市長訪米予算 議会に提案へ/宜野湾市 宮森小ジェット機墜落から49年 沖縄市・タクシー強盗、2米兵に実刑判決 など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(6月1日から5日)

2008年6月1日(日) 朝刊 1面

「安定」「刷新」訴え/8政党座談会

 県議会議員選挙が告示されたことを受け、沖縄タイムス社は三十一日、県内の八政党の代表を招き、座談会を開いた。訴えている政策、争点に浮上した後期高齢者医療制度(長寿医療制度)への対応、米軍基地問題の基本的な姿勢などで見解を聞いた。与党は過半数維持の県政安定を訴え、野党は与野党逆転による県政刷新を強調した。

 最も訴えている政策で、自民党県連、公明党県本は自立に向けた経済振興、雇用の拡大、県民所得向上に向けた施策推進などを挙げ、仲井真県政と一体となった県政発展をアピールした。

 一方、社民党県連、社大党、共産党県委、政党「そうぞう」、国民新党県連の各野党は後期高齢者医療制度の廃止を前面に打ち出し、「与野党逆転で制度廃止の民意を示す」と強調した。

 後期高齢者医療制度について、自公は「医療制度の維持に必要」とし、低所得者への軽減措置や徴収制度などでの見直しを主張。野党各党は「現代版のうば捨て山」と批判し、「小手先の見直しではなく、廃止し、一から制度をつくり直すべきだ」とした。

 基地問題は自公が普天間飛行場の危険性除去を優先される課題と指摘。同飛行場の名護市辺野古沖への移設を容認する仲井真県政の対応を支持した。野党各党は辺野古への新基地建設反対を表明。「米軍再編による基地の機能強化の反対」を訴える党もあった。

 仲井真県政への評価は、自公が「経済、雇用で実績を上げている」と評価。社民、社大、共産は「評価に値しない。雇用は改善されず、基地問題は国のいいなり」と批判した。一方、そうぞう、民主党県連、国民新党は「仲井真県政を評価するにはまだ時間がかかる」とした上で、政策によって対応する是々非々の姿勢を明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806011300_01.html

 

2008年6月1日(日) 朝刊 29面

「米軍に国内法適用を」/地位協定講演会

 日米地位協定を考える講演会(沖縄平和ネットワーク主催)が三十一日、那覇市の教育福祉会館であった。弁護士の新垣勉さんは現行の協定について「日本の主権が、米軍基地や軍の活動に及ばず、国内法が適用されないことが最大の問題」と指摘。本質的な構造を認識しなければ、基地を安定供給するための「見直し」に収斂される、と懸念を示した。

 新垣さんは「一つ一つの条文では分かりにくいが、全体として日本の主権が及ばない仕組み。米軍基地は無法地帯だ」と訴えた。その上で「抜本的見直しとは、駐留米軍に日本の法律を適用すること」とし、「尊重させる」など、あいまいな表現で決着を図ろうとする政治的流れにくぎを刺した。

 また協定改定運動の中で、構造的矛盾と米軍の実態を訴え、基地撤去に結び付けるべきだと強調した。

 米軍人・軍属による事件被害者の会・支える会の村上有慶さんは、旧防衛施設庁から取り寄せた資料を基に、米兵事件が増え続けている現状を報告。「運用改善では犯罪は減らない。もう放置できない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806011300_04.html

 

2008年6月1日(日) 朝刊 28面

情熱今も 上原さん帰郷/「沖縄に民主主義」目指し 58年前密航

 【国頭】戦後の混乱の中、地元政党「沖縄民主同盟」創設に関わり、沖縄の基地被害や民主主義の実現を訴えるため、?密航船?で沖縄を離れた上原信夫さん(84)が三十一日、故郷の国頭村奥を訪ねた。故郷を離れて五十八年目。奥区(玉城壮区長)で区民をあげての盛大な歓迎会が開かれた。(知念清張)

 上原さんは崩壊状態だった戦後奥区の復興に尽力。教育や米軍が当時禁止していた畜産を再開させるなど功績を挙げ、二十三歳で国頭村の最年少議員に選出された。

 しかし、米軍に政党機関紙の発行禁止処分を受け、「沖縄の問題は沖縄だけでは解決できない」と日本本土と世界に訴えるため一九五〇年、大阪へ密航。その後、中国に渡り研究者となった。

 七四年になって、ようやく帰国を許された。

 以来、東京で幅広く日中交流にかかわり何度も沖縄を訪れたが、奥を訪れることは、ほとんどなかった。

 奥集落センターで開かれた交流会には、村内外から「お世話になった」という人たちが百人近く集まった。

 近所の子供と一緒に上原さんに勉強を教えてもらっていたという中真貞子さん(74)は「暗闇でランプをふいていた姿が忘れられない。何でも一生懸命な人だった」と再会を喜んだ。

 中国留学の橋渡しをしてもらった當山直彦さん(37)は恩納村から駆け付け「視野を広く持つことを教えられた」と感謝した。

 上原さんは「何十年ぶりかに先輩、後輩、友人と会えてうれしい。今でも沖縄はこれでいいのか、と考えている。これからも社会の新しい道を広げていきたい」と感謝した。

 上原さんの妻、興新さん

(57)、長女の和子さん(25)、次女の京子さん(22)も区民と交流を深めた。和子さんが「中国とのハーフだが、父の故郷を訪ね、自分の中に沖縄の血が流れている事を誇りに思う」と話すと区民から大きな拍手が起きた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806011300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年6月1日朝刊)

[クラスター弾禁止]

実効確保に全力尽くせ


 人を殺傷するために開発された兵器はすべて「非人道的」なものだろうが、一発の爆弾から多数の子爆弾をまき散らすクラスター(集束)弾の被害の深刻さは他に類をみない。戦争や紛争が終わっても、広範囲に残された不発弾が子どもを含む一般市民を長期間、殺傷し続けるからだ。

 今なお、世界各地の人々を苦しめている集束弾を事実上、即時・全面禁止する国際条約が採択され、日本政府も合意した。ノルウェー、アイルランド、ニュージーランドなどの有志国と国際非政府組織(NGO)が主導する国際会議「オスロ・プロセス」に約百十カ国が参加し、クラスター弾の規制に向け、国際的な協調体制を築いた意義は大きい。

 当初、部分的な禁止や条約適用までの猶予期間を求め、合意に消極的だった日本政府が方針を転換、結果的に参加したことを評価したい。

 ただ、オスロ・プロセスには米国やロシア、中国などの軍事大国が参加していない。日本政府は、条約の実効性を担保する上で、こうした国々を取り込むために全力を注ぐべきである。

 日本はオスロ・プロセスの合意形成の過程で、採択を支持するかどうかの態度を最終日まで保留した。会議を主導したノルウェーなどの有志国や、部分禁止の立場からいち早く全面禁止に合意した英国、フランス、ドイツなど欧州各国との対応の違いは明らかだ。

 今こそ、七月の主要国会議(サミット)議長国として、国際世論を真摯に受け止め、より積極的に対応すべきだ。

 クラスター弾は第二次世界大戦で使用されたほか、イラクやレバノンでも使われた。空中でばらまかれた子爆弾のうち、目標に命中しなかった不発弾は地面のほか、木にひっかかった状態で残る。

 何も知らない子どもたちが踏みつけたり、手に持つなどして大けがをしたり、命を奪われることさえある。その上、すぐに爆発する状態にあるため、除去が困難で莫大な費用がかかる。

 国際的なNGO「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」の調査によると、クラスター弾は七十五カ国以上が備蓄し、このうち日本を含む三十五カ国で二百十種類を製造しているとされる。

 新条約はクラスター弾の使用、製造、開発、輸出入の即時禁止に加え、既に保有しているものを八年以内に廃棄などを規定しているが解決には時間がかかる。

 子どもや一般市民の被害を減らすために、不発弾除去の技術確立と、資金援助を急ぐべきで、日本政府が果たすべき役割も大きい。

 クラスター弾は二〇〇二年から米軍嘉手納基地での配備の可能性を指摘されているが、一切の情報を明らかにしない米軍の姿勢は断じて許されない。

 町村信孝官房長官は、同条約への参加について「クラスター弾によって引き起こされる人道上の懸念を深刻に受け止め、合意に加わる」と述べ、合意を着実に実行する考えを表明した。ならば、政府は国内基地のクラスター弾に関する情報の公開と、廃棄を強く求めていくべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080601.html#no_1

 

琉球新報 社説

クラスター弾 廃絶に向け日本が先頭に 2008年6月1日

 その非人道的な性格から「悪魔の兵器」と呼ばれるクラスター(集束)弾が、国際社会からやっと追放されることになった。有志国と国際非政府組織(NGO)が主導する「オスロ・プロセス」は30日、事実上の即時・全面禁止条約案を約110カ国の全会一致で採択した。

 クラスター弾は、一発の爆弾が空中から無数の子爆弾をまき散らし、地上の生き物を無差別に広い範囲で殺傷する。さらに問題なのは、その不発弾だ。大量に放置され、子供を含む民間人の死傷が各地で相次いだことから、禁止の機運が世界中で高まっていた。

 米国は第2次世界大戦後、ベトナム、カンボジア、イラクなどでクラスター弾を使用してきた。また、旧ソ連・ロシアもアフガン、チェチェンで使った。海岸線の長い日本も、外敵の着上陸侵攻などに備える目的で所有している。

 「オスロ・プロセス」に日本は初回から参加してきたが、部分的な禁止などを求め、全面禁止には消極的だった。米国への配慮も背景にはあった。それが今回、一転して条約案に同意した。方針転換の裏には福田康夫首相の強い意向があったとされる。

 ただ、オスロ・プロセスに米国やロシア、中国など大量に保有する軍事大国は参加していない。こうした国々を今後、いかに条約に引き入れていくか。大きな課題となる。特に、日本が果たすべき役割に注目したい。まず、7億個もの子爆弾を保有するとされる米国との関係だろう。人道的見地からも、全力を挙げて説得すべきだ。

 国際社会の一致した意志は、米国といえども無視はできまい。米国が条約に同意すれば、ロシアや中国も続かざるを得ないのではないか。そのためにも日本は米国に対する働き掛けを強めるべきだ。

 保有していても、実質的に使えない兵器にしていく。実は、先例がある。地雷だ。1997年調印の対人地雷禁止条約(オタワ条約)ではその後、地雷の使用はかなり控えられてきた。米国はイラク戦争で、クラスター弾は使ったものの、地雷は使っていない。

 今回の条約では、クラスター弾の使用、製造などの即時禁止のほか、領土内で使われた残存弾は10年以内に除去、破壊するとしている。ここでも日本の出番があるのではないか。地雷除去でも日本はその科学力を発揮した。同様に不発弾の除去にも力を尽くし、完全廃絶に向けて先頭に立ってほしい。

 県内でも米空軍嘉手納基地ではクラスター弾を搭載して沖縄近海の射爆場に向かう戦闘機が、頻繁に目撃されている。海外では不発弾で漁師が被害に遭った事例もあり、決して人ごとではない。政府は条約への参加とともに、県内での訓練中止を米国に求めるべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132698-storytopic-11.html

 

2008年6月2日(月) 夕刊 7面

米憲兵起訴事実認める/沖縄市タクシー強盗

那覇地裁初公判「罪深いことした」

 沖縄市で今年三月、タクシー運転手が三人組の外国人に襲われ、釣り銭箱を奪われた事件で、事件の主犯として傷害と窃盗の罪に問われた在沖米空軍嘉手納基地所属で兵長の憲兵隊員ダリアス・エイ・ブランソン被告(21)の初公判が二日、那覇地裁(〓晋一裁判官)であった。ブランソン被告は「とても罪深いことをした」と述べ、起訴事実を全面的に認めた。

 検察側の冒頭陳述などによると、ブランソン被告は自宅に出入りしていた米軍人の息子らに、通行人から金を奪うよう持ち掛け、車で犯行現場付近に連れて行き、犯行後は基地内の自宅に連れ帰った。別居中の妻が給与の入った口座から金を引き下ろしたことから、家具のローンの支払いに迫られたという。

 事件は三月十六日午前零時二十分ごろ、沖縄市中央二丁目の路上で発生。実行役の少年らが客を装ってタクシーをとめ、運転手の男性=当時(55)=を車外におびき出し、路上に引き倒したり頭を殴ったりして現金約六千円入りの釣り銭箱などを奪った。

 共犯とされる少年四人のうち、実行役の一人は家裁送致となり、同日までに那覇家裁で保護観察処分になった。別の三人は刑事処分不相当として不起訴になっている。

※(注=〓は「頼」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806021700_04.html

 

2008年6月3日(火) 夕刊 5面

市長訪米予算 議会に提案へ/宜野湾市

 【宜野湾】宜野湾市(伊波洋一市長)が米軍普天間飛行場の早期返還と危険性除去に向け、伊波市長の三度目となる訪米直訴行動費二百三十万三千円を盛り込んだ二〇〇八年度一般会計補正予算案を十一日開会する宜野湾市議会(伊波廣助議長)六月定例会に提案することが三日、分かった。同日午前、同議会与党に議案を説明した。四日には野党に説明する。

 訪米は早ければ七月を予定。米ハワイ州の米海兵隊太平洋司令部を訪ね、同飛行場の危険性除去などを求めるという。

 伊波市長は、米軍が自ら定めた同飛行場のマスタープランで決めたクリアゾーン(土地利用禁止区域)に普天間第二小学校や住宅地があることを指摘。〇四年に市内の沖縄国際大学で起きた米軍ヘリ事故以降も危険性が放置され続けているとし、米軍の基地運用の在り方を批判してきた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806031700_03.html

 

2008年6月3日(火) 夕刊 5面

「世替わり」激動の70年代/第6回あんやたん展

 沖縄の世相や歴史を写真で振り返る「タイムスアーカイブあんやたん写真展」が三日、那覇市おもろまちの沖縄タイムス本社一階ギャラリーで始まった。入場無料。十五日まで。六回目の今回は、一九七〇年代の「世替わり」がテーマ。

 米兵の事件・事故に対する怒りが爆発した七〇年のコザ騒動や七二年の本土復帰のほか、沖縄国際海洋博覧会の開催、車の通行が右から左に変わった道路交通法の変更など、激動の時代を迎えた沖縄の人々の息遣いを九十三点の写真で伝えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806031700_04.html

 

2008年6月4日(水) 朝刊 29面

宮森小ジェット機墜落から49年/惨事の風化を危ぐ

体験者・平良さん 校長で赴任/命の語り部「630館」設置へ

 【うるま】児童十一人を含む、十七人が犠牲となった旧石川市の宮森小学校ジェット機墜落事件から四十九年目の今年、当時二年生で惨事を体験した平良嘉男さん(56)が校長として母校に戻ってきた。「毎年六月になると、嫌な思いが頭をよぎったこともあった。しかし今もう一度思い起こさないといけない」。命と平和の語り部「宮森630館」の設置に向け、地元で準備委員会を発足させた。(天久仁)

 一九五九年六月三十日、じりじりと太陽が照り付ける午前十時半ごろ、昼食のミルクを飲もうとした瞬間だった。「バーンと音がした後、教室の窓ガラスが真っ赤な絵の具で塗られたようになった」。米軍のジェット機は平良さんら二年生が学ぶ木造平屋の校舎を通過し、コンクリートの二階建て校舎に突っ込んだ。

 教師の誘導で逃げ出した平良さんは奇跡的にやけどひとつ負わなかった。しかし燃料タンクの引火で隣の教室への延焼がひどく、二年生は最も多い六人が犠牲になった。

 当時学校には千三百人余が在籍していた。平良さんは「戦争だ、と泣き叫ぶ声。何が起こったのか分からなかった」と振り返る。幼い記憶をたどりながら「ある程度心の中で事件のことを消化できるようになった。しかし肉親を失った人、友人を助けられなかったことを悔やむ人はそうはいかないだろう」と心中を察する。

 長年音楽教師として、那覇地区の学校で音楽を教えてきた平良さんだが、特に石川地区以外で、事件を知らない若い世代が増えてきたことを心配する。「体験者にとって思い出すのは苦しくてつらいこと。しかし風化させないためには語っていかなければならない」と声を強める。

 四月に赴任した後、早速地元の体験者を訪ねて「630館」準備委員会への協力を要請した。来年の五十年忌に合わせ、証言集をはじめ、事件の模様を収めた映画の制作を目指している。「630館」は宮森小学校内への設置を視野に入れており「平和の発信地にしたい」と希望している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806041300_01.html

 

2008年6月4日(水) 朝刊 29面

米軍事件・事故 実行委、再び政府に回答要求/協定改正など4項目

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」実行委員会(玉寄哲永委員長)は三日、県庁で会見し、日米地位協定の見直しなど四項目の要請について、政府に回答を求める要求書を再び送付することを明らかにした。さらに、県選出の国会議員と連携して内閣に質問主意書を提出してもらう準備も進めているという。

 実行委は、三月二十三日の県民大会で決議した「地位協定の改正」「政府の責任の明確化」など四項目について、四月に要請団を結成して上京。首相官邸や外務省、防衛省などに四項目の実現を求めた。これに対し政府側からは現在まで回答はない。

 このため実行委は再度の行動を決意。「四項目についていまだ根本的な解決、または解決のための諸実施施策が沖縄県民に示されていない」とする要求書を四日に送付し、政府の具体的な方針について回答を求めるという。

 また、国会議員の権限で内閣に見解をただす質問主意書を利用し、回答を求めることも検討。要求書への政府の対応を見ながら提出するかどうか決めるとしている。会見した玉寄委員長は「こちらの意思表示に対し、国はいつも何も答えない。今回こそは必ず回答を得るため、粘り強く行動していきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806041300_02.html

 

琉球新報 社説

国民保護法 外交力の向上こそが重要 2008年6月4日

 協力のはずが強制、基本的人権を尊重のはずが制約、有事に備えた訓練が他国を刺激する。そんな批判が絶えない。国民保護法に基づく有事共同訓練のことだ。

 国民保護法は有事法制の一つで、2004年9月に施行された。外国から武力攻撃などを受けた際、国民の生命、財産を守るための国や自治体の権限や手続きを定めている。住民の避難や救援のため、民有地や家屋の使用など私権制限に踏み込んでいる。

 避難訓練は、自治体の長が住民に参加協力を要請できると規定され、07年度は国と自治体の共同訓練が15回実施された。今年も10月から来年2月にかけて、18県で共同訓練が実施される。

 うち4県で避難誘導などを伴う実動訓練。14県は連絡や避難手順を確認する図上訓練だ。

 訓練では、細菌やウイルス、放射性物質などによるテロなどが想定されている。

 沖縄県では来年1月末にも独自の予算で国民保護計画に基づく図上訓練を計画している。

 全国では、これまでにも原子力発電所が攻撃されたケースなどを想定し、訓練が実施された。だが「想定に無理がある」「原子炉を停止しても、攻撃を受ければ核汚染は防げない」など、現実と訓練の乖離(かいり)に疑問も噴出した。

 そもそも同法は国民を保護する前に有事、戦時体制の備えに重きが置かれているとの批判がある。

 有事になれば軍事基地の多い沖縄は、他県に比べ敵国の攻撃の対象となる可能性もある。

 太平洋戦争で、広島や長崎が核攻撃を受けたのは、そこに日本軍の主要な基地や軍需工場など軍事施設があったからだ。

 日本の伝統・文化が息づく京都や奈良は攻撃を免れている。

 軍事施設は、国民を守るどころか攻撃の対象となる。

 有事想定の訓練自体が、仮想敵国とされる国の反発を招きかねないとの懸念すらある。

 有事の備えも大事だが、国際舞台での発言力を増し、平和構築に貢献できる「外交力」の強化に、国はもっと力を注いではどうか。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132774-storytopic-11.html

 

2008年6月4日(水) 夕刊 5面

宮城さん「集団自決」20冊目の体験記/孫が挿絵「第2の語り手に」

 沖縄戦時に座間味島で「集団自決(強制集団死)」を体験した宮城恒彦さん(74)=豊見城市=が、住民の体験を聞き書きした、二十冊目の体験記を発刊した。慰霊の日に合わせ、一九八九年から毎年、自身や他の体験者の証言をまとめ、小中学校や知人に配ってきた。「教科書検定の問題など、日本軍の命令を否定する動きは、私たちの体験とは程遠い」と宮城さん。体験者の平和を願う思いが、本の挿絵を描いてくれた孫と同年代の若者たちにも届いてほしいと訴えている。(平良吉弥)

 宮城さんは、座間味島で「集団自決」を体験し、当時十九歳の姉ハルさんを亡くした。

 八八年、姉の死を悔やみ続けていた母ウタさんが亡くなったことがきっかけで体験記の執筆を思い立った。「過去を忘れては未来はない。何とか書き残さなければ」と証言をまとめ始めた。

 最初の五年間は、当時十一歳だった自身の体験をつづっていたが「体験していない人に『集団自決』の実相を伝えるには、多くの証言を集める必要がある」と、対象を村内の体験者に広げた。

 当初は千部程度の印刷だったが、希望者が多く千五百部に増やした。ページ数も数十ページからのスタートだったが、二十冊目の「機関銃の弾が出ない」では、姉と同級生だった男性とその妻の体験や当時の時代背景などをまとめ、百二十一ページに増えた。

 今回の体験談の後書きで、宮城さんは「高校の歴史教科書に記述されていた沖縄戦の事項から『日本軍』という文言が消され、沖縄県民の怒りに火を付けた年」と書いた。

 教科書検定問題や隊長命令の有無が争われた「集団自決」訴訟など、最近の動きを「同じ過ちを繰り返すのではないか」と危機感をあらわにし「若い人が私たちの体験を人ごとだと思ってしまうのが恐ろしい。若者は耳を傾け、行動してほしい」と願う。

 これまでにまとめた体験記では、孫で県立芸術大学四年生の新垣愛さん(24)=糸満市=が、小学六年生の時に宮城さんの体験を基に描いた紙芝居の絵が、一部で使われている。

 新垣さんは「じいちゃんの体験が封じ込められようとしている。許せない」と話す。「真実を消してはいけない。第二の語り手として私が伝えていきたい」と話す新垣さんの姿に、宮城さんは目を細めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806041700_01.html

 

2008年6月5日(木) 夕刊 1面

2米兵に実刑判決/沖縄市・タクシー強盗

 沖縄市で今年一月、タクシー乗務員が客の外国人二人に襲われた事件で、那覇地裁(〓井広幸裁判長)は五日、強盗致傷罪に問われた、いずれも在沖米海兵隊普天間基地所属で伍長のジョセフ・ウェイン・リドル被告(20)に懲役四年六月(求刑懲役八年)、一等兵の米国人少年(19)に懲役三年以上四年以下(同五―八年)を言い渡した。

 判決などによると、リドル被告らは一月七日午前三時ごろ、遊ぶ金欲しさにタクシー乗務員から金を奪おうと北谷町北前でタクシーに乗車。

 約四十分後、沖縄市美里三丁目の路上で車を止めさせ、乗務員男性=当時(59)=の頭を数回殴り、二千七百八十円の乗車料金を踏み倒した。通行人に見られたため、金を奪わずに逃走した。

 リドル被告らは閉店していた行きつけのバーに忍び込み、現金を物色したが見つからず、タクシー強盗を思い付いたという。乗務員の男性は頭部裂傷など全治一カ月のけがを負った。

※(注=〓は「吉」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806051700_01.html

 

2008年6月5日(木) 夕刊 5面

並里区、区有地売却へ/金武・ギンバル訓練場

 【金武】日米で返還が合意された金武町の米軍ギンバル訓練場について、訓練場に隣接する並里区(與那城直也区長)は五日午前、区議会を開き、町の跡地利用計画に合意し区有地(三十四ヘクタール)を町に売却する案を、出席議員の賛成多数(六対一)で可決した。

 一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)合意以来、ブルービーチへのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設条件が、強い反発を呼び地元行政区の賛成が得られなかったギンバル訓練場の返還が加速しそうだ。與那城区長は「国同士が合意をし、町も受け入れを表明した。基地はない方がいいが、区ではこれ以上どうすることもできず、現実的な対応もやむを得ない。ブルービーチへのヘリパッド移設は、引き続き撤回を求めていく」と話した。

 区有地の売却は、区議会に出席した議員の過半数の賛成が必要。昨年六月の町の受け入れ表明後、焦点は並里区の判断に移っていた。

 ただ、区議会決議では、土地の売却に反対する議員三人が欠席。

 町議員でもある知名達也議員は「ギンバル訓練場の区有地を売却すれば、ブルービーチへのヘリパッド移設を容認したと受け取られても仕方がない。区が住民に取ったアンケートでは、66%が条件付き返還に反対しており、住民説明会を開き、意思確認を行うべきだ」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

伊芸区が抗議決議/ヘリ低空飛行


 【金武】金武町伊芸区上空で米軍ヘリが低空飛行した問題で、伊芸区の行政委員会(登川松榮議長)は五日の臨時会で、都市型訓練施設を使用した米軍ヘリ演習に対する抗議決議案を全会一致で可決した。

 決議後、行政委員会は沖縄防衛局長と外務省沖縄担当大使、在沖米国総領事に対し抗議する。

 抗議決議では、「低空飛行を繰り返したのは、米空軍戦闘ヘリと判明し、レンジ4で実弾訓練を実施していた米陸軍の支援演習をしていたことが明らかになった。住宅地域を巻き込んだ演習であり、断じて許されるものではない」と指摘。「ずさんな演習が続くと夜も眠れず、恐怖と不安の中で生活を強いられなければならず、許せない」と訴えている。伊芸地域での米軍ヘリ演習とレンジ4米陸軍都市型訓練の暫定使用の即時中止を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806051700_02.html

 

2008年6月5日(木) 夕刊 5面

F15が緊急着陸/嘉手納基地

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で五日午前十時二十五分ごろ、同基地所属のF15戦闘機一機が緊急着陸した。機体のフックを滑走路上のワイヤに引っ掛けて停止したため、緊急性が高かったとみられる。

 目撃者によると、同機は沖縄市方向から北側滑走路に着陸。機体のフックから火花を散らす様子も確認された。

 消防車など緊急車両数台が機体を取り囲んだが、放水などはなかった。同機は着陸から約三十分、機体の点検を受け、けん引されて駐機場に戻った。同基地報道部は「予防的な着陸だった」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200806051700_07.html