沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月1日から4日)

2007年12月1日(土) 夕刊 5面

嘉手納基地 北側滑走路の運用再開

 【嘉手納】今年一月から改修工事のため、使用を中止していた米軍嘉手納基地の北側滑走路の運用が三十日から始まった。目撃者などによると、同日午後に少なくとも二機の空中給油機が同滑走路から離陸する状況が確認された。滑走路は嘉手納町屋良の住宅地に近く、周辺住民は騒音負担の増加を懸念している。

 沖縄防衛局によると、北側滑走路の改修工事は二十七日に終了。同基地渉外部は使用時期については「未定」と説明していたという。

 北側滑走路では三十日午前十一時ごろ、飛行停止中のF15戦闘機を使用して、強制的に機体を停止させるため、滑走路上に設置されたワイヤを点検している様子が確認された。また、午後にはKC130空中給油機、KC135空中給油機が滑走路を使用し、北谷町方向から沖縄市方向に向けて離陸した。

 同基地では、三日から岩国基地(山口県)所属の海兵隊と空軍の合同即応訓練が実施されることに伴い、FA18戦闘攻撃機約三十機が一時的に移駐している。

 同町は「訓練期間中はただでさえ騒音増加が懸念される。この上、北側滑走路を使用すると、住民の騒音負担は増加するのでは」とみている。

 嘉手納町屋良の島袋敏雄区長は「(屋良地区から遠い)南側滑走路を使っていても騒音は激しかった。これ以上の騒音は地域住民の健康にも大きな被害を与える」と不安そうな表情を浮かべた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712011700_04.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 2面

跡利用へ法整備指摘/嘉手納で米軍再編シンポ

 【嘉手納】「米軍再編とどう向き合うか」をテーマにしたシンポジウム(主催・沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会)が一日、嘉手納町中央公民館であり、米軍基地を抱える宜野湾、嘉手納、北谷の三市町首長らが基地返還後の跡地利用などで意見交換した。宮城篤実嘉手納町長は、未明離陸の強行など周辺住民の意思に反して嘉手納基地が運用されるのは、施設管理権が米軍にあるからだと指摘。「管理権が自衛隊に代わることで、問題解決が実現可能になるのではないか」と問題提起した。

 しかし、地元自治体だけでは問題解決できないとして、「抜本的な解決策を持たない私たちができることは抗議行動だ」などと述べた。

 野国昌春北谷町長は、同町が跡地利用の成功自治体と評価される一方で、キャンプ桑江北側部分から米軍が廃棄した銃弾や油送管が相次いで発見されるなど、環境問題が跡地利用の障害になっている現状を報告。三年以内とされる返還給付金の期限延長も国は考慮するべきだ―と訴えた。

 伊波洋一宜野湾市長は米軍の資料を基に、普天間飛行場の航空機と海兵隊員はグアムに移転すると主張。名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設がなくても「普天間」は撤去可能だとの見解を示した。

 パネルディスカッションでは桜井国俊沖大学長が、一九九〇年代にフィリピンで米軍基地の跡地利用にかかわった経験を基に「米軍の情報提供がなければ、どこに何が埋まっているのか分からず、手も足も出ない」と報告。日米地位協定の改定などを通して「嘉手納以南」の大規模返還に備えるべきだと指摘した。

 仲地博琉大教授は、普天間飛行場やキャンプ・キンザーなどの大規模返還を実現するためにも「新たな法整備が必要だ」として、市町村から強力に働き掛けることを呼び掛けた。

 「跡地開発によっては軍用地料よりも高額な経済効果が得られる」と指摘したのは照屋寛之沖国大教授。また、我部政明琉大教授は日本のねじれ国会、米大統領選、イラク戦争の泥沼化で「米軍再編の先行きは不透明だ」と現状を分析した。

 シンポジウムには、本島中部の自治体職員や議会議員、市民らが多数参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_03.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 2面

「普天間」着地点見えず/SACO最終報告11年

 在沖米軍基地の整理・縮小を目的とした日米特別行動委員会(SACO)最終報告から、二日で十一年を迎えた。SACO事案は今年六月、地元合意が唯一得られていなかった金武町のギンバル訓練場の返還に関連し、同町がヘリパッドをブルービーチ訓練場へ移設する条件を受け入れたことで道筋をつけた。ただ、「五―七年以内」とされた普天間飛行場の返還は、在日米軍再編へ移行したものの、代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐって政府と地元の調整が難航し、解決のめどが立っていない。(東京支社・島袋晋作)

地元は同意


 SACOと米軍再編がすべて実現すれば、返還規模は五千二百五十ヘクタール以上になり、在日米軍専用基地に占める在沖米軍基地の割合は約70%になる見込みだ。

 SACO事案のうち返還規模が最大で、二〇〇二年度末までを予定していた北部訓練場の部分返還(約三千九百八十七ヘクタール)について、日米は今年三月までにヘリパッドの移設数を七カ所から六カ所に減らすなどして、南側三カ所(東村、国頭村)の着工に合意した。

 移設反対を主張し、今年四月に当選した伊集盛久東村長も就任後の五月に容認姿勢に転じた。これらを受けて政府は七月から工事に着手。残り三カ所(国頭村)も含め、〇八年度中の完了を目指す。

 ギンバル訓練場(約六十ヘクタール)の返還については、跡地利用の大きな財源となる「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)が本年度末に期限を迎えることを踏まえ、儀武剛金武町長は〇八年度予算概算要求直前の六月定例会で受け入れを表明。防衛省は「SACO事案は地元同意がすべて得られたことになる」と歓迎した。


返還計343ヘクタール


 SACO事案は,これまで一九九八年に安波訓練場(約四百八十ヘクタール)の共同使用を解除した。

 〇三年にはキャンプ・桑江北側部分(三十八・四ヘクタール)返還を実現。〇六年は瀬名波通信施設(約六十一ヘクタール)、楚辺通信所(約五十三ヘクタール)、読谷補助飛行場(約百九十一ヘクタール)が全面返還され、返還面積は合計で約三百四十三ヘクタールになる。

 瀬名波通信施設はトリイ通信施設に、楚辺通信所はキャンプ・ハンセンにそれぞれ移設され、どちらも県内の既存米軍基地内に収容された。読谷補助飛行場のパラシュート降下訓練は、伊江島補助飛行場に移転した。

 那覇港湾施設(約五十五ヘクタール)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖への移設は米軍再編に移行。国、県、地元などでつくる移設協議会は今年八月、追加整備される集積場を含む代替施設の位置や形状、面積について、浦添埠頭地区の沖合に隣接する逆L字形(四十九ヘクタール)とすることで合意した。


こう着続く


 普天間飛行場(約四百八十ヘクタール)の返還は米軍再編に移行。日米は、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部にV字形の滑走路を建設することで合意したが、県や名護市は滑走路を沖合に移動するよう要求し続けている。政府は今年十月、地元の反対を押し切って、移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書を提出。こう着状態が続く。

 米軍再編ではこのほか、牧港補給地区(約二百七十ヘクタール)、キャンプ桑江(約六十八ヘクタール)、第一桑江タンクファーム(約十六ヘクタール)を全面返還する。キャンプ瑞慶覧(約六百四十ヘクタール)は部分返還だが面積は決まっていない。

 これら「嘉手納以南」の返還で、日米は米軍再編最終報告(ロードマップ)に基づき、返還の「詳細な計画」を今年三月末までに作成する予定だったが、キャンプ瑞慶覧の返還交渉が難航し、見通しが立っていない。

 キャンプ瑞慶覧については、石破茂防衛相が十一月八日に会談したゲーツ米国防長官に対し、「県民にとって、目に見えるものとして、きちんと示さなければならない。長官のリーダーシップをお願いしたい」と最大規模の返還と早期解決を求めている。

 日米は普天間飛行場を一四年までにシュワブに移設した後に返還する方針。ほかの五基地の返還時期は、早ければ同年までに完了する在沖米海兵隊八千人のグアムへの移転後になる見通しだ。返還に伴い、第一桑江タンクファームの機能は普天間代替施設に併設。キンザーの倉庫機能は、嘉手納弾薬庫地区などに移設する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_04.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 27面

レノン命日合わせ 沖縄から平和発信へ共感の輪

 元ビートルズのジョン・レノンの命日に当たる十二月七日二十四時(八日午前零時)に時を合わせ「平和への思いを共有しよう」。那覇市でイベント関係の仕事をしている新城義満さん(54)の呼び掛けに共感の輪が広がっている。千五百枚のビラ=写真=を世界各地に配布。新城さんは、自分のいる場所で「電気を消して暗くしたり、ろうそくを灯したり自分のやり方で平和を考えてほしい」と話している。

 平和を訴えたレノンは一九八〇年十二月八日にニューヨークの自宅前で射殺された。レノンファンの新城さんは、以前から命日には、自然に友人たちと彼をしのんで曲を聴いたり演奏したりしていたという。ミニライブを何年も続けている友人たちもいた。「思いを一つにできないか」と考えて呼び掛けた。

 千五百枚作ったビラを、十一月半ばごろから県内各地だけでなく、東京や大阪、米国サンフランシスコの友人らにも郵送。「面白い」「無理なくできる」と好意的に受け止められているという。ビラには「この呼び掛けは沖縄から始まっています」とも書かれている。新城さんは「沖縄は(平和を求める)大きな声を出す資格がある」と話している。

 新城さん自身は、その時は「いつものミュージックバーで、いつもの仲間と過ごすと思う」。どれだけの人の思いが重なるのか楽しみという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月2日朝刊)

[アセス方法書]

そのままでは通らない

 米軍普天間飛行場の代替施設建設のため沖縄防衛局が県に提出した環境影響評価(アセスメント)方法書に対し、市民団体や自然保護団体だけでなく、地元自治体や県の諮問機関からも、厳しい意見や批判が相次いでいる。

 アセス方法書は、法律に基づいて移設先で実施する環境影響評価の調査方法などを記したものである。

 名護市は、航空機騒音に関して、事細かに方法書の疑問点をまとめ、県に意見書を提出した。

 政府案よりもさらに沖合での航空機騒音の予測・評価、米軍大型ヘリによる試験飛行、装弾場など関連施設の情報開示―などを求めている。

 その上で、住民生活への影響を最小限に抑えるため「可能な限り沖合に移動する必要がある」と、沖合移動を強調しているのが特徴だ。

 県環境影響評価審査会は、方法書の不備を指摘し、沖縄防衛局に追加説明を求める質問書を提出した。疑問点は代替施設の運用形態など三十五項目七十六問に及ぶ広範なものだ。

 国がまとめたアセス方法書は、たとえて言えば、出来の悪い答案みたいなものである。とても及第点は与えられない。

 方法書をめぐって、なぜ、こうした事態が生じているのか。私たちは、地元を無視した日米合意が必然的に招いた結果、だと受け止めている。

 橋本竜太郎元首相が「(普天間移設は)地元の頭越しには進めない」と明言して以来、地元の合意、了解を前提にして作業を進めることが政府の基本姿勢だった。

 ところが、あらたに日米が合意したV字形滑走路案は、地元への相談もなく、事後的に地元合意の形式を無理に整えただけの、実質的には不合意といっていい代物だった。

 強引さとあいまいさが当初からつきまとっていたのだ。問題はそれだけにとどまらない。

 代替施設建設をめぐって、情報開示を阻む二つの壁の存在が明らかになった。一つは作戦運用に絡む軍事機密という壁。もう一つは地元の反発を招きかねない「不都合な事実」を公表しないという隠ぺい体質の壁だ。

 アセス方法書に対して「知りたいことが盛り込まれていない。判断のしようがない」という厳しい意見が相次いでいることを政府はどう考えているのか。

 代替施設の建設スケジュールは日米が決めたもので、これにも地元はかかわっていない。計画表にこだわるあまり、無理を重ねれば、ひずみはますます大きくなるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071202.html#no_1

 

2007年12月3日(月) 朝刊 1面

きょうから即応訓練/米空軍・海兵隊

 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点にした米空軍と米海兵隊の合同即応訓練が三日、始まる。岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と六百人の海兵隊員が参加する。嘉手納基地が大規模な部隊を受け入れ、合同で即応訓練を実施するのは今回が初めて。同基地によると七日まで行われる。周辺自治体は「基地の機能強化だけが進んでいる」などと反発している。

 参加するFA18戦闘攻撃機や要員は、二日までにほとんどが嘉手納基地に到着したとみられる。

 四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などを使用するという。

 即応訓練は有事の対応を確認する訓練。嘉手納基地では従来、同基地兵士が他基地からの部隊役となり、実施してきた。

 訓練について、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備、F15戦闘機や外来機による未明離陸など、負担軽減に逆行しているとして、訓練の中止を求め、四日に同基地司令官に直接抗議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031300_04.html

 

2007年12月3日(月) 夕刊 1面

嘉手納で大規模訓練/米空軍・海兵隊合同即応

 【中部】米軍嘉手納基地を拠点に、米空軍と米海兵隊合同の即応訓練が三日午前、始まった。海兵隊岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊約六百人が参加。同機は午後一時までに十七機が飛行し、このうち二機が緊急着陸した。嘉手納町屋良の騒音測定器は最高値九一・一デシベル(騒々しい工場内に相当)を計測。「機能強化ばかりが進んでいる」として訓練に反対していた周辺自治体は、強行した米軍に反発を強めている。訓練に反対する市民団体は「安保の見える丘」で抗議集会を開き、シュプレヒコールを繰り返した。

 同日午前に緊急着陸した機体は、滑走路のワイヤにフックを掛けて停止したため、緊急性が高かったとみられるが、同基地報道部は「機体にトラブルはなかった」としている。

 当初、普天間飛行場も使用するとしていたが、同日午後一時現在、目立った動きはない。

 FA18は午前八時三十分ごろ、一機が同基地南側滑走路から離陸したのを皮切りに、十七機が相次いで飛行。沖縄本島周辺の訓練区域で訓練を実施したとみられる。嘉手納町屋良では、同日午後一時までに、多くの人が不快に感じる70デシベル以上の騒音を七十三回計測した。

 また、FA18に実弾を装着している様子も確認された。在沖海兵隊は沖縄タイムス社の取材に対し、FA18は実弾を使用した訓練を実施することを明らかにしたが、爆弾の種類については「運用上の保安のため」公表していない。

 岩国基地の所属機は今年九月にも、非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している。

 訓練の中止を求め、四日に同基地司令官に直接抗議する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「外来機が参加する大規模訓練が県外で行われれば、大問題になるはずだ。容認できない。沖縄だけが基地負担を押し付けられている。嘉手納基地の使用協定見直しを国レベルで協議しなければ、根本的な解決にならない」と述べた。

 即応訓練は有事の対応を確認する訓練。嘉手納基地では従来、同基地の兵士が他基地からの部隊役となり、実施してきた。同基地が大規模な部隊を受け入れ、合同で即応訓練を実施するのは今回が初めて。四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などを使用。訓練は七日まで行われる。


     ◇     ◇     ◇     

北谷議会が抗議決議


 【北谷】米軍空軍と海兵隊による大規模な合同即応訓練が始まった三日午前、北谷町議会(宮里友常議長)は臨時会を開き、訓練に対する抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。海兵隊岩国基地(山口県)の隊員約六百人とFA18戦闘攻撃機約三十機が参加するなど、嘉手納基地での初の大規模合同訓練を、「基地機能強化につながる」と問題視し、訓練の中止を求めている。嘉手納基地司令官などへの直接抗議を予定している。

 抗議決議は、基地負担軽減が掲げられた二〇〇六年の日米再編協議以降の嘉手納基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)配備、未明離陸やパラシュート降下訓練の強行を指摘し、「基地負担の軽減とは程遠い状況にある」と米軍を批判している。

 合同訓練については、「明らかに一方的な基地機能の強化につながる。度重なる訓練に強い憤りを覚えている」と強く反発。基地負担軽減の実行、地位協定の改善・見直し、騒音防止協定の抜本的な見直しを訴えた。

 また、米本国の墜落事故を受けて飛行中止している嘉手納基地所属のF15戦闘機についても、事故原因の公表とF15の即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。


嘉手納も中止要求へ


 【嘉手納】嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の基地対策特別委員会が三日午前開かれた。同日始まった米軍の大規模即応訓練について「町民の騒音被害の増大が考えられる」として、十日開会の町議会十二月定例会冒頭に、訓練中止などを求める抗議決議と意見書の両案を提出することを決めた。

 基地特委では「空軍の通常訓練だけでも騒音被害は大きい。さらに海兵隊が加わっては大変だ」「住民地域に近い北側滑走路の修復工事も終了したようだ。騒音被害増大が考えられ、即応訓練は中止するべきだ」などの意見が相次いだ。

 十二日以降に嘉手納基地への抗議行動および県選出国会議員に対する要請活動を行い、同様の大規模訓練が今後行われないよう求める方針だ。

 また、米国でのF15戦闘機墜落事故を受け、嘉手納基地のF15が二度にわたり飛行停止措置を講じた問題も協議。即応訓練の中止と併せ、F15の飛行停止と即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案提出も決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031700_01.html

 

2007年12月3日(月) 夕刊 5面

墜落の恐怖 住民怒り/FA18緊急着陸

 【中部】嘉手納基地を拠点に大規模な合同即応訓練が始まった三日早朝、飛行ルートにある北谷町では戦闘機の騒音が響いた。訓練中のFA18戦闘攻撃機一機が離陸後、緊急着陸する事態も発生。例を見ない合同訓練のスタートに、危険と隣り合わせの生活を強いられる住民の不安は高まっている。

 「わじわじーして、落ちたらどうするのか」。北谷町砂辺区の松田正二区長はFA18一機が緊急着陸したと聞き、憤りを隠せない。「欠陥機というのははっきりしている。やりたい放題だ」と語気を強めた。「政府は沖縄、特に砂辺に負担を押し付け、切り捨てているとさえ思う。何の対応もしない政府の姿勢は爆音よりも腹立たしい」と語った。同区公民館の女性職員(47)は「電話が中断するほどの騒音。訓練とはいえ、住民のことを考えてほしい。他市町村から来る子どもも怖がっている。訓練は無人島にでも持って行ってもらいたい」と訴えた。

 同じく砂辺区の松田文子さん(73)は「本当にやかましい。うるさいときは電話も聞こえないし、テレビもジリジリして見えない。夫婦一緒に住んでいるが、訓練を早くやめてほしい」と強調した。

 宜野湾市の普天間飛行場では同日午前十一時までに戦闘機の離着陸はなかった。しかし、嘉手納基地同様、即応訓練の「拠点」として挙げられており、七日までの期間中に訓練が行われる可能性もある。

 喜友名地区の知念参雄自治会長は「今のところ目に見える被害はないが、何で沖縄ばかりなのかという気持ち」と批判。「米軍は全く無神経。沖縄で集中的にやって来るんじゃないかと心配だ」と訓練の恒常化を警戒した。

 嘉手納町屋良区では早朝に飛行機の騒音はほとんどなかった。屋良小学校の近くに住む主婦(42)は「区民は訓練の実施に敏感になっている。近くに学校もある。いつ飛行機が落ちるか分からない状況の中で生活するのは大変だ。訓練などすぐにやめてほしい」と話していた。


     ◇     ◇     ◇     

「有事想定許さない」/市民団体 即応訓練に抗議


 【嘉手納】米海兵隊岩国基地(山口県)のFA18戦闘攻撃機約三十機と要員約六百人が参加し、米軍嘉手納基地で三日午前始まった「即応訓練」に反対する集会が同日午後、通称「安保の見える丘」で開かれた。参加者らは「嘉手納基地での演習は許さないぞ」「欠陥機F15戦闘機は出てゆけ」とシュプレヒコールを繰り返し、抗議の意思を示した。

 沖縄平和運動センター、中部地区労などが主催、市民団体や県議ら約百十人が参加した。

 沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「即応訓練は、沖縄における有事を想定し嘉手納基地を出撃拠点とする大規模なもの。訓練は絶対許されない」と語気を強めた。

 中部地区労の金城広郁事務局長は「海兵隊ヘリコプターは沖国大に墜落したが、今度は欠陥機のF15を私たちの屋根の上に落とすつもりなのか」と批判した。

 一行は午後五時まで監視行動を続ける予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031700_02.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 1面

PAC3初の機動訓練/車両、国道58号移動

 嘉手納基地に配備されている米陸軍の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊は四、五の両日、初の機動展開訓練(移動訓練)を嘉手納弾薬庫地区内で実施する。四日未明、機器などを搭載した米軍車両二十九台、兵員八十人が次々と嘉手納基地を出発。国道58号を北上し、嘉手納弾薬庫地区に向かう。同弾薬庫地区内で機器の運用上必要な通信環境や障害物の有無などを確認するとみられる。

 公道を使った部隊移動について、外務省は「日米地位協定五条で認められた『施設間移動』に当たり問題ない」としているが、周辺自治体は米軍の訓練が活発化する現状に、「基地機能強化」「負担増」と反発を強めている。

 沖縄防衛局は三日、嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に隣接する嘉手納町、北谷町、沖縄市、読谷村、恩納村と県に通知。県基地対策課は同日、訓練で周辺住民に著しい影響を与えないよう配慮するとともに、国道58号を移動する際は交通渋滞などの支障や影響を与えないよう、口頭で沖縄防衛局を通じて米軍に申し入れた。沖縄防衛局によると、車両に弾薬は搭載せず、訓練は模擬弾を使用する。嘉手納基地で三日から始まった米空軍と米海兵隊の合同即応訓練とは「関連しない」としている。

 政府関係者によると、PAC3は射程が約二十キロと短く、特定の基地を守る場合は対象の近くに展開する必要があるため、平時に機動展開訓練を実施する必要があるとしている。昨年七月に北原巌男防衛施設庁長官(当時)が県に説明した際、公道を使用した移動訓練が行われる可能性に触れた上で「頻繁ではない」と説明していた。今後、キャンプ・ハンセンなど県内の他の米軍基地にも定期的に展開訓練を実施する可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_03.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 27面

負担軽減「感じない」/米軍即応訓練

 【中部】「負担軽減など一度も感じたことがない」。米海兵隊FA18戦闘攻撃機の爆音とともに三日、嘉手納基地で始まった即応訓練に、周辺住民の政府不信が高まっている。四日には「即応」に加え、同基地パトリオット部隊が国道58号で移動訓練を実施、隣接する嘉手納弾薬庫地区では爆発装置を使用した訓練も行われる。住民の怒りの声をよそに、訓練の集中・激化はさらに続く気配だ。

 岩国基地(山口県)のFA18が爆音をまき散らした北谷町砂辺に住む渡慶次保さん(74)は、「米軍機の爆音にさらされ、毎日が苦しい。政府は沖縄の『負担軽減』を口にするが、そんなの一度も感じたことがない。訓練が重なっている今だからこそ、国レベルで対応してほしい」と訴えた。同区の伊礼勇さん(70)は知人から「砂辺は人が住む場所ではない」と言われた経験がある。「ベトナム戦争や湾岸戦争では、嘉手納から離陸する飛行機が昼夜を問わず爆音を響かせた。住民は無視されっぱなしだ」と話した。

 嘉手納町屋良の沢岻安一さん(67)は相次ぐ訓練に「抗議の声が届かないのか。しかし、黙るわけにはいかない」と話した。「相次ぐ訓練は戦争の前触れではないか」と話す沖縄市知花の島袋善祐さん(72)は「米軍の『訓練』は、平和のためではなく人殺しのためだ。沖縄戦を経験した一人として、最近の米軍の行動には怒りがわいてくる」と声を荒らげた。


沖縄近海に実弾投下か


 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点に、米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練が始まった三日、FA18戦闘攻撃機は約三十機が離陸、このうち、少なくとも四機が実弾を装着して飛行した。実弾を装着した四機は、いずれも二時間以内に嘉手納基地に帰還。着陸時に実弾がなくなっていたことから、沖縄本島周辺で投下したとみられる。

 嘉手納町屋良では最高値で九一・一デシベル(騒々しい工場内に相当)の騒音を計測した。同町が屋良地区に設置している騒音測定器は、三日午前零時から午後五時までの十七時間で、七〇デシベル以上の騒音を百回計測した。

 同町屋良の通称「安保の見える丘」で同日午後、開かれた緊急の抗議集会で、主催した沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「即応訓練は沖縄での有事を想定し、嘉手納基地を出撃拠点とする大規模なものだ。訓練を許すことはできない」と米軍を非難した。

 同基地によると、訓練は七日まで。サイレン音や地上爆発模擬装置(GBS)などを使用する訓練は四日から行われる。


きょう爆発装置訓練


 【嘉手納】在沖米空軍は四日午前七時半から昼ごろまで、米軍嘉手納弾薬庫地区内の通称シルバーフラッグサイトで、「エックスプローセブ・シミュレーター」(模擬爆発装置)を使用した訓練を実施する。沖縄防衛局から三日午後、連絡を受けた嘉手納町によると、模擬爆発装置約二十発や発煙筒を使用する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_04.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 26面

教科書検定 撤回求め東京で集会

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める全国集会(主催・東京沖縄県人会、沖縄戦首都圏の会)が三日夜、都内の九段会館で開かれ、関東・関西など各地から約一千人(主催者発表)が参加した。

 文部科学省に(1)検定意見の撤回を可能にする検定規則の制定(2)教科用図書検定調査審議会で審議中の教科書会社六社による訂正申請を認めて記述を回復―などを求めるアピールを全会一致で採択した。

 渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明さん(沖縄キリスト教短大名誉教授)は「日本軍が天皇から授かった武器である手榴弾を配ったのは、住民への死の強要にほかならない」と自決の強制性を訴えた。

 一九九一年度の公民教科書検定で引用されたコラムに検定意見が付き、九六年度に文部省、厚生省(ともに当時)の謝罪を勝ち取った暉峻淑子埼玉大名誉教授は、検定意見の根拠が厚生省社会局長の国会答弁だったことを説明。

 「孤独な闘いだったが、私が引き下がったら日本の民主主義と科学的な真実が後退すると思った。文部省の課長に抗議して『外に雨がザーザー降っていても局長が晴れと言えばその通りですか』と聞くと『はい、そうです』と言われた」と述べ、検定意見に固執する国の姿勢を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_07.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 26面

カメさんの闘いコントに 生誕100年でFEC

 「カメさん」の愛称で親しまれ、那覇市長や衆院議員を務めた故瀬長亀次郎さん(一九〇七―二〇〇一年)の生誕百周年を記念した「カメジローからのメッセージ 講演と文化の夕べ」が三日、浦添市てだこホールで開かれ、約七百人が訪れた。

 演芸集団FEC(山城智二代表)は「お笑いカメジロー」で、瀬長さんの演説や、獄中から出所する場面などを描いた五つのコントを披露。沖縄のため、米側の圧政と戦った瀬長さんをコミカルに表現し、会場から大きな笑い声が起こった。

 山城代表は瀬長さんが両親の仲人を務めたことや、自身が瀬長さんをテーマにした映画に出演したエピソードを紹介。「コント制作のために資料などを読み直し、あらためて偉大さを感じた。上の世代から渡されたバトンを若い世代につないでいきたい」と語った。

 瀬長さんの二女・内村千尋さんは「基地のない沖縄を目指した父のメッセージを多くの方に受け取ってほしい」とあいさつした。

 琉球大学の比屋根照夫名誉教授が「瀬長亀次郎と私たち」をテーマに講演したほか、ロビー内には瀬長さんの遺品や那覇市長時代などの写真、新聞などが展示された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_12.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月4日朝刊)

[防衛省改革会議]

癒着の病巣にメスを

 収賄容疑で守屋武昌前事務次官が逮捕される中、防衛省の抜本改革に向けた有識者による「防衛省改革会議」が開かれた。

 官邸主導にしたのは、もはや防衛省には自らの手で組織を洗い出し、立て直す能力がないとみたからだろう。

 一九九八年の装備品調達をめぐる汚職や二〇〇五年の談合を含めた一連の事件を思い起こせば、同省にはびこる病巣はあまりにも根深い。

 中間報告は来年二月に出るが、国防を担う組織としてどうあるべきか。抜本的な改革案の提示を期待したい。

 論議する柱は(1)装備品調達の透明性(2)情報保全体制の確立(3)文民統制(シビリアンコントロール)の三つだ。

 防衛省の武器から制服に至る装備品の予算は年間約二兆円規模に上る。

 最大の課題はその契約の在り方といっていい。武器を含め自衛隊だけが使用する特殊なものが多いだけに約七割が随意契約になっているからだ。

 装備品に軍事機密が絡むなど、他省庁の契約と異なるのは確かである。だが、それが業者との癒着の温床になっているのなら、競争入札によって透明性を高めるのは当然であり、それが国の責任だといえよう。

 商社「山田洋行」が対潜哨戒機の装備品納入の際に行った水増し請求もそれによって派生した問題だ。

 増田好平事務次官は、今後は商社の見積書をメーカー側に照会することを明らかにしたが、基本的な作業をしていなかったのであれば由々しき問題であり、あきれ果てるしかない。

 発注から納入まで業者にまる投げしてきた“つけ”は明らかだ。防衛省は事後的なチェックも含め、対応を強化する必要がある。

 在沖米海兵隊のグアム移転で米側は約百億ドルの拠出を要求している。本当に必要な額なのか、査定根拠など詳細な情報開示が欠かせない。

 海上自衛隊の補給艦がインド洋で展開していた米艦船などへの燃料補給活動では、海上幕僚幹部の課長(当時)が補給量の誤りに気付きながら上司に報告。誤った数量を石破茂防衛相が国会答弁している。

 給油問題では保管すべきデータの廃棄もあった。情報の保全の在り方とともに文民統制の問題とも深くかかわる問題といっていい。

 文民統制は憲法の機軸だ。自衛隊を統制するのは文民であり、制服組ではないということを忘れてはなるまい。

 装備品調達の在り方を含めて防衛省の組織図をどう見直していくのか。構造的な弊害を一掃するためにも大胆にメスを入れるべきだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071204.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍即応訓練 これ以上の負担はノーだ

 日々を安穏に過ごしたい。当然の欲求や願いである。何はさておき優先されねばならない。

 米空軍第18航空団は3日、嘉手納基地を拠点に海兵隊岩国基地所属のFA18戦闘機との合同即応訓練を開始した。訓練のため岩国から移動してきた海兵隊員は約600人。FA18戦闘機は30機に上る予定だ。

 基地への攻撃を想定した異例の大規模訓練に伴い、嘉手納近辺では午前8時半ごろからFA18戦闘機が立て続けに離陸し、爆音をまき散らした。

 野放図な訓練が繰り返される中で、欠陥機の疑いの濃い危険な飛行や未明離陸などの中止を求める地元の切実な声は、一顧だにされない。米軍再編のお題目であるはずの「負担軽減」は、かけらすら実感されない。

 一方で昨年10月に地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)が初めて配備されたのを皮切りに、最新鋭戦闘機F22 12機が一時配備され、日米特別行動委員会(SACO)合意に反してパラシュート降下訓練が強行される。逆行した動きばかりが目立つ現状のひどさは、誰の目にも明らかである。

 大規模即応訓練によって地元の怒りや不安が沸点に達していることは、次のようなコメントが明確に物語っている。

 「沖縄の基地から派兵され、本土の基地で大規模な訓練が実施されるとしたらこんなローカルな問題では済まないはずだ」(野国昌春北谷町長)

 地元にこれ以上、負担や犠牲を強いるのは認めるわけにはいかない。即応訓練を7日まで継続する構えでいるが、きょう以降、即応訓練を即刻中止すべきだ。

 懸念されるのは、大規模即応訓練が常態化することだ。県民の恐れや地元の懸念が、一過性に終わらず常態化の気配を見せているのが腹立たしい。

 伊江島に限定されるはずのパラシュート降下訓練にしろ、「運用上の所要のため」を理由に、航空機騒音の規制措置を有名無実化させる未明離陸の問題もしかりである。

 即応訓練に対しても、米軍は常態化の機をうかがっていると見るべきだろう。

 米軍には地元の訴えに耳を傾けたり、訓練への影響に配慮するなど抑制的な姿勢はまったく見られない。それどころか、嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会などの抗議や要請、地元議会の抗議決議可決をやり過ごせば、後は思いのままに基地を運用できる。そんな姿勢さえうかがえる。

 であれば、抗議や要請にも工夫が必要ではないか。県との緊密な連携を含め、取り組みを一段と強化し、日米政府を動かす方法を検討したい。

(12/4 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29458-storytopic-11.html

 

2007年12月4日(火) 夕刊 5面

検定制度見直し言及/撤回要請に文科省審議官

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める都内在住の市民団体や県関係の国会議員などが四日午前、文部科学省で布村幸彦大臣官房審議官に要請した。出席者によると、布村審議官は「検定意見が間違っているとは思わない」と反論する一方、「検定制度の見直しは考えている」と制度見直しに初めて言及したという。

 要請には都内各地で検定意見の撤回を求める「市民の会―東京―」(阿部ひろみ代表)、「沖縄戦首都圏の会」、琉球大学の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授が参加し、それぞれが要請書を手渡した。県関係の野党国会議員四人も参加した。

 文科省が今回の検定の責任を認めて謝罪することや、検定意見が誤っていた場合の是正措置を検定規則に明記するよう求める声が相次いだ。

 布村審議官の「見直し」発言を受け、高嶋教授が「審議会の透明性向上だけでなく制度全体の見直しなのか」とただしたところ、同審議官は否定しなかったという。

 照屋寛徳衆院議員(社民)は「文科省は検定の責任を率直に認めて謝罪してほしい。このようなおろかなこと(検定)を繰り返してはならない」と述べ、謝罪や記述の完全な回復を求めた。

 「市民の会」の阿部代表は、訂正申請の内容の公開や教科用図書検定調査審議会委員の選任を見直すよう求めた。

 一方、同時刻に文科省前で「市民の会」と「新しい歴史教科書をつくる会」が集会を開き、現場は一時、騒然とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041700_05.html

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