月別アーカイブ: 2007年12月

沖縄タイムス 関連記事(12月25日、26日)

2007年12月25日(火) 夕刊 1面

山崎氏「記述ほぼ復活」/「集団自決」検定撤回

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の幹部ら六人が二十五日朝、三度目となる文科省への要請行動のため上京した。要請団と面談した自民党沖縄振興委員会の山崎拓委員長は「集団自決」への軍強制を示していた検定前の記述がほぼ復活すると述べた。また、岸田文雄沖縄担当相が内閣府の沖縄戦関係資料閲覧室の機能を強化する考えを示した。

 山崎委員長は、県議会議長の仲里利信・県民大会実行委員長ら要請団と正午すぎに面談し、教科書会社からの訂正申請に対する文科省の対応の結果、「ほぼ検定前の記述に戻るのではないか。ただ、直接的に軍が命令したとの記述にはならないと思う」との見通しを示した。

 要請団はその後、岸田文雄沖縄担当相とも面談した。岸田沖縄担当相は沖縄戦関係資料閲覧室の資料をインターネットで閲覧できるようにするなど、機能強化を図る考えを示した。

 文科省は「軍の強制」を示す記述回復を求めた教科書会社からの訂正申請に対し、沖縄戦の「集団自決」について「直接的な軍命は確認できていない」などとした教科用図書検定調査審議会の指針を示し、教科書会社に「軍の強制」を薄めた記述での再訂正をさせている。

 九月二十九日の県民大会では、検定意見の撤回と記述回復を求める決議がされており、県民大会実行委は教科書審議会の指針に抗議するとともに、渡海紀三朗文科相への面談を求め、「軍の強制」を示す記述の回復と検定意見の早期撤回を求める予定。

 仲里委員長は「十一万六千人の意思が、文科省職員や審議会の一握りの意見で拒まれるようなことがあれば、県民一丸となり長期的に検定意見撤回と記述回復の実現に取り組むことになる」と決意を述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712251700_03.html

 

2007年12月26日(水) 朝刊 1面

普天間アセス 知事、調査着手を困難視

 仲井真弘多知事は二十五日、沖縄タイムス社など報道各社のインタビューに応じた。米軍普天間飛行場移設に向けた環境影響評価(アセスメント)に関連し、沖縄防衛局が来年二月初めのアセス調査着手に向け県に求めているサンゴ類採捕などの許認可について、「(県環境影響評価)審査会がちゃんとした(アセス)方法と認めなければ前に進まない」などと述べ、アセス方法書の追加や補充がなければ困難との方針を示唆した。

 現況調査(事前調査)のデータ結果をアセスに取り込むことを前提とする防衛局の姿勢に対しては、「これまで事業者が適当にやってきたものを方法として認めてもらって、それを継ぎ足せばいいとのやり方はおかしい」と異議を唱えた。

 また、都道府県を再編成して「道」や「州」などの広域自治体をつくる道州制については、「(県民に)受け入れられやすいのは独立州だと思う」との認識を示した。その上で、「ユニバーサルサービスを行う上で、財政力が税源を含めて達成可能かと考えるともう少し詰めがいる」とし、新年度から県庁内に新体制をつくり、道州制導入に向けた論議を本格化させる方針を明らかにした。

 現行の沖縄振興特別措置法(沖振法)が二○一一年で終了した後の対応については、単純延長を困難視する一方、「(沖振法に規定されている)情報、金融特区などがうまくフル活用されていない感がある。産業振興上は、さらにあと十年あると非常に効果的だと思う」と述べ、産業振興面での優遇措置の延長は必要との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712261300_03.html

 

2007年12月26日(水) 朝刊 1面

沖縄戦資料室を強化/沖縄担当相

ネット閲覧可能に

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十五日午後、「教科書検定撤回を求める県民大会」実行委員会の仲里利信委員長ら幹部と会談し、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題に絡み、内閣府が所管する「沖縄戦関係資料閲覧室」(東京都港区)の機能を強化する方針を明らかにした。

 内閣府によると、同閲覧室が所蔵している沖縄戦に関する公文書約一千二百九十点をインターネットで閲覧できるよう、関係経費千九百万円を二〇〇八年度予算に計上した。また、同室を国会図書館に隣接する永田町合同庁舎に移転し、利便性を向上させる。広さも約二倍に拡大する。岸田沖縄相は「ネットなどで幅広く活用してもらえるようシステムの拡充、強化を考えている。この(教科書検定)問題にできるだけ資する努力をしたい」と述べた。

 実行委の玉寄哲永副委員長(県子ども会育成連絡協議会長)は「沖縄戦をもっと正確にとらえるため、新しい証言を収集することもしてほしい」と体験者の証言収集強化の必要性を訴えた。

 実行委に同行した安次富修衆院議員は「全国の高校で(慰霊の日の)六月二十三日は沖縄にとって特別な日だと教育するなど、今回の問題を契機に新しい取り組みをしてほしい」と要望した。

 一方、自民党沖縄振興委員会の山崎拓委員長は実行委に、教科書会社からの訂正申請を受けた教科用図書検定調査審議会が近く公表する結論で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制記述が「ほぼ検定前に戻るのではないか」との見通しを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712261300_04.html

 

2007年12月26日(水) 夕刊 5面

CH53D配備に抗議/宜野湾市議会 意見書も可決

 【宜野湾】宜野湾市議会(伊波廣助議長)は、二十六日午前の十二月定例会最終本会議で、沖縄国際大学に墜落した米海兵隊CH53D大型輸送ヘリコプターの同型機の普天間飛行場への配備に対する意見書と抗議決議の両案を全会一致で可決した。

 抗議決議などでは、墜落事故から三年を経て市民が恐怖にさらされていることを指摘。「飛行訓練が恒常化する可能性があり、市民・県民を愚弄した行為に対し、激しい怒りを覚える」と糾弾した。

 その上でヘリの飛行は「市民の生命を軽視するものであり、断じて容認できるものではない」として、(1)住宅地上空での飛行訓練の即時中止(2)外来機の飛来禁止(3)基地強化につながる航空機・部隊の配備中止(4)同飛行場の早期返還―の四点を求めている。

 あて先は在日米軍司令官、在沖米四軍調整官、駐日米国大使など。


民主「次の内閣」「普天間」を視察

宜野湾市長と意見交換


 【宜野湾】民主党「次の内閣」の視察団(団長・武正公一衆院議員)は二十六日午前、宜野湾市の伊波洋一市長と意見交換し、市役所屋上から普天間飛行場を視察した。

 伊波市長は同飛行場の危険性やマスタープランで土地利用禁止区域(クリアゾーン)が明記されていることを説明。「国民の安全が守られるような仕組みを作るべきだ」と要望した。

 これに対し、武正団長は利用禁止区域に小学校が立地することなどに触れ、「多くの示唆をいただいた。われわれもこの視点を生かしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712261700_04.html

 

2007年12月26日(水) 夕刊 4面

ヘリパッド工事再開/東村高江区4カ月ぶり

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴い、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設作業が予定されている東村高江区で二十五日、八月以降、約四カ月ぶりに工事が再開された。

 沖縄防衛局が同日正午すぎ、移設作業地点のN―4地区ゲート前に到着。移設に反対する住民が抗議する中、十トントラック二台分の砂利を搬入した。

 もう一方のN―1地区ゲート前では、反対派住民が二トントラック一台の前に立ちふさがり、搬入を阻止した。

 N―4地区で座り込みを行っていた同区の清水暁さん(37)は「これから年末年始にかけて、緊張した日々が続くのではと不安になる。住民の声を無視して、戦争につながる基地を造るのは反対だ」と、政府の姿勢を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712261700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月20日から23日)

2007年12月20日(木) 朝刊 1面

米軍再編経費に191億円/防衛予算

 【東京】防衛省は十九日、二〇〇八年度防衛予算の米軍再編(地元負担軽減分)と日米特別行動委員会(SACO)の両関係経費を財務省に変更要求した。米軍再編(地元負担軽減分)の関係経費の総額は歳出ベースで〇七年度当初予算比約二・六倍の百九十一億七百万円を要求。SACO関係経費は五十四億二千六百万円増の百七十九億八千六百万円(歳出ベース)を求めた。

 普天間飛行場移設は、移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部周辺で〇七年度の継続で海象、気象、文化財調査や、海域の環境現況調査、既存施設の再配置などに、四十八億三千百万円(同)を要求。埋め立てに関する基本検討も行う。

 〇七年度当初予算比三十八億二千八百万円増だが、〇七年度契約分の執行によるものだ。

 「嘉手納以南六基地」の全面・一部返還は、既存施設などへの機能移転で米側との交渉に役立てるため、施設の配置検討を実施。二千九百万円増の二億千九百万円(同)を求めている。

 在沖米海兵隊八千人のグアム移転では、日本側が整備する家族住宅やインフラの整備に向けた事業者選定などに関する業務を調査検討する費用として四億円(同)。

 〇七年度から始まった嘉手納基地所属F15戦闘機の本土六自衛隊基地への訓練移転経費は七億五千万円増の十一億二千三百万円(同)。大規模な訓練移転に備え、新田原飛行場(宮崎県)の滑走路補強や隊舎、食堂を拡充する。

 防衛省関係者によると、二十日の財務省の予算原案内示で全額が認められる見通しだ。

 SACO関係経費では、「土地返還のための事業」に七十八億四千七百万円増の百三十三億四千七百万円を要求。キャンプ桑江(北谷町)の海軍病院移転経費などで、SACO関係経費全体を押し上げた。

 米軍再編とSACO関係経費は八月の概算要求時には金額が確定せず、合計額を「仮置き」していたが、変更要求に合わせて精査した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201300_03.html

 

2007年12月20日(木) 朝刊 2面

米海軍P3C 飛行停止/尾翼に構造的問題

 米海軍は十九日までに、P3C哨戒機の機体の経年疲労分析の結果、尾翼低部に構造的な問題が判明したとして、三十九機の飛行停止措置を取った。米海軍司令部が十七日発表した。うち十機が実戦配備中の機体というが、嘉手納基地の米海軍所属機が含まれているかどうかは不明。

 同機は海上自衛隊那覇基地にも約二十機が配備されている。同基地によると、海上幕僚監部が米海軍と製造メーカーに照会中で、同機による哨戒活動は通常通り実施しているという。

 米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」によると、飛行停止されている機体の分析は十八―二十四カ月かかる見込み。同機は二〇〇五、〇六年にも計三回、飛行停止措置が取られたが、問題の見つかった機体は任務に復帰しているという。

 米海軍はP3Cを計百六十一機所有。平均耐用年数は二十八年で、製造から最も古い機体は四十四年、最も新しい機体で十六年が経過している。

 米海軍はP3Cの後継機として、P8Aを一三年から配備予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月20日朝刊)

[前次官再逮捕]

政官業癒着にメスを

 ゴルフ接待などにとどまらず、やはり現金の授受があった。生活費や借金返済などに充てたというから驚かされる。感覚がここまでまひするのか。

 前防衛次官汚職事件で、東京地検特捜部は前次官の守屋武昌容疑者を収賄容疑で、防衛商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者と、同社の米国子会社元社長の秋山収容疑者を贈賄容疑でそれぞれ再逮捕した。

 守屋容疑者は、防衛装備品の納入をめぐり便宜を図った見返りとして現金約三百六十万円のわいろを受け取った疑いがもたれており、三人はいずれも容疑を認めているという。

 守屋容疑者は最初の逮捕容疑となったゴルフ旅行接待について収賄罪で起訴され、宮崎容疑者は贈賄罪で追起訴された。

 しかし、疑惑の解明はまだ緒についたばかりである。この汚職事件の奥には防衛利権をめぐる深い闇が広がっており、今後、政界ルートをどこまで解明できるかが大きな鍵になる。

 参院での証人喚問で、守屋容疑者は「建設関係で政治家から『防衛省の仕事をやりたい会社を防衛省に登録するためにはどうしたらいいか』と相談を受け、担当先を紹介したことがある」と述べ、政治家との関係に触れた。

 守屋容疑者は「防衛省の天皇」とも評され、その背景には自民党の国防族議員との親密な関係があったと指摘されてきた。

 特捜部は与野党の国防族議員が名を連ねる「日米平和・文化交流協会」を捜索している。今後、注目されるのは「肝心なことは供述していない」(捜査関係者)という守屋容疑者の供述の行方である。

 身柄拘束のまま年越しで取り調べを継続するのは異例とされる。検察の強い意欲の表れだろう。今度こそ防衛利権をめぐる政官業の癒着の深部にメスを入れ、全容解明につなげてほしい。

 「防衛機密」というベールに包まれた随意契約による装備品の調達という手法にも問題があったのは確かだ。

 政府は防衛省改革に関する有識者会議を発足させた。文民統制(シビリアンコントロール)の徹底と、装備品調達をどう透明化していくかが当面の重要課題であることは言うまでもない。

 沖縄から見ていて最も気になるのは米軍再編問題に絡んだ捜査の行方である。特捜部は米軍再編に関する多数の資料を押収し、防衛省関係者から事情を聴いているという。

 「普天間」移設をめぐる防衛省を中心とした強硬路線の背後に何らかの利権が絡んでいたのかどうか、疑惑の徹底解明を強く求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071220.html#no_1

 

琉球新報 社説

墜落同型ヘリ飛行 米軍は無神経すぎないか

 宜野湾市の沖縄国際大学に墜落したヘリと同型のCH53D大型ヘリ2機が18日、同市住宅地上空を飛行した。県民にとっては、悪夢としかいいようがない。

 米軍普天間飛行場から一時的に姿を消したCH53Dは11月6日から再配備され、来年1月までに合わせて10機になる。兵員も約150人が移動してくる。

 今後、民間地上空を頻繁に飛び交い、住民を危険にさらすことは確実な情勢である。

 2004年8月の沖国大ヘリ墜落事故について米軍捜査当局がまとめた報告書で明らかになったことは、普天間飛行場では定められた手順を無視した整備が行われていたということだ。

 事故機以外にも整備不良のヘリが日常的に住宅地上空を飛行し続けている疑いが濃厚である。米軍はそのような状態を放置していたのである。

 報告書は「整備兵がヘリ尾部の接続器具コッター・ピンの装着を忘れたのが事故原因」と結論付けたが、そのような初歩的なミスの背景には米軍のずさんな管理、組織上の欠陥があったのである。

 ずさんな整備レベルが改善されたとの確証を県民が持ち得る状況にはいまだない。危険性は墜落事故時と何ら変わりないのである。

 ヘリの想定使用年数は20年との指摘がある。D型は平均使用年数37年とされ、それを大きく上回っている。老朽化したヘリはいくら整備しても、構造的疲労は進行する。それを見逃す可能性は十分あり得る。

 墜落事故から3年余が経過しても、何ら安全性は保証されていないのである。そればかりか、老朽化がさらに進んだことで、危険性はより増したとみるべきである。

 米軍が事故機と同型機を再配備し、飛行することは無神経に過ぎる。

 墜落事故のはるか前から住宅街への事故発生の危険性が指摘され、墜落事故は起こるべくして起きたのである。同じような墜落事故が起きないと言い切れるだろうか。

 墜落事故直後、県議会や宜野湾市議会をはじめ、多くの市町村議会が抗議決議を可決した。事故機と同型機だけでなく全機種の飛行停止を求めたが、米軍はそれを無視し、日本政府もそれを容認している。

 アジアの安定を言いながら、沖縄を危険にさらす矛盾に気付くべきだ。

 米軍も日本政府も、事故の危険性を排除するための方策を真剣に考えてほしい。

 事故の危険性のある機体は米国に戻し、住宅地のど真ん中にある普天間飛行場は即座に閉鎖することが唯一確実な事故防止策であることを認識するべきだ。

(12/20 10:07)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29882-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

08年度予算原案 減額続きの理由の説明を/基地主導型振興は危険だ

 政府の沖縄振興予算の減りが止まらない。20日、各省庁に内示された財務省の2008年度予算原案でも、沖縄予算は本年度比3・4%減の2551億円。01年度以降、7年連続の減少だ。山積する沖縄問題に、果たして処方箋(せん)となる中身か。検証したい。

 一般会計総額は0・2%増の83兆613億円。小幅だが増えている。その中で、沖縄予算が減っている。

 本土復帰から08年度までの沖縄予算(旧・沖縄開発庁一括計上分、現在・内閣府沖縄担当部局予算)のピークは、10年前の1998年。総額は4713億円。08年度予算は、53%の水準だ。毎年約216億円、減り続けてきた勘定となる。

薬効問われる振興策

 政府の沖縄予算は、「沖縄問題」の処方箋としての沖縄振興計画に基づき、処方されてきた薬だ。

 復帰後、ことしで35年。その間に「投薬」は9兆円を超えた。

 「薬効」はどうか。社会資本の整備など、ハード面の治療には一定の効果を挙げた。だが、主たる治療すべき疾病として政府や県が掲げた全国一の高失業、低所得、高財政依存、高基地経済依存に象徴される「沖縄問題」の状況に、改善の兆しがみられない。

 むしろ、失業率は復帰時の4%から最近は7%に悪化し、全国平均と比較した所得水準は、一時は75%近くまで改善したが、最近値では70%前後と低迷している。

 財政依存度も高まり、基地依存経済は復帰時の15%から、最近値では5%を切ると言われるが、総額では2000億円を超え、むしろ重みを増している。

 政府の一般会計のピークは2000年の89兆3000億円。以後は増減の波を打ちながら、07年度は82兆9000億円と増加基調に転じている。その中で、沖縄予算の激減である。

 政府は5年前に新処方箋となる「沖縄振興計画」「沖縄振興特別措置法」を策定した。

 高失業、低所得の病状改善に向け、打ち出された治療方針は「従来の社会資本整備」に加え、「活力ある民間主導の自立型経済の構築」である。

 そのための旧薬の「社会資本整備」に、新薬は「観光」「情報通信産業」「金融」「科学技術新大学院大学」、これに「大規模駐留軍用地跡地利用の促進、円滑化」を加えている。

 08年度予算原案でも、沖縄予算は、「金融」はまだ見えないが、この5本柱が中心だ。

 目玉は情報通信産業の一大集積拠点を目指す「沖縄IT津梁パーク」の建設費7億9000万円の計上。

 観光は、国際観光地を目指すプロモーションモデル事業が目玉だ。

 沖縄科学技術大学院大学は、12年開学に向け、建設費やソフト合わせて107億円が計上され、本体工事が本格化する。

確かな目で「選択と集中」

 「旧薬」では、懸案の那覇空港沖合展開に向けた調査費、老朽化の著しい4小中学校の全面改築費、特別自由貿易地域への賃貸向上整備事業などが計上されている。

 基地跡利用では、ギンバル訓練場跡地のふるさとづくり整備事業(15億6000万円)など大型事業が計上された。

 個別の事業をみると華やかに見えるが、木を見て森を見ずでは困る。政府や県には、沖縄予算の総額が減額を続けている背景説明を求めたい。

 気になるのは、ソフト事業が中心の基本的政策企画立案等経費が本年度比15・7%の大幅減となった理由だ。原因は「島田懇談会事業」の終了。米軍基地所在市町村の活性化特別事業として展開されてきたが、要は基地受け入れの迷惑料的な色彩が強い。

 政府の沖縄振興策は、内閣府主導から防衛省主導へ、基地主導型振興策への転換が進んでいる。

 再編交付金をめぐる政府と県との交渉でも、基地受け入れと振興策がリンクしている。本来あるべき地域振興の理念を忘れてはいけない。施設建設後、維持管理費の重荷に借金を増やす市町村の例も少なくない。基地受け入れ市町村は、不要不急の施設建設に走らぬよう注意すべきだろう。

 半減した沖縄予算の中で、県はいっそうの「選択と集中」を迫られている。無駄な事業はないか、費用対効果はどうか。処方薬の「薬効」を見極め、復活折衝に挑んでほしい。

(12/21 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29907-storytopic-11.html

 

2007年12月20日(木) 夕刊 1面

沖縄関係2551億円/08年度予算原案内示

 【東京】政府は二十日、二〇〇八年度予算原案を内示した。内閣府沖縄担当部局の内示額は二千五百五十一億円(概算要求額三千百二十五億円)で、〇七年度予算額を3・4%(九十一億円)下回った。減額は七年連続。一九九〇年度以来、十八年ぶりの低水準になった。一方、沖縄科学技術大学院大学関連の経費は二十億円増の百七億円を確保。第一研究棟や管理棟など、メーンキャンパス関連の建築工事が本格化する。内閣府が重視する情報技術(IT)、観光の両分野には新規事業を手厚く配した。

 政府が〇七年度分の執行と〇八年度分の計上を凍結していた北部振興事業費は、今月十二日の「米軍普天間飛行場の移設に関する協議会」で普天間移設に関する政府と地元の協議が「円滑」に進んでいることが確認されたため、例年通り百億円が認められた。〇七年度分の百億円も一月中旬に執行される見通しだ。

 内示の減額は(1)公共事業関係費が3・2%(六十八億円)減少(2)沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)費が米軍ギンバル訓練場の跡地利用を除いて〇七年度で終了し24・1%(四十九億円)減少―したことが要因。

 主な新規事業では、情報通信関連産業の振興で、沖縄に高度なIT企業や関連産業を集積する「IT津梁パーク」整備事業に七億九千万円が認められた。観光関連では、自然環境の保全に配慮した観光地づくりを支援する事業や、中国など東アジア諸国の観光市場の動向調査事業などを盛り込んだ。

 人材育成では、アジア各国の若者が沖縄に滞在して交流を深める「アジア青年の家」事業や、観光業界の経営者を対象にしたセミナーなど、幅広い年齢層に対応した新規事業を配した。

 宮古・八重山地域で地上デジタル放送への円滑な移行を推進する事業は内示段階で予算がつかず、岸田文雄沖縄担当相が二十二日に額賀福志郎財務相と復活折衝する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201700_01.html

 

2007年12月20日(木) 夕刊 1面

県議会、未明離陸で抗議

 【沖縄】県議会米軍基地関係特別委員会の親川盛一委員長らは二十日午前、米軍嘉手納基地に、マックス・カシュバム第一八任務支援群司令官(大佐)を訪ね、相次ぐ未明離陸やGBS(地上爆発模擬装置)を用いた訓練が県民に不安を与えているとして抗議した。

 親川委員長によると、カシュバム司令官は「日米安保条約に基づき、任務遂行のために未明離陸や即応訓練を実施している」として要請を拒否。その上で「住民感情には配慮したい」などと述べたという。

 親川委員長は「県民の理解がないと基地は運用できない。今後も抗議決議の趣旨に沿って行動したい」と話した。

 県議会が十九日に可決した抗議決議は、(1)深夜・早朝(午後十時―午前六時)の時間帯の航空機の離着陸の原則禁止を定めた航空機騒音防止協定の厳守(2)嘉手納基地で大規模即応訓練を今後行わない(3)県内基地所属以外の航空機の訓練などは行わない―の三点を求めている。

 一行は同日午後、在日米軍沖縄地域調整事務所、在沖米国総領事、沖縄防衛局などを訪ね、抗議・要請行動を展開する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201700_02.html

 

2007年12月20日(木) 夕刊 7面

P3Cが離着陸訓練/嘉手納

 【嘉手納】嘉手納基地の米海軍所属のP3C対潜哨戒機が二十日午前、同基地で複数回の離着陸訓練を実施している様子が確認された。同機は、尾翼底部に構造的な問題が判明したとして、米海軍が所有する百六十一機のうち、三十九機の飛行を停止している。嘉手納基地所属機が含まれているかどうかは不明。

 目撃者などによると、嘉手納基地北側滑走路を使用し、P3Cが離着陸を繰り返した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201700_05.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 1面

国、来年7月にも準備書/普天間アセス

 【東京】十二日に開かれた米軍普天間飛行場移設に関する政府と地元の第五回協議会で、防衛省が代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)準備書を来年七月にも県に提出する意向を示していたことが二十日、分かった。防衛省が現在実施している現況調査(事前調査)を、アセス調査に取り込むことを前提にしていることが裏付けられた形だ。現況調査について県環境影響評価審査会は、方法書に対する県への答申で「中止も含め検討させる必要がある」と指摘。二十一日の知事意見での位置付けが注目される。

 防衛省は今年五月から九月にかけて建設予定地の周辺海域に現況調査の調査機器を設置。現況調査をアセスに反映させるかどうかについて防衛省は「県などと協議する」とし、公式には明言を避けている。

 十二日の協議会で、町村信孝官房長官は準備書の提出時期を石破茂防衛相に確認。石破防衛相は「当初は来年七月末ごろを予定していた」と説明した。

 これに対し、仲井真弘多知事は「準備書の提出時期は再来年の二月ごろと考えている」と異議を唱えた。

 アセス調査は最低でも通年実施することが必要とされている。知事の指摘は、方法書が確定する来年二月から一年間をアセス調査期間として確保するべきだ、との見解を示したものとみられる。

 準備書の提出時期について、防衛省幹部は「(来年七月末の)スケジュールは変わっていない」としているが、別の政府関係者は「現在実施している現況調査では、今年秋の調査が不十分なため、準備書は来年九月ごろになる」との見通しを示している。

 ただ、準備書が来年九月に提出された場合でも、現況調査をアセス調査に取り込むことが前提となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_02.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 1面

代替施設滑走路1600メートルはオスプレイ用/米軍文書 司令官が明示

 米軍普天間飛行場の移設に伴い、代替施設で計画されている滑走路の長さ千六百メートル(オーバーランを含めた全長千八百メートル)は、海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの着陸に必要な距離であることが、一九九六年の米軍文書で分かった。米太平洋軍司令官が代替施設の主力機をオスプレイと明示、施設の必要条件として指示していた。

 進行中のV字形滑走路案の環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は滑走路の長さを「短距離で離着陸できる航空機のニーズ」と説明し、方法書でオスプレイの配備には触れていない。二〇〇六年にも在沖米海兵隊基地司令官が代替施設の滑走路はオスプレイを想定した長さだと発言しており、あらためて文書で裏付けられた。

 文書は、太平洋軍司令官の指示を受けた海軍検討グループが一九九六年八月付で作成した。積載量、ブレーキ能力、標高などから、必要な滑走路長を千五百五十四メートル(五千百フィート)と算出した。

 また、SACO(日米特別行動委員会)合意による普天間飛行場の「五―七年以内の返還」について、「施設の建設は四―五年で可能でも、環境調査や影響の緩和措置、設計を二年で完了することはおそらく不可能だ」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_03.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 2面

小学校の存在無視/米軍普天間マスタープラン

 【宜野湾】米軍が米軍基地周辺の土地利用を制限する「航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)」を普天間飛行場に設定していることが二十日、宜野湾市が米国から入手した同飛行場マスタープラン(一九九二年作成)で明らかになった。滑走路の両端から約九百メートルの範囲は土地利用禁止区域となり、住宅や学校などの立地が制限されるが、実際には普天間第二小学校が立地している。記者会見した伊波洋一市長は「小学校の存在を無視した偽りのプランで、危険な普天間の実態を覆い隠したものだ」と指摘、今後も日米両政府に同飛行場の撤去を求める考えだ。

 AICUZは基地周辺住民の安全を守り、航空機の運用を円滑にするための土地利用の指針。しかし、同プランには禁止区域に含まれる普天間第二小学校などの記述がなく、設定された飛行ルート以外でも航空機が飛んでいるのが実情だ。

 同飛行場の危険性については現在、普天間爆音訴訟団が国を相手に裁判で争っており、住民らの危険への接近が争点となっている。伊波市長は「普天間は七〇年代に滑走路が整備され飛行場として機能が強化されたが、小学校の開校は六〇年代。小学校があることを知っていながら日米両政府は危険性を放置した」と指摘。「欠陥飛行場の普天間は直ちに撤去するべきだ」と訴えた。

 基地問題に詳しいNPO法人ピースデポの梅林宏道代表は「マスタープランは(住民を守るための)利用禁止区域の定義を書いておらず、高さ制限など航空機の安全のための記述しかない。意図的に危険地域の話をそらして米軍の望む形で計画を作り、基地を運用したいのだろう」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_04.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 31面

「集団自決」きょう結審 大阪地裁

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作で名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の元戦隊長らが大江氏と岩波書店に慰謝料などを求めた訴訟は二十一日、大阪地裁で結審する。

 住民に「集団自決」を命じた事実はないと主張する元戦隊長の梅澤裕氏(91)ら原告側に、記録や住民の証言から事実は明らかと被告の大江・岩波側が反論。審理は二〇〇五年八月の提訴から約二年五カ月に及び、来年三月には判決が言い渡される見通し。判決が「集団自決」の史実にどこまで踏み込むかが焦点となる。

 同訴訟における梅澤氏らの主張は、「集団自決」に関する表記をめぐって日本軍の強制性が削除された、今年三月公表の歴史教科書検定の根拠になり注目された。


習志野市議会も撤回要求意見書

検定問題で可決


 【千葉】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制が削除された教科書検定問題で、千葉県の習志野市議会(高橋司議長、定数三十人)は十九日、検定意見の撤回を求める意見書案を賛成多数で可決した。反対は三人だった。

 意見書は「(検定意見は)沖縄戦の体験者の声や県などの調査を否定するもので、『集団自決』がたとえ一部の軍人の強制・誘導であっても、軍は関与していないとは言い切れない」とし、子どもたちに事実を伝える重要性を指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_07.html

 

2007年12月21日(金) 夕刊 1面

軍命めぐり最終弁論/「集団自決」訴訟

大阪地裁3月にも判決

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、島に駐屯していた部隊の元戦隊長とその遺族らが、作家・大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作で名誉を傷つけられているとして、大江氏や岩波書店に出版の差し止めや慰謝料などを求めている訴訟は二十一日午後、大阪地裁(深見敏正裁判長)で最終弁論が始まった。

 原告と被告の双方がこれまでの主張をまとめた最終準備書面を提出。法廷で代理人がそれぞれ十五分ずつ、要旨を陳述した。提訴から約二年五カ月の審理を経て弁論は同日で終結し、来年三月には判決が言い渡される見通し。

 これまでの審理で原告側は、自決命令を否定する元戦隊長らの名誉回復訴訟と位置付け、戦隊長による個別の命令について事実の立証を要求。被告側は、当時の状況から軍隊による強制や命令があったのは明らかで、戦隊長による命令も数多くの資料から真実だと反論。判決が「集団自決」の事実にどこまで踏み込むかが焦点となる。

 訴えているのは、座間味島駐屯部隊の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(74)。「沖縄ノート」や故家永三郎氏の著作「太平洋戦争」で、住民に「集団自決」を命じたと記され、両元戦隊長の名誉とともに、秀一氏が兄を慕い敬う「敬愛追慕の情」が侵されている、としている。

 弁論に先立ち、傍聴抽選が行われ、六十四枚の傍聴券を求めて百七十八人が並んだ。

 宜野湾市から傍聴に訪れた平和ネットワーク会員の外間明美さん(41)は「沖縄戦の実相を住民からみれば、軍によって多くの被害をもたらされ、命を失うところまで追いやられたのは明らか。被告側は幾つもの新証拠で示している」と指摘し、「裁判所は、それを踏まえた判決を書いてほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211700_03.html

 

2007年12月22日(土) 朝刊 1面

「強制」文言避け調整/「集団自決」修正

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省の教科書調査官が教科書会社に、日本軍を主語にした「強制」や「強いた」という言葉を使わないよう求めていることが二十一日、分かった。これを受け、訂正申請した六社のほとんどが「強制」の文言を使わない形で申請をやり直しているもようだ。

 関係者によると、主語が日本軍と明確には読み取れぬように「強制」の表現を残している会社もあるという。九月の県民大会を受け、十一月に訂正申請した各社の記述では、「日本軍の強制」を明記していたものが多かったが、大幅に後退した格好。「軍強制を削除した検定直後の記述に戻ってしまった」(関係者)との声も挙がっており、県民の反発は必至だ。

 関係者によると教科書調査官は今月中旬、各社の担当者に「日本軍の主語と強制の述語が直接つながる表現は避けてほしい」との趣旨を伝達したという。教科用図書検定調査審議会(検定審)の意向を受けた対応とみられる。

 検定審は訂正申請の記述が出そろった後の審議を経た今月四日、教科書調査官を通じて六社の担当者に「『集団自決』が起こった背景・要因について、過度に単純化した表現で記述することは、生徒の理解が十分にならない恐れがある」などとする「指針」を伝達。「集団自決」を軍だけが強制したと読み取れる記述を事実上、禁じていた。

 この後、「日本軍の強制」と「集団自決」の背景を併記して再訂正申請した会社もあったが、今回の措置を受けて再々訂正申請したもようだ。

 検定審は週明けにも日本史小委員会を開き、今回の方針を受けた記述を審議する。


[ことば]


 集団自決検定問題 2008年度から使用される高校の日本史教科書の検定で、沖縄戦の集団自決に日本軍の強制があったとの記述に対し、教科書検定審議会は「沖縄戦の実態について誤解を与えるおそれがある表現」との検定意見を付けた。各教科書会社は意見に従い「強制」の記述を削除・修正し検定に合格。県内での大規模な抗議集会を受け、町村信孝官房長官が「工夫と努力と知恵があり得るのかもしれない」と発言した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221300_03.html

 

2007年12月22日(土) 朝刊 1面

「集団自決」訴訟 大阪地裁で結審

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作は名誉棄損だとして、大江氏と岩波書店に慰謝料などを求めた訴訟は二十一日、大阪地裁で結審した。判決は来年三月二十八日に言い渡される。

 最終準備書面で原告の元戦隊長側は、住民への手榴弾交付や村長の「万歳三唱」を隊長命令にすることは、事実を論評にすり替え、無理やりに軍命説を維持するためのねつ造だと主張。

 「集団自決」が軍命令や隊長命令で起きたという指摘について、「具体的な証拠の検証に基づかない、人間心理や戦場の現実への想像力に欠けた、極めて浅薄な思考観念であることが明らか」などと述べた。

 被告側は、沖縄では皇民化教育が強力に推進され、日本軍は「軍官民共生共死一体化」の方針で、総動員作戦を展開していたと強調。米軍上陸の際は、村民とともに玉砕する方針を採っており、捕虜となることを禁じ、いざという時は「玉砕」するよう言い渡していたと結論付けた。

 大江氏の「沖縄ノート」について、戦隊長の「集団自決」命令が出されたことも、戦隊長を特定する記述もなく、名誉棄損にあたらないことは明らかとしている。

 訴えているのは、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の元戦隊長、故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(74)。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221300_04.html

 

2007年12月22日(土) 朝刊 1面

再審査と公表 要求/普天間アセス

方法書に知事意見 手続き否定せず

 仲井真弘多知事は二十一日、米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)方法書のうち、県条例の対象となる飛行場建設部分について三十六項目二百三十三件の「知事意見」を、事業主体の沖縄防衛局に提出した。アセス調査前に、具体的に事業内容についての調査手法や予測評価などの再審査・公表を求める異例の知事意見。しかし県条例による差し戻しは適用せず、方法書の不備を指摘しながらもアセス手続きは進むことになる。沖縄防衛局は提出された意見を勘案して調査方法を決める。来年二月にもアセス調査を開始する見通しで、移設に向けた手続きが前進する。

 下地寛県環境政策課長が同日、那覇市泊の沖縄防衛局を訪れ、知事意見を手渡した。受け取った杉山真人局調達計画課長は「よく読ませていただき適切に対応したい」と述べた。

 知事意見を提出後、記者会見した友利弘一県環境企画統括監は「意見に沿って調査・評価すれば、準備書提出は再来年二月以降になる」とし、来年七月にも準備書提出の意向を示している国をけん制した。

 意見の実効性については、沖縄防衛局が来年二月初めのアセス調査着手に向けて県に求めているサンゴ類採捕などの許可に対し「知事意見を真摯に受け取っていただかなければ、厳しい対応にならざるを得ない」(同部)とし意見の順守を求めた。

 意見の前文では建設位置や規模などの協議が十分に進まないまま、方法書手続きに移った同局の姿勢を疑問視。今後の計画具体化やアセス手続きで地元自治体や住民に広く情報公開を求める意見を付け加えた。

 一方、同局が現在実施している現況調査について答申では「中止を含め検討する必要がある」としたのに対し、「(審査会の指摘を)十分配慮する必要がある」と若干表現を弱めた。答申の指摘に加えて、「航空機騒音及び低周波音について名護市試案の位置も含め可能な限り沖合へ移動した位置での予測・評価を行うこと」などさらに二十五件の意見も追加した。


審査会の運営 支障来し残念/仲井真知事


 仲井真弘多知事は二十一日、「審査会の質問にも十分な対応がなされなかったことから、方法書審査の目的である環境影響評価の項目、手法などが適切か否か判断ができず、このままでは審査が困難との声が上がるなど、審査会の運営に支障を来したことは大変残念」と指摘。その上で「今後の公有水面の埋め立てにかかる方法書審査への誠意ある対応と、知事意見に対する適切かつ確実な対応」を求めるコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月22日朝刊)

[知事意見の提出]

手続きがまた一つ進んだ

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対し、仲井真弘多知事は、記載内容が不十分であるとの意見を沖縄防衛局に提出した。

 方法書は環境アセスメントの項目や調査・予測・評価の方法などを記載したものである。事業者である国は、住民や市町村長、知事から方法書に対する意見を聴いた上で方法を選定し、その方法に基づいて環境アセスメントを実施することになる。

 方法書に対し、防衛省は「形式的な要件を満たしており問題はない」と主張している。これに対し、県環境影響評価審査会は、記載された内容が不十分なため、アセスの項目や調査手法が適切かどうかを判断することができないと厳しい評価を下し、書き直しを求める意見を知事に答申した。

 審査会の答申は知事意見に反映されたのだろうか。

 知事意見は審査会の答申に沿った内容ではあるものの、防衛省に対して方法書手続きのやり直しを求める内容にはなっていない。

 審査会の答申内容を「真摯に受け止める必要がある」との知事意見は、国にとって想定の範囲内のことで、今後の手続きに支障を来すものではないだろう。

 どうしてこのようなえん曲表現になったのか。

 おそらく、内容が不十分とはいえ法律や条例で規定する事項は一応記載されていること、正面からやり直しを要求した場合、国との関係に再び亀裂が生じ、北部振興事業費百億円の凍結解除にも悪影響を与える、と判断したからではないか。

 知事は意見の中で、滑走路建設場所の沖合移動や、三年をめどに普天間飛行場を閉鎖状態にすること、なども盛り込んでいる。

 しかし、それにしても、環境アセスメントを実施するための一連の手続きには腑に落ちない点が多い。

 滑走路建設場所は、事業計画の中心部分ともいえるものだが、肝心の建設場所について地元の同意が得られず、地元との調整も整わないうちに、一方的に方法書が送られた。

 その上、審査会の三十五項目七十六問に及ぶ質問書に対しても「決定しておらず具体的に示すことは困難」だとしてその多くがゼロ回答だった。

 飛行経路などの運用形態や陸上飛行、航空機装弾場、大型岸壁なども方法書には記載されていない。

 審査会の答申内容を引用して不備を指摘した知事意見の、引用部分にこそ問題の核心があるというべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071222.html#no_1

 

2007年12月22日(土) 夕刊 5面

「県民ばかにしている」/「軍強制」文言回避

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省が教科書会社に日本軍による「強制」の表現を避けるよう求め、会社側もほぼ従って再申請していることが分かった。「このままでは文科省の思い通りに史実が曲げられる」。二十二日、県民大会実行委員会の危機感は頂点に達した。

 県民大会実行委員長の仲里利信県議会議長は「強制記述の有無は非常に重大。内容を確認した後にコメントしたい」とした。二十五日からの東京での要請行動を控え、「県民は蚊帳の外。不退転の決意で行く」と強調した。

 副委員長を務めた小渡ハル子県婦人連合会会長は「沖縄をばかにするな」。怒りは収まらず、「県民の努力を徒労に終わらせるわけにはいかない。文科相に会って検定を撤回させるまで、東京から帰らない」と語気を荒げた。

 琉球大学の山口剛史准教授は「三月の検定結果発表からまったく前進がなく、史実として間違った記述になる」と批判。「柔軟姿勢を示していた文科省が強硬になったのは、強制を否定する団体の巻き返しに力を得たのではないか」と指摘した

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221700_03.html

 

2007年12月23日(日) 朝刊 2面 

07年度北部振興費 年明けに執行延期

談合事件受け慎重

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十二日の記者会見で、二〇〇七年度の北部振興事業費(百億円)について、執行が年明けにずれ込むとの見通しを明らかにした。

 財務省は現在、北部振興事業の個別メニューを精査している。国頭村で、北部振興策の一環として国が補助金を出した園芸農業活性化事業で談合があり、建設業者代表らが逮捕された事件を受け、手続きを慎重に進めている。

 岸田沖縄相は「年明けのできるだけ早い時期に準備ができ次第、執行されるものと期待している」と述べた。

 北部振興事業と普天間移設の関係では、「直接は基地移設の議論とかかわらないと考えるが、広い文脈の中で影響は受けるのかなと思っている」と述べた。

 〇七年度の北部振興事業費は、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議がこう着していたことを理由に、執行が凍結された。しかし、今月十二日の米軍普天間飛行場の移設に関する協議会で、岸田沖縄相が「予算の執行手続きを進めたい」と明言し、了承されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712231300_03.html

 

2007年12月23日(日) 朝刊 2面

防衛局嘉手納移転を内示/那覇には事務所新設

 【東京】財務省は二十二日までに、二〇〇八年度の機構・定員を各省庁に内示した。県関係では沖縄防衛局の嘉手納町への移転と「那覇防衛事務所」の新設を内示した。

 沖縄防衛局は、嘉手納ロータリー地区の市街地再開発事業で建設されるビルに来春にも移転する見通し。防衛省によると、人員など規模の変動はないという。

 一方、南部地区の防衛施設行政に対応するため、新たに「那覇防衛事務所」を設置する。場所は未定だが、市内のビルに入居する見通し。所長、次長以下に業務課、施設課を配置、計十五人体制となるという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712231300_04.html

 

2007年12月23日(日) 朝刊 2面

中城海保に48人増員/シュワブ警備増強

 【東京】財務省は二十二日までに、二〇〇八年度の政府の機構・定員について総務省に内示した。県関係では、海上保安庁が米軍普天間飛行場移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部での海上警備強化を目的に要求していた、第十一管区海上保安本部・中城海上保安署の「保安部」格上げと、四十八人の増員が認められた。

 国土交通省人事課によると、現在の同保安署の構成は署長、次長以下に陸上職員二十人、船員十四人の合計三十六人。増員のほか、海上保安庁の人事の振り替えで計九十七人体制となるという。

 「保安部」移行に伴い管理、警備救難、交通の各課を新設。増員される人員は「警備対策官」と位置付ける。同課は「臨機応変に対応するため」としている。

 そのほか、十一管への「刑事課」設置も認められた。十一管は全国で唯一、刑事課がなかった。これまで業務を兼任していた警備部門の人手がシュワブ警備に割かれることが想定されるためだ。

 海上保安庁がシュワブでの警備強化を想定し、〇八年度予算概算要求に盛り込んだ巡視艇の新造、監視取締艇、ゴムボートの整備など総額約四十八億円は、〇七年度補正予算に前倒しされて、財務省原案に盛り込まれている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712231300_05.html

 

琉球新報 社説

「強制」外し 密室の結論は容認できず

 無理が通れば道理が引っ込む、というが、まさにその通りの展開だ。文部科学省は何が何でも、「集団自決」(強制集団死)における旧日本軍の負の側面を消し去りたいらしい。

 高校歴史教科書の検定問題に関し、訂正申請の記述内容について文科省の教科書調査官と教科書出版社が、日本軍による「強制」の文言使用を避ける方向で調整していることが分かった。

 関係者によると、教科用図書検定調査審議会は軍の「強制」という文言そのものの使用を認めない方針という。これを受け、教科書調査官は出版社に対し「日本軍」と「強制」の文言を直接結び付けないよう求めている。

 出版社はこの方針に従う見通しで、軍の強制を表す表現が大幅に後退する可能性が高いという。これでは、検定直後の記述に戻ってしまうことになり、何のための訂正申請だったのか。

 さらに解せないのは、訂正申請の審議過程で、検定審が各社に示した「指針」で、今後の調整は文科省の教科書調査官に一任する、としていたことだ。これでは、検定審の責任放棄に等しい。何より調査官が「新しい歴史教科書をつくる会」と密接な関係にあることも、本紙報道で明らかになっている。同会が反訂正申請のキャンペーンを展開しているのは周知の事実。公平性を欠き、恣意(しい)性が疑われても仕方なかろう。

 そもそも検定審や日本史小委員会の中には沖縄戦の専門家はいない、と指摘されている。さらに今回の検定意見が出た過程においても、ほとんど論議はなかった、というのは本紙の報道で明らかになっている。では「強制はなかった」とする根拠は何なのか。

 この間、検定審に沖縄戦の専門家を加えて審議をしたのか。それは誰なのか。どういう論議を経て「強制はない」と結論付けたのか。すべて明らかにすべきだろう。

 集団自決にはさまざまな要因があり、背景を書き込め、との指針は、むしろ望ましいところだ。軍の強制性が、より明らかになるだろう。いずれにしろ、密室での結論は到底、受け入れ難い。

(12/23 10:01)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29966-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

普天間代替アセス 県は最後まで筋を通せ

 防衛省のごり押しを結果的に追認する形とならないか。アセス法の限界も背景にはあるのだろうが、もっと県の主体性を明確にすべきだった。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に関し、防衛省が作成した環境影響評価(アセスメント)方法書について、県は「方法書は不十分」と指摘。その上で、アセス調査の前に事業内容や調査・予測・評価の手法を具体化させ、再審査させるよう求める知事意見を、沖縄防衛局に提出した。

 ただ、県環境影響評価審査会が答申で言及した方法書の書き直しについては「(答申を)真摯(しんし)に受け止める必要がある」とするにとどめ、方法書の公告縦覧など手続きのやり直しは求めなかった。

 さらに、現況調査(事前調査)についても「中止も含め検討する必要があるとの審査会からの指摘があり、事業者は十分配慮する必要がある」とし、中止要求までは踏み込まなかった。

 いずれも、審査会に責任を預ける格好だ。これでは県の真意が伝わらない。従来、知事は事前調査や方法書について批判を重ねており、それからしても今回の意見は納得できるものではない。問題の先送り、とされても仕方がない。はっきりと方法書の「差し戻し」を要求すべきではなかったのか。

 アセス調査前に事業の見直し個所の公表、再審査せよ、との要求にしても、これまでの事業者(防衛省)の態度をみると、どれだけ実行できるか。はなはだ疑問だ。審査会でも、委員の事業内容の説明要求に対し「決定しておらず具体的に示すことは困難」(沖縄防衛局)と、木で鼻をくくるような、核心部分のはぐらかしに終始した。

 知事意見の本気度をどう判断するか。例えばアセス調査に先立つ県の許認可がある。来年2月に予定されているアセス本調査で、沖縄防衛局はサンゴ類、ウミガメの卵の採捕について、県の許認可を得る必要がある。これについて県の下地寛環境政策課長は「再審査を求めたことに対し、沖縄防衛局が要求を守らなかった場合、サンゴなど採取の許認可は厳しい」と述べて、防衛局を牽制(けんせい)する。

 こうした態度を最後まで県が貫けるかどうか。本気度を図るバロメーターとなる。書き直しを明記した審査会の答申を県自身が「真摯に受け止めよ」としており、このことは、県にも向けられている。字句通りに解釈すれば、県のとる道は限られてくる。

 「アセスに協力がもらえないなら、北部振興策も凍結ということになる」(防衛省幹部)。早くも中央からは、こんな「脅し」も伝わってきた。知事意見が玉虫色になった背景の一つでもあろう。しかし、安易な妥協は禁物だ。県は最後まで筋を通してほしい。

(12/23 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29967-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月16日から19日)

沖縄タイムス 社説(2007年12月16日朝刊)

[思いやり予算]

聖域化する余裕はない

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)をめぐる特別協定改定交渉で、日米両政府は光熱水料の一部を減額することで合意した。

 日本側は大幅減額を求めてきたが、米側が反発し、日本が譲歩した。インド洋での海上自衛隊による給油活動の中断、米国の北朝鮮のテロ国家指定解除への懸念などを踏まえ、対米配慮を優先したようだ。

 しかし、厳しい財政事情を背景に、日本側が強気で今回の交渉に臨み、大幅削減を要求してきた経緯を考えると妥協するのが早過ぎはしないか。腰砕けの感は否めない。

 特別協定改定には国会の承認が必要になる。積算根拠など不明な点が多く問題点を整理し、国会でさらに論議を深める必要がある。

 今回の合意によると、二〇〇八年度の光熱水料(現行二百五十三億円)は維持し、〇九、一〇年度は各四億円削減する。日本人従業員の基本給などの労務費(千百五十億円)と訓練移転費(五億円)は現状維持。

 また、二年間だった特別協定の期間を〇八年度から三年間に延長する。

 一方、思いやり予算のうち、特別協定とは別枠の日米地位協定に基づく提供施設整備費(四百五十七億円)と、各種手当など労務費(三百八億円)の来年度負担分については交渉中だ。

 日本側は一九七八年度から基地従業員の福利費などを負担。その後、従業員の基本給や光熱水費なども引き受けるようになった。特別協定と地位協定に基づく二〇〇七年度の思いやり予算は総額二千百七十三億円に上る。

 日米両政府は今回、「より効率的で効果的な駐留経費負担とするために包括的な見直しを行う」ことでも一致している。

 日本の駐留経費負担額は二〇〇二年当時で韓国の約五培、ドイツ、イタリアなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国全体の額を上回るなど、米国の同盟国の中でも突出している。

 さらに米海兵隊のグアム移転に伴う移転経費のうち、六十億九千万ドル(約七千二百億円)の負担問題もある。

 「同盟国の中で最も気前がいい」という米側の発言の背景に思いやり予算がある。「米国よりも安くつく」駐留経費は、沖縄の基地整理縮小を進める上で大きな障害にもなってきた。

 だが、駐留経費負担が始まった時点と比べて、日本の財政事情悪化は著しい。少子高齢化で社会保障費の負担増など国民負担が重くなる中で、駐留経費負担を聖域化する余裕はない。

 思いやり予算にメスを入れずに、大盤振る舞いを続けるようでは国民のコンセンサスは得られないだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071216.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間代替アセス 知事意見に「書き直し」を

 ここは素直に過ちを認めるべきだ。そして、方法書を書き直して環境影響評価法の手続きの仕切り直しに踏み切るべきだろう。それが、国が県民の信頼を取り戻す唯一の道ではないだろうか。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴い、環境影響評価(アセスメント)方法書を審議していた県環境影響評価審査会は14日、方法書の書き直しを国に求めさせることを明記した知事への答申をまとめた。内容を見ると、方法書は「具体的事業の記載が不十分であり、審査(の対象)たるものとなっていない」と手厳しい。

 これは裁判に例えれば、提訴の形式そのものがなっていない。つまり、審理以前の問題で、方法書が、いわば門前払い、あるいは却下されたに等しいことになる。

 審査会は17日にも知事へ答申する予定だ。今後の焦点は、その内容を知事意見に盛り込めるかどうか。これまで、折に触れ方法書の不備を指摘し続けてきた知事だが、ここは正念場を迎える。県民の意思に沿った判断が下せるか。知事の姿勢を見守りたい。

 これまでの経緯を見ると、ここまでこじれた責任は国にあると言わざるを得ない。そもそも、4月から強行している現況調査(事前調査)そのものが、アセスメント方法の決定(スコーピング)を欠いており、法律や条例に違反しているという専門家の指摘もある。

 さらに、方法書の前提となる施設の計画内容についても、国は情報開示を意図的にか、怠ってきている。200メートル余の護岸や弾薬搭載エリア、洗機場の建設など国は12日の普天間移設措置協議会で初めて明らかにした。当然、これらは方法書に盛り込まれていない。

 また、海兵隊の次期主力輸送機オスプレイ配備や民間上空の飛行についても、国はいまだに認めようとしない。これらの情報開示はむしろ、米側が交渉過程で求めてきた経緯がある。地元の理解を得るためにも開示すべきだとしていた。これを日本側がひたすら隠し続けて、結局、報道で明らかになったというのが実情だ。

 これら重要な計画内容が反映されていない方法書に「審査たりえない」との判断が下されたのは、当然といえば当然の結果だろう。

 環境影響評価法第28条(条例は25条)によれば、方法書の公告後から評価書の公告までの間に、「大きな事業の変更」があれば、方法書前の手続きに戻らなければならない、としている。オスプレイ配備や弾薬搭載エリア建設などが、この「大きな事業の変更」に当たるのは、常識的にみても明らかではないだろうか。

 国の側に勇み足がある、と見るのが自然だろう。知事は意見書に「書き直し」を盛り込むべきだ。

(12/16 10:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29778-storytopic-11.html

 

2007年12月17日(月) 朝刊 1面 

愛媛の団体、来月提訴/検定意見撤回と国賠請求

 文部科学省が高校歴史教科書から、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、「えひめ教科書裁判を支える会」などが呼び掛け、「違法な政治介入を行った」として、国(文科省)などを相手に、検定意見の違法確認と取り消し、損害賠償を求める訴訟を起こす方針であることが十六日、分かった。来年一月下旬までに愛媛県の松山地裁に提訴する。同問題をめぐっての訴訟の動きは、全国で初めて。国と同時に検定撤回などを求めず違法を放置した、として愛媛県教育委員会も訴える予定。

 今月中に原告参加者の第一次集約を行う。原告や支援者を募っている。

 同会は、同県で扶桑社の「新しい歴史教科書」が採択されたことなどで国や県に対しその取り消しや損害賠償を求める裁判などを支援している。

 同日、松山市民会館で行われた集会で、提訴の方針を示し、参加者に協力を求めた。また、9・29県民大会に愛媛から参加した人の報告もあった。

 同会連絡先になっている奥村悦夫さんは「文科省は、記述回復だけで、責任をあいまいに済まそうとしている。問題の根本を問いたい。全国でも同じような動きが起きて、問題解決への力になってほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712171300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月17日朝刊)

[防衛省裏金]

今度は公金くすねか

 守屋武昌前事務次官が汚職事件で逮捕された防衛省で、今度は裏金疑惑が発覚した。

 情報収集を主な目的とする「報償費」の多くを裏金に変えて、幹部や関係部局の裁量で使えるようにしていたというから開いた口がふさがらない。

 同省の公金管理体制は一体どうなっているのだろうか。

 国民の税金を、たとえ一部であれ自分たちの飲み食いに使うことが許されていいはずがない。ましてや裏帳簿まで存在するというのは悪質であり、これでは組織的に公金をくすねたと言われても仕方がない。

 石破茂防衛相は内部調査を進める方針を示している。

 当然である。不正経理はいつから始まったのか。各局にまたがるのかどうか。何人が関係し、どのように経費を粉飾してきたか―を徹底的に洗い出してもらいたい。

 判明した裏金のつくり方はこうだ。まず、大臣官房などが防衛省OBらの名前を情報を提供する協力者に見せ掛けて使い、職員が偽りの領収書を作成する。

 偽の情報提供者を接待したり毎月現金を渡していたように装い、架空の領収書を切って裏金を捻出する手法だ。

 工作は数十年間繰り返され、使い切れずに残された金は数千万円に上るという。裏金を見抜けなかった会計検査院の責任も指摘しなければなるまい。

 国機関の裏金問題では、接待や会議に裏金を流用したり職場の懇親会に使ったことが発覚した二〇〇一年の外務省が記憶に新しい。岐阜県庁や北海道庁、宮崎県庁など多くの自治体でも同じような問題があった。

 時系列を考えると、外務省が国民から糾弾されている際にも防衛省は裏金工作を続けていたことになる。あきれ果てた話であり、国民の信頼を裏切る行為と言わざるを得ない。

 報償費は前次官の問題ともかかわるはずだ。同省が抱える問題は深刻であり、疑惑の解明に国民の目が集まっていることを肝に銘ずるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071217.html#no_2

 

2007年12月17日(月) 夕刊 1面

県「移動50メートル不十分」/普天間代替

 県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)が十七日午前、開かれた。米軍普天間飛行場代替施設の建設をめぐって県が政府に求めている滑走路の沖合移動の範囲について、上原昭知事公室長は「五十メートルでは騒音軽減の効果が小さい。五十メートル以上(沖合に)寄せてほしい」と述べ、五十メートルの移動では不十分との見解を明らかにした。

 普天間代替施設の機能については「現在の普天間飛行場の機能が移設するというのが(政府と地元の)互いの確認内容。大幅な機能拡大はあってはならない」との認識を示した。

 普天間代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書について、県文化環境部の友利弘一環境企画統括監は「(県環境影響評価審査会で)予測や手法について不明瞭な点があるとの意見があり、私どももそのような認識だ」と述べ、県としても記載内容が不十分との見解をあらためて示した。

 小渡亨氏(自民)、嘉陽宗儀氏(共産)への答弁。

 方法書をめぐっては、県環境影響評価審査会が十七日午後、事業者の沖縄防衛局に対し方法書を書き直し、再提出するよう求める答申を県に提出する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712171700_03.html

 

2007年12月18日(火) 朝刊 1面

普天間代替 アセス書き直し要求/県審査会知事答申

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十七日、県条例の対象となる飛行場建設部分について「調査前に方法書を見直し審査・公表等の措置を取らせるべき」とし、事実上の書き直しを求める三十六項目二百八件の意見を仲井真弘多知事に答申した。

 答申を受け取った知念建次文化環境部長は「審査会の意見を知事意見に反映させるよう調整したい」と述べた。

 県は知事意見を二十一日に沖縄防衛局に提出する見込み。

 知事意見では、方法書に記載がなく、沖縄防衛局が新たに飛行場施設として追加した戦闘航空機装弾場などを、県条例で方法書の書き直しを強制する「大規模な修正」と見なすかが、答申の書き直し要求の実効性を左右する。

 答申案の「総括的事項」の中で指摘した調査前の方法書見直しと公表については、前文の中にも追加、繰り返し強調して求めた。

 また沖縄防衛局がアセス前に実施している現況調査についても「中止を含め検討する必要がある」と強い懸念を示した。

 津嘉山会長は「方法書は審査の材料として十分でなかった。答申は実質的に書き直していただきたいということ」と説明。書き直した場合の手続きについて「基本的には公開だ」と述べ、手続きのやり直しに当たる公告縦覧の実施を要望した。

 審査会は年明け早々、アセス法の対象となる残る埋め立て部分の審議を実施する。

 津嘉山会長は「必要があれば再度質問書もお願いする」とし、今後の審議でも方法書の不備を指摘していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712181300_03.html

 

2007年12月18日(火) 朝刊 2面

きょう入札公告/シュワブ隊舎解体・撤去工事

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、沖縄防衛局が十二月から着手を予定していた名護市キャンプ・シュワブ内の隊舎などの建設工事が来年にずれ込む見通しとなっていた問題で、沖縄防衛局は十八日、「建物建設工事に伴う既存建物の解体・撤去工事」の入札手続きを公告する。工事着手は来年二月五日に予定されている入札後に実施される。

 キャンプ・シュワブの代替施設予定地付近にある既存施設は、普天間代替施設建設に伴って、シュワブ内の内陸部分に移築予定。

 沖縄防衛局は今年三月、シュワブ内の移築に関する建築・設備・土木設計や、下士官宿舎の新設工事にかかる建築・土木設計の入札を実施。履行期限を「十一月末」に設定していたが、防衛省は「実施設計の調整を進める中で、米側との調整で時間を要している」とし、来年二月末に延長。

 既存施設の移築にかかる建設工事の着手時期について防衛省は「設計が終わらないと着手できない。設計業務の終了後、適切に着手していきたい」とし、来年三月以降にずれ込む可能性を示唆していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712181300_05.html

 

2007年12月18日(火) 夕刊 5面

知事意見に答申反映を/普天間アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)をめぐり、方法書の書き直しを求めた県環境影響評価審査会の答申を受け、基地の県内移設に反対する県民会議は十八日午前、答申を基に提出される知事意見で、沖縄防衛局に方法書の撤回を求めるよう要請した。

 県環境政策課の下地寛課長は「方法書に記載のない装弾場や洗機場が、書き直しの根拠となる県条例で規定された微修正の範囲を超えるかは、今のところ難しい」とし、法的に書き直しさせることは厳しいとの見方を示した。その上で「事業者は知事意見を勘案しなければならない」とし、法的根拠がない場合でも答申通りの厳しい知事意見が出れば、事業者は従うべきとの考えを強調した。

 県民会議は知事意見に(1)方法書の撤回(2)新たな方法書を基本計画確定後に再提出させる(3)沖縄防衛局の現況調査(事前調査)中止―などを盛り込むよう要望した。

 城間勝副代表は「審査委員が科学的に出した結論を、政治でトーンダウンさせてはならない」とし、知事意見に答申を反映するよう求めた。

 下地課長は「答申は、方法書審査では述べない現況調査への懸念もあえて答申しており、審査委員の思いが詰まっている。その気持ちを大事にして知事意見を作っていきたい」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712181700_04.html

 

2007年12月19日(水) 朝刊 25面

教科書検定/「再訂正」各社出そろう

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で十八日、都内で教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会が開かれた。各教科書会社から再訂正の申請が出そろったことを受けての開催とみられる。

 日本史小委員会では、審議委員に各社からの再訂正の内容について説明があったとみられるが、その可否についての結論は次回に持ち越した。

 関係者によると、少なくとも二社が、沖縄戦では住民に捕虜になることを許さなかった日本軍の方針が徹底されていたことなどの背景を付け加えた上で、「集団自決」には「軍の強制」もあったことを示す記述での再訂正を予定していた。

 ただ、同審議会は沖縄戦の「集団自決」について「直接的な軍命は確認できていない」として、「過度に単純化した記述」への懸念を示す指針を出しており、再訂正の申請に向けて教科書会社と文科省がやりとりする中で、記述が「軍の強制」を薄める内容に変更された可能性もあるという。

 渡海紀三朗文科相は記述訂正について年内には結果を示す方針で、教科書審議会の意見が決まるのを待って、来週内にも結論を明らかにするとみられる。


「つくる会」が不承認意見書


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「新しい教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)は十八日午後、文部科学省を訪れ、民間教科書会社から申請される訂正の「不承認」を求める意見書を提出した。

 藤岡会長は「文科省は検定意見は撤回せず、『過度に単純化した表現を認めない』としており、『軍の強制』を明示した表現は不承認とするのが当然の筋道である」などとした。同会が意見書として文科省に申し入れるのは四回目。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191300_01.html

 

2007年12月19日(水) 朝刊 2面

全駐労、格差給廃止に合意

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定改定に合わせた基地従業員の給与見直しをめぐり、全駐労(山川一夫委員長)と防衛省は十八日の三役交渉で、格差給、語学手当、枠外昇給制度を廃止し、退職手当を引き下げることを正式に合意した。格差給、語学手当に関しては、来年四月一日の施行日から五年間、廃止前に受けている額の五割を固定支給することを確認した。

 一方、経過措置として制度改正前に受けている基本給、格差給、語学手当の「合計額」を当面維持するが、昇給などで実際の給与額がこの「合計額」を超えるまでの間とする暫定的なものとなった。


     ◇     ◇     ◇     

特殊性 辛くも死守


 米軍基地で働く日本人従業員の給与見直しをめぐる全駐労と防衛省の労使間交渉で、最大の焦点となっていた「格差給」は廃止され、今後五年間その半分を固定して支給することで決着した。基本給と語学手当、格差給の「合計額」を保障する仕組みも獲得し、全駐労は既存の枠組み分を辛うじて維持した格好だ。ただ、実際の給与がその「合計額」を上回るまでの暫定措置で、昇給するごとに“うまみ”は減っていく仕組み。「苦渋の選択」で受け入れた全駐労だが、五年後の給与見直しをめぐる協議で問題が再燃するのは必至だ。

 全駐労によると、格差給は一九四八年、言語、風俗、習慣が異なるなど特殊環境の下で働くことに配慮し、当時の国家公務員の給与水準に10%上積みしたことに始まった。

 六三年には公務員俸給表を準用した現行の給与制度を確立した。

 引き続き特殊な環境を考慮し、新基本給の10%上積み額とすることが定められた。

 しかし、近年その「特殊性」が薄れてきたことや長年見直されてこなかったことなどを理由に、政府は在日米軍駐留経費負担の新特別協定改定に合わせて「格差給」の見直しに切り込んだ。


二面外交で調整


 日本政府は、新特別協定改定でアメリカと、同協定の枠外にある「格差給」などをめぐっては全駐労と、“二面外交”で調整を図ってきた。

 約三兆円に上るといわれる在日米軍再編経費などで予算の圧迫が今後予想される中、厳しい姿勢で臨んだ対米交渉だったが、日本人従業員の労務費や米軍施設の光熱水料、訓練移転費の大幅削減を事実上見送った。

 交渉の最中にアラビア海から海上自衛隊が撤収するなど、対米関係で守勢に回ったことが、事実上の「敗北」を喫した大きな要因だった。

 このため、日本側が負担し、米側の直接的な“痛み”につながらない「格差給」廃止など給与見直しに向けた財政当局の目は厳しさを増した。最終的には「歩み寄った」(防衛省幹部)とはいえ、格差給額は半減し、五年後以降の見通しは立っていない。


「闘い」終わらず


 全駐労は今回の交渉で「格差給」の全額分について、定年まで固定して支給するよう求めていたが、政府側は「固定して」支給する仕組みに強い難色を示し、妥結を長引かせた最大の要因となっていた。

 このため、格差給額の半分を支払う制度をいつまで続けるかについて年限が確認されておらず、五年後の見直し協議の重要なテーマとなることが予想される。

 「闘いは終わったわけではない」。全駐労の山川一夫委員長らは、そのほかの勤務条件の改善の必要性も指摘し気を引き締める。

 十八日の三役交渉では、年金制度や福利厚生の改善について「プロジェクトチームを設置し、有識者の意見を踏まえ具体化を図る」ことなども確認したといい、五年後を見据えた水面下の動きはすでに始まっている。(東京支社・島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191300_05.html

 

2007年12月19日(水) 朝刊 2面

泡瀬環境保全委/クビレミドロ生育成功

 中城湾港泡瀬地区埋め立てに伴う環境対策を検討する環境保全・創造検討委員会の海藻草類専門部会が十八日、那覇市内で開かれ、人工的に育てた絶滅危惧種の藻類クビレミドロが産卵し、第二世代の個体が生育していることが報告された。

 これまでの人工的生育では産卵は行われたが、その卵が成長することはなかった。

 人工的に育てたクビレミドロで産卵を繰り返す技術を確立すれば、同種の保護のほか、未解明部分の多いクビレミドロの研究も進むと期待されるという。

 同部会座長の野呂忠秀・鹿児島大教授は「海藻類で世界的に同様の成功例はマリモくらい。水生生物保護の手本になる可能性もある」と評価した。

 これは事業主体の沖縄総合事務局が行っているもので、実験室で育てたクビレミドロを屋外の実験プールに移植したところ、夏に産卵し、さらにその卵から新しいクビレミドロが生育しているのが今月になり確認された。また卵の状態でこのプールに移植したところ、ここでもクビレミドロの生育が確認された。

 会議ではこのほか、同地区の海底で二〇〇五年度から行われている、移植した海草の生育に適した環境づくりについての実証実験結果も報告され、波よけの構造物と一定量の盛り砂が海草定着法の一つとして効果があるとの結論を了承した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191300_09.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月19日朝刊)

[審査会答申]

知事意見に注目したい

 米軍普天間飛行場の代替施設建設のため防衛省がまとめた環境影響評価(アセスメント)方法書について、県環境影響評価審査会は、記載内容が不十分だとして書き直しを求める意見を県に答申した。

 これを受けて仲井真弘多知事は、沖縄防衛局に対し、二十一日までに知事意見を提出する予定である。

 知事意見に法的な拘束力はないが、政治的には、大きな意味を持つ。

 知事意見は、アセスの方法書に対する見解表明であるにしても、そのことを通して普天間問題と環境問題に対する知事の基本的な考え方が示されるわけで、知事の姿勢が問われる局面を迎えた、といえる。

 知事は昨年の知事選の際、普天間飛行場の移設問題について、地元の頭越しの日米合意を批判し、現行V字形案に反対することを明らかにした。しかし、普天間問題の争点化を回避するため、それ以上多くを語らず、意識的にあいまい戦略を採用して当選した。

 この一年間、「沖合移動」を主張してきたが、なぜ移動が必要なのか、仮に移動が実現したとして、その場合の受け入れ条件は何なのか、移動すればそれで済む話なのか、具体的な数字や事例をもとに説得力のある言葉で語ったことはない。

 一九九八年の県自然環境保全審議会の答申で、キャンプ・シュワブ沖水域は、自然環境の厳正な保護を図る区域として最も評価の高い「評価ランクI」に区分された。この水域に生息する世界的にも貴重なジュゴンは、絶滅危惧種の指定を受けている。

 こうした問題に知事がどのような考えと感度を持っているかが問われているのである。

 政府は第五回普天間移設協議会で、凍結していた北部振興事業費百億円を近く執行する方針を明らかにした。

 その一方で防衛省幹部は、環境影響評価審査会の厳しい答申をそのまま踏襲して厳しい知事意見を出してきた場合、「協議が円滑に進む状況でなくなるため北部振興事業の執行も見直さざるを得ない」と、露骨な脅しをかけている。アセス制度の趣旨を無視した不謹慎な発言というほかない。

 政府は来年二月からアセス調査に着手する考えだ。知事意見に対しても、どのような内容であれ「今後の作業に影響はない」と強気の姿勢を崩していない。だが、知事意見を無視してアセスを進めることは制度の形骸化を意味する。あってはならないことだ。

 この難しい局面に知事はどのようなメッセージを発信するのか。知事意見に注目したい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071219.html#no_1

 

2007年12月19日(水) 夕刊 1面

米軍訓練激化/県議会が抗議決議

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会の最終本会議が十九日開かれ、総額五十六億三千八百九万六千円の一般会計補正予算案、県立高校の授業料を引き上げる条例改正案、県立石嶺児童園の指定管理者を指名する議決案件、特別自由貿易地域の分譲価格を引き下げる条例案などを賛成多数で可決した。

 また、嘉手納基地での深夜・未明の戦闘機離陸や大規模即応訓練などの中止を求める「米軍の度重なる離陸と訓練の激化に関する抗議決議」案と意見書案を全会一致で可決。二十日にも、県内の米軍基地や国の関係機関に要請する。

 抗議決議は(1)嘉手納基地でのF15戦闘機や空中給油機の相次ぐ深夜・未明の離陸(2)F15の飛行停止につながった墜落事故や不具合(3)米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練に伴うFA18戦闘攻撃機など外来機の飛来やGBS(地上爆発模擬装置)訓練による騒音被害の増大―などを指摘。「基地負担の軽減に逆行するもので容認できない」と批判した。

 「地方議会議員の位置付けの明確化を求める意見書」「割賦販売法の抜本的改正を求める意見書」「ハンセン病問題基本法制定を求める意見書」を全会一致で可決。「道路財源の確保と道路整備の推進に関する意見書」も賛成多数で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191700_02.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月13日、14日、15日)

2007年12月13日(木) 朝刊 1・27面

2月 アセス調査意向/普天間移設協

政府、北部振興凍結解除を決定/サンゴ採捕許可要望

 【東京】米軍普天間飛行場の移設について政府と地元が話し合う「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」(主宰・町村信孝官房長官)の第五回会合が十二日夕、首相官邸で開かれた。石破茂防衛相は、来年二月初めから環境影響評価(アセスメント)調査を行えるよう、サンゴや藻場の「採捕許可」を県側に求めた。しかし仲井真弘多知事は、アセス方法書の内容に関し、「調査方法や事業内容に納得がいかなければ判断できない」と不備を指摘し明言を避けた。次回協議会は一月下旬に行われる予定だ。

 岸田文雄沖縄担当相は、「凍結」していた本年度の北部振興事業費百億円を近く執行する方針を正式に表明し、了承された。額賀福志郎財務相も、同事業費の二〇〇八年度予算計上に前向きな姿勢を示した。

 仲井真知事と島袋吉和名護市長は、住民生活への影響を最小限に抑える必要性を指摘し、V字形滑走路の沖合移動をあらためて要望。島袋市長は、その上で実際にヘリを飛ばして騒音を調査する必要性を指摘した。

 沖合移動について、石破防衛相は「われわれは何が何でも降りないということではないが、合理的理由なく変更することは困難」と述べた上で、情報公開に努める考えを示した。

 一方、東肇宜野座村長は「村上空を飛行ルートから回避することを念頭に計画し、調査してほしい」と要望。石破防衛相は「緊急時も住宅地上空を飛んではならないとするのは、いくらなんでも現実的ではない。訓練の形によっても飛行することがある」と説明した。

 石破防衛相はそのほか、普天間代替施設の各種施設の配置計画を説明。南側の進入灯の長さが約九百二十メートル、北側が約四百三十メートルになると説明。さらに地元の要望を踏まえ、辺野古集落とキャンプ・シュワブの境界沿いに新たな道路を整備し、ゲートを新設する計画を明らかにした。

 弾薬搭載エリアの場所については、周辺の島や飛行場施設、集落と保安距離との位置関係から設定。「嘉手納基地で行うと運用上の支障を来す」と整備の理由を説明した。

 次回協議会は、一月二十一日に期限を迎える法アセスに基づく方法書に対する知事意見の提出後に開き、アセス調査の着手を確認する見通しだ。


     ◇     ◇     ◇     

法に不満/知事「誠意」求める


 【東京】情報の出し渋りだ―。米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の第五回協議会は十二日、県などが代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書の内容の不備を指摘。協議会後の記者会見で、仲井真弘多知事は方法書について「拙速に作ったためか、とても審査できない状態になっている」と批判。県幹部からも協議会での防衛省の説明に対して、「県が情報開示を求めたもので明らかになったものはない」と不満が噴き出した。

 協議会後の都道府県会館での記者会見。仲井真知事は「どういう基地かという説明をもっとやるべきだ」「審査会の質問に対する回答は回答になっていない」と方法書の内容の不備を次々と訴えた。

 協議会で防衛省が来年二月初めにもアセス調査を実施できるよう、県にサンゴなどを採集する「特別採捕」などの許可への対応を求めたのに対し、仲井真知事は「二月にやりたいと言っても、方法書をきちっとクリアしないことにはやれない」と強調。「今の段階では全然詰まっていない」との認識を示した。

 一方で知事は「実際に協議ができる雰囲気になってきた」と協議会で政府との意見交換が進んでいる状況を歓迎した。

 普天間飛行場の危険性除去のためにも、「(代替施設が)早く完成した方がいいと思っている」との持論を展開。その上で「もともと円満な協議さえ成り立てば(アセス調査は)進むべきものだと思っている。その緒に就いたという気がする」と述べ、防衛省が今後、一定の誠意ある対応を示せば、アセス調査の実施に理解を示す考えもほのめかした。


振興策再開「当然」/地元の賛否割れる


 【名護】十二日に開かれた第五回普天間飛行場の移設に関する協議会。北部振興事業の本年度分の予算執行が決まったことを、移設先の名護市など北部首長らは「当然執行すると考えていた」と話すなど、冷静に受け止めた。住民からは手放しで喜びを表す声がある一方で、移設反対派は「政府の言いなりだ」などと、知事らの姿勢や政府主導の協議の在り方を批判した。

 北部振興事業の凍結解除について、北部振興会長の儀武剛金武町長は協議会終了後、「われわれ北部はそもそも『凍結』という受け止めをしていない。当然出るものだと考えていた。だから評価するべき問題ではない」と冷静に受け止めた。

 ただ、額賀福志郎財務相が二〇〇八年度予算への北部振興費計上を明言しなかったことには、「検討するということだと思うが、われわれとしては計上されるというイメージを持っている」と強調した。

 島袋吉和名護市長は「協議会も円滑に進んでいるので、当然執行できると考えている」との認識を示した。

 市長を支持する荻堂盛秀市商工会長は「よかった」と手放しで喜んだ。「どんどん協議を進めていけば、来年度以降の予算執行も問題ないでしょう。政府と県や名護などがお互いに、悔いを残さないように協議を重ねてほしい」と話した。

 一方、ヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「北部振興策は基地建設にリンクしないとして決まったもの。今になって国が地元へのどう喝の材料に利用していることに怒りを覚える。仲井真知事と島袋市長の政治姿勢は情けない」とあきれ返った。

 また、知事からの事業内容の開示に対して、政府側から明確な回答がなかったことには、「防衛省は県民をばかにしたやり方で環境影響評価を進めようとしている。知事は将来に禍根を残すことがないよう、方法書のやり直しを求めるくらい強い姿勢を示すべきだ」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_01.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 27面

FA18騒音3日連続/名護上空旋回 苦情相次ぐ

 【北部】米軍嘉手納基地に一時移駐している米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が十二日も、断続的に名護市上空を飛行した。三日連続での飛行に市基地対策室は同日、沖縄防衛局を通じて米軍に再度、改善を要請した。

 同室には、上空で旋回する戦闘機に「陸上に落ちたらどうするのか」「戦前を思い出すようだ」などの苦情が市民から寄せられた。キャンプ・シュワブに隣接する豊原区の宮城稔区長は「海がすぐそばにあるのになぜ、民間地上空で旋回訓練するのか。米軍は事前に訓練内容を明らかにすべきだ」と憤った。飛行は断続的に続き市全域で騒音が発生したとみられる。

 金武町、宜野座村役場にも住民から十、十一日騒音の苦情があった。


抗議決議をきょう可決


 【名護】FA18戦闘攻撃機とみられる航空機が名護市上空での飛行を繰り返している問題で、同市議会は十二日午前、軍事基地等対策特別委員会(渡具知武宏委員長)を開き、米軍などに対して民間地上空の訓練の即時中止を求める抗議決議をすることを決めた。

 十三日の市議会十二月定例会で可決する見通し。委員会では、「騒音があまりにもひどい」「市民からの苦情も多い」などの意見が出された。

 同市議会では二〇〇一年三月に、FA18の訓練に対して、「名護市内空域における米軍機の訓練飛行の即時中止を求める決議」を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_02.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 27面

「雪の光」に平和願い/糸満市・21日点灯

 【糸満】沖縄戦終えんの地、糸満から平和の願いを発信する「百三十万県民『平和の光』いとまんピースフルイルミネーション」が二十一日から同市摩文仁の糸満観光農園で開かれる。今年のメーンテーマは「雪の光」。来年一月三日まで。入場料は二百円(中学生以下無料)。

 今年は県立芸大デザイン専攻の教員や学生でつくる「チーム・首里サーカス」がデザインを担当。「慰霊の日」に行われた全戦没者追悼式の祭壇デザイン以来、二作目となる。

 巨大オブジェの中に通路があり、ウミンチュの街にちなんで使用した釣り糸に電球を取り付けた。風でしなると電球が揺れ、雪が舞い落ちるように見える。また、偏光メガネ(二百円で販売)で見ると電球が「雪の結晶」に変わる趣向もある。

 十二日、同園で記者発表があり、同チーム代表の北村義典教授は「雪に希望や安心感を重ね合わせた。優しい光に包まれながら楽しんでほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_05.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 26面

「指針」撤回 国に要請/教科書検定

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定の訂正申請で、教科用図書検定審議会(検定審)が文部科学省を通じて教科書会社に書き直しの方針(指針)を伝達していた問題で、出版労連教科書対策部や「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」など三団体は十二日午後、文科省を訪ね、指針の撤回や日本軍の強制に言及した訂正申請を認めることなどを求めた。

 対応した文科省教科書課の担当者は「指針」の存在を否定。これに対し、出版労連などは「(検定審の)考え方に沿わなければ『不合格』になる。考え方は『指針』に当たると解釈せざるを得ない」と反発している。

 要請後に会見した首都圏の会の呼び掛け人で、教科書の執筆者でもある石山久男さんらは「(指針は)日本軍による誘導・強制・命令で『集団自決』が起こった事実をあいまいにし、責任を免罪するものである」との声明を発表。現行の検定制度の下で、訂正申請後に検定審からこうした考え方が示される事例はないと説明した上で、「教科書を発行する側には大きな重圧になる」と批判した。

 また来春から使用の教科書のため、印刷作業を逆算すれば検定審の結論が今月二十日前後になるとの見通しを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_07.html

 

2007年12月13日(木) 朝刊 26面

「沖縄の心伝わった」/「やーさん―」映文連大賞受賞

 【東京】プロが選ぶ短編映画の優れた作品を顕彰する「映文連アワード2007」(映像文化製作者連盟主催)の表彰式が十二日、都内であり、グランプリに輝いた「やーさん ひーさん しからーさん」を製作したシネマ沖縄の末吉真也社長らが賞状とトロフィーを受け取った。

 同映画は県平和祈念資料館の企画で、沖縄戦で戦時を逃れるために本土へ渡った学童や引率教師らの証言をまとめた。末吉社長は「命の尊さを感じ、培った沖縄の心がグランプリという形として結実した。多くの人に見てほしい」と話した。謝名元慶福監督は「沖縄戦を忘れない映画人の良心が受賞につながった」と喜びを語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131300_09.html

 

琉球新報 社説

新テロ対策法案 国際貢献の在り方再検討を

 今国会の最大の焦点である新テロ対策特別措置法案を今国会で成立させるため、福田康夫首相と公明党の太田昭宏代表は国会の会期を1月15日ごろまで再延長する方針を確認した。

 越年国会は、野党が参院で多数を占める「ねじれ国会」の結果とも言える。

 11月1日で失効したテロ対策特措法が成立した昨年の臨時国会の委員会審議は衆院で2日、参院ではわずか1日だった。今国会では、新テロ対策法案を衆院通過まで約41時間審議した。

 だが、その内実は、与野党が防衛省不祥事や衆院解散などをめぐって駆け引きに終始。日本の国際貢献の在り方についての議論が深まったとは言い難い。

 再延長も、野党が審議を引き延ばした場合、衆院で再議決できるのは「みなし否決」規定を適用できる参院送付後60日以降とのスケジュールを優先しただけのことである。

 新テロ対策法案成立ありきで、議論を重ねる意図は見えない。

 現状では参院で否決されることは確実である。それを無視し、参院の存在をないがしろにするような再延長はいかがなものか。

 この法案は各党の基本政策にかかわるものであり、時間をかけて審議する必要がある。法案には国会承認条項の省略など、文民統制の担保などの課題もある。

 十分な議論なしに成立を急ぐことは避けるべきだ。日本の集団安全保障への参加に関する議論などを尽くすべきだ。

 福田首相は「国際社会の一員としての務めを果たさなければならない」として、インド洋での海上自衛隊の給油活動の早期再開の必要性を訴えている。

 日本は給油活動でしか、国際貢献を果たせないのだろうか。選択肢は給油活動以外にもあるはずだ。

 日本の国際貢献は「対米追従」との批判がある。平和憲法を持つ日本として可能な国際貢献をあらためて検討することが必要だ。

 米国の意向よりも、肝心の国会論議を優先させなければ、国民の理解を得られるはずはない。

(12/13 11:04)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29699-storytopic-11.html

 

2007年12月13日(木) 夕刊 1面

前那覇施設局長を聴取/前防衛次官汚職

 前防衛事務次官の守屋武昌容疑者(63)が逮捕された収賄容疑事件に関連し、東京地検特捜部が十二日、前次官の側近で那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)の前局長(61)から参考人として事情聴取していることが十三日、関係者の話で分かった。前局長は在日米軍再編事業に深くかかわっており、在沖米海兵隊のグアム移転や米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画などについて事情を聴いたとみられる。聴取の事実について、前局長は「ノーコメント」としている。

 防衛専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)=贈賄容疑で再逮捕=が設立した防衛商社「日本ミライズ」は、米軍再編で決まった在沖米海兵隊約八千人のグアム移転に注目。インフラ整備事業への参入を目指していたとされる。

 特捜部は先月二十九日に防衛省を捜索し、米軍再編に関する多数の資料を押収。複数の防衛省関係者から参考人として事情を聴いている。

 前局長は今年三月、守屋容疑者とともに定年を一年延長されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131700_01.html

 

2007年12月13日(木) 夕刊 1面

米軍また「F15安全」/広報局長発言

 【中部】米軍嘉手納基地を含む、米空軍のF15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止措置が取られている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の中川京貴副議長ら八人は十三日、嘉手納基地を訪れ、同基地配備のF15全五十三機の即時撤去を求めて抗議した。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長らによると、応対したジョン・ハッチソン広報局長は「F15は空軍が運用している戦闘機の中でも安全な戦闘機だ」と述べた。同局長は町議会による十一月十四日の抗議でも「F15は最も安全な戦闘機だ」と発言し、批判を浴びている。

 同局長はF15について「日本の防衛にとっても大事な戦闘機」とし、時期は明らかにしなかったが、いずれ飛行を再開する考えを示した。同基地所属のすべてのF15を点検した結果、ロンジロンの亀裂が見つかったのは現時点で二機という。

 同町議会は、米海兵隊岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加した合同即応訓練についても抗議。

 ハッチソン局長は「即応訓練は重要」と答え、継続する方針を示した。外来機の飛来についても「嘉手納基地は外来機の飛来を想定して運用しており、今後も(飛来は)あり得る」と突っぱねた。

 未明離陸については、「機体更新に伴う未明離陸はあと一回だが、これとは別に本国での訓練参加の場合は行うこともある」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712131700_02.html

 

2007年12月14日(金) 朝刊 1面

オスプレイ配備 既定方針 宜野湾市が米情報入手

92年計画に記載

 【宜野湾】米軍普天間飛行場内に海兵隊の垂直離着陸機「MV22オスプレイ」の整備格納庫や駐機場を整備する計画が一九九〇年代初頭に策定されていたことが十三日、分かった。宜野湾市が情報公開法に基づき米政府から入手した九二年六月作成の「同飛行場マスタープラン」に記載されていたもので、オスプレイの配備が同飛行場の移設計画以前から既定方針だった実態があらためて浮き彫りになった。同プランでは、「既存の施設はオスプレイ運用には適さない」とした上で、同飛行場内の北西の森林部分を「オスプレイが配備され駐留する場合に備え、その運用と整備のために確保する」と記述、将来的にオスプレイの配備計画を示した。

 計画場所は同市喜友名のゴルフ練習場近くで、最も近い住宅地まで直線距離で約百五十メートル、普天間中学校まで約七百メートルの距離にある。

 伊波洋一市長は「米軍は当初からオスプレイの配備を狙っており、日本政府も承知しているはずだ。住民にまったく情報が公開されず、市民は不安に感じている」と話した。

 オスプレイの県内配備については、在沖米軍トップのジョセフ・ウェーバー四軍調整官などが昨年夏に「二〇一四年から一六年の間に配備する」と発言しており、オスプレイは名護市辺野古の代替施設に配備される可能性が高い。琉球大学の我部政明教授(国際政治)は「老朽化した(主力ヘリの)CH46の後継機として、オスプレイの県内配備は時間の問題だ。移設作業が難航すれば、『普天間』に配備される可能性もある」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141300_01.html

 

2007年12月14日(金) 朝刊 31面

名護議会が抗議決議/FA18爆音

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘機が十日から名護市上空で飛行を繰り返した問題で、名護市議会(島袋権勇議長)は十三日の市議会十二月定例会で、同戦闘機の民間地域上空での飛行訓練即時中止を求める意見書と抗議決議を全会一致で可決した。

 決議は、「米軍戦闘攻撃機によるごう音が発生し、地域住民を不安に陥れた」と指摘。市民の苦情を受けた名護市当局が、沖縄防衛局に改善を求めたにもかかわらず、訓練飛行が繰り返されたことを「断じて許せるものでない」と批判。

 その上で、「飛行訓練に強く抗議するとともに、民間地上空での飛行訓練などを即時中止するよう強く要求する」と訴えている。

 あて先は、決議は在沖米軍四軍調整官、米国大使館など。意見書は首相、外相、防衛相、県知事など。文書で送付する。


同機の帰還は1週間延期か/防衛局通知


 【中部】米軍嘉手納基地を拠点に三日から七日まで行われた米空軍と米海兵隊の合同即応訓練に参加するため、同基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機について、沖縄防衛局は十三日、周辺自治体に対し「FA18の帰還は十八日か十九日になる」と通知。当初の予定だった十二日から延期する方針を伝えた。

 嘉手納基地は当初、FA18は即応訓練終了後も十二日まで同基地を拠点に訓練すると説明していた。沖縄防衛局から連絡を受けた周辺自治体などによると、延期の理由について説明はなかったという。

 一方、在沖米海兵隊は十三日、沖縄タイムス社の取材に「演習に参加した岩国基地所属の航空機は、明日(十四日)沖縄を飛び立つ」と回答、嘉手納基地から連絡を受けた沖縄防衛局の説明と食い違っている。

 FA18は即応訓練終了後、クラスター爆弾などを装着して訓練していたほか、名護市上空の飛行も確認されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141300_02.html

 

2007年12月14日(金) 朝刊 2面

米軍また「F15安全」/3度目飛行停止

 【中部】米軍嘉手納基地を含む、米空軍のF15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止措置が取られている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の中川京貴副議長ら八人は十三日、嘉手納基地を訪れ、同基地配備のF15全五十三機の即時撤去を求めて抗議した。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長らによると、応対したジョン・ハッチソン広報局長は「F15は空軍が運用している戦闘機の中でも安全な戦闘機だ」と述べた。

 同局長は町議会による十一月十四日の抗議でも「F15は最も安全な戦闘機だ」と発言し、批判を浴びている。

 同局長はF15について「日本の防衛にとっても大事な戦闘機」とし、時期は明らかにしなかったが、いずれ飛行を再開する考えを示した。同基地所属のすべてのF15を点検した結果、ロンジロンの亀裂が見つかったのは現時点で二機という。


周辺自治体一斉に反発


 【中部】米軍嘉手納基地のジョン・ハッチソン広報局長が「F15は空軍が運用している戦闘機の中でも安全な戦闘機だ」などと発言したことに対し、周辺自治体の首長や議会は一斉に反発した。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会の会長、野国昌春北谷町長は「多くの問題を起こしているF15をいまだに安全という発言は、県民の生命を脅かすものだ。F15以外にも、外来機の騒音など嘉手納基地周辺の基地被害は絶えない。なぜ沖縄だけに負担を押し付けるのか」と語気を強めた。

 同局長に抗議した嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「F15は誰が見ても欠陥機で、住民意識との温度差を感じた。住民の不安を解消するため、何度でも抗議の声を上げ続けたい」と強調した。

 沖縄市議会基地に関する調査特別委員会は十四日に委員会を開き、次々と明らかになるF15の問題などついて対応を協議する。与那嶺克枝委員長は「現状のまま飛行を再開しても、住民の不安はぬぐえない。県や国も米軍に対し、住民の不安を解消するよう働き掛けてほしい」と訴えた。

 同局長は、即応訓練は「日本の防衛のためにも重要」とし、今後も継続する方針を明かした。北谷町議会基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「海兵隊と空軍の合同即応訓練では、F15以外の外来機が騒音をまき散らしていた。F15の撤去と同時に、異常な数の外来機による騒音の負担軽減策が必要だ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月14日朝刊)

[「普天間」移設協]

方法書への疑問に答えよ

 防衛省主導の強硬路線から官邸主導による対話路線へ。普天間飛行場の移設問題を取り巻く環境は表面上一変したように見える。

 だが代替施設が一体どんな基地になるのか、全容はまだ見えない。とりわけ環境面では数々の問題が指摘され、政府の環境影響評価(アセスメント)方法書に対し識者や市民団体から厳しい批判が噴き出している。

 代替施設をめぐる肝心な問題を脇に置いたまま対話ムードが演出される。そんな印象がぬぐえない。

 普天間移設に関する第五回協議会で政府は北部振興事業の凍結解除を表明し、来年二月から方法書に基づくアセス調査を開始する意向を示した。

 仲井真弘多知事は方法書や情報開示の不備を指摘。「厳しい答申にならざるを得ない」とくぎを刺し、県の方法書審査や知事意見に対する政府側の誠意ある対応を求めた。

 これに対し、石破茂防衛相はアセス法に基づき必要事項を記載しており、方法書としての要件は整っているとの見解を示している。

 だが、方法書をめぐっては、さまざまな不備が指摘されている。

 県環境影響評価審査会は「方法書で示されたアセスの項目や手法が適切なものであるか否かを判断するに足る内容が示されているとは言い難い」と厳しい指摘をしている。

 三十五項目の追加説明を求める質問書を沖縄防衛局長に送付したが、質問の大半について具体的な回答が得られなかったため、審査会は方法書に対する厳しい姿勢を変えていない。

 垂直離着陸機オスプレイの配備、戦闘航空機装弾場や大型護岸の整備、緊急時の住宅地上空飛行など、重要情報が米側の証言や文書で判明し、防衛省の説明は後手に回ってきた。

 説明が不十分な部分があまりにも多い。このような「隠ぺい体質」で移設作業を進めようとする姿勢が地元の不信を招くのである。

 県や名護市が求めている沖合移動については、防衛相は「合理的理由なく変更することは困難」と従来姿勢を繰り返した。今後は沖合移動の問題が焦点になるのは確かだろう。

 しかし、沖合移動が実現すれば、普天間移設をめぐるすべての問題が解決されるわけではない。方法書の種々の不備が指摘される中で、この問題を置き去りにし、アセス調査を強行することは許されない。

 審査会の答申を受け、県は二十一日までに知事意見を提出する。これに対し政府がどのような対応をするのかが大きな焦点になる。方法書の問題に対し、県は厳しい態度で臨むべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071214.html#no_1

 

琉球新報 社説

思いやり予算 「対米譲歩」に歯止め必要

 またも「対米譲歩」で幕である。12日に決着した在日米軍駐留経費負担(おもいやり予算)の特別協定改定問題は、日本側が米側要求をほぼ「丸のみ」して、終わった。外交力の差を見せつけられた日米交渉だった。

 交渉は、現行の特別協定経費負担額1409億円の「大幅減額」が焦点だった。

 だが、結果は米軍基地で使う電気、ガス、水道の光熱水料(現行253億円)を3年間で8億円削減する「微減」にとどまった。

 経費の大半を占める労務費(1150億円)や訓練移転費(5億円)、基地従業員の上限労働者数(2万3055人)も現状維持となった。

 「微減」の背景には、インド洋での海上自衛隊の給油活動中断などへの日本政府の「対米配慮」がある。高村正彦外相は「日米同盟の維持・強化の面で極めて有益」と、対米交渉の結果をむしろ自賛している。いかがなものか。

 今後は「思いやり予算」のうち、地位協定に基づく提供施設整備費の大幅削減の可否に焦点が移る。

 そもそも「思いやり予算」自体、支出を義務付ける規定が、日米地位協定にもない。

 逆に、地位協定(第24条1項)では、在日米軍を「維持することにともなうすべての経費」は、施設区域の提供などを除き「協定の存続期間中日本側に負担をかけないで米側が負担する」こととされている。米軍が直接雇用する基地従業員の労務費もその1つだ。

 さらに「光熱水料」は「米側が負担すべき経費」の「典型的な経費」(機密文書「日米地位協定の考え方」増補版)とまで外務省は明記している。

 それを日本は、ベトナム戦争で財政悪化した米国からの駐留経費の負担要求交渉に屈し、1978年から地位協定の規定を超える駐留経費の負担を始めている。

 地位協定を超える超法規的支出の根拠が、当時の金丸信防衛庁長官が使った「いわゆる思いやりで」である。

 米国の財政難対策で62億円から始まった思いやり予算は、米国の財政改善、景気浮揚後も継続され、91年には光熱水料の負担まで拡大。95年には年間2700億円を超え、本年度も2170億円を超える。

 累計ではすでに6兆6千億円を超え、その他の在日米軍駐留経費も含めると倍の規模になる。

 国の借金は国債など833兆円を超える。その日本が、年間50兆円を軍事費に投入できる米国を「思いやれる」立場にはない。

 伸び悩む税収の中で、年金問題や医療、教育改革など高まる行政ニーズに応えるためにも、論拠無き支出の削減を実現したい。

(12/14 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29718-storytopic-11.html

 

2007年12月14日(金) 夕刊 1面

思いやり予算 包括見直し 日米確認

 【東京】石破茂防衛相と米国のゲーツ国防長官が十一月に会談した際、在日米軍駐留経費(思いやり予算)の在り方について包括的見直しを視野に継続協議する方針を確認していたことが十四日分かった。石破氏が閣議後会見で明らかにした。

 石破氏は日米両国の厳しい財政事情を指摘し、「互いに納税者によって成り立っている国であり、より包括的な見直しについて事務レベルのみならず政治レベルにおいても、胸襟を開いた議論が必要」と意義を強調。その上で、「新特別協定が(四月に)発効した後、速やかに日米で協議することになる。不断にやっていかなければならないものだ」と説明した。

 また、特別協定は冷戦時にできたもので前提条件が変わった―とも指摘。安全保障環境の変化や米軍再編を念頭に「抑止力をどう維持するかという観点からも議論されなければならない。政治レベル交渉も含め、日米間で具体的に詰めて合意したい」と意欲を示した。

 一方、日米地位協定に基づく基地従業員の「格差給」廃止をめぐる全駐留軍労働組合(全駐労)との労務交渉については、「労働者の将来の生活設計に思いを致しつつ、厳しい財政事情を勘案しながら一致点を見いだすべく努力する」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141700_01.html

 

2007年12月14日(金) 夕刊 7面 

戦跡114カ所のガイド本発刊/県平和祈念資料館

 【糸満】県平和祈念資料館(宮城智子館長)は戦跡ガイドブック「沖縄の戦争遺跡」(発売元・沖縄学販)を発刊した。平和学習に役立てられるように県内の代表的な戦争遺跡百十四カ所を掲載。資料館によると、公的機関が全県を網羅したガイドブックを発刊するのは全国初という。

 発刊報告会が十三日、同館で開かれ、宮城館長は「親子やグループなど地域で平和学習に活用することができる。県全体のことも分かりやすく伝えており、遺跡の再認識にもつながる」と発刊の意義を語った。

 ガイドブックはオールカラーで、全七十ページ。沖縄本島や周辺離島、宮古、八重山まで県内全域に及ぶ戦跡を紹介している。県立埋蔵文化財センターの調査で報告された県内九百七十九カ所から、平和学習の際の安全面や沖縄戦を考える上で重要とされる遺跡を掲載した。地図や遺物の写真などを盛り込み、家庭や学校でも活用できるように分かりやすい内容を心掛けたという。

 戦争遺跡を研究し、ガイドブックに解説を寄せた吉浜忍沖縄国際大教授は「戦争体験者も少なくなり、戦争遺跡のような『本物』に触れてもらうことが沖縄戦の実相を伝えていく上で重要だ。発刊を機に、資料館ではフィールドワークの企画なども実施してほしい」と話した。

 ガイドブックは県内の小中高校に配布し、来週ごろから県内書店に並ぶ予定。資料館内のミュージアムショップでは、すでに販売を始めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712141700_02.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 1面

書き直し明確に要求「普天間」代替アセス方法書

県審査会17日答申 強制力付与が焦点

 米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書について審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十四日、方法書の記載内容が不十分だとして、事業者の沖縄防衛局に方法書を書き直し再提出するよう求める答申案を取りまとめた。書き直し要求をさらに明確にした上で、十七日に仲井真弘多知事に提出する。県条例を根拠に、書き直しに強制力を持たせるか、要望にとどめるかが焦点。防衛局への知事意見提出の締め切りは二十一日。

 答申は方法書の再提出を要求。アセスに着手する前に知事意見や住民意見、事業内容の具体化に基づく書き直しの内容を提示させ、再審査を求めていく。

 今回、沖縄防衛局は審査会に対し新たに、十二日に首相官邸で開かれた「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」で示された建設計画に関する資料を提出。方法書に記載されていない、戦闘航空機装弾場や進入灯の長さ、洗機場など新たな内容が示された。

 これに対し委員らは「審査会はこれらの施設が記載されていない方法書について審議していることになる」と指摘。新たな施設内容は、アセス法や県条例で方法書の書き直しを事業者に強制する「事業内容の大きな変更」に当たるとして、「この方法書がアセス法の要件を満たしていると判断されていることに疑問を感じる」「機が熟していないと判断し、方法書を差し戻し、再審査することは可能か」「審査会の総意としてこの方法書はやり直すべきだ」との意見が相次いだ。

 委員らは協議会で国側が「二月からアセス調査を実施する」としていることにも懸念を表明。方法書の予測評価の中には、「技術的に国が示す工程表通りの進行は絶対に無理な項目もある」として、アセスをないがしろにして進めようとする国の姿勢を批判した。

 津嘉山会長は「現行アセス法上、差し戻しはできない」との見解を示した上で、「委員からの意見を踏まえ、最終答申案を作っていく」と述べた。

 今答申は、県条例で規定された飛行場建設部分に限られ、埋め立て部分についての答申は年明けにずれ込む。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_01.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 27面

秘密主義 強く批判/アセス方法書 書き直し要求

 米軍普天間飛行場の代替施設建設をめぐって、沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)方法書を審議していた県環境影響評価審査会は十四日、八回の議論を経て、書き直し要求の結論に行き着いた。同局の秘密主義を容認すれば「アセス法が死ぬ」と、委員の危機感が噴出した。

 傍聴に詰め掛けた市民らは「画期的」と拍手を送りつつ、答申を受ける県の姿勢を注視する。

 「国であれ民間であれ、故意の情報隠蔽があってはならない」。備瀬ヒロ子委員(都市科学政策研究所代表取締役)は、「米国との協議」を盾に詳細を明らかにしない防衛局の姿勢を批判。「アセス法の精神にのっとった内容かを問わず、項目さえそろえば要件を満たしたと判断するのか。死に法の下の審査会になる」と強い口調で語った。

 委員が代わる代わるマイクを握る。宮城邦治副会長(沖国大教授)は、報道などで情報を知らされる状況に、「審査会そのものが無視されている」と不快感をあらわに。堤純一郎委員(琉大教授)は「洗機場などが入って、かなり大きな変革。修正を強く求めることが必要だ」と求めた。

 うなずきながら聞き入った津嘉山正光会長(琉大名誉教授)も、「オスプレイ配備は方法書を出す時に分かっていたはずだ」。事務局の県環境政策課も「防衛局の情報提供は非常に悪い」と、同意せざるを得なかった。

 審議では市民団体の要請書が紹介され、委員は傍聴席からの発言にも耳を傾けた。ヘリ基地いらない二見以北十区の会の浦島悦子共同代表は「他府県では珍しいようだが、市民の意見を取り入れるのがアセスの本来の姿。答申は、専門家と市民の合作と言えるのではないか」と、高く評価した。

 平和市民連絡会の当山栄事務局長も「科学者が良心に基づき論議した結果」とした上で、「今後は県がどれだけ審査会の考えを尊重するかだ」と、視線を県に向けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_02.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 1面

陸自一混、米で訓練

年明け1―2月「島しょ侵略対応」

 【東京】防衛省陸上幕僚監部は十四日、来年一月二十一日―二月十五日にかけて米カリフォルニア州で実施される日米共同の「島しょ部に対する侵略への対応のための訓練」に陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が初めて参加すると発表した。

 同訓練は二〇〇五年度から行われており、陸幕は「島しょが集中している西部方面隊管内の部隊の能力を優先的に向上させることが必要。特に、多くの離島が所在する第一混成団の能力向上は急務」と説明している。

 その一方で、同訓練について「多様な事態に対処する戦術・戦闘能力を向上するためのもので、先島などの特定地域を念頭に置くものではない」とも話している。

 第一混成団普通科中隊から九十四人が参加。昨年度も参加した西部方面普通科連隊(長崎県)の小銃小隊と合わせ、陸自側は計百七十九人。

 米側は第一海兵遠征軍の部隊が参加、拠点の米カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトンで実施する。

 機関銃や小銃、拳銃、無反動砲を使用するが、陸幕は「実弾を使用した射撃訓練は実施しない」としている。訓練は「ゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応」も想定し、戦術・戦闘能力の向上を目的としている。

 陸幕は「国内に対応できる訓練場がない。米海兵隊の実戦経験に裏付けられたノウハウも学ぶことができる」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_03.html

 

2007年12月15日(土) 朝刊 2面

ハンセン日米使用「受け入れは負担減」/金武町長が認識示す

 【金武】在日米軍再編に基づく米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊の共同使用を受け入れた、儀武剛金武町長は十四日開会した同町議会(松田義政議長)十二月定例会冒頭で、受け入れの経緯を説明し、理解を求めた。

 儀武町長は「現在、町側で行われている不発弾処理が、恩納村側との二カ所になるので負担減だと考えている。射撃戦闘訓練は二百人程度の中規模で、グアムへの移転する(ハンセン内の)海兵隊員数はそれより多いとイメージしている」と答え、負担増にはならないとの認識を示した。仲間昌信議員の質問に答えた。

 しかし、沖縄防衛局からグアムへ移転する海兵隊員数や時期などは知らされていないとした。議員の間からは明確な負担減の根拠が示されない中での受け入れに不満や撤回を求める声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712151300_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(12月8日から12日)

2007年12月8日(土) 朝刊 27面

文科省、「指針」否定/教科書検定再申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、山内徳信参院議員(社民)は七日、文部科学省に布村幸彦大臣官房審議官を訪ね、同省が教科書会社に示した「指針」を公表することなどを要請した。山内氏らによると、布村審議官は「そういう指針は作っていない」と報道内容を明確に否定したという。

 一方、文科省による「指針」の伝達を公表した関係者は同日、沖縄タイム社の取材に「文科省が文書を読み上げ、口頭で方針を教科書会社に伝えたのは事実だ」と反論し、双方の言い分は真っ向から食い違っている。

 保坂展人衆院議員(社民)も同日、渡海紀三朗文科相と面談し「指針」の事実関係をただした。保坂氏によると渡海氏は「(報道は)極端な書き方をしている」という趣旨の説明をしたという。

 渡海氏は一方で、訂正申請の審議が終了した際の大臣談話の発表については前向きな意向を示したという。

 布村審議官は山内氏らに、六社の訂正申請手続き後、文科省が教科書会社とやりとりをしたことは認めた。ただ、その内容は「これから審議に諮る判断として、何が(訂正申請の理由になった検定規則上の)『学習上の支障』に当たるか根拠を(教科書会社に)聞いた」と述べ、文科省から「指針」に当たる方針を示した事実はないとした。

 その上で「報道されているようなことは一切、していない」「(訂正申請で)記述を書き直した根拠を問うただけだ」などと釈明したという。

 布村審議官はほかに(1)年内には審議結果をまとめたい(2)審議会が意見を聞いている専門家の氏名は、本人の了承があれば審議終了後に公表する(3)意見は幅広い専門家に聞いている―などの現状を明らかにしたという。


「軍強制」の明記求める/仲里議長


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午後、緊急会見し、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する高校歴史教科書検定問題で教科用図書審議会が「指針」をまとめ、教科書会社に「日本軍の命令」を明記しないよう求めたことに対し、「軍の強制」の明記を求める談話を発表した。

 談話は「(指針が)『旧日本軍』という主語や『強制など』の言葉を抜くことで、全体をあいまいな表現に修正しようとするものであれば、県民の体験やこれまでの取り組みをないがしろにするもので許せない」と批判した。

 談話では「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝拓殖大教授などが県民大会の参加者数を主催者の発表よりも少なく伝えたり、仲里議長が沖縄戦時に日本兵から毒の入ったおにぎりを渡されたとする証言を「作り話」と批判していることにも言及。「ぜひ沖縄に来て凄惨を極めた沖縄戦の中で親が子を子が親を殺さなければならなかったという『集団自決』がどうして引き起こされたのか直視してもらいたい」と訴えた。「うそ呼ばわりすることは県民への侮辱」と反発した。


「戦陣訓」を記述へ/教科書会社1社


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定で、文部科学省が教科書会社六社に訂正申請の書き直しを求めていた問題で、新たに一社が「集団自決」の背景に軍官民共生共死の方針の一端を示す「戦陣訓」の教えがあったことを盛り込んで再申請することを決めた。関係者が七日、明らかにした。

 「集団自決」に複合的な要因があったことを記述で説明し、再申請することを教科書会社に求めた文科省の「指針」に沿った記述。文科省幹部は報道内容を否定しているが、教科書会社のこうした対応は「指針」の存在を裏付けるものと言えそうだ。

 「戦陣訓」は戦時中に日本軍が「生きて虜囚の辱めを受けず」として、米軍の捕虜になることを禁じた教え。軍だけでなく住民にも浸透し、沖縄戦で民間人が「集団自決」に追い込まれた要因の一つとされる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_01.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 1面

早期移設へ協議加速/仲井真知事、就任1周年で意欲

 十日で就任一周年となる仲井真弘多知事は七日、本紙など報道各社の合同インタビューに応じた。

 公約に掲げた米軍普天間飛行場の早期移設や同飛行場の「三年を目途とした閉鎖状態」の実現については、予想以上に日米両政府の壁が厚かったと振り返った。その上で、「(協議を)一年やり続けて、ようやく課題解決を前に進めるための(政府との)意見交換が始まりだした感じだ」と述べ、早期移設に向けた政府との協議を今後加速させる考えを強調した。

 また、公約の柱である完全失業率の全国平均並み実現は、現時点で厳しい状況にあることを認めた。今後の取り組みについては、トヨタのような自動車産業の九州工場がアジアの展開基地になっていることを例示し、「(今後)台湾や米国、中国なども回ってみようと思う」と語り、企業誘致に向けたトップセールスに意欲を示した。

 さらに、将来の道州制導入にも言及。「沖縄も一回は、自分で財政を含めてほかの地区と同じ形で、特別な制度でなくやっていく必要がある。経済の自立なくして沖縄の発展はない」と述べた。

 就任一年の公約全般の達成度については、「産業振興や雇用創出・拡大、基地負担の軽減などに取り組んできた。県政全般のほとんどのことに、何らかの形で着手できたものと考えている」と総括した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_02.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 2面

全駐労 団交不調、妥結見送り/第3波スト11日に判断

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の手当廃止を提案した問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千八百人)は七日、防衛省と五回目の団体交渉に臨んだ。全駐労側は、手当廃止分を固定して補償する対案を引き続き求めたが、防衛省側から前向きな回答はなく、妥結は見送られた。

 これを受け、全駐労は十一月三十日以来となる第三波ストライキを十二日に決行する方針を確認した。しかし、来週にも最終決着する日米協議を見据え、スト前日の十一日に三役が防衛省と交渉に臨み、最終判断する考えだ。

 第三波として計画しているのは、十二日の沖縄に始まり十四日の神奈川まで、各地で順次八時間ストを行う「リレーストライキ」。第二波と同様、一般職種の就労時間に合わせた八時間のストで、実質的に二十四時間ストとなる。

 全駐労によると、この日の団体交渉で防衛省は全駐労の対案について「今の段階では難しい」としながらも、「打開に向け一生懸命取り組みたい」と述べ、継続して財務省と折衝する考えを示したという。

 防衛省幹部も同日、「防衛省として一歩も(譲らない)というわけではない」と妥結に前向きな姿勢を示した。


防衛政務官 妥結に意欲


 【東京】政府が基地従業員の手当廃止を提案している問題で、防衛省の寺田稔大臣政務官は七日、「全駐労と誠心誠意妥結を目指し、交渉していく」と早期妥結に意欲を示した。衆院外務委員会で述べた。

 寺田政務官は、手当廃止後の経過措置の在り方をめぐり、全駐労が示している(手当廃止分を固定して補償する)対案を検討していることも明らかにした。


基地従業員の不利益と指摘

駐留軍労政議員懇


 【東京】政府が基地従業員の手当廃止を提案している問題で、国会議員でつくる駐留軍労働政策議員懇談会(会長・横路孝弘衆院議員)は七日、国会に防衛省の寺田稔大臣政務官を訪ね、従業員への配慮を要請した。

 同議員懇談会は、防衛省提案に「労働者と家族の日常生活に影響を及ぼす不利益変更の提案だ」と指摘。(1)廃止分を固定補償額として定年まで支給(2)国家公務員を下回る勤務条件の改善―などを求めた。寺田政務官は「精いっぱい努力したい」などと述べるにとどめたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_04.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 27面

機能強化 住民放置/米軍合同即応訓練終わる

 米軍嘉手納基地を拠点に、三日から行われていた米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練は七日、終了した。第一八航空団に加え、岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊約六百人が参加。有事に備え、実弾を装着して飛行するFA18、爆発音や煙を伴う訓練などが確認された。一方で、基地周辺に住む住民からは騒音被害を訴える苦情が相次いだ。嘉手納基地で米海兵隊と合同で即応訓練を実施するのは初めてで、目に見える形で進む「基地機能強化」が、不安を募らせる住民を置き去りにしている実態が浮かぶ。(中部支社・福里賢矢)

不安な夜


 七日未明、嘉手納町水釜の住宅街は静寂に包まれていた。「エクササイズ、エクササイズ」。午前二時すぎ、突如嘉手納基地から拡声器放送が行われた。内容は聞き取りづらく、数分間にわたって不気味に響いた。嘉手納町に寄せられた九件の苦情のうち、大半は昼夜を問わずに行われたサイレン音や拡声器放送に対するものだった。

 「意味の分からない放送にはもう耐えられない」「睡眠薬を飲んで眠ろうとしても寝れない。せめて夜は静かにしてほしい」。寄せられた苦情からは、不安な夜を過ごす町民の実態が浮き彫りとなった。

 一方で、FA18は日没後も飛行訓練を続けた。嘉手納町が屋良地区に設置している騒音測定器は、三日から六日まで、多くの人が不快に感じる騒音(七〇デシベル以上)を一日平均百六回を計測。飛行停止中のF15戦闘機が通常運用していた十月の一日平均騒音発生回数九十一回を上回った。

 今回の訓練について、米空軍は六日、ホームページ(HP)で「ミサイル攻撃、大規模災害、基地防御、化学攻撃などが含まれる」と、これまで公表しなかった訓練内容の一部を明らかにした。

 同HPで嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ司令官は「不測の事態に外来部隊を受け入れ、活用する任務を訓練する素晴らしい機会だ。海兵隊にとっても、合同訓練の成果は大きい」と成果を誇示した。


統合運用


 日米両政府は二〇〇六年、沖縄の基地負担軽減をうたった在日米軍再編に合意。屋良区の島袋敏雄区長は「これで嘉手納も少しは静かになる」と期待した。

 しかし、合意後も嘉手納基地をめぐる動きは活発化。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備され、SACO(日米特別行動委員会)合意に基づき、伊江島補助飛行場で行われるはずのパラシュート降下訓練も実施された。今回の即応訓練では、米軍の軍種間の垣根を取り払う「統合運用」推進の流れが沖縄でも具体化した。

 負担軽減の目玉とされたF15の本土訓練移転は三月を皮切りに、五機程度が参加し、ほぼ二カ月に一度のペースで実施されるだけ。島袋区長は「政府が優先するのは軍事か住民が安心できる生活か。住民の声を聞いて判断してほしい」と切実な思いを訴えた。


     ◇     ◇     ◇     

北谷町桑江で騒音激増


 【北谷】米軍嘉手納基地で、米空軍と米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が、合同即応訓練を実施した今月三日からの四日間、北谷町桑江地区で九〇デシベル(騒々しい工場内に相当)以上の騒音が、普段の約二倍以上の十八回計測されていたことが分かった。

 同町によると、同地区で十一月に計測された九〇デシベル以上の騒音は、一週間当たり五回前後だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_06.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 2面

「集団自決」修正/知事、撤回要求は堅持

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は七日、二日目の一般質問が行われた。

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題への対応について、仲井真弘多知事は「現在、教科用図書検定調査審議会が行われているが、(教科書検定意見撤回を求める県民大会の)十一万人の集会の背景を忘れず、県民の意向に応えられるようやっていきたい」と述べ、検定意見の撤回と記述回復を求めていく姿勢をあらためて強調した。当山全弘氏(社大・結連合)の質問に答えた。

 米軍再編交付金の交付基準の在り方については、上原昭知事公室長が「再編関連特定周辺市町村の指定について基準が明確に規定されておらず、交付金支給の有無を含め法律運用の大部分が政省令に委任されている。これは県として好ましいものではないと考える」との認識を示した。兼城賢次氏(護憲ネット)への答弁。

 道州制論議を活発化させるため、議員連盟や沖縄道州制懇話会が設立されたことに、仲井真知事は「調査研究や県民視点での論議が進み、道州制問題に関する県民理解が一層深まると期待している」と述べ、県も県民への普及啓発等で連携を図っていく考えを示した。平良長政氏(護憲ネット)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月8日朝刊)

[F15に亀裂]

欠陥機は運用中止せよ

 米国ミズーリ州で墜落事故を起こし飛行停止措置が取られた米空軍のF15戦闘機には、事故機固有の原因ではなく、構造上の欠陥があることが裏付けられた。

 嘉手納基地周辺の住民の懸念は的中した。欠陥機が日常的に離着陸を繰り返し、上空を飛行していた。住民や周辺自治体が怒るのは当然だ。

 嘉手納基地所属のF15は約五十機。三十機の整備点検を済ませたところ、二機について機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかった。整備点検が進めば、さらに増える可能性もある。

 米国で十一月二日に発生したF15の墜落事故の後、米空軍は「構造上の欠陥」の可能性があるとして、飛行停止命令を出した。

 嘉手納基地は、詳細な整備調査のチェックリストと照らし合わせ、一機当たり十五時間以上かけて点検したと説明し、二十六日から飛行を再開した。

 米空軍は二十八日に再停止を発表。今月四日には点検個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性があるとして三回目の飛行停止を決めた。

 詳細な点検でも主原因とされる亀裂は発見できなかった。嘉手納基地所属のF15の飛行再開は、事故原因が確定できない段階で「見切り発車」による決定だったことになる。

 安全性が担保されない中での再開であり、住民軽視にもほどがある。米空軍は住民の安全よりもF15の運用を優先していた。政府はこの問題を重く受け止める必要がある。

 住民の安全にかかわる問題を政府が許容し放置するようでは、周辺住民の怒りと不安は収まらないだろう。

 米空軍は一九七四年からF15の配備を開始した。現在世界各地に約七百機が展開しており、六日までに計五機に亀裂が確認された。六日時点では計七機との報道もある。

 F15は構造検査技術の向上などで耐用期間(距離)が延長されてきたが、専門家らは老朽化の問題があると指摘していた。嘉手納基地所属のF15約五十機の製造年の新しい機体への入れ替えも、老朽化が理由だった。

 米空軍によるコンピューターのシミュレーション結果では、ロンジロンの亀裂が墜落事故につながる構造的問題が発生する可能性が示されたという。

 米軍がF15の欠陥を深刻に受け止めている以上、政府が座視することは許されない。基地周辺住民の安全を最優先する対応を強く求めていくべきだ。

 F15は「最も安全な戦闘機」という神話は崩壊した。欠陥が疑われるF15については運用を即刻中止し、嘉手納基地からの撤去を急ぐしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071208.html#no_1

 

2007年12月9日(日) 朝刊 1・27面

「軍だけが強制」禁止/文科省指針 全容判明

複合的要因を強調/教科書・再申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、文部科学省が教科書会社に伝達した訂正申請の書き直しの方針(指針)の全容が八日までに分かった。関係者が明らかにした。「集団自決」の背景に複合的な要因があったことを繰り返し強調。「過度に単純化した表現」は「生徒の理解が十分にならない恐れがある」として、日本軍だけが住民に「集団自決」を強制したと読み取れる表現を事実上、禁じている。

 一方で「集団自決」が自発的な死ではなく、住民が「『集団自決』せざるを得ない状況に追い込まれた」ことは認め、その「背景・要因」を詳細に記述するよう促している。このため、「集団自決」を強制した主体(主語)が、軍だけでなく複数にまたがる記述であれば、容認する方針を示しているとみられる。

 指針は教科用図書検定調査審議会の意向を受け、文科省が作成したようだ。

 関係者によると指針は四日、文科省の教科書調査官から、訂正申請した六社の担当者に伝達された。文科省の布村幸彦大臣官房審議官は七日、「そういう指針は作っていない」と否定したが、全文が判明したことによって苦しい説明を迫られそうだ。

 指針は、「沖縄戦」の項目では「軍官民一体となった戦時体制下で、住民を巻き込んだ地上戦が行われた」と指摘。「集団自決」の項目では「太平洋戦争末期の沖縄で、住民が戦闘に巻き込まれるという異常な状況下で起こった」として、一般住民を巻き込んだ沖縄戦の特殊性を強調した。

 その背景として「当時の教育訓練」や「感情の植え付け」があったと述べ、「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓や「死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよ」の軍人勅諭との関係性を示唆している。日本軍の命令については「直接的な軍の命令に基づいて行われたということは、現時点では確認できていない」として、記述しないよう求めている。


     ◇     ◇     ◇     

「軍責任のごまかし」/体験者・識者ら懸念


 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、教科用図書検定調査審議会が沖縄戦や「集団自決」の教科書記述について各教科書会社に伝えた「指針」の内容が明らかになった。複合的な要因を記させるとともに、軍による直接の命令を否定する内容に、検定意見の撤回を求めている関係者らは「『軍の強制』をあいまいにしようとしているのではないか」などと懸念している。

 「教科書検定意見の撤回を求める県民大会」の玉寄哲永副委員長は、開口一番に「審議委員や教科書調査官は沖縄戦をまったく分かっていない」と非難した。

 指針が「沖縄では軍・官・民一体となった戦時体制の中」としている点を、「県民が沖縄を地上戦の舞台にすることや、軍への協力を自発的に望んだわけではない」と批判。「異常な戦時体制をつくり、教育訓練を施したのは軍だ。沖縄戦全体が軍命によるもので、それを否定すれば、かえって『集団自決』の本質が分からなくなる」と述べた。

 琉球大の高嶋伸欣教授は、「『過度に単純化した表現』は駄目だというのが一番の本音。『軍による強制』は書かせたくないということを示したものだ」と指摘する。

 一方で「背景・要因を書き加えれば考慮する姿勢も見せており、厳しい世論を考慮せざるを得ないという審議会の立場の表れとも読み取れる」とも説明。その上で「こういうもの(指針に隠されている文科省の意図)に対してきちんと原則を守るよう声を上げることが必要だ」と強調した。

 文科省からの要請を受け、「集団自決」教科書検定問題についての意見書を提出した林博史・関東学院大教授は「沖縄戦で起きた『集団自決』の一番の要因である『日本軍の強制』の記述を認めるかどうかが最大のポイントだ」と説明する。

 「『直接的な軍命』を『確認できていない』としているが、検定では、これを理由に軍の強制を削除させた。同じことが繰り返されないか」と懸念する。「前提に日本軍の強制を挙げ、背景としてさまざまな要因を書かせるならいいが、背景だけを書かせて強制を書かせない意図であれば、ごまかしにすぎない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712091300_01.html

 

2007年12月10日(月) 夕刊 1面

防衛局「即応訓練必要」/北谷議会抗議

 北谷町議会(宮里友常議長)は十日午前、外務省沖縄事務所、沖縄防衛局を訪ね、嘉手納基地所属のF15戦闘機の即時撤去と、米海兵隊と米空軍合同の即応訓練などによる基地機能強化への抗議を申し入れた。

 即応訓練について、沖縄防衛局の池部衛次長は「いざというときに、嘉手納の空軍と岩国の海兵隊の航空機が協力し合って対応することは必要」と述べ、有事の際などの統合運用に向けた訓練の意義を強調した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「現状の抑止力を維持し、即応性を高めることは重要。訓練を実施するなとは言えない」とする一方、米空軍と米海兵隊合同の即応訓練は定期的に実施されるものではない、と説明した。

 また、倉光副所長は在韓米軍機による沖縄周辺海域の射爆撃場での訓練増加の可能性を指摘され、「東アジアの安全にとって在日米軍だけが運用上必要ということではなく、在韓米軍と在日米軍が協調しながら対応する。在韓米軍の訓練が関係ないということではない」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712101700_01.html

 

2007年12月10日(月) 夕刊 6面

米政府提訴の可能性を議論/「普天間」で市がシンポ

 【宜野湾】普天間飛行場問題シンポジウム「米国政府訴訟の可能性」(主催・宜野湾市)が九日、市中央公民館で開かれた。同飛行場は米国の安全基準に違反しているとして、人権侵害などを根拠に米国で米政府を訴える可能性について議論を深めた。

 基調講演で、NPO法人ピースデポ代表の梅林宏道さんが米国海兵隊基地の安全基準について基調講演。飛行場周辺の土地利用が制限された「航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)」をめぐり、訴訟の根拠となることなどを説明した。

 パネルディスカッションでは梅林さんのほか、米国ジュゴン訴訟原告の真喜志好一さんや普天間爆音訴訟団弁護団長の新垣勉さん、伊波洋一市長が米国政府訴訟の可能性について議論。高良鉄美琉大教授がコーディネートした。

 梅林さんは米国で訴訟を起こす際、米国外の普天間問題をどの法律に当てはめて提訴するか問題提起。「最初のハードルが高い」としながらも「人権侵害として訴えれば法律の道筋が付けられるのではないか」と話した。

 新垣さんは法治国家の日本で、普天間の運用は法律に基づかない前近代的な状況だと指摘。米国の国家賠償での訴訟や米国外でも適用される法律を探して裁判に持ち込む可能性を示し、「市民運動と裁判が一体となって米国の責任を追及するべきだ」と述べた。

 真喜志さんは米国の国家歴史遺産保護法に基づき、ジュゴンの保護策を示させることで海上基地建設の反対を示した経緯を説明。伊波市長は普天間の騒音被害が深刻化している現状を訴え、「米国内で直接被害を与えては基地は存在し得ず、米国政府訴訟の可能性を探りたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712101700_07.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 1面

北部振興事業 執行へ/政府が方針 あす表明

 【東京】政府は十二日に開かれる米軍普天間飛行場の移設に関する協議会(主宰・町村信孝官房長官)で、本年度分の北部振興事業費(百億円)の執行と、二〇〇八年度分(同額)の計上を表明する方針を固めた。議題の環境影響評価(アセスメント)と建設計画に関する協議終了後、岸田文雄沖縄担当相が本年度分の執行、額賀福志郎財務相が〇八年度分の計上を、それぞれ明らかにする方向で調整している。

 協議会はアセスに関する審議で、方法書への知事意見が今月二十一日に県条例の提出期限を迎えることを踏まえ、年明けからアセス法に基づく正式な手続きに入ることを確認。アセス調査を円滑に進めて早期の移設を実現するため、国と地元が互いに努力するとの趣旨で合意する。

 この合意を経て、北部振興事業費の執行条件である「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」環境が整ったと判断するもようだ。

 ただ、県環境影響評価審査会が方法書に厳しい見解を表明している現状を踏まえ、仲井真弘多知事は防衛省に丁寧な調査や代替施設の機能に関する一層の情報公開を強く求めるとみられる。

 北部振興事業費をめぐっては、二〇〇六年五月の閣議決定で、いったん「廃止」が決定。同年八月の第一回協議会で、小池百合子沖縄担当相(当時)が執行条件を提示し、了承された。

 同年十一月の知事選で仲井真知事が当選したのを機に、北部振興の継続に難色を示していた防衛庁(当時)も執行に同意した。

 しかし、県や名護市が普天間代替施設の沖合移動を強く求めたことから、政府は「協議が円滑に進む状況にない」と判断。例年は八月初旬に執行される同事業費の本年度分を凍結した。地元がV字形滑走路案の建設に協力しない限り、〇八年度予算にも計上しない考えを示していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_01.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 1・2・27面

普天間アセス/審査会が再審査要求

 米軍普天間飛行場代替施設建設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の不備を指摘し、事業者の沖縄防衛局に文書での追加説明を求めていた県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十日、追加説明の内容を審議。「方法書と認めるのは難しい」として、委員から準備書までに再審査の機会を要求する声が上がった。防衛局は「知事意見で指摘があれば検討する」と回答。津嘉山会長は「答申は方法書の不備を指摘していく」とし、答申案を検討する中で再審査の機会を要求する可能性を示唆した。

 方法書から準備書までの段階で、アセス手法について環境影響評価審査会の意見を聞くことは現行法では、想定されておらず、実現すれば極めて異例。

 審査会の委員らは方法書について「現時点で事業計画の熟度が低いために、アセス手法全体が仮定の計画の上に成り立っており、審議に値しない」と指摘。その上で、防衛局が方法書の内容のほとんどについて「準備書までに明らかにする」としていることから、「準備書までの早い時期に、それぞれ事業や計画の内容についてあらためて具体的な情報を出してもらい、意見を述べる機会をつくってもらいたい」と要望した。

 これに対し、同局は「知事からの意見として仮に出れば当然事業者として検討する必要があると思う」と述べた。

 津嘉山会長は「もし答申でそうした指摘があれば、対応を検討していただけるということだと思う」との見解を示した。

 前審査会で追加説明に対する回答を口頭説明にとどめ批判を浴びた沖縄防衛局は今回、あらためて文書で回答した。「美謝川切り替え」「作業ヤード」「護岸用ブロック等」を新たに付記した概略工程表を提示。

 しかし今月からの着手予定が、米側との調整の関係で来年三月に遅れる見通しの「隊舎等の建物の建築工事」の時期については工程表の項目から外れた。

 同局は「二〇〇九年七月末のアセス完了をめどに進めている」と明らかにしたが、審査委員からは「通常のアセスなら三、四年かかる内容だが(設定通りで)大丈夫なのか」とアセスの拙速を指摘する声も出た。

 同方法書については知事意見の提出締め切りが二十一日に迫っている。次回審査会は十一日で、審査会は遅くとも来週初めまでに答申をまとめる方針。


     ◇     ◇     ◇     

住宅地飛行 否定せず


 代替施設での基本的な飛行経路について沖縄防衛局は「北東より」または「南西より」の風を前提に設定。審査会委員から「風の向きが想定と違うときは、内陸部も飛行すると理解していいのか」との指摘が出た。これに対し、同局は「(滑走路に対して)横風とかはあり得るとは思うが、横風の場合は飛ばないということではなく、北東、南西いずれかの方向で離陸もしくは着陸という形になると思う」と歯切れの悪い回答に終始した。

 「基本的に、向かってくる風に離陸、着陸する形を考えている」。沖縄防衛局は、典型的な例として北東の風が吹いているときの離着陸イメージをスライドで示した。

 風向きについては「年間を通して北東よりの風が70%、その他が30%」とのデータ結果を強調。その上で「北東より、あるいは南西よりの風を想定している」と説明し、風向きによってV字形滑走路を使い分け、集落上空飛行を避ける考えを示した。

 しかし、風は常に「北東より」あるいは「南東より」に吹くとは限らない。

 審査会委員からは「北東や南西とは違う向きの風が吹いているときはどうするのか」との質問が出た。

 これに対し、同局は「滑走路に対して極めて強い横風が吹く事態が生じた場合には、離着陸は難しくなるかと思うが、そういった程度でなければいずれかの方向で離着陸する形になる」と回答した。

 審査会委員からは「北東よりの風が70%」とするデータの根拠にも疑問が呈された。

 同局は前回審査会の口頭説明と同様、「基本的には住宅地上空を飛行しない」とした上で、「緊急時などの例外的なケースはあり得るが、その際の飛行コースをあらかじめ示すことは困難」とした。

 防衛省は国会答弁で「訓練形態によっては当然(集落上空を)飛ぶことはあり得る」と表明しているが、これについても前回同様に「個別具体的な飛行コースについては現時点で米側と議論しているものではない」として明示しなかった。

 審査会委員からは騒音コンターや飛行コースの説明不備に苦言が呈されたが、同局は「環境影響評価を行うために必要な航空機騒音コンター図およびそれに関するデータは準備書の段階までに明らかにする」との回答にとどめている。


「審議に値せず」


 米軍普天間飛行場代替施設建設のアセス方法書は審議に値しない―。十日に開かれた県環境影響評価審査会。「現状でできる限りの情報を提供している」と繰り返す沖縄防衛局の説明に対し、同審査会の委員らは「具体的な回答を頂いていない」「方法書の根拠となった最低限の事業内容さえも説明していない」と反論。来週初めに予定されている答申は事実上、審査未了の形で提出される可能性も示唆した。

 審議は予定時間を超過して行われたが、防衛局と審査会の意見は平行線をたどった。方法書の体を成していないと指摘する委員らに対し、同局は「できる限りデータは出している」「準備書までに明らかにする」との回答を繰り返した。

 方法書の不備は、建設事業にかかわる工程で、どれも一方法しか検討されていないことでも明らかになった。作業ヤードは大浦湾を大規模に埋め立てて造るとしていることに、委員からは「埋め立てが環境に与える影響は大きく、当然変更もあり得る。それなのに別の案を検討していない」と述べた。

 飛行場建設の埋め立て土砂の一割を辺野古ダム周辺から採取することについては、「九割をほかから採取するのに、なぜ一割だけダム周辺から採取するのか合理的な説明がない」と疑問視。土砂を採取した跡地に兵舎建設の計画が検討されているとし、「兵舎は方法書で記載されていない。ほかの計画があるならば明確にしてほしい」と指摘した。

 方法書全体について、「飛行場建設に伴う住民生活や環境影響を真に考慮するという事業者の姿勢が見えない」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_02.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 27面

審議会指針「軍強制薄める狙い」/抗議声明相次ぐ

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、文科省が訂正申請をした教科書会社に示した教科用図書検定調査審議会の指針の内容に対して、十日、県内の市民団体から相次いで抗議声明が出された。

 抗議声明は「あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク」(反基地ネット)と「おきなわ教育支援ネットワーク」(教育支援ネット)が単独で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(平和教育をすすめる会)と「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会が共同でそれぞれ発表した。

 いずれも「『軍の強制』をあいまいにするものだ」、「『集団自決』体験者の証言や、県民大会で示された県民の意志を無視したものだ」などと指針を厳しく批判し、文科省に記述回復と検定意見の撤回を求めている。

 沖縄戦体験者の佐久川政一・教育支援ネット共同代表は「県民は軍により死へと追いやられたというのが沖縄戦での実感だ。多くの体験者の証言が『集団自決』への軍命、強制を示している。それ以外の背景を詳述させるのは『軍の強制』を薄めるのが狙いだからだ」と話した。

 平和教育をすすめる会の高嶋伸欣共同代表は「指針では『過度に単純化した表現』などとあいまいな言葉で基準が示されており、文科省に対して立場の弱い教科書会社が過剰反応を起こす恐れもある」と指摘した。

 反基地ネットの當山全治共同代表が「九月の県民大会から時間がたつにつれ、検定意見撤回の動きが後退している」と危機感を募らせるなど、各団体とも今後の対応を急ぐ考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_06.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 27面

クラスター弾搭載/嘉手納FA18

 【嘉手納】米軍嘉手納基地に一時的に移駐している海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が、非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾を装着して飛行しているのが十日、確認された。

 目撃者によると、FA18は午前十時すぎ、二機が左翼下にそれぞれ四発のクラスター爆弾を装着して離陸。同爆弾には実弾を示すとみられる黄色い帯状の印が確認された。

 約二時間後、嘉手納基地に着陸した際には計八発の同爆弾はなくなっていたことから、沖縄本島周辺で使用した可能性がある。日没後の午後七時四十五分ごろにも、同様にクラスター爆弾を装着したFA18二機が離陸した。

 FA18は、今月三日から七日まで、嘉手納基地を拠点に行われていた米空軍と米海兵隊合同の即応訓練に参加していた。


     ◇     ◇     ◇     

土曜の騒音 北谷4倍増


 【北谷】嘉手納基地の騒音防止協定で飛行が禁止されている土曜日に当たる八日、同基地に隣接する北谷町砂辺地区で、七〇デシベル以上の騒音が、普段の約四倍に当たる四十回計測されていたことが分かった。この日の平均騒音は一〇六・四デシベル(電車通過時の線路脇に相当)、最大は一一二・九デシベル(二メートル手前からの自動車のクラクションに相当)だった。

 同基地には、今月三日から七日まで行われた米空軍と米海兵隊の合同即応訓練に伴い、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機が飛来。十二日まで駐留し続け、別の訓練を予定している。

 同町によると、嘉手納基地所属のF15戦闘機が、米本国での墜落事故を受けて飛行を停止した十一月の土曜日の平均騒音回数は二十回。F15が通常運行していた十月の平均は十一回だった。

 砂辺地区では八日、沖縄平和運動センターなど四団体が嘉手納基地のF15戦闘機の即時撤去を訴え、同基地第一ゲート前で抗議集会を行っていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_07.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 1面

在沖海兵隊グアム移転12年から/米紙報道

 米軍再編の最終報告(ロードマップ)に盛り込まれた沖縄の第三海兵遠征軍(IIIMEF)の司令部などのグアムへの移転が二〇一二年から開始予定であることが十一日、分かった。司令部はグアム島北部の米海軍通信施設に移転、一四年を目標に全面運用する。マスタープラン(基本計画)案を来年三月、実務レベルの同プランを来年夏までに策定。米国の二〇一〇年会計年度の予算編成が始まる〇九年二月までに、より詳細な実施計画を固める方針という。

 米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」が同日、グアム統合計画室の責任者の見解として報じた。

 在沖米海兵隊八千人のグアム移転は、一四年に名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に完成予定の米軍普天間飛行場代替施設や嘉手納以南の米軍施設返還と「パッケージ」とされている。普天間代替施設の完成を待たずに、司令部移転を前倒しで開始する可能性については、これまでケビン・メア在沖米国総領事が示唆していたが、具体的な移転開始時期が明らかになったのは初めて。

 同紙によると、グアム統合計画室の責任者は「グアムへは第一陣が一二年に到着予定。一四年には完全に運用できる能力を整えたい」と説明。さらに「グアムでは新たな(射撃用、砲撃用)レンジを建設し、民間地との緩衝地帯を設けるため、基地を拡張する可能性がある。グアム周辺のマリアナ諸島でも、大規模訓練場の建設計画がある」としている。

 グアムの軍事強化は在沖海兵隊の移転のほか、米陸軍、米海軍の増強を計画。軍事強化されたグアムでは駐留兵員だけでなく、沖縄、アラスカ、ハワイなどの兵員も訓練を実施する見込みという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_01.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 1面

海自掃海艦 派遣裏付け/今年5月普天間事前調査

 【東京】山内徳信参院議員(社民)は十一日までに、米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市キャンプ・シュワブ沿岸部周辺での現況調査(事前調査)で、今年五月に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」が派遣され、調査に協力していたことを裏付ける防衛省の内部資料を入手した。

 ぶんごは五月十一日、海自横須賀基地(神奈川県)を出港して以降、海域で確認されておらず、行動の詳細が明らかになるのは初めて。

 資料は市民が防衛省に対して情報公開請求した。一部は「以後の海自の任務の効果的な遂行に支障を及ぼす恐れがある」などと黒塗りで不開示となっている。

 不開示理由の中には「運用形態等を公にすると、今後の同種作業の能率的な遂行が妨害行動により不当に阻害される恐れがある」との記述もあり、今後の海域調査でも海自が派遣される可能性を示唆している。

 資料によると、五月十一日にぶんごの「環境現況調査協力の実施に関する海上幕僚長指示」などがなされ、六月二十日には「終結に関する海上幕僚長指示」が出されている。その間、「中断に関する自衛艦隊一般命令」も出されているが、日付は明らかにしていない。

 このほか、現場部隊は「掃海隊群司令部(水中処分班を含む)」と明記。海底への機器設置作業に海自の潜水士が参加したことが裏付けられた。

 山内氏は「ぶんご」の再出動の有無などについて、十一日午後の参院外交防衛委員会で政府の対応をただす。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_02.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 5面

FA18名護上空で騒音/米軍、詳細言及せず

 【名護】米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が十日、朝から夜間にかけ、断続的に名護市上空を飛行した。市民からの苦情を受けた名護市基地対策室は同日、沖縄防衛局を通じ米軍に「市民に不安が出るような訓練はやめてほしい」と改善を要請した。

 市役所に連絡した島袋庸雄久志区長によると、同戦闘機は十日朝から夜の九時すぎまで飛行。島袋区長は「これまで単発的な飛行はあったが窓を閉めても聞こえるような騒音が、これだけ長時間続いたのはなかったのではないか。ヘリの音もうるさいが、戦闘機は恐怖感を感じる」と話した。

 同市基地対策室も同日職員を久志地域に派遣、同機二機の飛行を確認した。また、沖縄タイムス北部支社にも、名護市街地に住む女性から午後九時半ごろ、苦情を訴える電話があった。

 FA18は、三日から七日まで嘉手納基地で行われた空軍と海兵隊の大規模な合同即応訓練に参加。十二日まで嘉手納基地に滞在し、別の訓練を続けている。沖縄タイムス社の取材に対し、在沖米海兵隊報道部は「運用上の保安のため、訓練の詳細については言及しない」と回答。飛行コースや具体的な訓練内容を明らかにしていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_03.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 1面

「普天間」アセス方法書見直し要求

県審査会が答申案審議

 県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十一日、米軍普天間飛行場代替施設建設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の答申素案を審議した。事務局の県が作成した素案は「準備書までの段階で事業内容や見直した項目について審査会や県に報告・協議・公表させること」とし、事実上の再審査を求めた。委員からは、答申の趣旨がほごにされないよう方法書の書き直し要求をより明確にすべきだと、実効力ある内容を求める意見が相次いだ。

 今回の素案は二十一日に知事意見の締め切りが迫る飛行場建設に係る事項に限られている。残る埋め立て部分への審査は、知事意見が締め切られる来年一月二十一日まで継続される見通しだ。

 素案は「方法書において示された環境影響評価の項目や手法が適切なものであるかを判断できる内容が十分示されているとは言い難く、審査するに足るものとなっていない」と厳しく不備を指摘。準備書までに決定する事業の具体的内容を考慮し、(1)知事意見や市民の意見に配慮してアセスの項目・手法をあらためて見直す(2)見直した項目を審査会や県に報告・協議し、公表する―ことを求めた。

 委員らは、事業計画が今後明らかになった場合、本来、方法書の変更もあり得るとの観点から、「突っ返せればいいが、手続き上はできない。大きな問題があることを強く言うべきだ」とした。

 アセス法に詳しい桜井国俊沖縄大学学長は、素案で「方法書に係る手続き後、準備書を作成するまでの間に再審査を求める」とする点について、「手続き上、何の効力も示さない点で、前回(二〇〇四年)の辺野古アセス方法書の答申と何ら変わらない」と指摘。

 新石垣空港建設アセス方法書で、審査会がアセス調査前に知事意見や市民意見に基づいた変更を報告・公表を求めた答申を挙げ、「事実上の改訂方法書の提出要求だった。同様の効力を付するべきだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_01.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 25面 

専門家、評価と懸念/アセス審査会答申案

 米軍普天間飛行場の移設をめぐる環境影響評価(アセスメント)手続きで、県環境影響評価審査会の答申素案が十一日、公表された。専門家からは厳しい姿勢を評価する声の一方で、「この表現では国に逃げ切られる」と、効力を疑問視する意見も。最終的な答申内容に、注目が集まる。地元名護市では、移設への賛否を超えて国に透明性を求める声が上がった。

 沖縄大学の桜井国俊学長は「現行のアセス法は、今回のような全く体をなさない方法書の提出を想定していない」と指摘。「法の趣旨を守る立場から、委員には方法書の改訂要求が知事意見に反映されなければ、辞任するほどの強い意志が求められる」と強調した。

 「アセス法施行後、審査会がこれほど厳しい意見を出した例は全国にもないのではないか」。WWF(世界自然保護基金)ジャパンの花輪伸一さんは、厳格な審議姿勢をこう評価した。

 ただ、「方法書の手続きをいったん進めてしまうと、国は問題点を先送りにして事業を進め、逃げ切ってしまう」と話し、実質的な手続きのやり直し要求を最終的な答申に盛り込むよう求めた。

 移設先の名護市辺野古区出身の島袋権勇同市議会議長は「市長意見も事業内容を具体的に明らかにするよう求めた。地元の意向であり、当然明らかにされるべきだ。できないとなると、基地行政もうまく進まない」と懸念。住民が納得できるような透明性の確保を要望した。

 十一日の審査会を傍聴した「市民アセスなご」の吉川秀樹さんは「日本の今後のアセスを左右する問題。ここでなし崩し的に進めさせては、沖縄が悪い前例を作ることになる」と心配する。その上で、「県は権利・義務として、『不合格』の方法書の差し戻しや撤回を求めるべきだ」と、県の役割を強調した。

 同日の審査会を傍聴し、科学的なアセスを求める要請書を提出した沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員の真喜志好一さん。「悪影響をひた隠しにする政府に対して、委員の学問的な良心が表れた。答申に当たっては、一人一人が知識に照らして曇りのない、後悔しない判断をしてほしい」と要望した。


「方法書撤回を」

移設反対訴え平和団体集会


 普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する緊急集会が十一日、那覇市の県民広場で開かれ、沖縄防衛局に方法書の撤回などを求める決議を行った。沖縄平和運動センターなどが主催し、約三百人(主催者発表)が参加した。

 ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「(県環境影響評価審査会が)審査できないという方法書を提出するのはアセス法をないがしろにするものだ」と防衛局などを批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_02.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 1面

きょう1カ月ぶり普天間移設協

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第五回会合が十二日夕、首相官邸で開かれる。先月七日の前回から約一カ月ぶりの開催。アセス調査を円滑に進めて早期移設を実現するため、国と地元が互いに努力する、との趣旨を確認。政府は、北部振興事業費の執行条件である「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実施する」環境が整ったと判断し、本年度分の同事業費(百億円)の執行と、二〇〇八年度分(同額)の計上を表明するとみられる。

 協議会で県は、環境影響評価(アセスメント)方法書に関する県環境影響評価審査会の審査状況を報告。方法書の不備を指摘して沖縄防衛局に追加説明を求めたが、依然として審査会の納得いく回答が得られない状況を説明し、防衛省に誠意ある対応を求める。

 防衛省は飛行ルートや代替施設の付帯設備などを説明するとみられる。

 前回協議会で、県は「滑走路の沖合移動」について、アセスの中で(1)事業者の判断による任意の移動(2)知事意見を踏まえた移動―を求めたが、今回は踏み込んだ要求を控え、「可能な限りの沖合移動」という表現にとどめる。

 十二日の協議会では、「滑走路の沖合移動」や「普天間の危険性除去」に関し、具体的な協議は行われない見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_03.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 25面

米軍機飛行「赤ちゃん眠れない」/名護全域で騒音続く

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘機とみられる航空機が、十一日も断続的に名護市上空を飛行した。

 市基地対策室には「うるさくて赤ちゃんが寝付かない」(久志区の女性)、「なんとかしてほしい」(屋部区の女性)などといった苦情が、市民から寄せられた。ヘリによる騒音もあった。

 また、沖縄タイムス北部支社には辺野古区に住む男性から同日午後九時前、「ジェット機が旋回している。通常の訓練ではないのではないか」という訴えがあった。

 市街地でも午後九時ごろまで騒音が確認された。前日に続き市全域で騒音が発生したとみられる。

 同市は十日、沖縄防衛局を通じ米軍に訓練の改善を要請していた。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムス社の取材に対し、FA18が十二日まで嘉手納基地に滞在し訓練することを明らかにしているが、飛行コースや具体的な訓練内容については「運用上の保安のため」として、言及していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_04.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 1面

即時撤去求め決議/F15飛行停止

嘉手納町議会「墜落の危険性高い」

 【嘉手納】米空軍F15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止命令が出ている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日の十二月定例会最終本会議で、嘉手納基地所属のF15全五十三機の即時撤去を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 岩国基地(山口県)から海兵隊員約六百人とFA18戦闘攻撃機約三十機が参加し今月三日から七日まで嘉手納基地を拠点に実施された空軍と海兵隊の大規模合同即応訓練にも触れ、今後一切、同訓練や外来機の飛来をやめることを要求している。

 抗議決議などではF15は「機体の点検が終了した」として飛行を再開した十一月二十六日にも緊急着陸したことを指摘し「安全性が厳しく問われる事態」と強調。「構造的欠陥を持ち、墜落の危険性の高いF15の町民上空での飛行を断じて容認することはできない」と即時撤去を訴えている。

 F15は十一月二日に米本国で墜落。嘉手納基地所属のF15は同月四日から飛行停止。二十六日に飛行再開したが、二十八日に再停止。今月四日にはロンジロンに問題がある可能性があるとして三度目の飛行停止措置が取られている。十二日現在、嘉手納基地の二機を含む計八機にロンジロンの亀裂が発見されている。

 あて先は、嘉手納基地第一八航空団司令官、第一海兵航空団司令官、沖縄防衛局長ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_03.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 5面

FA18騒音 抗議決議へ/名護市議会があす訓練中止求める

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機とみられる航空機が十日から名護市上空での飛行を繰り返している問題で、名護市議会は十二日午前、軍事基地等対策特別委員会(渡具知武宏委員長)を開き、米軍などに対して民間地上空の訓練の即時中止を求める抗議決議を行うことを決めた。十三日の市議会十二月定例会で可決する見通し。

 委員会では、「騒音があまりにもひどい」「市民からの苦情も多い」などとの意見が出された。

 同市議会では二〇〇一年三月に、FA18戦闘攻撃機訓練に「名護市内空域における米軍機の訓練飛行の即時中止を求める決議」を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_04.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 5面

琉球王朝から米軍統治下まで 古銭40点 日銀に寄贈

 貨幣史研究家の山内昌尚さん(71)が、那覇市おもろまちに移転する日本銀行那覇支店に琉球王朝時代の銭貨や米軍統治時代の紙幣など約四十点を寄贈する。中でも珍しいのは、一九四五年に八月から十月にかけて久米島の米軍基地内で発行した「久米島代用紙幣金券」。数年前、山内さんが十年がかりで米国の業者を通して入手した逸品という。

 今回寄贈するコレクションは、これまで山内さんが学生時代から少しずつ集めたものの一部。十五世紀ごろ琉球王朝で使用された銭貨や中国からもたらされた渡来銭などの貴重な古銭や、戦後、米軍統治下に県内で流通したA円やB円も保存の良い状態で十五種類がそろっている。

 山内さんが古銭を集めるようになったきっかけは、終戦の翌年の四六年に友人からもらった二枚の天保通宝。穴の開いた楕円形の古銭に強烈な印象を抱き、それ以来古銭に興味を持つようになった。

 山内さんは「お金を見れば時代の変遷が分かる。人間の過去の生きた歴史を資料として保存しておきたい」と寄贈の意義を語った。

 二〇〇四年、山内さんは面識のあった当時の支店長と話しているうちに、おもろまちへ移転後の支店内で琉球王朝時代の貨幣の「歴史展示」構想が持ち上がった。山内さんは長年収集した貨幣の保存も考え、展示の協力を申し出た。

 山内さんは「県内にあまりないお金の資料を残すことは非常に重要。展示を見て、時代に興味を持って調べる人が出てくるかもしれない」と寄贈した貨幣が多くの人の目に触れることを期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_05.html