2007年9月24日(月) 朝刊 1・2・21面
自民総裁に福田氏/沖縄問題は不透明
自民党総裁選は二十三日午後、党所属国会議員と各都道府県連代表者による投開票を行い、福田康夫元官房長官(71)が投票総数の62・5%に当たる三百三十票を得て大勝、第二十二代総裁に選出された。
自民党の新しい顔が二十三日、福田康夫元官房長官に決まり、父親と同じ七十一歳で首相の座に就く。麻生太郎幹事長と争った党総裁選。「国民の声を聞いていない」と、しらけムードも漂った。県内からは「沖縄に対する理解度が未知数」と戸惑いの中、基地問題や県民大会を控えた教科書検定問題の関係者からは、期待とあきらめの声が交錯した。
米軍普天間飛行場の名護市移設を容認する荻堂盛秀同市商工会長は「(福田氏が)沖縄をどの程度理解しているか未知数だ。新しい総裁にはいつも期待するが、その都度期待はずれになっている」と、こう着状態の移設問題にやるせない様子。福田氏が北朝鮮問題で「対話」を強調する点を引き合いに、「基地問題でも地元の意向に耳を傾けてくれることに期待したい」と話した。
移設先の辺野古区有志らでつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「米軍再編の方向性が大きく変わるとは思えない。粛々と移設作業を進めてほしい」と述べた。
一方、ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「沖縄問題を変える人ではない」ときっぱり。県内の海兵隊がグアム移転後も沖縄に一万人残ることに「県民に対してうそをつく自公政権を変えるべきだ」と言い切った。
ジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨事務局長は「安倍内閣を継承するだけのつなぎの総裁。沖縄問題も進展する期待もない」と語った。
米軍機の未明離陸に抗議の声を上げ続けている、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「福田氏が、沖縄になじみがあるとは聞いていないが、沖縄の痛みを分かって、騒音被害や跡地利用問題など基地問題にこれから真剣に取り組んでもらいたい」とした。
「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「福田氏は、『地方との信頼回復』と言っているようだが、それならまず、伊吹文明文科相を留任させないでほしい。沖縄の意思を受け入れてもらいたい」と話した。
◇ ◇ ◇
沖縄相経験者では初/検定問題対応に注目
【東京】自民党総裁に選出された福田康夫氏は、官房長官に就任した二〇〇〇年、沖縄開発庁長官を一カ月余り兼務した。沖縄担当相経験者が首相に就けば初めてのケースになる。〇四年五月まで務めた官房長官時代には、米兵による事件・事故への対応や沖縄振興などで稲嶺恵一前知事ら県関係者と頻繁に面談しており、「沖縄の課題を熟知している」と県選出国会議員。近隣諸国への配慮で靖国神社を参拝しない考えを示すなど、町村派では数少ない「ハト派」とされ、安倍政権が撤回を拒んだ高校歴史教科書の検定問題への対応も注目される。
福田氏は二十五日に衆参両院の首相指名選挙を経て、首相に選出される見通し。県関係の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」会長の仲村正治衆院議員は、高校歴史教科書の検定問題に関する県民大会後に福田氏への直談判を申し入れる考えを示し、事態打開への期待感をにじませた。
沖縄開発庁長官時代は任期が短かったこともあり目立った実績はないが、官房長官時代には小泉純一郎首相の施政方針演説(〇三年一月)に初めて盛り込まれた「沖縄科学技術大学院大学構想」を主導した。
それまでは内閣府沖縄担当部局を中心に取り組んでいたが、「実現に向けて政府の体制確立が重要」と、政府一体で取り組む必要性を強調。政府内に大学院大構想の関係閣僚会合を立ち上げ、予算確保など座長として構想実現に道筋を付けた。
〇一年六月に北谷町で起きた米兵による女性暴行事件では、容疑者の身柄引き渡しをめぐる日米交渉を指揮した。当時を知る政府関係者は「内閣の番頭として、基地問題の行方を心配していた」と明かす。
普天間飛行場の名護市辺野古沖への代替施設建設をめぐる県と政府の協議が本格化していた〇三年五月には、県商工会議所連合会会長を務めていた仲井真弘多氏(現知事)とも会談。代替施設建設の際に県内企業の重点活用を求める仲井真氏に対し、「最善の努力をする」と理解を示した。
一方、同月末には米紙が報じた在沖米海兵隊の兵力撤退計画を受け、県が独自に米国防総省に事実関係を照会したことに、「政府に聞いてくるなら話も分かるが、どこに問い合わせをしたのか。政府がそういう交渉をしている」と記者会見で不快感を表明。報道陣に「どれだけ権威がある情報なのか。よく確認してください。常識で」と述べるなど、クールで皮肉屋の一面をのぞかせた。
福田氏の父で、元首相の故赳夫氏も沖縄振興に携わっていた。大蔵相時代に、復帰前の立法院与党だった民主党(当時)の吉元栄真副総裁らとパイプを築き、米軍統治下の沖縄への政府援助(日政援助)の拡大に取り組んだ経緯がある。
沖縄問題に指導力を/県政反応
福田氏が次期首相となる自民党総裁に選出されたことに、県幹部らは「沖縄開発庁長官を務めた経験もあり、沖縄の実情にも理解がある」「リーダーシップを発揮して、基地問題など沖縄の課題解決に努めてほしい」と期待を寄せた。
県幹部の一人は「沖縄は全国と比べても難しい問題が山積している。これらの課題解決は官僚主導では困難で、政治的な指導力が不可欠だ」と指摘。「福田新総裁は人柄的にも実直そうで、沖縄の抱える痛みを親身になって理解し、県民の期待に沿って課題解決を図ってくれるものと期待している」と述べた。
別の幹部は「福田氏は沖縄をよく知っていると思うので期待できる。那覇空港の拡張整備など、沖縄振興の主要プロジェクトは着実に進めてほしい」と注文。
安倍政権が掲げたアジア・ゲートウェイ構想の行方を懸念しつつ、「(福田氏は)アジア重視の視点を持っており、方向性は大きく変わらないと思う」との見方を示した。
また、小泉改革の影響で広がった都市と地方の格差問題に触れ「地方が自立できるよう、財政面などを含め地方に配慮した政策を示してほしい」と期待する幹部もいた。
沖縄の課題解決に期待/仲井真知事コメント
本日、福田康夫氏が自由民主党総裁に選出されましたことに、心からお祝いを申し上げます。
福田氏は、沖縄開発庁長官を務められたことがあり、沖縄の実情も理解されているものと思います。
総理に就任された暁には、基地問題の解決や自立型経済の構築など、沖縄の抱える諸課題の解決に向けてご尽力を賜りたいと思います。
私も、できるだけ早い時期に直接お会いして、沖縄の諸課題をご説明申し上げたいと考えております。
「沖合移動に理解求める」/名護市長
【名護】自民党新総裁に福田康夫氏が選出されたことについて、米軍普天間飛行場移設先の名護市の島袋吉和市長は二十三日、「党としての態勢を立て直し、沖縄問題にしっかり取り組んでもらいたい。名護市としてはこれまで同様、V字形滑走路をできるだけ沖合へ、というスタンスを申し上げる。地元の意向をくみ取っていただけるよう、ご理解とご協力をお願いしたい」と話した。
「普天間」解決は海兵隊の撤退で/宜野湾市長
【宜野湾】自民党の新総裁に福田康夫元官房長官が選ばれたことについて、宜野湾市の伊波洋一市長は二十三日、「県民の基地への思いが分かる内閣をつくってほしい」と注文した。
普天間飛行場問題については「新たな基地を建設せず、対話による安全保障を実現してほしい。沖縄から海兵隊が撤退できるよう道筋を付け、抜本的対策を講じるべきだ」と話した。
県関係5議員 福田氏に投票
【東京】二十三日に投開票された自民党総裁選で、県選出・出身の自民党国会議員五人は、全員が福田康夫氏に投票した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_01.html
2007年9月24日(月) 朝刊 21面
県内首長、文科省を批判/専門家加え再審議を
高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、文部科学省の教科書審議会に沖縄戦の専門家がおらず、同省の検定意見原案が議論もなく通ったことに、県内四十一市町村の首長は「記述に手を加えるならば専門家の意見を聞くべきだ」と同省を厳しく批判していることが二十四日、本紙のアンケート調査で明らかになった。また、目抜き通りでの大会告知、バス手配など大会の準備も各自治体で進んでいる。
アンケートは二十一日までに回答を得た。日本軍の強制の記述削除について文科省は「学術的な検討を得た審議会の決定」と説明している。
金城豊明豊見城市長は「もともとあった記述に手を加えるならば専門家の意見を聞くことが、学術的にも公正・中立ではないか」と指摘。城間俊安南風原町長は「文科省が審議過程を正当化する姿勢は疑問」とした上で、両首長ともに「集団自決」の日本軍の強制を否定する「文科省の意図を感じる」と訴えた。
大浜長照石垣市長は「これまでも専門家の審議を経ずに歴史的事実を歪曲していないか」と懸念を表明。座間味村の仲村三雄村長は「沖縄戦の専門家もおらず『学術的な検討を経た』とは言語道断だ」と同省を厳しく批判した。
教科書検定制度の在り方について知念恒男うるま市長は「審議会を公開し、公正な審議を行うべきだ」と主張。翁長雄志那覇市長は「文科省は検定意見を撤回し、今回出てきた新たな証言も含めて学術的に検討してはどうか」と訴えている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_02.html
2007年9月24日(月) 朝刊 2面
「普天間」県民意思が鍵/小川氏講演
県経営者協会(知念榮治会長)の経営懇話会が二十一日午後、那覇市のかりゆしアーバンリゾート那覇であり、国際政治・軍事アナリストの小川和久氏が「国際水準から見た日本の危機管理」と題して講演した。
小川氏は、現行の日米安全保障体制が国防上も軍事費面でも最良の選択肢との認識を示すとともに、危機管理の司令塔となる日本版国家安全保障会議(NSC)の早期創設の必要性を強調。
膠着状態にある米軍普天間飛行場の移設問題については「県民が当事者としての危機感を持って政府と向き合い、動かさないといけない」と訴えた。
小川氏は「日米同盟に頼らず、自立した軍事力で今のレベルの安全をキープするには、自衛隊員が現在の約五倍の百二十万人、軍事費も二十兆円は必要」と説明。「(日米同盟か、自主防衛路線がいいのか)コストとリスク面から国民に問うべきだ」と語った。
返還同意から十年経過しながら進展しない普天間移設問題は「政府に戦略的思考がないのが原因」と指摘。縦割り思考の官僚に頼っては展望は開けず、政治が主導権を持って対応していかねばならない―と強調した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_07.html
沖縄タイムス 社説(2007年9月24日朝刊)
[福田自民党総裁]
難局打開は容易でない
緊急避難的な党首選び
自民党総裁に福田康夫元官房長官が選ばれた。二十五日に国会で第九十一代首相に指名され、同日中にも新内閣を発足させる予定だ。
緊急避難的な党首選びだった。
総理総裁を目指すからには、本来、明確な政権構想が必要だ。こういうことをしたいという力強いビジョンを発表し、構想実現のための具体的な政策を提示して対立候補と論戦を展開することが求められる。
だが、本格的な政策論争が展開されたとは言い難い。
安倍政治の功罪を論じた上で、参院選の民意にどう答えるか、具体的に提示すべきであったが、安倍政治の総括は封印されたままだった。
「政治とカネ」の問題にしろ年金問題にしろ、国民の信頼を回復するための具体的な処方せんはついに示されなかった。
緊急登板を余儀なくされた福田氏にそこまで言うのは酷かもしれないが、正直な話、総理総裁になって何をしたいのかがあまり伝わってこなかった。
選挙期間中に示された構想はあまりにも付け焼き刃的で、本人も認めるように「準備不足」はいかんともし難いものがあった。
小泉純一郎前首相の郵政民営化、安倍晋三首相の憲法改正に代わる福田氏ならではの独自の政権構想を早急に練り直し、国民に示すべきである。
福田氏の政権構想を吟味することもなく、党内九派閥のうち八つの派閥が雪崩を打って早々と福田氏支持を決めたのも今度の総裁選の大きな特徴だ。
総裁選が告示された十四日に、派閥を率いる山崎拓、古賀誠、谷垣禎一の三氏がそろって福田氏に会い支持を伝えた。「小泉―安倍」路線の修正を期待しての支持表明である。
勝ち馬に乗る心理も加わって、この流れが加速し、あとは消化試合の様相を呈した。
八つの派閥がなぜ福田氏を支持したのか。その真意が実は国民の側からはよく分からない。派閥政治の復活を思わせる動きであった。
麻生太郎幹事長が予想外に善戦したのは、古い自民党への回帰の動きを警戒したからではないだろうか。
アジア外交で路線転換
総裁選で路線転換を明示する場面がなかったわけではない。
第一に、対北朝鮮政策。麻生氏が「圧力」を強調したのに対し、福田氏は強硬一本やりの安倍路線の見直しを示唆し、「私の手でこの問題を解決したい」と強い意欲を見せた。
第二に、靖国神社への参拝問題。「アジアの一員たることを機軸とする外交」を打ち出した福田氏は「相手が嫌がることをする必要はない」と踏み込んだ姿勢を見せた。
第三に、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更問題。福田氏は、安倍首相が進めてきた憲法解釈の変更に慎重な姿勢を示した。
安倍政治との違いは明確だ。国家主義的な政策を推し進めてきた安倍政治からの路線転換は、参院選に示された沖縄の民意とも合致する。新政権の取り組みを注視したい。
ただ、テロ対策特別措置法については、臨時国会に新法を提出する考えを明らかにしており、野党と正面衝突する事態も予想される。なぜ、インド洋上での給油活動の継続が必要なのか、活動実態の情報開示が先決だ。
福田氏は、構造改革路線の継続と改革の負の遺産に取り組む考えを明らかにした。財政再建と格差是正をどう両立させていくか、これまたかじ取りは容易でない。
「県民大会」にどう対応
総裁選後の記者会見で福田氏は、全員野球を強調した。周囲の評価も「安定感」と「慎重さ」と「バランス感覚」という点で一致する。同じ派閥の小泉前首相とも安倍首相とも異なる資質だ。
福田氏には何よりも、「小泉―安倍」路線の負の遺産に向き合い、政策転換に踏み出すことを求めたい。
小泉政治は、地方の現実をあまりにも軽視し過ぎてきた。路線転換は決してバラマキ政治への復帰を意味しないし、古い自民党路線への回帰であってはならない。
米軍再編問題や教科書検定問題など、沖縄県が抱える課題にどう取り組んでいくか。いずれも政府と地元との溝が深く、膠着状態にあるだけに、これまでの政権と異なる姿勢を示さなければ現状打開は難しい。
二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への対応が最初の試金石だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070924.html#no_1
2007年9月25日(火) 朝刊 27面
県民大会の日にパネル展/東京から同時抗議
検定意見撤回を求める思いを東京でも訴える―。「憲法9条―世界へ未来へ沖縄連絡会」(9条連、海勢頭豊共同代表)は県民大会と同日の二十九日、東京の品川区立総合区民会館で「告発!『集団自決』の軍命削除パネル展―軍隊は住民を守らない―」を開く。
文部科学省の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍の強制についての記述が削除された問題を、沖縄タイムス紙面や、検定前と検定後の高校教科書を展示することでアピールする。今年で三回目を数え、約二千三百人の来場者が見込まれている「輝け9条!世界へ未来へフェスティバル」(主催・9条フェスタ二〇〇七事務局)の一環。
「記事の流れを工夫した方がいいんじゃないか」「見出しを付けたら分かりやすいのでは」―。二十三日、9条連のメンバー十人が那覇市古島の教育福祉会館に集まり、パネル展に向けての話し合いを持った。東京に行くメンバーの中からは、「史実は絶対にゆがめさせない」「今行動しなければ、やられっ放しになる」などの声が上がる。
会場で慶留間島の「集団自決」をテーマにした自作の平和絵本「松三の島」の読み聞かせを行うのは元教諭の知念智慧子さん。これまで小学校や児童館などで、千人以上の児童に沖縄戦の悲惨さを伝えてきた知念さんは「国の横暴は許さない。沖縄で県民大会に参加している気持ちで声を発したい」と意気込む。
当日、県内に残る海勢頭共同代表は「今回の問題は県民だけじゃなく、国民の問題。軍国主義を正当化する流れを阻止しなければならないことを、しっかり強調してきてほしい」と期待を込めた。
また、三十日に大田区産業プラザで開かれる同フェスティバルの総会では、「軍命」削除に抗議する内容の特別アピールが採択される予定。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_01.html
2007年9月25日(火) 朝刊 27面
旧日本軍の遺物? 火炎放射器出土/第32軍司令部壕
旧日本軍のものとみられる火炎放射器が、那覇市首里にある第三二軍司令部壕から見つかり、糸満市の県平和祈念資料館で十月二十一日から開かれる企画展で一般公開される。同資料館によると、旧日本軍の火炎放射器が見つかるのは珍しいという。
火炎放射器の高さは約四十七センチ、幅約三十九センチで、八月二十九日に壕内の第二坑道の中間地点で見つかった。種類などについては現在調査中という。
戦跡遺跡や出土品発掘のために調査を進めていた県平和祈念資料館の城間美明主査は「旧日本軍の火炎放射器を見たのは初めて。企画展前に発見され、とても貴重な資料」と語った。
沖縄戦研究家の久手堅憲俊さん(76)によると、見つかった火炎放射器は太平洋戦争初期に落下傘部隊用に使用されたもので、「県内に持ち込まれている数は少なく、司令部の守備兵が守備用に置いていたのでは」と分析する。
同館の城間主査は「歴史を正しく伝えるのが私たちの責務。二十九日の(教科書検定意見撤回を求める)県民大会の後も若い世代に戦争の実態を伝えたい」と語った。
同資料館で十月二十一日から始まるのは第八回特別企画展「沖縄戦と戦争遺跡?戦世(イクサユー)の真実を伝えるために?」で、火炎放射器以外に県内の戦争遺跡約百五十件を紹介する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_02.html
2007年9月25日(火) 朝刊 27面
自民幹事長 伊吹氏起用/関係者「心改めて」
自民党幹事長に伊吹文明文部科学大臣が決まったことに「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らは二十四日、新しい文科相へ期待を込める一方で、伊吹幹事長には「心を改めて」とくぎを刺した。
小渡ハル子副実行委員長(県婦人連合会長)は「党ナンバー2への就任を機に、沖縄の問題に理解を示し、心を改めてほしい」と話した。「検定意見撤回は県民の願い。自民党の県選出国会議員は福田康夫新総裁や伊吹新幹事長に強く要望してほしい」と期待した。
県民大会実行委員の諸見里宏美県PTA連合会長は「文科相が変わるので状況は好転するかもしれない」と歓迎。その一方で「新大臣は今回も問題に理解を示し、検定意見の撤回に応じてほしい」と要望した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_03.html
琉球新報 社説
拉致問題 日本に吹く追い風生かせ
北朝鮮による日本人拉致問題の解決を後押しする動きが米国内で相次いでいる。拉致問題への対応は、25日に発足する福田内閣にとっても重要な外交課題の一つだ。27日から北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議が始まる。
日本への追い風をてこに、拉致問題の具体的な進展につなげることができるか。安倍晋三首相に代わって国政のかじ取りを担う福田康夫新首相は早速、指導力や外交手腕が問われることになる。
米国からの追い風の一つは、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除問題で、ブッシュ政権を支える共和党が条件を付ける法案を提出する構えをみせていることだ。
北朝鮮が核施設の無能力化や核計画を申告するかが6カ国協議の焦点になっている。北朝鮮がこれに応じた場合、米政府は年内に指定解除に踏み切る方針を固めているが、法案は、指定解除のハードルを下げないためいくつかの条項を盛り込んでいる。
指定解除の「基準」として「日本人拉致被害者の解放」を真っ先に挙げた。法案は週明けにも提出される見通しだ。
2つ目には、訪米中の町村信孝外相との会談でライス米国務長官が「北朝鮮との関係を発展させるために日本との関係を犠牲にすることはない」と述べたことだ。指定解除に際しては日米関係にも考慮し、慎重に対応する考えを伝えたものだ。
ライス発言の背景には、米朝関係の進展に伴い北朝鮮による揺さぶり戦術で、日本が6カ国協議の枠組みから取り残される懸念が高まっていることへの配慮もあるとみられる。
ただ事は単純ではない。6カ国協議を仕切って米朝関係進展を急ぐヒル国務次官補らに対する共和党保守派の不満や、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に期待する米国の思惑などが働いているのは間違いあるまい。
とはいえ、日本は明るい兆しを生かさない手はない。政府は米国を中心に中韓、ロシアとも緊密な連携を重ね、どん詰まりの拉致問題に風穴を開けるべきだ。
(9/25 10:45)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27485-storytopic-11.html
2007年9月25日(火) 夕刊 1面
嘉手納議会、謝罪要求/未明離陸 司令官発言
【嘉手納】米軍嘉手納基地司令官のブレット・ウィリアムズ准将が「未明離陸は十年は続く」などと発言した問題で、嘉手納町議会の基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)は二十五日、「住民を無視、軽視している」として、発言撤回と謝罪を求める抗議決議と意見書を二十八日の臨時会に提案することを決めた。
岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などがクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している問題についても、同戦闘機の飛来、訓練中止、両爆弾の撤去などを求める抗議決議と意見書を提案する。
嘉手納基地司令官は、F15機などの未明離陸に対して嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)メンバーが二十一日に抗議した際、「抗議があるのは沖縄だけ」「基地がある限り未明離陸は継続する。十年は続くだろう」などと発言した。
委員会では、未明離陸について沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会が意見交換し、より効果的な活動方法を検討することも確認した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_01.html
2007年9月25日(火) 夕刊 5面
悲劇体験 歌で伝える/元教諭源さん「事実残したい」
元高校音楽教諭の源啓祐さん(68)=那覇市=が、渡嘉敷島で生まれ、「集団自決(強制集団死)」に巻き込まれた体験を基に作曲した歌を二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で披露する。当時六歳だった少年の目の前で繰り広げられた悲劇を「悲しい思い出だが、事実を後世に残したい」と語った。
演奏されるのは、「白玉の塔」と「祈り」の二曲。
源さんは約四年前に渡嘉敷島を訪れたとき、「集団自決」などで戦死した多くの犠牲者が眠る慰霊碑「白玉之塔」に記された一つの詩に心を打たれた。
「忘れじと思う心は 白玉の塔に託して」。
当時六歳。「集団自決」の起こった現場で人々が悲鳴を上げ、死んでいく情景を今でも忘れることができず、その思いを曲に込めた。二年前から三月二十八日に白玉之塔で開かれる慰霊祭で流している。
西山で手榴弾を手にしたが不発だったため、母、弟とともに生きる道を選んだ。
戦後も母親から「軍の命令で『集団自決』が起こった」「軍人の食糧確保のために住民は犠牲になった」ことを何度も聞かされたという。
「白玉の塔」は、歌手の新垣寿賀子さん(45)に「地の底から死者たちが訴えるように低い声で歌ってほしい」と依頼した。戦争体験者の男性に歌ってほしいとお願いしたが、「あまりにも重過ぎて歌えない」と断られ、戦後生まれの新垣さんに託した。
一方、「祈り」を七年前から県内外で歌う歌手の砂川京子さん(60)は、源さんの体験がつづられた歌詞を見つめ、「二番は涙が出て歌えなくなり、いつも歯を食いしばって歌う。この歌は源先生の心の叫びそのもの。どんなむごいことでも事実を隠してはいけない」と戦争の恐ろしさを再認識したという。
歌詞には「集団自決」の文字は出てこないが、源さんは当時の情景を思い出し、「僕には歌えない」とつぶやいた。
目の前で人々が命を絶った事実を「これはゲームのようなバーチャルの世界じゃない。若い人にも戦争の恐ろしさを知ってほしい」
砂川さん、新垣さんも「みんなの心に響くよう、歌いたい」と声を合わせた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_02.html
2007年9月25日(火) 夕刊 1面
オスプレイ使用 政府「予定ない」/普天間代替で回答
【東京】政府は二十五日の閣議で決定した答弁書で、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)で想定する「使用を予定する航空機の種類」はCH53、CH46、UH1、AH1の回転翼機と、C35、C12の航空機であることを明らかにした。垂直離着陸機MV22オスプレイは「米政府から現時点で何ら具体的な予定はないとの回答を得ている」と否定した。
一方、在日米軍再編で新たな負担が生じる自治体に対し、防衛大臣裁量で配分される再編交付金の額や算定点数については「再編関連特定周辺市町村が指定されていない現時点で答えるのは困難」と明らかにしなかった。
糸数慶子参院議員の質問主意書に答えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_03.html
2007年9月26日(水) 朝刊 31面
出版社 訂正申請の方針/「集団自決」で文科省に
軍強制明記で一致
【東京】教科書執筆者と教科書会社の編集者による「社会科教科書執筆者懇談会」が二十五日、都内で開かれた。文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除させた検定への対応で、日本軍の強制・強要・誘導を明確にするため、各社が十月末から十一月初めをめどに文科省への訂正申請を目指す方針を確認した。参加者によると、懇談会の再開は一九九〇年代半ば以来。「集団自決」の記述を削除された五社すべてを含む八社から二十五人が参加した。
呼び掛け人で執筆者の石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)によると、出席者からは「検定制度を見直すべきだ」「教科用図書検定調査審議会の審議委員の選び方が不透明で、不服を申し立てても同じ結果になる。第三者機関が必要だ」など検定の仕組みを問題視する意見が相次いだ。
また、過去に懇談会の存在が文部省(当時)への歯止め役を果たしていたことを念頭に「執筆者や教科書会社間の連携が途絶えていたことも(日本軍の強制を削除した検定の)原因の一つだ。沖縄の人に申し訳ない」との反省の声も上がった。
参加者は懇談会を定期的に開催することで一致。当面、訂正申請に向けた各社の動向を報告する。次回会合は、二十九日の県民大会の結果を受けた要請団の上京直後の十月十七日に開く。
石山さんは十数年ぶりの懇談会再開に「参加者が予想以上に多く、問題意識を共有できたことに手応えを感じる」と述べ、運動の全国的な広がりに期待感を示した。
呼び掛け人の一人で琉球大学の高嶋伸欣教授も参加、県民大会に向けた沖縄の動きなどを報告した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_01.html
2007年9月26日(水) 朝刊 1面
渡海文科相 柔軟姿勢/「県民感情考え慎重に」
【東京】高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、福田内閣で初入閣した渡海紀三朗文部科学大臣は二十五日の会見で、沖縄側が検定意見の撤回を求めている問題について「県民感情を考えたときに、より慎重に取り扱っていかなければいけない」と柔軟に対応する考えを示唆した。
渡海文科相は、同検定が歴史的事実を理解する専門家が参加し、内容を検討しているとの認識を示し、「政府がとやかく言うべきではないと正直思っている」とも発言。その上で「しかしながら、中身の問題については沖縄の中で非常に大きい。率直に私自身の実感だ。もう少し具体的事実がどうなのか精査した上で取り組みたい」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_02.html
2007年9月26日(水) 朝刊 2面
「再編変更」は困難視/石破氏、前内閣姿勢を踏襲
【東京】福田内閣で防衛相に就任した石破茂氏は二十五日夜、首相官邸で会見し、米軍普天間飛行場の移設など在日米軍再編について「現在、政府として対応方針を示して米軍再編に取り組んでいる。今までこのやり方が最善であるということであり、合理的な理由がない限りこれを変更することは困難」と説明した。日米合意を堅持した安倍内閣のスタンスを踏襲する考えを示し、普天間代替施設(V字案)の沖合移動を求める県や名護市をけん制したものとみられる。石破氏は「基地を受け入れていただいている結果として、わが国の独立と世界の平和のために多大な貢献をしていただいている地元の方々のご理解を得るということは当然。一切聞く耳を持たぬ姿勢はあるべきではない。地元の理解を得るべく誠心誠意、最善の努力をしていきたい」との考えも強調した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_03.html
2007年9月26日(水) 朝刊 31面
文科相発言に期待感/福田内閣発足
福田新内閣が二十五日発足した。県内では新しい顔触れに戸惑いと期待が交錯した。渡海紀三朗文部科学相が「県民感情に配慮する」と発言したことに、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らは「県民の気持ちを受け止めてくれるのでは」と期待しつつ、一方で「(どういう人物か)よく分からない」との受け止めも。防衛庁長官を含め二度目の就任となる石破茂防衛相については「経験豊富で適任だ」「誰が大臣になろうと県民の要望には応えられない」と評価が分かれた。
県民大会の仲里利信実行委員長は「初めて聞く名前だ」と話す。渡海文科相の発言には「県選出国会議員に日程調整をお願いし、十月の要請はお会いしたい」と期待を膨らませた。
高P連の西銘生弘会長は「検定意見撤回を前向きに考えるという意味であれば、本当にありがたい」と歓迎。その上で「大会には多くの保護者や高校生を参加させ、県民がこれだけ真剣なんだと政府に伝えたい」と語った。
沖子連の玉寄哲永会長は「どのように県民に配慮するかが重要だ。新大臣は検定意見を取り下げるという姿勢をはっきり示してほしい」と指摘した。
米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で揺れる名護市。石破氏の防衛相就任に島袋吉和市長は「メディアでの発言や討論から沖縄問題にも詳しいのではないかとの印象を受ける。沖縄のスタンスをサポートできる大臣であってほしい」と期待感をにじませた。
キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に賛成する荻堂盛秀名護市商工会長は「防衛問題に精通しており今の難しい局面で最も適任だと思う。地元の要望に耳を傾けてくれるのでは」と話した。
一方、移設に反対するヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「米軍再編で沖縄の基地が強化される中、誰が大臣になろうとも政権が変わらない限り県民の要望に応えられない」とはき捨てた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_04.html
2007年9月26日(水) 朝刊 31面
普天間代替施設「陸地上空で飛行も」/米政府の06年文書
海兵隊が見解
米軍普天間飛行場代替施設の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、米海兵隊が二〇〇六年四月の防衛庁(当時)との協議で、「最大限可能な限り(海側に)回避するようにしても、航空機が陸地の上空を飛行する場合はあり得る」との見解を示していたことが二十五日、明らかになった。ジュゴン保護のため米連邦地裁で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している原告団が、米政府提出の文書の一部を翻訳し、公開した。
海兵隊と防衛庁の協議は、現行の「V字形案」が示される直前に東京都内で行われた。
会議後、米第三海兵隊遠征軍大佐が同遠征軍司令官に報告した文書によると、滑走路二本が中央より西側に寄ったX字形の「ヌカガ2」案を協議。文書末尾では「防衛庁が新たなるV字案を作成したのでこの計画(ヌカガ2)はこれ以上進展しないと思う」としている。添付図面で、案がI形、中央で交わるX形、交差部が西側に寄ったX字形案などが示されている。
文書では、同計画について「最重要点は、地元沖縄の人々に対してオープンでなければならない」と指摘。その上で「この計画に対する地元沖縄の人々の容認がこの飛行場の建設における運用上の必要条件と結び付いているからである」と、情報開示の必要性も主張している。原告メンバーの真喜志好一さんは「V字案もこのX字案も基本的に変わらない。政府は、住民に集落上空は飛ばないと説明し、環境影響評価(アセス)方法書にも周辺地域上空の飛行を回避するとしている。米軍の主張からすると虚偽といえ、問題だ」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_05.html
2007年9月26日(水) 朝刊 31面
米軍車両、藻場通過/国の調査器材破壊
【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設に反対する市民団体のメンバーらは二十五日、現況調査のため沖縄防衛局が名護市辺野古沖に設置した調査器材の一部が破壊され、ジュゴンの餌となる藻場に残された水陸両用車の通行痕を撮影した。市民団体などによると、二十四日午後零時半ごろ、米海兵隊の水陸両用車十三台がキャンプ・シュワブからキャンプ・ハンセンに向け海上を移動、現場近くを通ったという。
ジュゴンのはみ跡の調査のため、シュワブから約五百メートルの沖合で潜水した際に発見。ジュゴンなど海中生物の藻場の利用状況や鳴き声を調査するパッシブソナー(音波探知機)を設置するための架台が破壊されていた。本体は台風対策のため取り外されていた。
撮影した「ジュゴンの里」の坂井満さんは「政府は環境調査のために器材を設置しているが、米軍は関係なしに訓練している。このような状況ではジュゴンを追い出しているようなものだ」と批判した。平和市民連絡会の当山栄事務局長は「調査機器が船の航行に危険を及ぼすと指摘してきた。機器のあるところで米軍が訓練するのは、日米両政府間の意思の疎通が図られていない証拠だ」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_06.html
琉球新報 社説
福田政権始動 早期解散で民意問え
福田康夫首相が25日就任し、福田政権が始動した。憲政史上初めて、故福田赳夫氏に続く親子2代の首相が誕生した。
5千万件に及ぶ年金記録不備問題の解決に全力を挙げるとともに、都市と地方の格差の是正を図り、景気回復に取り組んでほしい。
沖縄戦「集団自決」で日本軍による強制の記述を削除・修正した教科書検定問題では真実の継承を求める県民の声に耳を傾け文部科学相に撤回を指示してもらいたい。
しかしながら、参院選で自民党が惨敗した中で誕生した政権であり、十分に民意を踏まえた内閣とは言い難い。早期に解散総選挙を実施し国民の審判を仰ぐべきだ。
派閥政治の復活
福田政権で危惧(きぐ)されるのは、古い自民党の派閥政治が復活することだ。
福田氏は自民党総裁就任後、党幹事長に伊吹文明、政調会長に谷垣禎一、総務会長に二階俊博、選挙対策委員長に古賀誠の各氏を起用した。党4役はいずれも、それぞれが率いる派閥の領袖である。
組閣に際しても、最大派閥の町村派会長・町村信孝前外相を内閣の要となる官房長官に据えたほか、高村派を率いる高村正彦前防衛相を外相に充てた。
総裁選で福田氏を支持した8派閥の領袖のうち6人までを党役員または閣僚として処遇している。
福田氏は総裁選の前から、町村派名誉会長の森喜朗元首相と頻繁に意見交換していた。
党内バランスを重視したと言えば聞こえはいいが、総裁に選出された経過から見ても、最大派閥の意向が人事を左右する「派閥政治」に先祖返りしていると言わざるを得ない。
都市と地方の地域間格差、年金記録不備、政治とカネの問題、景気浮揚、財政再建など、国政には困難な課題が山積している。
とりわけ、小泉純一郎、安倍晋三両氏の改革路線の結果生み出された格差の問題は深刻だ。「弱者」を生み出す現状は早急に改める必要がある。
福田首相は、総裁選で打ち出した「地方の再生」「農山漁村の所得、雇用の増加」の実現に向けて、具体的な施策を早期に国民の前に提示すべきだ。
外交面では、引き続き中国、韓国との関係改善を進めることが不可欠だ。
対北朝鮮では、拉致被害者と家族の帰国、真相の究明、容疑者の引き渡しなどを早期に実現させることが求められる。
景気浮揚のため公共事業費の増額を求める声が自民党内でも強まる中で、どう財政再建を進めるのか、手腕が問われている。
国政のかじ取りに当たって、党利党略や派利派略に左右されることがあってはならない。
あくまで国民の目線で政治を進めなければならない。
歴史の真実継承を
教科書検定意見撤回の可能性について、伊吹自民党幹事長は文部科学相在任中「政治による教育への介入になるので難しい」との見解を最後まで崩さなかった。
教科用図書検定調査審議会に検定意見の原案を示して修正を求める意見を出させたのは文科省である。にもかかわらず撤回を求められると審議会を盾にして拒むというやり方は責任逃れにほかならず、県民を愚弄(ぐろう)するものだ。
文科省の教科用図書検定規則によると、文科相には発行者に対し訂正の申請を勧告する権限が与えられている。
福田首相は、県選出・出身国会議員の意見も踏まえた上で、自らリーダーシップを発揮し文科相に訂正を勧告させるべきだ。歴史の歪曲(わいきょく)は絶対に許されない。
沖縄は去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われ、20万人余が犠牲になった。戦後の米軍施政下で広大な土地が米軍基地として強制的に接収されている。
復帰後35年を経た現在も、全国の米軍専用施設面積の4分の3が沖縄に集中している。県民は、日常的に基地から派生する事件・事故に脅かされている。
中でも、市街地の真ん中に位置する普天間飛行場の危険性除去は緊急の課題だ。一刻も早い閉鎖状態の実現が求められている。
安倍前政権は7月の参院選で国民から「ノー」という審判を突きつけられた。福田内閣もその延長線上の政権にすぎない。各分野で明確な政策を示した段階で、できるだけ早く衆院を解散し総選挙で民意を問うてもらいたい。
(9/26 10:23)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27512-storytopic-11.html
2007年9月26日(水) 夕刊 5面
住民の戦争体験 米国人が映像化/曙小・指導助手 ラドニー・リトルさん
那覇市立曙小学校で外国語指導助手(ALT)として勤務する米国人のラドニー・リトルさん(30)が、沖縄戦と住民をテーマにドキュメンタリ―映画「命どぅ宝―Life is precious」を制作している。住民の悲惨な戦争体験を元ひめゆり学徒らのインタビューを交え、約二時間の映像で伝える。ラドニーさんは「これまで外国人が撮った沖縄戦は兵隊をメーンにしたものが多かった。住民に光を当てた作品で、沖縄の歴史や文化、人々の思いを紹介したい」と話している。(大濱照美)
五年前、留学生として沖縄を訪れた。美しい海に心打たれすっかり沖縄ファンになったが、文化や歴史を学んでいく中で沖縄戦の話を聞きショックを受けたという。「米国では兵隊の勇ましい戦いぶりや、苦労話を学んだが、沖縄の住民がもっと大変だったと初めて知った」と振り返る。
簡単なドキュメンタリーを作り始めたころ、母校コロラド大学の日本語講師で伊江島出身のリエコ・ニックアダムスさんから「沖縄戦は沖縄の人々にとって大切なこと。ちゃんと扱ってほしい」と言われ、本格的な作品制作を決意。賛同した友人のレイ・ガーナさん(30)、テリー・ゴングさん(30)と三人でカメラを手に、昨年の七月から県内各地の戦跡や資料館を飛び回った。
「私の父もベトナム戦争に出兵したが、その体験を話してくれたことはない。体験者はつらい思いに耐えて語ってくれた。とても感謝している」とラドニーさん。
今月十五日には、完成間近の作品を持って渡米し、約六千人が集まるコロラド州の祭りで上映した。
「協力してくれた多くの人たちのためにも、十一月には完成させ県内や海外で上映したい」と意気込みを見せた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_02.html
2007年9月26日(水) 夕刊 5面
未来の教師 検定に意見/沖国大生、プラカード作製
「嘘教えるの?」「GIVE ME Real Text(真実の教科書)」―。沖縄国際大学総合文化学部で教職課程を履修する三、四年生ら五十人以上が、教科書検定問題に意見する自作のプラカードやメッセージボードを持ち、二十九日の県民大会に参加する準備を進めている。実行委員の平良瑞希さん(21)は「学生だからこそ、今こういうことが言えるんだ、とアピールしたい」と意気込んでいる。
大会への参加を決めたのは先週。佐藤敬明さん(23)は「将来教師になったとき、生徒にうそを教えるわけにはいかない」と強調する。二十五日には同大学内で他学部やほかの学年にも参加を呼び掛けるチラシを配布、実行委員会を立ち上げた。
大会の会場では八つのゼミが、それぞれメッセージ入りのプラカードを掲げる。正午から参加者が意見を交換するメッセージボードを作製するほか、集まった友人などと、教科書検定問題について話し合う。平良尚也さん(21)は「自分たちもいずれは教える立場になる。少しでも分かりやすく伝えたい」と意気込んだ。
学生たちの「世話人」を務める社会文化学科の吉浜忍教授は「声を上げて参加することは、将来教師になる者の素質として大事なこと」と目を細めていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_03.html
2007年9月26日(水) 夕刊 1面
県民大会注視し対応/検定撤回で渡海文科相
【東京】渡海紀三朗文部科学大臣は二十六日、就任後初閣議後の会見で、二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのか、見極めて対応させていただきたい」と述べ、大会規模や決議内容を注視する考えを明らかにした。
沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を文科省が削除した高校歴史教科書の検定問題に県内で強い反発があることについて「沖縄の人にとって実はそうなんだろうなというのが率直な思い」と述べ、県民感情に理解を示した。
その上で「先の大戦で沖縄の方々が大変大きな犠牲を払われたことについては、そういった方々の犠牲の上で現在があることを重く受け止めなければならない。そういう思いを持たなければならないと強く思っている」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_04.html