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基地をなくそう!血のにじむ努力で。 沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月12日、13日)

2008年2月12日(火) 夕刊 1面

米兵が中学生暴行/沖縄署、容疑で逮捕

中部一帯連れ回す

 本島中部の女子中学生(14)を乗用車内で暴行したとして、沖縄署は十一日午前、在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)=北中城村島袋=を強姦の容疑で逮捕した。ハドナット容疑者は「抱き付いたり押し倒したりはしたが、暴行はしていない」と容疑を否認しているという。仲井真弘多知事は同日午前、「女性の人権を蹂躙する事件で決して許すことができない」と非難。東門美津子沖縄市長と野国昌春北谷町長は十二日午前に北中城村の米海兵隊外交政策部(G5)を訪れ抗議した。沖縄署は同日午後、ハドナット容疑者を送検した。

 調べでは、ハドナット容疑者は十日午後十時半ごろ、北谷町内の公園前路上に止めた車の中で、少女に暴行した疑い。

 少女は午後十一時前に解放され、公園近くでうずくまっているところを警察に保護された。動揺している様子だったという。

 同署によると、ハドナット容疑者は同日午後八時二十分ごろ、沖縄市のコザ・ミュージックタウンで友人二人といた少女に「送っていくよ」などと声を掛け、北中城村島袋の同容疑者の自宅にバイクで連れて行った。少女は怖くなって逃げ出したが、数軒先で追い付いたハドナット容疑者は「ごめん、ドライブしよう」などと少女を車に乗せ、中部一帯を連れ回した後、暴行したという。

 心配した友人らと少女の間で何回か携帯電話がつながり、「助けて」という少女の声が聞こえたため、友人らが少女の家族らと一緒に同署に通報した。少女が男の自宅や車、人相などを覚えていたことから、同署が自宅にいたハドナット容疑者に任意同行を求め、公園で緊急逮捕した。

 同署は十一日夜、ハドナット容疑者の自宅を捜索し、車やバイク、ジャンパーなど数点を押収し、鑑定作業を進めている。

 ハドナット容疑者は一九九六年に海兵隊に入隊し、二〇〇六年十月にキャンプ・コートニーに配属されたと話しているという。

 県内では一九九五年に海兵隊員三人による暴行事件が起きている。


     ◇     ◇     ◇     

知事「強い憤り」

米側に県抗議


 米海兵隊員が強姦容疑で逮捕されたことを受け、仲井真弘多知事は十一日午前、県庁で記者団に「女性の人権を蹂躙する重大な犯罪であり、特に、被害者が中学生であることを考えれば、決して許すことはできず、強い憤りを覚える」と述べ、米軍への抗議姿勢を鮮明にした。

 仲井真知事は同日早朝に事件の一報を受けた。「あってはならないことがまた起きたと思った」といい、「事件が起こるたびに米軍に抜本的な対応を迫っているが、またもや事件が生じたことは極めて遺憾。被害者やご家族へも配慮し、適切に対応したい」と述べた。

 十二日午後には在沖米軍司令部のほか、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所を訪ね、再発防止と綱紀粛正を申し入れる。


県議会 あすにも軍特委

議長「許し難い暴挙」


 県議会の仲里利信議長は、米海兵隊員の暴行事件について「許し難い暴挙。県民感情を逆なでする事件で、誠に遺憾」と述べ、「米軍に絡む事件・事故が絶えず、綱紀粛正が徹底していないのではないか」と批判した。

 県議会米軍基地関係等特別委員会は県警の捜査や県の対応を受けて、二月定例会が開会する十三日の本会議終了後にも委員会を開き、事件を批判し、米軍の綱紀粛正と再発防止を求める抗議決議案を可決する。

 親川盛一委員長は「あってはならない事件で絶対に許せない。県民の人権をどう考えているのかと怒りがこみ上げる」と憤りの声を上げた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802121700_01.html

 

2008年2月12日(火) 夕刊 7面

携帯越し「助けて」/安保の影 犠牲また

 「助けて」という少女の叫びは届かなかった。十日発生した米海兵隊員による暴行事件。訓練された兵士が、また牙をむいた。北中城村の容疑者宅周辺では、三十八歳の容疑者が甘い言葉を操り、執拗に少女に追いすがる様子が目撃されていた。おびえる子どもたち。大人たちは、痛憤に声を震わせた。少女一人の尊厳も守れない安全保障とは何か。繰り返されてしまった凶悪事件は、基地と隣り合わせで生きる意味をあらためて突き付けた。

 「助けて」―。つなぎっ放しの携帯電話から、時折少女の叫び声が響いた。迫って来る米兵の姿に、「来た」と言っては会話は途切れる。携帯電話を隠すガサガサとした雑音。少女とのたった一つの接点を切らすまいと、少女の友人たちはわずかな物音にも神経をとがらせた。事の重大さに気付いた友人らは、少女の親族らにも助けを求め、総勢約十人で沖縄署に駆け込んだ。

 少女はハドナット容疑者の振る舞いに異変を感じた後、すきを見て友人らに携帯電話で助けを求めた。「どこにいる?」「分からない。男が来た」。断片的な会話しかできない中、友人らは数十分も電話をつなぎっ放しにし、少女の無事を祈った。車に乗せられ中部方面に向かった後も、少女は「車から降りられない」などと急を知らせていた。

 少女は車で連れ回されている途中、機転を利かせて「家はこの辺りだから」などとうそを言い、自宅から遠く離れた場所でいったんは車を降りた。だが、夜間で地理も分からず、迷っていたため、再びハドナット容疑者の車に乗せられた。少女は別の場所でも「友達と待ち合わせしている」とうそを言い、車を降りたが、逃げ切れなかったという。

 同署によると、ハドナット容疑者は沖縄市のコザ・ミュージックタウン内の店から出てきた少女ら三人に「その服どこで買ったの」などと声を掛けた。数分間話した後、少女だけをバイクに乗せたという。

 ハドナット容疑者の自宅近くの住民は、事件当日の午後九時ごろ、被害者とみられる若い女性が逃げる姿を目撃。ハドナット容疑者は「待って。お願い。ごめんなさい」などと呼び掛け、少女を車に乗せたという。


     ◇     ◇     ◇     

基地の街 不安・恐怖


 米海兵隊員による暴行事件の現場は、米軍基地近くの住宅街だった。米軍との共存を強いられる住民らは、不安や恐怖をあらためて呼び起こされた。

 現場は北谷町内の幹線道路から、十メートルほど離れた住宅街にある公園脇の道路。夜になると人や車の行き来も少なくなり、事件が起きた十日の夜も「人の叫び声を聞いたり、争う様子を感じたりすることはなかった」と近所の住民は口をそろえた。

 その一方、米兵や家族も多く住む地域で、公園脇にはYナンバーの車が並び、週末には集まった米兵らがたき火をして騒いだり、けんかしたりすることも度々あったという。

 近くの自営業の男性(40)は「以前も酔った外国人が叫び、二回ほどパトカーが来た。警察もパトロールのコースに入れるなど、対策が必要だったのではないか」と指摘した。

 公園の向かいに住む高校一年生は「普段は米軍基地に対して反感を覚えることはないが、また米兵が事件を起こしたと思うと怖くなる。住民の安全を守るという最低限度のことに国は責任をもってほしい」という。

 二十代の娘がいるという主婦(62)も「怖くて夜は一人で出歩かせたくない。どうにかしてほしい。基地がなくなるのが一番いいのですが」と話した。


「絶対に許されない」/綱紀粛正の要求高まる


 基地・軍隊を許さない女たちの会共同代表で強姦救援センター・沖縄(レイコ)代表の高里鈴代さんは「安心できるはずの場所から言葉巧みに誘い出されて、少女は被害に遭った。すごく悪質で絶対に許されない。犯人が巧みなのであって、彼女に一切落ち度はない」と訴えた。

 その上で「若い兵士の夜間外出制限が犯罪防止策として出るが、この兵士は三十八歳で、基地の外に住んでおり、防止策が全部ぶっ飛ぶ出来事。じゃあ、どうやって米兵の犯罪を防ぐのか。米軍は事件のたびに『綱紀粛正』と言い続けているが、事件はずっと続いている。しかも性犯罪で表に出るのは、実際にあった被害の一部でしかない」と強調した。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「非常にショックで悲しく、ぞっとする。子どもがそのような目に遭うのを絶対許してはならない。犯人は罪を認めて謝罪し、賠償するなど誠意を見せ(少女の)心の傷が癒える対応をしてほしい」と話した。

 県高校PTA連合会の西銘生弘会長は「またか、と非常に驚いている。一九九五年の暴行事件の時にも県民大会で訴えたのに、また同じことが起こった。基地撤去に向けて動くべきではないか」と述べた。

 高教組の松田寛委員長は「ただ、憤るばかりだ。基地ある限り犯罪が消えないのなら、基地をなくすしかない。これまでと同じような県の申し入れだけでは、県民は許せないだろう」と強い調子で話した。

 沖教組の大浜敏夫委員長は「子どもを預かる教員として満身の怒りがこみ上げてくる」と声を震わせた。「米軍基地受け入れを容認する国や県の責任も問われる。再び県民が、米軍基地をなくすため具体的に行動を起こすしかない」と語気を強めた。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は、「子どもを対象にこのような犯罪を起こし、地域の安全を奪う米軍基地の存在は許せない」と話した。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「少女の尊厳は何にも代えられない。基地の存在はやむを得ないという県民にも、この蛮行を直視して考え直してほしい」と語った。


東門市長ら謝罪要求


 【中部】米海兵隊員による暴行事件を受け、東門美津子沖縄市長と野国昌春北谷町長らは十二日午前、北中城村石平の米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、再発防止の抜本的な解決策の公表と被害者への謝罪を求めた。

 抗議では「米軍構成員等の教育を徹底し、綱紀粛正を図るとともに、被疑者への厳格な処罰を行うべきだ」と強調。容疑者が所属するキャンプコートニーの司令官あてに抗議文を手渡した。

 野国町長は、逮捕された海兵隊員について「十四歳の子どもがいてもおかしくない年齢であり、また軍でも指導的な立場にある者が事件を起こしたことは問題だ」と米軍に抗議。その上で被害者の精神的ケアに配慮するよう要望した。

 野国町長によると、対応した米外交政策部のフォースデッド中佐は「悲しい事件であり、許されるものではない。上司に伝えたい」などと話した、という。東門市長らはその後、在沖米国総領事を訪ね、同日午後には沖縄防衛局、外務省沖縄事務所にも抗議行動する。

 東門市長は十一日、容疑者が身柄を拘束されている沖縄署を訪ね、事件について説明を受けた。東門市長は「私にも娘がおり、胸が痛む。女性の尊厳、人権を無視した犯罪は絶対に許せない」と語気を強めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802121700_02.html

 

2008年2月12日(火) 夕刊 1・7面

政府「極めて遺憾」

外務副大臣 沖縄派遣へ

 【東京】在沖米海兵隊員による中学生暴行事件を受け、政府は十二日午前の閣議で「極めて遺憾」との認識で一致した。福田康夫首相は関係閣僚に「大変重たい事件だ。しっかり対応してほしい」と述べ、米側に綱紀粛正を求めるよう指示した。関係閣僚からは日米関係に及ぼす影響を懸念する声が相次ぎ、石破茂防衛相は日本政府として実効性ある再発防止策に具体的に関与する必要性を初めて指摘した。

 閣議後会見で町村信孝官房長官は「これまでにも(在沖米軍による)大きな事件があり、累次にわたって綱紀粛正、再発防止を申し入れたにもかかわらず、米軍人がこのような容疑で逮捕されたのは誠に遺憾だ」と不快感を表明した。

 町村氏は同日午後、県選出、出身の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)が事件の再発防止などを要請した際に、小野寺五典外務副大臣を一両日中に沖縄に派遣し、在沖米軍に抗議する考えを明らかにした。

 石破氏は「極めて強い憤りを感じざるを得ない。日米関係に大きな影響を与える」との認識を示し、「(米側に)申し入れるだけでは済まされない。具体的にどうすべきか、日米両政府の責任でもある」と早急に対応する考えを明らかにした。

 高村正彦外相は「いいかげんにしてくれという感じだ」と強調。米軍普天間飛行場移設への影響について「ない、ということはあり得ない」と懸念した。

 岸田文雄沖縄担当相は閣議前、高村外相に「引き続き綱紀粛正、再発防止を米側に求めてほしい」と要望。岸田氏によると、福田首相は閣僚懇談会で一九九五年の米兵による暴行事件にも言及し、繰り返される米軍の不祥事を懸念したという。

 政府は事件を受け、十二日までに外務省の西宮伸一北米局長がドノバン駐日米国大使館次席公使に、防衛省の地引良幸地方協力局長がライト在日米軍司令官に、それぞれ綱紀粛正と再発防止の徹底を申し入れた。


再発防止に全力 首相が姿勢強調


 【東京】福田康夫首相は十二日午前の衆院予算委員会で、在沖米海兵隊員による中学生暴行事件について「許されることではない。過去においても何度か起こっているにもかかわらず、また起きてしまったということは本当に重大なことだと受け止めている」との認識を示した。

 その上で、「政府としても米国としっかり交渉していくが、まずは事実関係の究明ということがある。再発防止のためにできるだけのことをしていくが、わが国の法と証拠に基づいて適切に対処していく」と述べ、政府を挙げて全力で取り組む姿勢を強調した。


     ◇     ◇     ◇     

那覇市議会が抗議決議


 那覇市議会(安慶田光男議長)は十二日午後の臨時会で、米海兵隊員による暴行事件に対し、被害者への謝罪、事件・事故の再発防止策などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決する。同日の議会運営委員会(屋良栄作委員長)で決めた。

 決議と意見書は、今回の事件が過去の暴行事件を想起させ、県民に強い衝撃と不安を与えていると指摘。「復帰後の在沖米軍・軍属等による犯罪件数は、平成十八年度末時点で五千四百五十一件に至り改まらぬ米軍及び米兵の体質に激しい憤りを禁じ得ない」としている。


安全確保へ通知

教育庁各校へ


 県教育庁は十二日午前、米海兵隊員による暴行事件の発生を受け、市町村教育委員会の教育長、県立高校と特別支援学校の校長、各教育事務所長に対し、児童・生徒の安全指導と安全確保の徹底を呼び掛ける通知を送付した。

 通知は、PTAや地域、警察、関係機関などが連携して児童・生徒の安全確保に努めることを要請。児童などに対し(1)不審者と思われる人に近付かない、絶対ついていかないなどの安全対策の徹底を図る(2)保護者同伴による登下校や集団下校を心がける(3)警察などと連携した防犯教室の開催―などを呼び掛けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802121700_03.html

 

2008年2月13日(水) 朝刊 1面 

知事、再発防止訴え/米兵暴行事件

四軍調整官に抗議

 米兵による女子中学生暴行事件で、在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)とケビン・メア在沖米国総領事らが十二日、県庁に仲井真弘多知事を訪ね、事件について「心より遺憾に思う」と謝罪した上で、沖縄署の捜査に全面的に協力する考えを示した。仲井真知事は「こういう事件が続くと、県民の怒りが頂点に達し、今後の基地問題に深刻な影響を与えかねない」と指摘。再発防止に全力を挙げるよう求めた。一方、シーファー駐日米大使と在日米軍トップのライト司令官が十三日急きょ来県、県庁に仲井真弘多知事を訪ね、謝罪する。

 知事との会談の中でジルマー中将は、「倫理に関し、また個人としてわきまえなければならない高い規範について教育をする」と述べ、再発防止に向け、十三日から在日米海兵隊員全員を対象にあらためて倫理・規範教育を行うと表明した。

 中将はまた、「(今回の事件は)私たち軍人が一人一人持つ価値観と全く相反するということを理解していただきたい」として、事件が偶発的なものであるとの考えも強調。「(日米間の)良い関係を維持するためにも全面的な協力をする」とも述べ、事件が県民の米軍基地に対する感情を悪化させないよう努力する考えも示した。

 仲井真知事は、「事件は女性の人権を蹂躙する極めて悪質な犯罪。被害者は十四歳、中学生で、強い怒りを感じざるを得ない」と抗議。「こういう事件がまたもや発生したかというのがわれわれの感じであり、極めて遺憾」と述べ、度重なる事件の発生に不快感を示した。

 同席したメア総領事は「極めて遺憾なことで米政府も真摯に受け止めている。被害者とご家族の心中も察し申し上げたい」と述べた。


外務副大臣 きょう派遣

政府、米に抗議へ


 【東京】政府は十二日、米兵暴行事件を受け、十三日に小野寺五典外務副大臣を沖縄に派遣することを正式に決定した。

 小野寺副大臣は十三日、在日米海兵隊トップのリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)と会談。事件に抗議するとともに、綱紀粛正と再発防止策を徹底するよう強く要請する。

 その後、仲井真弘多知事を訪ね、政府として事件を深刻に受け止めていることを伝えるとともに、今後の対応を説明する予定だ。

 町村信孝官房長官は記者会見で派遣に関し、「政府の意思をはっきりさせるためだ」と意義を強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_01.html

 

2008年2月13日(水) 朝刊 2面

外務省、米側に要請/綱紀粛正プログラム再点検

 【東京】外務省の藪中三十二事務次官は十二日午後、ドノバン駐日米臨時代理大使を外務省に呼び、米兵の事件について、「綱紀粛正のプログラムとを再点検が必要ではないか。(日本政府も)協力するので、それに手をつけてほしい」と、再発防止策に日本側が具体的に関与する考えを示した。同日開かれた衆院予算委員会の中で高村正彦外相が明らかにした。

 藪中次官は「綱紀粛正、再発防止策を再三求めてきたにもかかわらず、米兵が逮捕されたことは極めて遺憾だ」と強く抗議。再発防止策の充実、徹底を図るよう求めた。

 ドノバン氏は「事態を極めて深刻に受け止めている。被害者と家族の方々に心からお見舞い申し上げたい」と述べ、捜査に全面的な協力を約束。同席したフロック在日米軍副司令官は「米軍は性的暴力を一切許容しない」と強調した。

 会談後、ドノバン氏は日米地位協定の改正を検討するかとの記者団の質問に対し、「まず事実関係を把握し、法にのっとって処理することが重要だ」と述べるにとどまった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_02.html

 

2008年2月13日(水) 朝刊 2面

地位協定改正に消極的/官房長官 運用改善を強調

 【東京】在沖米海兵隊員による暴行事件を受け、町村信孝官房長官は十二日夕の定例記者会見で、日米地位協定見直しの可能性について「ただちに地位協定の改正というところに話がいくのは、過去の(外相)経験だけで言えば、そういうことにはならないのではないか」と述べ、消極的な考えを示した。

 二〇〇四―〇五、〇七年に外相を務めた町村氏は「主として運用改善で今日までやってきた。例えば米兵は以前は一切(容疑者の身柄を日本側に)引き渡さないということだったが、今は一定の条件の下に日本警察に引き渡す。当たり前かもしれないが改善が図られている」と述べ、運用改善が機能していることを強調した。

 町村氏は一方、容疑者の米海兵隊員の取り調べの際の米政府関係者の立ち会い問題については「そのことが(捜査の)妨げになっているという実態があるのならば話は別だが、特に今回の事件では(米側は)『捜査に全面協力する』と言っている。そういう問題は生じないのではないか」と問題視しない考えを示した。


真剣に対応

福田首相


 【東京】福田康夫首相は十二日午後開かれた衆院予算委員会で、米兵の暴行事件への政府対応について「起きてはいけないことがまた起きた。どう対応するか真剣に考えなければいけない。(事件再発が)絶対ないよう要請を強くしないといけない」と述べた。下地幹郎議員(無所属)らの質問に答えた。

 下地氏は「総理が厳粛な言葉を言っても県民は信じない。こういう事件が起きないためには、週末に自治体と米軍、県警の三者が一体となってパトロールしなければ減らない。総理が提案して日米合意すれば国の信頼は得られる」と追及。

 福田首相は「その案が有効かどうか、有効な感じはするが、それも含めて検討していきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_03.html

 

2008年2月13日(水) 朝刊 25面

ゲート前300人抗議/米兵暴行事件

 【北中城】米兵暴行事件を受け、沖縄平和運動センターと中部地区労は十二日夕、北中城村の米軍キャンプ瑞慶覧石平ゲート前で緊急抗議集会を開いた。開催は急きょ決まったが、寒風の中約三百人(主催者発表)が参加。海兵隊基地司令部など在沖米軍中枢の建物に向かって、「子どもたちの平和を返せ」「安全な暮らしを返せ」とこぶしを突き上げた。

 同センターの崎山嗣幸議長は「はらわたが煮えくり返る思いだ。再び事件を許さないため、温床である基地をなくす闘いに立ち上がろう」とあいさつ。今後、大規模な抗議集会開催を広く呼び掛ける。

 平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「一九九五年の事件後も、県民は経済的な理由を挙げて、米軍を追い出すことはしなかった。少女を犠牲にした」と悔恨を込めた。「私たち自身の責任を自覚し、反省して、基地撤去を本気で目標にしよう」と訴えた。

 沖縄市から参加した北城博子さん(39)は「県民はDV(家庭内暴力)の被害者のように、米軍の暴力の積み重ねに感覚がまひしてきたのではないか」と問い掛け、「我慢するうちに今回の事件が起きてしまった。依存から抜け出さないと」と決意を込めた。

 「同じ女性として、絶対に許せない」と憤ったうるま市の伊波雅子さん(33)。「米軍は言葉だけで済ませるのではなく、沖縄から出ていくことで謝罪してほしい」と語気を強めた。

 同市の玉城毅さん(57)は「犠牲の上に成り立つ経済発展でいいのか。個人では何もできないが、力を合わせて基地撤去につなげたい」と語った。


抗議声明相次ぐ


 米兵による暴行事件を受け十二日、市民団体の抗議声明も相次いだ。

 県統一行動連絡会議(新垣繁信代表幹事)は日米両政府に対し「再発防止と綱紀粛正の連呼は、その場しのぎの時間稼ぎにすぎないことは明らか」と批判した。

 「あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク」(宮城清子氏ら共同代表)も抗議文を公表。基地移設問題にも触れ「米軍の傲慢な姿勢からして、事件の続発は必然的」と糾弾した。


子の安全確保を

教育庁が注意喚起


 県教育庁は十二日午前、米兵による暴行事件を受け、市町村教育委員会の教育長や県立高校と特別支援学校の校長、各教育事務所長に対し、児童・生徒の安全指導と安全確保の徹底を呼び掛ける通知を送付した。

 県教育庁は同日午後、県内六教育事務所長を集めた緊急の会議も開催し注意喚起の徹底を確認した。早急に各事務所単位で校長会を開くほか、県立の高校と特別支援学校も今週中に緊急の校長会を開催する。

 通知は、PTAや地域、警察、関係機関などが連携して児童・生徒の安全確保に努めることを要請。児童などに対し(1)不審者と思われる人に近づかない、絶対ついていかないなどの安全対策の徹底を図る(2)保護者同伴による登下校や集団下校を心掛ける(3)警察などと連携した防犯教室の開催―などを呼び掛けている。

 県教育委員会は十三日の定例会で抗議声明や再発防止などを求める要請行動などを決める。


北谷議会も決議提案へ


 【北谷】北谷町議会(宮里友常議長)は十二日、米兵による暴行事件を受け、同町役場で基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開き、被害者への謝罪と補償、再発防止の徹底などを求める抗議決議と意見書の両案を十三日に開く臨時会に提案することを決めた。

 両案では「悪質で深刻な事件であり、被害者の心中を察すると断じて許せるものではない」「子を持つ親の受けた衝撃は計り知れないものがある」などと事件を非難している。


東京でも抗議


 【東京】首都圏を中心に平和運動を展開する命どぅ宝ネットワーク(太田武二代表)のメンバーらは十二日夜、都内にある官邸や内閣府、米大使館を訪れ、米兵の暴行事件に抗議した。

 三カ所とも中には入れなかったが、正門前で「沖縄の女性たちは生きる尊厳を踏みにじられている」などと訴えた。


与那原議会も18日に臨時会


 【与那原】与那原町議会(又吉忍夫議長)は十二日の議会運営委員会で、米兵の暴行事件に対して十八日にも臨時議会を開き、抗議決議を行うことを決めた。又吉議長は「憤りに耐えない。県民として抗議の意思を示したい」と話した。


「未成年だとは思わなかった」

容疑者が供述


 米兵暴行事件で、強姦容疑で沖縄署に逮捕されたタイロン・ハドナット容疑者が「未成年とは思わなかった」と話していることが十二日分かった。

 同容疑者は体に触ったことは認めているが、強姦容疑については依然、否認している。

 同署は同日午後、ハドナット容疑者を同容疑で那覇地検に送検。容疑を裏付けるため、犯行に使われたとみられる車などの鑑定作業を進めている。


問題なかったから軍曹に

首席領事が擁護


 在沖米国総領事館のカーメラ・カンロイ首席領事は十二日、米兵暴行事件に関連し「(事件を起こした米兵が)軍曹にまで昇進しているのは、今までこういうこと(犯罪)をしていなかったからだ」と事件を起こした米兵を擁護するような発言をした。十二日、社大党副委員長として同総領事館に抗議要請文を手渡した糸数慶子参院議員に答えた。

 糸数議員によると、カーメラ首席領事は抗議に対して、当初、ケビン・メア総領事のコメントを読み上げるだけだったため、糸数議員が「同じ女性としてそれでいいのか」と問いただした。

 その中でカーメラ首席領事は今回の事件については「これから対応を話し合う」と回答した上で、「三十八歳で二等軍曹になっている。ここまで来たのはこういうことをやっていないからだ」と発言した。

 糸数議員は「被害に遭った少女の立場で謝罪すべきなのに、彼らは米兵を擁護する立場。これまで犯罪を起こさなかったことと、今回の事件は関係ない。軍隊の持つ構造的暴力はなんら変わらない」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_04.html

 

2008年2月13日(水) 朝刊 2面

軍特委で抗議決議へ/きょうから県議会

 県議会(仲里利信議長)の二月定例会は十三日午前、開会する。仲井真弘多知事が所信表明演説を行い、総額五千九百一億円の二〇〇八年度一般会計当初予算案など計五十九議案を提案する。今定例会では、米軍普天間飛行場の移設問題や雇用・産業振興などの県政の重要課題をめぐって活発な論戦が展開される見通しだ。

 初日の本会議終了後、米軍基地関係等特別委員会(親川盛一委員長)は委員会を開き、米海兵隊員の暴行事件に対し、事件を批判し、米軍の綱紀粛正と再発防止を求める抗議決議案を可決する。

 定例会の会期は三月二十六日までの四十三日間。代表質問は二十日から三日間、一般質問は二十五日から四日間の予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月13日朝刊)

[米兵暴行事件]

なぜ根絶できないのか


またしても未成年者が


 女子中学生を車で連れ回し、暴行するという米海兵隊員による許し難い事件がまた起きた。

 沖縄署は在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹を強姦容疑で逮捕したが、事件は一九九五年に発生した少女暴行事件、二〇〇〇年七月のわいせつ事件の悪夢を県民に呼び起こしたといっていい。

 警察の調べに対し二等軍曹は、車の中で体を触ったことは認めたものの暴行については否認している。

 だが、被害に遭ったのは未成年者であり、まだ中学生ではないか。

 屈強な兵士が、怖くなって逃げ出した少女を追いかけ再度車に乗せ、有無を言わさず体を触るというのは暴行以外の何ものでもない。

 少女は容疑者の振る舞いに異変を感じ、すきを見て持っていた携帯電話で友人に助けを求めたという。

 「助けて」と叫び、「(容疑者が)来た」「車から降りられない」という少女の緊迫した様子と恐怖を思えば、いたたまれなくなる。

 このような事件を防げなかった責任は日米両政府はもちろん、私たち大人にもある。夜が更けているのに、街角にたたずむ子どもたちに注意の目を向けきれなかったからだ。

 とはいえ、本国で同じような行為で捕まれば間違いなく重罪である。イラクで地元の少女を暴行殺害した兵士に、米軍法会議が禁固百十年の有罪判決を下したことからも明らかだ。

 子どもの人権を蹂躙する行為に対して法律はそれだけ厳しいのである。

 容疑者の中に沖縄だから大丈夫という考えがあったとしたら間違いであり、警察には二等軍曹が同じような犯行を犯していないかどうか、徹底的に調べてもらいたい。

 沖縄には海兵隊、空軍、海軍、陸軍の兵士約二万三千人が駐留している。

 中には「良き隣人政策」に則して基地外でボランティアに従事したり、地域活動に積極的に参加する兵士がいるのも確かだ。

 一人の不心得によって全体を十羽一からげで推し量ろうとは思わないが、だからこそ、事件に対する県民の怒りを米軍は深刻に受け止める必要があろう。


綱紀粛正の実効性は


 同様の事件が起こるたびに、政府は「米軍に再発防止と綱紀粛正を求める」と強調してきた。

 米軍もまた「遺憾の意」を表明し、「再発防止に努める」と応えてきた。だが、実際はどうだろうか。

 県内に住む軍人・軍属、その家族による刑法犯の摘発件数は、〇三年の百三十三件をピークに減少している。しかし、米兵による女性への暴行事件は一九九五年以降も続いているではないか。

 二〇〇〇年に準強制わいせつで海兵隊員が捕まり、〇一年には嘉手納基地所属の空軍軍曹が二十代の女性を暴行。翌年には海兵隊少佐の暴行未遂、〇四年にも二十代女性への強姦事件が発生し、後を絶たないのが実情だ。

 米軍はその都度、綱紀粛正を言い、再発防止を約束してきた。だが、一人一人の兵士に十分に浸透しているのかどうか。県民は疑問の目でみていることを忘れてはなるまい。

 この日の閣議で、関係閣僚らが日米で実効性のある再発防止策を検討すべきだと指摘している。

 当然であり、県民が求めているのは、法律によって裏付けられた「抜本的な再発防止策」だということを認識するべきだ。


子ども守る抜本策を


 今回の事件について福田康夫首相は「許されることではない。過去に何度も起きており、重大なことだと受け止めている」と述べている。

 ケビン・メア米総領事も「極めて遺憾で、米側としても真摯に受け止め、捜査に全面協力したい」と話す。

 だが、私たちが求めているのは事後に繰り返される反省の弁ではなく、子どもたちが今回のような理不尽な事件に巻き込まれることのない、日々の安全が担保された平和な暮らしだ。

 そのために必要なのは何なのか。日米両政府は県民の声に耳を傾け、もし、日米地位協定の中に盛り込めるものがあるのであれば、日米両政府はきちんと論議をし新たな対応を模索する責務がある。

 二度とこのような事件を起こさぬためにも、政府は米国との協議を急ぎ、県民保護を最優先にした強固な施策を築いてもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080213.html#no_1

 

琉球新報 社説

女子中学生暴行 許せない米兵の非道/「再発防止」は口先だけか

 またしても米軍基地あるがゆえの非道な犯罪が起きた。沖縄本島中部で女子中学生を暴行した疑いで、沖縄署が在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹を逮捕したのである。

 沖縄署の調べによると、米兵は「家まで送っていく」などと被害者に声を掛けてバイクで連れ出し、北中城村の自宅に連れ込んだ。

 被害者は逃げ出したが、再度「車で家まで送っていく」と言ってワゴン車に乗せ、嘉手納町付近まで連れ回した上、北谷町内の路上に止めた乗用車内で犯行に及んだという。

 嫌がる被害者を執拗(しつよう)に連れ回すなど、悪質極まりない犯行だ。

後絶たぬ性犯罪

 県内では1995年に買い物帰りの小学生が在沖米兵3人に暴行されるという痛ましい事件が発生した。

 これをきっかけとして県民の怒りが爆発、同年10月21日には主催者発表で8万5千人(警察発表5万8千人)が宜野湾海浜公園に結集する超党派の県民総決起大会が開かれる事態に発展した。

 大会では(1)米軍人の綱紀粛正と軍人・軍属による犯罪の根絶(2)被害者に対する謝罪と完全な補償(3)日米地位協定の早急な見直し(4)米軍基地の整理縮小の促進―の4項目を求める抗議決議を満場一致で採択している。

 少女乱暴事件の際に米軍は、綱紀粛正を徹底し再発防止に全力を挙げると約束したが、ほとんど実効を上げていないことが今回の事件によって浮き彫りにされた。

 2002年には海兵隊少佐が女性を襲った暴行未遂、04年には米軍属による女性乱暴、05年には空軍兵による小学生への強制わいせつ、07年には米軍人子弟による女性暴行致傷など、米軍絡みの性犯罪は後を絶たない。

 被害者が泣き寝入りし、表面化しないケースも相当数あるとみられている。

 米軍は事件が起きるたびに再発防止に努めると強調するが、一体全体、この間、どのような有効な対策を講じてきたのか。

 犯罪が繰り返される実情から判断すると、米側の釈明はその場しのぎで口先だけだったということになる。

 このままでは、基地と隣り合わせの生活を余儀なくされている沖縄県民は、安心して夜道を歩くことさえできない。

 一番の再発防止策は、本能の赴くままに女性を襲う機会をうかがっているような兵士を野放しにしないことである。

 米軍は、個々の兵士の生活態度をつぶさに管理・監督し、犯罪を引き起こす恐れがある人物については、民間地域への外出に一定の条件を付けたり特別な指導を施すなど、強い姿勢で対処すべきだ。

 事ここに至っては、通り一遍の取り組みでは誰も納得しない。

兵員削減が急務

 海兵隊は有事の際の前方展開を担う「殴り込み部隊」として知られており、屈強な兵士が多い。

 日本には06年9月現在で1万4424人の海兵隊員が駐留しており、このうち93・5%に当たる1万3480人が在沖基地に配属されている。在沖米軍兵力の総数は、在日米軍全体の約7割に達する。

 数が多いだけに、凶悪事件を引き起こすやからも後を絶たない。

 復帰後36年近く経過した現在も、国土のわずか0・6%にすぎない県土に、在日米軍専用施設面積の4分の3が集中していることが根底にある。

 米軍絡みの事件・事故を減らすには、基地の整理縮小を進め、面積を減らすと同時に、駐留する兵員を削減することが不可欠だ。とりわけ海兵隊の実戦部隊は、できるだけ早く沖縄から移転させる必要がある。

 沖縄は戦後63年間も過重に米軍基地を押し付けられてきた。そのことが基地絡みの事件・事故を生み、県民を苦しめ続けている。

 日本政府はそのことを十分に念頭に置き、兵員の削減に本腰を入れて取り組むべきだ。

 今回、被害に遭った女子中学生の心身の傷は想像を絶するものがあるだろう。被害者に対しては、手厚いケアが求められる。

 ジルマー在沖米4軍調整官は12日夕、仲井真弘多知事に「遺憾である」と述べたが、わびて済む話ではない。二度とこのような悪質な事件が起きないように、実効性を伴った対策を示し、実行に移してもらいたい。

(2/13 9:57)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31303-storytopic-11.html

 

2008年2月13日(水) 夕刊 1面

米大使「遺憾に思う」米兵暴行事件

知事「県民怒り頂点」

 トーマス・シーファー駐日米国大使とブルース・ライト在日米軍司令官が十三日午後、県庁を訪ね、仲井真弘多知事と面談し、米兵暴行事件について「このような事件が起きたことを遺憾に思っている。再発防止のための手段は何でも取りたい」と述べ、再発防止策の徹底を約束した。仲井真知事は「県民の怒りは収まっていない。再発防止を県民に分かるように徹底し、公開してもらいたい」と要望した。

 面談でシーファー大使は「今回の事件をいかに深刻に受け止めているか、知事に伝えたいと思ってきた」と話し、被害少女と両親にあてた手紙を知事に託した。

 ライト在日米軍司令官は「在日米軍の軍人、軍属、家族を代表し、事件を心から悲しく思い、申し訳なく思っている」と述べた。

 仲井真知事は「このような事件が起きることで県民の怒りが頂点に達し、米軍と県民、基地に大きな影響が出ることを深刻に考えている」と強調。これに対し、シーファー大使は「知事の懸念はよく理解している」との認識を示した。

 面談後、シーファー大使は記者団に、米軍内の教育プログラムを見直す考えを示した。


東門市長ら「具体策を」/外務副大臣に訴え


 沖縄市の東門美津子市長と北谷町の野国昌春町長は十三日午前、外務省沖縄事務所で小野寺五典外務副大臣と面会し、米兵による暴行事件について、再発防止のための具体策をまとめ公表するよう求めた。小野寺副大臣は「要望は首相官邸にも伝えたい」とした。

 小野寺副大臣は、事件について「被害者、家族、県民の皆さまにつらい思いをさせることになり、心から遺憾の意を持っている」とした。また、在沖米軍の関係者と会う中で、「今後の対応について厳しく政府代表として話をしたい」と述べた。

 これに対し東門市長らは、度重なる事件を防止するには在沖海兵隊の削減しかないのではないかと述べた。さらに、被害者へのケアのほか、中部市町村長が四軍調整官ら米軍幹部に直接意見を言う機会の設定も求めた。


地位協定見直し要求/県議会で知事表明


 県議会(仲里利信議長)の二月定例会が十三日午前、開会した。仲井真弘多知事は冒頭、米兵による女子中学生暴行事件について触れ、「女性の人権を蹂躙する重大な犯罪であり、特に被害者が中学生であることを考えれば、決して許すことはできず、強い憤りを覚える」とあらためて抗議した。度重なる米軍人等による事件に対し、「極めて遺憾」とも述べた。

 米軍人による悪質な暴行事件への県の対応については、「発生するたびに、再発防止を徹底するよう米軍等に強く申し入れてきた」と説明。

 またしても事件が発生したことを受けて、「米軍および日米両政府、関係機関に対し、一層の綱紀の粛正および隊員の教育の徹底、再発防止等を要請した」と述べるとともに、「今後とも捜査の進展を踏まえつつ、被害者および、ご家族の心情や意向に十分に配慮し、適切に対応していく」との考えを示した。

 所信表明の際には、日米地位協定の見直しにも触れ、「米軍基地をめぐる諸問題の解決には、米側に裁量を委ねる形となる日米地位協定の運用改善だけでは不十分で、抜本的に見直す必要がある」と従来の主張をあらためて繰り返した。

 県議会の米軍基地関係等特別委員会(親川盛一委員長)は、本会議終了後に委員会を開き、米兵暴行事件に抗議し、再発防止などを求める意見書と抗議決議案を可決する見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131700_01.html

 

2008年2月13日(水) 夕刊 1面

謝罪と再発防止要求/沖縄・北谷議会が決議

 【沖縄・北谷】米兵による女子中学生暴行事件を受け、沖縄市議会(喜友名朝清議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は十三日午前、それぞれ臨時会を開いた。被害者への完全な補償と再発防止の抜本的な解決策の公表などを求める抗議決議と意見書案を、いずれも全会一致で可決。決議後、米海兵隊外交政策部(G5)など関係機関への抗議行動を展開した。

 沖縄市議会は抗議決議で「被害を受けた少女、家族の心中を察すると激しい怒りを覚え、断じて許せない」と糾弾。「今後どのような抜本的方策を講じるのか、市民や県民への明確な謝罪と実効性ある犯罪防止策を示すべきだ」と指摘した。

 その上で(1)被害者への謝罪と完全な補償(2)米軍構成員らへの教育を徹底し、再発防止の抜本的解決策の公表(3)容疑者の所属する組織の管理体制と責任の所在を明らかにする―などを求めた。

 議会代表はその後、G5などを訪問。「事件のたびに綱紀粛正を言うが、効果があるか疑問だ。組織としてきちんと対応するべきだ」と抗議した。

 基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長らによると、応対したホーステッドG5次長(中佐)は、四軍調整官のジルマー中将から再発防止の教育プログラム実施の指示があったと説明。「事件の深刻さを考え、県民が目に見える形で対応したい」としたが、教育プログラムの詳細は明らかにしなかったという。

 北谷町議会の抗議決議、意見書では「悪質で深刻な事件であり、被害者の心中を察すると断じて許せるものではない」と非難した。

 同町では二〇〇一年の女性暴行事件、〇七年の空気銃発砲事件など、米軍人や軍属、家族による凶悪事件が発生しており、今回の事件により「町民は再び恐怖にさらされている」と指摘。事件のたびに米軍当局や関係機関に抗議し、再発防止を要求したにもかかわらず、またしても痛ましい事件が発生したことについて、「決して許すことはできず、強い憤りを覚える」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131700_02.html

 

2008年2月13日(水) 夕刊 6・7面

女性3団体、強く抗議/米兵暴行事件

 「暴力と隣り合わせの生活を、これ以上続けられない」。米兵による暴行事件で、女性三団体が十三日午前、日米両政府の機関を相次いで訪れ、抗議の声を上げた。戦後六十三年間、生活に侵入してくる軍隊の暴力にさらされてきた女性の歴史を突き付けた。抜本的な再発防止策としての基地撤去と、被害者への謝罪や精神的ケアを求めた。

県婦人連合会


 県婦人連合会(小渡ハル子会長)は、沖縄防衛局を訪れ事件に対し抗議。小渡会長は「こんな状態では、子どもを安心して生み育てることはできない。この問題は強く抗議しなければならない」と語気を強めた。

 要請書は「事件は基地あるが故に起こった凶悪事件」と厳しく批判。「日本全国の米軍基地75%をかかえる沖縄で同じような問題が、また起こらないとは限りません」「基本的には基地の撤去を一日も早くと要請」するとした上で、「米兵に対する綱紀粛正と再発防止の徹底」「県民の人権を守るため米兵の教育の徹底」「一日も早い基地の撤去、または整理縮小」を強く求め、厳重に抗議する、としている。

 同会は同日中に、県、県議会、在沖米国総領事館にも同様の要請を行う。


新日本婦人の会


 新日本婦人の会沖縄県本部(前田芙美子会長)のメンバー七人は、外務省沖縄事務所を訪ね、「卑劣な犯罪に激しい怒りを禁じえない」と強く抗議。「基地がなくならない限り事件は続く」とし、再発防止へ実効性のある対策や新基地建設の中止、地位協定見直しなどを要請した。

 前田会長は「これまで二度と事件が起こらぬよう何度も申し入れてきたが、砂をかむようなむなしさを感じる」と訴えた。

 対応した山田俊司外務事務官は、事件翌日に米側に再発防止と綱紀粛正を申し入れたことや、米兵への教育に取り組んでいるとし、「再発防止に全力を挙げたい」と述べるにとどめた。


基地許さない女たちの会


 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代、糸数慶子両共同代表ら四人は浦添市の在沖米国総領事館にケビン・メア総領事を訪ね、基地外に住む米兵の行動管理と規制などを申し入れた。

 同会は「外出制限時間の前に起きた事件であり、まして基地外に住んでいれば制約はない」と問題視。同会によると、メア総領事は「事件は一つ発生しても(数として)多いと考える」と述べる一方で、「米国人が基地外に住むことに反対なのか」と聞いたという。

 高里、糸数両共同代表は「軍人が基地外に住むことが事件につながった」と認識の落差に反発した。

 駐日米大使や在日米軍司令官の来県には、「事件を深刻に受け止めたというより、沖縄の基地反対の声が広がらないよう必死で対応しているだけだ」と冷めた視線を向けた。

 同会は同じ要請文を、近くブッシュ米大統領あてにも郵送する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802131700_03.html

「沖合移動も念頭」普天間協で官房長官  岩国市 推進派市長当選など 沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月8日から11日)

2008年2月8日(金) 朝刊 1・2面

「沖合移動も念頭」/普天間協で官房長官

4月前後 次回開催

 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第六回会合が七日夕、首相官邸で開かれた。県などが求めている代替施設滑走路の沖合移動について町村信孝官房長官は「今後、環境影響評価(アセスメント)手続きを進めていく中で、地元から話のあった沖合ということも念頭に置き、建設計画の問題などについても協議する」と明言した。政府側が協議会で「沖合移動」をテーマとする意向を表明したのは初めて。次回協議会の開催時期について町村長官は「年度が替わる前後」と述べ、四月前後との見通しを示した。

 町村長官はさらに「できるだけ早い時期に決着させるよう最大限努力する必要がある」と強調。沖合移動などの実現によって普天間問題の早期解決に意欲を示した。

 協議会後の記者会見で仲井真弘多知事は「(沖合移動を)それなりに取り上げていただき始めているのではないかと受け取っている」と歓迎。「官房長官の発言などを踏まえ、動くのではないかと期待もしている」と期待感も示した。

 協議会で知事は、沖縄防衛局が知事意見を受け、五日に方法書の追加修正資料を県に提出したことについて「防衛省が速やかに対応したことは評価している」と言及。アセス調査の許認可については「知事意見への対応を踏まえ、法に基づき適切に判断する」との見解にとどめたが、協議会後の会見で「審査会が検討できる内容が整っていれば前へ進んでいく」と前向きに対応する姿勢を示した。


     ◇     ◇     ◇     

[ニュース断面]

県、歓迎も冷静な見方/政府関心はアセス前進


 首相官邸で七日夕に開かれた第六回普天間移設協議会で、県は環境影響評価(アセスメント)方法書の追加資料を提出した防衛省の姿勢を初めて「評価」し、アセス調査開始に向けた道筋がついた。これを受け、町村信孝官房長官は代替施設案(V字案)の沖合移動を協議会で議題にする考えを明言。想定していなかった「アドリブ発言」で、関係省庁に衝撃が走った。仲井真弘多知事は歓迎する一方、冷静に受け止める県幹部も。日米外交筋は「官邸の独断だ」と落胆を隠さなかった。

 「大変雰囲気がいい」

 協議会の冒頭、協議会を主宰する町村官房長官がこう切り出すと、テーブルの真向かいに座る仲井真知事は満面の笑みを浮かべた。普天間移設をめぐる強硬路線で、地元との対立を繰り返してきた守屋武昌前事務次官の側近が一月人事で一掃された今、政府と地元が“蜜月”であることを印象付けた。


お土産


 政府部内で事前に配られていた発言要領では、「地元の要望を念頭に置いて、できるだけ早い時期に決着を図りたい」と書かれていた。それを町村氏は「沖合へ、という話もあるので、しっかり念頭において…」と、とっさに言い換えた。

 ある政府関係者は「県の『評価』のコメントに対する官房長官からのお土産だ」とみる。

 しかし、日米合意案の実行を促す米側の内情を知る日米外交筋は、「米側はジュゴン訴訟の対応にも追われており、とてもそれどころじゃない」と困惑気味だ。

 一方、これまで、日米合意案に固執してきた防衛省だが、従来の厳しい姿勢は影を潜め、ある幹部は「官房長官の政治的なお考えがあるんでしょう」と淡々と語った。

 石破茂防衛相は協議会後、「『(追加資料を提出した)防衛省の対応を評価する』との発言をいただいた。前向きな姿勢を感じた」と歓迎。防衛省の関心はむしろ目の前のアセス手続きに向いている。


予想外


 町村官房長官が「沖合を念頭に」と言及したことに、県内部では「予想外」と驚きが広がった。

 これまでの事務レベルの調整で、防衛省は沖合移動について「米側との交渉を含め、議論できる状況にはない」と一貫して否定的な見解を繰り返してきた。

 それだけに県内部では「これまで地元が求めている事実関係さえ述べてこなかったのがひどかっただけ」「積極的に対応するという趣旨までは踏み込んでいない」(県幹部)と冷静な見方もある。

 ただ、「沖合移動」が次回以降の協議会のテーマとして浮上したことは、一様に「意義深い」と前向きな受け止めだ。

 知事は協議会で「このまま環境影響評価手続きが進んでも、地元の意向が反映されない場合には、やむを得ず、対応を考えざるを得なくなる」とくぎを刺した。

 知事は協議会後の会見でも、県が求めている「代替施設滑走路の沖合移動」や「普天間飛行場の三年めどの閉鎖状態」については「まだゼロ回答」と指摘。「アセス上は動いてもわれわれは納得していない」と今後の政府の対応を促した。(東京支社・島袋晋作、政経部・渡辺豪)


協議会概要


 七日に首相官邸で開かれた、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の第六回協議会の主なやりとりは次の通り。

【環境影響評価】

 石破茂防衛相 仲井真弘多知事から一月二十一日、環境影響評価(アセス)方法書の書き直しを求める知事意見をいただいた。真摯に受け止め、事業内容や調査手法を取りまとめて一昨日(五日)、県に報告した。引き続き、知事意見を踏まえた対応を取る。

 仲井真弘多知事 防衛省から追加説明の報告を受け、現在調整を行っている。方法書の内容は不十分だったが、防衛省が知事意見を踏まえて速やかに追加説明の対応をしたことは評価している。アセス調査の許認可は防衛省の対応を踏まえ、法令に基づき適切に判断する。

 島袋吉和名護市長 普天間飛行場代替施設の位置は、可能な限り沖合に移動する必要がある。施設の位置、規模は協議会で十分協議してほしい。

【その他】

 仲井真知事 代替施設は可能な限り沖合へ移動してほしい。現在の普天間飛行場の危険性を早期に除去し、三年目途の閉鎖状態の実現に向け、前向きかつ確実に取り組んでほしい。

 島袋市長 名護市は普天間飛行場の危険の解消に向けて理解と協力の下、移設に取り組んでいる。再編交付金の対象になると認識しており、措置を講じる必要がある。

 東肇宜野座村長 再編交付金は基本合意により措置を講じるものと認識している。早期に配慮してほしい。

 石破防衛相 現在の政府案(V字形滑走路案)は生活環境、自然環境、実行可能性を考慮し、地元の要請を踏まえて最も適切な形として米側と合意した。今後アセス手続きを進める中で客観的なデータを収集、評価した上で誠意を持って対応したい。再編交付金の指定については、これまでの他の市町村の実例も踏まえ検討する。

 岸田文雄沖縄担当相 普天間移設に伴う課題解決のため関係者が意見交換の場を重ね、検討、調整しなければいけない。

 町村信孝官房長官 アセス手続きを進める中で、建設計画も協議したい。沖合へという話もかねてあるので、こうしたこともしっかり念頭に置いて、できるだけ早い時期に決着が図られるよう最大限の努力をしたい。次回開催は年度が替わる前後かなと思っている。


知事会見要旨


 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会後、仲井真弘多知事は都内の県東京事務所で会見した。要旨は以下の通り。

 ―地元の意向が反映されない場合の対応とは。

 知事 私は三年をめどに(現在の)普天間飛行場の閉鎖や、(代替施設の)可能な限りの沖合移動を求めている。それへはまだゼロ回答。私がごねているのではなく、知事選の時から申し上げている。環境アセス上は動いてもわれわれは納得していない。

 ―公有水面埋め立てを許可しないこともあるのか。

 知事 はっきり言えないが、われわれは誠心誠意対応している。環境アセスだけ進めても飛行場は建設できない。(許可しないことも)頭に置きつつです。

 ―どの段階まで政府の譲歩を待つのか。

 知事 協議会でフランクにお互いの意見交換ができるようになった。われわれの意見を踏まえた調整ができるだろうと期待している。

 ―今日の協議会の意義は。

 知事 お互いに自由に、実質的な意見交換ができるようになった。以前の大臣や事務次官はその雰囲気がなかった。(今日から)実質的協議に入れる。

 ―滑走路の沖合移設について官房長官が「念頭に」と発言したことへの受け止めは。

 知事 踏み込んだという感触。それなりに取り上げ始めたと受け止めている。「動くのでは」と期待している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802081300_01.html

 

2008年2月8日(金) 朝刊 1面

名護市に再編交付金支給へ/アセス受け入れで

 政府は七日、米軍再編への協力の見返りに関係自治体に支払う再編交付金をめぐり、米軍普天間飛行場の移設先である名護市への支給凍結を解除する方向で調整に入った。複数の政府関係者が明らかにした。

 普天間飛行場の代替施設は名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設する方針だが、同市が建設予定地をさらに沖合に移動するよう求めているため、支給を見送ってきた。しかし「強硬に構えるだけでは、移設問題の進展はない」と判断、名護市が環境影響評価(アセスメント)実施を受け入れることを条件に支給を前向きに検討する。交付により、建設地問題での名護市の軟化を促す狙いもありそうだ。

 政府は名護市をはじめ再編計画を受け入れない山口県岩国市や神奈川県座間市も支給対象から外してきたが、前防衛事務次官の守屋武昌被告(収賄罪で起訴)が主導した「アメとムチ」を使い分ける路線の軌道修正を図った形だ。

 米空母艦載機の岩国基地移転の是非を争点にした岩国市の出直し市長選(十日投開票)にも影響を与える可能性がある。

 政府高官は「名護市は移設そのものは受け入れている」と指摘。防衛省筋も「名護への支給を検討している」と認めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802081300_02.html

 

2008年2月8日(金) 朝刊 1面 

ハンセン7割 共同使用/日米合意

 【東京】在日米軍再編で日米合意した陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の米軍キャンプ・ハンセン共同使用に関し、日米両政府は七日の合同委員会で共同使用エリアについて合意した。ハンセンの約七割を占める約三千六百二十三万平方メートルが対象。

 ヘリなどの飛行も想定し、ハンセン上空の高度二千フィートまでのすべての空域の共同使用も確認した。

 これを受け、陸上自衛隊と在沖米海兵隊は具体的な訓練計画を作成し、三月までに訓練を開始する予定だ。

 防衛省によると、空域の共同使用は、山火事が発生した場合の消火活動時のヘリの飛行を想定。救難活動時のヘリ飛行についても「将来的に検討する」とする一方、訓練のための飛行については「現段階で想定していない」としている。

 陸地の共同使用エリアは、環境への影響を懸念する地元の要望を受け、水源涵養林やダム湖を避けて設定。金武町伊芸区に近いレンジ3、4も除外した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802081300_03.html

 

2008年2月8日(金) 朝刊 30面

高江ヘリパッド/建設反対署名2万2000人

 【東京】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に反対する「ヘリパッドいらない住民の会」の安次嶺現達共同代表や、「なはブロッコリー」の本永貴子代表らは七日午後、参院議員会館で院内集会を開き、建設計画の撤回を訴えた。ヘリパッド建設の即時中止を求める二万二千人分の署名が集まったことを報告し、県関係三人を含む野党国会議員に手渡した。

 集会には約六十人が参加。「やんばるの森に基地はいらない」と訴える住民の声に耳を傾けた。

 三年前に高江に移住して農業を営む住民の会の森岡浩二さんは「年間に五十日以上、座り込みに参加している。農業との両立で子どもの顔を見るのもままならないが、やんばるの自然を守るため続けるしかない」と過酷な現状を報告。同会メンバーで名護市に住む比嘉真人さんは「五月に高江に引っ越そうと思うが、これから生活する場所に人殺しの基地を造るのは議論の余地なく反対だ」と批判した。

 県関係国会議員の照屋寛徳(社民)、赤嶺政賢(共産)、山内徳信(社民)の各氏もあいさつし、建設計画の撤回ややんばるの希少生物保護を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802081300_08.html

 

2008年2月8日(金) 朝刊 2面

海軍病院関連施設/ヘリパッド建設で日米合意

 【東京】日米両政府は七日の合同委員会で、米軍キャンプ桑江の全面返還に伴いキャンプ瑞慶覧に移設される沖縄海軍病院の関連施設として、患者を輸送するためのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)と、電力を同病院などに分岐させるための施設(開閉所)を建設することで合意した。

 ヘリパッドは海軍病院移設先のキャンプ瑞慶覧南側(宜野湾市)に、開閉所は同基地の北東側(北中城村)に造る。

 防衛省によると、ヘリパッドは三十メートル四方で約九百平方メートルの規模。開閉所は一棟で約百七十五平方メートル。ともに本年度中に入札手続きを終え、次年度に着工する見通し。

 海軍病院をめぐって日米は、二〇〇五年一月の合同委員会でキャンプ瑞慶覧への移設で合意。〇六年十二月には本体工事の着工で合意していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802081300_09.html

 

2008年2月8日(金) 夕刊 1面

町村氏、支給前向き/米軍再編交付金

 【東京】町村信孝官房長官は八日午前の定例記者会見で、名護市と宜野座村への米軍再編交付金の支給に前向きな考えを初めて示唆した。

 町村長官は「米軍普天間飛行場の早期移設を実現するという大きな目的に照らし、それと直接リンクしているわけではないが北部振興策とか米軍再編交付金というものがある」と関連性を指摘。

 その上で「全体としてそれらがうまく進むことが、(米軍の)抑止力を維持しながら沖縄などの負担軽減につながる。うまく進んだらいいなあという思いは持っている」と述べ、北部振興事業費や再編交付金の支給をてこに、普天間移設の実現を図る考えを示唆した。

 米軍再編交付金は(1)受け入れ(10%)(2)環境影響評価(アセスメント)調査の着手(25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(66・7%)(4)再編の実施(100%)の段階に応じて支払われる。

 普天間移設で政府は、二月中にもアセス調査に着手する意向。この場合は(2)の条件を満たすことになるため、調査受け入れを条件に名護市、宜野座村に交付金を支給することを検討している。


石破氏「大幅変更ない」

普天間代替


 【東京】町村信孝官房長官が七日の「普天間移設協議会」で、米軍普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動を念頭に協議を進めていく考えを明言したことについて、石破茂防衛相は八日午前の閣議後会見で、「政府として大幅に方針を変えたかといえば、そうではない」と述べ、日米合意したV字案が「最適の案」との立場をあらためて示した。

 石破防衛相は「それ(沖合移動)はいつも念頭に置いている。政府のスタンスと地元の強い要望を念頭に置くことは矛盾するものではない」と説明した。

 一方、同協議会で名護市と宜野座村が求めた再編交付金の交付については「今の時点でその方向を決めたということではない。(普天間移設に向けた)理解と協力をいただいていると判断できる状況が必要だ」と述べ、地元の前向きな対応を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802081700_01.html

 

2008年2月9日(土) 朝刊 1・2面

「普天間」代替交付金/名護・宜野座最大300億円

全国最高額/計画遅れで減額

 【東京】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、計画が予定通りに進んだ場合に名護市と宜野座村に支払われる再編交付金の総額が十三年間にわたって計約三百億円に上ることが八日、関係者の話で分かった。再編交付金の支給候補自治体の中では全国最大の額。政府は、近く始まる見通しの代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査を踏まえ、両自治体に対する交付金支給の凍結解除を目指して調整を進める。(島袋晋作)

 「米軍再編推進法」は再編事業の進ちょく率を(1)受け入れ(10%)(2)環境影響評価の調査着手(25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(66・7%)(4)再編の実施(100%)―の四段階に分類。

 日米両政府は普天間飛行場代替施設について、二〇一四年までの完成を目標とすることで合意。予定通り計画が進めば、完成五年後の一九年度まで交付金が支払われるが、計画が遅れると、その分、交付額は減少する仕組みだ。

 進ちょく率の四段階目に相当する代替施設完成で支払われる再編交付金の上限額(100%分)は単年度で約四十億円に上る見込み。名護市と宜野座村の配分率は代替施設が占める面積などで案分されるが、おおむね五対一となる計算だ。

 政府はこれまで、名護市などが日米合意した代替施設案(V字案)を沖合に移動するよう求めていることを「再編に反対している」とみなし、支給を凍結してきた。

 しかし、七日の「普天間移設協議会」で第二段階に該当するアセス調査の開始に向け道筋が付いたことや、協議が「円滑」に進んでいる状況から、凍結解除に方針を転換した。

 ただ、支給するためには、従来のスタンスや他の対象自治体への対応、「米軍再編推進法」の趣旨などと整合性を図る必要があり、課題は山積している。

 「普天間移設協議会」の次回会合までに方向性を示すとみられるが、調整が難航する可能性もある。


     ◇     ◇     ◇     

要件満たすアセス調査/凍結の根拠薄れる


 政府が名護市、宜野座村への再編交付金の支給を検討しているのは、米軍普天間飛行場移設に向けて近く始まる環境影響評価(アセスメント)調査が交付要件を一部満たすことになり、凍結の根拠が薄れてくるからだ。しかし政府内には「振興策を継続しても、いまだに移設は実現していない」と交付への慎重論が根強くある。政府の対応がこれまでとは正反対となり、従来のスタンスとの整合性を図る上でも課題は山積している。

 防衛省は昨年十一月、再編の受け入れ自治体に本年度分の再編交付金を内示したが、両自治体は「再編に反対している」と見なされ、対象から外されていた。

 これに対し二橋正弘官房副長官らが、両自治体を交付対象とするよう防衛省に強く働き掛けたが固辞され、本年度分の交付は絶望視されていた。

 しかし、アセス調査が始まろうとしている現在、第一段階の「受け入れ」は満たしていないものの、第二段階の「アセス調査着手」には該当するという「ねじれ」が顕在化。町村信孝官房長官が沖合移動に柔軟姿勢を示している以上、「沖合移動要求」が必ずしも「反対」と位置付けられなくなっている実情もある。

 こうした状況を踏まえ、政府高官は「(反対していない)名護と、(反対している)岩国を一緒にしていいものか」と、両自治体の姿勢は異なるとの見方を強調した。

 別の関係者は「再編の円滑かつ確実な実施に資する」場合に交付対象とする仕組みに着目し、「方法書の追加資料の閲覧場所を提供するなど、地元は再編に協力しており、交付要件を満たしつつある」と指摘。本年度分として「受け入れ」に該当する10%分が、来年度は「アセス調査開始」の25%分が確保できるとの見方を示した。

 ただ、再編交付金を所管する防衛省では「これまでと方針を百八十度転換するもので、新たな理屈がないと簡単に対応できない」(幹部)と戸惑いの声が上がる。

 別の幹部は「『容認していない』という点では名護も岩国も同じ。ダブルスタンダード(二重基準)との批判を浴びれば、制度そのものが崩壊しかねない」と懸念する。

 財務省など他省庁の見方も厳しい。一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で合意した辺野古沖案を進める際、政府は年間百億の北部振興事業費を投入。二〇〇〇年から〇六年までは名護市に総額約四十七億六千万円のSACO交付金が支払われた。

 しかし、合意から約十二年を経ても移設が実現していない経緯から、政府関係者は「移設が確実になる担保はあるのか。カネを落として、移設が実現しなかったら、誰が責任を取るのか」と交付に異議を唱えた。(東京支社・島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802091300_01.html

 

2008年2月9日(土) 朝刊 1面

アセス追加資料 2回以上の審査必要/県審査会

 県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が八日、宜野湾市内で開かれ、米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の追加修正資料について、初の審査が行われた。審査終了後に津嘉山会長は同資料について「検討すべき点は残っている」とし、今後少なくとも二回以上審査する必要があるとの認識を示した。県は審査会の結論を踏まえた上で、沖縄防衛局のアセス調査の許認可に応じる手続きを想定しており、審査の行方によっては防衛局が予定する二月中のアセス実施は困難になる可能性も出てきた。

 二月中にアセスが実施されなければ調査完了は来年以降になり、代替施設の二〇一四年完成を目指す防衛局のスケジュールがずれ込むのは必至。

 審査会の事務局を務める県環境政策課は当初、次回審査会で意見集約を想定していたが、委員からは「本来、審査とアセス調査の許認可は別で考えるべきだ」「資料の公表閲覧期間終了(十八日)以降に、市民の意見を反映させる作業が必要」などとして審査継続を望む声が上がった。

 これを受けて、次回審査会で市民の意見を反映させる方法について議論し、三回目の審査会開催につなげることがほぼ確定した。

 今回の審査会では、沖縄防衛局が資料の概要を説明。資料に記載されたのは、知事意見の二百九十九件の指摘に対し、百九十三件にとどまった。知事意見で要求したアセス調査の複数年実施は、具体的な期間について触れなかった。

 また、審査会の答申で求めた現況調査の中止についても、防衛局は「環境に配慮して事業者として自主的に実施している」とし、中止する意向がないことを示した。

 津嘉山会長は「資料の内容に関する議論はまだまだだ。委員のそれぞれの専門についてもっと詳しく意見を述べる必要がある」と述べ、今後慎重な審査の必要性を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802091300_02.html

 

琉球新報 社説

普天間移設協 沖合修正が解決策ではない

 町村信孝官房長官は7日開催された普天間移設措置協議会で、代替施設建設政府案の沖合修正に前向きな発言をした。これを受けた仲井真弘多知事は「(修正の方向で)動くのではないか」と期待感を示した。対立状態にあった県と国の関係改善で普天間問題は1つの節目を迎えた。しかしちょっと待ってほしい。普天間飛行場移設問題は、沖合修正が真の焦点ではないはずだ。

 普天間問題の原点は、住民への危険の除去だ。沖縄国際大学ヘリ墜

落事故を忘れてしまっては困る。住宅密集地への墜落は、多大な犠牲が出てもおかしくない状況だった。普天間移設はこの事故を起点に考えなければならないはずだ。

 移設によって「危険の除去」という最大の問題は解決するのであろうか。否である。移設される辺野古地区などの住宅上空を米軍機がまったく飛ばないというならまだしも、防衛省の防衛政策局長は昨年10月の衆院安全保障委員会で「訓練の形態によっては(住宅の上を)飛ぶことはあり得る。当然の前提だ」と述べた。それまで政府は、緊急時の飛行可能性について触れていたが、訓練時もとなると、住宅上空飛行の頻度は高くなるだろう。

 さらに次期主力兵員輸送機MV22垂直離着陸機オスプレイが配備されることが確実視されている。同機は試験飛行の段階で4回も墜落し、30人が死亡している。

 移転された辺野古周辺住民は、普天間以上の危険を背負うことになるのは明らかである。

 普天間周辺の危険はなくなるが、その代わり辺野古周辺の住民に対して危険が高まる。つまり、危険の除去ではなく、「たらい回し」でしかない。このことをしっかり認識しておきたい。

 政府の態度も無責任としか思えない。オスプレイ配備、住宅上空飛行などについて明確、詳細な説明をしていない。危険除去が目的なら、移設地住民の安全が確実に保障されるための対応をするべきである。政府の態度には日米安保条約、米軍基地最優先という姿勢が露骨ににじみ出ている。

 昨年5月実施された県民世論調査で、辺野古移設計画を進めるべきだと答えたのは17%。これに対し「国外移設」「県外移設」「無条件撤去」を合わせ76%もの人が県内移設以外を望んでいる。

 危険除去という原点に立てば、普天間飛行場の県内移設には無理がある。県民もそのことを認識している。県外に移設してこそ、本県の基地負担軽減にもつながる。

 もう1度指摘するが、沖合修正が解決策のすべてではない。大方の県民の願いは、危険な普天間飛行場は直ちに閉鎖し、次の段階として人に危険の及ばない県外移設の方策を探ることにある。

(2/9 12:22)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31229-storytopic-11.html

 

2008年2月10日(日) 朝刊 2面

宜野湾市が基地返還基金

 【宜野湾】宜野湾市(伊波洋一市長)は二十八日開会予定の市議会三月定例会に、米軍普天間飛行場の返還に向けた「基金条例案」を提案する。市民や県民から広く寄付金を募って基金を積み立て、訪米費や米国での訴訟に向けた調査費など、同飛行場返還に向けた活動資金に充てる。募金は銀行振り込みや現金での持ち込みなどを想定している。

 市によると、全国にはまちづくりで同様な基金条例はあるが、基地問題での条例は聞いたことがないという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802101300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月10日朝刊)

[「沖合移動」論議]

県民への説明が必要だ


思惑秘め飛び交う発言


 米軍普天間飛行場の代替施設建設をめぐる最近の関係者の発言を追っていくと、どうしても住民不在の印象がぬぐえない。さまざまな思惑を胸に秘めながら、お互いの主張を投げあい、妥協点を模索しているようなのだが、水面下の交渉実態がよく見えないのだ。

 町村信孝官房長官は、七日の第六回普天間移設協議会で、今後、日米合意案(V字案)の沖合移動も念頭に置いて協議していくことを初めて明らかにした。

 沖合移動をめぐっては最近、ケビン・メア在沖米総領事と仲井真弘多知事がさや当てを演じたばかりである。

 メア総領事は一月三十日の定例会見で「沖合に滑走路を出せば埋め立て面積も増えるので、環境への影響が少なくなるとは常識的には考えられない」と沖合移動を求める県をけん制し、日米合意案の実行を求めた。

 これに対し仲井真知事は二月一日、「地元の意見を尊重してもらいたいと日本政府に求めている最中に、どうして(総領事が)県民に言う権限があるのか。沖縄と米国の関係をむちゃくちゃにしかねないと危惧の念を強くしている」とメア発言に反論。異例の強い調子で不快感を表明した。

 一方、沖縄防衛局の真部朗局長は一日、着任会見の席で、日米合意案が「ベスト」との認識を示した上で、「変更するということであれば合理的な理由が必要」だと、防衛省の従来の姿勢を繰り返した。

 行政の上のほうが、何やらしきりに空中戦を展開しているような、そんな印象だ。

 だが、肝心な点が伝わってこない。県はなぜ、沖合移動にこだわるのか。選挙公約だからというのでは説明にならない。環境保全との関連で、もっと言葉を尽くして県民に説明する必要がある。

 政府はなぜ、その都度「これがベスト」だと言いながら代替施設案を一九九六年以来、二転三転させてきたのか。合理的な理由があれば変更も可能だというが、合理的理由とは何か。

 正直言って今のような、住民への情報開示が不十分な交渉スタイルには危惧の念を抱かざるを得ない。


亀裂修復の動きが加速


 二〇〇五年秋の日米交渉では、キャンプ・シュワブの「沿岸案」を主張する防衛庁(当時)と、リーフ内を埋め立てる「浅瀬案」を主張する米側が対立した。「ジュゴンなど貴重な自然環境の保護」を表向きの理由にしたのは防衛庁である。米側が推す「沿岸案」には地元業者の強い後押しがあるといわれた。

 結局、防衛庁案で日米が合意することになったが、県は終始、蚊帳の外に置かれた。日米交渉をリードしたのは守屋武昌前防衛事務次官である。

 守屋方式は(1)いちいち沖縄地元の意見は聞かない(2)沖縄地元に「食い逃げ」はさせない(3)そのために米軍再編交付金制度を設ける、というものだった。一言で言えば、強硬路線だ。

 「地元の頭越しに進めることはない」と主張し続けてきた橋本龍太郎元首相(故)の協調路線からの、大きな転換である。

 現在、進行している事態は、守屋方式によって生じた地元との亀裂の修復作業だといえよう。実際、仲井真知事は、町村官房長官の発言を引き出し、前進への手応えを感じたという。

 守屋時代と比べ、政府と沖縄の関係は変わった。最近の防衛省人事も、関係修復へのシグナルだと受け取られている。

 事態は政府と県の妥協へ向けて、確実に動きつつあるように見える。


問題多いアセス方法書


 沖縄防衛局は、アセス方法書に対する知事意見を受けて五日、事業内容や調査手法を追加修正した資料を県に提出した。

 事実上の「書き直し」である。

 追加資料によって、集落上空の飛行が明らかになったほか、大型護岸や燃料貯蔵施設の能力なども判明した。

 沖縄防衛局と県は追加修正資料をホームページで公表したほか、県内五カ所で閲覧できるようにした。そうであれば、住民の意見を求め、アセスに反映させるべきだ。追加資料の閲覧は法律に基づく「公告縦覧ではない」という防衛局の見解は納得できない。

 ジュゴンの「複数年調査」を実施するのかどうかなど、方法書にはまだまだ問題がある。

 工期を気にするあまり、環境保全への対応が不十分であってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080210.html#no_1

 

2008年2月11日(月) 朝刊 23面

名護市長「影響なし」/岩国市長に福田氏

 【名護・宜野湾】山口県岩国市長選で十日、米空母艦載機移転に賛成の福田良彦氏の当選が決まったことは、同様に在日米軍再編問題を抱える名護市や神奈川県座間市の関係者に波紋を広げた。米軍普天間飛行場移設予定地の名護市の移設容認派からは「普天間も進むのでは」と歓迎する声が上がった。一方、反対派は「政府につぶされた」と残念がった。

 普天間飛行場の移設先、辺野古区の有志らでつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「選ばれた市長には国防の観点から在日米軍再編に協力してほしい。それぞれの地域で再編作業が進めば普天間や嘉手納以南の基地返還など沖縄の再編も進んでいくのではないか」と期待を込めた。

 政府案より滑走路位置を沖合に移動するよう求めている島袋吉和名護市長は「われわれは国と移設受け入れの基本合意を交わしている。(岩国市とは)立場が根本的に違い、影響はない」と強調。

 市幹部や保守系市議も「交付金目当てに名護市が沖合移動という要求を引っ込めることはない」と口をそろえた。

 一方、移設反対派の二見以北十区の会の浦島悦子共同代表は艦載機の移転に反対していた井原勝介氏落選の報に「負けたの」と声を落とした。「井原さんが勝てば政府に相当な痛手になったはず。全力でつぶしにかかったと思う。井原さんに投票した岩国の人たちも子や孫のことを考えてこれから頑張ると思う。私たちも普天間の移設阻止に向けてあきらめずに頑張るしかない」と運動の継続を誓った。

 住民投票でも岩国に出向き井原氏を支援したヘリ基地反対協議会の大西照雄代表委員は、先月にも二日間、岩国入りし、再編反対を訴えた。「福田氏は基地移設とは別の税金問題などを訴えて争点をずらしていた。厳しい選挙だなと感じていた」と残念がった。

 宜野湾市の伊波洋一市長は「(米空母艦載機移転による)将来の目に見えない負担より、目の前の補助金に市民の関心が向いたのだろう。残念だ。米軍再編で自治体の声を補助金で曲げさせる、あしき前例にならないか心配だ」とコメント。「すべての市民が受け入れを容認したとは思えないが、今後は市民の選択が試される」と話した。

 キャンプ座間への米陸軍第一軍団の新司令部移転に反対する座間市の星野勝司市長は「他の市長選の結果で座間市の基本姿勢は何も変わらない」と静観の構え。

 だが米陸軍は昨年末、地元自治体の反対を押し切り新司令部を発足させるなど計画を着々と進めている。

 一部の市民からは国との条件闘争を求める意見も。

 市民団体「キャンプ座間への米陸軍第一軍団の移駐を歓迎しない会」の金子豊貴男事務局長は「反対運動はこれからで、一喜一憂せずに問題に取り組んでいくことが大事だ」と主張している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802111300_02.html

 

2008年2月11日(月) 朝刊 23面

「墜落か」住民騒然/嘉手納基地 航空機消火訓練

 【嘉手納】米軍嘉手納基地内で十日午後、航空機火災を想定した消火訓練が行われた。訓練用の機体が燃え、基地内の消防隊員が放水する様子が確認された。事前の通告がなかったことや民間地から近い場所での訓練だったため、「墜落事故が起こったのではないか」と不安がる住民もいた。同基地から連絡を受けた周辺自治体によると消火訓練は、十一日から始まる予定だった即応訓練を一日早めて実施したことに伴うという。

 訓練は、火災を再現する消防訓練用の機体を使用。目撃者によると、少なくとも機体の二カ所から発火し、煙が舞い上がった。数十台の緊急車両が機体を取り囲み、消防隊員の放水とともに、乗組員に見立てた人形を機内から運び、応急処置をしている様子も確認された。

 同基地によると、使用した機体は飛行はできない。同様の訓練は異なる状況に対応するため、曜日や場所を変えて実施しているという。

 同基地は、周辺自治体に対し、消火訓練が終了した後に「即応訓練を一日早めた」と通知。理由は明らかにしなかったという。

 訓練の現場は県道74号から数十メートルの距離。通りかかったドライバーは一様に驚いた様子で、訓練を見守った。嘉手納町屋良に住む女性(60)は「(訓練用の)機体が黒焦げだった。本当の事故のようで、怖かった。民間地の近くではやらないでほしい」と話した。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「多くの県民が休日を楽しんでいる日曜日に、事前の説明もなしに、不安を与えるような訓練を行うのは許せない」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802111300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月11日朝刊)

[推進派市長当選]

「やむを得ぬ」苦渋の選択

 米軍再編に伴う米空母艦載機移転の是非が最大の争点となった山口県岩国市の出直し市長選で、移転推進を訴えた前自民党衆院議員の福田良彦氏が、移転反対派の前市長、井原勝介氏を退け、初当選した。

 今回は市財政が厳しい局面を抱えた中での選挙となり、市民にとって苦渋の選択となった。地域経済が冷え込む中で、移転反対か地域振興かの厳しい選択を迫られ、地元経済界などの支援を受けた福田氏が得票を伸ばした。

 選挙結果からは、岩国移駐に反対する市民も福田氏支持に流れたことがうかがえる。政府は移転を積極的に受け入れる民意だと見るべきではない。

 政府の強権的な圧力が明確になる中で、再編交付金による地域経済振興などを前提とした条件付きのやむにやまれぬ選択だと受け止めるべきだ。

 米軍再編が計画通りに実施されると米空母艦載機五十九機が岩国基地に移駐する。今選挙の結果は今後の米軍再編にも影響を与えそうだ。

 厚木基地所属の米空母艦載機の移駐をめぐって民意は揺れ動いた。合併前の市議会は全会一致で移転反対を決議し、二〇〇六年三月の住民投票では反対票が有効投票の89%と圧勝。合併に伴う同四月の市長選でも井原氏が当選し、二度も移駐反対の民意を示した。

 これに対し政府は「安全保障問題は国の専権事項」と主張し、米軍再編を推進する構えを崩さなかった。米軍再編推進法などを盾に、露骨な「アメとムチ」政策で受け入れを強く迫った。

 政府が移転反対を理由に新市庁舎建設の補助金約三十五億円を凍結したことで市民の間に動揺が広がった。昨年末には補正予算案が四度否決されるなど市長包囲網が着々と築かれた。

 今選挙で福田氏は市財政の立て直しや地域経済振興を訴え、日々の生活を重視する姿勢を強調。井原氏は空母艦載機移転の問題を主軸に据えて訴え、草の根の選挙運動を展開した。

 福田氏の当選は、背に腹は代えられぬと市民が暮らしを重視した結果だろう。移転を無条件で全面的に受け入れたわけではない。背景には移駐反対だけでは済まない厳しい現実もあろう。

 基地反対派が移転反対を正面から訴えたのに対し、移転容認派は地域振興の訴えに力を注いだ。米軍基地を抱える沖縄の選挙と同じ構図である。

 政府の強権的な政策に翻弄される岩国市の姿は、沖縄の基地所在市町村や県の姿とも重なって見える。厳しい選択を強いられた市民の姿は痛々しい。福田氏当選は移設推進の一言では言い尽くせまい。民意を読み誤ることなく今後の市政運営に反映させてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080211.html#no_1

 

琉球新報 社説

岩国に新市長 住民本位の姿勢貫けるか

 米空母艦載機移転の是非を最大の争点とした山口県岩国市長選は、移転容認派が擁立した前衆院議員の福田良彦氏が、移転に反対する前市長の井原勝介氏を接戦の末に破り、初当選した。

 選挙戦で福田氏は、艦載機移転を受け入れ、米軍再編交付金を得ることで「岩国再生を実現する」と主張。市の財政状況を懸念する有権者の支持も取り付けた。

 これに対し、井原氏は「子や孫が平和な生活を送れるか不安」と訴え、2006年の住民投票で9割と圧倒的だった反対票の取り込みを狙ったが、及ばなかった。

 在日米軍再編で“アメとムチ”を使い分ける政府に同調した福田氏を有権者が選択した形だが、政府が「アメとムチはよく効く。住民なんてそんなものだ」と見くびるようなことがあれば、民意を見誤る可能性がある。

 新市長となる福田氏には、政府に迎合するのではなく、是々非々で対応してもらいたい。わけても基地問題では、住民意思を幅広く集約することが大切だ。対立候補とわずかな差だったことを踏まえれば、政府方針であっても、できない相談には応じられない旨、主張する姿勢が求められる。

 艦載機の海兵隊岩国基地への移転は、06年5月に日米両政府が合意した在日米軍再編の最終報告に盛り込まれた。騒音が大きい戦闘攻撃機FA18など59機を、神奈川の海軍厚木基地から移す計画で、岩国の滑走路沖合移設が完成する08年度末以降に実施し、14年に完了予定だ。

 岩国は軍用機が倍増し、沖縄の空軍嘉手納基地と並んで極東最大規模になる。隊員や家族ら約3800人も新たに増えるという。

 これは「応分の負担」ではなく明らかに「過重負担」であろう。基地再編交付金という“アメ”には、極東最大級の激しい“ムチ”が付随してくることを、住民も認識しておく必要がある。

 惨事が起きてからでは遅い。市政を担う福田氏の責務は重大であり、激しい騒音や墜落の恐怖、米兵による犯罪など、今後想定される過重負担を政府がどう回避、軽減してくれるのか、明確な説明を求めるべきだ。

 それにしても、政府の手法は疑問だ。今回の市長選が接戦となった背景には、艦載機移転受け入れに反対している岩国市を、政府が基地再編交付金の対象から除外したことがある。市庁舎建設補助金約35億円も凍結した。

 住民が「経済再生」を優先し、苦渋の決断をするや、政府はかさにかかって攻め立ててくる。それは普天間飛行場の移設問題を見ても明らかだ。福田氏には住民本位の姿勢を貫くこと、政府には民意を見誤らないことを求めたい。

(2/11 11:02)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31268-storytopic-11.html

ハワイF15墜落 嘉手納に同型3機など  沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(2月4日から7日)

2008年2月4日(月) 朝刊 20面

消えた母校の名 復活を/同窓生、石碑建立へ

楚邊尋常小學校・國民學校の足跡残そう

 沖縄戦の影響で名前が消えた「楚邊尋常小學校・國民學校」の「足跡」を残そうと、同校の同窓生ら約二百三十人が石碑の建立に向けて活動している。一―九期生の代表二十人は三日、那覇市内で第一回の石碑建立委員会を開き、山城宗一郎委員長(79)は「石碑を建立することで、思い出を後輩たちにつないでいきたい」と、同窓生らに協力を呼び掛けている。

 楚邊尋常小學校・國民學校は、一九四〇年に旧真和志村、現在の那覇市立城岳小学校がある場所に開校。戦時中の四四年、日本軍に野戦病院として接収された。

 戦後、糸満市摩文仁に再建されたが、占領していた米軍キャンプの移動に伴って移転を繰り返し、四九年に那覇市与儀に移ったことで現在の与儀小学校の前身となった。

 「楚邊尋常小學校・國民學校跡」の石碑は、市の許可を得て城岳小学校の敷地内に建立、三月中の完成を目指す。

 山城委員長は「海軍で終戦を迎えた。戦後、食うために精いっぱいのうちに、いつの間にか母校の名前が消えてしまっていた」と振り返る。

 同会の大城盛昌さん(74)は「一時は千人以上の生徒がいたマンモス校。名簿から漏れている同窓生はぜひ連絡を」と求めた。

 問い合わせは同会・長嶺、電話098(884)9851。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802041300_02.html

 

2008年2月4日(月) 朝刊 21面

疎開語り 非戦を誓う/宮崎の受け入れ先市民・県内体験者

 沖縄戦時の県外疎開の様子を調べようと、疎開先だった宮崎県都城市の戦争体験者ら日本中国友好協会の会員が三日、那覇市内のホテルで疎開体験者の話を聞いた。同協会都城支部が企画する平和事業などで、沖縄戦の実態を紹介するために交流を深めようと訪れた。

 疎開体験を話したのは、一九四四年から四五年にかけて県内から同市周辺に疎開した小波津厚明さん(77)=南城市=と玉那覇良康さん(68)=宜野湾市。

 疎開先に食料や住居は準備されておらず、栄養失調になり「食べられる物が落ちていないか」と、いつも下を向いて歩いていたこと、風呂のない公会堂などでの生活が続き、皮膚病や体のにおいに悩まされたこと、慣れない寒さにも苦しんだこと―などを語った。

 一方で、地元の住民が乏しい食料の中から差し入れをくれたことや、小波津さんの疎開先だった同県日之影町の日之影小学校(当時は岩井川村・岩井川国民学校)には疎開記念碑が建ち、疎開した九月八日を「友情の日」として、小波津さんらによる戦争についての授業が続けられていることなども紹介した。

 同協会の田中義教理事長は「沖縄戦もそもそもの始まりは日中戦争だった。私たちは、両国間で二度と戦争が起きないようにと民間交流を続けている」と話し、「日中戦争や沖縄戦の実相に蓋をしようとする動きが強まる中で、事実は事実として残し伝えようと訪れた」と話した。

 小波津さんは「県外疎開は沖縄戦に備え、日本軍が県内の口減らしを目的に推し進めたことは、私の記憶でもはっきりしている。沖縄戦の美化は許されない」と訴えた。

 同協会都城支部では毎年「平和のための戦争展」を行っており、今後、沖縄からの疎開を含めた沖縄戦の実相を紹介したいという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802041300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月4日朝刊)

[またもF15墜落]

政府は深刻さ認識せよ

 米ハワイ州空軍所属のF15戦闘機が訓練中、オアフ島南約百キロの海上に墜落した。

 F15といえば、二〇〇七年十一月に米ミズーリ州で墜落事故を起こし、構造上の問題が明らかになったばかり。しかも米軍は、原因究明のため同型機の飛行を停止したのもつかの間、事故調査も終わらないうちに点検済みのF15の飛行を再開、その直後に新たな問題が見つかって再停止に追い込まれるなど、対応が二転三転した。

 事故が住民の不安を募らせ、事故後の対応が米軍への不信感を一層かき立てた。このようなケースは復帰後初めてだ。過去に例のない異常な展開の中で、またもF15の墜落事故が起きてしまったのである。

 政府は事態を深刻に受け止めるべきだ。住民の不安を解消することは政府の義務である。

 F15に一体、何が起きているのか。問題を整理するため、昨年十一月以降の動きを年表風に追ってみたい。

 ▽昨年十一月二日、米ミズーリ州でF15戦闘機が空中戦闘訓練中に墜落。「構造上の問題が発生した可能性がある」として米空軍は、四日から嘉手納基地のF15を含む同型機の飛行を全面停止した。

 ▽嘉手納基地報道部は十一月二十一日、点検を終えたF15の飛行訓練を二十六日から順次再開する、と発表。詳しい事故原因が明らかにされないまま、地元自治体の反対を押し切ってF15の飛行が三週間ぶりに再開された。

 ▽米空軍は同二十八日、事故調査で新たな問題が見つかったため、最新鋭のE型機を除くすべてのF15について飛行を再停止すると発表した。機体構造を支える「ロンジロン」と呼ばれる縦通材の亀裂は嘉手納基地のF15からも見つかっている。

 ▽嘉手納基地報道部は〇八年一月十日、点検を終えた一部F15の飛行を十四日から再開すると発表。縦通材の厚さが規定に達していないF15の飛行停止措置は継続される、と説明した。

 老朽化したF15には、米軍でさえ事態を深刻に受け止めるほどの、構造的な欠陥があったのだ。

 嘉手納基地のF15は、大半がミズーリ州で墜落事故を起こしたC型で、ハワイ州オアフ島沖に墜落したD型も一部配備されている。

 であれば、何よりもまず嘉手納基地所属のすべてのF15を再度、飛行停止することが必要だ。

 飛行停止と再開の繰り返しは、住民の不信感を高めるだけである。政府に対しては、住民の撤去要求を踏まえ、毅然とした対応を求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080204.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15墜落 不可解な欠陥機の野放し

 墜落事故が絶えないというのに、どうして日本政府は米側に強く迫れないのだろう。「安全に留意を」などでなく、「飛行を止めろ」ではないのか。重大な欠陥が明らかな戦闘機を、沖縄を含む国内で野放し状態にする理由が分からない。

 米メディアによれば、ハワイ州オアフ島沖の海上で1日、2機で空中戦闘訓練中だった米空軍ハワイ州兵部隊所属のF15D戦闘機(2人乗り)の1機が墜落した。操縦士は脱出して無事だったが、危うく惨事になるところだった。

 操縦士の話だと、機体が操縦不能になり、機械上の何らかの故障が発生した。その通りであれば、操縦ミスなどではなく、機体そのものに大きな欠陥があったことになる。米軍は事態を重大かつ深刻に受け止め、F15すべての飛行を直ちに中止すべきだ。

 F15については昨年11月の米ミズーリ州での墜落事故を受け、全F15の飛行停止措置が取られた経緯がある。その後、米空軍の調査で、保有する全F15のうち9機(うち2機は嘉手納基地所属)で機体の構造を支える縦通材に亀裂が見つかった。およそ4割は縦通材の厚さが規定に達していないことも判明している。

 ところが米軍は、ことし1月中旬から嘉手納基地でF15の飛行を再開し、周辺住民が不安と怒りを募らせていた。飛行再開に当たって空軍は「指定された点検を完了し、製造元の規定を満たした」と説明したが、少しも信用できないことが、今回のハワイ沖の事故で明白になった。

 根拠のない「安全宣言」で飛行を強行してきた米側は論外だが、これに強く抗議できない日本政府の姿勢も問われる。外務省は、駐日米大使館を通じて「F15の飛行に際しては安全に十分留意するよう伝えた」としているが、その内容では不十分である。基地周辺住民は納得しないだろう。

 米政府が「F15はもう安全」と言い張るなら、まずはホワイトハウス(米大統領府)やペンタゴン(国防総省)上空で、少なくとも1年以上、飛び交ってもらおう。そうも言いたくなる。

 いずれにしても、墜落事故が再び起きたということは、F15は安全でなかったという証しであり、政府は米側に明確な説明を求めてしかるべきだ。その説明も引き出せずに、欠陥機を野放しにされては住民はたまったものでない。

 沖縄は半世紀余にわたり、米軍の戦闘機やヘリコプターなどの墜落におびえてきた。実際、悲惨な事故も何度か起きている。異常な状態は1日も早く脱しないといけない。基地周辺住民の訴えを政府は正面から受け止め、今度こそ米側に「欠陥機撤去」を強く迫ってもらいたい。

(2/4 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31059-storytopic-11.html

 

2008年2月4日(月) 夕刊 5面

嘉手納に同型3機/ハワイF15墜落

 【嘉手納】米ハワイ州のオアフ島の南約百キロの海上で一日午後(現地時間)、ハワイ州空軍のF15戦闘機が墜落した問題で、米軍嘉手納基地報道部は四日午前、沖縄タイムスの取材に対し、同基地に事故機と同型のD型(二人乗り)が三機配備されていることを明らかにした上で、「通常の訓練は続ける」と回答した。飛行停止措置は取らず、訓練を継続する方針を示した。

 同基地では事故原因について「現在、調査中」としている。四日午前十一時現在、嘉手納基地ではF15の飛行や機体の移動、点検作業などといった目立った動きは確認されていない。

 同基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町には、米軍や関係機関から事故の詳細について、説明はないという。

 「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は「昨年の米本国での墜落事故でF15の欠陥が明らかになった。F15は世界中で事故を起こしており、型式に関係なく機体そのものに問題があるのではないか。もはや、撤去以外に周辺住民が安心して生活できる方法はない」と語気を強めた。


空自も通常通り


 【東京】米ハワイ州オアフ島の南約百キロの海上でハワイ州空軍のF15戦闘機が墜落した事故で、航空自衛隊は保有するF15について、四日午前も通常通り飛行訓練を実施している。事故後の対応について防衛省航空幕僚監部(空幕)は「事故原因など詳細を確認中で、運用をどうするかについて今の段階では何とも言えない」としている。

 空幕によると、訓練がない土・日曜日も運用に変化はなく、領空侵犯などの警戒(アラート)任務で対応していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802041700_02.html

 

2008年2月4日(月) 夕刊 5面

米軍関係犯罪63件/07年県警まとめ

復帰後2番目に少なく

 二〇〇七年に摘発された在沖米軍人、軍属らによる刑法犯は六十三件、四十六人だったことが、四日までに県警捜査一課のまとめで分かった。前年より六件(10・5%)の増加、十七人(27%)の減少で、摘発人数は本土復帰以降、二番目に少なかった一九九七年と九八年に並んだ。最少は米兵暴行事件(九五年)が起きた翌年の九六年で三十三人。

 〇七年の内訳は軍人が三十人、軍属が一人、家族が十五人で、このうち未成年は二十人だった。

 凶悪犯は六件六人で、前年より三件一人増。主な犯罪では、三月に北谷町で米陸軍軍属の息子=当時(19)=が自宅マンションから空気銃を発砲した殺人未遂事件のほか、十月に米軍嘉手納基地内に住む米軍人の息子=当時(21)=による強姦致傷事件などがあった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802041700_03.html

 

2008年2月5日(火) 朝刊 2面

修正きょうにも提出/普天間アセス

 米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書について、県が知事意見で「書き直し」を求めたことを受け、沖縄防衛局は五日午後にも方法書の内容を追加修正した資料を県に提出する。

 知事意見が求めた追加修正分の「公表」については、同局のインターネットのホームページに掲載するほか、県や同局などで「閲覧」できるように対応する。

 資料は方法書の第二章に当たる「対象事業の目的及び内容」と、第四章の「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法」で内容を大幅に追加し、百九十ページに上る。そのほか別添資料を合わせると資料は計二百五十ページに上る見込み。

 閲覧場所は県や沖縄防衛局、同局の名護連絡所など計五カ所とする方向で調整を進めている。

 県は提出を受けて八日にも審査会を開く予定。審査会は複数回の審議を通して、事業の具体化に伴い、アセスの調査手法を最終決定するための意見を述べる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802051300_04.html

 

琉球新報 社説

岩国市長選 問われる「アメとムチ」政策

 米軍基地を抱える山口県岩国市の出直し市長選が告示された。米軍厚木基地(神奈川県)の米空母艦載機部隊を受け入れるかどうかが最大の争点である。

 米軍再編に伴い政府から新たな基地の負担を迫られ、民意に基づいて反対を貫こうとすると「アメとムチ」の政策が容赦なく降り掛かってくる。結果、受け入れの是非をめぐり地域や市民が真っ二つに分断され翻弄(ほんろう)される。

 わたしたちが過去に幾度か直面させられ、「苦渋の選択」を強いられたあの構図である。無関心ではいられない。

 選挙は、移転容認派が多数派を握る議会との対立から、民意を問うため任期途中で市長の職を辞した井原勝介氏と、移転賛成の立場から立候補した前自民党衆院議員の福田良彦氏による一騎打ちの争いである。

 艦載機の岩国への移転は、2005年秋の米軍再編の中間報告で明らかになった。これに対し、当時市長だった井原氏は受け入れを拒否。翌年3月に実施された住民投票では「反対」が約9割を占め、その直後の市長選では井原氏が容認派候補らに圧勝した。これだけでも、民意の所在がどこにあるかは明らかだ。なのに同じテーマを短期間に、なぜ3度も問わねばならないのか。

 理由は、米軍再編推進法に基づく交付金を盾に、要求を一方的に押し付けようとする政府の手荒な手法にある。

 既に建設に着手していた市庁舎の建て替えに対し、政府は、受け入れない限り補助金35億円は凍結すると、強権的な姿勢をむき出しにしてきた。「アメとムチ」のこの強引さは、政府が昨年、北部振興費を凍結した際に見せたのとまったく同一だ。

 政府に異議を申し立てるや、露骨な「兵糧攻め」に出る。地域の声を無視したこうした理不尽なやり方は、問題をこじらせ、政府への不信、ひいては防衛政策への不信を増幅するだけだ。

 今選挙では「最新の民意」と同時に、政府の姿勢や政策に対し市民の審判が下される。

(2/5 10:05)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31096-storytopic-11.html

 

2008年2月5日(火) 夕刊 1・5面

墜落同型F15飛行/嘉手納基地

 【嘉手納】米ハワイ州オアフ島南の海上で同州空軍のF15戦闘機が墜落した問題で、米軍嘉手納基地に配備されている事故機と同じD型(二人乗り)が五日午前、同基地を離陸した。二日(日本時間)の事故発生後、嘉手納基地でD型の飛行訓練が確認されたのは初めて。同基地報道部は事故原因について「調査中」としており、周辺自治体に詳細な説明がないまま飛行したことに対し、反発が一層強まりそうだ。

 F15D型は午前八時二十二分ごろ、同基地南側滑走路からアフターバーナー(推力増強装置)を使用して北谷町方向から沖縄市方向に向け、一機が離陸。

 約二時間後に帰還したことから、沖縄本島周辺で訓練を実施したとみられる。

 ハワイでの墜落事故を受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は五日午後、北谷町役場で幹事会を開き、今後の対応を協議する。

 野国会長は「事故の詳細が明らかにされない中で、嘉手納基地での同型機による訓練はあってはならないことだ。住民の不安を増長させることになる。なぜ飛行停止措置を取らないのか」と話した。

 嘉手納基地報道部によると、同基地にはD型が三機配備されているが、事故後の運用については「通常の訓練は続ける」とし、飛行停止措置は取らない方針。

 米空軍のF15をめぐっては、昨年十一月に米本国でC型が墜落。事故調査の過程で、ロンジロン(縦通材)の亀裂が主原因として浮かび、嘉手納基地所属機二機でも亀裂が発見された。

 この事故を受け、同基地所属機は約二カ月にわたって飛行を停止。ことし一月、安全性が確認された機体について飛行を再開したばかりだった。


     ◇     ◇     ◇     

「住民の命を軽視」/基地周辺怒りの声


 【中部】「墜落の危険があるのに、地元の声は届かないのか」―。米ハワイ州で墜落したF15戦闘機D型機(二人乗り)の同型機が五日午前、米軍嘉手納基地周辺で飛行した。事故原因は明らかにされず、再発防止策も示されない中、民間地上空を飛行するF15。墜落の危険と隣り合わせの生活を強いられる基地周辺の住民は「欠陥機は早急に撤去すべきだ」と怒りの声を上げた。

 米軍機の飛行ルート下にあり、昼夜を問わず米軍機の爆音が鳴り響く北谷町砂辺区。一月二十日に開いた騒音に抗議する住民大会の実行委員長を務めた松田正二区長は「住民の命を軽視していないか」と憤った。

 宅地や海に墜落する可能性がある中、住民は我慢の生活を強いられていると指摘。「米軍も住民集会を開催したことは知っているはずだ。私たちの声は届かないのか」と訴えた。

 F15の離陸を確認した同区の渡慶次保さん。「F15は何度も飛行停止措置を繰り返す欠陥機だ。私たちが声を上げなければ、何も変わらない。泣き寝入りしてはならない」と力を込めた。

 北谷町議会の照屋正治基地対策特別委員長は「外国であってもF15が墜落する度に、住民は人ごととは思えない。事故が頻発する中、なぜ飛行停止しないか」と米軍を批判した。

 「住民の不安を軽視した、軍事優先の運用だ」。嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は憤った。「嘉手納で運用されるC、D型機はいずれも墜落事故を起こしたばかり。住民の不安を解消するには撤去しかない」と訴えた。

 同町基地対策協議会の比嘉親紀顧問も、「何度も墜落しており、やはり欠陥機ではないか」と話した。

 沖縄市議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「欠陥機であるF15は撤去するべきだと再三抗議してきた。事実関係などの情報を収集した上で、対応を協議したい」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802051700_01.html

 

2008年2月6日(水) 朝刊 1面

「集落上空飛行」を明記/普天間アセス

追加修正資料防衛局が提出

 沖縄防衛局は五日、米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見で「書き直し」を求められたことを受け、事業内容や調査手法を追加修正した資料(三百八十三ページ)を県に提出した。方法書本体の同項目の約三倍の分量に上る。飛行経路については「訓練の形態等によっては集落上空を飛行することもあり得る」と明記。護岸施設には、全長百九メートルのタンカーの燃料桟橋への係留のほか、周辺海域の警備などに当たる小型ボートの接岸を想定していることを明らかにした。県は八日に開く県環境影響評価審査会に諮る。

 追加資料は五日から十八日までの間、沖縄防衛局や県庁、名護市役所など県内五カ所で閲覧できるほか、沖縄防衛局と県のホームページに掲載。審査会での複数回の審議を経て方法書を最終決定する。

 追加資料によると、滑走路南側に配置する弾薬搭載エリアは約一万六千平方メートル。

 燃料桟橋付近には容量約三万キロリットルの燃料貯蔵施設を併設する。

 大型護岸に関しては、恒常的に兵員や物資の積み降ろしを行う「軍港機能」を否定する一方、航空機が故障した場合などに船舶を使用した輸送を実施する必要があるかも含め、米側と検討していく方針を示した。

 滑走路の幅は「代替施設で配備されるCH53など短距離で離発着できる航空機の所要に見合う」必要な幅として三十メートル、路肩幅を左右に各七・五メートル確保する方向で日米間で調整。飛行場面積は「陸上部・埋め立て部を合わせて概ね二百十ヘクタール」を見込んでいることを明らかにした。

 また、審査会への説明で県内から確保する意向を示していた埋め立て土砂については「県内の海砂等の購入のほか、県外からの調達等も含め、具体的に検討を行う」と修正した。

 追加資料は方法書の第二章に当たる「対象事業の目的及び内容」と、第四章の「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法」の部分。別添資料(百九十二ページ)を合わせると計三百八十三ページ。別添資料では、普天間飛行場の運用条件を基本にした航空機騒音予測図(騒音予測コンター)も提示している。


円滑に進めたい

真部沖縄防衛局長


 沖縄防衛局の真部朗局長は五日、「県に報告した資料について丁寧に説明し、理解を得るとともに、知事意見を勘案し、住民等の意見にも配意して環境影響評価手続きを円滑かつ適切に進めたい」とのコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802061300_02.html

 

2008年2月6日(水) 朝刊 25面

膨らむ機能 懸念続々/防衛局追加資料

 「集落上空の飛行もあり得る」。沖縄防衛局は五日、県に提出した資料で、米軍普天間飛行場代替施設の飛行パターンを明らかにした。大型護岸や燃料貯蔵施設の能力も判明。情報が出るたび膨らんでいく基地機能に、地域住民や市民団体は「アセスのやり直しを」と求めた。

 騒音被害への懸念が増す名護市東海岸。二見以北十区の会の渡具知智佳子共同代表は「必要性があれば飛ぶということは、米軍の都合でいつでも飛べるやりたい放題の状況になる」と、不安を隠さない。桟橋の設置など、「基地の中の大浦湾になってしまう。アセスの形だけが進んでいくのが怖い」と嘆いた。

 ジュゴン訴訟の原告で、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長は、「燃料用タンカーがどの海域を通るのか、燃料貯蔵施設からの流出防止策、航空機洗浄剤や水の量、環境対策」と、懸念材料を列挙。「追加で出すような軽い内容ではない」と防衛局の対応を批判した。

 世界自然保護基金(WWF)ジャパンの花輪伸一さんは、知事意見が求めたジュゴンの「複数年」調査に触れていないことを問題視する。「環境省や防衛省が調査を重ねても個体数さえ分からないのに、一年の調査で基地の影響が予測できるはずがない」と断じた。

 防衛局は、追加資料の「閲覧」は環境影響評価(アセスメント)法に基づく「公告縦覧」ではないとの見解で、期間を二週間に限り、市民の意見も求めない。同日、同局に申し入れをした「辺野古新基地建設を許さない市民共同行動」の伊波義安共同代表は「あまりに一方的で、住民の意見を反映させるアセスの原則を骨抜きにするやり方。徹底的に追及していく」と語気を強めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802061300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月6日朝刊)

[岩国市長選挙]

国の基地政策が争点に

 在日米軍再編に伴う米空母艦載機部隊の岩国基地移転問題を争点に三日告示された山口県岩国市長選は、十日投開票される。

 移転に反対する前市長の井原勝介氏(57)が「民意を問いたい」といったん辞職し、再出馬して行ういわば出直し選挙。移転容認派からは新人で前自民党衆院議員の福田良彦氏(37)が立候補し、文字通り市を二分した一騎打ちが繰り広げられている。

 井原氏は市町村合併前の旧岩国市長時代、艦載機移転の賛否を問う住民投票を行い、反対が89%と圧倒的な支持を得ている。そして合併に伴う二〇〇六年四月の市長選でも移転計画撤回を市民に訴え、新岩国市の市長に就いた。

 しかし、〇六年末、移転計画反対を理由に国は市庁舎建設費の補助金をカット。昨年十月には米軍再編交付金の対象除外となって事実上の“兵糧攻め”を受け、さらに現実的対応を求める市議会との対立で辞職による出直し選挙に打って出た。

 これに対し、基地との共存を訴える容認派は、政府・与党とのパイプ役を期待する福田氏を擁立。基地の軍民共用化などを掲げ、岩国市の経済再生を目指している。

 ところで岩国市の戦後の歩みを見ると、基地に翻弄された沖縄の姿とダブって見える。

 岩国市は終戦間際、米軍の空爆で多くの市民が犠牲になり、終戦後は米軍が駐留し、朝鮮戦争、ベトナム戦争の出撃拠点となった。一方では、米軍基地から派生する騒音被害をはじめ事件、事故が住民に反基地の意識を芽生えさせ、出直し選挙の背景にもなっているように思える。

 今回の市民の投票結果によっては、岩国移転計画のみならず在日米軍再編の行方をも大きく左右することは確実だ。

 岩国市の将来だけでなく、当然、沖縄の基地問題にも大きく波及する。それだけに一地方選挙としてでなく、国の基地・安保政策の在り方を問う選挙として岩国市民の選択に注目したい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080206.html#no_2

 

2008年2月6日(水) 夕刊 5面

ヘリパッド移設反対 住民座り込みDVDに記録

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に反対する座り込みに参加している比嘉真人さん(30)はこのほど、住民たちの座り込みの記録をDVD「やんばるからのメッセージ」にまとめた。県内外の集会などで上映され、高江の現状をアピールする活動に役立てられている。(新垣晃視)

 DVDは約二十分。座り込みが始まった昨年七月二日から、八月三十一日までの約二カ月間を収録。工事を進めようとする沖縄防衛局の職員と対峙する場面や、住宅地周辺を米軍ヘリが低空飛行する現状などを収めた。豊かな自然に囲まれ、平和に暮らしていた地元の生活が、移設計画で一変した現状を伝えている。

 沖縄出身の両親を持つ比嘉さんは、名古屋生まれ、東京育ち。ヘリパッドの問題は全く聞いたことがなかったが、二〇〇六年、高江区で座り込み運動をしている若者と東京で知り合い、初めて「事実」を知った。

 「沖縄にはよく行き来していたが、ヘリパッドのことは知らなかった。現場を見たいと思った」。工事が始まった昨年七月から、座り込みに参加し、最終的に沖縄に移住した。DVD制作には映像関係の職に就いていた東京での経験が生かされた。

 比嘉さんは「日米間で決めた合意で、小さい集落が翻弄されている状況を、多くの人に見てほしい」と話している。DVDは一枚千円で販売もしている。問い合わせはoracion@nohelipadtakae.orgまで。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802061700_04.html

 

2008年2月7日(木) 朝刊 1面

「集団自決」で国提訴/「教科書検定は不当」

3月までに愛媛の市民団体

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」についての記述をめぐる教科書検定問題で、「えひめ教科書裁判を支える会」のメンバーが六日、県庁で記者会見し、「文科省の教科書検定は適正な行政手続きを欠いた不当な国家介入」として文部科学省などを相手に、三月までに行政訴訟を起こす考えを明らかにした。教科書執筆者以外が原告となり、教科書検定について行政訴訟を起こすのは初めて。

 同会は、「集団自決」への日本軍の強制を明示した記述を削除させた教科書検定で、文科省職員の教科書調査官が発案した検定意見が、実質的な審議もされず教科用図書検定審議会を素通りした実態を指摘。

 「文科省も私も口出しできない仕組み」とした伊吹文明文科相(当時)らによる説明との食い違いを挙げ、「(教科書)検定が、行政手続きの適正執行を求める法に反して行われたことが明らか」と主張、文科省に検定意見を無効にするよう求める。

 また、文科省の不当な検定を知りながら、それを改めるように要請せず、検定を経た教科書をそのまま採択したのは愛媛県教育委員会の不作為だとして訴えの対象にする予定だ。

 同会は、南京大虐殺や従軍慰安婦問題など日本軍の行いについて批判的な記述をした教科書を「自虐的」とする「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した教科書の、愛媛県教委による採択の取り消しなどを求めた訴訟を続けている。

 メンバーの一人、奥村悦夫さん(55)=同県西条市=は、「公の裁判が開かれることで、教科書検定制度の問題点がより明らかになり、国などが対応や制度を改善するきっかけになれば」と期待する。

 全国規模の原告団結成を目指しているといい、「沖縄県民は第一の当事者。私たちに気持ちを伝えてもらい、手を携えたい」と訴えた。

 問い合わせは同会事務局、電話090(2781)7055へ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802071300_01.html

 

2008年2月7日(木) 朝刊 1面

知事・調査許可 示さぬ方針/きょう普天間移設協

 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第六回会合が七日夕、首相官邸で開かれる。昨年十二月十二日から約二カ月ぶりの開催。名護市キャンプ・シュワブ沿岸部での代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査に着手するための事務手続きを確認する。

 政府は円滑な調査実施に向けた理解と協力を求めるが、県は沖縄防衛局からアセス方法書に関する追加修正資料を五日に受け取ったばかりで、県環境影響評価審査会にもまだ諮っていない。仲井真弘多知事は「防衛省の対応を踏まえて法令に基づき適切に対応する」との姿勢を示すにとどめ、調査の許可の判断については明言しない方針だ。

 一方、島袋吉和名護市長、東肇宜野座村長は、アセス手続きが実施されている現状を指摘し、再編交付金の支給を同協議会で初めて要請する。しかし政府は、名護市と宜野座村が政府案(V字案)の沖合移動などの条件を付していることから困難との姿勢を変えていない。

 前回協議会では、石破茂防衛相が二月の調査開始に言及したが、県環境影響評価審査会の今後の開催状況が不透明なため、今回は時期について言及しない方針だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802071300_04.html

 

2008年2月7日(木) 朝刊 2面

「普天間ブランド」確立を/跡地利用でフォーラム

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の跡地利用に向けた県民フォーラム(主催・県、宜野湾市)が六日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開かれた。沖縄国際大学講師の上江洲純子氏と前日本銀行那覇支店長の大澤真氏が、普天間の街づくりや沖縄振興などについて講演。街の“顔”を決めて「普天間ブランド」を確立するよう説いた。

 上江洲氏は、跡地利用を成功させるために人づくりの重要性を指摘。跡地は沖縄振興の貴重な空間と位置付け、行政から市民へけん引役がシフトする必要性を強調した。

 その上で、「大分県の湯布院といえば『温泉』というように、普天間といえば○○といわれるよう、街の顔を決めることが大切。人づくりのプロセスを財産にして『普天間モデル』の発信基地にしてほしい」と話した。

 大澤氏は、地権者が主体となった「街づくり株式会社」の設立を提案。東京都の田園調布が地価が高いことを紹介し、街の価値を高める「普天間ブランド」の確立を説いた。

 また、返還時期が決定した段階で地価が下落する可能性も指摘。「残された時間は少ない。街づくりは人づくりで、経営でもある。世界が注目するものができれば地価も上がり、振興にもつながる」と述べた。

 県民フォーラムは二〇〇四年度から始まり、今回で四度目。同飛行場跡地利用については、県と同市が〇六年二月に基本方針を策定し、〇七年五月には具体的な取り組み内容などを示した行動計画を了承した。本年度は跡地利用計画策定に向けた調査などを行っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802071300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月7日朝刊)

[修正資料再提出]

まるで「後出し」の手法だ

 「最初のうすっぺら方法書は何だったばー」

 本紙に時事漫評を描いている砂川友弘さんは、沖縄防衛局が提出した米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の追加修正資料をこう表現している。

 それはそうだろう。二〇〇七年八月、最初に県に送付された方法書は三百一ページしかなかった。内容の不備を指摘されて約百五十ページの追加説明書を提出したのは今年一月のことだ。

 それでも不備は目立ち、さらに追加修正したのが第二章の「対象事業の目的及び内容」と第四章「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法」である。百九十二ページの別添資料を含めると三百八十三ページに及び、すべてを足すと約八百五十ページにもなる。

 追加資料は五日から十八日まで沖縄防衛局や県庁、名護市役所など五カ所で閲覧できるようだが、沖縄防衛局の手法には釈然としないものを感じる。

 環境への影響が懸念される内容は、方法書の作成段階から盛り込み、公告・縦覧に供した上で住民らの意見を聞くのがアセスの本旨だろう。

 そうはせずに、住民がこだわった「集落上空の飛行」をやっと明記し、タンカーが接岸できる護岸も初めて出した。深刻な問題なのに、住民の意見を聞こうとしないのも腑に落ちない。

 これでは、地域住民の声を封殺するばかりかアセス法の趣旨にも著しく反すると思うがどうか。

 しかも、地域住民が危機感を募らせている問題は最後まで伏せ、手続き上、県が容認するしかない時期を見計らって提示している。

 これでは、じゃんけんの「後出し」と言われても仕方がない。沖縄防衛局のやり方に県民は不信感を抱いていることを忘れてはなるまい。

 今回の説明を受け、県は調査を容認する構えだが果たしてそれでいいのだろうか。

 この問題では、サンフランシスコの連邦地裁が米国防総省に対し、基地建設によるジュゴンへの影響を考慮するよう求め、ジュゴンに関する環境影響評価文書の提出を求める判決も下している。

 環境問題に詳しい桜井国俊沖大学長は「今資料では、同地裁が要求するアセスのハードルは越えられない」と、厳しい見解を示している。

 であるなら、県は安易にGOサインを出してはならない。国内アセス法や米国の文化財保護法(別名・国会歴史保存法)の趣旨を踏まえれば、沖縄防衛局もまた住民の声に耳を傾けるべきだ。それこそが国の責務だと思う。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080207.html#no_1

 

2008年2月7日(木) 夕刊 5面

住民ら防衛省に抗議/東村高江区ヘリパッド建設

 【東京】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に反対する「ヘリパッドいらない住民の会」の安次嶺現達共同代表や「なはブロッコリー」の本永貴子代表らは七日午前、防衛省を訪れ、ヘリパッド建設の即時中止を要求した。

 安次嶺代表らは、ヘリパッド移設地区の近くに福地ダムなどがあることを指摘した上で「高江区と県民の水がめへの悪影響がともに心配される」などと訴え、同訓練場の全面返還も求めた。

 これに対し同省の担当者は、日米特別行動委員会(SACO)と日米合同委員会で建設に合意した経緯を説明し、建設中止は困難との姿勢を示したという。さらに、ヘリパッド運用に伴う騒音防止対策では、同区に騒音測定装置を設置する考えをあらためて示すにとどめたことから、住民らは「騒音被害は避けられない」などと非難した。

 要請には共産党の赤嶺政賢、社民党の照屋寛徳両衆院議員、山内徳信参院議員も同行した。要請団は同日午後、参院議員会館で集会を開き、現地での反対運動を報告。昨年九月から今年一月まで、衆参両院議長あてに集めた約二万人分の建設反対署名を、県選出国会議員に託す予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802071700_06.html

普天間爆音訴訟 結審など  沖縄タイムス・関連記事、社説、琉球新報 社説(1月31日、2月1日、2日)

2008年1月31日(木) 朝刊 29面 

普天間爆音訴訟 きょう結審

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民四百人余りが国を相手に、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めと約六億円の損害賠償などを求めた「普天間爆音訴訟」が三十一日午前、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で結審する。二〇〇二年の提訴から約五年半。同飛行場からの騒音と低周波音による健康被害を中心に立証してきた原告住民らは「裁判官は現実に目を向けてほしい」と強く訴えている。

 訴訟では同飛行場のヘリコプターから発生する騒音と低周波音による健康被害が最大の争点となっている。

 〇四年八月には、同飛行場に隣接する宜野湾市の沖縄国際大学にCH53Dヘリが墜落。同飛行場の危険性が浮き彫りになった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801311300_06.html

 

2008年1月31日(木) 朝刊 29面

埋め立て土砂 県外産も/普天間アセス防衛局が意向

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局が沖縄近海から採取するとしていた埋め立て用の砂を県外からも調達したり、建設残土も活用する意向を示していることが三十日、分かった。同局と調整している県環境政策課が、ジュゴン保護キャンペーンセンターの要請に明らかにした。

 同課によると、防衛局は知事意見で要求された方法書の「書き直し」資料の素案の中で、機種として同飛行場に駐留するヘリや小型機を新たに明記したが、「オスプレイは含まれない」という。

 同センターの海勢頭豊共同代表らは「書き直し資料に対して一般の意見を聞く期間を確保すべきだ」と要請。下地寛課長は「期限を設けることは想定していないが、資料公表から審査会まで数日の余裕を持ちたい」とした。

 同センターはこれに先立ち防衛局にアセスの透明性確保を求める署名の二次集約分四千三百二十二筆を提出。合計で五千七百五十四筆になった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801311300_07.html

 

2008年1月31日(木) 朝刊 29面

悲劇の島から史実訴え/座間味村が証言集

 座間味村教育委員会が沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」を体験した住民らの証言などをまとめた「戦世を語りつぐ 座間味村平和学習ガイドブック」を発刊した。制作を委託された編集委員会が三十日、同村教委に引き渡した。沖縄戦の「集団自決」に対する日本軍の強制を示す記述を文部科学省が削除させた教科書検定問題が起きる中、「座間味での沖縄戦の真実を伝え続けよう」と編集作業は進められた。

 編集委員会は二〇〇六年十二月に発足し、同村で「集団自決」を体験した宮城恒彦さん(74)が委員長を務めた。沖縄戦を体験していない世代の編集委員が、体験者数十人から聞き取りをした。


改ざんNO


 同ガイドブックでは、座間味島の「集団自決」を「三月二十六日、米兵は大挙して住民のいる壕の近くまでやってきました。それを知った住民はパニック状態におちいり、(中略)死の道へと急いだのです」と書く。宮城さんは「抑えた表現にしたが、住民を『パニック』に追い込んだのは、日本軍の強制だったことは明白だ」と説明する。

 「『敵の手にとられないように玉砕するよう、軍より命令があった』と当時、村助役だった兄が父に話すのを聞いた」との宮平春子さんの証言を収録し、編集後記には「文部科学省による『高校の歴史教科書改ざん』に対する答えは、多くの証言者の声やこの冊子に記載された内容が証明しています」と記した。


改訂も検討


 編集委員の一人、宮里芳和さん(59)は「『軍から玉砕命令があった』との証言は複数あり、日本兵側からも軍命を示す証拠や証言が新たに得られ始めた」といい、同ガイドブックの改訂時に盛り込みたい考えだ。

 二千部を発刊した。修学旅行生の平和学習などに活用し、希望者には販売する予定。問い合わせは同村教委、電話098(987)2153へ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801311300_08.html

 

2008年1月31日(木) 夕刊 1・5面

原告「住民救う判断を」/普天間爆音訴訟

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民三百九十六人が国を相手に、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めと約六億円の損害賠償などを求めた「普天間爆音訴訟」の最終弁論が三十一日午前、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)であり、結審した。原告側は新垣勉弁護団長、島田善次原告団長の二人が最終意見陳述で「原告住民は一日も早い判決を願っている。裁判所は公平な立場で、被害者を救う判断を」と訴え、騒音被害の認定を求めた。一方、被告の国は最終準備書面で「飛行差し止めは認められない」と反論した。判決は六月二十六日午前十一時に言い渡される。

 原告住民は二〇〇二年十月に提訴。日本政府に加え、同飛行場のリチャード・ルーキング司令官(当時)を被告にし、全国で初めて基地司令官本人の責任を追及しようと試みた。

 司令官を被告にした訴えは同地裁沖縄支部で分離して審理されたが、一、二審とも棄却。最高裁も〇六年、「公務中の米軍人個人は日本政府が賠償責任を負う」として棄却したものの、原告は国を相手に騒音による健康被害を訴え続けてきた。

 原告住民と被告の国は、通常の騒音に加え、同飛行場のヘリコプターから発生する低周波音と健康被害の因果関係について対立。全国の基地公害訴訟で初めて裁判所による低周波音の現場検証が行われるなど、最大の争点となっている。

 この日、法廷で原告側の新垣弁護団長は「違法な爆音が周辺地域に届いているのは明らかで、住民の生活は確実に破壊されている。公害訴訟で個別の被害立証はされるべきでない。裁判所は周辺地域の共通被害に目を向け、判断の重要な基準にしてほしい」と訴えた。

 島田原告団長は「裁判中に起きた沖縄国際大学へのヘリ墜落事故は、最後の警告だ」と同飛行場の危険性を強調。「裁判所は原告の証言を聞き、現場検証を行った。現実に目をつぶるのは許されない。被害を受けている住民を救う判断を望む」と述べた。

 一方、国は提出した最終準備書面で、原告住民のうち、飛行場周辺で引っ越しを繰り返したなどの理由で、二十九人を特に「危険への接近」に該当するとして免責を求めた。

 また、広義の健康被害を訴える原告に対し、「身体的被害と精神的被害は同質でない」と主張。飛行差し止めは認められるべきでないと反論した。


基地の危険性「受け止めて」/伊波宜野湾市長


 【宜野湾】「普天間爆音訴訟」が結審したことについて、宜野湾市の伊波洋一市長は「原告らは墜落への恐怖や深夜・早朝の騒音被害を受けてきた。普天間飛行場は米国の安全基準に違反する危険な基地だ。裁判は返還にも大きな意義を持つ。司法はこの現状を受け止めてほしい」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

「現状踏まえ判決を」/勝利信じる原告ら


 【中部】米軍普天間飛行場の周辺住民約四百人が、騒音の違法性を訴えた普天間爆音訴訟が三十一日、結審した。提訴から五年余り。那覇地裁沖縄支部では、同午前九時ごろから原告団や弁護団ら約二十人が雨の中、集会を開き、騒音被害を司法に届けようとシュプレヒコールを繰り返した。最終弁論で、意見陳述を終えた島田善次原告団長は「やっとここまできた。住民が実際に爆音にさらされている現状を踏まえ、判断してほしい。どのような判決でも、普天間に爆音がある限り闘い続ける」と訴えた。

 訴訟の最大の争点は、飛行場のヘリから発生する騒音や低周波音と健康被害の因果関係。住民は弁論で、健康状態や騒音の現状を訴え「静かな日々を返せ」と国に求めてきた。

 結審後、新垣勉弁護団長は「判決では、国は補償だけではなく騒音を軽減する義務があるという判断を示してほしい。国策の違法性を指摘し、行政を変えるのが司法の役割だ。国の姿勢が変わらなければ裁判は第二次、第三次と続いていく」と語気を強めた。

 騒音被害で苦しんでいる知花トシ子さん(73)=宜野湾市嘉数=は「戦争体験者として子や孫の代まで基地被害で苦しむ現状を放置する事はできない。裁判所は私たちの当然の権利を受け止めてほしい」と訴えた。

 国は爆音被害を知りながら転居したのではないかとする「危険への接近」を主張、損害賠償の免責や賠償の減額を求めている。

 国の主張に反論する森山用福さん(57)=宜野湾市真栄原=は息子の用輔さん(18)と傍聴。「親しみのある場所に住むのは家族の権利。私たちの生活から危険を取り去るのが国の責務だ」と強調。沖縄国際大学に通う用輔さんも「生まれた時から家の近くに基地があり、爆音を聞いている。住民の声が反映された判決を願っている」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801311700_02.html

 

2008年1月31日(木) 夕刊 4面

「集団自決」報道 本紙企画を表彰/新聞労連ジャーナリスト大賞

 【東京】新聞労連は三十一日、「第十二回新聞労連ジャーナリスト大賞」の授賞式を都内の文京区民センターで開き、沖縄タイムスの長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」が受賞した。「集団自決」問題取材班の謝花直美編集委員が選考委員の藤田博司さん(元共同通信論説副委員長)から表彰状を受け取った。同賞を受賞した琉球新報取材班の教科書検定問題に関する一連の報道、朝日新聞連載「新聞と戦争」も表彰された。

 同賞は平和と民主主義の確立、言論や報道の自由などに貢献した記事、企画、キャンペーンを表彰する。今回は二十一件の応募があった。

 藤田さんは沖縄タイムスの受賞理由を「教科書記述の変更に猛烈に反発した県民の意思と、それを反映した粘り強い気迫に満ちた報道を評価したいと考えた」と説明。

 「集団自決(強制集団死)」問題キャンペーンを二〇〇五年六月から続けてきた謝花編集委員は「当初はこの問題を取り上げるメディアもなかったが、大阪『集団自決』訴訟、教科書検定問題に拡大して県内外に理解が広まった。検定意見の撤回を求める県民大会に十一万人余が集まるなど、県民とともにつくり上げたキャンペーンだ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801311700_07.html

 

2008年2月1日(金) 朝刊 2・31面

普天間アセス方法書/追加資料4日に提出

 米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書について、県が知事意見で「書き直し」を求めたことを受け、沖縄防衛局は四日にも、補足分をまとめた追加資料を提出する意向を県に伝えていることが三十一日、分かった。提出を受けて県は、八日に県環境影響評価審査会に諮る。

 沖縄防衛局は追加資料をインターネットで公表する方向で調整中。さらに県は、特定の場所での「閲覧」による公表も防衛局に求めており、実施される可能性もある。

 県は、追加資料について審査会で複数回の審査を経た後、早ければ二月の第三週にも再度、県の意見としてまとめる方針だ。追加資料の公表は、県も同時に行う予定。

 防衛局は先月二十八日、方法書の第二章に当たる「対象事業の目的及び内容」と、第四章の「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法」の百五十ページ以上にわたる追加資料の素案を県に提出している。


     ◇     ◇     ◇     

沖縄弁護士会

アセス方法書「撤回を」


 沖縄弁護士会は(新垣剛会長)は三十一日、那覇市の弁護士会館で会見し、米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)の方法書撤回・手続きやり直しと、泡瀬干潟の埋め立て事業計画の再考、工事の中止を求める両声明を発表した。

 声明は、普天間代替施設建設に伴う環境アセスについて「方法書の手続きが終了する前に、自然環境への影響が懸念される環境現況調査に着手している」と指摘。「沖縄防衛局は、環境影響評価法が定める手続きを形骸化し、法の趣旨を没却している」として手続きのやり直しを求めた。

 また泡瀬干潟について、「埋め立て着工後に新たに多数の動植物の新種が発見されるなど、環境アセスのずさんさが明らかになった」と指摘。経済予測が非現実的だったこととあわせ、「東門美津子市長が第一区域の工事推進を決めた判断には、合理性があるとはいえない」としている。

 沖縄弁護士会・公害環境委員会の加藤裕弁護士は「形式的な記載さえあれば違法にならないという環境影響評価法の欠陥があらわになった。法的な観点から、どうしたら実りあるものにできるかのケーススタディーになる」と話している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802011300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月1日朝刊)

[普天間爆音訴訟]

権利侵害を放置するな

 米軍普天間飛行場の周辺住民三百九十六人が国を相手に米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めと損害賠償などを求めた普天間爆音訴訟が那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で結審した。

 嘉手納、横田など米軍基地をめぐる騒音訴訟で、一定レベルの騒音の違法性を司法は認めたが、飛行差し止めなどは退けてきた。政府に米軍の活動を制限する権限はなく、差し止め請求などは成り立たないとする「第三者行為論」が根拠になっている。

 騒音被害は基地公害と認める一方、公害の当事者である米軍の行為は司法判断の対象外だという判断である。これが騒音訴訟の判決の流れといえるが、日々、基地被害に苦しむ住民には到底、納得できるものでない。

 しかし、今回は裁判中に沖縄国際大学でヘリが墜落する事故が起きるなど周辺住民の生活が常に危険にさらされる実態が浮き彫りになっている。

 騒音についても同飛行場のヘリコプターが人の耳に聞こえにくい低周波音を発生させ、それが頭痛や不眠などの人体への影響を与えているという。

 これらは通常の騒音被害にはみられず、低周波音の影響を加味すれば説明がつくというのが住民側の主張だ。

 同飛行場の危険性、騒音被害の現状を直視すれば、司法は米軍の行為そのものの判断に踏み込むべきだと思うがどうか。

 最大の争点はやはり、低周波音と健康被害の因果関係である。国は「影響が生じるかという方法論は確立されていない」と因果関係を否定している。

 裁判所は同飛行場で低周波音の現場検証を実施し、実際に低周波音を体験したはずだ。こうした検証を基にすれば、騒音に苦しむ住民の生活に想像が及ぶのではないか。

 新横田二審判決は受忍限度を超える騒音に補償制度を設けない国を「怠慢のそしりを免れない」と批判している。これ以上、住民の権利が侵害される事態を放置してはなるまい。司法には騒音に苦しむ住民の救済に立った判断を強く求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080201.html#no_2

 

琉球新報 社説

普天間爆音訴訟 「静かな日々」は当然の権利

 米軍普天間飛行場周辺住民が、夜間、早朝の米軍機の飛行差し止めと爆音被害の補償を国に求めた普天間爆音差し止め訴訟が、1月31日、那覇地裁沖縄支部で結審した。

 「静かな日々」を求める訴訟は、提訴から結審まで5年3カ月もの歳月がかかった。

 被害救済を求め提訴した原告住民396人にとどまらず、爆音下での危険な暮らしを余儀なくされる市民にとって、あまりに長過ぎる「忍耐の日々」であった。

 裁判は、ヘリコプターから発生する低周波音を被害原因の一つとして主張している点で、従来の爆音訴訟と異なる。

 爆音被害の基準は、現行ではW値(うるささ指数)のみで、その指数も訴える側が測定し、証明してきた。裁判ではW値の騒音測定も国に義務付けるよう求めている。

 「日米安保体制の維持」を理由に、爆音被害の原因となる都市中心部にある米軍基地の存在を容認しているのは、日本政府である。

 米国内では、騒音をまき散らす危険な米軍基地は、米西海岸のキャンプ・ペンドルトン基地のように、周辺には山々に囲まれた十分な緩衝地帯が確保されている。なぜ沖縄だけが、危険な基地と共存を求められなければならないのか。「沖縄差別だ」との原告団長の言葉に、国はどう答えるのか。

 訴訟の中では、市役所勤務の原告が職場近くに引っ越したことを取り上げ、「危険への接近」だとして「騒音を容認している」との国の主張もあった。

 普天間基地周辺には、宜野湾市だけでも9万人余の市民が暮らす。同基地所属機は周辺の浦添、那覇市上空もわがもの顔に飛ぶ。

 基地がある限り狭い県土に逃げ場はない。「危険」との共存を強いられ、強いているのは国である。

 米軍のアフガン、イラク攻撃後、県内の米軍機の不時着事故件数は急増。2004年には沖縄国際大学へのヘリ墜落炎上事故も起きている。

 爆音被害の救済と高まる危険の除去を求める原告の声に、裁判所(国)はどう答えるのか。6月26日の判決を注目したい。

(2/1 9:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30988-storytopic-11.html

 

2008年2月1日(金) 夕刊 1面 

メア氏発言に不快感/仲井真知事

 仲井真弘多知事は一日午前の定例会見で、ケビン・メア在沖米国総領事ら米政府関係者が米軍普天間飛行場代替施設の滑走路の沖合移動に否定的な発言をしていることについて、「地元の意見を尊重してもらいたいと日本政府に求めている最中に、どうして(米国総領事が)県民に言う権限があるのか。沖縄と米国の関係をむちゃくちゃにしかねないと危惧の念を強くしている」と不快感を表明した。

 メア総領事は一月三十日の会見で、県などが求める滑走路の沖合移動に関し、「より沖合に滑走路を出せば埋め立て面積も増えるので、環境への影響が少なくなるという考え方になるとは常識的には考えられない」などと述べ、「アセス後の修正」にも否定的な見方を示した。

 これに対し、仲井真知事は会見で、「まるで法や条例を無視しているような印象の発言で、極めて遺憾」と強い口調で批判した。

 普天間代替施設建設をめぐって、防衛省が二月中に冬季のアセス調査を実施したい意向を示していることについては「方法書としてきちんとオーソライズ(認定)されない限り、どんなデータを集めても事業者の判断による事前調査と同じ」と指摘。

 アセス調査の許認可は県環境影響評価審査会の審査結果を踏まえて判断する考えを示した。次回協議会での審議内容は、沖縄防衛局が四日にも県に提出する追加資料の内容を見極めた上で調整を進める、との見通しを示した。

 また、道州制については四月以降、本格的な検討を進める考えを表明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802011700_03.html

 

2008年2月1日(金) 夕刊 1面

防研所見は個人的識見/「集団自決」

 【東京】慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が公開している複数の所蔵資料の「史料経歴表」に「集団自決は村役場の独断」などの所見を付けて公開していた問題を受け、政府は一日午前に閣議決定した答弁書で、「所見は担当者が個人的な識見に基づいて記載した」との認識を示した。照屋寛徳氏(社民)の質問主意書に答えた。

 所見をめぐって政府はすでに「防衛省の見解ではない」との見解を公表しているが、公開資料に内容を価値判断するような「個人的な識見」を添付する資料管理の在り方が問われそうだ。

 答弁書によると、防研は約十五万件の資料を管理し、約十四万七千四百件を公開。沖縄関係は五百二十九冊のうち、百十四冊に史料経歴表を添付している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802011700_05.html

 

2008年2月2日(土) 朝刊 2面

普天間移設 日米合意案「ベスト」/真部防衛局長が会見

 沖縄防衛局の真部朗局長が一日、同局内で着任会見を開き、米軍普天間飛行場代替施設建設計画について日米合意案が「ベスト」との認識を示した上で、「(滑走路の位置などを)変更するということであれば合理的な理由が必要」と述べ、環境影響評価(アセスメント)のデータ結果を踏まえて地元と協議する考えを示した。

 アセス調査に向けては「(二月実施に)こだわらないということではない」と述べ、早期着手を目指す意向を表明した。

 会見で真部局長は、普天間飛行場の移設・返還問題が最大の課題との認識を示した上で「国の安全や、米軍再編の中で沖縄の負担軽減という目的達成のためにも実現が必要不可欠」と強調した。

 代替施設建設に伴うアセス方法書への対応については「知事意見に対し、誠意を持って応えるべく説明の準備を鋭意進めている」と述べ、近く県に追加資料を提出する意向を示唆。県などが滑走路の沖合移動を求めていることについては「まずはアセス手続きを進め、新たな知見やデータを得る中で、それらを踏まえて、名護市や県と話し合いを続けていく」との姿勢を示した。

 防衛省が二月中に実施の意向を示しているアセス調査については「ロードマップで二〇一四年までの移設完了で合意しており、そういうことを勘案すると、なかなかスケジュールはタイトにならざるを得ない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802021300_04.html

 

2008年2月2日(土) 夕刊 4面

キャンプ瑞慶覧で油漏れか

 【北谷】北谷町北前の普天間川につながる米海兵隊キャンプ瑞慶覧内の排水溝で一日、油とみられる液体約一リットルが流出した。沖縄防衛局によると、海兵隊の環境担当者が同午前十一時二十分ごろ、排水溝内で光沢のある液体を見つけた。吸引して調べた結果、自動車の変速装置用の油とみられる液体が検出されたという。流出原因は明らかにしていない。

 海兵隊が除去後、基地外への流出を防ぐため普天間川にオイルフェンスを設置。県や同町、第十一管区海上保安部が同日川の河口付近を目視で調査したが、油臭や油膜は確認されなかった。県は川の水を採取し、水質汚染の有無を調査している。

 川には国道58号から東側約五十メートルの場所に、オイルフェンスが設置されている。

 普天間川はキャンプ瑞慶覧から西海岸へつながる。二〇〇四年五月にはキャンプ内宿舎のボイラー室でパイプが故障し、ディーゼル油が十ガロン(約三十八リットル)が流出する事故が起きている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802021700_06.html