宗根政善氏は、除籍処分を受けた学生の本土大学への転学に奔走した。

 琉大は今年八月、正式に処分の不当性を認め、五十一年ぶりに七人の処分を取り消し、関係者に謝罪した。


「民族の美質」示す相貌


 作家の石牟礼道子さんは「陽のかなしみ」というエッセーの中で、沖縄の島々で出会った人々を回想し、次のように書いている。

 「ひとりの人のたたずまいが、その民族の美質を語るということがある。民族文化の質が、ひとりの人間の相貌を定めてしまうということがある」

 戦後史に大きな足跡を残した二人の先人の相貌には、石牟礼さんが指摘した「民族文化の質」と言うべきものが感じられる。

 一筋の道を愚直に歩み、多くの人たちから敬愛されてきた生涯だった。

 瀬長市政への圧力と学生処分は、地方自治、大学自治に対する米民政府の露骨な介入事件であった。軍政は消滅したものの、兵糧攻めの基地政策はまだ生き続けている。

 生誕百年を迎える二人の先人から学ぶことは多い。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071112.html#no_1

 

2007年11月12日(月) 夕刊 5面

反戦継承に使命感/南風原町・新垣さん 戦争体験本を出版

 「悲惨な戦争は絶対に繰り返してはいけないと伝えたかった」―。南風原町の新垣ミツエさん(75)が、自身の沖縄戦での避難体験をまとめた「小さな生き証人 歴史と共に」(文芸社、八百四十円)を十月に出版した。

 新垣さんは那覇市出身。十三歳当時の一九四五年二月、激しさを増す戦禍を避けて、家族と名護市数久田の山間部に移り住んだ。イモや野菜などわずかな食糧を確保し、分け合いながら、約四カ月の避難生活を送った。

 戦後は看護師になり、九八年まで務めた。退職前に心臓病で入院生活を送ったことから、「自分が生きていることに感謝し、戦争体験を語り継いでいかねばならない」という使命感を感じ、執筆を決意した。

 十人きょうだいの七番目に当たる新垣さんは、ほかのきょうだいを訪ね、当時の状況を取材。自身の記憶を埋めながら、大学ノートに毎日少しずつ書きためた。今回は、二〇〇二年に一度まとめた文章に、エピソードを書き足しての出版となった。

 新垣さんは「大勢の避難民が小さな部落に押し寄せた。食糧がなくて、飢え死にした方もいた」と振り返り、「衣食住に恵まれている、今の若い世代にぜひ読んでほしい」と言葉に力を込めた。

 新垣さんの兄、那覇市の上原武夫さん(88)は「僕ら体験者は、つらかった戦争のことは語りたくないもの。ミツエの出版にはびっくりした」と驚きながらも、「歴史の事実を隠す教科書検定問題もある中、戦争の怖さを知らない人に読ませた方がいいね」と話した。

 県内では那覇市久茂地のリウボウブックセンターなどで販売している。(又吉嘉例)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711121700_02.html

 

琉球新報 社説

対テロ新法案 日本独自の貢献策を探れ

 延長国会の最大の焦点である新テロ対策特別措置法案は、衆院特別委員会で与党の賛成多数で可決された。与党は、インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開するための対テロ新法案を13日の衆院本会議で通過させ、参院に送る方針だ。

 だが、野党が多数を握る参院では民主党を筆頭に政府案に反対する姿勢を崩していない。民主党の小沢一郎代表は、基本的に認識が隔たっているとして「足して二で割る手法は通じない」と反対の意思をあらためて鮮明にした。

 福田康夫首相は、訪米して16日にブッシュ大統領と初の日米首脳会談に臨む。政府・与党は、首相の立場を考えて「せめて衆院だけでも通過させておきたい」と急ぎたいのだろうが、スケジュールにこだわるべきではない。

 来日したゲーツ米国防長官も給油活動の中断には「日本の政治変動の結果」との認識を示した。日本の内政問題だと一定の理解はしているのではないか。

 それよりもテロ対策やアフガンへの支援はどうあるべきか。与野党が国会で議論を尽くすことが求められる。米国への配慮を優先するあまり国会論議がおろそかになってしまっては、多くの国民の理解は得られまい。

 気になるのは自民党の伊吹文明幹事長の11日のテレビ討論番組での発言だ。新法案をめぐり参院で首相の問責決議案が可決された場合や会期内に法案が採決されない場合は、首相が衆院解散・総選挙に踏み切る可能性があると民主党をけん制した。

 ねじれ国会にあって民主党に政策協議を呼び掛ける一方で、小沢代表の辞意表明劇で勢いが弱まった民主党の足元を見るようなやり方は、国会運営の戦術としてはあり得るのかもしれないが、あまり感心しない。

 ねじれ下の国会は、国民注視の舞台で、やっと与野党が正面からぶつかり合う本来の言論の府の姿を取り戻しつつある。そう感じている有権者は多いだろう。議論が未消化のまま採決を強行する姿勢は慎しむべきだ。

 新法案には、国会承認条項の省略など文民統制の担保など重要な課題が残っている。防衛省をめぐる一連の疑惑なども解消されたとはいえない。

 一方、民主党の対案は、旧タリバン政権との停戦合意の支援、インフラ整備など民生部門に限って「文民」としての自衛隊派遣―などを盛り込んだ。平和憲法を持つ日本独自の支援はどうあるべきか。対案は議論に値するはずだ。

 日本ができる国際貢献は給油継続だけが選択肢ではない。会期内成立にこだわらず、政府・与党は最後まで合意を探る努力を続けるべきだ。

(11/13 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28893-storytopic-11.html

 

2007年11月14日(水) 朝刊 1・2・25面

ハンセン共同使用容認/金武・宜野座・恩納 3首長が姿勢転換

 【北部】在日米軍再編に基づく米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用問題で、地元の儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長は十三日、負担増になるとして反対していた従来の姿勢を一転させ、共同使用を受け入れると発表した。三町村長は「ハンセン内の海兵隊から一部がグアムへ移転することや、三町村が求めていた金武地区消防本部の統廃合などに防衛省の協力が得られることから、受け入れを決めた」と説明した。

 この決定を受け、防衛省は同日、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象に三町村を加える方針を決めた。十九日に石破茂防衛相が「再編関連特定周辺市町村」に指定し、同日の官報で告示する予定。来年度予算に交付金の10%、再来年度以降100%が交付される見通しだ。

 訓練開始時期は「年内開始は困難」(陸自関係者)とされており、年明けになる見通し。

 防衛省は、米軍が使用しない期間を前提に、陸上自衛隊第一混成団が九州の演習場で行ってきた中隊規模程度の訓練を、キャンプ・ハンセンで実施するとしている。

 ロープ降下、警戒・防護、行進などを中心とした戦闘訓練を、二百人程度の部隊が二十一週間ほど金武町と宜野座村のエリア内で実施。また、レンジ3、4を除く金武町エリア内の既存射撃場で百人程度が九週間、小火器などを使用した射撃訓練を行う。さらに、金武町と恩納村の計二カ所の施設で最大百人が年一週間程度、不発弾処理などの訓練を行う。

 儀武町長は「グアムへの移転や消防本部の統廃合への協力が得られ、総合的に判断して受け入れを決断した」と述べた。また、再編交付金については従来のハード事業主体とは違って子育て支援や福祉などのソフト事業にも使えるため、地元にとって利用価値が高いと判断したという。


     ◇     ◇     ◇     

消防施設の整備で妥協


 「総合的に判断し、陸上自衛隊の共同使用を受け入れることにした」。在日米軍再編に基づく、米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用問題で、これまで反対の立場を示してきた儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長の三町村長が一転、受け入れを表明した。ハンセン内の海兵隊のグアム移転という基地負担の軽減だけでなく、統合消防施設整備への協力など、防衛省から基地外の支援が得られることも大きな要因となった。一方で三町村長は当初、会見を予定しておらず、重大案件に対する三町村長の説明責任の姿勢も問われる。(北部支社・屋良朝輝、東京支社・島袋晋作)

 沖縄防衛局は、今月六日までに職員が三町村議会を回り、共同使用訓練や交付金の内容、統合消防施設整備への協力などを説明し、受け入れへの理解を求めていた。

 金武町議会には強く反対する議員がいる一方、ある与党議員には「交付金が交付されないのは、議会が反対しているからだ」という意見も寄せられた。このような声を受け、受け入れに傾く議員が増えていることは、儀武町長の耳にも届いた。

 三町村長が集まったのは八日深夜。それぞれの考えや議会の反応などを報告して、受け入れを決めた。儀武町長が九日に沖縄防衛局を訪れ、鎌田昭良局長に受け入れを伝える文書を手渡した。

 にもかかわらず、報道各社には、十三日午後になって受け入れを伝える文書をファクスしたのみだった。会見を行う予定はなく、各首長が個々で対応することをひそかに確認していた。

 各社からの強い要望で、急遽同日午後六時から会見が開かれたものの、会見を予定していなかったことは「日程調整がつかなかった」と説明された。


差し引きゼロ


 会見の場で、儀武町長は「負担増がある中で、三町村の長年の懸案であった統合消防施設(整備への防衛省の協力)との兼ね合いもあり、プラスマイナスゼロだというイメージだ」と述べた。

 共同使用が負担増であることは認めながらも、ハンセン内の海兵隊のグアム移転や統合消防施設の整備などが受け入れの決め手となった―との説明だ。一方で、負担増に伴う被害への明確な対応は最後までなく、説明は不十分なままだ。

 三町村長は各議会の十二月定例会で説明するとしているが、議会では負担増や住民への被害に対するより明確な説明が求められる。


地元配慮強調


 一方の防衛省。真部朗報道官は十三日、「共同使用の重要性を理解し受け入れことに敬意を表する」と述べ、訓練では地元住民に配慮することを強調した。

 また、「再編関連の特定周辺市町村にしたいと考えている」ことも明言。同省は近く、正式な交付額を地元に通知する予定だ。

 表明のタイミングがこの時期になったのはなぜか―。再編交付金の官報告示との関連を問う質問に、儀武町長が答えた。「統合消防施設の支援などに協力が得られることとタイミングが重なっただけ」。その表情は硬かった。


[解説]

日米軍事融合の舞台に


 米軍キャンプ・ハンセンの共同使用により、那覇市に駐屯する陸上自衛隊第一混成団の実弾射撃の訓練効率は飛躍的に高まる。当面は自衛隊のみで訓練を行うとみられるが、米海兵隊との共同訓練も実施される可能性が高く、米軍再編の目的である日米の「軍事融合化」が、沖縄を舞台に進むことになる。現在千九百人の第一混成団は旅団格上げで二千三百―三千人規模への増強方針が打ち出されており、ハンセンでの共同使用と連動する形で大幅な能力向上が図られそうだ。

 県内の陸上自衛隊射撃施設は、勝連分屯地に二十五メートル射程の射撃場しかないことから、第一混成団はこれまで熊本や大分県など主に九州の自衛隊演習場に移動して訓練していた。こうした「転地訓練」は、隷下の第一混成群で年間約六十日、第六高射特科群で年間約七十日、その他部隊で年間約四十日間(いずれも二〇〇四年度)に及ぶ。

 〇八年度以降は、陸自の小火器射撃訓練施設として整備中の沖縄市の東恩納覆道射場の使用も見込まれており、沖縄の陸自は今後、実戦的な訓練や演習の機会を大幅に増大させることになる。

 沖縄防衛局は「ハンセンでの共同使用が可能になると、中隊規模の訓練や二十五メートルを超える射程の射撃訓練が沖縄に駐留したまま実施できる。訓練環境が改善されることで、沖縄の自衛隊の即応性が高まり、ひいては災害時の安全にも資する」と説明している。しかし、ハンセンの共同使用の主眼は第一混成団の軍事能力の向上であり、「災害時」の対応を引き合いに出すことには本質を覆う意図もうかがえる。

 地元の容認を受け、陸自は近く沖縄防衛局長に共同使用手続きを依頼。防衛省は、自衛隊による在日米軍基地の使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する。日米合同委員会で合意後、在沖米海兵隊と沖縄防衛局、陸上自衛隊の三者で現地協定を締結し、共同使用が開始される。

 米軍再編は米空軍嘉手納基地の共同使用も盛り込まれており、沖縄では陸と空で日米の軍事融合化が進みそうだ。(政経部・渡辺豪)


[視点]

基地負担増の歯止め策なし


 「基地負担の強化」を理由に、キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊共同使用に反対していた三首長が、一転して受け入れを表明した。

 自衛隊の不発弾処理を受け入れる志喜屋文康恩納村長は「決して負担が少ないという認識ではなく、三町村連携の下でやっていくための苦渋の選択」と語った。負担軽減ではなく、「振興策での連携」が優先されたことを象徴する言葉だ。

 射撃訓練を受け入れる金武町の儀武剛町長は「プラスマイナスゼロ」と表現。武器が小火器に限定される点や、消防本部統廃合への国の協力、再編交付金のソフト事業活用への期待も示した。

 同基地部隊のグアムへの移転も強調したが、以前から決まっていた話であり、人数や規模が示されない段階での受け入れ表明は説得力を欠く。

 米軍再編の本質は基地の北部統合・強化であり、「日米の軍事融合化」だ。

 共同使用といっても基地の管理・運用は米軍の判断に委ねられ、「使用協定」のめどはない。防衛省、自衛隊の現時点での意図を超え、使用レンジや武器の拡大、都市型戦闘訓練施設での共同訓練の可能性すら否定できない。

 振興策や再編交付金による街づくりを「総合的な判断」と集約したが、最も重要な地域住民の生活環境破壊につながる基地負担強化の歯止め策は示されなかった。(知念清張)


突然の容認 住民批判


 【北部】「金に目がくらんだ暴挙」。十三日、米軍キャンプ・ハンセンに隣接する金武町、宜野座村、恩納村の各首長が陸上自衛隊による共同使用を受け入れた。「負担増」を理由に反対していた三町村の突然の方針転換に、住民から驚きと批判が相次いだ。一方で「やむを得ない」と理解を示す声も。基地周辺の反応は複雑に揺れた。

 同問題で、金武町議会と恩納村議会は共同使用に「反対」を決議している。金武町議会軍特委員会の仲間政治議員は「町長は議会で基地機能強化に反対していた。お金をちらつかされて容認したのであれば、実に恥ずかしい。地方自治の主体性が政府の金に負けたことになる」と、強く反発した。

 恩納村の植田良介議員も「反対決議があるにもかかわらず説明もなしに容認したのは議会、村民無視だ」と決断の在り方を批判。

 近接するレンジ3に米軍の新射撃場建設が予定されている金武町伊芸区の池原政文区長は「自衛隊は(伊芸区に近い)レンジ3、4での訓練はしないとされているが、絶対にさせないという担保を国が取るべきだ。これ以上の訓練激化は許されない」。

 一方、「時勢が変わった」と容認姿勢を示すのは同町議会の松田義政議長。「議会として反対してきたが、交付金をソフト事業に使え、消防本部の統廃合にも協力するとの説明が防衛省側からあった」とし、近く全体協議会を開いて対応を決めるとしている。

 六日に全員協議会を開いた宜野座村議会の小渡久和議長は「米軍がいない時期の自衛隊訓練でそんなに負担増になるとは思えない。反対意見もあったが、最終的には首長に一任すると決めた」と説明。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「金が欲しければ基地を受け入れろという政府の差別的な政策に、自治体がいとも簡単に屈服した」と危機感を募らせた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141300_01.html

 

2007年11月14日(水) 朝刊 24面

名護市民投票10年/23日に名護でシンポ

 大学人九条の会沖縄は十三日、一九九七年の名護市民投票で米軍普天間飛行場代替施設の同市辺野古沖への移設反対が過半数を占めた「民意」を再確認し、新基地建設に反対するアピールを発表した。県庁で記者会見した代表の高良鉄美琉大法科大学院教授は「市民投票から十年、沖縄の民意は何かを再確認したい」と訴えた。同会は二十三日、名護市で「民意はどこにあるのか」をテーマにシンポジウムを開く。

 アピールは「沖縄の民意に反する辺野古新基地建設に反対するアピール―名護市民投票から十年を迎えて―」。米軍再編や、自衛隊の海外派遣を可能とする「恒久法」制定の動きなど基地建設につながりかねない国内の現状に、「沖縄の民意は憲法九条の『恒久平和』を志向したもので、自衛隊派兵の『恒久法』や基地の『恒久化』は、沖縄の民意をないがしろにする」としている。

 琉大大学院の高作正博准教授は「十年前の基地を造る問題が、今はどういう基地を造るかに大きく変わっている。市民や国民の民意が問われないまま推移しているのではないか」とした。

 シンポジウムは二十三日午後一時から名護市労働福祉センターで開催。沖国大の照屋寛之教授、高作准教授、沖縄大の宮城公子准教授が選挙と民意などについて報告する。入場料は三百円。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141300_07.html

 

2007年11月14日(水) 夕刊 1面

米局長「F15は最も安全」/嘉手納議会の抗議に

 【嘉手納】米ミズーリ州で今月二日起きた墜落事故を受け、米軍嘉手納基地に配備されているF15戦闘機五十三機が飛行を停止している問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)基地対策特別委員会の田仲康榮委員長ら七人は十四日、同基地を訪れ、墜落事故に抗議するとともに、同機の即時撤去を求めた。応対したジョン・ハッチソン広報局長は「F15は最も安全な戦闘機だ」と述べ、事故原因判明後に安全対策を講じ、嘉手納での飛行を再開する意向を示したという。

 田仲委員長らは「F15は事故を繰り返しており、欠陥機だ」と指摘。これに対し、ハッチソン広報局長は「飛行停止は予防的な措置。F15はこれまで安全な飛行を続けている」などと返答。イラクやアフガニスタンなどに配備されている一部のF15については、事故後も運用を継続していることを明らかにした。

 事故原因について同局長は「現在、空軍の安全調査委員会が調べているが、(嘉手納には)情報がない」と述べるにとどまり、原因を公表するかどうかについても明言しなかった。

 嘉手納基地からの未明離陸については、同基地に配備されている半分以上のF15の機体更新が終了している現状を説明。「更新計画に伴う未明離陸があと一回予定されているが、いつになるかは分からない」などと答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141700_01.html

 

2007年11月14日(水) 夕刊 5面

感情逆なで 住民怒り/F15「安全」発言

「飛行停止が欠陥証明」

 【中部】十四日、米軍嘉手納基地の広報局長が「F15は最も安全な戦闘機」と発言したことに、同機の未明離陸などで激しい爆音などに悩まされている基地周辺の沖縄市、北谷町、嘉手納町の首長や議会関係者、住民は怒り、あきれた。「墜落事故を何度も起こしているのに、住民をばかにしている」。爆音被害に加え、事故の恐怖におびえる住民らは米軍への不信感を募らせている。

 滑走路直下で騒音にさらされている北谷町砂辺地域の松田正二区長は「嘉手納基地のF15が飛行停止していることが、安全でないことを証明している。これまで県内でも墜落や事故が多発しているのに、そんな説明で住民が納得できるわけがない。住民をばかにしている」と興奮した様子で話した。

 嘉手納町東区の島袋敏雄自治会長は「安全といっても県内外で事故が多発しており、納得できない。不信感だけが募る」と憤慨。「欠陥機が頭上を飛んでいるという不安が大きい。飛行停止をした原因を解明し、飛行を中止するべきだ」と語気を強めた。

 沖縄市議会はF15の墜落問題で十六日に臨時会を開き、抗議決議する予定。同市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「何度も事故を起こしているのに安全という発言が理解できない。安全でないことはすでに証明されている」とあきれた様子で話した。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「議会からまだ何も聞いておらず、コメントのしようがない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141700_02.html

 

2007年11月14日(水) 夕刊 1面

200メートル岸壁不記載を批判/アセス方法書

 【東京】赤嶺政賢、照屋寛徳両衆院議員らが十四日午前、防衛省に桝賀政浩地方協力企画課企画官を訪ね、同省が県に提出した米軍普天間飛行場の移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書について「基地機能の全容を明らかにすることなく、建設ありきで手続きを強引に進めている」と撤回を求めた。

 両氏は、米側資料から明らかになった戦闘航空機弾薬搭載エリアや全長二百メートル超の岸壁整備などが、方法書に記載されていないことを問題視。その上で「新基地の機能について十分な説明責任を果たしていない。さまざまな疑義がある段階におけるアセスは全く意味をなさず、到底容認できない」と述べた。

 照屋氏によると、桝賀企画官は方法書に問題はないとした上で「住民意見をしっかり受け入れて対応する。岸壁などは米側と協議中で詳細は言えないが、準備書までに計画を作成し、県民に示したい」と答えたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141700_03.html

 

2007年11月15日(木) 朝刊 2面

普天間移設問題「防衛省がひどい仕打ち」/仲井真知事、首相に直訴

 【東京】仲井真弘多知事は十四日、首相官邸で開かれた政府主催の全国知事会議に出席した。米軍普天間飛行場の移設問題で福田康夫首相に対して、これまでの防衛省の対応を「ひどい仕打ち」として強い不満を直訴し、地元の声に耳を傾けるよう要望した。同飛行場返還後の跡地利用では原状回復に時間がかかることを念頭に、再開発を加速するための新たな法整備などを検討するよう提案。日米地位協定の抜本的な見直しも求めた。

 福田首相は「今まで不信感を与えた点もあったようだが、それを払拭しながら、よく(地元の)意見を伺いながら協議したい。沖縄も協力を賜りたい」と述べた。

 仲井真知事は「かなり強引に県知事、市町村の納得なしに、ある省がどんどん進めた」と指摘。名指しこそ避けたが、代替施設の環境影響評価(アセスメント)手続きなどをめぐる防衛省の手法をやり玉に挙げた。

 具体的には「北部振興策みたいに蛇口を止めるとか自衛隊の船を派遣するとか、ちょっといかがなものかという状況にある」と述べ、本年度分の北部振興策の執行凍結や、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の事前調査への自衛隊艦船派遣などを批判した。

 普天間飛行場の跡地利用では「砲弾などがかなり埋まっている可能性があり、手間がかかりそうだ。再利用するには新しい制度を入れていただかないと」と述べ、新法制定の必要性を強調した。

 仲井真知事は会議終了後、「このままアセス法上の手続きが進んでも、最後の条件がなしでは(埋め立ての許認可を)やりませんよと言っている」と述べ、V字形滑走路の沖合移動を求める考えをあらためて強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151300_02.html

 

2007年11月15日(木) 朝刊 2面

全駐労/21日時限スト通告

手当削減反対で

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、全駐労(山川一夫委員長、約一万六千八百人)は十四日、組合側の提案見直し要求に応じない場合は、二十一日からストを実施するとの通告書を防衛省に提出した。

 全駐労によると、全国ストが実施されれば、一九九一年以来十六年ぶり。職種に応じて、始業時から四時間の時限ストを予定している。県内では約六千数百人の組合員がいるという。

 全駐労は十六日、防衛省前で抗議行動を行った後、同省で団体交渉するが、政府側は提案を見直す考えを示しておらず、ストは避けられない情勢。状況次第では第二波のストも辞さない構えで、今月下旬から十二月上旬にかけて八時間の時限ストを検討している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151300_05.html

 

2007年11月15日(木) 朝刊 27面

ヘリパッド移設「騒音増大 生活できぬ」/高江区民、切々訴え

 【北部】県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)のメンバーは十四日、米軍北部訓練場の一部返還に伴い、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設作業が進む東村高江区を視察した。

 約六十人の区民らが次々集まり、軍特委メンバーに、「地元の声を聞いてほしい」と訴えた。

 同訓練場内の視察を終えた軍特委のメンバーを前に、仲嶺武夫区長は「騒音被害は現在でもひどい。ヘリパッドが新設され、普天間飛行場が名護に移設されると、距離的にも騒音が近くなり、本当にここで生活が続けられるか不安だ。全体が移設されないのがベターだが、せめて住宅地に近いN―4地区だけでも遠方に移してほしい」と、切々と語った。

 親川委員長は「暑い中大勢の人が駆けつけた気持ちは十分に察する。騒音や被害が、これ以上拡大することは避けるべきだ」との認識を示した。要請後、仲嶺区長は「このまま建設が強行されるようだと区民の大半が座り込みに参加することになる」と、計画の見直し協議に応じる姿勢を見せない国を批判した。

 同委員会は、名護市のキャンプ・シュワブ内から普天間飛行場代替施設の予定地も視察した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月15日朝刊)

[共同使用容認]

行政不信を招く対応だ

 陸上自衛隊による米軍キャンプ・ハンセンの共同使用に反対していた金武、宜野座、恩納の三町村首長は、従来の姿勢を改め、受け入れを表明した。

 三町村にとって懸案だった統合消防施設の整備について、防衛省の協力が得られることになったのが理由の一つだという。

 日米合意を一方的に押し付けられ、対応に苦慮したであろうことは容易に想像がつく。しかし、それを差し引いたとしても、今回の方針転換は行政としてあまりにもお粗末である。

 首長が公に受け入れ反対の姿勢を明らかにし、議会も撤回を決議するということは、いわば住民に対する行政・議会の約束であり、決して軽いものではないはずだ。

 それがいとも簡単に破られるようでは、住民の行政不信を高めるだけである。

 やむを得ず方針変更をするのであれば、変更の理由を議会や住民にきちんと説明し、理解を求めた上で相手側(防衛省)に伝えるのが筋だ。今回はその手続きも取っていない。

 沖縄から見ると、在日米軍再編は、政府が強調した「負担軽減」の側面よりも、米国が求めた「抑止力維持」の側面が目立つ。

 再編の中身を一言で言えば、「中北部地域への基地の集約化」と「米軍・自衛隊の一体化」だ。

 一九七八年に「日米防衛協力のための指針」(旧ガイドライン)が策定されて以来、レンガを一個一個積み上げるように着実に、米軍と自衛隊の一体化が進んできた。

 今回の米軍再編は、緊密化・一体化をさらに推し進め、すき間のない連携関係を目指すもので、従来とは質の異なる取り組みであることを米軍自身も認めている。

 神奈川県のキャンプ座間には、米陸軍第一軍団司令部を改編した統合作戦司令部を配置し、陸上自衛隊も中央即応集団司令部を同じ基地に設置する。

司令部機能を一体化させる試みだ。

 キャンプ・ハンセンの共同使用は、那覇の陸上自衛隊第一混成団にとって旧ガイドライン策定以来の懸案だった。一混団はこれまで、中隊規模以上の大掛かりな訓練の場合、大分県の日出生台演習場など九州の演習場を利用していた。

 共同使用が実現すれば、自衛隊単独の訓練だけでなく、いずれ同演習場を使った在沖米海兵隊との合同訓練も実施されることになるだろう。

 中北部地域にとっては、容易ならざる事態が進みつつあると理解すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071115.html#no_1

 

琉球新報 社説

陸自使用受け入れ 将来見据えた決断なのか

 金武、宜野座、恩納の3町村長が在日米軍再編合意に基づく米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用受け入れを正式に表明した。

 自衛隊の共同使用が打ち出された直後から3町村長は「負担増」を理由に、一貫して「反対」姿勢を示してきた。

 政府に従う自治体は厚遇し、従わない所は冷遇するという露骨な米軍再編交付金が影響したのだろう。儀武剛金武町長は否定するものの、交付対象から除外されたことで方針を転換せざるを得なかったのではないか。

 このような「アメとムチ」の制度は、地方自治体の独立性を否定するものである。それを公然と立法化したこと自体問題である。

 防衛省の説明によると、ハンセンで訓練している米軍の実動部隊がグアムに移転する。儀武町長は「負担減につながるのではないかと思った」と述べたが、移転の規模などは明確でない。

 「負担増」の懸念が払拭(ふっしょく)されているとは言えない状況での方針転換である。自衛隊の共同使用で「負担増」とならないようにする責任が3首長にはある。

 3町村の長年の懸案だった消防・医療救急体制づくりのための緊急指令機能を備えた新たな統合消防施設の整備で、政府の協力が得られることが受け入れ理由の一つである。

 住民の生命にかかわる重要な施設であり、3首長がその整備を急ぎたいとの考えは理解できる。そこに、付け込むような政府の姿勢はいかがなものか。

 統合消防施設は自衛隊共同使用の受け入れとは関係なく、国民の安全を確保するため、政府としても3町村を支援することは当然のことである。基地負担との引き換えで協力を持ち出すべきものではない。

 志喜屋文康恩納村長は「負担が少ないという認識はない。3町村で連携しなければならず、苦渋の選択だった」と述べた。

 名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への普天間代替施設建設をはじめ、県内の首長は政府によって「苦渋の選択」をせざるを得ない状況に追い込まれてきた。

 米軍再編の目的の一つとされた「地元負担の軽減」を実現する意志が果たして政府にあるのか疑問だ。政府の負担押し付けの圧力は強まる一方である。

 在沖米軍が訓練を本土で分散実施し、グアムへの部隊移転が進んだとしても、その一方で自衛隊の県内基地での訓練などが増えることが予想される。ハンセンの共同使用はその前例にされかねない。

 肝心の住民や議会への説明は後回しにされた。

 3首長の方針転換は将来を見据えた決断と言えるのだろうか。

(11/15 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28952-storytopic-11.html

 

2007年11月15日(木) 夕刊 1面

宜野湾市長が撤去要求/墜落同型ヘリ

 【北中城】二〇〇四年八月、沖縄国際大学に墜落した米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターと同型の四機が普天間飛行場に配備された問題で、宜野湾市の伊波洋一市長は十五日午前、北中城村のキャンプ瑞慶覧に米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね「老朽化したヘリが住宅地上空を飛行することは許されない」などとする抗議文を手渡し撤去を要求した。

 伊波市長によると、応対したラリー・ホルコム部長は撤去要求に対し「上司に伝える」と返答。同型機による訓練再開時期は明言しなかった。四機の飛来はローテーションの部隊配備計画(UDP)に基づくもので、米海兵隊は日本国内で同型機十機の運用を予定。残る六機と要員が普天間飛行場に配備される可能性を否定しなかった。

 伊波市長は「危険な普天間飛行場は閉鎖し、早期返還するべきだ。CH53Dヘリの老朽化は米連邦議会でも証言されており、住宅密集地での運用はおかしい」と強調。

 その上で「(所属機ですら)日米間で合意した飛行ルートを守っておらず、午後十一時以降の飛行も恒常化している。米軍は少なくとも、日本政府に約束したことは守るべきだ」と抗議した。

 抗議文は、米海兵航空計画で、CH53Dヘリの平均使用年数が三十七年の古い機体だと指摘。

 CH53Dヘリと要員の配備は、新たな基地機能の強化につながりかねず「市民の精神的苦痛を無視している。(配備は)断じて容認できず、怒りを持って強く抗議し早急な撤退を強く求める」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151700_01.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月8日、9日、10日、11日)

2007年11月8日(木) 朝刊 1面

「普天間」移設 国、北部振興再開を検討

来月の協議会で判断

 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が約十カ月ぶりに再開されたことを受け、政府は七日、予算が凍結されている北部振興事業の執行再開について、十二月中旬に予定されている次回の第五回協議会で判断する方針を固めた。同事業をめぐって昨年の第一回協議会で承認された「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」との配分条件を満たすかどうかが今後の焦点となる。

 協議会が再開されたものの、政府と沖縄側には、普天間代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐってなお隔たりがあり、「協議が円滑」とはいえない状況だ。

 予算を所管する内閣府は「次回協議会で何らかの歩み寄りがあれば執行の条件を満たせる」(幹部)と期待感をにじませる。一方、防衛省は「県が合理的な根拠のない沖合修正を求め続けるなら、予算執行はおろか、二〇〇八年度分の予算計上も難しい」(幹部)と厳しい姿勢。同問題を取り仕切る内閣官房の対応が注目される。

 七日の協議会で、仲井真弘多知事が北部振興事業の凍結に不快感をあらわにしたことを受け、町村信孝官房長官は、次回協議会までに予算執行のめどが付くよう、環境整備を急ぐ考えを示した。

 仲井真知事は沖合移動については「環境影響評価(アセスメント)前の修正」を求めるスタンスから、「アセス内の修正」へと柔軟姿勢に転じた。

 しかし、「融通むげに沖合に持っていく性格のものではない」(町村官房長官)、「(移設協議は沖合移動を)前提としない」(石破茂防衛相)などと厳しい姿勢を崩しておらず、先行きは依然不透明だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_01.html

 

2007年11月8日(木) 朝刊 1面

専門家から意見聴取へ/日本史小委

沖縄戦 審議公開も議論

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社からの訂正申請を受けて記述を再審議する教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会が五日に開かれていたことが七日、分かった。関係者によると、審議に際して沖縄戦の専門家から意見を聞く必要性で一致。二〇〇六年度の審議会が検定意見の決定過程で密室性が強かったとの批判を受け、審議の公開の在り方も議論した。訂正申請後、同委員会が開かれたのは初めて。

 沖縄戦専門家の選定は現在、四―五人の候補が挙がっており、最終的な人選を委員長に一任することになったという。

 五日の日本史小委は、〇六年度の教科書検定で検定意見が付いた五社のうち、二日までに四社が訂正申請を終えたことを受け、「予備的な会合」(関係者)として開かれた。記述内容の審議はまだ始まっていないという。十一月中に再度、会合を開く見通しだ。

 同小委での結論は、審議会の第二部会(社会科)を開いて決定する段取りも確認した。

 「集団自決」記述に関する訂正申請は、一日に東京書籍と実教出版が文部科学省に初めて提出。二日には清水書院と山川出版が申請した。

 教科書会社関係者によると、文科省は五社に対して「五日までに申請してほしい」と要望していたが、七日時点で三省堂がまだ申請していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_02.html

 

2007年11月8日(木) 朝刊 23面

執筆者懇「検定撤回を」声明発表

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社の執筆者や編集者でつくる「社会科教科書執筆者懇談会」は七日、文部科学省で記者会見し、同省に(1)訂正申請された記述の受け入れ(2)検定意見の速やかな撤回―などを求める声明を発表した。検定意見の決定に強い影響力を持つ教科書調査官と、教科用図書検定調査審議会委員の人選の透明化・公正化など、検定制度の改善を文科省に求めていく考えも盛り込んだ。

 声明は執筆者や教育研究者ら十七人が呼び掛けて作成した。

 「集団自決」に関する二〇〇六年度の教科書検定で、文科省が検定意見の根拠に大阪で係争中の「『集団自決』訴訟」を挙げていることを指摘。「係争中の裁判での一方の側の主張を教科書に記述してはならないと言ってきた、文科省自身のこれまでの言明とも明らかに反する」と批判している。

 記者会見した執筆者の石山久男さんは「訂正申請がきちんと受け止められることと、訂正申請によって検定意見の撤回があいまいにされないよう願っている」と述べた。

 子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長は、一九九一年度の検定で教科書に引用された著書の記述に検定意見が付き、後に文部省(当時)が作者に謝罪した事例などを報告。「文科省は『制度上、検定意見の撤回はできない』と言うが、事実上、撤回した経緯はある」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_03.html

 

2007年11月8日(木) 朝刊 23面

「自決」の負傷者 写真に/山梨学院大の我部教授入手

 沖縄戦の慶良間諸島で軍命によって起きた「集団自決(強制集団死)」の負傷者を撮影した写真二枚が七日までに見つかった。座間味島の病院で、子どもたちが首に包帯を巻いた姿で撮影されている。我部政男山梨学院大学教授が米国立公文書館で入手した資料の中にあった。写真を託された沖縄女性史研究家の宮城晴美さんは「国の都合によって、いたいけな子どもたちまでが犠牲を強いられたことを示した写真だ」と話した。(編集委員・謝花直美)

 我部教授が二〇〇四年十二月に米公文書館から持ち帰った資料を整理する中で見つけた。記録では撮影日付「一九四五年四月二十一日」、撮影者「E・C・サッカーソン大尉」とあり、「座間味島の病院にいた子どもたち。親が子どもたちののどを切ろうとしたことが分かる」と説明がある。

 四五年三月二十六日、米軍は座間味島に上陸、島を制圧する一方で病院を設置、軍人や民間人の治療に当たった。渡嘉敷島からもけが人が運ばれた。当時病院は二カ所あり、集落内に焼け残った建物を接収した病院が重傷者用、ヒナヌカーと呼ばれる浜辺にテント張りで設置されたのは軽傷者用だった。写真にはテントが写っているため軽傷者用の病院とみられる。

 宮城さんがこの写真に関し、聞き取り調査したが、病院の場所以外の情報は得られていない。「最も信頼する親から傷つけられなければならなかった子どもたちの悲鳴が聞こえてきそうだ。心身の傷は生涯癒えることはなく、あらためて日本軍、国家に対し、はらわたが煮えくり返る思いを禁じ得ない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月8日朝刊)

[「普天間」移設協]

住民の目線に立ってこそ

 米軍普天間飛行場の移設に関し政府と地元が話し合う「普天間飛行場移設協議会」が首相官邸で開かれた。

 福田新政権になって初の協議会で、約十カ月ぶりの開催である。

 仲井真弘多知事は、代替施設の建設計画について「まずは(政府が)自主的に沖合に寄せ、アセス手続きの中で、さらに沖合に寄せるよう知事意見が出た場合は、誠実に対応してほしい」と、政府の譲歩を求めた。

 政府は「現行案が基本」との姿勢を崩していないが、「地元の意見を受け止め、誠意をもって協議していきたい」(町村信孝官房長官)と答えている。

 政府はこれまで地元の声を無視し、米軍基地再編交付金をちらつかせながら受け入れを迫ってきた。米国と合意した現状のV字形滑走路案に固執してきたこれまでの姿勢を考えれば、話し合い路線への転換といえるだろう。

 膠着状態が続いていた「普天間」問題が大きな転機を迎えたのは間違いない。

 しかし、輸送ヘリの陸域上空飛行や装弾場などの付帯施設について情報開示が不十分という自治体首長らによる訴えに、関係閣僚は十分な説明をしなかった。

 米軍が配備を決めている垂直離着陸機MV22オスプレイ、大浦湾側に整備されるという二百メートルを超える護岸についてもしかりである。

 政府に対し県民が不信感を抱くのは情報を小出しにするか封印し、新たな情報が常に米側から漏れてくることにある。

 地元への情報開示が不足しているという北部の首長らの指摘を、政府は重く受け止めなければならない。

 県は代替施設の沖合移設を求めているが、それによって実際に何が変わるのか。周辺住民の暮らしへの影響はどうなのか。詳細な情報を提示する責務がある。

 知事の公約である普天間飛行場の危険性除去については、この日の協議会でもゼロ回答に近かった。

 もし、移設まで普天間飛行場をそのままにしておくのなら、場周経路に関する日米合意によっても危険性が除去されるとは思えない。

 次回協議会は十二月中に開かれるが、県、名護市などが歩み寄れば凍結した北部振興事業予算を解除し、基地交付金も検討する方針だという。

 対話路線に隠れた露骨な「アメとムチ」の手法と言うしかない。協議に当たっては、住民の目線に立って不安を解消していくことが国や県、関係自治体の責務である。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071108.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間移設協議会 住民の安全最優先に/地元要求実現は政府の責務

 政府と県、関係市町村が米軍普天間飛行場代替施設の建設計画などを話し合う普天間移設措置協議会が十カ月ぶりに開かれた。

 仲井真弘多知事は名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設するV字形滑走路を沖合へ寄せるよう求めたが、政府は環境への影響などを理由に応じなかった。

 普天間移設問題が地元の理解と協力なしには前進しないことは、海上基地建設が頓挫したことからも明らかである。

 地元は、県外移設がベストだと考えながらも、苦渋の選択で県内移設に基本合意したのである。

 そのような経緯からしても、少なくとも騒音の軽減、危険性の除去に向けた県や関係市町村の要求を実現することが政府の在り方である。

過剰な期待禁物

 移設措置協は、第3回まで防衛相と沖縄担当相が主宰してきたが、今回から官房長官主宰に格上げされた。

 これまでの協議会は、防衛省が主導権を握り、政府案を地元に押し付ける場でしかなかった。地元の要望に耳を貸さず、話し合いとは程遠い実態になっていた。

 仲井真知事は協議会後、「(政府は)これまでは既定路線で展開したいという強い思いがあったが、今回は沖縄の意見に耳を傾ける姿勢と気持ちがあった」と評価した。「ここで解決できないものはない印象を受けた。コミュニケーションは緊密、率直にできるようになった」とも述べた。

 協議会に変化の兆しがあったことで、県や関係市町村が期待感を抱くことも理解できる。

 しかし、この日の協議会でも県など地元要求に対して、前進は一切なかった。過剰な期待は禁物である。

 実際、石破茂防衛相は「政府として今の形(政府案)が最も適切だと考えている」と、これまでの姿勢を崩してはいない。

 防衛省はこの間、米軍再編交付金をちらつかせ、交付金の対象となる「再編関連特定周辺市町村」の指定から名護市など4市町村を外すなど、圧力をかけてきた。移設先の環境現況調査(事前調査)では自衛艦まで動員した。

 防衛省は日米合意を最優先に推し進めることに終始し、協議会を形骸化(けいがい)させてきたと言っていい。

 政府全体の姿勢が変わったのかを、今後の協議を通してしっかり見極める必要がある。

 仲井真知事が沖合への修正を求めたのに対し、政府は沖合修正によるジュゴンや藻場など、自然環境への影響増大を指摘し、政府案への理解を求めた。

 普天間代替施設は160ヘクタールもの埋め立てを伴う。環境にいくら配慮しても、環境が破壊されることは確実である。

 現行案に固執する政府が環境への配慮を持ち出すことは、説得力を欠く。

情報すべて開示を

 日米合意で最も問題なことは、地域住民の安全が確約されていないことだ。

 新設される基地には次世代兵員輸送機MVオスプレイが配備されることが確実視されている。同機は開発、試験飛行段階で4回墜落し、うち3回で計30人が死亡している。同機の危険性は依然として解消されてはいない。

 普天間移設は、危険性の除去が大きな目的だった。そのことからして、地域住民の安全保障を最優先することがまず求められる。その視点が政府には欠落している。

 町村信孝官房長官は沖合への修正について「日米の合意が必要。日本の事情で勝手に変えられるものではない」と述べた。

 そもそも地元の頭越しに米側と勝手に合意したのは政府の方である。政府には米側に修正合意を取り付ける責任がある。

 県内移設そのものに反対する声は根強い。沖縄だけに負担を押し付ける姿勢を政府が大きく転換しない限り、県民大多数の理解を得ることはできない。

 政府はそのことをまず認識し、12月上旬に予定されている次回の協議会に臨むべきである。

 全長約180メートルの艦船が停泊できる岸壁や戦闘機装弾場など建設計画の全容が政府から地元に一切伝えられていない。地元には重要な事項にもかかわらずである。

 これまでに明らかになっている米側の公文書からは、単なる移設ではなく、より強化された基地が新設されることが分かっている。

 情報をすべて開示しないままで協議がうまくいくはずはない。

(11/8 9:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28766-storytopic-11.html

 

2007年11月8日(木) 夕刊 5面

対馬丸の悲劇 映画化

 大阪府門真市で劇団ARK代表を務める齋藤勝さん(48)は七日、那覇市若狭の対馬丸記念館で会見し、先の大戦で米軍に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の悲劇を題材にした映画を製作すると発表した。齋藤さんは約八年前から対馬丸事件をテーマにしたオリジナル戯曲「銀の鈴」を舞台化、府内で上演しており、これから撮る作品はその映画版となる。すでに撮影を開始している。一般公開は二〇〇九年四月を予定している。

 齋藤さんは、対馬丸の生き残りの上原妙さん(76)から聞いた「生き残ってからが本当の戦争でした」との言葉に衝撃を受け、映画化を決意したと説明した。


証言基に構成


 その上で「表現者としてどうしても伝えたい話だと思った。沖縄戦の悲劇の象徴である対馬丸を風化させてはならない」と熱い思いを語った。

 「銀の鈴」は対馬丸へと、子どもたちを送り出した教師と奇跡的に助かった人たちが織り成す物語。沖縄に残った教師や疎開先での子どもたちの生活を描きながら、生き延びた後も戦争に翻弄され続ける人々の姿を描いた。登場人物や疎開先のエピソードは架空の話だが、「対馬丸」生存者の証言を基に構成・脚本化した。


関係者も期待


 会見には上原さんのほか、高良政勝同記念館会長も同席。高良会長は「教科書検定問題のように対馬丸も軍命ではなく自由な意思で疎開したと史実を書き換えられることに危機感を覚える。そうならないよう多くの人に対馬丸の悲劇を知ってもらう作品になれば」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081700_01.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 1面

米、沖合移動に強い難色/国内議論牽制か

国防長官来日/官房長官に言明

 【東京】米国のゲーツ国防長官が八日、町村信孝官房長官と首相官邸で会談し、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設について、「どこか一カ所を変えると、(米軍再編の)全体が崩壊する」と述べ、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動に強い難色を示していたことが分かった。複数の日米外交筋が明らかにした。

 ゲーツ長官は、今年五月、ワシントンで久間章生防衛相(当時)と会談した際、沖合移動に柔軟だった久間氏に「一部を変えたりすることなく、そのままの形で実現していくことが重要だ」と牽制しており、日米合意案を堅持する米政府の姿勢があらためて浮き彫りとなった。

 会談で町村長官は、政府と県、名護市など関係自治体による普天間移設協議会を自ら主宰して七日に開催したことを報告しており、同協議会で県や名護市から要望があった沖合移動についても紹介したとみられる。

 ゲーツ長官の今回の発言は沖合移動をめぐり、日本国内でなお議論がくすぶっていることへの不満と、修正は認められないとする強い意思を重ねて示したものといえる。

 ゲーツ長官は町村長官との会談後、石破茂防衛相とも会談。米軍再編に関し、個別の基地に関する発言は控えつつも、「2プラス2(日米安全保障協議委員会)で合意されたロードマップ(米軍再編最終報告)が大事だ。パッケージとして大事で、交渉された通りに履行されるべきだ」と述べ、普天間移設を日米合意に沿って進めるべきだとの考えを示唆した。

 また両氏は、テロ対策特別措置法の期限切れに伴って中断している海上自衛隊のインド洋での給油活動について、早期に再開する必要があるとの認識で一致した。

 会談後、石破防衛相とゲーツ長官は共同記者会見し、米軍再編について「昨年五月のロードマップに従い、普天間飛行場の移設返還、海兵隊のグアム移転などを着実に進めていくことを確認した」と発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_01.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 1面

墜落同型ヘリ新たに6機/普天間計10機

 【宜野湾】米海兵隊報道部は八日、部隊配備計画(UDP)の一環として、沖縄国際大学に墜落したCH53D大型輸送ヘリコプターの同型機十機と約百五十人の兵士らを普天間飛行場にローテーション配備することを明らかにした。

 ローテーション配備されるのは同機を含む第一海兵航空団第四六三海兵重ヘリ中隊。六カ月で兵士らを交代させる。

 同報道部によると、同部隊は「イラクの自由作戦」の支援任務から帰還し、「日米安保条約を遂行する能力を維持するため」に訓練を行うとしている。

 このうち、四機と約六十人の兵士らは既に「普天間」に到着。残る六機の飛来時期については「後日、到着する」としている。

 宜野湾市の伊波洋一市長は「人口密集地の『普天間』に配備することは住民に大きな不安を与える。断じて許されない。米軍に即時撤去を求める」と強調。週明けにも米海兵隊外交政策部(G5)や外務省沖縄事務所、沖縄防衛局などに抗議行動を行う考えを明らかにした。

 同部隊は通常、山口県の岩国基地に展開しているが、二〇〇五年からイラクの作戦支援で派遣されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_02.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 1面

訂正申請出そろう/教科書検定

 二〇〇八年春から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた三省堂が八日、文部科学省に訂正申請を提出した。これで記述を削除された五社七冊の訂正申請が出そろった。三省堂は日本軍強制を示す記述を明記したとみられる。文科省は、今月中にも教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会で訂正を認めるかどうか結論を出す見込み。

 三省堂は日本史A、B二冊の教科書の訂正申請を提出。検定時は「日本軍に『集団自決』を強いられた」との記述だったが、検定で「追い詰められて『集団自決』した」との記述で合格していた。

 関係者によると、記述内容は執筆者同士が合意した案では「『集団自決』は自発的な死ではなく、日本軍が強いたという趣旨が分かる記述になっている」としている。「集団自決」以外にも、近現代史で沖縄や北海道に本土からの差別や偏見があったことに関する記述を増やした。「集団自決」関連の訂正だけが突出しないよう配慮したという。

 「集団自決」に関する訂正申請は東京書籍と実教出版が一日、文科省に提出。二日には清水書院と山川出版が続いた。東京書籍、実教出版、清水書院の三社も日本軍の強制を示す記述内容になっているとみられる。検定規則では、申請を承認するか、結論が出るまでは教科書会社、文科省とも申請内容を公表できない。

 訂正申請が出そろったことに琉球大学の山口剛史准教授は「教科書会社、執筆者の努力を評価したい。だが、文科省が検定意見を撤回しないままでは記述がそのまま認められるのか分からない。学術的に公正・中立な審議がなされることを期待したい」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

大江・梅澤氏きょう出廷/「集団自決」訴訟


 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決」をめぐり、「沖縄ノート」などの書籍に自決を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長らが著者の大江健三郎氏(72)と発行元の岩波書店に、出版の差し止めなどを求めている訴訟の本人尋問が九日、大阪地裁で開かれる。原告で座間味島の元海上挺進第一戦隊長の梅澤裕氏(90)と、渡嘉敷島の海上挺進第三戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟秀一氏(74)が出廷。大江氏も自ら証言に立つ。

 同訴訟の提起は、沖縄戦の「集団自決」に対する日本軍の強制性が削除された、二〇〇六年度の高校歴史教科書検定に多大な影響を及ぼした。

 梅澤氏は自決命令は出しておらず、軍命は援護法の適用を受けるための虚偽だったなどと主張。岩波側は、多くの書籍や資料などの記録から軍や戦隊長による命令は明らかと反論している。

 原告側が名誉棄損だと主張している「沖縄ノート」の各記述について、大江氏側は「集団自決」の責任者個人を批判してはいないと主張しており、尋問では大江氏が各表現を用いた経緯や狙いについて自ら語る。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_03.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 2面

共同使用受け入れ検討/金武町長

 【北部】在日米軍再編に基づく、米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊の共同使用問題について、金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会会長で金武町の儀武剛町長は八日、沖縄タイムス社の取材に対し「負担の増大につながるか見極めた上で判断したい」と述べ、これまでの反対の姿勢を軟化させ、共同使用の受け入れも視野に検討していく考えを示した。

 これまで三連協は、共同使用が新たな基地負担の増加につながるとして反対の意思を示していたが、儀武町長は「どのように負担が増えるのか、もう一度検証して判断する必要がある」と述べた。

 儀武町長は、共同使用問題について「金武町だけで決められることではないが、想像以上の訓練ではないように感じている」とした上で、「宜野座村や恩納村と話し合い、それぞれの考えをまとめながら結論を出していく」と、三町村の協議を経て、結論を出すとした。

 沖縄防衛局では十月二十二日に金武町役場を訪れ、三連協に対して、ハンセン内のレンジ1、2や、都市型戦闘訓練施設が移設されるレンジ16一帯を使用したいとして、受け入れを要望。さらに同二十六日には、恩納村、宜野座村当局と村議会、五日には金武町議会にそれぞれ説明している。

 防衛省は三町村を、共同使用の受け入れに反対しているとして、米軍再編交付金の交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」から外している。しかし、三町村が共同使用の受け入れや協力が得られれば、財務省と協議した上で交付対象に指定する考えを示している。

 恩納村議会と金武町議会はこれまでに、共同使用について反対の決議を行っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_10.html

 

2007年11月9日(金) 夕刊 1面

軍命めぐり当事者主張/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に慶良間諸島での「集団自決(強制集団死)」をめぐり、ノーベル賞作家、大江健三郎氏の「沖縄ノート」や故家永三郎氏の「太平洋戦争」で住民に自決を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、島に駐屯していた部隊の元戦隊長らが大江氏と書籍発行元の岩波書店に、出版の差し止めなどを求めている訴訟の本人尋問が九日、大阪地裁(深見敏正裁判長)で始まった。午前は座間味島に駐屯していた元海上挺進第一戦隊長の梅澤裕氏(90)が出廷。「私は自決命令なんか絶対に出していない。村民が『集団自決』で亡くなったことは気の毒だと思うが、自決しないよう厳しく止めたし(自決用の)弾薬はやれないと言った」などと述べた。

 また梅澤氏は「手榴弾を防衛隊員に配ってはいないし、隊員に配ることを許可してもいない」と強調。梅澤氏の許可なく手榴弾が住民に渡ることはないとし、忠魂碑前で日本兵が住民に渡したとの指摘に対し「全然知らないし、あり得ないと思う」とした。

 「集団自決」については、当時はまったく予想しておらず、昭和三十三(一九五八)年ごろ、週刊誌で大々的に報じられるまで知らなかったと述べ、原因については「(多くの玉砕者が出た)サイパンの前例などもあるし、ああいう小さな島で米軍が上陸したら大変なことになると思っていたのではないか」などと述べた。「(軍ではなく)行政の上司から指示を受けていたのだと思う」とも語った。

 また座間味島で米軍の上陸を控えた一九四五年三月二十五日夜、兵事主任だった村役場の宮里盛秀助役から村民の「集団自決」のために弾薬を求められたが、梅澤氏は「何で自決する必要があるのかと厳しく言った。大事な場面で、はっきりと覚えている」とした。

 「沖縄ノート」については「去年、念のために読んだ」という。

 被告の岩波側はこれまで、梅澤氏は部隊の最高指揮官で、住民に「集団自決」を命じていたことは多くの書籍や資料の記録から明らかと反論。「沖縄ノート」については、梅澤氏ら戦隊長個人を特定して批判・論評しておらず、名誉棄損には当たらない、としている。

 また梅澤氏が、「集団自決」のための弾薬を求められたが断ったとしていることについては、その場にいた故宮城初枝氏の手記や、初枝氏の話を著作にまとめた娘の晴美氏の証言を基に、自決に追い込まれることは承知の上で、貴重な戦備を渡さなかったにすぎないと反論している。

 戦後、援護の担当者が梅澤氏に「軍命は援護法の適用を受けるためだった」として謝罪、執筆・押印したとされる書面についても、担当者の意志により作成されたものではないと指摘している。

 午後は大江氏が証言。原告側は渡嘉敷島に駐屯していた元海上挺進第三戦隊長、故赤松嘉次氏の弟秀一氏(74)も証言に立つ。

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2007年11月9日(金) 夕刊 6・7面

元隊長、関与を否定/命令は「那覇から」

 沖縄戦時、渡嘉敷、座間味両村で起きた「集団自決(強制集団死)」に対する戦隊長命令をめぐり、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎さん(72)や発行元の岩波書店を相手に大阪地裁に起こされた「集団自決」訴訟は九日、原告の座間味島・海上挺進第一戦隊の元隊長、梅澤裕さん(90)や大江さんらへの本人尋問でヤマ場を迎えた。

 「集団自決」教科書検定問題の原因ともなった訴訟に注目は高まり、原告、被告双方の多くの支援者らが見守る中、緊迫した尋問が始まった。

 静かな緊張感が漂う法廷で、十時半すぎ、本人尋問が始まった。梅澤さんと、渡嘉敷島・海上挺進第三戦隊の元戦隊長・故赤松嘉次さんの弟、赤松秀一さん(74)が証言台に並び、宣誓した。

 最初に灰色のジャケットを着た梅澤さんが、証言台前のいすに座った。

 「住民に手榴弾を配ったり、配るのを許可したことは」、「ありません」。「住民があなた方がいた壕を訪ねたとき、なんと言ったのか」、「とんでもないこと言うんじゃない。死んではいけない」。原告側弁護士のゆっくりとした質問に、歯切れよく答え続けた。

 村助役らが「老人、婦女子ら足手まといになるものは死んでくれと言われている」と話したことも証言したが、「だれから言われていたのか」と問われると「行政の上司、那覇あたりからの」と説明し、「集団自決」への軍命や強制に自らかかわったことは一貫して否定した。

 一方、被告側弁護士が、梅澤氏が故宮城初枝さんに最初に会った時期などを尋ねると、これまでの証言や示された証拠と矛盾する答えをする場面もあった。

 自らの陳述書に引用した宮城さんの手紙の一文「忠魂碑の前集合は住民にとっては軍命令と思い込んでいたのは事実でございます」について、「同じ気持ちか」と尋ねられると肯定し、後で「われわれの部隊が駐留したという程度の意味」と付け加えた。


     ◇     ◇     ◇     

大江氏、表情崩さず


 尋問を終え、梅澤さんが法廷を後にした約十五分後、大江さんが地裁に到着した。岩波書店関係者らに付き添われ、正面玄関につけた車から降りた。

 約八十人の支援者や報道陣が見守る中、拍手に出迎えられた。紺色のスーツを着た大江さんは、一瞬、支援者の方に顔を向けたが、口を結んだ真剣な表情は崩さず、正面を向き直してまっすぐ建物の中に入っていった。


抽選会場に700人列/原告側が気勢 騒然


 「集団自決」教科書検定問題の原因ともなった訴訟に注目は高まり、原告、被告双方の支援者らが集まって、大阪地裁は騒然とした雰囲気に包まれた。

 開廷は午前十時半だったが、傍聴抽選会場となった大阪地裁北側駐車場には午前八時前から傍聴希望者が並び始めた。六十五席の傍聴席に対し、同訴訟ではこれまでで最も多い六百九十三人が列をなした。

 抽選会場付近では、「戦隊長による軍命はなかった」と主張する原告側支援者が、「大江健三郎の人権侵害を許すな」と書かれたビラを配り、ハンドマイクで「九月二十九日の県民大会には慶良間諸島からの参加者はいなかった」、「渡嘉敷、座間味の住民に日本軍を恨んでいる人はいない」などと気勢をあげた。

 被告側には沖縄などからも支援者が駆けつけ、静かに開廷を待った。兵庫県宝塚市から訪れた大森悦子さん(65)は「沖縄の体験者のおじいさん、おばあさんたちが話していることが、なぜ(原告側に)分からないのか。人間の気持ちに立ち戻り、素直に考えてほしい」と話した。

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2007年11月9日(金) 夕刊 1面

知事、年内決着を期待/普天間移設

 仲井真弘多知事は九日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場移設問題について、年内に開催される政府との次回協議会での決着に期待感を示した。知事は地元が求めている代替施設の沖合移動などについて「(政府に)どこまで受け止められるかはまだ分からない」としながらも、「(次回協議会が)開催されれば無条件で参加しようと思っている。意見調整できるなら(協議会は)一番いい場だ」と述べ、政府との協議加速に前向きな姿勢を強調した。

 普天間飛行場の閉鎖状態については「政治判断が必要」との認識を示す一方、代替施設の沖合移動は「技術論と受け止めている。文字通りの微調整」と指摘。その上で、ゲーツ米国防長官が八日の町村信孝官房長官らとの会談で、沖合移動に強い難色を示したことに「(地元の要求は)日米合意をはみだしていないと思う。われわれの主張を理解してもらっているのか」と疑問を呈した。

 沖縄国際大学に墜落した米海兵隊ヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリが普天間飛行場にローテーション配備されることには「閉鎖状態の実現を求めている流れに逆らっている」と不快感を示した。

 県が来年度から予定している宮古・八重山両支庁を廃止・改編する方針について「行財政改革の流れの中で既定路線に沿っていきたいと考えている」と述べ、地元の意向を見極めた上で最終判断する考えを示した。

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2007年11月9日(金) 夕刊 7面

防衛局「誤飲ない」/ジュゴンの藻場にクギ

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、ジュゴンの餌場となる藻場に、短いくぎが使われ自然保護団体が「ジュゴンが誤飲する危険がある」と指摘した問題で沖縄防衛局は沖縄タイムス社の取材に対し、九日までに「約九センチの鉄製ピン」を使用していることを認めた。専門家は「無害の実証がない」と批判している。

 防衛局は「海底の砂の層が薄く、その下層が硬い場合には、鉄製の棒の設置ができないことから鉄製のピンを採用しているが、設置の際、海底の砂にできるだけ深く埋め込むようにしていることから、容易に抜けることはなく、ジュゴンが誤飲することはないと考えている」との見解を示した。

 ジュゴンの生態に詳しい元帝京科学大学教授の粕谷俊雄さんは「ジュゴンの餌場にくぎ(ピン)が配置されているということ自体、聞いたことがない。ジュゴンに決していい影響はない。無害が実証されない限り、この種の実験は行うべきではない」と、国の説明不足を批判した。

 防衛局は取材に対し当初、「長さ六十―八十センチ程度の棒」を使用していると回答していた。

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2007年11月9日(金) 夕刊 6面

米に最大規模返還要求/キャンプ瑞慶覧

 【東京】自民党国防部会、安全保障調査会、基地対策特別委員会の合同会議が九日午前、党本部であり、防衛省が八日の日米防衛首脳会談について報告した。金澤博範防衛政策局長は、在日米軍再編の「嘉手納以南六基地」の全面・一部返還で、米側との調整が難航しているキャンプ瑞慶覧の返還規模について、「最大限の規模での返還」を米側に求めたことを明らかにした。

 合同会議では、安次富修衆院議員が、「細切れではなく、一括で返還できるようにしてもらいたい」などと要望。

 これに対し金澤局長は「在沖米海兵隊のグアム移転の詳細が固まっていない中で、何とも言えないが、そのように進めていきたい」などと述べ、「最大限の規模での返還」に積極的に取り組む考えを示した。安次富氏はそのほか、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、県内基地従業員が国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」廃止案を撤回するよう求めていると指摘。

 これに対し防衛省側は「従業員の生活をしっかり考えて検討する」などと述べるにとどめた。

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2007年11月10日(土) 朝刊 1・26面

大江氏「軍命」主張/「集団自決」訴訟

 【大阪】沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの書籍に住民に自決を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、島に駐屯していた部隊の元戦隊長らが大江氏と著作発行元の岩波書店に、出版の差し止めなどを求めている訴訟の本人尋問が九日、大阪地裁(深見敏正裁判長)であった。午後から大江氏が出廷。「集団自決」について「軍による命令と考えている」と語った。

 「沖縄ノート」の記述などをめぐって原告と被告双方の質問に約一時間ずつ答えた。

 大江氏は「集団自決」について「太平洋戦争下の日本軍、現地の第三二軍、島の守備隊をつらぬくタテの構造によって、島民に強制された」とし、「日本軍による責任は明確で、『沖縄ノート』の記述を訂正する必要は認めていない」と述べた。

 原告側が戦隊長らの名誉棄損を主張している「沖縄ノート」の各記述について、大江氏は「日本軍の命令系統の最先端にいる責任者として、責任を負っている」としたが、「注意深く、隊長個人の名を書くことはしなかった。個人の名を挙げるよりも、問題が明確になる」とし、隊長個人は非難していない、との認識を示した。

 原告側は、大江氏が語った「タテの構造」の話は、「沖縄ノート」では説明されておらず「一般読者の注意と読み方に照らし、そうは読めない」と反論。各記述についてそれぞれ「戦隊長個人を非難している」などとただしたが、「文章を読み違えている」とする大江氏と平行線をたどった。

 大江氏は「『集団自決』が美しく、清らかだという欺瞞に反対するのが私の仕事だと思う」とし、「愛国心のために自ら命を絶った、国に殉じて美しい心で死んだと、事実をゆがめること自体が人間をおとしめている」と語った。

 午後の尋問では、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟秀一氏(74)も証言。「兄は尊敬の対象」だったとした上で、沖縄タイムス社の「鉄の暴風」で、嘉次氏が住民に「集団自決」を命じたと書かれ、「ショックだった。人殺しの大悪人と書かれているわけだから」と述べた。曽野綾子氏の著作「ある神話の背景」で、「兄の無罪がはっきりし、兄への親近感を取り戻せた。家族も戦隊の方々も心の支えになっていると思う」などと語った。

 被告側の反対尋問では、命令を出したことを生前、嘉次氏に確かめたことはないと述べた。


     ◇     ◇     ◇     

大江氏、身乗り出し反論


 書き上げたのは個人への断罪ではなく、琉球処分以後、大和世、戦世、アメリカ世と続き、施政権返還後も続きそうな沖縄への抑圧とそこに暮らす人々の苦しみ。それに対する日本本土の人々の無関心さ、無自覚さ。そうした自分を含む「日本人」への反省と問いかけだった。「沖縄ノート」(岩波新書)の著者、作家・大江健三郎さん(72)は、なぜこの本を書き、なぜ「集団自決(強制集団死)」を取り上げたのか、法廷で言葉を紡いだ。

 濃紺のスーツ姿で証言台に立った。

 「集団自決」を命じた日本―日本軍―三二軍と連なる「タテの構造」と、「その先端にいた渡嘉敷島の元戦隊長(海上挺進第三戦隊の戦隊長・故赤松嘉次さん)の沖縄再訪」に、沖縄と本土にある差異に無知、無自覚な日本人の意識が表れているとの考えを述べた。

 「いまでも慶良間諸島の『集団自決』に日本軍の軍命、強制があったと考えるか」との問いには「沖縄の新聞、本土の新聞にそれを示す新たな証言が掲載され、確信を強くした」と答えた。

 原告側は反対尋問で、「沖縄ノート」の記述の解釈や、根拠について詳細な説明を求めた。

 「罪の巨塊」という言葉で、個人を断罪しているのではないか。作家・曽野綾子さんが著作「ある神話の背景」などで「沖縄ノート」の記述を批判しているのと同様の主張を尋問でぶつけた。

 大江さんは「罪とは『集団自決』を命じた日本軍の命令を指す。『巨塊』とは、その結果生じた多くの人の遺体を別の言葉で表したいと考えて創作した言葉」「私は『罪の巨塊の前で、かれは…』と続けている。『罪の巨塊』というのは人を指した言葉ではない」と説明、「曽野さんには『誤読』があり、それがこの訴訟の根拠にもつながっている」と指摘した。

 原告側は、別の記述を引用し「赤松さんらの個人の責任を追及しているように読める」などと、何度も詰め寄った。

 大江さんの反論にも熱が入った。顔を紅潮させ、身を乗り出すように「それは誤読です」「そうは読めません」と強く否定した。繰り返される原告側の主張を諭すように「説明しましょうか」と申し出て、「個人に対してではなく、『集団自決』を慶良間諸島の人々に命じ、強いた構造への責任を問う」ことが記述の主眼であることなどを説いた。

 「赤松隊長はどの時点で『集団自決』を予見できたと考えるのか」との質問には、「手榴弾が住民に配られた時点」と答え、体験者の金城重明さんや吉川勇助さんの証言を根拠に挙げた。

 二時間にわたる尋問を終えた大江さんは、大きく肩を上下させてシャンと背を伸ばし、正面を見据えて証言台を後にした。


原告と被告、溝鮮明に/解説


 「集団自決」訴訟の本人尋問は、民事訴訟の被告になったノーベル賞作家が法廷に立つことで、注目を集めた。ただ、戦隊長命令の有無をめぐる訴訟で、むしろ意味合いが大きいのは、戦後手だてを尽くして自決命令を否定してきた元戦隊長が、自らの言葉で何を語るかだった。

 原告側は、米軍の上陸を控え、村の幹部らが梅澤裕氏を訪ねて来た一場面に絞り、梅澤氏による命令を全面否定。皇民化教育を背景に、日本軍が島に駐屯した経緯をたどり、軍や戦隊長による強制・命令の実態をとらえる被告側との擦れ違いは鮮明になった。

 梅澤氏の主張は従来通りだったが、部隊の最高指揮官としての責任を否定した証言は印象深い。主尋問で「責任はない」と明言し、反対尋問や会見でも「一番の責任は米軍にある」「命令を出したのは軍ではなく県」とするなど、多くの犠牲者が出た「集団自決」という事実からの“逃避”をうかがわせた。

 七月にあった宮城晴美氏の証人尋問で、原告代理人は「梅澤さんは責任がないとはひと言も言ってない」と明言していただけに、梅澤氏の発言は、弁護団とのずれをのぞかせる場面ともなった。

 同訴訟の提起は二〇〇五年八月だが、原告側が名誉棄損の主たる対象にしている「沖縄ノート」を「去年になって初めて読んだ」と話す梅澤氏。赤松嘉次・渡嘉敷島元戦隊長の弟も、訴訟を起こしたきっかけを、嘉次氏の陸軍士官学校同期生から誘われたと述べた。

 軍の命令と戦隊長による命令を明確に区別し、原告側が元戦隊長ら個人の名誉回復を強調する一方、岩波側の支援者は「狙いは日本軍そのものの名誉回復」とみる。本人尋問では、訴訟の提起が少なくとも原告本人の発意ではなかったことを事実上、裏付けた。

 同訴訟は、係争中でも高校の歴史教科書検定の主たる根拠となった。判決は将来の検定に影響を与えるのに十分な可能性をはらんでいる。(社会部・粟国雄一郎)

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2007年11月10日(土) 朝刊 26・27面

元戦隊長発言転換/「自決」指示は県 強調

 【大阪】「『集団自決』を指示したのは、軍でなく県だ」―。九日、大阪地裁で開かれた「集団自決」訴訟の本人尋問。沖縄戦時に座間味島で指揮を執った元戦隊長の梅澤裕さんは、閉廷後の記者会見で持論を展開した。尋問では「集団自決(強制集団死)」への日本軍の責任を「ありません」と明言した後、「関係ないとは言えない」と軌道修正する迷走ぶり。日本軍の責任を県に押し付ける責任転嫁の手法に、被告側支援者は「あきれてものが言えない」と言葉を失った。

 約二年三カ月に及ぶ訴訟はこの日、本人尋問で大詰めを迎えた。静まり返る二〇二号法廷。よわい九十の“元軍人”は背筋をぴんと伸ばして着席した。

 「自決命令なんか絶対に出していない」「死んだらいけないと厳しく言った」

 島の住民に命令を出したかを問われ、何度も語気を強めた。

 海上挺進第一戦隊の最高指揮官を務めたが、一九四五年三月二十五日に、日本兵が忠魂碑前で手榴弾を配ったとの今年九月に出た住民証言について「全然知らない」「あり得ないと思う」と自身の指示や関与を否定した。

 午前中の尋問では自決命令の主体を「村の助役」としていた従来の主張から「行政側の上司の那覇あたりからの指令」と大きく飛躍。夕刻の会見では記者団に「(指示は)軍ではなく県なんだ。みんなぼかしてるけど、重大な問題だ」とし、当時の島田叡知事に責任があるとした。

 一方、訴訟を起こすきっかけになった大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」を初めて通読したのは昨年だったことを法廷で明かした。訴訟前に大江さんや発行元の岩波書店に抗議したこともなかった。

 大江さんの証言については、会見で「くだらん話」と一蹴。

 「集団自決」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社から訂正申請が相次いでいることには「沖縄でワーワー大騒ぎして十一万人だとか言って、また元の悪い教科書に戻ろうという運動がどんどん出てる」と不快感を表明した。

 渡嘉敷島に駐屯した故・赤松嘉次元戦隊長の弟の赤松秀一さんは被告側尋問で、訴訟提起のきっかけが嘉次さんの陸軍士官学校同期からの誘いだったかを問われ「そういうことになりますかね」と認め、支援者らの強い意向があったことをうかがわせた。

 渡嘉敷島での「集団自決」を「(嘉次さんから)直接聞いたことはない」とも明らかにした。

 被告側支援者で大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長は「日本軍の責任を県に押し付けるつもりなのか、と昼休みに支援者と話していたところだった。今日の尋問で元戦隊長がいかに無能だったかを梅澤氏自身が証明した」と厳しく批判した。


訴訟は成り立たぬ/被告側


 【大阪】「集団自決」訴訟で本人尋問が終わった九日午後、被告側代理人の弁護団が大阪司法記者クラブで記者会見した。元戦隊長らから名誉棄損で訴えられている作家・大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」について、渡嘉敷島、座間味島の戦隊長の実名を挙げていないことを指摘。秋山幹男弁護士は「梅澤裕氏も隊長が命令したとは書かれていないことを認めており、訴訟として成り立たないのが実情だ」として、名誉棄損が成立していないとの認識を示した。

 秋山弁護士は「沖縄ノート」での「集団自決(強制集団死)」記述について「日本軍―三二軍―慶良間諸島の守備隊という全体構造で、軍の命令・強制があったとの考えで書かれている」と説明。両元戦隊長を個人としてひぼう・中傷したものではないと強調した。


問題点のすり替え/原告側


 【大阪】「集団自決」訴訟で原告側は九日午後、被告側代理人に続いて、大阪司法記者クラブで記者会見した。座間味島に駐屯していた梅澤裕元戦隊長は、被告で作家の大江健三郎さんの尋問について「要点を外してだらだら話し、何てくだらん話をするなと思って聞くのが嫌になった」と批判した。

 渡嘉敷島に駐屯していた故・赤松嘉次元戦隊長の弟の赤松秀一さんも「本で明らかな個人攻撃をしているのに、三二軍を出して問題点のすり替えをしている」と不満をあらわにした。

 原告側代理人の徳永信一弁護士は「大江さんは軍命について軍隊による実行行動の総称としたが、『沖縄ノート』にそんなことは一言も書かれていない。私などではついていけない有名な『大江ワールド』が法廷で展開された」と皮肉った。


     ◇     ◇     ◇     

支援団体、大阪で報告集会


 沖縄戦本人尋問報告集会(主催・大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会ほか)が九日、大阪市内で開かれ、県内外の支援団体から約二百人が参加した。弁護団が、本人尋問の内容を報告。琉球大学の山口剛史准教授が「沖縄戦の真実は消せない―島ぐるみの闘い」、歴史教育者協議会の石山久男委員長が「著書が語る教科書検定問題」をテーマに講演。

 山口准教授は教科書検定問題を取り上げた県内紙を資料として配り、「県民の願いはあくまで検定意見の撤回。全国に連帯の輪が広がっている。さらなる攻勢を政府、文科省へとかけていきたい」と語った。

 石山委員長は「この裁判は検定問題と連動し、計画的に行われたもの」と指摘。「責任を明らかにし、再び同じ過ちを犯さぬよう検定制度を改めてほしい」と話した。


検定意見撤回へ全国集会を開催/来月3日東京


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍の強制を示す記述を削除させた文部科学省の教科書検定意見を撤回させようと「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会(沖縄戦首都圏の会)」は十二月三日午後六時半から、東京都の九段会館で全国集会を開く。

 教科書会社六社から文科省に記述の訂正申請が提出される一方で、検定意見撤回に応じない文科省に対し抗議の意思を示す取り組み。千五百人規模の集会を目指し、東京沖縄県人会にも協力を呼び掛けていく。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_02.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 1・2面

検定合格社も訂正申請/全6社「軍の強制」記述

 二〇〇八年春から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付かず、修正せずに合格していた第一学習社(広島市)が九日、文部科学省に訂正申請を提出した。日本軍強制に関する記述を新たに盛り込んだとみられる。これで、二〇〇六年度検定を受けた六社すべてが訂正申請をした。

 第一学習社の教科書は、県内で最も多い十八校で使用される予定。「高校日本史A」では「沖縄戦では、一般住民を含む県民十二万人が犠牲となった(「沖縄県援護課資料」)。この中には、『集団自決』のほか、スパイ容疑や、作戦の妨げになるなどの理由で日本軍によって殺された人もいた」と記述している。この部分に検定意見は付かず、そのまま合格していた。

 渡海紀三朗文科相の要請を受けた教科用図書検定調査審議会は、五日に日本史小委員会をすでに開催し、沖縄戦の専門家に意見を聞くことを決めている。現在、四、五人の候補が挙がっており、人選は委員長に一任されている。同委員会は早ければ今月中にも訂正を認めるかどうか結論を出す見込みだ。


     ◇     ◇     ◇     

撤回と記述回復を/文科省に九州市議長会


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、九州市議会議長会の代表は九日午後、文部科学省を訪ね、検定意見の速やかな撤回と記述の回復を求めた。文科省側は、教科用図書検定調査審議会で審議されることを強調し、具体的な対応方針には言及しなかった。

 要請は、議長会のメンバーである安慶田光男那覇市議会議長が行った。議長会が十月に決議した「教科書検定に関する要請」を、銭谷真美事務次官や初等中等教育局の金森越哉局長らに手渡した。

 安慶田議長は「『集団自決』は軍の命令、強制、誘導なしには起こりえず、今回の削除・修正は容認できない。沖縄県民は検定意見の撤回を求めている」などと理解を求めた。

 銭谷事務次官らは「沖縄県民の気持ちは重く受け止めている」とした上で、民間の教科書会社からの訂正申請を受け、審議会で再び審査されることを説明。来春からの教科書使用に向けて、手続きを進める考えを強調したという。

 議長会は、小・中学校の耐震化を含めた校舎整備の予算確保を求めたほか、内閣府に対して那覇空港の拡張整備に政府の配慮を要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_03.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 2面

普天間代替/防衛局、新たに調査せず

 米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)方法書について審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が九日、宜野湾市で開かれ、実質的な審議がスタートした。アセス方法書の概要説明の中で沖縄防衛局は、滑走路の沖合移動を求める仲井真弘多知事が、実際に航空機を飛ばして騒音データを収集する必要性を提案したことに関し、「現在の普天間飛行場の状況から推測し、シミュレートする形で予測する」として、新たなデータ収集はしない考えを示した。

 審議の中で津嘉山会長は、県が滑走路の沖合移動など修正を求めていることに言及。「滑走路を沖合にずらすと、アセスの周辺海域評価も変わってくる。(建設位置の)詰めをしていない段階で、どうして方法書を出したのか理解できない」とただした。

 同局は「今のところは、政府案の実現性が高いということで提出した。仮に位置が変わったとして(アセスは)変更の程度にもよる。日米合意に基づく二〇一四年の完成時期に伴う手続き期間を考えると、この時期に(方法書を)出さないといけなかったということだ」と説明した。

 方法書の中身について委員からは、工事による生態系への悪影響を評価する方法に具体性が欠けていることや、工事段階でも必要な作業ヤードとして大浦湾の大規模埋め立てが計画されていることの影響を懸念する指摘が相次いだ。

 会議は、施設建設の近隣地区の住民など約四十人が傍聴。「方法書はでたらめだ」「基地建設は環境破壊」などの声が飛び交う場面もあった。

 審査会は次回十五日の会議で、環境団体など八団体が要望していた住民などの意見聴取の場を設けることを全会一致で決めた。


沖合移動「相当難しい」/町村氏


 【東京】町村信孝官房長官は九日午後の記者会見で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、「相当難しいことだ」と、従来よりも厳しい見解を示した。

 町村氏は七日に再開した普天間移設に関する協議会後の記者会見では、「可能性はないとは言わない」と述べ、修正の可能性を初めて示唆していた。

 しかし、八日にゲーツ米国防長官に「どこか一カ所を変えると(米軍再編の)全体が崩壊する」と指摘され、九日の会見では「そう簡単に日米間で話がつく性格のものと仲井真知事が理解されているなら、そこは違うのではないか」と県の要望を厳しく指摘した。

 町村氏は、県が「日米合意の範囲内」の微修正を求めていることにも、「そういう解釈をしているようだがどうか。微という範囲によりけりだが、(V字案は)相当煮詰めた議論をして決めた経緯がある。百パーセント不可能と言い切るつもりはないが、相当難しいことだ」と困難視した。


墜落同型ヘリ再配備に抗議


 沖縄国際大学に墜落した米海兵隊ヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリが普天間飛行場にローテーション配備される問題で、普天間基地爆音訴訟団と基地の県内移設に反対する県民会議の代表らは九日、県庁記者クラブで会見し、抗議声明を発表した。

 会見した普天間基地爆音訴訟団の新垣清涼副団長は「再配備は市民、県民を蔑視したものであり、軍事優先の米軍の横暴である」と批判。「連日、深夜から早朝に至るまで、爆音に苦しめられている宜野湾市民を愚弄するものだ」と、今回の配備の即時中止を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_05.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 2面

F15飛行停止/沖縄市議会が抗議へ

 【沖縄】米本国での墜落事故を受け、米軍嘉手納基地のすべてのF15戦闘機が飛行を停止している問題で、沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会(与那嶺克枝委員長)は九日、「欠陥機と指摘されているF15を即刻撤去せよ」とする抗議決議と意見書の両案を十六日の臨時会に提案することを決めた。全会一致で可決される見通しだ。

 抗議決議文では、十月三十日に強行された同基地でのF15戦闘機の未明離陸にも触れ、「米軍は例外規定を盾に未明離陸を繰り返しており、騒音防止協定が形骸化している」と指摘。軍用機などの早朝・夜間訓練の全面中止と同協定の抜本的な見直しも求めている。


「異例の事態」/空幕長が懸念


 【東京】防衛省の田母神俊雄航空幕僚長は九日の定例会見で、米空軍のF15戦闘機が米国で墜落事故を起こしたことにより、国内すべてのF15が飛行を見合わせている問題について、「米軍がこれだけ何日もグローバルに戦闘機を飛行停止するのは、たぶん初めてのこと。非常に異例の事態だ」との認識を示した。

 飛行再開の見通しについては「米軍の技術に空自も頼っている以上、米軍が何らかの動きに出なければ結論が出せない状況にある。ただ、二週間も一カ月も止まるということはないとは思うが、現状ではよく分からない」との見通しを示した。

 F15が飛行を見合わせている間、代わりにF4戦闘機が領空侵犯対処に当たることについては「F4は古くなってきているので、F15並みの稼働率を維持するためには相当の労力がいるが、領空侵犯対処に穴が開かないよう、部隊は懸命に頑張っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月10日朝刊)

[元専務逮捕]

防衛利権の徹底糾明を

 防衛装備品調達をめぐる官業癒着、防衛利権の糾明へ向け、東京地検特捜部が強制捜査に着手した。

 逮捕された防衛商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者は、頻繁なゴルフ接待など守屋武昌前防衛事務次官と親密な交際を続けていた。

 直接の逮捕容疑は、業務上横領、有印私文書偽造・同行使だが、特捜部の主眼がその先にある防衛利権の不正の解明にあるのは明らかだ。

 一九九八年には旧防衛庁調達実施本部の装備品納入をめぐる背任、汚職事件が発覚し、元副本部長や元防衛施設庁長官らが逮捕、起訴されている。

 防衛省が調達する装備品については防衛上の秘密や装備の特殊性から、特定業者に発注が集中する傾向があると指摘されてきた。着服された約一億円の使途や資金の流れ、宮崎元専務と政官の癒着の全容解明を期待したい。

 元専務はオーナー側と対立し、二〇〇六年に新会社「日本ミライズ」を設立するまで、政官工作を担ってきた。

 山田洋行は航空自衛隊の次期輸送機(CX)に搭載予定の米国メーカー製エンジンの販売代理権を持っており、施策機用の五基(計約三十九億円)を受注している。

 日本ミライズは今年七月末に代理権を獲得しており、山田洋行側との裁判にまで発展していた。

 守屋前次官は国会の証人喚問で、二百回以上のゴルフ接待を受けていたことや、夫婦でゴルフセットをもらったり、飲食や旅行の接待を受けていたことなどを認めた。

 逮捕された宮崎元専務と守屋前次官の癒着ともいえる異常な交際にはあきれるばかりである。

 エンジンの販売代理権をめぐる対立を背景に、部下に対して「日本ミライズと随意契約できないのか」と口出ししたとの疑惑を守屋前次官は全面否定した。元専務側に対する便宜供与についても否定している。

 しかし、一般常識から考えて、これだけの接待を受けて何もなかったというのはにわかには信じ難い。ゴルフで偽名を使用したことも認めており、後ろめたさがあったのは確かだろう。

 山田洋行が六年前、敵のレーダーなどをかく乱させる「チャフ・フレア・ディスペンサー」について水増し請求をしていたが、契約変更による減額措置になっていたことについても疑惑の目が向けられている。

 守屋前次官は接待の場に防衛庁長官を歴任した政治家が同席していたと語った。癒着の根は想像以上に深いかもしれない。特捜部は徹底的にメスを入れ、疑惑解明に全力を挙げてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071110.html#no_1

 

琉球新報 社説

「検定」訂正申請 審議会の透明性を求める

 高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)をめぐる検定問題で、検定意見を付けられ日本軍の「強制性」に関する記述を削除・修正した教科書出版社5社が、文部科学省に訂正申請を行った。文科省は、教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会に諮って年内に結論を出す。

 執筆者らによると、新たに申請した記述は、日本軍の強制性を明記し、書き換えられる前と同じ趣旨の記述が盛り込まれた。住民を集団自決に追いやった日本軍の存在、9月の県民大会が要求した「主語」が復活した。

 それにしても不可解なのは文科省の姿勢だ。検定意見の撤回には頑として応じようとしないのは理解に苦しむ。今回の問題は調査意見書からすべてが出発していることを見落としてはならない。

 検定審議会が仮に今回の訂正申請を認めるとすれば、検定意見も当然変わらなければならない。審議会の新たな判断と検定意見は不可分の関係にあるからだ。前提はそのままで、結論だけ変えるのは理屈に合わない。

 文科省の教科書調査官が作成した調査意見書が検定審議会に諮問され、その意見に沿って「沖縄戦の実態について誤解されるおそれのある」記述である、と審議会も判断したのである。

 記述の修正については訂正申請どおり了承するが、検定意見は撤回しない。それは論理矛盾だ。明らかに整合性を欠く。

 審議会の論議がいまだに十分説明されていないのもおかしい。責任放棄に等しい。

 批判されなければならないのは審議会委員の感度の鈍さだ。調査意見書は、これまで容認された内容の重大な変更である。なぜ変更なのか。それを問うのが常識ではないか。沖縄戦の専門家の不在を理由に基本的事項の誤りに気付かないようでは、委員の資質が問われかねない。

 県民大会への配慮から訂正されるのではない。間違いだから正さねばならないのだ。審議会は、今度こそ議論の内容を公開し、結論に責任を持たなければならない。

(11/10 12:31)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28832-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

宮崎元専務逮捕 防衛利権の不正徹底解明を

 守屋武昌前防衛事務次官と親密な交際を続けていた「山田洋行」の元専務宮崎元伸容疑者が8日、東京地検特捜部に業務上横領などの容疑で逮捕された。山田洋行の米国子会社から約1億1700万円を着服した疑いである。もちろん、特捜部の真の狙いは防衛関連装備調達をめぐる疑惑の解明であろう。宮崎元専務の逮捕は、そのための第1歩とみているのではないか。

 特捜部が注目しているのは守屋前次官との関係である。200回以上にも上るゴルフ接待は尋常ではない。守屋前次官は偽名を使ってプレーしたことも認めている。さらに賭けゴルフや賭けマージャンをし、接待旅行も受けていた。「自衛隊員倫理規程」違反が異常なほどに繰り返されていたわけだ。

 その灰色の関係から生みだされたものは何か。そこが今後の捜査の焦点となろう。

 つまり接待への「見返り」の可能性である。守屋前次官が公務に絡んで宮崎容疑者側が有利となるよう働き掛けをしなかったのかどうか。その延長線上にあるのは贈収賄容疑であり、特捜部は同容疑での立件も検討するとみられている。

 宮崎容疑者は昨年9月に、新しい防衛商社「日本ミライズ」を設立した。同社は、航空自衛隊の次期輸送機(CX)に搭載する予定だった米国メーカー製エンジンの販売代理権を今年7月末までに獲得した。同エンジンに関して、事務次官在任中の守屋氏が日本ミライズと「随意契約できないか」と部下に口出ししたことが関係者の証言で分かっている。

 親密な関係を越えた宮崎容疑者と守屋前次官との癒着。CX搭載予定のエンジン契約に関する口出し。守屋前次官は便宜供与を否定しているが、常識を超えた両者の関係からすれば、疑惑を持たれるのは自然の流れではないだろうか。

 宮崎容疑者と政治家との関係も表に出てきた。守屋前次官の接待の場に、防衛庁長官経験者が同席していたことを、10月29日に行われた証人喚問で前次官が認めたのだ。癒着の疑惑は、政界にまで広がりかねない様相を見せている。

 宮崎容疑者が着服したとされる1億1700万円はどこへ、どのように流れたのか。倫理規程に違反するゴルフ接待がなぜ、10年余りも続けられてきたのか。防衛商社と政官界は果たしてどこまで結びついているのか。

 特捜部は九日、日本ミライズの本社などを家宅捜索した。防衛利権に絡む不正は、どろどろと底なしのように広がっているように見える。宮崎容疑者逮捕を機に官業癒着に鋭く切り込み、徹底的に解明してほしい。

(11/10 12:35)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28833-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

墜落ヘリの再配備 「普天間」の県外撤去を

 米軍の無神経さにはあきれるほかない。彼らにとって、沖縄はいまだ植民地、との感覚でしかないのだろう。「良き隣人」などとは、どう考えて噴飯ものだ。やはり、基地の県外移転、地位協定の改定。これが必要だ。そのことを、県民に再認識させる、反面教師としての役割を、あらためて見せつけてくれた。

 米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターが、沖縄国際大学に墜落したのは2004年8月。県警は現場検証もできず、乗組員の責任、事故原因も追及できなかった。結局、県警は今年の8月、整備兵4人を氏名不詳のまま書類送検。那覇地検が不起訴処分にしている。果たして、これが独立国家での出来事なのかという屈辱と恐怖を多くの県民が味わったことだろう。いまだ記憶に新しい。

 ところが、事故同型機が、普天間飛行場に、再び常駐化される可能性がでてきた。在沖海兵隊報道部によると合計10機のヘリと兵員約150人が、来年1月までに同飛行場に配備され、訓練飛行するという。具体的な駐留期間は不明だが、常駐化で同型機の訓練飛行が恒常化する、と専門家は指摘する。ヘリは岩国基地(山口県)所属だが、「形式的に岩国に所属させ、実態は普天間に置きたいのではないか」とも言う。

 同型機は墜落から1年半後の05年12月までにE型と入れ替わり、同飛行場から姿を消していた。事故のほとぼりも冷めたと考えたのか、2年ぶりに舞い戻ってきたことになる。

 伊波洋一宜野湾市長は「再び市民の上空を飛ぶのは許されない。絶対に反対」と抗議するが、当然だろう。仲井真弘多知事も「感覚的におかしい。戻ってくるべきではない」と述べる。「(普天間の)3年内の閉鎖状態」との公約を掲げる知事にとっても、今回の動きは閉鎖状態どころか、逆に基地の強化につながるものだ。到底認められないだろう。

 現場から県警など沖縄側を完全に閉め出して、米軍の捜査当局が出した事故報告書は「整備兵がヘリ尾部の接続器具コッター・ピンの装着を忘れたのが事故原因」と結論付けた。しかし、同ヘリは開発から40年以上もたつ。老朽化も指摘されており、単なる装着忘れが原因、とは納得できない。構造的な欠陥を疑うのが自然だ。

 県民は、米軍の一方的な事故報告で決着、とはみていない。ヘリの再配備は、事故再発への不安をいっそうかきたてるだけだ。

 日米地位協定上、第1次裁判権は米側にある。米軍はそう主張する。ならば、やはり地位協定の改定が不可欠だろう。さらに危険なヘリはどこであれ県内への配備は認められない。普天間飛行場とともに県外にもっていくしかない。

(11/11 10:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28854-storytopic-11.html