沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月5日から7日)

2007年12月5日(水) 朝刊 1・2・23面

防衛局、大半回答せず/普天間アセス追加説明

「評価不可能」と審査会

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が四日、宜野湾市内で開かれ、沖縄防衛局は緊急時などには住宅地上空を飛行する可能性に言及した上で「例外的な飛行ニーズはあらかじめ示すことは困難」とし、具体的な説明を避けた。

 騒音区域や飛行経路も準備書段階まで提示できないとした。津嘉山会長は「このままで環境影響評価を審査するのは不可能」と指摘。審査会メンバーから追加説明を求める意見が相次ぐ異例の展開となった。

 同審査会が方法書の追加説明を求めた質問書に沖縄防衛局が口頭で回答。三十五項目七十六問の質問の大半で具体的な回答は得られなかった。沖縄防衛局は後日、文書で回答するとしている。

 沖縄防衛局は戦闘航空機装弾場について、滑走路南側の突起部分に検討していることを認めた。大型岸壁については、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行う軍港機能を持つものは建設する予定はない、と回答した。

 使用協定に関しては普天間飛行場と同様、午後十時から午前六時の間の飛行は運用上必要なものに限定する方向で米側と調整する意向を明らかにした。

 代替施設の使用機種については「現在普天間飛行場で運用されているCH53、CH46、UH1、AH1ヘリを想定。固定翼機はC53、C12作戦連絡機を想定している」としたが、垂直離着陸機オスプレイの配備について触れなかった。また、海域のボーリング調査は実施しない方針を明らかにした。沖縄防衛局は代替施設の位置や規模の変更の可能性については「現在の政府案は生活環境や自然環境、実行可能性についてバランスが取れており、最も適切。合理的な理由なくして変更は困難」との認識を強調。

 しかし、審査会メンバーから、名護市辺野古沖を埋め立てる従来計画と比較しても事業内容の説明に不備な点が多いことを指摘され、沖縄防衛局職員が「事業についての熟度は今回よりも(従来計画が)高かったのではないか」と認める場面もあった。


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[フォローアップ]

背景に過剰な「隠ぺい体質」


 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の県環境影響評価審査会で、沖縄防衛局が審査会からの質問の大半の回答を保留し、審査の空転を招きかねない事態となった背景には、防衛省の過剰な「隠ぺい体質」がある。代替施設の付帯設備や緊急時などの住宅地上空飛行、垂直離着陸機オスプレイ配備については、いずれも米側の関係者の証言や文書で判明した経緯がある。米側との交渉を優先する半面、地元の反応に神経をとがらせ、開示できる情報まで伏せてきた政府の姿勢が問われている。


課題先送り


 代替施設の使用機種について沖縄防衛局は、今回もオスプレイの配備には触れなかったが、米軍関係者は普天間所属ヘリの後継機としての配備を繰り返し明言している。

 また、戦闘航空機装弾場についても沖縄防衛局は方法書で明記せず、今回初めて位置を「滑走路南側の突起部分」と説明。大型岸壁については、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行う軍港機能を持つものは建設する予定はない、と否定する一方、故障機の運搬方法については「今後米側と協議していく」としか回答しなかった。

 しかし、ケビン・メア在沖米国総領事は会見で、故障したヘリなどを運搬するための船舶(バージ船)の接岸場所を確保することを日米で確認していることを明言。接岸場所についても、航空燃料を運搬する給油艦が出入りする桟橋部分とは別に、「直線の防波堤部分」を検討していることを明らかにしている。

 緊急時などの住宅上空飛行の可能性についても、政府が国会答弁で否定していた段階で、メア総領事は認めている。

 普天間代替施設建設を推進したいのは米側も同様だが、米政府関係者には地元に一定の情報は開示し、理解を求めた方が「解決の早道」との認識がある。むしろ日本政府の「課題先送り」体質が、地元との信頼関係を失わせ、事態を混迷、複雑化させているのが実情だ。


県「誠意を」


 仲里全輝副知事は四日、「(審査会の質問に対する回答が)誠意あるものだったのかは確認していないのでコメントできない」としながらも、「現段階で米側と協議中のものや軍事機密の関係で説明できないものもあるだろうが、なぜ情報開示できないかを丁寧に説明することが大切。誠意をもって対応してほしい」と要望。副知事が防衛省の「誠意」の重要性に力点を置く背景には、審査会が厳しい答申を出せば知事意見に反映せざるを得ず、結果的に移設作業が遅れることを懸念するためだ。

 県の立場は、滑走路の沖合移動や「普天間の閉鎖状態」を条件としながらも、沖合移動は「日米合意の範囲内」で要求しており、早期移設という点では政府と一致している。

 県幹部は「次回協議会で県としては審査会で問題になっていることは何かを政府に説明する。これはアセスの進ちょく状況の説明になり、協議としては『前進』の形になる」との見通しを提示。審査会の審議状況が次回協議会の進展ともリンクしている。(政経部・渡辺豪)


委員ら批判・苦言


 沖縄防衛局は四日、アセス方法書の不備について追加説明を求めた県環境影響評価審査会の質問書に「ほぼゼロ回答」で通した。委員からは「このままでは評価不可能だ」「方法書を出す段階ではない」など厳しい意見が相次ぎ、具体的な審議に入れない異例の事態となった。津嘉山正光会長は「正式な文書回答を待って、審議に値するかどうか検討したい」とし、口頭説明を基にした審議は困難と判断、予定終了時間の三十分前に会議を打ち切った。(1面参照)

 質問者に対する沖縄防衛局の口頭説明は約一時間半。ほとんどの項目で「現状では、これ以上具体的に示すことは困難」と繰り返した。

 説明後、津嘉山会長は「各委員とも具体的な回答をいただいていないという印象」と強い懸念を表明。「少なくとも国会で発言されたり、報道で明らかになった部分については説明いただきたい」とし、正式な文書回答での説明を重ねて求めた。

 委員の一人、堤純一郎琉大教授は、飛行場の騒音評価で具体的な数字が明らかにされなかったことを疑問視。「残念ながらこのままでは評価できない」と突き放した。

 宮城邦治副会長(沖国大教授)は、新石垣空港のアセス方法書や二〇〇四年に提出された普天間代替施設の方法書と比較。「あまりに事業や施設内容が分からなさ過ぎる。もう少ししっかりした協議の上で、方法書を出す必要があったのでは」と苦言を呈した。

 備瀬ヒロ子委員(都市科学政策研究所代表取締役)も「このレベルの情報では審議のしようがなく、方法書を提出するタイミングが早いのでは」と話した。

 一部、回答を追加した内容についても「大浦湾を大規模に埋め立てて造る作業ヤードの必要性が十分に説明されなかった」「ヤードや飛行場部分の埋め立て土をどこから持ってくるのか分からない」など厳しい指摘が相次いだ。

 沖縄防衛局は「近日中に文書回答を送る」と説明したが、文書回答は、口頭説明とほぼ同様の内容となる見込み。「それで足りなければ今後できる限り資料を出させていただきたい」とし、具体的な事業や調査内容をどれだけ明かせるかは言及しなかった。

 津嘉山会長は「前回(〇四年に答申した普天間アセス方法書)と比べても後退した感は否めない」と批判。「文書回答を踏まえて審議する」と具体的な審議は次回に持ち越した。


[解説]

揺らぐアセスの信頼性


 米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴うアセス方法書の不備について追加説明を求めた県環境影響評価審査会の質問書に、沖縄防衛局は口頭説明にとどめ、ほとんど具体的に回答しなかった。アセス手続きや工期を優先し、方法書の審議を早急に進めようとする意図が垣間見える。今後、審査会は事業内容や施設概要を知らされないまま、審議に入る極めて異例の事態が想定される。沖縄防衛局の対応はアセス手続きの信頼性をも、揺るがしかねない。

 委員らは、代替施設の使用目的や施設規模が明らかにされず、環境調査に必要なデータもないまま、アセス手法の審議を余儀なくされている。

 方法書の在り方を批判する厳しい答申となった前回方法書(二〇〇四年)よりさらに後退したといわれる内容に「このまま通してしまっては審査会が無能化する」(委員)と困惑を隠さない。

 一方で飛行場部分に関する知事意見提出の締め切りが二十一日に迫る。審査会答申は、知事意見の検討時間を考慮すると「来週中にも答申案の検討に入らなければならない」(県環境政策課)。手続き重視の方法書にどのような意見を述べることができるのか。現行アセス法下での審査会の存在意義が問われている。(社会部・黒島美奈子)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_01.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 1面

代替・沖合移動/知事「総合的に判断」

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は四日午後も代表質問が続行された。仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見の中で代替施設の沖合移動を求めていくかについて「生活環境および自然環境への影響を検討し、総合的な観点から判断する」との認識を示した。その上で、「法および条例で、事業者は知事意見を勘案しなければならないと規定されている。事業者の沖縄防衛局は適切に対処されるものと理解している」と述べ、知事意見で沖合移動を要求した場合、政府は地元の意向を尊重するべきだとの考えを表明した。

 また、沖縄にインターネットの国際的相互接続ポイントを整備する沖縄GIX構築事業について、仲井真知事は年内の供用開始を予定しているとし「インターネット接続事業者のほか海外向けビジネスを行う情報通信企業に対し、高品質な通信環境の提供が可能となり、新たな情報通信産業の集積とこれに伴う雇用増が見込まれる」と述べた。いずれも小渡亨氏(自民)への答弁。

 県発注工事をめぐる談合問題で、建設業界が求めている損害賠償金の十年間分割払い方式について、首里勇治土木建築部長は「原則として一括・全納となっているが、県としては、企業の経営状況も勘案した上で、十年間分割払いとすることが可能か、検討していきたい」と答えた。外間盛善氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_02.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 23面

夜も爆音 燃料漏れも/嘉手納基地 訓練2日目

 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点に行われている米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練は四日も引き続き行われ、一時的に岩国基地(山口県)から移駐しているFA18戦闘攻撃機が日没後も飛行訓練を繰り返し、住宅地域に騒音を響かせた。ロケット弾や模擬弾を装着して飛行する機体も確認された。

 飛行したFA18のうち、少なくても六機は日没後に離陸。午後七時四十分ごろを皮切りに、南側滑走路から沖縄市上空に向けて相次いで飛び立った。推力増強装置(アフターバーナー)を使用する機体もあった。

 同日午後七時ごろには、FA18が使用している駐機場で消防車などの緊急車両が出動、一時騒然とした。目撃者によると、FA18は給油中だったことから、燃料が漏れた可能性もある。

 飛行停止中のF15戦闘機が点検を受けている様子も確認された。訓練は岩国基地からFA18約三十機と海兵隊約六百人が参加。七日まで行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_05.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 2面

米軍PACK3 国道横断/読谷

 【読谷】米陸軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊が四日午後、嘉手納弾薬庫地区(読谷村)から同村親志の国道58号を横断、同地区内の「トレーニングエリア・ワン」に移動した。配備後、初めての移動訓練で、車両二十九台と兵員八十人が公道を渡った。

 沖縄防衛局や在沖米陸軍などによると、PAC3部隊は四日、嘉手納弾薬庫地区を東西に分断する国道58号を横断。五日に、トレーニングエリア・ワンから嘉手納弾薬庫地区に戻る、という。

 PAC3は嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に配備されている。移動そのものが訓練で、トレーニングエリア・ワンでは機器の運用に必要な通信環境や障害物の有無などを確認するとみられる。

 当初、PAC3部隊は四日未明、嘉手納基地からトレーニングエリア・ワンに向かう予定だったが変更したもようだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_07.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 22面

「集団自決」修正/撤回否定に批判集中

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定意見の撤回などを文部科学省に要請した市民団体や支援組織が四日午後、参院議員会館内で報告集会と記者会見を開いた。民主、共産、社民の野党国会議員十五人を含む約百人が参加した。文科省の布村幸彦大臣官房審議官が検定意見の撤回を「考えていない」と否定したことに批判が集中。市民の代表は「私たちの税金で働いている人がこんなことを言うのは許せない」と憤りをあらわにした。

 県高教組の松田寛委員長は「(布村審議官は検定意見が)『制度上問題ない』の一点張りだった」と指摘。

 その上で「(審議会での審議という)制度を通過すれば(記述が)間違ってもいいという考え方が全く理解できない」と述べ、手続き論に終始する文科省の姿勢を批判した。

 教科書全国ネット21の俵義文事務局長は「文科省の姿勢は検定意見を絶対に撤回しないが、沖縄が怒っているので訂正申請でけりをつけようとしている。官僚は絶対に過ちを犯さないという前提がある」と述べ、疑義を呈した。

 「沖縄戦教科書検定意見の撤回を求める市民の会―東京―」の阿部ひろみ代表は「審議会で公正な審議がされたという(布村審議官の)考えに本当にびっくりした」と指摘し、教科書調査官の原案を議論がないまま追認した教科用図書検定調査審議会の在り方に警鐘を鳴らした。


検定意見撤回に難色/要請団に文科省審議官


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める市民団体や国会議員などが四日、文部科学省で布村幸彦大臣官房審議官に要請した。出席者によると、布村審議官は「検定意見の撤回は考えていない」とあらためて明言、検定の正当性主張した。一方で、「今回の訂正申請の審議が終わり次第、検定制度全体の在り方について検討したい」と制度の見直しに初めて言及したという。(一部地域既報)

 要請には都内各地で検定意見の撤回を求める「市民の会―東京―」(阿部ひろみ代表)、「沖縄戦首都圏の会」、琉球大の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授が参加し、それぞれが要請書を手渡した。


「自決」記述復活 反対決議を採択/政治介入に反対の会


 【東京】「教科書検定への政治介入に反対する会」(小田村四郎代表)は四日、都内で集会を開き、文部科学省が教科書会社の訂正申請を受け、記述復活することに反対する決議を採択した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_08.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 22面

「ちゅらごん」と呼んで/尾に傷ある辺野古ジュゴン

 WWFJ(世界自然保護基金)と「じゅごんの里」は四日、名護市の辺野古沖と大浦湾などで目撃された尾びれに傷のあるジュゴンの名前が「ちゅらごん」に決まったと発表した。

 全国三千二百四十二点の応募作品から選ばれた。「雄・雌のどちらでも使える」「みんなが呼びやすい」などが理由となった。

 清らかさを意味する「ちゅら」と、ジュゴンの「ごん」を合わせたという。

 両団体が米軍普天間飛行場の移設計画が進む名護市辺野古と、ジュゴンに関心を持ってもらおうと、七月から十月まで募集。「ちゅらごん」には二十九人の応募があったという。

 特別審査員の女優、川原亜矢子さんやミス日本グランプリの萩美香さんなどの意見も踏まえ、決定した。

 「じゅごんの里」の東恩納琢磨代表は「夢のある名前が付いてよかった。より身近な存在に感じることができるのではないか」と期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月5日朝刊)

[大規模即応訓練]

かすんでいく負担軽減

 米軍再編の狙いは何なのか。日米交渉の過程で私たちは政府サイドから「抑止力の維持と沖縄の負担軽減」という決まり文句を耳にたこができるほど聞いてきた。

 だが、昨年五月の日米合意以降に沖縄で顕在化しつつあるのは、負担軽減とはおよそ反対の事態だ。

 嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区には昨年九月、地対空迎撃ミサイル・パトリオット(PAC3)が配備された。

 青森県の航空自衛隊車力分屯基地への移動式レーダー(Xバンド・レーダー)配備やイージス艦「シャイロー」の西太平洋展開とあわせ、弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備が急速に進んだことになる。

 同基地では、F15戦闘機の未明離陸が、地元三自治体の中止要請にもかかわらず強行され、日米特別行動委員会(SACO)で伊江島補助飛行場への訓練移転が合意されたはずのパラシュート降下訓練まで実施された。

 そして今度は、米空軍と米海兵隊による大掛かりな合同即応訓練である。嘉手納基地を拠点に三日から始まった同訓練には山口県・岩国基地からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加するという。

 パトリオット部隊による初の機動展開訓練(移動訓練)も四日から始まっている。

 基地が攻撃されたことを想定した有事即応訓練は恒常的に実施されている。だが、今回の訓練は、これまでの空軍による訓練とは性質が違う。軍の垣根を越えた統合運用の推進、という考えに基づくものだ。

 米軍だけでなく自衛隊も昨年三月から統合運用体制に移行し、陸・海・空自衛隊の一体的な運用を重視するようになった。米軍と自衛隊の一体化の動きも活発だ。

 作戦や部隊の「統合化」という流れの中で今回の訓練が実施されている、とみるべきだろう。

 日米が進める「統合化」と「基地の共同使用」は、沖縄に何をもたらすのか。少なくともそれが負担軽減の取り組みだとは、誰も思わないだろう。

 日米合意によると、厚木基地からFA18戦闘攻撃機の部隊が岩国基地に移駐することになっている。負担軽減の名の下に実施される全国規模の「訓練移転=玉突き再編」は、果たして目的にかなった妥当な政策なのだろうか。

 昨年二月に発表された米国防総省の「四年ごとの国防政策見直し」(QDR)は、テロの脅威だけでなく、中国に対しても警戒感をあらわにした。

 負担軽減がかすんでいく現実に強い危機感を覚えざるを得ない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071205.html#no_1

 

琉球新報 社説

射爆場提供拒否 危険除去は全面返還しかない

 久米島町・鳥島射爆撃場の町有地について、平良朝幸久米島町長が米軍への提供を拒否する方針を打ち出した。同射爆撃場では恒常化している。

 在韓米軍による訓練は、韓国の実弾射撃場が2005年に閉鎖された後、恒常化した。地元の久米島町や県には何の説明もないまま、閉鎖された施設の代替機能を担わされた格好だ。

 住民が知らない間に、在韓米軍の部隊による射爆撃場の利用が進み、事実上、負担が増大したことになる。町長が憤るのは当然だ。

 在韓米軍のホームページによると、鳥島射爆撃場を利用する操縦士は「(爆弾が)実際にどう機能するかを目の当たりにできる」と、その有用性を強調している。

 県民にとっては迷惑この上ない。訓練の頻度が高まれば、事故の危険性も増大するからだ。

 鳥島射爆撃場周辺の海域では1987年7月、夜間訓練をしていた米軍のFA18戦闘機がマレーシア船籍の貨物船「ポメックス・サガ号」に模擬弾を撃ち込み、操舵手(そうだしゅ)が右腕を切断する事故が起きた。

 米軍は当時、模擬弾発射の理由について、船影を島と誤認したと説明していた。

 訓練中のAV8Bハリアー機が95年末から96年初頭にかけて、同射爆撃場で劣化ウランを含む徹甲焼夷(しょうい)弾1520発を誤って使用していたことも、その後明らかになっている。

 射爆撃場を利用する部隊が増えたことで、標的を間違えるような重大事故が再び起きはしないか。懸念は強まる一方だ。

 鳥島射爆撃場は久米島の北方約28キロにあり、約4万1千平方メートルのすべてが町有地だ。にもかかわらず、使用する部隊や訓練の概要など詳細は一切公表されていない。住民は完全に蚊帳の外に置かれている。

 射爆撃場でどんなに危険な兵器が使用されても、現状では知るすべがない。いつ何時、劣化ウラン弾などによって環境が汚染されないとも限らない。

 訓練水域周辺は好漁場として知られ、パヤオ(浮魚礁)も設置されている。ひとたび事故が起きてからでは取り返しがつかない。

 こうした危険を完全に取り除くには射爆撃場の全面返還しか道はない。

 久米島町議会は2005年、06年と鳥島射爆撃場の早期返還を求める抗議決議を可決した。県漁連も昨年から、鳥島と久米島の射爆撃場水域の返還を国に要請している。

 政府は、地元の声に真剣に耳を傾け、鳥島射爆撃場の早期返還を米国に要求すべきだ。

(12/5 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29497-storytopic-11.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 1面

泡瀬埋め立て第2区域は推進困難/沖縄市長

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合を埋め立てる「東部海浜開発事業」について、東門美津子沖縄市長は五日午後、臨時庁議を開き、「第一区域の工事は現行通り進める。土地利用計画は見直す。第二区域については推進は困難。具体的計画の見直しが必要」との方針を市幹部に伝えた。同日中に市議会議員に説明した後、記者会見を開いて正式発表する。

 市はこれまでに、「第一区域(約九十六ヘクタール)は工事が進んでおり、中止は難しい」などと判断。宿泊六施設が予定されている土地利用計画についても、バブル期の一九九二年調査を基に推計されたことから今後、時代に合った見直しを検討するとしていた。二〇一三年ごろ着工予定の第二区域については、一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかり、絶滅危惧種の生息地が含まれることから、人工島の変更や中止も含めて県や国と調整が残るとして、最終結論は市幹部や市議会の与党議員にも伝えていなかった。東門市長は、市議会十二月定例会が始まる六日までに、全市議三十人に説明する考えを示していた。

 東門市長は、推進と中止で市民の意見が割れる同事業について「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ、〇六年四月市長選で推進派候補を破って当選した。

 就任後は、公募で選んだ市民と学識経験者で組織する東部海浜開発事業検討会議を設置。今年七月には同会議から埋め立て後の企業立地の見込みや環境問題などを精査した報告書を受け取り、「判断材料にして年内に結論を出す」としていた。


[ことば]


 東部海浜開発事業 国と県が中城湾港新港地区の港湾整備のために浚渫した土砂を利用して約187ヘクタールの人工島を造り、その後、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して経済活性化を図る計画。埋め立て造成の総事業費約489億円。沖縄市は土地購入費約184億円とインフラ整備約91億円を見込む。国の埋め立て工事は2002年に始まり、全体の約半分に当たる第1区域は、12年にも埋め立てが完了する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_01.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 1・5面

2カ国語絵本で「集団自決」紹介

 【南風原】南風原高校の英語教師、宮城千恵さん(48)が英語と日本語の二カ国語で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を語る絵本「A Letter from Okinawa」(沖縄からの手紙)を出版した。渡嘉敷島の「集団自決」で両親を失った千恵さんの母・幸子さん(80)の体験をモチーフに、素朴な絵で島の暮らしぶりや沖縄戦の実相を表現する。千恵さんは「絵本は子どもたちに身近な存在。英語で表現することで、沖縄戦の真実を世界中に伝えていきたい」と希望を託す。(仲本利之)

 二〇〇二年から〇四年にかけ、北アイルランドとハンガリーへ留学し、平和教材を使った英語指導法を研究した千恵さん。世界中の歴史を学ぶ現地小中高校生の指導用に作った「集団自決」を題材にした紙芝居が絵本の原作となった。授業で使うと両国の子どもたちが「なぜ沖縄戦では、愛する家族同士が殺し合わなければならなかったの」と、強い疑問を投げ掛けてきたという。

 物語は千恵さんの母・幸子さんが渡嘉敷島で少女時代を過ごしたことから始まる。その後、進学のため沖縄本島に渡り、瑞泉学徒隊に動員され、悲惨な沖縄戦を体験。その後、両親が「集団自決」で亡くなったことを知らず、戦後何度も手紙を書き続ける。

 外国人が読んでも分かりやすいストーリーを心掛け、沖縄国際大学のピーター・シンプソン准教授から英語表現などの助言を受けた。絵は石垣市立白保中学校の平良亮教頭が描いた。

 絵本には読者の「書き込み」ページもあり、幸子さんになった気持ちで亡くなった両親に手紙を書いたり、戦争の悲惨さを絵で表現することで、主体的に「集団自決」について考えられるよう工夫を凝らした。

 両親を奪った沖縄戦について、多くを語りたがらないという幸子さん。娘の絵本について「千恵が絵本を通じて平和の思いを伝えていこうとするのを、天国にいる私の両親もそっと見守っているはず」と話す。

 絵本は十一月二十三日に発刊。沖縄学販が取り扱い、県内書店や各学校向けに販売するほか、欧州や米国での出版も計画している。問い合わせは同社、電話098(854)1620。


     ◇     ◇     ◇     

「訂正」審議結果「自ら説明する」/文科相が意向


 【東京】渡海紀三朗文部科学相は五日午前の衆院文部科学委員会で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述に関する教科書会社からの訂正申請を受けた審議結果の公表について、教科用図書検定調査審議会の委員が同席した上で自らが公の場で説明する意向を明らかにした。保坂展人氏(社民)への答弁。

 渡海文科相は「ある委員に登場していただける前提の下で、私自身が説明する必要があると考えている。この問題を就任以来、扱ってきた私としてそういう責任があると考えている」と述べた。

 審議会で結論が出た際、首相談話を出すかどうかについては「総理自身が決めることだ」と述べるにとどめた。

 林博史関東学院大教授が、自身のホームページ上で文科省に「著書(『沖縄戦と民衆』)を歪曲して検定意見をつけた」と抗議していることには「検定意見は最近の著書を総合的に判断してつけられた。林氏の著書もそのうちの一つであることは間違いないが、それのみによってではない」と説明した。石井郁子氏(共産)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_02.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 5面

即応訓練 苦情3件/嘉手納基地 緊急着陸も

 【嘉手納】米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練が実施されている米軍嘉手納基地で五日午後一時までに、町民から訓練に伴う三件の苦情が嘉手納町に寄せられていることが分かった。同基地では岩国基地(山口県)から一時的に移駐しているFA18戦闘攻撃機が繰り返し飛行訓練を実施するなど、訓練が活発化している。また、午前十時三十分ごろ、FA18一機が緊急着陸した。

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PAC3訓練 読谷村で続く/嘉手納弾薬庫


 【中部】米陸軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊の移動訓練は五日も引き続き行われた。目撃者によると、同日午前九時ごろ、嘉手納弾薬庫地区(読谷村)を東西に分断している同村親志の国道58号を、西側から東側に横断する車両数十台が目撃された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_05.html

 

2007年12月6日(木) 朝刊 1面

「事業縮小」決断 泡瀬埋め立て

東門市長、1区容認2区困難視

 【沖縄】国と県が中城湾港泡瀬沖合を埋め立てて人工島をつくり、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して活性化を目指す「東部海浜開発事業」について、東門美津子沖縄市長は五日、市役所で記者会見、人工島(約百八十七ヘクタール)の埋め立て計画のうち「現在工事中の第一区域(約九十六ヘクタール)は推進。第二区域(約九十一ヘクタール)は推進困難」と正式発表した。長年にわたり市民の意見が「推進」と「中止」に割れている同事業に「縮小」の判断を下した。

 東門市長は、第一区域については二〇一二年にも埋め立て完了することなどを挙げ、「工事の進ちょく状況からみて推進せざるを得ない」と判断。「沖縄市の経済活性化へつなげるため、今後二、三年かけて社会経済状況を見据えた土地利用計画にしたい」との方針を示した。

 一三年ごろ着工予定の第二区域は、(1)一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる(2)絶滅危惧種の生息地域であり干潟への影響が大きい│などと説明した上で「推進困難」とした。しかし、沖合に浮かぶ第一区域には陸地と結ぶアクセス道路か、橋建設が必要なことから、第二区域にある干潟部分の一部埋め立てもあるとし、国や県と協力して課題解決当たる考えを強調した。

 市の今後の対応としては、市民参画による会議を設置して土地利用計画を見直し、国と県と事務協議を重ねることで計画の変更を図る。また市財政の負担軽減には「国と県に土地利用への参画と支援を強く要望し、土地利用の円滑な推進により地域経済の活性化を図る」と説明した。

 東門市長は二〇〇六年四月の市長選で、「事業は市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ推進派候補を破って当選。就任後は公募した市民と学識経験者で組織する同事業検討会議を設置し、今年七月には同検討会議から、埋め立て後の企業立地の見込みや環境問題などの情報を精査した報告書を受け取り、「結論の判断材料にする」としていた。

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2007年12月6日(木) 朝刊 27面

あいまいさ 市民戸惑い/泡瀬埋め立て・市長判断

 【沖縄】「すべてを埋め立ててこそ活性化につながる」「自然環境に配慮するなら、一期工事こそ中止するべきだ」。沖縄市泡瀬沖合に埋め立てた人工島に、大型ホテルなどを誘致して経済活性化につなげる同市の東部海浜開発事業。市民を二分する難題だけに、東門美津子市長が五日発表した決断は「一期区域は推進、二期は推進困難」とあいまいさも残る。

 市民からは賛否とともに戸惑いの声も上がった。

 同市東海岸の活性化を図る「東部海浜開発事業」を強力に推進してきたのは、市泡瀬区の人たちだ。市泡瀬在住で「プライド泡瀬」の當眞嗣蒲会長(67)は「埋め立ては活性化につながる。市長判断は歓迎だ」と喜ぶ。

 バブル景気時代に策定された市の土地利用計画の見直しは必要と指摘しつつ、「経済活性化は人工島のすべてを埋めてこそ成り立つ。中途半端ではいけない」と、二期工事の完全実施を求めた。

 市議三十人のうち、八割に当たる二十四人は推進派。市東部開発事業推進議員連盟の新里八十秀会長は「あの言い方になっただけで、市長は事業推進が妥当と考えたのだろう」と歓迎。「数の横暴で事業を進めたくない。市長と相談しながら二期も進めたい」と話した。

 一方、埋め立て反対派は東門市長の決断に怒りを爆発させた。「泡瀬干潟を守る連絡会」の前川盛治事務局長は「市長は市民の要請に応えていない。抗議すべき内容だ」と言い切った。

 埋め立て容認の一期区域こそクビレミドロなどの貴重種、新種が生息すると指摘。環境に配慮して二期工事を縮小するとの説明に「環境に配慮するなら一期工事は中断するべきだ」という。

 東門市長の肉声を聞こうと記者会見場に駆けつけた市泡瀬の会社員、桑江直哉さん(33)は「東門さんは無責任だ。決断は、賛否両派の意見を聞いた形を取っただけではないか」と戸惑う。

 街頭で市民の声を集め市長に手渡したばかり。その二日後の決断に「本当に市民の声を聞いて判断したのか分からない」と不満を漏らした。


守る会、中断訴え


 【沖縄】沖縄市の東部海浜開発事業で東門美津子市長が「埋め立て容認」の姿勢を表明したことに抗議する集会が五日、同市役所前広場で開かれた。

 泡瀬干潟を守る連絡会の会員らが参加、今後も工事中断を求め活動することを確認。ガンバロー三唱で気勢を上げた。守る会の小橋川共男共同代表は「建設推進派候補を破って東門市長は当選した。決断は市民の意思を反映していない」とあいさつ。

 拡声器を市役所に向け、市職員と市民に泡瀬埋め立ての不当性を訴えた。

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2007年12月6日(木) 朝刊 27面

「やはり欠陥機だ」/F15飛行停止

 【中部】米空軍がF15戦闘機について、三度目の飛行停止措置を講じていたことが明らかになった五日、五十三機のF15が配備されている米軍嘉手納基地周辺自治体や議会からは「やはり欠陥機だ」などと怒りの声が相次いだ。

 同基地のF15は十一月二十八日に二度目の飛行停止命令が出されて以降、飛行はしていない。

 沖縄、嘉手納、北谷の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(会長・野国昌春北谷町長)は事故後、米軍側に三度抗議しF15の撤去を訴えた。野国会長は「十一月の飛行再開は完全な見切り発車で、危険な状態で住宅街の上を飛んでいたということになる。米軍は正確な情報を基に運用すべきだ」と語気を強めた。

 沖縄市議会は十五日開会の定例会でF15問題を追及する抗議決議の審議を予定。基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「議会としては劣化している戦闘機を撤去してほしい。何か起きてからでは大変。県も嘉手納基地の状況を把握してほしい」と強調した。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会委員の金城利幸町議は「ここまで欠陥が度重なると、F15だけに限らず、他の航空機に対する不安も募る一方だ」と指摘。日米両政府に対し、町民の不安と危険を解消するよう訴えた。

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2007年12月6日(木) 朝刊 27面

64歳比嘉さん 大臣奨励賞/「私の主張」作文コンクール

 通信制高校で学んだことなどを発表する第二十五回「私の主張」作文コンクール(主催・全国私立通信制高等学校協会)で、那覇市の県立泊高校通信制二年の比嘉ひとみさん(64)=沖縄市=が、最高賞の文部科学大臣奨励賞を受賞した。比嘉さんは「家族や先生たち、学校で知り合った友人の協力がなければ楽しい高校生活は送れなかった。コンクールに挑戦する機会を与えてくれた先生方に感謝したい」と喜んでいる。

 比嘉さんのテーマは「チャンスと挑戦」。沖縄戦で父親と離別した比嘉さんは、中学校の卒業式の前日に義父を肺炎で失い、弟二人を進学させるために自身の進学を断念した。その後、結婚して娘が生まれたが、病気のため軽い知的障害が残り、親の会の活動や子育てに悪戦苦闘するうちに三十年余りが過ぎていた。

 進学の夢を捨てられない中、二年前に息子から「今の機会を逃すと、もっと歳を取ってからでは難しいよ」との言葉に後押しされて泊高校通信制に。勉強する機会に恵まれたこと、生徒会活動や友人との出会いなど高校生活の喜びを応募作につづった。

 比嘉さんは「賞を受賞できるとは思わなかったので驚いた。一生涯学び続けたい」と喜んだ。

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2007年12月6日(木) 夕刊 1面 

F15亀裂 計4機に/3度目飛行停止

欠陥拡大 点検長期化も

 F15戦闘機の三度目の飛行停止措置に関し、米空軍は五日、これまでの点検作業によって計四機で、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が確認されたことを明らかにした。事故調査委員会は、欠陥を抱えた機体が当初想定していたよりも大幅に拡大する可能性を指摘。飛行停止が長期化する見通しを示している。マイケル・ワイン米空軍長官は「航空機部隊の老朽化と亀裂の問題拡大は決して良い兆候ではない」と指摘、今回のF15の欠陥判明を深刻に受け止めている。

 米空軍によると、コンピューターのシミュレーション結果でも、ロンジロンの亀裂によって、墜落事故につながる構造的な問題が発生する可能性が示されたという。

 また、新たな停止措置を受け、検査終了後も結果やデータ分析が義務付けられることから、米空軍は「従来のようにすぐに飛行が再開されることはない」としている。

 ロイター通信によると、ワイン長官はF15について「いずれかの時期に飛行を中止し、新世代の戦闘機を購入しなければならない」と述べ、後継機のF22戦闘機の追加購入の必要性を指摘した。

 欠陥部は機体上部の操縦席風防ガラス付近の「ロンジロン」と呼ばれる縦通材。ロンジロンは、機体にかかる「曲げ荷重」への耐性補強のため胴体を貫く縦通材のうち、特に強度の大きな構造部材。

 飛行停止の発端となった事故は十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。

 事故機はロンジロン付近に問題があるとの見方が強まり、米空軍は同四日以降、全機の飛行を停止。同二十一日には解除を発表し、嘉手納基地でも点検を終えた機が同二十六日から順次飛行を再開した。

 しかし、同二十八日に点検中の別の二機で新たに同部位で亀裂が見つかり、同日以降、E型機を除く飛行を再停止していた。

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2007年12月6日(木) 夕刊 1面

北部振興策 凍結解除へ/アセス進展へ合意後

 【東京】本年度分の執行が凍結されている北部振興事業費(百億円)について政府は六日までに、十二日に予定されている次回の普天間飛行場移設協議会で「移設に向けた環境影響評価(アセスメント)を円滑に実施すること」を県と確認した上で、協議会終了後に凍結解除の手続きに入る方針を固めた。同時に、内閣府が概算要求している二〇〇八年度の北部振興事業費(同額)を年末の政府予算案内示に計上する方針だ。

 アセスをめぐっては、今月二十一日に県条例に基づく知事意見の提出期限を迎える。政府はこれまでアセス前段階の環境現況調査に着手していたが、知事意見を踏まえ、早ければ来年一月にもアセス法に基づく正式な調査に入る。

 次回協議会で、県と国がアセス手続きの「円滑な」進展に向けて協力する方針を確認することで、政府が「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」とする北部振興事業の執行条件が満たされたと判断するもようだ。

 政府関係者によると、この方針はすでに県にも伝えられ、県側も大筋で了承している。このため本年度分の執行と〇八年度予算計上が実現する可能性が高まっている。

 町村信孝官房長官は五日午後の定例会見で、「〇七年度予算なので(執行を)いつまでも動かさないということではない」と執行に前向きな姿勢を示した。ただ、「現在、何ら関係者間で結論が出たという状態ではない。最終調整中だ」と述べ、協議会を踏まえて正式に決定する考えを示した。


「事業執行は当然」知事 名護市長


 仲井真弘多知事は六日、凍結されている北部振興事業で、政府が普天間飛行場移設にかかるアセス手続きの円滑実施を前提に執行する方針を固めたことについて「(県は事業が)凍結しているという状態を認めているわけではない。(執行は)当然なことで、直ちに解除するべきだ」と述べた。

 また、アセス手続きの「円滑」な進展を前提とすることについて、「防衛省がこちら(地元の)の言い分を聞けば(手続きは)進むし、聞かなければ何も進まないということだ」との認識を示した。

 島袋吉和名護市長は「正式な連絡は受けていないが、市として移設協議会にも参加して協議を進めて(移設作業に)協力している。当然、執行されるべきものだと思っている」と話した。

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2007年12月7日(金) 朝刊 1・2・31面

嘉手納F15 2機亀裂/世界で確認の5機中

住民、一層不安と反発

 米本国での墜落事故を受け、機体の点検作業中の米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機二機で、事故原因とみられる機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の亀裂が見つかっていたことが六日、分かった。米空軍が世界各地に展開しているF15で、同部位に亀裂が確認されたのは現段階で計五機。今後も増える可能性がある。墜落事故に直結する欠陥を抱える機体が日常的に嘉手納基地を離着陸していたことが判明し、基地周辺住民の不安と反発がさらに高まっている。

 同基地によると、十一月二十八日の二度目の飛行停止措置を受け、約五十機の所属機のうち三十機の整備点検を済ませた段階で、二機のロンジロン上部に亀裂を確認したという。

 米空軍は相次ぐ欠陥機の報告を受け、「これまで点検を行った個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性を示している」として、三回目となる飛行停止措置を四日(米本国で三日)に決定した。

 米空軍航空戦闘軍司令官のジョン・コルリー大将は既に点検を済ませ、飛行可能となっていた同航空戦闘軍所属のすべてのF15A、B、C、D型機の再停止を指示。さらに、その他すべての米空軍のF15A、B、C、D型機の飛行停止を勧告した。

 嘉手納基地のF15はC型が大半で、一部D型を含んでいる。F15を運用する第18航空団は、二度目に出された整備指導要領に沿って点検を続けている途中だったが、今後は「新たに明確な指示を受け取り次第、それを点検手順に加える」と説明。

 「飛行運用を再開する前に、各機を入念に点検し、問題となる可能性のある部分を特定し、適宜対応する作業に全力で取り組む」としているが、欠陥機の拡大で飛行停止期間が長期化する可能性もある。

 F15戦闘機の三度目の飛行停止措置に関し、米空軍は五日、これまでの点検作業によって計四機でロンジロンの亀裂を確認した、と発表。

 嘉手納基地によると、この四機は嘉手納所属の欠陥機二機のうち一機しかカウントされておらず、少なくとも現段階で計五機のF15に欠陥が判明したことになる。


     ◇     ◇     ◇     

周辺首長、撤退を要求/「住民不安ぬぐえず」


 【中部】嘉手納基地所属のF15戦闘機二機から亀裂が見つかった問題で、同基地周辺の沖縄市、嘉手納町、北谷町の三首長は、F15の「撤退」を強く求めた。

 三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は「米軍の安全な戦闘機という発言や、飛行再開の際に十五時間以上費やした点検は何の意味を持つのか。F15とその後継機を含め、嘉手納基地にこれ以上の戦闘機配備は許されない」と述べた。

 東門美津子沖縄市長は「私たちが危険を指摘していたことが明らかになった。絶対に飛行させてはならず、速やかに撤退すべきだ」と語気を強めた。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「F15はこれまで再三事故を繰り返している。明らかな欠陥機が住宅地上空を飛行していては、住民の不安はぬぐえない。あらためて全面的な撤去を求めたい」と強調した。


住民ら驚き 恐怖に/「点検意味なし」の声も


 【中部】墜落につながる亀裂が見つかったF15戦闘機五機のうち、二機が嘉手納基地所属だったことを知った基地周辺の住民らは六日、驚き、憤った。「いつ事故が起きてもおかしくない」「もう全面撤去しかない」。基地に隣接する一市・二町の議会は米軍と日本政府への怒りを募らせた。

 沖縄市議会(喜友名朝清議長)は六日に、F15の全面撤退を求める抗議決議をしたばかり。基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「やっぱり欠陥機だった。危険な戦闘機が上空を飛んでいたのかと思うと怖い」と米軍を批判。来週に予定される委員会で協議する方針だ。

 嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日の十二月定例会最終本会議でF15の即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を審議する。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、「もはや点検の意味もない」と声を荒らげた。

 北谷町議会(宮里友常議長)は三日、抗議決議を全会一致で可決。F15の撤去を求め、十日に外務省沖縄事務所、沖縄防衛局に要請する。基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「米軍の情報は信用できない。今後の飛行再開は容認できない」と反発した。

 北谷町砂辺区の松田正二区長は「一番安全な戦闘機と説明するF15で欠陥が見つかったなら、砂辺の上を飛んでいるF15以外の飛行機はもっと危険だ。米軍は事故が起きる前提で基地を運用している」と憤った。

 沖縄市池原自治会の玉城勇会長は「爆音だけでも大変なのに、事故を起こすような飛行機を飛ばすなんてどうなっている」と語気を強めた。「日米安保を盾に沖縄は植民地化されている。政府はしっかりと対応し、飛ばすことを止めさせるべきだ」と訴えた。

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2007年12月7日(金) 朝刊 1・31面

文科省、軍命明記回避を要請/再申請指針示す

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で文部科学省が今月四日、訂正申請した教科書会社の担当者を同省に呼び、記述内容をあらためて再申請させるための教科書審議会の「指針」を示し、その中で「軍の命令」を明記しないよう求めていたことが六日、分かった。関係者によると、同省の教科書調査官が各社に「軍から直接、命令した事例は確認できていない」と伝えたという。

 訂正申請した六社のうち一社は六日、「日本軍の強制」を再度明記した上で、「集団自決」の背景に日本軍が住民に米軍の捕虜になることを許さなかった事情があるなどの説明を加え、週明けにも再申請する方針を決めた。ほかに二社は、再申請を決めているという。

 「指針」は軍命の明記を禁じたほか、「集団自決」に複合的な要因があったと明示するよう要望。具体的には(1)天皇中心の国家への忠誠を強いた皇民化教育の存在(2)軍が住民に手榴弾を配った事実(3)沖縄戦は軍官民が一体となった地上戦―などの特殊事情を説明するよう求めたという。

 これらを明記することで「軍の強制」をうかがわせる記述を可能にすることが狙いとみられる。ただ、「軍の強制」や「『日本軍』の主語」を記述していいかどうかは明らかにしておらず強制性を明確に記述できるか不透明だ。

 再申請を受け、教科用図書検定調査審議会は再度、複数回の会合を開く見通し。結論は当初の見通しより遅れ、今月下旬になるとみられる。


     ◇     ◇     ◇     

強制「絶対譲れぬ」/県内反発 記述求める


 「集団自決(強制集団死)」の軍強制が削除された教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が「日本軍の命令」など直接的な関与を避けた表現の範囲内で、教科書会社に記述の再申請をさせる方針を決めたことに、同問題に取り組む団体や研究者、体験者から強い批判が上がった。「軍の強制を認めないなら意味がない」「検定意見の押し付けには変わりがない」と怒りが渦巻いた。一方で、「執筆者は勇気を持って真実を書いて」と支援する声もあった。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「『集団自決』が起きた背景をきちんと書き込めというのであれば『軍の強制』という記述を認めるべきだ。それでなければ文科省は何のために出版社の訂正申請を認めたのか分からない。強制の事実を薄めるようなことがあってはならない」と警戒した。

 沖縄戦研究者として審議会に意見書を提出した林博史・関東学院大学教授は「軍強制の記述が認められないなら、皇民化教育や『軍官民共生共死』について書いても、元の検定と同じで、とても認められない」と指摘する。沖縄戦全般についても「住民が日本軍によって追い詰められたことが沖縄戦の特徴。そこを書かせないのは、『集団自決』を含めて沖縄県民の犠牲の本質を歪曲するものだ」と批判した。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さんは「『日本軍が』という主語と『強要』『強制』の表現は絶対に譲れない。まだ心配が続く」とため息をついた。文科省が再度訂正申請を求めたことに、「ここまで執着する背景には、政治的な圧力や意図があるのではないか。教科書会社や執筆者は苦しいだろうが、勇気を持って真実を貫いてほしい。歴史がどちらが正しいか証明する」と力を込めた。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の共同代表、高嶋伸欣・琉球大学教授は「昨年度の検定で突然、不当な意見をつけたことに対し、沖縄の人々の怒りを正面から受け止めていない」とあきれた。「軍が住民を追い込んだことに疑問の余地はない。検定意見の扱い方は、日本軍の責任を薄めようとしているだけ。検定意見を押し付けている事態は変わらない」と憤った。

 沖縄戦研究者の大城将保さんは「(日本軍の関与を削除するよう求めた検定意見は)完全な事実誤認であり、沖縄の県民世論への配慮や、政治的な落としどころをもってして済む話ではない。検定意見を撤回しなければ抜本的な解決にはならず、あいまいにしておけばまた繰り返される恐れがある」と指摘。

 アジア近現代史への配慮を定めた検定基準の「近隣諸国条項」を念頭に「沖縄戦については本土ではまだまだ知られていない部分があるので、検定意見の撤回と併せ、沖縄条項を設ける必要がある」と話した。


記述訂正申請 書き直し要求


 文部科学省が高校日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が六日までに、教科書会社からの記述訂正の申請に対し、記述の書き直しを求める方針を決めていたことが分かった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_02.html

 

2007年12月7日(金) 朝刊 2面

県、納得いく説明要求/普天間アセス

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は六日、一般質問初日が行われた。

 米軍普天間飛行場の代替施設にかかる環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会が沖縄防衛局に対して、追加説明を求めていることなどへの県の対応について、知念建次文化環境部長は「審査会が事業者に送付した質問書は、建設計画や代替施設の運用形態、アセスの使用などについて具体的に明らかにするよう求めており、近日中に文書で回答が行われることと考えている」と説明した。

 その上で「県としてはその回答も踏まえ、今後とも納得いく回答を求めていく。説明で納得できない場合は、知事意見でしっかり指摘していきたい」と述べた。喜納昌春氏(社大・結連合)の質問に答えた。

 米軍基地内での温室効果ガス排出について、知念文化環境部長は「本県の温室効果ガス排出量に影響を与えていると考えており、その削減を図ることが重要。基地内における削減取り組み要請については、在沖米軍基地環境保全担当者会議等における米軍の対応等も踏まえ、渉外知事会へ提起していけるかどうか検討したい」との考えを示した。

 玉城義和氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月7日朝刊)

[泡瀬埋め立て]

見えない「将来見通し」


「後戻りはできない」


 沖縄市泡瀬の沖合を出島方式に埋め立てる「東部海浜開発事業」について東門美津子市長は、工事が進む第一区域(約九十六ヘクタール)を推進し、第二区域(約九十一ヘクタール)については「困難だ」として見直すことを表明した。

 第一区域は二〇一二年にも埋め立てが終わることになっている。

 工事の進ちょく状況は「後戻りできないほど進んで」(市幹部)おり、「自然保護も政治理念の一つ」とする市長も中止できないと判断したようだ。

 同事業では、議会の三十人中二十四人が推進の立場である。埋め立てについては一時期市民、与野党がともに推進した経緯があり、自然保護を訴えて当選した市長が第一区域を容認したのは苦渋の決断とみていい。

 だが、市長を指示する自然保護団体は周辺海域で約百十種を超える貴重な魚介類や藻の生息を示しながら、「クビレミドロなど貴重種が多いのは第一区域」とし即時中断を求めている。

 市長が会見でこの問題に時間を割かなかったのは残念といわざるを得ない。なぜ、第一区域を容認したのか。具体的な理由について、もっと突っ込んだ説明をすべきであった。

 第二区域についての説明はこうだ。

 まず、約三分の一が米軍泡瀬通信施設の保安水域であり、埋め立てで新たな提供施設はつくりたくない。そして、絶滅危惧種クビレミドロなど貴重な動植物の生息地域で、埋め立てると干潟への影響が大きい。

 この二つが「困難」の理由で、埋め立てを最小限にするには第二区域の変更しかなかったということだろう。

 第二区域が完成すると、周辺の上下水道を含むインフラ整備に九十一億円、用地購入に百八十四億円かかる。

 だが、厳しい財政環境の中で、歳入が確約できない事業への財政拠出が説得力を欠くのは言うまでもない。

 第一区域については、人工ビーチやホテルの数、景観計画、隣接する県総合運動公園と連動した観光・スポーツコンベンション・エリアとしての青写真を描き直す必要があるはずだ。

 将来に禍根を残さぬためにも、何が必要で何がいらないのか。市は情報を開示し、市民の協力を得るとともに議会でも論議を深める必要があろう。


生活排水流さぬ工夫を


 泡瀬干潟には下水溝から生活排水が流れ込んでいる。干潟と連動する比屋根湿地なども例外ではなく、周辺地域からの影響もあるという。

 湿地にはマングローブなどがあり、干潟とともに野鳥の飛来地になっている。だが、近づくとヘドロのにおいが鼻を突くところも多い。つながりのある干潟に浄化作用があるとはいえ、このままでは海域への影響を抑えることはできないのではないか。

 出島は陸域から五十メートル離れているが、埋め立てによる潮流の変化も懸念材料だ。比屋根湿地の真向かいの海域で海水が滞留するという指摘もあるからだ。

 そうなれば湿地を含めた周辺地域の環境が悪化するのは明らかで、運動公園前の海岸線にも負の影響を及ぼしかねない。生息する魚介類、藻などへの影響は一層高まるはずだ。

 反対派が強く訴える点であり、この問題への対処法も市は具体的に示さなければなるまい。

 自然との共生は言葉で言うほど簡単ではない。生活排水を安易に流さずごみも投棄しない。

 市民としての最低限の義務であり、環境に配慮する上での努めだということを忘れてはならない。


開発主義に頼らぬ策で


 市長が第一区域の作業を容認したとはいえ、解決すべき課題は先送りされたままだ。今回の場合、事業を追認したにすぎず、市の将来設計を描くことにはならない。

 これまでも企業誘致など土地利用における十分な見通しがないまま埋め立て、土地を塩漬けにした例は数多い。

 沖縄市は同じ轍を踏んではならず、だからこそ課題を徹底的に洗い出し、市民も参画した論議が重要になる。

 残された自然をどう守っていくか。埋め立て事業が地域の活力につながるのか検証することも重要になる。市民一人一人に求められているのは、この問題への積極的な関与であり、声を上げることで行政を動かすことだ。

 開発主義に頼らず、どう地域を活性化に導いていくか。海という自然を県民の財産としてどう保全していくか。このことも合わせて、市民で考える糧にしたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071207.html#no_1

 

琉球新報 社説

泡瀬埋め立て 市長はもっと語るべきだ

 沖縄市の泡瀬埋め立て事業で、東門美津子沖縄市長は5日、「規模縮小」の方針を打ち出した。環境、財政問題に配慮した判断のようだが、あいまいさは否めず、肝心の同事業への同市のビジョンが見えてこない。市長の指導力と説明不足の印象がぬぐえない。

 事業は沖縄市泡瀬沖合の約187ヘクタールを埋め立ててホテルや人工ビーチ、マリーナなどのリゾート施設や住宅などを整備するものだ。

 埋め立て事業は5つの大きな懸案課題を抱えてきた。

 第1が環境問題。最大の課題だ。泡瀬干潟はトカゲハゼ、クビレミドロなど希少種や絶滅危惧(きぐ)種の宝庫で、サンゴの大群落など海洋生物の貴重な生息域となっている。

 事業は、生態系を含む環境影響評価(アセス)を基にしたはずだが、10年以上経過し「当時のアセスの不備」も指摘されている。

 5日の泡瀬訴訟では、絶滅危惧種の保護で「専門家の意見は聴取していない」との証言も出るなど、事業計画のずさんさも露呈した。

 今回の「縮小」も生態系への影響回避には不十分との声が残る。

 第2が地域振興の課題。沖縄市の中心市街地は「シャッター通り」と呼ばれ、再活性化が課題だ。公共事業削減が続く中で、泡瀬埋め立て事業は沖縄市だけでも290億円の財政投資だ。大型事業への市民の期待は大きい。

 第3が財政問題。活性化の切り札となる事業だが、企業立地や売却益など事業収益が伸び悩めば、逆に財政破たんを招きかねない。

 第4が基地問題。隣接する米軍泡瀬通信施設の保安水域の一部が、埋め立て事業にかかる。このため埋め立て地の一部を、新たに米軍に提供することになる。東門市政にとって米軍への新基地提供は政治姿勢の根幹を揺るがしかねない。

 5つ目が産業振興。泡瀬埋め立て事業を中止すれば、産業立地の中核地・中城湾港新港地区の航路づくりが暗礁に乗り上げる。航路しゅんせつで生じる土砂が行き場を失うからだ。事業縮小は国、県の産業振興政策にも影を落とす。

 課題の中に、基地を抱える自治体の地域活性化の課題が凝縮されている。環境、財政、産業振興の課題克服は、積年の「基地依存経済」の呪縛(じゅばく)を解く鍵ともなる。

 5日の会見で示された「規模縮小」の市長判断は、苦渋の選択かもしれないが環境も破壊し、事業効果も不十分な、両にらみの中途半端な決断に映る。市民を納得させるのは難しいだろう。決断の経緯や根拠など詳細な説明が必要だ。

 市長は一層の指導力と調整力、そして決断力で市民の負託に応える義務がある。同時に、解決の鍵は市民が握る。市政を左右する課題克服と政策決定の場に、市民を大いに引き込んでほしい。

(12/7 10:08)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29552-storytopic-11.html

 

2007年12月7日(金) 夕刊 1面

住民から苦情相次ぐ/大規模即応訓練

 【嘉手納・読谷】米軍嘉手納基地で米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練が行われている米軍嘉手納基地周辺の嘉手納町と読谷村で七日までに、計十件の苦情が寄せられていることが分かった。両町村は同日までに、同基地司令官に対し、訓練の中止を求めて文書で抗議した。

 嘉手納町には即応訓練に伴う深夜、早朝に鳴り響く拡声器放送やサイレン音に対し「睡眠薬を飲んでも眠れない」「無神経な演習はすぐやめさせてくれ」など、不安を訴える苦情が相次いでいる。

 同訓練は米空軍と米海兵隊の合同で行われ、岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加。FA18の離着陸の際の騒音のほか、サイレンや英語での拡声器放送が民間地域にも鳴り響いているのが確認されている。嘉手納町は七日、読谷村は六日に抗議文書を送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071700_02.html

 

2007年12月7日(金) 夕刊 1面

文科相「承知していない」/軍命明記回避

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は七日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で教科用図書検定調査審議会が文科省を通じて教科書会社に伝えた「指針」の内容について、「出されたかどうか承知していない」と述べ、言及を避けた。

 同省の教科書調査官は各社に「指針」を示し、「軍から直接命令した事例は確認できていない」と伝え、軍の命令を明記しないよう求めたという。「指針」の妥当性について渡海文科相は「通常の検定の範囲で(審議委員が)学問的、専門的な調査をする中で行われていると理解してほしい」とした。

 審議会が結論を出す時期が遅れていることには「今やっている作業は来年の春の教科書に間に合うようにお願いしており、審議会の先生もそれを念頭に審議していると思っている」と述べた。

 

     ◇     ◇     ◇     

仲里議長、指針を批判


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍強制を削除した教科書検定問題で、教科用図書審議会が「指針」をまとめ、文部科学省が「軍の命令」を明記しないよう教科書会社に求めていたことについて、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午前、「(軍命否定は)戦争を知らない人が言うこと。あのような、今死ぬか殺されるか、あるいは生きるかという、生と死のがけっぷちにある状況の中で、証拠がある。(軍命を明記しないという指示は)ナンセンスでばかげたこととしか言いようがない」と批判した。

 その上で「(軍命を示す)証言ははたくさんある。検定意見の撤回と記述の回復ということは、いささかも揺るぎはないし、その実現に向けて、今後も頑張っていきたい」と話した。

 一方、仲村守和教育長は教科用図書検定調査審議会の指針について、「内容について詳しいことは承知していない」とした上で、「県教育委員会としては検定意見の撤回と記述の回復がなされ、来年度も記述が回復された教科書で高校生が学習できることを期待している」と述べた。同日の県議会一般質問で、兼城賢次氏(護憲ネットワーク)に答弁した。


知事「大変失礼」/藤岡氏の議長批判


 新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝拓殖大教授が先月末、県庁記者クラブで会見し、沖縄戦時に日本兵から毒のおにぎりを渡されたとする仲里利信県議会議長の証言は「作り話」と批判したことについて、仲井真弘多知事は七日午前、県議会の一般質問で見解を問われ、「報道の通りであったとすれば大変失礼で理解不可能。大変疑問に感ずる発言」と批判した。

 仲村守和教育長も「(仲里議長の発言は)『歴史は正しく語り継がなければならない』との強い思いから、自らの沖縄戦体験に基づいて語られたものだと思う。つくる会会長の発言が報道の通りであれば極めて疑問であり、理解し難い」と同様に批判した。当山全弘氏(社大・結連合)への答弁。

 仲里議長はこれまでに「壕の中で泣きやまない幼い妹らを殺すよう、日本軍兵士から毒入りのおにぎりを渡された」と証言している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071700_03.html

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