月別アーカイブ: 2007年9月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月24日、25日、26日)

2007年9月24日(月) 朝刊 1・2・21面

自民総裁に福田氏/沖縄問題は不透明

 自民党総裁選は二十三日午後、党所属国会議員と各都道府県連代表者による投開票を行い、福田康夫元官房長官(71)が投票総数の62・5%に当たる三百三十票を得て大勝、第二十二代総裁に選出された。

 自民党の新しい顔が二十三日、福田康夫元官房長官に決まり、父親と同じ七十一歳で首相の座に就く。麻生太郎幹事長と争った党総裁選。「国民の声を聞いていない」と、しらけムードも漂った。県内からは「沖縄に対する理解度が未知数」と戸惑いの中、基地問題や県民大会を控えた教科書検定問題の関係者からは、期待とあきらめの声が交錯した。

 米軍普天間飛行場の名護市移設を容認する荻堂盛秀同市商工会長は「(福田氏が)沖縄をどの程度理解しているか未知数だ。新しい総裁にはいつも期待するが、その都度期待はずれになっている」と、こう着状態の移設問題にやるせない様子。福田氏が北朝鮮問題で「対話」を強調する点を引き合いに、「基地問題でも地元の意向に耳を傾けてくれることに期待したい」と話した。

 移設先の辺野古区有志らでつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「米軍再編の方向性が大きく変わるとは思えない。粛々と移設作業を進めてほしい」と述べた。

 一方、ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「沖縄問題を変える人ではない」ときっぱり。県内の海兵隊がグアム移転後も沖縄に一万人残ることに「県民に対してうそをつく自公政権を変えるべきだ」と言い切った。

 ジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨事務局長は「安倍内閣を継承するだけのつなぎの総裁。沖縄問題も進展する期待もない」と語った。

 米軍機の未明離陸に抗議の声を上げ続けている、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「福田氏が、沖縄になじみがあるとは聞いていないが、沖縄の痛みを分かって、騒音被害や跡地利用問題など基地問題にこれから真剣に取り組んでもらいたい」とした。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「福田氏は、『地方との信頼回復』と言っているようだが、それならまず、伊吹文明文科相を留任させないでほしい。沖縄の意思を受け入れてもらいたい」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

沖縄相経験者では初/検定問題対応に注目


 【東京】自民党総裁に選出された福田康夫氏は、官房長官に就任した二〇〇〇年、沖縄開発庁長官を一カ月余り兼務した。沖縄担当相経験者が首相に就けば初めてのケースになる。〇四年五月まで務めた官房長官時代には、米兵による事件・事故への対応や沖縄振興などで稲嶺恵一前知事ら県関係者と頻繁に面談しており、「沖縄の課題を熟知している」と県選出国会議員。近隣諸国への配慮で靖国神社を参拝しない考えを示すなど、町村派では数少ない「ハト派」とされ、安倍政権が撤回を拒んだ高校歴史教科書の検定問題への対応も注目される。

 福田氏は二十五日に衆参両院の首相指名選挙を経て、首相に選出される見通し。県関係の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」会長の仲村正治衆院議員は、高校歴史教科書の検定問題に関する県民大会後に福田氏への直談判を申し入れる考えを示し、事態打開への期待感をにじませた。

 沖縄開発庁長官時代は任期が短かったこともあり目立った実績はないが、官房長官時代には小泉純一郎首相の施政方針演説(〇三年一月)に初めて盛り込まれた「沖縄科学技術大学院大学構想」を主導した。

 それまでは内閣府沖縄担当部局を中心に取り組んでいたが、「実現に向けて政府の体制確立が重要」と、政府一体で取り組む必要性を強調。政府内に大学院大構想の関係閣僚会合を立ち上げ、予算確保など座長として構想実現に道筋を付けた。

 〇一年六月に北谷町で起きた米兵による女性暴行事件では、容疑者の身柄引き渡しをめぐる日米交渉を指揮した。当時を知る政府関係者は「内閣の番頭として、基地問題の行方を心配していた」と明かす。

 普天間飛行場の名護市辺野古沖への代替施設建設をめぐる県と政府の協議が本格化していた〇三年五月には、県商工会議所連合会会長を務めていた仲井真弘多氏(現知事)とも会談。代替施設建設の際に県内企業の重点活用を求める仲井真氏に対し、「最善の努力をする」と理解を示した。

 一方、同月末には米紙が報じた在沖米海兵隊の兵力撤退計画を受け、県が独自に米国防総省に事実関係を照会したことに、「政府に聞いてくるなら話も分かるが、どこに問い合わせをしたのか。政府がそういう交渉をしている」と記者会見で不快感を表明。報道陣に「どれだけ権威がある情報なのか。よく確認してください。常識で」と述べるなど、クールで皮肉屋の一面をのぞかせた。

 福田氏の父で、元首相の故赳夫氏も沖縄振興に携わっていた。大蔵相時代に、復帰前の立法院与党だった民主党(当時)の吉元栄真副総裁らとパイプを築き、米軍統治下の沖縄への政府援助(日政援助)の拡大に取り組んだ経緯がある。


沖縄問題に指導力を/県政反応


 福田氏が次期首相となる自民党総裁に選出されたことに、県幹部らは「沖縄開発庁長官を務めた経験もあり、沖縄の実情にも理解がある」「リーダーシップを発揮して、基地問題など沖縄の課題解決に努めてほしい」と期待を寄せた。

 県幹部の一人は「沖縄は全国と比べても難しい問題が山積している。これらの課題解決は官僚主導では困難で、政治的な指導力が不可欠だ」と指摘。「福田新総裁は人柄的にも実直そうで、沖縄の抱える痛みを親身になって理解し、県民の期待に沿って課題解決を図ってくれるものと期待している」と述べた。

 別の幹部は「福田氏は沖縄をよく知っていると思うので期待できる。那覇空港の拡張整備など、沖縄振興の主要プロジェクトは着実に進めてほしい」と注文。

 安倍政権が掲げたアジア・ゲートウェイ構想の行方を懸念しつつ、「(福田氏は)アジア重視の視点を持っており、方向性は大きく変わらないと思う」との見方を示した。

 また、小泉改革の影響で広がった都市と地方の格差問題に触れ「地方が自立できるよう、財政面などを含め地方に配慮した政策を示してほしい」と期待する幹部もいた。


沖縄の課題解決に期待/仲井真知事コメント


 本日、福田康夫氏が自由民主党総裁に選出されましたことに、心からお祝いを申し上げます。

 福田氏は、沖縄開発庁長官を務められたことがあり、沖縄の実情も理解されているものと思います。

 総理に就任された暁には、基地問題の解決や自立型経済の構築など、沖縄の抱える諸課題の解決に向けてご尽力を賜りたいと思います。

 私も、できるだけ早い時期に直接お会いして、沖縄の諸課題をご説明申し上げたいと考えております。


「沖合移動に理解求める」/名護市長

 【名護】自民党新総裁に福田康夫氏が選出されたことについて、米軍普天間飛行場移設先の名護市の島袋吉和市長は二十三日、「党としての態勢を立て直し、沖縄問題にしっかり取り組んでもらいたい。名護市としてはこれまで同様、V字形滑走路をできるだけ沖合へ、というスタンスを申し上げる。地元の意向をくみ取っていただけるよう、ご理解とご協力をお願いしたい」と話した。

「普天間」解決は海兵隊の撤退で/宜野湾市長

 【宜野湾】自民党の新総裁に福田康夫元官房長官が選ばれたことについて、宜野湾市の伊波洋一市長は二十三日、「県民の基地への思いが分かる内閣をつくってほしい」と注文した。

 普天間飛行場問題については「新たな基地を建設せず、対話による安全保障を実現してほしい。沖縄から海兵隊が撤退できるよう道筋を付け、抜本的対策を講じるべきだ」と話した。

県関係5議員 福田氏に投票

 【東京】二十三日に投開票された自民党総裁選で、県選出・出身の自民党国会議員五人は、全員が福田康夫氏に投票した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_01.html

 

2007年9月24日(月) 朝刊 21面

県内首長、文科省を批判/専門家加え再審議を

 高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、文部科学省の教科書審議会に沖縄戦の専門家がおらず、同省の検定意見原案が議論もなく通ったことに、県内四十一市町村の首長は「記述に手を加えるならば専門家の意見を聞くべきだ」と同省を厳しく批判していることが二十四日、本紙のアンケート調査で明らかになった。また、目抜き通りでの大会告知、バス手配など大会の準備も各自治体で進んでいる。

 アンケートは二十一日までに回答を得た。日本軍の強制の記述削除について文科省は「学術的な検討を得た審議会の決定」と説明している。

 金城豊明豊見城市長は「もともとあった記述に手を加えるならば専門家の意見を聞くことが、学術的にも公正・中立ではないか」と指摘。城間俊安南風原町長は「文科省が審議過程を正当化する姿勢は疑問」とした上で、両首長ともに「集団自決」の日本軍の強制を否定する「文科省の意図を感じる」と訴えた。

 大浜長照石垣市長は「これまでも専門家の審議を経ずに歴史的事実を歪曲していないか」と懸念を表明。座間味村の仲村三雄村長は「沖縄戦の専門家もおらず『学術的な検討を経た』とは言語道断だ」と同省を厳しく批判した。

 教科書検定制度の在り方について知念恒男うるま市長は「審議会を公開し、公正な審議を行うべきだ」と主張。翁長雄志那覇市長は「文科省は検定意見を撤回し、今回出てきた新たな証言も含めて学術的に検討してはどうか」と訴えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_02.html

 

2007年9月24日(月) 朝刊 2面

「普天間」県民意思が鍵/小川氏講演

 県経営者協会(知念榮治会長)の経営懇話会が二十一日午後、那覇市のかりゆしアーバンリゾート那覇であり、国際政治・軍事アナリストの小川和久氏が「国際水準から見た日本の危機管理」と題して講演した。

 小川氏は、現行の日米安全保障体制が国防上も軍事費面でも最良の選択肢との認識を示すとともに、危機管理の司令塔となる日本版国家安全保障会議(NSC)の早期創設の必要性を強調。

 膠着状態にある米軍普天間飛行場の移設問題については「県民が当事者としての危機感を持って政府と向き合い、動かさないといけない」と訴えた。

 小川氏は「日米同盟に頼らず、自立した軍事力で今のレベルの安全をキープするには、自衛隊員が現在の約五倍の百二十万人、軍事費も二十兆円は必要」と説明。「(日米同盟か、自主防衛路線がいいのか)コストとリスク面から国民に問うべきだ」と語った。

 返還同意から十年経過しながら進展しない普天間移設問題は「政府に戦略的思考がないのが原因」と指摘。縦割り思考の官僚に頼っては展望は開けず、政治が主導権を持って対応していかねばならない―と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月24日朝刊)

[福田自民党総裁]

難局打開は容易でない

緊急避難的な党首選び

 自民党総裁に福田康夫元官房長官が選ばれた。二十五日に国会で第九十一代首相に指名され、同日中にも新内閣を発足させる予定だ。

 緊急避難的な党首選びだった。

 総理総裁を目指すからには、本来、明確な政権構想が必要だ。こういうことをしたいという力強いビジョンを発表し、構想実現のための具体的な政策を提示して対立候補と論戦を展開することが求められる。

 だが、本格的な政策論争が展開されたとは言い難い。

 安倍政治の功罪を論じた上で、参院選の民意にどう答えるか、具体的に提示すべきであったが、安倍政治の総括は封印されたままだった。

 「政治とカネ」の問題にしろ年金問題にしろ、国民の信頼を回復するための具体的な処方せんはついに示されなかった。

 緊急登板を余儀なくされた福田氏にそこまで言うのは酷かもしれないが、正直な話、総理総裁になって何をしたいのかがあまり伝わってこなかった。

 選挙期間中に示された構想はあまりにも付け焼き刃的で、本人も認めるように「準備不足」はいかんともし難いものがあった。

 小泉純一郎前首相の郵政民営化、安倍晋三首相の憲法改正に代わる福田氏ならではの独自の政権構想を早急に練り直し、国民に示すべきである。

 福田氏の政権構想を吟味することもなく、党内九派閥のうち八つの派閥が雪崩を打って早々と福田氏支持を決めたのも今度の総裁選の大きな特徴だ。

 総裁選が告示された十四日に、派閥を率いる山崎拓、古賀誠、谷垣禎一の三氏がそろって福田氏に会い支持を伝えた。「小泉―安倍」路線の修正を期待しての支持表明である。

 勝ち馬に乗る心理も加わって、この流れが加速し、あとは消化試合の様相を呈した。

 八つの派閥がなぜ福田氏を支持したのか。その真意が実は国民の側からはよく分からない。派閥政治の復活を思わせる動きであった。

 麻生太郎幹事長が予想外に善戦したのは、古い自民党への回帰の動きを警戒したからではないだろうか。


アジア外交で路線転換

 総裁選で路線転換を明示する場面がなかったわけではない。

 第一に、対北朝鮮政策。麻生氏が「圧力」を強調したのに対し、福田氏は強硬一本やりの安倍路線の見直しを示唆し、「私の手でこの問題を解決したい」と強い意欲を見せた。

 第二に、靖国神社への参拝問題。「アジアの一員たることを機軸とする外交」を打ち出した福田氏は「相手が嫌がることをする必要はない」と踏み込んだ姿勢を見せた。

 第三に、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更問題。福田氏は、安倍首相が進めてきた憲法解釈の変更に慎重な姿勢を示した。

 安倍政治との違いは明確だ。国家主義的な政策を推し進めてきた安倍政治からの路線転換は、参院選に示された沖縄の民意とも合致する。新政権の取り組みを注視したい。

 ただ、テロ対策特別措置法については、臨時国会に新法を提出する考えを明らかにしており、野党と正面衝突する事態も予想される。なぜ、インド洋上での給油活動の継続が必要なのか、活動実態の情報開示が先決だ。

 福田氏は、構造改革路線の継続と改革の負の遺産に取り組む考えを明らかにした。財政再建と格差是正をどう両立させていくか、これまたかじ取りは容易でない。


「県民大会」にどう対応

 総裁選後の記者会見で福田氏は、全員野球を強調した。周囲の評価も「安定感」と「慎重さ」と「バランス感覚」という点で一致する。同じ派閥の小泉前首相とも安倍首相とも異なる資質だ。

 福田氏には何よりも、「小泉―安倍」路線の負の遺産に向き合い、政策転換に踏み出すことを求めたい。

 小泉政治は、地方の現実をあまりにも軽視し過ぎてきた。路線転換は決してバラマキ政治への復帰を意味しないし、古い自民党路線への回帰であってはならない。

 米軍再編問題や教科書検定問題など、沖縄県が抱える課題にどう取り組んでいくか。いずれも政府と地元との溝が深く、膠着状態にあるだけに、これまでの政権と異なる姿勢を示さなければ現状打開は難しい。

 二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への対応が最初の試金石だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070924.html#no_1

 

2007年9月25日(火) 朝刊 27面

県民大会の日にパネル展/東京から同時抗議

 検定意見撤回を求める思いを東京でも訴える―。「憲法9条―世界へ未来へ沖縄連絡会」(9条連、海勢頭豊共同代表)は県民大会と同日の二十九日、東京の品川区立総合区民会館で「告発!『集団自決』の軍命削除パネル展―軍隊は住民を守らない―」を開く。

 文部科学省の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍の強制についての記述が削除された問題を、沖縄タイムス紙面や、検定前と検定後の高校教科書を展示することでアピールする。今年で三回目を数え、約二千三百人の来場者が見込まれている「輝け9条!世界へ未来へフェスティバル」(主催・9条フェスタ二〇〇七事務局)の一環。

 「記事の流れを工夫した方がいいんじゃないか」「見出しを付けたら分かりやすいのでは」―。二十三日、9条連のメンバー十人が那覇市古島の教育福祉会館に集まり、パネル展に向けての話し合いを持った。東京に行くメンバーの中からは、「史実は絶対にゆがめさせない」「今行動しなければ、やられっ放しになる」などの声が上がる。

 会場で慶留間島の「集団自決」をテーマにした自作の平和絵本「松三の島」の読み聞かせを行うのは元教諭の知念智慧子さん。これまで小学校や児童館などで、千人以上の児童に沖縄戦の悲惨さを伝えてきた知念さんは「国の横暴は許さない。沖縄で県民大会に参加している気持ちで声を発したい」と意気込む。

 当日、県内に残る海勢頭共同代表は「今回の問題は県民だけじゃなく、国民の問題。軍国主義を正当化する流れを阻止しなければならないことを、しっかり強調してきてほしい」と期待を込めた。

 また、三十日に大田区産業プラザで開かれる同フェスティバルの総会では、「軍命」削除に抗議する内容の特別アピールが採択される予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_01.html

 

2007年9月25日(火) 朝刊 27面

旧日本軍の遺物? 火炎放射器出土/第32軍司令部壕

 旧日本軍のものとみられる火炎放射器が、那覇市首里にある第三二軍司令部壕から見つかり、糸満市の県平和祈念資料館で十月二十一日から開かれる企画展で一般公開される。同資料館によると、旧日本軍の火炎放射器が見つかるのは珍しいという。

 火炎放射器の高さは約四十七センチ、幅約三十九センチで、八月二十九日に壕内の第二坑道の中間地点で見つかった。種類などについては現在調査中という。

 戦跡遺跡や出土品発掘のために調査を進めていた県平和祈念資料館の城間美明主査は「旧日本軍の火炎放射器を見たのは初めて。企画展前に発見され、とても貴重な資料」と語った。

 沖縄戦研究家の久手堅憲俊さん(76)によると、見つかった火炎放射器は太平洋戦争初期に落下傘部隊用に使用されたもので、「県内に持ち込まれている数は少なく、司令部の守備兵が守備用に置いていたのでは」と分析する。

 同館の城間主査は「歴史を正しく伝えるのが私たちの責務。二十九日の(教科書検定意見撤回を求める)県民大会の後も若い世代に戦争の実態を伝えたい」と語った。

 同資料館で十月二十一日から始まるのは第八回特別企画展「沖縄戦と戦争遺跡?戦世(イクサユー)の真実を伝えるために?」で、火炎放射器以外に県内の戦争遺跡約百五十件を紹介する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_02.html

 

2007年9月25日(火) 朝刊 27面

自民幹事長 伊吹氏起用/関係者「心改めて」

 自民党幹事長に伊吹文明文部科学大臣が決まったことに「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らは二十四日、新しい文科相へ期待を込める一方で、伊吹幹事長には「心を改めて」とくぎを刺した。

 小渡ハル子副実行委員長(県婦人連合会長)は「党ナンバー2への就任を機に、沖縄の問題に理解を示し、心を改めてほしい」と話した。「検定意見撤回は県民の願い。自民党の県選出国会議員は福田康夫新総裁や伊吹新幹事長に強く要望してほしい」と期待した。

 県民大会実行委員の諸見里宏美県PTA連合会長は「文科相が変わるので状況は好転するかもしれない」と歓迎。その一方で「新大臣は今回も問題に理解を示し、検定意見の撤回に応じてほしい」と要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_03.html

 

琉球新報 社説

拉致問題 日本に吹く追い風生かせ

 北朝鮮による日本人拉致問題の解決を後押しする動きが米国内で相次いでいる。拉致問題への対応は、25日に発足する福田内閣にとっても重要な外交課題の一つだ。27日から北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議が始まる。

 日本への追い風をてこに、拉致問題の具体的な進展につなげることができるか。安倍晋三首相に代わって国政のかじ取りを担う福田康夫新首相は早速、指導力や外交手腕が問われることになる。

 米国からの追い風の一つは、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除問題で、ブッシュ政権を支える共和党が条件を付ける法案を提出する構えをみせていることだ。

 北朝鮮が核施設の無能力化や核計画を申告するかが6カ国協議の焦点になっている。北朝鮮がこれに応じた場合、米政府は年内に指定解除に踏み切る方針を固めているが、法案は、指定解除のハードルを下げないためいくつかの条項を盛り込んでいる。

 指定解除の「基準」として「日本人拉致被害者の解放」を真っ先に挙げた。法案は週明けにも提出される見通しだ。

 2つ目には、訪米中の町村信孝外相との会談でライス米国務長官が「北朝鮮との関係を発展させるために日本との関係を犠牲にすることはない」と述べたことだ。指定解除に際しては日米関係にも考慮し、慎重に対応する考えを伝えたものだ。

 ライス発言の背景には、米朝関係の進展に伴い北朝鮮による揺さぶり戦術で、日本が6カ国協議の枠組みから取り残される懸念が高まっていることへの配慮もあるとみられる。

 ただ事は単純ではない。6カ国協議を仕切って米朝関係進展を急ぐヒル国務次官補らに対する共和党保守派の不満や、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に期待する米国の思惑などが働いているのは間違いあるまい。

 とはいえ、日本は明るい兆しを生かさない手はない。政府は米国を中心に中韓、ロシアとも緊密な連携を重ね、どん詰まりの拉致問題に風穴を開けるべきだ。

(9/25 10:45)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27485-storytopic-11.html

 

2007年9月25日(火) 夕刊 1面

嘉手納議会、謝罪要求/未明離陸 司令官発言

 【嘉手納】米軍嘉手納基地司令官のブレット・ウィリアムズ准将が「未明離陸は十年は続く」などと発言した問題で、嘉手納町議会の基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)は二十五日、「住民を無視、軽視している」として、発言撤回と謝罪を求める抗議決議と意見書を二十八日の臨時会に提案することを決めた。

 岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などがクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している問題についても、同戦闘機の飛来、訓練中止、両爆弾の撤去などを求める抗議決議と意見書を提案する。

 嘉手納基地司令官は、F15機などの未明離陸に対して嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)メンバーが二十一日に抗議した際、「抗議があるのは沖縄だけ」「基地がある限り未明離陸は継続する。十年は続くだろう」などと発言した。

 委員会では、未明離陸について沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会が意見交換し、より効果的な活動方法を検討することも確認した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_01.html

 

2007年9月25日(火) 夕刊 5面 

悲劇体験 歌で伝える/元教諭源さん「事実残したい」

 元高校音楽教諭の源啓祐さん(68)=那覇市=が、渡嘉敷島で生まれ、「集団自決(強制集団死)」に巻き込まれた体験を基に作曲した歌を二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で披露する。当時六歳だった少年の目の前で繰り広げられた悲劇を「悲しい思い出だが、事実を後世に残したい」と語った。

 演奏されるのは、「白玉の塔」と「祈り」の二曲。

 源さんは約四年前に渡嘉敷島を訪れたとき、「集団自決」などで戦死した多くの犠牲者が眠る慰霊碑「白玉之塔」に記された一つの詩に心を打たれた。

 「忘れじと思う心は 白玉の塔に託して」。

 当時六歳。「集団自決」の起こった現場で人々が悲鳴を上げ、死んでいく情景を今でも忘れることができず、その思いを曲に込めた。二年前から三月二十八日に白玉之塔で開かれる慰霊祭で流している。

 西山で手榴弾を手にしたが不発だったため、母、弟とともに生きる道を選んだ。

 戦後も母親から「軍の命令で『集団自決』が起こった」「軍人の食糧確保のために住民は犠牲になった」ことを何度も聞かされたという。

 「白玉の塔」は、歌手の新垣寿賀子さん(45)に「地の底から死者たちが訴えるように低い声で歌ってほしい」と依頼した。戦争体験者の男性に歌ってほしいとお願いしたが、「あまりにも重過ぎて歌えない」と断られ、戦後生まれの新垣さんに託した。

 一方、「祈り」を七年前から県内外で歌う歌手の砂川京子さん(60)は、源さんの体験がつづられた歌詞を見つめ、「二番は涙が出て歌えなくなり、いつも歯を食いしばって歌う。この歌は源先生の心の叫びそのもの。どんなむごいことでも事実を隠してはいけない」と戦争の恐ろしさを再認識したという。

 歌詞には「集団自決」の文字は出てこないが、源さんは当時の情景を思い出し、「僕には歌えない」とつぶやいた。

 目の前で人々が命を絶った事実を「これはゲームのようなバーチャルの世界じゃない。若い人にも戦争の恐ろしさを知ってほしい」

 砂川さん、新垣さんも「みんなの心に響くよう、歌いたい」と声を合わせた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_02.html

 

2007年9月25日(火) 夕刊 1面

オスプレイ使用 政府「予定ない」/普天間代替で回答

 【東京】政府は二十五日の閣議で決定した答弁書で、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)で想定する「使用を予定する航空機の種類」はCH53、CH46、UH1、AH1の回転翼機と、C35、C12の航空機であることを明らかにした。垂直離着陸機MV22オスプレイは「米政府から現時点で何ら具体的な予定はないとの回答を得ている」と否定した。

 一方、在日米軍再編で新たな負担が生じる自治体に対し、防衛大臣裁量で配分される再編交付金の額や算定点数については「再編関連特定周辺市町村が指定されていない現時点で答えるのは困難」と明らかにしなかった。

 糸数慶子参院議員の質問主意書に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_03.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

出版社 訂正申請の方針/「集団自決」で文科省に

軍強制明記で一致

 【東京】教科書執筆者と教科書会社の編集者による「社会科教科書執筆者懇談会」が二十五日、都内で開かれた。文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除させた検定への対応で、日本軍の強制・強要・誘導を明確にするため、各社が十月末から十一月初めをめどに文科省への訂正申請を目指す方針を確認した。参加者によると、懇談会の再開は一九九〇年代半ば以来。「集団自決」の記述を削除された五社すべてを含む八社から二十五人が参加した。

 呼び掛け人で執筆者の石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)によると、出席者からは「検定制度を見直すべきだ」「教科用図書検定調査審議会の審議委員の選び方が不透明で、不服を申し立てても同じ結果になる。第三者機関が必要だ」など検定の仕組みを問題視する意見が相次いだ。

 また、過去に懇談会の存在が文部省(当時)への歯止め役を果たしていたことを念頭に「執筆者や教科書会社間の連携が途絶えていたことも(日本軍の強制を削除した検定の)原因の一つだ。沖縄の人に申し訳ない」との反省の声も上がった。

 参加者は懇談会を定期的に開催することで一致。当面、訂正申請に向けた各社の動向を報告する。次回会合は、二十九日の県民大会の結果を受けた要請団の上京直後の十月十七日に開く。

 石山さんは十数年ぶりの懇談会再開に「参加者が予想以上に多く、問題意識を共有できたことに手応えを感じる」と述べ、運動の全国的な広がりに期待感を示した。

 呼び掛け人の一人で琉球大学の高嶋伸欣教授も参加、県民大会に向けた沖縄の動きなどを報告した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_01.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 1面

渡海文科相 柔軟姿勢/「県民感情考え慎重に」

 【東京】高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、福田内閣で初入閣した渡海紀三朗文部科学大臣は二十五日の会見で、沖縄側が検定意見の撤回を求めている問題について「県民感情を考えたときに、より慎重に取り扱っていかなければいけない」と柔軟に対応する考えを示唆した。

 渡海文科相は、同検定が歴史的事実を理解する専門家が参加し、内容を検討しているとの認識を示し、「政府がとやかく言うべきではないと正直思っている」とも発言。その上で「しかしながら、中身の問題については沖縄の中で非常に大きい。率直に私自身の実感だ。もう少し具体的事実がどうなのか精査した上で取り組みたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_02.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 2面

「再編変更」は困難視/石破氏、前内閣姿勢を踏襲

 【東京】福田内閣で防衛相に就任した石破茂氏は二十五日夜、首相官邸で会見し、米軍普天間飛行場の移設など在日米軍再編について「現在、政府として対応方針を示して米軍再編に取り組んでいる。今までこのやり方が最善であるということであり、合理的な理由がない限りこれを変更することは困難」と説明した。日米合意を堅持した安倍内閣のスタンスを踏襲する考えを示し、普天間代替施設(V字案)の沖合移動を求める県や名護市をけん制したものとみられる。石破氏は「基地を受け入れていただいている結果として、わが国の独立と世界の平和のために多大な貢献をしていただいている地元の方々のご理解を得るということは当然。一切聞く耳を持たぬ姿勢はあるべきではない。地元の理解を得るべく誠心誠意、最善の努力をしていきたい」との考えも強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_03.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

文科相発言に期待感/福田内閣発足

 福田新内閣が二十五日発足した。県内では新しい顔触れに戸惑いと期待が交錯した。渡海紀三朗文部科学相が「県民感情に配慮する」と発言したことに、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らは「県民の気持ちを受け止めてくれるのでは」と期待しつつ、一方で「(どういう人物か)よく分からない」との受け止めも。防衛庁長官を含め二度目の就任となる石破茂防衛相については「経験豊富で適任だ」「誰が大臣になろうと県民の要望には応えられない」と評価が分かれた。

 県民大会の仲里利信実行委員長は「初めて聞く名前だ」と話す。渡海文科相の発言には「県選出国会議員に日程調整をお願いし、十月の要請はお会いしたい」と期待を膨らませた。

 高P連の西銘生弘会長は「検定意見撤回を前向きに考えるという意味であれば、本当にありがたい」と歓迎。その上で「大会には多くの保護者や高校生を参加させ、県民がこれだけ真剣なんだと政府に伝えたい」と語った。

 沖子連の玉寄哲永会長は「どのように県民に配慮するかが重要だ。新大臣は検定意見を取り下げるという姿勢をはっきり示してほしい」と指摘した。

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で揺れる名護市。石破氏の防衛相就任に島袋吉和市長は「メディアでの発言や討論から沖縄問題にも詳しいのではないかとの印象を受ける。沖縄のスタンスをサポートできる大臣であってほしい」と期待感をにじませた。

 キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に賛成する荻堂盛秀名護市商工会長は「防衛問題に精通しており今の難しい局面で最も適任だと思う。地元の要望に耳を傾けてくれるのでは」と話した。

 一方、移設に反対するヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「米軍再編で沖縄の基地が強化される中、誰が大臣になろうとも政権が変わらない限り県民の要望に応えられない」とはき捨てた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_04.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

普天間代替施設「陸地上空で飛行も」/米政府の06年文書

海兵隊が見解

 米軍普天間飛行場代替施設の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、米海兵隊が二〇〇六年四月の防衛庁(当時)との協議で、「最大限可能な限り(海側に)回避するようにしても、航空機が陸地の上空を飛行する場合はあり得る」との見解を示していたことが二十五日、明らかになった。ジュゴン保護のため米連邦地裁で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している原告団が、米政府提出の文書の一部を翻訳し、公開した。

 海兵隊と防衛庁の協議は、現行の「V字形案」が示される直前に東京都内で行われた。

 会議後、米第三海兵隊遠征軍大佐が同遠征軍司令官に報告した文書によると、滑走路二本が中央より西側に寄ったX字形の「ヌカガ2」案を協議。文書末尾では「防衛庁が新たなるV字案を作成したのでこの計画(ヌカガ2)はこれ以上進展しないと思う」としている。添付図面で、案がI形、中央で交わるX形、交差部が西側に寄ったX字形案などが示されている。

 文書では、同計画について「最重要点は、地元沖縄の人々に対してオープンでなければならない」と指摘。その上で「この計画に対する地元沖縄の人々の容認がこの飛行場の建設における運用上の必要条件と結び付いているからである」と、情報開示の必要性も主張している。原告メンバーの真喜志好一さんは「V字案もこのX字案も基本的に変わらない。政府は、住民に集落上空は飛ばないと説明し、環境影響評価(アセス)方法書にも周辺地域上空の飛行を回避するとしている。米軍の主張からすると虚偽といえ、問題だ」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_05.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

米軍車両、藻場通過/国の調査器材破壊

 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設に反対する市民団体のメンバーらは二十五日、現況調査のため沖縄防衛局が名護市辺野古沖に設置した調査器材の一部が破壊され、ジュゴンの餌となる藻場に残された水陸両用車の通行痕を撮影した。市民団体などによると、二十四日午後零時半ごろ、米海兵隊の水陸両用車十三台がキャンプ・シュワブからキャンプ・ハンセンに向け海上を移動、現場近くを通ったという。

 ジュゴンのはみ跡の調査のため、シュワブから約五百メートルの沖合で潜水した際に発見。ジュゴンなど海中生物の藻場の利用状況や鳴き声を調査するパッシブソナー(音波探知機)を設置するための架台が破壊されていた。本体は台風対策のため取り外されていた。

 撮影した「ジュゴンの里」の坂井満さんは「政府は環境調査のために器材を設置しているが、米軍は関係なしに訓練している。このような状況ではジュゴンを追い出しているようなものだ」と批判した。平和市民連絡会の当山栄事務局長は「調査機器が船の航行に危険を及ぼすと指摘してきた。機器のあるところで米軍が訓練するのは、日米両政府間の意思の疎通が図られていない証拠だ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_06.html

 

琉球新報 社説

福田政権始動 早期解散で民意問え

 福田康夫首相が25日就任し、福田政権が始動した。憲政史上初めて、故福田赳夫氏に続く親子2代の首相が誕生した。

 5千万件に及ぶ年金記録不備問題の解決に全力を挙げるとともに、都市と地方の格差の是正を図り、景気回復に取り組んでほしい。

 沖縄戦「集団自決」で日本軍による強制の記述を削除・修正した教科書検定問題では真実の継承を求める県民の声に耳を傾け文部科学相に撤回を指示してもらいたい。

 しかしながら、参院選で自民党が惨敗した中で誕生した政権であり、十分に民意を踏まえた内閣とは言い難い。早期に解散総選挙を実施し国民の審判を仰ぐべきだ。

派閥政治の復活

 福田政権で危惧(きぐ)されるのは、古い自民党の派閥政治が復活することだ。

 福田氏は自民党総裁就任後、党幹事長に伊吹文明、政調会長に谷垣禎一、総務会長に二階俊博、選挙対策委員長に古賀誠の各氏を起用した。党4役はいずれも、それぞれが率いる派閥の領袖である。

 組閣に際しても、最大派閥の町村派会長・町村信孝前外相を内閣の要となる官房長官に据えたほか、高村派を率いる高村正彦前防衛相を外相に充てた。

 総裁選で福田氏を支持した8派閥の領袖のうち6人までを党役員または閣僚として処遇している。

 福田氏は総裁選の前から、町村派名誉会長の森喜朗元首相と頻繁に意見交換していた。

 党内バランスを重視したと言えば聞こえはいいが、総裁に選出された経過から見ても、最大派閥の意向が人事を左右する「派閥政治」に先祖返りしていると言わざるを得ない。

 都市と地方の地域間格差、年金記録不備、政治とカネの問題、景気浮揚、財政再建など、国政には困難な課題が山積している。

 とりわけ、小泉純一郎、安倍晋三両氏の改革路線の結果生み出された格差の問題は深刻だ。「弱者」を生み出す現状は早急に改める必要がある。

 福田首相は、総裁選で打ち出した「地方の再生」「農山漁村の所得、雇用の増加」の実現に向けて、具体的な施策を早期に国民の前に提示すべきだ。

 外交面では、引き続き中国、韓国との関係改善を進めることが不可欠だ。

 対北朝鮮では、拉致被害者と家族の帰国、真相の究明、容疑者の引き渡しなどを早期に実現させることが求められる。

 景気浮揚のため公共事業費の増額を求める声が自民党内でも強まる中で、どう財政再建を進めるのか、手腕が問われている。

 国政のかじ取りに当たって、党利党略や派利派略に左右されることがあってはならない。

 あくまで国民の目線で政治を進めなければならない。

歴史の真実継承を

 教科書検定意見撤回の可能性について、伊吹自民党幹事長は文部科学相在任中「政治による教育への介入になるので難しい」との見解を最後まで崩さなかった。

 教科用図書検定調査審議会に検定意見の原案を示して修正を求める意見を出させたのは文科省である。にもかかわらず撤回を求められると審議会を盾にして拒むというやり方は責任逃れにほかならず、県民を愚弄(ぐろう)するものだ。

 文科省の教科用図書検定規則によると、文科相には発行者に対し訂正の申請を勧告する権限が与えられている。

 福田首相は、県選出・出身国会議員の意見も踏まえた上で、自らリーダーシップを発揮し文科相に訂正を勧告させるべきだ。歴史の歪曲(わいきょく)は絶対に許されない。

 沖縄は去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われ、20万人余が犠牲になった。戦後の米軍施政下で広大な土地が米軍基地として強制的に接収されている。

 復帰後35年を経た現在も、全国の米軍専用施設面積の4分の3が沖縄に集中している。県民は、日常的に基地から派生する事件・事故に脅かされている。

 中でも、市街地の真ん中に位置する普天間飛行場の危険性除去は緊急の課題だ。一刻も早い閉鎖状態の実現が求められている。

 安倍前政権は7月の参院選で国民から「ノー」という審判を突きつけられた。福田内閣もその延長線上の政権にすぎない。各分野で明確な政策を示した段階で、できるだけ早く衆院を解散し総選挙で民意を問うてもらいたい。

(9/26 10:23)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27512-storytopic-11.html

 

2007年9月26日(水) 夕刊 5面

住民の戦争体験 米国人が映像化/曙小・指導助手 ラドニー・リトルさん

 那覇市立曙小学校で外国語指導助手(ALT)として勤務する米国人のラドニー・リトルさん(30)が、沖縄戦と住民をテーマにドキュメンタリ―映画「命どぅ宝―Life is precious」を制作している。住民の悲惨な戦争体験を元ひめゆり学徒らのインタビューを交え、約二時間の映像で伝える。ラドニーさんは「これまで外国人が撮った沖縄戦は兵隊をメーンにしたものが多かった。住民に光を当てた作品で、沖縄の歴史や文化、人々の思いを紹介したい」と話している。(大濱照美)

 五年前、留学生として沖縄を訪れた。美しい海に心打たれすっかり沖縄ファンになったが、文化や歴史を学んでいく中で沖縄戦の話を聞きショックを受けたという。「米国では兵隊の勇ましい戦いぶりや、苦労話を学んだが、沖縄の住民がもっと大変だったと初めて知った」と振り返る。

 簡単なドキュメンタリーを作り始めたころ、母校コロラド大学の日本語講師で伊江島出身のリエコ・ニックアダムスさんから「沖縄戦は沖縄の人々にとって大切なこと。ちゃんと扱ってほしい」と言われ、本格的な作品制作を決意。賛同した友人のレイ・ガーナさん(30)、テリー・ゴングさん(30)と三人でカメラを手に、昨年の七月から県内各地の戦跡や資料館を飛び回った。

 「私の父もベトナム戦争に出兵したが、その体験を話してくれたことはない。体験者はつらい思いに耐えて語ってくれた。とても感謝している」とラドニーさん。

 今月十五日には、完成間近の作品を持って渡米し、約六千人が集まるコロラド州の祭りで上映した。

 「協力してくれた多くの人たちのためにも、十一月には完成させ県内や海外で上映したい」と意気込みを見せた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_02.html

 

2007年9月26日(水) 夕刊 5面

未来の教師 検定に意見/沖国大生、プラカード作製

 「嘘教えるの?」「GIVE ME Real Text(真実の教科書)」―。沖縄国際大学総合文化学部で教職課程を履修する三、四年生ら五十人以上が、教科書検定問題に意見する自作のプラカードやメッセージボードを持ち、二十九日の県民大会に参加する準備を進めている。実行委員の平良瑞希さん(21)は「学生だからこそ、今こういうことが言えるんだ、とアピールしたい」と意気込んでいる。

 大会への参加を決めたのは先週。佐藤敬明さん(23)は「将来教師になったとき、生徒にうそを教えるわけにはいかない」と強調する。二十五日には同大学内で他学部やほかの学年にも参加を呼び掛けるチラシを配布、実行委員会を立ち上げた。

 大会の会場では八つのゼミが、それぞれメッセージ入りのプラカードを掲げる。正午から参加者が意見を交換するメッセージボードを作製するほか、集まった友人などと、教科書検定問題について話し合う。平良尚也さん(21)は「自分たちもいずれは教える立場になる。少しでも分かりやすく伝えたい」と意気込んだ。

 学生たちの「世話人」を務める社会文化学科の吉浜忍教授は「声を上げて参加することは、将来教師になる者の素質として大事なこと」と目を細めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_03.html

 

2007年9月26日(水) 夕刊 1面

県民大会注視し対応/検定撤回で渡海文科相

 【東京】渡海紀三朗文部科学大臣は二十六日、就任後初閣議後の会見で、二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのか、見極めて対応させていただきたい」と述べ、大会規模や決議内容を注視する考えを明らかにした。

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を文科省が削除した高校歴史教科書の検定問題に県内で強い反発があることについて「沖縄の人にとって実はそうなんだろうなというのが率直な思い」と述べ、県民感情に理解を示した。

 その上で「先の大戦で沖縄の方々が大変大きな犠牲を払われたことについては、そういった方々の犠牲の上で現在があることを重く受け止めなければならない。そういう思いを持たなければならないと強く思っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月22日、23日)

2007年9月22日(土) 朝刊 1面

県内40首長参加へ/9・29県民大会

30自治体で実行委/「軍命明白」続々と

 二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に、県内四十一市町村長のうち四十首長が参加することが二十一日、沖縄タイムス社の首長アンケートで分かった。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述をめぐり、日本軍の強制が削除された問題については「軍命は明らか」などと厳しく批判。三十自治体が実行委を結成するなど、大会に向け機運が盛り上がっている。

 アンケートは十八日に質問文を送付、二十一日までに回答を得た。四十首長は県民大会や宮古、八重山の郡民大会に参加すると回答。多良間村長は村内行事のため欠席するという。

 日本軍の強制の記述削除を求めた文科省の検定意見について外間守吉与那国町長は「手榴弾は軍人の必需品であり、個人(県民)が持てる物ではない。軍命は明らかだ」と回答するなど、記述回復を求める意見が相次いだ。

 今年七月の県議会文教厚生委員会の聞き取り調査では、座間味村の「集団自決」体験者が軍命を証言した。仲村三雄村長は「軍の関与がなかったとは到底考えられない」と指摘。三百人余りが「集団自決」で命を落とした渡嘉敷村の小嶺安雄村長は「削除は納得できない」とした。

 読谷村の安田慶造村長は「真実を伝え、将来を正しく担う人間を育てなければいけない」と強調。新垣清徳中城村長は「児童・生徒に正しい判断力を身に付けさせるには、史実を正しく学ばせることが肝要だ」とするなど、教育面での影響に触れる首長も目立った。

 三十市町村は大会実行委を「発足した」または「今後発足する」と回答。宮古、八重山の五市町は郡民大会実行委に加わっている。「発足予定はない」とした自治体は、南北大東村や伊是名村、国頭村など。「防災無線で呼び掛けている」(宜野座村)との自治体もあり、ほとんどが住民に参加を促している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_01.html

 

2007年9月22日(土) 朝刊 27面

5私大学長 撤回要求

 県内の私立五大学で組織する県私立大学協会(会長・桜井国俊沖縄大学長)は二十一日、文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除させた問題で、検定の撤回と、記述の復活を求める声明を五大学の学長名で発表した。

 声明は、ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」との演説文を引用。

 「(軍命はなかったという)一方の当事者の主張のみを取り上げ、教科用図書検定調査審議会の検討経緯が明らかにされていないことなど同省の回答は容認できない」と指摘した。

 桜井会長は「自らの過去を反省するドイツに対し、日本政府は教科書問題や『従軍慰安婦』など不都合な真実を消し去ろうとするのは許せない」と批判。沖縄キリスト教学院大学・沖縄キリスト教短期大学の神山繁實学長は、元同短期大学学長で体験者の金城重明氏(78)から何度も証言を聞いたとし、「この経験があるからこそ平和を希求したい。歴史の真実をゆがめても美しい日本はつくれない」と語った。

 沖縄国際大学の渡久地朝明学長、名桜大学の瀬名波榮喜学長も連名している。

 同協会は、学生や教職員にも県民大会への参加を呼び掛けている。


国立市議会が意見書

 東京都の国立市議会(生方裕一議長、二十四人)は二十一日、教科書検定問題で、文部科学省に検定意見の撤回を求める意見書を賛成多数で可決した。

 意見書は「集団自決(強制集団死)」について「日本軍の関与がなければ起こり得ず、記述削除は体験者の数多くの証言を否定するものだ」と批判。その上で「教科書検定問題は、国立市をはじめ全国民の問題。悲惨な戦争を起こさないためにも、沖縄戦の実相を正しく伝えることは重要」としている。

 あて先は衆参両院議長、首相、文科相、沖縄担当相。同市議会には市民二人が意見書可決を求める陳情を提出。この日の最終本会議で、賛成一二対反対一一で可決した。

 陳情者代表の阿倍ひろみさん(51)は「市民の良識が示された。本土でも運動の輪を広げたい」と喜んだ。


土佐清水市の議会も意見書


 豊見城市の姉妹都市・高知県土佐清水市議会(仲田強議長、十六人)は二十一日、九月定例会最終本会議で、教科書検定問題について検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は首相、文科相、衆参両院議長など。

 今月上旬に豊見城市から意見書可決に賛同を求める要望書を受け、議会内で協議。与野党の枠組みを超えた全会一致での可決につながった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_02.html

 

2007年9月22日(土) 朝刊 1・2面

海兵隊移転グアム輸送費 年8800万ドル/沖縄1万人残留

 米国政府説明責任局(GAO)は、十二日に発表したグアムでの米軍強化に向けた計画の課題などに関する報告書で、米海兵隊がグアムから兵士や装備を展開する際の戦略的輸送コストとして、年間約八千八百万ドル(約百億円)を見積もっていることを明らかにした。米海兵隊が将来、グアムをアジアなどへ展開する戦略拠点に位置付けていることが浮かぶ。同報告書では、グアム移転後は「沖縄に約一万人の海兵隊兵士とその家族が残るとみられる」と明言している。

 報告書は、米国防総省が「グアムと沖縄における部隊の最適な配備の組み合わせを検討中」と説明。沖縄からグアムへの移転が決定している海兵隊部隊として、第三海兵遠征軍の指揮部隊、第三海兵師団司令部、第三海兵後方群司令部、第一海兵航空団司令部、第一二海兵連隊司令部を提示している。

 一方、沖縄に残る部隊は「司令部、陸上、航空、戦闘支援および基地支援能力といった海兵空地任務部隊」の要素から構成される、としている。

 グアムの将来の役割としては「米四軍を統合した太平洋のハブ基地」との位置付け。

 米海軍は原子力空母の定期配備を視野に、支援施設整備を検討していると指摘。これに伴い、アンダーセン空軍基地に空母艦載機を一時的に駐機させる施設も必要になるとしている。また、米陸軍はミサイル防衛の機動部隊の常駐を検討。規模や部隊、インフラなどは未定だが、ミサイル防衛の配備場所はアンダーセン空軍基地も想定されているという。

 報告書は、米国防総省担当者がイラクやアフガニスタンでの軍事行動などで、グアムでの軍事強化に財源を確保できるかを困難視している実情を指摘。また、「沖縄で普天間代替施設が建設されなければ、海兵隊のグアム移転が遅れる可能性がある」とする同担当者の見解を紹介し、再編計画を実行させるためには普天間代替施設を完成させる必要がある―と強調している。


     ◇     ◇     ◇     

[解説]

戦闘部隊の拠点に


 米国政府説明責任局(GAO)のグアムでの米軍強化に関する報告書で、米海兵隊がグアムから展開する際の戦略的輸送コストとして、年間八千八百万ドル近くの追加経費を見積もっていることが判明した。報告書は、米国防総省がグアム島を含む北マリアナ諸島で海兵隊の訓練場候補地を調査していることも指摘。グアムには、沖縄から移転する司令部要員だけでなく、「機動力」が不可欠な海兵隊戦闘部隊の拠点としての役割を期待していることがうかがえる。

 昨年九月に米太平洋軍が公表した「グアム統合軍事開発プラン」は、沖縄と米本国から九千七百人の海兵隊が移転すると予測。今回のGAOの報告書で、グアムでの空地の戦闘部隊を含めた海兵隊の一万人規模の旅団新設が現実味を帯びる。

 ただ、報告書はグアムでの海兵隊の「運用上の課題」が克服されていないことも指摘している。

 グアムの海兵隊をアジア地域に派遣する際、沖縄から向かうよりも時間がかかると説明した上で、例として「海上輸送を必要とする有事作戦の際、グアムの兵士や装備を輸送するため、船舶を佐世保基地(長崎県)またはほかの場所から展開させる」としている。

 司令部などのグアム移転後も沖縄に残る31MEU(海兵遠征部隊)は、日常的に佐世保基地の強襲揚陸艦エセックスと一体となって活動している。

 これをグアムの部隊のためにも運用するのは、機動力の維持に支障が出かねない。このため報告書は、グアムでの輸送能力向上の必要性を強調している。

 また、米国防総省の分析では、グアムの訓練場は規模と実用性に欠け、要件を満たす射撃場は一つもないと結論付けていることも指摘。実弾射撃訓練や水陸両用車の上陸訓練は訓練地確保が困難とみられ、沖縄の既存訓練場がグアムの部隊に使用される可能性も否めない。

 米軍はグアム、ハワイ、沖縄の三角形の地域で柔軟な危機対応を企図しているが、グアムでの運用が軌道に乗れば、海兵隊が沖縄からグアムにシフトしていく可能性もある。

 米国防総省は「グアムと沖縄における部隊の最適な配備の組み合わせを検討中」としており、グアムと沖縄の海兵隊の「軍事バランス」が今後の焦点になりそうだ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_03.html

 

2007年9月22日(土) 朝刊 27面

「軍の論理」に憤り/嘉手納司令官発言

 【中部】米軍嘉手納基地司令官のブレット・ウィリアムズ准将は二十一日、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)が十一日の未明離陸に抗議したことに対し、改善の姿勢を示さず、「基地がある限り未明離陸は継続する」と突き放した。同准将は「何度も抗議や要請を受けている」「抗議があるのは沖縄だけ。(未明離陸は)十年後も続くだろう」と発言、継続して実施する姿勢を示した。

 発言を受け、同飛行場に隣接する自治体の首長や住民から「高飛車な発言で、軍は絶対という感覚の発言だ」と怒りの声が上がった。

 三連協の抗議に初めて応対した同准将について、野国町長は「住民の実害を軽減するよう求めても、『運用上の理由や経費的な問題がある』と話がかみ合わない。むなしさを感じた」と語気を強めた。

 沖縄市の東門美津子市長は「沖縄の実態を分かっていない。軍は絶対的だという感覚の発言だ」と憤る。一方で「ここで引き下がるわけにはいかない。騒音に対する抗議行動を粘り強く続けていく」と話した。

 長年、未明離陸の解決に取り組んできた嘉手納町の宮城篤実町長は「現地の司令官で改善できないのは分かっている。抜本的な解決には日米両政府が真剣に取り組む必要がある」と指摘した。

 同基地に隣接する嘉手納町屋良地区に住む宮城巳知子さん(81)は「終戦直後から、嘉手納(基地)は米軍の都合で運用され、住民は騒音や事件、事故の危険性と隣り合わせだった。この我慢はいつまで続くのか」。騒音が県内で最も激しい地区の一つ、北谷町砂辺地区に住む松田静造さん(78)は「爆音から逃げたくても、簡単に引っ越せない人もいる。住民の気持ちは米軍へ届いていない」と憤った。

 ヘリの騒音を避け、宜野湾市から沖縄市へ移り住んだという幸地幸広さん(38)。「いったいどこへ引っ越せばいいのか。同じ人間として怒りを覚える。飛行機の真下で暮らしたら分かる」と怒りをにじませた。


FA18また緊急着陸/ロケット弾残し

 【嘉手納】二十一日午前十時四十分ごろ、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機一機が嘉手納基地を離陸前に装着したロケット弾一発を残したまま、同基地に緊急着陸した。

 目撃者によると、着陸後、数台の消防車が機体を取り囲み、一時騒然とした。兵器を担当する兵士が、左翼下のロケット弾装着部分を入念に点検していた。同機は着陸から約二十分後、自走して駐機場に戻った。

 FA18は今月十九日にも、別の機体がロケット弾一発を残し、嘉手納基地に緊急着陸した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月22日朝刊)

[洋上給油活動]

見直しも選択肢のうち

 もし自民党が参院選に勝って参議院で過半数を占めていたら、テロ対策特別措置法の延長問題はどうなっていただろうか。おそらく十分な議論もないまま四度目の延長がすんなり決まったことだろう。

 自民党の惨敗で事態は一転した。

 シーファー駐日米大使は、野党の理解を得るため「決断に必要なあらゆる情報を提供する用意がある」と述べ、野党議員に対しても機密情報を開示する考えのあることを明らかにした。自民党が選挙に勝っていたら、そんな話も出なかったに違いない。

 国連安全保障理事会はアフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)の任務を延長する決議案を賛成多数(ロシアは棄権)で採択した。

 この中には、アフガニスタンで米軍主導の「不朽の自由」作戦を行っている有志連合各国の貢献に対する「謝意」が盛り込まれている。

 この文言は日本などの働きかけで新たに挿入されたものだ。国連のお墨付きを得て、国内世論を動かし、民主党を説得する、ということなのだろう。

 参院選の選挙結果は、日本の政治状況をこれだけ変えたのである。

 この変化を「政治の混乱」と見る人もいるが、十分な議論もないまま強行採決を繰り返してきた政府与党の国会運営をあらため、議論を深める絶好の機会ととらえたい。

 テロ特措法は米中枢同時テロを受け、二〇〇一年十月に二年間の時限立法として成立した。これまでに三回延長を重ね、現行法は十一月一日で期限が切れる。

 防衛省によると、〇一年十二月の活動開始から八月三十日までに、十一カ国の艦艇に計七百七十七回、約二百二十億円相当の燃料を無償で提供してきた。米軍向けの給油回数が全体の半分近い。

 だが、これまで、詳しい活動内容は明らかにされてこなかった。どのような活動をしているのか国民には見えにくく、検証しようにもできないのが実態だ。

 海自から間接給油を受けた米軍空母がイラク戦争の空爆攻撃に参加したとの疑念も指摘されている。

 憲法が禁じる武力行使との一体化や集団的自衛権の行使に当たる活動実態がないのかどうか。依然として懸念が払拭されないだけに、詳細な情報開示が必要である。

 給油活動以外にアフガニスタン支援の選択肢はないのかどうか。この際、見直しも視野に幅広く議論すべきである。その場合にも当然のことながら憲法九条の存在が前提だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070922.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍司令官発言 異常さを理解できないのか

 午前4時半、就寝中に突然、猛烈な爆音にさらされたらどうなるか。自分の身に置き換えて考えれば、住民の苦痛がいかほどか容易に分かる。これが繰り返されれば、怒るのも当然である。

 しかし、米空軍嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ第18航空団司令官には、このことが理解できないようだ。21日、北谷町、嘉手納町、沖縄市で構成する「嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会」(三連協)が、未明離陸について抗議した際、同司令官は「三沢や岩国では早朝や未明離陸を繰り返しても抗議はない。沖縄はなぜ抗議してくるのか」と質問したという。

 「なぜ」という問いには、数字で根拠を示せる。今月11日の嘉手納基地からの未明離陸の際、嘉手納町基地渉外課が「安保が見える丘」で騒音測定したところ90・1デシベルから最大で94・1デシベルを記録した。94デシベルというと、「騒々しい工場内」の騒音に相当する。8月28日の未明離陸では100デシベルを超え、最大で104・3デシベルに達した。異常な状態だ。

 未明の静けさの中で、いきなり切り裂くような爆音。司令官はこの状態を「正常」だと言いたいのだろうか。もしくは「我慢できる程度」だと住民に納得してほしいのか。ウィリアムズ司令官の無理解な発言はさらに続く。

 「何回も(中止)要請に来ているが、10年後も同じようなこと(未明離陸)が続くだろう」

 議会の決議、抗議行動が幾度もなされたが、ほとんど改善されない理由はこれだろう。改善の努力をしているが時間を要している、もしくは効果的な対策が見つからないのではなく、軍事最優先、住民生活犠牲はやむなしという姿勢なのだ。「10年後も」という表現は、今後も未明離陸をやめるつもりはないという意思の表れと受け取れる。

 米軍は重大事件が発生するたびに「良き隣人でありたい」と強調してきたが、今となってはむなしい言葉である。

 三連協は、全面飛行停止を要求しているのではない。基地の存在を現実的に判断し(1)午後10時から翌午前6時までの航空機飛行、エンジン調整の中止(2)他基地経由、時間調整による深夜・早朝飛行の回避|を求めただけなのだ。米軍が受け入れ難い要求だとは思えない。

 それさえ聞く耳を持たないという態度なら、米軍と、自治体・住民の対立の溝はいっそう深まろう。

 未明の離陸は絶対に認められない。米軍はすぐにでも考えを改めるべきである。ウィリアムズ司令官も発言を撤回してほしい。沖縄は米国の占領地ではない。

(9/22 10:02)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27392-storytopic-11.html

 

2007年9月22日(土) 夕刊 5面

授業前10分 教科書検定問題学ぶ/南風原高

 【南風原】二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の意義を学ぼうと、南風原高校(識名昇校長)は二十日から毎朝の「読書タイム」に、全学年約九百人の生徒が教科書検定問題などを取り上げた新聞記事を読む取り組みを始めた。二十八日まで続ける。県民大会には教諭らが「読書タイム」などを通して学んだ生徒のメッセージを書き込んだ横断幕を掲げて臨む。幅約四メートルの横断幕に、同校九百人の平和への思いを託す。(仲本利之)

 高校生の視点で検定問題を考えようと、国語科の仲村将義教諭を中心に数人の教諭らが沖縄タイムスなどに掲載された記事をピックアップ。八時五十分から十分間の「読書タイム」に、黙読し各自で問題の背景などを考えている。

 一年五組(担任・具志堅忠教諭)では二十一日、約四十人が、渡嘉敷島で起きた「集団自決」について金城重明さんの体験を紹介する記事などを読んだ。

 上里真央さん(15)は「『集団自決』が起きたことを沖縄だけでなく、日本全体の問題として考えてほしい。本当に起きた事を正しく伝えていかなければ、次の世代は沖縄戦で何が起きたのか分からなくなってしまう」と危惧した。

 一方、普段から新聞を読まず、あまり関心を示さない生徒もいるという。国語科の兼久直教諭は「もし自分の好きな彼氏が殺され、後で『殺しはなかったことになりました』と言われたらどう思うか?」と生徒らに問い掛ける。

 「たとえ関心を示さない生徒でも、身近な人に置き換えて考えれば、無関心では済まされない事だと分かってもらえる」と話す。

 同校は二十九日に学園祭を開く。生徒らが県民大会に参加できるよう学園祭の延期も検討したが、中間試験やインターンシップなど過密日程を抱え日程変更を断念した。県民大会には生徒らに代わって教諭らが参加する。


     ◇     ◇     ◇     

95年県民大会の剰余金447万寄付

 一九九五年十月の米兵暴行事件県民総決起大会の嘉数知賢実行委員長は二十二日午前、那覇市内で、同大会の剰余金約四百四十七万円を「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会に寄付した。

 嘉数実行委員長は「文部科学省は(日本軍の強制という)教科書の記述を意識的に改めている。沖縄の正しい歴史を後世に伝えるため役立ててほしい」と期待した。

 剰余金を受け取った「検定意見撤回県民大会」の仲里利信実行委員長は「有効に利用し、活気ある大会にするために役立てたい」と感謝した。同実行委は、運営経費を約一千万円と見込んでいる。今回の寄付のほか、二十日までに個人や団体から協賛金約二百五十一万円が集まっている。

 同県民総決起大会の玉城義和事務局長らは「十二年間、使い道が決まらなかったが、超党派の県民大会という内容が合致していることから寄贈を決めた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221700_01.html

 

2007年9月22日(土) 夕刊 4面

県出身兵士の戦死場所特定/中国で沖大・又吉教授

 沖縄出身の日本軍兵士が一九一四年(大正三年)の中国での青島出兵で七人、二九年(昭和三年)の済南事件で三人が戦死し、そのうち六人が亡くなった場所を又吉盛清沖縄大大学院教授が現地で確認した。青島事件では中国のドイツ利権を狙って旧日本軍が山東半島に上陸。済南事件では、済南で日本軍と蒋介石の国民党軍が衝突した。又吉教授は「日本の中国侵略に沖縄出身者が組み込まれていった実態が明らかになった」としている。

 又吉教授は二日から九日まで中国で調査。青島事件で豊見城村(当時)出身者が戦死した青島要塞の中央堡塁跡、西原村(同)出身者が死亡した小水清溝と、竹富村(同)出身者が死亡した東呉家村という集落跡をそれぞれ確認。済南事件で死亡した首里市(同)、平良町(同)、久米島具志川村(同)出身の三人が死亡した済南病院跡も特定した。

 いずれも靖国神社の合祀台帳、熊本兵団戦史、当時の新聞などを基に兵士の氏名、出身地、死亡場所・年月日を調べ、現地で聞き取りした。残る四人の死亡場所は特定できなかった。

 又吉教授によると、日本は、南洋のドイツ領にも進出し、それが、南洋移民につながるとみる。又吉教授は「アジアとの交流を考えると戦場体験を知らないままではいけない。沖縄人の戦場体験を明らかにすることで、相互理解につながるのではないか」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221700_06.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 1面

「集団自決」直後を記録 米軍の公文書発見

関東学院大林教授 外科病院資料は初

 慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」直後の状況を記録した文書を、林博史・関東学院大学教授が二十二日までに、米国立公文書館で発見した。米軍の部隊日誌には「年をとった男がやりの上に倒れ」て「集団自決」したことなどが、生々しく記録されている。移動外科病院の資料が初めて確認され、「集団自決」によると見られるけが人の数も記録されていた。林教授は「自決直後の生々しい状況が記録されており、直後の記録としては貴重」としている。(編集委員・謝花直美)

 文書は慶良間諸島に上陸した米軍の作戦報告や部隊日誌など九ページ。今年夏、林教授が見つけた。

 慶留間島を攻撃した米軍の野砲第三〇四大隊部隊の日誌では、一九四五年三月二十六日午後十二時半に上陸完了、午後四時から民間人を収容し始めた。午後五時に「幾人かの民間人は自決した」と「集団自決」を記録。「彼らは、アメリカ軍が彼らの妻や娘たちをもてあそび、男たちに拷問を加えることを恐れていた」と、恐怖が刷り込まれていたことを記している。

 翌二十七日午後三時には、十二人が「集団自決」したガマで救助された二歳ぐらいの女児の記述がある。「女性や子どもたちはひもで首を絞められ、一人の年とった男はできそこないのやりの上に倒れることによってハラキリを行った(中略)子どもは首を絞められていたが、まだ生きていた。大隊の軍医が、その子の首のひもで作られたひどい火傷を治療した」

 座間味島へ上陸した第六八移動外科病院の作戦報告では、二十七日午前十一時半、スタッフは上陸すると、すぐに救急治療を開始。「海岸には多数の負傷した民間人がいた。初日だけで二百人の民間人の負傷者を治療した」。翌二十八日午後七時、さらに渡嘉敷島から六十五人の負傷者が運ばれてきた。「(日本軍の)狙撃手から銃撃を受ける中、海岸で緊急治療を施した」。日本軍が民間人の生命に配慮しなかったことを示す。

 病院は六月十九日までに、米軍将兵二百十二人、捕虜五十四人、民間人二百九十一人を治療。民間人の症状内訳は、病気十九人、負傷百八十九人、戦闘による負傷八十三人だった。

 林教授は病院記録について「本来米軍将兵の治療が任務だが、将兵の治療より、沖縄の民間人の治療にあたったことが示されている。負傷者の多くが『集団自決』関係ではないか」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_01.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 21面

自身の映像に「証言したい」/那覇で上映・講演会

 二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、「ドキュメント沖縄戦」(主催・沖縄戦記録フィルム一フィート運動の会)の上映会と講演会が二十二日、那覇市の久茂地公民館であった。県民大会を前に「集団自決(強制集団死)」に関する問い合わせが相次ぎ、無料の上映会を企画。六十七人が犠牲になった座間味村産業組合壕での「集団自決」後の映像が流れ、会場は重苦しい雰囲気に包まれ、すすり泣きが漏れた。一フィート運動の会の福地曠昭代表は「上映会で自身の映像を見て、証言したいと手を上げる新たな関係者も出てきている。こうした広がりを大会成功へつなげたい」と力を込めた。

 映像を見た座間味村慶留間島での「集団自決」体験者の與儀九英さん(78)=沖縄市=は「慶留間での悲惨な光景は頭に焼き付いている。映像を見て、むごたらしい惨劇が頭に浮かび複雑な気持ちになった」と声を落とした。「『集団自決』で未遂し、人相も変わるほど顔を腫らした人たちと一カ月ほど一緒に暮らしたこともある。何十年たっても忘れることはできない」と語った。

 上映会後、沖縄戦研究者の大城将保さんが「沖縄戦の真実とわい曲」と題し講演。沖縄戦の「集団自決」の記述から日本軍の強制が削除された文部科学省の教科書検定について、「靖国や従軍慰安婦などの問題で、旧日本軍の名誉回復を図ろうとする勢力が沖縄に乗り込んできた」と警鐘を鳴らした。

 その上で「彼らは沖縄戦を美化し、軍に責任はないと言いたいだけだ。自衛隊を強化するために、都合の悪い沖縄戦の真実にふたをしようとしている」と訴えた。

 検定問題の背景に、検定そのものの在り方と大阪地裁で起こされた「集団自決」訴訟の二つがつながっていると指摘。同訴訟で、座間味島駐屯の日本軍の戦隊長だった梅澤裕氏が軍命をめぐる著作での記述で名誉を傷つけられたと主張していることについて、「集団自決」で亡くなった当時の座間味村助役兼兵事主任の妹二人が、軍命があったことを初めて公の場で証言したことを挙げ、梅澤氏側の矛盾を突いた。

 大城さんは「人が人でなくなるほど極限まで追い詰められた沖縄戦の体験は底が深く、人前で語るには大変な勇気と心の整理が必要。体験者が黙っているのをいいことに軍命はなかったと言う人たちがいるが、体験者のこうした感情の理解なくしては沖縄戦の真実は分からない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_02.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 20面

声上げねば何も変わらず/9大学合同祭で討論会

 自分が行動しなければ、何も変わらない―。「第一回沖縄九大学合同大学祭」(主催・情熱大学実行委員会)の一環として、「学生沖縄サミット二〇〇七」討論会が二十二日、宜野湾海浜公園であった、県内の大学生七人が、文部科学省の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍強制の記述が削除された問題について議論し、二十九日の県民大会への参加を呼び掛けた。討論会に先駆け、県民大会実行委員で高教組の福元勇司書記長が、文科省の教科書検定から大会開催に至るまでの経緯を説明した。

 学生らは「集団自決」の体験者を招いて講演会を開くなどした自らの活動を報告。「大学生の平和活動への関心の薄さ」などをテーマに意見を出し合った。

 沖縄国際大二年の平田博之さんは「大学生が戦争に動員された時代もあった。いくら平和を願っても形に表さなければ、記述を書き換えようとする流れに乗ってしまう」と言葉に力を込めた。

 討論会を企画した琉球大四年の森田直広さんは「(県民大会に)まず行ってみよう、という状況をつくりたかった。多くの学生に関心を持ってほしい」と訴えていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_03.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 2面

米軍再編打開へ期待/自民党総裁選 県連 福田氏支持

 自民党総裁選で、二十二日に投開票された同党県連(外間盛善会長代行)の予備選挙は、福田康夫元官房長官が投票総数七十四票の八割近い五十八票を得て、麻生太郎幹事長の十六票の得票数を上回り、県連持ち分の三票すべてを獲得した。(与那原良彦)

 福田氏は、派閥で支持を決めた県選出・出身の自民党国会議員四人の票を固め、県議や市町村支部長、職域団体の票を集めて麻生氏を圧倒した。手堅い政治手腕が評価されると同時に、地方と中央の格差是正やこう着する米軍再編の打開など、小泉、安倍と続いた改革路線からの変更を求める期待が福田氏支持に集まった格好だ。

 七月の参院選沖縄選挙区で十二万七千余票差という歴史的大敗を喫した自民党県連は、党勢立て直しの途上にある。

 総務会では冒頭、池間淳総務会長と外間会長代行が、参院選での公認候補大敗や安倍晋三首相の辞意による突然の総裁選に陳謝した。ある幹部は「安倍首相が政権を放り出し、国民の信頼を損ねる結果になった。今回の総裁選は背水の陣だ」と危機感を訴えた。

 総務会出席者は「東京など大都市は好景気に沸くが、沖縄を含めた地方の疲弊は深刻だ。次期政権の最も重要な政治課題は、地方と中央の格差是正だ」と主張する。

 小泉、安倍政権で総務相、政調会長、外相、幹事長を歴任してきた麻生氏に対し、福田氏は官房長官辞任後は政権から離れていた。改革路線の修正に取り組めるのは福田氏ではないか―という声が強かった。県議の一人は「次期政権は解散総選挙までの選挙管理内閣になる。その点でも穏健な福田氏が適している」と評した。

 国会議員の多数派工作でも、福田氏の出身派閥である町村派に所属する嘉数知賢衆院議員が沖縄選対本部長を務め、県議や職域団体への支持拡大に奔走した。

 福田氏自身も執行部に直接、電話で支援を求めた。また、選対副本部長に就いた保岡興治衆院議員は、議員総会で「沖縄の自立経済の確立や米軍普天間飛行場移設など再編問題の解決に成果を挙げる」と訴えた。

 一方の麻生氏は、これまで支持していた下地幹郎衆院議員が離党していることも響いた。

 結果、県連持ち分の三票は福田氏に投じられることになったが、県連が新総裁(新首相)に求めるのは、県と政府の関係修復だ。

 十八日に与党県議団と懇談した仲井真弘多知事は、普天間飛行場の移設協議がこう着状態に陥っているとして、防衛省など政府に対する強い不満感を漏らしたという。

 県連関係者は「早期の局面打開を図るべきだ。この問題が長引けば、与党にも悪影響が出る」とし、次期首相のリーダーシップによる政策転換に期待を寄せる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月23日朝刊)

[米軍機未明離陸]

住民の声を受け止めよ

 米空軍嘉手納基地からF15戦闘機などの未明離陸が相次いでいる中、周辺三市町の首長、議会議長が、安眠を妨げられているとして、基地司令官に抗議と中止を申し入れた。だが、地元の切実な声に対しても司令官は聞く耳をもっていないようだ。

 ブレット・ウィリアムズ司令官(准将)は「嘉手納基地がある限り、未明離陸は続く。十年後も続くだろう」と指摘した。その上で、岩国や三沢など他の基地周辺自治体を例に挙げながら「抗議があるのは沖縄だけ」と答えたという。

 常日ごろ「良き隣人」でありたいと語ってきたのは米軍ではなかったか。今回の首長らへの対応は、事実上の門前払いであり、突き放したものとしか思えない。

 司令官は、基地被害に苦しむ沖縄の現実を知らなすぎる。基地を管理する立場であればこそ、もっと地元住民の声を真摯に受け止めるべきである。

 未明に離陸することに関し、司令官は、運用上の理由と経費の問題を示している。

 米軍機が太平洋を横断して米本国に向かう場合、「長時間飛行を続けるパイロットの安全のため、日中に目的地へ到着する必要がある」ため、未明離陸を実施しているのだという。

 嘉手納基地に関する騒音防止協定は、深夜・早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限している。ただし、「運用上の理由を除く」との例外規定があり、未明離陸はこの例外規定を適用したものとなっている。

 緊急時ならいざしらず、あらかじめ予定されている飛行を例外規定として適用し、未明離陸が常態化しているのである。これでは協定が有名無実化しているのも同然だ。

 米本国に向かうため、予定されていた未明の離陸が遅れ、午前中に離陸したケースが今年五月にあったことは、記憶に新しい。

 政府は日米合同委員会などを通じ、米側の例外規定の乱用をやめるよう求めるべきではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070923.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月23日朝刊)

[9・29県民大会]

再び山が動きつつある

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向けた取り組みが党派を超えた島ぐるみ運動の様相を見せている。

 県内四十一市町村長に対する本紙アンケートでは四十首長が県民大会への参加を表明した。

 県内の私立五大学で組織する県私立大学協会は連名で声明を発表。「一方の当事者の主張のみを取り上げ、審議会の検討経緯が明らかにされていないことなど文部科学省の回答は容認できない」と批判した。

 県内で市町村ごとに実行委員会を結成する動きが広がり、県知事、県教育長、県議会、県PTA連合会、労組など各種団体が大会への参加を呼び掛けている。民間では特別授業として生徒全員の参加を決めた専門学校もある。

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制を示す記述が削除されたことに対する県民の強い危機感の表れだろう。

 県外では、県内市町村と姉妹都市を結ぶ自治体などで意見書が相次いで可決され、全国の教育関係者でつくる団体がアピールを採択するなど、県民世論に呼応した動きも広がっている。

 検定意見撤回を求める県民大会の開催は、米兵による暴行事件を契機に、日米地位協定の見直しや基地整理縮小を求めた一九九五年の10・21県民大会にも匹敵する展開になってきた。

 安保再定義の動きに危機感を抱いた大田昌秀元知事が地位協定見直しを要請したのに対し、「議論が走りすぎ」と政府の対応は同様に冷淡だった。当時も県民の反発が一気に広がった。

 基地問題、沖縄戦に関する県民の感覚は鋭敏である。歴史体験の中ではぐくまれてきた共通の感覚だろう。党派を超えた県民大会は復帰後二度目になる。燎原の火のように広がってきた沖縄の怒り、県民の世論を政府はどう受け止めるのだろうか。

 県内六団体代表の撤回要請に対し、文部科学省の布村幸彦審議官は「審議会が決めたことに口出しできない」と説明してきた。伊吹文明文科相は「役人も安倍首相もこのことについては一言も容喙できない仕組みで教科書の検定は行われている」と述べ、面談にも応じようとはしなかった。

 その後、教科書審議会日本史小委員会では検討の実態がなく、文科省の調査意見が追認される形になっていたことが関係者の証言で判明し、県民の怒りに油を注ぐ結果になった。

 沖縄戦の「集団自決」の記憶は沖縄の琴線に触れる問題だ。なぜ怒りが渦巻き、再び山が動きだすのか。政府は県民世論から目をそらすことなく、正面から向き合うべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070923.html#no_1

 

琉球新報 社説

意見撤回県民大会 検定制度にもメスを

 なぜわれわれが文部科学省の教科書検定意見に反発し、その撤回を県民挙げて求めているのか。理由はいくつかある。まず沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)について、生存する体験者の証言などから旧日本軍の強制・関与があったのは事実であること。そして渡嘉敷・座間味島の事例が係争中という状況だけをもって、強制・関与の事実がすべての「集団自決」でなかったことにしたいという動きに危機感を感じていることだ。

 さらに今回の騒ぎで見えてきたのは、決して沖縄のみに特有の問題ばかりではないということ。つまり現行の教科書検定制度とは、現状は事実上の国定教科書ではないのか、という疑問だ。そう考えてくると、これは沖縄だけでなく全国にも当てはまる、普遍的な問題を含むことになる。

 29日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」まで1週間を切った。これまでに県内41全市町村議会で撤回決議が可決され、運動は島ぐるみの様相を呈してきた。最近、県内だけでなく本土の自治体でも撤回決議が相次いでおり、全国的に関心を集めつつある。この問題が単に沖縄という一地域の問題ではない、という認識が広がっているものとして、心から歓迎したい。

 戦前の日本では教科書は国が発行する国定教科書だった。時の政府の思想が色濃く反映され、極端な場合、偏った歴史観、ナショナリズムを国民に押し付ける恐れが強い。皇国史観で彩られた教科書が、戦前の日本国民を戦争に駆り立てていく上で重要な役割を果たしたのは紛れもない事実だろう。

 その反省の上に立ち、戦後は検定制度が導入された。この制度の下では、民間の出版社が教科書を作成し、文科省の検定と承認を受けることになる。提出された教科書は、教科用図書検定調査審議会で審査され、文科省に提言をするという流れだ。一見、問題ないかのように見える。しかし、この審議会がくせものだ。

 今回明らかになったのが、審議会とは名ばかりで、ほとんど議論もしなかったということだ。さらに沖縄戦研究者もいなかったというから、驚くほかない。最大の問題は提言自体が、あらかじめ文科省の調査官が出した意見書に沿うものだった、ということだ。

 つまり、極端に言えば国(文科省)の思う通りの教科書が作れるということになる。国定教科書ではないか、とされるゆえんだ。

 今年6月、教育改革関連3法が成立した。教育目標にわが国の歴史について「正しい理解に導き」とある。一連の流れを見ると「(国にとって)正しい歴史」の意味がよく理解できる。検定制度の在り方も問われるべきだろう。

(9/23 10:38)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27430-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(9月20日、21日)

2007年9月20日(木) 朝刊 27面 

史実守れ 世界の声抱え/女たちの会 米から帰国

 県内の基地問題を考える「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)のメンバーら六人が十九日、米のサンフランシスコで開かれた「第六回国際ネットワーク集会」から帰国した。韓国やフィリピンなど米軍基地を抱える各国の参加者から「沖縄に平和を」など連帯のメッセージが書かれた布約五十枚を託された=写真。二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に各国の思いをつなぎ合わせる。

 十年目を迎える同集会は、フィリピンや韓国のほか、グアムが初参加し、米軍基地を抱える国から約八十人が参加した。同会のメンバーらは沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に関し、教科書から日本軍の強制の記述が削除された問題を訴え、検定の方針を撤回させるため、県民大会が開かれることを説明した。

 参加者からは「基地を抱えているだけでも大変なのに、歴史を歪曲しようとするのか」と驚きの声が上がったという。

 高里代表は、沖縄戦と基地存続が共通問題であることを告げた。参加者から「沖縄に平和を」「正義がそこ(沖縄)にあるように」などと韓国語や英語などでつづられたメッセージが集まった。

 ハワイやグアムの参加者からは、これまで無視されていた過去を記したり見直したりすることが歴史の掘り起こしだが「沖縄の状況は逆だ」との意見も出たという。

 メッセージを手にしたメンバーらは、「今回のように、互いの課題をサポートしたい」と話した。


県教委6委員も


 県教育委員会の中山勲委員長は十九日、県民大会に、県教委の六委員全員が参加すると発表した。中山委員長は代表して、意見表明もする。

 中山委員長は「沖縄戦の実相を正しく後世に伝え、子どもたちが平和な国家や社会の形成者として育つためにも、県民とともに声を上げなければならないと考える」とした上で、「多くの県民が大会に参加し、思いを結集するよう強く呼び掛けたい」と語った。


粟国は全7議員


 【粟国】県民大会に向け、粟国村議会(玉寄文雄議長)は十九日までに、議員七人の全員参加を決めた。

 同村の上江洲誠吉村長も県民大会の参加を予定している。上江洲村長は、職員へは自主的な参加を呼び掛けている。


北中城が実行委


 【北中城】県民大会に向けた北中城村実行委員会の結成総会が十九日、同村役場であり、委員長に新垣邦男村長、副実行委員長に中村勇村議会議長らが就任した。大会当日に同公園でミニ集会を開く予定。新垣委員長は「何としても県民大会を成功させ、本土でも議論を深めることが必要だ」と話した。


南風原も実行委


 【南風原】南風原町は十九日、県民大会に向けた実行委員会を結成した。大会当日に大型バスを手配し、地域団体やPTAなど十三団体、労組員ら計二百三十人以上が参加することで一致した。城間俊安町長は「町、議会、町民が一体となって、子どもたちに真実を伝えるための運動を展開していきたい」と決意を示した。


労組連絡会結成


 県民大会に向け、連合沖縄や平和運動センターなどでつくる労働組合約三十団体による労組連絡会が十九日までに発足。代表は連合沖縄の仲村信正会長が就任した。同日、那覇市のパレット久茂地前で約三十人が参加を呼び掛けるビラを配布した。

 仲村代表は十八日に同市内で開かれた結成総会で「組合員を最大結集すると同時に、広く県民に参加してもらおう」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709201300_05.html

 

2007年9月20日(木) 朝刊 27面

ロケット弾残し緊急着陸/嘉手納FA18

 【嘉手納】十九日午後三時三十分ごろ、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機一機が飛行前に装着したロケット弾一発を残したまま、米軍嘉手納基地に緊急着陸した。同基地では、今月中旬ごろから、同機がたびたび実弾や模擬弾を装着して離陸するのが複数の目撃者によって確認されている。

 目撃者によると、同機は十九日午後二時三十分ごろに離陸、約一時間後に北谷町側から南側滑走路に着陸した。その後、数台の消防車や兵器を担当するとみられる整備兵数人が機体を取り囲み、一時騒然とした。同機は約十分後、ロケット弾装着部分などの点検を終え、自走して駐機場に戻った。

 各地で基地監視活動を行っている市民団体「リムピース」の頼和太郎さんは、状況的に「発射ボタンを押したが不発だったため、帰還したと考えられる」と指摘した。

 その上で「不発だった場合は緊急着陸という形で帰還することもあり得る。状況にもよるが、いつ発射してもおかしくない状態だった、という懸念もある」と話した。

 同基地では十三日には、AV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が、大型爆弾仕様のケースに小爆弾が数百個詰められたクラスター爆弾を装着し、離陸。約二時間後に帰還した際に同爆弾はなくなっていたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709201300_07.html

 

琉球新報 社説

「徳育」見送り 教科化よりも内容充実を

 中教審は政府の教育再生会議などが提言していた「徳育」の教科化を今回の学習指導要領の改定で見送る方針を固めた。同会議が打ち出していた正式な教科に準じる「新たな教科」への格上げも見送った。

 子どもたちに教育を通して、規範意識を身に付けさせることの重要性は論をまたない。しかし、教科書で画一的な価値観を教え込むことには違和感がある。

 現行の「道徳の時間」で身に付かなかったことを「徳育」として教科化すれば、成果が上がるといった論理は、あまりにも短絡的で、根拠に乏しい。教科化にこだわることなく、内容を充実させることを重視すべきである。

 教育現場で規範意識を身に付けさせるには、教師一人一人が日常的に子どもたちの心にいかに問い掛け、自ら考えさせるかにかかっている。

 中教審が教科化を見送り、指導内容の見直しによって道徳教育を充実させる方針を固めたのは、当然である。

 高い規範意識を求める安倍晋三首相の意向が、徳育の教科化に向けた動きを推し進めた。

 首相の辞任表明で影響力が弱まりはしたが、時の政権の偏った意向によって一時的であれ、教育の在り方を左右することは、あってはならない。

 2006年の改正教育基本法制定の過程で問題となった「愛国心」の押し付けと、「徳育」の教科化の動きは同一線上にあるのではないか。

 多様な価値観を認め合うことが求められている時代である。首相が目指す教育改革が自身の価値観の押し付けであれば、真の教育改革にはほど遠い。

 下村博文官房副長官(当時)は昨年、安倍政権が目指す教育について「(歴史教科書の)自虐史観は官邸のチェックで改めさせる。徳育教育が大きな課題だ」と述べている。

 「徳育」に対する政権の情熱と、高校歴史教科書での「集団自決」の日本軍強制を修正・削除した文科省の検定意見への対応は、根底でつながっているのではないか。

 「集団自決」記述の問題も、安倍政権の目指す教育の表れであろう。下村発言からして、官邸が教科書検定にかかわった可能性すら疑われる。

 ともあれ、「徳育」の教科化については避けることができた。しかし、子どもたちに正しい規範意識を身に付けさせることは、今後とも大きな課題である。

 それにはこれまでも指摘されているように、教育現場だけではなく、家庭、地域が一体となって取り組むことが最も大切である。

 道徳は教科書で教え込むようなものではない。

(9/20 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27316-storytopic-11.html

 

2007年9月20日(木) 夕刊 5面

F18、クラスター弾訓練/嘉手納基地

 【嘉手納】二十日午前九時すぎ、米軍嘉手納基地から、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のF18戦闘攻撃機四機が、非人道的兵器として国連人権小委員会で製造、使用の禁止が決議されたクラスター爆弾などの実弾を搭載して離陸したのが確認された。約一時間後の午前十時二十分に機体に爆弾を残さず着陸した。クラスター爆弾は大型爆弾仕様のケースに小爆弾が数百個詰められた兵器で、沖縄近海の訓練区域で実弾訓練を行ったとみられる。

 目撃者によると、午前九時七分ごろに離陸したF18二機は、片翼の下に二発ずつ、計四発を装着。爆弾の先には実弾を意味する黄色い帯状の印が確認できたという。その後、二機が十時二十分に着陸した際に爆弾はなかった。

 また、千ポンド(五百キロ)爆弾を装着した別のF18二機も同九時十一分ごろに離陸し、同十時六分に帰還したときに爆弾はなかった。

 同基地では十三日にもAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が、クラスター爆弾を積んで訓練を行っているのが確認されているという。十九日にも岩国基地所属のF18がロケット弾を残したまま緊急着陸した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709201700_04.html

 

2007年9月21日(金) 朝刊 27面

米軍、ナパーム類似弾使用/沖縄周辺訓練区域で

 【嘉手納】大規模な火災を引き起こし非人道的な兵器として国際的な非難を浴びているナパーム弾と同様の威力を持つ「焼夷弾MK77」を在沖米海兵隊が沖縄に貯蔵し、沖縄周辺の訓練区域で使用していることが二十日までに分かった。米軍はナパーム弾に使用されている混合物の種類が異なると説明しているが、専門家は「目的は一緒で、効果に違いはない」と指摘した。

 十三日に嘉手納基地を離陸した岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が、焼夷弾MK77四発を沖縄周辺で使用したことを二十日、米軍は認めた。

 在沖米海兵隊は焼夷弾MK77の存在と使用を認めた上で「訓練は、海兵隊のパイロットや乗組員が日米同盟に基づく責任を遂行する態勢を維持するため必要不可欠」としている。

 米軍嘉手納基地では、今月中旬ごろからFA18やAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機がナパーム弾同様、非人道的兵器として国連人権小委員会で製造・使用の禁止が決議されているクラスター爆弾を使用するなど、同基地を拠点とした実弾訓練が活発化している。

 軍事評論家の青木謙知氏は「混合物の違いはあっても、広範囲を焼き尽くすという目的は(ナパーム弾と)一緒だ」と説明する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211300_03.html

 

2007年9月21日(金) 朝刊 26面

真実残せ動き全国へ/松山市民が議会請願

 文部科学省の高校歴史教科書の検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述が削除された問題で、愛媛県松山市の市民団体が十九日、国に対して検定意見の撤回を求める意見書可決の請願を県議会、松山市議会、県教育委員会に提出した。同県東温市議会でも市議が意見書案を提案、神奈川県横須賀市でも市民団体が請願を提出しており、検定意見の撤回を求める動きは二十日までに県外で八自治体となるなど、草の根の動きが全国でも広がりつつある。

 愛媛県議会、松山市議会に請願書を提出したのは「愛媛?沖縄ゆいまーる」「沖縄戦を考える市民の広場」「とめよう戦争への道!100万人署名運動愛媛県連絡会」の三市民団体。「生き証人の証言は生きた教科書。動かすことのできない生き地獄の歴史が教科書から消されようとしている」とし、文科省の姿勢を批判している。

 「えひめ教科書裁判を支える会」など四市民団体は十九日、県教委に請願を提出。二十五日には県内全市町教委にも同様の要請を行う。同県東温市議会では二十日、文教委員会で意見書案が審議されたが、継続審議となった。

 神奈川県横須賀市議会には「かながわ歴史教育を考える市民の会」が請願書を提出。二十一日に教育経済常任委員会で審査される。


手製看板で参加訴え

沖子連の玉寄会長


 二十九日に開かれる県民大会に向け、県子ども会連絡育成会の玉寄哲永会長が、那覇市久茂地の交差点に立ち、帰宅途中の会社員や県庁職員らに大会への参加を訴えている。

 ベニヤ板で作った二枚の看板を前と後ろにした姿にいぶかしげな視線を送る人もいるが、すぐに気付き「私も参加します」と激励の声が多く寄せられている。玉寄会長は「多くの県民が参加して文部科学省に抗議の意思を示そう」と呼び掛けている。

 県民大会の副実行委員長も務める玉寄会長が街頭で大会の参加を呼び掛け始めたのは十三日から。雨天時を除いてこれまで三日間、午後五時から三十分―一時間ほど横断歩道の前に立つ。

 玉寄会長は「大会の前日まで訴え続けたい」と話し、汗をぬぐった。


浦添市長が参加呼び掛け


 【浦添】儀間光男浦添市長は二十日、浦添市議会九月定例会で、県民大会への市民の参加を呼び掛けるメッセージを発表した。

 市町村議会で、首長が住民に県民大会への参加を呼び掛けるのは初めて。

 儀間市長は、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について、「日本軍による命令・強制・誘導等があったということは多くの県民の証言があり、私どもが経験した戦争の悲惨さから県民の証言が正しいと考えるべきだ」と指摘した。


中城村が実行委


 【中城】二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向けた中城村実行委員会が十九日、同村役場で結成された。委員長に新垣清徳村長、副実行委員長に新垣善功村議会議長らが就任。村内各団体に大会への参加を呼び掛ける。


沖縄市も結成


 【沖縄】沖縄市は二十日、県民大会に向けた実行委員会を発足した。市や市議会、市P連、市老人ク、市婦連など十六団体で構成。委員長に東門美津子市長が就任した。

 東門委員長は「市民一体となって大会を成功させるため、一人でも多くの市民が参加できる動きをつくりたい」と抱負を述べた。


座間味村でも


 【座間味】「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、座間味村実行委員会が二十日、発足した。委員長に金城英雄村議会議長を、副委員長に仲村三雄村長を選出した。

 委員会は、今回の教科書検定意見について「国家の間違いを教科書から消し去り、沖縄戦の実態を見えなくするものであり、到底、承服できるものではない」と批判している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211300_04.html

 

2007年9月21日(金) 朝刊 26面

自然保護協が撤回要求/「普天間」代替アセス方法書

 【東京】日本自然保護協会(東京都、田畑貞寿理事長)は二十日、米軍普天間飛行場代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の撤回を求める意見書を沖縄防衛局の鎌田昭良局長に送付した。名護市キャンプ・シュワブ沿岸海域に生息するジュゴンや、白保地域が北限とされてきたアオサンゴなど、希少生物の保全が過小評価されていることを指摘。方法書の縦覧方法も極めて閉鎖的であると批判し、建設位置の選定のやり直しを求めている。

 同協会は意見書で「アセス法施行以来初めて、地元自治体が方法書の受領を拒否する異常事態で手続きが進められ、縦覧方法も極めて閉鎖的」として、住民による方法書の複写が許可されていない状況などを指摘した。

 また、大浦湾内の二カ所と辺野古漁港に作業ヤードの設置が予定されていることに「別の項目を立てて環境への影響を評価しなければいけないのに、(評価対象にせず)紛れ込ませて整理している」などとして、方法書の要件を満たしていないと訴えている。

 同協会理事の吉田正人江戸川大教授らは同日、環境省で記者会見し、代替施設で運用される航空機の名称が方法書に明記されていないことに「機種が特定されなければジュゴンや住民への騒音の影響を調べられないはずで、矛盾している」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211300_05.html

 

琉球新報 社説

焼夷弾MK77 国連決議反する暴挙だ

 国連の禁止決議を無視し、在沖米軍が高性能焼夷(しょうい)弾MK77を貯蔵、訓練に使用している事実が判明した。国連が製造と使用禁止を決議した非人道的兵器の一種だ。県民を危険にさらす暴挙であり、米軍は即刻、訓練使用をやめ、破棄すべきである。

 MK77という名前にピンとこなくても「ナパーム弾(油脂焼夷弾)」といえば分かるであろう。ベトナム、湾岸戦争などで使われた大量殺りく兵器である。その改良型がMK77だ。

 国連の人権小委員会は、劣化ウラン弾やクラスター爆弾などとともにナパーム弾も製造・使用禁止を求めている。米軍は1988年以降、ナパーム弾の廃棄を進めてきた。今回、沖縄周辺の提供訓練区域での訓練でMK77の使用を認めた在沖米海兵隊は、「MK77はナパーム弾と科学的に異なる」と釈明している。だが、ナパーム弾の燃料がガソリン、MK77が灯油の違いだ。一線の米兵らはMK77を「ナパーム」と呼んでいる。頭隠して尻隠さずの弁明にすぎない。

 国際的にも「非人道的」と非難される兵器を訓練で使い続ける。米国が国連や国際世論をいかに軽視しているか。その証左であろう。MK77ナパーム弾の殺傷能力は、すさまじい。使用された湾岸戦争での報告では、広範な地域が一瞬にして炎の海となり、炎にのみ込まれた人間や建物は徹底的に燃やし尽くされたという。

 化学剤が使用されているため消火は困難を極め、少量の焼夷剤の飛沫(ひまつ)を皮膚に浴びても「骨まで溶かす」ほど焼き尽くし、生き残っても重篤な後遺症を与える。

 その危険な兵器を米軍が訓練で使う。事故の絶えない在沖米軍である。訓練でミサイルの発射装置が故障する事故もあった。緊急着陸も多い。誤射も懸念される。人口密集地の上空を飛ぶ訓練機が事故を起こせば、戦場の悲劇は県民の上に降り注ぐことになる。

 米軍は、MK77に加えクラスター弾の訓練使用も認めている。国連が禁ずる兵器を自衛隊も保有している。あきれた話だ。日米両政府は国連決議を順守し、即刻、使用をやめ廃棄すべきだ。

(9/21 9:50)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27361-storytopic-11.html

 

2007年9月21日(金) 夕刊 1面

司令官「10年後も続く」/未明離陸

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など米軍機計五機が十一日未明に離陸した問題で、同基地周辺の三首長らで組織する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は二十一日午前、同基地を訪れ、司令官のブレット・ウィリアムズ准将に抗議し、未明離陸の中止を求めた。

 三連協の抗議に同准将が対応するのは初めて。三連協会長の野国昌春北谷町長によると、ブレット・ウィリアムズ准将は「何度も抗議や要請を受けているが、嘉手納基地がある限り未明離陸は継続して行われる。十年後も続くだろう」と今後も継続して実施する姿勢を示したという。

 「F22が本国へ帰還する際に日中に離陸した。未明離陸の回避は可能ではないか」という首長らの指摘に対しては、「パイロットなど人員の問題や費用の面で未明離陸は避けられない」と答えた。

 また、同准将は岩国や三沢など日本国内の米軍基地周辺での未明離陸は地元からの抗議がないことに触れ、「なぜ沖縄では抗議されるのか」と発言。これに対し、宮城篤実嘉手納町長は「他の在日米軍基地は居住地区から離れた場所にある。嘉手納基地では住民が実際に被害を受けている」と反論した。

 同基地で活発化しているクラスター爆弾やナパーム弾同様の威力を持つ焼夷弾MK77など実弾を使った訓練については「(基地の)管理は私の責任だが、米軍の各部隊の訓練計画を止める権限はない」と話したという。

 野国会長は「司令官の高飛車な発言を聞き、地元だけでの抗議では根本的な解決にならないと感じた。日米両政府で取り組むべき問題だ」と述べ、日本政府が問題改善に取り組むよう要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211700_03.html

 

2007年9月21日(金) 夕刊 7面 

巨大はがきで撤回アピール/浦添市職労

 【浦添】二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への参加を促そうと、浦添市職員労働組合(久高政治委員長)は“巨大はがき”に、教科書検定意見を撤回する要求を書き込む運動を展開している。組合員や市民、県民大会会場で意見を募り、大会後、文部科学大臣に郵送する。

 はがきは縦百八十センチ、横九十センチで、ベニヤ板を白く塗って作られている。本物のはがきと同じく文部科学省の郵便番号や住所、送り主の浦添市職労の住所を書き込んでいる。

 「集団自決(強制集団死)」の生々しい様子を写した県実行委のポスターを切手に見立て、切手料金には、沖縄戦の戦死者数二十万六百五十六人(県教育文化資料センター調べ)が記されている。

 組合員を対象に、十九日から始まった検定撤回の要求を書き込む運動では、「子どもたちにウソの歴史を教えるのか」「勝手に歴史を変えるなよ。県民は怒っているぞ」などのメッセージが続々と集まっている。二十五日からは市役所一階ロビーで市民からメッセージを募り、計五枚を送る予定だ。

 久高委員長は「『集団自決』の日本軍の強制の削除は今後の子どもたちの教育にも大きな意味を持つ。意見を書き込む活動を通して、県民大会に参加する機運を盛り上げたい」と意気込みを語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211700_05.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(9月18日、19日)

2007年9月18日(火) 朝刊 1・25面

「南京」検定も国主導/職員、反証文献出版にお礼

「官僚中心」以前から/関係者が証言

 旧日本軍の文書などを基に、日中戦争当時の南京での日本軍の行動を示す史料を集めた「南京戦史」(偕行社、一九八九年)が発刊された際、文部省(当時)の教科書課職員が「これで(南京大虐殺の被害者が)二十万人、三十万人と書いてくる教科書に指導ができる」と、編集者らにお礼に訪れていたことを、十七日までに関係者が証言した。教科書検定は、教科書課職員が最初から記述修正の方向性を決め、検定意見作成にかかわるなど、以前から官僚主導で行われていた実態が浮かび上がった。(教科書検定問題取材班)

 証言したのは「南京戦史」の編集にもかかわった研究者。南京戦史が発刊されて間もなく、同省の教科書課職員が偕行社を訪れ、編集にかかわった人々に「ありがとうございます」とお礼を述べたという。

 「南京戦史」は発刊の目的の一つに、「学校の教科書に記載されている『南京事件』の誤った記述を是正する根拠を提供すること」を挙げる。防衛庁(当時)などに残っていた戦史記録や、元日本兵の証言などを基に、中国兵捕虜のうち殺害された人を三万人前後、一般市民で殺害された人を一万五千七百六十人以下などとし、「(虐殺被害者が)二十万、三十万という数字がまったく真実性に欠けていることを証明」と記す。

 お礼に訪れた文部省職員は「これで、被害者数を二十万人、三十万人と書いてくる教科書に対し、『反証になる文献もあるので、これを併記するように』と指導できる」と話したという。

 当時の教科書検定の状況を知る同省元職員は「教科書課長など、行政管理職がお礼に行くことはありえない。教科書調査官が行ったのではないか」と話した。

 また、「当時も、検定意見のベースをつくっていたのは教科書全体を見ていた調査官。日本史の審議委員は、歴史研究についての専門家として参加してもらった。教科書に記載されたすべての事象についての専門家をそろえるのは不可能」と説明し、日本史の審議委員には歴史研究の専門家として大局的な判断をしてもらっていたという。

 さらに元職員は「数人の調査官がすべてを網羅するにも限界がある。意図せずして検定意見に『偏り』や『見落とし』が生じることはあり得る」とも話した。

 「南京戦史」が発刊された当時、同省は教科書検定で、南京大虐殺の被害者数などをめぐる記述に対し、「現在の学説、史料に基づき断定的すぎないように」との配慮を改善意見で求めていた。


     ◇     ◇     ◇     

全41市町村教育長も参加


 県市町村教育長協会(会長・桃原致上那覇市教育長)は十七日までに、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への県内全四十一市町村教育長の参加と、共催団体に加わることを確認した。また、県市町村教育委員会連合会(会長・仲村渠良雄那覇市教育委員長)も同日までに共催団体への参加と四十一市町村教育委員への参加呼び掛けを決定した。

 教育長協会の桃原会長は「県内外の大会にかける思いが高まっている。実行委員会の正式要請を受け、協議した」と説明。これまで同協会は、大会参加に慎重な姿勢を示していた。

 連合会長の仲村渠会長は「教育長協会と連携して行動することを確認していた」と話した。教育長協会と教委連合会は十六日、那覇市教育委員会で緊急理事会を開いた。


記述回復求め日青協が決議/教科書検定


 教科書検定で「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制の記述が削除された問題で、日本青年団協議会の理事会は十六日、記述の回復を求める意見書を全会一致で確認した。意見書は、今回の検定で「次の世代が正しい歴史を学ぶ機会を失ってしまう」と指摘し、沖縄戦の実相を正しく伝え、速やかな記述の回復を求めている。

 県青年団協議会の照屋仁士会長は「この問題を知らない人もいたが、沖縄だけでなく、全国の問題ということを理解してもらえた」と意義を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709181300_01.html

 

2007年9月18日(火) 夕刊 1面

米国法基づき米に責任 裁判官見解/ジュゴン訴訟

 普天間飛行場移設計画が進む名護市キャンプ・シュワブ沖に生息する天然記念物のジュゴン保護を訴え、日米両国の自然保護団体などが、米国防省を相手に米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に起こしている「沖縄ジュゴン訴訟」は十七日午後(日本時間十八日午前)、最終弁論が行われ、結審した。

 米自然保護団体によると、弁論の中で国防省側が移設は「日米共同作業」であることを認めた。それを受けて連邦裁判官は、米政府も独自に国内法に基づく責任を負うとの見方を示した。判決の日程は決まっていない。

 同訴訟は、米政府が米国文化財保護法に違反してジュゴンやウミガメの生息域で飛行場建設を進めているとして二〇〇三年九月、県内の市民団体や日本環境法律家連盟など、環境四団体が米環境団体とともに提訴した。

 米環境団体によると、国防省側は移設計画について「米側は当事者ではない」と従来の見解を繰り返し、同法は適用されないと主張した。

 しかし、裁判官が「計画は日米による共同作業なのか」と質問すると、同省は「共同」であるとの認識を初めて示した。裁判官は「米国の関与があるのなら、日本の法手続きとは別に、米政府は独自の責任を負うのではないか」と指摘した。

 米国防省側はこれまで、「日本政府の環境アセス法に基づく手続きにより、環境保護の基準をクリアできる」との主張を繰り返してきた。

 米環境団体「センター・フォー・バイオロジカル・ダイバーシティー」のピーター・ガルビン氏は「米軍受け入れ国の手続きに任せる国防省の主張に、裁判所が疑問を向けた。大きな成果といえる」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709181700_02.html

 

2007年9月18日(火) 夕刊 1面

高知・香南市議会が決議/検定撤回 意見書可決 県外自治体で初

 来年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述をめぐり、文部科学省が日本軍の強制を削除した問題で、高知県香南市議会(野崎昌男議長、二十六人)は十八日、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。県外の自治体による意見書可決は初めて。同市は八重瀬町の姉妹都市。

 決議は、日本軍の強制を削除した文科省の検定意見に対し、「一方の主張のみを取り上げることは、同省が自らに課す検定基準を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言を否定するものだ」と指摘した。

 その上で「悲惨な地上戦を体験した沖縄県民の心情を察すると、到底容認できるものではない」と同省の対応を批判し、検定意見の速やかな撤回を求めている。あて先は衆参両院議長、首相、文科相。

 意見書案を提案した野村正夫議員は「議員全員の賛同が得られて良かった。今後も姉妹都市関係を結ぶ八重瀬町と友好的に交流を進めたい」と話した。

 香南市は高知市の東側に位置し、人口約三万四千人。両市町の交流は一九六六年、旧具志頭村(現八重瀬町)に沖縄戦で戦死した高知県出身者を慰霊する「土佐之塔」が建立されたことがきっかけ。一九九三年に姉妹都市関係を結び、市町村合併後の二〇〇六年にあらためて姉妹都市関係を締結した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709181700_03.html

 

2007年9月19日(水) 朝刊 27面

高知・香南市議会が意見書/検定撤回

痛み共有 検定撤回要求/全国へ広がり期待

 高知県香南市議会(野崎昌男議長、二十六人)は十八日、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述をめぐり日本軍の強制が削除された問題で、文部科学省に検定意見の撤回を求める意見書案を全会一致で可決した。県外市町村での意見書可決は初めて。同市と姉妹都市の関係にある八重瀬町の中村信吉町長は「これまでの交流を通し、沖縄の痛みを理解してくれたのだろう。香南市議会の思いは力強い」と県外で検定撤回の輪が広がることに意を強くしていた。

 意見書可決は、香南市議会の野村正夫市議が、県内で高まる検定意見の撤回を求める動きを知ったことがきっかけ。

 何度も戦争体験者の話しを聞き、「沖縄の痛みを共有しよう」と考え、地元に戻って所属する保守系会派に呼び掛け提案した。

 議会後、野村氏は「議員全員の賛同が得られて良かった。今後も姉妹都市関係を結ぶ八重瀬町との交流を進めたい」と話した。

 意見書は文科省の検定意見について「一方の主張のみを取り上げることは、同省が自らに課す検定基準を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言を否定するものだ」と批判。

 「悲惨な地上戦を体験した沖縄県民の心情を察すると、到底容認できるものではない」とし、文科省に検定意見の速やかな撤回を求めている。

 八重瀬町議会の神谷信吉議会議長は「本土と沖縄では温度差があるが、町にとって大きな弾みだ。この輪が全国に広がれば」と期待。沖縄戦で亡くなった高知県出身者を祭る「土佐之塔」を約四十年間、清掃しているという伊吉栄徳副議長は「全会一致を八重瀬町議全員で喜んでいる。今後の交流は、もっと素晴らしいものになる」と話した。

 県民大会実行委員会の玉寄哲永副実行委員長は「議会決議には地域の了解が必要で、県外での可決が持つ意味は大きい。県民世論が全国に広がるきっかけになる」と喜んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709191300_01.html

 

2007年9月19日(水) 朝刊 1・27面 

9・29県民大会/14市町村で実行委

 二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け十八日、県内五市町で実行委員会が発足、これまでに組織された九市町村を合わせ計十四市町村で実行委が結成された。各自治体の首長や議会議長が委員長となり、団体を巻き込んで住民に参加を呼び掛ける動きが本格化している。

 南城市の古謝景春市長は「われわれには二度と戦争を起こしてはいないと、後世に伝える責務がある」と訴えた。市内十七団体が加わり、移動手段に貸し切りバス四台を手配する。西原町の新垣正祐町長は「二度と過去の過ちが起こらないよう、後世に真実を教えなければならない。町民にしっかりと参加を呼び掛けたい」と強調した。町や町議会、町職労など十団体で構成、町教育委員は共催団体として加わる。町内三十二自治会や関係団体がポスターや広報マイクなどで町民に参加を呼び掛ける。

 宜野湾市の伊波洋一市長は「沖縄戦で宜野湾は多くの住民が犠牲となった。歴史の歪曲を許さないという県民の声を政府に届けよう」と呼び掛けた。市内の四十七団体がポスターやビラを配布、住民への周知に努める。豊見城市実行委員長の大城英和市議会議長は「このまま検定意見を許してしまえば沖縄の歴史が埋もれてしまう。一人でも多く市民の参加を呼び掛けたい」と強い決意を示した。市総務部と市議会に事務局を設置。大型バス四台を手配し、市内十八団体から二百人を動員する。

 八重瀬町では町内計十二の機関・団体で実行委を組織。実行委員長に、中村信吉町長と神谷信吉議会議長の二人を選任した。神谷議長は「沖縄戦の事実を住民が継承していかないと意味がない。県民大会を盛り上げ、成功させたい」と語った。


     ◇     ◇     ◇     

平和の灯リレー/児童ら走り継ぐ


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)は十八日、糸満市平和祈念公園から宜野湾海浜公園まで約三十六キロをつなぐ「平和の灯リレー」の実施を決めた。実行委は「リレーを通して『集団自決(強制集団死)』の犠牲者と大会参加者の心を結び、検定撤回に追い込みたい」と話している。

 「平和の灯」は、平和祈念公園内にある「平和の火」から採火。「集団自決」があった座間味村や被爆地広島の「平和の灯」、長崎の「誓いの火」から合火された思いを結ぶ。

 リレーは二十九日午前十時十五分に同公園をスタート。沿道の小中高校の児童・生徒や自治体の議会議長、市長、職員らが二―〇・八キロの二十八区間を走り継ぎ、大会の開会に合わせて会場内で点火する計画だ。

 実行委員の高P連の西銘生弘会長らは「歴史の事実を曲げてはいけない。参加する生徒たちは、なぜリレーするのかを意識して走ってほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709191300_02.html

 

2007年9月19日(水) 朝刊 2面

市教委が詳細調査へ/シュワブ内文化財

 【名護】米軍普天間飛行場の移設先となっている名護市キャンプ・シュワブの文化財調査について、市教育委員会の具志堅満昭次長は十八日の市議会一般質問で「詳細な分布調査を進める」方針を示した。

 具志堅次長は、八月初旬に開始した同基地内の遺跡分布調査のための表面踏査がすでに終わり、「現在、試掘調査の(ポイントの)選定を行っている」段階であることを明らかにした。選定を終え次第、米軍との調整を経て、分布調査が実施される見通しだ。大城敬人氏への答弁。

 調査に必要な予算は、文化庁が本年度一千万円余りを補助する。名護市全域の遺跡が対象だが、市教委はキャンプ・シュワブの調査を優先して行う方針だ。具志堅次長は取材に対して、「名護市の自主的な事業として行う。どういったものが見つかるかによるが、期間は二、三年程度かかるのではないか」と話した。沖縄防衛局が市教委に照会した兵舎移転候補地に限定した文化財調査よりも広範囲に及ぶことから、同局や米軍が調査をどの程度認めるかが、今後の焦点となりそうだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709191300_09.html

 

琉球新報 社説

ウラン濃縮疑惑 北朝鮮は無能力化を急げ

 9月1、2日に開かれた北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米朝作業部会で、ウラン濃縮に使用する遠心分離機用の関連資材であるアルミニウム管を調達したことを北朝鮮が初めて認めていたことが分かった。

 この作業部会で北朝鮮は、年内の核計画の完全な申告と核施設の無能力化に合意した。米国は、核施設の無能力化などと併せ、拉致問題を含め日朝関係が進展した場合は、年内にテロ支援国家指定を解除する方針を決めている。

 北朝鮮としては、早期の指定解除を促し米朝関係の正常化に向けた流れを加速させるため、資材調達の具体的な事実を明らかにしたとみられる。

 今後、核問題で相当程度、譲歩する可能性を示唆する動きであり、完全非核化に向けた取り組みが進展することを期待したい。

 だが、米国がテロ支援国家指定解除の要件の一つに挙げている日朝関係については、依然として双方の立場に大きな隔たりがある。

 拉致被害者と家族の帰国、真相究明、容疑者の引き渡し―を求める日本側に対し、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」として日本側の要求を拒み続けているからだ。

 北朝鮮による拉致被害者であると日本政府が認定した日本人17人は、2002年に帰国した5人を除いて、いまだに安否が確認されていない。

 12人に関し「8人は死亡し4人は入境していない」との北朝鮮の説明は、納得できるだけの裏付けが皆無である。

 17人以外にも拉致の可能性が疑われるケースがある中で、「拉致問題は解決済み」との北朝鮮の言い分は言語道断であり、到底受け入れられない。

 日本政府は「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ない」との方針を堅持し、北朝鮮に対し強い姿勢で臨むべきである。

 北朝鮮首席代表の金桂冠(キムゲグァン)外務次官は、9月初めの米朝作業部会終了後に「核施設を無能力化し、すべての核計画を申告することを明確にした」と述べたものの、年内に実施するかどうかは明言しなかった。

 そもそも外務次官の言葉を額面通りに受け取っていいかどうかも未知数だ。北朝鮮は、すべての核兵器・既存の核計画を放棄することを盛り込んだ共同声明を05年の6カ国協議で採択したにもかかわらず、06年10月に初の地下核実験を強行、国際社会の批判を浴びたことは記憶に新しい。

 米国は、北朝鮮が本当に核施設を無能力化するかどうかを慎重に見極めるべきだ。

 拉致問題解決に向けた取り組みが何ら示されない中で、テロ支援国家指定を解除するようでは、拙速のそしりを免れないだろう。

(9/19 9:45)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27289-storytopic-11.html

 

2007年9月19日(水) 夕刊 1面 

基地・雇用など追及へ/県議会定例会が開会

 県議会(仲里利信議長)の九月定例会が十九日午前、開会した。仲井真弘多知事が総額約十五億四千三百万円の一般会計補正予算案や「県特別自由貿易地域の区域内の土地の減額譲渡に関する条例案」など計四十四議案を説明した。今定例会では、与野党とも米軍普天間飛行場の移設問題や雇用対策、医療・福祉問題などを中心に仲井真県政の対応を追及する見通しだ。

 仲井真知事は開会の冒頭、病気療養のため六月定例会を欠席したことに触れ、「多大な迷惑を掛け深くおわび申し上げる」と陳謝。その上で「(今後は)健康に一層留意し、県政運営に努めていきたい」と語った。

 会期は十月十五日までの二十七日間。代表質問は二十七、二十八の二日間、一般質問は十月一日から四日までの四日間となっている。

 一般会計補正予算では、沖縄IT津梁パークの二〇〇八年度の施設実施に向けた基本計画策定に要する経費(五千万円)や、航空機の香港定期便化や日本オープンゴルフの誘致などを進める観光振興特別対策事業費(三千万円)などを計上している。

 先議案件になっている「県職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例案」は本会議後、総務企画委員会(安里進委員長)で全会一致で可決された。二十七日の代表質問初日の本会議で可決される見込み。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709191700_02.html

 

2007年9月19日(水) 夕刊 5面

平和への思い全身で/9・29県民大会で手話ダンス披露

 宜野湾市で二十九日に開かれる「教科書検定意見の撤回を求める」県民大会で、手話ダンスを披露するサークル、NPO法人「ユーアンドアイ」山川みやらびのメンバーが、南風原町の山川公民館で練習に励んでいる。十二人の女性が、沖縄戦をテーマにした歌「さとうきび畑」の音楽に合わせ、全身を使って平和への思いを表現する。会長の神里いそ子さん(50)は「ダンスを通して大会の参加者が平和の大切さ、戦争の悲惨さを感じてほしい」と思いを語る。(平良吉弥)

 大会実行委員長の仲里利信県議会議長から大会への協力を求められ、出演することになった。六月に一般公開された沖縄陸軍病院南風原壕群二十号の記念式典で沖縄戦の犠牲となったみ霊に踊りを奉納した。

 ダンスは「ざわわ、ざわわ」と繰り返されるフレーズに合わせてサトウキビが風に揺られる情景を手話で表現する。間奏では、サトウキビ畑の下に眠る犠牲者やその家族たちからあふれ続ける涙を両手で何度もすくい上げて悲しみを伝える。

 指導する當眞梅子さん(70)=南城市佐敷=は「沖縄戦で亡くなった人たちの苦しみや家族の悲しみ、寂しさを全身で訴え、み霊を慰めたい」と話す。

 練習では音楽に合わせて、何度も踊りを確認。歌詞と手話を覚え、踊れるようになるまで三カ月近くかかった。

 沖縄戦の激戦地だった南風原町山川では、手足や首に砲弾の破片で受けた傷が残るお年寄りもいる。しかし、体験者が高齢化し、戦争を体験した世代は年々減っている。

 神里さんは「教科書から歴史の事実が消されたら、子どもたちは戦争の恐ろしさを知らずに育ってしまう」と、「集団自決(強制集団死)」から日本軍の強制という記述が削除されることを危惧。「母親の一人として、平和の尊さを訴えたい」と話している。


渡名喜村議会 全員参加決定

村民へも呼び掛け


 【渡名喜】渡名喜村議会(上原睦夫議長)は、九月定例会最終日の十八日、全員協議会を開き、二十九日に宜野湾市で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に全議員七人の参加を決めた。

 村議会と村役場が連携して村民に県民大会への参加を呼び掛ける「村実行委員会」を、二十一日以降に立ち上げるための協議を進めることで一致した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709191700_03.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月14日、15日、16日)

2007年9月14日(金) 朝刊 31面

平和運動センター・連合沖縄が連絡会結成/9・29県民大会

 沖縄平和運動センター(崎山嗣幸議長、二万人)と連合沖縄(仲村信正会長、四万人)は十三日までに、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、組合員への声掛けを徹底しようと労組連絡会を結成することで合意した。十八日に発足する。双方の団体から声掛けすることで、参加目標の五万人達成を図る。

 両団体で地域を分け、大会告知のテープを車両から放送。朝夕の出勤・退社時間に合わせて街頭宣伝などを行う。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「両団体で重複しない組合員もいる。双方の団体から声掛けすることで、多くの人が参加できるはずだ」としている。

 また、県民大会実行委は十三日までに大会告知用のポスター一万枚を作製、本島や周辺離島の計三十六市町村に計約二千四百枚を送付した。自治労県本部も十三日から立て看板を設置するなど、大会告知に向けた活動が始まっている。


久米島町も全議員参加


 【久米島】久米島町議会(仲地宗市議長)は十三日、全員協議会を開き、教科書検定意見撤回を求める県民大会に、全議員が参加することを決定した。平良朝幸町長も参加の意向を示している。


     ◇     ◇     ◇     

「集団自決」資料を展示/21日まで浦添市役所


 【浦添】教科書検定意見撤回を求める資料展(主催・浦添市職員労働組合)が十三日、市役所一階ロビーで始まった。検定意見がつく前後を比較した各出版社の歴史教科書や、沖縄戦の体験談をまとめた新聞の切り抜きなど約三十点を展示している。二十一日まで。

 パネル展示では、「集団自決(強制集団死)」の記述をめぐり、「日本軍に集団自決を強いられたり」が、「追い詰められて集団自決をした人」に書き換えられているなど、各出版社の修正個所を矢印で指摘している。

 展示は、市民や職員に教科書を見てもらうことで、問題の深刻さを訴えようと企画された。久高委員長は「日本軍の関与をなくすことで、沖縄戦の史実を少しずつ消そうとする国の動きを感じる。実際に修正前後の教科書を見比べてほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709141300_03.html

 

2007年9月14日(金) 朝刊 2面

県、国の出方で政治判断/「普天間」アセス手続き

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は十三日、方法書の公告縦覧を終了。二十七日まで住民などの意見を受け付け、十月上旬にも意見概要を県などに送付する見通しだ。県が知事意見の作成に向けた手続きに入れば、方法書の受け取り保留を「解除」したことになるが、県首脳は「考え方としては、アセスを進めるいくつかのパターンは持っている」と説明。政府の出方を見定めた上で知事意見への対応を決める方針だ。

2つの解釈


 県内部では、アセスへの対応として「保留のまま知事意見も出さない」という選択肢を残しつつ、手続きに応じる可能性も模索。想定の一つとして(1)知事意見を提出(2)アセス結果に照らし、県などが求める沖合移動の合理性を見極める(3)知事意見が反映されていないと判断した場合は埋め立て申請を承認しない―ことも視野に入れている。

 高村正彦防衛相が八日の仲井真弘多知事との面談で「アセス後の修正」検討を提示したことについて、県幹部は「二通りの理解ができる」と指摘する。

 一つはアセス手続きの中で対応可能な「軽微な修正」の範囲内での検討。これは「法的に決められた当然の手続き」(県幹部)だ。

 もう一つは「知事は『出戻り』の可能性を指摘したにもかかわらず防衛省がアセスを進めるというのであれば、アセスの結果、科学的論拠が明らかになれば『軽微な修正』を超える範囲の修正も辞さない、と解釈することも可能」(同)との判断だ。

 この解釈だと、政府が譲歩したことになり、県のメンツも立つ。しかし、高村防衛相は「政府案がベストで、よほど合理的な理由がないと変更できない」と強調しており、アセスのやり直しを迫られる修正が政府の念頭にないのは明らかだ。

 むしろ事業者自らが事業計画のやり直しを課すような結果を導く可能性は極めて低く、アセスがこのまま進めば、政府案の追認もしくはアセスをやり直さずに修正が可能な「軽微な修正」にとどめるのは明白だ。


あいまいさ


 「政府案がベストだという科学的論拠が示されれば納得できる」との見方も県内部にある。

 県は「沖合移動」を政府に要望するに当たって、公式には具体的な数値を提示していない。一方で「日米合意の範囲内」としており、どれだけの移動で納得できるかについては、あいまいな部分を残している。

 だが、仮にアセスによるデータを得た後に、県が「軽微な修正でいい」と事後承認すれば、県民には「県の譲歩」と映るだろう。

 防衛省は二〇一〇年に公有水面の埋め立てに着手する予定だ。埋め立て申請は、仲井真知事の任期中でないと間に合わない。県としては現段階で埋め立て申請の不承をちらつかせるのが唯一のカードだ。しかし、実際に承認しなければ政府との関係は険悪化するため、これも得策ではない。

 「国が一歩でも半歩でも歩み寄るかによって県の判断も異なってくる」(県幹部)。県が求めている「沖合移動」と「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」への政府の前向きな対応を引き出すことが、県にとっては「最もよいパターン」(同)だが、そのためには「政治判断が欠かせない」(同)。

 だが、今後あるかどうかも分からないそのタイミングは、安倍政権の崩壊でますます遠ざかっている。(政経部・渡辺豪)


県「軽微」超えた修正想定


 アセスメント手続きは、事業規模などによって国の環境影響評価法と、県条例を適用するケースに分かれる。国の法律、県条例ともに、アセス後も「規模の縮小または『軽微な修正(変更)』」については手続きのやり直しは必要ない、と規定している。国の法律と県条例とでは、知事意見の回答期限以外に、「アセス後に修正可能な範囲」も異なる。

 国の法律の適用対象は、飛行場に関しては「滑走路が二千五百メートル以上(第一種事業)または千八百七十五―二千五百メートル(第二種事業)」、埋め立て面積に関しては「五十ヘクタール以上(第一種事業)、四十―五十ヘクタール(第二種事業)」と規定。

 一方、県条例は飛行場に関しては「滑走路の新設を伴うもの」とし、埋め立て面積は「七・五ヘクタール以上」となっている。

 沖縄防衛局は普天間代替施設に関するアセス手続きを国の法律、県条例のどちらに基づいて進めているのか明らかにしていない。

 ただ、代替施設の滑走路の長さは千六百メートル、埋め立て面積は約百六十ヘクタール(代替施設本体約百五十ヘクタール、護岸部分約十ヘクタール)。このため、飛行場部分に関しては県条例で、埋め立てに関しては国の法律を適用するとみられる。

 「軽微な修正(変更)」の範囲は、「方法書の公告から評価書の公告までの間」と、「評価書の公告後」の場合で異なる。

 評価書の公告までの場合、埋め立て面積に関しては「新たに埋め立て区域となる部分の面積が修正前の埋め立て区域の面積の20%未満」(国の法律)、飛行場に関しては「新たに飛行場及びヘリポートの区域となる部分の面積が十ヘクタール未満」で、かつ「滑走路の長さが20%以上増加しない」(県条例)ことと制限している。

 一方、評価書の公告後の場合、埋め立て面積に関しては「新たに埋め立て区域となる部分の面積が変更前の埋め立て区域の面積の10%未満」で、かつ「変更前の対象事業実施区域から五百メートル以上離れた区域が新たに対象事業実施区域とならないこと」(国の法律)と規定。飛行場に関しては「新たに飛行場及びヘリポートの区域となる部分の面積が十ヘクタール未満」で、かつ「滑走路の長さが20%以上増加しないこと」(県条例)となっている。

 国の法律、県条例ともにこれらの規定を超える修正を行う場合「当初からの手続きを取らなければならない」としている。

 高村正彦防衛相から「アセス後の修正」の提示を受けた際、仲井真弘多知事が「出戻りになる可能性がある」と主張したのは、「軽微な修正」を超える修正が必要との判断が示されるケースを想定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709141300_06.html

 

2007年9月14日(金) 朝刊 2面

那覇空港整備「沖合1310メートル案採用を」/豊見城市長

 【豊見城】那覇空港の能力向上に向けた総合調査を実施する「那覇空港調査連絡調整会議」で、滑走路増設三案が提示されたことを受け、豊見城市の金城豊明市長は「できるだけ沖合での建設」を県や国に要望していく方針を明らかにするとともに、「三案で考えると、沖合の千三百十メートル案でなければいけないと思っている」と述べた。十二日の市議会(大城英和議長)の九月定例会で上原幸吉氏(豊政会)の質問に答えた。

 金城市長は、滑走路増設による航空機騒音や、豊崎・瀬長島地区の開発に与える影響に懸念を示した。市は今後、赤嶺要善副市長を委員長に、部長クラスで構成する「那覇空港拡張整備に関する検討会議」を設置し、県や国への具体的な要望を協議していく方針。

「容量のきつさ」実感

知事、滑走路予定地視察

 仲井真弘多知事は十三日、那覇空港整備で、新滑走路三案の予定地を視察した。

 豊見城市の瀬長島では、パネルなどで説明を受け全体を眺望。新滑走路で整備される大嶺崎周辺や旧国内線ターミナルビル跡地などを回ったほか、ヘリコプターに乗り上空から視察した。

 仲井真知事は視察後、「那覇空港の容量がきつくなっていると実感した。良い空港ができれば、二十一世紀の沖縄の発展につながる」と話し、「安倍晋三首相のアジアゲートウェイ構想を次の首相に申し送ってもらい、スピードを上げて進めてもらいたい」と要望した。

 那覇空港は将来的な需要増加が見込まれ、三千メートルの新滑走路の沖合側への配置が計画されている。現在の滑走路との間隔などが異なる三案が提案され、那覇空港調査連絡調整会議(構成・国土交通省、内閣府、県)では八月末から県民の意見を収集するパブリック・インボルブメント(PI)ステップ3を実施している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709141300_07.html

 

2007年9月14日(金) 夕刊 7面

知事、検定に強い疑念/「集団自決」審議なしで

 仲井真弘多知事は十四日午前の定例記者会見で、本紙報道で明らかになった高校歴史教科書での沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」の軍関与記述の削除・修正を求めた検定意見が、教科用図書検定調査審議会(教科書審議会)の実質議論を経ずに決まったことについて「報道の通りであれば、審議会の権威そのものにかかわるのではないかという印象を強く受ける」と述べ、検定意見の正当性に強い疑念を示した。

 同問題に対する政治家の対応について「県民は沖縄戦の実相を後世に伝えたいという強い気持ちがある。(県民の)感性をきちんと踏まえていただきたい」と注文した。

 米軍普天間飛行場代替施設建設問題で、高村正彦防衛相が「アセス後の修正」を提案した際、仲井真知事から否定的感触はなかったと発言したことについて同知事は「今のままアセスを続けていけば、調査終了後にやり直しの可能性が強いと言った。この表現がなかったということになるのか」と疑問を表明した。

 アセスに対しては「法律上の効力が発生しており、難しい面がないわけではない」と述べ、手続きに応じることも視野に入れていることを明らかにした。

 

     ◇     ◇     ◇     

自治労1万人参加へ


 自治労県本部(比嘉勝太執行委員長)は十三日の定例執行委員会で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に組合員と家族ら一万人以上の参加を目指すことを確認した。県本部は「早めに参加を呼び掛け、大会を盛り上げたい」としている。また、全国の自治労青年部二百人の大会参加が決まった。

 一方、全日本自治労は十三日までに、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐり日本軍の強制の記述が削除された問題で、検定意見を撤回するよう求める決議案を採択した。

 決議は「わが国が世界の平和に資する国となるには、歴史に率直に向き合うことが必要」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709141700_02.html

 

2007年9月15日(土) 朝刊 1・31面

審議なしでも「正当」/「集団自決」修正

文科省「手続き」強調/専門家不在も認める

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題で、県高教組の松田寛委員長、琉球大の高嶋伸欣教授、野党国会議員らが十四日、文部科学省に布村幸彦大臣官房審議官を訪ね、修正撤回を求める約四十二万人分の署名を追加提出した。要請団は教科用図書検定調査審議会(審議会)日本史小委員会で沖縄戦に関する意見が出ず、審議の実態が無かったとの本紙報道を指摘。出席者によると布村審議官は事実関係をおおむね認めたが、「手続きとしては正当に検定が行われた」と問題視しない考えを強調した。

 布村審議官は文科省職員の教科書調査官が作成した調査意見書の「集団自決」に関する意見が審議会でそのまま承認されたことや、小委に沖縄戦の専門家がいないことなどを認めた。一方で、審議過程の公開や審議委員との面談要求には「できない」と突っぱねた。

 会談後の記者会見で高嶋教授は「(合計五十二万人分の)署名の集まりを伝えたが、反応はさっぱりで門前払い。まるで態度が変わらない」と厳しく批判した。

 「調査意見書の作成段階で審議委員の意見が反映されている」とする文科省の従来の主張に、松田委員長は「反映されていない」と指摘。布村審議官は「文書ではなかった」と答えた。

 民主党の川内博史衆院議員が「私が文科省の教科書課に確認したところ、ファクスでも電話でもメールでも意見は無かったと認めている」と独自調査で反論すると、黙って聞いていたという。

 文科省は従来、軍強制の記述削除の理由を「すべての集団自決に軍の強制があったと誤解されるおそれがある」などと説明してきた。

 要請団は修正前の清水書院の「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」との記述を例に挙げ、文科省見解に疑問を呈したが、布村審議官は「すべての集団自決に軍の強制があったと読み取る高校生が出てくる可能性がある」と説明。

 出席者は「問題のすりかえだ」「高校生の読解力をばかにした暴言」などと厳しく批判した。

 集まった署名の累計は五十二万七千二百十七人分。要請団は国会内で横路孝弘衆院副議長、江田五月参院議長ら五人に合計一万人分を提出した。要請には社民党の照屋寛徳衆院議員、山内徳信参院議員らも同行した。


     ◇     ◇     ◇     

教育者800人 撤回要求/全国集会で連帯確認


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を文科省が削除した高校歴史教科書の検定問題で、全国の教育関係者らでつくる「フォーラム平和・人権・環境」は十四日夜、「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!全国集会」を都内で開いた。国会議員や出版、教育関係者ら約八百人(主催者発表)が参加し、同検定意見の撤回を求めるアピール文を採択した。参加者らは記述の回復などを目指し、二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に積極的に参加するほか、全国各地でも連帯して取り組む方針を確認した。

 元小学校教諭の神本美恵子参院議員(民主)は「(安倍内閣は)美しい国をつくると言いながら、彼らにとって憎い事実を歪曲しようとしている。(歴史的事実について沖縄に配慮する)『沖縄条項』を(検定基準に)入れさせ、二度と『歪曲』させないように皆と一緒に戦う」と強調した。

 照屋寛徳衆院議員(社民)も「政治がかく乱して教科書から真実を消そうとしたことを絶対に認めるわけにはいかない」と厳しく非難した。

 高嶋伸欣琉大教授は、十二月とされる、生徒配布用の「供給本」印刷の前に「正誤訂正」の手続きで記述回復を目指す方針を説明。その上で「事実をゆがめたことは見過ごせないと(記述の回復を)言うだけでなく、(全自治体の意見書可決や県民大会を開くなどの)沖縄の取り組みを教科書に(書き込んで)反映させるところまで実現させたい」と意気込んだ。

 「県民大会」に連動した集会が東京、横浜でそれぞれ二十七、二十九日に開かれる。「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」は二十七日午後六時半から、文京区民センターで「9・29沖縄県民大会プレ集会」を開催。「教科書・市民フォーラム」は二十九日午後二時から横浜市技能文化会館で総会を開く。同検定をテーマにした記念講演が予定されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709151300_01.html

 

2007年9月15日(土) 朝刊 30・31面

実行委、5万超へ奔走/県民大会残り2週間

 二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」まで十五日で残り二週間となった。仲里利信実行委員長は十四日、大会後の東京での要請行動では撤回決議した四十一市町村議会議長、市町村長らに参加を呼び掛けると明言した。

 仲里実行委員長は「参加目標の五万人を上回るよう努力したい」と意気込む。実行委は連日各種団体を訪ね、参加呼び掛けに奔走。これまでに二十七市町村議会が大会参加を確認している。

 実行委は十四日の役員会で、渡嘉敷島の「集団自決」体験者や高校生代表らが、式典で意見発表することや「平和の火のリレー」では大会当日の午前十時に糸満市を出発、午後三時に会場に到着することなどを確認した。


     ◇     ◇     ◇     

「集団自決」生存者、登壇へ


 県民大会で登壇する、渡嘉敷島で起きた「集団自決(強制集団死)」体験者の吉川嘉勝さん(68)=那覇市=は「軍命がなければ一晩で三百人もの人が亡くなるわけがない。若い人にも思いが伝わるよう、内容を考えたい」と話した。

 吉川さん一家は一九四五年三月、手榴弾を使った「集団自決」を試みるが、不発。母ウシさんの「死ぬのはいつでもできる」の叫びで、死から免れた。

 戦後は、小中学校の教員として勤務、「若いころから『集団自決』を問い続け、自分なりに苦悩してきた」と振り返る。「年を取り、いつまでも証言できるわけではない。最後の機会という思いで訴えたい」と話した。


バス運賃 片道無料/会場まで県バス協会決定


 県バス協会(会長・中山良邦沖縄バス社長)は十四日、宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の参加者に限り、会場までのバス運賃を無料にすると決定、大会実行委員会に伝えた。バス運賃の片道無料化で、大会参加増加に弾みがつきそうだ。

 対象は、二十九日午前十一時から午後四時の間、宜野湾市の「真志喜」「コンベンションセンター前」「宜野湾市営球場前」バス停で下車する参加者。ただし、バスターミナルでの乗り換えなどは対象外。

 参加者は下車時、沖縄タイムスなど県内二紙が大会数日前に掲載する大会実行委の広告のバス無料券(証明書)を運転手に提示しなければならない。コピー可。対象路線は下記の通り。

 20(名護西線)23(具志川線)28、29(読谷線)31(泡瀬西線)32(コンベンションセンター線)55(牧港線)61(前原線)63(謝苅線)77(名護東線)88(宜野湾線)99(天久新都心線)112(国体道路線)120(名護西空港線)223(具志川おもろまち線)228(読谷おもろまち線)263(謝苅おもろまち線)288(宜野湾おもろまち線)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709151300_02.html

 

2007年9月15日(土) 朝刊 30面

ジュゴン訴訟が17日に米で結審

 米軍普天間飛行場の移設に絡み、日米の自然保護団体が米国防総省に名護市辺野古沖のジュゴンの保護を求めて米連邦地裁で争われている訴訟の結審が十七日に開かれるのを前に、沖縄から出廷する原告らが十四日、県庁記者クラブで記者会見を行った。県内からジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨事務局長ら三人が渡米する。

 東恩納さんは、日本のアセスメント法では工事着工を阻止するのは難しいとし、「米国のアセスメント法を適用すれば環境に害があれば工事を止められる」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709151300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月15日朝刊)

[イラク米軍削減]

明確な出口戦略を示せ

 ブッシュ米大統領はイラク駐留米軍の増派を「成功」と総括し、来年夏までに三万人削減する考えを示した。

 米軍は増派前の十三万人規模に戻ることになるが、本格的な撤退については判断を先送りした。

 イラクでは宗派間対立が深まり、爆弾テロが全土に拡大するなど泥沼化する一方だ。ますます混迷の度を深めており、増派を成功と評価するのは近視眼的な見方である。

 昨秋の中間選挙では野党民主党が勝利した。共和党の一部を含め、米軍の早期撤退を求める声が高まっている。

 大統領の任期が二年弱となり、レイムダック(死に体)化が進む。今なお出口戦略を示すことができないブッシュ大統領の責任は重大である。

 今回の演説では自らの任期後も米国の関与が必要と訴え、イラクと長期にわたる戦略的関係を結ぶ必要があると強調した。だが、今後も多大な犠牲を払い続けるという選択を米国民が支持するとはとうてい思えない。

 この問題では、ベーカー元国務長官ら超党派でつくる「イラク研究グループ」が昨年末、駐留米軍の事実上の撤退や、イラン、シリアとの対話促進などを求める提言を行った。

 これに対し、ブッシュ政権は対話路線を拒否。今年一月にイラク新政策を発表し、議会の反対を押し切って二万人以上の米兵の一時増派を決めた。

 一般教書演説では、米軍が撤退すれば宗派対立による暴力が中東全域に拡大する「悪夢のシナリオ」を招くと危機感をあおった。

 しかし、武力行使容認の国連安保理決議がないままイラクに侵攻したのは米国だ。大量破壊兵器は見つからなかった。大義のない戦争を始め、最悪のシナリオを招き寄せたのはブッシュ政権ではないか。

 共和党内からも「出口戦略へ向けた超党派的基盤を築けなければ、米国は大失策に高い代償を払う」と懸念する声が出始めた。民主党は早期撤退を求めており、完全撤退へ向けた明確な計画を示すよう迫るのは確実である。

 米中枢同時テロから六年。「有志連合」はほころびを見せており、米国の孤立化が進んでいる。イラク、アフガニスタンでの米兵の死者は四千人を超えた。非政府組織イラク・ボディー・カウントによると、イラクの民間人の死者は七万人を超えるという。

 犠牲者が増えればテロの温床が一層拡大。中東に広がる米不信の連鎖を断ち切ることは困難になる。ブッシュ大統領はイラク安定化へ向けて、国民和解などの条件整備を急ぎ、米軍撤退の具体的な道筋を示すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070915.html#no_1

 

琉球新報 社説

イラク米軍削減 早期撤退の道筋を示せ

 「成功」と誇らしげに宣言されても、むなしく響く。米国のイラク政策は明らかに失敗続きである。にもかかわらず、ブッシュ大統領は13日(日本時間14日午前)、国民向けにテレビ演説し、イラク駐留米軍の増派を「成功」と総括し、来年夏までに増派前の13万人規模に戻す考えを示した。米軍の削減方針表明は初めてで、イラク政策は転機を迎えたことにはなるが、本格的な撤退については結局、判断を先送りした。

 増派が失敗だったのは、今年、イラク国内で武装勢力による爆弾テロや襲撃などで犠牲になった民間人・イラク政府当局者らの数が、06年に比べて2倍のペースで増え続けていることでも明白である(AP通信まとめ)。1日当たりの死者数は62人(昨年33人)、総数は8月下旬までに約1万4800人に達し、昨年1年間の1万3811人を既に上回った。

 イラク情勢は、泥沼化している。大義名分がないままにイラクに侵攻し、「対テロ戦争」という看板を掲げ、多数の民間人までも死に追いやってきた。しかし、テロリストは弱体化するどころか、むしろ「反米」で結束し、自爆テロは激化している。先に光明を見いだせれば、まだ救われようが、それとてない。

 ブッシュ大統領は7月の米政府中間報告発表の会見で「撤退は支持率を上げるには役立つかもしれないが、長い目で見れば米国の安全に重大な影響をもたらす」と述べ、早期撤退を否定した。今回の演説でも、その意思は変わっていない。

 しかし、駐留を長引かせることによってイラク情勢が好転するとは思えない。

 テロリストを掃討すれば、生まれるのは「憎悪」である。その憎悪は米国だけでなく、イラクの民間人にも向けられる。そして自爆テロ。数十人、数百人の死。残された遺族の新たな憎しみ。

 「対テロ戦争」が生み出すのは憎悪の連鎖でしかない。

 力による解決はもう無理だろう。ブッシュ政権は、イラク政策を劇的に変化させ、出口戦略を探らなければならない。早期撤退を視野に入れ、政策を進めるということだ。

 イラク開戦以来の死者は多国籍軍で4千人以上、民間人で推定7万人以上とされている。この重みをブッシュ政権は受け止めなければならない。

 09年1月の大統領任期切れを意識し、明確な出口戦略を打ち出さないまま逃げ切りを図ろうとしているという指摘もあるが、それは許されないことだろう。時期を明確にし、撤退の道筋を示すべきである。

(9/15 9:48)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27170-storytopic-11.html

 

2007年9月16日(日) 朝刊 1面

出版社、訂正は「無理」 「軍強制」記述回復

検定意見ある限り認められず「国の撤回しかない」

 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題で、複数の教科書出版社の関係者が沖縄タイムスの取材に応じ、「軍強制」の記述を回復させるには検定意見の撤回や変更が必要との見解を示した。教科書会社が文科省に、内容を手直しする正誤訂正を申請して記述を元通りにさせることは、「手続きはできるが、検定意見がある限り、文科省は記述回復を絶対に認めないので無理だ」と口をそろえた。(教科書検定問題取材班)

 「驚きはなかった」。社会科の教科書編集に、長年携わってきた出版関係者は、「集団自決」に対する検定意見を渡されたときを振り返る。「これまでの教科書検定も、その時々の政権の歴史観に影響を受けてきた」

 別の関係者は「南京大虐殺や従軍慰安婦をめぐる記述で社会科の教科書検定が注目されるようになり、検定が神経質さを増してきた。記述の自由を制約し、慎重さを求めるのが最近の検定の傾向だ」と話す。

 検定意見を渡されると、その後、十週間の修正期間で教科書調査官と教科書会社が意見がついた記述をどのように変更するかやりとりする。教科書会社側も「簡単に引き下がったわけではない」が、結局は調査官が考える歴史解釈の幅に収まる表現に改められる。

 出版社は検定意見を渡されてから十五日以内に反論書を提出し、検定意見の見直しを求めることもできるが、「よほどはっきり『検定は間違い』といえることでなければ難しい」という。「文科省と必要以上に争いたくない」との本音もある。

 正誤訂正の申し出による記述回復については、「教科書執筆者から正式な要求があれば、出版社としては考えざるをえない」という出版関係者もいるが、「外部からの要求に、教科書出版社として応じるわけにはいかない」「検定意見への抵抗を示す意義は認めるが、記述回復という結果にはつながらない」と消極的な姿勢が目立つ。

 「文科省が検定意見を撤回するか変えるかしなければ、今後も教科書に『日本軍の強制により集団自決があった』とは書けない」のが現状だ。

 ある教科書編集者は、「検定制度がある以上、こうした問題は起こり続ける」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709161300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月16日朝刊)

[「集団自決」軍命削除]

文科省の意図が見える

 やはりと言うべきか。文部科学省の教科書検定で、高校歴史教科書の沖縄戦の項目から「集団自決(強制集団死)」に対する旧日本軍の関与を示す記述が削除された問題について、同省の教科書調査官が示した検定意見がそのまま通っていたことが分かった。

 沖縄戦の研究者ではなく、日本近現代史の専門家でもない。文科省職員にすぎない調査官が、「検定」という公的手続きの中でこれだけ重みを持つのは一体どういうことなのか。

 伊吹文明文科相は「文部科学省の役人も安倍(晋三)首相もこのことについては一言も容喙(口出し)できない仕組みで教科書の検定は行われている」と答弁していたのではなかったか。

 この問題は党派に関係がない。県選出・関係国会議員は国会で取り上げ、沖縄戦の歴史認識と検定について文科相らの考えをただしてもらいたい。

 本紙の調べで、教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会では沖縄戦に関する意見が出ず、審議が行われなかったことが明らかになっている。

 だが、布村幸彦文科省審議官は「教科用図書検定調査審議会が決めたこと」と事実とは違う説明をしている。十四日には審議がなかったことを認めつつ「調査意見書の作成段階で審議委員の意見が反映されている」と述べた。

 審議委員の一人は「日本史小委員会では『集団自決』に関する検定意見について教科書調査官の説明を聞いただけ。話し合いもせずに通してしまった」と本紙の取材に答えている。

 日本史小委員会で「集団自決」についての具体的な議論はなく、審議会でも学問的な論争はしなかったと認める同省関係者もいた。

 なのになぜ、審議官は「手続きは正当に行われた」と言い張るのだろうか。もしそれが文科省の意図であれば、それこそ歴史に汚点を残す。

 審議官はまた、「すべての集団自決に軍の強制があったと読み取る高校生が出てくる可能性があるから」と軍命削除の理由を述べている。

 取ってつけたような理由で教科書の記述を換えれば、かえって沖縄戦の全体像がぼけてしまい、曲解される恐れも出てくるのではないか。

 懸念されるのは沖縄での激しい戦闘と、その渦中で県民がどう加担させられ、お年寄りや女性、子供がどう巻き込まれていったかという実相が歴史の闇に葬られることだ。

 このような検定を承服するわけにはいかない。歴史から学ぶには事実に対し真正面から向き合う必要がある。そのためにも真実に光を当てる努力を怠ってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070916.html#no_1