沖合1310メートル案 国に要望/那覇空港滑走路増設 独軍など北部訓練場視察/米軍機関紙報道 沖縄市長、協定更新せず/泡瀬・保安水域 ハワイ大に沖縄センターなど 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(7月1日、2日、3日)

2008年7月1日(火) 朝刊 1・2面

沖合1310メートル案 国に要望/那覇空港滑走路増設

知事、町村氏と会談

 県は一日までに、那覇空港の滑走路増設について、総合調査ステップ3で示された三案のうち、現滑走路から最も沖合に建設する「千三百十メートル案」を推進する方針を決めた。仲井真弘多知事が六月二十四日に都内で町村信孝官房長官と会談し、同案の実現を要望した。三十日に県庁で沖縄タイムス社の取材に答えた。知事が政府高官に具体的な滑走路位置の支持を伝えたのが判明したのは初めて。(吉田央)

 仲井真知事は那覇空港の沖合展開について、町村官房長官に対し「われわれは『なるべく沖合に』という強い思いがある」と要望。国土交通省から千三百十メートル案に慎重な考えが県に伝えられていることを説明し、「なぜ急にこのような話が出たのか」とも尋ねた。町村官房長官から明確な回答はなかったという。

 那覇空港に関する総合調査ステップ3では、現在の滑走路と新たな滑走路の間隔で(1)二百十メートル(2)九百三十メートル(3)千三百十メートル―の三案が提示された。

 国連経済社会理事会の専門組織・国際民間航空機関(ICAO)は条約三十七条の付則で、二本の滑走路がある空港がそれぞれ同時に離陸と着陸を管制できる「オープンパラレル」の条件として、滑走路の間隔を千三百十メートル以上空けることを義務付けており、県は効率的な運用が図れるとし、同案を支持している。

 会談ではほかに、北海道洞爺湖サミット後の内閣改造の可能性や、米大統領選の見通しなどが話題になったという。二橋正弘官房副長官、仲里全輝副知事も同席した。

 仲井真知事は「慰霊の日」に来県した福田康夫首相とも那覇空港で会談。当初は那覇空港に関して同様の考えを伝える意向だったが、会談の時間が短かったことなどから断念したという。

 一方、那覇空港の沖合展開で仲里副知事は三十日、県庁で沖縄総合事務局の成瀬英冶港湾空港指導官と会談し、「今の滑走路を民間専用にして、沖合を自衛隊と共同使用する議論をすべきかなと思う」と述べ、新設される滑走路を自衛隊が使用する運用形態を提起した。


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県、複数の利点見込む/国は難色 930メートル案推す


 仲井真弘多知事が那覇空港の沖合滑走路展開で、町村信孝官房長官に千三百十メートル案を要望したのは、同案に複数の利点があるとの判断からだ。二つの滑走路で同時に離陸や着陸ができる「オープンパラレル」実現のほか、自衛隊機の沖合側滑走路使用で騒音軽減、将来的に滑走路の間に旅客ターミナルを建設する際の十分なスペースが確保可能などを想定している。

 ただ、県が千三百十メートル案の支持を明確化するのに伴い、国土交通省は沖縄総合事務局などを通じて九百三十メートル案を推す意向を県に伝えているという。

 仲井真知事や幹部に戸惑いが広がっており、三案の絞り込みに向けた火種になりそうだ。

 仲里副知事は三十日、沖縄総合事務局の成瀬英冶港湾空港指導官に「なるべく(滑走路間の)距離が短いのを選ぼうという動きもあるようで心配している」と苦言を呈した。

 県が国の姿勢に違和感を持つ理由は、九百三十メートル案の概算事業費が二千五百億円で、千三百十メートル案の二千四百億円より高いことだ。歳出削減基調で大型公共工事を実施する際、経費は重要な判断材料になるが、今回は逆行していると映る。

 ある県幹部が国にこの点を指摘すると、「案には複数のバリエーションがあり、最終的な経費はまだ分からない」という趣旨の返答があったという。この幹部は「いまさら計算間違いだと言われても困る。本音はどこにあるのか」と困惑する。

 国は表向き「現時点で何ら方向性は出していない」(国交省)との姿勢だが、仲井真知事は「国交省も当初はなるべく外(沖合)という姿勢だった。急に変わった」と受け止めている。

 オープンパラレルが実現すれば、二つの滑走路に同時に着陸機が近づいた場合、一機が空中で旋回しながら待機する必要がなくなる。沖合側の滑走路を自衛隊が使用した場合の騒音も、滑走路の間隔が広いほど軽減されることが見込まれる。

 県関係者の間では「那覇空港は本土とつなげない国道58号に代わる空の国道だ。国交省は目先の空港特会(空港整備特別会計)ではなく、五十年、百年先の沖縄振興を考え、大局的に判断してほしい」(経済界)などの意見も挙がっている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_01.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 27面

教科書問題「関係ない」/新指導要領で文科省が見解

 【東京】文部科学省は三十日、二〇一一年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に「沖縄戦」を明記することについて、「沖縄戦をしっかり教えることを明確に示した」としつつも「教科書検定意見をめぐる議論には直接関係ない」との見解を示した。沖縄タイムス社の取材に答えた。

 解説に「沖縄戦」が明記される影響として(1)教諭が多くの場合、授業で取り上げるようになる(2)教科書会社がさらに記述を充実させる可能性がある―などと指摘。その上で、「これまで教科書会社の判断で記述されていたものが、国として取り上げよう、と示したものであり、(沖縄戦の)学習が進むのではないか」と述べた。一方で「どう教えるかは別問題。取り上げ方には触れていない」とした。

 「集団自決」と軍とのかかわりについては「新指導要領に基づいた教科書を見て、もう一度事実はどうだったか、学説などを踏まえて次の検定で判断する」との考えを示した。

 新指導要領では「第六学年の目標と内容」で、歴史学習の例として第二次世界大戦を明記。解説書は「我が国が連合国と戦って敗れたことを調べ、各地への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下など、国民が大きな被害を受けたことが分かるようにする」との指針を示している。

 文科省は同日、都内で、関東を中心とした自治体の代表らに解説書を説明した。沖縄は十、十一の両日、福岡市内での説明会に参加する予定。


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検定撤回こそ重要/「実相ゆがむ」関係者懸念


 「沖縄戦の実相をゆがめる恐れがある」「まず検定意見撤回を」。文科省の小学社会科の新学習指導要領解説書に、他の国内の戦争被害と併記して「沖縄戦」が盛り込まれたことに、県内で懸念が広がっている。

 沖縄歴史教育研究会の新城俊昭代表(宜野湾高校教諭)は、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制を削除させた二〇〇六年度の高校教科書検定意見が撤回されていないと指摘。「文科省のスタンスに従えば『日本軍による住民殺害』という沖縄戦の大きな特徴を教えられず、被害だけを教えることになる。これでは正確な歴史を学習できない。まずは検定意見を撤回するべきだ」と話した。

 沖教組の大浜敏夫委員長も、「特に他県の教師は、きちんと学ばなければ、沖縄戦の特質が分かならくなる」と危惧。実際の教科書で正しく記述されるよう、県民が監視し、執筆者や教科書会社を支えることが必要だと訴えた。

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」の玉寄哲永副委員長は「私たちが求めたのは、県民が日本軍によって殺されたり『集団自決』させられた事実を隠さないこと。文科省は県民の要求に応えず、『関与』程度の言葉に置き換えたまま、定着させようとしている」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_02.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 2面

基地外居住 1491人増

 【東京】防衛省は三十日、今年二月の米兵暴行事件を受けた再発防止策の一環として、基地外に居住する米軍人・軍属やその家族の数(二〇〇八年三月末時点)を発表した。県内では前年比千四百九十一人増の一万一千八百十人が居住。基地内も含めた総居住者数が千九十四人増えている一方で、基地内居住者は三百九十七人減っており、人口分布が基地内から基地外へ移動している傾向が浮き彫りとなった。

 県内の米軍基地内には現在、約一割の空き家があることが分かっているが、日本政府が費用を負担して整備している基地内住宅への居住の在り方があらためて問われそうだ。

 米軍人らの基地外居住者は全国で二万四千八百八人。その約半分を沖縄が占めている。自治体別では、神奈川県横須賀市が三千五百三十二人で最も多かった。県内では北谷町が三千二百二十三人(前年比三百三十人増)、次いで沖縄市(同三百七十六人増)が三千八十一人だった。

 前年比で最も増えたのは読谷村で、六百五十八人増の千八百八十一人。減少した自治体もあり、うるま市では五人減の千三百二十九人だった。

 人数は在日米軍司令部が提供し、防衛省がまとめた。米兵暴行事件を受け政府は、再発防止策の一環として、米側が年に一度、基地内外の居住者数を日本側に提供し、日本政府が自治体と共有すると発表していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_03.html

 

2008年7月1日(火) 朝刊 2面

普天間移設で論戦へ/県議会代表質問

 開会中の県議会六月定例会は三、四の両日、代表質問で六会派の八氏が登壇する。質問通告が六月三十日、締め切られた。十二年ぶりに与野党逆転を果たした野党は、県議選の結果が県政への評価との認識を示していた仲井真弘多知事に、与党敗北の見解を求めるほか、追い風になった後期高齢者医療制度への認識も追及する構えだ。

 一方の与党会派は仲井真知事の公約でもある自立型経済構築に向けた取り組みを中心に、県のスタンスをただす。与野党とも米軍基地問題では普天間飛行場の移設問題、日米地位協定の見直しなどに質問が集中しており、論戦は熱を帯びそうだ。

 代表質問の日程、質問者は以下の通り。

 【3日】翁長政俊氏(自民)、新垣良俊氏(同)、渡嘉敷喜代子氏(社民・護憲ネット)、当銘勝雄氏(同)

 【4日】嘉陽宗儀氏(共産)、金城勉氏(公明県民会議)、上里直司氏(民主)、新垣清涼氏(社大・ニライ)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011300_07.html

 

琉球新報 社説

新指導要領解説書 史実を正しく継承してこそ 2008年7月1日

 文部科学省が、2011年度から完全実施される小学社会科の新学習指導要領の解説書に、「集団自決」(強制集団死)など多くの犠牲者を出した沖縄戦や連合国軍(米軍)の無差別爆撃、原爆投下といった事例を初めて明記することが分かった。正しい史実の継承へ向けて一歩前進であり、歓迎したい。

 文科省はこれまで、第2次世界大戦の被害などを小学校の授業でどのように教えるかは一定程度現場の裁量に任せていた。

 学習指導要領は、学校が児童・生徒に教えなければならない学習内容など教育課程の最低基準で、ほぼ10年ごとに改定されている。新学習指導要領で日本国民が受けた被害について、学習する機会を充実させるとしている。

 昨年3月、文科省は高校歴史教科書から沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)を日本軍が強制したとする記述を削除した検定意見を公表。これに納得しない県民は11万6000人(主催者発表)が9月29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加し抗議した。

 県民大会実行委員会などの要請に対し、渡海紀三朗文科相が「沖縄戦に関する学習がより一層充実するよう努めたい」としていたことの具体的な表れだろう。

 学習指導要領の内容を補足する解説書は、文科省が各教科ごとに編集している。教諭の授業指導の指針になっており、教科書もそれを参考に作成されることから、学校現場に与える影響は大きい。

 先の大戦で米軍は、沖縄の10・10空襲をはじめ、東京や名古屋などで国際法に反する無差別爆撃を展開。東京空襲では約10万人の市民が死亡したといわれる。広島と長崎に「悪魔の申し子」と言うべき原子爆弾を投下した。これら歴史的事実は、思想的解釈などはひとまず脇に置いて、正確に後世へ伝えていかねばならない。

 望むべきは、解説書にとどまらず、小中高校の社会科(日本史)に正確な史実を掲載してほしいということだ。特に「集団自決」に関しては、昨年の教科書検定をきっかけに、危機感を覚えた体験者が重い口を開き「正しい事実を残したい」と体験を語り、手記を残すなどの行動に出た。

 教科書検定審議会は、沖縄戦の体験者や研究者の意見を求めることはもとより、沖縄戦の記録を記した県史や市町村史、住民の体験記なども参考にしてほしい。

 むろん被害ばかりでなく、日本が行った中国や朝鮮半島などへの戦争加害の事実もきっちりと伝えたい。

 きょうという日は過去の上に成り立ち、あすはきょうの結果という。史実は正しく継承されてこそ、確かな未来は約束される。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133717-storytopic-11.html

 

2008年7月1日(火) 夕刊 1・5面

独軍など北部訓練場視察/米軍機関紙報道

 自衛隊、ドイツ、イスラエル、オランダの四軍幹部が、将来の訓練を視野に入れて米軍北部訓練場(国頭村、東村)を視察していたことが、一日までに分かった。在沖米海兵隊の機関紙「オキナワマリーン」が報じた。日米以外の外国軍が在沖米軍基地使用を検討していることが明らかになったのは初めて。自衛隊の視察について、防衛省は事実関係を確認中としている。基地の過重負担に苦しむ県民の反発は必至で、政府の対応が注目される。

 在沖米軍基地は在日米軍の再編に伴い、キャンプ・ハンセンで自衛隊との共同使用が今年三月から始まった。嘉手納基地の使用も予定されているが、北部訓練場は対象になっていない。

 同紙によると、視察は今年五月二十一日。米バージニア州クワンティコ基地の海兵隊戦闘開発指揮(MCCDC)に出向する四軍の連絡担当将校が参加し、海兵隊のジャングル戦闘訓練を見学した。ジャングル戦闘訓練技術のカリキュラムや、性別に関係なくすべての海兵隊員が訓練に参加していることなどが説明されたという。

 同行した米MCCDCのマーク・ギブソン少佐は目的について、第三海兵遠征軍(?MEF)と将来の連携のためだと説明し、「今回の訪問は今後の長期的な目標へのステップとなった」と述べた。在沖米海兵隊は、米軍以外の施設使用は最初に日本政府の許可が必要だと言及したという。

 ドイツ陸軍連絡官ジョージ・エーレット先任上級曹長は「とても素晴らしいプレゼンテーション。ここで訓練を試みることを楽しみにしている」と話したという。


     ◇     ◇     ◇     

現場に作業車 住民抗議/高江ヘリパッド移設


 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、工事中断期限の切れた一日午前、沖縄防衛局員や業者、作業車が現場を訪れた。警戒中の反対派住民や支援者数人が立ちふさがり、局員らと激しく口論、一時騒然とした。

 局員らが去った約十分後、作業員七人が別ゲートから現場へ入り、うち二人が環境調査などを行ったもよう。北部訓練場を自衛隊と、独など四カ国軍が視察したことも明らかになり、反対派は危機感を強めている。

 午前十時、N―4ゲートに、クレーン車など大型車二台と局員らが現れ、「提供施設内です。不法占拠はやめなさい」と立ち退きを要求。ゲート前に待機していた反対派住民や支援者らは、街宣車の上から「米軍基地は造らせない。あなたたちこそ帰れ」などと激しく抗議し、約五分間、にらみ合った。

 局員らはビデオカメラで反対派の動向を記録した後、「必ず工事はします」と言い残し、現場を後にした。約十分後、作業員数人が、ほとんど未着工とみられるG地区付近に入り、約二時間後に外へ出た。「環境調査か」との問いに「はい」と答え、足早に車に乗り込んだ。

 作業員七人が入っていったのを確認したヘリパッドいらない住民の会の伊佐真次共同代表は「一日から来るとは、相手の本気さを感じる」とし「もっと多くの人数で阻止行動を展開しなければ」と危機感を抱いた。

 同訓練場で自衛隊と、三外国軍がジャングル戦闘訓練計画を検討していることについて、同会の安次嶺現達共同代表は「まったくひどい話だ。どうしてこの時期にこんな話が進んでいるのか。現実となれば米軍による事件・事故だけでは済まされない」と話した。

 応援に駆け付けた平和運動センターの山城博治事務局長は「多数の国が北部訓練場を視察していたことで、負担軽減が真っ赤なうそだと証明された。機能強化のためにこの小さな集落にヘリパッドを移設することは許さない」と語気を強めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807011700_02.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 1面

沖縄市長、協定更新せず/泡瀬・保安水域

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業のため、沖縄市と米軍が締結している米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、沖縄市が今後の協定更新について「新たな基地の提供につながるため署名できない」と事業者の国と県に四月末に通知していたことが一日、分かった。

 これを受け、県は市長に代わって県知事を署名者とする文書を沖縄防衛局長あてに送っているが、米軍からの回答はないという。

 同日の市議会六月定例会で東門美津子市長は「昨年九月に一年期限で更新したが、(埋め立て後は)新たな基地の提供になり、土地利用の制限もある」と説明。「推進せざるを得ない(工事中の)第一区域は保安水域にかからないので影響はない」と述べた。

 東門市長は昨年十二月、同事業について「第一区域は推進、第二区域は推進困難」との考えを正式に表明した。

 市は保安水域にかかる部分については、完成後の土地利用を検討する範囲に入れないとしている。

 知事が署名者となることについて県港湾課は「県にも臨港道路や緑地利用の計画がある。共同使用を継続しなければ埋め立て工事ができなくなる恐れがあり、事業を円滑に進める必要がある」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_02.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 31面

新嘉手納爆音訴訟控訴審/10月結審

 米軍嘉手納基地の周辺住民五千五百四十人が、日米両政府に夜間と早朝の飛行差し止めと、損害賠償などを求めている新嘉手納爆音訴訟控訴審の口頭弁論が一日、福岡高裁那覇支部(河邉義典裁判長)であった。うるささ指数(W値)八五―九五の原告三人が本人尋問で、日米の騒音防止協定が形骸化している点を強調。墜落への不安や生活・睡眠妨害などを訴え、「せめて夜間の飛行の差し止めを」などと求めた。

 控訴審は十月一日の次回弁論で結審し、来年三月ごろに判決が出る見通し。

 うるま市栄野比(=W値八五)のタクシー乗務員、兼島兼俊さん(63)は「旧訴訟から爆音は一向に改善されていない。静かな夜を返してほしいという、ささやなか願いをかなえてほしい」と証言。嘉手納町屋良(=W値九〇)の町議会議員、田仲康栄さん(63)は、飛行経路の変化で自宅上空を戦闘機が旋回するようになり、騒音被害が増していると主張した。

 北谷町砂辺(=W値九五)のタクシー乗務員、国場幸吉さん(57)は「睡眠不足が仕事に影響するなど、精神的にも肉体的にも耐えられない」と述べた。

 原告側は、国が採用している騒音の測定方法は、県の測定結果と大きな食い違いがあり、騒音の実態を過小評価しているとあらためて主張した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_04.html

 

2008年7月2日(水) 朝刊 30面

住民阻止行動で工事再開中止/高江区ヘリパッド

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の東村高江区周辺への移設問題で一日、沖縄防衛局は住民らの阻止行動で立ち入りを自主的に中止した、と説明した。

 同局によると、N―4地区では、仮設事務所を設置するため、工事現場に資材を搬入しようとしたが、妨害のため入ることができなかったという。G地区では、測量調査のため工事現場へ入ったが、反対派住民らが集結したため、危険回避の観点から自主的に中止したとしている。二日以降も工事再開への理解を求めていくという。

 ヘリパッドいらない住民の会は六月三十日から二十四時間の監視態勢を続けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807021300_09.html

 

琉球新報 社説

外国軍の訓練 演習のメッカなどご免だ 2008年7月2日

 ドイツ、イスラエル、オランダの軍隊が米軍北部訓練場でジャングル戦闘訓練を検討していることが明らかになった。

 海兵隊が管理する北部訓練場は米軍が有する唯一のジャングル訓練施設だ。海兵隊、陸、海、空軍各部隊による歩兵演習、ヘリコプター演習、脱出生還訓練などが行われている。

 この上、他国の軍隊が使用するのは基地機能の強化にほかならず、断じて容認できる話ではない。

 沖縄は復帰後36年が経過した現在も、国土のわずか0・6%にすぎない県土に在日米軍専用施設面積の4分の3が集中している。

 米軍基地と隣り合わせの生活を余儀なくされた県民は、米軍機の発着による耐え難い騒音被害に加え、基地から派生する事件・事故の脅威にさらされている。

 過重な基地負担を少しでも軽減させるため米軍の演習はできるだけ減らすべきであって、他国の軍隊に訓練させるなど言語道断だ。

 米海兵隊は、米国以外の軍隊が訓練場を使用するには日本政府の了承が必要と説明している。

 まかり間違っても日本政府が承諾することがないよう、県の側から、あらかじめ強くくぎを刺しておく必要がある。

 米海兵隊のホームページによると、ドイツ、イスラエル、オランダの各軍隊と自衛隊の連絡官が5月21日に北部訓練場を視察した。ドイツ陸軍の連絡官は「ここで訓練できることを楽しみにしている」などと感想を語っている。

 各国軍隊は、北部訓練場で有意義な訓練ができると期待しているかもしれないが、地元にとっては招かれざる客でしかない。

 ひとたび他国の軍隊が訓練場を使用すれば、これをきっかけとして沖縄の米軍基地に世界中から軍隊が集まるようになるだろう。演習のメッカと化したのではたまったものではない。

 北部訓練場では6月9日から13日にかけて120人以上の海兵隊予備歩兵隊(米ミシガン州)が訓練を実施していた。

 沖縄駐留の部隊以外にも使用が拡大されていることは、県民が求める基地負担の軽減に明らかに逆行している。

 日米安全保障条約は、米国に対する施設・区域の提供義務を規定し、その使用目的を「日本国の安全」「極東における国際の平和および安全の維持」に寄与することと定めているが、他国の軍隊が使用していいとはどこにも書いていないのである。

 第三国の軍隊による戦闘訓練は日米地位協定上も認められていない。米軍が、将来的な訓練実施を視野に、他国の軍関係者に訓練場を視察させたこと自体、本来、許されるべきことではない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133743-storytopic-11.html

 

2008年7月3日(木) 朝刊 2面

情報伝達体制を確認/総事局が防災訓練 海保・陸自も参加

 沖縄総合事務局は二日、那覇市の第二地方合同庁舎で、災害時の情報伝達体制の強化を目指す「二〇〇八年度防災訓練(風水害)」を実施した。海上保安庁、陸上自衛隊の担当者ら約六十人が災害対策室に集まり、被災を想定した現場の各事務所などを含め約百人が訓練に参加した。三年前から年に二回、各部で実施しており、同局全体での訓練は初めて。

 同局の福井武弘局長は「災害時においては迅速かつ的確な情報の伝達と、関連機関との防災情報の共有が極めて重要。災害対策室の機材を使いこなし、的確な行動を取ってほしい」とあいさつした。

 訓練は集中豪雨の影響で本島全域と石垣島に大雨洪水警報、宮古島に大雨警報が発令されたと想定。現場の被災情報を道路管理班や河川班などの担当者が集約し、災害対策本部(本部長・福井局長)に報告した。

 同局と海上保安庁からヘリコプター二機が出動し、上空からの映像を配信したほか、北部ダム統合管理事務所などとテレビ会議を実施した。九月には地震を想定した防災訓練を予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031300_05.html

 

2008年7月3日(木) 朝刊 25面

大型輸送機また飛来/CH53D積み 飛び立つ

 【宜野湾】二日午前九時半ごろ、米軍普天間飛行場に米空軍の超大型長距離輸送機C5ギャラクシー一機が飛来した。二〇〇四年八月に沖縄国際大学に墜落したヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリ二機を積み込み、同日午後三時ごろ飛び立った。

 ギャラクシーは六月に同飛行場に四回飛来し、CH53D十機のうち、八機を輸送していた。今回の輸送で、同飛行場に配備されるCH53Dはゼロとなった。

 この日の輸送で全十機が別の基地へ運ばれたが、在沖米海兵隊は行き先を明らかにしていない。CH53D再配備の可能性についても、「保安上の理由で訓練や配備の計画は公表できない」と回答した。

 CH53Dは沖国大での事故後、〇七年十一月から〇八年一月にかけて同飛行場に再配備された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031300_06.html

 

琉球新報 社説

泡瀬埋め立て 署名人変更は時代に逆行 2008年7月3日

 中城湾港泡瀬沖合埋め立て(沖縄市東部海浜開発)事業で、米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる第2区域の共同使用協定書に署名しない方針を打ち出した東門美津子沖縄市長に代えて、署名人を仲井真弘多知事にすることを沖縄総合事務局と県が決めた。

 東門市長は昨年12月、第2区域現行計画の「推進は困難と判断した」と表明。ことし4月には署名しないことを国と県に通知している。

 第2区域の土地利用の主体である沖縄市長の考えを国と県が無視する形で、埋め立てを推し進めていくのはいかがなものか。

 目的を達成するためには「手段を選ばず」という手法はあまりにも乱暴である。

 自治体の主体性を奪うような署名人変更は、地方の時代に逆行する行為と言わざるを得ない。

 東門市長は泡瀬沖合埋め立て事業を(1)沖縄市の経済発展につながるのか(2)干潟等の自然環境は守れるのか―の観点を基本に検討したという。

 その結果「新たな基地提供になり得るとともに、土地利用に制約が生じる」ことや「(絶滅危惧(きぐ)種の)クビレミドロが生息していることや残余の部分は大半が干潟にかかる」ことなどを理由に「推進は困難」との判断に至った。

 県は「(第2区域の)埋め立て地には、県が計画している臨港道路や外周緑地帯の整備が含まれる。事業を円滑に推進するためには、共同使用協定の継続が必要だ」としている。

 県の意向よりも、市長の責任で判断した結果の方が軽いということにはならないはずである。

 国と県が決まりを変えてまで自らの考えを押し付けることは地方分権に反する。署名人が容易に差し替えられるということは、協定書が単なる形式にすぎないということにもなりかねない。

 泡瀬沖合埋め立て事業については、賛否があるだけにより慎重な対応が必要だ。

 強行姿勢とも受け取られかねない署名人変更は問題解決をさらに難しくするばかりか、対立を深刻化させる懸念がある。

 地元の代表である沖縄市長が共同使用協定書の署名人となることが自然な形である。露骨な「沖縄市長外し」は市だけでなく、賛否に揺れる市民までをも無視することにつながる。

 東門市長は昨年12月の会見で「国・県と協力して解決しなければならない課題がある」として、国・県と協議する姿勢も示していた。

 国と県、沖縄市の三者が東門市長の計画見直し要求について市民にも内容が分かる形で、まずは話し合うべきである。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-133797-storytopic-11.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 1面

知事、「沖合」要求を堅持/普天間飛行場移設/県議会答弁

 県議会(高嶺善伸議長)六月定例会の代表質問が三日午前から始まった。仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場移設問題で、名護市や県が求めている代替施設の沖合移動で政府との交渉が難航していることについて「政府が地元の意向に十分配慮することで、移設はより円滑に進むと考えている」と述べ、沖合への移動が早期移設の前提となるとの認識を示した。

 知事が認可権限を持つ移設先の公有水面埋め立てへの対応について漢那政弘土木建築部長は「国が承認願書を出す前に、代替施設の位置などについて、国、県、関係市町村が合意する必要がある」と述べ、合意前の認可には応じない姿勢を示した。最初に登壇した翁長政俊氏(自民)への答弁。

 普天間飛行場の三年めどの閉鎖状態の実現や可能な限りの沖合移動について「今後の取り組む方向性について協議会の場で確認する必要がある」と述べ、次回の普天間移設協議会で政府に求めていく姿勢を示した。同飛行場の危険性除去については「基地の提供責任者である政府が示す必要がある」と指摘した。

 県発注工事の談合問題に伴う県の損害賠償請求で、公正取引委員会の違反認定を受けていない共同企業体構成員(Aランク業者)の免除について「規定の趣旨、国の事例等を検討し、複数の法律専門家の意見を聴いた上で、(共同企業体の)各構成員に連帯責任を問うことにした」と否定的な考えを示した。

 業者が損害賠償の減免などを求める調停を申し立てる準備を進めていることについて漢那部長は「仮に県が(減免などの)勧告を受け入れた場合、国は独自の判断で県に対し、国庫補助金の返還を求める可能性は否定できない」との見解を示した。

 那覇空港滑走路増設で最も沖合に建設する「千三百十メートル案」の推進を町村信孝官房長官に先月、要望したことについて仲井真知事は「意見交換の中で申し上げた。県の方針としてはもう少し時間をいただきたい」とした上で、「一番外側の案が望ましいと考えている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_01.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 1面

ハワイ大に沖縄センター/文化・歴史など研究

 【ホノルル=山城リンダ通信員】ハワイ大学は一日(日本時間二日)、「沖縄研究センター」を開設した。海外の大学で沖縄を単独テーマにしたセンター設置は初となる。英語での学術発表が飛躍的に増加するとみられ、沖縄研究の国際化が期待されている。

 大学構内で同日、開設式典が開かれた。リンダ・リングルハワイ州知事は「全米初となる沖縄研究センターの開設は、ハワイの沖縄社会で大事にされてきた価値観や尊敬の心、ハワイ特有の多民族性を反映している」と祝辞を述べた。センター発足のけん引役となったウチナー県系人らも駆け付け、「沖縄研究に広がりが出る」と喜んだ。

 沖縄センターは同大学にある国別の日本、中国、韓国センターと同等機関に位置付けられ、約二十人の教授らを配置。言語、文化、歴史やハワイにおける県系移民の社会学講義を予定している。

 また、在沖米軍基地の法的問題(地位協定など)と日本国内法との関係分析、鎖国時代の沖縄の役割など日本史の中の沖縄の位置付けを探る研究構想もある。

 レオン・セラフィンセンター長は「琉球・沖縄の歴史や移民に加え、沖縄時事問題にも焦点を当てる。琉球大学や南米の大学とも連携していきたい。組踊『二童敵討』の英訳も計画されている」と話した。

 沖縄側からは琉大の大城肇副学長や山里勝己教授(学長補佐、アメリカ研究センター長)らが参加。山里教授が「共同研究、連携強化を図ることにより、アジア・太平洋地域における学術パラダイム(枠組み)の構築に貢献したい」とする岩政輝男学長のメッセージを読み上げた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_02.html

 

2008年7月3日(木) 夕刊 5面 

その後の対馬丸 追う/早乙女さん、岩波から出版

「体験者の人生知って」

 一九四四年八月に、米潜水艦に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の悲劇を、遭難した子どもたちの目線で書いた、「海に沈んだ対馬丸―子どもたちの沖縄戦」(岩波ジュニア新書)がこのほど、発刊された。著者は、那覇市在住の早乙女愛さん(36)=東京都出身。「何も知らない子どもたちが事件に巻き込まれた。彼らの人生を描くことで、不条理な戦争を考え直してほしかった」と思いを語る。

 早乙女さんは幼少時から作家の父・勝元さんの影響で、国内外の戦跡を訪ねて育った。広島、沖縄やポーランドのアウシュビッツ強制収容所などを訪れては自分の考えを文章にまとめてきたが、高校生になると「自分が生きる豊かな現実とのギャップに苦しくなり、戦跡を見に行けなくなった」。

 大学生になって再び戦跡を巡り始めるものの、思いや史実を書き表すことはできなかったという。しかし、二〇〇二年に県内移住後、沖縄戦の体験者から当時の様子を聞いたりするうちに、「次世代に戦争を語り継がなければならない」と筆を執る決意をした。

 対馬丸を題材にしようと考えたのは、「戦争という自覚もないまま船に乗せられて遭難した子どもたちは、体験の記憶を背負ってどんな人生を送っているのか」を知りたかったから。事件当時九―十九歳だった七人を取材。対馬丸に乗船した経緯や漂流時の様子を、証言に沿って子どもの視点で表した。

 「体験者の人生を描くことで、歴史として対馬丸事件を知ってもらいたかった」と早乙女さん。「戦争は人類の歴史の中で起こっており、私たちもその歴史の中に存在していることを多くの人に意識してもらいたい。みんなが伝えるという役割を担う時代になっている」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807031700_05.html

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