月別アーカイブ: 2008年1月

[米国防総省が敗訴/沖縄ジュゴン訴訟 ]沖縄タイムス,琉球新報(1月24日から30日)

2008年1月24日(木) 朝刊 1面

普天間代替 沖合移動「1インチも駄目」米国防次官補代理

アセス後も不可

 【東京】セドニー米国防次官補代理(東アジア担当)が山崎拓前副総裁と十八日に会談し、県などが求めている米軍普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動は、環境影響評価(アセスメント)後も応じられないとの立場を伝えていたことが二十三日、分かった。米側はもともと沖合移動に難色を示していたが、アセス後も修正に応じないとする強硬姿勢が明らかになるのは初めてだ。

 関係者によると、セドニー氏は十七日に来日。山崎氏との会談ではV字案の沖合移動について「一インチでも動かせない」と強調。アセス後の修正なら可能とする日本政府側の考え方に対し、「今の案が合理的だ。アセスをやったとしても動かせない」との考えを伝えた。

 山崎氏は県側のスタンスを説明した上で、アセスに基づけば修正は合法的に可能との認識を示した。

 しかしセドニー氏は、米軍再編で日米合意した在沖米海兵隊のグアム移転について、制服組の反発を押さえた上で最終報告(ロードマップ)に盛り込んだ経緯を説明し、「今ここで揺らぐとグアムに移転する米軍の不満が爆発する」などと困難視した。

 併せて、「ゲーツ国防長官、シン国防副次官と私は一つの線で固まっている」とも述べ、米政府内の見解が一貫していることを強くアピールした。

 普天間移設をめぐって米側は、沖合移動に柔軟姿勢を示す町村信孝官房長官らへの不信感を強めている。昨年暮れにはゲーツ国防長官が福田康夫首相に対し、沖合移動は困難との意向を伝えている。


[ことば]


 普天間飛行場移設問題 日米両政府は1996年、宜野湾市の市街地にある米軍普天間飛行場の返還、移設で合意。99年、移設先は名護市辺野古沿岸域と決まった。しかし着工が遅れ、両政府は2006年5月、移設先を同市のキャンプ・シュワブ沿岸部に変更、V字形に滑走路2本を建設すると合意した。これに伴い、政府と県などは建設計画や地域振興策を話し合う協議会を06年8月に設置した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241300_01.html

 

2008年1月24日(木) 朝刊 1面

沖国大ヘリ墜落 被災「壁」展示/図書館に資料コーナー

 沖縄国際大学は、二〇〇四年八月に起きた米軍ヘリ墜落事故を風化させず語り継いでいこうと二十三日、図書館に「米軍ヘリ墜落事件関係資料コーナー」を開設した。

 表面が焼け焦げた壁の一部や構内で炎上するヘリ、大学関係者や警察を締め出す米兵の写真、新聞記事や、映像などで墜落直後の生々しい状況を伝えている。照屋寛之教授(法学部)は「事件の悲惨さを伝えなければ教訓を得ることはできない」と意義を話している。

 展示コーナーは図書館二階のグループ学習室に開設。幅四メートル五十センチのスペースに、鉄骨がむきだしになった本館の壁(一メートル二十センチ)、沖縄タイムスなどの新聞記事、写真を展示。一部始終をとらえたビデオ上映(五時間十六分)もある。学校関係者以外でなくても観覧できる。

 〇六年十一月、照屋教授をチーフに委員六人で発足したプロジェクトチームが開設に向け、取り組んできた。武田一博図書館長は「当時の学生はほとんど卒業し、本館も建て直され、事件は次第に忘れ去られようとしている」と指摘。「このコーナーを通じて新入生や市民が基地や平和の問題を考え続けてほしい」と願いを込めた。

 事故当時一年だった同大社会文化学科四年の嶺井秋人さん(22)は「事件後、日常過ごしている場の異常さを実感した。後輩たちも、この状況に気付いてほしい」と話した。同大は関係する資料の提供を呼び掛けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241300_11.html

 

2008年1月24日(木) 夕刊 1面

ラプコン10年3月返還/日米合同委で合意

 【東京】在日米軍が沖縄の本土復帰後も管轄を続け、昨年十二月をめどに返還される予定だった沖縄本島周辺空域の航空管制システム「嘉手納ラプコン」について、日米合同委員会は二十四日、二〇一〇年三月までに返還することで合意した。

 日本側は嘉手納ラプコンの管制業務の返還を見据え、○四年十二月から嘉手納基地に日本人管制官を派遣。三年後の業務移管を視野に米軍管制官の下で約四十人を対象に、システム習熟訓練を開始していた。

 しかし、米軍側が通常の管制業務や、軍の新人管制官の訓練を並行させているため日程が過密化。訓練の進ちょくが遅れていた。

 嘉手納ラプコンは嘉手納基地や普天間飛行場を離着陸する米軍機のほか、那覇空港を利用する民間機の航空管制も担当する。日本側の管轄空域は那覇空港周辺に限られ、同ラプコンのレーダーが故障して民間機の運航に遅れが生じた例もある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241700_02.html

 

2008年1月24日(木) 夕刊 5面

平和祈念堂内に美術館移設オープン

 【糸満】県内初の美術館として建設され、糸満市摩文仁の沖縄平和祈念堂の敷地内にあった施設の堂内移設を祝う式典が二十三日、「新美術館」内で開かれた。オープンに合わせ、戦後の沖縄美術界をけん引した故安谷屋正義、故山元恵一氏の絵画二点が寄贈された。

 旧美術館は一九八一年二月に開館したが、堂内に移設することで展示作品や収蔵庫を良好な環境で管理できるという。

 平和祈念堂を管理・運営する財団法人沖縄協会(清成忠男会長)は現在絵画百十九点を所蔵しており、移設を機に年二回作品を入れ替え、展示する。保管絵画は県内各地の美術館や各市町村の企画展などに貸し出すという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241700_06.html

 

2008年1月25日(金) 朝刊 1面

ラプコン返還10年3月/日米合同委合意

 【東京】在日米軍が沖縄の本土復帰後も管轄を続け、昨年十二月をめどに返還される予定だった沖縄本島周辺空域の航空管制システム「嘉手納ラプコン」について、日米合同委員会は二十四日、二〇一〇年三月までに返還することで合意した。

 日本側は嘉手納ラプコンの管制業務の返還を見据え、○四年十二月から嘉手納基地に日本人管制官を派遣。三年後の業務移管を視野に米軍管制官の下で約四十人を対象に、システム習熟訓練を開始していた。

 しかし、米軍側が通常の管制業務や、軍の新人管制官の訓練を並行させているため日程が過密化。訓練の進ちょくが遅れていた。

 嘉手納ラプコンは嘉手納基地や普天間飛行場を離着陸する米軍機のほか、那覇空港を利用する民間機の航空管制も担当する。日本側の管轄空域は那覇空港周辺に限られ、同ラプコンのレーダーが故障して民間機の運航に遅れが生じた例もある。

 県の知念英信交通政策課長は「早めに返還され、民間機の管制がスムーズに行われるべきだ」と指摘。過去にラプコンのレーダーの故障で、民間機の運航に遅れが生じた例もあることから、「那覇空港の拡張整備が予定されており、今後は、観光客を中心に民間機の利用が増える。その中で、運航が制限されることがあってはならない」と述べ、早期返還を求めた。

 これまで、長年にわたってラプコンの返還を求めてきた嘉手納町の宮城篤実町長は、具体的な返還の期日が示されたことに「大きな前進だ」と評価。「管制業務でミスがあると、重大な事故につながりかねない。今後は、日本側と米軍が信頼関係を構築するための技術の習得が必要だ」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251300_04.html

 

2008年1月25日(金) 夕刊 1・7面

米国防総省が敗訴/沖縄ジュゴン訴訟

 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、名護市キャンプ・シュワブ沖に生息するジュゴンの保護を求め、日米両国の自然保護団体などが米国防総省を相手に起こしている「沖縄ジュゴン訴訟」で、米サンフランシスコの連邦地方裁判所は二十四日、同省の米文化財保護法(NHPA)違反を認定する判決を出した。基地建設によるジュゴンへの影響を回避する「考慮」を命じた上で、環境影響評価(アセスメント)文書を同地裁に九十日以内に提出するよう求めた。

 AP通信によると、米政府は、控訴するかどうか決定していない。同法は米政府による海外での行為に文化財への影響考慮を義務付けているが、実際に適用されるのは初めてという。

 同地裁のマリリン・パテル裁判長は、同省がジュゴンへの影響軽減策の必要性を把握、考慮していないことを同法違反と認定。「計画が国防長官らによる最高レベルの承認を得ているにもかかわらず、ジュゴンへの影響はよく把握されていない。国防総省は引き返すことができないほど計画に関与しており、法に基づく義務履行を建設直前まで待つことはできない」と判示した。

 同訴訟は二〇〇三年九月、県内外の自然保護団体が米国の団体とともに提訴した。原告にはジュゴンも含まれる。

 国防総省は当初、同法の適用対象は建造物などに限られる上、米国は基地建設に直接関与していないとして却下を求めた。同地裁は〇五年に同省の主張を退け、実質審理入りしていた。

 原告代理人で、環境法律事務所「アースジャスティス」のサラ・バート弁護士は、「判決は、国防総省は真剣な検討をする義務があると明示した。ジュゴンの保護措置が取られることになる」との見通しを示した。

 日本環境法律家連盟事務局長の籠橋隆明弁護士は「国防総省は日本政府のアセス結果を地裁に提出するだろうが、その内容は米国で求められる水準には到底達しない。地裁が審査し、さらなる決定を出す可能性もある」と指摘した。

 判決について名護市の島袋吉和市長は「現時点で、コメントできる立場にない」。県幹部は「外国での訴訟なのでまだ判決内容が分からない。普天間移設の事業主は国なので、動向を見守る」としている。


[ことば]


 米文化財保護法(NHPA) 正式には「国家歴史保存法」または「国家歴史的遺産保存法」。米政府の「連邦行為」に対し「同等の意義を持つ他国の法で保護された文化財も保護対象」とする「域外適用」の項目がある。


     ◇     ◇     ◇     

「大勝利 移設断念を」/米司法の壁 原告評価


 「大勝利だ」。名護市キャンプ・シュワブ沖への米軍普天間飛行場の移設をめぐる訴訟で、米サンフランシスコの連邦地裁が、国防総省にジュゴンへの影響を回避・緩和するための考慮を命じたことに、原告らは判決を高く評価、喜びの声を上げた。一方、移設容認の立場を取る地元関係者は「移設計画を進めて、世界中の環境団体が詰めかければ、迷惑する」と戸惑いも。代替施設の建設を急ぐ日本政府に、米司法が高いハードルを突きつけた。

 原告の東恩納琢磨さんは「大勝利だ。米国政府に言われて見直すのは恥ずかしいことだが、日本政府はそれをやらないと、世界から大きな批判を浴びる。(基地建設に)高いハードルができたし、この判決を克服するには、相当の労力と時間がかかる。それよりは、辺野古への基地建設を見直した方が早い。ジュゴン保護区の設置を米国民にも訴えていきたい」と話した。

 原告の一人で、米自然保護団体「生物多様性センター」のピーター・ガルビンさんは「地裁決定に基づく見直しと、基地建設の影響が広く知れわたることで、日米両政府がジュゴンを絶滅に追いやる計画を断念することを願う」と話した。

 「市民アセスなご」の吉川秀樹さんは、「九十日以内に、ジュゴン保護の根拠を提出するよう求めるだけでなく、それを判断した米国防総省側の担当者の氏名の提出を求めるなど米国の法律の要求に、日本のアセスが適合しているかを求めている」と指摘。「こちらが望んでいた判断。ここまでやってくれたことに、感心している。ここから新たな基地建設反対の運動を積み上げることができる」と評価した。

 移設を容認する立場の移設先の辺野古出身の島袋権勇名護市議会議長は「米国らしい。(移設の)ハードルが高くなった。そのまま、移設計画を進めて、世界中の環境団体が詰めかければ、迷惑するのは地元。アセスへの知事意見にもあった通り、(防衛省は)ジュゴンを含む環境調査をしっかり、やってほしい。成り行きを見守るしかない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251700_01.html

 

2008年1月25日(金) 夕刊 1面

パイン施設に16億円/北部振興事業費

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十五日午前の閣議後会見で、執行が遅れていた二〇〇七年度の北部振興事業費を二十九日付で配分すると発表した。非公共が十三事業四十九億円、公共が三十四事業四十六億円で、合計四十七事業(新規十四事業)に九十五億円を配分する。新規で最も額が大きいのは、東村にパインアップルなどの総合農産加工施設を整備する事業の十六億六百万円。継続では昨年に看護学科が新設された名護市の名桜大学内の看護系医療人材育成事業で、実習施設棟の整備に六億六千七百万円を計上した。

 新規では、金融・情報特区指定を受けている名護市で関連企業の誘致を促進するため、インフラ整備と人材育成、情報発信の三分野で調査をする事業に二千五百万円を計上した。

 名護市東海岸地域(二見以北十区)の現在の人口が約二千人にとどまっていることから、エイサーや豊年踊りなど地域文化の継承や地域活性化を促すため、地域交流拠点施設を整備する事業に二千三百万円を配分する。

 継続ではほかに、北部地域に循環器系医療支援施設を整備する事業(〇六―〇八年度)で、名護市の北部地区医師会病院に隣接する場所に建設する施設の造成などの実施に向けて一億二千六百万円を盛り込んだ。

 政府は〇七年度の北部振興事業費として公共五十億円、非公共五十億円の合計百億円を計上していたが、米軍普天間飛行場移設問題の影響で、執行が遅れていた。

 岸田沖縄相は「北部地域のさらなる雇用の創出や、魅力ある定住条件の整備に大きく寄与すると期待している」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251700_02.html

 

2008年1月25日(金) 夕刊 7面

沖縄戦の記憶 映像で記録/東京の市民団体

 【糸満】太平洋戦争の「戦場体験」を映像で記録・保存する活動に取り組む東京都の市民団体「戦場体験放映保存の会」が二十四日、沖縄戦体験者の証言収録を糸満市内で始めた。同会が県内での映像を収録するのは初めて。昨年十二月には、テレビ番組で同会の取り組みを知った名護市の宮城都志子さん(62)を中心に「沖縄支局」も設置された。沖縄戦の悲惨な記憶を「記録」として残す活動を県内に広げるため、同会では賛同者を募っている。支局長に就任した宮城さんは「足で稼いで、さまざまな証言を収録していきたい」と話している。

 二〇〇五年に発足した同会では、これまで元兵士らの証言を中心に、全国約千七百人の体験を集約。ビデオやDVDに収録し、一部インターネット上でも放映しており、十五万人の証言を集めてライブラリー化することを目指している。

 元県職員の宮城さんが同会の取り組みをテレビ番組で知り、「一般住民を巻き込んだ沖縄戦の証言も多く集めてほしい」という思いから県内での取材を依頼。同会の協力に応じる形で、県内での撮影が実現した。

 二十四日に県平和祈念資料館で行われた公開収録会では、東京から同会の張替麻里理事ら三人が参加し、瑞慶覧長方さん(77)=南城市、伊禮進順さん(82)=糸満市=の証言を収録した。今回は二十七日まで名護、沖縄、那覇市で取材し、八―九人分の収録を予定している。

 張替理事は「会の目的は歴史の事実を残すこと。沖縄戦のことがきちんと県外の方々に知られていないこともある」と支局設置の意義を述べた。宮城さんは「戦争というものを次の世代に伝えていくためには若い力も必要だ。今後活動の輪を広げていきたい」と語った。

 同会では、証言者や撮影に参加するボランティアを広く募っている。

 問い合わせは宮城さん、電話0980(53)1582。または東京事務局、電話03(3465)6066。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251700_04.html

 

2008年1月26日(土) 朝刊 1面

米軍、PCB物資来月搬出/日本側へ伝達

量明らかにせず

 【東京】在日米軍は二十五日までに、保有する日本製のポリ塩化ビフェニール(PCB)含有物資を今月末に本州から、二月に沖縄からそれぞれ海路で米国本土へ搬出すると日本政府に伝えた。

 外務省に入った連絡によると、本州から搬送されるのは含有物資約五十トンというが、沖縄から搬出される具体的な量や内容、時期は明らかにされていない。米軍はPCBについて「安全等の観点から個別具体的な搬送の詳細はコメントしない」としているという。

 外務省地位協定室によると、米環境保護庁は今年一月七日から来年一月九日までの間で外国製のPCB含有物資の搬入を制限する有毒物質管理法の適用除外期間を設定。

 日本国内でPCB含有物資を処分できる施設がごく限られていることから、この期間に合わせて米軍が独自に本国に搬出することになった。来年まで期限が設定されていることから、二月以降もPCB含有物資の搬出が行われる可能性もある。

 在日米軍は「PCB含有物資の保管、搬送にあたってはしかるべき環境対策が講じられる」などと伝達。これに対して地位協定室は「安全に期するよう」重ねて申し入れた上で、二十五日夕、県など関係先に米軍からの連絡内容を通達した。

 これまで県内から米軍がPCB含有物資を搬出した例は、二〇〇三年八月十五日、〇四年七月十日の二回で、いずれも海路で搬出されているという。(島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801261300_01.html

 

2008年1月26日(土) 朝刊 2面

普天間移設 変更せず/官房長官

 【東京】米サンフランシスコの連邦地裁が米軍普天間飛行場代替施設建設によるジュゴンへの影響を避けるよう国防総省に「考慮」を命じた判決を受け、町村信孝官房長官は二十五日の定例会見で、普天間移設計画を変更することはないとの姿勢を強調した。

 町村氏は、日米合意した代替施設案(V字案)について「サンゴ、藻場、ジュゴンへの影響を少なくしようと配慮して出来上がった」と述べ、環境への影響は少ないと指摘。

 その上で「(代替施設建設の)計画が環境にどういう影響があるか、環境影響評価をしているところだ。自然への影響を十分配慮しながら、負担軽減と抑止力維持を実現するため、一日も早い移設を進めるのが日本の大方針だ」と強調した。

 また、判決で、環境影響評価文書を同地裁に九十日以内に提出するよう求めていることを念頭に、「まだ係争中、(建設の是非の)判断が確定したわけではなく、保留されている状態だ」との見方を示した。

 移設作業を所管する防衛省でも冷静な受け止めが広がり、豊田硬報道官は同日の定例会見で「今後の裁判の推移については引き続き注視していきたい」と述べつつ、「粛々と作業を進めたい」と静観する姿勢を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801261300_05.html

 

琉球新報 社説

ジュゴン訴訟 判決を尊重するべきだ

 サンフランシスコ連邦地裁は24日(現地時間)、米国防総省が普天間飛行場代替施設建設でジュゴンへの影響などを評価、検討していないことが米文化財保護法(NHPA)違反に当たると判断した。さらに同省として公的な環境への影響調査を実施するよう求めた。自然環境保護を重視した冷静・的確な判断だと評価したい。

 ジュゴン保護訴訟は、2003年に日本環境法律家連盟(名古屋市)、ジュゴンネットワーク沖縄(宜野湾市)、生物多様性センター(米アリゾナ州)などに加え、沖縄周辺海域を生息の北限とするジュゴンが原告となって起こされた。

 米政府は(1)NHPAの適用対象は建造物などでジュゴンのような生物は対象になりえない(2)もし仮に適用対象になるとしても米政府は建設にかかわっていないのだから適用されない―の2点を挙げ反論していた。

 日本の天然記念物に指定されているジュゴンはいま、絶滅の瀬戸際にある。07年8月、環境省は国内の生息個体数が50頭以下であるとして、絶滅の恐れのある野生生物を分類したレッドリストに新たに追加し、絶滅危惧(きぐ)種として最もランクが高いIAに分類した。

 04年には、タイのバンコクで開かれた世界自然保護会議で、普天間移設をめぐるジュゴンなどの希少野生生物保護を勧告した。

 これほど国際的にも注目されているのに、日本政府には保護への真剣さが感じられない。国が提出した環境影響評価(アセスメント)方法書には、移設最優先の姿勢が如実に表れている。当初提出された薄っぺらな方法書に批判が強まると、知事意見提出期限間際になって150ページもの追加資料を提出してきた。

 一方の県もはっきりしない姿勢だ。今月21日に沖縄防衛局に提出された知事意見は、事前調査の中止には踏み込まなかった。県環境影響評価審査会の答申を尊重し、生物への影響を重視するならば中止を求めるべきであった。

 判決には、代替施設建設を差し止める強制力はない。しかし、訴訟原告団の米自然保護団体「アースジャスティス」のサラ・バート氏は「国防総省に対して海外での活動による他国の文化遺産の損壊回避に、慎重に注意を払う責任を明確にした」と意義を強調した。

 判決は、同省に対してジュゴンへの影響などを示す文書を90日以内に提出するよう求めている。建設を進めるなら、連邦地裁の要求に応えなければならないはずだ。

 アセスを拙速に進めれば、日本政府も国際的な批判を浴びることは必至だ。沖縄の一地域の環境問題ではないことが、今回の判決でさらに明確になった。

(1/26 10:04)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30824-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月27日朝刊)

[ジュゴン訴訟判決]

拙速手続きへの警鐘だ


米国法を適用した判決

 ジュゴンが二頭、寄り添いながら悠々と辺野古沖を泳いでいる。どことなくユーモラスで、今風に言えば、めちゃかわいい。テレビ・ニュースでおなじみのこのシーンは、絶滅の危機にひんしている生き物への慈しみの感情をかき立てずにはおかない。

 子どもたちは、この島の自然の豊かさや命の尊さをジュゴンの映像を通して、親子の語らいの中で、学ぶことができる。ジュゴンは、環境教育、情操教育の生きた教材だ。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設がジュゴンにとって大きな脅威であることは言うまでもない。

 大規模埋め立てを伴う巨大な基地建設は、ジュゴンの生息にどのような影響を及ぼすのか。ジュゴンはほんとに大丈夫なのか。誰もが感じるであろう危惧に、アメリカの連邦地方裁判所が独自の立場から明確な答えを出した。

 日米両国の自然保護団体などが米国防総省を相手に起こしていた「沖縄ジュゴン訴訟」で、米サンフランシスコの連邦地裁は国防総省に対し、基地建設によるジュゴンへの影響を考慮するよう求めるとともに、ジュゴンに関する環境影響評価(アセスメント)文書を九十日以内に提出するよう命じた。

 画期的な判決である。

 米国の文化財保護法(NHPA、別名・国家歴史保存法)は、米政府による海外での行為に対し、他国の文化財への影響を考慮するよう義務付けている。一方、ジュゴンは日本の天然記念物であり、環境省はジュゴンを絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧1A類」に指定している。

 これらの事実に着目して提起されたのが「沖縄ジュゴン訴訟」である。判決のどこが画期的か。

 第一に判決は、海外における米軍基地建設に米国の国内法を適用し、沖縄周辺海域のジュゴンを保護対象として認定した。第二に、判決は、米国防総省のこれまでの取り組みが米国の文化財保護法に違反していることを認め、是正措置を求めた。

 基地建設によってジュゴンにどのような影響が生じるのか、きちんと調査し、事前評価をせよ、と国防総省に求めているのである。


アセス方法書書き直し


 この判決を誰よりも重く受け止めなければならないのは、事業者である防衛省と、許認可権を持つ県である。

 防衛省の環境影響評価は、方法書を作成して県に送付する最初の段階から手続き上の問題があり、内容面でも、故意に伏せられている部分が多く、不備が目立った。

 県環境影響評価審査会が方法書の書き直しを求める意見を知事に提出したのは、当然だといえよう。

 だが、仲井真弘多知事が沖縄防衛局に提出した知事意見は、差し戻しを求めず、政府への配慮を強くにじませた。

 徹底して工期にこだわり、二月からのアセス調査着手に向けて動く政府。この問題を早く片付けたいと常々、主張している仲井真知事。双方の主張は「早く」という部分で一致するようになった。

 気になるのは、日米両政府が決めた工期と日程にあわせて事を進めるあまり、肝心の環境アセス手続きが骨抜きにされるおそれがあることだ。

 米連邦地裁での今回の判決は、拙速への警鐘、と受け止めるべきである。

 アセス方法書に対する知事意見は、ジュゴンについて「複数年」の調査実施を求めているが、沖縄防衛局が公示した環境現況調査の入札内容を見る限り、複数年実施も疑わしくなった。


ここにも「アメとムチ」


 米連邦地裁による判決を機会に、あらためて問題にしたいのは北部振興事業費と環境アセスの関係について、である。本来、両者の間にはなんの関係もないはずだ。というより、政治的に関係付けてはならないのである。

 環境アセスは、環境影響評価法や県環境影響評価条例に基づいて、法の趣旨に沿って、進めなければならない。

 ところが、方法書に対する知事意見提出の際に、政府サイドから伝わってきたのは、アメとムチの発想だった。

 「知事が方法書の差し戻しを求めたら、普天間移設に関する政府と地元の協議が円滑に進まなくなり、(北部振興事業費予算は)執行できない」。そんな趣旨の発言をしたというのだから、あきれて物が言えない。

 天然記念物のジュゴンや、かけがえのない自然環境が大規模な基地建設によって、どのような影響を受けるのか。環境アセスへの対応に慎重すぎるということはない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080127.html#no_1

 

2008年1月29日(火) 朝刊 1面

防衛省、アセス了承要求/県は難色進展なしも

 防衛省と内閣府幹部らが二十八日、県庁を訪ね、来月七日開催で調整を進めている米軍普天間飛行場の移設に関する次回協議会の審議内容について県や名護市幹部と意見交換した。防衛省側は二月中の環境影響評価(アセスメント)調査着手の意向を伝え、次回協議会での仲井真弘多知事の了承を求めた。これに対し県側は、次回協議会での了承は「時期尚早」と主張、実質的な協議の進展が図れない可能性も出ている。

 防衛省側は次回協議会で、知事からアセス調査に必要な許認可への理解を取り付けたい考え。

 一方、県は知事意見で方法書の「書き直し」と公表、審査を求めたことから、「県環境影響評価審査会の審査見通しもつかない現状では、二月七日の協議会で知事が了承するのは無理」との認識を表明。防衛省の協議方針には応じられない姿勢を示した。

 また、県などが求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の閉鎖について防衛省は「米側との調整を含めて話ができる状態ではない」とし、次回協議会で進展はないとの見通しを明らかにした。

 名護市は代替施設のアセス手続きが実施されている現状などを指摘し、再編交付金の支給を要請。政府側は名護市が沖合移動などの条件を付していることから困難視したという。

 政府側は防衛省地方協力局の廣瀬行成地方協力企画課長、藤井高文沖縄調整官、内閣府の平上功治参事官ら八人が訪問。約三時間半にわたり県、名護市幹部と協議した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801291300_02.html

 

2008年1月29日(火) 朝刊 25面

「超党派維持」訴え/文科省対応に抗議

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十八日、「集団自決」への日本軍の強制を明示する教科書記述を認めなかった文部科学省の訂正申請への対応に抗議する集会を、那覇市の教育福祉会館で開き、約百五十人が参加した。

 集会では琉球大の高嶋伸欣教授が、訂正申請で文科省から四回の書き直しを命じられた教科書会社があったことを紹介、「あいまいな規則を文科省が意図的に運用している。教科書検定制度を大きく改善させなければならない」と話した。

 同大の山口剛史准教授は「集団自決」への軍強制を認めない教科書検定意見が残された影響で「訂正申請後の記述でも、軍強制と『集団自決』の関係があやふやにされた」ことを説明し、「四月からは新学習指導要領で愛国心教育が始まり、教科書への悪影響や攻撃が続く」と懸念を示した。

 会場からは、自民党県連が、九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会に解散を求める方針を決めたことを疑問視する声が相次ぎ、「県民は『沖縄戦の真実を教科書に』という一致点のもと、超党派でのとりくみをすすめよう」との集会アピールが採択された。

 集会に参加した青春を語る会の中山きく代表(白梅同窓会長)は「沖縄戦を体験した者として、軍命がなかったとは言わせない。今後も同じ県民として超党派の立場で運動できるよう頑張りたい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801291300_05.html

 

2008年1月29日(火) 夕刊 1面

「集団自決」防衛研資料「軍命なし」/防衛省見解ではない

 【東京】政府は二十九日午前に閣議決定した答弁書で、慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が所蔵資料に「戦隊長命令はなかった」という趣旨の見解を付けて公開していた問題について、「防衛省の見解ではない」との認識を正式に表明した。見解に署名があった防衛研究所戦史部に聴取した結果、担当職員から「貼付していない」との回答を得たとしている。

 糸数慶子参院議員(無所属)、鈴木宗男衆院議員(新党大地)の質問主意書に答えた。

 防研は今月十五日、沖縄タイムスの取材に「聞き取り調査をしたが、だれが張り付けたか分からない」と答えていた。

 防研は所蔵資料の慶良間戦体験者の手記に「赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令は出されていないことが証明されている」と書いた見解を付していた。

 ただ、通常の資料に付ける公式の「史料経歴表」とは別のページにワープロ書きの紙片で張り付けられており、図書館史料室は「不適切だ」として今月七日に削除した。

 防研は別の複数の資料にも、「集団自決は村役場の独断」など、戦隊長命令を明確に否定する所見を付している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801291700_04.html

 

琉球新報 社説

防衛省改革 体質にこそ切り込むべき

 官邸主導で設置された政府の「防衛省改革に関する有識者会議」での論議が進むなか、石破茂防衛相が本省組織を抜本的に見直す組織改革の基本構想をまとめた。

 構想は、反目が伝えられる背広組と制服組の一体化を目指し、解体を含む組織の大胆な再編統合を推し進めることなどを柱に盛り込んだ。

 具体的には、背広組の内局と制服組で構成される自衛隊各幕僚監部を「防衛力整備」「作戦」「渉外」(いずれも仮称)の3局に再編成する。「防衛力整備局」は防衛政策のほか、予算や人事、装備品調達を担当する。部隊運用については「作戦局」が担い、作戦局長は現在の統合幕僚長の役割も担う。

 既存組織を解体・再編し背広組と制服組を混在させれば、組織の中に一体感が生まれ、それをてこに不祥事の防止につなげたいとの狙いなのだろう。インド洋での米国艦への給油量の訂正問題は、組織内の意思の疎通、風通しの悪さに起因した。そんな認識が念頭にあることが読み取れる。

 しかし、それだけで果たして相次ぐ不祥事が一掃されるのかどうか、いささか疑問が残る。改革への道筋をきちんと示したことになるのか。それがさっぱり見えてこないのだ。

 不正が噴き出す背景に構造的な体質、問題が潜んでいないか。そんな不信感を抱く国民は少なくないはずだ。

 例えば、制服組も背広組も含む多くの防衛省職員を指導・監督する事務方トップの汚職である。元次官による偶発的で特殊な事例として起きた事件なのか、個人の意識や資質の問題で済ませられるのかどうか。再編成だけで説明がつくとは到底思えない。

 膨大な税金の支出を伴う装備品の調達に関していえば、海外メーカーとの交渉を特定業者に丸投げする仕組みに問題があった。こうした温床をさらに掘り下げて検証した上で、不正や腐敗の介入を許さない強固な仕組みこそつくるべきではないのか。

 水増し請求が行われてもチェックの利かない体制の問題を、背広組と制服組の混在は、どのように解消してくれるのか。納得できる理詰めの根拠を示してほしい。

 文民統制の面でも強い懸念がある。組織内の力学次第で制服組の発言力が増し、文民統制を危うくする事態を招くことはないか。この部分について詳細に説明されなければならない。

 防衛省は不祥事が起きるたび主に組織改編で対応してきた。だが不祥事は繰り返されている。姿形だけにこだわるのではなく、体質そのものに大胆に切り込む改革案が見たい。

(1/29 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30903-storytopic-11.html

 

2008年1月30日(水) 朝刊 2面

首相、問題視せず/記述訂正申請

 【東京】福田康夫首相は二十九日の衆院予算委員会で、昨年十二月に承認された沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書記述の訂正申請について「教科用図書検定調査審議会における慎重かつ丁寧な審議の結果に基づいていると承知している」と述べ、問題視しない考えを明らかにした。赤嶺政賢衆院議員(共産)の質問に答えた。訂正申請承認後、福田首相が「集団自決」問題で国会答弁したのは初めて。

 赤嶺氏は検定審委員を務める筑波大の波多野澄雄副学長への聞き取りで、「集団自決への日本軍の強制の有無について審議会では方向性を出さなかった」との回答を得たことを説明。

 審議会が訂正申請審議に際して取りまとめた「とらえ方」にも、軍の強制をどう位置づけるか明記されていなかったと指摘し「『とらえ方』に一言もないのに、なぜ軍の強制を訂正申請で削除したのか」と追及した。

 これに対し、渡海紀三朗文部科学相は「強制性があったかなかったかについて、断定すべきだというとらえ方はされていない。当時の県民から見れば強制的といわれる事実があったと記述された申請も、承認されている」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801301300_02.html

 

2008年1月30日(水) 朝刊 27面

大浦湾サンゴ「白保に次ぐ大群落」

 米軍普天間飛行場の移設先に近い名護市の大浦湾北部で見つかったアオサンゴ群落について、ジュゴン保護基金委員会と沖縄リーフチェック研究会は二十九日、県庁で記者会見し、長さ約五十メートル幅約三十メートルの範囲で密集しているとの調査結果を発表した。「白保に次ぐ規模の大群落だ」として、代替施設の建設断念とサンゴの保全を求めた。

 調査は今月十九、二十の両日、延べ三十六人のダイバーが区画を分担する方法で実施。初めて現場の立体的な分布図を作成した。

 今回は簡単な調査だったが、三月にはWWF(世界自然保護基金)ジャパンや日本自然保護協会も加わって、より詳細に調査する。シャコガイやクマノミの生息位置も加え、「生き物マップ」として完成させたい考え。

 同委員会の東恩納琢磨事務局長は「海域利用のルール作りや、いずれはジュゴン保護区の設定に活用できる」と話した。「沖縄ジュゴン訴訟」の判決で米サンフランシスコの連邦地裁が国防総省に義務付けた意見聴取に原告として応じる際も、活用するという。

 群落は辺野古崎から約三・五キロの距離にあり、同研究会の安部真理子会長は「大規模な埋め立てで海流が変わり、アオサンゴにも影響する」と、代替施設建設に懸念を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801301300_05.html

騒音抗議で住民大会/きょう北谷町砂辺区-沖縄タイムス, 琉球新報(1月20日から23日)

2008年1月20日(日) 朝刊 2面

「記述修正に一定成果」/自民「検定撤回」実行委解散提起

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、自民党県連(外間盛善会長代行)は十八日、教科書検定意見撤回を求める県民大会実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)に解散を提起する方針を決めた。「記述が修正されて一定の成果を得た。実行委の役割は終え、活動に区切りをつけるべきだ」というのがその理由。同党県連の国会議員や県議は、記述の訂正を事実上の検定意見撤回だと受け止め、県民大会の目的はほぼ実現した―との認識だ。存続を求める実行委は強く反発しているが、同県連が幕引きの意向を明確にしたことで、教科書検定をめぐる超党派の活動は極めて困難な状況に追い込まれた。(政経部・与那原良彦)

 十八日の議員総会では「自民党も一丸となった要請で記述が訂正され、検定意見は事実上撤回された」「実行委は県民大会開催とその後の要請行動が目的だ。県民大会で求めたことは一定の成果を得た」などの意見が相次いだ。実行委の役割は終わっており、活動に区切りをつけるべきだという見解でまとまった。

 実行委幹事の伊波常洋政調会長は「訂正を拒んでいた文部科学省が訂正に応じ、制度の中でギリギリまで踏み込んだ対応をした。軍が主語になり、関与を認めた。事実上の検定撤回だ」と指摘。沖縄条項の設置などは県民大会決議を超えた要請だとして、「仕切り直して、今後の問題についてはあらためて、組織的対応を検討すべきだ」と述べた。

 議員総会では、「自民党が主導して解散を求めれば、『実行委つぶし』と批判されかねない」という慎重意見もあった。しかし、県議の間には「超党派要請だが、結局は政府与党への批判を招き、野党が得をするだけだ」と不満が渦巻く。

 六月に県議選を控え、衆院の解散・総選挙がいつあっても不思議ではない状況だけに、選挙戦への影響を懸念。事態の早期収拾が必要だという判断も働いた。

 また、一部の実行委員が、要請行動への協力に慎重になった自民党の県選出・出身国会議員を批判したことも、県連の態度を硬化させる要因になっている。

 自民党県連と実行委の方針の対立につながった根本にあるのは、記述の訂正に関する評価の違いだ。

 次回の実行委は二十三日にも開かれる予定だ。県民大会で結集した県民の思いは何か、原点に立ち返った議論が求められる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801201300_03.html

 

2008年1月20日(日) 朝刊 27面

騒音抗議で住民大会/きょう砂辺区

 【北谷】米軍嘉手納基地に隣接し、米軍機の騒音被害が激しい北谷町砂辺区で二十日午前、騒音被害に抗議する住民大会が開かれる。町内で騒音に対する住民レベルの抗議集会は初めて。同大会の実行委員会会長、松田正二自治会長は区内の全九百余世帯へ参加を呼び掛けている。

 嘉手納基地の飛行ルート直下に位置する同区の上空では、日常的に米軍機が飛行訓練を繰り返している。基地負担軽減が盛り込まれた二〇〇六年の在日米軍再編協議以降も、F15戦闘機の未明離陸、米空軍と米海兵隊による大規模な即応訓練などが続いたため、同区の区政委員会で大会開催が決まった。

 大会は同区公民館を会場に、午前十時から正午まで開かれる。住民代表のあいさつのほか、野国昌春町長が来賓として出席。F15戦闘機の撤去や未明離陸の中止を求めるアピール文を読み上げる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801201300_06.html

 

2008年1月20日(日) 朝刊 26面

沖縄戦遺骨11柱収集/佐賀のNPO、糸満で活動

 【糸満】戦没者の遺骨収集などのため来県している佐賀県のNPO法人「戦没者を慰霊し平和を守る会」の会員らは十九日、糸満市内の自然壕など市内三カ所で計十一柱分とみられる遺骨や遺品などを収集した。

 ツアーは今回で四回目。沖縄側の会員を含め全国の二十代から八十代まで、四十四人が参加した。作業は三班に分かれ、糸満市大度の自然壕や原野、同市摩文仁の陣地壕で行われた。

 同日午前からの作業で顎の骨や銃痕の残る頭蓋骨のほか、軍服のボタン、万年筆、眼鏡や歯ブラシなどの遺品も見つかった。参加者の中には若者も多く、初めて遺骨収集を体験する者もいた。

 群馬県から初参加した嶋田一秀さん(31)は「沖縄戦から六十年以上たっているのに、少し足を踏み入れるだけで遺骨がこんなに出てくるとは」と驚いた表情で話した。

 今回は身元に直接つながるような遺品は見つからなかったが、同会の塩川正隆副理事長は「戦争はまだ終わってないということを若い人たちにも伝えたい。今後も活動は続ける」と語った。

 一行は二十日に市摩文仁の平和祈念公園内で慰霊式典を行う。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801201300_07.html

 

琉球新報 社説

教科書問題 実行委は超党派を維持せよ

 「役割は終わった」と自民党県連(外間盛善会長代行)。しかし、果たしてそうだろうか。むしろ、これからが正念場ではないだろうか。いまだ道半ば、というのが大方の県民の実感だと思う。そういう意味で、今回の同党県連の判断は残念。ぜひとも考え直してほしい。

 超党派でつくる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)について、自民党県連が、解散を求める方針を決めたという。

 理由として「(実行委は)検定意見撤回と記述回復の2項目を要求してきた。結果は必ずしも満足いくものではないが、県民大会を受けて取るべき行動はすべて取った」とする。その上で「100%満足できる結果ではないが、実行委の役割は終わった」としている。

 昨年12月26日、高校歴史教科書の「集団自決」(強制集団死)検定問題に関し、文科省は教科用図書検定調査審議会の訂正申請を、すべて承認した。訂正内容は、実行委が要求してきた検定意見の撤回はむろん「集団自決」について日本軍の「強制・強要・誘導」との記述も教科書本文では一切、認めていない。つまり実行委が求めてきた最低限の要求は一つも実現しなかったことになる。

 確かに「集団自決」が発生した背景・要因について、脚注や体験者証言など、本文以外で詳しく書き込まれた教科書もある。ただ、検定意見が残ったままでは、本文でもない脚注は、いつ削除されてもおかしくはない。その可能性は大きいのではないか。

 このような現状を考えると「役割を終えた」とはとても言えまい。

 自民党県連が昨年来、さまざまな障害を乗り越えて、県議会として実行委に参加。さらに、県議会の二度の意見書可決も、同県連の決断がなければ実現できなかったのは確かだ。超党派の要請行動のおかげで、中央政界、文科省も真剣に対応せざるを得なかったことも、疑いないところだろう。

 いまだ体験者が生存する「集団自決」について、日本軍の命令・強制の有無は、県民にとってあらためて論議するまでもない。こういう認識があったからこそ、自民党県連も実行委に加わったのだと私たちは理解している。

 ここはやはり、実行委にとどまってほしい。党利党略がらみで判断するのだけは避けるべきだ。

 幸い今後の運動について、すべての道を閉ざすわけでもなさそうだ。同県連の伊波常洋政調会長は「必要であれば何らかの組織を立ち上げてもいい」と述べている。

 実行委は存続し、今後も要請活動を継続すべきだと私たちは考える。仮に超党派は維持できないにしても、自民県連はせめて実行委のバックアップに努めてほしい。

(1/20 9:57)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30639-storytopic-11.html

 

2008年1月21日(月) 朝刊 1・23面

砂辺区民、飛行中止訴え 米軍機爆音

 【北谷】米軍嘉手納基地に隣接し、昼夜を問わず激しい米軍機の爆音被害を受ける北谷町砂辺区で二十日、「早朝離着陸・爆音被害に対する住民大会」(主催・同実行委員会)が開かれ、百人を超える区民が米軍機の深夜・早朝の離着陸中止とF15戦闘機の撤去などを求めた。爆音被害に抗議する区民レベルの集会は同町で初めて。「私たちは耐えに耐えてきたが、もはや我慢の限界だ」とのアピール宣言文を採択した。

 大会実行委員長の松田正二自治会長は「県や国まかせでなく、日ごろから被害を受けている砂辺区民が行動を起こした。爆音に押しつぶされる子どもたちを救えるのは私たちの世代だ」と大会の意義を強調した。

 野国昌春北谷町長は「行政も基地被害の改善を日米両政府に訴えているが、壁は厚い。今回のように住民が自ら立ち上がったことは、両政府を動かすことにつながる」と住民を激励した。

 区の婦人会や嘉手納爆音訴訟原告団の代表が連帯を訴え。会場の砂辺区公民館に詰め掛けた住民らが真剣な表情で聞き入った。

 三人の子どもを連れ参加した松田直美さん(29)は「砂辺区では昼夜関係なく、窓が揺れるほどの爆音が続いている。大会をきっかけに、少しでも騒音が減ってほしい」。自営業の久場祐三さん(44)は「騒音以外にも、米兵絡みの事件・事故の不安もある。生活環境全体の改善も必要だ」と語気を強めた。


     ◇     ◇     ◇     

爆音NO 静かな怒り

次の世代に苦しみ残さない


 【北谷】嘉手納基地を離着陸する米軍機の爆音に長年さらされてきた北谷町砂辺区。二十日、「静かな環境を取り戻したい」と区民が初めて立ち上がった手づくりの住民大会は静かな熱気に包まれた。「爆音を次の世代に残さないためにも、行政だけに任せてはいけない」。参加した区民は、地域を守る運動の始まりに決意を新たにした。

 会場となった区公民館。ホールからあふれるほどの区民が詰め掛けた。

 「(砂辺区全世帯の)九百世帯から百人が参加した。本気で騒音を減らしたいという人がこれだけ集まれば、問題意識が周囲に広まるはず」

 大会実行委員長の松田正二自治会長は自治会レベルで開いた住民大会に手応えを感じ、声を弾ませた。「二回、三回と大会を続け、国や米軍に住民の切実な思いを届かせたい」

 砂辺区では基地負担軽減が盛り込まれた在日米軍再編以降も、未明離陸やF22戦闘機の一時配備などで、騒音は一層激しくなっている。

 一向に改善しない現状に、区政委員会で「行政だけに任せてはいけない」との意見が出て、住民で大会を主催した。区長、区政委員が協力して全世帯にビラを配布。初めて作成したアピール宣言文は、地域に住む町議の手ほどきを受けた。大会当日の朝には区長が車載スピーカーで地域を回り、参加を呼び掛けた。

 大会で、区婦人会代表の松田トヨさん(61)は「声を上げなければ、考える力、行動する力が失われる。住民と行政、議会が団結しなければ問題は解決しない」と強く訴えた。

 他の参加者も進んでマイクを握り、「戦闘機は騒音以外にも、大量の排ガスを出すと聞いた。環境汚染も深刻だ」「砂辺の基地被害をもっと県外に知らせなければ」と声を上げた。

 嘉手納基地に隣接する嘉手納町屋良の田仲康榮町議は「砂辺での大会成功は、同様に基地被害を受ける嘉手納町での住民大会開催のきっかけになるのではないか。被害を受けている住民が直接、声を上げる意義は大きい」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801211300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月21日朝刊)

[海自給油活動]

転用防止は新法の前提

 海上自衛隊のインド洋での給油活動をめぐり、日本政府が提供燃料の使途について検証できるよう明文化を要求したのに対し、米政府が拒否し、日米の交換公文に盛り込まれない見通しとなった。

 米側は「作戦行動に影響を及ぼし、決して受け入れられない」と主張し、日本側が譲歩しなければ、給油を受けないこともやむを得ないとけん制している。

 新テロ対策特措法をめぐる国会審議では、海自が米艦船に提供した燃料のイラク作戦への転用疑惑が大きな問題となり、与野党攻防の焦点にもなった。日米両政府はそろって転用を否定したが、疑惑が晴れたとは言い難い。

 対テロ新法は給油をテロリスト海上阻止活動に限定しており、転用の防止は新法の必須の前提条件である。その根幹を揺るがす重要な問題だけに、あいまいな決着は許されない。

 米側は当初、燃料の目的外使用禁止が明示されなかった旧テロ対策特別措置法に基づく交換公文と同じ文言を主張。日本側が転用防止の担保を再三要請したのに対し、米側は「いちいち確認できない」と拒否した。

 さらに対テロ新法が海自の給油海域としている「インド洋」について、実際の活動に即してインド洋北方の「アラビア海北部」とするよう求めた。

 米側は作戦行動の柔軟性を確保するため、日本側の対テロ新法に制約されたくないというのが本音だろう。だが米側の主張を許容するような事態になれば、憲法上重大な疑義が生じる。

 政府は対テロ新法に基づく実施計画を決定し、海上阻止活動に従事する他国艦への補給活動を実施すると明記した。転用疑惑を受けて、「法の趣旨を踏まえて、これ(水と油)を諸外国の軍隊等に譲与する」としている。

 政府は対テロ新法の趣旨を逸脱する給油活動を容認すべきではない。少なくとも、補給燃料の使途を検証できないのであれば給油をやめるべきだ。

 対テロ新法をめぐっては国内世論が割れ、新法成立の手順も異例の展開となった。参院では民主党など野党の反対多数で否決され、衆院での再議決で成立した。再議決による成立は五十七年ぶりのことである。

 イラク戦争への転用疑惑が浮上した際、米側は油の使途を明確にすることは「複雑な作業で困難」(国防総省)と認めていた。米艦船への給油活動自体が構造的な問題をはらんでいる。

 あいまいな運用では憲法九条に抵触し、アリの穴から堤が崩れる事態に発展しかねない。米側の主張は予想されたことであり、政府は対テロ新法の趣旨に沿った運用に徹するべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080121.html#no_1

 

琉球新報 社説

給油検証拒否 深まる一方の転用疑惑

 新テロ対策特別措置法に基づく日米両政府の交換公文に、海上自衛隊による提供燃料の「使途検証」が明記されないことが分かった。米側は「目的外使用の禁止」の明示を拒否してきたが、使途検証もはねつけたことで、日本が今後提供する燃料は、新法の目的に反し、テロリスト海上阻止活動以外に転用される可能性が出てきた。

 指摘されてきたイラク戦争などへの転用疑惑も、一段と深まるのは間違いない。57年ぶりの衆院再議決をしてまで対テロ新法成立に固執した日本政府は、国民に対し、事態を説明すべきだ。

 昨年失効したテロ対策特措法に代わる対テロ新法は、海自の活動をインド洋などでの給油・給水に限定している。活動を限定したことで、旧法にあった「国会承認条項」は削除された。

 活動限定明記の背景には、イラク開戦直前に海自の補給艦が米補給艦を通じて米空母に給油した燃料がイラクでの軍事行動に転用されたとの疑惑が浮上し、憲法に抵触する恐れを指摘されたことがある。日米政府はともに否定したが、米側は「使途特定は困難」とも指摘。給油量が日本政府発表の約4倍に上ることも判明し、疑惑を払いきれないでいた。

 こうした状況を踏まえ、日本側は対テロ新法案をめぐる米側との調整で、新法の目的を明記するよう要請した。しかし、米側は目的外使用の禁止が明示されていなかった旧法に基づく交換公文と同じ文言を主張し続けた。

 日本側はその後、使途の検証ができるよう「日米両政府は法律の目的に合致することを担保するため、必要な調整を行う」との表現を盛り込むよう求めたが、これも米側は「作戦行動に影響し、現場の負担になる」として拒否。日本側が譲らなければ、海自の給油を受けないこともやむを得ないと牽制(けんせい)してきた。

 米側の“逆ギレ”もいいところだ。それほどまで言われ、頭を下げ続ける日本もどうかしている。そもそも新法で活動を限定しているのだから、それが担保されないに等しい状況はおかしい。これでは米国への「忠義立て法」と言われても仕方がない。

 本紙加盟の共同通信社が今月中旬に実施した全国電話世論調査によれば、対テロ新法を参院で否決後、衆院再議決で成立させたことには「適切ではなかった」との答えが「適切だった」を上回っている。米側の顔色をうかがい過ぎるあまり、国民の空気を読めなかったとしたら問題だ。

 憲法は「戦力不保持」をうたっている。提供燃料について転用防止の厳格化が図れないなら、給油を止めるほかない。国会承認条項も復活させるしかないだろう。

(1/21 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30667-storytopic-11.html

 

2008年1月21日(月) 夕刊 1面

アセス総括説明要求 「普天間」移設

事実上の「書き直し」

 仲井真弘多知事は二十一日午後、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見を沖縄防衛局に提出する。知事意見は、沖縄防衛局が県環境影響評価審査会に対し、これまで実施した追加説明分と、今後明らかになる事業や調査手法などを総括して報告し、同審査会で審議、公表するよう事実上の「書き直し」を求める。一方で、方法書のアセス法上の有効性は否定せず、同法で規定されている「差し戻し」などは求めない。沖縄防衛局はアセス調査前に、審査会への説明には応じる方向で県と調整するとみられる。

 知事意見は、方法書で事業内容や調査手法などの具体的な記述がなかったことから審査会が求めた追加説明も「十分でなかった」とする答申の趣旨を反映し、これまでの沖縄防衛局の説明不足を批判。あらためて方法書の具体的な内容説明を求める。

 ただ県は、方法書は内容が不十分ながらもアセス法上の要件は満たしていると判断。公告縦覧手続きのやり直しなどを含む「差し戻し」の要求はできない、との認識だ。このため、沖縄防衛局にあらためて審査会への「総括説明」を求めることで、事実上の「書き直し」と公表の形式をとらせたい考え。

 県は今後の追加説明を一括で行うことを想定しており、そうなれば、沖縄防衛局にとっても、二月のアセス調査着手に遅れを生じない形で対応することも可能となる。

 県は二十一日午後、沖縄防衛局を訪ね知事意見を手渡す。その後、仲井真知事が記者団の質問に答え、知念建次文化環境部長らが記者会見する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801211700_01.html

 

2008年1月21日(月) 夕刊 5面

F15飛行再開「住民に恐怖心」抗議/沖縄市議会決

 【沖縄】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行再開したことを受け、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は二十一日午前の臨時議会で、「飛行再開は住民に恐怖心を与えるもので断じて容認できない」として同機の全面撤退を求める抗議決議と意見書の両案を全会一致でそれぞれ可決した。

 抗議決議では、F15が県内や米本国で墜落事故を起こしていることを問題視した上で「欠陥機と断言せざるを得ないF15が、周辺住民の頭上を飛行することに強い憤りを覚える」と反発。飛行が再開された十四日には、二機が緊急着陸したことを挙げ、「嘉手納基地周辺の住民は墜落の恐怖に毎日の生活を脅かされている。住民の声を無視した米軍の運用に不信感がますます募るばかりだ」と批判している。

 抗議決議のあて先は駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事など。意見書は首相、外相、防衛相など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801211700_03.html

 

2008年1月21日(月) 夕刊 5面

米軍人の綱紀粛正要求/タクシー強盗 宜野湾議会も抗議決議

 【宜野湾】沖縄市美原で発生したタクシー強盗致傷事件で、米普天間基地所属の海兵隊員二人が同容疑で逮捕されたことを受け、宜野湾市議会(伊波廣助議長)は二十一日午前の臨時議会で、米軍人の綱紀粛正などを求める抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。

 決議などでは、同事件は「一歩間違えば生命の危機にかかわる」として「県民に与えた恐怖と不安は計り知れない。過去の事件を踏まえた教訓が全く生かされてなく、県民は怒り心頭に発している」と糾弾。「米軍に対する不信感を募らせる行為である」と批判した。

 その上で(1)被害者への完全補償(2)米軍人・軍属の綱紀粛正(3)隊員教育の徹底―の三点を求めている。あて先は駐日米国大使、在日米軍司令官、首相、防衛相など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801211700_04.html

 

2008年1月22日(火) 朝刊 1・22面

「書き直し」初明記/普天間アセス方法書 知事意見

有効性は否定せず/2月調査「早ければ間に合う」

 仲井真弘多知事は二十一日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する三十七項目・二百四十七件の知事意見を沖縄防衛局に提出した。知事意見直前に追加資料が提出されたため十分な審査期間が確保できず、「(方法書の)書き直しをする必要がある」と初めて明記した。一方で、方法書のアセス法上の有効性は、前回(昨年十二月二十一日)知事意見に引き続き否定しなかった。アセス調査の二月実施について、仲井真知事は「書き直しが早ければ間に合う」との見解を示した。防衛局は週内にも審査会に説明を実施したい考えだ。

 知事意見を提出後、記者会見した知念建次文化環境部長は、方法書の「書き直し」の範囲について、「もう一度きちんと取りまとめた形で出してほしいということ」とし、これまで実施した追加説明分と、今後明らかになる事業内容やアセス調査手法などを総括して報告することを求めた。

 書き直しの実効性については、「前回の知事意見を考慮し、(防衛局が)年明けに百五十ページ余の追加資料を提出したことをかんがみれば、十分に出せる状態にあると考える」と説明。今後の審査は、追加資料や防衛局との調整でクリアできるとの見通しを示した。

 知事意見で求めた「書き直し」は、アセス法で規定する「差し戻し」には当たらないとの認識。そのため、書き直しについて審査で出た結論を、県や審査会の意見として防衛局に提出はしない。知念部長は「審査の状況をみた上で、(アセス調査に必要な生物採捕などの)許認可を判断する」として、審査は県の判断材料の一つとみなした。

 書き直し後の公表方法については「事業者で何らかの措置を取ってほしい」として事業者の自主性に委ねた。

 防衛局が現在実施している現況調査については「(中止すべきだという)審査会の答申を踏まえ、十分配慮する必要がある」としたものの、調査の実施は否定しなかった。


情報開示を条件に容認/名護市長


 【東京】仲井真弘多知事が二十一日、米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見を発表したことを受け、島袋吉和名護市長は同日夕、沖縄防衛局が十分な情報を公表することを条件に、アセス調査を受け入れる考えを明らかにした。岸田文雄沖縄担当相と会談後、内閣府で記者団の質問に答えた。

 島袋市長は方法書について、「急に百五十ページという膨大な資料が出た。県環境影響評価審査会の皆さんに、しっかり精査していただきたい」と述べ、沖縄防衛局の再説明を見守る考えを示した。


円滑かつ適切に手続きを進める/沖縄防衛局長


 知事意見を受け、沖縄防衛局の真部朗局長は二十一日、「知事意見を勘案し、住民等の意見にも配意して、環境影響評価の項目などを選定し、環境影響評価手続きを円滑かつ適切に進めるとともに、手続きを進めるに当たっては、県に方法書の検討内容などについて丁寧に説明し、理解を得たい」とのコメントを発表した。

 

     ◇     ◇     ◇     

地元で評価交錯


 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)手続きで、仲井真弘多知事は二十一日、沖縄防衛局に知事意見を出した。県環境影響評価審査会の答申が求めた現況調査(事前調査)の中止をトーンダウンさせ、防衛局が目指す二月の本調査開始には柔軟姿勢を示した。自然保護団体からは批判が上がり、地元の名護市では「国と県が歩み寄った」「出来レースだ」と評価が交錯した。

 日本自然保護協会理事の吉田正人江戸川大学教授は「審査会が方法書の書き直しを求めること自体が全国的にも異例で、県は本来差し戻すべきだった」と指摘。審査会の議論を毎回傍聴する建築家の真喜志好一さんは「基地建設を容認する知事でも、環境問題ではアセス法を厳密に適用すべきだった。国のスケジュールに合わせて法をねじ曲げた」と厳しく批判した。

 移設先の名護市辺野古区有志でつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は、知事が手続きのやり直しを求めなかったことを評価。「再度同じ手続きをやれば、足踏みになる。知事として柔軟なところも出てきた。早期移設という目的で県と国は歩み寄っている」と、作業の進展に期待を示した。

 一方、大浦湾に面した同市瀬嵩に住む沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長は「米軍機の機種や飛行ルートなど住民生活への被害の核心が明らかにされていない。沖縄の痛みを全国に伝えるためにも、知事には差し戻してほしかった。国との出来レースなのか、情けない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801221300_01.html

 

2008年1月22日(火) 朝刊 2面

基地従業員の支援策延長/厚労省

 【東京】厚生労働省は二十一日、国内の米軍基地で働く日本人従業員が職を失った際の再就職支援策を盛り込んだ「駐留軍関係離職者等臨時措置法」を、二〇一三年まで五年間延長する方針を固めた。基地従業員の地位は依然不安定で、在日米軍最終報告(ロードマップ)でも在沖米海兵隊八千人のグアム移転などで大規模な失業が想定されるため、支援策は引き続き必要だと判断した。

  同法は一九五八年の成立以来、五年ごとの延長を繰り返し、今年五月十六日が失効期限だった。時限立法で始まった法律としては異例の五十五年間の有効期限を保つことになる。

 ただ、米軍再編に伴う具体的な影響が明らかになっておらず、今回は現行法の期限だけを変更する単純延長で対応する。厚労省は通常国会の予算法案成立後に関連法案を提出し、成立を目指す。二十二日午前の自民党厚生労働部会で説明する。

 同法の再就職支援策の柱は(1)離職者への就職指導票交付と公共職業安定所(ハローワーク)などでの就職指導(2)再就職支援のための給付金支給(3)職業訓練援助―など。

 全駐労の照屋恒夫書記長は「米軍再編の影響で今後、離職者は沖縄だけでも数千人に上る可能性があり、同法による支援は欠かせない。仮に延長されるのであれば評価したい」と述べた。

 県議会や市町村議会などは、深刻な県内雇用情勢を踏まえ、同法の延長を求める意見書を相次いで可決していた。(島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801221300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月22日朝刊)

[米軍機爆音]

砂辺区民の声は切実だ

 米軍嘉手納基地を離着陸する戦闘機や輸送機などの爆音に悩まされ続けている北谷町砂辺区の住民らが静かに立ち上がった。

 町のイベントとも重なった日曜日の朝。百人の住民が「爆音NO」の意思表示をするために集まった。全九百世帯から百人。たかをくくってはいけない。「今、意思表示をしなければ爆音は次の世代まで残ってしまう」。危機感に包まれた住民らの行動は、地域を守るための新たな運動の始まりを予感させるに十分だ。

 国は、参加者から漂う静かな熱気を感じ取るべきだ。たかが百人と見くびってはいけない。深刻化の一途をたどる米軍基地被害。現状に不満や不安を感じながらも粛々と暮らす県民の思いは百人の思いとぴたり重なるのだ。

 大会名に「反対」の文字はない。「早朝離着陸・爆音被害に対する住民大会」。政治色を出さずに住民本位の活動に徹するという、大会実行委員会の姿勢の表れだ。

 日米両政府が在日米軍再編に合意してから二年余が経過した。基地負担軽減がうたわれながら、米軍のやっていることはF15戦闘機などの未明離陸やF22戦闘機の一時配備。一向に改善されない現状に地元住民の不安は募るばかりだ。

 声を出しても国や米軍は聞く耳を持たない。しかし黙っていては、砂辺区民の苦悩が多くの人たちに伝わらないし、国や米軍に住民の切実な思いは伝わらない。基地被害、爆音被害を受けている住民たちが、自治会レベルで声を上げるインパクトは大きい。同様の被害で苦しむ他の地域の住民らに勇気と希望を与えたに違いない。

 安眠を妨害する未明離陸が生活に与える影響は大きい。「もはや我慢の限界だ」。アピールに盛り込まれた文言の持つ意味は重い。

 県はもっと住民の立場に立った強い姿勢を国や米軍に示してほしい。静かな暮らしがほしいだけの砂辺区住民の静かな怒りに、国と米軍は誠実に応えるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080122.html#no_2

 

2008年1月22日(火) 夕刊 1面

防衛相 来月開始 重ねて言明/普天間アセス

 【東京】石破茂防衛相は二十二日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見について、「(アセスの)やり直しというわけではない」と述べ、前進との認識を示した。その上で「沖縄の意見に可能な限り応えるよう、努力したい」と語った。

 普天間飛行場代替施設建設に向けたアセス調査については「今までと同じ方針でいきたい」と述べ、県の理解を早急に得て遅くとも二月中に調査を開始する考えをあらためて示した。

 一方、岸田文雄沖縄担当相は閣議後会見で、知事意見で追加説明が必要だとして、方法書の書き直しを求めていることについて、「知事意見の内容を踏まえ、防衛省が十分な説明と最大限の努力をするものと考えている」と述べ、丁寧な対応を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801221700_02.html

 

2008年1月22日(火) 夕刊 5面

津堅島水域で落下傘訓練/9日に米海軍

 【うるま】在沖米海軍が今月九日、うるま市の津堅島訓練水域でパラシュート降下訓練を実施していたことが、二十二日までに分かった。沖縄防衛局によると、訓練の詳細や部隊名などは「運用上の理由」で明らかにしていないという。知念恒男うるま市長は「訓練がどのような内容なのか、市側に知らされていない。同地域ではモズクの養殖が行われており、市民の安全を守る上で(米軍や施設局は)詳細を明らかにしてほしい」と話している。

 パラシュート降下訓練は、一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で伊江島補助飛行場での実施が明記され、津堅島訓練水域の記載はない。一方で外務省などは、同水域での訓練は「水陸両用訓練」とし、SACO合意の対象外との認識を示している。

 嘉手納基地渉外部は今月八日にうるま市側に訓練の実施を通告していた。津堅島訓練水域では昨年一月十六日にも、嘉手納基地所属の部隊によるパラシュート降下訓練が行われたが、那覇防衛施設局(当時)は、うるま市や地元漁協に「一般演習」と通告していた。

 うるま市議会は二十八日の基地対策特別委員会で、同降下訓練に対する抗議決議の採決などを協議する予定。

 また、航空自衛隊那覇救難隊は二十二日午前九時から、津堅島に近いうるま市勝連比嘉の浮原島訓練場でパラシュート降下訓練を実施した。本年度の実施は九回目。浮原島で発煙筒約五本を使用し、UH60Jヘリコプター一機から救難員が約十五回降下した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801221700_04.html

 

2008年1月22日(火) 夕刊 5面

視察で校舎屋上使用 不許可/沖国大「必要と認められず」

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の視察目的で二十八日に来県する神奈川県相模原市の市議らのため、沖縄国際大学法学部の佐藤学教授が申請した学内の五号館建物屋上の使用許可を大学側が「教育上、特に必要と認められない」などとして、使用を認めなかったことが二十二日、分かった。佐藤教授は「一般市民向けの講座など、社会に知識提供することも大学の務め。普天間飛行場の危険性を知らせることは、広い意味の社会教育であり、原則許可制とすることが好ましい」としている。

 佐藤教授によると、神奈川県相模原市議ら約十人の「米軍厚木基地周辺自治体議員視察団による普天間基地観望のため」として今月十一日、校舎等使用許可願書を提出した。十五日に不許可の通知があり、後日、大学当局に確認すると「沖国大や他大学の学生に使用を限定したい」などと管財課職員が説明した、という。

 同大の「各館屋上の使用について」との申し合わせに基づいて使用が認められなかったことから、佐藤教授は二月一日の法学部教授会で内規改正のため、問題提起する考え。

 同大は「これまでも特例で使用を認めることはあった。今回の件に関しては、再度申請があった場合、前向きに検討したい」としている。

 同大によると、学内の「米軍ヘリコプター墜落事故対策委員会」で、屋上使用に関して「申し合わせ」の順守を確認。その後、複数回の使用申請があったが、使用を認めなかった、という。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801221700_05.html

 

2008年1月23日(水) 朝刊 27面

津堅島・落下傘訓練/市に無断で演習日変更

 【うるま】津堅島訓練水域で在沖米海軍がパラシュート降下訓練を実施していた件で、米軍側はうるま市に対して、当初予定していた今月九日から天候不良を理由に十日への演習日の変更を告げた後、無断で再び九日に演習日を戻していたことが、二十二日分かった。

 降下訓練の実施を受け、抗議決議の提案を予定しているうるま市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「訓練の内容や変更を含めて、なぜ市側に通知しないのか」と米軍の対応を疑問視しており、「SACO合意では(降下訓練は)あくまで伊江島での実施が示されている。日米で見解の相違があるが、合意案にのっとった共通理解を出すべきだ」と憤っている。

 勝連漁協関係者によると同区域は水深が深く、漁船の航行は少ない。これまでパラシュート降下訓練による被害が報告されたことはないという。

 一方、地元津堅島では年に三回ほど、同訓練水域内で訓練の様子が目撃されているという。津堅区の新屋功区長は「市役所からの事前通知で訓練があることを漁師に知らせているが、今回は目視できなかった。現在のところ住民生活に影響は出ていない」と話している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801231300_02.html

 

2008年1月23日(水) 朝刊 27面

検定問題 意見を募集/実行委5団体

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の構成団体のうち五団体が二十二日、那覇市の婦連会館で協議し、教科書検定問題について広く県民の意見を募集することを決めた。今後の活動に生かしたい考え。

 県婦人連合会と県子ども会育成連絡協議会には、二十一、二十二の両日に「検定意見撤回まで実行委の存続を」と求めるファクスやはがきが相次いで寄せられた。沖婦連の小渡ハル子会長は「県民に心配させては申し訳ない。引き続き心を一つに超党派で頑張りたい」と語った。

 自民党県連が解散を提案する次回の実行委の会合で、逆に組織強化を提起することも申し合わせた。同日の協議には、県老人クラブ連合会、県青年団協議会、沖縄の未来を語る会の代表も参加した。意見のあて先は沖婦連、ファクス098(884)5343。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801231300_05.html

 

琉球新報 社説

アセス知事意見 環境軽視しては悔い残す

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書に対し、県が21日、埋め立て部分に関する知事意見を沖縄防衛局に提出した。

 知事から諮問を受けた県環境影響評価審査会は、方法書の書き直しと併せ、アセス本調査に先立ち実施されている環境現況調査(事前調査)について「中止させる必要がある」と答申していた。

 だが知事意見は「書き直しをする必要がある」と明記したものの、事前調査の中止には踏み込まなかった。防衛省への配慮がにじむ。ジュゴンやサンゴなどの生物的環境への影響を考慮するなら、答申に従い中止を要求すべきだろう。

 沖縄防衛局が知事意見提出期限の間際になって出した150ページもの追加資料について、県の知念建次文化環境部長は「最初の段階で記載すべき事項はほぼクリアされてきている」と評価。仲井真弘多知事は「どんと情報を公開してもらい、非常に評価すべきだ」とも述べている。

 21日の記者会見では、これまで「進め方がおかしい」などと防衛省を指弾してきた仲井真知事の口から、政府に対する非難めいた言葉は最後まで出てこなかった。

 県と防衛省の間で、ある程度調整が進んでいることをうかがわせるが、アセス調査ありきの「出来レース」になってしまっては、将来に禍根を残す。

 知事意見は、埋め立てのため約1700万立方メートルの海砂を沖縄本島周辺から採取することについて、県外も含めた調達先の複数案を検討し調達計画を明らかにするよう求めた。これらの点が不明のまま手続きを進めてはならない。

 沖縄防衛局は早ければ23日にも県に対し方法書の改訂版を提出するが、県環境影響評価審査会を納得させるだけの中身になるかどうかは未知数だ。

 県は、代替施設の沖合移動を認めさせることに重きを置くあまり、環境保全を軽視するようなことがあってはならない。審査会の意見を最大限に尊重し、国に対して臨むべきだ。そうでなければ、諮問する意味もない。

(1/23 9:56)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30725-storytopic-11.html

 

2008年1月23日(水) 夕刊 1面

ジュゴン調査 7カ月想定/知事意見反映されず

 米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)で、沖縄防衛局は二十二日、履行期限を「今年十月末まで」と設定した、ジュゴンやウミガメなど海域動物に関する環境現況調査の入札を公示した。

 防衛局は同調査の入札を三月二十一日に実施することから、調査期間は約七カ月間を想定しているとみられる。

 ジュゴンに関してはアセス方法書に対する知事意見で、「複数年」の調査実施を求めているが、同意見を反映しないことを前提に、調査期間が設定されている実態が浮かんだ。

 ジュゴンについては二十一日に仲井真弘多知事が沖縄防衛局に提出した知事意見で「これまで科学的調査がほとんど行われておらず、生活史、分布、個体数などに関する知見が非常に乏しい」などとして、生活史などに関する調査を複数年実施するよう求めている。

 同局は、アセス法に基づかない自主的な現況調査(事前調査)で昨年からジュゴンなどに関する調査を実施。

 同調査の収集データをアセス結果に取り込むことで、「複数年実施」とする可能性もあり、環境団体などから批判も出そうだ。

 また、沖縄防衛局は二十二日、米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事で、「G地区」と「N―1地区」のヘリ着陸帯新設工事と、G地区への進入路整備の入札を公示した。三月十二日に入札し、工期は来年二月末まで。

 新設するヘリ着陸帯は三カ所で、直径四十五メートル。一カ所当たり約千六百平方メートルの芝を敷く。


     ◇     ◇     ◇     

真部防衛局長、知事と面談/「方法書充実させたい」


 沖縄防衛局の真部朗局長は二十三日、着任あいさつのため県庁に仲井真弘多知事を訪ね、米軍普天間飛行場移設問題などについて「地元の理解を得ないと何一つうまくいかないと思っている」と述べ、県などに配慮して取り組む考えを強調した。

 環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見への対応については「知事意見を真剣に受け止め、誠意を持って説明し、内容を充実させたい」と柔軟姿勢を示した。

 普天間移設問題について仲井真知事は「県や市町村の意見にじっくり耳を傾けていただきたい。基本的には代替施設は早めに完成した方がいいというのは(政府と)一致している」と指摘。嘉手納基地より南の基地返還後の跡地利用について支援を求めたのに対し、真部局長は「政府内で連携し、要請に応えられるようにしたい」と応じた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801231700_01.html

 

2008年1月23日(水) 夕刊 5面

書き直し調査官が「強制」/教科書会社、4度申請

 【東京】作家・大江健三郎さんらを被告とする沖縄戦「集団自決(強制集団死)」訴訟で被告側を支援する首都圏、大阪、沖縄の三団体は二十二日夜、教科書検定意見撤回を求める集会を都内で開いた。訂正申請が承認されるまでの経緯を報告した教科書執筆者は、「集団自決」への日本軍の命令を記述した証言史料の書き直しを文部科学省の調査官に「誘導・強制」され、教科書会社が合計四回の再申請を余儀なくされたと強調。「軍命が存在しないという記述を調査官サイドに書かされた」と強く批判した。

 集会には執筆者や学識者、教育関係者ら約百五十人が参加。検定意見の撤回と記述の完全な回復、三月に判決が言い渡される「集団自決」訴訟の支援を継続する方針で一致した。

 執筆者で都立高校教員の坂本昇さんは、軍命の証言を引用した当初の訂正申請記述が、十一月下旬に調査官から「伝聞の形であっても高校生には確定した事実と受け取られる恐れがある」と指摘されたことを説明。「調査官は『直せ』とは命令しなかったが、再訂正を誘導・強制した」と指摘した。

 日本軍の戦争責任に詳しい関東学院大学の林博史教授は「現場の兵士が勝手に手榴弾を配ったという意見もあるが、警察でも軍でも不祥事があれば組織の体質やトップの責任が問われるのは常識。軍の強制は一番大事なポイントだ」と強調。日本軍の強制を認めなかった訂正申請の内容が不十分だと訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801231700_04.html

「嘉手納基地 燃料流出か/排水溝内に発電機落下 」沖縄タイムス、琉球新報(1月16日から19日)

2008年1月16日(水) 朝刊 1・22面

「集団自決は村の独断」/防衛研 公開資料に所見

問題なしと削除せず/軍命ねつ造と断定も

 【東京】慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が所蔵資料に「戦隊長命令はなかった」と見解を付けて公開していた問題で、別の複数の資料にも「集団自決は村役場の独断」として、軍命を否定する「所見」などを付していたことが十五日、分かった。復帰前に琉球政府立法院議員が戦隊長命令があったと書いた著書を掲載した報道資料には、資料評価の「参考」として「事実をねつ造している」と断定している。どちらも一般公開されており、識者は「極めて重大な問題だ」と批判している。

 同研究所は「役場の独断」とした所見は「資料内容の要約を記述したもので、事実関係を評価したものではない」(図書館史料室の廣瀬琢磨室長)として、削除しない考え。「事実のねつ造」とした「参考」は「資料を確認していないのでコメントできない」(同)としている。

 今回、判明した資料は(1)「渡嘉敷島及び座間味島における集団自決の真相」(2)「『島民』の集団自決は軍命令だった」―の二点。

 「渡嘉敷―」は(1)沖縄戦時に渡嘉敷村駐在所巡査だった比嘉喜順氏が「軍命でなければ赤松(嘉次)隊長の命令でもございません」などと記した手紙(2)座間味島に駐屯した海上挺進第一戦隊の梅沢裕戦隊長が「助役の命令が飛び、各所で惨劇(集団自決)が始まった」として、戦隊長命令は補償金のために遺族が考えたとの趣旨を書いた手記―を一冊にまとめた。

 この資料に永江太郎調査員が二〇〇〇年十月十八日付で「両島の事件が村役場の独断であり、戦後補償のために軍命令とした経緯に関する当事者の貴重な証言」とする「所見」を添付。林吉永戦史部長の印鑑もある。

 廣瀬室長は「あくまで記述者個人の見解であり、戦史部や防衛省の見解ではない」としている。

 「『島民』―」は(1)琉球政府立法院議員だった山川泰邦氏が戦隊長命令を明記した著書を掲載した「週刊読売」(一九六九年八月十五日)(2)直接の戦隊長命令は確認できていないとする、作家・曽野綾子氏の著書「ある神話の背景」の連載(第六回)を掲載した雑誌「諸君」(七二年三月号)―の記事を複製した。

 戦史室編さん官の川田久四郎氏が七二年八月二十二日に作成。「資料評価上参考となる事項」として「読売」には「早く言えば軍誹謗の記事。ねつ造」、「諸君」には「正確でこれが真相であろう」と指摘している。

 一方、防衛研究所は、すでに判明していた手記の見解は「不適切」だとして、七日に削除した。


一面的な見方を公開資料に添付


 日本軍の戦争責任に詳しい林博史・関東学院大教授の話 明らかになった資料をセットで考えると、防衛研究所が一九七〇年代の非常に早い段階から「軍命はねつ造である」という見解を持ち、現在に至るまで一貫していることが分かる。非常に一面的な沖縄戦の見方を一般公開している資料に添付しているのも、資料保存の方法として問題が大きい。


     ◇     ◇     ◇     

文科副大臣、検定撤回を困難視


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)は十五日午後、文部科学省に池坊保子副大臣を訪ね、「『集団自決』への日本軍による強制」の教科書への明記や検定意見撤回を引き続き要請した。要請に対し、池坊副大臣は「これまで誠実に県民の方々の気持ちに対応してきた」と、再要請に応じるのは困難との見方を示した。

 要請で仲里委員長は、「検定意見の撤回は絶対に譲れない。撤回に向けて今後も取り組み続ける」と粘り強く求め続けていく考えを強調した。

 しかし、池坊副大臣は「(記述の修正で)文言も増えているし、百二十点だ」と評価。その上で「常識的に考えても再度このようなことはないものだと自分は確信する」と述べたが、「軍の強制」に関する記述復活については明言は避けた。

 仲里委員長は「家永裁判、今回の教科書検定問題と、十年越しにこういうことが起こっているので、『ああそうですか』と受けるわけにはいかない」と再発防止の担保も求めたが、明確な回答はなかった。

 要請後、仲里委員長は今後の対応について「持ち帰って実行委員会で協議したい」と述べた。要請には玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会長、小渡ハル子・県婦人連合会長らも同行した。


五ノ日の会 検定撤回再び難色


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、県民大会実行委員会の構成団体のうちの六団体の代表が十五日午後、衆院議員会館で、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」と面談し、問題の解決に理解を求めた。五ノ日の会は、検定意見の撤回に向けた協調には難色を示す一方で、相互が意思疎通を図り、問題解決の道筋を探る必要性を指摘し、代表側も了承した。

 六団体を代表して要請したのは、県婦人連合会の小渡ハル子会長と、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長。両会長は同問題の経緯を説明した上で、「文部科学省の検定意見はまだ撤回されていない」として、国会議員らの強い働き掛けを求めた。

 五ノ日の会会長の仲村正治衆院議員は「われわれは実行委員会と行動を共にし、政府への要望や国会の委員会でも強く要求してきた。(文科省の結論は)県民の八、九割の希望に応えていると判断し、われわれも評価した」などと述べ、検定意見の撤回に向けた協調体制の確立には難色を示した。

 一方で、複数の議員は、団体側が記者会見を開き、五ノ日の会の対応を批判していることに触れ、「話し合いの場はいつでも持つ。一方的に批判すれば感情的になる。今後も相談してほしい」と相互が綿密に意見交換する必要性を説いた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_01.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 23面

国に根強い軍命否定論/氷山の一角か

沖縄戦で起きた「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛研究所が所蔵する複数の資料に戦隊長命令を断定的に否定する見解が付されていることが明らかになった。中には復帰直後の時期に「(戦隊長命令は)事実のねつ造」と強いトーンで書かれたものもあり、三十五年以上前から政府・防衛庁(当時)内に「軍命否定論」が根強く存在していることがうかがえ、問題の底流にあると言えそうだ。

 防研には約十五万冊の戦史が保管されており、これまで判明した部分は「氷山の一角」の可能性が高い。図書館史料室は「すべての資料をチェックするのは不可能だ」と認めており、利用者に予断を与える見解がさらに多くの資料に付されているとみられる。

 今回、問題になったのは、資料を作成した担当者が入手の経緯や日付、出典などを記す「経歴表」の内容だ。

 本来は閲覧する研究者などの参考になるよう、資料保存の価値判断を示す目的で付されているが、「早く言えば軍誹謗の記事」など、明らかに事実関係の評価と受け止められる記載がある。

 防研側は「記述者個人の見解」「利用者の大半は専門家で予断は持たない」などと強調するが、一般の利用者からすれば、組織的に認められたものだと判断する危険性は高い。資料を広く一般公開している以上、「普通の市民」の目線で収集、保存に当たる必要があるのではないか。

 「集団自決」のように事実関係の評価が専門家の間でも分かれている事案であれば、なおさら慎重な判断が求められる。

 閲覧者向けの必要最低限のデータを提供し、歴史認識は利用者(国民)の判断に委ねるという、基本原則を徹底する必要がある。(東京支社・吉田央)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_02.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 1・23面

嘉手納基地 燃料流出か/排水溝内に発電機落下

 【中部】米空軍嘉手納基地内のF15戦闘機駐機場近くで、航空機用の発電機が排水溝内に倒れて破損し、タンクから最大六十五ガロン(二百四十リットル)のディーゼル燃料が基地外へ流出した可能性のあることが十五日、分かった。同基地の流出確認から一日半が経過した同日午後、沖縄防衛局を通じて県や周辺自治体へ「周辺環境への影響はない」との説明が行われた。同基地では、昨年五月にも約一万五千リットルの燃料流出事故が発生しており、米軍のずさんな管理体制や通報の遅れに反発の声が出ている。

 県基地対策課は同日、沖縄防衛局を通じ、事故原因の究明と速やかな回収作業の実施などを申し入れた。

 米軍や沖縄防衛局によると、発電機には六十五ガロンのディーゼル燃料が入った状態で、十四日午前二時に駐機場へ運ばれた。同日午前八時半に発電機が排水溝内に倒れているのが見つかった。

 タンクには転落の際に破損し、穴が開いたとみられ、燃料は残っていなかったという。米軍の説明によると、発電機が倒れた理由や、転落する前に燃料がすべて使用されていたのか、破損した穴から流出したのかは分かっていない。

 排水溝は一・六キロの距離で比謝川へつながっている。同基地は「基地外へ流出していたとしても、十四日に降った雨により、燃料は排水溝内で薄まっている。周辺住民への影響はない」とした。

 嘉手納町屋良の比謝川取水ポンプ場を管理する県企業局は十五日午後、比謝川と嘉手納基地内の嘉手納井戸群に職員を派遣。目視・臭気調査を実施したが、異常は確認されなかった。

 沖縄防衛局から県などへ通知があったのは十五日午後三時ごろ。同基地によると、事故内容は十四日中に在日米軍に報告したという。地元への連絡が一日後だった理由について、同基地は「報告内容は在日米軍、在日米大使館、日本政府の順に通知。環境問題が発生したときの通報手順に沿ったものだ」と説明している。


     ◇     ◇     ◇     

周辺住民、環境への影響懸念


 【中部】「燃料流出の有無が、なぜ分からないのか」―。最大約二百五十リットルのディーゼル燃料が比謝川に流出した可能性もある嘉手納基地での航空機用発電機の排水溝への落下事故。同基地では昨年五月、バルブの締め忘れで約一万五千リットルものジェット燃料流出事故が起きたばかり。周辺住民からは環境への懸念だけでなく、米軍の管理体制の甘さを指摘する声も上がった。

 比謝川沿いに住み、ボランティアで川の清掃に取り組んでいる沖縄市越来の勝連盛守さん(71)は「多くの市民が、きれいな水が流れる川にしようと努力する中で、流出したのであれば絶対に許せない。市民の飲み水、川の生き物などに影響がないか、とても心配だ」と不安げに話した。

 嘉手納基地に隣接する嘉手納町東区の島袋敏雄区長は「流出したのか、しなかったのか、なぜ分からないのか。米軍の管理体制に問題があるのではないか」と指摘した。

 北谷町女性連合会の桃原雅子会長は「騒音でも悩まされているのに、生活にかかわる水でも問題が出てきては家庭の主婦として心配」と懸念。「基地があるために事件・事故が起きている。日々危険と隣り合わせだ。今後こういうことが起こらないよう米軍も政府も対応してほしい」とした。

 航空機用発電機は沖縄市域の排水溝に落ちた。東門美津子市長は「燃料漏れの有無について正確な情報がない。事実関係を把握した上でコメントしたい」と述べた。関係自治体への連絡が、落下事故の確認から約一日後だったことには「通報遅れによって、市民が被害に巻き込まれる可能性がある。米軍は迅速に通報すべきだ」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_03.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 22面

「ひめゆり」アニメ作品に/人物・背景の原画募集

 ひめゆり平和祈念資料館が来年の開館二十周年に向け、元学徒の体験をアニメーション作品にする。原画作者をプロ・アマ問わず公募し、寄せられた絵を基に物語を構成する計画。「小学生にも伝わる、長く色あせない作品にしたい。力を貸してほしい」と呼び掛けている。

 同館は元学徒の高齢化が進む中で体験を次世代に継承しようと、ここ数年アニメ制作の構想を温めていた。展示の解説文が読めない子ども向けに、館内で上映する短編に仕上げる。

 募集するのは、登場人物や背景の原画。参考シーンを設定するが、題材や表現手法は自由に選んでもらう。

 アニメ監督ら専門家の審査で採用を決め、可能なら制作への参加も要請する。採用されなかった作品も含め、同館で展示する予定。

 十五日記者会見した本村つる館長は「子どもに分かり、大人も感動するような作品にできたら」と抱負を語った。審査員も務める映画監督の柴田昌平さんは「応募は中学生、高校生でも可能。新しい発想のアニメにしたい」と意欲を見せた。

 原画の募集は六月末まで。詳しい要綱は同館のホームページ(http://www.himeyuri.or.jp/)にも掲載する。問い合わせは同館、電話098(997)2100。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_04.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 2面

臨時国会を振り返る/検定問題 政府追及

 【東京】安倍晋三前首相の突然の辞任から波乱の幕開けとなった第百六十八回臨時国会が十五日、閉会した。沖縄関係では、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、検定意見の撤回などをめぐる論争が繰り広げられた。基地問題で官僚らの問題発言も相次ぎ、収賄容疑で逮捕された守屋武昌前事務次官の証人喚問では在沖米軍基地に絡む利権も取りざたされた。防衛省は問題発言した防衛政策局長ら守屋前次官側近の人事刷新に着手するなど、波紋を広げた。

 昨年九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を受け、民主党は文部科学省に審議のやり直しなどを求める国会決議可決を目指した。しかし、参院民主が慎重姿勢を崩さず、実現には至らなかった。

 一方、県民大会については福田康夫首相が十月十二日の衆院決算行政監視委員会で「十一万人の県民大会があった事実も(政府が)重く受け止める一つの理由だったかもしれない」と答弁。県民大会参加者数をめぐっては一部全国紙が主催者発表の参加者数に疑問を投げていたが、政府は「十一万人」と認めた形となった。

 教科書会社からの訂正申請を受け、十二月下旬に修正記述が確定した後も同問題をめぐる論戦は続いた。文科省の布村幸彦審議官は今月十日の参院内閣委員会で、検定意見を撤回する考えがないことを再度強調した。

 質問に立った糸数慶子氏(無所属)は「渡海紀三朗文部科学相は談話を出したが、記述改ざんの再発防止措置に触れておらず、文科省・政府の沖縄戦に対する理解に問題がある」と批判した。

 昨年十月二十九日の衆院テロ防止特別委員会では、守屋氏の証人喚問があった。在日米軍再編を主導し、県内の基地問題に精通していた守屋氏に対し、照屋寛徳衆院議員(社民)は利権疑惑を追及したが、守屋氏は「そういうことはしていない」と全面否定した。

 米軍再編では、防衛省の金澤博範防衛政策局長が十一月十六日の衆院安全保障委員会で、普天間代替施設(V字案)の運用をめぐる住宅地上空飛行に関する地元説明について「今の段階で必要ない」と明言。関係自治体などが反発した。

 在沖米海兵隊のグアム移転に伴い日米がそれぞれ整備する家族住宅の価格も問題になり、石破茂防衛相は十二月十日の決算委員会では「どう見ても高すぎる」と経費を精査する考えを示した。

 一方、福田康夫首相は十月三十日の衆院テロ防止特別委員会で、二〇〇四年に沖縄国際大に米軍大型輸送ヘリが墜落した事故について「かすかに覚えています」と答弁。

 地元からは「その程度の認識しかないのは情けない」(伊波洋一宜野湾市長)などと不満の声が上がった。(東京支社・島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_06.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 2面 

「欠陥機容認できず」/三連協、米軍に抗議文

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日に飛行を再開したことについて、沖縄、嘉手納、北谷の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は十五日、「度重なる事故を起こした欠陥機の飛行再開は容認できない」として、F15の飛行中止と、即時撤去を求める抗議文を同基地司令官などに送付した。

 三連協はF15飛行再開の連絡を受けた後、十一日に同基地を訪ね、ジョン・ハッチソン広報局長に中止の要請文を手渡していた。

 今回の抗議文では飛行が再開された十四日、F15が二度、緊急着陸したことなどを指摘。「安全性が保障されていない。入念な点検を行ったはずなのに、住民の不安を払拭していない」と反発している。野国昌春会長(北谷町長)は「F15は嘉手納基地に配備された当初から事故が多く、欠陥が指摘されてきた。飛行再開は住民に騒音と事故への不安という大きな負担を押し付けるものだ」と米軍を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月16日朝刊)

[基地負担の軽減]

現状洗い直し再論議を

 米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開した。F15の未明離陸といい今回の飛行再開といい、地域住民にさまざまな影響を与えているにもかかわらず、政府の反応は鈍い。

 この二つの事例が象徴しているのは「基地の自由使用」という古くて新しい問題だ。

 住民生活を脅かしたり不安に陥れたりするような米軍の行動や基地の運用に対して、どのようにすれば歯止めをかけることができるのか。地位協定に基づく日米協議の場は、こうした問題を解決する場として果たして十分に機能しているのか。

 基地と住民の接点で生じる摩擦の解決方法について、再度、根本のところから問い直さない限り、事態の進展は望めないだろう。

 このことは実は、県が掲げる普天間飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態の実現」とも深くかかわっている。

 沖縄返還交渉の際、米軍部が強く求めたのは、施政権返還後の「基地の自由使用」だった。行動の自由を制約されたくないという思いは、今も米軍の中に根強い。

 「抑止力の維持」「錬度の向上」「運用上の必要性」などを理由にした米軍の基地運用に対し、外務省は、それが住民生活に影響を与えることが分かっていても、「ノーとはいえない」という姿勢を繰り返してきた。

 この構図を変えるのは容易なことではない。

 沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、政府は昨年八月、普天間飛行場を離着陸するヘリの新しい飛行ルートを発表した。

 見過ごすことができないのは、この新飛行ルートに対し、防衛施設庁(当時)が「現状で取り得る最善の措置」だと指摘、この案が「三年をめどにした普天間飛行場の閉鎖」要求への回答である、と見なしている点だ。

 日米合同委員会のような既存の協議機関では、この種の問題の抜本的な解決が難しいことを示している。

 そうであるなら、県は、F15の未明離陸問題や普天間飛行場の危険性の除去問題を議論できるような新たな協議の場を日米両政府に要求すべきではないか。

 米軍再編は、基地と住民の接点で生じる摩擦の解消に、果たしてどの程度効果があるのか。米軍再編計画の影で現実に生じている被害や摩擦が放置されているのは問題だ。

 住民生活にとっての深刻度を精査し、早期解決の必要な事案をまとめた上で、あらためて負担軽減を要求する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080116.html#no_1

 

2008年1月16日(水) 夕刊 1面

F15飛行再開/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開したことを受け、北谷町議会(宮里友常議長)は十六日午前、臨時会を開き、米本国で墜落したF15の事故原因公表と即時撤去を求める抗議決議、意見書両案を全会一致で可決した。F15が県内や米本国で墜落事故を起こしていることを問題視し、「明らかに機体の老朽化や構造的欠陥がある」として飛行再開の中止を訴えている。

 F15の飛行再開に対する抗議決議は県内で初めて。同議会は、嘉手納基地司令官などへの直接抗議を予定している。

 抗議決議は、米本国での墜落事故以降、同基地所属のF15二機で機体の構造を支えるロンジロン(縦通材)に亀裂が見つかったことを指摘。「県内で八件、米本国でも過去半年間で四件の墜落事故を起こしている。構造的欠陥が原因であり、飛行再開は周辺住民に大きな不安と恐怖を与える」と強く反発している。

 飛行が再開された十四日は、F15二十四機が南北の滑走路を使用して訓練を実施したが、そのうちの二機が緊急着陸した。沖縄、嘉手納、北谷の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は十五日、「安全性が保障された飛行再開といえない」として米軍へ抗議している。

 同議会は、七日に沖縄市内で起きた米兵二人によるタクシー強盗致傷事件に対する抗議決議、意見書の両案を可決した。「北谷町でも二〇〇六年に同様の事件が発生した。依然として米軍人の犯罪は続発しており、実効性がない米軍の対応に不信感はぬぐい去れない」とし、米軍に綱紀粛正を要求した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161700_01.html

 

2008年1月16日(水) 夕刊 5面

タクシー強盗/沖縄市議会 米軍に抗議

 【沖縄】沖縄市美原で起きたタクシー強盗致傷事件で米海兵隊員二人が同容疑で逮捕されたことを受け、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十六日午前の臨時会で、被害者への完全な補償と再発防止を求める抗議決議と意見書案を全会一致で可決した。直後には、北中城村石平の米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、「今後二度とこのような凶悪事件を起こさないでほしい」と抗議した。午後には在沖米国総領事と外務省沖縄事務所を訪ね、抗議と要請を行う。

 同議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長らは「事件の再発防止など、実効性のない米軍の対応に不信感がある」と抗議した。

 応対したラリー・ホルコム大佐は「海兵隊としても驚いており、現在、事件の背景を追究している。大変申し訳なく思う」と謝罪したという。

 抗議決議では「安全であるはずの住宅街で発生した凶悪犯罪であり、被害者の心中を察すると断じて許されるものではない」と糾弾している。

 抗議決議のあて先は在日米軍司令官など。意見書のあて先は首相、外務大臣、防衛大臣など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161700_04.html

 

2008年1月17日(木) 朝刊 1・23面

審査会、書き直し要求/普天間アセス方法書

不備理由に委員総意/現況調査中止も明記

 「審査会の総意で方法書の書き直しを求める」―。米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が十六日、那覇市の県総合福祉センターであり、事業者の沖縄防衛局に対し方法書の不備を理由に書き直しを要求する答申案をまとめた。方法書手続きのやり直しを強制する法適用は避けたが、県環境政策課は答申が要求する書き直しについて「アセス調査前に一括で提出してもらう」とし、実質的に方法書の書き直しに当たるとの考えを明らかにした。答申に従えば、防衛局が意向を示している「アセス本調査の二月実施」は困難になる。

 審査会は、昨年十二月に一部県条例に基づき答申された飛行場部分と、十六日に審査された国のアセス法に基づく埋立部分を合わせて、十八日に答申する予定。答申を受けて仲井真弘多知事は二十一日、知事意見を提出する。

 答申案は、防衛局が辺野古沖などですでに実施している現況調査について、「調査を中止させる必要がある」と断定。今後、アセス本調査に反映させることを示唆している点について「本調査の実施期間は、調査項目ごとに少なくとも方法書書き直し後一年以上を通して行うべきだ」と明記する方針を固めた。

 これに対し、県環境政策課も「調査期間に関しては今後の知事意見でも一年間以上はやってもらうように述べる予定」と説明し、アセス調査の短縮化には応じない姿勢を示した。

 また、追加説明で方法書の中身を後出しする防衛局の姿勢について、委員からは「追加説明では本来方法書手続きで保証する公告縦覧が担保されない。これでは方法書に住民の意見が反映できず不十分だ」との批判が相次いだ。

 これに対し、方法書の書き直しを事業者に強制することについて同課は「答申の趣旨が知事意見に反映されれば、それは事業者としてやってもらえるものと思っている」と説明。一方、書き直した方法書の公表については、「手続き上、公告縦覧の再実施は困難」とした上で、「方法書を書き直した時点で、事業者がメディアを通して自ら公表し、住民に開示するなどの方法がある」と指摘した。


     ◇     ◇     ◇     

方法書「落第」突き付け/防衛局に不信噴出


 米軍普天間飛行場の代替施設建設問題で、県環境影響評価審査会は十六日夜の会合で、沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)方法書にあらためて「落第点」を突き付けた。委員からは「事業内容が、後出しジャンケンでまた出てくるのではないか」「振り回されている」などと不信の声が噴出。この日は出席しなかった防衛局だが、情報を積極的に示そうとしない姿勢が常に議論の“陰の主役”となった。

 知事への答申内容を議論する最後の会合。傍聴者と報道陣合わせて九十人以上が詰め掛け、那覇市の県総合福祉センターの一室は、汗ばむほどの熱気に包まれた。いすが足りず、三時間立ったまま議論の行方を見守った人も多くいた。

 委員の疑問は、十一日になって防衛局が明らかにした沖縄近海からの海砂千七百万立方メートルの採取に集まった。前門晃委員(琉大教授)は「県内の砂浜の砂がほとんどなくなってしまう。環境対策ができる量ではない。この計画は駄目だ」と危機感を示した。

 宮城邦治副会長(沖国大教授)は「防衛省には相当進んだ青写真があると思う。次の段階で内容が相当ずれる可能性がある」と、防衛局が現段階で示している概要の信頼性に疑問を投げ掛けた。

 他の委員も「防衛局が悪意を持って答申内容をとらえたら困る」「対策の検討を求めても、本当に検討するかどうか」などと発言。情報を小出しにしてきた防衛局との決定的な溝が、浮き彫りになった。

 防衛局に方法書の書き直しを求めることが法的に可能かどうかをめぐり、審査会事務局の県と傍聴席の市民団体が論争する場面も。津嘉山正光会長(琉大名誉教授)が「もともと(詳細が)方法書にないのがおかしい」と防衛局の落ち度を指摘し、審査会の総意として実質的に書き直しを求めることでまとまった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171300_01.html

 

2008年1月17日(木) 朝刊 23面

墜落同型ヘリ7機普天間に/追加配備 可能性も

 【宜野湾】沖縄国際大学に墜落したCH53D大型輸送ヘリコプターの同型機七機が十六日、米軍普天間飛行場で確認された。十五日夜に飛来した米空軍の大型輸送機C5ギャラクシーなどで輸送したとみられる。

 同型機は、部隊配備計画(UDP)の一環で、昨年十一月に四機をローテーション配備。米海兵隊報道部は一月までに、同型機十機と約百五十人の兵士らを同飛行場を含む国内にローテーション配備するとしており、今後同型機が追加配備される可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月17日朝刊)

[「集団自決」見解]

これでは予断を与える

 防衛省防衛研究所が所蔵する沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する資料に、同研究所の戦史部が渡嘉敷、座間味両島で「隊長命令はなかった」との見解を付けて公開していた。

 両島の「集団自決」をめぐって、大阪地裁で係争中の訴訟でも戦隊長命令の有無などが争点になっている。

 にもかかわらず、政府機関が原告側の主張に沿った見解だけを一方的に付けるのはバランスを欠いている。

 手記「集団自決の渡嘉敷戦」「座間味住民の集団自決」は、元大本営参謀が陸上自衛隊の幹部学校で「沖縄戦における島民の行動」の演題で講演した際の講演録に添付されていたという。

 両資料について、見解は「事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれた」と断定。渡嘉敷島巡査の証言、宮城晴美さんの著書を挙げ「命令は出されていないことが証明されている」と言い切っている。

 別の複数の資料にも、軍命を否定する「所見」や、資料評価の「参考」が付されていたことが明らかになった。

 その後、同研究所は手記に付された見解を「不適切」として削除した。

 しかし、「所見」などについては、「あくまで記述者個人の見解であり、戦史部や防衛省の見解ではない」(同研究所図書館史料室長)としている。

 こうした見解は利用者に予断を与えかねない。同研究所の公式見解と受け取る人もいるはずだ。「集団自決」の評価を一方的に押し付ける恐れがあり、配慮に欠けると言わざるを得ない。

 一九六八年に発刊された『戦史叢書 沖縄方面陸軍作戦』(防衛庁防衛研修所戦史部著)では、慶良間の「集団自決」について「戦闘員の煩累を絶つため崇高な犠牲的精神により自らの生命を絶つ者も生じた」と記されている。

 県内の研究者の間では以前から、「崇高な犠牲的精神」という表現が問題にされてきた。

 今回の教科書検定の訂正申請の際、文部科学省は専門家九人から意見を聴取したが、防衛研究所戦史部客員研究員は「軍の強制と誘導による集団自決とは言えない」との考えを伝えた。

 文科省の検定意見といい防衛研究所の見解といい、政府は一貫して日本軍の責任を希薄化する姿勢を見せてきた。沖縄地元の研究者や住民側証言との落差が際立っている。

 沖縄戦では住民を巻き込んだ激しい地上戦が展開された。「集団自決」や、日本軍による「住民殺害」が起きたことが大きな特徴である。重要な史実の評価をめぐって、国内においてさえ、こうも歴史認識が懸け離れていることに暗然とする。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080117.html#no_1

 

琉球新報 社説

続く基地被害 当事者意識のない米軍

 米空軍嘉手納基地のF15戦闘機駐機場で、航空機用発電機が排水溝に落下し、ディーゼル燃料が漏れたとみられる事故があった。最大で約246リットルが漏れ、排水溝を通じて基地外の比謝川に流出した可能性がある。

 14日からは、欠陥が疑われるF15戦闘機が県民の反対を無視して飛行を再開し、民間地域上空で爆音をまき散らしている。

 空からは爆音、陸上では燃料漏れでは、県民はたまったものではない。

 発表によると、発電機は14日午前2時ごろに駐機場に搬入され、同日午前8時半ごろ、比謝川に接続する排水溝に落下していた。

 発電機カートのブレーキの故障で、排水溝に落下したという。米軍の機器の管理・保守体制はどうなっているのだろうか。

 米軍の運用規定からすれば、タンク容量の75%に当たる約246リットルが入っていた可能性があるが、発見時にはタンクに穴が開き、中は空だったという。

 解せないのは、嘉手納基地報道部は流出した可能性がある量を最大で246リットルとしていることだ。タンクにどれだけの量が入っていたのか、関係者に話を聞けば、分かりそうなものである。

 発表時点で流出量が確定できないということは、燃料管理のずさんさを証明したことにほかならない。

 事故覚知から1日以上たって発表したことも見逃せない。あまりに遅すぎる。

 報道部は「環境にかかわる問題は在日米軍上層部に報告し、上層部から防衛省を通じ沖縄防衛局に連絡される規定なので、時間がかかった」としている。

 情報が流れる過程で、滞った部署があったとしか考えられない。スムーズにいっても、発表まで1日以上かかるとすれば、現行の報告システム自体に問題があるということである。

 影響を受ける恐れのある県民に対して即座に、知らせることが筋である。その方向で日米両政府は改善するべきだ。

 嘉手納基地は発電機落下現場や比謝川で油臭や油膜が確認されなかったとして「14日の激しい雨などで燃料は薄められたと考えられる。地域住民に危険をもたらすものではないと結論付けた」と発表した。

 事故の詳細がはっきりしない時点で、住民に危険がないと断定するのは疑問だ。

 発表は事実関係を説明しただけだった。それだけでは不十分と言わざるを得ない。

 少なくとも、地域住民に不安を与えたことに対する謝罪があってしかるべきである。文化の違いの問題ではない。当事者意識、責任感の問題である。

(1/17 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30558-storytopic-11.html

 

2008年1月17日(木) 夕刊 1面

防衛局長に真部氏就任/再編顔触れ一新

 【東京】石破茂防衛相は十七日の臨時閣議で、収賄罪で起訴された守屋武昌前事務次官に近いとされる、金澤博範防衛政策局長(52)を事実上更迭、後任に高見澤將林運用企画局長(52)を充てるなどの幹部人事を報告、承認された。同日付の発令。

 高見澤氏の後任には徳地秀士北関東防衛局長(52)を充て、徳地氏の後任には鎌田昭良沖縄防衛局長(51)を起用。真部朗報道官(50)を二代目の沖縄防衛局長に充てることを正式に決めた。真部氏が兼務していた米軍再編調整官には丸井博情報本部情報官(48)を起用した。

 今回の人事では、米軍再編で在沖米軍基地関係を担当した課長クラスも異動。米軍再編を担当する顔触れが一新する。

 真部氏は一九五七年十月生まれ、富山県出身。東大法学部卒業後、八二年防衛庁入庁。防衛政策課長などを歴任。二〇〇一年八月から〇二年四月まで内閣府沖縄担当部局にも出向、県内自治体とかかわった経験もある。


方針変更なし

石破防衛相


 【東京】石破茂防衛相は十七日午前の臨時閣議後の会見で、米軍再編を担当する幹部を一新した防衛省人事について「政府全体として今のスタンスで取り組んでいるので、防衛省として変更があるということはない」と強調した。米軍再編の在り方については抑止力維持に関する論議を重視していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171700_03.html

 

2008年1月17日(木) 夕刊 5面

嘉手納議会が抗議決議/F15飛行再開

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開したことを受け、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十七日午前、臨時会を開き、F15の飛行再開の中止と同基地からの即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。

 また今月七日から十一日まで、同基地で行われた即応訓練に対しても、町民から多くの苦情が寄せられているなどとして、同訓練を今後一切行わないことなどを求め、同様に可決した。同町議会は同日午後、同基地を訪ね、直接抗議する。

 F15に関する抗議決議では、米本国での墜落事故原因として指摘されているロンジロン(縦通材)の亀裂について、嘉手納基地所属機二機で発見され、現在もロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないなどとして、十七機の飛行停止を継続していることなどを問題視。

 「構造的欠陥を有するF15の安全性は、いかなる点検・修理を施されようが確保されるものではない」と指摘した。


沖縄市議会 抗議決議へ


 【沖縄】米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行再開した問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十七日午前、基地に関する調査特別委員会を開き、同機の全面撤退を求める抗議決議と意見書案を二十一日の臨時会に提案することを決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171700_05.html

 

2008年1月17日(木) 夕刊 5面

荷車のブレーキ原因/発電機破損

 【沖縄】米空軍嘉手納基地内のF15戦闘機駐機場近くで航空機用発電機が破損し、タンクから最大六十五ガロン(約二百五十リットル)のディーゼル燃料が基地外へ流出した可能性のある問題で、同基地報道部は十六日、発電機の破損原因が荷車(カート)のブレーキの故障だったことを明らかにした。基地外への燃料流出の有無やタンクの破損状況などについては、まだ分かっていない。

 米軍によると、専門家が発電機を調べたところ、荷車のブレーキが故障していたことを確認。そのため発電機が舗装面から排水路の溝に落ち、倒れて破損したと結論付けている。同問題について沖縄市と嘉手納町は同日午前、担当者が事故現場周辺の比謝川流域の環境調査を目視で行ったが、油膜や油のにおいは確認されなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171700_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月18日朝刊)

[アセス審査答申]

やはり書き直しが必要だ

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う防衛省の環境影響評価(アセスメント)方法書について、県環境影響評価審査会は、きょう仲井真弘多知事に審査会としての意見を答申する。

 方法書の書き直しを求める厳しい内容の答申になりそうだ。

 答申案取りまとめの段階で吹き出したのは、沖縄防衛局のこれまでのやり方、方法書の内容に対する不信感や疑問、強い調子の批判だった。

 沖縄防衛局は十一日、百五十ページ余の追加資料を審査会に提出した。埋め立てに用いる土砂のうち約千七百万立方メートルは、本島周辺の海底土砂を購入し使用することがこの時、初めて明らかになった。この事実は重大だ。

 環境への影響が懸念されるこれほどの内容であれば、当然、方法書作成の最初の段階で盛り込み、公告・縦覧に供した上で、住民等の意見を聞くべきであった。にもかかわらず、審査終盤のこの時期に提出したことは、方法書そのものの重大な瑕疵だと言わざるを得ない。

 市民団体の計算によると、この海砂量は、海岸線から百メートル沖までの砂浜の砂を一メートルの深さで延長百七十キロにわたって掘り取った量に相当する。

 しかも、海砂の採取場所も採取方法もまだ決まっていないという。

 もし、事業の熟度がアセス方法書を審査する段階に至っていないのであれば、事業計画の具体的内容が明らかになるまで待ち、その段階で再度、手続きをやり直すのが筋である。

 法や条例で規定する事項が一応記載されているにしても、形式的要件だけを具備すればいいというものではないからだ。

 このような重要な問題が資料の追加によって処理されれば、環境アセスは結局、形骸化せざるを得ないだろう。

 埋め立て区域の護岸の工法について沖縄防衛局は、三案を検討した結果、二〇一四年までに完成させるため工期が最も短い方式を採用した、と説明している。

 工期よりも大事なのは環境である。工期に間に合わせるために環境問題を後回しにするようなことがあれば、それこそ問題だ。

 審査会の答申を受け、仲井真知事は二十一日に沖縄防衛局に意見を提出する。

 昨年十二月に提出した知事意見は、県条例の対象となる飛行場部分、今回は環境影響評価法が適用される埋め立て部分に対する知事意見である。

 専門家の集まりである審査会の答申を尊重し、知事は方法書の書き直しを明確に求めるべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080118.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間アセス 環境軽視の姿勢を改めよ

 県環境影響評価審査会が16日、普天間移設先の環境アセスに、再審査を求めた。理由をひと言で言えば、沖縄防衛局が出したアセス方法書が「ずさんすぎる」からだ。方法書からは移設優先、環境軽視の国の姿勢も透けて見える。猛省を促したい。

 再審査を求めた審査会の答申は冒頭、普天間代替施設建設に伴う埋め立て事業を「現況の自然への回復が困難な不可逆性の高い事業」と位置付けている。

 その上で「現在事業者が実施している環境現況調査は生物的環境への影響が懸念されることから、影響を十分に検討させた上で中止させる必要がある」と明記している。正論である。

 名護市東海岸のキャンプ・シュワブ沖への普天間代替施設建設では、広大な沿岸海域の埋め立てが予定されている。

 同海域には米国の環境機関も「保護」を求める天然記念物のジュゴンが生息している。それだけでも矛盾を抱えている。

 沖縄の財産である豊かな海を埋め立て、米軍基地を造るのは日本政府、防衛省である。しかも、日本国民の税金を投入してである。

 深刻な環境破壊が指摘され、計画中止を求める中で、建設が強行される。にもかかわらず、沖縄防衛局が出した基地建設に伴う環境影響評価方法書は、当初わずか7ページにすぎなかった。

 審査会が、審議で説明を求めるたびに「新事実」が飛び出した。

 15日には、代替施設建設のために使用される海砂の量が、現在の採取量の12年分に相当することも、審査の過程で表面化した。

 1700万立方メートルもの海砂採取で、「約170キロメートルの海岸線で砂がなくなる」「自然の砂浜がなくなってしまう」と、環境保護団体からは強い懸念と抗議の声も出ている。

 一事が万事である。観光立県・沖縄は、青い海、白い砂浜が観光資源である。本紙社会面に連載中の「やんばる 光と影」では、砂が減り産卵場所を失いつつあるウミガメの現状が報告されている。

 環境省の過去の海浜調査では、1978年度から18年間で沖縄では82キロメートルの砂浜が消え、人工護岸が急増していた。

 基地建設も含め、埋め立て事業による海砂の過剰採取に、そろそろ歯止めも必要であろう。

 代替施設建設では、陸域の造成、土砂採取も予定されている。影響は海にとどまらない。破壊を食い止めるために「アセス」がある。

 今回の答申で巨大な基地建設が爆音や演習被害、墜落事故などの危険にとどまらず、沖縄全体の自然環境への甚大な影響も指摘された。

 審査会の答申を、国はもちろん、県知事も真摯(しんし)に受け止めるべきである。

(1/18 10:10)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30593-storytopic-11.html

 

2008年1月18日(金) 夕刊 1面

書き直し求め答申/普天間アセス

県も防衛局批判

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十八日午前、「アセス調査前に方法書を書き直し、公表・審査等の措置を取らせるべきだ」とし、調査前の方法書の書き直しと追加分の公表を求める三十七項目の意見を仲井真弘多知事に答申した。答申を受け取った知念建次文化環境部長は「答申の直前に事業の根幹に当たる資料が提出されたことは遺憾」と資料を後出しした沖縄防衛局の対応を批判した。

 県は知事意見を二十一日に沖縄防衛局に提出する見通し。

 答申では、方法書の著しい不備を指摘し、「書き直しさせる必要がある」と断じた。また、沖縄防衛局がアセス前に予定地周辺海域などで実施している現況調査についても「ジュゴンやサンゴ類等の生物的環境への影響が懸念されることから中止する必要がある」と要求した。

 津嘉山会長は「方法書で具体的な内容がなく、審査できない状況だった。ぜひ今後、きちんと審査ができる形で出してもらいたい」とし、方法書書き直しの実効性について県に協力を求めた。

 知念部長は「答申の趣旨はよく理解している。知事意見に対しても、沖縄防衛局に対してもきちんと申し入れする」と述べ、書き直しの実効性の担保を求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801181700_01.html

 

2008年1月18日(金) 夕刊 1面

米軍再編 前政権を踏襲/福田首相施政方針

 【東京】福田康夫首相は施政方針演説で、在日米軍再編の取り組みについて「抑止力維持と負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾けつつ地域の振興に全力をあげて取り組みながら、着実に進める」と表明した。

 沖縄への言及はこの部分のみで文言は安倍晋三前首相による昨年の施政方針演説とほぼ同じ内容。米軍普天間飛行場の移設問題で沖縄側との「対話路線」を進める福田政権だが、国会冒頭で表明する基本方針に当たる演説では前政権の姿勢を踏襲した格好だ。

 二〇〇六年一月の小泉純一郎元首相の演説では、米軍再編のほか、沖縄科学技術大学院大学設立に意欲を示す発言もあった。

 地方再生では「観光の振興は地方活性化の目玉」と位置付け、政府内に「観光庁」を設置する方針を説明。海外から観光客を呼び込む取り組みを強化する方針を示した。

 外交分野への言及では、「日米同盟はわが国外交の基軸であり、信頼関係を一層強めていくとともに、その基礎となる人的・知的交流をさらに進める」と指摘し、日米関係を引き続き最重要視する考えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801181700_02.html

 

2008年1月18日(金) 夕刊 1面

金武議会 訓練中止決議/都市型施設移設遅れ

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」にある米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設の移設作業が遅れている問題で、同町議会(松田義政議長)は十八日午前、レンジ4施設の暫定使用の即時中止と施設の解体・撤去を求め、基地機能強化に反対する抗議決議と意見書、要請決議を全会一致で可決した。

 抗議決議では、「政府と米軍は、町民の置かれている状況と度重なる抗議を無視し、軍事演習を昼夜分かたず実施し、同施設から派生する住民の不安・恐怖は悪化の一途をたどっている」と指摘。「現状が引き延ばされるのは、町民を愚弄した人権感覚の欠落した差別行為だ」と政府と米軍の対応を厳しく批判した。

 同施設は二〇〇七年度内で移設を完了する予定だったが、沖縄防衛局は金武町に対し、米軍との調整が難航し、〇九年度中ごろまでずれ込むと説明している。

 さらに、「レンジ3」付近で二月にも着工が予定されている最大千二百メートルの射程に対応するグリーンベレーの小銃(ライフル)用射撃場の建設についても、中止を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801181700_03.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 1面

陸自、3月訓練開始 ハンセン共同使用

来月にも日米合意

 【東京】在日米軍再編に伴う陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の米軍キャンプ・ハンセン共同使用に関し、政府は十八日までに、日米地位協定第二条四項aに基づく共同使用手続きに着手した。二月までに使用エリアの共同使用について日米合意し、閣議決定する予定。これを受け、陸自は三月中に訓練を開始する見通しだ。訓練開始で共同使用は「完了」とみなされ、米軍再編の進ちょくに応じて同基地を抱える三町村に支払われる「再編交付金」は、二〇〇八年度に上限の約二億円が支払われることになる。

 防衛省は、米軍が使用しない期間を前提に、陸上自衛隊第一混成団が九州の演習場で行ってきた中隊規模程度の訓練を、キャンプ・ハンセンで実施するとしている。

 共同使用では、ロープ降下、警戒・防護、行進などを中心とした戦闘訓練を、二百人程度の部隊が二十一週間ほど金武町と宜野座村のエリア内で実施。

 また、レンジ3、4を除く金武町エリア内の既存射撃場で百人程度が九週間、小火器などを使用した射撃訓練を行う。

 さらに、金武町と恩納村の計二カ所の施設で最大百人が年一週間程度、不発弾処理などの訓練を行うという。

 三月に実施する訓練は予算をそれほど必要としないロープ降下、警戒・防護、行進などの比較的軽度なものとみられ、射撃訓練は〇八年度以降となる見通しだ。

 儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長は昨年十一月十三日、負担増になるとして反対していた従来の姿勢を一転させ、共同使用を受け入れると発表。

 これを受け、防衛省は十二月、再編交付金について、四段階に分けられる米軍再編の進ちょく状況のうち、第一段階の「受け入れ」を満たしていると判断。上限額の10%分(二千万円)を〇七年度分として内定した。

 再編交付金について定めた「米軍再編推進法」は省令で、四月一日時点の進ちょくを基準に、その年度の交付額を決定するとしている。三月末までに訓練を開始して共同使用の実績をつくれば第四段階の「再編の完了」が満たされ、〇八年度は上限の約二億円になる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_01.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 1面

検定撤回実行委解散 自民が方針

県連提案へ「役割終えた」

 自民党県連(外間盛善会長代行)は十八日、議員総会を開き、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)について、「記述が修正され、一定の成果を得た。県民大会実行委の役割は終え、活動に区切りをつけるべきだ」として解散を求める方針を決めた。

 十五日に実施した政府への要請行動を報告する次回の実行委の幹事会などで、幹事を務める同県連の伊波常洋政調会長が解散を提案する見通しだ。

 議員総会では、「記述の訂正で、県民大会の決議は事実上認められた」「今後の問題は、実行委を解散して、対応を検討すべきだ」などの意見が出たという。

 一方、実行委の仲里委員長は十五日の要請で、「検定意見の撤回は絶対に譲れない。撤回に向けて今後も取り組み続ける」と発言していた。

 仲里委員長は十八日、沖縄タイムス社の取材に対し「(自民県連からの要請があれば)多くの方々の意見を聞いた上で、実行委員会の中で協議していきたい」と語った。

 県選出・出身の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)も検定意見撤回に向けた協調に慎重な姿勢を示しており、自民党県連の実行委の解散提起で、今後、超党派の要請行動は困難になるものとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_02.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 27面

「民意に背向けるな」/実行委員らが反発

 「到底県民には受け入れられない。民意に背を向けるわけには行かない。解散はありえない」。小渡ハル子県婦人連合会長と玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長の実行委両副委員長は強い口調で解散を否定した。

 「昨年末、実行委員会存続を確認したばかり。結果が不十分だったから先日も東京行動した。その直後に、なぜ一定の成果があったと言うのか」と玉寄副委員長。小渡副委員長は「何の権利があって解散を求めるのか」と声を荒らげた。

 青春を語る会の中山きく代表(白梅同窓会長)は「教科書執筆者が今後も訂正申請を出すと聞き、心強く感じていただけに驚いた。ここで解散したら、沖縄の思いはその程度だったのかと言われる」と、声を落とした。

 「教育にかかわる問題なのだから、もっと長い目で見なければならない」と、県PTA連合会の諸見里宏美会長。「私たち大人は、毅然とした態度を示す意味でも、簡単には妥協できない」と決意を新たにした。

 座間味の体験者宮城恒彦さん(74)は「教科書問題は、県民の問題で、自民党の問題ではない。ここで解散してはいけない。教科書執筆者は十一月に、また訂正申請をしようというのに、地元沖縄でこんな足をすくうようなことをしてはいけない」と語気を強めた。

 教科書検定撤回運動に取り組んできた琉球大学の山口剛史准教授(36)は「四月から使う教科書は、県民大会で求めたことが一切認められていない。政党としての判断はあるだろうが、県民の願いや本当の利益を考え、県民の声を正面から受け止めてほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_03.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 27面

ツアー企画 戦跡ガイド 神奈川在住・外間さん

 県外の高校生らが参加した「平和といやしの島々めぐりの旅」の一行三十四人が十八日、南風原町の南風原陸軍病院壕や糸満市摩文仁の「平和の礎」の戦跡を巡り、沖縄戦への理解を深めた。神奈川県在住で、八重瀬町東風平出身の元高校教師、外間喜明さん(63)が「沖縄と本土の平和の懸け橋になりたい」とツアーを企画、三年前から取り組んでいる。

 陸軍病院壕前では、外間さんが十九歳で亡くなった沖縄師範本科四年生の宮良英加さんが米兵の捕虜に食糧を与えたエピソードを紹介。「平和主義者で、『戦争のない時代に生まれたかった』と言った彼の存在を広めたい」と語った。壕で亡くなった宮良さんの無念の思いを「生きたくても、生きられなかった」と話し、涙した。

 高校一年生の岡本いずみさん(16)は「壕の中は怖くて、こんなことがあったんだって驚いた。人を変えてしまう戦争をしてはいけないと思った」と話した。

 一行は、二十一日まで県内各地の戦跡などを回る。二十日には宮良さんの出身地の石垣市で当時を知る友人や、おいと交流する。

 沖縄戦で父と兄を亡くした外間さん。沖縄を紹介する本を自費出版するなど、平和活動に取り組んでいる。「平和と命の尊さを確認する旅にしたい」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_11.html

 

琉球新報 社説

首相施政方針 「国民本位」は当然/普天間問題でも誠実対応を

 「国民」が計50回も登場し、「環境」は23回使われた。18日午後、衆院本会議で行われた福田康夫首相就任後初の施政方針演説である。「国民本位の行財政への転換」を強調し、国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるためとしてかなりのスペースを割いた。さらに「低炭素社会への転換」として地球環境問題への取り組みに力を入れることを宣言した。

 「福田カラー」が見えないと批判され続けた首相が打ち出した二本柱と言えそうだが、「国民本位」も「環境問題」もあまりに当然すぎる政治姿勢であり、国民には強烈なメッセージとして伝わってこない。

指導力を発揮せよ

 「国民本位」化として、食品表示などに絡む偽装問題が続発する中で消費者行政担当相の常設を打ち出したのは意欲的に見える。これは将来、「消費者庁」創設を念頭に消費者行政を一元化する狙いがある。食品表示偽装の背景には、内閣府や厚生労働省、農水、経済産業省などが絡む縦割り消費行政の弊害があるため、一元化によってその弊害をなくそうという判断だろう。

 それはいい。しかし実現の可能性はというとかなり厳しそうだ。施政方針では「すでに検討を開始しており、なるべく早期に具体像を

固める予定です」と表現した。組織防衛に腐心する関係府省が、やすやすと一元化の流れに乗るはずがない。具体案を示せなかったのは、調整が早くも難航していることの証左であるという指摘もある。

 反発の強い関係府省を説き伏せ、一元化し得るのか。それは首相が強烈なリーダーシップを発揮できるかどうかにかかっている。「相手の話を聞く」姿勢を堅持する首相だが、それは相手による。国民のためとなれば、少々強引な進め方も決断しなければならないだろう。妥協に妥協を重ねて、実効性のないスローガンだけを掲げる結果にだけはしてほしくない。

 今国会最大の焦点になる揮発油税率について首相は「現行税率を維持する必要がある」と訴えたが、その理由については道路整備事業や温暖化対応について説明しただけで、重い負担を続ける国民にとっては物足りない。民主党が展開する「ガソリン値下げ隊」の方が消費者の心にすっと入ってきそうだ。維持の姿勢を堅持するのなら、より分かりやすい説明を求めたい。

 「低炭素社会への転換」は、7月に開催される主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)をにらんでのことだろう。その前提になるのは京都議定書による温室効果ガス6%削減の約束履行である。しかし、それは困難視されている。

 施政方針では、本年度中に京都議定書の目標達成計画を改定して取り組むとしたが、遅きに失した感もある。とは言え、地球環境問題への取り組みは人類の義務である。

不誠実ではないか

 演説では明治時代の著名な農村指導者である石川理紀之助の「何よりも得難いのは信頼である。進歩とは、厚い信頼でできた巣の中ですくすく育つのだ」という言葉を引用し、政治への信頼回復の重要性を強調した。その上で、「信頼という巣を、国民と行政、国民と政治の間につくってまいりたい」と述べた。確かに国民と政治が相互理解という絆(きずな)で結ばれるのは「信頼」であろう。逆に政治が信頼を失うのは、公約違反、不誠実な対応、裏切りである。

 沖縄の米軍基地問題では、政府の不誠実な対応が露骨に見えてくる。普天間移設先の環境影響評価(アセスメント)問題もそうだ。県環境影響評価審査会に諮問された方法書は薄っぺらであまりにもずさんなものだった。移設ありきで、環境軽視の政府の姿勢は、「地球環境問題への真摯(しんし)な取り組みが必要です」と述べた首相演説と矛盾する。

 さらに「自立と共生」を掲げる首相ならば、米軍基地の大部分を沖縄に押し付ける現状は「共生」とは認め得ないであろう。

 支持率浮揚のために「国民本位」を連呼して、関心を引きたいのは分かる。その姿勢が国民生活の現実を踏まえ、腰を据えた真剣なものなのかどうかは今後の具体化にかかっている。

 株価低迷、原油高騰、格差問題、不安定な雇用など、マイナスの要素は数多くある。政治が信頼を得るためには、これらを克服し、活力ある国民生活を実現する以外にない。

(1/19 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30617-storytopic-11.html

「環境影響 懸念続出/普天間方法書審査会に説明」「米軍基地でパワハラ/従業員150人 抗議の署名 」「沖縄戦1フィート運動の会/25周年で毎月上映会 」沖縄タイムス、琉球新報社説「新テロ法再議決 強行と言わざるを得ない 」 (1月12日から15日)

2008年1月12日(土) 朝刊 1面

答申直前資料150ページ追加/普天間アセス方法書

1700万立方メートル海砂本島内調達・護岸工期5年

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の審査をめぐり沖縄防衛局は十一日、著しい内容の不備を指摘されている方法書を追加説明した。代替施設本体の埋め立て工法や作業ヤードの面積、工事用資材を運ぶために新設する道路のルートなど五項目約百五十ページに及ぶ資料を新たに提示。埋め立てに必要な海砂千七百万立方メートルは本島から調達することを初めて明らかにした。本体埋め立ては護岸の施工計画三案のうち、最短工期(六十カ月)の施工案を検討している。

 宜野湾市内で開かれた県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)で、説明した。本来方法書に記載されるべき内容を、知事意見の提出締め切りを今月二十一日に控えたアセス審査の終盤で提示した沖縄防衛局の対応に、委員から「アセス審査をないがしろにしている」など批判が相次いだ。

 追加説明で明らかになったのは(1)代替施設本体の工事計画(2)作業ヤードの面積および検討案(3)工事用仮設道路のルート案(4)埋立土砂の採取区域(5)美謝川切替ルート案―の五項目。代替施設本体については護岸工法の違いで三案を提示。防衛局は「二〇一四年までの完成からすると工期は五年間となり、もっとも工期の短い案を具体的に検討している」とした。

 作業ヤードは、辺野古漁港の辺野古地先水面と、大浦湾西海岸海域でそれぞれ約五ヘクタールの埋め立てを検討。作業ヤードから代替施設本体に資材などを運搬する工事用仮設道路はキャンプ・シュワブの敷地境界沿いに敷設を予定している。

 埋め立てに必要な土砂のうち千七百万立方メートルは本島海岸の海砂を充てることを想定。ほか二百万立方メートルは辺野古ダム周辺約七十ヘクタールの範囲から採取を検討しているとした。

 委員からはこうした追加説明の在り方が、法的に事業者に方法書のやり直しを要求できる「大規模な事業の変更」に当たるとの指摘も出た。県環境政策課は「アセス法の解釈を環境省と協議したが、やり直しには当たららない」との見解を示した。審査を傍聴した環境団体から「法の解釈は審査会が行うべき」「やり直しできるという専門家の見方もある」など異論が噴出した。

 同審査会は十六日に方法書について最終の答申案を検討する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_01.html

 

2008年1月12日(土) 朝刊 27面

環境影響 懸念続出/普天間方法書審査会に説明

 「事業、環境調査の中身をしっかり示すべき」「アセス方法書の再提出を」。沖縄防衛局は十一日、米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴う河川や海(公有水面)の埋め立ての詳細を、県環境影響評価審査会に説明した。埋め立てに、県内で採取した千七百万立方メートルの海砂の使用を予定するなど、初めて明らかにされる施工案。審査委員や傍聴した市民から、環境への悪影響を懸念する声や厳しい意見が相次いだ。

再提出要求も


 大浦湾周辺に三カ所の作業ヤード、海上ヤードをつくり、二千百万立方メートルの土砂で埋め立てる。辺野古ダム周辺の水源涵養林約七十ヘクタールからも約二百万立方メートルの土砂を採る―。防衛局の小柳真樹調達部長は約一時間、図面を示しながら埋め立て作業を細かく説明した。

 「ダンプカー約三百四十万台分の海砂を県内で採取した場合の環境への影響も考えなければ」。委員からは大量の海砂を県内で調達する計画に不安の声が上がった。

 埋め立て区域の護岸の工法について、三案を検討した結果、二〇一四年までの完成のため工期が最も短い方式を採用したとの説明に、「工期を短くすることが第一という印象だ。別の方法も考えるべきで、計画の熟度が低い」「五年という工期には無理がある」などの批判が相次いだ。

 「審査に必要な情報の提供を、審査会から防衛局にお願いするという構図はおかしい」「事前に十分な説明をして、私たちに意見を述べさせる考えはあるのか」。情報提示に消極的な防衛局の対応に不信感をあらわにする声も。

 沖縄防衛局は「手続きはきちんとしたい」「今後は日米で協議中の事項についても、情報を出していきたい」と繰り返した。

 傍聴した沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員の真喜志好一さんは「主権者としてどうしても言いたい」と立ち上がり、「事業計画に重大な変更がある。アセス法に則り、方法書の再提出を」と訴えた。平和市民連絡会の当山栄事務局長は「有害な基地をつくるために、有益な沖縄の自然が損なわれる実態がより明らかになった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_02.html

 

2008年1月12日(土) 朝刊 1面守屋色一掃へ大幅人事/沖縄局長に真部氏

 【東京】前防衛次官汚職事件に絡み、石破茂防衛相は十一日、金澤博範防衛政策局長や門間大吉審議官ら米軍再編を担当する主要ポストを中心に大幅な人事刷新する案を内定した。鎌田昭良沖縄防衛局長も北関東防衛局長に異動、後任は真部朗報道官。十七日付の発令。主要ポスト総入れ替えの異例人事に省内から米軍再編への影響を懸念する声も上がっている。

 金澤氏らは収賄罪で起訴された前事務次官の守屋武昌被告が重用してきた「守屋ライン」とされ、米軍再編の対米交渉や県内自治体説得を担当。「守屋色一掃」の狙いがあるとみられる。

 石破氏は米軍普天間飛行場移設問題などの実務を担当する課長クラスまで入れ替える予定。筆頭局長の金澤氏の後任には高見澤將林運用企画局長をあてる方針だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_03.html

 

2008年1月12日(土) 朝刊 1面 

本紙「集団自決」問題報道 新聞労連大賞受賞

 新聞労連は十一日、「第十二回新聞労連ジャーナリスト大賞」を、沖縄タイムス「集団自決」問題取材班の長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」と琉球新報取材班の教科書検定問題に関する一連の報道、朝日新聞連載「新聞と戦争」に決定したと発表した。

 沖縄タイムスの受賞理由として「党派を超えて結集した沖縄県民の運動と一体となって時代を動かした。教科書改ざんの動きを新聞と市民がスクラムを組んで押し返す画期的な足跡を残した」と評価した。

 謝花直美編集委員は「心痛を抑え体験を語った体験者と歴史を歪曲させないと立ち上がった県民とともに受賞したという思い。しかし、県民が求めた検定意見の撤回はされず、軍強制の記述も認められていない。受賞は道半ばで、全国の新聞労働者と連帯しながらこの問題を考えるきっかけにしたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_12.html

 

琉球新報 社説

新テロ法再議決 強行と言わざるを得ない

 新テロ対策特別措置法は11日午後の衆院本会議で、出席議員の3分の2以上の賛成多数で再議決、成立した。再議決による成立は57年ぶりであり、極めて異例の事態だ。しかし果たして、それほどの重要な法案だったのか甚だ疑問が残る。国会での論議は十分深まらず、国民の圧倒的支持を得たわけでもない。強行な再議決と批判されても仕方あるまい。

 新法のポイントは(1)国際社会の平和と安全の確保に資する(2)活動はテロ対策海上阻止活動に従事する諸外国軍隊の艦船への給油と給水に限る(3)首相は実施計画の閣議決定や変更、活動の終了を国会に事後報告―などである。

 燃料の使途について昨年9月、NPO「ピースデポ」が軍事転用されたとの疑惑を示し、憲法に抵触する恐れがあると指摘した。新法について日本政府は、米政府との交換公文に「目的外使用の禁止」明記を求めたが、米側は拒んだ。燃料が軍事転用される恐れは十分にある。

 さらに新法では、前法にはあった自衛隊派遣の国会承認条項が削除された。これが最大の問題点である。国会が事実上、自衛隊派遣の是非を判断できなくなったわけで、文民統制が崩れる恐れがある。国会を軽んじた対応といえよう。

 政府は度々「テロとの戦い」と説明する。しかし、米国主導の対テロ戦争に正当性があるのだろうか。しかも、米側は給油活動再開にさほど関心を持っていないという指摘もある。日米首脳会談でブッシュ大統領は「早期再開への希望」という柔らかい表現を使った。米国追従、必要以上の配慮という日本の愚直な対応が目につく。

 民意はどうか。昨年12月に実施された全国世論調査では、衆院が再議決して成立させることについて賛成41・2%、反対43・6%で拮抗(きっこう)した。支持が広がらないままに再議決した与党は、今後、国民の批判を浴びよう。

 繰り返し指摘されているが、現在の衆院の与野党構成は、小泉純一郎元首相が郵政民営化の賛否を争点とした結果である。

 57年ぶりの異例の再議決をするからには、同問題を争点に掲げて民意を問うべきであった。さらに指摘すれば、日本が現憲法下でなし得る国際貢献の在り方について徹底的に議論するべきだった。今国会は、その好機であった。残念ながら国会は、前防衛事務次官の汚職事件、政治家と防衛商社幹部らとの宴席同席問題が中心となり、議論は深まらなかった。

 新法は1年で失効する。この時、さらに1年以内の延長か廃止か判断することになる。新法が成立したからといって議論を止めず、国民の圧倒的支持を得られる国際貢献を探り続けるべきである。

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http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30439-storytopic-11.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 23面

米軍基地でパワハラ/従業員150人 抗議の署名

 基地従業員が働く米軍基地の警備部門で、「幹部らによるパワーハラスメント」の訴えが広がり、署名活動に発展している。要員の過半数に当たる百五十人が署名し、調査や処分を求めて昨年十二月に沖縄防衛局に提出した。九カ月間仕事を何も与えられない、大声で罵倒されたり侮辱されたりなどのストレスから精神疾患に陥り、配転や休職を余儀なくされた人たちがいる。防衛局は事態を重視、米軍と合同で調査に着手する。一方、幹部側は「事実ではない」と反論している。(阿部岳)

 「在沖米海兵隊憲兵隊日本人警備大隊」は、日本人の大隊長以下約二百三十人の基地従業員で構成。米軍人である憲兵司令官の指揮下にあり、各基地ゲートで警備に当たる。

 署名は、基地従業員の幹部複数による「地位を利用した嫌がらせ」「日常生活をも脅かすパワーハラスメント」を訴える内容。昨年十一月から十二月にかけて隊員百四十人と元隊員ら十人が署名し、多数の被害報告も寄せられた。

 隊員だった男性(41)は二〇〇六年の約九カ月半の間、理由を明らかにされぬまま「事務所待機処分」を命じられた。出勤しても警備に出られず、毎日八時間ただ机に向かって座っていることを求められたという。

 「新聞や本を読むことも禁じられ、警備のテキストをずっとノートに書き写した。土を掘ってまた埋め戻すような作業で、精神的に参ってしまった」と語る。〇七年三月に自殺を試みて意識を失ったところを家族に助けられ、一命を取り留めた。

 「標的にされた理由は分からない」という。出勤停止などの処分も受け退職寸前だったが、全駐労の抗議もあり、今は基地内の別の職場で働く。

 大隊の訓練を担当していた別の男性従業員(30)は昨年四月にうつと診断され、休職した。米兵を含む上司から、命じられた訓練計画書を何度仕上げても受け取ってもらえないなどの「いじめ」に遭ったと訴える。

 「次は何の嫌がらせをされるか、と下ばかり見ていた。最悪の職場環境だった」と男性。取り下げたはずの辞職届が意思に反して受理され、「退職」の形にされたため、現在不服申し立ての手続きをしている。

 ほかの隊員からも「ストに参加しないよう脅された」「突然羽交い締めにされた」「銃を持つ職場でもめ事は怖い」などの声が上がっている。

 一方、幹部の一人は「職務に懸命で、『いじめ』に使う労力はない」と事実関係を否定。「上司に改善を求めず、外部に訴えるやり方に戸惑いを感じる」と話した。

 沖縄防衛局は、米軍と合同の調査に向け協議を進めている。「大変重要な問題であり、事実関係を確認し、実態を把握した上で適切に対応していく」と説明。米海兵隊報道部も「警備大隊の隊員の訴えは把握している。防衛局と緊密に連携して調べる」としている。

 全駐労マリン支部の仲里修委員長は「他の基地職場と比べても労務管理があまりにひどく軍隊式で、実際にうつ発症が増えている。組合としても重大な関心を持って対処する」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_01.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 23面 

合祀取り下げ訴訟/原告支援へ組織発足

 靖国神社に肉親を合祀されている沖縄戦の遺族らが、合祀の取り下げを求める訴訟の提起に向けて、五人の原告を支援する「共に歩む会」(海勢頭豊共同代表)が十二日、発足した。那覇市前島の船員会館で立ち上げ式が開かれ、沖縄国際大学の石原昌家教授が記念講演。「援護法は日本政府の戦争責任を免責し、提供者をいや応なく靖国神社に合祀するシステム」と指摘し、「今、援護法の壁を乗り越えていけるのがこの訴訟だ」と語った。

 石原教授は、援護法の制定をめぐって当時の日本遺族会の代表が、公聴会で国家の戦争責任を問い、国家補償を求めて「援護」には反対していた経緯を紹介。「援護法によって沖縄や日本の遺族会の戦争体験は塗り替えられた。国家に戦争責任を負わせることができるかどうかの分岐点だった」と述べた。

 与党の賛成多数で援護法が制定された後は、国会で適用範囲の拡大を求める修正が続いた。石原教授は「援護法の『援護』という言葉には、靖国をめぐる戦後日本の国の姿を決定付ける、巧妙に国民の意識を操作するからくりが内包されている」と語った。

 原告の代表となる川端光善さんは「(亡くなった家族の名前が)靖国神社の名簿に記載されている間は、再び戦争をできる国づくりに利用されているようで気が重い。合祀の取り下げが実現すれば、私の戦後は終わると思っている」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_03.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 22面

沖縄戦1フィート運動の会/25周年で毎月上映会

 十二月で二十五周年を迎える「こどもたちにフィルムを通して沖縄戦を伝える会」(通称・沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会、福地曠昭代表)は、会の活性化を目指し、今年は毎月各地で上映会を開くことにしている。

 寄付金などで運営している同会は、資金難でここ十年ほど新たな記録フィルムを入手できないでいる。二十五周年を機に、県民の関心を呼び起こし、新たなフィルムの入手につなげ、会の活動を充実させたいとしている。

 同会が発足した二十五年前も、教科書から日本軍による住民虐殺が削除される問題が起こっていた。福地代表は「子どもたちに戦争の実相を正しく伝えたいと始めた運動。今も教科書問題が尾を引いており原点に返った活動をしていきたい」と意気込みを話した。

 これまでは、主にアメリカの国立公文書館やイギリスの帝国戦争博物館などから約十一万フィートの記録フィルムを買い取った。今後は、ワシントンやハワイなどからもフィルムを入手したい、としている。また、県立公文書館とも連携を図れないか模索中だ。


きょう那覇市 来月は大宜味


 今月の上映会は、十三日午後一時半から那覇市中央公民館で、記録フィルムを編集した映画などの上映会を行う。二月は大宜味村、三月に渡嘉敷島、四月に読谷村、五月は県内各大学での上映会を予定している。

 そのほか、六月二十三日に記念誌の発行、十二月に記念式典などを計画している。問い合わせは同会、電話098(862)2277。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_05.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 2面

官邸主導 “守屋色”一掃/防衛省人事刷新

 守屋武昌前防衛次官の汚職事件に絡み、防衛省は守屋氏側近の人事刷新に踏み切った。一義的には“守屋色”を一掃し、組織改革を進める狙いだとされる。同時に、地元とのあつれきを生みながら在日米軍再編を強力に進めた守屋氏の手法を受け継ぐ面々を排除し、米軍普天間飛行場の移設問題を円滑に主導したい首相官邸の意向が反映された格好だ。普天間移設で防衛省と対立してきた内閣府からは、「県へのお土産になる」と歓迎する声が上がる一方、課長クラスにまで及ぶメスの入れように、再編への影響を懸念する声も漏れる。(東京支社・島袋晋作)

 「普天間は防衛省の人事が終わってからだ」

 今月初旬、首相官邸を訪れた政府高官に、二橋正弘官房副長官が意味深げに話し掛けた。

 普天間移設で地元との融和路線を敷く二橋氏は、北部振興事業費を「凍結」するなどして受け入れを迫る防衛省側と就任直後から対立していた。業を煮やした二橋氏が、「守屋派」更迭を強く働き掛けたとされる。

 官邸は、新テロ対策特別措置法成立後の最重要案件に、膠着する米軍普天間飛行場の移設問題を位置付けている。今回の人事は、「官邸主導」をより明確にし、移設作業を加速するための布石とみられている。

 防衛省が人事を内示したのは、対テロ新法を再議決した十一日の衆院本会議終了直後。強い影響力を持つ幹部らの突然の異動情報は瞬く間に広がり、省内は騒然とした。

 「一生懸命やってきたつもりだが大変残念だ。このままでは普天間は絶対に動かない」。人事を宣告されたある幹部は無念そうに語った。


「増田カラー」


 対象となったのは金澤博範防衛政策局長、門間大吉大臣官房審議官ら、米軍再編などで守屋氏が重用したメンバーだ。

 金澤氏は昨年九月に就任したばかりだった。わずか三カ月余での筆頭局長交代は極めて異例。守屋氏の肝いりで新設された米軍再編担当審議官の門間氏も、出身の財務省へ異動となった。在沖米軍基地関係の実務を担当し、何度も沖縄入りした辰己昌良地方協力企画課長も外れ、沖縄関係の顔触れは一新された。

 代わって、防衛政策局長には高見澤將林運用企画局長、高見澤氏の後任は徳地秀士北関東防衛局長が内定した。

 高見澤、徳地氏は、増田好平事務次官とともに海外留学経験がある「国際派」だ。中でも高見澤氏は増田氏に近く、省内では「『増田カラー』を打ち出した人事」との見方もある。


行政の連続性


 「守屋ラインを一掃できるか見ものだ」

 ある県幹部は、防衛省の一月人事に早くから注目していた。

 県側の期待感を見透かしていたように、内閣府沖縄担当部局の幹部は「次回の普天間移設協議会では、この人事を報告するだけでも大きな意義がある」と歓迎する。

 ただ、高見澤氏は昨年八月まで横浜防衛施設局長を務め、「基地行政の難しさはよく分かっている」(防衛省幹部)とされるものの、沖縄関係の実務経験はない。増田次官でさえ「沖縄の基地問題に限らず、基地行政そのものへの関心が薄い」(同)とみられている。

 「実施段階」とはいえ、課題山積の米軍再編を担う新しい顔触れに、別の内閣府幹部は「やり過ぎだ。行政の連続性が保てなくなる」と、在沖米軍基地問題が停滞することへの警戒感をにじませた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月13日朝刊)

[方法書追加説明]

新たな環境破壊も心配だ

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する沖縄防衛局の追加説明は、地元住民に新たな疑問と不安をもたらしたのではないか。

 沖縄防衛局が明らかにした五項目は(1)代替施設本体の工事計画(2)作業ヤードの面積および検討案(3)工事用仮設道路のルート案(4)埋立土砂の採取区域(5)美謝川切替ルート案―である。

 本体の埋め立ては、三案ある護岸の施工計画のうち六十カ月の最短工期で終える計画案を検討しているという。

 だが、埋め立てに要する千七百立方メートルの海砂は問題がある。ダンプカー約三百四十台分という膨大な量を本島のどこから運ぼうというのだろうか。

 それだけの海砂を採れば、採砂場だけでなく、周辺環境に大きな負荷を与える。海域に生息する魚介類やサンゴなどへの影響も懸念されよう。

 なのに那覇防衛局は採砂場を具体的に提示せず、予想される環境問題にも触れなかった。

 さらに必要な二百万立方メートルの土砂は、辺野古ダム周辺の約七十ヘクタールの範囲から採取する計画だという。

 言うまでもないが、基地施設内とはいえダム周辺は水源涵養林である。そこから大量の土砂を採る場合、相当量の樹木の伐採を要する。そうなれば、周辺の保水力が衰え、一帯の環境が変わっていくのは必至だろう。

 「二〇一四年までの完成」という計画表にこだわるあまり、環境問題に対する取り組みが後回しにされてはいないか。

 県環境影響評価審査会の委員が「工期を短くすることが第一という印象」と懸念するのも当然である。

 沖縄防衛局は「手続きはきちんとしたい」としている。だが、形式的な手続きでは審査会ばかりか地元を納得させることもできまい。

 昨年十二月に出された国のアセス方法書について私たちは、出来の悪い答案みたいなものだ、と指摘した。

 今回、約百五十ページに及ぶ資料を提示したとはいえ、シュワブ沿岸海域だけでなく、海砂採取海域の環境まで破壊する可能性も浮き彫りにした。

 追加説明に対し県環境政策課は「やり直し(を要求する)にはあたらない」との見解だが、情報の開示が不十分なことに加えて、方法書にもまだ不備があるのは審査会委員の見解からも明らかだろう。

 環境に深刻な影響をもたらす恐れがあるのであれば、そのことについてきちんと説明するのが沖縄防衛局の責務である。審査会の懸念を軽々に考えてはなるまい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080113.html#no_1

 

2008年1月14日(月) 朝刊 1面

政府機関が軍命否定/裁判事案 一方的に断定

防衛研究所資料/不適切と認め削除へ

 【東京】防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が、所蔵している沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する資料に、渡嘉敷、座間味両島で「戦隊長の命令はなかった」という趣旨の見解を付していたことが十三日、関係者の話で分かった。両島で起こった「集団自決」への戦隊長命令の有無をめぐっては大阪地裁で訴訟が提起されており、三月に判決が出る。事実関係が裁判で争われている事案に、政府機関が一方の主張を認める断定的な記述を付していたことになる。防衛研究所は見解が「不適切」と認めており、近く削除する方針だ。

 関係者によると見解は、戦時中に大本営で参謀を務め戦後に厚生省(当時)事務官に就いた馬渕新治氏が、一九六〇年に陸上自衛隊の幹部学校で「沖縄戦における島民の行動」をテーマに講演した際の講演録に添付された手記「集団自決の渡嘉敷戦」「座間味住民の集団自決」に対して付されていた。二つの手記は沖縄戦体験者によるものとみられる。

 手記に付されていた見解は、「赤松大尉、梅澤大尉(集団自決発生時は少佐)による集団自決に関する命令は出されていないことが証明されている」として、両戦隊長による命令を明確に否定。根拠に宮城晴美さんの著書「母の遺したもの」(高文研、二〇〇〇年十二月出版)などを挙げている。

 見解の作成は防衛研究所の戦史部と書かれているが、個人名や作成日は記されていない。宮城さんの著書が出版された後の〇一年以降に付されたとみられる。

 防衛研究所は十三日、担当者が不在だったが、出勤していた職員は、沖縄タイムスの取材に対し「指摘の件について昨年末ごろに報道機関から問い合わせがあった。(見解の記述が)不適切なので削除することになったと聞いている」と説明した。

 防衛研究所は安全保障に関する基本的な調査・研究や、幹部自衛官などの教育、戦史に関する基本的な調査・研究が主な業務。政府はこれらの成果を防衛政策の立案に反映させている。


     ◇     ◇     ◇     

検定撤回あす再要請

文科副大臣と実行委が面会


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らが十四日に上京し、十五日に池坊保子文部科学副大臣と面談、検定意見撤回などをあらためて申し入れる。実行委の構成団体のうち六団体は、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」にも実行委への協力を要請する。

 実行委は、教科書会社からの訂正申請を受け、文科省が認めた教科書の「集団自決」に関する訂正記述を、「『日本軍による強制』の記述がなくなるなど、極めて不満が残る内容となっている」と批判、「県内全市町村や県議会、県民大会での決議などを無視するもので、到底許すことはできない」として、あらためて検定意見撤回と「日本軍による強制」を示す記述回復を要請することにした。実行委結成を呼び掛けた七団体のうち、県婦人連合会など六団体は、実行委の要請行動に協力しないことを決めた「五ノ日の会」に、教科書検定問題への取り組みや県選出の全国会議員と実行委との協議を継続するよう文書で申し入れる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801141300_01.html

 

2008年1月14日(月) 朝刊 1面

F15きょう飛行再開/嘉手納基地

 【嘉手納】米本国での墜落事故をきっかけに、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が、十四日から飛行訓練を再開する。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。基地に隣接する自治体は「住民の不安は払拭されていない」などとして安全性を疑問視し、飛行再開の中止と同機の撤去を求めている。

 十四日は「成人の日」でもあり、飛行訓練を強行した場合、周辺自治体の反発は一層強まりそうだ。飛行再開に反対する市民団体は十五日正午すぎから、嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で緊急抗議集会を開く。

 同基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町で組織する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は十一日、「飛行再開により、嘉手納基地周辺での墜落事故が懸念され、周辺住民の不安は計り知れず、断じて容認できない」として飛行中止を求め、抗議した。

 同基地報道部によると所属機は三十九機が飛行可能。ロンジロン(縦通材)の厚さが製造元の仕様書と合致していないとして、十七機はデータを分析中。飛行再開まで二―四週間かかるという。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。その後の調査で、ロンジロンの亀裂が事故原因として浮かび上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801141300_02.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 1面

F15飛行再開 102デシベル超

24機中2機緊急着陸

 【嘉手納】米本国での墜落事故をきっかけに、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機は十四日午前、飛行訓練を再開した。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。午後五時までに、少なくとも二十四機が離陸。このうち、二機が緊急着陸した。

 嘉手納町屋良では、午前八時五十分に一〇二・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を計測。飛行再開の中止を求めていた周辺自治体は騒音負担の増加を指摘し、飛行再開を強行した米軍に反発を一層強めている。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「ロンジロン(縦通材)以外にも、老朽化したF15には別の部品の欠陥があるのではないか。亀裂の原因が明らかでないまま飛行すれば、住民が不安に感じるのは当然だ。大切な『成人の日』に飛行を再開するのは、訓練の遅れを取り戻そうという米軍の一方的な基地運用の表れであり、容認できない」と強い口調で述べた。

 F15は、午前八時二十六分に離陸したのを皮切りに、相次いで飛行訓練を再開。嘉手納町の職員が同町屋良の「道の駅かでな」で、住宅地に近い北側滑走路を使用したF15六機の離陸時の騒音を測定、いずれも九九デシベル以上を計測した。

 嘉手納基地報道部によると、所属機は三十九機が飛行可能。ロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないなどとして、十七機はデータを分析中。飛行再開まで二―四週間かかるという。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落。その後の調査の過程で、ロンジロンの亀裂が事故原因として浮かび上がった。

 米空軍は、飛行停止期間中に、世界規模の一斉点検を実施。事故機以外に計九機でロンジロンの亀裂を確認した。うち二機が嘉手納基地所属機だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_01.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 29面

門出の日 切り裂く爆音/F15飛行再開

 【中部】のんびりとした祝日の十四日午前八時二十六分、嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した。飛行停止から約二カ月ぶりに嘉手納の空に響いたF15のごう音に、周辺住民は「何度聞いてもこの音には慣れない」「墜落しないかと心配だ」と不安をかき立てられた。

 同基地では、午後五時までに二十四機の離着陸が確認された。うち二機が緊急着陸。基地内の消防など緊急車両が出動したが、放水などはなく、いずれも数十分後に自走して格納庫に戻った。同日午前九時十七分ごろに緊急着陸した機体について、同基地報道部は「予防のための着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明した。

 基地を見渡す嘉手納町屋良の「道の駅かでな」では、カメラを構えた報道陣や観光客らが訓練の様子を見守った。

 東京から観光で訪れた目黒孝昌さん(29)、由美子さん(39)夫妻は「沖縄に基地があるのは知っていたが、こんなにうるさいとは思わなかった。騒音以外にも事故の不安など、沖縄は大きな基地負担が押し付けられていると感じた」と心配そうな表情を見せた。

 「朝から戦闘機の音がうるさかった。新聞を開き、F15飛行再開の見出しを見て納得した」。屋良に住む伊波靖晃さん(75)は、久しぶりに聞く騒音にうんざりした様子。「やっぱりF15はほかの戦闘機よりうるさい。何度聞いてもワジワジーする。欠陥部分を点検したと聞いたが、米軍は何度も県民をだましてきた。信用できない」と憤った。

 同飛行場の飛行ルート直下に位置する北谷町砂辺。同地域に生まれ育った喜友名美春さん(20)は、十三日に町の成人式典に出席し、人生の門出を迎えた。成人として第一歩を踏み出す成人の日の飛行再開に「子どものころから自宅のすぐ上を飛び、怖い思いをしてきた。こんな日くらいは静かにしてほしかった」と声を落とした。

 この日、F15二十四機は南北滑走路を使用し、沖縄市へ向けて離陸した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_02.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 1面

防衛研「鉄の暴風」も批判/軍命否定の見解判明

 慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所が、隊長命令があったと記述していた所蔵資料に対し、「隊長命令はなかった」と見解を付け加え公開していた問題で十四日、全文が明らかになった。所蔵資料について、沖縄タイムスの「鉄の暴風」との共通部分を指摘、「『日本軍側の旧悪を暴く』という風潮の中で事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれた」と記述していた。防衛省は批判を受け、削除する方針だが、識者は「防衛省によるゆがんだ沖縄戦住民観の本質は変わらない」と批判する。

 防衛研究所が見解を加えて公開していたのは、一九六〇年に元大本営参謀が陸上自衛隊幹部学校で沖縄戦に関する講演をした際、資料とした慶良間戦体験者の手記。

 「友軍は住民を砲弾の餌食にさせて、何ら保護の措置を講じようとしないばかりか『住民は集団自決せよ!』と赤松大尉から命令が発せられた」(「集団自決の渡嘉敷戦」)

 「艦砲のあとは上陸だと、住民がおそれおののいているとき、梅沢少佐から突然、次のような命令が発せられた。『働き得る者は男女を問わず、戦闘に参加せよ。老人、子供は全員、村の忠魂碑前で自決せよ』」(「座間味住民の集団自決」)

 戦史研究室は、元渡嘉敷島巡査の手記や沖縄女性史家の宮城晴美さんの著書を上げ「赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令はだされていないことが証明されている」と手記の表紙に掲載している。

 見解に著書を引用された宮城さんは「この問題は『集団自決』訴訟と教科書検定問題と連なっている。防衛省は旧日本軍への『集団自決』への関与を否定することを前提に資料を分析している」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_03.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 29面

再発防止の政府談話要求/検定撤回きょう要請

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が十四日、政府に検定意見撤回などを要請するため東京へ向かった。実行委は「高校の日本史教科書から、『集団自決』への日本軍の強制を示す記述を削除させた検定意見は残っており、同じことが繰り返される恐れがある」と判断し、再発防止に向けた福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相のコメントを求めている。

 要請に向かったのは県議会議長の仲里利信実行委員長ら、実行委幹部の五人。十五日午前に大野松茂官房副長官と、午後に池坊保子文科副大臣と面談し、検定意見撤回と記述回復を福田首相らに求める文書を手渡す。

 仲里委員長は、「先月二十八日、教科書会社からの訂正申請への対応を文科省が発表した際に福田首相か渡海文科相から、県民への謝罪や再発防止に向けたコメントがいただけるはずだったので及第点を与えた」と説明。「だがコメントはなく、検定意見の実質は残ったままというのが実行委の見解で、政府の対応に及第点は与えられない」として、あらためて政府幹部による再発防止に向けたコメントを求める考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_04.html

 

琉球新報 社説

F15飛行再開 いつまで続ける安全無視

 機体構造の欠陥の検査で飛行を停止していた米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が14日から飛行を再開した。

 米軍は機体の欠陥や安全対策に関する情報を十分に開示しないまま、住民や地元自治体などの強い中止要請を無視した。あろうことか1カ月半ぶりの飛行再開をあえて連休最終日を選んで強行した。その神経が理解できない。

 安全が保証されないことへの住民の懸念や不安、いら立ちなどは一顧だにされない。切なる訴えに耳を傾けようとしない挑発的な振る舞い、軍の論理を優先させる姿勢は、露骨に過ぎると言わざるを得ない。

 米軍側は、安全性に問題はないと再開に踏み切った理由を説明するが、この説明を信じ、納得する者はまずいないはずだ。地元自治体などは構造的な欠陥を疑っているのである。

 F15の飛行停止措置は、昨年11月2日に米ミズーリ州で起きた墜落事故がきっかけだ。空中分解の末に墜落するという信じ難い事故である。全機の飛行を止める前代未聞の事態だった。

 これだけでも重大な欠陥が疑われるのは当然だが、実はそれ以前から運用に関し根強い懸念があったのである。使用開始から35年が経過しており、この間、老朽化した戦闘機を飛行させる危険性についても指摘されてきた。

 何よりも昨年11月の墜落事故以来、飛行中止と再開をめぐる米軍の対応、動きに異常性がはっきり表れている。

 ミズーリ州の事故を受けての飛行停止から約3週間後に「点検による安全確保」を強調し、米軍は欠陥機の飛行再開に踏み切った。だが、そのわずか2日後には再び停止措置が取られたのである。

 嘉手納基地に配備されたF15C型機の点検の結果、機体の骨格となる「縦通材」2カ所に亀裂が見つかったからだ。

 これまで再三指摘されてきたように、経年劣化や構造疲労の疑いが露見したとの見方が強まったのは当然である。

 米軍の説明によると、嘉手納基地に所属するF15 57機のうち39機は飛行再開が可能であり、1機は点検中で、17機は停止措置が継続される。

 裏を返せば、いま現在、飛行に適しないF15機の数は17機に上るということになる。構造的な欠陥を自ら認めたようなものではないか。事故が起きないほうが不思議なくらいだ。

 同基地からこの日の朝、飛び立ったF15の中には緊急着陸した機も確認された。

 安全性が担保されないF15の飛行再開は許されない。即時の飛行中止と撤去を強く要求する。

(1/15 9:45)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30504-storytopic-11.html

 

2008年1月15日(火) 夕刊 1面

軍強制明記を再要請/県民大会実行委

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(実行委員長・仲里利信県議会議長)は十五日午前、首相官邸に大野松茂官房副長官を訪ね、「『集団自決』への日本軍による強制」の明記や検定意見撤回などをあらためて要請した。仲里実行委員長らによると、大野副長官は「皆さまの意向を福田首相に伝える」と述べたという。

 仲里委員長らは、昨年十二月二十八日の実行委員会で採択した福田康夫首相あての要請書を手渡し、要請した。

 要請後、仲里委員長は「(文科省が記述の修正を発表した際に)県民への謝罪など首相か文部科学相のコメントを前提にいったんは八十点という評価をした」と説明。「しかしコメントはなく、検定意見そのものは生きているという認識だ。これでは県民は納得できない」と、再要請の意義を強調した。

 要請書では教科書会社からの訂正申請に対する文科省の決定について「(教科用図書検定調査審議会が示した)基本的とらえ方の結果、『日本軍による強制』の記述がなくなるという重大な問題が生じている」と指摘。

 さらに「文科相談話でも検定意見撤回や、教科書検定で沖縄戦の記述改ざんの再発防止措置などに何ら触れていない」と批判し、「到底許すことはできない」と、検定意見撤回などをあらためて求めた。

 十五日午後には文科省を訪ね、池坊保子副大臣に同様に要請する予定。

 実行委とは別に、玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会(沖子連)会長、小渡ハル子・県婦人連合会(沖婦連)会長らは、自民党国会議員でつくる五ノ日の会と面談し、今後の協力を要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151700_01.html

 

2008年1月15日(火) 夕刊 5面

砂辺で105デシベル屋良100デシベル/F15飛行再開

 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した十四日、北谷町砂辺で一〇五・五デシベル(電車通過時の線路脇に相当)、嘉手納町屋良で一〇〇・九デシベル(同)の騒音を計測していたことが十五日、分かった。

 同基地では十四日、F15のほか、AV8ハリアー垂直離着陸攻撃機、FA18戦闘攻撃機、KC135空中給油機などが南北両方の滑走路を使用し、離着陸を繰り返した。

 北側滑走路に近い嘉手納町屋良では十四日、多くの人が不快に感じる七〇デシベル以上の騒音を六十三回計測。一方で、南側滑走路を使用した場合、飛行ルートの真下にある北谷町砂辺は、五十九回だった。

 嘉手納基地報道部によると、所属機の三十九機が飛行可能で、十七機は現在、米本国で起きた墜落事故の原因として指摘されているロンジロン(縦通材)のデータを分析中。飛行再開まで二―四週間かかるとしている。

 嘉手納、北谷町は「すべてのF15の点検が終わり、運用が本格的に始まれば、騒音負担の増加は必至だ」と今後の動向を注視している。


F15撤去求め抗議


 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開したことを受け、市民団体による緊急の抗議集会が十五日、嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で開かれた。参加者は「F15を撤去せよ」などとシュプレヒコールを繰り返した。沖縄平和運動センター、中部地区労、新嘉手納爆音訴訟団が主催。六十人以上が参加した。

 同センターの崎山嗣幸議長は「F15の構造的欠陥は明確。飛行再開は到底容認できない」と訴えた。

 同訴訟団の仲村清勇団長は「F15は民間地域に墜落する危険性がある。政府は住民生活と軍事、どちらを優先するのか」などと批判した。


10機超離陸ごう音響く/2日目


 【嘉手納】米軍嘉手納基地に所属するF15戦闘機の飛行再開から二日目の十五日、同基地では午前十一時現在、F15十機以上が離陸、周辺住宅地にごう音を響かせた。F15は午前八時ごろ八機が離陸。九時半ごろからタッチアンドゴーを繰り返したり、急旋回した。


再び抗議へ三連協調整


 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開したことを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十五日午後、北谷町役場で幹事会を開く。地元の抗議、要請を無視した形で飛行を再開した米軍に対し、あらためて抗議する方向で調整する。三連協は、十一日にも飛行再開の中止と、同機の撤去を求めて抗議している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151700_02.html

 

2008年1月15日(火) 夕刊 5面

レンジ4使用延長 抗議へ/都市型施設移設遅れで

金武町議会、18日決議

 【金武】金武町議会米軍基地問題対策調査特別委員会(知名達也委員長)は十五日、米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」にある都市型戦闘訓練施設の移設完了が二〇〇七年度末から〇九年度中ごろまでずれ込み、暫定使用が約一年半延長されることに抗議することを決めた。レンジ4施設の暫定使用の中止と施設の撤去・解体を求める抗議決議案を、十八日に開かれる臨時議会に提出する。

 二月にも着工が予定されている、「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応するグリーンベレーの小銃(ライフル)用射撃場の建設問題についても、抗議する。

 委員からは「政府と米軍の責任で工期が遅れたのだから、暫定使用は中止すべきだ」「伊芸区民に、これ以上の負担を強いることは容認できない」など、暫定使用の中止を強く求める声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151700_03.html

「(金武町)伊芸区、訓練中止を要求/レンジ4移設遅れ」沖縄タイムス、琉球新報社説「戦闘訓練施設 住民の安全軽視は許せない 」 (1月10日、11日)

2008年1月10日(木) 朝刊 1面

調査着手向け本格調整/普天間アセス

次回移設協合意見通し

 【東京】政府は九日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査の二月初めの着手に向け、県と本格調整に入った。仲井真弘多知事が同日、首相官邸で町村信孝官房長官、二橋正弘副長官と会談し、同調査について話し合う次回の普天間移設協議会の早期開催を確認した。同協議会で県は、政府が調査で求めているサンゴ類採捕などを許可するとみられる。

 県は調査前に、事業内容についての調査手法や予測評価などの再審査・公表を求めている。政府高官は同日、「防衛省にもっと詳しく説明するように言っている。そう難しい問題は残っていない」と指摘。アセス調査の着手については「次回協議会で合意できると思う。もうそんなに障害はない。お互いに進めようという姿勢になっている」との見通しを示した。

 次回協議会は、二十一日の知事意見提出後の今月下旬に開催する方向で調整。県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動についても意見が交わされる見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_03.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 2面

北部訓練場 北側3カ所建設合意

日米、ヘリパッド移設で

 【東京】日米両政府は九日の合同委員会で、米軍北部訓練場の返還に伴って移設されるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)六カ所のうち、未着工だった北側三カ所(国頭村)の建設に合意した。今後、業者との契約手続きを経て着工する。

 南側三カ所(国頭村、東村)について、日米は昨年三月に建設に合意し、七月に着工していた。防衛省は工期について「おおむね二年」としており、二〇〇九年七月ごろの完成を目指している。

 防衛省によると、ヘリパッドは六カ所ともそれぞれ直径四十五メートルの円形。両端に十五メートルの「無障害地帯」を整備するという。今回合意した北側の三カ所は、契約ベースで四億円を見積もっている。日米は、北部訓練場について日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、既存のヘリパッド移設を条件に、約三千九百八十七ヘクタールを部分返還することで合意している。

 防衛省は、米側へのヘリパッドの引き渡しは「六カ所すべてが完成後」としており、返還時期は〇九年七月以降となる見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_04.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 2面

伊芸区、訓練中止を要求/レンジ4移設遅れ

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設移設問題で、移設完了が二〇〇七年度末から〇九年度中ごろまでずれ込むことについて、同施設に隣接する伊芸区行政委員会は九日、沖縄防衛局から説明を受けた。移設終了まで暫定使用が続くとの説明に、委員らは「これ以上、訓練による被害を我慢しろというのか」と反発し、暫定使用の中止を求めた。

 防衛局の赤瀬正洋企画部長らは、工事のための訓練中止を米軍が拒否したことなどから工期が一年半ほど遅れると説明。「早朝や夜間訓練で住民が被害を受けないよう、米軍に配慮を申し入れる。工事に関して米軍から協力は得ているが、できる限り早期に移設できるよう、今後も努力したい」と、暫定使用の延長に理解を求めた。

 委員らは「住民は一日も早い訓練中止を求めている」「正月三が日にも夜間訓練をしていた。米軍が約束を守るとは思えない」などとして訓練の早期中止を求めた。

 区行政委員会の登川松栄議長は「区民は、いつどこから弾が飛んでくるか分からない状態で生活している」と訴え、町や町議会と協力し、同局などに訓練の即時中止と早期移設を求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_05.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 1面

軍強制明記へ11月再申請/執筆者ら活動継続

意見撤回求め声明

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科書会社の執筆者や編集者らでつくる「社会科教科書執筆者懇談会」は九日、都内で第四回会合を開き、検定意見の撤回と「日本軍の強制」記述の明記などを求める声明を発表し、活動を継続する方針で一致した。教科書に「軍強制」を明記するため九月にも会合を開き、十一月をめどに再度の訂正申請を目指す。

 今後は名称を社会科教科書懇談会に変更し、教育関係者や市民に広く門戸を開いて存続する。

 声明では、文部科学省が昨年十二月に承認した教科書会社六社の訂正申請について「軍の強制を認めず責任をあいまいにしており、執筆者として到底、納得できない」「検定意見撤回が重要であることがあらためて示された」などとした。

 声明には教科書検定制度の改善要望も盛り込み(1)教科書調査官、教科用図書検定調査審議会(検定審)委員の人選の透明化(2)検定審の審議公開―などを求めている。

 出席者からは「検定制度を段階的に廃止する必要がある」「検定審が記述を認めない場合、学術的根拠を口頭ではなく明文化するべきだ」などの声が挙がり、声明に反映させることにした。

 二〇〇六年度検定で「集団自決」の記述に検定意見が付された五社のうち、四社の執筆者、編集者ら十五人が参加した。

 懇談会は昨年九月の初会合以降、各社の訂正申請に向けた情報交換や認識共有の場として機能してきた。参加した複数の執筆者が訂正申請前に記者会見して記述の内容を明らかにするなど、検定審議の密室性に一石を投じる役割も果たした。

 懇談会呼び掛け人で歴史教育者協議会の石山久男委員長(実教出版執筆者)は会合終了後、「これまでの取り組みの経過をまとめ、今後の課題の方向性も見えた。懇談会の活動継続の足がかりになる」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月10日朝刊)

[防衛利権]

疑惑は晴れたといえるか

 前防衛次官汚職事件に絡み、「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事に対する参考人質疑が参院外交防衛委員会で行われた。同協会は防衛族議員らが理事を務める外務省所管の社団法人である。

 秋山氏をめぐっては、防衛商社「山田洋行」が米国メーカー二社の代理店契約を維持するため、秋山氏側に三十万ドル(約三千五百万円)を支払うと記載したり、防衛族議員を通じて米政府元高官に働き掛けたとする内部文書があることが分かっている。

 また、旧防衛庁が発注した毒ガス弾の処理調査事業で、下請けに入った山田洋行から一億円を受け取ったのではないかとの疑惑もある。

 質疑で秋山氏はいずれも全面否定した。だが、疑惑は晴れたといえるのかどうか。有力防衛族議員や元米国高官らとの深い親交をうかがわせる証言があり、防衛利権の「闇」を垣間見せることになったのではないか。

 秋山氏が顧問料として月約百万円を得ている米国企業の存在も浮かび上がった。同社の実態は不透明とされ、山田洋行側からコンサルタント料として送金を受けている。

 秋山氏は、山田洋行側が「アメリカの多岐にわたる人脈を持っているところに着目したのではないか」と説明したが、これは何を意味するのか。

 防衛装備品はミサイルや戦闘機をはじめとする兵器類など巨額に上る。「防衛機密」といわれれば価格が適正かどうか判断が難しい。

 取引には防衛商社が介在し、米メーカーの見積書を水増しして請求する実態が次々判明。兵器売り込みを図る防衛産業に巣くう構造的な問題といえるものだ。言うまでもなく、予算はすべて私たちの税金で賄われている。

 国の防衛政策は国民の支持なくしては成り立たないはずだ。防衛利権の「闇」を解明しない限り、防衛に対する国民の信頼は失われるばかりだろう。

 東京地検はすでに同協会を家宅捜索している。不正がないかどうか徹底的に解明してほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080110.html#no_2

 

琉球新報 社説

防衛利権疑惑 「政」の徹底的な解明を

 防衛商社「山田洋行」の不明朗な資金の流れの鍵を握るとみられる社団法人「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事が参院外交防衛委員会で参考人質疑を受けた。

 秋山氏は、山田洋行から米メーカーの代理権維持工作で資金提供を受けたのではないかなどの疑惑を全面否定した。

 ただ、秋山氏は関係するアドバック・インターナショナル・コーポレーションが山田洋行からコンサルタント料を受領していることや、久間章生元防衛相、額賀福志郎財務相との宴席は認めた。

 質問した各議員とも、報道の事実確認がほとんどで、新たな追及材料に乏しかった感は否めない。疑惑解明が進んだとは言い難い。

 巨額の防衛利権は国防機密という厚いベールに包まれている。前防衛次官の逮捕以降、利権に政治家が群がり、甘い汁を吸っているとの国民の疑念、不信はさらに強まっている。

 大物防衛次官と防衛商社元専務の逮捕で「官」と「業」の疑惑は徐々に解明されつつある。だが、「政」の実態を暴かなければ、防衛利権の全容解明にはならない。

 山田洋行をめぐる事件を全面解決しなければ、“闇”はさらに深まる可能性がある。

 秋山氏については、東京地検が山田洋行から交流協会側に1億円を提供した疑いがある問題で、協会周辺に対する専従捜査班を設置している。

 日米の防衛産業関係の人脈が広く、政官界とのパイプ役とされる秋山氏や、場合によっては疑惑を持たれた政治家に、国会としてもさらに事情を聴く機会を設け、疑惑を徹底解明する必要がある。

 日米平和・文化交流協会は、定款では米国との文化交流に関するセミナー開催や調査研究などを事業としている。しかし、防衛庁(当時)発注の旧日本軍毒ガス弾処理事業の調査業務を行うなど、定款外の事業を行っていた。

 多くの国民は、防衛族議員らが理事を務める交流協会の役割に疑念の目を向けている。「政」につながる疑惑解明の機会を逃してはならない。

(1/10 9:36)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30370-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

戦闘訓練施設 住民の安全軽視は許せない

 金武町のキャンプ・ハンセン内レンジ4の米陸軍都市型戦闘訓練施設の暫定使用が予定より約1年半近くも大幅に延び、2009年10月ごろまで続くことが分かった。

 国は、現訓練施設は「早ければ」ことし3月までに移転すると地元に説明していたが、実際はその倍近くである。

 「早ければ」の前提付きだったかどうかの問題ではない。地元は3月で移転が完了すると受け止めていたのである。国は地元との約束をほごにしたと言わざるを得ない。

 訓練施設は民間地からより遠く離れたレンジ16付近に移設されることになっている。

 それに伴って工事されるA、B、Cの3地区のうち、B、C地区での訓練停止を米軍が拒否したことで、工事が遅れていることが暫定使用延長の理由である。

 今回、あらためてはっきりしたことは、米軍は訓練を優先し、日本政府は結果的にそれを追認するということである。

 そこには最も肝心な「住民の安全」への視点が欠けている。住民の安全軽視は許されない。

 そもそも、戦闘訓練施設の移設で日米両政府が合意したのは、住民への危険を除去する必要があることを認めたからではなかったか。

 地元から「米軍と外務省などが協議し、自分たちで示した方針を守らないのか」との怒りの声が上がるのも当然である。

 現施設は最も近い民家から約300メートルしか離れていない。ところが、使用されるM24ライフルは有効射程が約1100メートルあり、民間地への流弾被害が懸念される状況にある。

 住民に危険を及ぼす恐れのある訓練施設を放置してはならない。その基本に立てば、本来なら即座に使用を停止し、施設を撤去するのが筋である。

 それが無理ならば、次善の策として訓練施設をスムーズに移設させることが日米両政府の責務である。

 現状では、米軍の訓練優先に歯止めをかけるのは国しかない。しかし、政府にはその姿勢がうかがえない。

 防衛省は「3地区での訓練中止を米側と合意していたわけではない」としている。米軍が訓練停止に応じなければ、暫定使用は長期化することは当初から分かっていたはずである。

 政府はその事実を1年近く隠していた、と言われても仕方ないだろう。「調整や協議を継続中だった」との説明で、納得できるものではない。

 暫定使用が4年近くも続くことは、それだけ住民が危険にさらされる期間が長くなるということである。国は国民の安全を守る義務を果たしたと言えるだろうか。

(1/10 9:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30371-storytopic-11.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 1面

F15、14日飛行再開/残り16機は分析中

嘉手納基地の39機

 米空軍嘉手納基地報道部は十日午前、米本国での墜落事故をきっかけに機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の欠陥が判明し、飛行停止措置が取られている同基地所属のF15戦闘機の飛行訓練を十四日から再開する、と発表した。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。同報道部によると、世界規模の一斉点検の結果、事故機以外に計九機でロンジロンの亀裂を確認。うち二機が嘉手納基地所属機だった。また、点検した米空軍全体のF15の約40%でロンジロンの厚みが不足し、不適合とみなされていたことも判明した。

 同報道部によると、同基地所属機は三十九機が飛行可能で、残り十六機については米本国でロンジロンの厚さの測定データを分析中。分析の完了には約四週間かかる見込みで、その後に追加検査や修理を検討するという。

 同基地のブレット・ウィリアムズ司令官は十日、「検査の結果、安全に任務を達成し、日本を守ることができると確信している」とのコメントを発表した。

 米空軍は訓練に復帰するF15は空軍が保有する全体の60%で、訓練内容も限定的としているが、詳細は明らかにしていない。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。

 事故を受け、米空軍は同四日以降、同型機全機の飛行を停止。同二十一日にはいったん解除し、嘉手納基地所属のF15戦闘機は同二十六日から点検を終えた機が順次飛行を再開した。

 しかし、事故原因とみられるロンジロンの亀裂が事故機以外で確認され、同二十八日に飛行を再停止。米空軍は相次ぐ欠陥機の報告を受け、「これまで点検を行った個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性を示している」として、三回目となる米空軍のF15A、B、C、D型機の飛行停止措置を昨年十二月三日に決定。新たな点検作業を義務付けていた。

 嘉手納基地のF15はC型が大半でD型は数機。同基地では今月上旬から、点検を終えたとみられるF15が滑走路上を移動(タキシング)する準備訓練が行われていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_01.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 5面

ぬぐえぬ不信 地元怒り/F15飛行再開

 【中部】「構造的欠陥がなくなったと言えるのか」。十四日からの飛行再開が決まった嘉手納基地のF15戦闘機。昨年十一月の米本国での墜落事故以降、「人間でいうと、背骨が折れるようなもの」(航空評論家)という重大な欠陥が見つかった。飛行再開で騒音増加も懸念され、同基地を抱える地元自治体の首長は「危険な戦闘機の飛行中止を求める」と強く反発した。

 嘉手納基地では十日午前十時五十分ごろ、F15戦闘機が駐機場から滑走路に向け移動した。同基地では数日前から、整備要員を含め、飛行再開に向けた訓練とみられる動きが確認されている。

 宮城篤実嘉手納町長は「どのような整備点検が行われたのか分からない中では、安全性が確認されたことにはならない」と指摘。十一日に同基地司令官からF15に関する説明を受けることになっており、その席で「司令官に町民の不安を直接訴えたい」と述べた。

 北谷町の野国昌春町長は「縦通材に亀裂が見つかった経緯がある。どんなに整備をしても構造的欠陥はなくならないのではないか」と懸念。「住民の負担を増加させる飛行再開は容認できない」と強く反対した。

 東門美津子沖縄市長は「F15は今後も墜落の可能性をはらんでいる。構造的欠陥のある同機の安全性はいかなる点検をしたにせよ、市民の不安がぬぐい去れるものではない」と米軍を批判。「引き続き飛行中止と即時撤去を求める」と強調した。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は十日午後、幹事会を開き対応を協議する。嘉手納、北谷の両町議会も同日、基地対策特別委員会を開き、対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_02.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 5面

平和祈り元学徒と交流/元衛生兵・小木曽さん

 沖縄戦時に衛生兵だった小木曽郁男さん(88)=神奈川県=が九日、糸満市の糸洲の壕(ウッカーガマ)で、当時看護隊だった私立積徳高等女学校の元学徒らと那覇市の沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザで再会した。

 当時、壕内にいた衛生兵で存命しているのは小木曽さんただ一人。戦後も、壕内で自決した隊長の遺骨を収集するなど交流を続けており、「久々に会えてうれしい」と喜んだ。

 小木曽さんと元学徒らは、豊見城城址内の旧日本軍第二四師団第二野戦病院に所属。沖縄戦が終わるまで、行動を共にした。壕内で自決した隊長の遺体を埋めた小木曽さん。「暗黒の洞穴にずっと葬っておくわけにはいかない」と、戦後二十五年目に元学徒らと遺骨を収集した。

 悲惨な体験から六十年余り。当時の様子を涙ながらに語る小木曽さんに、仲里ハルさん(81)ら元学徒も目頭を押さえた。

 病室勤務だった田崎芳子さん(80)は「小木曽さんと再会できることは何ともいえない喜び。生きる素晴らしさを実感している」と語った。

 小木曽さんは、来県するたびに糸満市糸洲の壕を訪れる。「無念の思いで亡くなった仲間のためにもう一度入りたかった」と今回は七日から子や孫ら五人と自身が戦中過ごした壕を訪れた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_06.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 2面

三連協、撤去要求を決定/F15飛行再開

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開することを受け、同基地周辺の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十日、嘉手納町役場で幹事会を開き、飛行再開の中止、同機の撤去を求めて抗議する方針を決めた。

 三連協のメンバーは、十一日午前に嘉手納基地内でF15の点検状況や飛行再開について、同基地から説明を受けることになっており、その際に抗議する予定という。

 三連協幹事会によると、抗議ではF15の安全性について、住民の不安が払拭されていないことや墜落事故再発の懸念を指摘。飛行再開は容認できないなどとして、F15の即時撤去を訴える。

 F15は昨年十一月に米本国で墜落。事故原因調査の過程で、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の欠陥が判明した。

 嘉手納基地のF15は昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶりの飛行再開となる。同基地によると、所属機のうち、三十九機が飛行可能で、残り十六機については、米本国でロンジロンの厚さの測定データを分析中という。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_02.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 1面

検定撤回を再度否定/教科書問題

文科省審議官「今後は内容即し判断」

 【東京】文部科学省の布村幸彦大臣官房審議官は十日の参院内閣委員会で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した二〇〇六年度教科書検定の検定意見を撤回する考えがないことをあらためて強調した。糸数慶子氏(無所属)への答弁。

 布村審議官は、教科用図書検定調査審議会(検定審)が昨年、教科書会社六社からの訂正申請を審議する際の指針として取りまとめた「基本的とらえ方」について「検定意見と齟齬を来すものではなく、検定意見を変更したりするものではない」と述べ、検定意見の事実上の撤回にも当たらないとの認識を示した。「検定意見が今後も生き続けるのか」との質問には「今後の検定で、どのような検定意見を付すかは、その時点で具体的な記述内容に即して判断される」と述べるにとどめた。

 糸数氏は「渡海紀三朗文部科学相は談話を出したが、記述改ざんの再発防止措置に触れておらず、文科省・政府の沖縄戦に対する理解に問題がある」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_04.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 29面

危険と収入 業界ジレンマ/米兵・タクシー強盗致傷

 七日未明、沖縄市美原の住宅街で発生した米兵二人によるタクシー強盗致傷事件。被害に遭った運転手の男性(59)は当日、基地内を出入りする「ベースタクシー」として運行していた。米兵を客とする業務に日々不安を感じる運転手も少なくないという。しかし、確実な収入が見込めるとあって、タクシー業界は、危険と隣り合わせの状況でも運行せざるを得ないジレンマに悩まされている。(中部支社・銘苅一哲、吉川毅)

 男性は頭などに全治一週間のけがを負い、休職を余儀なくされ、心にも深い傷を負った。米軍関係者は十日午後、会社を訪れ男性に直接謝罪し、見舞いを手渡したという。

 しかし、夫を傷つけられた妻は「事件以降、本人も私も精神的に疲れています。今はそっとしておいてほしい」とやつれた表情で話した。

 沖縄署によると、同署管内では昨年、米軍構成員の犯罪が四十件発生した。月に数回発生する事件は窃盗や傷害の割合が多く、中でも、常に現金を持ち、客と密室になるタクシーの運転手が被害者になるケースは少なくないという。

 「今もあの恐怖が夢に出てくる」。二〇〇六年一月七日、北谷町の在沖米海兵隊キャンプ瑞慶覧内の路上で発生した米兵によるタクシー強盗事件。被害者の男性乗務員(64)は、首にナイフを突き付けられた感触が今も忘れられないと話す。

 「今回の事件は、私が被害に遭った二年前とちょうど同じ日に起きた。新聞報道を見て自分の事件を思い出し、震えが止まらなかった」

 男性は乗務員歴三十年。今でもタクシーを走らせ、日々不安を感じながらも後部座席に米兵を乗せている。

 「行き先があいまいで何度も行き先を変更する、人気がない暗い場所で急に停車を求める米兵は要注意だ。事件後も何度か身に危険を感じたことがあるが、私にはタクシーの仕事しかできないし、生活のためには辞められない」と話す。

 今回被害に遭った運転手が勤務するタクシー会社は、入札で米軍に入域料を払い、入域証明書を受けた「ベースタクシー」として基地内に出入りできる。

 基地内での運行は、一九九〇年ごろから月額約三千―五千円の入域料を支払う制度に変更された。

 二〇〇四年に入札制度が実施され入域料は数万円に高騰しているが、ベースタクシーの一台当たりの売り上げは県内業界で常に上位。認可台数はキャンプごとに十数台から数百台と決められている。

 ベースタクシーを運行するある会社の関係者は「小さな会社ではベースタクシーの恩恵は大きい。同業者が米兵絡みの事件に巻き込まれるたびに怒りが込み上げるが、米軍を批判すると次の入札が不利になるのではないか」とジレンマに複雑な表情を浮かべた。

 一方、米兵相手に営業していた別の会社は、数年前に乗務員が強盗被害に遭い、ベースタクシーをやめた。

 同会社の運行管理者は「事件の多くは米兵絡み。売り上げを伸ばすよりも、優先するのは乗務員の安全だ」と話した。


到底許せぬ/タクシー協が抗議


 沖縄市で起きた在沖米海兵隊員によるタクシー強盗致傷事件で、県ハイヤー・タクシー協会の伊集盛先会長、被害者の勤務先の社長らは十日、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対して米軍への抗議を申し入れた。「悪質な事件の続発は到底許せない。厳正な処罰、再発防止を求める」とした。

 伊集会長は「一歩間違えれば生命にかかわる事件。運転手はもとより、その家族も心配している」と指摘した。防衛局の鎌田昭良局長は「極めて悪質。四軍調整官にも直接申し入れた」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月11日朝刊)

[F15飛行再開]

不安は解消されていない

 米国での墜落事故で機体構造に欠陥があることが分かり、検査のため飛行停止になっていた米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開する。

 限定的な飛行を除くと約二カ月ぶりの再開だ。米空軍は「検査の結果、安全に任務を達成できる」としているが、基地周辺の自治体、住民は「構造的欠陥がなくなったと言えるのか」と事故の再発などに不安を募らせる。

 飛行再開によって基地の騒音激化も懸念されている。安全に関する情報開示が不十分なまま、負担を強いる飛行再開は納得できない。

 昨年十一月二日に起きた米ミズーリ州でのF15墜落事故を受け、米空軍は

詳細な整備点検を実施した結果、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の亀裂という構造上の欠陥が明らかになった。

 嘉手納基地報道部によると、世界規模の一斉検査によって事故機以外に九機に縦通材の亀裂を確認し、うち二機が同基地所属だったという。

 同基地所属のF15は五十五機だが、三十九機は飛行可能で、残り十六機は米本国で縦通材の厚さを分析しているという。結果によっては、欠陥機が増える可能性がないとは言えない。

 看過できないのは、点検した米空軍全体のF15の約40%で縦通材の厚みが不適合とみなされていたことだ。言い換えれば、事故発生前まで四割の「欠陥機」が世界中を飛行していたことになる。重大な事故がなかったこと自体が不思議なくらいだ。

 米空軍は、これまで事故原因を確定できない段階で飛行再開するという決定をしてきた。今回も、詳細な事故原因、安全対策を公表しないまま飛行再開を強行しようとしている。住民感情を顧みない、訓練優先の米軍の姿勢であり、住民が憤るのは当然であろう。

 米空軍は住民の安全を最優先するという考えに立つべきだ。政府も地元の反発を考慮して、米空軍に強い姿勢で臨むべきである。安全確保に疑問が残るF15の飛行再開は許されない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080111.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月11日朝刊)

[テロ新法再議決]

消化不良の論戦の末に

 臨時国会最大の焦点である新テロ対策特別措置法案は、きょうの参院本会議で否決され、このあと衆院本会議で与党の三分の二以上の賛成で再可決、成立する見通しである。

 異例ずくめの展開だった。

 衆院で与党が、参院で野党が、それぞれ過半数を占めるという「ねじれ現象」の下で、与党も野党も確たる展望が持てないまま、五里霧中の状態で国会を運営してきた。

 与党は昨年十一月一日で失効したテロ対策特別措置法に代わり対テロ新法を国会に提出。会期を再延長して法案の成立を目指した。

 民主党はアフガニスタンの民生支援を柱にしたアフガニスタン復興支援特別措置法案を対案として国会に提出。政府案と民主党案が国会審議のまな板に上った。

 私たちが今国会に期待したのは、「テロとの戦い」に関する骨太の議論である。

 イラク戦争について米国では、「あれは間違いだった」との見方が急速に広がっている。そのような意見が今や主流になりつつある。

 世界保健機関(WHO)によると、二〇〇三年三月のイラク戦争開戦から約三年間で、米軍の攻撃や自爆テロ、宗派対立などで死亡したイラク人は推計で十五万一千人に上るという。

 アフガニスタンではタリバンが再び勢力を拡大させ、テロ行為が後を絶たない。

 「テロとの戦い」とはそもそも何か。軍事力に頼ってテロをなくすことはどれだけ有効なのか。現状を踏まえて日本が今後、国際社会で果たすべき役割は何なのか。ねじれ国会の下での法案審議は、9・11テロ後の「テロとの戦い」について根本から問い直し、議論する絶好の機会だった。

 だが、国会は解散・総選挙をにらんだ与野党の駆け引きが目立ち、後世に残るような論戦が展開されたとは言い難い。

 「憲法の規定に従って粛々と再議決すればいい」という与党の主張は、理屈としては理解できるにしても、やはり問題があるといわざるを得ない。

 対テロ新法に対しては国民世論が真っ二つに割れている。直近の民意が衆院ではなく参院にあることを考えればなおさらのこと、衆院での再議決には慎重であるべきだ。

 民主党も民主党だ。同党の政府案に対する対応の混乱や独自法案取りまとめ段階の混乱は、政権担当能力を疑わせるものだった。

 消化不良のまま再議決を迎えるのは残念というほかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080111.html#no_1

 

2008年1月11日(金) 夕刊 1面

亀裂のF15は更新機

 嘉手納基地第一八整備群司令官のジョン・ハリス大佐らは十一日、ロンジロン(縦通材)に亀裂の見つかった同基地所属のF15二機は、いずれも同基地が二年前から実施している古い機体の更新計画によって配備された機体だったことを明らかにした。二機ともにC型機で、操縦席後方のロンジロンのつなぎ目付近で一カ所ずつ亀裂が確認された。

 また、同基地所属機でロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していない機体は計十七機(亀裂を確認した二機を含む)に上ると説明した。

 亀裂の見つかった二機のうち一機は一九八一年製造でラングレー基地(バージニア州)、もう一機は八五年製造でエレメンドルフ基地(アラスカ州)から配備された。

 同基地は十日に十六機がデータ分析中と発表したが、さらに一機でロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないことが判明したため、十七機をデータ分析(二―四週間)に回している、という。

 ロンジロンの厚さが仕様書と合致していない原因について、ハリス大佐は「製造元の責任」との見方を示した。

 同基地によると、嘉手納基地の計五十七機のF15のうち、十一日までに五十六機の点検が終了。一機は別の検査と重なったため遅れており、全機の点検終了は三月までかかる見通しだという。

 一方、飛行停止のきっかけとなった昨年十一月二日の米国ミズーリ州で発生した墜落事故について、米空軍は十一日までに、右側の上部ロンジロンが仕様書と合致していなかったため亀裂が生じたことが原因―とする事故調査委員会の報告書を発表した。


78―85年製機に問題

米空軍HP製造上の欠陥と発表


 【嘉手納】米空軍は十日(現地時間)、米ミズーリ州での墜落事故をきっかけに飛行停止措置がとられているF15戦闘機について、胴体と操縦席をつなぐロンジロンで製造上の欠陥が見つかったことを公式ホームページ(HP)で発表した。一九七八―八五年製造の機体に問題があったとしている。

 米空軍によると、操縦席を胴体に固定する四本のロンジロンのうち一本で製造上の欠陥が見つかった。米ミズーリ州で昨年十一月に発生した墜落事故では、ロンジロンに7G(通常の七倍の重力加速度)の負荷がかかり操縦席から分離。他三本のロンジロンも分離したという。飛行停止期間中にF15全機を検査した結果、事故機以外の九機で縦通材に同様な亀裂が見つかった。

 七八―八五年に製造したF15のうちA、B、C、D型機に製造上の欠陥が見つかったと指摘。亀裂の見つかった九機のうち数機は、修理経費の問題から次会計年度以降、使用しないという。

 太平洋空軍が所有するF15の98%が検査を終え、65%は訓練に復帰できるとも発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111700_01.html

 

2008年1月11日(金) 夕刊 7面

地元3市町が抗議/F15飛行再開

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開することを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十一日、同基地内で所属機の点検状況や再開の経緯の説明を受けた。宮城篤実嘉手納町長によると、機体の構造を支えるロンジロン(縦通材)に亀裂が見つかった二機は同基地で部品を交換するという。三連協は「住民の不安は払拭されていない」などとして、飛行再開の中止と同機の撤去を求め、抗議した。

 三連協は「構造的欠陥を有するF15の安全性はいかなる点検にせよ確保されるものではない」と指摘。「飛行再開により、嘉手納基地周辺での墜落事故が懸念され、周辺住民の不安は計り知れず、断じて容認できない」などとする抗議文を同基地のジョン・ハッチソン広報局長に手渡した。

 宮城町長によると、同広報局長は「安全という確認ができている」と述べ、飛行再開の方針をあらためて示した。

 機体の点検状況については、第一八整備群のジョン・ハリス大佐らが説明。ロンジロンに亀裂が見つかった二機は部品を取り換えるなどと説明したが、飛行再開や修理の時期については明言しなかったという。

 宮城町長は七日から同基地で行われている即応訓練についても中止を求めた。


嘉手納議会 反対決議へ


 【嘉手納】F15戦闘機の飛行再開を受け、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十一日午前、基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、十七日の臨時議会で同機の飛行再開中止と即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を提出することを決めた。

 米軍は同基地所属のF15は三十九機が飛行可能で、残り十六機は機体構造のデータを計測中としているが、委員からは「飛行再開する三十九機の点検は地上で行ったもので、実際に飛行した場合にトラブルが発生するのではないか」「再開しない約四割は欠陥が残っている可能性がある」などと不安を残したままの飛行に反対する意見が相次いだ。

 また、同基地で実施されている即応訓練についても、「昨年十一月の即応訓練の際にも米軍へ抗議したが、改善がみられない」とし、訓練とそれに伴う外来機の飛行を中止する抗議決議、意見書両案の提案を決めた。

 北谷町議会(宮里友常議長)でも十一日午後、基地対策委員会を開き対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111700_02.html