2008年2月12日(火) 夕刊 1面
米兵が中学生暴行/沖縄署、容疑で逮捕
中部一帯連れ回す
本島中部の女子中学生(14)を乗用車内で暴行したとして、沖縄署は十一日午前、在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)=北中城村島袋=を強姦の容疑で逮捕した。ハドナット容疑者は「抱き付いたり押し倒したりはしたが、暴行はしていない」と容疑を否認しているという。仲井真弘多知事は同日午前、「女性の人権を蹂躙する事件で決して許すことができない」と非難。東門美津子沖縄市長と野国昌春北谷町長は十二日午前に北中城村の米海兵隊外交政策部(G5)を訪れ抗議した。沖縄署は同日午後、ハドナット容疑者を送検した。
調べでは、ハドナット容疑者は十日午後十時半ごろ、北谷町内の公園前路上に止めた車の中で、少女に暴行した疑い。
少女は午後十一時前に解放され、公園近くでうずくまっているところを警察に保護された。動揺している様子だったという。
同署によると、ハドナット容疑者は同日午後八時二十分ごろ、沖縄市のコザ・ミュージックタウンで友人二人といた少女に「送っていくよ」などと声を掛け、北中城村島袋の同容疑者の自宅にバイクで連れて行った。少女は怖くなって逃げ出したが、数軒先で追い付いたハドナット容疑者は「ごめん、ドライブしよう」などと少女を車に乗せ、中部一帯を連れ回した後、暴行したという。
心配した友人らと少女の間で何回か携帯電話がつながり、「助けて」という少女の声が聞こえたため、友人らが少女の家族らと一緒に同署に通報した。少女が男の自宅や車、人相などを覚えていたことから、同署が自宅にいたハドナット容疑者に任意同行を求め、公園で緊急逮捕した。
同署は十一日夜、ハドナット容疑者の自宅を捜索し、車やバイク、ジャンパーなど数点を押収し、鑑定作業を進めている。
ハドナット容疑者は一九九六年に海兵隊に入隊し、二〇〇六年十月にキャンプ・コートニーに配属されたと話しているという。
県内では一九九五年に海兵隊員三人による暴行事件が起きている。
◇ ◇ ◇
知事「強い憤り」
米側に県抗議
米海兵隊員が強姦容疑で逮捕されたことを受け、仲井真弘多知事は十一日午前、県庁で記者団に「女性の人権を蹂躙する重大な犯罪であり、特に、被害者が中学生であることを考えれば、決して許すことはできず、強い憤りを覚える」と述べ、米軍への抗議姿勢を鮮明にした。
仲井真知事は同日早朝に事件の一報を受けた。「あってはならないことがまた起きたと思った」といい、「事件が起こるたびに米軍に抜本的な対応を迫っているが、またもや事件が生じたことは極めて遺憾。被害者やご家族へも配慮し、適切に対応したい」と述べた。
十二日午後には在沖米軍司令部のほか、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所を訪ね、再発防止と綱紀粛正を申し入れる。
県議会 あすにも軍特委
議長「許し難い暴挙」
県議会の仲里利信議長は、米海兵隊員の暴行事件について「許し難い暴挙。県民感情を逆なでする事件で、誠に遺憾」と述べ、「米軍に絡む事件・事故が絶えず、綱紀粛正が徹底していないのではないか」と批判した。
県議会米軍基地関係等特別委員会は県警の捜査や県の対応を受けて、二月定例会が開会する十三日の本会議終了後にも委員会を開き、事件を批判し、米軍の綱紀粛正と再発防止を求める抗議決議案を可決する。
親川盛一委員長は「あってはならない事件で絶対に許せない。県民の人権をどう考えているのかと怒りがこみ上げる」と憤りの声を上げた。
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2008年2月12日(火) 夕刊 7面
携帯越し「助けて」/安保の影 犠牲また
「助けて」という少女の叫びは届かなかった。十日発生した米海兵隊員による暴行事件。訓練された兵士が、また牙をむいた。北中城村の容疑者宅周辺では、三十八歳の容疑者が甘い言葉を操り、執拗に少女に追いすがる様子が目撃されていた。おびえる子どもたち。大人たちは、痛憤に声を震わせた。少女一人の尊厳も守れない安全保障とは何か。繰り返されてしまった凶悪事件は、基地と隣り合わせで生きる意味をあらためて突き付けた。
「助けて」―。つなぎっ放しの携帯電話から、時折少女の叫び声が響いた。迫って来る米兵の姿に、「来た」と言っては会話は途切れる。携帯電話を隠すガサガサとした雑音。少女とのたった一つの接点を切らすまいと、少女の友人たちはわずかな物音にも神経をとがらせた。事の重大さに気付いた友人らは、少女の親族らにも助けを求め、総勢約十人で沖縄署に駆け込んだ。
少女はハドナット容疑者の振る舞いに異変を感じた後、すきを見て友人らに携帯電話で助けを求めた。「どこにいる?」「分からない。男が来た」。断片的な会話しかできない中、友人らは数十分も電話をつなぎっ放しにし、少女の無事を祈った。車に乗せられ中部方面に向かった後も、少女は「車から降りられない」などと急を知らせていた。
少女は車で連れ回されている途中、機転を利かせて「家はこの辺りだから」などとうそを言い、自宅から遠く離れた場所でいったんは車を降りた。だが、夜間で地理も分からず、迷っていたため、再びハドナット容疑者の車に乗せられた。少女は別の場所でも「友達と待ち合わせしている」とうそを言い、車を降りたが、逃げ切れなかったという。
同署によると、ハドナット容疑者は沖縄市のコザ・ミュージックタウン内の店から出てきた少女ら三人に「その服どこで買ったの」などと声を掛けた。数分間話した後、少女だけをバイクに乗せたという。
ハドナット容疑者の自宅近くの住民は、事件当日の午後九時ごろ、被害者とみられる若い女性が逃げる姿を目撃。ハドナット容疑者は「待って。お願い。ごめんなさい」などと呼び掛け、少女を車に乗せたという。
◇ ◇ ◇
基地の街 不安・恐怖
米海兵隊員による暴行事件の現場は、米軍基地近くの住宅街だった。米軍との共存を強いられる住民らは、不安や恐怖をあらためて呼び起こされた。
現場は北谷町内の幹線道路から、十メートルほど離れた住宅街にある公園脇の道路。夜になると人や車の行き来も少なくなり、事件が起きた十日の夜も「人の叫び声を聞いたり、争う様子を感じたりすることはなかった」と近所の住民は口をそろえた。
その一方、米兵や家族も多く住む地域で、公園脇にはYナンバーの車が並び、週末には集まった米兵らがたき火をして騒いだり、けんかしたりすることも度々あったという。
近くの自営業の男性(40)は「以前も酔った外国人が叫び、二回ほどパトカーが来た。警察もパトロールのコースに入れるなど、対策が必要だったのではないか」と指摘した。
公園の向かいに住む高校一年生は「普段は米軍基地に対して反感を覚えることはないが、また米兵が事件を起こしたと思うと怖くなる。住民の安全を守るという最低限度のことに国は責任をもってほしい」という。
二十代の娘がいるという主婦(62)も「怖くて夜は一人で出歩かせたくない。どうにかしてほしい。基地がなくなるのが一番いいのですが」と話した。
「絶対に許されない」/綱紀粛正の要求高まる
基地・軍隊を許さない女たちの会共同代表で強姦救援センター・沖縄(レイコ)代表の高里鈴代さんは「安心できるはずの場所から言葉巧みに誘い出されて、少女は被害に遭った。すごく悪質で絶対に許されない。犯人が巧みなのであって、彼女に一切落ち度はない」と訴えた。
その上で「若い兵士の夜間外出制限が犯罪防止策として出るが、この兵士は三十八歳で、基地の外に住んでおり、防止策が全部ぶっ飛ぶ出来事。じゃあ、どうやって米兵の犯罪を防ぐのか。米軍は事件のたびに『綱紀粛正』と言い続けているが、事件はずっと続いている。しかも性犯罪で表に出るのは、実際にあった被害の一部でしかない」と強調した。
県PTA連合会の諸見里宏美会長は「非常にショックで悲しく、ぞっとする。子どもがそのような目に遭うのを絶対許してはならない。犯人は罪を認めて謝罪し、賠償するなど誠意を見せ(少女の)心の傷が癒える対応をしてほしい」と話した。
県高校PTA連合会の西銘生弘会長は「またか、と非常に驚いている。一九九五年の暴行事件の時にも県民大会で訴えたのに、また同じことが起こった。基地撤去に向けて動くべきではないか」と述べた。
高教組の松田寛委員長は「ただ、憤るばかりだ。基地ある限り犯罪が消えないのなら、基地をなくすしかない。これまでと同じような県の申し入れだけでは、県民は許せないだろう」と強い調子で話した。
沖教組の大浜敏夫委員長は「子どもを預かる教員として満身の怒りがこみ上げてくる」と声を震わせた。「米軍基地受け入れを容認する国や県の責任も問われる。再び県民が、米軍基地をなくすため具体的に行動を起こすしかない」と語気を強めた。
県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は、「子どもを対象にこのような犯罪を起こし、地域の安全を奪う米軍基地の存在は許せない」と話した。
沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「少女の尊厳は何にも代えられない。基地の存在はやむを得ないという県民にも、この蛮行を直視して考え直してほしい」と語った。
東門市長ら謝罪要求
【中部】米海兵隊員による暴行事件を受け、東門美津子沖縄市長と野国昌春北谷町長らは十二日午前、北中城村石平の米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、再発防止の抜本的な解決策の公表と被害者への謝罪を求めた。
抗議では「米軍構成員等の教育を徹底し、綱紀粛正を図るとともに、被疑者への厳格な処罰を行うべきだ」と強調。容疑者が所属するキャンプコートニーの司令官あてに抗議文を手渡した。
野国町長は、逮捕された海兵隊員について「十四歳の子どもがいてもおかしくない年齢であり、また軍でも指導的な立場にある者が事件を起こしたことは問題だ」と米軍に抗議。その上で被害者の精神的ケアに配慮するよう要望した。
野国町長によると、対応した米外交政策部のフォースデッド中佐は「悲しい事件であり、許されるものではない。上司に伝えたい」などと話した、という。東門市長らはその後、在沖米国総領事を訪ね、同日午後には沖縄防衛局、外務省沖縄事務所にも抗議行動する。
東門市長は十一日、容疑者が身柄を拘束されている沖縄署を訪ね、事件について説明を受けた。東門市長は「私にも娘がおり、胸が痛む。女性の尊厳、人権を無視した犯罪は絶対に許せない」と語気を強めた。
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2008年2月12日(火) 夕刊 1・7面
政府「極めて遺憾」
外務副大臣 沖縄派遣へ
【東京】在沖米海兵隊員による中学生暴行事件を受け、政府は十二日午前の閣議で「極めて遺憾」との認識で一致した。福田康夫首相は関係閣僚に「大変重たい事件だ。しっかり対応してほしい」と述べ、米側に綱紀粛正を求めるよう指示した。関係閣僚からは日米関係に及ぼす影響を懸念する声が相次ぎ、石破茂防衛相は日本政府として実効性ある再発防止策に具体的に関与する必要性を初めて指摘した。
閣議後会見で町村信孝官房長官は「これまでにも(在沖米軍による)大きな事件があり、累次にわたって綱紀粛正、再発防止を申し入れたにもかかわらず、米軍人がこのような容疑で逮捕されたのは誠に遺憾だ」と不快感を表明した。
町村氏は同日午後、県選出、出身の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)が事件の再発防止などを要請した際に、小野寺五典外務副大臣を一両日中に沖縄に派遣し、在沖米軍に抗議する考えを明らかにした。
石破氏は「極めて強い憤りを感じざるを得ない。日米関係に大きな影響を与える」との認識を示し、「(米側に)申し入れるだけでは済まされない。具体的にどうすべきか、日米両政府の責任でもある」と早急に対応する考えを明らかにした。
高村正彦外相は「いいかげんにしてくれという感じだ」と強調。米軍普天間飛行場移設への影響について「ない、ということはあり得ない」と懸念した。
岸田文雄沖縄担当相は閣議前、高村外相に「引き続き綱紀粛正、再発防止を米側に求めてほしい」と要望。岸田氏によると、福田首相は閣僚懇談会で一九九五年の米兵による暴行事件にも言及し、繰り返される米軍の不祥事を懸念したという。
政府は事件を受け、十二日までに外務省の西宮伸一北米局長がドノバン駐日米国大使館次席公使に、防衛省の地引良幸地方協力局長がライト在日米軍司令官に、それぞれ綱紀粛正と再発防止の徹底を申し入れた。
再発防止に全力 首相が姿勢強調
【東京】福田康夫首相は十二日午前の衆院予算委員会で、在沖米海兵隊員による中学生暴行事件について「許されることではない。過去においても何度か起こっているにもかかわらず、また起きてしまったということは本当に重大なことだと受け止めている」との認識を示した。
その上で、「政府としても米国としっかり交渉していくが、まずは事実関係の究明ということがある。再発防止のためにできるだけのことをしていくが、わが国の法と証拠に基づいて適切に対処していく」と述べ、政府を挙げて全力で取り組む姿勢を強調した。
◇ ◇ ◇
那覇市議会が抗議決議
那覇市議会(安慶田光男議長)は十二日午後の臨時会で、米海兵隊員による暴行事件に対し、被害者への謝罪、事件・事故の再発防止策などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決する。同日の議会運営委員会(屋良栄作委員長)で決めた。
決議と意見書は、今回の事件が過去の暴行事件を想起させ、県民に強い衝撃と不安を与えていると指摘。「復帰後の在沖米軍・軍属等による犯罪件数は、平成十八年度末時点で五千四百五十一件に至り改まらぬ米軍及び米兵の体質に激しい憤りを禁じ得ない」としている。
安全確保へ通知
教育庁各校へ
県教育庁は十二日午前、米海兵隊員による暴行事件の発生を受け、市町村教育委員会の教育長、県立高校と特別支援学校の校長、各教育事務所長に対し、児童・生徒の安全指導と安全確保の徹底を呼び掛ける通知を送付した。
通知は、PTAや地域、警察、関係機関などが連携して児童・生徒の安全確保に努めることを要請。児童などに対し(1)不審者と思われる人に近付かない、絶対ついていかないなどの安全対策の徹底を図る(2)保護者同伴による登下校や集団下校を心がける(3)警察などと連携した防犯教室の開催―などを呼び掛けている。
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2008年2月13日(水) 朝刊 1面
知事、再発防止訴え/米兵暴行事件
四軍調整官に抗議
米兵による女子中学生暴行事件で、在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)とケビン・メア在沖米国総領事らが十二日、県庁に仲井真弘多知事を訪ね、事件について「心より遺憾に思う」と謝罪した上で、沖縄署の捜査に全面的に協力する考えを示した。仲井真知事は「こういう事件が続くと、県民の怒りが頂点に達し、今後の基地問題に深刻な影響を与えかねない」と指摘。再発防止に全力を挙げるよう求めた。一方、シーファー駐日米大使と在日米軍トップのライト司令官が十三日急きょ来県、県庁に仲井真弘多知事を訪ね、謝罪する。
知事との会談の中でジルマー中将は、「倫理に関し、また個人としてわきまえなければならない高い規範について教育をする」と述べ、再発防止に向け、十三日から在日米海兵隊員全員を対象にあらためて倫理・規範教育を行うと表明した。
中将はまた、「(今回の事件は)私たち軍人が一人一人持つ価値観と全く相反するということを理解していただきたい」として、事件が偶発的なものであるとの考えも強調。「(日米間の)良い関係を維持するためにも全面的な協力をする」とも述べ、事件が県民の米軍基地に対する感情を悪化させないよう努力する考えも示した。
仲井真知事は、「事件は女性の人権を蹂躙する極めて悪質な犯罪。被害者は十四歳、中学生で、強い怒りを感じざるを得ない」と抗議。「こういう事件がまたもや発生したかというのがわれわれの感じであり、極めて遺憾」と述べ、度重なる事件の発生に不快感を示した。
同席したメア総領事は「極めて遺憾なことで米政府も真摯に受け止めている。被害者とご家族の心中も察し申し上げたい」と述べた。
外務副大臣 きょう派遣
政府、米に抗議へ
【東京】政府は十二日、米兵暴行事件を受け、十三日に小野寺五典外務副大臣を沖縄に派遣することを正式に決定した。
小野寺副大臣は十三日、在日米海兵隊トップのリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)と会談。事件に抗議するとともに、綱紀粛正と再発防止策を徹底するよう強く要請する。
その後、仲井真弘多知事を訪ね、政府として事件を深刻に受け止めていることを伝えるとともに、今後の対応を説明する予定だ。
町村信孝官房長官は記者会見で派遣に関し、「政府の意思をはっきりさせるためだ」と意義を強調した。
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2008年2月13日(水) 朝刊 2面
外務省、米側に要請/綱紀粛正プログラム再点検
【東京】外務省の藪中三十二事務次官は十二日午後、ドノバン駐日米臨時代理大使を外務省に呼び、米兵の事件について、「綱紀粛正のプログラムとを再点検が必要ではないか。(日本政府も)協力するので、それに手をつけてほしい」と、再発防止策に日本側が具体的に関与する考えを示した。同日開かれた衆院予算委員会の中で高村正彦外相が明らかにした。
藪中次官は「綱紀粛正、再発防止策を再三求めてきたにもかかわらず、米兵が逮捕されたことは極めて遺憾だ」と強く抗議。再発防止策の充実、徹底を図るよう求めた。
ドノバン氏は「事態を極めて深刻に受け止めている。被害者と家族の方々に心からお見舞い申し上げたい」と述べ、捜査に全面的な協力を約束。同席したフロック在日米軍副司令官は「米軍は性的暴力を一切許容しない」と強調した。
会談後、ドノバン氏は日米地位協定の改正を検討するかとの記者団の質問に対し、「まず事実関係を把握し、法にのっとって処理することが重要だ」と述べるにとどまった。
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2008年2月13日(水) 朝刊 2面
地位協定改正に消極的/官房長官 運用改善を強調
【東京】在沖米海兵隊員による暴行事件を受け、町村信孝官房長官は十二日夕の定例記者会見で、日米地位協定見直しの可能性について「ただちに地位協定の改正というところに話がいくのは、過去の(外相)経験だけで言えば、そういうことにはならないのではないか」と述べ、消極的な考えを示した。
二〇〇四―〇五、〇七年に外相を務めた町村氏は「主として運用改善で今日までやってきた。例えば米兵は以前は一切(容疑者の身柄を日本側に)引き渡さないということだったが、今は一定の条件の下に日本警察に引き渡す。当たり前かもしれないが改善が図られている」と述べ、運用改善が機能していることを強調した。
町村氏は一方、容疑者の米海兵隊員の取り調べの際の米政府関係者の立ち会い問題については「そのことが(捜査の)妨げになっているという実態があるのならば話は別だが、特に今回の事件では(米側は)『捜査に全面協力する』と言っている。そういう問題は生じないのではないか」と問題視しない考えを示した。
真剣に対応
福田首相
【東京】福田康夫首相は十二日午後開かれた衆院予算委員会で、米兵の暴行事件への政府対応について「起きてはいけないことがまた起きた。どう対応するか真剣に考えなければいけない。(事件再発が)絶対ないよう要請を強くしないといけない」と述べた。下地幹郎議員(無所属)らの質問に答えた。
下地氏は「総理が厳粛な言葉を言っても県民は信じない。こういう事件が起きないためには、週末に自治体と米軍、県警の三者が一体となってパトロールしなければ減らない。総理が提案して日米合意すれば国の信頼は得られる」と追及。
福田首相は「その案が有効かどうか、有効な感じはするが、それも含めて検討していきたい」と述べた。
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2008年2月13日(水) 朝刊 25面
ゲート前300人抗議/米兵暴行事件
【北中城】米兵暴行事件を受け、沖縄平和運動センターと中部地区労は十二日夕、北中城村の米軍キャンプ瑞慶覧石平ゲート前で緊急抗議集会を開いた。開催は急きょ決まったが、寒風の中約三百人(主催者発表)が参加。海兵隊基地司令部など在沖米軍中枢の建物に向かって、「子どもたちの平和を返せ」「安全な暮らしを返せ」とこぶしを突き上げた。
同センターの崎山嗣幸議長は「はらわたが煮えくり返る思いだ。再び事件を許さないため、温床である基地をなくす闘いに立ち上がろう」とあいさつ。今後、大規模な抗議集会開催を広く呼び掛ける。
平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「一九九五年の事件後も、県民は経済的な理由を挙げて、米軍を追い出すことはしなかった。少女を犠牲にした」と悔恨を込めた。「私たち自身の責任を自覚し、反省して、基地撤去を本気で目標にしよう」と訴えた。
沖縄市から参加した北城博子さん(39)は「県民はDV(家庭内暴力)の被害者のように、米軍の暴力の積み重ねに感覚がまひしてきたのではないか」と問い掛け、「我慢するうちに今回の事件が起きてしまった。依存から抜け出さないと」と決意を込めた。
「同じ女性として、絶対に許せない」と憤ったうるま市の伊波雅子さん(33)。「米軍は言葉だけで済ませるのではなく、沖縄から出ていくことで謝罪してほしい」と語気を強めた。
同市の玉城毅さん(57)は「犠牲の上に成り立つ経済発展でいいのか。個人では何もできないが、力を合わせて基地撤去につなげたい」と語った。
抗議声明相次ぐ
米兵による暴行事件を受け十二日、市民団体の抗議声明も相次いだ。
県統一行動連絡会議(新垣繁信代表幹事)は日米両政府に対し「再発防止と綱紀粛正の連呼は、その場しのぎの時間稼ぎにすぎないことは明らか」と批判した。
「あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク」(宮城清子氏ら共同代表)も抗議文を公表。基地移設問題にも触れ「米軍の傲慢な姿勢からして、事件の続発は必然的」と糾弾した。
子の安全確保を
教育庁が注意喚起
県教育庁は十二日午前、米兵による暴行事件を受け、市町村教育委員会の教育長や県立高校と特別支援学校の校長、各教育事務所長に対し、児童・生徒の安全指導と安全確保の徹底を呼び掛ける通知を送付した。
県教育庁は同日午後、県内六教育事務所長を集めた緊急の会議も開催し注意喚起の徹底を確認した。早急に各事務所単位で校長会を開くほか、県立の高校と特別支援学校も今週中に緊急の校長会を開催する。
通知は、PTAや地域、警察、関係機関などが連携して児童・生徒の安全確保に努めることを要請。児童などに対し(1)不審者と思われる人に近づかない、絶対ついていかないなどの安全対策の徹底を図る(2)保護者同伴による登下校や集団下校を心掛ける(3)警察などと連携した防犯教室の開催―などを呼び掛けている。
県教育委員会は十三日の定例会で抗議声明や再発防止などを求める要請行動などを決める。
北谷議会も決議提案へ
【北谷】北谷町議会(宮里友常議長)は十二日、米兵による暴行事件を受け、同町役場で基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開き、被害者への謝罪と補償、再発防止の徹底などを求める抗議決議と意見書の両案を十三日に開く臨時会に提案することを決めた。
両案では「悪質で深刻な事件であり、被害者の心中を察すると断じて許せるものではない」「子を持つ親の受けた衝撃は計り知れないものがある」などと事件を非難している。
東京でも抗議
【東京】首都圏を中心に平和運動を展開する命どぅ宝ネットワーク(太田武二代表)のメンバーらは十二日夜、都内にある官邸や内閣府、米大使館を訪れ、米兵の暴行事件に抗議した。
三カ所とも中には入れなかったが、正門前で「沖縄の女性たちは生きる尊厳を踏みにじられている」などと訴えた。
与那原議会も18日に臨時会
【与那原】与那原町議会(又吉忍夫議長)は十二日の議会運営委員会で、米兵の暴行事件に対して十八日にも臨時議会を開き、抗議決議を行うことを決めた。又吉議長は「憤りに耐えない。県民として抗議の意思を示したい」と話した。
「未成年だとは思わなかった」
容疑者が供述
米兵暴行事件で、強姦容疑で沖縄署に逮捕されたタイロン・ハドナット容疑者が「未成年とは思わなかった」と話していることが十二日分かった。
同容疑者は体に触ったことは認めているが、強姦容疑については依然、否認している。
同署は同日午後、ハドナット容疑者を同容疑で那覇地検に送検。容疑を裏付けるため、犯行に使われたとみられる車などの鑑定作業を進めている。
問題なかったから軍曹に
首席領事が擁護
在沖米国総領事館のカーメラ・カンロイ首席領事は十二日、米兵暴行事件に関連し「(事件を起こした米兵が)軍曹にまで昇進しているのは、今までこういうこと(犯罪)をしていなかったからだ」と事件を起こした米兵を擁護するような発言をした。十二日、社大党副委員長として同総領事館に抗議要請文を手渡した糸数慶子参院議員に答えた。
糸数議員によると、カーメラ首席領事は抗議に対して、当初、ケビン・メア総領事のコメントを読み上げるだけだったため、糸数議員が「同じ女性としてそれでいいのか」と問いただした。
その中でカーメラ首席領事は今回の事件については「これから対応を話し合う」と回答した上で、「三十八歳で二等軍曹になっている。ここまで来たのはこういうことをやっていないからだ」と発言した。
糸数議員は「被害に遭った少女の立場で謝罪すべきなのに、彼らは米兵を擁護する立場。これまで犯罪を起こさなかったことと、今回の事件は関係ない。軍隊の持つ構造的暴力はなんら変わらない」と怒りをあらわにした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_04.html
2008年2月13日(水) 朝刊 2面
軍特委で抗議決議へ/きょうから県議会
県議会(仲里利信議長)の二月定例会は十三日午前、開会する。仲井真弘多知事が所信表明演説を行い、総額五千九百一億円の二〇〇八年度一般会計当初予算案など計五十九議案を提案する。今定例会では、米軍普天間飛行場の移設問題や雇用・産業振興などの県政の重要課題をめぐって活発な論戦が展開される見通しだ。
初日の本会議終了後、米軍基地関係等特別委員会(親川盛一委員長)は委員会を開き、米海兵隊員の暴行事件に対し、事件を批判し、米軍の綱紀粛正と再発防止を求める抗議決議案を可決する。
定例会の会期は三月二十六日までの四十三日間。代表質問は二十日から三日間、一般質問は二十五日から四日間の予定。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_05.html
沖縄タイムス 社説(2008年2月13日朝刊)
[米兵暴行事件]
なぜ根絶できないのか
またしても未成年者が
女子中学生を車で連れ回し、暴行するという米海兵隊員による許し難い事件がまた起きた。
沖縄署は在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹を強姦容疑で逮捕したが、事件は一九九五年に発生した少女暴行事件、二〇〇〇年七月のわいせつ事件の悪夢を県民に呼び起こしたといっていい。
警察の調べに対し二等軍曹は、車の中で体を触ったことは認めたものの暴行については否認している。
だが、被害に遭ったのは未成年者であり、まだ中学生ではないか。
屈強な兵士が、怖くなって逃げ出した少女を追いかけ再度車に乗せ、有無を言わさず体を触るというのは暴行以外の何ものでもない。
少女は容疑者の振る舞いに異変を感じ、すきを見て持っていた携帯電話で友人に助けを求めたという。
「助けて」と叫び、「(容疑者が)来た」「車から降りられない」という少女の緊迫した様子と恐怖を思えば、いたたまれなくなる。
このような事件を防げなかった責任は日米両政府はもちろん、私たち大人にもある。夜が更けているのに、街角にたたずむ子どもたちに注意の目を向けきれなかったからだ。
とはいえ、本国で同じような行為で捕まれば間違いなく重罪である。イラクで地元の少女を暴行殺害した兵士に、米軍法会議が禁固百十年の有罪判決を下したことからも明らかだ。
子どもの人権を蹂躙する行為に対して法律はそれだけ厳しいのである。
容疑者の中に沖縄だから大丈夫という考えがあったとしたら間違いであり、警察には二等軍曹が同じような犯行を犯していないかどうか、徹底的に調べてもらいたい。
沖縄には海兵隊、空軍、海軍、陸軍の兵士約二万三千人が駐留している。
中には「良き隣人政策」に則して基地外でボランティアに従事したり、地域活動に積極的に参加する兵士がいるのも確かだ。
一人の不心得によって全体を十羽一からげで推し量ろうとは思わないが、だからこそ、事件に対する県民の怒りを米軍は深刻に受け止める必要があろう。
綱紀粛正の実効性は
同様の事件が起こるたびに、政府は「米軍に再発防止と綱紀粛正を求める」と強調してきた。
米軍もまた「遺憾の意」を表明し、「再発防止に努める」と応えてきた。だが、実際はどうだろうか。
県内に住む軍人・軍属、その家族による刑法犯の摘発件数は、〇三年の百三十三件をピークに減少している。しかし、米兵による女性への暴行事件は一九九五年以降も続いているではないか。
二〇〇〇年に準強制わいせつで海兵隊員が捕まり、〇一年には嘉手納基地所属の空軍軍曹が二十代の女性を暴行。翌年には海兵隊少佐の暴行未遂、〇四年にも二十代女性への強姦事件が発生し、後を絶たないのが実情だ。
米軍はその都度、綱紀粛正を言い、再発防止を約束してきた。だが、一人一人の兵士に十分に浸透しているのかどうか。県民は疑問の目でみていることを忘れてはなるまい。
この日の閣議で、関係閣僚らが日米で実効性のある再発防止策を検討すべきだと指摘している。
当然であり、県民が求めているのは、法律によって裏付けられた「抜本的な再発防止策」だということを認識するべきだ。
子ども守る抜本策を
今回の事件について福田康夫首相は「許されることではない。過去に何度も起きており、重大なことだと受け止めている」と述べている。
ケビン・メア米総領事も「極めて遺憾で、米側としても真摯に受け止め、捜査に全面協力したい」と話す。
だが、私たちが求めているのは事後に繰り返される反省の弁ではなく、子どもたちが今回のような理不尽な事件に巻き込まれることのない、日々の安全が担保された平和な暮らしだ。
そのために必要なのは何なのか。日米両政府は県民の声に耳を傾け、もし、日米地位協定の中に盛り込めるものがあるのであれば、日米両政府はきちんと論議をし新たな対応を模索する責務がある。
二度とこのような事件を起こさぬためにも、政府は米国との協議を急ぎ、県民保護を最優先にした強固な施策を築いてもらいたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080213.html#no_1
琉球新報 社説
女子中学生暴行 許せない米兵の非道/「再発防止」は口先だけか
またしても米軍基地あるがゆえの非道な犯罪が起きた。沖縄本島中部で女子中学生を暴行した疑いで、沖縄署が在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹を逮捕したのである。
沖縄署の調べによると、米兵は「家まで送っていく」などと被害者に声を掛けてバイクで連れ出し、北中城村の自宅に連れ込んだ。
被害者は逃げ出したが、再度「車で家まで送っていく」と言ってワゴン車に乗せ、嘉手納町付近まで連れ回した上、北谷町内の路上に止めた乗用車内で犯行に及んだという。
嫌がる被害者を執拗(しつよう)に連れ回すなど、悪質極まりない犯行だ。
後絶たぬ性犯罪
県内では1995年に買い物帰りの小学生が在沖米兵3人に暴行されるという痛ましい事件が発生した。
これをきっかけとして県民の怒りが爆発、同年10月21日には主催者発表で8万5千人(警察発表5万8千人)が宜野湾海浜公園に結集する超党派の県民総決起大会が開かれる事態に発展した。
大会では(1)米軍人の綱紀粛正と軍人・軍属による犯罪の根絶(2)被害者に対する謝罪と完全な補償(3)日米地位協定の早急な見直し(4)米軍基地の整理縮小の促進―の4項目を求める抗議決議を満場一致で採択している。
少女乱暴事件の際に米軍は、綱紀粛正を徹底し再発防止に全力を挙げると約束したが、ほとんど実効を上げていないことが今回の事件によって浮き彫りにされた。
2002年には海兵隊少佐が女性を襲った暴行未遂、04年には米軍属による女性乱暴、05年には空軍兵による小学生への強制わいせつ、07年には米軍人子弟による女性暴行致傷など、米軍絡みの性犯罪は後を絶たない。
被害者が泣き寝入りし、表面化しないケースも相当数あるとみられている。
米軍は事件が起きるたびに再発防止に努めると強調するが、一体全体、この間、どのような有効な対策を講じてきたのか。
犯罪が繰り返される実情から判断すると、米側の釈明はその場しのぎで口先だけだったということになる。
このままでは、基地と隣り合わせの生活を余儀なくされている沖縄県民は、安心して夜道を歩くことさえできない。
一番の再発防止策は、本能の赴くままに女性を襲う機会をうかがっているような兵士を野放しにしないことである。
米軍は、個々の兵士の生活態度をつぶさに管理・監督し、犯罪を引き起こす恐れがある人物については、民間地域への外出に一定の条件を付けたり特別な指導を施すなど、強い姿勢で対処すべきだ。
事ここに至っては、通り一遍の取り組みでは誰も納得しない。
兵員削減が急務
海兵隊は有事の際の前方展開を担う「殴り込み部隊」として知られており、屈強な兵士が多い。
日本には06年9月現在で1万4424人の海兵隊員が駐留しており、このうち93・5%に当たる1万3480人が在沖基地に配属されている。在沖米軍兵力の総数は、在日米軍全体の約7割に達する。
数が多いだけに、凶悪事件を引き起こすやからも後を絶たない。
復帰後36年近く経過した現在も、国土のわずか0・6%にすぎない県土に、在日米軍専用施設面積の4分の3が集中していることが根底にある。
米軍絡みの事件・事故を減らすには、基地の整理縮小を進め、面積を減らすと同時に、駐留する兵員を削減することが不可欠だ。とりわけ海兵隊の実戦部隊は、できるだけ早く沖縄から移転させる必要がある。
沖縄は戦後63年間も過重に米軍基地を押し付けられてきた。そのことが基地絡みの事件・事故を生み、県民を苦しめ続けている。
日本政府はそのことを十分に念頭に置き、兵員の削減に本腰を入れて取り組むべきだ。
今回、被害に遭った女子中学生の心身の傷は想像を絶するものがあるだろう。被害者に対しては、手厚いケアが求められる。
ジルマー在沖米4軍調整官は12日夕、仲井真弘多知事に「遺憾である」と述べたが、わびて済む話ではない。二度とこのような悪質な事件が起きないように、実効性を伴った対策を示し、実行に移してもらいたい。
(2/13 9:57)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31303-storytopic-11.html
2008年2月13日(水) 夕刊 1面
米大使「遺憾に思う」米兵暴行事件
知事「県民怒り頂点」
トーマス・シーファー駐日米国大使とブルース・ライト在日米軍司令官が十三日午後、県庁を訪ね、仲井真弘多知事と面談し、米兵暴行事件について「このような事件が起きたことを遺憾に思っている。再発防止のための手段は何でも取りたい」と述べ、再発防止策の徹底を約束した。仲井真知事は「県民の怒りは収まっていない。再発防止を県民に分かるように徹底し、公開してもらいたい」と要望した。
面談でシーファー大使は「今回の事件をいかに深刻に受け止めているか、知事に伝えたいと思ってきた」と話し、被害少女と両親にあてた手紙を知事に託した。
ライト在日米軍司令官は「在日米軍の軍人、軍属、家族を代表し、事件を心から悲しく思い、申し訳なく思っている」と述べた。
仲井真知事は「このような事件が起きることで県民の怒りが頂点に達し、米軍と県民、基地に大きな影響が出ることを深刻に考えている」と強調。これに対し、シーファー大使は「知事の懸念はよく理解している」との認識を示した。
面談後、シーファー大使は記者団に、米軍内の教育プログラムを見直す考えを示した。
東門市長ら「具体策を」/外務副大臣に訴え
沖縄市の東門美津子市長と北谷町の野国昌春町長は十三日午前、外務省沖縄事務所で小野寺五典外務副大臣と面会し、米兵による暴行事件について、再発防止のための具体策をまとめ公表するよう求めた。小野寺副大臣は「要望は首相官邸にも伝えたい」とした。
小野寺副大臣は、事件について「被害者、家族、県民の皆さまにつらい思いをさせることになり、心から遺憾の意を持っている」とした。また、在沖米軍の関係者と会う中で、「今後の対応について厳しく政府代表として話をしたい」と述べた。
これに対し東門市長らは、度重なる事件を防止するには在沖海兵隊の削減しかないのではないかと述べた。さらに、被害者へのケアのほか、中部市町村長が四軍調整官ら米軍幹部に直接意見を言う機会の設定も求めた。
地位協定見直し要求/県議会で知事表明
県議会(仲里利信議長)の二月定例会が十三日午前、開会した。仲井真弘多知事は冒頭、米兵による女子中学生暴行事件について触れ、「女性の人権を蹂躙する重大な犯罪であり、特に被害者が中学生であることを考えれば、決して許すことはできず、強い憤りを覚える」とあらためて抗議した。度重なる米軍人等による事件に対し、「極めて遺憾」とも述べた。
米軍人による悪質な暴行事件への県の対応については、「発生するたびに、再発防止を徹底するよう米軍等に強く申し入れてきた」と説明。
またしても事件が発生したことを受けて、「米軍および日米両政府、関係機関に対し、一層の綱紀の粛正および隊員の教育の徹底、再発防止等を要請した」と述べるとともに、「今後とも捜査の進展を踏まえつつ、被害者および、ご家族の心情や意向に十分に配慮し、適切に対応していく」との考えを示した。
所信表明の際には、日米地位協定の見直しにも触れ、「米軍基地をめぐる諸問題の解決には、米側に裁量を委ねる形となる日米地位協定の運用改善だけでは不十分で、抜本的に見直す必要がある」と従来の主張をあらためて繰り返した。
県議会の米軍基地関係等特別委員会(親川盛一委員長)は、本会議終了後に委員会を開き、米兵暴行事件に抗議し、再発防止などを求める意見書と抗議決議案を可決する見通し。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131700_01.html
2008年2月13日(水) 夕刊 1面
謝罪と再発防止要求/沖縄・北谷議会が決議
【沖縄・北谷】米兵による女子中学生暴行事件を受け、沖縄市議会(喜友名朝清議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は十三日午前、それぞれ臨時会を開いた。被害者への完全な補償と再発防止の抜本的な解決策の公表などを求める抗議決議と意見書案を、いずれも全会一致で可決。決議後、米海兵隊外交政策部(G5)など関係機関への抗議行動を展開した。
沖縄市議会は抗議決議で「被害を受けた少女、家族の心中を察すると激しい怒りを覚え、断じて許せない」と糾弾。「今後どのような抜本的方策を講じるのか、市民や県民への明確な謝罪と実効性ある犯罪防止策を示すべきだ」と指摘した。
その上で(1)被害者への謝罪と完全な補償(2)米軍構成員らへの教育を徹底し、再発防止の抜本的解決策の公表(3)容疑者の所属する組織の管理体制と責任の所在を明らかにする―などを求めた。
議会代表はその後、G5などを訪問。「事件のたびに綱紀粛正を言うが、効果があるか疑問だ。組織としてきちんと対応するべきだ」と抗議した。
基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長らによると、応対したホーステッドG5次長(中佐)は、四軍調整官のジルマー中将から再発防止の教育プログラム実施の指示があったと説明。「事件の深刻さを考え、県民が目に見える形で対応したい」としたが、教育プログラムの詳細は明らかにしなかったという。
北谷町議会の抗議決議、意見書では「悪質で深刻な事件であり、被害者の心中を察すると断じて許せるものではない」と非難した。
同町では二〇〇一年の女性暴行事件、〇七年の空気銃発砲事件など、米軍人や軍属、家族による凶悪事件が発生しており、今回の事件により「町民は再び恐怖にさらされている」と指摘。事件のたびに米軍当局や関係機関に抗議し、再発防止を要求したにもかかわらず、またしても痛ましい事件が発生したことについて、「決して許すことはできず、強い憤りを覚える」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131700_02.html
2008年2月13日(水) 夕刊 6・7面
女性3団体、強く抗議/米兵暴行事件
「暴力と隣り合わせの生活を、これ以上続けられない」。米兵による暴行事件で、女性三団体が十三日午前、日米両政府の機関を相次いで訪れ、抗議の声を上げた。戦後六十三年間、生活に侵入してくる軍隊の暴力にさらされてきた女性の歴史を突き付けた。抜本的な再発防止策としての基地撤去と、被害者への謝罪や精神的ケアを求めた。
県婦人連合会
県婦人連合会(小渡ハル子会長)は、沖縄防衛局を訪れ事件に対し抗議。小渡会長は「こんな状態では、子どもを安心して生み育てることはできない。この問題は強く抗議しなければならない」と語気を強めた。
要請書は「事件は基地あるが故に起こった凶悪事件」と厳しく批判。「日本全国の米軍基地75%をかかえる沖縄で同じような問題が、また起こらないとは限りません」「基本的には基地の撤去を一日も早くと要請」するとした上で、「米兵に対する綱紀粛正と再発防止の徹底」「県民の人権を守るため米兵の教育の徹底」「一日も早い基地の撤去、または整理縮小」を強く求め、厳重に抗議する、としている。
同会は同日中に、県、県議会、在沖米国総領事館にも同様の要請を行う。
新日本婦人の会
新日本婦人の会沖縄県本部(前田芙美子会長)のメンバー七人は、外務省沖縄事務所を訪ね、「卑劣な犯罪に激しい怒りを禁じえない」と強く抗議。「基地がなくならない限り事件は続く」とし、再発防止へ実効性のある対策や新基地建設の中止、地位協定見直しなどを要請した。
前田会長は「これまで二度と事件が起こらぬよう何度も申し入れてきたが、砂をかむようなむなしさを感じる」と訴えた。
対応した山田俊司外務事務官は、事件翌日に米側に再発防止と綱紀粛正を申し入れたことや、米兵への教育に取り組んでいるとし、「再発防止に全力を挙げたい」と述べるにとどめた。
基地許さない女たちの会
基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代、糸数慶子両共同代表ら四人は浦添市の在沖米国総領事館にケビン・メア総領事を訪ね、基地外に住む米兵の行動管理と規制などを申し入れた。
同会は「外出制限時間の前に起きた事件であり、まして基地外に住んでいれば制約はない」と問題視。同会によると、メア総領事は「事件は一つ発生しても(数として)多いと考える」と述べる一方で、「米国人が基地外に住むことに反対なのか」と聞いたという。
高里、糸数両共同代表は「軍人が基地外に住むことが事件につながった」と認識の落差に反発した。
駐日米大使や在日米軍司令官の来県には、「事件を深刻に受け止めたというより、沖縄の基地反対の声が広がらないよう必死で対応しているだけだ」と冷めた視線を向けた。
同会は同じ要請文を、近くブッシュ米大統領あてにも郵送する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131700_03.html