[米国防総省が敗訴/沖縄ジュゴン訴訟 ]沖縄タイムス,琉球新報(1月24日から30日)

2008年1月24日(木) 朝刊 1面

普天間代替 沖合移動「1インチも駄目」米国防次官補代理

アセス後も不可

 【東京】セドニー米国防次官補代理(東アジア担当)が山崎拓前副総裁と十八日に会談し、県などが求めている米軍普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動は、環境影響評価(アセスメント)後も応じられないとの立場を伝えていたことが二十三日、分かった。米側はもともと沖合移動に難色を示していたが、アセス後も修正に応じないとする強硬姿勢が明らかになるのは初めてだ。

 関係者によると、セドニー氏は十七日に来日。山崎氏との会談ではV字案の沖合移動について「一インチでも動かせない」と強調。アセス後の修正なら可能とする日本政府側の考え方に対し、「今の案が合理的だ。アセスをやったとしても動かせない」との考えを伝えた。

 山崎氏は県側のスタンスを説明した上で、アセスに基づけば修正は合法的に可能との認識を示した。

 しかしセドニー氏は、米軍再編で日米合意した在沖米海兵隊のグアム移転について、制服組の反発を押さえた上で最終報告(ロードマップ)に盛り込んだ経緯を説明し、「今ここで揺らぐとグアムに移転する米軍の不満が爆発する」などと困難視した。

 併せて、「ゲーツ国防長官、シン国防副次官と私は一つの線で固まっている」とも述べ、米政府内の見解が一貫していることを強くアピールした。

 普天間移設をめぐって米側は、沖合移動に柔軟姿勢を示す町村信孝官房長官らへの不信感を強めている。昨年暮れにはゲーツ国防長官が福田康夫首相に対し、沖合移動は困難との意向を伝えている。


[ことば]


 普天間飛行場移設問題 日米両政府は1996年、宜野湾市の市街地にある米軍普天間飛行場の返還、移設で合意。99年、移設先は名護市辺野古沿岸域と決まった。しかし着工が遅れ、両政府は2006年5月、移設先を同市のキャンプ・シュワブ沿岸部に変更、V字形に滑走路2本を建設すると合意した。これに伴い、政府と県などは建設計画や地域振興策を話し合う協議会を06年8月に設置した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241300_01.html

 

2008年1月24日(木) 朝刊 1面

沖国大ヘリ墜落 被災「壁」展示/図書館に資料コーナー

 沖縄国際大学は、二〇〇四年八月に起きた米軍ヘリ墜落事故を風化させず語り継いでいこうと二十三日、図書館に「米軍ヘリ墜落事件関係資料コーナー」を開設した。

 表面が焼け焦げた壁の一部や構内で炎上するヘリ、大学関係者や警察を締め出す米兵の写真、新聞記事や、映像などで墜落直後の生々しい状況を伝えている。照屋寛之教授(法学部)は「事件の悲惨さを伝えなければ教訓を得ることはできない」と意義を話している。

 展示コーナーは図書館二階のグループ学習室に開設。幅四メートル五十センチのスペースに、鉄骨がむきだしになった本館の壁(一メートル二十センチ)、沖縄タイムスなどの新聞記事、写真を展示。一部始終をとらえたビデオ上映(五時間十六分)もある。学校関係者以外でなくても観覧できる。

 〇六年十一月、照屋教授をチーフに委員六人で発足したプロジェクトチームが開設に向け、取り組んできた。武田一博図書館長は「当時の学生はほとんど卒業し、本館も建て直され、事件は次第に忘れ去られようとしている」と指摘。「このコーナーを通じて新入生や市民が基地や平和の問題を考え続けてほしい」と願いを込めた。

 事故当時一年だった同大社会文化学科四年の嶺井秋人さん(22)は「事件後、日常過ごしている場の異常さを実感した。後輩たちも、この状況に気付いてほしい」と話した。同大は関係する資料の提供を呼び掛けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241300_11.html

 

2008年1月24日(木) 夕刊 1面

ラプコン10年3月返還/日米合同委で合意

 【東京】在日米軍が沖縄の本土復帰後も管轄を続け、昨年十二月をめどに返還される予定だった沖縄本島周辺空域の航空管制システム「嘉手納ラプコン」について、日米合同委員会は二十四日、二〇一〇年三月までに返還することで合意した。

 日本側は嘉手納ラプコンの管制業務の返還を見据え、○四年十二月から嘉手納基地に日本人管制官を派遣。三年後の業務移管を視野に米軍管制官の下で約四十人を対象に、システム習熟訓練を開始していた。

 しかし、米軍側が通常の管制業務や、軍の新人管制官の訓練を並行させているため日程が過密化。訓練の進ちょくが遅れていた。

 嘉手納ラプコンは嘉手納基地や普天間飛行場を離着陸する米軍機のほか、那覇空港を利用する民間機の航空管制も担当する。日本側の管轄空域は那覇空港周辺に限られ、同ラプコンのレーダーが故障して民間機の運航に遅れが生じた例もある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241700_02.html

 

2008年1月24日(木) 夕刊 5面

平和祈念堂内に美術館移設オープン

 【糸満】県内初の美術館として建設され、糸満市摩文仁の沖縄平和祈念堂の敷地内にあった施設の堂内移設を祝う式典が二十三日、「新美術館」内で開かれた。オープンに合わせ、戦後の沖縄美術界をけん引した故安谷屋正義、故山元恵一氏の絵画二点が寄贈された。

 旧美術館は一九八一年二月に開館したが、堂内に移設することで展示作品や収蔵庫を良好な環境で管理できるという。

 平和祈念堂を管理・運営する財団法人沖縄協会(清成忠男会長)は現在絵画百十九点を所蔵しており、移設を機に年二回作品を入れ替え、展示する。保管絵画は県内各地の美術館や各市町村の企画展などに貸し出すという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801241700_06.html

 

2008年1月25日(金) 朝刊 1面

ラプコン返還10年3月/日米合同委合意

 【東京】在日米軍が沖縄の本土復帰後も管轄を続け、昨年十二月をめどに返還される予定だった沖縄本島周辺空域の航空管制システム「嘉手納ラプコン」について、日米合同委員会は二十四日、二〇一〇年三月までに返還することで合意した。

 日本側は嘉手納ラプコンの管制業務の返還を見据え、○四年十二月から嘉手納基地に日本人管制官を派遣。三年後の業務移管を視野に米軍管制官の下で約四十人を対象に、システム習熟訓練を開始していた。

 しかし、米軍側が通常の管制業務や、軍の新人管制官の訓練を並行させているため日程が過密化。訓練の進ちょくが遅れていた。

 嘉手納ラプコンは嘉手納基地や普天間飛行場を離着陸する米軍機のほか、那覇空港を利用する民間機の航空管制も担当する。日本側の管轄空域は那覇空港周辺に限られ、同ラプコンのレーダーが故障して民間機の運航に遅れが生じた例もある。

 県の知念英信交通政策課長は「早めに返還され、民間機の管制がスムーズに行われるべきだ」と指摘。過去にラプコンのレーダーの故障で、民間機の運航に遅れが生じた例もあることから、「那覇空港の拡張整備が予定されており、今後は、観光客を中心に民間機の利用が増える。その中で、運航が制限されることがあってはならない」と述べ、早期返還を求めた。

 これまで、長年にわたってラプコンの返還を求めてきた嘉手納町の宮城篤実町長は、具体的な返還の期日が示されたことに「大きな前進だ」と評価。「管制業務でミスがあると、重大な事故につながりかねない。今後は、日本側と米軍が信頼関係を構築するための技術の習得が必要だ」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251300_04.html

 

2008年1月25日(金) 夕刊 1・7面

米国防総省が敗訴/沖縄ジュゴン訴訟

 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、名護市キャンプ・シュワブ沖に生息するジュゴンの保護を求め、日米両国の自然保護団体などが米国防総省を相手に起こしている「沖縄ジュゴン訴訟」で、米サンフランシスコの連邦地方裁判所は二十四日、同省の米文化財保護法(NHPA)違反を認定する判決を出した。基地建設によるジュゴンへの影響を回避する「考慮」を命じた上で、環境影響評価(アセスメント)文書を同地裁に九十日以内に提出するよう求めた。

 AP通信によると、米政府は、控訴するかどうか決定していない。同法は米政府による海外での行為に文化財への影響考慮を義務付けているが、実際に適用されるのは初めてという。

 同地裁のマリリン・パテル裁判長は、同省がジュゴンへの影響軽減策の必要性を把握、考慮していないことを同法違反と認定。「計画が国防長官らによる最高レベルの承認を得ているにもかかわらず、ジュゴンへの影響はよく把握されていない。国防総省は引き返すことができないほど計画に関与しており、法に基づく義務履行を建設直前まで待つことはできない」と判示した。

 同訴訟は二〇〇三年九月、県内外の自然保護団体が米国の団体とともに提訴した。原告にはジュゴンも含まれる。

 国防総省は当初、同法の適用対象は建造物などに限られる上、米国は基地建設に直接関与していないとして却下を求めた。同地裁は〇五年に同省の主張を退け、実質審理入りしていた。

 原告代理人で、環境法律事務所「アースジャスティス」のサラ・バート弁護士は、「判決は、国防総省は真剣な検討をする義務があると明示した。ジュゴンの保護措置が取られることになる」との見通しを示した。

 日本環境法律家連盟事務局長の籠橋隆明弁護士は「国防総省は日本政府のアセス結果を地裁に提出するだろうが、その内容は米国で求められる水準には到底達しない。地裁が審査し、さらなる決定を出す可能性もある」と指摘した。

 判決について名護市の島袋吉和市長は「現時点で、コメントできる立場にない」。県幹部は「外国での訴訟なのでまだ判決内容が分からない。普天間移設の事業主は国なので、動向を見守る」としている。


[ことば]


 米文化財保護法(NHPA) 正式には「国家歴史保存法」または「国家歴史的遺産保存法」。米政府の「連邦行為」に対し「同等の意義を持つ他国の法で保護された文化財も保護対象」とする「域外適用」の項目がある。


     ◇     ◇     ◇     

「大勝利 移設断念を」/米司法の壁 原告評価


 「大勝利だ」。名護市キャンプ・シュワブ沖への米軍普天間飛行場の移設をめぐる訴訟で、米サンフランシスコの連邦地裁が、国防総省にジュゴンへの影響を回避・緩和するための考慮を命じたことに、原告らは判決を高く評価、喜びの声を上げた。一方、移設容認の立場を取る地元関係者は「移設計画を進めて、世界中の環境団体が詰めかければ、迷惑する」と戸惑いも。代替施設の建設を急ぐ日本政府に、米司法が高いハードルを突きつけた。

 原告の東恩納琢磨さんは「大勝利だ。米国政府に言われて見直すのは恥ずかしいことだが、日本政府はそれをやらないと、世界から大きな批判を浴びる。(基地建設に)高いハードルができたし、この判決を克服するには、相当の労力と時間がかかる。それよりは、辺野古への基地建設を見直した方が早い。ジュゴン保護区の設置を米国民にも訴えていきたい」と話した。

 原告の一人で、米自然保護団体「生物多様性センター」のピーター・ガルビンさんは「地裁決定に基づく見直しと、基地建設の影響が広く知れわたることで、日米両政府がジュゴンを絶滅に追いやる計画を断念することを願う」と話した。

 「市民アセスなご」の吉川秀樹さんは、「九十日以内に、ジュゴン保護の根拠を提出するよう求めるだけでなく、それを判断した米国防総省側の担当者の氏名の提出を求めるなど米国の法律の要求に、日本のアセスが適合しているかを求めている」と指摘。「こちらが望んでいた判断。ここまでやってくれたことに、感心している。ここから新たな基地建設反対の運動を積み上げることができる」と評価した。

 移設を容認する立場の移設先の辺野古出身の島袋権勇名護市議会議長は「米国らしい。(移設の)ハードルが高くなった。そのまま、移設計画を進めて、世界中の環境団体が詰めかければ、迷惑するのは地元。アセスへの知事意見にもあった通り、(防衛省は)ジュゴンを含む環境調査をしっかり、やってほしい。成り行きを見守るしかない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251700_01.html

 

2008年1月25日(金) 夕刊 1面

パイン施設に16億円/北部振興事業費

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十五日午前の閣議後会見で、執行が遅れていた二〇〇七年度の北部振興事業費を二十九日付で配分すると発表した。非公共が十三事業四十九億円、公共が三十四事業四十六億円で、合計四十七事業(新規十四事業)に九十五億円を配分する。新規で最も額が大きいのは、東村にパインアップルなどの総合農産加工施設を整備する事業の十六億六百万円。継続では昨年に看護学科が新設された名護市の名桜大学内の看護系医療人材育成事業で、実習施設棟の整備に六億六千七百万円を計上した。

 新規では、金融・情報特区指定を受けている名護市で関連企業の誘致を促進するため、インフラ整備と人材育成、情報発信の三分野で調査をする事業に二千五百万円を計上した。

 名護市東海岸地域(二見以北十区)の現在の人口が約二千人にとどまっていることから、エイサーや豊年踊りなど地域文化の継承や地域活性化を促すため、地域交流拠点施設を整備する事業に二千三百万円を配分する。

 継続ではほかに、北部地域に循環器系医療支援施設を整備する事業(〇六―〇八年度)で、名護市の北部地区医師会病院に隣接する場所に建設する施設の造成などの実施に向けて一億二千六百万円を盛り込んだ。

 政府は〇七年度の北部振興事業費として公共五十億円、非公共五十億円の合計百億円を計上していたが、米軍普天間飛行場移設問題の影響で、執行が遅れていた。

 岸田沖縄相は「北部地域のさらなる雇用の創出や、魅力ある定住条件の整備に大きく寄与すると期待している」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251700_02.html

 

2008年1月25日(金) 夕刊 7面

沖縄戦の記憶 映像で記録/東京の市民団体

 【糸満】太平洋戦争の「戦場体験」を映像で記録・保存する活動に取り組む東京都の市民団体「戦場体験放映保存の会」が二十四日、沖縄戦体験者の証言収録を糸満市内で始めた。同会が県内での映像を収録するのは初めて。昨年十二月には、テレビ番組で同会の取り組みを知った名護市の宮城都志子さん(62)を中心に「沖縄支局」も設置された。沖縄戦の悲惨な記憶を「記録」として残す活動を県内に広げるため、同会では賛同者を募っている。支局長に就任した宮城さんは「足で稼いで、さまざまな証言を収録していきたい」と話している。

 二〇〇五年に発足した同会では、これまで元兵士らの証言を中心に、全国約千七百人の体験を集約。ビデオやDVDに収録し、一部インターネット上でも放映しており、十五万人の証言を集めてライブラリー化することを目指している。

 元県職員の宮城さんが同会の取り組みをテレビ番組で知り、「一般住民を巻き込んだ沖縄戦の証言も多く集めてほしい」という思いから県内での取材を依頼。同会の協力に応じる形で、県内での撮影が実現した。

 二十四日に県平和祈念資料館で行われた公開収録会では、東京から同会の張替麻里理事ら三人が参加し、瑞慶覧長方さん(77)=南城市、伊禮進順さん(82)=糸満市=の証言を収録した。今回は二十七日まで名護、沖縄、那覇市で取材し、八―九人分の収録を予定している。

 張替理事は「会の目的は歴史の事実を残すこと。沖縄戦のことがきちんと県外の方々に知られていないこともある」と支局設置の意義を述べた。宮城さんは「戦争というものを次の世代に伝えていくためには若い力も必要だ。今後活動の輪を広げていきたい」と語った。

 同会では、証言者や撮影に参加するボランティアを広く募っている。

 問い合わせは宮城さん、電話0980(53)1582。または東京事務局、電話03(3465)6066。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801251700_04.html

 

2008年1月26日(土) 朝刊 1面

米軍、PCB物資来月搬出/日本側へ伝達

量明らかにせず

 【東京】在日米軍は二十五日までに、保有する日本製のポリ塩化ビフェニール(PCB)含有物資を今月末に本州から、二月に沖縄からそれぞれ海路で米国本土へ搬出すると日本政府に伝えた。

 外務省に入った連絡によると、本州から搬送されるのは含有物資約五十トンというが、沖縄から搬出される具体的な量や内容、時期は明らかにされていない。米軍はPCBについて「安全等の観点から個別具体的な搬送の詳細はコメントしない」としているという。

 外務省地位協定室によると、米環境保護庁は今年一月七日から来年一月九日までの間で外国製のPCB含有物資の搬入を制限する有毒物質管理法の適用除外期間を設定。

 日本国内でPCB含有物資を処分できる施設がごく限られていることから、この期間に合わせて米軍が独自に本国に搬出することになった。来年まで期限が設定されていることから、二月以降もPCB含有物資の搬出が行われる可能性もある。

 在日米軍は「PCB含有物資の保管、搬送にあたってはしかるべき環境対策が講じられる」などと伝達。これに対して地位協定室は「安全に期するよう」重ねて申し入れた上で、二十五日夕、県など関係先に米軍からの連絡内容を通達した。

 これまで県内から米軍がPCB含有物資を搬出した例は、二〇〇三年八月十五日、〇四年七月十日の二回で、いずれも海路で搬出されているという。(島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801261300_01.html

 

2008年1月26日(土) 朝刊 2面

普天間移設 変更せず/官房長官

 【東京】米サンフランシスコの連邦地裁が米軍普天間飛行場代替施設建設によるジュゴンへの影響を避けるよう国防総省に「考慮」を命じた判決を受け、町村信孝官房長官は二十五日の定例会見で、普天間移設計画を変更することはないとの姿勢を強調した。

 町村氏は、日米合意した代替施設案(V字案)について「サンゴ、藻場、ジュゴンへの影響を少なくしようと配慮して出来上がった」と述べ、環境への影響は少ないと指摘。

 その上で「(代替施設建設の)計画が環境にどういう影響があるか、環境影響評価をしているところだ。自然への影響を十分配慮しながら、負担軽減と抑止力維持を実現するため、一日も早い移設を進めるのが日本の大方針だ」と強調した。

 また、判決で、環境影響評価文書を同地裁に九十日以内に提出するよう求めていることを念頭に、「まだ係争中、(建設の是非の)判断が確定したわけではなく、保留されている状態だ」との見方を示した。

 移設作業を所管する防衛省でも冷静な受け止めが広がり、豊田硬報道官は同日の定例会見で「今後の裁判の推移については引き続き注視していきたい」と述べつつ、「粛々と作業を進めたい」と静観する姿勢を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801261300_05.html

 

琉球新報 社説

ジュゴン訴訟 判決を尊重するべきだ

 サンフランシスコ連邦地裁は24日(現地時間)、米国防総省が普天間飛行場代替施設建設でジュゴンへの影響などを評価、検討していないことが米文化財保護法(NHPA)違反に当たると判断した。さらに同省として公的な環境への影響調査を実施するよう求めた。自然環境保護を重視した冷静・的確な判断だと評価したい。

 ジュゴン保護訴訟は、2003年に日本環境法律家連盟(名古屋市)、ジュゴンネットワーク沖縄(宜野湾市)、生物多様性センター(米アリゾナ州)などに加え、沖縄周辺海域を生息の北限とするジュゴンが原告となって起こされた。

 米政府は(1)NHPAの適用対象は建造物などでジュゴンのような生物は対象になりえない(2)もし仮に適用対象になるとしても米政府は建設にかかわっていないのだから適用されない―の2点を挙げ反論していた。

 日本の天然記念物に指定されているジュゴンはいま、絶滅の瀬戸際にある。07年8月、環境省は国内の生息個体数が50頭以下であるとして、絶滅の恐れのある野生生物を分類したレッドリストに新たに追加し、絶滅危惧(きぐ)種として最もランクが高いIAに分類した。

 04年には、タイのバンコクで開かれた世界自然保護会議で、普天間移設をめぐるジュゴンなどの希少野生生物保護を勧告した。

 これほど国際的にも注目されているのに、日本政府には保護への真剣さが感じられない。国が提出した環境影響評価(アセスメント)方法書には、移設最優先の姿勢が如実に表れている。当初提出された薄っぺらな方法書に批判が強まると、知事意見提出期限間際になって150ページもの追加資料を提出してきた。

 一方の県もはっきりしない姿勢だ。今月21日に沖縄防衛局に提出された知事意見は、事前調査の中止には踏み込まなかった。県環境影響評価審査会の答申を尊重し、生物への影響を重視するならば中止を求めるべきであった。

 判決には、代替施設建設を差し止める強制力はない。しかし、訴訟原告団の米自然保護団体「アースジャスティス」のサラ・バート氏は「国防総省に対して海外での活動による他国の文化遺産の損壊回避に、慎重に注意を払う責任を明確にした」と意義を強調した。

 判決は、同省に対してジュゴンへの影響などを示す文書を90日以内に提出するよう求めている。建設を進めるなら、連邦地裁の要求に応えなければならないはずだ。

 アセスを拙速に進めれば、日本政府も国際的な批判を浴びることは必至だ。沖縄の一地域の環境問題ではないことが、今回の判決でさらに明確になった。

(1/26 10:04)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30824-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月27日朝刊)

[ジュゴン訴訟判決]

拙速手続きへの警鐘だ


米国法を適用した判決

 ジュゴンが二頭、寄り添いながら悠々と辺野古沖を泳いでいる。どことなくユーモラスで、今風に言えば、めちゃかわいい。テレビ・ニュースでおなじみのこのシーンは、絶滅の危機にひんしている生き物への慈しみの感情をかき立てずにはおかない。

 子どもたちは、この島の自然の豊かさや命の尊さをジュゴンの映像を通して、親子の語らいの中で、学ぶことができる。ジュゴンは、環境教育、情操教育の生きた教材だ。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設がジュゴンにとって大きな脅威であることは言うまでもない。

 大規模埋め立てを伴う巨大な基地建設は、ジュゴンの生息にどのような影響を及ぼすのか。ジュゴンはほんとに大丈夫なのか。誰もが感じるであろう危惧に、アメリカの連邦地方裁判所が独自の立場から明確な答えを出した。

 日米両国の自然保護団体などが米国防総省を相手に起こしていた「沖縄ジュゴン訴訟」で、米サンフランシスコの連邦地裁は国防総省に対し、基地建設によるジュゴンへの影響を考慮するよう求めるとともに、ジュゴンに関する環境影響評価(アセスメント)文書を九十日以内に提出するよう命じた。

 画期的な判決である。

 米国の文化財保護法(NHPA、別名・国家歴史保存法)は、米政府による海外での行為に対し、他国の文化財への影響を考慮するよう義務付けている。一方、ジュゴンは日本の天然記念物であり、環境省はジュゴンを絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧1A類」に指定している。

 これらの事実に着目して提起されたのが「沖縄ジュゴン訴訟」である。判決のどこが画期的か。

 第一に判決は、海外における米軍基地建設に米国の国内法を適用し、沖縄周辺海域のジュゴンを保護対象として認定した。第二に、判決は、米国防総省のこれまでの取り組みが米国の文化財保護法に違反していることを認め、是正措置を求めた。

 基地建設によってジュゴンにどのような影響が生じるのか、きちんと調査し、事前評価をせよ、と国防総省に求めているのである。


アセス方法書書き直し


 この判決を誰よりも重く受け止めなければならないのは、事業者である防衛省と、許認可権を持つ県である。

 防衛省の環境影響評価は、方法書を作成して県に送付する最初の段階から手続き上の問題があり、内容面でも、故意に伏せられている部分が多く、不備が目立った。

 県環境影響評価審査会が方法書の書き直しを求める意見を知事に提出したのは、当然だといえよう。

 だが、仲井真弘多知事が沖縄防衛局に提出した知事意見は、差し戻しを求めず、政府への配慮を強くにじませた。

 徹底して工期にこだわり、二月からのアセス調査着手に向けて動く政府。この問題を早く片付けたいと常々、主張している仲井真知事。双方の主張は「早く」という部分で一致するようになった。

 気になるのは、日米両政府が決めた工期と日程にあわせて事を進めるあまり、肝心の環境アセス手続きが骨抜きにされるおそれがあることだ。

 米連邦地裁での今回の判決は、拙速への警鐘、と受け止めるべきである。

 アセス方法書に対する知事意見は、ジュゴンについて「複数年」の調査実施を求めているが、沖縄防衛局が公示した環境現況調査の入札内容を見る限り、複数年実施も疑わしくなった。


ここにも「アメとムチ」


 米連邦地裁による判決を機会に、あらためて問題にしたいのは北部振興事業費と環境アセスの関係について、である。本来、両者の間にはなんの関係もないはずだ。というより、政治的に関係付けてはならないのである。

 環境アセスは、環境影響評価法や県環境影響評価条例に基づいて、法の趣旨に沿って、進めなければならない。

 ところが、方法書に対する知事意見提出の際に、政府サイドから伝わってきたのは、アメとムチの発想だった。

 「知事が方法書の差し戻しを求めたら、普天間移設に関する政府と地元の協議が円滑に進まなくなり、(北部振興事業費予算は)執行できない」。そんな趣旨の発言をしたというのだから、あきれて物が言えない。

 天然記念物のジュゴンや、かけがえのない自然環境が大規模な基地建設によって、どのような影響を受けるのか。環境アセスへの対応に慎重すぎるということはない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080127.html#no_1

 

2008年1月29日(火) 朝刊 1面

防衛省、アセス了承要求/県は難色進展なしも

 防衛省と内閣府幹部らが二十八日、県庁を訪ね、来月七日開催で調整を進めている米軍普天間飛行場の移設に関する次回協議会の審議内容について県や名護市幹部と意見交換した。防衛省側は二月中の環境影響評価(アセスメント)調査着手の意向を伝え、次回協議会での仲井真弘多知事の了承を求めた。これに対し県側は、次回協議会での了承は「時期尚早」と主張、実質的な協議の進展が図れない可能性も出ている。

 防衛省側は次回協議会で、知事からアセス調査に必要な許認可への理解を取り付けたい考え。

 一方、県は知事意見で方法書の「書き直し」と公表、審査を求めたことから、「県環境影響評価審査会の審査見通しもつかない現状では、二月七日の協議会で知事が了承するのは無理」との認識を表明。防衛省の協議方針には応じられない姿勢を示した。

 また、県などが求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の閉鎖について防衛省は「米側との調整を含めて話ができる状態ではない」とし、次回協議会で進展はないとの見通しを明らかにした。

 名護市は代替施設のアセス手続きが実施されている現状などを指摘し、再編交付金の支給を要請。政府側は名護市が沖合移動などの条件を付していることから困難視したという。

 政府側は防衛省地方協力局の廣瀬行成地方協力企画課長、藤井高文沖縄調整官、内閣府の平上功治参事官ら八人が訪問。約三時間半にわたり県、名護市幹部と協議した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801291300_02.html

 

2008年1月29日(火) 朝刊 25面

「超党派維持」訴え/文科省対応に抗議

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十八日、「集団自決」への日本軍の強制を明示する教科書記述を認めなかった文部科学省の訂正申請への対応に抗議する集会を、那覇市の教育福祉会館で開き、約百五十人が参加した。

 集会では琉球大の高嶋伸欣教授が、訂正申請で文科省から四回の書き直しを命じられた教科書会社があったことを紹介、「あいまいな規則を文科省が意図的に運用している。教科書検定制度を大きく改善させなければならない」と話した。

 同大の山口剛史准教授は「集団自決」への軍強制を認めない教科書検定意見が残された影響で「訂正申請後の記述でも、軍強制と『集団自決』の関係があやふやにされた」ことを説明し、「四月からは新学習指導要領で愛国心教育が始まり、教科書への悪影響や攻撃が続く」と懸念を示した。

 会場からは、自民党県連が、九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会に解散を求める方針を決めたことを疑問視する声が相次ぎ、「県民は『沖縄戦の真実を教科書に』という一致点のもと、超党派でのとりくみをすすめよう」との集会アピールが採択された。

 集会に参加した青春を語る会の中山きく代表(白梅同窓会長)は「沖縄戦を体験した者として、軍命がなかったとは言わせない。今後も同じ県民として超党派の立場で運動できるよう頑張りたい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801291300_05.html

 

2008年1月29日(火) 夕刊 1面

「集団自決」防衛研資料「軍命なし」/防衛省見解ではない

 【東京】政府は二十九日午前に閣議決定した答弁書で、慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が所蔵資料に「戦隊長命令はなかった」という趣旨の見解を付けて公開していた問題について、「防衛省の見解ではない」との認識を正式に表明した。見解に署名があった防衛研究所戦史部に聴取した結果、担当職員から「貼付していない」との回答を得たとしている。

 糸数慶子参院議員(無所属)、鈴木宗男衆院議員(新党大地)の質問主意書に答えた。

 防研は今月十五日、沖縄タイムスの取材に「聞き取り調査をしたが、だれが張り付けたか分からない」と答えていた。

 防研は所蔵資料の慶良間戦体験者の手記に「赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令は出されていないことが証明されている」と書いた見解を付していた。

 ただ、通常の資料に付ける公式の「史料経歴表」とは別のページにワープロ書きの紙片で張り付けられており、図書館史料室は「不適切だ」として今月七日に削除した。

 防研は別の複数の資料にも、「集団自決は村役場の独断」など、戦隊長命令を明確に否定する所見を付している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801291700_04.html

 

琉球新報 社説

防衛省改革 体質にこそ切り込むべき

 官邸主導で設置された政府の「防衛省改革に関する有識者会議」での論議が進むなか、石破茂防衛相が本省組織を抜本的に見直す組織改革の基本構想をまとめた。

 構想は、反目が伝えられる背広組と制服組の一体化を目指し、解体を含む組織の大胆な再編統合を推し進めることなどを柱に盛り込んだ。

 具体的には、背広組の内局と制服組で構成される自衛隊各幕僚監部を「防衛力整備」「作戦」「渉外」(いずれも仮称)の3局に再編成する。「防衛力整備局」は防衛政策のほか、予算や人事、装備品調達を担当する。部隊運用については「作戦局」が担い、作戦局長は現在の統合幕僚長の役割も担う。

 既存組織を解体・再編し背広組と制服組を混在させれば、組織の中に一体感が生まれ、それをてこに不祥事の防止につなげたいとの狙いなのだろう。インド洋での米国艦への給油量の訂正問題は、組織内の意思の疎通、風通しの悪さに起因した。そんな認識が念頭にあることが読み取れる。

 しかし、それだけで果たして相次ぐ不祥事が一掃されるのかどうか、いささか疑問が残る。改革への道筋をきちんと示したことになるのか。それがさっぱり見えてこないのだ。

 不正が噴き出す背景に構造的な体質、問題が潜んでいないか。そんな不信感を抱く国民は少なくないはずだ。

 例えば、制服組も背広組も含む多くの防衛省職員を指導・監督する事務方トップの汚職である。元次官による偶発的で特殊な事例として起きた事件なのか、個人の意識や資質の問題で済ませられるのかどうか。再編成だけで説明がつくとは到底思えない。

 膨大な税金の支出を伴う装備品の調達に関していえば、海外メーカーとの交渉を特定業者に丸投げする仕組みに問題があった。こうした温床をさらに掘り下げて検証した上で、不正や腐敗の介入を許さない強固な仕組みこそつくるべきではないのか。

 水増し請求が行われてもチェックの利かない体制の問題を、背広組と制服組の混在は、どのように解消してくれるのか。納得できる理詰めの根拠を示してほしい。

 文民統制の面でも強い懸念がある。組織内の力学次第で制服組の発言力が増し、文民統制を危うくする事態を招くことはないか。この部分について詳細に説明されなければならない。

 防衛省は不祥事が起きるたび主に組織改編で対応してきた。だが不祥事は繰り返されている。姿形だけにこだわるのではなく、体質そのものに大胆に切り込む改革案が見たい。

(1/29 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30903-storytopic-11.html

 

2008年1月30日(水) 朝刊 2面

首相、問題視せず/記述訂正申請

 【東京】福田康夫首相は二十九日の衆院予算委員会で、昨年十二月に承認された沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書記述の訂正申請について「教科用図書検定調査審議会における慎重かつ丁寧な審議の結果に基づいていると承知している」と述べ、問題視しない考えを明らかにした。赤嶺政賢衆院議員(共産)の質問に答えた。訂正申請承認後、福田首相が「集団自決」問題で国会答弁したのは初めて。

 赤嶺氏は検定審委員を務める筑波大の波多野澄雄副学長への聞き取りで、「集団自決への日本軍の強制の有無について審議会では方向性を出さなかった」との回答を得たことを説明。

 審議会が訂正申請審議に際して取りまとめた「とらえ方」にも、軍の強制をどう位置づけるか明記されていなかったと指摘し「『とらえ方』に一言もないのに、なぜ軍の強制を訂正申請で削除したのか」と追及した。

 これに対し、渡海紀三朗文部科学相は「強制性があったかなかったかについて、断定すべきだというとらえ方はされていない。当時の県民から見れば強制的といわれる事実があったと記述された申請も、承認されている」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801301300_02.html

 

2008年1月30日(水) 朝刊 27面

大浦湾サンゴ「白保に次ぐ大群落」

 米軍普天間飛行場の移設先に近い名護市の大浦湾北部で見つかったアオサンゴ群落について、ジュゴン保護基金委員会と沖縄リーフチェック研究会は二十九日、県庁で記者会見し、長さ約五十メートル幅約三十メートルの範囲で密集しているとの調査結果を発表した。「白保に次ぐ規模の大群落だ」として、代替施設の建設断念とサンゴの保全を求めた。

 調査は今月十九、二十の両日、延べ三十六人のダイバーが区画を分担する方法で実施。初めて現場の立体的な分布図を作成した。

 今回は簡単な調査だったが、三月にはWWF(世界自然保護基金)ジャパンや日本自然保護協会も加わって、より詳細に調査する。シャコガイやクマノミの生息位置も加え、「生き物マップ」として完成させたい考え。

 同委員会の東恩納琢磨事務局長は「海域利用のルール作りや、いずれはジュゴン保護区の設定に活用できる」と話した。「沖縄ジュゴン訴訟」の判決で米サンフランシスコの連邦地裁が国防総省に義務付けた意見聴取に原告として応じる際も、活用するという。

 群落は辺野古崎から約三・五キロの距離にあり、同研究会の安部真理子会長は「大規模な埋め立てで海流が変わり、アオサンゴにも影響する」と、代替施設建設に懸念を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801301300_05.html

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