沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月16日から19日)

沖縄タイムス 社説(2007年12月16日朝刊)

[思いやり予算]

聖域化する余裕はない

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)をめぐる特別協定改定交渉で、日米両政府は光熱水料の一部を減額することで合意した。

 日本側は大幅減額を求めてきたが、米側が反発し、日本が譲歩した。インド洋での海上自衛隊による給油活動の中断、米国の北朝鮮のテロ国家指定解除への懸念などを踏まえ、対米配慮を優先したようだ。

 しかし、厳しい財政事情を背景に、日本側が強気で今回の交渉に臨み、大幅削減を要求してきた経緯を考えると妥協するのが早過ぎはしないか。腰砕けの感は否めない。

 特別協定改定には国会の承認が必要になる。積算根拠など不明な点が多く問題点を整理し、国会でさらに論議を深める必要がある。

 今回の合意によると、二〇〇八年度の光熱水料(現行二百五十三億円)は維持し、〇九、一〇年度は各四億円削減する。日本人従業員の基本給などの労務費(千百五十億円)と訓練移転費(五億円)は現状維持。

 また、二年間だった特別協定の期間を〇八年度から三年間に延長する。

 一方、思いやり予算のうち、特別協定とは別枠の日米地位協定に基づく提供施設整備費(四百五十七億円)と、各種手当など労務費(三百八億円)の来年度負担分については交渉中だ。

 日本側は一九七八年度から基地従業員の福利費などを負担。その後、従業員の基本給や光熱水費なども引き受けるようになった。特別協定と地位協定に基づく二〇〇七年度の思いやり予算は総額二千百七十三億円に上る。

 日米両政府は今回、「より効率的で効果的な駐留経費負担とするために包括的な見直しを行う」ことでも一致している。

 日本の駐留経費負担額は二〇〇二年当時で韓国の約五培、ドイツ、イタリアなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国全体の額を上回るなど、米国の同盟国の中でも突出している。

 さらに米海兵隊のグアム移転に伴う移転経費のうち、六十億九千万ドル(約七千二百億円)の負担問題もある。

 「同盟国の中で最も気前がいい」という米側の発言の背景に思いやり予算がある。「米国よりも安くつく」駐留経費は、沖縄の基地整理縮小を進める上で大きな障害にもなってきた。

 だが、駐留経費負担が始まった時点と比べて、日本の財政事情悪化は著しい。少子高齢化で社会保障費の負担増など国民負担が重くなる中で、駐留経費負担を聖域化する余裕はない。

 思いやり予算にメスを入れずに、大盤振る舞いを続けるようでは国民のコンセンサスは得られないだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071216.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間代替アセス 知事意見に「書き直し」を

 ここは素直に過ちを認めるべきだ。そして、方法書を書き直して環境影響評価法の手続きの仕切り直しに踏み切るべきだろう。それが、国が県民の信頼を取り戻す唯一の道ではないだろうか。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴い、環境影響評価(アセスメント)方法書を審議していた県環境影響評価審査会は14日、方法書の書き直しを国に求めさせることを明記した知事への答申をまとめた。内容を見ると、方法書は「具体的事業の記載が不十分であり、審査(の対象)たるものとなっていない」と手厳しい。

 これは裁判に例えれば、提訴の形式そのものがなっていない。つまり、審理以前の問題で、方法書が、いわば門前払い、あるいは却下されたに等しいことになる。

 審査会は17日にも知事へ答申する予定だ。今後の焦点は、その内容を知事意見に盛り込めるかどうか。これまで、折に触れ方法書の不備を指摘し続けてきた知事だが、ここは正念場を迎える。県民の意思に沿った判断が下せるか。知事の姿勢を見守りたい。

 これまでの経緯を見ると、ここまでこじれた責任は国にあると言わざるを得ない。そもそも、4月から強行している現況調査(事前調査)そのものが、アセスメント方法の決定(スコーピング)を欠いており、法律や条例に違反しているという専門家の指摘もある。

 さらに、方法書の前提となる施設の計画内容についても、国は情報開示を意図的にか、怠ってきている。200メートル余の護岸や弾薬搭載エリア、洗機場の建設など国は12日の普天間移設措置協議会で初めて明らかにした。当然、これらは方法書に盛り込まれていない。

 また、海兵隊の次期主力輸送機オスプレイ配備や民間上空の飛行についても、国はいまだに認めようとしない。これらの情報開示はむしろ、米側が交渉過程で求めてきた経緯がある。地元の理解を得るためにも開示すべきだとしていた。これを日本側がひたすら隠し続けて、結局、報道で明らかになったというのが実情だ。

 これら重要な計画内容が反映されていない方法書に「審査たりえない」との判断が下されたのは、当然といえば当然の結果だろう。

 環境影響評価法第28条(条例は25条)によれば、方法書の公告後から評価書の公告までの間に、「大きな事業の変更」があれば、方法書前の手続きに戻らなければならない、としている。オスプレイ配備や弾薬搭載エリア建設などが、この「大きな事業の変更」に当たるのは、常識的にみても明らかではないだろうか。

 国の側に勇み足がある、と見るのが自然だろう。知事は意見書に「書き直し」を盛り込むべきだ。

(12/16 10:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29778-storytopic-11.html

 

2007年12月17日(月) 朝刊 1面 

愛媛の団体、来月提訴/検定意見撤回と国賠請求

 文部科学省が高校歴史教科書から、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、「えひめ教科書裁判を支える会」などが呼び掛け、「違法な政治介入を行った」として、国(文科省)などを相手に、検定意見の違法確認と取り消し、損害賠償を求める訴訟を起こす方針であることが十六日、分かった。来年一月下旬までに愛媛県の松山地裁に提訴する。同問題をめぐっての訴訟の動きは、全国で初めて。国と同時に検定撤回などを求めず違法を放置した、として愛媛県教育委員会も訴える予定。

 今月中に原告参加者の第一次集約を行う。原告や支援者を募っている。

 同会は、同県で扶桑社の「新しい歴史教科書」が採択されたことなどで国や県に対しその取り消しや損害賠償を求める裁判などを支援している。

 同日、松山市民会館で行われた集会で、提訴の方針を示し、参加者に協力を求めた。また、9・29県民大会に愛媛から参加した人の報告もあった。

 同会連絡先になっている奥村悦夫さんは「文科省は、記述回復だけで、責任をあいまいに済まそうとしている。問題の根本を問いたい。全国でも同じような動きが起きて、問題解決への力になってほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712171300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月17日朝刊)

[防衛省裏金]

今度は公金くすねか

 守屋武昌前事務次官が汚職事件で逮捕された防衛省で、今度は裏金疑惑が発覚した。

 情報収集を主な目的とする「報償費」の多くを裏金に変えて、幹部や関係部局の裁量で使えるようにしていたというから開いた口がふさがらない。

 同省の公金管理体制は一体どうなっているのだろうか。

 国民の税金を、たとえ一部であれ自分たちの飲み食いに使うことが許されていいはずがない。ましてや裏帳簿まで存在するというのは悪質であり、これでは組織的に公金をくすねたと言われても仕方がない。

 石破茂防衛相は内部調査を進める方針を示している。

 当然である。不正経理はいつから始まったのか。各局にまたがるのかどうか。何人が関係し、どのように経費を粉飾してきたか―を徹底的に洗い出してもらいたい。

 判明した裏金のつくり方はこうだ。まず、大臣官房などが防衛省OBらの名前を情報を提供する協力者に見せ掛けて使い、職員が偽りの領収書を作成する。

 偽の情報提供者を接待したり毎月現金を渡していたように装い、架空の領収書を切って裏金を捻出する手法だ。

 工作は数十年間繰り返され、使い切れずに残された金は数千万円に上るという。裏金を見抜けなかった会計検査院の責任も指摘しなければなるまい。

 国機関の裏金問題では、接待や会議に裏金を流用したり職場の懇親会に使ったことが発覚した二〇〇一年の外務省が記憶に新しい。岐阜県庁や北海道庁、宮崎県庁など多くの自治体でも同じような問題があった。

 時系列を考えると、外務省が国民から糾弾されている際にも防衛省は裏金工作を続けていたことになる。あきれ果てた話であり、国民の信頼を裏切る行為と言わざるを得ない。

 報償費は前次官の問題ともかかわるはずだ。同省が抱える問題は深刻であり、疑惑の解明に国民の目が集まっていることを肝に銘ずるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071217.html#no_2

 

2007年12月17日(月) 夕刊 1面

県「移動50メートル不十分」/普天間代替

 県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)が十七日午前、開かれた。米軍普天間飛行場代替施設の建設をめぐって県が政府に求めている滑走路の沖合移動の範囲について、上原昭知事公室長は「五十メートルでは騒音軽減の効果が小さい。五十メートル以上(沖合に)寄せてほしい」と述べ、五十メートルの移動では不十分との見解を明らかにした。

 普天間代替施設の機能については「現在の普天間飛行場の機能が移設するというのが(政府と地元の)互いの確認内容。大幅な機能拡大はあってはならない」との認識を示した。

 普天間代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書について、県文化環境部の友利弘一環境企画統括監は「(県環境影響評価審査会で)予測や手法について不明瞭な点があるとの意見があり、私どももそのような認識だ」と述べ、県としても記載内容が不十分との見解をあらためて示した。

 小渡亨氏(自民)、嘉陽宗儀氏(共産)への答弁。

 方法書をめぐっては、県環境影響評価審査会が十七日午後、事業者の沖縄防衛局に対し方法書を書き直し、再提出するよう求める答申を県に提出する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712171700_03.html

 

2007年12月18日(火) 朝刊 1面

普天間代替 アセス書き直し要求/県審査会知事答申

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十七日、県条例の対象となる飛行場建設部分について「調査前に方法書を見直し審査・公表等の措置を取らせるべき」とし、事実上の書き直しを求める三十六項目二百八件の意見を仲井真弘多知事に答申した。

 答申を受け取った知念建次文化環境部長は「審査会の意見を知事意見に反映させるよう調整したい」と述べた。

 県は知事意見を二十一日に沖縄防衛局に提出する見込み。

 知事意見では、方法書に記載がなく、沖縄防衛局が新たに飛行場施設として追加した戦闘航空機装弾場などを、県条例で方法書の書き直しを強制する「大規模な修正」と見なすかが、答申の書き直し要求の実効性を左右する。

 答申案の「総括的事項」の中で指摘した調査前の方法書見直しと公表については、前文の中にも追加、繰り返し強調して求めた。

 また沖縄防衛局がアセス前に実施している現況調査についても「中止を含め検討する必要がある」と強い懸念を示した。

 津嘉山会長は「方法書は審査の材料として十分でなかった。答申は実質的に書き直していただきたいということ」と説明。書き直した場合の手続きについて「基本的には公開だ」と述べ、手続きのやり直しに当たる公告縦覧の実施を要望した。

 審査会は年明け早々、アセス法の対象となる残る埋め立て部分の審議を実施する。

 津嘉山会長は「必要があれば再度質問書もお願いする」とし、今後の審議でも方法書の不備を指摘していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712181300_03.html

 

2007年12月18日(火) 朝刊 2面

きょう入札公告/シュワブ隊舎解体・撤去工事

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、沖縄防衛局が十二月から着手を予定していた名護市キャンプ・シュワブ内の隊舎などの建設工事が来年にずれ込む見通しとなっていた問題で、沖縄防衛局は十八日、「建物建設工事に伴う既存建物の解体・撤去工事」の入札手続きを公告する。工事着手は来年二月五日に予定されている入札後に実施される。

 キャンプ・シュワブの代替施設予定地付近にある既存施設は、普天間代替施設建設に伴って、シュワブ内の内陸部分に移築予定。

 沖縄防衛局は今年三月、シュワブ内の移築に関する建築・設備・土木設計や、下士官宿舎の新設工事にかかる建築・土木設計の入札を実施。履行期限を「十一月末」に設定していたが、防衛省は「実施設計の調整を進める中で、米側との調整で時間を要している」とし、来年二月末に延長。

 既存施設の移築にかかる建設工事の着手時期について防衛省は「設計が終わらないと着手できない。設計業務の終了後、適切に着手していきたい」とし、来年三月以降にずれ込む可能性を示唆していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712181300_05.html

 

2007年12月18日(火) 夕刊 5面

知事意見に答申反映を/普天間アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)をめぐり、方法書の書き直しを求めた県環境影響評価審査会の答申を受け、基地の県内移設に反対する県民会議は十八日午前、答申を基に提出される知事意見で、沖縄防衛局に方法書の撤回を求めるよう要請した。

 県環境政策課の下地寛課長は「方法書に記載のない装弾場や洗機場が、書き直しの根拠となる県条例で規定された微修正の範囲を超えるかは、今のところ難しい」とし、法的に書き直しさせることは厳しいとの見方を示した。その上で「事業者は知事意見を勘案しなければならない」とし、法的根拠がない場合でも答申通りの厳しい知事意見が出れば、事業者は従うべきとの考えを強調した。

 県民会議は知事意見に(1)方法書の撤回(2)新たな方法書を基本計画確定後に再提出させる(3)沖縄防衛局の現況調査(事前調査)中止―などを盛り込むよう要望した。

 城間勝副代表は「審査委員が科学的に出した結論を、政治でトーンダウンさせてはならない」とし、知事意見に答申を反映するよう求めた。

 下地課長は「答申は、方法書審査では述べない現況調査への懸念もあえて答申しており、審査委員の思いが詰まっている。その気持ちを大事にして知事意見を作っていきたい」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712181700_04.html

 

2007年12月19日(水) 朝刊 25面

教科書検定/「再訂正」各社出そろう

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で十八日、都内で教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会が開かれた。各教科書会社から再訂正の申請が出そろったことを受けての開催とみられる。

 日本史小委員会では、審議委員に各社からの再訂正の内容について説明があったとみられるが、その可否についての結論は次回に持ち越した。

 関係者によると、少なくとも二社が、沖縄戦では住民に捕虜になることを許さなかった日本軍の方針が徹底されていたことなどの背景を付け加えた上で、「集団自決」には「軍の強制」もあったことを示す記述での再訂正を予定していた。

 ただ、同審議会は沖縄戦の「集団自決」について「直接的な軍命は確認できていない」として、「過度に単純化した記述」への懸念を示す指針を出しており、再訂正の申請に向けて教科書会社と文科省がやりとりする中で、記述が「軍の強制」を薄める内容に変更された可能性もあるという。

 渡海紀三朗文科相は記述訂正について年内には結果を示す方針で、教科書審議会の意見が決まるのを待って、来週内にも結論を明らかにするとみられる。


「つくる会」が不承認意見書


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「新しい教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)は十八日午後、文部科学省を訪れ、民間教科書会社から申請される訂正の「不承認」を求める意見書を提出した。

 藤岡会長は「文科省は検定意見は撤回せず、『過度に単純化した表現を認めない』としており、『軍の強制』を明示した表現は不承認とするのが当然の筋道である」などとした。同会が意見書として文科省に申し入れるのは四回目。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191300_01.html

 

2007年12月19日(水) 朝刊 2面

全駐労、格差給廃止に合意

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定改定に合わせた基地従業員の給与見直しをめぐり、全駐労(山川一夫委員長)と防衛省は十八日の三役交渉で、格差給、語学手当、枠外昇給制度を廃止し、退職手当を引き下げることを正式に合意した。格差給、語学手当に関しては、来年四月一日の施行日から五年間、廃止前に受けている額の五割を固定支給することを確認した。

 一方、経過措置として制度改正前に受けている基本給、格差給、語学手当の「合計額」を当面維持するが、昇給などで実際の給与額がこの「合計額」を超えるまでの間とする暫定的なものとなった。


     ◇     ◇     ◇     

特殊性 辛くも死守


 米軍基地で働く日本人従業員の給与見直しをめぐる全駐労と防衛省の労使間交渉で、最大の焦点となっていた「格差給」は廃止され、今後五年間その半分を固定して支給することで決着した。基本給と語学手当、格差給の「合計額」を保障する仕組みも獲得し、全駐労は既存の枠組み分を辛うじて維持した格好だ。ただ、実際の給与がその「合計額」を上回るまでの暫定措置で、昇給するごとに“うまみ”は減っていく仕組み。「苦渋の選択」で受け入れた全駐労だが、五年後の給与見直しをめぐる協議で問題が再燃するのは必至だ。

 全駐労によると、格差給は一九四八年、言語、風俗、習慣が異なるなど特殊環境の下で働くことに配慮し、当時の国家公務員の給与水準に10%上積みしたことに始まった。

 六三年には公務員俸給表を準用した現行の給与制度を確立した。

 引き続き特殊な環境を考慮し、新基本給の10%上積み額とすることが定められた。

 しかし、近年その「特殊性」が薄れてきたことや長年見直されてこなかったことなどを理由に、政府は在日米軍駐留経費負担の新特別協定改定に合わせて「格差給」の見直しに切り込んだ。


二面外交で調整


 日本政府は、新特別協定改定でアメリカと、同協定の枠外にある「格差給」などをめぐっては全駐労と、“二面外交”で調整を図ってきた。

 約三兆円に上るといわれる在日米軍再編経費などで予算の圧迫が今後予想される中、厳しい姿勢で臨んだ対米交渉だったが、日本人従業員の労務費や米軍施設の光熱水料、訓練移転費の大幅削減を事実上見送った。

 交渉の最中にアラビア海から海上自衛隊が撤収するなど、対米関係で守勢に回ったことが、事実上の「敗北」を喫した大きな要因だった。

 このため、日本側が負担し、米側の直接的な“痛み”につながらない「格差給」廃止など給与見直しに向けた財政当局の目は厳しさを増した。最終的には「歩み寄った」(防衛省幹部)とはいえ、格差給額は半減し、五年後以降の見通しは立っていない。


「闘い」終わらず


 全駐労は今回の交渉で「格差給」の全額分について、定年まで固定して支給するよう求めていたが、政府側は「固定して」支給する仕組みに強い難色を示し、妥結を長引かせた最大の要因となっていた。

 このため、格差給額の半分を支払う制度をいつまで続けるかについて年限が確認されておらず、五年後の見直し協議の重要なテーマとなることが予想される。

 「闘いは終わったわけではない」。全駐労の山川一夫委員長らは、そのほかの勤務条件の改善の必要性も指摘し気を引き締める。

 十八日の三役交渉では、年金制度や福利厚生の改善について「プロジェクトチームを設置し、有識者の意見を踏まえ具体化を図る」ことなども確認したといい、五年後を見据えた水面下の動きはすでに始まっている。(東京支社・島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191300_05.html

 

2007年12月19日(水) 朝刊 2面

泡瀬環境保全委/クビレミドロ生育成功

 中城湾港泡瀬地区埋め立てに伴う環境対策を検討する環境保全・創造検討委員会の海藻草類専門部会が十八日、那覇市内で開かれ、人工的に育てた絶滅危惧種の藻類クビレミドロが産卵し、第二世代の個体が生育していることが報告された。

 これまでの人工的生育では産卵は行われたが、その卵が成長することはなかった。

 人工的に育てたクビレミドロで産卵を繰り返す技術を確立すれば、同種の保護のほか、未解明部分の多いクビレミドロの研究も進むと期待されるという。

 同部会座長の野呂忠秀・鹿児島大教授は「海藻類で世界的に同様の成功例はマリモくらい。水生生物保護の手本になる可能性もある」と評価した。

 これは事業主体の沖縄総合事務局が行っているもので、実験室で育てたクビレミドロを屋外の実験プールに移植したところ、夏に産卵し、さらにその卵から新しいクビレミドロが生育しているのが今月になり確認された。また卵の状態でこのプールに移植したところ、ここでもクビレミドロの生育が確認された。

 会議ではこのほか、同地区の海底で二〇〇五年度から行われている、移植した海草の生育に適した環境づくりについての実証実験結果も報告され、波よけの構造物と一定量の盛り砂が海草定着法の一つとして効果があるとの結論を了承した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191300_09.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月19日朝刊)

[審査会答申]

知事意見に注目したい

 米軍普天間飛行場の代替施設建設のため防衛省がまとめた環境影響評価(アセスメント)方法書について、県環境影響評価審査会は、記載内容が不十分だとして書き直しを求める意見を県に答申した。

 これを受けて仲井真弘多知事は、沖縄防衛局に対し、二十一日までに知事意見を提出する予定である。

 知事意見に法的な拘束力はないが、政治的には、大きな意味を持つ。

 知事意見は、アセスの方法書に対する見解表明であるにしても、そのことを通して普天間問題と環境問題に対する知事の基本的な考え方が示されるわけで、知事の姿勢が問われる局面を迎えた、といえる。

 知事は昨年の知事選の際、普天間飛行場の移設問題について、地元の頭越しの日米合意を批判し、現行V字形案に反対することを明らかにした。しかし、普天間問題の争点化を回避するため、それ以上多くを語らず、意識的にあいまい戦略を採用して当選した。

 この一年間、「沖合移動」を主張してきたが、なぜ移動が必要なのか、仮に移動が実現したとして、その場合の受け入れ条件は何なのか、移動すればそれで済む話なのか、具体的な数字や事例をもとに説得力のある言葉で語ったことはない。

 一九九八年の県自然環境保全審議会の答申で、キャンプ・シュワブ沖水域は、自然環境の厳正な保護を図る区域として最も評価の高い「評価ランクI」に区分された。この水域に生息する世界的にも貴重なジュゴンは、絶滅危惧種の指定を受けている。

 こうした問題に知事がどのような考えと感度を持っているかが問われているのである。

 政府は第五回普天間移設協議会で、凍結していた北部振興事業費百億円を近く執行する方針を明らかにした。

 その一方で防衛省幹部は、環境影響評価審査会の厳しい答申をそのまま踏襲して厳しい知事意見を出してきた場合、「協議が円滑に進む状況でなくなるため北部振興事業の執行も見直さざるを得ない」と、露骨な脅しをかけている。アセス制度の趣旨を無視した不謹慎な発言というほかない。

 政府は来年二月からアセス調査に着手する考えだ。知事意見に対しても、どのような内容であれ「今後の作業に影響はない」と強気の姿勢を崩していない。だが、知事意見を無視してアセスを進めることは制度の形骸化を意味する。あってはならないことだ。

 この難しい局面に知事はどのようなメッセージを発信するのか。知事意見に注目したい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071219.html#no_1

 

2007年12月19日(水) 夕刊 1面

米軍訓練激化/県議会が抗議決議

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会の最終本会議が十九日開かれ、総額五十六億三千八百九万六千円の一般会計補正予算案、県立高校の授業料を引き上げる条例改正案、県立石嶺児童園の指定管理者を指名する議決案件、特別自由貿易地域の分譲価格を引き下げる条例案などを賛成多数で可決した。

 また、嘉手納基地での深夜・未明の戦闘機離陸や大規模即応訓練などの中止を求める「米軍の度重なる離陸と訓練の激化に関する抗議決議」案と意見書案を全会一致で可決。二十日にも、県内の米軍基地や国の関係機関に要請する。

 抗議決議は(1)嘉手納基地でのF15戦闘機や空中給油機の相次ぐ深夜・未明の離陸(2)F15の飛行停止につながった墜落事故や不具合(3)米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練に伴うFA18戦闘攻撃機など外来機の飛来やGBS(地上爆発模擬装置)訓練による騒音被害の増大―などを指摘。「基地負担の軽減に逆行するもので容認できない」と批判した。

 「地方議会議員の位置付けの明確化を求める意見書」「割賦販売法の抜本的改正を求める意見書」「ハンセン病問題基本法制定を求める意見書」を全会一致で可決。「道路財源の確保と道路整備の推進に関する意見書」も賛成多数で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712191700_02.html

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