月別アーカイブ: 2008年7月

県議会、辺野古移設反対を決議 「危険除去」で作業チーム/「普天間」協議 新基地反対決議/野党県議団が辺野古を訪問 日に離着陸223回/嘉手納目視調査 ホワイトビーチ、08年、原潜入港すでに24回目 嘉手納のF15が共同訓練へ離陸 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月19日から23日)

2008年7月19日(土) 朝刊 1面

県議会 辺野古移設反対を決議

野党の賛成多数で/基地固定化・環境破壊

 県議会(高嶺善伸議長)の六月定例会は十八日の最終本会議で、野党六会派が提出した普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書を野党の賛成多数で可決した。日米両政府の合意した現行案(V字形)に県議会が反対決議をしたのは初めて。決議・意見書は日米両政府や仲井真弘多知事に対し、新基地建設の断念を求める内容で、同飛行場の移設協議に影響を与えそうだ。

 後期高齢者医療制度の「廃止」を求める意見書も野党の賛成多数で可決された。

 新基地建設に反対する決議・意見書は、採決に先立つ質疑で与野党が対立。野党代表の玉城義和氏(無所属クラブ)は辺野古移設が基地の過重負担や固定化、自然環境破壊につながるなどの提案理由を説明した。

 与党の中川京貴氏(自民)、佐喜真淳氏(同)は「『普天間』を閉鎖・返還させるため、辺野古移設以外に方策はあるのか。具体的な対案がないままでは審議ができない」と詰め寄った。玉城氏は「危険な基地の一日も早い返還が県民的要求であり、県民世論を受けて対応するのが外交権を持つ政府の役割だ」と応じた。

 賛否の討論では与党の桑江朝千夫氏(自民)が「具体的対案もない『反対のための反対決議』であり、普天間基地の早期移設を否定し、その危険性を放置するものだ」と批判。

 野党側は照屋大河氏(社民・護憲ネット)が「たらい回し的に県内移設したところで抜本的解決にならない」、前田政明氏(共産)が「海外侵略の恒久的な米軍新基地を建設させてはならない」と支持を訴えた。

 採決は議長を除く四十七人で行われ、社民・護憲ネット、共産、社大・ニライ、民主、改革の会、無所属クラブの計二十五人が賛成し、自民、公明県民会議の計二十一人が反対。無所属の吉田勝廣氏は退席した。

 野党提出の後期高齢者医療制度の廃止等を求める意見書も、野党の賛成多数で可決された。


知事「誠に残念だ」


 仲井真弘多知事は十八日、県議会で米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書と、後期高齢者医療制度の廃止に関する意見書が可決されたことを受け、「誠に残念だ」とのコメントを発表した。

 普天間移設では「県としては現在の普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するためには、キャンプ・シュワブに移設することが現実的」として、シュワブ移設を原則的に容認する考えをあらためて強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_01.html

 

2008年7月19日(土) 朝刊 31面

V字案 初の「ノー」/傍聴席総立ち 大歓声

 日米両政府の合意したV字形滑走路案に、県議会が初めて「ノー」の意思を表明した。与野党逆転の県議会で十八日、賛成多数で採択された「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書案」。傍聴席で審議を見守っていた平和団体のメンバーたちは、採決の瞬間には総立ちとなって歓声を上げ、喜びを爆発させた。

 「賛成多数で採択されました」。午後三時すぎ、過半数を占める野党議員が起立し、高嶺善伸議長の声が議場に響いた瞬間、傍聴人たちは「うわー」と歓声を上げながら一斉に立ち上がった。拍手は一分間ほど鳴りやまず、あちこちで握手を交わしたり、隣の人と抱き合ったりする姿が見られ、ハンカチで顔を覆う女性もいた。

 この日は午前十時の開会時から、辺野古で座り込みを続ける住民や環境保護団体、反戦団体などのメンバーら約百五十人が詰め掛け、傍聴席は異例の満席になっていた。与野党議員の激しいやりとりに騒然とする場面が何度かあったが、昼の休会を挟んで二時間半にも及んだ審議をじっと見届けた。

 議場を出てきたヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は「名護市民投票ときょうの県議会決議こそが、沖縄県民の民意だ」と上気した表情で語った。「十数年間頑張ってきたおじい、おばあ、全員にとって大きな自信になる。何としてでも基地を造らせない。それが可能だと確信した」。そして、移設協議会のため上京している仲井真弘多知事には「大多数の県民は辺野古への新基地建設を望んでおらず、県議会も意思表示した。それでもなお辺野古の埋め立てを推し進めるならば、県民への裏切りでしかない」と力を込めた。

 「歴史的決議だ」。ジュゴンネットワーク沖縄の土田武信事務局長は大きく息を吐いた。議場が一時騒然としたこともあり「きょう中に可決できるか心配だった」という。「与野党が議論した上での決議なので、政治的インパクトは大きい。意見書にしっかりとジュゴン保護も明記された。すぐ建設中止にならなくても、今後ボディーブローのように、じわじわと流れを変えるだろう」と期待した。

 基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代共同代表も「県民の思いがつながり、議場で形となった。議員たちが起立した瞬間、体が震えました」と笑顔。「新基地建設は、沖縄を基地の島として存続させることでしかない。米兵犯罪で日常を脅かす現状を脱却するためには、基地を造らせないのは当たり前のこと。意見書採択は大きな一歩になったと思う」とかみしめるように語った。


地元冷静 思い複雑/名護


 【名護】県議会の「新基地建設反対決議」は、米軍普天間飛行場の移設問題で十年以上、揺れてきた地元に、複雑な波紋を広げた。

 一貫して反対してきた辺野古区の西川征夫さん(64)は「よかったとは思うが、これで国があきらめるわけではなく、手放しでは喜べない」と冷静に受け止めた。「この問題は地域の人間関係を壊してきた。ずるずる続くのではなく、早く解決してほしい。騒音や墜落の怖さを毎日感じて生活することはできないと思っていても、表だって反対とは言えない人も多い。辺野古が一致団結して、反対できればいいのだが」と話した。

 辺野古区の有志らでつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「県議会は反対しても地元は容認している」と強調。「海外でも国内でも普天間を受け入れるところがあればいいが、ないからこそ地域振興など条件つきで受け入れた。決議するのはいいが、本当に普天間を撤去できるのか根拠を示してほしい」と憤りを抑えるように言葉を継いだ。

 移設を容認する島袋吉和名護市長の後援会長、荻堂盛秀名護市商工会長は「県議会の立場での判断であり、コメントをする立場にはない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_02.html

 

2008年7月19日(土) 朝刊 1面

「危険除去」で作業チーム/「普天間」協議

国・県・名護市が合意

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第八回会合が十八日夕、首相官邸で開かれた。石破茂防衛相は危険性除去と建設計画・環境影響評価(アセスメント)について、それぞれ実務者で構成するワーキングチームを設置する方針を示し、県や名護市など地元と合意した。石破防衛相は「密接に意見交換しながら、検討を進めることが必要だ」と述べた。町村信孝官房長官は両ワーキングチームを今月中に発足させる意向を示した。

 協議会は冒頭の町村官房長官のあいさつを除き、非公開で行われた。

 会合終了後の記者会見で、仲井真弘多知事は「一歩前進。私が一年半言い続けてきたことが、一インチは動いた」とワーキングチーム設置の合意を高く評価した。

 石破防衛相は、県や名護市が求めた代替施設の沖合移動について、ワーキングチームで協議するかどうかは不透明との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_03.html

 

2008年7月19日(土) 朝刊 31面

県内14自治体 未作成/国民保護計画

弁護士会調べ 全国の3分の2

 戦争やテロなど有事の住民避難に備える国民保護法制で、自治体に義務付けられている国民保護計画を作成していない市町村が県内に十四市町村あり、全国で未策定二十一自治体の三分の二を占めていることが、沖縄弁護士会の調べで十八日までに分かった。米軍基地が身近に存在する県内で、国民保護計画に慎重な自治体の多さが際立った。

 同会がこのほど県内全市町村にアンケートしたところ、全体の65%に当たる二十七自治体が保護計画を策定していた。総務省消防庁の四月一日現在の調査では、県外では、長崎市など七自治体が作成していない。

 未作成の理由に、業務多忙を挙げるところが多いが、本紙の取材に対し石垣市は「離島のため武力攻撃に対応できる避難場所がなく、軍事基地・軍関連施設がなく武力攻撃の理由がない」などと説明し、今後も計画を作る予定はない。同市に隣接する竹富町は「離島という性格上、石垣市の協力が得られなければ避難計画を立てられない」として未策定だ。

 宜野湾市は「市の真ん中に米軍基地があり、住民の避難場所を設定するのも難しい。基地の危険除去が先」としている。沖縄市は「現在は、地域防災計画を充実させるために取り組んでいる。住民避難などは、防災計画を活用できる所もある」としている。

 計画を作成した市町村でも、避難住民救援のための備蓄を具体的に回答したところは六自治体だった。

 アンケートの詳細は、十九日午後三時から那覇市旭町のおきでんふれあいホールで行われるシンポジウム「軍隊と市民」(同会・九州弁護士会連合会共催)で報告される。問い合わせは沖縄弁護士会、電話098(833)5545。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807191300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月19日朝刊)

[移設反対決議]

民意に寄り添う判断だ


 県議会は六月定例会最終本会議で、米軍普天間飛行場の移設先として日米合意している「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議と意見書」を野党六会派の賛成多数で可決した。

 辺野古沿岸域へのV字形滑走路建設に日米両政府が合意してから県議会が反対決議するのは初めてだ。

 六月の県議選で多数野党を選択した有権者の意思があらためて決議になった形だが、意味は重い。直近の民意の表れと見ていいからだ。

 決議は、県の「自然環境の保全に関する指針」で移設海域が「評価ランク1」に分類されていると指摘。国の天然記念物で国際保護獣のジュゴンをはぐくみ、新たなサンゴ群落が見つかっているなどとして、世界に誇れる自然環境を後世に残し、引き継ぐことが県民の責務であると宣言している。

 決議によって仲井真弘多知事の姿勢は変わるだろうか。その可能性はほとんどない。

 知事は決議に先手を打つ形で、先の定例会見で「県外移設がベストだが、県内もやむなしと思っている」と従来姿勢に変化がないことを強調している。「北部が受け入れている間に移設することが最も近道だ」とも述べている。

 知事の立場は県民に理解されているだろうか。県民の大方は「明瞭でない」と見ているのではないだろうか。知事は、名護市辺野古沿岸域への移設そのものには反対ではない。ただ、日米合意しているV字形滑走路案を「沖合にずらしてほしい」と要望している。

 具体的に、どこに、どれだけ、ずらすのか。ずらすことによって、近くの住民や環境に与える負荷はどう変わるのか。説明はとても十分とはいえまい。これが知事の立場を分かりにくいものにしているのではないか。

 これに対し、仲井真知事は先の定例会見で「大浦湾に突き出ているものを引っ込めて出すという感じだ」という表現で、南西方向にずらした上で、あらためて沖合に移動する考えを初めて示した。

 仲井真知事が理由に挙げたのは大浦湾の環境保全だった。「(代替施設を)引っ込めないと海流が止まり、死ぬ状態になりかねない」と現行の移設案に懸念を示したのだ。

 ただ、大規模な埋め立てを伴う移設と環境保全が両立するのかという根本的な疑問は解消されないままだ。

 県議会の反対決議も、移設による環境破壊を最大の理由に挙げている。

 この日、首相官邸では政府と県、地元による移設協議会の第八回会合が開かれ、普天間飛行場の危険性除去と沖合移動について、政府と県がワーキングチームを設置することで合意した。

 いずれも仲井真知事や島袋吉和名護市長が求めていたものだが、危険性除去については沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落して約四年、知事に就任し三年以内をめどとした閉鎖状態を求めてから約一年八カ月たつ。遅すぎの感は否めない。知事は「半歩前進」と評価したが、メンバーも具体的な議論もこれから。先行きはまったく不透明だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080719.html#no_1

 

2008年7月20日(日) 朝刊 2面

「観光庁出先 沖縄に」/二階総務会長が言及

 自民党の二階俊博総務会長は十九日、那覇市内で開かれた同党県連大会に出席し、十月に発足する観光庁について、「仲井真弘多知事は観光客一千万人を公約に掲げている。実現すれば各事業、市町村が活性化する。観光庁の出先を沖縄に設置するように対応していきたい」との認識を示した。

 米軍普天間飛行場問題については「町村信孝官房長官は『必要な予算は来年度も確保する』と述べ、政府の責任者として対応する」と説明した上で、「同問題は県民の意向に沿う対応が必要だ。県民だけではなく、全国民の問題としてとらえることが大事だ」という考え方を示した。

 相次ぐ米軍人・軍属の事件・事故には「安心・安全な県は観光客一千万人の公約実現にも欠かせない」とし、泉伸也国家公安委員長に沖縄県警の警察官増員を求めたことを明らかにした。泉委員長は「警察庁に指示した」とし、前向きな姿勢を示したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_01.html

 

2008年7月20日(日) 朝刊 2面

具志―翁長体制が始動/自民県連大会

 自民党県連(具志孝助会長)は十九日、那覇市内のパシフィックホテル沖縄で第三十九回県連大会を開き、党再生と那覇市長選、浦添市長選、衆院選の勝利をアピールした。米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への早期移設と同飛行場の全面返還、後期高齢者医療制度の見直しをそれぞれ決議した。具志会長、翁長政俊幹事長らの新役員体制が正式にスタート。衆院沖縄1区は公明党と調整し、公認候補を擁立すると表明した。

 二十二代会長に就任した具志氏は「昨年七月の参院選、六月の県議選で敗北し、県連発足以来最大の危機に直面している」とし、「各支部、経済団体、地域団体とのコミュニケーションを再構築し、地域の実情に沿った政策策定で県連組織の早急な立て直しを図る」と訴えた。

 政策は(1)自立経済に向けた産業振興と雇用創出の促進(2)米軍基地の整理縮小と跡地利活用促進(3)観光振興と那覇空港滑走路の拡張整備―など十項目を挙げた。経済分野では中小企業経営安定対策や原油価格高騰対策の推進、基地問題は普天間飛行場の移設作業促進と跡地利用計画の早期策定を盛り込んだ。

 活動方針は那覇市と浦添市の市長選の勝利、衆院選に備えた即応体制の構築、組織活動の地域への浸透などを決めた。

 大会アピールでは「県連は大きな危機に直面し、存亡の危機的状況にある」と訴え、「県民の声を真摯に受け止め、県民のための政策を着実に実行し、信頼される県連を再構築し、夢と希望を持てる県づくりにまい進する」と宣言した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_02.html

 

2008年7月20日(日) 朝刊 23面

軍論理 優先に警鐘/改憲想定 那覇でシンポ

 憲法改定で自衛隊が「軍隊」として法体系に組み込まれた場合の、市民社会との関係を考えるシンポジウムが十九日、那覇市のおきでんふれあいホールであった。県内の弁護士らが二〇〇四年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故などを例に、市民の安全が脅かされる場面でも「軍の論理」が優先される可能性を指摘。危険性を見据えた上で、議論する必要性を訴えた。九州弁護士会連合会と沖縄弁護士会の共催。

 複数の弁護士が、千葉沖の海自イージス艦と漁船の衝突事故では海上保安庁が捜査できたが、沖国大の米軍ヘリ事故では警察権が及ばなかったことを例示した。

 新垣勉弁護士は、〇一年米同時多発テロ以降のパトリオット(愛国者)法により、米国では情報収集の名目で電話盗聴などが行われ、個人情報が政府に管理されているとし、「恐怖と不安を利用して有事システムがつくられる。沖縄社会が軍の歴史から学んできたことを見つめ直さねばならない」と訴えた。

 9・11テロ後の米社会を取材したジャーナリストの堤未果さんが講演。戦争自体が民営化し、貧困層を「モノ」として扱って戦場に追いやる社会構造があると指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_08.html

 

2008年7月20日(日) 朝刊 22面

「激動の時代」関心高く/米軍占領「初めて知った」

 【東京】戦後の沖縄の世相や軌跡をつづる「タイムスアーカイブ あんやたん写真展」が十九日、東京都多摩市のパルテノン多摩で始まった。米軍基地と対峙してきた沖縄県民の歩みを写した八十八枚の写真が展示され、大勢の市民が熱心に見入っていた。二十七日まで。

 「ドキュメント基地と沖縄」と題し、多摩市平和展(主催・同市、同展市民会議)の企画の一環として行われた。同市民会議が沖縄タイムス創刊六十周年記念の写真展を知り、多摩市での開催を申し込んだ。あんやたん写真展の県外開催は初めて。

 会場には祖国復帰運動の混乱やコザ騒動、一九九五年に起きた米兵暴行事件に抗議する県民大会などの写真が並び、当時の臨場感を伝えた。

 時代ごとに区分され、県内のあんやたん展に先行して、九〇年代や二〇〇〇年代の写真も展示。

 〇四年の沖国大への米軍ヘリ墜落事故の翌日の本紙朝刊が資料として置かれた。

 戦争被害や米軍犯罪の理不尽さに怒りで燃え上がる県民をとらえた写真を、来場者が説明文を読みながらじっと見つめていた。ハンカチで目をぬぐいながら見入る女性も。

 同市民会議の阿部裕行さんは「米軍の事件・事故など米軍統治下と今もほとんど変わっていない。沖縄の人がなぜ怒っているのか、本土の新聞が伝えないことを来場者に知ってほしい」と企画の意図を話した。

 同市内から訪れた会社員の山崎恭子さん(30)は「外国に長く占領されていたことを初めて知った。日本人でありながら日本ではないことは、本土にいると想像できない」と驚いた様子で語った。

 家族と来場した女性(67)は「テレビで見聞きしていたが、実際に写真で見ると言葉にならない。沖縄の人は激動の時代を生き抜いて来たんだなと感じる」と目を潤ませた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807201300_09.html

 

琉球新報 社説

普天間移設協 打開策は県外移設しかない 2008年7月20日

 一体、いつまで小手先の策を見せるのだろう。在沖米海兵隊普天間飛行場を5年ないし7年で返還する、と合意した1996年の日米特別行動委員会(SACO)から、早くも12年近い歳月が流れている。にもかかわらず、作業は遅々として進まない。計画そのものに欠陥があった、と疑問を持つのが普通だ。

 しかし、日本政府や米側はそうは考えないらしい。一度決めたら何が何でも実行する。こんな、かたくなな姿勢ばかりが目立つ。

 18日の政府と沖縄側が話し合う普天間移設措置協議会(主宰・町村信孝官房長官)で、2つのワーキングチームの設置が決まった。現飛行場の「危険性除去」と、代替施設の「建設計画」を検討する両作業部会だ。仲井真弘多知事が主張する3年をめどとする閉鎖状態の実現と、代替施設の沖合移動を念頭に置いたものだという。

 この2つについて、政府はこの間、ほとんどゼロ回答に終始してきた。なぜ、今になって「一歩前進」(仲井真知事)という行動に出たのか。県議会の与野党逆転という現実が背景の一つにあるのは間違いない。もしそうであるならば、民意に配慮する、という政府の思惑があることになる。

 民意への配慮ということであれば、さらに踏み込むべきだ。折しもこの日、沖縄県議会は名護市辺野古への新基地建設に反対する意見書・決議を賛成多数で可決している。議会の意思が民意、ということに誰も異論はあるまい。

 ここは原点に返る必要がある。なぜ普天間飛行場の返還が取りざたされているのか。言うまでもなくその「危険性」ゆえだろう。住民地域のど真ん中に位置するこの飛行場の危険性については、これまで何度も問題視されてきた。

 2003年11月、来県したラムズフェルド米国防長官が普天間飛行場を視察。その危険性を指摘したのは記憶に新しい。それを裏付けるかのように、1年足らずして米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落している。危険性は今でも何も変わらないし否定する人もいない。

 ここまで分かっていながら、打開策を見いだせないのは、明らかに政治や行政の怠慢ではないか。

 返還問題が、ここまでこじれた原因ははっきりしている。返還の条件が県内移設だからだ。危険性のある施設は、どこに持っていっても危険なのに変わりはない。

 問題を解決するには、何度も言うように県外移設しかない。県議会での論議で与党は野党に対し対案を示せと迫った。しかし、それは筋違いの話だ。日米安保は国民の安全を守るためにある。安保のためにある基地が県民を危険に曝(さら)す。その矛盾の解決を県民は求めている。解決の義務は、県民にではなく日米両政府にある。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134382-storytopic-11.html

 

2008年7月21日(月) 朝刊 21面

新基地反対決議/野党県議団が辺野古を訪問

 【名護】県議会の野党議員団が二十日、普天間飛行場の移設先である名護市辺野古を訪れ、県議会六月定例会で可決した新基地建設に反対する決議・意見書について、座り込みを続けている「命を守る会」と「ヘリ基地反対協議会」のメンバーなどに報告。「地元と議会が連携し、新基地建設の阻止に向けて取り組もう」と激励した。

 十八日の可決から間髪を入れず現場を訪れようと、社民・護憲ネット、共産、社大・ニライ、民主、無所属クラブの各会派から約十五人の県議が駆け付けた。

 辺野古で反対運動を続けている嘉陽宗義さん(85)と、妻の芳子さん(80)夫妻も参加。宗義さんは今回の決議について「感謝してもしきれない。子や孫の世代のためにも、皆さんには頑張ってほしい」と呼び掛けた。議員団の一部は、船に乗り基地建設予定地の大浦湾を視察した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807211300_04.html

 

2008年7月21日(月) 朝刊 20面

合法入国で違法就労/比国会議員ら 暴行事件の調査報告

 【読谷】二月に沖縄市内で、米兵がフィリピン人女性に暴行した罪で書類送検され、不起訴処分となった事件の調査などのため来沖している同国のリザ・ラルゴーザ・マサ国会議員らが二十日、読谷村内の教会で報告会を開いた。事件後、被害女性がフィリピン政府による十分な支援を得られていなかったとし「海外で働く国民を守るよう政府に働き掛けたい」と話し、県民への支援も呼び掛けた。

 同国女性党党首を務めるラルゴーザ・マサ議員らは被害女性や、事件現場のホテル、女性が働いた店など関係者から事情を聴取した。女性は興行ビザでダンサーとして入国したが、接客業もさせられていたことなどを報告した。

 マサ議員は合法な入国でも違法な就労実態につながっていることを指摘し、「政府に支援を働き掛け、同じような境遇の女性を助ける運動を続けたい」と話した。

 海外で働くフィリピン人支援のNGOで日本担当のルイシット・ポンゴスさんは第一に罰せられるべきなのは事件を起こした加害者だと強調した上で、違法な就労は店の雇用主や仲介業者、日本政府にもそれぞれに責任があると述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807211300_06.html

 

2008年7月22日(火) 夕刊 5面

嘉手納の実態目視調査/基地対策協 F15、99デシベル超

 【嘉手納】米軍嘉手納基地の運用実態を把握するため、嘉手納町基地対策協議会調査部会(大城和子部会長)の目視調査が二十二日午前、始まった。

 同基地滑走路が見渡せる同町屋良の「道の駅かでな」で午前六時から午後十時まで、離着陸回数や機種、騒音、飛行ルートなどを調べる。

 同協議会は基地から派生する被害を排除し、静かで平和な町をつくることを活動目的としており、目視調査は同協議会として初の取り組み。同会では「騒音被害の改善のため、今後も継続して実施したい」としている。

 同日は午前十一時までに、同基地所属のF15戦闘機やKC135空中給油機が飛行。外来機を含む航空機の離着陸は計六十回あった。騒音の最高値はF15が離陸した十時十三分に九九・七デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を計測した。

 大城部会長は「基地の運用がどのようになっているのか不明な部分が多い。目視調査の結果をデータとして残し、町民全体で基地を考えるきっかけにしたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807221700_02.html

 

2008年7月23日(水) 朝刊 28面

日に離着陸223回/嘉手納目視調査

 【嘉手納】米軍嘉手納基地の運用実態を把握するため、嘉手納町民で組織する同町基地対策協議会(金城睦昇会長)が同町屋良の「道の駅かでな」で、二十二日午前六時から午後十時にかけて行った目視調査で計二百二十三回の離着陸が確認された。調査に立ち会った町の担当職員は「過密な基地運用の実態があらためて浮き彫りになった」としている。

 同日は同基地所属のF15戦闘機、KC135空中給油機のほか、同基地以外からの外来機も飛行。

 着陸後にすぐに離陸する「タッチアンドゴー」や旋回訓練なども確認された。

 騒音の最高値は同午前十時十三分に、南側滑走路から北谷町方向へ離陸したF15が九九・七デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を計測した。

 調査には同協議会調査部会(大城和子部会長)のメンバーが参加。離着陸回数や機種、騒音、飛行ルートなどを調べた。

 嘉手納町が二〇〇七年度に独自で計三日間実施した目視調査では、離着陸を計で五百五十七回確認、一日平均は百八十五回だった。〇七年度調査の平均値を上回った今回の調査結果について、町は「離着陸回数も多く、予想された結果。今回のデータを精査し、基地被害の改善などに反映させたい」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231300_03.html

 

2008年7月23日(水) 朝刊 2面

来年度予算に16億円/那覇・宮古島 旧軍飛行場対策

 旧軍飛行場用地問題の対策事業について、県基地対策課は二〇〇九年度概算要求に、那覇市鏡水と宮古島市富名腰、七原、腰原のコミュニティーセンター整備事業を先行して盛り込む方針を固めたことが、二十二日までに分かった。財源は、沖縄特別振興対策調整費を活用する。関係者によると、事業期間はいずれも二年になる見通しで、総額十六億円余が計上される予定だ。

 今回、対象となるのは、那覇市の「旧小禄飛行場字鏡水権利獲得期成会」と、宮古島市の「旧宮古海軍飛行場用地等問題解決促進地主会」。

 鏡水の期成会は、保健センターや市民会館建設も要望していたが、県は厳しいとの見解を示している。ただ、コミュニティーセンターは那覇市民全体の保健事業や講座などが開催できるような多目的利用施設を目指す。

 宮古島市は、用地接収によって地元共同体が分散化を余儀なくされたことから、コミュニティー再構築や活性化を目的に、三集落のコミュニティーセンターや御嶽、集落内の道路整備を要望する方針だ。

 一方、ほかの七地主会について県は、関係市町村と協議して条件が整い次第、一〇年度以降の概算要求に盛り込む意向だ。

 だが、那覇市大嶺の旧那覇飛行場用地問題解決地主会は「財源が沖縄特別振興対策調整費では戦後処理事業に見合わない」として特別枠設置を求めており、市と協議のめどがついていない。そのほか、個人補償を求めている地主会もあり、先行きは不透明だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231300_04.html

 

2008年7月23日(水) 朝刊 2面

原潜入港すでに24回目/ホワイトビーチ 08年

 県に入った連絡によると、米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦アッシュヴィル(六、〇八二トン)が二十二日午前十時九分、うるま市勝連平敷屋のホワイトビーチに入港、接岸した。原潜の年間寄港回数は、過去最多だった昨年に並ぶ二十四回に達した。

 寄港増の要因について、県基地対策課は外務省に問い合わせているが、「米軍の運用上の理由」として把握できていない。

 文部科学省の調査によると、放射能の値は平常値と同じだった。アッシュヴィル寄港は六月二十六日以来。目的は明らかにされていない。

 原潜の寄港回数は、県が一九六八年から統計を取っている。二〇〇四年は十七回、〇五年と〇六年はそれぞれ十六回とほぼ横ばいだったが、昨年は二十四回に増えていた。今回の寄港により、復帰後の総計は三百二回目となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231300_08.html

 

2008年7月23日(水) 夕刊 1面 

嘉手納のF15が共同訓練へ離陸

 米軍嘉手納基地は二十三日、第一八航空団第六七飛行中隊のF15戦闘機六機が、航空自衛隊第三航空団と共同訓練を行うため、三沢基地(青森県)へ離陸したと発表した。

 在日米軍再編に盛り込まれた訓練移転の一環。防衛省によると、自衛隊はF2戦闘機とF4戦闘機それぞれ約四機参加し、三沢東方空域や秋田西方空域での戦闘訓練を三十日まで行う。

 嘉手納基地報道部は、訓練移転の目的を「嘉手納運用による地域への影響を軽減しつつ、運用即応力と二国間の相互運用力を高める」ためと説明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807231700_02.html

航空ショー、県民を危険にさらすな 米領事館に火炎瓶 中学社会科にも「沖縄戦」 民主沖縄ビジョン、絵に描いたもちでは困る 残留2県系人、比国から来日 新基地反対決議を提出/県議会野党会派 10年にアセス着手 辺野古移設反対可決へ など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月13日から18日)  

琉球新報 社説

航空ショー 県民を危険にさらすな 2008年7月13日

 米空軍嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ司令官が、嘉手納基地を一般開放する来年のアメリカフェストで航空ショーの実施を検討していることを明らかにした。

 編隊を組んで宙返りなどを繰り返す曲技飛行の危険性は、墜落事故が後を絶たないことからも明らかだ。嘉手納基地上空で実施されれば一般県民を生命の危険にさらすことになる。周辺への騒音被害も計り知れない。断じて容認できる話ではない。米軍は速やかに航空ショーの実施案を撤回すべきだ。

 嘉手納基地では住民の反対もあって20年以上、曲技飛行は行われていない。

 2004年に米空軍のサンダーバード飛行隊による航空ショーが計画されたが、地元の沖縄市、嘉手納町、北谷町などが強く反対したため中止に追い込まれた。こうした経緯があるにもかかわらず、再び航空ショーの可能性に言及した基地司令官の神経を疑う。

 今回も地元首長は安全面と騒音被害の両面から反対の意思を示した。ところが嘉手納基地は「話し合う機会を持たずして否定的な見解を示したことを残念に思う。飛行デモンストレーションは米本国や欧州の基地で安全に行われている」などと強弁。開き直りとも取れる姿勢を見せている。

 米サウスカロライナ州では昨年4月、航空ショーで飛行中の米海軍機が墜落し操縦士一人が死亡した。ほかにも多くの死傷事故が起きている。何をもって安全と言うのか。沖縄で同様の惨事が起きないという保証はどこにもない。

 航空ショーが蒸し返される背景として、96年に日米が合意した「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」(騒音防止協定)の不備を指摘しなければならない。

 「空戦訓練に関連した曲技飛行は行わない」と明記する一方で「あらかじめ計画された曲技飛行の展示は除外される」とし、航空ショーを容認しているからだ。

 この合意がある以上、嘉手納基地で航空ショーが実施される懸念は消え去ることがない。すべての曲技飛行ができなくなるよう騒音規制措置を早急に改めるべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134135-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

メア発言 こんな米総領事、要らない 2008年7月13日

 米軍占領下の沖縄には高等弁務官という軍人のポストがあり、琉球列島米国民政府のトップとして絶大な権力を振るっていた。「沖縄の自治は神話にすぎない」。こう発言して県民の反発を買っていたのが、政治・経済面でさまざまな強権を行使したキャラウェイ高等弁務官だ。

 半世紀近くも前の話を持ち出したのは、ほかでもない。最近、かの「悪代官」もかくや、と思わせるような人物が現れている。時代錯誤的な言動が目につくケビン・メア在沖米総領事のことだ。

 米軍普天間飛行場の危険性に関して、総領事は11日「滑走路近くの基地外になぜ、宜野湾市が(住宅)建設を許しているのか疑問がある」と、従来の持論を繰り返した。つまり「基地の近くに後から勝手に住宅を造る住民と、それを許可している宜野湾市が悪い(だから騒音があろうが危険があろうが、米軍に責任はない)」などと、こう言いたいのだろう。

 爆音訴訟で日本政府が主張している「危険への接近」理論と同じ理屈だ。普天間飛行場が米軍内部の安全基準に違反しているとする伊波洋一宜野湾市長の指摘にも反論したつもりかもしれない。何と独善的な考え方なのか。普天間基地がどういう経緯でできたのか知らないわけでもあるまい。単なる無知なのか。知っていながら知らないふりをしているのか。

 宜野湾市伊佐浜では戦後、米軍がブルドーザーと武装米兵による銃剣で住民を脅し追放した。抵抗する住民を暴力で退けて家屋や農地を破壊、その後にキャンプ瑞慶覧を強引に建設した。先祖伝来の土地を追われた住民は、うち10家族がブラジルへの移住を余儀なくされた。何もない原野に基地が造られたわけではない。普天間飛行場も似たようなものだ。戦後、住民が避難先から戻ると、すでに基地が建設されていた。

 総領事が責任逃れの根拠とする「危険への接近」論。6月の普天間爆音訴訟の判決でも「沖縄本島において居住地を選択する幅が限られており、普天間飛行場周辺の歴史的事情が地元回帰意識を強いものとしている」と明確に退けられている。土地を収奪された歴史的な背景を理由に、基地周辺に住宅を建設した住民に責任はないとしているのだ。

 あらためて考えてみたい。総領事(館)の役割とは何なのか。赴任地の住民との友好親善が第1の目的と理解する。いたずらに挑発を繰り返し、地元との摩擦を大きくすることではないはずだ。

 「外交官の基本はうそをつかないこと」。メア氏はあるインタビューで述べている。だが無知を基礎にした正直さほど始末に負えないものもない。平成のキャラウェイ気取りはやめてもらいたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134136-storytopic-11.html

 

2008年7月14日(月) 夕刊 5面

米領事館に火炎瓶/芝生焦がしバイク逃走

 十四日午前一時十五分ごろ、浦添市当山の米国総領事館敷地内に「火炎瓶のようなものが投げ込まれた」と目撃者の男性から一一〇番通報があった。警察や消防が駆け付けたところ、同館敷地内の芝生が焦げていた。けが人はなかった。県警によると、米領事館への火炎瓶投げ入れ事件は初めてという。

 浦添署の調べでは、領事館に面する市道から敷地内に火炎瓶らしきものが一本投げ込まれ、コンクリート製の台に当たって発火。建物から約三十メートル離れた芝生縦三十センチ、横三十センチの範囲が燃え、数分で自然鎮火したという。

 目撃者によると「ガチャン」というガラスの割れる音がして炎があがった後、グレーの服で白色ヘルメットを着用した人物が黒のスクーターで逃げたという。同署が火炎瓶処罰法違反事件として、現場から逃げた人物の行方を追っている。

 在日米国大使館は十四日、大使館や沖縄を含む日本国内五つのすべての領事館の業務を臨時休館と決めていたため、ビザやパスポートなど窓口業務は行われていない。

 ケビン・メア総領事は「ケガ人が出なかったのは幸いだが、こういう行動は許せない。県警が捜査中で、県警の協力に感謝したい」とコメントした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807141700_03.html

 

2008年7月14日(月) 夕刊 1面

県警警らの強化を要請/米軍人等犯罪

 【東京】仲井真弘多知事は十四日午前、増田寛也総務相や泉信也国家公安委員長らを訪ね、米軍関係者の犯罪防止策として沖縄県警の警ら業務を行う人員を増やし、装備や機材などを手厚くするよう要望した。増田総務相は「要請を踏まえ、事務的に詰める」と述べた。泉公安委員長も「安全・安心な社会をつくれるよう、よく研究したい」との考えを示した。仲井真知事は「米軍人などが多数出入りする地域での警戒力を向上することが、急務かつ重要だ」と指摘した。

 県は今年二月の米兵暴行事件を受け、「米軍人等犯罪防止に向けての考え方」として七項目、計二十一の防止対策を提起していた。要請では、「警察の取り組み強化」として、渉外機動警ら隊の人員増強や装備・機材の充実、米軍施設周辺の緊急配備支援システムの整備などを求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807141700_04.html

 

2008年7月14日(月) 夕刊 4面

自衛隊誘致に警鐘/宮古島市で9条シンポ「市民対立あおる」

 【宮古島】大学人九条の会沖縄とみやこ九条の会は十三日、宮古島市中央公民館でシンポジウム「憲法を守り、どう生かしていくか?憲法九条と自衛隊を考える?」を開催した。市民ら約八十人が参加。

 自衛隊基地を誘致した場合の自治体の変容や市民生活に与える影響が指摘された。誘致によって市民が二分される危険性や、米軍との共同使用などへ警鐘を鳴らした。

 大学人九条の会沖縄事務局長の徳田博人琉球大学法科大学院教授は、自衛隊基地を誘致している県外自治体の事例を挙げ、自治への自衛隊の影響力の大きさや騒音被害など住民生活へのリスクを指摘。「市民の対立をあおる構造が生まれる」と懸念を示した。

 一方、同市の地下ダム建設や島おこしの取り組みを高く評価。憲法上での国と自治体の対等関係を強調しながら、基地誘致による国の補助金に頼らない同市の在り方を提案した。同会代表の高良鉄美同大学院教授は、法律の中にある「自衛隊等」の中に米軍も含まれているとして、自衛隊基地で米軍との共同訓練の可能性を示唆。「米国も日本も国益で動く。そこに地域住民の存在はない」と断じた。また、住民自治の障害になっている米軍普天間飛行場を例に挙げ、宮古島市民主体のまちづくりを訴えた。

 みやこ九条の会の仲宗根将二代表世話人は、下地島空港建設の経緯などを説明して、屋良確認書の重要性を語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807141700_06.html

 

2008年7月15日(火) 朝刊 1面

中学社会科にも「沖縄戦」

 【東京】文部科学省が十四日に公表した中学社会科の新学習指導要領の解説書に、小学社会科と同様に、「沖縄戦」が新たに明記されたことが分かった。加えられた文言は小学校の解説書と全く同じ。同省は年内にも新指導要領が策定される高校についても「基本的に同じような考え方で対応する」としている。

 中学社会科の解説書では、歴史的分野の「近代の日本と世界」の項目で、第二次世界大戦などに関して、日本がアジア諸国に損害を与え、日本国民も大きな戦禍を受けたことを記述。

 戦禍の具体例として「各地への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原子爆弾の投下など」との一文を加えた。

 同省は「昨年の教科書検定を受けて、文科相が『(沖縄戦を)しっかり教えていくことが大事であり、それに努める』と談話を出したことを具体化するために盛り込んだ」と説明。「解説書に明記したことで、教科書の記述が充実され、教諭がしっかり授業で取り上げるようになるのではないか」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807151300_02.html

 

琉球新報 社説

民主沖縄ビジョン 絵に描いたもちでは困る 2008年7月15日

 民主党は、このほど決定した「沖縄ビジョン2008」で、日米地位協定の改定や米軍普天間飛行場の県外、国外移設を目指す姿勢を打ち出した。

 自立型経済を構築するため一国二制度的な制度を積極的に検討するほか、国庫補助負担金制度を廃止し一括交付金にすることも、沖縄県をモデルケースとして取り組むという。

 ビジョンを具体化できれば沖縄振興に弾みがつくのは間違いない。重要なのは、本当に実現できるかどうかという点だ。

 とりわけ、普天間飛行場の県外、国外移転は民主党内にも見解の相違があり、次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に盛り込むかどうかは現時点で不透明だという。

 普天間飛行場をめぐっては仲井真弘多知事も、知事選の公約の中で「県外移設がベスト」と言い切っている。それが困難だと判断したから、県内移設を容認する立場を取っているわけだ。

 沖縄ビジョンは「普天間基地の移転についても、県外移転の道を引き続き模索すべきである。戦略環境の変化を踏まえて、国外移転を目指す」と明記した。

 狭い県土に米軍基地をたらい回しで建設するのは、移設先に新たな危険と騒音被害をもたらす。国外や県外へ移せるというのなら、これ以上のことはない。

 日米両政府は2006年、V字形に2本の滑走路を備えた普天間飛行場の代替施設を2014年までを目標に、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設することを盛り込んだ在日米軍再編計画を合意している。

 普天間を県外や国外に移転させるには、まず、この合意を根本から見直すことが不可欠だ。

 政権交代のあかつきには必ず実現するという強い決意の下に、米国と交渉し県外移設、国外移設の道筋をつけるべきだ。

 だが、民主党の沖縄ビジョンに対し、政府内には「実際に政権を取ればその通りにはいかない」との冷ややかな見方もある。

 既成の枠にとらわれた官僚の思考パターンからすれば「できるわけがない」という結論しか導き出せないのだろう。

 この際、ビジョンの内容を政権公約の柱に据えて、沖縄の基地問題解決に不退転の姿勢を示してもらいたい。そうでなければ、せっかくのビジョンも絵に描いたもちに終わりかねない。

 政権交代を目指す野党第1党の民主党がこのような沖縄ビジョンを策定することは、沖縄が抱える多くの問題を全国に知らしめ、理解を広げる上で大きな意義がある。

 これを契機として、県内移設を伴わずに普天間飛行場を返還させるべきだという国民的世論が高まることを期待したい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134210-storytopic-11.html

 

2008年7月16日(水) 朝刊 29面

残留2県系人 比国から来日/タカラ・ウエハラさん

 【東京】太平洋戦争前や戦中、フィリピンに渡った日本人の子で、戦後現地に取り残された県系人とみられる二人が十五日、来日した。ほかの日系人十四人とともに新たに日本国籍をつくる「就籍」手続きを取る。県系人らは「日本に来ることが夢だった」と笑顔を見せた。

 県系人とみられるのは、ギルベルト・マルセリーノ・タカラさん(73)とフスティノ・ファルカサントス・ウエハラさん(66)。家族らが付き添い、都内の記者会見場で喜びを語った。

 タカラさんは「涙が出るくらいうれしい。父の親せきと会いたい」と静かに話す。父親の母印が押された婚姻証明書や外国人登録証を持参している。

 長女のリア・デラクルスさん(37)は「日本を訪問することは家族の夢だった。うれしくて興奮しています」と声を弾ませた。

 会見場で支援者から拍手の歓待を受けたウエハラさんは「とてもうれしい」。

 一行を出迎えたフィリピン残留日本人問題等議員連盟の議員らは就籍に向けて支援する考えを表明した。

 タカラさんとウエハラさんは滞在中、東京家庭裁判所の調査官と面接し、父親が日本人であることを証明する書類などを示し、国籍取得を訴える。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807161300_04.html

 

琉球新報 社説

防衛省改革 軍人台頭に警戒が必要だ 2008年7月16日

 キーワードは「背広組と制服組の混成化」である。文民統制の弱体化につながる。そんな強い警戒心を抱かせる中身が、15日に首相に提出された政府の「防衛省改革に関する有識者会議」の最終報告書である。

 背広組とは内局官僚、文官。制服組とは自衛官、武官を指す。

 文官と武官の混成化、すなわち「融合」は本来統制すべき文官が、武官と同列化される。

 しかも、文民統制のトップである首相、防衛大臣の補佐官や国の安全保障の根幹となる防衛政策の企画・立案、管理部門にも武官たる自衛官の登用を求めている。

 日本は戦力を放棄し、武力を行使しないと憲法で誓っている。だが自衛隊という「軍隊」を保有している。紛れもない軍隊を保有する危険性を、「文民統制」という安全装置で抑えてきた。

 それは太平洋戦争で1千万人を超えるともいわれるアジア太平洋の同胞を犠牲にした軍国主義、軍部の暴走の反省に立ったものだ。

 報告書でも「軍事実力組織からの安全」のさらなる強化、「軍事実力組織による安全」というキーワードが明記されている。

 「軍事実力組織」とは、「軍隊」のことだ。だが、報告書作成に当たり国民の抵抗感、反感に配慮して耳慣れない言葉に呼び替えている。国民を欺くような「有識者会議」の本質が垣間見える。

 そもそも、防衛省改革会議は、相次ぐ防衛省・自衛隊の不祥事の頻発を受け設置されたはずだった。

 米海軍艦船への給油量取り違え、自衛隊員による防衛情報外部流出、特別情報秘密のイージス情報の拡散、海上自衛艦「あたご」による漁船衝突事故、前事務次官による贈収賄事件など枚挙にいとまのない事件の再発防止が狙いだった。

 それが、ふたを開けてみると不祥事防止はどこへやら。「規則順守の徹底」程度でお茶を濁し、主眼を組織変革論議にすり替え、自衛官・武官台頭による文民統制の弱体化を打ち出す報告となった。

 「報告」が実現すれば1954年の旧防衛庁設置以来の大規模な組織改革というが、「軍人」の台頭を許すほど国民は甘くない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134244-storytopic-11.html

 

2008年7月16日(水) 夕刊 1面

新基地反対決議を提出/県議会野党会派

 開会中の県議会六月定例会で、野党六会派は十六日午前、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書、後期高齢者医療制度の廃止等に関する意見書を高嶺善伸議長に提出した。与党は同調しない方針を示しており、各決議・意見書は十八日の最終本会議で、過半数を占める野党の賛成多数で可決される見通し。与党も十六日、後期高齢者医療制度のさらなる見直しに関する意見書を高嶺議長に提出した。

 野党提出の決議、意見書が可決された場合、県議会が日米両政府の合意した普天間飛行場移設のV字形滑走路案に反対の決議をするのは初めて。都道府県議会による後期高齢者医療制度廃止を求める意見書は、岩手県議会に続き二例目とみられる。

 新基地建設に反対する決議・意見書は、沖縄の過重な基地負担や辺野古沿岸域がジュゴンなど希少生物が生息する貴重な海域である点を強調しつつ「新たな基地の固定化と建設工事に伴う環境汚染や大規模な埋め立てによる環境破壊につながる新基地建設には断固反対し、世界に誇れる自然環境を後世に引き継ぐことが県民の責務」とし、日米両政府や仲井真弘多知事に建設を断念するよう訴えている。

 後期高齢者医療制度に関しては、厚生労働省の調査で国民健康保険から移行した保険料の増加割合で、沖縄が全国最高となったことを挙げ「県民所得が全国平均の七割余しかない県民に大きな負担増になっている」と指摘。後期高齢者等のみを被保険者とする同制度を廃止し、必要な財政措置を講じて地方自治体や被保険者の負担軽減に配慮するよう、首相や厚労相らに求めている。

 一方、自民、公明県民会議の与党会派も後期高齢者医療制度のさらなる見直しに関する意見書を提出。同制度の趣旨や仕組みへの周知を図ることや低所得者層の負担軽減などを政府に求めている。


普天間危険除去 早急対処が必要/防衛局長


 【嘉手納】米軍普天間飛行場の早期閉鎖、返還に取り組む宜野湾市の伊波洋一市長は十六日午前、沖縄防衛局に真部朗局長を訪ね、同飛行場に関する問題の解決に向けた協力を要請した。真部局長は「安全性や騒音の面からも早急に対処すべきで、米軍再編の中で飛行場の機能移設を進めたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807161700_01.html

 

2008年7月17日(木) 朝刊 22面

「日本人の誇りある」/ウエハラ・タカラさん国籍取得へ来日

 【東京】日本国籍取得のため来日しているフィリピン残留日本人のうち、県系人とみられるフスティノ・ファルカサントス・ウエハラさん(66)とギルベルト・マルセリーノ・タカラさん(73)は十六日、都内で会見し、国籍取得への思いや戦後の現地での暮らしなどを語った。

 ウエハラさんは小学校の低学年の時、同級生から「お前は日本人だ。なぜフィリピンにいるのか」と差別を受けた。「私は日本人の誇りがある。若いころから国籍を取りたい気持ちが強かった。今回は挑戦です」ときっぱり。

 「大切にしなさい」と祖母から受け継いだ父の外国人登録証を大事そうに持参。「国籍を取ったら、子どもたちと一緒に日本で働きたい」とほほ笑んだ。

 三歳で父と生き別れたというタカラさん。父の記憶がほとんどなく、「母からは優しく、働き者だったと聞いています」と話す。

 貧しい農村で育ち、小学校卒業後、稲作で生計を立てた。一九六三年に父の写真を雑誌に載せ、消息に関する情報提供を募ったが、手掛かりはなかった。

 「子どもと日本に住みたいが、自分は高齢なので暮らせるか分からない。いつも自分では日本人だと思っている」とつぶやいた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807171300_05.html

 

2008年7月17日(木) 朝刊 2面

10年にアセス着手/県議会特別委

 県議会は十六日、米軍基地関係、沖縄振興・那覇空港整備促進、観光振興・新石垣空港建設促進の特別委員会を開いた。那覇空港の沖合展開で県は、再来年にも環境影響評価(アセスメント)に着手する方針を示した。

沖縄振興・那覇空港


 沖縄振興・那覇空港整備促進特別委員会(当銘勝雄委員長)で上原良幸企画部長は、那覇空港滑走路の沖合展開について「順調にいけば再来年から環境アセスに入れる」と述べ、二〇一〇年にもアセスに着手する見通しを初めて示した。滑走路の完成にはアセス二―三年、工期七―十年がかかるとされて、一八―二二年ごろの完成が想定される。

 同空港は一五年ごろに需要に対応できなくなるとされる。津覇隆交通政策課長は「今のスケジュールでは一五年の完成は厳しい状況だ」と指摘。対応策として、機材の大型化や昼前後に集中する運航ダイヤの変更などを航空会社に求める考えを示した。當間盛夫氏(改革の会)への答弁。

 上里直司氏(民主)は全日本空輸(ANA)が那覇空港で検討している貨物基地構想で、深夜の離着陸便が増加することに伴う騒音調査の必要性を提起。上原部長は「国とANAに申し入れる必要はあるかもしれない」との考えを示した。


米軍基地関係

普天間飛行場の閉鎖陳情を採択


 米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)は、米軍普天間飛行場の危険性除去と早期閉鎖などを求めた陳情を採択した。

 三月に県立沖縄高等養護学校への米軍車両無断侵入事件で、基地間の移動ルートの公表を求めた陳情も採択。

 上原昭知事公室長は、三月から始まった普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価調査について、「二月か三月に終え、準備書が提案されると聞いている」と説明。「準備書が出されるまでに一定の前進があると期待している」と述べた。

 中川京貴氏(自民)への答弁。

 米軍再編に伴う部隊の再配置のため、先月からシュワブ内で行われている兵舎新設工事について友利弘一環境企画統括監は、普天間飛行場の代替施設とは区域が異なるとし、「アセス法の対象にならない」との見解を示した。玉城義和氏(無所属)への答弁。


観光振興・新石垣

3セク 年明けに準備委


 観光振興・新石垣特別委員会(比嘉京子委員長)では、新石垣空港で第三セクターを予定している会社設立について、根路銘恵一新石垣空港統括官は「年明けにも主な出資予定者を集めて準備委員会を開く」とした。

 高嶺善伸氏(社民・護憲)に答えた。

 また、県が提示した同空港へのアクセス道路案について土木建築部の漢那政弘部長は「事業化にはルートの選定と地元の合意形成が大前提」とし、県案について一定の理解が得られたとの認識を示した。

 辻野ヒロ子氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807171300_07.html

 

琉球新報 社説

辺野古反対決議案 民意に沿った対応は当然 2008年7月17日

 名護市辺野古に新たな基地を建設して、宜野湾市の米軍普天間飛行場を移設することに反対する意見書案と決議案を県議会の野党会派が高嶺善伸議長に提出した。

 県議会の決議は全会一致が原則となっているが、与野党の勢力が逆転し、多数を占める野党の賛成多数で可決されることが確実視されている。

 その状況を県政と議会の「ねじれ」の結果と片付けてはならない。民意も県内移設には反対する声の方が多い。それに沿った当然の対応であることを認識するべきだ。

 仲井真弘多知事は先の定例記者会見で「北部が引き受けている間に早く移設するのが最も近道だ。知事選で言ってきたことであり、実行したい」と述べ、県議会で野党提案の決議や意見書が可決されても、県内移設容認の方針を堅持する考えを示した。

 知事には知事の考えがあることは当然である。

 しかし、県議会が全会一致ではないにしても、新基地建設に明確に反対の意志を示す重みも受け止める必要があろう。

 意見書案は「県民は辺野古への新基地建設は、基地の過重な負担と固定化につながるため一貫して反対してきた」と指摘している。

 さらに、建設予定地周辺のジュゴンやサンゴ群落の存在などを挙げて「工事に伴う環境汚染や大規模な埋め立てによる環境破壊につながる」とし、政府に対して新基地建設を早急に断念するよう求めている。

 いずれも大方の県民がこれまで思ってきたことであり、政府に対する「断念要請」は妥当な要求である。

 先の県議選の結果からしても、民意に沿って野党会派が歩調を合わせて新基地建設に反対する意見書などの可決を目指すことは当然である。

 2005年に全会一致で可決した「沖縄県の米軍基地に関する意見書」は、辺野古沖移設について「そのままの形で受け入れることは現実問題として難しい」との表現にとどまった。

 新たな基地建設を容認し、計画変更を求めているとも受け取られかねない内容だった。今回の野党案は辺野古移設反対を明確にしており、大きな意義がある。

 最終本会議で意見書案などが採決される18日には、県と国が辺野古移設の方向性を話し合う普天間移設措置協議会が開かれる。県、国が意見書を考慮して対応することは残念ながら期待できない。

 しかしながら、そもそも普天間飛行場の県内移設では、これまで県民が求めてきた目に見える形での負担軽減にはつながらない。意見書などに込められたその原点を忘れてはならない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134287-storytopic-11.html

 

2008年7月18日(金) 朝刊 2・31面

辺野古移設反対可決へ/きょう県議会最終本会議

 県議会六月定例会は十八日、最終本会議を開き、野党六会派が提出した名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書が、野党の賛成多数で可決される見通しだ。日米両政府が合意した辺野古沿岸域へのV字形滑走路案に、県議会が反対を決議するのは初めて。普天間飛行場移設をめぐる県と政府の協議に影響を与えそうだ。

 県議会は同飛行場の移設をめぐり、SACO(日米特別行動委員会)の中間報告後の一九九六年七月、普天間基地の全面返還促進や県内移設に反対する意見書を全会一致で可決。しかし、九九年十月には、同飛行場の早期県内移設に関する要請決議を保守系の賛成多数で可決した経緯がある。

 また、県議選で争点になった後期高齢者医療制度についても、野党が「廃止」、与党が「見直し」を求める意見書を提出しているが、野党案が可決される見込みだ。都道府県議会での「廃止」を求める意見書が可決されれば、岩手県議会に次いで二例目になる。

 同日は、それぞれの決議、意見書について提案理由の説明、質疑、賛否を討論し、採決が行われる。

 そのほか、原油価格高騰対策に関する決議・意見書、県内建設業者の受注機会の拡大に関する意見書も提出されており、これらは全会一致で可決される見通しだ。


     ◇     ◇     ◇     

新基地建設 反対訴え/平和団体など集会


 米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書が、与野党逆転の県議会で十八日に採択される見通しとなったことを受けて、県内の平和団体らが十七日、那覇市の県庁前で意見書の採択を支持する緊急集会を開いた。

 野党各会派の県議もそろって参加。沖縄平和運動センター議長の崎山嗣幸県議は「議会と市民運動を結合しながら頑張っていこう」とあいさつし、ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は「明日は待ちに待った日。仲井真知事と日本政府に県民の本当の声を届けよう」と呼び掛けた。

 参加者はその後、国際通りへ繰り出し、「新基地建設反対」と声を上げながらデモ行進した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807181300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月18日朝刊)

[防衛省改革]

文民統制の実質固めよ


 防衛省改革を検討してきた有識者会議が防衛参事官制度の廃止などを盛り込んだ最終報告書を福田康夫首相に提出した。

 報告書の副題に「不祥事の分析と改革の方向性」とあるように、有識者会議は、防衛省の相次ぐ不祥事に対処するため昨年十二月、官邸主導で設置された。

 インド洋での燃料補給活動に絡む給油量の取り違え、守屋武昌前事務次官による汚職事件、イージス艦機密情報漏えい事件、イージス艦「あたご」の漁船との衝突事故…。次から次に起きる不祥事は、防衛省・自衛隊に対する信頼を著しく損ねた。

 なぜ、不祥事が繰り返されるのか。文民統制(シビリアン・コントロール)は果たして十分に機能しているのか。

 防衛省・自衛隊はもともと、国民の目が届きにくい組織である。防衛機密を理由に情報開示を怠り、不必要なものまで機密扱いするような閉鎖的な体質を組織の性格として持っている。

 外部から遮断された組織であるために、よほどしっかりしたチェック体制を築かなければ組織内部によどみが生じ、その場を糊塗する「隠ぺい体質」がはびこることになる。

 有識者会議の報告書は、個々の不祥事の問題点を指摘した上で(1)規則遵守の徹底(2)プロフェッショナリズム(職業意識)の確立、などを求めている。その通りには違いないが、再発防止策としてはあまりに抽象的で、具体性に乏しい。防衛省・自衛隊の中で今後、これをどう形にしていくか、それが問題だ。

 失われた信頼をどのように回復するのか。それが議論の出発点だった。

 流れが変わったのは、石破茂防衛相が年来の持論である組織再編の実現に意欲を見せ、組織改革案を有識者会議に提示したあたりからだ。再発防止策が後景に押しやられ、組織改革論が議論の前面に躍り出る展開になった。

 内局(背広組)と自衛隊(制服組)の統合という石破防衛相の主張は、内局と自衛隊の一部混合化という形で報告書に盛り込まれた。

 (1)防衛参事官制度は廃止し、政治任用の大臣補佐官を設置する(2)内局の防衛政策局の次長クラスに制服組の自衛官を起用する、などである。

 参事官は大臣を補佐するために設けられた制度で、内局の官房長、局長が兼務している。「文官(背広組)優位」の象徴とも言える制度で、制服組は早くからこの制度の廃止を主張していた。

 文官優位は、文民統制を担保するものだといわれてきた。参事官制度の廃止と制服組の台頭によって、文民統制を変質させるのではないか―それが気になるところだ。

 背広組と制服組の関係は、どのような形が望ましいのか。両者を混合化することによって何が生まれるのか。

 そのことを考える場合、忘れてならない前提は、憲法九条のしばりがあるということと、文民統制の機能を最大限に発揮できる仕組みをつくる、ということである。

 原則を踏み外したなし崩しの変質は危ない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080718.html#no_1

 

琉球新報 社説

防衛省裏金問題 国守る前に法規を守ろう 2008年7月18日

 違法な裏金問題を抱える防衛省だが、防衛大臣が「調査」を約束しながら、報告がいつまでも出てこない。不正経理の組織的隠ぺいの疑いが、日々濃厚になっている。

 国を守るはずの防衛省が、法規も守れない。悲しい現実がある。

 防衛省の裏金問題が報道されたのは、昨年12月。情報収集などを主目的に計上されている「報償費」の多くを、架空の領収書を使い裏金化していた。報償費は1997年以降でも年間1億2300万円から最大1億5000万円(2006年度)。防衛省OBらの証言によると、裏金は年間数千万円にも上る。

 報償費のような性格の予算は、内閣官房や外務省、警察庁などにもある。いずれも政界・外交工作や機密、捜査、防衛情報の収集などが主な使途とされてきた。

 だがその機密・秘密性、対外工作の性格上から使途が隠され、防衛省に限らず他省庁でも運用の不透明さが常に指摘されてきた。

 国を守る高度な情報収集活動や犯罪捜査という大義名分があればこその裁量権を与えられた「血税」の自由使用である。自由使用は、国民や財政当局からの「信頼」があればこそだ。防衛省の裏金問題は、その信頼を裏切るばかりか、課長級の幹部を含め「裏帳簿」を作り、担当職員が交代のたびに破棄するなど、長年にわたり組織ぐるみで行われていた可能性が高まっている。

 給油量取り違え、防衛機密情報流出、前次官の汚職、イージス艦衝突事故と不祥事続きの防衛省である。

 組織改革など改善に向けた防衛省改革会議「報告書」が15日に出され「規則無視、初歩的ルールの無知」などが組織的課題と指摘され、改革策が示されたばかりだ。

 不可解なのは、昨年末に発足した防衛省改革会議が、なぜか裏金問題には触れずじまいな点だ。

 石破茂防衛相も1月の国会で裏金問題の調査を約束しながら、半年もたなざらしにしている。

 もはや自浄作用すらも発揮できない組織に成り下がってしまったのか。防衛省には国を守る前に、法規を守る基本を学んでほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134314-storytopic-11.html

 

2008年7月18日(金) 夕刊 1・7面

辺野古移設反対を提案/県議会本会議

 県議会(高嶺善伸議長)は十八日午前、六月定例会の最終本会議を開き、野党六会派が提出した普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議・意見書の採決に向けて審議に入った。野党は「県民は過重な基地負担と固定化につながることから、新基地建設に一貫して反対してきた」などと提案理由を説明。一方、与党は辺野古移設以外の普天間飛行場返還の対案を示すよう求めるなど、激しい論戦を展開している。決議・意見書は同日午後にも採決され、過半数を占める野党の賛成多数で可決される見通しだ。

 日米両政府が合意した辺野古へのV字形滑走路案に、県議会が反対を決議すれば初めて。

 決議・意見書は、基地の過重負担と固定化、自然環境への懸念を表明。日米両政府や仲井真弘多知事あてに「新基地建設を早急に断念するよう強く要請する」としており、決議されれば、同飛行場の移設をめぐる県側と政府の協議に影響を及ぼすことになる。

 採決に先立ち、野党を代表して玉城義和氏(無所属クラブ)が提案理由を説明した。質疑に立った与党側は、中川京貴氏(自民)が「辺野古への移設以外に、普天間返還が実現する具体的かつ現実的な方策はあるか」「対案があるとすれば、日米両政府が合意する可能性、根拠を示せ」などと追及した。佐喜真淳氏(自民)も質疑を予定している。

 質疑後の討論では、与党の桑江朝千夫氏(自民)が反対意見を述べ、野党側は照屋大河氏(社民・護憲ネット)、前田政明氏(共産)が辺野古移設断念支持を表明し、採決で賛否を問う。

 過去に県議会は、普天間飛行場の移設をめぐり、SACO(日米特別行動委員会)の中間報告を受けた一九九六年七月、「普天間基地の全面返還促進や基地の機能強化につながる県内移設に反対する意見書」を全会一致で可決。九九年十月には、「同飛行場の早期県内移設に関する要請決議」を十八時間に及ぶ徹夜質疑の末、保守系の賛成多数で可決した経緯がある。

 最終本会議ではそのほか、六月県議選の争点として与野党逆転の一因にもなった後期高齢者医療制度に関する意見書も採決される。野党提出の「廃止」を求める意見書が、賛成多数で可決される見通しだ。


     ◇     ◇     ◇     

拍手とヤジ 議場騒然/座り込み住民続々


 与野党逆転の県議会で、野党が提出した「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書案」。審議と採決を見届けようと、辺野古で座り込みを続ける住民、環境保護団体メンバーや教育関係者などが詰め掛けた。百五十席の傍聴席はほぼ埋まり、緊張感に包まれた。審議が始まると傍聴席から拍手や歓声も。与党議員が議長に何度も注意を促すなど、議場は騒然とした。

 県議会ロビーには、午前九時すぎから傍聴者が続々と集結した。

 午前十一時四十分、提案者を代表して玉城義和議員(無所属)が意見書案の提案理由を述べると、「そうだ」「いいぞ」の声と拍手がわき起こった。

 一方、質疑に立った中川京貴議員(自民)は、十数項目に及ぶ質問をぶつけた。「県外移設を望めば大田県政の二の舞いになるのでは」「辺野古案を否定して、普天間の早期返還は可能か」などと述べると、傍聴席から「何言ってんだ」「勉強不足だ」などのやじが飛んだ。

 与党議員は高嶺善伸議長に「傍聴規則を守らせろ」と応酬。二度の退場警告が出た後、正午を過ぎたところで休会した。

 辺野古で座り込みを続ける平和市民連絡会の当山栄事務局長は「県民の選んだ代表が、基地建設反対の意思を示すことの意義は大きい。日米政府の頭越し合意を覆す力を持つものと信じている」と力強く語った。

 宜野湾市から辺野古に通って反対運動を続ける山口洋子さんは「県議会決議だけで、基地建設を止められるわけではないと思うが、『民意無視は許さない』という声を上げることの積み重ねが大事」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807181700_01.html

県議会、V字案反対へ/多数野党が決議確認 北部救急ヘリ支援困難/県議会一般質問 普天間訴訟団が控訴 防衛省、対潜水艦施設を断念/本部町内 国・県、研究班設置へ/普天間危険除去 知事「南西方向」要望へ/普天間代替、沖合移動で具体案 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月9日から12日)

2008年7月9日(水) 朝刊 1面

県議会、V字案反対へ/多数野党が決議確認

県・政府協議に影響か/与党は難色示す

 県議会(高嶺善伸議長)の野党会派は八日、県議会内で代表者会議を開き、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設反対の決議案を開会中の六月定例会に提出することを確認した。県議会で、日米両政府が合意したV字形滑走路案に反対する決議は初めて。政府は今月中に代替施設の建設計画などを話し合う協議会の第九回会合を開く方針を固めているが、県議会の反対決議は、移設をめぐる県と政府の協議にも影響を与えそうだ。

 野党は、県議選の争点の一つになった後期高齢者医療制度の廃止を求める決議・意見書提出についても合意した。

 移設問題は、十六日に予定される米軍基地関係の特別委員会、後期高齢者医療制度は十一日からの文教厚生委員会(赤嶺昇委員長)でそれぞれ協議される。

 県議会は、六月八日の県議選で、社民、共産、民主、社大、そうぞうの野党が二十六議席を獲得し、二十二議席の与党を逆転した。普天間飛行場のキャンプ・シュワブ移設反対、医療制度廃止を求める会派が多数を占めており、いずれの決議・意見書も可決される見通しだ。

 社民・護憲ネットの新里米吉代表は「野党は一致して、採決も辞さない方針を固めた。最終的な調整は各委員会で行われる」と述べた。一方、自民、公明県民会議の与党は「与党としては賛成できない。慎重で冷静な協議が必要だ」と難色を示している。

 普天間移設問題について仲井真弘多知事は、六月定例会で、「政府が地元の意向に十分配慮することで、移設が円滑に進むと考えている」と答弁し、沖合への移動を前提に移設を容認する姿勢を示している。

 県議会の反対決議が可決されれば、地元の意向を重視するとしている仲井真知事が苦境に追い込まれることは必至だ。


コメントできない


 野党会派が移設反対決議案を今議会に提出すると確認したことに対し、仲井真弘多知事は八日の六月定例会一般質問終了後、「まだ知らないし、県議会がどういうふうにやるかも分からない。残念ながら今はまったくコメントできない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091300_01.html

 

2008年7月9日(水) 朝刊 2面

北部救急ヘリ支援困難/県議会一般質問

 資金難で北部地区医師会病院から特定非営利活動法人(NPO法人)に運営が引き継がれた救急ヘリ事業への公的支援について、県福祉保健部の伊波輝美部長は八日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の一般質問で、県独自の財政支援は困難との認識を初めて明言した。前田政明氏(共産)への答弁。国の補助要件を満たしていないことを理由に挙げている。

 伊波部長は「救急医療用ヘリコプターの導入に対する国の補助は各都道府県とも一機分で、救命救急センターで運航することが要件になっている」と説明。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う環境影響評価(アセスメント)の騒音測定について知念健次文化環境部長は、県と沖縄防衛局の測定方法が異なることに言及し、「県の測定結果も考慮する必要があると考えている」との認識を示した。

 うるま市のホワイトビーチへの米海軍原子力潜水艦の寄港回数が今年二十三回に達し、過去最多となった前年の二十四回に迫っていることについて仲井真弘多知事は「政府の方針に基づき寄港を容認するが、例年と比べ頻度が増加している」と懸念し、安全確保を求める姿勢を示した。いずれも照屋大河氏(社民・護憲ネット)への答弁。

 県警が復帰後から二〇〇七年十二月までに検挙した米兵による事件は五千五百十四件で、殺人や強盗などの凶悪犯は五百五十二件となった。上原昭知事公室長が、渡久地修氏(共産)に答弁した。

 県立図書館の八重山、宮古両分館を本年度末で廃止する方針について仲村守和教育長は「(施設の老朽化などで)維持・運営が大変厳しい。総合的に判断した」と説明し、理解を求めた。今月下旬に担当職員を派遣し、関係者と意見交換する考えを示した。前田政明(共産)、比嘉京子(社大・ニライ)両氏への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091300_06.html

 

2008年7月9日(水) 朝刊 29面

普天間訴訟団が控訴/飛行差し止め目標

 【沖縄】米軍普天間飛行場を離着陸するヘリコプターなどの騒音によって健康被害を受けたとして、周辺住民三百九十二人が国に夜間・早朝の飛行差し止めと損害賠償を求めた普天間爆音訴訟で、原告は八日、飛行差し止めなどを棄却した一審判決を不服として福岡高裁那覇支部に控訴した。

 控訴状を提出した新垣勉弁護団長は「静かな夜を取り戻したいというのが訴えの中心なので、飛行差し止めが実現するまで努力する」と強い口調で語った。

 高裁ではあらためて同飛行場の実情を訴えることで、差し止めのほか、国に騒音の軽減措置や測定義務、同様の訴訟と変わらない損害賠償の引き上げなどを求める。六月二十六日の一審判決は結審日までの慰謝料として、原告全員に総額一億四千六百万円を支払うよう国に命じたが、夜間・早朝の差し止めや国による騒音測定義務は棄却した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091300_07.html

 

2008年7月9日(水) 夕刊 5面

普天間 爆音訴訟/国側も控訴

 米軍普天間飛行場の周辺住民が、夜間・早朝の飛行の差し止めと損害賠償などを国に求めている訴訟で、被告の国側は九日、総額一億四千六百万円の支払いを命じた一審・那覇地裁沖縄支部判決を不服として、福岡高裁那覇支部に控訴した。原告の住民側も八日に控訴している。

 六月二十六日の一審判決は、うるささ指数(W値)七五以上の地域に居住する全原告に、生活・睡眠妨害に伴う精神的な被害を認めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807091700_05.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 1面

防衛省、対潜水艦施設を断念/本部町内

建設地取得できず

 【東京】防衛省は九日までに、本部町豊原区に建設を計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所計画の中止を決めた。沖縄防衛局が同日、県に本部町での建設中止を伝えた。

 同施設は、建設用地の一部地権者が賃貸借契約に応じず、建設のめどが立っていなかった。現在は那覇基地内の同センターで応急的に代用しているが、同省は必要不可欠な施設として「代替地をできるだけ早く選定したい」との意向だ。

 送信所用地については本部町も、アセロラ生産拠点施設や観光農園で利用したい―と要請していた。同省は「省内で検討した結果、町の振興計画にも配慮して建設を中止することにした」と説明している。

 同事業は米軍の旧本部飛行場跡地に、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機に解析データを送信する施設を建てる計画。同省は一九八八年度に用地取得を開始。約三十万平方メートルのうち地権者百十七人と賃貸借契約を結び、国有地約十万平方メートルと合わせて約二十九万平方メートルの用地を確保した。しかし十三人とは未契約で、すべての用地取得ができず建設に踏み切れていなかった。

 賃貸借契約は二十年で、二〇〇八年度末に契約満了となる。〇九年度以降は契約を更新しない方針。今後、計画中止を地権者らに説明する。これまでに支払った賃貸借料は約九億円。


本部町長は歓迎


 高良文雄本部町長は「待ち望んでいたことで、とてもうれしい。町にとって、今後の農業やウエルネス事業を進める上では大変重要で、必要不可欠な地域だ。地主の皆さんときめ細かく相談し、ご理解をいただき、振興計画のために活用させてもらいたい」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_01.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 2面

北部救急ヘリ 支援検討/県議会一般質問

 資金難で病院からNPO法人が運営を引き継いだ北部地区の救命救急ヘリコプター事業に対する公的支援について、仲井真弘多県知事は九日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の一般質問で、「前向きに検討したい」と意欲を示した。一方で、「まず国の補助制度に基づくドクターヘリ事業の運航実績を見たい」と慎重な姿勢も強調した。

 県は、浦添総合病院を救命救急センターとしたドクターヘリ事業の導入を進めている。仲井真知事は「浦添総合病院は読谷村に駐機場があり、北部地域も一通りカバーできるとみている」としつつ、「北部や離島地域を(ヘリ一機で)カバーするのは常識的には難しいだろう」との見方も示した。平良昭一氏(改革の会)の質問に答えた。

 護得久友子農林水産部長は、地産地消推進のため、県産食材を取り扱う飲食店を「地産地消協力店・沖縄食材の店」として登録し、消費者にPRする事業を本年度から実施する考えを明らかにした。當間盛夫氏(改革の会)への答弁。

 仲田秀光観光商工部長は、国内外の宇宙工学、科学などの研究者や技術者による国際会議「宇宙技術および科学の国際シンポジウム」について、「二〇一一年開催を念頭に誘致に努める」と述べ、県内開催を推進する考えを示した。照屋守之氏(自民)への答弁。

 本部港の耐震強化岸壁整備について仲井真知事は「〇八年度に詳細設計、埋め立て申請を行い、〇九年度から岸壁工事に着手する。一三年度完成の予定」と述べた。平良氏に答えた。

 上原良幸企画部長は、〇九年度で期限が切れる北部振興事業の継続について「現時点で判断するのは困難だ」と述べた。吉田勝廣氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_04.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 23面

「星条旗」復刻版を発刊/琉米研確認 榕樹書林が企画

 沖縄戦時にハワイ・ホノルルで発刊された米軍の準機関紙「星条旗(スターズ・アンド・ストライプス)」(太平洋版)の第一―二百二十二号(一九四五年五月―四六年一月)がこのほど復刻発刊されることになった。復刻を企画した出版社・榕樹書林の武石和実さんは「東条英機が自殺未遂をした場所の写真など、貴重な写真もある。復刻を機に多くの発見がなされればうれしい」と話している。

 復刻版はA3判、計約千八百ページで全六冊。米軍側から見た沖縄戦をはじめとする当時の太平洋の戦況などが把握できる。

 同紙は米国の南北戦争の際、北軍兵士のために創刊された新聞。以降、断続的にヨーロッパ各地で発刊された後、四五年五月十四日にハワイ・ホノルルで「太平洋版」が創刊され、四六年一月三十日まで続いた。

 ホノルルでの廃刊後は、東京で発刊され現在に至る。東京の同紙本社にもホノルル発刊の紙面が残っていなかったが、琉米歴史研究会(喜舎場静夫理事長)が九年前に同紙面を米国内で見つけ、復刻発刊されることになった。

 解説を担当した吉田健正桜美林大学元教授(沖縄現代史研究)は「米軍側から見た太平洋戦争の戦略や各地の戦闘状況がよく分かる」と話している。

 同書籍は全六冊セット(十八万九千円)。問い合わせは榕樹書林、電話098(893)4076。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_05.html

 

2008年7月10日(木) 朝刊 23面

宜野湾で地デジ障害を調査/基地との因果分析

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の米軍機の飛行の影響で、地上デジタル放送に受信障害が発生していると宜野湾市に苦情が相次いでいる問題で、沖縄総合通信事務所が市内の障害状況調査を始めていたことが九日、分かった。

 米軍機と受信障害の因果関係の有無を明らかにするため、継続的に調査を行う。

 苦情は同市内十地域と浦添市、西原町、中城村から合わせて計二十六件。「ヘリが飛ぶと地デジ放送が途切れる」など、アンテナ付近の空中で物体が動くと信号が遮られる「フラッター現象」が起きているといった苦情が寄せられたため、同市が国へ対策を求めていた。

 同事務所は今月三日に一回目の調査を実施。車に地デジの受信が可能なアンテナ、テレビを設置し、市内数カ所を移動して受信状況を調べた。

 調査当日は米軍機の飛行が少なかったため、受信障害のデータは得られなかった。障害状況の把握と米軍機飛行の因果関係を調べるため、市と米軍の飛行訓練の状況を共有し、継続的な調査を続ける。

 同事務所の担当課は「障害が見つかれば、放置することなくできる範囲の限りで対応する」とし、障害の原因が米軍機の飛行と特定された場合には沖縄防衛局など国の関係省庁に事実報告を行うという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101300_06.html

 

2008年7月10日(木) 夕刊 5面

「糸洲の壕」活用模索/積徳高女・看護学徒隊同窓会

 【糸満】「決して死んではいけない。悲惨な戦争のことを後世に語り継いでくれ」。沖縄戦当時、私立積徳高等女学校の看護学徒隊に「必ず生きろ」との言葉を残し自決した軍医の遺志を継ぐため、同校の「ふじ同窓会」は軍医が最期を遂げた「糸洲の壕」(糸満市伊敷)の保存と活用を模索している。軍医の故郷・長野県佐久市と交流を重ねてきた同窓会は、安全性の不備が指摘されている壕を整備し、「沖縄と長野を結ぶ平和の懸け橋になれば」と話している。(新垣亮)

 積徳高女の看護学徒隊二十五人は小池勇助軍医率いる第二野戦病院に配属された。当初、野戦病院は現在の豊見城市にあったが、度重なる空襲で、八キロ先の糸洲の壕へ移動した。

 日本軍による組織戦が終了したとされる後の一九四五年六月二十六日、小池軍医は学徒隊を解散した。女学生一人一人の手を握り、「必ず生きて親元に帰りなさい。悲惨な戦争のことを後世に語り伝えてくれ」と述べた。軍医は壕内で自決した。

 壕の外では散発的な戦闘が続いており、看護隊二人が亡くなったものの、二十三人は戦火をくぐり生き延びた。

 同窓会は長野県佐久市にある小池軍医の墓参りや地元高校での講演、遺族会との手紙をやりとりするなど交流を続けている。

 「糸洲の壕」には長野県の修学旅行生が訪れたり、県内の平和学習の場として活用されているが、壕内は滑りやすく、アクセス路が未整備となっている。修学旅行生が転倒、けがをしたため、一時閉鎖されたこともあったという。

 今月九日には、長野県議会の議員四人が修学旅行の在り方などを視察するため同壕を訪れた。小池軍医の言葉を聞いた仲里ハルさん(81)が体験談を語り、「武力で殺し合う戦争は起こしてはいけない。平和がいつまでも続くことを祈る」と涙ながらに訴え、「軍医の言葉が私たちを救った」と切々と話した。

 新垣道子会長は「手すりを付けるなど壕の整備を何とかして、今後も長野県との交流を続けていきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101700_02.html

 

2008年7月10日(木) 夕刊 1面

「跡地」の利活用 県が本部町支援/県議会

 防衛省が本部町で計画していた海上自衛隊の対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設計画を中止したことについて、上原昭知事公室長は十日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会一般質問で、「中止は本部町の意向に沿うもので、同町の振興、発展に寄与すると考えている。(跡地の)利活用について、地元と連携を密に支援していきたい」との方針を示した。

 米軍普天間飛行場の移設問題で代替施設の建設計画などを話し合う協議会の次回会合について仲井真弘多知事は、閣僚が度々替わったことを指摘し、「これまで協議してきた内容を確認する必要がある」と述べた。

 政府に求めている代替施設の沖合移動や危険性除去などについて「私は無理難題を言っているわけでなく、政府がささやかな要求を聞いていないので、進んでいない」と述べた。

 いずれも吉元義彦氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807101700_03.html

 

2008年7月11日(金) 朝刊 1面

国・県、研究班設置へ/普天間危険除去

解決向け取り組み本格化

 仲井真弘多県知事が公約に掲げ、政府に求めている米軍普天間飛行場の危険性除去について、防衛省と県が共同で技術的な対応策を検討する研究チームを設置する方向で調整を進めていることが十日、分かった。県、政府双方の事務方による協議が始まれば、問題解決に向けた取り組みが本格化することになる。

 普天間飛行場の危険性除去については、仲井真知事が移設協議会などで繰り返し求めてきた。町村信孝官房長官も六月末の会見で、「米側と交渉するなど努力したい」と踏み込んだ発言をしている。しかし、十八日に開催する方向で調整が進んでいる次回協議会の議題として取り扱われるかは、現時点で不透明だ。

 危険性除去をめぐっては、二〇〇四年の沖縄国際大学ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が昨年八月、民間地域への墜落を防ごうと航空機の場周経路設定など、危険性除去策をまとめた。

 しかし、伊波洋一宜野湾市長が「場周経路が守られていない」と訴え、沖縄防衛局は現状把握のため、五月から六月にかけて目視調査を行っていた。県は、同局と宜野湾市からヒアリングを行ったが、独自で具体的な対応策には踏み込めていない。県、国の双方ともに「互いに連携してやっていきたい」と述べていた。(吉田伸)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111300_04.html

 

2008年7月11日(金) 朝刊 26面

日米地位協定「見直し必要ない」/メア氏、大学院で講義

 在沖米国総領事のケビン・メア氏が十日、琉球大学法科大学院で講義した。「米軍基地法」の講義で、米国の立場から、実例を交えて日米地位協定や安全保障の考え方を解説し、学生らと意見を交わした。

 メア氏は地位協定を「安全保障条約の下、在日米軍が日本でどういう地位にあるかを決める協定」と説明。「自衛隊が米軍を守る必要がないようにもともと非対称な条約。地位協定は日米合同委員会で運用改善を話し合っている。見直す必要はない」と述べた。

 国会で議論された思いやり予算で支払う娯楽施設の基地従業員人件費について、「日本の唯一の安保上の責任は、米軍への施設提供。在日米軍の即応体制を維持するためには、娯楽施設が必要」との考えを示した。

 昨年六月に米軍掃海艦が復帰後初めて与那国町に寄港したことについて「地位協定第五条で、米軍の艦船と飛行機が日本にあるすべての港と空港を使う権利がある」と述べた。

 学生からは「地位協定を改定しないのは安保条約の性格を変えるからか」「米国はなぜ世界中に基地を展開するのか」など質問が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111300_05.html

 

2008年7月11日(金) 朝刊 26面

訓令の原文発見/沖縄戦・組織的戦闘終了後の遊撃命令

 沖縄戦で旧日本軍第三二軍を指揮した司令官・牛島満中将が終戦直前、鉄血勤皇隊で情報宣伝を担った千早隊の隊長に対し、軍の組織的戦闘が終了した後も沖縄本島で遊撃戦を続けるよう命じた訓令の原文がこのほど、米国立公文書館で見つかった。訓令の内容を英訳した米軍情報機関の資料は県立公文書館でも確認できるが、元千早隊員で大田平和総合研究所主宰の大田昌秀さんが原文の存在を突き止めた。

 訓令は一九四五年六月十八日付。牛島司令官から千早隊隊長の益永董陸軍大尉あてに「貴官ハ千早隊ヲ指揮シ軍ノ組織的戦闘終了後ニ於ケル沖縄本島ノ遊撃戦に任スヘシ」と記している。

 軍から解散命令が伝わったのは、その日付の前後。一方で、大田さんによると、千早隊員には同月十九日夜、糸満市の壕で益永大尉から「死なずに米軍の背後に回って地下工作をするように」と命じられた。当時は牛島司令官の命令とは知らされなかった。

 実際に北部戦線を目指す参謀数人と、その案内役として四、五人の隊員が壕を出発。大田さんは軍服から、軍人には似つかわしくない住民の着物に着替えた参謀らを見送りながら、敗戦を実感したという。自らも敵陣を突破するため他の隊員と壕を出て、九月末ごろまで潜伏行動を続けた。

 大田さんは今年四月下旬から五月中旬まで訪米し、米国立公文書館にある米第一〇軍の資料の中から原文を発見。「最高クラスの司令官が、わずか二十二人の千早隊員の行動について直接命令を下していたとは夢にも思わなかった。解散命令を出す一方で、最後まで戦えと命じる沖縄戦の矛盾を露骨に示した文書だ」と言う。

 沖縄戦に詳しい関東学院大の林博史教授は「沖縄戦の終盤は口頭での命令が多く、この時期の原資料が残っているのは大変貴重だ。千早隊だけでなく、各部隊の責任者あてに訓令が出されていたこともあり得るのではないか」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111300_06.html

 

琉球新報 社説

脱走米兵の通知 必要なのは犯罪防止策 2008年7月11日

 脱走米兵の情報が9日から、米軍基地を抱える14都道県にも提供されることになった。だが、県は提供情報を県民に公表するかどうか未定という。情報提供の狙いは犯罪抑止にある。県には積極的な情報開示と情報活用を求めたい。

 脱走米兵の情報開示は、3月に神奈川県横須賀市で起きたタクシー運転手刺殺事件が契機となっている。強盗殺人の容疑で逮捕された米海軍横須賀基地所属の一等兵が、脱走兵だった。

 だが、米側は脱走の事実を日本側には伝えていなかった。

 事件を受け、日米両政府は5月の日米合同委員会で、脱走兵情報を日本側に通報する日米地位協定の運用改善で合意している。

 今回の措置で、脱走の年月日、脱走兵の逮捕要請を行った米軍施設・区域、脱走者数、身柄確保の状況の4項目が、米側から外務省に提供される。

 外務省は、基地所在都道県でつくる渉外関係主要都道県知事連絡協議会(渉外知事会)を通じ情報を提供するという。

 発端は脱走兵による犯罪だ。犯罪の抑止が情報提供の契機、主目的だとすれば、脱走兵の人権にも配慮しながら原則的には県民にも情報提供されてしかるべきだ。

 脱走兵がどのような理由で脱走し、武器の保有や前科も含め犯罪可能性の有無が提供情報の要だ。

 イラク戦争開始後、米軍では毎年3000人を超える脱走兵が出ているという。脱走兵の増加は「大義なき戦争」への批判も背景にある。

 大量破壊兵器による米国攻撃の未然防止や独裁政権からのイラク市民の解放などを「大義」に、米ブッシュ政権はイラクに侵攻した。

 イラク戦争で約9万人のイラク市民と4000人を超す米兵が犠牲になったとされる。しかし、結果は大量破壊兵器は見つからず、イラク攻撃の大義は失われている。

 大義なき戦争は、脱走兵を増やし、犯罪すらも誘発している。

 なぜ米兵たちは脱走したのか。その理由も米軍は開示すべきだ。

 その上で、脱走兵らが犯罪に走らないよう日米で効果的な対策を講じてもらいたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134064-storytopic-11.html

 

2008年7月11日(金) 夕刊 1面

知事「南西方向」要望へ/普天間代替 沖合移動で具体案

大浦湾の保全理由に

 仲井真弘多知事は十一日の定例会見で、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で政府に求めている代替施設の沖合移動について、「大浦湾に突き出しているものを引っ込めてはどうか。名護市の意見もそれに近い。引っ込めて前に出すという感じだ」と述べ、南西方向にずらした上であらためて沖合に移動するよう要望する考えを示した。名護市の島袋吉和市長は沖合・南西方向への移動を求める考えを示していたが、知事が具体的に言及するのは初めてだ。

 仲井真知事は「(現行案を決定した)当時、大浦湾は環境的に死んでいるという評価があった。環境審査会の話を聞くと、(代替施設を)引っ込めないと海流が止まり、死ぬ状態になりかねない」とし、大浦湾の環境保全を理由に挙げた。

 そのほか、普天間飛行場の危険性除去策で防衛省と県が技術的対応策を検討する共同研究チーム設置を調整していることについては、「まだきちっとした返事はいただいていない。進み始めているのであればありがたい。三年めどの閉鎖を政策的に確認し、実務の検討に入ることは大変いいステップだと思う」と述べ、十八日開催で調整している次回の移設協議会で確認を求める考えを示唆した。

 県議会の野党会派がキャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する決議案提出を確認していることについては「県外移設がベストだが、県内もやむなしと思っている。北部が受け入れている間に移設することが最も近道だ」として、決議が可決されても県内移設を推進する姿勢は変わらない―との認識を示した。


県の意向踏まえ政府として努力

危険性除去で防衛相


 【東京】石破茂防衛大臣は十一日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の危険性除去をめぐり政府と県が研究チーム設置に向け調整していることについて、「(普天間飛行場の)危険性除去や閉鎖状態に近づくために、チームをつくるのも一つのアイデアだ」と述べ、双方が一体となって取り組む必要性を強調した。

 次回の普天間協議会の日程や議題については、「まだ調整中」とした上で、危険性の除去に向けた対応策については「県の意向を踏まえ、政府としてできる限りの努力をするのは当然だ」との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807111700_01.html

 

2008年7月12日(土) 朝刊 2面

県環境条例 基地適用を/与野党超えて要望噴出

 県公害防止条例を約三十年ぶりに全面改正する「県生活環境保全条例」を審議した県議会文教厚生委員会(赤嶺昇委員長)で十一日、米軍基地を公害防止規制の適用外としたことに対し与野党の委員から異論が噴き出した。

 同条例は、既存法令で規制の及ばなかった小規模事業者にも排水対策を推進し、県民にも生活排水の処理や自動車の運行に伴う環境負荷の低減を求めるなど、全県下での公害対策を強化している。県文化環境部は「米軍には国内法が適用されない」として、本島の二割を占有する米軍基地は適用外とした。

 これに対し、西銘純恵委員(共産)は「一番の環境被害は米軍基地から受けており、県条例ならば適用すべきだ」と指摘。自民党の翁長政俊委員も「県は日米地位協定の抜本的な見直しを求めている。実質的な規制は難しくとも、政治姿勢を示す意味で盛り込んではどうか」と提案した。

 「米軍には国内法が及ばず、(規制の)実効性が担保できない」と適用を困難視する同部の主張に対しては、「基地の設置責任者は国であり、米軍には及ばずとも、国に対して規制をかけることはできるのでは」とする意見も出た。

 これに対し知念建次部長は「自治立法の限界だ」と答弁し、同委員会の議論はこの日平行線のまま審議を終了した。

 米軍基地の公害問題では今年六月に国の賠償責任を認めた普天間爆音訴訟の判決が出たばかり。昨年は基地内のディーゼル燃料や油の流出で付近の土壌汚染が発生しただけに、新条例が?公害発生源?に効力が及ばないことに委員らは納得できない様子だ。

 同委員会は十四日に条例の可否を採決する。

 同条例は、一九七六年に定められた県公害防止条例を全面改正するもの。既存条例の適用内だった工場や事業場などの事業活動に伴うばい煙・粉じんや排水汚染の規制に加え、新たに土壌汚染の規制や日常生活で発生する環境負荷の低減も盛り込み、罰則を強化する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807121300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月12日朝刊)

[対潜施設建設中止]

跡利用へ支援が必要だ


 防衛省は本部町豊原区の旧上本部飛行場跡に計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設中止を決めた。

 地元の反対闘争と建設用地の一部地権者が賃貸契約に応じなかったため中止に追い込まれた格好だ。

 防衛省は建設をとうに断念したと思っていた人が多かったのではないか。

 なぜ今ごろ、との思いを禁じ得ない。

 建設計画が浮上してから二十年以上も、跡地利用に向けた具体的な動きが取れずに、たなざらしが続いたことになる。

 高良文雄町長は「今後の農業やウェルネス事業を進める上で必要不可欠な地域だ。地主の皆さんときめ細かく相談したい」と中止を歓迎している。

 防衛省はもっと早く断念を発表するべきだったのではないか。

 国の安全保障に関しては地元の理解と協力なしに成り立たないのは当然だからだ。

 旧飛行場跡地には米軍が敷き詰めたコーラルがそのまま残されている。

 防衛省が断念したからといって、跡地利用にスムーズに移行できるわけではない。

 跡地利用は地主だけではできない。もちろん土地を持たぬ町だけでもできない。

 旧上本部飛行場は、一九六九年と七一年の二回に分けて全面返還された。

 幅五十メートル、長さ千五百メートルの滑走路を含む約二百五十三ヘクタールの広大な土地だ。

 復帰前に返還されたため、跡地利用のための補償制度がない。

 原状回復も、日米政府が責任を押しつけ合った結果、できなかった。

 当初計画では米軍の旧上本部飛行場跡地に、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機に解析データを送信する施設を建設する予定だった。

 防衛省は八八年度に用地取得を開始した。

 約三十万平方メートルの土地の地権者百十七人と賃貸借契約を結び、国有地と合わせて約二十九万平方メートルを確保した。

 だが、十三人とは契約できず、建設に踏み切ることができなかった。

 賃貸借契約は二十年で、二〇〇八年度末に契約満了となる。防衛省は〇九度以降は契約を更新しない方針。これまで支払った賃貸借料は約九億円という。

 防衛省は、計画の見通しの甘さに対する批判は免れないだろう。

 本部町は二〇〇一年度に「もとぶウェルネスのまちづくり基本構想」を策定した。

 ウコンやアセローラなどの農作物を供給する農園施設に、それら食材を利用したレストランやショッピング施設などの計画がある。近くの海岸のプールなどと合わせ一大ウェルネス地域とする構想だ。

 ただ、地権者は不在地主がほとんどで、住民合意を得るのは並大抵ではないだろう。

 これほどの大規模な跡地利用では、町がイニシアチブを取りながら、国、県の後押しがどうしても不可欠だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080712.html#no_1

 

琉球新報 社説

P3C送信所 脱基地で町振興の拠点に 2008年7月12日

 返還から37年。軍事基地が町振興の拠点へ転換される。本部町の上本部飛行場跡地のことだ。新たな自衛隊基地建設の動きを、本部町民が長年の反対運動で食い止めた。

 「自衛隊基地といえども、戦争に加担する施設は絶対に造らせない」。そんな強い意志を、本部町民は20年余も持続してきた。

 町長や区長が代わっても、反対の姿勢は、まるでDNAのように連綿と引き継がれてきている。

 米軍が沖縄占領後に上本部飛行場を建設し、復帰前の1971年にようやく地権者に返還された。

 しかし、滑走路をそのままに原状回復もないまま返還された跡地は、跡利用が難航した。

 そこに87年、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機との交信施設ASWOC(対潜水艦作戦センター)送信所建設計画が浮上した。

 ASWOC送信所は、対潜哨戒機が洋上で発見した潜水艦のデータを解析し、攻撃や作戦を指示するための施設である。

 跡利用が難航する中、多くの地権者が送信施設用地として賃貸契約に応じた。

 だが、町長をはじめ周辺住民は「戦争につながる施設の建設は絶対に許さない」と、現地に闘争・団結小屋を造り、文字通り体を張った反対運動を続けてきた。

 地元・豊原区の住民らは、戦争中は日本軍に、戦後は米軍に土地を強制接収されている。

 住む家も焼かれ、戻る場所を奪われた屈辱の体験がある。米軍も自衛隊も同じ「軍隊」との認識も町民には共通している。

 屈辱の体験を「子や孫の世代に体験させない」との思いが、防衛省の新基地建設を断念させた。

 そもそも20年も頓挫し、建設されずとも支障のないASWOC送信施設自体が、もともと不要の施設ではないか。そんな疑問も出る。それでも、建設中止を決めた防衛省は「代替地を早急に選定したい」との意向のようだ。

 ただでさえ米軍基地の過重負担に苦しむ沖縄である。自衛隊といえども新たな基地建設を進める国の姿勢には大いに疑問を感じる。

 全国一の高失業率、低所得、低貯蓄、高財政依存経済に呻吟(しんぎん)する沖縄県民が欲しいのは、新たな軍事基地ではなく経済基地である。

 農地を収奪し、厚いコンクリートで固め飛行場を造りながら、不要となれば原状回復もなく返還し、跡利用を難しくしたまま放置する。

 土地の収奪と長期占領・占拠のつけを住民に求める。これが政府のすることであろうか。

 計画中止を決めた政府には、基地施策で翻弄(ほんろう)し跡利用を阻害した反省も踏まえ、本部町民の長年の労に報いる跡利用支援策を、きっちりと要求したい。


<訂正>初出の記事で「旧日本軍が飛行場建設を進めていた上本部飛行場跡は、戦後、米軍が接収し」は「米軍が沖縄占領後に上本部飛行場を建設し」の誤りでした。おわびして訂正します。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134116-storytopic-11.html

沖縄関連予算で要求/旧軍用地補償 軍用地料2億3000万円流用/浦添・小湾地主会 コンテナ70個今月搬入/都市型訓練 基地内タクシー、年1億5000万円/06年、米軍と208台契約 など 沖縄タイムス関連記事(7月4日から8日)

2008年7月4日(金) 朝刊 1面

沖縄関連予算で要求/旧軍用地補償

 旧軍飛行場用地問題に伴う補償事業の財源について、県は三日、沖縄振興事業費や沖縄特別振興対策調整費のいずれかの枠組みで政府に予算要求する方針を初めて示した。同日の県議会(高嶺善伸議長)六月定例会代表質問で、上原昭知事公室長が新垣良俊氏(自民)の質問に答えた。

 同問題では一部地主会が、沖縄関連予算とは別枠での財源確保を求めているが、上原知事公室長は「国との調整で、極めて困難であると言われている」と明言した。また、関係市町村が各地主会と協議し作成した事業案が、すでに県に提出されていることも明かした。

 代表質問では翁長政俊(自民)や渡嘉敷喜代子(社民・護憲ネット)、当銘勝雄(同)の三氏も登壇した。

 中城湾港泡瀬沖合埋立事業のため、米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定の更新を県知事が沖縄市長に代わって署名者となることについて、漢那政弘土木建築部長は「国、県、市の三者で、今年に入り七回ほど協議を重ねた。県が署名を決めたのは協議の結果であり、当然沖縄市も承知している」と述べ、沖縄市の意向を尊重したとの認識を示した。渡嘉敷氏への答弁。

 また道州制について仲井真弘多知事は「沖縄単独での導入を前提にさまざまな検討を進めている」と説明。上原良幸企画部長は「離島や基地問題等、沖縄固有の諸課題について解決を図っていくことが極めて重要。その中で『特例型』の権限についても検討を進めていく」と述べた。翁長氏への答弁。代表質問は四日も行われ、四氏が登壇する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041300_04.html

 

2008年7月4日(金) 朝刊 2面

議事公開要求相次ぐ/「集団自決」検定

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題を受け、検定手続きの透明化を検討している文部科学省の教科書検定審議会の作業部会は三日、同省で会合を開いた。委員らは「結論が出たプロセスを明らかにする必要がある」との意見でほぼ一致。平穏な環境での審議を確保するために、検定後の議事公開を求める声が相次いだ。

 公開の在り方については、昨年の高校日本史の小委員会のような詳細な公開は実務上困難とする一方、教科ごとに公開を求める要望の強さに違いがあるとの指摘が出た。

 委員からは「意見申立書に対する審議がどう行われたかなど、問題化した部分の議論を公開することが重要」として、審議過程の透明化に一定の原則を設けることを促す意見もあった。

 公正・中立な審議をするための静かな環境の確保については「公開と矛盾するところもあり悩ましいが、検定委が十分審議できることが大切」などの意見が出された。

 作業部会は今後、意見を集約させ、なるべく早い時期に改善策をまとめる方針。四日も都内で、新しい教育課程の実施に対応した教科書の記述などに関する会合を開く。


県教委は中立性要請


 教科書検定手続きの透明化を検討している文部科学省の教科用図書検定審議会(検定審)総括部会に対し、県教育委員会が、全国都道府県教育長協議会を通し、中立性を確保し、幅広く専門的な見地から審議するよう求める意見書を提出していたことが三日、分かった。

 県議会六月定例会の代表質問で、仲村守和県教育長が、渡嘉敷喜代子氏(護憲ネット)に答えた。

 意見書は、同協議会が六月十三日に提出。専門的な見地での公正な審議を求めているほか、(1)児童・生徒が理解困難な表現や誤解の恐れのある表現がないようにする(2)正確な記述の確保―などを求めている。

 仲村教育長は「全国の教育長が沖縄の思いをくみ取ってくれた。教科書検定の撤回を求め、十一万人が集まった昨年九月の県民大会が大きな力になっている」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041300_06.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 1面

軍用地料2億3000万円流用/浦添・小湾地主会

 【浦添】米軍キャンプ・キンザーの軍用地主で構成する浦添市の字小湾共有地地主会(宮平忠一会長、会員数五百二十六人)で二〇〇一年四月、宮平会長と当時の宮城安次郎副会長が、福岡県でゴルフ場社長を務めていた比嘉実氏(現トロピカルテクノセンター=TTC=社長)から融資を頼まれ、同会特別会計から無断で軍用地料二億三千万円を不正流用していたことが四日までに分かった。その後、当該ゴルフ場が民事再生法を申請したため、回収不能になった。現在までに比嘉氏から七千万円の返済があったものの、残金の約一億六千万円は弁済されていない。宮平会長らは六月二十二日の臨時総会で問題を公にするまで、監査委員を説得して虚偽の監査報告書を作成するなど事実を隠していた。

 宮平会長は四日午前、同市宮城の同会で記者会見。「情けをかけ過ぎた。うんと後悔している」と謝罪。比嘉氏とは親同士が兄弟であることを説明し、「いとこであり、地域内でもこれほど能力がある人はほかにいなかったので…」と釈明し「刑事告訴されても仕方ない」としている。

 宮平会長によると、二〇〇〇年四月にゴルフ場社長に就任した比嘉氏から最初の融資依頼があり、特別会計を担保に金融機関から二億円を借り入れ不正流用。同年十二月に全額返済された。

 その後、〇一年四月に、再度の融資依頼を受け、同様に二億三千万円を貸し出したが、ゴルフ場の民事再生手続きで回収できなくなったという。

 宮平会長は融資を行う際、評議委員らからの同意を得ず、不正流用の発覚を免れるため三人いる監査委員のうちの一人に「私が責任を持つ」と頼み込み、虚偽の監査報告書を作成させ、定期総会に提出していた。

 拠出先となった特別会計は同会共有の土地収入などの基金。当時、口座には「三億円くらいあった」(宮平会長)という。

 宮平会長らは今年度、同会の役員改選で交代が決まっており、問題を隠し通せないとの思いから公表に踏み切った。臨時総会で会員を前に融資にかかわった宮平会長ら三人が謝罪。会員からは批判の声が上がった。返済計画を説明したが反対の声が多く、承認されなかったという。

 宮平会長は「私と当時の副会長、比嘉氏は責任を免れることはできない。生きている間は支払う義務がある。返済については責任を持つ」と語り、近く弁護士と弁済法をめぐり協議するとしている。

 字小湾共有地地主会の男性会員は「信じていたのに裏切られたという、強い怒りはある。今後本当に返済が可能なのか見守っていきたい」と不安げに話した。

 浦添市軍用地等地主会の関係者は「それだけの大きな金額を簡単に動かし、役員らの目を免れてきたことが不思議だ。公金の流用は、地主会の存亡にかかわることだ」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

「返せると思った」

融資受けた比嘉実氏


 融資を受けた比嘉氏は「登記上はまっさらなゴルフ場だったので、担保に入れれば二億三千万円は返せると思ったが、知らないうちに抵当に入れられていた。考えが甘かった。地主会や会長などに迷惑を掛けて申し訳ない。道義的責任があるのでTTCの社長の辞任も考えている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_01.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 7面

戦後の一歩 宜野湾活写/暮らしぶり 証言から再現

 終戦直後の宜野湾市の様子を記録した宜野湾市史第八巻「戦後資料編?」が発行された。野嵩収容所からの住民移動や軍作業などの戦後史を証言と戦後行政資料で立体的に記録。市町村史編纂が盛んな県内でも、戦後史着手はまだ少なく、戦後史に新しい一歩を刻む一冊だ。市史編集委員長の仲村元惟さん(71)は「行政文書と合わせて、住民の戦後初期体験を聞き取りで収録した。市民が作り上げた記録だ」と話す。(謝花直美)

 市民七十二人の沖縄戦時の避難、「捕虜」や軍作業の体験を収録。行政文書は、市史編纂委員会の要請を受け約三十年前に保存された一九四六年以降の物が元になっている。

 米軍普天間飛行場に関する記述では基地として接収された元の居住地へ立ち入り、生活の糧を得ていた様子などが分かる。

 四六年八月付の宜野湾村長から各区長に当てた「軍施設内立入ニ禁止厳守ノ件」では、食糧不足のため施設に入り芋掘りなどのため飛行場を通行することが布告違反であると禁止。四八年五月付の沖縄民政府総務部長から村長あての「飛行場内住民立入禁止について」は、米軍が飛行場を使用していないため住民が居住、農耕している実態を指摘し、禁止を通達している。

 住民の証言では基地立ち入りの様子が具体的に分かる。「同級生の男の子が飛行場内を通って宜野湾に向かう途中に轢かれて即死した」「飛行場には金網も何もなかった。(中略)鉄骨のような物資が放置されていた。(中略)滑走路もあって、そこにも入ったが何もなかった」「(五九、六〇年ごろに金網ができた時)当初、何を造っているのか分からなかった。フェンスができた時は異様な光景だった」

 仲村さんは「行政資料からは見えない部分は、住民の証言が当時の状況を語っている」と話した。

 B5判、八百四十八ページ、二千円。購入などの問い合わせは、同市教育委員会文化課市史編集係、電話098(893)4430。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_02.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 1面

コンテナ70個今月搬入/都市型訓練

 【東京】在沖米海兵隊が沖縄防衛局に対し、「宜野座村のキャンプ・ハンセンにある都市型戦闘訓練施設(コンバットタウン)で実施してきた訓練を補完するため、同施設などに(訓練用の)コンテナ約七十個を今月から搬入する」との意向を伝えていたことが四日、分かった。金武町「レンジ4」にある都市型戦闘訓練施設の移設先である「レンジ16」にも搬入する予定。

 米側は、実弾は使用しないとしているが、キャンプ・ハンセンでは、金武町のレンジ3付近でも米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃用射撃場建設が進んでおり、機能の強化に地元の反発が強まりそうだ。

 搬入目的について米側は「コンテナを組み合わせて街並みに模した建物を造ることができ、機動的かつ効果的な訓練環境をつくり出すことが可能」と説明。空き地部分を効率的に活用するとしている。

 日本政府は「米国予算により実施されるもので、このような訓練はこれまでに計画され、実施されてきたものであることから、日米安保条約の目的達成のために必要な訓練の一環と認識している」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_03.html

 

2008年7月4日(金) 夕刊 1面 

普天間代替「県内移設やむを得ず」/県議会で知事答弁

 県議会(高嶺善伸議長)の六月定例会は四日、代表質問二日目を行った。仲井真弘多知事は米軍普天間飛行場の移設について、「これまでの経緯を踏まえると、一刻も早い危険性除去のためには県内移設もやむを得ない。海兵隊のグアム移転や嘉手納以南の大規模な返還、基地負担の軽減、跡地の有効利活用を通じた地域振興に大きく寄与する」と述べ、県民の理解を求めて県内移設を推進していく姿勢を強調した。嘉陽宗儀氏(共産)に答えた。

 県が策定を進める沖縄21世紀ビジョンの進ちょく状況については「県の基本的な考え方を取りまとめ

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807041700_04.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 1面

新鉄軌道導入調査に県前向き

 県議会六月定例会代表質問二日目は四日午後も引き続き質疑が行われた。新型路面電車を含む鉄軌道の導入について、上原良幸企画部長は「新たな交通ネットワークは県土構造の再編につながる。軌道系を含む先進的な交通システムの導入調査に取り組んでいきたい」と、県が前向きに取り組む姿勢を示した。

 上原企画部長は、二〇〇九年度に普天間を含めた大規模駐留軍用地の跡利用等の予算があることを指摘。その活用を視野に調査へ乗り出す方針を打ち出した。

 沖縄の将来展望を示す「沖縄二十一世紀ビジョン」との関連にも触れ、「当然、ビジョンの中で取り上げる」と述べ、「政府と知事が協議する沖縄政策協議会に(議題として)持っていきたい。沖縄の進路を切り開き、国の活路を探るようなビジョンをつくり、実現するための制度を提言したい」との考えを示した。上里直司氏(民主)への答弁。

 後期高齢者医療制度への対応について仲井真弘多知事は「相当な改善が必要だが、国民皆保険制度を堅持し、高齢者の適切な医療を国民全体で支えるために必要な制度と認識している」と語った。嘉陽宗儀氏(共産)に答えた。

 宜野湾市の小学校で慰霊の日を前に行われた創作劇に対するメールでの中傷について、仲村守和教育長は「電話や電子メールによる抗議は遺憾だと言わざるを得ない」と述べた。新垣清涼氏(社大・ニライ)に答えた。

 同定例会は七日から一般質問がスタート。十日までの四日間で、計三十一人が登壇する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_03.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 2面

きょうからコンテナ搬入/都市型施設で在沖米海兵隊

 在沖米海兵隊がキャンプ・ハンセン内の都市型戦闘訓練施設(コンバットタウン)での訓練補完を目的に、五日から訓練用コンテナ七十三個を搬入することが四日、分かった。沖縄防衛局が明らかにした。移送作業は二十三日まで続く見通し。在日米軍基地で同様の訓練用機材が搬入されるのは初めて。

 コンテナは長さ約十二メートルで、幅と高さは共に約二・四メートル。宜野座村のコンバットタウンに六十三個、金武町のレンジ16に十個を搬入する。米側は実弾は使用しないとしているが、ハンセンでは金武町レンジ3付近で米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃用射撃場建設が進むなどの機能強化が進み、地元は反発している。

 宜野座村の東肇村長は「グアムへの海兵隊の移転もまだ具体的に決まっていない中、新たな機能が加えられるのは明らかに負担増だ」と強く不快感を示した。金武町の儀武剛町長は「レンジ16の工事も途中で、住民負担が減らない中、新たな訓練が始まるのは大変遺憾」と危機感を募らせた。

 搬入目的について米側は「コンテナ同士を組み合わせて街並みに模した建物を造ることができ、より機動的かつ効果的な訓練環境をつくり出すことが可能」と説明。現在の空き地部分を効率的に最大限活用する意向という。

 政府は「米国予算で実施されるもので、このような訓練はこれまでにも計画され実施されてきた。日米安保条約の目的達成のため必要な訓練の一環」との認識を示している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_07.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 29面

現金管理、幹部に一任/小湾地主会4億円流用

 【浦添】四億三千万円の巨額不正流用が明らかになった米軍キャンプ・キンザーの軍用地主でつくる浦添市の字小湾共有地地主会(五百二十六人)で、銀行口座など現金の管理が宮平忠一会長ら幹部の裁量に委ねられ、会員を含め外部チェックができなかったことが四日、分かった。同会の規約では、資金運用には評議員会の決議が必要となっているが宮平会長らは無断で流用していた。会員からは失望と怒りの声が上がっている。

 同地主会の会員は戦後、米軍に土地を接収され郷里を失った小湾出身者と子ども、その孫に限られ、個人ではなく住民共有の土地代など基金を管理している。任意団体で、監査委員は地主会の委員から選任されるという。

 会員の無職男性(57)は「八年間も不正に気付かなかったのはおかしい」と外部のチェック機能が働かなかったことを認め、体質改善を訴える。「会長の一存で金の使い道を決めたことが一番悪い。地主会をクリーンにし会員に事実をすべて発表すべきだ」と指摘。

 会員の信頼を裏切った同会幹部に失望と落胆の声も。会員の無職女性(79)は「(不正を)知ったときは驚いた。先祖の土地の地料を勝手に使うのは悪い。お金はもう返ってこないのではないか」と語った。

 六月二十二日の臨時総会で、宮平会長らは返済計画書を提示したが、会員からは反対の声が相次ぎ、承認は得られなかった。

 一方、地縁血縁を巧みに利用し融資を引き出した比嘉実氏(現トロピカルテクノセンター社長)への批判も噴出している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_09.html

 

2008年7月5日(土) 朝刊 29面

来年は航空ショーも/嘉手納基地アメリカフェスト

 【嘉手納】米軍嘉手納基地の第一八航空団は四日、米軍人と家族を対象に同日から始まったアメリカフェストを報道陣に公開した。五日は一般開放される。司令官のブレット・ウィリアムズ准将は、来年の同フェストで規模を拡大する考えで、航空ショーの開催を検討していることを明らかにした。

 航空ショーは二〇〇四年にも計画されたが、「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」などの反発で断念した。

 同司令官は、航空ショー開催は地元の理解が重要との認識を示した上で、「空軍は何百のエアショーを実施し、安全に行われている。地元住民にわれわれの任務や義務を知ってもらえるし、喜んでもらえる」と実現に意欲を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051300_10.html

 

2008年7月5日(土) 夕刊 4面

県民巻き込む軍命探る講義/大学講師の津多さん

 明治時代の大日本帝国憲法制定からさかのぼり、沖縄戦時下での「軍命」とは何だったのか探る講座「『軍命』の法体系」最終回が四日、那覇市内であった。沖縄平和ネットワーク主催。沖縄国際大学非常勤講師の津多則光さんが講義した。

 津多さんは、一九四四年八月三十一日付の第三二軍司令官牛島満中将の訓示を解説。特に「現地自活に徹すべし」「地方官民が喜んで軍の作戦準備、郷土防衛をするよう指導すべし」などの記述を挙げ、一木一草を戦力化し、沖縄県民すべてを戦争に巻き込む指示だった、と説明した。

 また「防諜に厳に注意すべし」との訓示が県民スパイ視につながった、とした。

 その上で、軍令は軍内部のものだが、戦時下や戒厳下では国民にも適用されるものだったとし、「集団自決(強制集団死)」や住民虐殺などは、当時の法体系と牛島司令官の訓示による、システムの中で起きたと分析した。


記述の在り方論議

教科書検定作業部会


 【東京】新しくなる学習指導要領を踏まえた教科書の記述の在り方を話し合う教科書検定審議会の作業部会が四日、都内であった。委員らは質と量両面の充実策などを検討した。沖縄戦に関する論議はなかった。

 中立性や正確性の確保については「通説的見解も使われているが、何が中立・公正か議論が分かれる。社会科はそう単純にいかない」などと慎重な意見が出た。

 イラストや挿絵については「理解のために不可欠なものと、単に子供に興味を持たせるだけのものは区別すべきだ」として、文脈に関係なく多用することに疑問の声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807051700_05.html

 

2008年7月6日(日) 朝刊 2面

嘉手納開発 終了祝う/施設活用で町の発展期待

 【嘉手納】沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)を活用した、嘉手納町の「嘉手納タウンセンター開発事業」の終了を記念した式典および祝賀会(主催・同実行委員会)が五日午後、同事業の一環で建設されたロータリープラザで開かれた。関係者が多数出席し、整備された施設を活用することで町がますます発展するよう期待を寄せた。

 実行委員長の宮城篤実町長は「町域の大部分を米軍基地が占め、八方ふさがりの状態だった。各事業の効果は着実に表れている。これまで事業にかかわってきた関係者とともに完成を祝いたい」と感謝した。

 内閣府の原田正司政策統括官は「事業によって町が活性化し、町民の生活が一層向上するよう期待する」とあいさつした。

 同事業の一環で建設されたビルで、四月から業務を行っている沖縄防衛局の真部朗局長は「わたしたちも事業の一部で、町民の一員となった。これからも周辺住民の生活安定、福祉向上に取り組んでいきたい」と述べた。

 式典には仲井真弘多知事をはじめ、島田懇談会座長の島田晴雄氏、元首相補佐官の岡本行夫氏らも出席した。

 「嘉手納タウンセンター開発事業」は、嘉手納町が島田懇談会事業で実施した三事業の総称。総事業費は約二百十八億円で、中心市街地の新町・ロータリー地区の再開発のほか、マルチメディアセンター(同町水釜)や「道の駅かでな」(同町屋良)などを整備、建設した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807061300_04.html

 

2008年7月7日(月) 夕刊 1面

基地内タクシー 年1億5000万円/06年 米軍と208台契約

 県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の一般質問が七日、始まった。米軍基地内に出入りする「ベースタクシー」が基地に支払う営業料について上原昭知事公室長は、直近の二〇〇六年入札で二百八台が米軍基地と契約し、年額約一億五千四百万円を払っていると説明した。AAFES(米陸・空軍エクスチェンジサービス)沖縄エクスチェンジ本部に照会したという。

 一台当たり料金は基地ごとに異なり、〇六年入札は月額最高が八万七千七百七十円、最低三万四千五百円。入札は〇四年十月から始まり、二回行われている。

 上原公室長は営業料の使途について、施設の維持管理や米軍人などの福利厚生費に充てられているとの説明を受けたとした。今年は入札予定はないという。

 営業料支払いの妥当性や県の対応については「契約当事者双方の同意で行われるため、県は関与する立場にない」としつつ、「県としてどのような対応が可能か研究したい」と答えた。

 米軍人・軍属とその家族の私有車両(Yナンバー車)の基地内外それぞれの車庫証明書登録数について、得津八郎県警本部長は「県警は制度上、把握できない」と答えた。いずれも仲村未央氏(社民・護憲ネット)への答弁。

 県が出資するトロピカルテクノセンター(TTC)社長の比嘉実氏が、浦添市の字小湾共有地地主会の特別会計から不正流用した融資を受けていた問題については、仲井真弘多知事が「公的役割を担う第三セクターの社長が事態に関係したことは大変遺憾。比嘉氏は辞任の意向を示しているが、具体的対応は同センター取締役会で協議される」と述べた。新里米吉氏(同)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807071700_01.html

 

2008年7月7日(月) 夕刊 7面

比嘉氏、辞任を表明/地主会預金流用

 【浦添】浦添市の字小湾共有地地主会の宮平忠一会長らが、親類で福岡県のゴルフ場社長を務めていた比嘉実氏(65)=現トロピカルテクノセンター(TTC)社長=から融資を頼まれ、二回にわたり同会特別会計の定期預金から計約四億三千万円を不正流用した問題で、比嘉氏が七日午後、那覇市内のホテルで記者会見を開いた。比嘉氏は「地主会との二度にわたる公的な借用関係はすべて報道の通り。公的機関とも関係するTTCの社長としてこれ以上、重責を全うすることはできず、辞任する。社員、株主などに多大な迷惑を掛けた。心からおわび申し上げる」と語った。

 その上で「伝統ある字小湾共有地地主会の名誉を著しくおとしめたばかりか、返済ができない現状にあり、取り返しがつかないことをしてしまった。私の命ある限り、返済に全力を尽くしたい」と述べ、地主会に除名申請する考えを明らかにした。

 県の仲田秀光観光商工部長は「先週末にTTC側から事情を聞き、関与していたとの報告を受けた。重要事件に社長が関与したのは誠に遺憾。今後の対応は取締役会などで関係者と意見交換して対応したい。TTCには直接関わりないことなので、日常業務に支障のないよう専務には伝えた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807071700_02.html

 

2008年7月8日(火) 朝刊 25面

道が陥没 地下に旧軍壕/糸満・兼城の狭間線

 【糸満】糸満市兼城の市道狭間線で旧日本軍が掘った壕とみられる空洞が原因で、道路陥没が頻発している。陥没が度重なる地点の民家では、コンクリート壁のはく離やひび割れ、地盤沈下も起きている。市道は小学校への通学路として児童が利用しているほか、車の交通量も多い。付近住民は自然災害時の被害を懸念、抜本的な対応策を求めている。糸満市は「県とも協議して早めに対応したい」としている。(新垣亮)

 現場は市兼城を通る狭間線の一部。以前から市道の地下に旧日本軍が掘ったとされる防空壕の存在が知られていた。二〇〇五年三月の修繕工事では壕とみられる空洞も確認されているが、正確な規模は分からないという。市は陥没する度に補修工事を重ねてきたが、新たなアスファルトの亀裂がみられるなど被害は後を絶たない。

 現場に隣接する高嶺敏雄さん(77)の自宅では、コンクリート壁のはく離やひび割れが激しい。壁や庭に植えたクロキが傾き、ガードレールの基礎がむき出しになっている個所も。

 高嶺さん宅の周辺は県が定める「地滑り危険箇所」。高嶺さんは「台風などの大雨で自宅の壁が倒れたりしないか心配だ。集落にとっては重要な道路で車の行き来も多く、大きな事故につながるかもしれない。応急処置ではなく、きちんと対策を施してほしい」と語った。

 糸満市は県の担当者とともに六月下旬に現場を調査。同市建設部の金城利男都市計画課長は「調査をさらにすすめ、県と協議しながら早急に対応したい」と話した。

 同問題は七日の県議会一般質問で取り上げられた。県の漢那政弘土木建築部長は「糸満市の意向を踏まえ、国に特殊地下壕対策事業の予算要望をしていく」と述べた。玉城ノブ子氏(共産)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807081300_02.html

 

2008年7月8日(火) 朝刊 25面

全21学徒隊の戦禍刻む/ひめゆり平和祈念資料館

初の資料集を刊行

 沖縄戦で動員された全二十一学徒隊の行動記録や証言をまとめた「沖縄戦の全学徒隊」(ひめゆり平和祈念資料館編集)が、このほど刊行された。県内各地にそれぞれの任を受け駆り出された全校の記録を集めることで、学生が動員された戦争の実態を立体的にとらえようと企画。各校同窓会の高齢化が進む中、歴史継承のため、関係者が八カ月かけて編集した。すべての学徒隊の動向を詳細に網羅した資料は初めてという。

 資料集は、各同窓会記念誌や国、県、地域の戦史を基に作成。各学校の動員前の訓練から戦時下での作業と任務、解散命令から避難の様子まで、日時、場所、犠牲者の数や状況を、地図や写図で克明に記録している。解散後に斬込隊参加を命じられたり、八月末まで軍と行動を共にさせられた学校もあった。

 証言では、憲兵が慰安婦に命じ、スパイ容疑をかけた住民を銃剣で突かせた後、自ら日本刀で虐殺した場面や、爆雷を抱え敵戦車に飛び込む「肉迫攻撃命令」、学徒に「自決」を強要した兵隊が投降したこと、野戦病院のむごたらしい様子などが記されている。

 巻頭、巻末には、当時の教育制度や学徒動員に関連する法規、部隊の組織図、専門家による用語や戦況解説も掲載され、資料や証言を補完する内容になった。

 編集を手掛けた同資料館の普天間朝佳学芸員は「慰霊祭ができなくなった会もあり、記録の必要性を感じていた。多くの体験者に協力してもらい、歴史の真実を伝えたいという、強い思いを実感した」。資料提供などで協力した首里高校養秀同窓会(旧制県立一中)展示室担当の岸本政一さん(79)は「体験者が協力し、学徒動員の歴史を風化させないようにしたい。意義深い本ができた」と話した。

 資料集は二千部発行。同資料館で原価販売している。問い合わせは同館、電話098(997)2100。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807081300_08.html

 

2008年7月8日(火) 朝刊 25面

TTC社長 辞任へ/地主会預金流用

 【浦添】浦添市字小湾共有地地主会の宮平忠一会長らが計約四億三千万円を不正流用した問題で、融資を依頼した福岡県のゴルフ場元社長、比嘉実氏(65)=現トロピカルテクノセンター(TTC)社長=が七日、那覇市天久のエッカホテル沖縄で記者会見し、事実関係を認めた上で「公的機関とも関係するTTC社長の重責を全うすることはできず、辞任する」と述べ、辞任する意向を表明した。

 比嘉氏は「地主会との二度にわたる公的な借用関係はすべて報道の通り。社員、株主などに多大な迷惑を掛けた。心からおわびしたい」と陳謝。

 その上で、「背後に大きな問題がある。解明に力を貸してほしい」とし、ゴルフ場を取り巻く資金の流れなどを記した自筆の図解を基に説明。県内金融機関から融資を受ける際の担保設定で、「無断で内容を伏せ取締役に私の代表印を押させていた」と主張。不正融資があるとして経緯を金融庁に報告、裁定を仰ぎたいとしている。県の仲田秀光観光商工部長は「重要事件に社長が関与したのは誠に遺憾。今後の対応は取締役会などで関係者と意見交換して対応したい」と話した。

 宮平会長らは同会特別会計の定期預金を担保に二〇〇〇年四月、金融機関から二億円を借り入れ不正流用。その後、二億円は返済されたが、〇一年四月にも同様に二億三千万円を貸し出し。ゴルフ場の民事再生適用手続きで、担保に保有していた同ゴルフ場株券と約束手形は無価値となり、回収不能になった。比嘉氏から七千万円の返済があったものの、残金の約一億六千万円は弁済されていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807081300_09.html

沖合1310メートル案 国に要望/那覇空港滑走路増設 独軍など北部訓練場視察/米軍機関紙報道 沖縄市長、協定更新せず/泡瀬・保安水域 ハワイ大に沖縄センターなど 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(7月1日、2日、3日)

2008年7月1日(火) 朝刊 1・2面

沖合1310メートル案 国に要望/那覇空港滑走路増設

知事、町村氏と会談

 県は一日までに、那覇空港の滑走路増設について、総合調査ステップ3で示された三案のうち、現滑走路から最も沖合に建設する「千三百十メートル案」を推進する方針を決めた。仲井真弘多知事が六月二十四日に都内で町村信孝官房長官と会談し、同案の実現を要望した。三十日に県庁で沖縄タイムス社の取材に答えた。知事が政府高官に具体的な滑走路位置の支持を伝えたのが判明したのは初めて。(吉田央)

 仲井真知事は那覇空港の沖合展開について、町村官房長官に対し「われわれは『なるべく沖合に』という強い思いがある」と要望。国土交通省から千三百十メートル案に慎重な考えが県に伝えられていることを説明し、「なぜ急にこのような話が出たのか」とも尋ねた。町村官房長官から明確な回答はなかったという。

 那覇空港に関する総合調査ステップ3では、現在の滑走路と新たな滑走路の間隔で(1)二百十メートル(2)九百三十メートル(3)千三百十メートル―の三案が提示された。

 国連経済社会理事会の専門組織・国際民間航空機関(ICAO)は条約三十七条の付則で、二本の滑走路がある空港がそれぞれ同時に離陸と着陸を管制できる「オープンパラレル」の条件として、滑走路の間隔を千三百十メートル以上空けることを義務付けており、県は効率的な運用が図れるとし、同案を支持している。

 会談ではほかに、北海道洞爺湖サミット後の内閣改造の可能性や、米大統領選の見通しなどが話題になったという。二橋正弘官房副長官、仲里全輝副知事も同席した。

 仲井真知事は「慰霊の日」に来県した福田康夫首相とも那覇空港で会談。当初は那覇空港に関して同様の考えを伝える意向だったが、会談の時間が短かったことなどから断念したという。

 一方、那覇空港の沖合展開で仲里副知事は三十日、県庁で沖縄総合事務局の成瀬英冶港湾空港指導官と会談し、「今の滑走路を民間専用にして、沖合を自衛隊と共同使用する議論をすべきかなと思う」と述べ、新設される滑走路を自衛隊が使用する運用形態を提起した。


     ◇     ◇     ◇     

県、複数の利点見込む/国は難色 930メートル案推す


 仲井真弘多知事が那覇空港の沖合滑走路展開で、町村信孝官房長官に千三百十メートル案を要望したのは、同案に複数の利点があるとの判断からだ。二つの滑走路で同時に離陸や着陸ができる「オープンパラレル」実現のほか、自衛隊機の沖合側滑走路使用で騒音軽減、将来的に滑走路の間に旅客ターミナルを建設する際の十分なスペースが確保可能などを想定している。

 ただ、県が千三百十メートル案の支持を明確化するのに伴い、国土交通省は沖縄総合事務局などを通じて九百三十メートル案を推す意向を県に伝えているという。

 仲井真知事や幹部に戸惑いが広がっており、三案の絞り込みに向けた火種になりそうだ。

 仲里副知事は三十日、沖縄総合事務局の成瀬英冶港湾空港指導官に「なるべく(滑走路間の)距離が短いのを選ぼうという動きもあるようで心配している」と苦言を呈した。

 県が国の姿勢に違和感を持つ理由は、九百三十メートル案の概算事業費が二千五百億円で、千三百十メートル案の二千四百億円より高いことだ。歳出削減基調で大型公共工事を実施する際、経費は重要な判断材料になるが、今回は逆行していると映る。

 ある県幹部が国にこの点を指摘すると、「案には複数のバリエーションがあり、最終的な経費はまだ分からない」という趣旨の返答があったという。この幹部は「いまさら計算間違いだと言われても困る。本音はどこにあるのか」と困惑する。

 国は表向き「現時点で何ら方向性は出していない」(国交省)との姿勢だが、仲井真知事は「国交省も当初はなるべく外(沖合)という姿勢だった。急に変わった」と受け止めている。

 オープンパラレルが実現すれば、二つの滑走路に同時に着陸機が近づいた場合、一機が空中で旋回しながら待機する必要がなくなる。沖合側の滑走路を自衛隊が使用した場合の騒音も、滑走路の間隔が広いほど軽減されることが見込まれる。

 県関係者の間では「那覇空港は本土とつなげない国道58号に代わる空の国道だ。国交省は目先の空港特会(空港整備特別会計)ではなく、五十年、百年先の沖縄振興を考え、大局的に判断してほしい」(経済界)などの意見も挙がっている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_01.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 27面

教科書問題「関係ない」/新指導要領で文科省が見解

 【東京】文部科学省は三十日、二〇一一年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に「沖縄戦」を明記することについて、「沖縄戦をしっかり教えることを明確に示した」としつつも「教科書検定意見をめぐる議論には直接関係ない」との見解を示した。沖縄タイムス社の取材に答えた。

 解説に「沖縄戦」が明記される影響として(1)教諭が多くの場合、授業で取り上げるようになる(2)教科書会社がさらに記述を充実させる可能性がある―などと指摘。その上で、「これまで教科書会社の判断で記述されていたものが、国として取り上げよう、と示したものであり、(沖縄戦の)学習が進むのではないか」と述べた。一方で「どう教えるかは別問題。取り上げ方には触れていない」とした。

 「集団自決」と軍とのかかわりについては「新指導要領に基づいた教科書を見て、もう一度事実はどうだったか、学説などを踏まえて次の検定で判断する」との考えを示した。

 新指導要領では「第六学年の目標と内容」で、歴史学習の例として第二次世界大戦を明記。解説書は「我が国が連合国と戦って敗れたことを調べ、各地への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下など、国民が大きな被害を受けたことが分かるようにする」との指針を示している。

 文科省は同日、都内で、関東を中心とした自治体の代表らに解説書を説明した。沖縄は十、十一の両日、福岡市内での説明会に参加する予定。


     ◇     ◇     ◇     

検定撤回こそ重要/「実相ゆがむ」関係者懸念


 「沖縄戦の実相をゆがめる恐れがある」「まず検定意見撤回を」。文科省の小学社会科の新学習指導要領解説書に、他の国内の戦争被害と併記して「沖縄戦」が盛り込まれたことに、県内で懸念が広がっている。

 沖縄歴史教育研究会の新城俊昭代表(宜野湾高校教諭)は、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制を削除させた二〇〇六年度の高校教科書検定意見が撤回されていないと指摘。「文科省のスタンスに従えば『日本軍による住民殺害』という沖縄戦の大きな特徴を教えられず、被害だけを教えることになる。これでは正確な歴史を学習できない。まずは検定意見を撤回するべきだ」と話した。

 沖教組の大浜敏夫委員長も、「特に他県の教師は、きちんと学ばなければ、沖縄戦の特質が分かならくなる」と危惧。実際の教科書で正しく記述されるよう、県民が監視し、執筆者や教科書会社を支えることが必要だと訴えた。

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」の玉寄哲永副委員長は「私たちが求めたのは、県民が日本軍によって殺されたり『集団自決』させられた事実を隠さないこと。文科省は県民の要求に応えず、『関与』程度の言葉に置き換えたまま、定着させようとしている」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_02.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 2面

基地外居住 1491人増

 【東京】防衛省は三十日、今年二月の米兵暴行事件を受けた再発防止策の一環として、基地外に居住する米軍人・軍属やその家族の数(二〇〇八年三月末時点)を発表した。県内では前年比千四百九十一人増の一万一千八百十人が居住。基地内も含めた総居住者数が千九十四人増えている一方で、基地内居住者は三百九十七人減っており、人口分布が基地内から基地外へ移動している傾向が浮き彫りとなった。

 県内の米軍基地内には現在、約一割の空き家があることが分かっているが、日本政府が費用を負担して整備している基地内住宅への居住の在り方があらためて問われそうだ。

 米軍人らの基地外居住者は全国で二万四千八百八人。その約半分を沖縄が占めている。自治体別では、神奈川県横須賀市が三千五百三十二人で最も多かった。県内では北谷町が三千二百二十三人(前年比三百三十人増)、次いで沖縄市(同三百七十六人増)が三千八十一人だった。

 前年比で最も増えたのは読谷村で、六百五十八人増の千八百八十一人。減少した自治体もあり、うるま市では五人減の千三百二十九人だった。

 人数は在日米軍司令部が提供し、防衛省がまとめた。米兵暴行事件を受け政府は、再発防止策の一環として、米側が年に一度、基地内外の居住者数を日本側に提供し、日本政府が自治体と共有すると発表していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_03.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 2面

普天間移設で論戦へ/県議会代表質問

 開会中の県議会六月定例会は三、四の両日、代表質問で六会派の八氏が登壇する。質問通告が六月三十日、締め切られた。十二年ぶりに与野党逆転を果たした野党は、県議選の結果が県政への評価との認識を示していた仲井真弘多知事に、与党敗北の見解を求めるほか、追い風になった後期高齢者医療制度への認識も追及する構えだ。

 一方の与党会派は仲井真知事の公約でもある自立型経済構築に向けた取り組みを中心に、県のスタンスをただす。与野党とも米軍基地問題では普天間飛行場の移設問題、日米地位協定の見直しなどに質問が集中しており、論戦は熱を帯びそうだ。

 代表質問の日程、質問者は以下の通り。

 【3日】翁長政俊氏(自民)、新垣良俊氏(同)、渡嘉敷喜代子氏(社民・護憲ネット)、当銘勝雄氏(同)

 【4日】嘉陽宗儀氏(共産)、金城勉氏(公明県民会議)、上里直司氏(民主)、新垣清涼氏(社大・ニライ)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_07.html

 

琉球新報 社説

新指導要領解説書 史実を正しく継承してこそ 2008年7月1日

 文部科学省が、2011年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に、「集団自決」(強制集団死)など多くの犠牲者を出した沖縄戦や連合国軍(米軍)の無差別爆撃、原爆投下といった事例を初めて明記することが分かった。正しい史実の継承へ向けて一歩前進であり、歓迎したい。

 文科省はこれまで、第2次世界大戦の被害などを小学校の授業でどのように教えるかは一定程度現場の裁量に任せていた。

 学習指導要領は、学校が児童・生徒に教えなければならない学習内容など教育課程の最低基準で、ほぼ10年ごとに改定されている。新学習指導要領で日本国民が受けた被害について、学習する機会を充実させるとしている。

 昨年3月、文科省は高校歴史教科書から沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)を日本軍が強制したとする記述を削除した検定意見を公表。これに納得しない県民は11万6000人(主催者発表)が9月29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加し抗議した。

 県民大会実行委員会などの要請に対し、渡海紀三朗文科相が「沖縄戦に関する学習がより一層充実するよう努めたい」としていたことの具体的な表れだろう。

 学習指導要領の内容を補足する解説書は、文科省が各教科ごとに編集している。教諭の授業指導の指針になっており、教科書もそれを参考に作成されることから、学校現場に与える影響は大きい。

 先の大戦で米軍は、沖縄の10・10空襲をはじめ、東京や名古屋などで国際法に反する無差別爆撃を展開。東京空襲では約10万人の市民が死亡したといわれる。広島と長崎に「悪魔の申し子」と言うべき原子爆弾を投下した。これら歴史的事実は、思想的解釈などはひとまず脇に置いて、正確に後世へ伝えていかねばならない。

 望むべきは、解説書にとどまらず、小中高校の社会科(日本史)に正確な史実を掲載してほしいということだ。特に「集団自決」に関しては、昨年の教科書検定をきっかけに、危機感を覚えた体験者が重い口を開き「正しい事実を残したい」と体験を語り、手記を残すなどの行動に出た。

 教科書検定審議会は、沖縄戦の体験者や研究者の意見を求めることはもとより、沖縄戦の記録を記した県史や市町村史、住民の体験記なども参考にしてほしい。

 むろん被害ばかりでなく、日本が行った中国や朝鮮半島などへの戦争加害の事実もきっちりと伝えたい。

 きょうという日は過去の上に成り立ち、あすはきょうの結果という。史実は正しく継承されてこそ、確かな未来は約束される。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133717-storytopic-11.html

 

2008年7月1日(火) 夕刊 1・5面

独軍など北部訓練場視察/米軍機関紙報道

 自衛隊、ドイツ、イスラエル、オランダの四軍幹部が、将来の訓練を視野に入れて米軍北部訓練場(国頭村、東村)を視察していたことが、一日までに分かった。在沖米海兵隊の機関紙「オキナワマリーン」が報じた。日米以外の外国軍が在沖米軍基地使用を検討していることが明らかになったのは初めて。自衛隊の視察について、防衛省は事実関係を確認中としている。基地の過重負担に苦しむ県民の反発は必至で、政府の対応が注目される。

 在沖米軍基地は在日米軍の再編に伴い、キャンプ・ハンセンで自衛隊との共同使用が今年三月から始まった。嘉手納基地の使用も予定されているが、北部訓練場は対象になっていない。

 同紙によると、視察は今年五月二十一日。米バージニア州クワンティコ基地の海兵隊戦闘開発指揮(MCCDC)に出向する四軍の連絡担当将校が参加し、海兵隊のジャングル戦闘訓練を見学した。ジャングル戦闘訓練技術のカリキュラムや、性別に関係なくすべての海兵隊員が訓練に参加していることなどが説明されたという。

 同行した米MCCDCのマーク・ギブソン少佐は目的について、第三海兵遠征軍(?MEF)と将来の連携のためだと説明し、「今回の訪問は今後の長期的な目標へのステップとなった」と述べた。在沖米海兵隊は、米軍以外の施設使用は最初に日本政府の許可が必要だと言及したという。

 ドイツ陸軍連絡官ジョージ・エーレット先任上級曹長は「とても素晴らしいプレゼンテーション。ここで訓練を試みることを楽しみにしている」と話したという。


     ◇     ◇     ◇     

現場に作業車 住民抗議/高江ヘリパッド移設


 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、工事中断期限の切れた一日午前、沖縄防衛局員や業者、作業車が現場を訪れた。警戒中の反対派住民や支援者数人が立ちふさがり、局員らと激しく口論、一時騒然とした。

 局員らが去った約十分後、作業員七人が別ゲートから現場へ入り、うち二人が環境調査などを行ったもよう。北部訓練場を自衛隊と、独など四カ国軍が視察したことも明らかになり、反対派は危機感を強めている。

 午前十時、N―4ゲートに、クレーン車など大型車二台と局員らが現れ、「提供施設内です。不法占拠はやめなさい」と立ち退きを要求。ゲート前に待機していた反対派住民や支援者らは、街宣車の上から「米軍基地は造らせない。あなたたちこそ帰れ」などと激しく抗議し、約五分間、にらみ合った。

 局員らはビデオカメラで反対派の動向を記録した後、「必ず工事はします」と言い残し、現場を後にした。約十分後、作業員数人が、ほとんど未着工とみられるG地区付近に入り、約二時間後に外へ出た。「環境調査か」との問いに「はい」と答え、足早に車に乗り込んだ。

 作業員七人が入っていったのを確認したヘリパッドいらない住民の会の伊佐真次共同代表は「一日から来るとは、相手の本気さを感じる」とし「もっと多くの人数で阻止行動を展開しなければ」と危機感を抱いた。

 同訓練場で自衛隊と、三外国軍がジャングル戦闘訓練計画を検討していることについて、同会の安次嶺現達共同代表は「まったくひどい話だ。どうしてこの時期にこんな話が進んでいるのか。現実となれば米軍による事件・事故だけでは済まされない」と話した。

 応援に駆け付けた平和運動センターの山城博治事務局長は「多数の国が北部訓練場を視察していたことで、負担軽減が真っ赤なうそだと証明された。機能強化のためにこの小さな集落にヘリパッドを移設することは許さない」と語気を強めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011700_02.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 1面

沖縄市長、協定更新せず/泡瀬・保安水域

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業のため、沖縄市と米軍が締結している米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、沖縄市が今後の協定更新について「新たな基地の提供につながるため署名できない」と事業者の国と県に四月末に通知していたことが一日、分かった。

 これを受け、県は市長に代わって県知事を署名者とする文書を沖縄防衛局長あてに送っているが、米軍からの回答はないという。

 同日の市議会六月定例会で東門美津子市長は「昨年九月に一年期限で更新したが、(埋め立て後は)新たな基地の提供になり、土地利用の制限もある」と説明。「推進せざるを得ない(工事中の)第一区域は保安水域にかからないので影響はない」と述べた。

 東門市長は昨年十二月、同事業について「第一区域は推進、第二区域は推進困難」との考えを正式に表明した。

 市は保安水域にかかる部分については、完成後の土地利用を検討する範囲に入れないとしている。

 知事が署名者となることについて県港湾課は「県にも臨港道路や緑地利用の計画がある。共同使用を継続しなければ埋め立て工事ができなくなる恐れがあり、事業を円滑に進める必要がある」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_02.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 31面

新嘉手納爆音訴訟控訴審/10月結審

 米軍嘉手納基地の周辺住民五千五百四十人が、日米両政府に夜間と早朝の飛行差し止めと、損害賠償などを求めている新嘉手納爆音訴訟控訴審の口頭弁論が一日、福岡高裁那覇支部(河邉義典裁判長)であった。うるささ指数(W値)八五―九五の原告三人が本人尋問で、日米の騒音防止協定が形骸化している点を強調。墜落への不安や生活・睡眠妨害などを訴え、「せめて夜間の飛行の差し止めを」などと求めた。

 控訴審は十月一日の次回弁論で結審し、来年三月ごろに判決が出る見通し。

 うるま市栄野比(=W値八五)のタクシー乗務員、兼島兼俊さん(63)は「旧訴訟から爆音は一向に改善されていない。静かな夜を返してほしいという、ささやなか願いをかなえてほしい」と証言。嘉手納町屋良(=W値九〇)の町議会議員、田仲康栄さん(63)は、飛行経路の変化で自宅上空を戦闘機が旋回するようになり、騒音被害が増していると主張した。

 北谷町砂辺(=W値九五)のタクシー乗務員、国場幸吉さん(57)は「睡眠不足が仕事に影響するなど、精神的にも肉体的にも耐えられない」と述べた。

 原告側は、国が採用している騒音の測定方法は、県の測定結果と大きな食い違いがあり、騒音の実態を過小評価しているとあらためて主張した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_04.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 30面

住民阻止行動で工事再開中止/高江区ヘリパッド

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の東村高江区周辺への移設問題で一日、沖縄防衛局は住民らの阻止行動で立ち入りを自主的に中止した、と説明した。

 同局によると、N―4地区では、仮設事務所を設置するため、工事現場に資材を搬入しようとしたが、妨害のため入ることができなかったという。G地区では、測量調査のため工事現場へ入ったが、反対派住民らが集結したため、危険回避の観点から自主的に中止したとしている。二日以降も工事再開への理解を求めていくという。

 ヘリパッドいらない住民の会は六月三十日から二十四時間の監視態勢を続けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_09.html

 

琉球新報 社説

外国軍の訓練 演習のメッカなどご免だ 2008年7月2日

 ドイツ、イスラエル、オランダの軍隊が米軍北部訓練場でジャングル戦闘訓練を検討していることが明らかになった。

 海兵隊が管理する北部訓練場は米軍が有する唯一のジャングル訓練施設だ。海兵隊、陸、海、空軍各部隊による歩兵演習、ヘリコプター演習、脱出生還訓練などが行われている。

 この上、他国の軍隊が使用するのは基地機能の強化にほかならず、断じて容認できる話ではない。

 沖縄は復帰後36年が経過した現在も、国土のわずか0・6%にすぎない県土に在日米軍専用施設面積の4分の3が集中している。

 米軍基地と隣り合わせの生活を余儀なくされた県民は、米軍機の発着による耐え難い騒音被害に加え、基地から派生する事件・事故の脅威にさらされている。

 過重な基地負担を少しでも軽減させるため米軍の演習はできるだけ減らすべきであって、他国の軍隊に訓練させるなど言語道断だ。

 米海兵隊は、米国以外の軍隊が訓練場を使用するには日本政府の了承が必要と説明している。

 まかり間違っても日本政府が承諾することがないよう、県の側から、あらかじめ強くくぎを刺しておく必要がある。

 米海兵隊のホームページによると、ドイツ、イスラエル、オランダの各軍隊と自衛隊の連絡官が5月21日に北部訓練場を視察した。ドイツ陸軍の連絡官は「ここで訓練できることを楽しみにしている」などと感想を語っている。

 各国軍隊は、北部訓練場で有意義な訓練ができると期待しているかもしれないが、地元にとっては招かれざる客でしかない。

 ひとたび他国の軍隊が訓練場を使用すれば、これをきっかけとして沖縄の米軍基地に世界中から軍隊が集まるようになるだろう。演習のメッカと化したのではたまったものではない。

 北部訓練場では6月9日から13日にかけて120人以上の海兵隊予備歩兵隊(米ミシガン州)が訓練を実施していた。

 沖縄駐留の部隊以外にも使用が拡大されていることは、県民が求める基地負担の軽減に明らかに逆行している。

 日米安全保障条約は、米国に対する施設・区域の提供義務を規定し、その使用目的を「日本国の安全」「極東における国際の平和および安全の維持」に寄与することと定めているが、他国の軍隊が使用していいとはどこにも書いていないのである。

 第三国の軍隊による戦闘訓練は日米地位協定上も認められていない。米軍が、将来的な訓練実施を視野に、他国の軍関係者に訓練場を視察させたこと自体、本来、許されるべきことではない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133743-storytopic-11.html

 

2008年7月3日(木) 朝刊 2面

情報伝達体制を確認/総事局が防災訓練 海保・陸自も参加

 沖縄総合事務局は二日、那覇市の第二地方合同庁舎で、災害時の情報伝達体制の強化を目指す「二〇〇八年度防災訓練(風水害)」を実施した。海上保安庁、陸上自衛隊の担当者ら約六十人が災害対策室に集まり、被災を想定した現場の各事務所などを含め約百人が訓練に参加した。三年前から年に二回、各部で実施しており、同局全体での訓練は初めて。

 同局の福井武弘局長は「災害時においては迅速かつ的確な情報の伝達と、関連機関との防災情報の共有が極めて重要。災害対策室の機材を使いこなし、的確な行動を取ってほしい」とあいさつした。

 訓練は集中豪雨の影響で本島全域と石垣島に大雨洪水警報、宮古島に大雨警報が発令されたと想定。現場の被災情報を道路管理班や河川班などの担当者が集約し、災害対策本部(本部長・福井局長)に報告した。

 同局と海上保安庁からヘリコプター二機が出動し、上空からの映像を配信したほか、北部ダム統合管理事務所などとテレビ会議を実施した。九月には地震を想定した防災訓練を予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031300_05.html

 

2008年7月3日(木) 朝刊 25面

大型輸送機また飛来/CH53D積み 飛び立つ

 【宜野湾】二日午前九時半ごろ、米軍普天間飛行場に米空軍の超大型長距離輸送機C5ギャラクシー一機が飛来した。二〇〇四年八月に沖縄国際大学に墜落したヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリ二機を積み込み、同日午後三時ごろ飛び立った。

 ギャラクシーは六月に同飛行場に四回飛来し、CH53D十機のうち、八機を輸送していた。今回の輸送で、同飛行場に配備されるCH53Dはゼロとなった。

 この日の輸送で全十機が別の基地へ運ばれたが、在沖米海兵隊は行き先を明らかにしていない。CH53D再配備の可能性についても、「保安上の理由で訓練や配備の計画は公表できない」と回答した。

 CH53Dは沖国大での事故後、〇七年十一月から〇八年一月にかけて同飛行場に再配備された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031300_06.html

 

琉球新報 社説

泡瀬埋め立て 署名人変更は時代に逆行 2008年7月3日

 中城湾港泡瀬沖合埋め立て(沖縄市東部海浜開発)事業で、米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる第2区域の共同使用協定書に署名しない方針を打ち出した東門美津子沖縄市長に代えて、署名人を仲井真弘多知事にすることを沖縄総合事務局と県が決めた。

 東門市長は昨年12月、第2区域現行計画の「推進は困難と判断した」と表明。ことし4月には署名しないことを国と県に通知している。

 第2区域の土地利用の主体である沖縄市長の考えを国と県が無視する形で、埋め立てを推し進めていくのはいかがなものか。

 目的を達成するためには「手段を選ばず」という手法はあまりにも乱暴である。

 自治体の主体性を奪うような署名人変更は、地方の時代に逆行する行為と言わざるを得ない。

 東門市長は泡瀬沖合埋め立て事業を(1)沖縄市の経済発展につながるのか(2)干潟等の自然環境は守れるのか―の観点を基本に検討したという。

 その結果「新たな基地提供になり得るとともに、土地利用に制約が生じる」ことや「(絶滅危惧(きぐ)種の)クビレミドロが生息していることや残余の部分は大半が干潟にかかる」ことなどを理由に「推進は困難」との判断に至った。

 県は「(第2区域の)埋め立て地には、県が計画している臨港道路や外周緑地帯の整備が含まれる。事業を円滑に推進するためには、共同使用協定の継続が必要だ」としている。

 県の意向よりも、市長の責任で判断した結果の方が軽いということにはならないはずである。

 国と県が決まりを変えてまで自らの考えを押し付けることは地方分権に反する。署名人が容易に差し替えられるということは、協定書が単なる形式にすぎないということにもなりかねない。

 泡瀬沖合埋め立て事業については、賛否があるだけにより慎重な対応が必要だ。

 強行姿勢とも受け取られかねない署名人変更は問題解決をさらに難しくするばかりか、対立を深刻化させる懸念がある。

 地元の代表である沖縄市長が共同使用協定書の署名人となることが自然な形である。露骨な「沖縄市長外し」は市だけでなく、賛否に揺れる市民までをも無視することにつながる。

 東門市長は昨年12月の会見で「国・県と協力して解決しなければならない課題がある」として、国・県と協議する姿勢も示していた。

 国と県、沖縄市の三者が東門市長の計画見直し要求について市民にも内容が分かる形で、まずは話し合うべきである。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133797-storytopic-11.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 1面

知事、「沖合」要求を堅持/普天間飛行場移設/県議会答弁

 県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の代表質問が三日午前から始まった。仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場移設問題で、名護市や県が求めている代替施設の沖合移動で政府との交渉が難航していることについて「政府が地元の意向に十分配慮することで、移設はより円滑に進むと考えている」と述べ、沖合への移動が早期移設の前提となるとの認識を示した。

 知事が認可権限を持つ移設先の公有水面埋め立てへの対応について漢那政弘土木建築部長は「国が承認願書を出す前に、代替施設の位置などについて、国、県、関係市町村が合意する必要がある」と述べ、合意前の認可には応じない姿勢を示した。最初に登壇した翁長政俊氏(自民)への答弁。

 普天間飛行場の三年めどの閉鎖状態の実現や可能な限りの沖合移動について「今後の取り組む方向性について協議会の場で確認する必要がある」と述べ、次回の普天間移設協議会で政府に求めていく姿勢を示した。同飛行場の危険性除去については「基地の提供責任者である政府が示す必要がある」と指摘した。

 県発注工事の談合問題に伴う県の損害賠償請求で、公正取引委員会の違反認定を受けていない共同企業体構成員(Aランク業者)の免除について「規定の趣旨、国の事例等を検討し、複数の法律専門家の意見を聴いた上で、(共同企業体の)各構成員に連帯責任を問うことにした」と否定的な考えを示した。

 業者が損害賠償の減免などを求める調停を申し立てる準備を進めていることについて漢那部長は「仮に県が(減免などの)勧告を受け入れた場合、国は独自の判断で県に対し、国庫補助金の返還を求める可能性は否定できない」との見解を示した。

 那覇空港滑走路増設で最も沖合に建設する「千三百十メートル案」の推進を町村信孝官房長官に先月、要望したことについて仲井真知事は「意見交換の中で申し上げた。県の方針としてはもう少し時間をいただきたい」とした上で、「一番外側の案が望ましいと考えている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_01.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 1面

ハワイ大に沖縄センター/文化・歴史など研究

 【ホノルル=山城リンダ通信員】ハワイ大学は一日(日本時間二日)、「沖縄研究センター」を開設した。海外の大学で沖縄を単独テーマにしたセンター設置は初となる。英語での学術発表が飛躍的に増加するとみられ、沖縄研究の国際化が期待されている。

 大学構内で同日、開設式典が開かれた。リンダ・リングルハワイ州知事は「全米初となる沖縄研究センターの開設は、ハワイの沖縄社会で大事にされてきた価値観や尊敬の心、ハワイ特有の多民族性を反映している」と祝辞を述べた。センター発足のけん引役となったウチナー県系人らも駆け付け、「沖縄研究に広がりが出る」と喜んだ。

 沖縄センターは同大学にある国別の日本、中国、韓国センターと同等機関に位置付けられ、約二十人の教授らを配置。言語、文化、歴史やハワイにおける県系移民の社会学講義を予定している。

 また、在沖米軍基地の法的問題(地位協定など)と日本国内法との関係分析、鎖国時代の沖縄の役割など日本史の中の沖縄の位置付けを探る研究構想もある。

 レオン・セラフィンセンター長は「琉球・沖縄の歴史や移民に加え、沖縄時事問題にも焦点を当てる。琉球大学や南米の大学とも連携していきたい。組踊『二童敵討』の英訳も計画されている」と話した。

 沖縄側からは琉大の大城肇副学長や山里勝己教授(学長補佐、アメリカ研究センター長)らが参加。山里教授が「共同研究、連携強化を図ることにより、アジア・太平洋地域における学術パラダイム(枠組み)の構築に貢献したい」とする岩政輝男学長のメッセージを読み上げた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_02.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 5面 

その後の対馬丸 追う/早乙女さん、岩波から出版

「体験者の人生知って」

 一九四四年八月に、米潜水艦に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の悲劇を、遭難した子どもたちの目線で書いた、「海に沈んだ対馬丸―子どもたちの沖縄戦」(岩波ジュニア新書)がこのほど、発刊された。著者は、那覇市在住の早乙女愛さん(36)=東京都出身。「何も知らない子どもたちが事件に巻き込まれた。彼らの人生を描くことで、不条理な戦争を考え直してほしかった」と思いを語る。

 早乙女さんは幼少時から作家の父・勝元さんの影響で、国内外の戦跡を訪ねて育った。広島、沖縄やポーランドのアウシュビッツ強制収容所などを訪れては自分の考えを文章にまとめてきたが、高校生になると「自分が生きる豊かな現実とのギャップに苦しくなり、戦跡を見に行けなくなった」。

 大学生になって再び戦跡を巡り始めるものの、思いや史実を書き表すことはできなかったという。しかし、二〇〇二年に県内移住後、沖縄戦の体験者から当時の様子を聞いたりするうちに、「次世代に戦争を語り継がなければならない」と筆を執る決意をした。

 対馬丸を題材にしようと考えたのは、「戦争という自覚もないまま船に乗せられて遭難した子どもたちは、体験の記憶を背負ってどんな人生を送っているのか」を知りたかったから。事件当時九―十九歳だった七人を取材。対馬丸に乗船した経緯や漂流時の様子を、証言に沿って子どもの視点で表した。

 「体験者の人生を描くことで、歴史として対馬丸事件を知ってもらいたかった」と早乙女さん。「戦争は人類の歴史の中で起こっており、私たちもその歴史の中に存在していることを多くの人に意識してもらいたい。みんなが伝えるという役割を担う時代になっている」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_05.html