沖縄タイムス 関連記事・社説(12月8日から12日)

2007年12月8日(土) 朝刊 27面

文科省、「指針」否定/教科書検定再申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、山内徳信参院議員(社民)は七日、文部科学省に布村幸彦大臣官房審議官を訪ね、同省が教科書会社に示した「指針」を公表することなどを要請した。山内氏らによると、布村審議官は「そういう指針は作っていない」と報道内容を明確に否定したという。

 一方、文科省による「指針」の伝達を公表した関係者は同日、沖縄タイム社の取材に「文科省が文書を読み上げ、口頭で方針を教科書会社に伝えたのは事実だ」と反論し、双方の言い分は真っ向から食い違っている。

 保坂展人衆院議員(社民)も同日、渡海紀三朗文科相と面談し「指針」の事実関係をただした。保坂氏によると渡海氏は「(報道は)極端な書き方をしている」という趣旨の説明をしたという。

 渡海氏は一方で、訂正申請の審議が終了した際の大臣談話の発表については前向きな意向を示したという。

 布村審議官は山内氏らに、六社の訂正申請手続き後、文科省が教科書会社とやりとりをしたことは認めた。ただ、その内容は「これから審議に諮る判断として、何が(訂正申請の理由になった検定規則上の)『学習上の支障』に当たるか根拠を(教科書会社に)聞いた」と述べ、文科省から「指針」に当たる方針を示した事実はないとした。

 その上で「報道されているようなことは一切、していない」「(訂正申請で)記述を書き直した根拠を問うただけだ」などと釈明したという。

 布村審議官はほかに(1)年内には審議結果をまとめたい(2)審議会が意見を聞いている専門家の氏名は、本人の了承があれば審議終了後に公表する(3)意見は幅広い専門家に聞いている―などの現状を明らかにしたという。


「軍強制」の明記求める/仲里議長


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午後、緊急会見し、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する高校歴史教科書検定問題で教科用図書審議会が「指針」をまとめ、教科書会社に「日本軍の命令」を明記しないよう求めたことに対し、「軍の強制」の明記を求める談話を発表した。

 談話は「(指針が)『旧日本軍』という主語や『強制など』の言葉を抜くことで、全体をあいまいな表現に修正しようとするものであれば、県民の体験やこれまでの取り組みをないがしろにするもので許せない」と批判した。

 談話では「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝拓殖大教授などが県民大会の参加者数を主催者の発表よりも少なく伝えたり、仲里議長が沖縄戦時に日本兵から毒の入ったおにぎりを渡されたとする証言を「作り話」と批判していることにも言及。「ぜひ沖縄に来て凄惨を極めた沖縄戦の中で親が子を子が親を殺さなければならなかったという『集団自決』がどうして引き起こされたのか直視してもらいたい」と訴えた。「うそ呼ばわりすることは県民への侮辱」と反発した。


「戦陣訓」を記述へ/教科書会社1社


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定で、文部科学省が教科書会社六社に訂正申請の書き直しを求めていた問題で、新たに一社が「集団自決」の背景に軍官民共生共死の方針の一端を示す「戦陣訓」の教えがあったことを盛り込んで再申請することを決めた。関係者が七日、明らかにした。

 「集団自決」に複合的な要因があったことを記述で説明し、再申請することを教科書会社に求めた文科省の「指針」に沿った記述。文科省幹部は報道内容を否定しているが、教科書会社のこうした対応は「指針」の存在を裏付けるものと言えそうだ。

 「戦陣訓」は戦時中に日本軍が「生きて虜囚の辱めを受けず」として、米軍の捕虜になることを禁じた教え。軍だけでなく住民にも浸透し、沖縄戦で民間人が「集団自決」に追い込まれた要因の一つとされる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_01.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 1面

早期移設へ協議加速/仲井真知事、就任1周年で意欲

 十日で就任一周年となる仲井真弘多知事は七日、本紙など報道各社の合同インタビューに応じた。

 公約に掲げた米軍普天間飛行場の早期移設や同飛行場の「三年を目途とした閉鎖状態」の実現については、予想以上に日米両政府の壁が厚かったと振り返った。その上で、「(協議を)一年やり続けて、ようやく課題解決を前に進めるための(政府との)意見交換が始まりだした感じだ」と述べ、早期移設に向けた政府との協議を今後加速させる考えを強調した。

 また、公約の柱である完全失業率の全国平均並み実現は、現時点で厳しい状況にあることを認めた。今後の取り組みについては、トヨタのような自動車産業の九州工場がアジアの展開基地になっていることを例示し、「(今後)台湾や米国、中国なども回ってみようと思う」と語り、企業誘致に向けたトップセールスに意欲を示した。

 さらに、将来の道州制導入にも言及。「沖縄も一回は、自分で財政を含めてほかの地区と同じ形で、特別な制度でなくやっていく必要がある。経済の自立なくして沖縄の発展はない」と述べた。

 就任一年の公約全般の達成度については、「産業振興や雇用創出・拡大、基地負担の軽減などに取り組んできた。県政全般のほとんどのことに、何らかの形で着手できたものと考えている」と総括した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_02.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 2面

全駐労 団交不調、妥結見送り/第3波スト11日に判断

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の手当廃止を提案した問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千八百人)は七日、防衛省と五回目の団体交渉に臨んだ。全駐労側は、手当廃止分を固定して補償する対案を引き続き求めたが、防衛省側から前向きな回答はなく、妥結は見送られた。

 これを受け、全駐労は十一月三十日以来となる第三波ストライキを十二日に決行する方針を確認した。しかし、来週にも最終決着する日米協議を見据え、スト前日の十一日に三役が防衛省と交渉に臨み、最終判断する考えだ。

 第三波として計画しているのは、十二日の沖縄に始まり十四日の神奈川まで、各地で順次八時間ストを行う「リレーストライキ」。第二波と同様、一般職種の就労時間に合わせた八時間のストで、実質的に二十四時間ストとなる。

 全駐労によると、この日の団体交渉で防衛省は全駐労の対案について「今の段階では難しい」としながらも、「打開に向け一生懸命取り組みたい」と述べ、継続して財務省と折衝する考えを示したという。

 防衛省幹部も同日、「防衛省として一歩も(譲らない)というわけではない」と妥結に前向きな姿勢を示した。


防衛政務官 妥結に意欲


 【東京】政府が基地従業員の手当廃止を提案している問題で、防衛省の寺田稔大臣政務官は七日、「全駐労と誠心誠意妥結を目指し、交渉していく」と早期妥結に意欲を示した。衆院外務委員会で述べた。

 寺田政務官は、手当廃止後の経過措置の在り方をめぐり、全駐労が示している(手当廃止分を固定して補償する)対案を検討していることも明らかにした。


基地従業員の不利益と指摘

駐留軍労政議員懇


 【東京】政府が基地従業員の手当廃止を提案している問題で、国会議員でつくる駐留軍労働政策議員懇談会(会長・横路孝弘衆院議員)は七日、国会に防衛省の寺田稔大臣政務官を訪ね、従業員への配慮を要請した。

 同議員懇談会は、防衛省提案に「労働者と家族の日常生活に影響を及ぼす不利益変更の提案だ」と指摘。(1)廃止分を固定補償額として定年まで支給(2)国家公務員を下回る勤務条件の改善―などを求めた。寺田政務官は「精いっぱい努力したい」などと述べるにとどめたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_04.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 27面

機能強化 住民放置/米軍合同即応訓練終わる

 米軍嘉手納基地を拠点に、三日から行われていた米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練は七日、終了した。第一八航空団に加え、岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊約六百人が参加。有事に備え、実弾を装着して飛行するFA18、爆発音や煙を伴う訓練などが確認された。一方で、基地周辺に住む住民からは騒音被害を訴える苦情が相次いだ。嘉手納基地で米海兵隊と合同で即応訓練を実施するのは初めてで、目に見える形で進む「基地機能強化」が、不安を募らせる住民を置き去りにしている実態が浮かぶ。(中部支社・福里賢矢)

不安な夜


 七日未明、嘉手納町水釜の住宅街は静寂に包まれていた。「エクササイズ、エクササイズ」。午前二時すぎ、突如嘉手納基地から拡声器放送が行われた。内容は聞き取りづらく、数分間にわたって不気味に響いた。嘉手納町に寄せられた九件の苦情のうち、大半は昼夜を問わずに行われたサイレン音や拡声器放送に対するものだった。

 「意味の分からない放送にはもう耐えられない」「睡眠薬を飲んで眠ろうとしても寝れない。せめて夜は静かにしてほしい」。寄せられた苦情からは、不安な夜を過ごす町民の実態が浮き彫りとなった。

 一方で、FA18は日没後も飛行訓練を続けた。嘉手納町が屋良地区に設置している騒音測定器は、三日から六日まで、多くの人が不快に感じる騒音(七〇デシベル以上)を一日平均百六回を計測。飛行停止中のF15戦闘機が通常運用していた十月の一日平均騒音発生回数九十一回を上回った。

 今回の訓練について、米空軍は六日、ホームページ(HP)で「ミサイル攻撃、大規模災害、基地防御、化学攻撃などが含まれる」と、これまで公表しなかった訓練内容の一部を明らかにした。

 同HPで嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ司令官は「不測の事態に外来部隊を受け入れ、活用する任務を訓練する素晴らしい機会だ。海兵隊にとっても、合同訓練の成果は大きい」と成果を誇示した。


統合運用


 日米両政府は二〇〇六年、沖縄の基地負担軽減をうたった在日米軍再編に合意。屋良区の島袋敏雄区長は「これで嘉手納も少しは静かになる」と期待した。

 しかし、合意後も嘉手納基地をめぐる動きは活発化。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備され、SACO(日米特別行動委員会)合意に基づき、伊江島補助飛行場で行われるはずのパラシュート降下訓練も実施された。今回の即応訓練では、米軍の軍種間の垣根を取り払う「統合運用」推進の流れが沖縄でも具体化した。

 負担軽減の目玉とされたF15の本土訓練移転は三月を皮切りに、五機程度が参加し、ほぼ二カ月に一度のペースで実施されるだけ。島袋区長は「政府が優先するのは軍事か住民が安心できる生活か。住民の声を聞いて判断してほしい」と切実な思いを訴えた。


     ◇     ◇     ◇     

北谷町桑江で騒音激増


 【北谷】米軍嘉手納基地で、米空軍と米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が、合同即応訓練を実施した今月三日からの四日間、北谷町桑江地区で九〇デシベル(騒々しい工場内に相当)以上の騒音が、普段の約二倍以上の十八回計測されていたことが分かった。

 同町によると、同地区で十一月に計測された九〇デシベル以上の騒音は、一週間当たり五回前後だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_06.html

 

2007年12月8日(土) 朝刊 2面

「集団自決」修正/知事、撤回要求は堅持

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は七日、二日目の一般質問が行われた。

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題への対応について、仲井真弘多知事は「現在、教科用図書検定調査審議会が行われているが、(教科書検定意見撤回を求める県民大会の)十一万人の集会の背景を忘れず、県民の意向に応えられるようやっていきたい」と述べ、検定意見の撤回と記述回復を求めていく姿勢をあらためて強調した。当山全弘氏(社大・結連合)の質問に答えた。

 米軍再編交付金の交付基準の在り方については、上原昭知事公室長が「再編関連特定周辺市町村の指定について基準が明確に規定されておらず、交付金支給の有無を含め法律運用の大部分が政省令に委任されている。これは県として好ましいものではないと考える」との認識を示した。兼城賢次氏(護憲ネット)への答弁。

 道州制論議を活発化させるため、議員連盟や沖縄道州制懇話会が設立されたことに、仲井真知事は「調査研究や県民視点での論議が進み、道州制問題に関する県民理解が一層深まると期待している」と述べ、県も県民への普及啓発等で連携を図っていく考えを示した。平良長政氏(護憲ネット)の質問に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712081300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月8日朝刊)

[F15に亀裂]

欠陥機は運用中止せよ

 米国ミズーリ州で墜落事故を起こし飛行停止措置が取られた米空軍のF15戦闘機には、事故機固有の原因ではなく、構造上の欠陥があることが裏付けられた。

 嘉手納基地周辺の住民の懸念は的中した。欠陥機が日常的に離着陸を繰り返し、上空を飛行していた。住民や周辺自治体が怒るのは当然だ。

 嘉手納基地所属のF15は約五十機。三十機の整備点検を済ませたところ、二機について機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかった。整備点検が進めば、さらに増える可能性もある。

 米国で十一月二日に発生したF15の墜落事故の後、米空軍は「構造上の欠陥」の可能性があるとして、飛行停止命令を出した。

 嘉手納基地は、詳細な整備調査のチェックリストと照らし合わせ、一機当たり十五時間以上かけて点検したと説明し、二十六日から飛行を再開した。

 米空軍は二十八日に再停止を発表。今月四日には点検個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性があるとして三回目の飛行停止を決めた。

 詳細な点検でも主原因とされる亀裂は発見できなかった。嘉手納基地所属のF15の飛行再開は、事故原因が確定できない段階で「見切り発車」による決定だったことになる。

 安全性が担保されない中での再開であり、住民軽視にもほどがある。米空軍は住民の安全よりもF15の運用を優先していた。政府はこの問題を重く受け止める必要がある。

 住民の安全にかかわる問題を政府が許容し放置するようでは、周辺住民の怒りと不安は収まらないだろう。

 米空軍は一九七四年からF15の配備を開始した。現在世界各地に約七百機が展開しており、六日までに計五機に亀裂が確認された。六日時点では計七機との報道もある。

 F15は構造検査技術の向上などで耐用期間(距離)が延長されてきたが、専門家らは老朽化の問題があると指摘していた。嘉手納基地所属のF15約五十機の製造年の新しい機体への入れ替えも、老朽化が理由だった。

 米空軍によるコンピューターのシミュレーション結果では、ロンジロンの亀裂が墜落事故につながる構造的問題が発生する可能性が示されたという。

 米軍がF15の欠陥を深刻に受け止めている以上、政府が座視することは許されない。基地周辺住民の安全を最優先する対応を強く求めていくべきだ。

 F15は「最も安全な戦闘機」という神話は崩壊した。欠陥が疑われるF15については運用を即刻中止し、嘉手納基地からの撤去を急ぐしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071208.html#no_1

 

2007年12月9日(日) 朝刊 1・27面

「軍だけが強制」禁止/文科省指針 全容判明

複合的要因を強調/教科書・再申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、文部科学省が教科書会社に伝達した訂正申請の書き直しの方針(指針)の全容が八日までに分かった。関係者が明らかにした。「集団自決」の背景に複合的な要因があったことを繰り返し強調。「過度に単純化した表現」は「生徒の理解が十分にならない恐れがある」として、日本軍だけが住民に「集団自決」を強制したと読み取れる表現を事実上、禁じている。

 一方で「集団自決」が自発的な死ではなく、住民が「『集団自決』せざるを得ない状況に追い込まれた」ことは認め、その「背景・要因」を詳細に記述するよう促している。このため、「集団自決」を強制した主体(主語)が、軍だけでなく複数にまたがる記述であれば、容認する方針を示しているとみられる。

 指針は教科用図書検定調査審議会の意向を受け、文科省が作成したようだ。

 関係者によると指針は四日、文科省の教科書調査官から、訂正申請した六社の担当者に伝達された。文科省の布村幸彦大臣官房審議官は七日、「そういう指針は作っていない」と否定したが、全文が判明したことによって苦しい説明を迫られそうだ。

 指針は、「沖縄戦」の項目では「軍官民一体となった戦時体制下で、住民を巻き込んだ地上戦が行われた」と指摘。「集団自決」の項目では「太平洋戦争末期の沖縄で、住民が戦闘に巻き込まれるという異常な状況下で起こった」として、一般住民を巻き込んだ沖縄戦の特殊性を強調した。

 その背景として「当時の教育訓練」や「感情の植え付け」があったと述べ、「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓や「死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよ」の軍人勅諭との関係性を示唆している。日本軍の命令については「直接的な軍の命令に基づいて行われたということは、現時点では確認できていない」として、記述しないよう求めている。


     ◇     ◇     ◇     

「軍責任のごまかし」/体験者・識者ら懸念


 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、教科用図書検定調査審議会が沖縄戦や「集団自決」の教科書記述について各教科書会社に伝えた「指針」の内容が明らかになった。複合的な要因を記させるとともに、軍による直接の命令を否定する内容に、検定意見の撤回を求めている関係者らは「『軍の強制』をあいまいにしようとしているのではないか」などと懸念している。

 「教科書検定意見の撤回を求める県民大会」の玉寄哲永副委員長は、開口一番に「審議委員や教科書調査官は沖縄戦をまったく分かっていない」と非難した。

 指針が「沖縄では軍・官・民一体となった戦時体制の中」としている点を、「県民が沖縄を地上戦の舞台にすることや、軍への協力を自発的に望んだわけではない」と批判。「異常な戦時体制をつくり、教育訓練を施したのは軍だ。沖縄戦全体が軍命によるもので、それを否定すれば、かえって『集団自決』の本質が分からなくなる」と述べた。

 琉球大の高嶋伸欣教授は、「『過度に単純化した表現』は駄目だというのが一番の本音。『軍による強制』は書かせたくないということを示したものだ」と指摘する。

 一方で「背景・要因を書き加えれば考慮する姿勢も見せており、厳しい世論を考慮せざるを得ないという審議会の立場の表れとも読み取れる」とも説明。その上で「こういうもの(指針に隠されている文科省の意図)に対してきちんと原則を守るよう声を上げることが必要だ」と強調した。

 文科省からの要請を受け、「集団自決」教科書検定問題についての意見書を提出した林博史・関東学院大教授は「沖縄戦で起きた『集団自決』の一番の要因である『日本軍の強制』の記述を認めるかどうかが最大のポイントだ」と説明する。

 「『直接的な軍命』を『確認できていない』としているが、検定では、これを理由に軍の強制を削除させた。同じことが繰り返されないか」と懸念する。「前提に日本軍の強制を挙げ、背景としてさまざまな要因を書かせるならいいが、背景だけを書かせて強制を書かせない意図であれば、ごまかしにすぎない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712091300_01.html

 

2007年12月10日(月) 夕刊 1面

防衛局「即応訓練必要」/北谷議会抗議

 北谷町議会(宮里友常議長)は十日午前、外務省沖縄事務所、沖縄防衛局を訪ね、嘉手納基地所属のF15戦闘機の即時撤去と、米海兵隊と米空軍合同の即応訓練などによる基地機能強化への抗議を申し入れた。

 即応訓練について、沖縄防衛局の池部衛次長は「いざというときに、嘉手納の空軍と岩国の海兵隊の航空機が協力し合って対応することは必要」と述べ、有事の際などの統合運用に向けた訓練の意義を強調した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「現状の抑止力を維持し、即応性を高めることは重要。訓練を実施するなとは言えない」とする一方、米空軍と米海兵隊合同の即応訓練は定期的に実施されるものではない、と説明した。

 また、倉光副所長は在韓米軍機による沖縄周辺海域の射爆撃場での訓練増加の可能性を指摘され、「東アジアの安全にとって在日米軍だけが運用上必要ということではなく、在韓米軍と在日米軍が協調しながら対応する。在韓米軍の訓練が関係ないということではない」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712101700_01.html

 

2007年12月10日(月) 夕刊 6面

米政府提訴の可能性を議論/「普天間」で市がシンポ

 【宜野湾】普天間飛行場問題シンポジウム「米国政府訴訟の可能性」(主催・宜野湾市)が九日、市中央公民館で開かれた。同飛行場は米国の安全基準に違反しているとして、人権侵害などを根拠に米国で米政府を訴える可能性について議論を深めた。

 基調講演で、NPO法人ピースデポ代表の梅林宏道さんが米国海兵隊基地の安全基準について基調講演。飛行場周辺の土地利用が制限された「航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)」をめぐり、訴訟の根拠となることなどを説明した。

 パネルディスカッションでは梅林さんのほか、米国ジュゴン訴訟原告の真喜志好一さんや普天間爆音訴訟団弁護団長の新垣勉さん、伊波洋一市長が米国政府訴訟の可能性について議論。高良鉄美琉大教授がコーディネートした。

 梅林さんは米国で訴訟を起こす際、米国外の普天間問題をどの法律に当てはめて提訴するか問題提起。「最初のハードルが高い」としながらも「人権侵害として訴えれば法律の道筋が付けられるのではないか」と話した。

 新垣さんは法治国家の日本で、普天間の運用は法律に基づかない前近代的な状況だと指摘。米国の国家賠償での訴訟や米国外でも適用される法律を探して裁判に持ち込む可能性を示し、「市民運動と裁判が一体となって米国の責任を追及するべきだ」と述べた。

 真喜志さんは米国の国家歴史遺産保護法に基づき、ジュゴンの保護策を示させることで海上基地建設の反対を示した経緯を説明。伊波市長は普天間の騒音被害が深刻化している現状を訴え、「米国内で直接被害を与えては基地は存在し得ず、米国政府訴訟の可能性を探りたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712101700_07.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 1面

北部振興事業 執行へ/政府が方針 あす表明

 【東京】政府は十二日に開かれる米軍普天間飛行場の移設に関する協議会(主宰・町村信孝官房長官)で、本年度分の北部振興事業費(百億円)の執行と、二〇〇八年度分(同額)の計上を表明する方針を固めた。議題の環境影響評価(アセスメント)と建設計画に関する協議終了後、岸田文雄沖縄担当相が本年度分の執行、額賀福志郎財務相が〇八年度分の計上を、それぞれ明らかにする方向で調整している。

 協議会はアセスに関する審議で、方法書への知事意見が今月二十一日に県条例の提出期限を迎えることを踏まえ、年明けからアセス法に基づく正式な手続きに入ることを確認。アセス調査を円滑に進めて早期の移設を実現するため、国と地元が互いに努力するとの趣旨で合意する。

 この合意を経て、北部振興事業費の執行条件である「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」環境が整ったと判断するもようだ。

 ただ、県環境影響評価審査会が方法書に厳しい見解を表明している現状を踏まえ、仲井真弘多知事は防衛省に丁寧な調査や代替施設の機能に関する一層の情報公開を強く求めるとみられる。

 北部振興事業費をめぐっては、二〇〇六年五月の閣議決定で、いったん「廃止」が決定。同年八月の第一回協議会で、小池百合子沖縄担当相(当時)が執行条件を提示し、了承された。

 同年十一月の知事選で仲井真知事が当選したのを機に、北部振興の継続に難色を示していた防衛庁(当時)も執行に同意した。

 しかし、県や名護市が普天間代替施設の沖合移動を強く求めたことから、政府は「協議が円滑に進む状況にない」と判断。例年は八月初旬に執行される同事業費の本年度分を凍結した。地元がV字形滑走路案の建設に協力しない限り、〇八年度予算にも計上しない考えを示していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_01.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 1・2・27面

普天間アセス/審査会が再審査要求

 米軍普天間飛行場代替施設建設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の不備を指摘し、事業者の沖縄防衛局に文書での追加説明を求めていた県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十日、追加説明の内容を審議。「方法書と認めるのは難しい」として、委員から準備書までに再審査の機会を要求する声が上がった。防衛局は「知事意見で指摘があれば検討する」と回答。津嘉山会長は「答申は方法書の不備を指摘していく」とし、答申案を検討する中で再審査の機会を要求する可能性を示唆した。

 方法書から準備書までの段階で、アセス手法について環境影響評価審査会の意見を聞くことは現行法では、想定されておらず、実現すれば極めて異例。

 審査会の委員らは方法書について「現時点で事業計画の熟度が低いために、アセス手法全体が仮定の計画の上に成り立っており、審議に値しない」と指摘。その上で、防衛局が方法書の内容のほとんどについて「準備書までに明らかにする」としていることから、「準備書までの早い時期に、それぞれ事業や計画の内容についてあらためて具体的な情報を出してもらい、意見を述べる機会をつくってもらいたい」と要望した。

 これに対し、同局は「知事からの意見として仮に出れば当然事業者として検討する必要があると思う」と述べた。

 津嘉山会長は「もし答申でそうした指摘があれば、対応を検討していただけるということだと思う」との見解を示した。

 前審査会で追加説明に対する回答を口頭説明にとどめ批判を浴びた沖縄防衛局は今回、あらためて文書で回答した。「美謝川切り替え」「作業ヤード」「護岸用ブロック等」を新たに付記した概略工程表を提示。

 しかし今月からの着手予定が、米側との調整の関係で来年三月に遅れる見通しの「隊舎等の建物の建築工事」の時期については工程表の項目から外れた。

 同局は「二〇〇九年七月末のアセス完了をめどに進めている」と明らかにしたが、審査委員からは「通常のアセスなら三、四年かかる内容だが(設定通りで)大丈夫なのか」とアセスの拙速を指摘する声も出た。

 同方法書については知事意見の提出締め切りが二十一日に迫っている。次回審査会は十一日で、審査会は遅くとも来週初めまでに答申をまとめる方針。


     ◇     ◇     ◇     

住宅地飛行 否定せず


 代替施設での基本的な飛行経路について沖縄防衛局は「北東より」または「南西より」の風を前提に設定。審査会委員から「風の向きが想定と違うときは、内陸部も飛行すると理解していいのか」との指摘が出た。これに対し、同局は「(滑走路に対して)横風とかはあり得るとは思うが、横風の場合は飛ばないということではなく、北東、南西いずれかの方向で離陸もしくは着陸という形になると思う」と歯切れの悪い回答に終始した。

 「基本的に、向かってくる風に離陸、着陸する形を考えている」。沖縄防衛局は、典型的な例として北東の風が吹いているときの離着陸イメージをスライドで示した。

 風向きについては「年間を通して北東よりの風が70%、その他が30%」とのデータ結果を強調。その上で「北東より、あるいは南西よりの風を想定している」と説明し、風向きによってV字形滑走路を使い分け、集落上空飛行を避ける考えを示した。

 しかし、風は常に「北東より」あるいは「南東より」に吹くとは限らない。

 審査会委員からは「北東や南西とは違う向きの風が吹いているときはどうするのか」との質問が出た。

 これに対し、同局は「滑走路に対して極めて強い横風が吹く事態が生じた場合には、離着陸は難しくなるかと思うが、そういった程度でなければいずれかの方向で離着陸する形になる」と回答した。

 審査会委員からは「北東よりの風が70%」とするデータの根拠にも疑問が呈された。

 同局は前回審査会の口頭説明と同様、「基本的には住宅地上空を飛行しない」とした上で、「緊急時などの例外的なケースはあり得るが、その際の飛行コースをあらかじめ示すことは困難」とした。

 防衛省は国会答弁で「訓練形態によっては当然(集落上空を)飛ぶことはあり得る」と表明しているが、これについても前回同様に「個別具体的な飛行コースについては現時点で米側と議論しているものではない」として明示しなかった。

 審査会委員からは騒音コンターや飛行コースの説明不備に苦言が呈されたが、同局は「環境影響評価を行うために必要な航空機騒音コンター図およびそれに関するデータは準備書の段階までに明らかにする」との回答にとどめている。


「審議に値せず」


 米軍普天間飛行場代替施設建設のアセス方法書は審議に値しない―。十日に開かれた県環境影響評価審査会。「現状でできる限りの情報を提供している」と繰り返す沖縄防衛局の説明に対し、同審査会の委員らは「具体的な回答を頂いていない」「方法書の根拠となった最低限の事業内容さえも説明していない」と反論。来週初めに予定されている答申は事実上、審査未了の形で提出される可能性も示唆した。

 審議は予定時間を超過して行われたが、防衛局と審査会の意見は平行線をたどった。方法書の体を成していないと指摘する委員らに対し、同局は「できる限りデータは出している」「準備書までに明らかにする」との回答を繰り返した。

 方法書の不備は、建設事業にかかわる工程で、どれも一方法しか検討されていないことでも明らかになった。作業ヤードは大浦湾を大規模に埋め立てて造るとしていることに、委員からは「埋め立てが環境に与える影響は大きく、当然変更もあり得る。それなのに別の案を検討していない」と述べた。

 飛行場建設の埋め立て土砂の一割を辺野古ダム周辺から採取することについては、「九割をほかから採取するのに、なぜ一割だけダム周辺から採取するのか合理的な説明がない」と疑問視。土砂を採取した跡地に兵舎建設の計画が検討されているとし、「兵舎は方法書で記載されていない。ほかの計画があるならば明確にしてほしい」と指摘した。

 方法書全体について、「飛行場建設に伴う住民生活や環境影響を真に考慮するという事業者の姿勢が見えない」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_02.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 27面

審議会指針「軍強制薄める狙い」/抗議声明相次ぐ

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた問題で、文科省が訂正申請をした教科書会社に示した教科用図書検定調査審議会の指針の内容に対して、十日、県内の市民団体から相次いで抗議声明が出された。

 抗議声明は「あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク」(反基地ネット)と「おきなわ教育支援ネットワーク」(教育支援ネット)が単独で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(平和教育をすすめる会)と「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会が共同でそれぞれ発表した。

 いずれも「『軍の強制』をあいまいにするものだ」、「『集団自決』体験者の証言や、県民大会で示された県民の意志を無視したものだ」などと指針を厳しく批判し、文科省に記述回復と検定意見の撤回を求めている。

 沖縄戦体験者の佐久川政一・教育支援ネット共同代表は「県民は軍により死へと追いやられたというのが沖縄戦での実感だ。多くの体験者の証言が『集団自決』への軍命、強制を示している。それ以外の背景を詳述させるのは『軍の強制』を薄めるのが狙いだからだ」と話した。

 平和教育をすすめる会の高嶋伸欣共同代表は「指針では『過度に単純化した表現』などとあいまいな言葉で基準が示されており、文科省に対して立場の弱い教科書会社が過剰反応を起こす恐れもある」と指摘した。

 反基地ネットの當山全治共同代表が「九月の県民大会から時間がたつにつれ、検定意見撤回の動きが後退している」と危機感を募らせるなど、各団体とも今後の対応を急ぐ考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_06.html

 

2007年12月11日(火) 朝刊 27面

クラスター弾搭載/嘉手納FA18

 【嘉手納】米軍嘉手納基地に一時的に移駐している海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が、非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾を装着して飛行しているのが十日、確認された。

 目撃者によると、FA18は午前十時すぎ、二機が左翼下にそれぞれ四発のクラスター爆弾を装着して離陸。同爆弾には実弾を示すとみられる黄色い帯状の印が確認された。

 約二時間後、嘉手納基地に着陸した際には計八発の同爆弾はなくなっていたことから、沖縄本島周辺で使用した可能性がある。日没後の午後七時四十五分ごろにも、同様にクラスター爆弾を装着したFA18二機が離陸した。

 FA18は、今月三日から七日まで、嘉手納基地を拠点に行われていた米空軍と米海兵隊合同の即応訓練に参加していた。


     ◇     ◇     ◇     

土曜の騒音 北谷4倍増


 【北谷】嘉手納基地の騒音防止協定で飛行が禁止されている土曜日に当たる八日、同基地に隣接する北谷町砂辺地区で、七〇デシベル以上の騒音が、普段の約四倍に当たる四十回計測されていたことが分かった。この日の平均騒音は一〇六・四デシベル(電車通過時の線路脇に相当)、最大は一一二・九デシベル(二メートル手前からの自動車のクラクションに相当)だった。

 同基地には、今月三日から七日まで行われた米空軍と米海兵隊の合同即応訓練に伴い、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機約三十機が飛来。十二日まで駐留し続け、別の訓練を予定している。

 同町によると、嘉手納基地所属のF15戦闘機が、米本国での墜落事故を受けて飛行を停止した十一月の土曜日の平均騒音回数は二十回。F15が通常運行していた十月の平均は十一回だった。

 砂辺地区では八日、沖縄平和運動センターなど四団体が嘉手納基地のF15戦闘機の即時撤去を訴え、同基地第一ゲート前で抗議集会を行っていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111300_07.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 1面

在沖海兵隊グアム移転12年から/米紙報道

 米軍再編の最終報告(ロードマップ)に盛り込まれた沖縄の第三海兵遠征軍(IIIMEF)の司令部などのグアムへの移転が二〇一二年から開始予定であることが十一日、分かった。司令部はグアム島北部の米海軍通信施設に移転、一四年を目標に全面運用する。マスタープラン(基本計画)案を来年三月、実務レベルの同プランを来年夏までに策定。米国の二〇一〇年会計年度の予算編成が始まる〇九年二月までに、より詳細な実施計画を固める方針という。

 米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」が同日、グアム統合計画室の責任者の見解として報じた。

 在沖米海兵隊八千人のグアム移転は、一四年に名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に完成予定の米軍普天間飛行場代替施設や嘉手納以南の米軍施設返還と「パッケージ」とされている。普天間代替施設の完成を待たずに、司令部移転を前倒しで開始する可能性については、これまでケビン・メア在沖米国総領事が示唆していたが、具体的な移転開始時期が明らかになったのは初めて。

 同紙によると、グアム統合計画室の責任者は「グアムへは第一陣が一二年に到着予定。一四年には完全に運用できる能力を整えたい」と説明。さらに「グアムでは新たな(射撃用、砲撃用)レンジを建設し、民間地との緩衝地帯を設けるため、基地を拡張する可能性がある。グアム周辺のマリアナ諸島でも、大規模訓練場の建設計画がある」としている。

 グアムの軍事強化は在沖海兵隊の移転のほか、米陸軍、米海軍の増強を計画。軍事強化されたグアムでは駐留兵員だけでなく、沖縄、アラスカ、ハワイなどの兵員も訓練を実施する見込みという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_01.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 1面

海自掃海艦 派遣裏付け/今年5月普天間事前調査

 【東京】山内徳信参院議員(社民)は十一日までに、米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市キャンプ・シュワブ沿岸部周辺での現況調査(事前調査)で、今年五月に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」が派遣され、調査に協力していたことを裏付ける防衛省の内部資料を入手した。

 ぶんごは五月十一日、海自横須賀基地(神奈川県)を出港して以降、海域で確認されておらず、行動の詳細が明らかになるのは初めて。

 資料は市民が防衛省に対して情報公開請求した。一部は「以後の海自の任務の効果的な遂行に支障を及ぼす恐れがある」などと黒塗りで不開示となっている。

 不開示理由の中には「運用形態等を公にすると、今後の同種作業の能率的な遂行が妨害行動により不当に阻害される恐れがある」との記述もあり、今後の海域調査でも海自が派遣される可能性を示唆している。

 資料によると、五月十一日にぶんごの「環境現況調査協力の実施に関する海上幕僚長指示」などがなされ、六月二十日には「終結に関する海上幕僚長指示」が出されている。その間、「中断に関する自衛艦隊一般命令」も出されているが、日付は明らかにしていない。

 このほか、現場部隊は「掃海隊群司令部(水中処分班を含む)」と明記。海底への機器設置作業に海自の潜水士が参加したことが裏付けられた。

 山内氏は「ぶんご」の再出動の有無などについて、十一日午後の参院外交防衛委員会で政府の対応をただす。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_02.html

 

2007年12月11日(火) 夕刊 5面

FA18名護上空で騒音/米軍、詳細言及せず

 【名護】米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が十日、朝から夜間にかけ、断続的に名護市上空を飛行した。市民からの苦情を受けた名護市基地対策室は同日、沖縄防衛局を通じ米軍に「市民に不安が出るような訓練はやめてほしい」と改善を要請した。

 市役所に連絡した島袋庸雄久志区長によると、同戦闘機は十日朝から夜の九時すぎまで飛行。島袋区長は「これまで単発的な飛行はあったが窓を閉めても聞こえるような騒音が、これだけ長時間続いたのはなかったのではないか。ヘリの音もうるさいが、戦闘機は恐怖感を感じる」と話した。

 同市基地対策室も同日職員を久志地域に派遣、同機二機の飛行を確認した。また、沖縄タイムス北部支社にも、名護市街地に住む女性から午後九時半ごろ、苦情を訴える電話があった。

 FA18は、三日から七日まで嘉手納基地で行われた空軍と海兵隊の大規模な合同即応訓練に参加。十二日まで嘉手納基地に滞在し、別の訓練を続けている。沖縄タイムス社の取材に対し、在沖米海兵隊報道部は「運用上の保安のため、訓練の詳細については言及しない」と回答。飛行コースや具体的な訓練内容を明らかにしていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712111700_03.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 1面

「普天間」アセス方法書見直し要求

県審査会が答申案審議

 県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十一日、米軍普天間飛行場代替施設建設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の答申素案を審議した。事務局の県が作成した素案は「準備書までの段階で事業内容や見直した項目について審査会や県に報告・協議・公表させること」とし、事実上の再審査を求めた。委員からは、答申の趣旨がほごにされないよう方法書の書き直し要求をより明確にすべきだと、実効力ある内容を求める意見が相次いだ。

 今回の素案は二十一日に知事意見の締め切りが迫る飛行場建設に係る事項に限られている。残る埋め立て部分への審査は、知事意見が締め切られる来年一月二十一日まで継続される見通しだ。

 素案は「方法書において示された環境影響評価の項目や手法が適切なものであるかを判断できる内容が十分示されているとは言い難く、審査するに足るものとなっていない」と厳しく不備を指摘。準備書までに決定する事業の具体的内容を考慮し、(1)知事意見や市民の意見に配慮してアセスの項目・手法をあらためて見直す(2)見直した項目を審査会や県に報告・協議し、公表する―ことを求めた。

 委員らは、事業計画が今後明らかになった場合、本来、方法書の変更もあり得るとの観点から、「突っ返せればいいが、手続き上はできない。大きな問題があることを強く言うべきだ」とした。

 アセス法に詳しい桜井国俊沖縄大学学長は、素案で「方法書に係る手続き後、準備書を作成するまでの間に再審査を求める」とする点について、「手続き上、何の効力も示さない点で、前回(二〇〇四年)の辺野古アセス方法書の答申と何ら変わらない」と指摘。

 新石垣空港建設アセス方法書で、審査会がアセス調査前に知事意見や市民意見に基づいた変更を報告・公表を求めた答申を挙げ、「事実上の改訂方法書の提出要求だった。同様の効力を付するべきだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_01.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 25面 

専門家、評価と懸念/アセス審査会答申案

 米軍普天間飛行場の移設をめぐる環境影響評価(アセスメント)手続きで、県環境影響評価審査会の答申素案が十一日、公表された。専門家からは厳しい姿勢を評価する声の一方で、「この表現では国に逃げ切られる」と、効力を疑問視する意見も。最終的な答申内容に、注目が集まる。地元名護市では、移設への賛否を超えて国に透明性を求める声が上がった。

 沖縄大学の桜井国俊学長は「現行のアセス法は、今回のような全く体をなさない方法書の提出を想定していない」と指摘。「法の趣旨を守る立場から、委員には方法書の改訂要求が知事意見に反映されなければ、辞任するほどの強い意志が求められる」と強調した。

 「アセス法施行後、審査会がこれほど厳しい意見を出した例は全国にもないのではないか」。WWF(世界自然保護基金)ジャパンの花輪伸一さんは、厳格な審議姿勢をこう評価した。

 ただ、「方法書の手続きをいったん進めてしまうと、国は問題点を先送りにして事業を進め、逃げ切ってしまう」と話し、実質的な手続きのやり直し要求を最終的な答申に盛り込むよう求めた。

 移設先の名護市辺野古区出身の島袋権勇同市議会議長は「市長意見も事業内容を具体的に明らかにするよう求めた。地元の意向であり、当然明らかにされるべきだ。できないとなると、基地行政もうまく進まない」と懸念。住民が納得できるような透明性の確保を要望した。

 十一日の審査会を傍聴した「市民アセスなご」の吉川秀樹さんは「日本の今後のアセスを左右する問題。ここでなし崩し的に進めさせては、沖縄が悪い前例を作ることになる」と心配する。その上で、「県は権利・義務として、『不合格』の方法書の差し戻しや撤回を求めるべきだ」と、県の役割を強調した。

 同日の審査会を傍聴し、科学的なアセスを求める要請書を提出した沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員の真喜志好一さん。「悪影響をひた隠しにする政府に対して、委員の学問的な良心が表れた。答申に当たっては、一人一人が知識に照らして曇りのない、後悔しない判断をしてほしい」と要望した。


「方法書撤回を」

移設反対訴え平和団体集会


 普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する緊急集会が十一日、那覇市の県民広場で開かれ、沖縄防衛局に方法書の撤回などを求める決議を行った。沖縄平和運動センターなどが主催し、約三百人(主催者発表)が参加した。

 ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「(県環境影響評価審査会が)審査できないという方法書を提出するのはアセス法をないがしろにするものだ」と防衛局などを批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_02.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 1面

きょう1カ月ぶり普天間移設協

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の第五回会合が十二日夕、首相官邸で開かれる。先月七日の前回から約一カ月ぶりの開催。アセス調査を円滑に進めて早期移設を実現するため、国と地元が互いに努力する、との趣旨を確認。政府は、北部振興事業費の執行条件である「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実施する」環境が整ったと判断し、本年度分の同事業費(百億円)の執行と、二〇〇八年度分(同額)の計上を表明するとみられる。

 協議会で県は、環境影響評価(アセスメント)方法書に関する県環境影響評価審査会の審査状況を報告。方法書の不備を指摘して沖縄防衛局に追加説明を求めたが、依然として審査会の納得いく回答が得られない状況を説明し、防衛省に誠意ある対応を求める。

 防衛省は飛行ルートや代替施設の付帯設備などを説明するとみられる。

 前回協議会で、県は「滑走路の沖合移動」について、アセスの中で(1)事業者の判断による任意の移動(2)知事意見を踏まえた移動―を求めたが、今回は踏み込んだ要求を控え、「可能な限りの沖合移動」という表現にとどめる。

 十二日の協議会では、「滑走路の沖合移動」や「普天間の危険性除去」に関し、具体的な協議は行われない見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_03.html

 

2007年12月12日(水) 朝刊 25面

米軍機飛行「赤ちゃん眠れない」/名護全域で騒音続く

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘機とみられる航空機が、十一日も断続的に名護市上空を飛行した。

 市基地対策室には「うるさくて赤ちゃんが寝付かない」(久志区の女性)、「なんとかしてほしい」(屋部区の女性)などといった苦情が、市民から寄せられた。ヘリによる騒音もあった。

 また、沖縄タイムス北部支社には辺野古区に住む男性から同日午後九時前、「ジェット機が旋回している。通常の訓練ではないのではないか」という訴えがあった。

 市街地でも午後九時ごろまで騒音が確認された。前日に続き市全域で騒音が発生したとみられる。

 同市は十日、沖縄防衛局を通じ米軍に訓練の改善を要請していた。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムス社の取材に対し、FA18が十二日まで嘉手納基地に滞在し訓練することを明らかにしているが、飛行コースや具体的な訓練内容については「運用上の保安のため」として、言及していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121300_04.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 1面

即時撤去求め決議/F15飛行停止

嘉手納町議会「墜落の危険性高い」

 【嘉手納】米空軍F15戦闘機が機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が見つかり、三度目の飛行停止命令が出ている問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日の十二月定例会最終本会議で、嘉手納基地所属のF15全五十三機の即時撤去を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 岩国基地(山口県)から海兵隊員約六百人とFA18戦闘攻撃機約三十機が参加し今月三日から七日まで嘉手納基地を拠点に実施された空軍と海兵隊の大規模合同即応訓練にも触れ、今後一切、同訓練や外来機の飛来をやめることを要求している。

 抗議決議などではF15は「機体の点検が終了した」として飛行を再開した十一月二十六日にも緊急着陸したことを指摘し「安全性が厳しく問われる事態」と強調。「構造的欠陥を持ち、墜落の危険性の高いF15の町民上空での飛行を断じて容認することはできない」と即時撤去を訴えている。

 F15は十一月二日に米本国で墜落。嘉手納基地所属のF15は同月四日から飛行停止。二十六日に飛行再開したが、二十八日に再停止。今月四日にはロンジロンに問題がある可能性があるとして三度目の飛行停止措置が取られている。十二日現在、嘉手納基地の二機を含む計八機にロンジロンの亀裂が発見されている。

 あて先は、嘉手納基地第一八航空団司令官、第一海兵航空団司令官、沖縄防衛局長ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_03.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 5面

FA18騒音 抗議決議へ/名護市議会があす訓練中止求める

 【名護】米軍嘉手納基地に一時移駐している岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機とみられる航空機が十日から名護市上空での飛行を繰り返している問題で、名護市議会は十二日午前、軍事基地等対策特別委員会(渡具知武宏委員長)を開き、米軍などに対して民間地上空の訓練の即時中止を求める抗議決議を行うことを決めた。十三日の市議会十二月定例会で可決する見通し。

 委員会では、「騒音があまりにもひどい」「市民からの苦情も多い」などとの意見が出された。

 同市議会では二〇〇一年三月に、FA18戦闘攻撃機訓練に「名護市内空域における米軍機の訓練飛行の即時中止を求める決議」を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_04.html

 

2007年12月12日(水) 夕刊 5面

琉球王朝から米軍統治下まで 古銭40点 日銀に寄贈

 貨幣史研究家の山内昌尚さん(71)が、那覇市おもろまちに移転する日本銀行那覇支店に琉球王朝時代の銭貨や米軍統治時代の紙幣など約四十点を寄贈する。中でも珍しいのは、一九四五年に八月から十月にかけて久米島の米軍基地内で発行した「久米島代用紙幣金券」。数年前、山内さんが十年がかりで米国の業者を通して入手した逸品という。

 今回寄贈するコレクションは、これまで山内さんが学生時代から少しずつ集めたものの一部。十五世紀ごろ琉球王朝で使用された銭貨や中国からもたらされた渡来銭などの貴重な古銭や、戦後、米軍統治下に県内で流通したA円やB円も保存の良い状態で十五種類がそろっている。

 山内さんが古銭を集めるようになったきっかけは、終戦の翌年の四六年に友人からもらった二枚の天保通宝。穴の開いた楕円形の古銭に強烈な印象を抱き、それ以来古銭に興味を持つようになった。

 山内さんは「お金を見れば時代の変遷が分かる。人間の過去の生きた歴史を資料として保存しておきたい」と寄贈の意義を語った。

 二〇〇四年、山内さんは面識のあった当時の支店長と話しているうちに、おもろまちへ移転後の支店内で琉球王朝時代の貨幣の「歴史展示」構想が持ち上がった。山内さんは長年収集した貨幣の保存も考え、展示の協力を申し出た。

 山内さんは「県内にあまりないお金の資料を残すことは非常に重要。展示を見て、時代に興味を持って調べる人が出てくるかもしれない」と寄贈した貨幣が多くの人の目に触れることを期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712121700_05.html

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