月別アーカイブ: 2007年3月

沖縄タイムス 関連記事(3月28日 2)

2007年3月28日(水) 朝刊 1・3面
普天間代替/国、県に海域調査申請
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で、那覇防衛施設局は二十七日、海域での現況調査に必要な「公共用財産使用協議書」を県へ提出し、同意申請した。調査範囲は名護市の嘉陽から久志にかけての海域。使用目的は「海域での海洋生物及び海象調査のため」としている。使用期間は県との協議成立の日から来年十月末まで。県の同意が得られれば、施設局は四月にもサンゴの産卵調査の準備に乗り出すとみられる。
 仲井真弘多知事は同日コメントを発表し、「サンゴの調査を中心とした現況調査は事業者の判断で実施されるもので、環境影響評価に基づく調査ではないとの認識」と強調。「名護市辺野古沿岸域の広い範囲で調査されるもので、(南西沖合への移動を求める)名護市の考えにも対応できる」と評価した上で、使用協議への対応については「関係法令との整合性、利害関係者との調整状況などを勘案の上、適切に判断したい」とし、同意手続きに応じる意向を示した。
 一方、佐藤勉施設局長は使用協議書について「現況調査を実施するに当たり、海底に調査機材を置くことから必要となる手続き」とのコメントにとどめた。環境影響評価(アセスメント)の前段となる事前調査として実施するかについては明言を避けた。
 施設局はアセス手続きの進展や代替施設本体の建設を見据えた業務発注を進めており、県に環境影響評価方法書を送付し、アセスに移行できる態勢も整えている。
 普天間飛行場の移設にかかる県への公共用財産使用手続きは、歴代の稲嶺、大田県政でもボーリング地質調査などに伴い同意申請が出された。一九九七年の大田県政時は申請から同意まで約一カ月半。稲嶺県政では二〇〇三年十一月に申請、同意まで約五カ月かかった。
     ◇     ◇     ◇     
[解説]
知事アセス容認へ外堀
 那覇防衛施設局は米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う海域での現況調査に着手するため、公共用財産使用協議書を県に提出した。県は環境影響評価(アセスメント)の前段となる「事前調査」に向けた手続きととらえ、同意申請に応じる意向だ。ただ、調査の範囲や内容はアセスと同一とみられる上、事前調査の結果をアセスに反映させることも可能なため「事実上のアセス容認」との見方は否めない。仲井真弘多知事の「移設容認」に向け、着々と「外堀」が埋められているのが現状だ。
 県は「移設協議の入り口」としてきた「三年内の普天間の閉鎖状態確保」などの要求に、国から前向きな回答が得られない中、調査にゴーサインを出す形となる。一方、国は県などが求める「アセス前の滑走路の位置修正」に応じない姿勢で、調査着手に地元のお墨付きを得ることになる。
 事前調査について県は当初「次の段階の環境アセスにつながるもので、V字形案などについて地元の意向も踏まえて協議した後にやるべき」(花城順孝知事公室長)と主張していた。それでも同意申請を受け入れざるを得なかったのは「早期移設が普天間飛行場の最大の危険性除去」との仲井真県政の基本認識があるからだ。
 県や名護市が求める滑走路の位置修正はあくまで「日米合意の範囲内」。県は南西沖合への移動を求める名護市案を支持し、V字形滑走路をキャンプ・シュワブ沿岸部付近に建設することは是認している。調査範囲が辺野古沖を埋め立てる従来計画と同エリアまで拡張され、滑走路の位置も明示されない調査を県が退ける論拠はなく、いたずらに事業進ちょくを遅らせれば自己矛盾に陥る。
 一方、施設局は今回の使用協議書の同意申請が事前調査のためか、アセスに向けたものかを公式には明言していない。県との「不協和音」を最小限に抑えつつ、必要な手続きを進めた上で、アセスに基づく調査への切り替えを模索する意向もうかがえる。
 なし崩し的に移設作業が進めば、政府に「移設までの普天間の閉鎖状態」を求める必然性も問われかねない。県は政府とのこう着状況を打開し、有効な普天間の危険性除去策を引き出すことが急務だ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703281300_03.html

2007年3月28日(水) 朝刊 2面
嘉手納以南返還/計画作成4月以降に
 【東京】久間章生防衛相は二十七日の衆院安全保障委員会で、日米両政府が三月末までの作成を目指す嘉手納以南の米軍基地返還の実施計画(マスタープラン)について「三月末と言ったが、それができない」と述べ、四月以降にずれ込むことを公式に認めた。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 久間防衛相は日程の遅れについて、「わが国から米国に対し(三月末までに)と言っているが、『まだ少し時間がほしい』と米側が言っている」と述べた。
 政府関係者によると、在沖米海兵隊八千人のグアム移転計画の詳細が決まらず、日米の協議は遅れているという。政府は、四月に予定される日米の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)までに一定の形でまとめたい考えだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703281300_07.html

沖縄タイムス 関連記事(3月28日 1)

2007年3月28日(水) 朝刊 1・31面
沖縄密約 判断せず/西山元記者、全面敗訴
東京地裁判決 除斥期間を適用
 一九七二年の沖縄返還密約事件で、国家公務員法違反罪の有罪が確定した元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)=北九州市=が政府の密約を不問に付した一方的な起訴や控訴で精神的な苦痛を受け続けているとして、国に謝罪と慰謝料など三千三百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十七日、東京地裁であった。加藤謙一裁判長は、検察官の訴追や外務省高官の偽証に対する違法性の主張に除斥期間(権利の法定存続期間、二十年)を採用。「密約」の有無を判断せず、請求を全面的に退けた。西山さんは判決を不服として控訴する。
     ◇     ◇     ◇     
[解説]
知る権利、門前払い
 二十七日の東京地裁判決は、最大の焦点だった沖縄返還交渉の「密約」の有無には一切触れなかった。損害賠償の請求権は二十年で消滅するという民法の除斥期間を判断の前提条件にして、西山太吉さんの有罪を確定した最高裁決定の誤判性などの争点には判断を示さないまま、いわば門前払いの形とした。
 西山さん側が、日米政府の交渉記録や米国の公文書など膨大な証拠書類を積み上げたのに対し、同地裁が判決の中で判断を示したのはわずか三ページ。実質的な審理に入れば、密約を認定せざるをえず、現政権をも巻き込む事態になりかねないとして、司法が政府の密約を追認したといえよう。
 西山さん側が返還交渉の内幕と密約の全体像を明らかにしたのは、当時、入手した国の内部文書は政府の重大な“権力犯罪”を証明する証拠であり、国家公務員法が保護するには値しない性質であることを裏付けるためだった。政府には隠したい秘密でも、国民には知る権利があるという主張だ。
 その上で、密約の重大さを認識せず、記者活動の目的の正当性を検討していない最高裁の決定は国民の知る権利を軽視した誤判だと主張。そうした判断材料になったのは、起訴状に「ひそかに情を通じ」などと記して男女関係に基づく入手方法を強調した検察官の訴追にあるとしていた。
 いずれの主張も、密約が違法性の強い国家の不意性行為であるとの認識が前提だったが、地裁判決はこれらに、全く取り合わなかった。除斥期間を盾に、形式論に終わった形だ。
 返還密約訴訟は、密約をした政府が何のそしりも受けず、不正を暴こうとした記者だけがなぜ刑罰を受けるのかという素朴な問いと、国の情報統制にあらがえないメディアや社会に知る権利の意識を喚起する「異議申し立て」だった。
 西山さんが対米一辺倒と批判する政府の安保・外交政策と、沖縄問題との構図を考える格好のケーススタディーでもあったが、一審は法律上の理屈に終始する結末となった。(社会部・粟国雄一郎)
判決骨子
 一、除斥期間(権利の法定存続期間、20年)により損害賠償の請求権は消滅
 一、除斥期間の適用を妨げる事情は認められない
 一、検察官に再審請求義務なし
 一、政府高官の「密約」否定発言は名誉棄損にはあたらない
 一、河野洋平元外相による吉野文六元外務省局長への密約否定要請は証拠がない
 一、その他は時機に遅れた攻撃方法であり、却下

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703281300_01.html

2007年3月28日(水) 朝刊 31・30面
密約追及「闇」晴れず/控訴審で真実問う
 【東京】「想定していた中で、一番イージーな判決だ」―。二十七日の沖縄返還交渉をめぐる「密約訴訟」の判決で、東京地裁は密約の有無を判断せず、政府高官の「密約否定発言」の違法性も退けた。政府の外交姿勢を厳しく批判してきた元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)は怒りと落胆をあらわにした。主文朗読から閉廷までの所要はわずか十秒ほど。司法は沖縄返還時の日米交渉に横たわる「闇」から目を背けた。「結論ありき。司法の自殺行為のような判断だ」。西山さんは控訴審で真実の追求を続ける。
 午後二時すぎに東京地裁内の司法記者クラブで始まった記者会見。西山さんは上下グレーのスーツ姿で現れた。
 「司法が日本にないことを証明するような判決だ」。両目をつり上げ、鋭い眼光で心境を語った。口調は落ち着いていたが、時折唇を震わせ、目を潤ませる場面もあった。
 約二年の法廷闘争。西山さんは約八十の証拠を提出、検察官や政府高官らに二十四の違法行為があったと指摘した。しかし、地裁は二十年で損害賠償の請求権が消滅する「除斥期間」を盾に、密約の有無の判断を避けた。
 西山さんは支援者との集会で「除斥期間という武器で何でも抹殺できる」と無念さを強調。「これが国家機密裁判だ」とこぶしで机をたたいた。
 昨年二月には、沖縄返還交渉を担当した元外務省アメリカ局長の吉野文六さん(88)が密約の事実を明らかにした。
 風向きが変わるかに思えたが、西山さんは「吉野証言で、裁判所のガードがさらに固くなった」と法廷で逆風に働いた面があったと明らかにした。返還交渉を知り尽くすキーマンの証言を突きつけても、動かぬ厚い壁。
 「提訴からの二年が無に帰したとは思わない。これからも闘い、訴え続けることに意味がある」。権力に屈せぬ“ジャーナリスト”は、上級審で再び政府と対峙する。
     ◇     ◇     ◇     
メディア姿勢に批判
 沖縄返還密約訴訟が問うたのは、歴史の真相だけではなかった。次々に要求を突き付ける米国。対等な交渉ができない日本。何も知らされない沖縄がそのはざまで翻弄され、基地が固定化される構図は、今も変わらない。強権と懐柔策を巧みに使い分ける権力に、メディアはどう対峙してきたか。三十五年前の課題は、未解決のまま積み残されている。(社会部・阿部岳、安里真己)
権力側の学習
 日本のジャーナリズムが権力に抵抗できなくなり、今日に至る重大な転換点。一九七二年の事件当時、週刊誌記者だった亀井淳さんはこう見る。「西山事件は『沖縄のことには目をつぶっていろ』というメッセージ。それは今も生きている」
 むしろ事態は深刻さを増している。「メディアは退廃を深め、今回の訴訟でも大手の対応は鈍い。沖縄の基地の現状も東京からは目隠しされて、見えない」と話す。
 雑誌「噂の眞相」元編集長の岡留安則さん。「事件当時は検察がゴシップに世論を誘導したが、今は誘導しなくてもメディアが勝手に権力寄りの情報を垂れ流している」と批判する。米軍再編でも「政府が言うまま報道され、再編そのものへの批判的論調がない」と、いら立ちを隠さない。
 西山太吉さんをドキュメンタリー番組で初めて取り上げたジャーナリストの土江真樹子さんは、「権力はこの間非常に良く学び、対策を取ってきた」と見る。
 新聞記者に情報を漏らした疑いで自衛官が強制捜査された事件を挙げ、「政府はすぐに『知る権利の問題ではない』と打ち消した。一方のメディアは、本質と違う方向に流される傾向が変わっていない」と嘆く。
 今回の裁判を「西山さん個人の問題ではなく、沖縄、メディアの問題。皆が当事者と感じてほしい」と話した。
問題は「外見」
 「先生、日本は戦争に負けたんですよ。限度があります」。毅然とした対米交渉を求める元衆院議員、上原康助さんの居室で、外務省高官はよくこう口にしたという。
 「米国は密約で、表面だけを繕う外務省の体質を知った。再編でグアム移転費用を再び日本に負担させるのも、当然の成り行きだった」。上原さんは「米国は高笑いしている」と悔しがる。
 七二年の国会で暴露された外務省の極秘電信文にあった「問題は実質ではなくアピアランス(外見)である」との一文は象徴的だ。SACO合意を究明する県民会議の真喜志好一さんは、「復帰のうたい文句だった『核抜き本土並み』も米軍再編の『負担軽減』も、まさに同じ見せかけだ」と憤る。
 米軍が六〇年代に作成した名護市辺野古沿岸の基地建設計画を発掘。現在の普天間代替施設案との類似点を挙げ、「いずれ実現するという日米密約があったのではないか」と指摘している。「後で密約の存在を知って悔しがっても遅い。真相を探り、計画を止めたい。それが西山さんのかたき討ちにもなる」と語った。
口つぐむ司法・田島泰彦
国民の権利擁護 果たさず
 今回の判決は、沖縄返還交渉の密約についてまったく議論しないまま、除斥期間という形式的なレベルにとどめてしまい、中身に対する司法判断が下されなかった。極めて残念な判決だ。
 近年、密約の事実を示す米国の公文書が二度にわたり公開された。また、沖縄返還交渉当時の日本政府事務方の最高責任者だった外務省の吉野文六・元アメリカ局長が、勇気をもって密約の存在を認めた。にもかかわらず、裁判の前提である日米間の密約という重大な疑惑について、正面から判断がなされることはなかった。本丸に到達することなく、入り口で終わってしまった。
 密約を報じた西山太吉氏は国家公務員法違反で起訴され、高裁、最高裁で有罪とされたが、その有罪を支える根拠は正当だったのか。密約の事実があったとすれば、それ自体が憲法違反であり、西山氏を有罪とする根拠そのものがなくなるが、極めて重要なその事実が裁判を通して明らかにされることはなかった。
 沖縄返還協定に反する密約があったとなると、政府は国会や国民を欺いたことになる。重大な憲法違反行為であり、きちんと正さなければいけないが、国民の権利擁護の役割を果たすべき司法は、口をつぐんでしまった。現在の司法の暗い現実の一端が表れている。このままでいいのか、あらためて問わずにいられない。
 西山氏の当初の事件を通し、国民の「知る権利」への関心が高まり、その後の情報公開の仕組みにもつながった。しかし、その「知る権利」は十分に生かされているだろうか。沖縄が現在直面している問題を見ても、米軍再編について膨大な国費が使われる根拠を含め、十分な説明はなされていない。
 また、裁判を通してこの国のメディアの状況をみると、一部のメディアは吉野証言を引き出すなどの成果があったが、全体としてみると、果たして密約の真相を厳しく追及できたか。事実に迫りきれていたか。課題は残されている。(談)(上智大学教授、「沖縄密約訴訟を考える会」世話人)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703281300_02.html

沖縄タイムス 関連記事(3月26日?27日)

2007年3月26日(月) 朝刊 1面
「返還密約」あす判決 東京地裁
 沖縄返還の「密約」をめぐる取材で国家公務員法違反とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)が、国の密約を不問に付した不当な訴追で名誉を傷つけられたとして、国に謝罪と慰謝料などを求めている訴訟の判決が二十七日、東京地裁で言い渡される。沖縄問題の原点とされる返還密約を主題に、国民の知る権利と国の説明責任、メディアの役割が問い直された国家賠償訴訟。判決がどこまで密約の事実認定に踏み込むかが焦点となる。
 これまでの九回の弁論で、米公文書や元外務省高官の新証言を基に密約の証拠を積み重ねた西山さん側に対し、国側は仮に密約があっても西山さんが有罪であることに変わりはないと反論。密約の認否をしないまま結審した。
 西山さん側は、沖縄返還協定を偽造した政府の密約は国民を欺く違法行為で、国家公務員法が保護することを目的としている秘密には当たらないとして、有罪を確定した最高裁判決は誤っていると主張。
 国側は、最高裁は外交交渉の会談内容が法的な保護に値すると判断しており、その中に密約が含まれているかどうかは問題ではないと反論。密約が証明されたことをもって判決が誤りと主張するのは失当だとしている。
 また西山さん側は、二〇〇〇年から〇二年にかけて明らかになった米公文書で密約の裏付けは確定的になったが、政府高官らは事実を否定し続けて西山さんの名誉を傷つけてきたと主張。
 国側は政府高官らの発言は行政活動に関する一般的なコメントにすぎず、また西山さん個人を特定していないため社会的な評価はおとしめていないと反論している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703261300_01.html

2007年3月27日(火) 朝刊 1・3面
国、きょうにも同意申請/普天間代替調査
知事、応じる意向
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で、防衛施設庁は二十六日までに、サンゴの産卵調査など海域での現況調査に着手するため、「公共用財産使用協議書」を二十七日にも県へ提出し、同意申請する方針を固めた。県は「形式が整っていれば淡々と処理していく」(仲井真弘多知事)とし、手続きを進める意向だ。県の同意が得られれば、那覇防衛施設局は業者選定後の四月にも海域調査の準備に乗り出す。
 施設局は二十二日に名護漁協、二十六日に名護市の同意書を得ており、協議書に添付の上、県に提出する。
 二十六日には、施設局職員が県の担当職員に事前説明を行った。施設局から正式に同意申請を受ければ、県は仲井真知事の談話を発表する予定。
 施設局から説明を受けた名護市などによると、調査範囲は一九九九年の閣議決定に基づき、沿岸部の集落から約二・二キロの辺野古沖を埋め立てる従来計画と同エリアに設定。大浦湾から久志にかけての海域で、辺野古崎沖合の平島や長島も含まれる。調査内容はサンゴやジュゴン、藻場の生息・分布調査のほか、波力の調査も行う。
 防衛施設庁は、県と名護市に対し、サンゴの産卵調査などの海域での調査については環境影響評価(アセスメント)の前段となる事前調査として実施する方針を伝達。協議書では「環境現況調査」ではなく、「現況調査」と表記し、環境アセスとは一線を画す体裁を整える。しかし、事前調査として行った場合でも、結果をアセスに反映させることは可能なため、「実質的なアセス着手」との批判も一部にある。また、施設局はアセス手続きの進展や代替施設本体の建設を見据えた業務発注を進めており、県に環境影響評価方法書を送付し、アセスに移行できる態勢も整えている。
 県は現段階での方法書の受理に難色を示す一方、事前調査については「事業者の責任と判断で行うもの」と理解を示している。
     ◇     ◇     ◇     
仲井真知事は柔軟姿勢/防衛研概観
 【東京】防衛省のシンクタンク「防衛研究所」は二十七日、日本周辺の安全保障環境を分析した「東アジア戦略概観2007」を公表した。昨年十一月の県知事選で当選した仲井真弘多氏について「(米軍普天間飛行場)代替施設の県内移設に関して柔軟な姿勢を示している」と指摘。仲井真氏の得票が在日米軍再編に関係する自治体の多くで対立候補の票を上回ったことを強調し、「再編計画の実現可能性は高まった」との見通しを示した。また、中国の政治、経済面での影響力拡大や軍事力の増大に警戒感を示す一方、北朝鮮が再度の核実験に踏み切る可能性に言及している。
 米軍再編の「特徴」として、県内六施設の全面・一部返還を挙げ「単に面積的な意味での地元負担の軽減ではなく、経済的な機会を拡大する意味でも地元負担の軽減につながる」と評価。基地返還と在沖米海兵隊のグアム移転は「相互に結びついている」とし、「パッケージ」で取り組むことの必要性を強調している。
 中国に関しては、昨年十月の東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議開催や六カ国協議への積極的な関与などを挙げ、自らの主導権を発揮できる新秩序構築と米国の影響力削減を狙っていると分析。「既存の地域秩序に満足していないことは明らかであり、日米両国は中国に既存秩序の受容を促し、東アジア協力を推進すべきだ」と提言した。
 「概観」の記述は二〇〇六年一月から十二月までの一年間が対象。同編集部は「政府・防衛省の見解を示すものではなく、防衛研究所の研究者が独自の立場から分析したもの」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703271300_01.htm

沖縄タイムス 関連記事(3月23日?25日)

2007年3月23日(金) 夕刊 7面
海軍病院移設先に文化財
 【宜野湾】米海軍病院の移設先とされるキャンプ瑞慶覧の宜野湾市区で約三千五百年前の土器や古い住居跡などが発見されたことが二十三日、開会中の市議会定例会で明らかになった。
 呉屋等氏(清新会)への答弁。
 市教育委員会の説明によると、二〇〇四年度から〇六年度までの試掘調査で、旧普天間集落より古い約八百から五百年前の柱の跡や、約三千五百年から二千五百年前の土器の破片などが見つかった。
 詳細は三月中に取りまとめ、四月に分析を進めるという。
 文化財の発掘や保護対策などで海軍病院の移設作業にも大きく影響しそうだ。新田宗仁基地政策部長は「文化財の発掘状況を明らかにしなければ工事は入れないはずだ」とし、那覇防衛施設局が予定している今月中の着工は困難との認識を示した。
 一方の施設局は十六日、移設する建設工事の業者を選定。今月下旬から着工し、二〇〇九年三月に完成する予定。
 米海軍病院は日米特別行動委員会(SACO)合意で、キャンプ桑江の大部分返還の条件として、キャンプ瑞慶覧の普天間ハウジング地区への移設が盛り込まれた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703231700_06.html

2007年3月24日(土) 朝刊 1面
嘉手納以南返還/実施計画 来月以降に
グアム移転遅れが影響
 【東京】日米両政府が三月末までに作成を目指す嘉手納以南の米軍基地返還の詳細な実施計画(マスタープラン)が、四月以降にずれ込む見通しであることが二十三日までに分かった。遅れの背景には、在沖米海兵隊八千人のグアム移転計画の詳細が決まらないことがあるほか、関連するキャンプ瑞慶覧の返還面積の確定が難航、個別の基地の返還順序や年次などの明記も困難な情勢。日米は二〇〇七年度以降も協議を継続する方針だ。
 日本政府は大型連休中に予定している日米の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)までには一定の形でまとめる方向で調整を続けている。
 日本側関係者によると、基地返還の検討を進めるには、グアムに移転する海兵隊の部隊名や兵員数の内訳を確定することが前提。しかし、普天間飛行場代替施設の建設計画の日米合意が〇六年末までかかった影響で「米側が検討作業に入ったのは、今年に入ってから」(政府関係者)という。
 海兵隊が使用するキャンプ瑞慶覧の部分返還は、グアム移転計画とも関連するため、調整が難航。このため、返還計画作成は「キャンプ瑞慶覧次第だ」(同)との指摘もある。
 一方、県内に代替施設を確保する必要がある基地と部隊の移設先については、海兵隊の移転計画にかかわらず検討を進められるため、「微修正は残っているが、それほど大きな問題はない」(同)という。
 普天間飛行場を名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に移設するほか、第一桑江タンクファームの給油機能は普天間代替施設に併設。
 牧港補給地区の倉庫機能は、嘉手納弾薬庫とキャンプ・ハンセンに分散移転する方向で検討している。
 〇六年五月の在日米軍再編に関する日米合意文書(ロードマップ)は、嘉手納以南の基地返還について〇七年三月までに「詳細な計画」を作成することを明記した。
 日米の事務当局は今月に入って、米側との調整を加速させているが、日米関係筋は「協議の遅れは否定できない」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703241300_01.html

2007年3月24日(土) 朝刊 1面
名護市も現況調査同意/普天間代替
週明けにも国へ書類提出
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域での現況調査について、名護市は二十三日、週明けにも同意書を佐藤勉那覇防衛施設局長あてに提出することを決めた。これを受けて近く施設局は、海域調査に必要な公共用財産使用協議書の同意申請を県に提出する。
 同日午後、防衛施設庁幹部が同市役所を訪ね、協力を求めた。
 島袋吉和市長は、沖縄タイムス社の取材に対し「県と連携して週明けに対処する。現況調査には名護漁協も同意している。長島や平島も含まれており、反対する理由はない。引き続き沖合側への移動を求めていく」と話した。市は名護漁協の意思確認と庁内での手続きを終え次第、施設局に同意書を提出する。
 海域の調査範囲は、大浦湾から久志にかけての海域。サンゴやジュゴンの生息調査、藻場のほか、波力の調査も行われる。期間は一年以上。名護市は二〇〇三年三月にも辺野古沖の従来計画のボーリング調査に伴い、同意書を施設局に提出している。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703241300_02.html

2007年3月25日(日) 朝刊 27面
「沖縄が当事者、追及を」/返還密約27日判決
 沖縄返還密約訴訟の判決を前に、緊急討論会「復帰35年 あらためて問う沖縄返還密約 私たちはどう向き合うべきか」が二十四日、那覇市の沖縄大学で開かれた。メディア関係者や市民による実行委員会が主催。米軍再編に絡んで「密約は過去ではなく現在進行形の問題だ」との意見が出され、沖縄が当事者として日米両政府に問い続けることを確認した。
 沖縄返還で巨額の対米裏負担をしていた政府の密約をめぐり、西山太吉・元毎日新聞記者が国家賠償を求めている訴訟は二十七日に東京地裁で判決が言い渡される。
 基調報告した代理人の藤森克美弁護士は「密約は虚偽の公文書作成と行使、(密約はないとの)うその国会答弁は偽計業務妨害であり、立派な犯罪だ。裁判ではこの国が法治国家か、官僚による『官治国家』かが問われる」と強調した。
 西山記者の逮捕は一九七二年四月。沖縄は復帰直前の激動のただ中にあった。参加者約八十人を交えた意見交換で、元新聞記者の上江洲由美子さん(68)は「当時沖縄は大きな関心を示さなかった。国家犯罪を告発した記者の有罪判決に対決できないまま、機密漏洩が厳罰になるような時代を迎えてしまい、心が痛い」と目を潤ませた。
 七一年十一月のゼネストで火炎瓶による警察官の焼死を撮影し、証拠を求めた警察にフィルムを押収される言論弾圧を経験したジャーナリストの吉岡攻さん(62)も会場に足を運んだ。「表現の自由が脅かされれば生活の基盤も失われる」と、警鐘を鳴らした。
 実行委員の一人で、西山元記者の取材を重ねてきたジャーナリストの土江真樹子さんは「訴訟では個人の名誉回復ではなく、歴史が裁かれる」と、四時間に及んだ討論会を締めくくった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703251300_04.html

米軍横田基地での有害物質漏れ7年で90件なのに 地元連絡1件のみ

米軍横田基地での有害物質漏れ7年で90件なのに 地元連絡1件のみ
http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY200703240204.html

横田基地、有害物質漏れ7年で90件 地元連絡1件のみ
2007年03月24日16時39分
 米軍横田基地(東京都)やその関連施設で99?06年の7年間に、ジェット燃料など米国内で規制対象になっている有害物質の流出事故が計90件起き、総量は最大で約10万5000リットルに達していることが分かった。このうち地元自治体に事故の発生が伝えられたのは1件だけ。日米合同委員会の合意で米軍側に通報義務があるが、通報は判断権限も米軍側にあり、自治体のチェック機能が働かないのが実情だ。
 米国の情報公開法に基づいて開示された資料から判明した。資料は一橋大大学院生、林公則さん(28)らが入手した。
 公表されたのは99年9月発生の事故から06年5月発生の事故まで。米軍側の流出量などによる区分で分類すると、流出量が1万ガロン(1ガロンは約3.78リットル)以上で、危険度が「公衆の健康や安全に深刻な脅威を与える」とされる「カテゴリー1」の事故は1件。所沢通信施設(埼玉県所沢市)で04年8月に発生、2万900ガロンの軽油が流出した。
 1000?1万ガロンで「公衆の健康や安全に脅威を与える」危険度の「同2」は2件。05年7月に基地内でジェット燃料2400ガロンが流出するなどした。
 残りは100?1000ガロンの流出で「被害も危険も及ぼさない」「同3」が6件、100ガロン未満の「同4」が75件、流出量不明が6件だった。
 米太平洋空軍は「同1?3」の事故は報告書を作成するよう各基地に指示しており、公開されたうち計10件は詳細な報告書が作られていた。
 一方で、地元自治体が把握しているのは、所沢で起きた「同1」の1件だけ。「同2」以下の事故については、地元への情報提供はない。
 外務省によると、日本側への情報提供の手続きは97年3月の日米合同委員会で合意。「公共の安全、環境に影響を及ぼすおそれのある事件・事故が発生した場合、直ちに日本側に通報すべきだ」とし、「危険物、有害物または放射性物質の誤使用、流出で実質的な汚染が生じる可能性」や「墜落などの航空機事故」9項目を列挙。米軍側は外務省に連絡するとともに、各地の防衛施設局を通じて地元自治体へ情報提供する仕組みだ。
 ところが、通報基準となる「公共の安全、環境に影響を及ぼすおそれ」があるか否かの判断は、米軍側に任されているのが現状だ。外務省も「当該事件・事故について、米側からしかるべく通報が行われるものと考えている」とするにとどまっており、燃料漏れ事故について「米軍側からの報告を取りまとめた資料はない」という。
 東京防衛施設局によると、資料が残る03?06年で、基地側からの通報件数は計18件。うち燃料漏れに関するものは所沢通信施設での1件という。残りは、部品落下などの航空機事故や米兵らの犯罪に関するものなどで、燃料漏れについてはほとんど知らされていない。
 資料を分析した林さんは「日米地位協定によって、米軍側には米国内基地で汚染除去のために定められた手続きも適用されないうえ、原状回復義務もない。基地汚染の全体像が把握できるよう、日本側の基地への立ち入り調査権の確立も必要だ」と指摘している。
 米軍横田基地は東京都西部の5市1町に広がり、都は「軍民共用化」を求めている。