月別アーカイブ: 2008年6月

伊芸区、ヘリ騒音に抗議/「夜間訓練影響は大」 懲役3年を求刑/タクシー襲撃 普天間ヘリ場周経路/調査前向き 野党が逆転 26議席/自民惨敗、民・共躍進 国抗告許可 最高裁へ/沖国大ヘリ事故訴訟 など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(6月6日から11日)

2008年6月6日(金) 朝刊 27面

賛否割れ 現実的対応/並里区ギンバル訓練場売却

 金武町並里区(與那城直也区長)は五日の区議会で、日米が返還合意していた米軍ギンバル訓練場内の区有地(三十四ヘクタール)を、跡地利用を進める町に売却する案を賛成多数で可決した。返還は、同区に隣接するブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設が条件になっている。「跡地利用が必要」、「ブルービーチにヘリパッドを造ることで発生する騒音や事件事故に対し、売却を決めて責任を持てるのか」という賛否の意見が出る中、十年越しで条件付き返還に反発していた同区が「現実的対応」にかじを切った。一方、反対する住民の間では署名活動の動きも出ている。(北部支社・新垣晃視)

 区議会議員は十一人。賛成は六人。四人は反対の意思を示していたが、うち三人は欠席した。

 採決には加わらなかった区議会の山城盛幸議長は、議会終了後「町が受け入れを表明するまでが勝負だったと思う。反対を訴えてきたが、力が及ばなかった。ブルービーチの返還は皆希望している。ただ、訓練場が戻ってきても、跡地利用は区だけでできるものではない。総合的に考えての判断だったのではないか」と苦しい胸の内を語った。

 町は、米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)の「ふるさとづくり整備事業」で、ギンバル訓練場跡地に医療施設建設の計画を進める。内閣府は昨年末、用地買収費用として十五億六千九百万円を内示。本年度内の着工を目指す町は、区有地売却に関する同区の合意を得て予算要求をしたい考えで、区に働き掛けてきた。

 同区では、一九九六年と二〇〇六年の二回、ブルービーチへのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に対し、反対決議をしている。與那城区長は「決議は撤回せず、引き続きブルービーチの返還を求めていく」との立場を示した。

 区に入るギンバル訓練場の軍用地料は年間約五千二百万円。公民館の維持管理費や区内各団体への補助金などに充てられている。返還後は、区有地の売却費で国債を購入し、その利息でこれまでの住民サービスを継続する考えという。

 欠席した知名達也議員は「並里区の将来を左右する大事な判断を、区議会の中だけで決めていいのか。広く住民に問う機会をつくるべきではないか」と話す。区のアンケートでは約66%が条件付き返還に反対しており、反対する住民の間では署名活動の動きも出ている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806061300_01.html

 

2008年6月6日(金) 朝刊 27面

2米兵に実刑判決/沖縄市タクシー強盗

 沖縄市で今年一月に起きた米兵によるタクシー強盗事件で、那覇地裁(〓井広幸裁判長)は五日、いずれも在沖米海兵隊普天間基地所属で伍長のジョセフ・ウェイン・リドル被告(20)に懲役四年六月(求刑懲役八年)、一等兵の米国人少年(19)に懲役三年以上四年以下(同五年―八年)の判決を言い渡した。

 判決は、犯行態様の悪質さを強調した上で、「被害者を暴行して遊興費を得ようとした動機は利欲的で身勝手」と指摘。一方で両被告が反省し、被害男性に見舞金を支払っていることなどを挙げ、裁判官の裁量により刑を減軽した。

 〓井裁判長は、「両被告がまだ若く、リドル被告が年長者としての責任をわきまえた態度を示しているほか、両被告とも不遇な家庭環境で育ったもようである」などと述べた。

※(注=〓は「吉」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806061300_02.html

 

2008年6月6日(金) 朝刊 2面

伊芸区、ヘリ騒音に抗議/「夜間訓練影響は大」

 金武町伊芸区上空で米空軍所属のHH60救難ヘリが夜間にかけて低空飛行を繰り返した問題で、池原政文区長と同区の行政委員会(登川松栄議長)は五日、外務省沖縄事務所と在沖米国総領事館、沖縄防衛局を訪れ、伊芸区での米軍ヘリ演習とレンジ4での米陸軍の都市型訓練施設暫定使用の即時中止を求めた。

 沖縄防衛局の赤瀬正洋企画部長は「夜間のヘリの騒音は地元の生活に大きな影響を与えていると認識している」と地元の負担に理解を示したが、ヘリ演習の中止については「地元に対する影響を最小限にし、安全に万全を期すよう米側の方にも申し入れを行っている」と述べるにとどめた。

 池原区長によると、在沖米国総領事館では「米空軍ヘリはレンジ4の都市型訓練施設で陸軍が行った夜間の救難訓練を支援した」との説明を受けたという。

 都市型訓練施設は伊芸から離れたレンジ16への移設が決まっているが、作業が遅れている。赤瀬部長は「(移設作業完了は)来年の半ばを予定している。できるだけ努力して作業を短くしたい」と述べた。

 外務省沖縄事務所の山田俊司外務事務官は「米軍の錬度維持が日米安全保障体制を支える上で大事」とした上で、「何をもって訓練と定義するか非常に難しいが、すべてが許されていいわけではない。皆さんに迷惑を掛ける訓練は控えるべきだ。まずは事実を把握したい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806061300_04.html

 

2008年6月6日(金) 朝刊 26面

平和の礎追加 過去最少128人/県、22日までに刻銘

 県文化環境部は五日、沖縄戦などの戦没者名を刻んだ糸満市摩文仁の「平和の礎」に、本年度新たに百二十八人を追加刻銘すると発表した。一九九六年度に追加されるようになってから最少の人数で、総数は二十四万七百三十四人となる。遺族が沖縄を訪れたのを機に申告した韓国の軍属十二人、米国の海軍人一人も加わる。「慰霊の日」前日の二十二日までに刻銘工事を終える。内訳は国内百十四人(県内四十二人、県外七十二人)、韓国十三人、米国一人。

 韓国の刻銘者のうち十二人は、旧日本軍による強制動員被害を調査する韓国政府の委員会が主催した海外追悼巡礼で、昨年十一月に沖縄を訪れた遺族が申告した。

 県内出身者は、被弾やマラリア、栄養失調などを理由に、沖縄やサイパン、福岡などで亡くなった三十八人のほか、広島や長崎で被爆し、〇七年と〇八年に死亡した四人が含まれる。

 県外出身者はほぼ軍人で、戦艦大和の乗員二十一人、日本郵船所有の貨物船で当時軍に徴用されていた富山丸の乗員四人、神風特別攻撃隊七人など。

 都道府県別で最も多かったのは佐賀県の四十人で、刻銘対象を緩和した〇三年改正の基本方針に照らして、同県が戦没者リストを改めて調査し、未刻銘者が多数判明したためという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806061300_10.html

 

2008年6月6日(金) 夕刊 7面 

懲役3年を求刑/タクシー襲撃

那覇地検 23日に判決

 沖縄市で今年三月、タクシー運転手が三人組の外国人に襲われ、釣り銭箱を奪われた事件で、事件を首謀したとして窃盗と傷害の罪に問われた在沖米空軍嘉手納基地所属で兵長の憲兵隊員ダリアス・エイ・ブランソン被告(22)の論告求刑公判が六日、那覇地裁(〓晋一裁判官)であった。検察側は懲役三年を求刑、弁護側は執行猶予を求めて結審した。

 判決は二十三日に言い渡される。

 検察側は論告で、ブランソン被告が自宅に寝泊まりさせていた少年らを事件に加担させており、刑事責任は最も重く、地域社会に与えた影響も大きいなどと指摘。

 弁護側は弁論で、ブランソン被告が真摯に反省し、被害弁償する意志を持っているほか、実行行為にはかかわっていないなどの情状を訴えた。

※(注=〓は「頼」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806061700_07.html

 

2008年6月7日(土) 朝刊 28面

「ひめゆり」全国上映/公開2年目では異例

 体験者二十二人の証言を記録したドキュメンタリー映画「ひめゆり」(柴田昌平監督、プロダクション・エイシア制作)が、今年も六―八月にかけて全国各地で上映される。関係者によると、公開二年目の作品がロードショーに近い形で全国再上映されるのは異例。県内でも桜坂劇場のほか、市民団体が上映会や関連イベントを予定している。

 プロデューサーの大兼久由美さんは「証言に込められた普遍的な力を伝えるため、慰霊の日を挟んだこの時期に、今後も毎年、上映を続けていきたい。戦争や平和、命について考えるきっかけになれば」と話す。

 「ひめゆり」は柴田監督が十三年かけて証言を記録した二時間十分の長編。昨年三月二十三日、学徒が戦場動員された日に合わせ桜坂劇場で公開、自主上映を含め全国百十一会場で上映。二〇〇七年度文化庁映画賞大賞、日本ジャーナリスト会議(JCJ)特別賞など、数々の賞を受賞している。

 制作したプロダクション・エイシアが、ボランティアなどと連携してつくる「映画ひめゆりを観る会」には、「命のことを感じた。周りの人を大切にし続ける」(二十代)「家に帰ったら、おばあちゃんの話を聞きたい」(十代)などの感想約三千通が寄せられた。

 今年は全国十二カ所で公開予定。県内では桜坂劇場で十四日から二十七日まで。沖縄市のくすぬち平和文化館では毎月第二、第四土曜日に上映している。八日には浦添市社会福祉センターで、自主上映とシンポジウムが行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806071300_05.html

 

2008年6月7日(土) 朝刊 2面 

普天間ヘリ場周経路/調査前向き

 沖縄防衛局の真部朗局長は六日、中部の十市町村でつくる中部市町村会(会長・知念恒男うるま市長)の要請の場で、日米が合意した米軍普天間飛行場での場周経路が守られてないとの伊波洋一宜野湾市長の訴えに対し、「市の声を有効なデータとして客観的に米側にぶつけられるような方策を考えたい」と答え、同局自身が現状調査に取り組む姿勢を示した。外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「指摘を真摯に受け止め、防衛省と、米側に『約束をきちんと実行してほしい』と申し入れていきたい」と述べた。

 場周経路は墜落事故を防ぐために日米で設定された飛行ルート。

 真部局長は「米側は『守っているつもりだ』と答えているが、宜野湾市の声もある。現実的に何ができるか。率直に言って見つけられていないが、客観的な方策を考えたい。(指摘を)よく踏まえて検討努力したい」と前向きな姿勢を示した。

 同飛行場の危険性除去については、仲井真弘多知事も四月の移設協議会で、同様の要望を国側に伝達しており、「技術的に何ができるか研究検討するということで、今動いている。県と連携していきたい」と説明した。

 同市町村会は、一九九六年の日米合同委員会で合意した嘉手納基地や普天間飛行場での航空機騒音規制措置が守られていないと主張。真部局長は「現在の規制措置を守らせるよう、あらゆる機会を通じて改善を求めていく」と述べ、市町村会が求める使用協定の締結には否定的な見解を示した。

 F15戦闘機の未明、早朝離陸を回避するため、他基地を経由するべきだとの要望に対しては、日米合同委員会の航空機騒音対策分科委員会で検討していると説明。「経由地を選定して早朝離陸の問題を解決できないか、あらゆる方策を検討している。できるだけ早く有効策を説明したい」と話した。

 同市町村会は普天間飛行場の危険性除去や早期閉鎖・返還、嘉手納基地から派生する諸問題の解決促進を求めた決議文を、防衛局や外務省沖縄事務所、県に提出した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806071300_07.html

 

2008年6月7日(土) 朝刊 28面

市民参加で遺骨収集/那覇市で22日

 慰霊の日を前に、那覇市と沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」(具志堅隆松代表)は二十二日、真嘉比小学校近くの市土地区画整理地区「真嘉比古島第二地区」で市民参加型の遺骨収集を行う。行政と市民団体が連携して遺骨収集するのは初めて。

 真嘉比地区は新都心地区のシュガーローフと同様、日本軍の支援陣地があり、激しい戦闘が展開された地域。いまだに多くの戦没者の遺骨が眠っているという。具志堅さんは「自分の住む身近なところで戦争が起こったことを知り、なぜこの人たちが犠牲にならなければならなかったか、あらためて沖縄戦を考える機会にしてほしい」と話した。

 那覇市が収集作業に協力することも、市民活動の大きな支えになると期待している。

 遺骨収集は二十二日午前九時から午後三時まで(雨天時は中止)。その後、現地で慰霊祭を開催する。参加費百円(保険料込み)。個人参加のみ。高校生以上が対象だが、親子同伴の場合は中学生以下も可。発掘作業に三十人、現場見学は(1)午前十時半(2)午後一時半で各二十人。白い布製の収集袋提供だけも受け付ける。

 軍手、帽子、タオルなど持参。申し込み・問い合わせは市平和交流男女参画室、電話098(861)5195。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806071300_09.html

 

2008年6月7日(土) 夕刊 5面

「情熱と戦争の狭間で・無言館」展/来場者から平和祈る声

 「見ていて胸がつまった」「一つ一つの絵にくぎ付けになった」―。県立博物館・美術館で開かれている戦没画学生の作品などを展示する「情熱と戦争の挟間で―無言館・沖縄・画家たちの表現―」(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館、共催・沖縄タイムス社)のアンケートには、県内外の来場者から、戦争の「痛み」に共感、平和を祈る声が続々と寄せられている。

 同展は長野県の私設美術館「無言館」の作品と、「戦争の記憶」をテーマとした沖縄の作家の作品による二部構成。二十九日まで。太平洋戦争で戦死した若者や、沖縄戦を生き抜いた画家が、「戦争」というテーマの枠を超え、愛する人物や当時の風景を描き出している。

 神奈川県から訪れた男性(24)は「自分と同じくらいの年齢の若者が、将来の夢を捨てて戦死したことを痛感した」と、自身に置き換えていた。

 失われた「才能」を惜しむ人も。那覇市の女性(37)は「片桐彰さんの絵が現代風ですてき。生きていれば、どれだけ人のためになっていたでしょう」。広島県の男性(27)は「戦争により、多くの人々の命だけでなく、多くの文化も葬り去られた」と嘆いた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806071700_04.html

 

2008年6月8日(日) 朝刊 22面

反基地行動 大阪で200回/辺野古阻止 街頭でビラ

 【大阪】「辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動」(松本亜季代表)は七日、大阪なんば駅前で二百回目の街頭行動を展開した。沖縄の基地問題を大阪でも広めようと二〇〇四年から大阪駅前で毎週土曜日に活動している。この日は「ピース辺野古・なんばアクション」と題し、約三十人のメンバーが「辺野古の新基地建設を阻止しよう」と呼び掛けながら二千枚のビラを配布した。

 松本代表は「沖縄の現状を一人でも多くの人に知ってもらいたい。これまでに三万人の署名も集まった。二百回は一つの節目で、さらに活動を継続したい」と述べた。メンバーらはこの後、心斎橋まで移動しながら基地建設反対を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806081300_09.html

 

2008年6月9日(月) 朝刊 1面

野党が逆転 26議席/自民惨敗、民・共躍進

仲井真県政に打撃/県議選

 任期満了に伴う第十回県議会議員選挙は八日投開票され、野党中立が二十六議席と過半数を獲得し、与野党逆転に成功した。自民、公明両党を中心にした与党は、後期高齢者医療制度に対する有権者の強い反発を受け、二十二議席にとどまる惨敗。稲嶺前県政から続いた与党の安定多数は崩れた。県議選で県政与党が過半数を割り込むのは一九九二年以来十六年ぶり。投票結果を「自らへの評価」としていた仲井真弘多知事は今後、厳しい県政運営を迫られる。普天間飛行場移設協議や経済振興など政策課題への影響も必至だ。野党圧勝で、争点となった後期高齢者医療制度の修正・廃止論議も加速されそうだ。投票率は57・82%で、前回を0・9ポイント下回り、過去最低となった。

 野党側は、後期高齢者医療制度廃止を最大の争点に掲げ、党首クラスが相次いで来県するなど、国政選挙並みの態勢で臨んだ。保守支持層が強い高齢者層などへも浸透し、国頭郡、うるま市、浦添市、那覇市などの激戦区を制した。

 与党側は与野党逆転の危機を訴え、経済界の支援を得ながら過半数維持を狙ったが、後期高齢者医療制度への反発は強く、仲井真知事の支援を受けた「与党効果」も上滑りに終わった。保守支持層が切り崩されて激戦区で現職が落選し、少数与党に転じた。

 当選者の内訳は、現職二十七人、元職三人、新人十八人。現職四人が落選した。最年少は三十五歳、最高齢は六十八歳。女性は過去最高の十人が立候補し、七人が当選した。

 党派別では、自民は十六人が当選。公明は五人の公認推薦候補が全員当選した。

 野党側は、社民が五議席を得て、野党系無所属候補を含めて野党第一会派を確保する見込み。共産は糸満市区で返り咲き、浦添市で初議席を得るなど五人が当選した。

 民主は新人三人を含む四人がトップ当選で躍進した。社大は二人が当選。政党「そうぞう」は公認一人が当選した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806091300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年6月9日朝刊)

[与党惨敗(上)]

県政への影響は甚大だ


 県議会の与野党勢力が逆転した。八日に投開票された第十回県議会議員選挙で自民、公明を中心とする与党は、前回選挙で獲得した議席数を大幅に減らし、過半数を割り込んだ。

 仲井真県政にとっても政府にとっても、この結果がもつ意味は極めて重い。

 仲井真弘多知事は、今度の県議選について「私に対する中間評価だと思っている」と繰り返し強調していた。それだけになおさら、与野党逆転の選挙結果は、県政運営に計り知れない影響を与えることになるだろう。

 県政が少数与党の下で運営されるのは過去に二回あるが、今回とは全くケースが異なる。

 一九七八年十一月の知事選で革新から十年ぶりに県政を奪い返した西銘順治知事は、一期目途中まで少数野党だった。九〇年の選挙で保守から十二年ぶりに県政を奪還した大田昌秀知事も、二期目の途中まで少数与党の悲哀を味わっている。

 だが、今回は、県政逆転に伴って生じた変化ではない。保守から保守へ県政が引き継がれ、過半数を超える議席を前県政からの「遺産」として受け継いだにもかかわらず、議席を減らして少数与党に転落したのである。このようなケースは初めてだ。

 与党系で当選したのは自民、公明、無所属を含め計二十二人。これに対し野党系は社民、共産、民主、社大、そうぞう、中立系無所属を含め計二十六人。選挙で示された民意を踏まえ、軌道修正が必要な施策については方針転換をためらうべきではない。

 それにしても、県議選に地殻変動をもたらしたものは何だったのだろうか。

 民主や「そうぞう」など従来の保革の枠に収まらない「第三勢力」が票の掘り起こしを行ったことや、県発注工事をめぐる談合問題で多額の損害賠償金を請求されている一部建設業者が県政離れを起こしたことも影響したとみられる。

 しかし、最大の要因は、やはり後期高齢者医療制度だったのではないか。

 厚生労働省が実施した全国調査の結果、負担が増える世帯の割合が沖縄は64%に上り、全国一高くなっていることが分かった。この調査結果に対する怒りの声が投票行動となって現れた、と見るべきだろう。

 県議選で国の政策にノーが突きつけられたことを政府は重く受け止めなければならない。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題も、政府や県の描いてきたシナリオに大きな狂いが生じることになりそうだ。

 県が求める沖合移動については米側が強硬に反対しているが、辺野古移設そのものを疑問視する野党が議会で多数を占めたことで、困難はいっそう深まった。

 県議会の勢力は四年後の次の選挙まで変わらない。議会同意の必要な人事を含め、多数野党とどのように協調していくか。仲井真知事は、一期目の任期半ばで、公約も実現しないうちに、重大な岐路に立たされることになった。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080609.html#no_1

 

琉球新報 社説

県議会逆転 重い負担に有権者「ノー」/国・県は民意を受け止めよ 2008年6月9日

 仲井真県政1期目の県議会勢力図がどう変わるか注目された第10回県議選は、8日の投開票で野党・中立系が過半数を制し、与野党逆転を果たした。県政運営に影響を与えるのは必至で、普天間飛行場の名護市辺野古移設を推進する政府も、再考を迫られる局面が浮上しよう。

 選挙結果は、過重負担が続く米軍基地問題や「低所得層ほど負担増」になることが判明した後期高齢者医療制度など、県民生活に深くかかわる国の施策や県の対応に有権者が明確に「ノー」を突き付けた格好だ。

 国と県は結果を重く受け止め、民意を十分に踏まえた形で政策転換を図ってもらいたい。

吹いた「変革」の風

 今県議選は定数48に対し、74人が立候補、激しい選挙戦を展開した。基地問題への対応や雇用・経済振興策、教育・福祉環境の整備など従来の争点に加え、後期高齢者医療制度の是非が与野党の大きな対立軸として浮上。暫定税率を復活させガソリンを再値上げした施策を含め、県政だけでなく、国政への評価も問う地方選挙として全国的にも注目された。

 開票の結果、野党・中立系が6人増の26議席と勢力を大幅に伸ばしたのに対し、与党系は5人減の22議席まで後退した。野党は社大が2議席に後退したが、社民、共産は各5議席を獲得、民主も4人全員当選と躍進したのが特徴で、有権者に「変革」を求める風が吹いたといえる。

 これに対し、与党は公明が現有3議席を守ったが、自民が4人減の16議席と減らし、与野党逆転を招いた。選挙戦で新しい基地建設計画や、社会的弱者に痛みを強いる施策について、十分に説明できなかったことが響いたのは間違いない。

 当選した県議に、まず注文したいのは「顔の見える」政治家になってほしいということである。劇場的なパフォーマンスの意味ではない。選挙戦で訴えた政策を議会活動の場でも繰り返し提起し、民意の反映に全力を挙げてもらいたいという思いだ。

 議員に対し「選挙の時しか顔を見ない」との皮肉を有権者から聞くことがあるが、当選後、議会での質問権も十分に行使しないことがまかり通るようでは、地方自治はおぼつかない。

 与党であっても、県政に対しては、是々非々で対応する姿勢が求められる。県側の提案を丸のみしていると、緊張感を欠くし、何より県民のためにならない。軸足はあくまで県民の側に置き、県民こそが主人公だと心したい。

 「ねじれ国会」を見ても分かるように、行政と議会の間には緊張感が求められる。省庁不祥事などが相次いで発覚しているのは、国会が機能してきた証しだろう。県議会もしかり。

難題解決へ結束も

 県議への2つ目の注文は、沖縄が抱える難題解決に向けての結束である。昨秋の教科書検定意見撤回を求める県民大会では、県議会議長が実行委員長を務め、文部科学省に対して「県民の怒り」をぶつけた。

 教科書検定問題が大きなうねりとなり、政府に方針転換を余儀なくさせた背景には、県議会が結束して行動したことがある。

 1995年の米兵による少女乱暴事件に抗議する県民総決起大会でも、超党派で前面に出て、県民を代表する機関としての役割を果たした。県議会一致の行動は、県民の総意であり、政府も軽視できまい。

 ところが今春、本島で米兵による女子中学生暴行事件が発生した際、結束が崩れた。抗議の県民大会への参加を仲井真知事が控え、自民も組織不参加を決めた。与党の公明が参加しただけに、残念であった。議会の結束が崩れると、政府に見くびられる恐れがある。

 県議会は、県民の代表者である議員が沖縄県の重要な事項について意思決定を行うという大きな役割を担っている。政府を揺り動かす気概で、地方議会の主体性と存在感を高めたい。

 投票率が57・82%と過去最低だったのは懸念材料だ。若者の選挙離れがいわれて久しいが、今回も歯止めがかからなかった。抜本策が急がれるが、当選した県議らが議会に新しい風を吹き込み、沖縄の未来を主体的に切り開く気概を示せば、おのずと政治への関心も高まろう。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132952-storytopic-11.html

 

2008年6月9日(月) 夕刊 1面

「自公政治」を批判/県議選・与野党逆転

 第十回県議会選挙(定数四八)は八日投開票され、野党中立が二十六議席を獲得し、二十二議席だった与党を上回った。与野党逆転を許した自民、公明は厳しい選挙結果に、仲井真弘多知事の今後の県政運営に懸念を表明した。一方、野党各党は「後期高齢者医療制度など自公政治に対する怒りが示された」とし、県政の変革を訴えた。

 現職二人を含む公認候補六人が落選した自民党県連の外間盛善代表代行は、後期高齢者医療制度に対する批判を敗因に挙げ、「あまりにも逆風が強かった。見直しも打ち出したが、十分に説明できなかった」と分析。党勢の立て直しを課題に挙げた。

 同じ与党でも公明党県本は公認推薦五人が全員当選した。糸洲朝則代表は「完全勝利だった」としながらも、「与党の過半数割れは残念。仲井真県政の今後の県政運営を危惧する」とした。

 社民党県連は五人の公認候補が当選。三人の無所属候補の会派入りで、野党最大会派へ。照屋寛徳委員長は「仲井真県政に対する厳しい審判だ。自公政権は今回の結果を厳しく受け止めるべきだ」と主張した。

 共産党県委は五人の公認が当選し、現有三議席から伸ばした。代表質問権などを回復させ、赤嶺政賢委員長は「自公の悪政に対する怒りが躍進につながった。県議会の論戦をリードしていきたい」とした。

 新人三人を含む公認四人がトップ当選で躍進した民主党県連。喜納昌吉代表は「政権交代を望む県民の期待が民主党に多数寄せられた結果だ。自公政権は早期解散で民意を問うべきだ」と強調した。

 社大党は現職、新人の二人が落選。公認候補の当選が過去最低の二人だった。比嘉京子書記長は「民主党躍進の影響を受け、埋没してしまった」と、後期高齢者医療制度など与党への反発が、他党へ流れたと分析。立て直しを訴えた。

 公認一人が当選した政党「そうぞう」の下地幹郎代表は「与野党逆転は日本の政治に大きな影響を与え、非常に意味を持つ」と指摘。「『変えたい』という県民の思いに応えていきたい」とコメントした。

 国民新党県連の呉屋宏代表は「推薦候補四人が当選した。政治改革の第一歩を沖縄から中央政府に訴えたい」とコメントした。


     ◇     ◇     ◇     

野党の考え聞き判断/仲井真知事


 仲井真弘多知事は県議選の投開票から一夜明けた九日午前、今後の県政運営について「野党がどう考えているか聞いた上で判断したい」と述べ、議会で過半数を占めた野党との調整が必要との考えを強調した。一方で「粛々と仕事をするだけだ」とも述べ、基本政策を堅持する方針もにじませた。登庁時に記者団の質問に答えた。

 与党の過半数割れには「民主が躍進して(与党の票が)はねられてしまった」として、民主党の勢力拡大の影響が大きいとの認識を示した。

 県首脳は同日午前、米軍普天間飛行場の移設問題について「県議選は知事選ではない。基本的な考えを変えることは県民への公約の放棄になる」として、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設とV字形滑走路の沖合移動を引き続き推進する考えを明らかにした。


医療制度が敗因/町村官房長官


 【東京】町村信孝官房長官は九日午前の会見で、与野党の勢力が逆転した県議選の結果について「仲井真知事も言うように、背景に長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の問題があったことは否定しえない事実だろうと思う」と述べ、同制度への逆風が与党敗因の一つになったとの認識を示した。

 普天間飛行場の移設問題は「争点になったとは聞いていない」とした上で、政府と県との協議への影響について「公有水面埋め立てなどで県知事の許可が要るが、県議会の了承が必要なことはないだろうと思っている。県民の理解と協力を得ながら進めていくのが政府の方針だ」と述べた。

 ただ別の政府筋は「キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に影響は避けられない」との懸念を示し、「仲井真知事の今後の判断に影響する」との見方も出ている。知事が滑走路位置の修正を求めていることもあり、政府と県側の調整はさらに難航する可能性がある。

 一方、選挙結果が国政に与える影響をただされた町村官房長官は「どこの地方選も地元の事情、選挙区ごとの事情があるから、(選挙結果が)どう国政に影響を与えるか、ただちにコメントするのは難しい」と述べるにとどまった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806091700_01.html

 

2008年6月9日(月) 夕刊 1面 

国抗告許可 最高裁へ/沖国大ヘリ事故訴訟

 沖縄国際大(沖縄県宜野湾市)の敷地内に米軍のヘリコプターが墜落した事故をめぐる情報公開訴訟で、福岡高裁(西理裁判長)は九日までに、不開示部分を裁判所に提示するよう命じた同高裁決定を不服として国が申し立てた抗告を許可する決定をした。六日付。

 不開示部分の裁判所への提示の当否は、最高裁に審理が持ち込まれ、判断されることになった。

 この訴訟は、那覇市の男性が二〇〇四年のヘリ事故をめぐる日米両政府間の協議内容の一部を情報公開請求で不開示とされたのは不当として、国の処分取り消しを求め、福岡地裁に提訴。一審判決は請求を棄却し、男性が控訴した。

 福岡高裁は五月、不開示に理由があるか否かを判断する上で「文書の細部まで内容を正確に把握する必要がある」として国に文書の提示を命じた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806091700_04.html

 

2008年6月9日(月) 夕刊 6面

イオンが協定書/泡瀬ゴルフ場跡に出店

 【北中城】二〇〇九年秋以降の返還が見込まれる米軍泡瀬ゴルフ場跡地への出店を予定するイオンモールと琉球ジャスコ、アワセゴルフ場地権者会は九日午前、北中城村役場で、「イオンモール沖縄北中城(仮称)」出店の「事業推進の協定書」に調印した。協定書は(1)返還跡地へのイオングループ出店で合意(2)区画整理事業の推進(3)出店で相互協力する―などと定めている。

 調印式にはイオンモールの山中千敏専務と琉球ジャスコの栗本建三社長が出席。両社は既に調印を済ませており、この日は地権者会の比嘉伸維会長が調印した。

 比嘉会長は「イオンモール出店は地域経済の活性化につながる。事業推進のためまい進したい」と期待。山中専務は「顧客第一の企業理念で、輝きのある街を創造したい」と抱負を述べた。

 イオングループは一二年度、米軍泡瀬ゴルフ場跡地への出店を予定。敷地面積約十七ヘクタールで、飲食店などの専門店約三百店のほか、約六千台収容の駐車場を建設する。雇用効果は約三千三百人を見込んでいる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806091700_07.html

 

2008年6月10日(火) 朝刊 2面

米軍再編方針変えず 首相

 【東京】福田康夫首相は九日、政府与党連絡会議に出席し、県議選で与党が敗北を喫したことについて、在日米軍再編問題などに対する政府の従来方針に変わりはないとの考えを強調した。冒頭、福田首相は「沖縄に関しては米軍再編問題など、そのほかの重要な問題がある。これまで通り、粛々と進めていきたい」と述べた。

 会議終了後、公明党の太田昭宏代表は「わが国と沖縄ということからいくと、国にかかわる案件は非常に多い。そこが、これから県政としてなかなか困難なスタートになると思う」と述べ、今後、仲井真弘多知事が厳しい県政運営を迫られるとの見方を示した。

 自民党の古賀誠選対委員長は、「地方の選挙は地方の選挙」としながらも、「沖縄という非常に国政にかかわりの深い県なので、大変残念な結果だった」と指摘した。その上で、同会議で、後期高齢者医療制度に対する有権者の強い反発があったことを説明したと述べ、詳しい敗因を今後分析する考えを示した。


福田政権不信任

民主・鳩山幹事長


 【東京】民主党の鳩山由紀夫幹事長は九日、県議選で野党中立が過半数を獲得したことについて、「(県議選で)野党が逆転したと言うことは、国政においても野党逆転しろという意思表示。『福田政権おやめになりなさい』という思いを県民が示した」との見解を示した。

 その上で、「信任されていないということを直近の民意が示していると理解し、解散するか、あるいは総辞職するか、いずれかの手段をとって国民に信を問うてほしい」と述べた。

 一方、「今年唯一の県議選なので、まさに国政に直結している」と述べ、後期高齢者医療制度に対する有権者の強い反発を勝因に挙げた。その上で、福田康夫首相に対する問責決議案提出に意欲を示した。

 選挙結果が米軍普天間飛行場の移設に与える影響については、「民主党も四人の候補者がトップ当選した。他の野党も(同飛行場を)県外に移転させろという主張が中心であり、その方向で県議会は動いていくことになるので、(県内移設を容認する)仲井真弘多知事の思い通りには進みにくくなる」との見方を示した。


普天間に「影響」

防衛省外務省


 【東京】米軍普天間飛行場移設を担当する防衛、外務の両省からは九日、今後の移設事業への影響を指摘する声が上がった。

 防衛省の増田好平事務次官は、同日の定例会見で「地元の声にもよく耳を傾けて関係の役所とも連携しつつ、地域振興に全力を挙げて取り組みながら、日米合意に従って着実に進めていきたい」と従来の見解を繰り返すにとどめた。

 しかし、同省首脳は「現時点で答えるのは難しいが、影響はある」との見方。ただ、県が求める代替施設案(V字案)の沖合移動については、「これまでも『沖合移動を念頭に努力する』と言っている。その姿勢は変わらない」と述べ、基本姿勢は変えない考えを強調した。

 一方、外務省幹部は「間接的に影響してくる。これから(状況を)見ていかなければならない」と述べ、県議会と県政の動向を注視していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806101300_02.html

 

2008年6月10日(火) 朝刊 26面 

「ガマ」の再認識 平和学習に意義/高教組、14日にシンポ

 高教組教育資料センターは十四日午後二時から、那覇市の教育福祉会館でシンポジウム「ガマ」を開催する。二〇〇五年から戦跡調査を積み重ねている同センターが、「ガマは平和学習の上で重要な意義を持つ」と再認識したことがきっかけ。「ガマについて認識を深め、平和学習の課題を模索する機会にしたい」と多くの来場を呼び掛ける。

 シンポジウムでは、「遺骨収集とガマ」「考古学とガマ」「ガマの生息動物保護」などをテーマに、四人がガマについて報告する。

 三年間、県内各地でガマなどを調査してきた同センターの源河朝徳事務局長は、「戦跡は中南部というイメージがあるかもしれないが、県内の至る所にあり、若い人にはそこに目を向けて、学んでもらいたい。特異な生態系を持つものもあるので、ガマのさまざまな面を学んでほしい」と話した。

 同センターは八月に、調査結果をまとめたガイドブック「ガマ」を発刊する予定。

 シンポジウムは入場無料。問い合わせは同センター事務局、電話098(884)4555。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806101300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年6月10日朝刊)

[与党惨敗(下)]

噴出した国政への批判


 自民党にまたも逆風が吹いた。八日に投開票された県議選で自民党は議席数を改選前の二〇から一六に減らし、ついに少数与党に転落した。

 逆に民主党は公認候補の四人全員がトップ当選を果たすという大躍進を遂げた。昨年七月の参院選で示された「自民退潮・民主躍進」の結果が県議選でも同じ形で再現されたのである。

 なぜ、このような選挙結果が出たのか。テレビのインタビューに答えるお年寄りの言葉が印象的だった。「これまでは自民党に投票していたが、今度だけは入れたくなかった」

 国の失政に対する「有権者の反乱」「地方からの異議申し立て」が、自民大敗の結果を生んだといっていい。

 昨年の参院選は「年金問題」「政治とカネ」「閣僚の不祥事」という逆風三点セットが自民党に吹き荒れた。

 県議選の結果を左右したのは後期高齢者医療制度である。年金問題といい高齢者医療といい、老後の生活を保障するはずの政府の基本政策に有権者がノーを突きつけたのである。

 それだけではない。二〇〇七年六月に施行された改正建築基準法によって建築確認が厳格化され、県内でも住宅着工件数が大幅に減少した。典型的な「官製不況」だ。県内の建設業界は今もその影響から抜け出せないでいる。

 ガソリンや食料品の値上がりが家計を直撃している時だけに、暫定税率をめぐる政治の混乱や政府の対応のまずさにも有権者の批判が集まった。

 与野党いずれの支持者からも共通に聞こえてきたのは、米軍再編推進法に基づく露骨な「アメとムチ」政策に対する批判である。

 再編交付金というアメをちらつかせながら自治体をコントロールしようとする政策は、自治体の自主性を損ねるだけでなく、そこに住む住民の「誇り」や「土地への愛着」を逆なでするような結果を招いている。

 後期高齢者医療制度もそうだが、生身の人間の息遣いや日々の暮らしの現実を無視して政策が作られているということだろうか。ぎすぎすして、ぬくもりが感じられない。

 将来への希望を抱くことができない政策が目立つのだ。

 昨年の参院選、今回の県議選で自民党が大敗し、福田政権に対する支持率が低迷している背景に、こうした政策への反発があるのは明らかである。

 県議選の投票率は57・82%で、過去最低を記録した。一九八八年の第五回県議選のあと、五回続けて下がりっぱなしである。低落傾向に歯止めがかからない。

 国会よりもはるかに身近な存在でありながら、実は、住民と県議会の距離は遠いのではないか。この距離を埋め、住民の政治参加を促すためには議会改革が必要だ。

 与野党を超えて若い当選者にその役割を期待したい。議会に新風を吹き込み、県政と議会の緊張感を高め、議会と住民を結びつけるための新たな試みにチャレンジしてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080610.html#no_1

 

2008年6月10日(火) 夕刊 1面

「普天間」への影響注視/県議選与野党逆転

防衛・沖縄相が意向

 【東京】石破茂防衛相は十日午前の閣議後会見で、野党が過半数を獲得した県議選の結果について、「与党が過半数を割ったということの意味合いはなおざり視するべきではない」と述べ、米軍普天間飛行場移設への影響を注視する意向を示した。その上で「今まで同様、あるいはさらなる努力をし、普天間移設に向けた手続きや説明を丁寧に、誠実にやっていく」と述べた。

 また、岸田文雄沖縄担当相も閣議後会見で「後期高齢者医療制度の課題も影響したといわれていると認識している。米軍再編の政府方針に影響があるか注視したい」との考えを示した。

 与党の敗因については「それぞれの選挙区の事情や国政の課題などさまざまな事情が重なった。選挙結果を真摯に受け止めることが必要」として、「引き続き県や地元と連携し沖縄の自立型経済の構築に一層努力したい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806101700_02.html

 

2008年6月10日(火) 夕刊 5面

新垣良俊氏側が祝儀/「ハーレー激励で」

 【八重瀬】八日に投開票された県議選の島尻郡区で当選した新垣良俊氏(59)の陣営が、投票日前日の七日、八重瀬町の港川漁港で開かれた「港川ハーレー」の会場で、出場チームの関係者に、現金五千円の「御祝儀」を渡していたことが分かった。

 新垣氏は「大会を激励するために渡したもので、投票を依頼するつもりではなかった。結果的に誤解を招いてしまい、反省している」と述べた。

 新垣氏によると、七日午前九時ごろ、後援会長の中村信吉八重瀬町長らとともに会場を訪問。新垣氏の運転手が、「職域ハーレー」に出場する陸上自衛隊南与座分屯地の隊員に、五千円の現金が入った新垣氏の名前を書いた祝儀袋を渡した。受け取った隊員は新垣氏側に返した。

 公職選挙法一九九条二項は、公職候補者は、選挙区にある者に対し、どのような名義でも、寄付をしてはならないと規定している。

 新垣氏は、旧東風平町と旧具志頭村が合併し八重瀬町が誕生した二〇〇六年から大会を運営する港川漁協や港川青年会に、激励として五千円程度の祝儀を渡していると説明した。この日は、自衛隊員を大会運営の関係者と勘違いして祝儀を渡したという。県選挙管理委員会は「仮に事実であれば」と断った上で、「ご祝儀であっても寄付に当たると考えられる。渡した相手が個人か団体かにかかわらず、公選法に触れる可能性がある」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806101700_04.html

 

2008年6月11日(水) 夕刊 1面

再編交付金で健康づくり/恩納村が基金創設方針

 【恩納】在日米軍再編への協力に応じて支払われる再編交付金約三千八百万円の支給が決まっている恩納村が、同交付金で基金を創設し、村民の健康づくりを支援する「村健康づくり事業(案)」に充てる方針であることが十一日、分かった。県内で交付を受けている五市町村で、再編交付金を福祉分野に充てる使途が分かったのは、初めて。

 同村は、六月の村議会定例会で基金創設の条例制定案と、同事業の本年度分約九百万円を盛りこんだ一般会計補正予算案を提案する。

 まだ執行されていない二〇〇七年度分約四百七十五万円と、本年度分として内示された約三千三百二十五万円の計約三千八百万円全額を基金に回す。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806111700_01.html

 

2008年6月11日(水) 夕刊 5面

警官が偵察活動従事/沖縄戦下の本島北部

 沖縄戦で日本軍がゲリラ戦を展開した本島北部で、軍に協力した警察官たちの行動を記した日誌の英訳資料を、関東学院大学の林博史教授が米国立公文書館で見つけた。警察官が偵察活動や米軍への破壊活動に従事したほか、住民への宣伝活動を行ったことも記されており、警察官が軍と住民の間を行き来して秘密戦を支えていた構図が浮かび上がった。

 日誌は、一九四五年七月三日に米軍が廃屋で発見。記述者は名護署の警部補とされ、米軍上陸後の四月二十三日から六月三十日までの署員の行動が記録されていた。

 日誌によると、名護署員らは米軍上陸後、日本軍のゲリラ戦部隊である護郷隊が陣を敷いた多野岳の南西に野営。各地の偵察を盛んに行い、四月二十六日には「源河で通信線を切断」と米軍への破壊工作も行った。

 軍への協力についての記述も多く、五月一日には日本兵七人に食料を提供し、六月十二日には日本軍少尉と、十七日には大尉と接触。同月二十一日には「署員を道案内のため多野岳へ」と記されていた。

 同時に、住民の避難壕がある地域にも署員が頻繁に行き来し、住民の動静やうわさ話などを収集していた。六月二十四日には「住民たちに米軍へ収容されないよう指示するため」として署員二人が派遣されたとある。

 林教授は、住民に対する米軍の尋問記録も同館で入手。これによると、住民の一人は「警察官が時々、軍の情報を基にした新聞を住民に配っていた」と証言しており、住民への宣伝を警察が担っていたことを裏付けているという。

 戦時中の警察に関する資料としては、県警察部の「戦闘活動要綱」が〇五年に見つかっている。それには警察の方針として「遊撃戦(ゲリラ戦)への協力」が掲げられ、「遊撃隊とひそかに連絡すべし」「民間人に敵の宣伝に打ち勝つ努力をさせる」などが示されていたが、活動の実態はわかっていなかった。

 林教授は「現場の警察官たちは要綱を忠実に実行し、軍の手が回らない部分を埋め合わせていたことがうかがえる。秘密戦の一端を具体的に記録した貴重な資料であると同時に、根こそぎ動員で秘密戦を継続しようとした日本軍の実態をよく表している」と話している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806111700_02.html

 

2008年6月11日(水) 夕刊 4面

戦争の影残る風景紹介/屋良さん写真展

 戦時中に一般住民が姿をひそめたガマ、歯とメガネだけがわずかに残った兵士の頭部…。県内各地の戦跡や沖縄戦にまつわる事物を写した写真展「写心展 終幕のない『レクイエム』」が、那覇市おもろまちの県民ギャラリーで開かれている。十五日まで。

 日本写真家協会会員で、写真家の屋良勝彦さん(68)の個展。会場には一九六〇年代後半から二〇〇七年までの作品を展示。唯一戦禍をまぬがれた守礼の門の様子(六〇年ごろの作品)や、不発弾処理を知らせる立て看板(二〇〇七年、南城市)など、時代が移り変わっても戦争の影が残る沖縄の風景をカメラに収めた。

 沖縄戦当時、ともに西原から南部へ移動する途中、命を落とした兄たちが眠る「魂魄の塔」の慰霊祭を毎年訪れる屋良さん。会場には、慰霊祭が始まった八〇年代初期から撮りためた、塔に祈りをささげる人びとの姿も多数並ぶ。

 「写真から何を感じてくれるか。特に戦争を知らない世代に、少しでも戦争が認識してもらえたら」と期待を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806111700_06.html

市長訪米予算 議会に提案へ/宜野湾市 宮森小ジェット機墜落から49年 沖縄市・タクシー強盗、2米兵に実刑判決 など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(6月1日から5日)

2008年6月1日(日) 朝刊 1面

「安定」「刷新」訴え/8政党座談会

 県議会議員選挙が告示されたことを受け、沖縄タイムス社は三十一日、県内の八政党の代表を招き、座談会を開いた。訴えている政策、争点に浮上した後期高齢者医療制度(長寿医療制度)への対応、米軍基地問題の基本的な姿勢などで見解を聞いた。与党は過半数維持の県政安定を訴え、野党は与野党逆転による県政刷新を強調した。

 最も訴えている政策で、自民党県連、公明党県本は自立に向けた経済振興、雇用の拡大、県民所得向上に向けた施策推進などを挙げ、仲井真県政と一体となった県政発展をアピールした。

 一方、社民党県連、社大党、共産党県委、政党「そうぞう」、国民新党県連の各野党は後期高齢者医療制度の廃止を前面に打ち出し、「与野党逆転で制度廃止の民意を示す」と強調した。

 後期高齢者医療制度について、自公は「医療制度の維持に必要」とし、低所得者への軽減措置や徴収制度などでの見直しを主張。野党各党は「現代版のうば捨て山」と批判し、「小手先の見直しではなく、廃止し、一から制度をつくり直すべきだ」とした。

 基地問題は自公が普天間飛行場の危険性除去を優先される課題と指摘。同飛行場の名護市辺野古沖への移設を容認する仲井真県政の対応を支持した。野党各党は辺野古への新基地建設反対を表明。「米軍再編による基地の機能強化の反対」を訴える党もあった。

 仲井真県政への評価は、自公が「経済、雇用で実績を上げている」と評価。社民、社大、共産は「評価に値しない。雇用は改善されず、基地問題は国のいいなり」と批判した。一方、そうぞう、民主党県連、国民新党は「仲井真県政を評価するにはまだ時間がかかる」とした上で、政策によって対応する是々非々の姿勢を明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806011300_01.html

 

2008年6月1日(日) 朝刊 29面

「米軍に国内法適用を」/地位協定講演会

 日米地位協定を考える講演会(沖縄平和ネットワーク主催)が三十一日、那覇市の教育福祉会館であった。弁護士の新垣勉さんは現行の協定について「日本の主権が、米軍基地や軍の活動に及ばず、国内法が適用されないことが最大の問題」と指摘。本質的な構造を認識しなければ、基地を安定供給するための「見直し」に収斂される、と懸念を示した。

 新垣さんは「一つ一つの条文では分かりにくいが、全体として日本の主権が及ばない仕組み。米軍基地は無法地帯だ」と訴えた。その上で「抜本的見直しとは、駐留米軍に日本の法律を適用すること」とし、「尊重させる」など、あいまいな表現で決着を図ろうとする政治的流れにくぎを刺した。

 また協定改定運動の中で、構造的矛盾と米軍の実態を訴え、基地撤去に結び付けるべきだと強調した。

 米軍人・軍属による事件被害者の会・支える会の村上有慶さんは、旧防衛施設庁から取り寄せた資料を基に、米兵事件が増え続けている現状を報告。「運用改善では犯罪は減らない。もう放置できない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806011300_04.html

 

2008年6月1日(日) 朝刊 28面

情熱今も 上原さん帰郷/「沖縄に民主主義」目指し 58年前密航

 【国頭】戦後の混乱の中、地元政党「沖縄民主同盟」創設に関わり、沖縄の基地被害や民主主義の実現を訴えるため、?密航船?で沖縄を離れた上原信夫さん(84)が三十一日、故郷の国頭村奥を訪ねた。故郷を離れて五十八年目。奥区(玉城壮区長)で区民をあげての盛大な歓迎会が開かれた。(知念清張)

 上原さんは崩壊状態だった戦後奥区の復興に尽力。教育や米軍が当時禁止していた畜産を再開させるなど功績を挙げ、二十三歳で国頭村の最年少議員に選出された。

 しかし、米軍に政党機関紙の発行禁止処分を受け、「沖縄の問題は沖縄だけでは解決できない」と日本本土と世界に訴えるため一九五〇年、大阪へ密航。その後、中国に渡り研究者となった。

 七四年になって、ようやく帰国を許された。

 以来、東京で幅広く日中交流にかかわり何度も沖縄を訪れたが、奥を訪れることは、ほとんどなかった。

 奥集落センターで開かれた交流会には、村内外から「お世話になった」という人たちが百人近く集まった。

 近所の子供と一緒に上原さんに勉強を教えてもらっていたという中真貞子さん(74)は「暗闇でランプをふいていた姿が忘れられない。何でも一生懸命な人だった」と再会を喜んだ。

 中国留学の橋渡しをしてもらった當山直彦さん(37)は恩納村から駆け付け「視野を広く持つことを教えられた」と感謝した。

 上原さんは「何十年ぶりかに先輩、後輩、友人と会えてうれしい。今でも沖縄はこれでいいのか、と考えている。これからも社会の新しい道を広げていきたい」と感謝した。

 上原さんの妻、興新さん

(57)、長女の和子さん(25)、次女の京子さん(22)も区民と交流を深めた。和子さんが「中国とのハーフだが、父の故郷を訪ね、自分の中に沖縄の血が流れている事を誇りに思う」と話すと区民から大きな拍手が起きた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806011300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年6月1日朝刊)

[クラスター弾禁止]

実効確保に全力尽くせ


 人を殺傷するために開発された兵器はすべて「非人道的」なものだろうが、一発の爆弾から多数の子爆弾をまき散らすクラスター(集束)弾の被害の深刻さは他に類をみない。戦争や紛争が終わっても、広範囲に残された不発弾が子どもを含む一般市民を長期間、殺傷し続けるからだ。

 今なお、世界各地の人々を苦しめている集束弾を事実上、即時・全面禁止する国際条約が採択され、日本政府も合意した。ノルウェー、アイルランド、ニュージーランドなどの有志国と国際非政府組織(NGO)が主導する国際会議「オスロ・プロセス」に約百十カ国が参加し、クラスター弾の規制に向け、国際的な協調体制を築いた意義は大きい。

 当初、部分的な禁止や条約適用までの猶予期間を求め、合意に消極的だった日本政府が方針を転換、結果的に参加したことを評価したい。

 ただ、オスロ・プロセスには米国やロシア、中国などの軍事大国が参加していない。日本政府は、条約の実効性を担保する上で、こうした国々を取り込むために全力を注ぐべきである。

 日本はオスロ・プロセスの合意形成の過程で、採択を支持するかどうかの態度を最終日まで保留した。会議を主導したノルウェーなどの有志国や、部分禁止の立場からいち早く全面禁止に合意した英国、フランス、ドイツなど欧州各国との対応の違いは明らかだ。

 今こそ、七月の主要国会議(サミット)議長国として、国際世論を真摯に受け止め、より積極的に対応すべきだ。

 クラスター弾は第二次世界大戦で使用されたほか、イラクやレバノンでも使われた。空中でばらまかれた子爆弾のうち、目標に命中しなかった不発弾は地面のほか、木にひっかかった状態で残る。

 何も知らない子どもたちが踏みつけたり、手に持つなどして大けがをしたり、命を奪われることさえある。その上、すぐに爆発する状態にあるため、除去が困難で莫大な費用がかかる。

 国際的なNGO「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」の調査によると、クラスター弾は七十五カ国以上が備蓄し、このうち日本を含む三十五カ国で二百十種類を製造しているとされる。

 新条約はクラスター弾の使用、製造、開発、輸出入の即時禁止に加え、既に保有しているものを八年以内に廃棄などを規定しているが解決には時間がかかる。

 子どもや一般市民の被害を減らすために、不発弾除去の技術確立と、資金援助を急ぐべきで、日本政府が果たすべき役割も大きい。

 クラスター弾は二〇〇二年から米軍嘉手納基地での配備の可能性を指摘されているが、一切の情報を明らかにしない米軍の姿勢は断じて許されない。

 町村信孝官房長官は、同条約への参加について「クラスター弾によって引き起こされる人道上の懸念を深刻に受け止め、合意に加わる」と述べ、合意を着実に実行する考えを表明した。ならば、政府は国内基地のクラスター弾に関する情報の公開と、廃棄を強く求めていくべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080601.html#no_1

 

琉球新報 社説

クラスター弾 廃絶に向け日本が先頭に 2008年6月1日

 その非人道的な性格から「悪魔の兵器」と呼ばれるクラスター(集束)弾が、国際社会からやっと追放されることになった。有志国と国際非政府組織(NGO)が主導する「オスロ・プロセス」は30日、事実上の即時・全面禁止条約案を約110カ国の全会一致で採択した。

 クラスター弾は、一発の爆弾が空中から無数の子爆弾をまき散らし、地上の生き物を無差別に広い範囲で殺傷する。さらに問題なのは、その不発弾だ。大量に放置され、子供を含む民間人の死傷が各地で相次いだことから、禁止の機運が世界中で高まっていた。

 米国は第2次世界大戦後、ベトナム、カンボジア、イラクなどでクラスター弾を使用してきた。また、旧ソ連・ロシアもアフガン、チェチェンで使った。海岸線の長い日本も、外敵の着上陸侵攻などに備える目的で所有している。

 「オスロ・プロセス」に日本は初回から参加してきたが、部分的な禁止などを求め、全面禁止には消極的だった。米国への配慮も背景にはあった。それが今回、一転して条約案に同意した。方針転換の裏には福田康夫首相の強い意向があったとされる。

 ただ、オスロ・プロセスに米国やロシア、中国など大量に保有する軍事大国は参加していない。こうした国々を今後、いかに条約に引き入れていくか。大きな課題となる。特に、日本が果たすべき役割に注目したい。まず、7億個もの子爆弾を保有するとされる米国との関係だろう。人道的見地からも、全力を挙げて説得すべきだ。

 国際社会の一致した意志は、米国といえども無視はできまい。米国が条約に同意すれば、ロシアや中国も続かざるを得ないのではないか。そのためにも日本は米国に対する働き掛けを強めるべきだ。

 保有していても、実質的に使えない兵器にしていく。実は、先例がある。地雷だ。1997年調印の対人地雷禁止条約(オタワ条約)ではその後、地雷の使用はかなり控えられてきた。米国はイラク戦争で、クラスター弾は使ったものの、地雷は使っていない。

 今回の条約では、クラスター弾の使用、製造などの即時禁止のほか、領土内で使われた残存弾は10年以内に除去、破壊するとしている。ここでも日本の出番があるのではないか。地雷除去でも日本はその科学力を発揮した。同様に不発弾の除去にも力を尽くし、完全廃絶に向けて先頭に立ってほしい。

 県内でも米空軍嘉手納基地ではクラスター弾を搭載して沖縄近海の射爆場に向かう戦闘機が、頻繁に目撃されている。海外では不発弾で漁師が被害に遭った事例もあり、決して人ごとではない。政府は条約への参加とともに、県内での訓練中止を米国に求めるべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132698-storytopic-11.html

 

2008年6月2日(月) 夕刊 7面

米憲兵起訴事実認める/沖縄市タクシー強盗

那覇地裁初公判「罪深いことした」

 沖縄市で今年三月、タクシー運転手が三人組の外国人に襲われ、釣り銭箱を奪われた事件で、事件の主犯として傷害と窃盗の罪に問われた在沖米空軍嘉手納基地所属で兵長の憲兵隊員ダリアス・エイ・ブランソン被告(21)の初公判が二日、那覇地裁(〓晋一裁判官)であった。ブランソン被告は「とても罪深いことをした」と述べ、起訴事実を全面的に認めた。

 検察側の冒頭陳述などによると、ブランソン被告は自宅に出入りしていた米軍人の息子らに、通行人から金を奪うよう持ち掛け、車で犯行現場付近に連れて行き、犯行後は基地内の自宅に連れ帰った。別居中の妻が給与の入った口座から金を引き下ろしたことから、家具のローンの支払いに迫られたという。

 事件は三月十六日午前零時二十分ごろ、沖縄市中央二丁目の路上で発生。実行役の少年らが客を装ってタクシーをとめ、運転手の男性=当時(55)=を車外におびき出し、路上に引き倒したり頭を殴ったりして現金約六千円入りの釣り銭箱などを奪った。

 共犯とされる少年四人のうち、実行役の一人は家裁送致となり、同日までに那覇家裁で保護観察処分になった。別の三人は刑事処分不相当として不起訴になっている。

※(注=〓は「頼」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806021700_04.html

 

2008年6月3日(火) 夕刊 5面

市長訪米予算 議会に提案へ/宜野湾市

 【宜野湾】宜野湾市(伊波洋一市長)が米軍普天間飛行場の早期返還と危険性除去に向け、伊波市長の三度目となる訪米直訴行動費二百三十万三千円を盛り込んだ二〇〇八年度一般会計補正予算案を十一日開会する宜野湾市議会(伊波廣助議長)六月定例会に提案することが三日、分かった。同日午前、同議会与党に議案を説明した。四日には野党に説明する。

 訪米は早ければ七月を予定。米ハワイ州の米海兵隊太平洋司令部を訪ね、同飛行場の危険性除去などを求めるという。

 伊波市長は、米軍が自ら定めた同飛行場のマスタープランで決めたクリアゾーン(土地利用禁止区域)に普天間第二小学校や住宅地があることを指摘。〇四年に市内の沖縄国際大学で起きた米軍ヘリ事故以降も危険性が放置され続けているとし、米軍の基地運用の在り方を批判してきた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806031700_03.html

 

2008年6月3日(火) 夕刊 5面

「世替わり」激動の70年代/第6回あんやたん展

 沖縄の世相や歴史を写真で振り返る「タイムスアーカイブあんやたん写真展」が三日、那覇市おもろまちの沖縄タイムス本社一階ギャラリーで始まった。入場無料。十五日まで。六回目の今回は、一九七〇年代の「世替わり」がテーマ。

 米兵の事件・事故に対する怒りが爆発した七〇年のコザ騒動や七二年の本土復帰のほか、沖縄国際海洋博覧会の開催、車の通行が右から左に変わった道路交通法の変更など、激動の時代を迎えた沖縄の人々の息遣いを九十三点の写真で伝えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806031700_04.html

 

2008年6月4日(水) 朝刊 29面

宮森小ジェット機墜落から49年/惨事の風化を危ぐ

体験者・平良さん 校長で赴任/命の語り部「630館」設置へ

 【うるま】児童十一人を含む、十七人が犠牲となった旧石川市の宮森小学校ジェット機墜落事件から四十九年目の今年、当時二年生で惨事を体験した平良嘉男さん(56)が校長として母校に戻ってきた。「毎年六月になると、嫌な思いが頭をよぎったこともあった。しかし今もう一度思い起こさないといけない」。命と平和の語り部「宮森630館」の設置に向け、地元で準備委員会を発足させた。(天久仁)

 一九五九年六月三十日、じりじりと太陽が照り付ける午前十時半ごろ、昼食のミルクを飲もうとした瞬間だった。「バーンと音がした後、教室の窓ガラスが真っ赤な絵の具で塗られたようになった」。米軍のジェット機は平良さんら二年生が学ぶ木造平屋の校舎を通過し、コンクリートの二階建て校舎に突っ込んだ。

 教師の誘導で逃げ出した平良さんは奇跡的にやけどひとつ負わなかった。しかし燃料タンクの引火で隣の教室への延焼がひどく、二年生は最も多い六人が犠牲になった。

 当時学校には千三百人余が在籍していた。平良さんは「戦争だ、と泣き叫ぶ声。何が起こったのか分からなかった」と振り返る。幼い記憶をたどりながら「ある程度心の中で事件のことを消化できるようになった。しかし肉親を失った人、友人を助けられなかったことを悔やむ人はそうはいかないだろう」と心中を察する。

 長年音楽教師として、那覇地区の学校で音楽を教えてきた平良さんだが、特に石川地区以外で、事件を知らない若い世代が増えてきたことを心配する。「体験者にとって思い出すのは苦しくてつらいこと。しかし風化させないためには語っていかなければならない」と声を強める。

 四月に赴任した後、早速地元の体験者を訪ねて「630館」準備委員会への協力を要請した。来年の五十年忌に合わせ、証言集をはじめ、事件の模様を収めた映画の制作を目指している。「630館」は宮森小学校内への設置を視野に入れており「平和の発信地にしたい」と希望している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806041300_01.html

 

2008年6月4日(水) 朝刊 29面

米軍事件・事故 実行委、再び政府に回答要求/協定改正など4項目

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会(玉寄哲永委員長)は三日、県庁で会見し、日米地位協定の見直しなど四項目の要請について、政府に回答を求める要求書を再び送付することを明らかにした。さらに、県選出の国会議員と連携して内閣に質問主意書を提出してもらう準備も進めているという。

 実行委は、三月二十三日の県民大会で決議した「地位協定の改正」「政府の責任の明確化」など四項目について、四月に要請団を結成して上京。首相官邸や外務省、防衛省などに四項目の実現を求めた。これに対し政府側からは現在まで回答はない。

 このため実行委は再度の行動を決意。「四項目についていまだ根本的な解決、または解決のための諸実施施策が沖縄県民に示されていない」とする要求書を四日に送付し、政府の具体的な方針について回答を求めるという。

 また、国会議員の権限で内閣に見解をただす質問主意書を利用し、回答を求めることも検討。要求書への政府の対応を見ながら提出するかどうか決めるとしている。会見した玉寄委員長は「こちらの意思表示に対し、国はいつも何も答えない。今回こそは必ず回答を得るため、粘り強く行動していきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806041300_02.html

 

琉球新報 社説

国民保護法 外交力の向上こそが重要 2008年6月4日

 協力のはずが強制、基本的人権を尊重のはずが制約、有事に備えた訓練が他国を刺激する。そんな批判が絶えない。国民保護法に基づく有事共同訓練のことだ。

 国民保護法は有事法制の一つで、2004年9月に施行された。外国から武力攻撃などを受けた際、国民の生命、財産を守るための国や自治体の権限や手続きを定めている。住民の避難や救援のため、民有地や家屋の使用など私権制限に踏み込んでいる。

 避難訓練は、自治体の長が住民に参加協力を要請できると規定され、07年度は国と自治体の共同訓練が15回実施された。今年も10月から来年2月にかけて、18県で共同訓練が実施される。

 うち4県で避難誘導などを伴う実動訓練。14県は連絡や避難手順を確認する図上訓練だ。

 訓練では、細菌やウイルス、放射性物質などによるテロなどが想定されている。

 沖縄県では来年1月末にも独自の予算で国民保護計画に基づく図上訓練を計画している。

 全国では、これまでにも原子力発電所が攻撃されたケースなどを想定し、訓練が実施された。だが「想定に無理がある」「原子炉を停止しても、攻撃を受ければ核汚染は防げない」など、現実と訓練の乖離(かいり)に疑問も噴出した。

 そもそも同法は国民を保護する前に有事、戦時体制の備えに重きが置かれているとの批判がある。

 有事になれば軍事基地の多い沖縄は、他県に比べ敵国の攻撃の対象となる可能性もある。

 太平洋戦争で、広島や長崎が核攻撃を受けたのは、そこに日本軍の主要な基地や軍需工場など軍事施設があったからだ。

 日本の伝統・文化が息づく京都や奈良は攻撃を免れている。

 軍事施設は、国民を守るどころか攻撃の対象となる。

 有事想定の訓練自体が、仮想敵国とされる国の反発を招きかねないとの懸念すらある。

 有事の備えも大事だが、国際舞台での発言力を増し、平和構築に貢献できる「外交力」の強化に、国はもっと力を注いではどうか。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132774-storytopic-11.html

 

2008年6月4日(水) 夕刊 5面

宮城さん「集団自決」20冊目の体験記/孫が挿絵「第2の語り手に」

 沖縄戦時に座間味島で「集団自決(強制集団死)」を体験した宮城恒彦さん(74)=豊見城市=が、住民の体験を聞き書きした、二十冊目の体験記を発刊した。慰霊の日に合わせ、一九八九年から毎年、自身や他の体験者の証言をまとめ、小中学校や知人に配ってきた。「教科書検定の問題など、日本軍の命令を否定する動きは、私たちの体験とは程遠い」と宮城さん。体験者の平和を願う思いが、本の挿絵を描いてくれた孫と同年代の若者たちにも届いてほしいと訴えている。(平良吉弥)

 宮城さんは、座間味島で「集団自決」を体験し、当時十九歳の姉ハルさんを亡くした。

 八八年、姉の死を悔やみ続けていた母ウタさんが亡くなったことがきっかけで体験記の執筆を思い立った。「過去を忘れては未来はない。何とか書き残さなければ」と証言をまとめ始めた。

 最初の五年間は、当時十一歳だった自身の体験をつづっていたが「体験していない人に『集団自決』の実相を伝えるには、多くの証言を集める必要がある」と、対象を村内の体験者に広げた。

 当初は千部程度の印刷だったが、希望者が多く千五百部に増やした。ページ数も数十ページからのスタートだったが、二十冊目の「機関銃の弾が出ない」では、姉と同級生だった男性とその妻の体験や当時の時代背景などをまとめ、百二十一ページに増えた。

 今回の体験談の後書きで、宮城さんは「高校の歴史教科書に記述されていた沖縄戦の事項から『日本軍』という文言が消され、沖縄県民の怒りに火を付けた年」と書いた。

 教科書検定問題や隊長命令の有無が争われた「集団自決」訴訟など、最近の動きを「同じ過ちを繰り返すのではないか」と危機感をあらわにし「若い人が私たちの体験を人ごとだと思ってしまうのが恐ろしい。若者は耳を傾け、行動してほしい」と願う。

 これまでにまとめた体験記では、孫で県立芸術大学四年生の新垣愛さん(24)=糸満市=が、小学六年生の時に宮城さんの体験を基に描いた紙芝居の絵が、一部で使われている。

 新垣さんは「じいちゃんの体験が封じ込められようとしている。許せない」と話す。「真実を消してはいけない。第二の語り手として私が伝えていきたい」と話す新垣さんの姿に、宮城さんは目を細めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806041700_01.html

 

2008年6月5日(木) 夕刊 1面

2米兵に実刑判決/沖縄市・タクシー強盗

 沖縄市で今年一月、タクシー乗務員が客の外国人二人に襲われた事件で、那覇地裁(〓井広幸裁判長)は五日、強盗致傷罪に問われた、いずれも在沖米海兵隊普天間基地所属で伍長のジョセフ・ウェイン・リドル被告(20)に懲役四年六月(求刑懲役八年)、一等兵の米国人少年(19)に懲役三年以上四年以下(同五―八年)を言い渡した。

 判決などによると、リドル被告らは一月七日午前三時ごろ、遊ぶ金欲しさにタクシー乗務員から金を奪おうと北谷町北前でタクシーに乗車。

 約四十分後、沖縄市美里三丁目の路上で車を止めさせ、乗務員男性=当時(59)=の頭を数回殴り、二千七百八十円の乗車料金を踏み倒した。通行人に見られたため、金を奪わずに逃走した。

 リドル被告らは閉店していた行きつけのバーに忍び込み、現金を物色したが見つからず、タクシー強盗を思い付いたという。乗務員の男性は頭部裂傷など全治一カ月のけがを負った。

※(注=〓は「吉」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806051700_01.html

 

2008年6月5日(木) 夕刊 5面

並里区、区有地売却へ/金武・ギンバル訓練場

 【金武】日米で返還が合意された金武町の米軍ギンバル訓練場について、訓練場に隣接する並里区(與那城直也区長)は五日午前、区議会を開き、町の跡地利用計画に合意し区有地(三十四ヘクタール)を町に売却する案を、出席議員の賛成多数(六対一)で可決した。

 一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)合意以来、ブルービーチへのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設条件が、強い反発を呼び地元行政区の賛成が得られなかったギンバル訓練場の返還が加速しそうだ。與那城区長は「国同士が合意をし、町も受け入れを表明した。基地はない方がいいが、区ではこれ以上どうすることもできず、現実的な対応もやむを得ない。ブルービーチへのヘリパッド移設は、引き続き撤回を求めていく」と話した。

 区有地の売却は、区議会に出席した議員の過半数の賛成が必要。昨年六月の町の受け入れ表明後、焦点は並里区の判断に移っていた。

 ただ、区議会決議では、土地の売却に反対する議員三人が欠席。

 町議員でもある知名達也議員は「ギンバル訓練場の区有地を売却すれば、ブルービーチへのヘリパッド移設を容認したと受け取られても仕方がない。区が住民に取ったアンケートでは、66%が条件付き返還に反対しており、住民説明会を開き、意思確認を行うべきだ」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

伊芸区が抗議決議/ヘリ低空飛行


 【金武】金武町伊芸区上空で米軍ヘリが低空飛行した問題で、伊芸区の行政委員会(登川松榮議長)は五日の臨時会で、都市型訓練施設を使用した米軍ヘリ演習に対する抗議決議案を全会一致で可決した。

 決議後、行政委員会は沖縄防衛局長と外務省沖縄担当大使、在沖米国総領事に対し抗議する。

 抗議決議では、「低空飛行を繰り返したのは、米空軍戦闘ヘリと判明し、レンジ4で実弾訓練を実施していた米陸軍の支援演習をしていたことが明らかになった。住宅地域を巻き込んだ演習であり、断じて許されるものではない」と指摘。「ずさんな演習が続くと夜も眠れず、恐怖と不安の中で生活を強いられなければならず、許せない」と訴えている。伊芸地域での米軍ヘリ演習とレンジ4米陸軍都市型訓練の暫定使用の即時中止を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806051700_02.html

 

2008年6月5日(木) 夕刊 5面

F15が緊急着陸/嘉手納基地

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で五日午前十時二十五分ごろ、同基地所属のF15戦闘機一機が緊急着陸した。機体のフックを滑走路上のワイヤに引っ掛けて停止したため、緊急性が高かったとみられる。

 目撃者によると、同機は沖縄市方向から北側滑走路に着陸。機体のフックから火花を散らす様子も確認された。

 消防車など緊急車両数台が機体を取り囲んだが、放水などはなかった。同機は着陸から約三十分、機体の点検を受け、けん引されて駐機場に戻った。同基地報道部は「予防的な着陸だった」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806051700_07.html

深夜訓練/SACO以外でも騒音規制合意踏襲 普天間協議、「確認書」合意へ調整、政府・県折り合わず 日米地位協定改定決議案、野党、来週にも参院提出 など  沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(5月28日から31日)

2008年5月28日(水) 朝刊 1面

深夜訓練/SACO以外でも騒音規制合意踏襲

 金武町伊芸区上空で米軍ヘリが夜間に訓練を行ったことについて、在沖米国総領事館のカーメラ・カンロイ首席領事は二十七日、同町議会(松田義政議長)の抗議に対し、「SACO(日米特別行動委員会)合意に従って、午後十時から午前六時までの訓練はしないようにしている。運用上必要があればやってもいいが、必要性があるかどうか判断する必要がある」と説明した。

 米側が、嘉手納基地や普天間飛行場の周辺以外の施設についても、騒音に関するSACO合意を踏襲しているとの認識を示した。

 カンロイ首席領事は「詳細な事実関係を確認できていないので、調べてみたい」と話した。

 一九九六年のSACOでは同年三月の日米合同委員会で、嘉手納と普天間における航空機騒音規制措置に関する合意を確認。「午後十時から午前六時の飛行及び地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」と定めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805281300_02.html

 

2008年5月28日(水) 朝刊 27面

宅地夜間飛行/伊芸区、我慢の限界

 金武町伊芸区で米軍ヘリが住宅上空の夜間飛行を繰り返した問題で、儀武剛町長と池原政文区長は二十七日、沖縄防衛局に対し、日米地位協定や「5・15メモ」など過去の日米合意の記録も含めた調査と、文書による正式回答を求めた。踏み込んだ要求を突き付けた背景には伊芸区での基地負担が加速度的に高まり、住民生活が脅かされ続けていることへの強い反発があるが、外務省は「協定上ただちに問題があるとはいえない」との立場。伊芸区の現状は、現行の地位協定の限界を浮き彫りにしている。(社会部・嘉数浩二)

集落が訓練場?


 「伊芸区全体を訓練場と見ているのではないか。まさに戦場さながらだ」。池原区長は声を震わせた。

 米軍は今月二十日から三日連続で午後十一時ごろまで、民家から五百メートルも離れていないキャンプ・ハンセン「レンジ4」都市型訓練施設内のヘリパッドで離発着を繰り返した。

 二―四機がごう音を響かせ、無灯火のヘリが高速で闇夜を横切った。公民館から四十―五十メートルの低空飛行で集落上空を何度も旋回した。住民への聞き取りで区がまとめた飛行ルートは、集落をすっぽりと囲んでいた。

 二十二日夜には、爆破訓練とみられる爆発音も重なり、町測定で85・5デシベルを記録。男性住民は「施設内の建物を攻撃し、別のヘリが後方支援しているようだった」と話す。


地位協定の限界


 町は、撮影した写真から米空軍のHH60と呼ばれる救難ヘリとほぼ断定。所属先は不明だが、空軍機が飛来し、伊芸上空で訓練していたことになる。

 外務省地位協定室は、本紙の取材に、「米軍の活動は、すべて訓練ともいえるが、一般論として日米地位協定上、射撃を伴わない飛行(訓練)は提供空域内に限定されない」との従来の見解を示し、「協定上の話ではなく、米側に配慮を求めるべき問題」とした。

 日米地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「現行の協定では、演習のために集落上空を飛行しても規制する仕組みがない。民家上空、低空飛行などをしっかり制限できるよう協定を変える必要がある」と指摘した。

 池原区長は「これだけ生活を脅かされても、何もできないなら、今の協定は要らない。地域住民はどうなってもいいのか」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805281300_03.html

 

2008年5月28日(水) 朝刊 26面

不発弾に「触らないで」/中学生が隠す?自衛隊回収

 那覇市内の中学生が見つけて草むらに置いていた沖縄戦で使われたとみられる砲弾六発などを、陸上自衛隊の処理班が二十六日に回収していたことが分かった。砲弾が見つかった地域の小中学校では、児童・生徒に対し、砲弾を見つけた場合は「絶対に触らないこと」と注意喚起、保護者にも文書を配布した。

 砲弾は二十五日、自治会の清掃作業で見つかった。自治会長などによると、中学生が川で拾った砲弾を隠しているとの情報があり、付近を調べたところ、長さ約三十センチ、直径約八センチほどの砲弾六発や機銃らしきものが見つかった。自治会長は「非常に危険なので学校や、市、警察に連絡した」と話す。市によると連絡を受けた自衛隊がすぐに回収した。爆発の危険性は少ないとみられる。

 砲弾が見つかった地域の小学校長は「緊急に集会を開いて注意を呼び掛けた。事故がなくてよかった」と話した。中学校長も「好奇心から拾ったかもしれない。非常に危険だということを校内放送で伝えた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805281300_05.html

 

2008年5月30日(金) 朝刊 1面

「確認書」合意へ調整/普天間協議

政府・県折り合わず

 【東京】米軍普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐり、政府と県が、今後の協議の進め方を明記した「確認書」を交わす方向で調整していることが二十九日、分かった。しかし、確認書の内容で双方は折り合いがついておらず、先行きは不透明だ。

 政府と県は、普天間飛行場代替施設の建設計画などを話し合う協議会の第八回会合を六月三日夕に開き、確認書を合意することを目指していたが、調整が難航し、会合は延期となった。

 協議会設置を明記した在日米軍再編に関する政府方針の閣議決定から三十日で二年を迎えるが、沖合移動については依然として具体的な協議に入ることができていない。

 確認書をめぐっては、沖合移動に道筋を付けて仲井真弘多知事の公約の進展をアピールしたい県側の狙いと、二〇一四年の代替施設完成を着実に進めたい政府側の思惑が一致。県議選前の協議会で合意することを目指していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805301300_01.html

 

2008年5月30日(金) 朝刊 29面

米海兵隊が謝罪/協同病院ガラス破壊

 【沖縄】米軍キャンプ・フォスター所属の海兵隊一等兵(19)が、今月二十五日、沖縄市の中部協同病院の窓ガラスを割り、器物損壊容疑で逮捕されたことを受け、一等兵が所属する部隊のマイケル・ジョンソン上級曹長、米海兵隊法務局のアルボータ・デービス法務官らは二十九日、同病院を訪ね、一等兵の行為に謝罪の意を示した。

 同病院の与儀洋和院長、山里昌毅事務長らは米軍の綱紀粛正が機能していないと指摘し「患者や周辺住民から不安の声が上がっており、事件にものすごい憤りを感じる」と抗議。リチャード・ジルマー四軍調整官あての抗議文を手渡し謝罪を求めた。

 ジョンソン上級曹長らは「代表者として事件を起こしたことをおわびしたい」と述べるにとどまった。

 同事件で、同病院を運営する沖縄医療生活協同組合の伊集唯行理事長と県民主医療機関連合会の山田義勝事務局次長、同病院医事課の知念和明さんらは同日、県庁で記者会見し沖縄署に告訴状を提出したことを明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805301300_05.html

 

2008年5月30日(金) 夕刊 7面

野党、来週にも参院提出/日米地位協定改定決議案

 【東京】民主党は三十日までに、「日米地位協定の抜本的改定に関する決議案」を早ければ来週にも野党共同で参院に提出することを決めた。地位協定改定を求める決議案が参院に提出されるのは初めて。

 民主党は二十八日の「次の内閣」で、民主、国民新党の政策担当者がまとめた決議文の素案を正式に承認。野党が多数を占める参院での可決を目指して、他党との最終調整を急ぐ構えだ。

 民主、社民、国民新の三党は三月末、(1)起訴前の身柄引き渡し要請に対する米軍の同意(2)施設返還時の環境汚染浄化は米国の責任―などを柱とした地位協定改定案もまとめている。

 「運用改善」を主張し、改定に消極的な政府への圧力とする狙いのほか、六月八日投開票の県議選をにらみ、早期の提出を目指している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805301700_05.html

 

琉球新報 社説自衛隊派遣中止 中国国民への配慮足りない 2008年5月31日 

 中国の四川大地震被災者に救援物資を輸送するための航空自衛隊輸送機派遣が一転、見送られることになった。過去の歴史など非常に複雑な背景が絡むだけに、これほどすんなりと派遣が決まるものなのかと疑問を抱いていたが、やはり容易ではなかった。政府は、中国国民の日本に対する感情を正確に測っていなかったといえよう。

 自衛隊の派遣は国際緊急援助隊法に基づくものである。同法は1987年に施行されたが、当初は自衛隊参加が認められていなかった。参加が可能になったのは92年の改正以降である。同法に基づく派遣はこれまで9例ある。

 今回の自衛隊機派遣は、人道的支援の観点から見れば、完全に否定できるものではないだろう。地震による死者数は7万人に迫り、いまだに2万人近くの人たちが行方不明のままだ。さらに負傷者は約36万5000人。被災者に至っては4500万人超という未曾有の数に上る。援助の手が届かず、路上で厳しい生活を余儀なくされている人たちは多い。最低限の雨露をしのぐテントも不足しているというのだから、1日も早く支援物資を現地に届けたい。

 重要なのは被災者の援助、この一点である。

 だが今回の顛末(てんまつ)を見ると、政府は「自衛隊による輸送ありき」で動いたように見える。政府は地震の発生直後から中国側に、自衛隊機による救援物資の輸送を打診していた。緊急援助隊の活躍が現地の人々の高い評価を受けると、派遣の働き掛けを強めていった。当初、中国側も前向きだったが、国内のウェブサイトに反対論が多数寄せられ、世論の反発がエスカレートしたため最終局面で受け入れを思いとどまったようである。

 慎重さに欠けていたと、外務省の中からこのような発言が出た。さらに政府内からは「もともと自衛隊ありきではなく、中国が求めたのはテントの供給だった」、与党関係者からは「自衛隊機か民間機かは付随的なことだ」という指摘がある。

 いかに拙速であったか分かる。これまでの両国関係の経過に沿えば、慎重な配慮が必要だった。今回の顛末では「弱みに乗じて」と厳しく批判されかねない。胡錦濤主席の来日で関係改善に踏み出した直後だけに、それを後退させかねない政府の対応のまずさは批判されるべきである。

 政府は、援助物資を民間チャーター機で輸送することになった。最初からそうすれば良かったのだ。

 他国に先駆けて被災地に入った緊急援助隊のひた向きな活動がなぜ現地の人々の胸を打ったのか。そこに助け合いの神髄が見える。緊急を要する人命救助に、政治的打算を働かせるべきではない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132663-storytopic-11.html

シュワブ隊舎来月着工 知事、旧軍飛行場補償「来年度は予算要求」 F35A戦闘機 嘉手納配備13年完了 米ヘリ騒音85デシベル金武議会抗議へ 比女性、消えぬ悪夢/来沖直後、米兵に力ずくで暴行され 普天間に模擬飛行装置/在沖海兵隊8月導入か 知事、代替施設沖合移動、駐米大使に注文など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月22日から27日)

2008年5月22日(木) 夕刊 5面

「普天間」危険性除去を/中部市町村会が決議

 【中部】中部の十市町村でつくる中部市町村会(会長・知念恒男うるま市長)は二十二日、沖縄市内で定例会を開き、米軍普天間飛行場の危険性除去と嘉手納基地から派生する諸問題の解決促進についての要請決議案を全会一致で可決した。

 普天間飛行場に関しては、二〇〇七年八月に場周経路などを定めた報告書を日米両政府が発表した後も、常時住宅地上を旋回していると指摘。米軍が定めたクリアゾーン(土地利用禁止区域)に小学校などが存在しており危険とし、危険性の除去と同飛行場の早期閉鎖・返還を求めている。

 嘉手納基地については、深夜・早朝飛行が改善されず、多くの住民から苦情が寄せられているとして、騒音防止措置の順守と同基地に特化した使用協定の締結、F15戦闘機の即時撤去を求めている。

 あて先は沖縄防衛局長、外務省沖縄大使、在沖米国総領事、県知事、首相など。県内は直接抗議し、県外へは抗議文を送付する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805221700_04.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 27面

性暴力被害の豪女性、見舞金に納得せず

 【東京】二〇〇二年四月に神奈川県で米兵に暴行された四十代のオーストラリア人女性、ジェーンさん=仮名=が二十二日までに防衛省から見舞金三百万円の支払いを受け、同日、都内で会見した。ジェーンさんは「思いが皆に伝わるのに六年もかかったが、私が欲しいのはお金ではなく正義」と涙ながらに語り、加害米兵や米政府の公式な謝罪と慰謝料負担を訴えた。

 その上で「私は絶対に黙らないし、あきらめない」と思いを新たにし、米兵らによる性暴力根絶をあらためて呼び掛けた。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながら、公の場で自らの体験を語り続けてきたジェーンさん。これまでの自主活動による出費も多く、見舞金はほとんど手元に残らない見通しだという。

 防衛省から、見舞金の性格上、裁判で確定した額すべてを支払うのは困難として、価格交渉を提示された経緯も明かし、「私はバーゲンのセール品じゃない」と非難した。

 三月二十三日に北谷町で開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」で登壇し、犯罪根絶を訴えたジェーンさん。会場で、米兵による性暴行被害を受けたことがあるという高齢の女性に「あなたの話で人生をまた始められる」と声を掛けられたことも明かし、連帯の広がりに期待を込めた。

 会見には、被害者遺族でつくる「米軍人・軍属による事件被害者の会」の海老原大祐代表も出席。国会議員らに、米側に賠償責任を負わせる法案の議員立法を求めた。


[ニュース近景遠景]

“肩代わり”犯罪を助長/実態は98%泣き寝入り


 米兵に暴行されたオーストラリア人女性に対する見舞金の問題は、日本政府が賠償金全額を肩代わりする異例の決着となった。民事訴訟で賠償金を命じられた米兵は除隊となり帰国、米側も支払いを拒む中、六年に及ぶ女性の粘り強い行動でようやく補償された「特異なケース」(防衛省)。しかし、被害者の関係者らは、相次ぐ米軍関係の事件・事故の下で大勢が依然として泣き寝入りを余儀なくされている実態を指摘、制度の改善を訴えている。(東京支社・島袋晋作)


政府内に異論


 「私は正義を求めているだけ。レイプした人に責任を取ってほしい」

 二十二日、都内で会見した女性は、被害を立証するためのこれまでの苦労を切々と語り、あくまでも米側の責任を訴えた。

 日米地位協定によると、米軍関係者が公務外に起こした事件・事故は原則、当事者間の示談で解決するが、それが困難な場合、米政府が補償金を支払う。

 賠償は被害の立証が前提となるが、同事件で米兵は不起訴処分となった。このため、女性は損害賠償を求め東京地裁に提訴したものの、訴えが認められた二〇〇四年十一月には、米国内法の時効を過ぎていた。

 防衛省は被害者への補償が困難になった場合に米側に代わって救済する「見舞金制度」を、時効案件で初めて活用。賠償金の全額を補償したのも初だが、石破茂防衛相自身、会見で「国民の税金を使って何だ、という議論もあろう」と述べるなど、政府内にもわだかまりがくすぶっている。


米政府は2割


 防衛省が確認している公務外の事件・事故数は一九九九―二〇〇六年度の八年間で一万二千七十八件。示談が成立せず、米政府から補償金が払われたのはわずか約2%の二百二十九件だ。

 防衛省は「ほとんどが示談で処理されている」とするが、「米軍人・軍属による事件被害者の会」の海老原大祐代表は「示談なんて無理。言葉が違う問題など、大勢が泣き寝入りしている実態がある」と指摘する。

 米政府からの補償金も、「米政府は直接の加害者ではない」という認識から、見舞金的なものでしかなく、海老原代表は「請求額の二割にも満たない低額なのが実態」と訴える。

 被害者の会はこれまで、日本政府がいったん賠償金を払い、米側に全額請求する制度を求めているが、政府は閣議決定した政府答弁書で「法的措置を新たに講じる必要はない」と門前払いの状況だ。

 これに対し、海老原代表は「ちゃんとペナルティーを与えないから事件・事故が減らない。日本政府が肩代わりすることが、米軍に特権意識を植え付け、ひいては事件・事故につながっている」と、米側の責任を強調する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_02.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

シュワブ隊舎 来月着工/普天間移設で沖縄防衛局

 沖縄防衛局の真部朗局長は二十二日の定例会見で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市キャンプ・シュワブ内の下士官宿舎など、新設五棟の工事を六月上旬から着工することを明らかにした。同移設に関する工事着手はこれが初めてとなる。

 五棟は下士官宿舎ほか、倉庫や管理棟、通信機器整備工場、舟艇整備工場。場所は飛行場建設予定地の西側になる。二〇〇九年九月末までに完成する見通し。

 また真部局長は、現在の兵舎十一棟の解体工事を四月から着手したことを説明。七月中には作業を終えるという。

 先月浦添市内の建築現場で見つかり、嘉手納弾薬庫に搬送された化学弾の可能性がある米国製M57迫撃砲弾二十二発の遺棄弾について、真部局長は処理の仕方は「まだ調整中で、新たな情報はない」と述べた。調整に時間を要していることについて「こういうタイプの弾薬は前例がなく、処理手順が確立していない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_05.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

県、調整案を提示/旧軍飛行場問題

 旧軍飛行場用地の補償問題について、同問題解決促進協議会(金城栄一会長)は二十二日、読谷村内で役員会を開いた。県から沖縄特別振興対策調整費で最終的な解決を図るとする説明を受けたとして、「調整費とは別枠」と協議会の考えと乖離していると主張。来週にも仲井真弘多知事に受け入れられない意向を伝えることを確認した。一方、県の上原昭知事公室長は「(対応は)どうなるかまだ分からないし、決まっていない」と述べ、県の調整案は固まっていないとしている。

 金城会長によると、県は同協議会傘下の複数の地主会に対し、沖縄特別振興対策調整費のうち、約十億円で対応する意向を示しているという。内閣府は県に、各地主会の要望をまとめ一括で最終決着とする考えを提起している、とされる。

 金城会長は「旧軍問題の六十三年の重みを県自身が知らな過ぎる。妥協案でお茶を濁してほしくない」と主張。「政治的な決定が重要なので、知事に直接会って、協議会との議論を深めてもらうよう求めたい」と説明した。

 一方、県は二〇〇九年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めているが、詳細については未決定としており、食い違っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_06.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

メア総領事「米軍は今後も駐留」

 在沖米国総領事館のケビン・メア総領事は二十二日、嘉手納基地の将校クラブで日米同盟などについて講演し、「在沖米海兵隊八千人のグアム移転を、沖縄から米軍が撤退するスタートととらえる考えは明らかに誤解だ。米軍は今後も沖縄に駐留し続ける」と述べた。

 米国務省に招かれた韓国の新聞、放送、雑誌の論説委員ら約二十人が二十二、二十三の両日、沖縄の米軍基地などを視察。総領事の講演はプログラムの一環。

 メア総領事は一九九一年の湾岸戦争を皮切りに、日本の防衛政策が劇的に変化したと指摘。「日米同盟は日本だけでなく、朝鮮半島など地域全体を包括している。ミサイル防衛(MD)や施設の共同使用が進んでいるが、日本の専守防衛は変わらない」と説明。同盟を維持する手段として「地元の負担軽減が大事で人口過密地域の基地を再統合する必要がある」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_07.html

 

2008年5月23日(金) 朝刊 2面

町「方向性変わらず」/ギンバル跡地計画

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場の跡地に、米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)で整備が計画されている医療施設について二十二日、同町並里区の協議会が開かれ、町側に対し、計画の説明を求めた。伊芸達博副町長は「(計画案には)これまでがん検診、治療が出ていたが、(一般的な)住民健診をする必要もある。(計画の)配置は換わるが、規模や方向性に変わりはない」と説明した。

 町は当初「他地域にはない先端のがん検診・治療が可能な医療センター」を計画の核として打ち出していた。基本構想の策定から約八年が経過し、医療機器の更新や住民ニーズの変化などを受け、がん施設の内容変更も含め、検討するという。

 特定健康診査制度の導入などを受け、がんの施設と併せて、一般的な健診センターを備えた施設を整備する案が出ている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231300_08.html

 

2008年5月23日(金) 夕刊 7面

対馬丸乗員の証言 本に/埼玉在 中島さんの体験軸に

 【東京】一九四四年八月、米潜水艦に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の元乗組員の証言などを基にした「満天の星 対馬丸真実の証言」(対馬丸事件取材班編、文芸社、定価千五百円)が六月上旬に刊行される。乳児を含む八人がいかだの上で生死の境をさまよい、救助されるまでの克明な様子や、別の生存者のその後などが描かれている。証言した元乗組員の中島高男さん(81)=埼玉県=は「最近は命が粗末にされる事件が多過ぎる。対馬丸事件を通して若い人たちが命の大切さを感じ取ってほしい」と話している。(稲嶺幸弘)

 同書は、中島さんと親交のある都内の会社経営、田中健さんが「対馬丸の悲劇」を後世に伝えようと発刊を思い立った。会社スタッフで取材班を編成。中島さんの体験談を中心に、対馬丸の護衛艦に乗船していた元海軍兵らからも聞き取りをしてまとめた。

 撃沈された対馬丸から投げ出された中島さんらは、いかだをつないで漂流。中島さんのほか、年配の男性、女子学生、男子二人、別の船員、乳児をおぶった女性の計八人は、三日三晩の漂流の末、海軍の巡視艇に運よく救助された。

 「睡魔に勝てず、女子学生がいかだから海に落ち、夢中で救い上げたこともあった。『眠らないで』と励ましながら救助を待った」と中島さん。漂流時に見上げた夜空には数え切れないほどの星が光っていたといい、本のタイトル「満天の星」はそこから付いた。

 中島さんの体験は、二十四年前の八四年、本紙で初めて紹介された。記事がきっかけで、中島さんは、漂流時に一歳だった沖縄県在住の女性と対面。以来、家族ぐるみの交流が続いているという。

 同書の発刊を企画した田中さんは「中島さんの体験を本にすれば、多くの人の心に平和の尊さがしみ込んでいくと確信している。ぜひ多くの人に読んでほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231700_01.html

 

2008年5月23日(金) 夕刊 1面

知事「来年度は予算要求」/旧軍飛行場補償

 仲井真弘多知事は二十三日の定例記者会見で、旧軍飛行場用地の補償問題について「来年度は予算としてちゃんと要求したいと固い決意をしている」と述べ、二〇〇九年度概算要求に盛り込む方針を示した。

 同問題解決促進協議会(金城栄一会長)は、沖縄特別振興対策調整費での解決について「調整費とは別枠」を求め、来週にも県に要請する方針を示している。仲井真知事は「本当は別枠がいいが、特別調整費か一般財源かはどちらでもいい」とし、予算の種別にはこだわらない姿勢を示した。

 有村産業の更生計画変更問題については「経営者や債権者の姿勢が第一。(二十三日の)関係人集会の結果を見て、どこまで応援できるか決めたい」と述べた。具体的支援策については「出資の形で自治体が関係するのはあり得ないことではない。あくまでも額による」と含みを残した。

 嘉手納基地所属F15戦闘機などの未明・早朝離陸については「飛行プラン見直しによる騒音軽減の余地は十分ある。米軍がその努力を最大限払うべきだ」との認識を示し、今後も米軍や日米両政府に騒音軽減を要請していく考えを示した。

 北谷町で万引した海兵隊員の息子を憲兵隊員が基地内に連れ帰った問題では、「身柄は警察官に引き渡すなど、日本の法律により所定の手続きが行われるべきだ」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805231700_02.html

 

2008年5月24日(土) 朝刊 2面

F35A戦闘機 嘉手納配備13年完了/太平洋軍司令官が意向

 米空軍が検討している次期攻撃戦闘機F35Aの米軍嘉手納基地への配備について、早ければ二〇一三年までに完了したい意向を示していることが二十三日までに分かった。ハワイの地元紙ホノルルアドバタイザーが二十二日、米太平洋空軍司令官のキャロル・チャンドラー大将の話として報じた。

 同紙によると、チャンドラー大将は、嘉手納基地所属のF15戦闘機二個中隊(四十八機)に代わって、F35の二個飛行中隊を配備したい考えを示したという。

 同大将は西太平洋において、日本は米国との関係で、「要石」と表現。「近い将来のどんな時においても嘉手納から退くことはないとみている」と述べた。中国に対して、潜在的な誤解を生みださないよう、太平洋軍は中国に関与する努力を続けていく、と説明している。

 米空軍は〇六年、F35Aの最初の配備先の中で、海外では唯一、嘉手納基地を検討していると発表。二個中隊五十四機を十年以内に配備する見通しを示していた。配備前に環境調査を実施し、配備先としての適正を判断する計画で、調査は二年を要するとみられている。F35Aは〇九年に試験飛行を開始。二五年にかけて配備が完了する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241300_05.html

 

2008年5月24日(土) 朝刊 2面

米ヘリ騒音85デシベル金武議会抗議へ/住宅地の低空飛行で

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン内のレンジ4都市型訓練施設周辺の民間地域で二十二日、低空飛行していた米軍ヘリの騒音が85・5デシベルに上ったことが、町役場の測定で分かった。二十三日開かれた金武町議会の米軍基地問題対策調査特別委員会(知名達也委員長)で、町が報告した。

 レンジ4に隣接する伊芸区を中心とする住宅地上空の低空飛行は、二十日から三日間続き、同委員会は、飛行中止などを求める「民間地域における米軍ヘリ演習に対する抗議決議」を、二十七日開かれる臨時議会に提出することを決めた。

 町によると、米軍ヘリ数機がレンジ4のヘリパッドで離着陸し、住宅地上空を旋回。これまで、米軍ヘリが住宅地上空を低空飛行することはあったが、レンジ4で離着陸することは初めてという。昼と夜、それぞれ二時間にわたり、旋回が続いた。テレビが正常に映らない電波障害が生じた民家もあるという。

 伊芸区在住の仲間昌信議員は「夜間に無灯火で飛ぶ米軍機は本当に恐ろしい。生活に影響が出ている。固定化につながらないよう、しかるべき抗議をしなければならない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241300_06.html

 

2008年5月24日(土) 朝刊 29面

「普天間」で火事騒動/米軍、訓練日を誤通告

 【宜野湾】米軍普天間飛行場内で行われた消火訓練日程について、米軍が宜野湾市に誤って事前通告し、予定とは異なる日に行われていたことが二十三日、分かった。通告日と異なる二十二日午前四時半ごろ同飛行場内で訓練があり、周辺住民から市消防本部に「飛行場で火災が起きている」との通報があった。

 市によると、米軍は当初訓練日程を二十、二十一日と通告していたが、実際は二十一、二十二の二日間だった。市は米軍に確認を取った上で、誤った情報を通告しないよう口頭で申し入れた。市によると、同飛行場での消火訓練は年に数回行われ、今年四月にもあった。二十一日には滑走路北側で約三十分間訓練が行われ、炎と黒煙が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241300_09.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月24日朝刊)

[防衛利権]

疑惑解明が残っている


 前防衛事務次官守屋武昌被告の汚職事件で、参院外交防衛委員会は、贈賄罪などで公判中の防衛商社「山田洋行」元専務宮崎元伸被告を証人喚問した。

 宮崎被告は福岡県・苅田港の旧日本軍毒ガス兵器処理事業に絡み、防衛関連団体「日米平和・文化交流協会」(東京)側へ約一億円提供したことを認めた。

 同協会の専務理事は秋山直紀氏である。同氏は与野党議員や米政府高官、日米防衛産業に深い人脈を持つとされる人物だ。

 宮崎被告は、秋山氏に「漁協や暴力団対策など現地対策費」を要求され出したと証言した。

 さらに秋山氏が顧問の米国「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」などに二〇〇三年から四年間にわたって、年約十万ドル(約一千万円)のコンサルタント料を払っていたと認めた。

 宮崎被告は政治家との関係にも言及した。オーナー側と対立し山田洋行を去った後の〇六年十二月、久間章生元防衛相、秋山氏と会食。久間氏がオーナー側寄りの発言をしたことに「不信感を持った」と述べている。

 久間氏は当時、現職の大臣である。疑惑はいっそう深まったといっていいのではないか。久間氏は国会の場で疑惑を名指しされたわけで、自身の関与の有無を説明する責任がある。

 防衛利権に関連して月刊誌「論座」六月号の座談会で、興味深い発言が見られる。元防衛施設庁長官と元海上幕僚長が業者による水増し要求や装備品の選定に政治家が絡み、業者の支援を受けて国会議員を続けている人がいるというのだ。いずれも内部のトップの発言だけに無視できない。

 防衛省は一連の不祥事を受けて、首相官邸の「防衛省改革に関する有識者会議」に改革案を提出した。だが、組織再編を優先しただけで、会議設置のきっかけとなった汚職事件の再発防止策には踏み込んでいない。

 改革案は、汚職事件などの背景に、内局と幕僚監部の権限の不明確さや業務の重複があると指摘。その上で文民統制(シビリアンコントロール)を担う防衛相の補佐機能を強化し「実効的な部隊運用ができる体制構築」を強調しているが、これに対して委員から批判が相次いだという。

 文民統制を担う政治家に疑惑の目が向けられているのに、その点が解明されないまま、いくら組織をいじっても信頼回復にはつながらないというのが正直なところではないか。

 野党側が宮崎元専務の意向に反して喚問の撮影を決めたため、自民、公明の与党議員は委員会を欠席した。

 疑惑解明のための証人喚問なのに撮影をめぐる見解の違いで欠席するのは、真相究明の意志が本当にあるのかどうか疑わしくなる。

 逆に、防衛利権をめぐる政界の関与を追及すれば、身内に累が及ぶかもしれないと恐れたのではないか。そう思いたくなる。

 防衛省の焦点のずれた改革案と与党の欠席。政官とも本気で改革する意欲があるのか、自ら疑問符を付ける行為というしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080524.html#no_1

 

2008年5月24日(土) 夕刊 5面

米兵暴行に抗議デモ/フィリピン人60人連帯

 【読谷】今年二月に沖縄市内でフィリピン人女性に暴行した容疑で米兵が書類送検され、不起訴処分となった事件を受け、県内在住のフィリピン人ら約六十人が二十四日午前、読谷村の米軍基地周辺などを行進し、事件の再発防止などを呼び掛けた。

 被害を訴えている女性も参加し、「真実をみんなに伝えるために来た。うそはついてない」と涙ながらに心情を語った。

 行進は、事件に抗議し、同様の不祥事が起こらないことを願って、読谷カトリック教会のロメス・クルス神父が中心となって呼び掛けた。

 米軍のトリイステーション周辺でミサ曲を歌いながら歩き、基地前で全員が祈りをささげた。被害女性が感謝の言葉を伝えると、すすり泣く参加者も。

 クルス神父は「来週にも軍の中で調査が始まると聞いている。公正な事実に基づいて判断を下してほしい」と語った。県内に在住して十七年になるという女性は「彼女の気持ちは痛いほど分かる。再発防止には(米国との)相互理解が必要だ」と涙ながらに語った。

 事件は今年二月に沖縄市内のホテルで発生。在沖米陸軍・地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊所属の兵士がフィリピン人女性を暴行し、全治約三週間のけがをさせた疑いが持たれている。

 沖縄署は米兵を強姦致傷の容疑で書類送検したが、那覇地検が強姦罪成立の要件となる暴行や脅迫の有無について嫌疑が不十分として不起訴処分にしている。


「事実知って」心痛める被害者


 【読谷】「事実を知ってほしい」。読谷村でのデモ行進を前に二十四日午前、米兵から暴行を受けたフィリピン人の被害女性は、沖縄タイムス社の取材に応じ、涙ながらに当時の様子と現在の心境を語った。六人姉妹の長女として家計を助けるため沖縄に働きに来た。「事実を広く伝えたい」と米兵に何らかの処分が下されるまで、沖縄に滞在する予定だ。

 女性は事件後、一週間入院し、現在、本島南部の教会で暮らす。睡眠薬を服用し、精神的につらい日々を過ごしているという。「日本では、この事件を隠そうとしている。私自身についていろいろなうわさが出ているようだが、私は悪くなかったと真実を広く知ってほしい」と訴えた。

 下腹部に残る傷の診断書を二十三日に病院から受け取っており、検察と米軍の双方に提出して自らの主張を訴え、再捜査を求めるつもりだ。

女性への暴行などの事件が起こらないよう訴えるフィリピン人ら=24日午前9時50分、読谷村・トリイステーション前

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805241700_01.html

 

2008年5月25日(日) 朝刊 23面

「無言館」講演/河田早大講師・戦争画読み解く

 近代美術史における戦争画の在り方について考える講演「画家と戦争」(主催・沖縄文化の杜)が二十四日、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館講堂であり、早稲田大学非常勤講師の河田明久氏が「戦争画は絵の種類ではなく、社会的文脈によって成立するもの」と強調した。

 同館で開催中の「情熱と戦争の狭間で―無言館・沖縄・画家たちの表現」展の関連イベント。

 河田氏は戦争と美術との関係を考える際の時期区分を、日中戦争期と太平洋戦争期の二期に大別し、双方の置かれた性格の違いを指摘。

 日中戦争期には戦争の大義や理念があいまいで、西洋古典絵画風の歴史物語的な作品を描くことが困難だったが、太平洋戦争期にはその大義が「大東亜」対米・英・蘭との構図で際立ち、演出的な「戦争画」が出現したと解説した。

 その上で「一枚の絵がどう機能しているかを見ることが大切。『戦争画』は立派な絵や悲しい絵など(内容的な評価)とは別に社会的文脈で機能しているものではないか」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805251300_02.html

 

2008年5月25日(日) 朝刊 23面

比女性、消えぬ悪夢/来沖直後 米兵に力ずくで暴行され

 何度拒んでも、力ずくで迫って来る大きな米兵。必死でトイレに逃げ込んだ。暴行された体を洗った浴槽は出血で染まり、いまも入浴時には忌まわしい記憶がよみがえる。フィリピンののどかな地方から沖縄に来て数日目の夜。「怖かった」。あの日以来、睡眠薬が手放せない。(鈴木実、比屋根麻里乃)

 二月に沖縄市で起きたとされるフィリピン人女性(21)への強姦致傷容疑事件。那覇地検は嫌疑不十分で米兵容疑者を不起訴としたが、この女性は「うそではない。事実を知ってほしい」と訴える。二十四日に読谷村内であった支援者集会にも参加した。

 女性によると、事件が起きた夜、同僚のフィリピン人や米兵ら計十数人で飲食店に行った。いったんいくつかのグループに分かれてカラオケなどをした後、待ち合わせのホテルに集まった。ほかの女性たちとアパートに帰るものと思っていたが、ホテルに泊まると聞き、嫌な予感がした。

 ほかの人たちは一つの部屋に入ったが、米兵と女性は別の部屋に泊まることになり、フィリピン人仲間に電話した。「そっちに泊まらせて」「もういっぱい」。沖縄に来たばかりで帰る手段も分からず、仕方なく服のままベッドに入った。「あと少しで夜が明けるから大丈夫。米兵がそんなことするはずがない」。だが、予想は裏切られた。

 翌朝、血で汚れた服の代わりに、米兵から男物の服を渡された。だぶだぶの服を着たままタクシーで帰宅しようとしたが、場所が分からずホテルに戻った。力尽き、ロビーのソファに倒れこんだ。そのまま一週間入院。「大量出血で命の危険もあった」。県警の捜査員は打ち明ける。

 女性は興行ビザで入国した。二年前にフィリピンで双子の妹がトラックにはねられ、腰の辺りにはいまも金属が埋まったまま。六人姉妹の長女として、再手術の費用を稼ごうと海を渡ったという。

 「偏見もあるかもしれない。でも事実を明らかにするまで戦いたい」。人前に出ることは恥ずかしかったが、「多くの支援に勇気をもらった」と話す。

 あなたが求めているのは何? 補償?。こう尋ねると、赤く腫らした目を上げて答えた。「正義(JUSTICE)です」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805251300_04.html

 

2008年5月25日(日) 朝刊 22面

相次ぐ米兵暴行事件受け・北谷町PTAが安全マップ作製

 【北谷】暴行事件など相次ぐ米軍人による事件を受け、北谷町PTA連合会(仲地泰夫会長)生活指導委員会は、同町全域の安全マップを作製した。二十四日にちゃたんニライセンターで開かれた同会定期総会で完成を報告。二百三十部作り、町内の学校や自治会、児童館などに配布する。

 仲地会長は「学校区別では安全マップは作られていたが、町全域を示したものは初めて。学校で教師と生徒の対話に活用し、危険回避につなげてほしい」と意義を強調した。

 安全マップには、町内二十七カ所の危険個所が明記。砂辺馬場公園は「夜は明かりが少なく飲酒や騒いでいる人が多い」、北前第三公園は「公園が目立たず人通りが少ない」などと地図上に注意事項が分かりやすく書かれている。

 野国昌春町長は安全マップの完成に「学校や自治体が活用することで子供たちが危険を認識できる」と感謝した。

 町内の小中学校では、各校のPTAが防犯パトロールを実施している。事件後あらためて危険個所を把握しようと二月に町内全域を巡回。人通りの少ない公園などを調査。予算がなく資料化が遅れたが、琉球銀行の助成で完成した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805251300_06.html

 

2008年5月26日(月) 朝刊 1面

普天間に模擬飛行装置/在沖海兵隊8月導入か

 在沖米海兵隊は、普天間飛行場に配備されている空中給油機KC130J用にシミュレーター(模擬飛行装置)を導入し、早ければ八月から運用する計画があることを、二十五日までに明らかにした。

 同飛行場所属の第一五二海兵空中給油中隊が運用する予定。訓練官は「実機の飛行時間を著しく減らすことができる」としている。しかし、同中隊はこれまでシミュレーター訓練を米本国で行い、「導入でパイロットが米本国に帰還する必要がなくなる」とも説明しており、飛行時間削減につながるかは不明だ。

 海兵隊によると、同装置は米フロリダ州タンパで製造され、普天間飛行場に今月十九日、飛来したロシア製超大型輸送機アントノフが輸送した。世界に九基のみで、海兵隊は米ノースカロライナ州のチェリーポイント基地、カリフォルニア州ミラマー基地に次いで普天間に配備する。乗員は同装置を使い、天候や地形などさまざまな条件を想定して訓練するという。

 普天間飛行場配備の空中給油機KC130について海兵隊は昨年六月、十二機のうち九機を二〇〇八年末までに新型のJ型に更新すると発表している。


訓練減少を期待


 伊波洋一宜野湾市長の話 シミュレーター導入は、市が訴えてきた危険性除去に軍が敏感になっているととらえることもできる。飛行訓練減少を期待し、データを分析したい。ただ、飛行場での訓練はKC130だけでなく、危険性除去の大きな解決にはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805261300_02.html

 

2008年5月26日(月) 朝刊 21面

闘争貫徹誓う 辺野古座り込み1500日

 【名護】名護市辺野古沖への米軍普天間飛行場代替施設建設に反対する住民らが座り込みを続けて27日で1500日目になるのを前に25日、「5・25現地座り込み1500日集会」(主催・ヘリ基地反対協議会)が開かれた。県内外から約300人(主催者発表)が参加。「闘争を貫徹しよう」などと運動継続を誓った。

「移設反対」集会で気炎


 主催したヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「基地移転はこう着状態というのが現状だが、日米政府のさや当てに一喜一憂することなく、基地建設を止めるため、皆さんとともに勝利を勝ち取るまで闘っていく」とあいさつ。また韓国で二〇〇五年に撤去された米軍梅香里射爆場の反対運動を率いたチョン・マンギュさんら平和運動家四人からの応援メッセージ、活動報告などがあった。

 糸満市から来た福永貢介さん(36)は妻の恭子さん(35)、長女の梢子ちゃん(2)と友人ら五人で参加した。「沖縄の自然が好きで二年前に移住してきた。ジュゴンやアオサンゴの豊かな海が壊されると聞き心苦しい。反対運動にはなかなか参加できないが、節目のイベントなので駆け付けた」と話した。読谷村で医療関係の仕事に携わる比嘉義信さん(53)は「政府は後期高齢者医療制度で高齢者に負担を強いながら、巨額の税金を米軍基地建設につぎ込むのはおかしい。こんなきれいな海に新基地建設なんて絶対許せない」と声を上げた。


国への怒り島唄に込め 金城さん


 集会では、同市瀬嵩の金城繁さん(74)が三線を手に移設反対の歌を熱唱した。

 「しかさりんなよー ウチナーンチュ」(だまされるなよ沖縄の人)「ちゅくらちぇならんど ヘリ基地や」(造らせてはいけないヘリ基地を)…。島唄の替え歌に辺野古の海の美しさや、基地建設への抗議を込める。

 金城さんは「モズクを採ったり海水浴したり、この海とともに育った」。父親に十代で三線を習い、沖縄芝居の劇団で地謡を務めたことも。

 南大東島の空港建設作業員をしていた三十二歳の時、事故で右のひじから先を失ったが、三線を手放すことはなかった。ライブでは歯を折り取ったくしを右腕の先に縛り付け、弦をたたいた。

 座り込みにも参加し、移設に反対しつつ死去した知人が作詞した「ならんさヘリ基地の唄」では「金(じん)にふりんな」(金に振れるな)と歌声に力を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805261300_05.html

 

2008年5月27日(火) 朝刊 22面

「慰霊絶やさぬ」決意/サイパンで県人追悼式

 太平洋戦争時に南洋群島で亡くなった県出身者と戦前の開拓殉難者らを供養する第三十九回追悼式が二十六日、サイパン島マッピー岬の「おきなわの塔」で営まれた。県内からの墓参団や現地関係者など約二百三十人が参列し、献花や焼香をささげた。

 今年は南洋群島帰還者会の高齢化などで、県内の墓参団が初めて百人を割った。一方、先祖の在りし日をたどろうとする若者もいて、同会理事の宜野座朝美さん(68)は「先輩たちの苦労に報いるためにも、慰霊の旅を絶やさないよう頑張りたい」と語った。

 終戦時、サイパン高等女学校の四年生だった宮里千枝子さん(79)=ペルー在住=は二〇〇二年から七年連続で参加。祖父母やいとこ、女学校の同級生ら多数の親類や友人を亡くした戦争を振り返り、「サイパンは少女時代の思い出が詰まった場所。生き残った者として、足腰の立つ間は参加し続けたい」と力を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271300_06.html

 

2008年5月27日(火) 朝刊 23面

防衛局に解決要請/基地パワハラ

 米軍基地で働く日本人従業員のパワーハラスメント被害が相次いでいるとして、上司を訴えた元従業員の安村司さんや現職従業員ら九人が二十六日、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、パワハラ防止のため第三者機関の設置と、被害を受けて自主退職した元従業員の復職を要請した。従業員らは県庁を訪れ、協力を求めた。安村さんらによると、真部局長は対応策を検討する意向を示したという。

 安村さんは、自身が受けた被害や米軍の苦情処理機関が機能していない実態を訴えた。同行した、安次富修衆院議員は基地を提供する日本政府の責任で解決するよう求めた。

 真部局長は、米軍に実情を問い合わせ、事実関係を調査した上で「何ができるか考えたい」と回答。またパワハラ問題について「一義的に米軍の問題という認識ではなく、防衛局としても相談に応じていく」と述べたという。

 安村さんは「真摯に受け止めてくれたことを感謝したい。多くの被害者を救済する第一歩になったと思う」と話した。

 県庁では仲田秀光観光商工部長が応対し、実情を把握し協力する姿勢を示したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271300_10.html

 

2008年5月27日(火) 夕刊 1面

知事、駐米大使に注文/代替施設沖合移動

 藤崎一郎駐米大使は二十七日午前、県庁で仲井真弘多知事と懇談し、基地問題などで意見を交換した。仲井真知事は普天間飛行場の移設問題について「基本的に(日米両政府の)合意は受け入れているが、微調整を念頭に進めている」と、滑走路の沖合移動の必要性に言及。藤崎大使は「できるだけ移設が早く実現するよう相談していきたい」と述べるにとどまったという。

 冒頭以外は非公開で行われた。知事は相次ぐ米軍関係者の事件・事故への対応策について、秋ごろ予定している自身の訪米で国務省や国防総省、米議会の関係者に要請する意向を示し、藤崎大使に調整役を依頼した。

 三十一日に着任する藤崎大使は、一九九五年から在米日本大使館で政務担当の公使、九九年から外務省の北米局長を務めた。

 藤崎大使は「基地問題の県民への影響、負担は承知している。引き続き県民の心を念頭に置き、沖縄の問題がどういう意味を持っているかを米側に伝え、必要に応じ協議していきたい」と抱負を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271700_03.html

 

2008年5月27日(火) 夕刊 5面

米ヘリ宅地飛行に抗議/金武町長伊芸区長

 金武町伊芸区の住宅地上空で今月二十日から二十二日にかけ、米軍ヘリが深夜まで飛行した問題で、儀武剛町長と池原政文区長は二十七日午前、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、抗議するとともに、住宅地上空での米軍ヘリ訓練の廃止を要求した。

 儀武町長は、町職員が撮影した写真を調べた結果などから、米空軍のヘリが伊芸区全体を周回したことを明らかにし、「日米地位協定で施設間移動は認められているが、空軍の演習はおかしいのではないか」と指摘。5・15メモなど過去の日米合意の記録も含めて調査し、正式文書で回答するよう要求した。米軍側から町への通報に「ヘリ訓練」と触れられてなかったことを挙げ、通報体制も問いただすよう求めた。

 池原区長は、レンジ4の暫定ヘリパッドでの離着陸により、深夜でも八〇デシベル以上の騒音が相次ぎ、夜間の無灯火飛行や暫定ヘリパッドでは消火訓練以外は行わないとの約束が守られていないなどと批判。「戦場さながらの訓練で住民は悲鳴を上げている。日本政府が毅然と対応しなければ、米軍の訓練はますます拡大していく」と危機感を表明した。

 真部局長は「夜間の住宅地上空訓練は、あまり前例がない。日米合意の案件を含め、要請にしっかり回答できるよう誠意を持って対応したい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805271700_05.html

未来開け思い合流、5・15平和行進・県民大会 神奈川・米兵暴行、政府、豪女性に見舞金 沖国大ヘリ墜落、国に文書提示命令 など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月18日から21日)

2008年5月18日(日) 朝刊 1・23面

基地爆音を糾弾怒りのこぶし/5・15平和行進 きょう合流

 【嘉手納】日本復帰三十六年目の現実を問う「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)の参加者は十七日午後、北谷町の砂辺馬場公園で「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開いた。東西両コースを歩いた県内外の参加者が、日米地位協定の全面改定や米軍人による事件・事故の再発防止などを訴えた。

 主催者を代表して大浜敏夫沖教組委員長は「殺人訓練をする米兵が街を出歩くことは、子どもを預かる教職員として不安だ。日米の壁は厚いが、平和を築くために頑張ろう」とあいさつ。開催地の野国昌春北谷町長は、五月の連休初日にF15戦闘機が未明離陸したことを挙げ「この状況を全国に伝えてほしい」と軍事優先の現実を訴えた。

 読谷村役場から会場まで歩いた西コースの酒井幸久本土代表団長は「私たちにはゆるぎない団結がある。十八日の行進で、基地は要らないと声を上げよう」と話した。

 5・15平和行進は十八日、東コースが沖縄市の県企業局コザ庁舎、西コースが北谷町役場、南コースが浦添市役所を出発。午後三時から宜野湾海浜公園で行われる「平和とくらしを守る県民大会」に合流する。


     ◇     ◇     ◇     

平和アピール東西で連帯


 【北谷】北谷町の公園で十七日開かれた嘉手納基地の機能強化と爆音被害への抗議集会。「基地の街だと実感した」「平和な沖縄を残したい」。平和行進東西両コースの参加者約千三百人が集まり、平和への思いを共有した。

 友人から話を聞いて参加した森重明子さん(31)=山口県宇部市=は、過去の沖縄旅行では経験しなかった米軍機の騒音に驚いた。「騒音が毎日かと考えると深刻だと思う。同じ米軍基地を抱える県民として、平和を伝えたい」と話した。

 二歳の娘と歩いた消防職員、小渕努さん(30)=読谷村=は二度目の参加。「米軍絡みの事件・事故のニュースを耳にするたび、子どもたちに平和な沖縄を残したいという気持ちで歩いた」と振り返った。

 韓国から初来沖した金昌坤さん(43)は「米軍が起こす強盗や暴行事件など、韓国で基地を抱える地域と沖縄の悩みは同じ。平和を強く望む沖縄の人と連帯していきたい」と話した。

 毎年、参加者を出迎えている北谷町砂辺区老人クラブの与儀正仁会長(74)は「基地外居住の米兵の騒ぎや、米軍機の騒音など地元だけで訴えても解決できない問題が多い。県内外の若者が参加し、基地問題に理解を深めることはありがたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_03.html

 

2008年5月18日(日) 朝刊 22面

戦死の画学生ら濃密な関係描く/「無言館」窪島館主が講演

 戦没画学生の作品や資料を展示している「無言館」(長野県上田市)の窪島誠一郎館主が十七日、那覇市の県立博物館・美術館で講演し、同館をスタートさせるまでの経緯について説明。「学生たちは人と人の濃密なつながりを描いた。人は他者の命に向かって何かを伝えるために生きている」と強調した。

 県立博物館・美術館で同日開幕した沖縄タイムス社創刊六十周年企画「情熱と戦争の狭間で」(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館、共催・沖縄タイムス社)の関連イベント。

 窪島館主は、戦争体験者で洋画家の野見山暁治さんと出会い、野見山さんとともに戦死した画学生の作品の所在を調べ、全国の遺族を訪ね歩いた経験を紹介した。

 その上で「画学生は『反戦平和』のためではなく、自らの愛する人を描いた。人の命は他の人によって支えられている」と強調。今回の展示で、画学生の作品と戦後沖縄の作家の作品が同時に展示されていることに触れ、「画学生の絵の真摯さに対し、戦後を生き延びた作家のつらさや大変さを感じた」と感想を述べた。

 同企画展は、十八日午前十一時―正午に教員対象の美術講座(要申し込み)、同午後一―二時に粟国久直さんのギャラリートーク(チケット入場者のみ)が行われる。企画展は六月二十九日まで。問い合わせは同館、電話098(941)8200。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_08.html

 

2008年5月18日(日) 朝刊 22面

アイヌ儀式で供養/糸満・南北の塔 戦死者に哀悼

 【糸満】沖縄戦に動員され戦死したアイヌ民族の日本兵らを追悼するアイヌの儀式「イチャルパ」が十七日、糸満市真栄平の南北の塔前の広場で行われた。北海道旭川市から参加した川村シンリツ・エオリパック・アイヌさん(川村アイヌ民族記念館長)ら県内外の五十人が、火の神に酒をささげ、アイヌの言葉でみ霊を慰めた。

 供養祭はアイヌ民族と連帯する沖縄の会(まよなかしんや代表)が主催。毎年、5・15平和活動の一環として行っており、今年で九回目。

 まよなかさんは「日本の先住民族であるアイヌと琉球民族が一緒になって、日本に住むすべての人々の権利が保障される社会をつくっていこう」と呼び掛けていた。

 川村さんは「アイヌの戦没者を沖縄の方々が祭っていただき大変ありがたい。これからも毎年、続けていきたい」と話していた。

 南北の塔は一九六六年、真栄平区とアイヌの元兵士らによって建立された。沖縄戦で亡くなった、北海道から沖縄までのすべての人々を祭っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_09.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 1面

平和を切望 雲突く声 5・15平和行進・県民大会

 本土復帰三十六年「5・15平和行進」を締めくくる県民大会(主催・同実行委)が十八日、宜野湾市の宜野湾海浜公園屋外劇場で開かれ、米軍再編に伴う基地の拡大・強化に反対し、日米地位協定の抜本的改正を求めるアピールを採択した。約四千人(主催者発表)が参加した。平和行進は三日間の日程を終了。県外からの二千人を含む約七千人が米軍基地周辺や沖縄戦跡を巡り、県内と全国、海外の市民が連帯し平和を発信することを誓った。

 曇り空の下、大会には行進を終えた労組や平和団体関係者が集結。それぞれの旗や「基地の押し付けは許さない」などの横断幕を掲げ、熱気に包まれた。

 主催者を代表して崎山嗣幸沖縄平和運動センター議長が「軍事基地の島から脱却し平和の島にするために、大きな運動を前進させていきたい」とあいさつ。開催地の伊波洋一宜野湾市長は「沖縄から基地をなくし、全国への拡散を阻止することを誓い合いたい」と呼び掛けた。

 県選出国会議員や政党代表、県外、韓国の平和団体代表らが次々に登壇。県内や全国で相次ぐ米兵による事件・事故や、日米両政府の軍事・基地政策を強く批判し、教科書検定問題や憲法改正の動きなどに懸念を表明した。

 大会アピールでは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設や北部の基地機能強化、嘉手納基地や普天間飛行場の爆音などで「住民生活は破壊の危機に瀕しており、県民の怒りは頂点に達している」と指摘。基地の拡大強化を阻止し、日米地位協定の改正を強く求めることを確認した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_01.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 19面

未来開け思い合流/5・15県民大会

 米軍基地周辺を歩き、沖縄戦跡を巡った「5・15平和行進」。参加した七千人は、それぞれの立場で感じ、考え、意見を交わした。頻発する米兵の事件・事故、騒音などの基地被害に日常的にさらされている地域住民。県外や韓国から駆け付けた市民グループ。自衛隊のイラク派遣反対活動を続ける元自衛官。十八日の県民大会で、肩を組んで歌い、共にこぶしを突き上げ、平和を願う思いでつながった。

 米兵犯罪が相次ぐ沖縄市から参加した福山初子さん(61)は「タクシー強盗に暴行事件。復帰前と現状は変わっていない」と語気を強めた。一九七〇年、息子を身ごもっていた福山さんはコザ騒動を目の当たりにした。「おなかの子が大人になるころには平和になってほしい」と願ったが、米兵の犯罪はなくならない。「基地ある限り沖縄は平和にならない。行進の中で、県外の参加者とシュプレヒコールもやった。多くの人が理解を深めれば、基地問題はきっと解決できる」と期待した。

 宜野湾市職員、福本司さん(34)は七度目の参加。各地の参加者に普天間飛行場の基地被害を説明し、語り合った。「県外から多くの若者が参加していた。地元の若い人にも活動する意味を伝えていきたい」と話した。

 神奈川県から初参加した公務員の府川保さん(43)は「最初は、沖縄と米軍基地が融和しているように見えた」という。だが歩き続ける中で、錯覚だと気付いた。「基地が巨大過ぎて、感覚がまひしてしまう。でも、ここは日本なんだ、と思った瞬間、ぞっとした」

 神奈川でも基地の機能強化が進み、痛ましい事件も起こった。「沖縄と一緒に声を上げていく必要性を実感した」と力を込めた。

 韓国の社会派バンド「希望の歌コッタジ」。同国の平澤(ピョンテク)市でも、米軍再編による農地の強制接収や新基地建設が進む。メンバーのチョ・ソンイルさんは「政府は平和を維持する基地だというが、むしろ緊張を高め、権力を維持する道具になっている」と指摘。「今後も反基地闘争など闘いのあるところを訪れ、歌で激励したい」と笑顔で話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_02.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

「反復帰論」再構築を/「5・15」シンポ

 五月十五日の沖縄の本土復帰にちなみ、「沖縄・憲法・アジア」をテーマにしたシンポジウム「マーカラワジーガ?! 来たるべき自己決定権のために」(主催・5・18シンポジウム実行委員会)が十八日、県立博物館・美術館で開かれた。約五百五十人が参加、沖縄をとりまく現状や未来像についての各パネリストの話に耳を傾けた。

 第一部は「〈反復帰〉の思想資源と琉球共和社会/共和国憲法草案の意義」と題し、沖縄大学准教授・屋嘉比収さんが講演した。

 一九七〇年前後にジャーナリスト・新川明さんが提言した「反復帰論」や、八一年に詩人・川満信一さんが「新沖縄文学」で発表した「琉球共和社会憲法C私(試)案」を挙げ、「復帰後三十数年が経過し、住民の意識は変化したが、いまだに沖縄には日本の構造的差別がある。このような中で、いま一度、反復帰論を再構築し、次世代に接ぎ木していくことが必要だ」と強調した。

 続いて「沖縄・憲法・アジア―その政治展望」と題した第二部では、起訴休職中外務事務官の佐藤優さんが講演。沖縄独立の可能性や道州制について持論を展開した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_03.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

着陸帯移設地にノグチゲラ営巣/東村高江 中馬重夫さん撮影

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設が計画されている東村高江で、国の特別天然記念物ノグチゲラが営巣しているとみられる様子が確認された。十六日に中馬重夫さん(42)=本部町=が撮影した。

 中馬さんは「つがいのノグチゲラが追いかけっこをしていた。一日中ノグチゲラの声を聞くことができた。トンボやトカゲなどをたくさん見ることができる生き物の宝庫」と話した。

 沖縄防衛局は、ノグチゲラなど希少鳥類の繁殖期に当たるため、三月から六月までは工事を見合わせているが、測量作業などは行っている。

 ヘリパッドいらない住民の会の伊佐真次共同代表は「ヘリパッドが移設されれば、数が減っているヤンバルクイナやノグチゲラの絶滅が現実のものになってしまう。計画を白紙撤回すべきだ」と訴えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_08.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

サンゴ再生へ思い込め 万座沖で固定作業

 サンゴ礁を再生しようと、県内外十三の企業でつくる「チーム美らサンゴ」が、今年一回目となるサンゴの植え付けを十八日、恩納村・万座ビーチの湾内で行った。

 恩納村漁協で育てたコエダミドリイシ、ヤッコミドリイシを、参加した県内外のダイバー三十五人が、一本ずつ海底の岩場にねじで固定。防護ネットをかぶせた。

 二回目の参加となる山中貴幸さん(33)=埼玉県=は「前回参加した後から、環境について関心を寄せるようになった。機会があれば、植え付けたサンゴを見に来たい」と笑顔を見せた。

 七月二十一日の「海の日」に、「チーム美らサンゴ」によるシンポジウムがある。年内のサンゴ植え付けは、六、九、十月にも行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月19日朝刊)

[裁判権放棄]

主権国家が取る行為か


 またしても日米で取り交わされた密約が明らかになった。いったい政府は、国民に説明できない秘密事項をどれだけ抱えているのだろうか。

 米公文書で分かったのは、一九五三年に米政府と合意した「重要な案件以外、日本側は裁判権を放棄する」という密約だ。

 言うまでもないが、裁判権は国家の主権に深くかかわってくる。それなのに、政府は米兵が起こす刑事事件に対し第一次裁判権を行使しないという約束を交わしたのだから、あきれてしまう。

 その密約ゆえか、五三年から五七年の約五年間に起こった約一万三千件の米兵関連事件で裁判権を放棄したのは97%、約一万二千六百件に上る。実際に裁判に付したのは約四百件しかない。

 わずか五年でこの数字だ。その後はどうなのか。想像しただけでも暗澹たる気分にさせられる。

 公文書からは復帰後の七四年七月に伊江島で発生した米兵の発砲事件についても明らかになっている。米側の要求で日本側が裁判権を放棄しており、そこには自国民さえ守れぬ政府の姿がある。

 復帰後もそうなのだから、復帰前は推し量るべきだ。

 日米安全保障条約に基づく地位協定の不平等関係をもたらした起点がそこにあるのである。

 政府は「裁判権の放棄はない」というがその説明に納得する国民はいない。真実はどうなのか。放棄した数はどれだけあるのか。政府はきちんと説明すべきだろう。

 腑に落ちない点はまだある。日本側が裁判権を行使しても、米側はその結果に対し「刑罰が軽くなっている」と見ていたことだ。

 絶対にあってはならないが、もし、米軍に配慮して司法が判決に手心を加えたとしたら、それこそ主権国家の名に恥じる行為で、司法当局も責任は免れまい。

 六〇年の安保条約改定前には米政府が密約を公にするよう求めているが、当時の岸信介首相は「外部に漏れたら恥ずべき事態になる」とし応じなかったという。

 恥ずかしいとの認識はあったようだ。それにしてもなぜことが明らかになっても政府は本当のことを言わないのだろうか。

 私たちは現状の地位協定では不平等感が残るだけで、基地所在地住民の不安と怒りは増すだけだと指摘してきた。

 裁判権だけでなく身柄拘束を含めた協定上の問題はあまりにも多過ぎるからだ。解決するには「運用改善」では無理であり、抜本的な見直ししかない。

 地位協定における政府の対応について国際問題研究家の新原昭治氏は「日本に第一次裁判権がある『公務外』の犯罪でも、日本側が放棄し、なるべく米側に譲る密約がある」と指摘。その中で政府は「国民に隠している文書や合意を表に出すべきだ」と述べている。

 沖縄返還交渉時の「沖縄密約」、有事の際の核持ち込みも公文書で分かっているのに、政府はいまだに「ない」としている。かたくなな姿勢を政府は改めるべきだ。

 嘘を積み重ねれば信頼は損なわれるだけである。そのことを政府は肝に銘じる必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080519.html#no_1

 

2008年5月20日(火) 朝刊 25面

政府、豪女性に見舞金/神奈川・米兵暴行

 【東京】二〇〇二年に神奈川県でオーストラリア人女性が米兵に暴行された事件で、防衛省が見舞金三百万円を女性に支払うことが十九日、分かった。米軍人による事件・事故で、日米間で見解が分かれるなどして被害者への補償が困難になった場合、日本政府が代わって救済する「見舞金制度」を活用するもので、数日内に支払われる見通し。

 米兵は不起訴処分となったが、その後、女性が損害賠償請求訴訟を提起。東京地裁は女性の訴えを認め、米兵に三百万円の支払いを命じたが、米兵は裁判中に帰国していた。

 日米地位協定(一八条六項c)は米兵に公務外で賠償義務が生じ、本人に支払い能力がない場合、米政府が支払うとしている。

 防衛省によると米国内の外国人請求法では、事件発生から二年以内に請求がなければ時効になると規定。民事判決が出た時点で、時効になっていたという。

 このため、同省は「地位協定で救済されない場合、国が救済を必要と認めた時に支給できる」との閣議決定(一九六四年)に基づき、女性に「見舞金」を支払うことを決めた。

 同省によると、二〇〇五年からの三年間で「見舞金」が支払われたのは九件(県内の三件含む)で、今回が十件目となる。

 女性は「米兵は私に謝罪しておらず、逃げたままだ。米兵も米軍も責任を持たず、日本で税金を払っている人の負担になるのはおかしい。米兵を日本に戻して責任を取らせるべきだ」と話した。


日本負担は問題


 新垣勉弁護士 日本政府が見舞金制度で全額補償することは評価できる。今回の事件の特殊性に基づくものでなく、一般的基準として運用されるか注目される。米側が全く負担せず、日本側が支払うことは問題。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_06.html

 

2008年5月20日(火) 朝刊 24面

ヘリの影響調査へ/地デジ障害

普天間で通信事務所

 【宜野湾】宜野湾市内の一部地域で、地上デジタル放送の受信に障害が発生している問題で、沖縄総合通信事務所は十九日、宜野湾市を訪れ担当課から事情を聴いた。受信障害が米軍普天間飛行場から離着陸する米軍機の訓練の影響とみられるため、海外に派遣されているヘリ部隊などの帰還が予測される二十一日以降、市内の複数地域に受信調査専用の車両を配置し、調査する。

 宜野湾市基地政策課は、二〇〇七年十一月から四件の苦情が市に寄せられていると説明した。

 同事務所の担当職員は、県外では受信の良好な地域から障害の生じている地域への共同ケーブルが整備されているとした上で、「普天間飛行場が原因なら、対策は防衛省の協力が必要。那覇防衛局と情報を共有していきたい」と話したという。

 沖縄防衛局は「地方自治体から要請があれば、具体的な状況を確認した上で法律に基づいて対応したい」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_07.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 29面

基地内労働の被害・支援者/パワハラ根絶へ会結成

 米軍基地で働く日本人従業員へのパワーハラスメントが相次いでいるとして、当事者や関係者は二十日、「基地労働者パワハラ被害者及び支援者の会」を結成した。同日までに従業員や支援者七十人が賛同している。設立の準備段階で、各職場で実施したアンケートでは、回収した六十三人のうち二十六人が「パワハラ被害を経験した」と回答。うち十一人が「自殺も考えた」とするなど深刻な実態も浮き彫りになった。

 同会では被害根絶のため、当事者と支援者が連携し、関係機関などへの訴えを強化していく方針だ。

 同日、北中城村内で開かれた結成総会では、パワハラ被害を受けたとして上司を提訴している元従業員の安村司さんを代表に選出。安村代表は「基地従業員の雇用主は沖縄防衛局だが、実際は米軍に雇われているのと同じだ。人事権を米軍が握っている以上、防衛局も労組も限界があり、多くの仲間が被害に遭っている」と指摘。「支援者の力を借り、苦しんでいる人を助けたい」とあいさつした。

 同会では、独自にアンケートを進めながら、防衛局のほか、全駐労、沖駐労の両組合などに徹底調査を求めていく。その上で、会員同士の連携強化で、基地従業員の労働環境の実態を明らかにし、相談窓口の設置など具体的な救済策を検討する。

 参加した男性は「上司から理不尽な命令を受け、事実無根の始末書にサインを強要された。人事部門に弁明書を出したが、(どちらの言い分が正しいか)判断するのは、命令を出した上司と説明され、精神疾患になった」と声を震わせた。別の男性も「身に覚えのないことで文書を作成され、数カ月の出勤停止を命じられた。声を上げることで社会問題として提起したい」と訴えた。


     ◇     ◇     ◇     

63人中26人「経験」・11人「自殺考えた」

職場内調査


 「基地労働者パワハラ被害者及び支援者の会」が設立準備の一環で実施したアンケートでは、回収した六十三人中約四割の二十六人が被害経験があると回答。うち十人が現在も時々、または頻繁に受けていると答えた。回答者の約二割に当たる十一人がパワハラ被害で自殺を考えた、または実際に自殺未遂をしたと回答した。

 被害に遭い、過去に体調を崩した、または現在も崩していると答えた人も二十四人に上った。

 また職場で自分以外にパワハラを受けている人を知っているかとの問いには、二十五人が知っているとした。

 同会の安村司代表は「思っていた以上に、非常に深刻な状況だ。サンプル数は少ないが、公正を期すため各職種の各職場でランダムに調査した結果だ。これ以上被害者を増やさないために、職場の環境改善に向けて声を上げていきたい」と話した。

 アンケートは、同会設立の趣旨に賛同する従業員らが、この一週間で百数十人に配布。約百人から回答があったが、数十人分が会に届いておらず、手元にある六十三人分について、まとめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_01.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 1面

国に文書提示命令/沖国大ヘリ墜落

 二〇〇四年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落をめぐり、那覇市の長嶺哲さん(42)が国を相手に、日米両政府の協議内容を記した文書の公開を求めた訴訟の控訴審に絡み、福岡高裁(西理裁判長)は二十日までに、国側に文書の不開示部分を裁判所に提示するよう命じた。

 決定理由で同高裁は「文書を所持する国の任意の協力が得られない以上、(不開示部分を)裁判所が直接見分する術がなければ、一方当事者の国や諮問機関の意見に依拠してその是非を判断せざるを得ず、最終的な判断権を裁判所に委ねた制度の趣旨にもとること甚だしい」とした。

 〇六年十一月の一審福岡地裁判決は「米側の同意なく公表すれば、米国との信頼関係が損なわれると容易に予想される」などとして、国側の主張を踏襲する形で長嶺さんの公開請求を退けていた。

 NPO法人・情報公開クリアリングハウス(東京)の三木由希子理事は「外交・防衛に関する情報の非公開規定は、行政側に広く裁量が認められており、司法に公開を求めて争う場がありながら、裁判所は情報の中身を見ずに判断している。今回の決定は画期的な判断だ」と話している。

 外務省は「(裁判官が非公開で文書を見分するインカメラ審理は)情報公開法では認められていない手続きだと考えており、法務省とも相談して異議を申し立てたい」としている。


[ことば]


 沖国大ヘリ墜落事故 2004年8月、米海兵隊所属の大型輸送ヘリコプターが沖縄国際大(宜野湾市)に墜落、炎上し米兵3人が重軽傷を負った。学生や住民にけがはなかったが、ヘリの部品や壊れた校舎のコンクリート片が周辺民家などにも飛散した。原因調査や捜査をめぐっては米軍側が県警の現場検証を拒否するなど批判を呼んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_02.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 28面

「集団自決」で創作劇/志真志小で来月上演

 宜野湾市立志真志小学校(喜納裕子校長)で、慰霊の日(六月二十三日)に向けた特設授業で上演する創作劇「ヒルサキツキミソウ」の準備が進められている。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をテーマにした物語で、日本軍の命令で、家族に手をかけざるを得なかった史実を、児童や教諭らが演じる。上演は六月二十日午前十時から同校体育館で。(平良吉弥)

 脚本を書いた同校の宮城淳教諭(55)は「『集団自決』で亡くなった人たちは、どんなに悔しくても、今はもう訴えることができない。犠牲者の気持ちになって演じることで、命や平和の大切さを感じてほしい」と話している。

 二十年以上前から沖縄戦や対馬丸についての物語を書いてきた宮城教諭。十作目となる今回は、高校歴史教科書から日本軍の強制を示す記述を削除した文部科学省の教科書検定問題を受け、創作を思い立った。

 「集団自決」のあった島から、犠牲となった三人の子どもの霊が宿る石を女子児童が持ち帰り、学校の給食室に隠したことからストーリーが展開する。

 米軍の艦砲射撃が始まり、日本軍から手りゅう弾が渡され、軍命で家族が命を絶つ直前の場面などを子どもやその両親の霊を通し、現代の子どもたちが「集団自決」の実相に触れる。

 いじめ、ドメスティックバイオレンス(DV)など現代の問題も取り上げ、命や人権の大切さも訴える。

 四年生から六年生までの児童二十二人や喜納校長をはじめ、教諭ら約十人が出演する。中城小学校音楽教諭の佐渡山安信さんが作曲した歌を約六百六十人の全児童と教職員が合唱し、保護者らに披露する。

 二十日に志真志小で行われた初げいこで宮城教諭は「集団自決」で首にけがを負った幼い少女の写真や沖縄戦の「集団自決」で亡くなったとみられる住民たちの写真を児童に示しながら、当時の状況を説明。「『集団自決』で一家全滅のケースもある。亡くなった人の気持ちになり、一生懸命練習しみんなに伝えましょう」と訴えた。

 六年生の平良佳大君(12)は「曾祖母が八歳の時に竹やりで訓練したり、一生懸命走って逃げた話を聞いた。命令さえなければたくさんの人が亡くならなかったと思う」と話した。

 五年生の高良利乃さん(10)も「戦争の話は怖いけど、せりふをきちんと覚えて上手に演技したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月21日朝刊)

[暴行事件見舞金]

「逃げ得」は許されない


 神奈川県で二〇〇二年、オーストラリア人女性が米兵に暴行された。女性は事件後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にさいなまれながらも、三月に北谷町で開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に参加し勇を鼓して演壇に上がった。

 「私は性犯罪の被害者。私は恥ずかしいことありません。私は悪くない」―被害女性の痛切な訴えは参加者の心を揺さぶった。

 事件から六年。性暴力の被害を受けたこの女性に対し、日本政府は三百万円の見舞金を支払うことを決めた。

 被害女性にようやく救済の手がさしのべられたことは歓迎すべきことである。ただ、どこか釈然としない。

 被害女性は「米兵は私に謝罪しておらず、逃げたままだ。米兵も米軍も責任を持たず、日本で税金を払っている人の負担になるのはおかしい」と語っているという。今回の決定を評価しつつ、それでもなお釈然としない感情が残るのは、被害女性が指摘した問題があるからだ。

 事件後、加害者の米兵が不起訴処分になったため、女性は損害賠償請求の民事訴訟を起こした。東京地裁は〇四年十一月、女性の訴えを認め、米兵に三百万円の支払いを命じた。

 だが、米兵は裁判中に帰国し、賠償金を支払っていない。

 米兵などによる公務外の事件・事故は、原則として加害者個人が賠償責任を負うことになっている。加害者が本国に逃げ帰り、賠償がうやむやになるケースが以前は目立って多かった。

 被害者救済のためには、賠償能力のない米兵や賠償金支払いに応じない米兵に代わって、日米両政府が責任を持って損害賠償に当たる仕組みが不可欠だ。そのような制度は現行の地位協定にもあることはある。

 公務外の不法行為に対して米軍は、日本側が作成した事件の報告書に基づいて被害者に慰謝料を支払うことになっている。この規定自体、恩恵的で不十分なものだが、今回は、民事裁判の判決が出た時点で米国内法(外国人請求法)の時効が成立していたという。

 このため、政府は一九六二年の総理府令に基づく見舞金制度を活用して被害女性を救済したというわけである。

 同制度は、補償金や慰謝料の額について日米双方の主張に隔たりがあったり、米兵の故意、過失などが立証できない場合に適用されるという。

 九五年の米兵による暴行事件を契機に地位協定問題が浮上し、日米両政府は、米兵による公務外の不法行為についていくつかの運用改善策を打ち出した。それによって被害者の不利益が大幅に改善されたのは間違いないが、まだ十分だとはいえない。

 被害者救済のために政府が、支払いのないまま「宙に浮いた慰謝料」の穴埋めをしたのはいいとしても、本来支払うべき加害者や米軍の賠償責任を結果として不問にしたのは腑に落ちない。

 制度の不備な点を洗い直し、再度改善に努めてもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080521.html#no_1