沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月20日から23日)

2007年12月20日(木) 朝刊 1面

米軍再編経費に191億円/防衛予算

 【東京】防衛省は十九日、二〇〇八年度防衛予算の米軍再編(地元負担軽減分)と日米特別行動委員会(SACO)の両関係経費を財務省に変更要求した。米軍再編(地元負担軽減分)の関係経費の総額は歳出ベースで〇七年度当初予算比約二・六倍の百九十一億七百万円を要求。SACO関係経費は五十四億二千六百万円増の百七十九億八千六百万円(歳出ベース)を求めた。

 普天間飛行場移設は、移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部周辺で〇七年度の継続で海象、気象、文化財調査や、海域の環境現況調査、既存施設の再配置などに、四十八億三千百万円(同)を要求。埋め立てに関する基本検討も行う。

 〇七年度当初予算比三十八億二千八百万円増だが、〇七年度契約分の執行によるものだ。

 「嘉手納以南六基地」の全面・一部返還は、既存施設などへの機能移転で米側との交渉に役立てるため、施設の配置検討を実施。二千九百万円増の二億千九百万円(同)を求めている。

 在沖米海兵隊八千人のグアム移転では、日本側が整備する家族住宅やインフラの整備に向けた事業者選定などに関する業務を調査検討する費用として四億円(同)。

 〇七年度から始まった嘉手納基地所属F15戦闘機の本土六自衛隊基地への訓練移転経費は七億五千万円増の十一億二千三百万円(同)。大規模な訓練移転に備え、新田原飛行場(宮崎県)の滑走路補強や隊舎、食堂を拡充する。

 防衛省関係者によると、二十日の財務省の予算原案内示で全額が認められる見通しだ。

 SACO関係経費では、「土地返還のための事業」に七十八億四千七百万円増の百三十三億四千七百万円を要求。キャンプ桑江(北谷町)の海軍病院移転経費などで、SACO関係経費全体を押し上げた。

 米軍再編とSACO関係経費は八月の概算要求時には金額が確定せず、合計額を「仮置き」していたが、変更要求に合わせて精査した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201300_03.html

 

2007年12月20日(木) 朝刊 2面

米海軍P3C 飛行停止/尾翼に構造的問題

 米海軍は十九日までに、P3C哨戒機の機体の経年疲労分析の結果、尾翼低部に構造的な問題が判明したとして、三十九機の飛行停止措置を取った。米海軍司令部が十七日発表した。うち十機が実戦配備中の機体というが、嘉手納基地の米海軍所属機が含まれているかどうかは不明。

 同機は海上自衛隊那覇基地にも約二十機が配備されている。同基地によると、海上幕僚監部が米海軍と製造メーカーに照会中で、同機による哨戒活動は通常通り実施しているという。

 米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」によると、飛行停止されている機体の分析は十八―二十四カ月かかる見込み。同機は二〇〇五、〇六年にも計三回、飛行停止措置が取られたが、問題の見つかった機体は任務に復帰しているという。

 米海軍はP3Cを計百六十一機所有。平均耐用年数は二十八年で、製造から最も古い機体は四十四年、最も新しい機体で十六年が経過している。

 米海軍はP3Cの後継機として、P8Aを一三年から配備予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月20日朝刊)

[前次官再逮捕]

政官業癒着にメスを

 ゴルフ接待などにとどまらず、やはり現金の授受があった。生活費や借金返済などに充てたというから驚かされる。感覚がここまでまひするのか。

 前防衛次官汚職事件で、東京地検特捜部は前次官の守屋武昌容疑者を収賄容疑で、防衛商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者と、同社の米国子会社元社長の秋山収容疑者を贈賄容疑でそれぞれ再逮捕した。

 守屋容疑者は、防衛装備品の納入をめぐり便宜を図った見返りとして現金約三百六十万円のわいろを受け取った疑いがもたれており、三人はいずれも容疑を認めているという。

 守屋容疑者は最初の逮捕容疑となったゴルフ旅行接待について収賄罪で起訴され、宮崎容疑者は贈賄罪で追起訴された。

 しかし、疑惑の解明はまだ緒についたばかりである。この汚職事件の奥には防衛利権をめぐる深い闇が広がっており、今後、政界ルートをどこまで解明できるかが大きな鍵になる。

 参院での証人喚問で、守屋容疑者は「建設関係で政治家から『防衛省の仕事をやりたい会社を防衛省に登録するためにはどうしたらいいか』と相談を受け、担当先を紹介したことがある」と述べ、政治家との関係に触れた。

 守屋容疑者は「防衛省の天皇」とも評され、その背景には自民党の国防族議員との親密な関係があったと指摘されてきた。

 特捜部は与野党の国防族議員が名を連ねる「日米平和・文化交流協会」を捜索している。今後、注目されるのは「肝心なことは供述していない」(捜査関係者)という守屋容疑者の供述の行方である。

 身柄拘束のまま年越しで取り調べを継続するのは異例とされる。検察の強い意欲の表れだろう。今度こそ防衛利権をめぐる政官業の癒着の深部にメスを入れ、全容解明につなげてほしい。

 「防衛機密」というベールに包まれた随意契約による装備品の調達という手法にも問題があったのは確かだ。

 政府は防衛省改革に関する有識者会議を発足させた。文民統制(シビリアンコントロール)の徹底と、装備品調達をどう透明化していくかが当面の重要課題であることは言うまでもない。

 沖縄から見ていて最も気になるのは米軍再編問題に絡んだ捜査の行方である。特捜部は米軍再編に関する多数の資料を押収し、防衛省関係者から事情を聴いているという。

 「普天間」移設をめぐる防衛省を中心とした強硬路線の背後に何らかの利権が絡んでいたのかどうか、疑惑の徹底解明を強く求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071220.html#no_1

 

琉球新報 社説

墜落同型ヘリ飛行 米軍は無神経すぎないか

 宜野湾市の沖縄国際大学に墜落したヘリと同型のCH53D大型ヘリ2機が18日、同市住宅地上空を飛行した。県民にとっては、悪夢としかいいようがない。

 米軍普天間飛行場から一時的に姿を消したCH53Dは11月6日から再配備され、来年1月までに合わせて10機になる。兵員も約150人が移動してくる。

 今後、民間地上空を頻繁に飛び交い、住民を危険にさらすことは確実な情勢である。

 2004年8月の沖国大ヘリ墜落事故について米軍捜査当局がまとめた報告書で明らかになったことは、普天間飛行場では定められた手順を無視した整備が行われていたということだ。

 事故機以外にも整備不良のヘリが日常的に住宅地上空を飛行し続けている疑いが濃厚である。米軍はそのような状態を放置していたのである。

 報告書は「整備兵がヘリ尾部の接続器具コッター・ピンの装着を忘れたのが事故原因」と結論付けたが、そのような初歩的なミスの背景には米軍のずさんな管理、組織上の欠陥があったのである。

 ずさんな整備レベルが改善されたとの確証を県民が持ち得る状況にはいまだない。危険性は墜落事故時と何ら変わりないのである。

 ヘリの想定使用年数は20年との指摘がある。D型は平均使用年数37年とされ、それを大きく上回っている。老朽化したヘリはいくら整備しても、構造的疲労は進行する。それを見逃す可能性は十分あり得る。

 墜落事故から3年余が経過しても、何ら安全性は保証されていないのである。そればかりか、老朽化がさらに進んだことで、危険性はより増したとみるべきである。

 米軍が事故機と同型機を再配備し、飛行することは無神経に過ぎる。

 墜落事故のはるか前から住宅街への事故発生の危険性が指摘され、墜落事故は起こるべくして起きたのである。同じような墜落事故が起きないと言い切れるだろうか。

 墜落事故直後、県議会や宜野湾市議会をはじめ、多くの市町村議会が抗議決議を可決した。事故機と同型機だけでなく全機種の飛行停止を求めたが、米軍はそれを無視し、日本政府もそれを容認している。

 アジアの安定を言いながら、沖縄を危険にさらす矛盾に気付くべきだ。

 米軍も日本政府も、事故の危険性を排除するための方策を真剣に考えてほしい。

 事故の危険性のある機体は米国に戻し、住宅地のど真ん中にある普天間飛行場は即座に閉鎖することが唯一確実な事故防止策であることを認識するべきだ。

(12/20 10:07)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29882-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

08年度予算原案 減額続きの理由の説明を/基地主導型振興は危険だ

 政府の沖縄振興予算の減りが止まらない。20日、各省庁に内示された財務省の2008年度予算原案でも、沖縄予算は本年度比3・4%減の2551億円。01年度以降、7年連続の減少だ。山積する沖縄問題に、果たして処方箋(せん)となる中身か。検証したい。

 一般会計総額は0・2%増の83兆613億円。小幅だが増えている。その中で、沖縄予算が減っている。

 本土復帰から08年度までの沖縄予算(旧・沖縄開発庁一括計上分、現在・内閣府沖縄担当部局予算)のピークは、10年前の1998年。総額は4713億円。08年度予算は、53%の水準だ。毎年約216億円、減り続けてきた勘定となる。

薬効問われる振興策

 政府の沖縄予算は、「沖縄問題」の処方箋としての沖縄振興計画に基づき、処方されてきた薬だ。

 復帰後、ことしで35年。その間に「投薬」は9兆円を超えた。

 「薬効」はどうか。社会資本の整備など、ハード面の治療には一定の効果を挙げた。だが、主たる治療すべき疾病として政府や県が掲げた全国一の高失業、低所得、高財政依存、高基地経済依存に象徴される「沖縄問題」の状況に、改善の兆しがみられない。

 むしろ、失業率は復帰時の4%から最近は7%に悪化し、全国平均と比較した所得水準は、一時は75%近くまで改善したが、最近値では70%前後と低迷している。

 財政依存度も高まり、基地依存経済は復帰時の15%から、最近値では5%を切ると言われるが、総額では2000億円を超え、むしろ重みを増している。

 政府の一般会計のピークは2000年の89兆3000億円。以後は増減の波を打ちながら、07年度は82兆9000億円と増加基調に転じている。その中で、沖縄予算の激減である。

 政府は5年前に新処方箋となる「沖縄振興計画」「沖縄振興特別措置法」を策定した。

 高失業、低所得の病状改善に向け、打ち出された治療方針は「従来の社会資本整備」に加え、「活力ある民間主導の自立型経済の構築」である。

 そのための旧薬の「社会資本整備」に、新薬は「観光」「情報通信産業」「金融」「科学技術新大学院大学」、これに「大規模駐留軍用地跡地利用の促進、円滑化」を加えている。

 08年度予算原案でも、沖縄予算は、「金融」はまだ見えないが、この5本柱が中心だ。

 目玉は情報通信産業の一大集積拠点を目指す「沖縄IT津梁パーク」の建設費7億9000万円の計上。

 観光は、国際観光地を目指すプロモーションモデル事業が目玉だ。

 沖縄科学技術大学院大学は、12年開学に向け、建設費やソフト合わせて107億円が計上され、本体工事が本格化する。

確かな目で「選択と集中」

 「旧薬」では、懸案の那覇空港沖合展開に向けた調査費、老朽化の著しい4小中学校の全面改築費、特別自由貿易地域への賃貸向上整備事業などが計上されている。

 基地跡利用では、ギンバル訓練場跡地のふるさとづくり整備事業(15億6000万円)など大型事業が計上された。

 個別の事業をみると華やかに見えるが、木を見て森を見ずでは困る。政府や県には、沖縄予算の総額が減額を続けている背景説明を求めたい。

 気になるのは、ソフト事業が中心の基本的政策企画立案等経費が本年度比15・7%の大幅減となった理由だ。原因は「島田懇談会事業」の終了。米軍基地所在市町村の活性化特別事業として展開されてきたが、要は基地受け入れの迷惑料的な色彩が強い。

 政府の沖縄振興策は、内閣府主導から防衛省主導へ、基地主導型振興策への転換が進んでいる。

 再編交付金をめぐる政府と県との交渉でも、基地受け入れと振興策がリンクしている。本来あるべき地域振興の理念を忘れてはいけない。施設建設後、維持管理費の重荷に借金を増やす市町村の例も少なくない。基地受け入れ市町村は、不要不急の施設建設に走らぬよう注意すべきだろう。

 半減した沖縄予算の中で、県はいっそうの「選択と集中」を迫られている。無駄な事業はないか、費用対効果はどうか。処方薬の「薬効」を見極め、復活折衝に挑んでほしい。

(12/21 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29907-storytopic-11.html

 

2007年12月20日(木) 夕刊 1面

沖縄関係2551億円/08年度予算原案内示

 【東京】政府は二十日、二〇〇八年度予算原案を内示した。内閣府沖縄担当部局の内示額は二千五百五十一億円(概算要求額三千百二十五億円)で、〇七年度予算額を3・4%(九十一億円)下回った。減額は七年連続。一九九〇年度以来、十八年ぶりの低水準になった。一方、沖縄科学技術大学院大学関連の経費は二十億円増の百七億円を確保。第一研究棟や管理棟など、メーンキャンパス関連の建築工事が本格化する。内閣府が重視する情報技術(IT)、観光の両分野には新規事業を手厚く配した。

 政府が〇七年度分の執行と〇八年度分の計上を凍結していた北部振興事業費は、今月十二日の「米軍普天間飛行場の移設に関する協議会」で普天間移設に関する政府と地元の協議が「円滑」に進んでいることが確認されたため、例年通り百億円が認められた。〇七年度分の百億円も一月中旬に執行される見通しだ。

 内示の減額は(1)公共事業関係費が3・2%(六十八億円)減少(2)沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)費が米軍ギンバル訓練場の跡地利用を除いて〇七年度で終了し24・1%(四十九億円)減少―したことが要因。

 主な新規事業では、情報通信関連産業の振興で、沖縄に高度なIT企業や関連産業を集積する「IT津梁パーク」整備事業に七億九千万円が認められた。観光関連では、自然環境の保全に配慮した観光地づくりを支援する事業や、中国など東アジア諸国の観光市場の動向調査事業などを盛り込んだ。

 人材育成では、アジア各国の若者が沖縄に滞在して交流を深める「アジア青年の家」事業や、観光業界の経営者を対象にしたセミナーなど、幅広い年齢層に対応した新規事業を配した。

 宮古・八重山地域で地上デジタル放送への円滑な移行を推進する事業は内示段階で予算がつかず、岸田文雄沖縄担当相が二十二日に額賀福志郎財務相と復活折衝する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201700_01.html

 

2007年12月20日(木) 夕刊 1面

県議会、未明離陸で抗議

 【沖縄】県議会米軍基地関係特別委員会の親川盛一委員長らは二十日午前、米軍嘉手納基地に、マックス・カシュバム第一八任務支援群司令官(大佐)を訪ね、相次ぐ未明離陸やGBS(地上爆発模擬装置)を用いた訓練が県民に不安を与えているとして抗議した。

 親川委員長によると、カシュバム司令官は「日米安保条約に基づき、任務遂行のために未明離陸や即応訓練を実施している」として要請を拒否。その上で「住民感情には配慮したい」などと述べたという。

 親川委員長は「県民の理解がないと基地は運用できない。今後も抗議決議の趣旨に沿って行動したい」と話した。

 県議会が十九日に可決した抗議決議は、(1)深夜・早朝(午後十時―午前六時)の時間帯の航空機の離着陸の原則禁止を定めた航空機騒音防止協定の厳守(2)嘉手納基地で大規模即応訓練を今後行わない(3)県内基地所属以外の航空機の訓練などは行わない―の三点を求めている。

 一行は同日午後、在日米軍沖縄地域調整事務所、在沖米国総領事、沖縄防衛局などを訪ね、抗議・要請行動を展開する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201700_02.html

 

2007年12月20日(木) 夕刊 7面

P3Cが離着陸訓練/嘉手納

 【嘉手納】嘉手納基地の米海軍所属のP3C対潜哨戒機が二十日午前、同基地で複数回の離着陸訓練を実施している様子が確認された。同機は、尾翼底部に構造的な問題が判明したとして、米海軍が所有する百六十一機のうち、三十九機の飛行を停止している。嘉手納基地所属機が含まれているかどうかは不明。

 目撃者などによると、嘉手納基地北側滑走路を使用し、P3Cが離着陸を繰り返した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712201700_05.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 1面

国、来年7月にも準備書/普天間アセス

 【東京】十二日に開かれた米軍普天間飛行場移設に関する政府と地元の第五回協議会で、防衛省が代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)準備書を来年七月にも県に提出する意向を示していたことが二十日、分かった。防衛省が現在実施している現況調査(事前調査)を、アセス調査に取り込むことを前提にしていることが裏付けられた形だ。現況調査について県環境影響評価審査会は、方法書に対する県への答申で「中止も含め検討させる必要がある」と指摘。二十一日の知事意見での位置付けが注目される。

 防衛省は今年五月から九月にかけて建設予定地の周辺海域に現況調査の調査機器を設置。現況調査をアセスに反映させるかどうかについて防衛省は「県などと協議する」とし、公式には明言を避けている。

 十二日の協議会で、町村信孝官房長官は準備書の提出時期を石破茂防衛相に確認。石破防衛相は「当初は来年七月末ごろを予定していた」と説明した。

 これに対し、仲井真弘多知事は「準備書の提出時期は再来年の二月ごろと考えている」と異議を唱えた。

 アセス調査は最低でも通年実施することが必要とされている。知事の指摘は、方法書が確定する来年二月から一年間をアセス調査期間として確保するべきだ、との見解を示したものとみられる。

 準備書の提出時期について、防衛省幹部は「(来年七月末の)スケジュールは変わっていない」としているが、別の政府関係者は「現在実施している現況調査では、今年秋の調査が不十分なため、準備書は来年九月ごろになる」との見通しを示している。

 ただ、準備書が来年九月に提出された場合でも、現況調査をアセス調査に取り込むことが前提となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_02.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 1面

代替施設滑走路1600メートルはオスプレイ用/米軍文書 司令官が明示

 米軍普天間飛行場の移設に伴い、代替施設で計画されている滑走路の長さ千六百メートル(オーバーランを含めた全長千八百メートル)は、海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの着陸に必要な距離であることが、一九九六年の米軍文書で分かった。米太平洋軍司令官が代替施設の主力機をオスプレイと明示、施設の必要条件として指示していた。

 進行中のV字形滑走路案の環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は滑走路の長さを「短距離で離着陸できる航空機のニーズ」と説明し、方法書でオスプレイの配備には触れていない。二〇〇六年にも在沖米海兵隊基地司令官が代替施設の滑走路はオスプレイを想定した長さだと発言しており、あらためて文書で裏付けられた。

 文書は、太平洋軍司令官の指示を受けた海軍検討グループが一九九六年八月付で作成した。積載量、ブレーキ能力、標高などから、必要な滑走路長を千五百五十四メートル(五千百フィート)と算出した。

 また、SACO(日米特別行動委員会)合意による普天間飛行場の「五―七年以内の返還」について、「施設の建設は四―五年で可能でも、環境調査や影響の緩和措置、設計を二年で完了することはおそらく不可能だ」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_03.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 2面

小学校の存在無視/米軍普天間マスタープラン

 【宜野湾】米軍が米軍基地周辺の土地利用を制限する「航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)」を普天間飛行場に設定していることが二十日、宜野湾市が米国から入手した同飛行場マスタープラン(一九九二年作成)で明らかになった。滑走路の両端から約九百メートルの範囲は土地利用禁止区域となり、住宅や学校などの立地が制限されるが、実際には普天間第二小学校が立地している。記者会見した伊波洋一市長は「小学校の存在を無視した偽りのプランで、危険な普天間の実態を覆い隠したものだ」と指摘、今後も日米両政府に同飛行場の撤去を求める考えだ。

 AICUZは基地周辺住民の安全を守り、航空機の運用を円滑にするための土地利用の指針。しかし、同プランには禁止区域に含まれる普天間第二小学校などの記述がなく、設定された飛行ルート以外でも航空機が飛んでいるのが実情だ。

 同飛行場の危険性については現在、普天間爆音訴訟団が国を相手に裁判で争っており、住民らの危険への接近が争点となっている。伊波市長は「普天間は七〇年代に滑走路が整備され飛行場として機能が強化されたが、小学校の開校は六〇年代。小学校があることを知っていながら日米両政府は危険性を放置した」と指摘。「欠陥飛行場の普天間は直ちに撤去するべきだ」と訴えた。

 基地問題に詳しいNPO法人ピースデポの梅林宏道代表は「マスタープランは(住民を守るための)利用禁止区域の定義を書いておらず、高さ制限など航空機の安全のための記述しかない。意図的に危険地域の話をそらして米軍の望む形で計画を作り、基地を運用したいのだろう」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_04.html

 

2007年12月21日(金) 朝刊 31面

「集団自決」きょう結審 大阪地裁

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作で名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の元戦隊長らが大江氏と岩波書店に慰謝料などを求めた訴訟は二十一日、大阪地裁で結審する。

 住民に「集団自決」を命じた事実はないと主張する元戦隊長の梅澤裕氏(91)ら原告側に、記録や住民の証言から事実は明らかと被告の大江・岩波側が反論。審理は二〇〇五年八月の提訴から約二年五カ月に及び、来年三月には判決が言い渡される見通し。判決が「集団自決」の史実にどこまで踏み込むかが焦点となる。

 同訴訟における梅澤氏らの主張は、「集団自決」に関する表記をめぐって日本軍の強制性が削除された、今年三月公表の歴史教科書検定の根拠になり注目された。


習志野市議会も撤回要求意見書

検定問題で可決


 【千葉】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制が削除された教科書検定問題で、千葉県の習志野市議会(高橋司議長、定数三十人)は十九日、検定意見の撤回を求める意見書案を賛成多数で可決した。反対は三人だった。

 意見書は「(検定意見は)沖縄戦の体験者の声や県などの調査を否定するもので、『集団自決』がたとえ一部の軍人の強制・誘導であっても、軍は関与していないとは言い切れない」とし、子どもたちに事実を伝える重要性を指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211300_07.html

 

2007年12月21日(金) 夕刊 1面

軍命めぐり最終弁論/「集団自決」訴訟

大阪地裁3月にも判決

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、島に駐屯していた部隊の元戦隊長とその遺族らが、作家・大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作で名誉を傷つけられているとして、大江氏や岩波書店に出版の差し止めや慰謝料などを求めている訴訟は二十一日午後、大阪地裁(深見敏正裁判長)で最終弁論が始まった。

 原告と被告の双方がこれまでの主張をまとめた最終準備書面を提出。法廷で代理人がそれぞれ十五分ずつ、要旨を陳述した。提訴から約二年五カ月の審理を経て弁論は同日で終結し、来年三月には判決が言い渡される見通し。

 これまでの審理で原告側は、自決命令を否定する元戦隊長らの名誉回復訴訟と位置付け、戦隊長による個別の命令について事実の立証を要求。被告側は、当時の状況から軍隊による強制や命令があったのは明らかで、戦隊長による命令も数多くの資料から真実だと反論。判決が「集団自決」の事実にどこまで踏み込むかが焦点となる。

 訴えているのは、座間味島駐屯部隊の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(74)。「沖縄ノート」や故家永三郎氏の著作「太平洋戦争」で、住民に「集団自決」を命じたと記され、両元戦隊長の名誉とともに、秀一氏が兄を慕い敬う「敬愛追慕の情」が侵されている、としている。

 弁論に先立ち、傍聴抽選が行われ、六十四枚の傍聴券を求めて百七十八人が並んだ。

 宜野湾市から傍聴に訪れた平和ネットワーク会員の外間明美さん(41)は「沖縄戦の実相を住民からみれば、軍によって多くの被害をもたらされ、命を失うところまで追いやられたのは明らか。被告側は幾つもの新証拠で示している」と指摘し、「裁判所は、それを踏まえた判決を書いてほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712211700_03.html

 

2007年12月22日(土) 朝刊 1面

「強制」文言避け調整/「集団自決」修正

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省の教科書調査官が教科書会社に、日本軍を主語にした「強制」や「強いた」という言葉を使わないよう求めていることが二十一日、分かった。これを受け、訂正申請した六社のほとんどが「強制」の文言を使わない形で申請をやり直しているもようだ。

 関係者によると、主語が日本軍と明確には読み取れぬように「強制」の表現を残している会社もあるという。九月の県民大会を受け、十一月に訂正申請した各社の記述では、「日本軍の強制」を明記していたものが多かったが、大幅に後退した格好。「軍強制を削除した検定直後の記述に戻ってしまった」(関係者)との声も挙がっており、県民の反発は必至だ。

 関係者によると教科書調査官は今月中旬、各社の担当者に「日本軍の主語と強制の述語が直接つながる表現は避けてほしい」との趣旨を伝達したという。教科用図書検定調査審議会(検定審)の意向を受けた対応とみられる。

 検定審は訂正申請の記述が出そろった後の審議を経た今月四日、教科書調査官を通じて六社の担当者に「『集団自決』が起こった背景・要因について、過度に単純化した表現で記述することは、生徒の理解が十分にならない恐れがある」などとする「指針」を伝達。「集団自決」を軍だけが強制したと読み取れる記述を事実上、禁じていた。

 この後、「日本軍の強制」と「集団自決」の背景を併記して再訂正申請した会社もあったが、今回の措置を受けて再々訂正申請したもようだ。

 検定審は週明けにも日本史小委員会を開き、今回の方針を受けた記述を審議する。


[ことば]


 集団自決検定問題 2008年度から使用される高校の日本史教科書の検定で、沖縄戦の集団自決に日本軍の強制があったとの記述に対し、教科書検定審議会は「沖縄戦の実態について誤解を与えるおそれがある表現」との検定意見を付けた。各教科書会社は意見に従い「強制」の記述を削除・修正し検定に合格。県内での大規模な抗議集会を受け、町村信孝官房長官が「工夫と努力と知恵があり得るのかもしれない」と発言した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221300_03.html

 

2007年12月22日(土) 朝刊 1面

「集団自決」訴訟 大阪地裁で結審

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの著作は名誉棄損だとして、大江氏と岩波書店に慰謝料などを求めた訴訟は二十一日、大阪地裁で結審した。判決は来年三月二十八日に言い渡される。

 最終準備書面で原告の元戦隊長側は、住民への手榴弾交付や村長の「万歳三唱」を隊長命令にすることは、事実を論評にすり替え、無理やりに軍命説を維持するためのねつ造だと主張。

 「集団自決」が軍命令や隊長命令で起きたという指摘について、「具体的な証拠の検証に基づかない、人間心理や戦場の現実への想像力に欠けた、極めて浅薄な思考観念であることが明らか」などと述べた。

 被告側は、沖縄では皇民化教育が強力に推進され、日本軍は「軍官民共生共死一体化」の方針で、総動員作戦を展開していたと強調。米軍上陸の際は、村民とともに玉砕する方針を採っており、捕虜となることを禁じ、いざという時は「玉砕」するよう言い渡していたと結論付けた。

 大江氏の「沖縄ノート」について、戦隊長の「集団自決」命令が出されたことも、戦隊長を特定する記述もなく、名誉棄損にあたらないことは明らかとしている。

 訴えているのは、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の元戦隊長、故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(74)。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221300_04.html

 

2007年12月22日(土) 朝刊 1面

再審査と公表 要求/普天間アセス

方法書に知事意見 手続き否定せず

 仲井真弘多知事は二十一日、米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)方法書のうち、県条例の対象となる飛行場建設部分について三十六項目二百三十三件の「知事意見」を、事業主体の沖縄防衛局に提出した。アセス調査前に、具体的に事業内容についての調査手法や予測評価などの再審査・公表を求める異例の知事意見。しかし県条例による差し戻しは適用せず、方法書の不備を指摘しながらもアセス手続きは進むことになる。沖縄防衛局は提出された意見を勘案して調査方法を決める。来年二月にもアセス調査を開始する見通しで、移設に向けた手続きが前進する。

 下地寛県環境政策課長が同日、那覇市泊の沖縄防衛局を訪れ、知事意見を手渡した。受け取った杉山真人局調達計画課長は「よく読ませていただき適切に対応したい」と述べた。

 知事意見を提出後、記者会見した友利弘一県環境企画統括監は「意見に沿って調査・評価すれば、準備書提出は再来年二月以降になる」とし、来年七月にも準備書提出の意向を示している国をけん制した。

 意見の実効性については、沖縄防衛局が来年二月初めのアセス調査着手に向けて県に求めているサンゴ類採捕などの許可に対し「知事意見を真摯に受け取っていただかなければ、厳しい対応にならざるを得ない」(同部)とし意見の順守を求めた。

 意見の前文では建設位置や規模などの協議が十分に進まないまま、方法書手続きに移った同局の姿勢を疑問視。今後の計画具体化やアセス手続きで地元自治体や住民に広く情報公開を求める意見を付け加えた。

 一方、同局が現在実施している現況調査について答申では「中止を含め検討する必要がある」としたのに対し、「(審査会の指摘を)十分配慮する必要がある」と若干表現を弱めた。答申の指摘に加えて、「航空機騒音及び低周波音について名護市試案の位置も含め可能な限り沖合へ移動した位置での予測・評価を行うこと」などさらに二十五件の意見も追加した。


審査会の運営 支障来し残念/仲井真知事


 仲井真弘多知事は二十一日、「審査会の質問にも十分な対応がなされなかったことから、方法書審査の目的である環境影響評価の項目、手法などが適切か否か判断ができず、このままでは審査が困難との声が上がるなど、審査会の運営に支障を来したことは大変残念」と指摘。その上で「今後の公有水面の埋め立てにかかる方法書審査への誠意ある対応と、知事意見に対する適切かつ確実な対応」を求めるコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月22日朝刊)

[知事意見の提出]

手続きがまた一つ進んだ

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対し、仲井真弘多知事は、記載内容が不十分であるとの意見を沖縄防衛局に提出した。

 方法書は環境アセスメントの項目や調査・予測・評価の方法などを記載したものである。事業者である国は、住民や市町村長、知事から方法書に対する意見を聴いた上で方法を選定し、その方法に基づいて環境アセスメントを実施することになる。

 方法書に対し、防衛省は「形式的な要件を満たしており問題はない」と主張している。これに対し、県環境影響評価審査会は、記載された内容が不十分なため、アセスの項目や調査手法が適切かどうかを判断することができないと厳しい評価を下し、書き直しを求める意見を知事に答申した。

 審査会の答申は知事意見に反映されたのだろうか。

 知事意見は審査会の答申に沿った内容ではあるものの、防衛省に対して方法書手続きのやり直しを求める内容にはなっていない。

 審査会の答申内容を「真摯に受け止める必要がある」との知事意見は、国にとって想定の範囲内のことで、今後の手続きに支障を来すものではないだろう。

 どうしてこのようなえん曲表現になったのか。

 おそらく、内容が不十分とはいえ法律や条例で規定する事項は一応記載されていること、正面からやり直しを要求した場合、国との関係に再び亀裂が生じ、北部振興事業費百億円の凍結解除にも悪影響を与える、と判断したからではないか。

 知事は意見の中で、滑走路建設場所の沖合移動や、三年をめどに普天間飛行場を閉鎖状態にすること、なども盛り込んでいる。

 しかし、それにしても、環境アセスメントを実施するための一連の手続きには腑に落ちない点が多い。

 滑走路建設場所は、事業計画の中心部分ともいえるものだが、肝心の建設場所について地元の同意が得られず、地元との調整も整わないうちに、一方的に方法書が送られた。

 その上、審査会の三十五項目七十六問に及ぶ質問書に対しても「決定しておらず具体的に示すことは困難」だとしてその多くがゼロ回答だった。

 飛行経路などの運用形態や陸上飛行、航空機装弾場、大型岸壁なども方法書には記載されていない。

 審査会の答申内容を引用して不備を指摘した知事意見の、引用部分にこそ問題の核心があるというべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071222.html#no_1

 

2007年12月22日(土) 夕刊 5面

「県民ばかにしている」/「軍強制」文言回避

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省が教科書会社に日本軍による「強制」の表現を避けるよう求め、会社側もほぼ従って再申請していることが分かった。「このままでは文科省の思い通りに史実が曲げられる」。二十二日、県民大会実行委員会の危機感は頂点に達した。

 県民大会実行委員長の仲里利信県議会議長は「強制記述の有無は非常に重大。内容を確認した後にコメントしたい」とした。二十五日からの東京での要請行動を控え、「県民は蚊帳の外。不退転の決意で行く」と強調した。

 副委員長を務めた小渡ハル子県婦人連合会会長は「沖縄をばかにするな」。怒りは収まらず、「県民の努力を徒労に終わらせるわけにはいかない。文科相に会って検定を撤回させるまで、東京から帰らない」と語気を荒げた。

 琉球大学の山口剛史准教授は「三月の検定結果発表からまったく前進がなく、史実として間違った記述になる」と批判。「柔軟姿勢を示していた文科省が強硬になったのは、強制を否定する団体の巻き返しに力を得たのではないか」と指摘した

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712221700_03.html

 

2007年12月23日(日) 朝刊 2面 

07年度北部振興費 年明けに執行延期

談合事件受け慎重

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十二日の記者会見で、二〇〇七年度の北部振興事業費(百億円)について、執行が年明けにずれ込むとの見通しを明らかにした。

 財務省は現在、北部振興事業の個別メニューを精査している。国頭村で、北部振興策の一環として国が補助金を出した園芸農業活性化事業で談合があり、建設業者代表らが逮捕された事件を受け、手続きを慎重に進めている。

 岸田沖縄相は「年明けのできるだけ早い時期に準備ができ次第、執行されるものと期待している」と述べた。

 北部振興事業と普天間移設の関係では、「直接は基地移設の議論とかかわらないと考えるが、広い文脈の中で影響は受けるのかなと思っている」と述べた。

 〇七年度の北部振興事業費は、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議がこう着していたことを理由に、執行が凍結された。しかし、今月十二日の米軍普天間飛行場の移設に関する協議会で、岸田沖縄相が「予算の執行手続きを進めたい」と明言し、了承されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712231300_03.html

 

2007年12月23日(日) 朝刊 2面

防衛局嘉手納移転を内示/那覇には事務所新設

 【東京】財務省は二十二日までに、二〇〇八年度の機構・定員を各省庁に内示した。県関係では沖縄防衛局の嘉手納町への移転と「那覇防衛事務所」の新設を内示した。

 沖縄防衛局は、嘉手納ロータリー地区の市街地再開発事業で建設されるビルに来春にも移転する見通し。防衛省によると、人員など規模の変動はないという。

 一方、南部地区の防衛施設行政に対応するため、新たに「那覇防衛事務所」を設置する。場所は未定だが、市内のビルに入居する見通し。所長、次長以下に業務課、施設課を配置、計十五人体制となるという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712231300_04.html

 

2007年12月23日(日) 朝刊 2面

中城海保に48人増員/シュワブ警備増強

 【東京】財務省は二十二日までに、二〇〇八年度の政府の機構・定員について総務省に内示した。県関係では、海上保安庁が米軍普天間飛行場移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部での海上警備強化を目的に要求していた、第十一管区海上保安本部・中城海上保安署の「保安部」格上げと、四十八人の増員が認められた。

 国土交通省人事課によると、現在の同保安署の構成は署長、次長以下に陸上職員二十人、船員十四人の合計三十六人。増員のほか、海上保安庁の人事の振り替えで計九十七人体制となるという。

 「保安部」移行に伴い管理、警備救難、交通の各課を新設。増員される人員は「警備対策官」と位置付ける。同課は「臨機応変に対応するため」としている。

 そのほか、十一管への「刑事課」設置も認められた。十一管は全国で唯一、刑事課がなかった。これまで業務を兼任していた警備部門の人手がシュワブ警備に割かれることが想定されるためだ。

 海上保安庁がシュワブでの警備強化を想定し、〇八年度予算概算要求に盛り込んだ巡視艇の新造、監視取締艇、ゴムボートの整備など総額約四十八億円は、〇七年度補正予算に前倒しされて、財務省原案に盛り込まれている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712231300_05.html

 

琉球新報 社説

「強制」外し 密室の結論は容認できず

 無理が通れば道理が引っ込む、というが、まさにその通りの展開だ。文部科学省は何が何でも、「集団自決」(強制集団死)における旧日本軍の負の側面を消し去りたいらしい。

 高校歴史教科書の検定問題に関し、訂正申請の記述内容について文科省の教科書調査官と教科書出版社が、日本軍による「強制」の文言使用を避ける方向で調整していることが分かった。

 関係者によると、教科用図書検定調査審議会は軍の「強制」という文言そのものの使用を認めない方針という。これを受け、教科書調査官は出版社に対し「日本軍」と「強制」の文言を直接結び付けないよう求めている。

 出版社はこの方針に従う見通しで、軍の強制を表す表現が大幅に後退する可能性が高いという。これでは、検定直後の記述に戻ってしまうことになり、何のための訂正申請だったのか。

 さらに解せないのは、訂正申請の審議過程で、検定審が各社に示した「指針」で、今後の調整は文科省の教科書調査官に一任する、としていたことだ。これでは、検定審の責任放棄に等しい。何より調査官が「新しい歴史教科書をつくる会」と密接な関係にあることも、本紙報道で明らかになっている。同会が反訂正申請のキャンペーンを展開しているのは周知の事実。公平性を欠き、恣意(しい)性が疑われても仕方なかろう。

 そもそも検定審や日本史小委員会の中には沖縄戦の専門家はいない、と指摘されている。さらに今回の検定意見が出た過程においても、ほとんど論議はなかった、というのは本紙の報道で明らかになっている。では「強制はなかった」とする根拠は何なのか。

 この間、検定審に沖縄戦の専門家を加えて審議をしたのか。それは誰なのか。どういう論議を経て「強制はない」と結論付けたのか。すべて明らかにすべきだろう。

 集団自決にはさまざまな要因があり、背景を書き込め、との指針は、むしろ望ましいところだ。軍の強制性が、より明らかになるだろう。いずれにしろ、密室での結論は到底、受け入れ難い。

(12/23 10:01)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29966-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

普天間代替アセス 県は最後まで筋を通せ

 防衛省のごり押しを結果的に追認する形とならないか。アセス法の限界も背景にはあるのだろうが、もっと県の主体性を明確にすべきだった。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に関し、防衛省が作成した環境影響評価(アセスメント)方法書について、県は「方法書は不十分」と指摘。その上で、アセス調査の前に事業内容や調査・予測・評価の手法を具体化させ、再審査させるよう求める知事意見を、沖縄防衛局に提出した。

 ただ、県環境影響評価審査会が答申で言及した方法書の書き直しについては「(答申を)真摯(しんし)に受け止める必要がある」とするにとどめ、方法書の公告縦覧など手続きのやり直しは求めなかった。

 さらに、現況調査(事前調査)についても「中止も含め検討する必要があるとの審査会からの指摘があり、事業者は十分配慮する必要がある」とし、中止要求までは踏み込まなかった。

 いずれも、審査会に責任を預ける格好だ。これでは県の真意が伝わらない。従来、知事は事前調査や方法書について批判を重ねており、それからしても今回の意見は納得できるものではない。問題の先送り、とされても仕方がない。はっきりと方法書の「差し戻し」を要求すべきではなかったのか。

 アセス調査前に事業の見直し個所の公表、再審査せよ、との要求にしても、これまでの事業者(防衛省)の態度をみると、どれだけ実行できるか。はなはだ疑問だ。審査会でも、委員の事業内容の説明要求に対し「決定しておらず具体的に示すことは困難」(沖縄防衛局)と、木で鼻をくくるような、核心部分のはぐらかしに終始した。

 知事意見の本気度をどう判断するか。例えばアセス調査に先立つ県の許認可がある。来年2月に予定されているアセス本調査で、沖縄防衛局はサンゴ類、ウミガメの卵の採捕について、県の許認可を得る必要がある。これについて県の下地寛環境政策課長は「再審査を求めたことに対し、沖縄防衛局が要求を守らなかった場合、サンゴなど採取の許認可は厳しい」と述べて、防衛局を牽制(けんせい)する。

 こうした態度を最後まで県が貫けるかどうか。本気度を図るバロメーターとなる。書き直しを明記した審査会の答申を県自身が「真摯に受け止めよ」としており、このことは、県にも向けられている。字句通りに解釈すれば、県のとる道は限られてくる。

 「アセスに協力がもらえないなら、北部振興策も凍結ということになる」(防衛省幹部)。早くも中央からは、こんな「脅し」も伝わってきた。知事意見が玉虫色になった背景の一つでもあろう。しかし、安易な妥協は禁物だ。県は最後まで筋を通してほしい。

(12/23 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29967-storytopic-11.html

コメントを残す