未来開け思い合流、5・15平和行進・県民大会 神奈川・米兵暴行、政府、豪女性に見舞金 沖国大ヘリ墜落、国に文書提示命令 など  沖縄タイムス関連記事・社説(5月18日から21日)

2008年5月18日(日) 朝刊 1・23面

基地爆音を糾弾怒りのこぶし/5・15平和行進 きょう合流

 【嘉手納】日本復帰三十六年目の現実を問う「5・15平和行進」(主催・同実行委員会)の参加者は十七日午後、北谷町の砂辺馬場公園で「嘉手納基地の機能強化、爆音被害に抗議する決起集会」を開いた。東西両コースを歩いた県内外の参加者が、日米地位協定の全面改定や米軍人による事件・事故の再発防止などを訴えた。

 主催者を代表して大浜敏夫沖教組委員長は「殺人訓練をする米兵が街を出歩くことは、子どもを預かる教職員として不安だ。日米の壁は厚いが、平和を築くために頑張ろう」とあいさつ。開催地の野国昌春北谷町長は、五月の連休初日にF15戦闘機が未明離陸したことを挙げ「この状況を全国に伝えてほしい」と軍事優先の現実を訴えた。

 読谷村役場から会場まで歩いた西コースの酒井幸久本土代表団長は「私たちにはゆるぎない団結がある。十八日の行進で、基地は要らないと声を上げよう」と話した。

 5・15平和行進は十八日、東コースが沖縄市の県企業局コザ庁舎、西コースが北谷町役場、南コースが浦添市役所を出発。午後三時から宜野湾海浜公園で行われる「平和とくらしを守る県民大会」に合流する。


     ◇     ◇     ◇     

平和アピール東西で連帯


 【北谷】北谷町の公園で十七日開かれた嘉手納基地の機能強化と爆音被害への抗議集会。「基地の街だと実感した」「平和な沖縄を残したい」。平和行進東西両コースの参加者約千三百人が集まり、平和への思いを共有した。

 友人から話を聞いて参加した森重明子さん(31)=山口県宇部市=は、過去の沖縄旅行では経験しなかった米軍機の騒音に驚いた。「騒音が毎日かと考えると深刻だと思う。同じ米軍基地を抱える県民として、平和を伝えたい」と話した。

 二歳の娘と歩いた消防職員、小渕努さん(30)=読谷村=は二度目の参加。「米軍絡みの事件・事故のニュースを耳にするたび、子どもたちに平和な沖縄を残したいという気持ちで歩いた」と振り返った。

 韓国から初来沖した金昌坤さん(43)は「米軍が起こす強盗や暴行事件など、韓国で基地を抱える地域と沖縄の悩みは同じ。平和を強く望む沖縄の人と連帯していきたい」と話した。

 毎年、参加者を出迎えている北谷町砂辺区老人クラブの与儀正仁会長(74)は「基地外居住の米兵の騒ぎや、米軍機の騒音など地元だけで訴えても解決できない問題が多い。県内外の若者が参加し、基地問題に理解を深めることはありがたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_03.html

 

2008年5月18日(日) 朝刊 22面

戦死の画学生ら濃密な関係描く/「無言館」窪島館主が講演

 戦没画学生の作品や資料を展示している「無言館」(長野県上田市)の窪島誠一郎館主が十七日、那覇市の県立博物館・美術館で講演し、同館をスタートさせるまでの経緯について説明。「学生たちは人と人の濃密なつながりを描いた。人は他者の命に向かって何かを伝えるために生きている」と強調した。

 県立博物館・美術館で同日開幕した沖縄タイムス社創刊六十周年企画「情熱と戦争の狭間で」(主催・文化の杜共同企業体、県立博物館・美術館、共催・沖縄タイムス社)の関連イベント。

 窪島館主は、戦争体験者で洋画家の野見山暁治さんと出会い、野見山さんとともに戦死した画学生の作品の所在を調べ、全国の遺族を訪ね歩いた経験を紹介した。

 その上で「画学生は『反戦平和』のためではなく、自らの愛する人を描いた。人の命は他の人によって支えられている」と強調。今回の展示で、画学生の作品と戦後沖縄の作家の作品が同時に展示されていることに触れ、「画学生の絵の真摯さに対し、戦後を生き延びた作家のつらさや大変さを感じた」と感想を述べた。

 同企画展は、十八日午前十一時―正午に教員対象の美術講座(要申し込み)、同午後一―二時に粟国久直さんのギャラリートーク(チケット入場者のみ)が行われる。企画展は六月二十九日まで。問い合わせは同館、電話098(941)8200。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_08.html

 

2008年5月18日(日) 朝刊 22面

アイヌ儀式で供養/糸満・南北の塔 戦死者に哀悼

 【糸満】沖縄戦に動員され戦死したアイヌ民族の日本兵らを追悼するアイヌの儀式「イチャルパ」が十七日、糸満市真栄平の南北の塔前の広場で行われた。北海道旭川市から参加した川村シンリツ・エオリパック・アイヌさん(川村アイヌ民族記念館長)ら県内外の五十人が、火の神に酒をささげ、アイヌの言葉でみ霊を慰めた。

 供養祭はアイヌ民族と連帯する沖縄の会(まよなかしんや代表)が主催。毎年、5・15平和活動の一環として行っており、今年で九回目。

 まよなかさんは「日本の先住民族であるアイヌと琉球民族が一緒になって、日本に住むすべての人々の権利が保障される社会をつくっていこう」と呼び掛けていた。

 川村さんは「アイヌの戦没者を沖縄の方々が祭っていただき大変ありがたい。これからも毎年、続けていきたい」と話していた。

 南北の塔は一九六六年、真栄平区とアイヌの元兵士らによって建立された。沖縄戦で亡くなった、北海道から沖縄までのすべての人々を祭っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805181300_09.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 1面

平和を切望 雲突く声 5・15平和行進・県民大会

 本土復帰三十六年「5・15平和行進」を締めくくる県民大会(主催・同実行委)が十八日、宜野湾市の宜野湾海浜公園屋外劇場で開かれ、米軍再編に伴う基地の拡大・強化に反対し、日米地位協定の抜本的改正を求めるアピールを採択した。約四千人(主催者発表)が参加した。平和行進は三日間の日程を終了。県外からの二千人を含む約七千人が米軍基地周辺や沖縄戦跡を巡り、県内と全国、海外の市民が連帯し平和を発信することを誓った。

 曇り空の下、大会には行進を終えた労組や平和団体関係者が集結。それぞれの旗や「基地の押し付けは許さない」などの横断幕を掲げ、熱気に包まれた。

 主催者を代表して崎山嗣幸沖縄平和運動センター議長が「軍事基地の島から脱却し平和の島にするために、大きな運動を前進させていきたい」とあいさつ。開催地の伊波洋一宜野湾市長は「沖縄から基地をなくし、全国への拡散を阻止することを誓い合いたい」と呼び掛けた。

 県選出国会議員や政党代表、県外、韓国の平和団体代表らが次々に登壇。県内や全国で相次ぐ米兵による事件・事故や、日米両政府の軍事・基地政策を強く批判し、教科書検定問題や憲法改正の動きなどに懸念を表明した。

 大会アピールでは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設や北部の基地機能強化、嘉手納基地や普天間飛行場の爆音などで「住民生活は破壊の危機に瀕しており、県民の怒りは頂点に達している」と指摘。基地の拡大強化を阻止し、日米地位協定の改正を強く求めることを確認した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_01.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 19面

未来開け思い合流/5・15県民大会

 米軍基地周辺を歩き、沖縄戦跡を巡った「5・15平和行進」。参加した七千人は、それぞれの立場で感じ、考え、意見を交わした。頻発する米兵の事件・事故、騒音などの基地被害に日常的にさらされている地域住民。県外や韓国から駆け付けた市民グループ。自衛隊のイラク派遣反対活動を続ける元自衛官。十八日の県民大会で、肩を組んで歌い、共にこぶしを突き上げ、平和を願う思いでつながった。

 米兵犯罪が相次ぐ沖縄市から参加した福山初子さん(61)は「タクシー強盗に暴行事件。復帰前と現状は変わっていない」と語気を強めた。一九七〇年、息子を身ごもっていた福山さんはコザ騒動を目の当たりにした。「おなかの子が大人になるころには平和になってほしい」と願ったが、米兵の犯罪はなくならない。「基地ある限り沖縄は平和にならない。行進の中で、県外の参加者とシュプレヒコールもやった。多くの人が理解を深めれば、基地問題はきっと解決できる」と期待した。

 宜野湾市職員、福本司さん(34)は七度目の参加。各地の参加者に普天間飛行場の基地被害を説明し、語り合った。「県外から多くの若者が参加していた。地元の若い人にも活動する意味を伝えていきたい」と話した。

 神奈川県から初参加した公務員の府川保さん(43)は「最初は、沖縄と米軍基地が融和しているように見えた」という。だが歩き続ける中で、錯覚だと気付いた。「基地が巨大過ぎて、感覚がまひしてしまう。でも、ここは日本なんだ、と思った瞬間、ぞっとした」

 神奈川でも基地の機能強化が進み、痛ましい事件も起こった。「沖縄と一緒に声を上げていく必要性を実感した」と力を込めた。

 韓国の社会派バンド「希望の歌コッタジ」。同国の平澤(ピョンテク)市でも、米軍再編による農地の強制接収や新基地建設が進む。メンバーのチョ・ソンイルさんは「政府は平和を維持する基地だというが、むしろ緊張を高め、権力を維持する道具になっている」と指摘。「今後も反基地闘争など闘いのあるところを訪れ、歌で激励したい」と笑顔で話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_02.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

「反復帰論」再構築を/「5・15」シンポ

 五月十五日の沖縄の本土復帰にちなみ、「沖縄・憲法・アジア」をテーマにしたシンポジウム「マーカラワジーガ?! 来たるべき自己決定権のために」(主催・5・18シンポジウム実行委員会)が十八日、県立博物館・美術館で開かれた。約五百五十人が参加、沖縄をとりまく現状や未来像についての各パネリストの話に耳を傾けた。

 第一部は「〈反復帰〉の思想資源と琉球共和社会/共和国憲法草案の意義」と題し、沖縄大学准教授・屋嘉比収さんが講演した。

 一九七〇年前後にジャーナリスト・新川明さんが提言した「反復帰論」や、八一年に詩人・川満信一さんが「新沖縄文学」で発表した「琉球共和社会憲法C私(試)案」を挙げ、「復帰後三十数年が経過し、住民の意識は変化したが、いまだに沖縄には日本の構造的差別がある。このような中で、いま一度、反復帰論を再構築し、次世代に接ぎ木していくことが必要だ」と強調した。

 続いて「沖縄・憲法・アジア―その政治展望」と題した第二部では、起訴休職中外務事務官の佐藤優さんが講演。沖縄独立の可能性や道州制について持論を展開した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_03.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

着陸帯移設地にノグチゲラ営巣/東村高江 中馬重夫さん撮影

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設が計画されている東村高江で、国の特別天然記念物ノグチゲラが営巣しているとみられる様子が確認された。十六日に中馬重夫さん(42)=本部町=が撮影した。

 中馬さんは「つがいのノグチゲラが追いかけっこをしていた。一日中ノグチゲラの声を聞くことができた。トンボやトカゲなどをたくさん見ることができる生き物の宝庫」と話した。

 沖縄防衛局は、ノグチゲラなど希少鳥類の繁殖期に当たるため、三月から六月までは工事を見合わせているが、測量作業などは行っている。

 ヘリパッドいらない住民の会の伊佐真次共同代表は「ヘリパッドが移設されれば、数が減っているヤンバルクイナやノグチゲラの絶滅が現実のものになってしまう。計画を白紙撤回すべきだ」と訴えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_08.html

 

2008年5月19日(月) 朝刊 18面

サンゴ再生へ思い込め 万座沖で固定作業

 サンゴ礁を再生しようと、県内外十三の企業でつくる「チーム美らサンゴ」が、今年一回目となるサンゴの植え付けを十八日、恩納村・万座ビーチの湾内で行った。

 恩納村漁協で育てたコエダミドリイシ、ヤッコミドリイシを、参加した県内外のダイバー三十五人が、一本ずつ海底の岩場にねじで固定。防護ネットをかぶせた。

 二回目の参加となる山中貴幸さん(33)=埼玉県=は「前回参加した後から、環境について関心を寄せるようになった。機会があれば、植え付けたサンゴを見に来たい」と笑顔を見せた。

 七月二十一日の「海の日」に、「チーム美らサンゴ」によるシンポジウムがある。年内のサンゴ植え付けは、六、九、十月にも行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805191300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月19日朝刊)

[裁判権放棄]

主権国家が取る行為か


 またしても日米で取り交わされた密約が明らかになった。いったい政府は、国民に説明できない秘密事項をどれだけ抱えているのだろうか。

 米公文書で分かったのは、一九五三年に米政府と合意した「重要な案件以外、日本側は裁判権を放棄する」という密約だ。

 言うまでもないが、裁判権は国家の主権に深くかかわってくる。それなのに、政府は米兵が起こす刑事事件に対し第一次裁判権を行使しないという約束を交わしたのだから、あきれてしまう。

 その密約ゆえか、五三年から五七年の約五年間に起こった約一万三千件の米兵関連事件で裁判権を放棄したのは97%、約一万二千六百件に上る。実際に裁判に付したのは約四百件しかない。

 わずか五年でこの数字だ。その後はどうなのか。想像しただけでも暗澹たる気分にさせられる。

 公文書からは復帰後の七四年七月に伊江島で発生した米兵の発砲事件についても明らかになっている。米側の要求で日本側が裁判権を放棄しており、そこには自国民さえ守れぬ政府の姿がある。

 復帰後もそうなのだから、復帰前は推し量るべきだ。

 日米安全保障条約に基づく地位協定の不平等関係をもたらした起点がそこにあるのである。

 政府は「裁判権の放棄はない」というがその説明に納得する国民はいない。真実はどうなのか。放棄した数はどれだけあるのか。政府はきちんと説明すべきだろう。

 腑に落ちない点はまだある。日本側が裁判権を行使しても、米側はその結果に対し「刑罰が軽くなっている」と見ていたことだ。

 絶対にあってはならないが、もし、米軍に配慮して司法が判決に手心を加えたとしたら、それこそ主権国家の名に恥じる行為で、司法当局も責任は免れまい。

 六〇年の安保条約改定前には米政府が密約を公にするよう求めているが、当時の岸信介首相は「外部に漏れたら恥ずべき事態になる」とし応じなかったという。

 恥ずかしいとの認識はあったようだ。それにしてもなぜことが明らかになっても政府は本当のことを言わないのだろうか。

 私たちは現状の地位協定では不平等感が残るだけで、基地所在地住民の不安と怒りは増すだけだと指摘してきた。

 裁判権だけでなく身柄拘束を含めた協定上の問題はあまりにも多過ぎるからだ。解決するには「運用改善」では無理であり、抜本的な見直ししかない。

 地位協定における政府の対応について国際問題研究家の新原昭治氏は「日本に第一次裁判権がある『公務外』の犯罪でも、日本側が放棄し、なるべく米側に譲る密約がある」と指摘。その中で政府は「国民に隠している文書や合意を表に出すべきだ」と述べている。

 沖縄返還交渉時の「沖縄密約」、有事の際の核持ち込みも公文書で分かっているのに、政府はいまだに「ない」としている。かたくなな姿勢を政府は改めるべきだ。

 嘘を積み重ねれば信頼は損なわれるだけである。そのことを政府は肝に銘じる必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080519.html#no_1

 

2008年5月20日(火) 朝刊 25面

政府、豪女性に見舞金/神奈川・米兵暴行

 【東京】二〇〇二年に神奈川県でオーストラリア人女性が米兵に暴行された事件で、防衛省が見舞金三百万円を女性に支払うことが十九日、分かった。米軍人による事件・事故で、日米間で見解が分かれるなどして被害者への補償が困難になった場合、日本政府が代わって救済する「見舞金制度」を活用するもので、数日内に支払われる見通し。

 米兵は不起訴処分となったが、その後、女性が損害賠償請求訴訟を提起。東京地裁は女性の訴えを認め、米兵に三百万円の支払いを命じたが、米兵は裁判中に帰国していた。

 日米地位協定(一八条六項c)は米兵に公務外で賠償義務が生じ、本人に支払い能力がない場合、米政府が支払うとしている。

 防衛省によると米国内の外国人請求法では、事件発生から二年以内に請求がなければ時効になると規定。民事判決が出た時点で、時効になっていたという。

 このため、同省は「地位協定で救済されない場合、国が救済を必要と認めた時に支給できる」との閣議決定(一九六四年)に基づき、女性に「見舞金」を支払うことを決めた。

 同省によると、二〇〇五年からの三年間で「見舞金」が支払われたのは九件(県内の三件含む)で、今回が十件目となる。

 女性は「米兵は私に謝罪しておらず、逃げたままだ。米兵も米軍も責任を持たず、日本で税金を払っている人の負担になるのはおかしい。米兵を日本に戻して責任を取らせるべきだ」と話した。


日本負担は問題


 新垣勉弁護士 日本政府が見舞金制度で全額補償することは評価できる。今回の事件の特殊性に基づくものでなく、一般的基準として運用されるか注目される。米側が全く負担せず、日本側が支払うことは問題。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_06.html

 

2008年5月20日(火) 朝刊 24面

ヘリの影響調査へ/地デジ障害

普天間で通信事務所

 【宜野湾】宜野湾市内の一部地域で、地上デジタル放送の受信に障害が発生している問題で、沖縄総合通信事務所は十九日、宜野湾市を訪れ担当課から事情を聴いた。受信障害が米軍普天間飛行場から離着陸する米軍機の訓練の影響とみられるため、海外に派遣されているヘリ部隊などの帰還が予測される二十一日以降、市内の複数地域に受信調査専用の車両を配置し、調査する。

 宜野湾市基地政策課は、二〇〇七年十一月から四件の苦情が市に寄せられていると説明した。

 同事務所の担当職員は、県外では受信の良好な地域から障害の生じている地域への共同ケーブルが整備されているとした上で、「普天間飛行場が原因なら、対策は防衛省の協力が必要。那覇防衛局と情報を共有していきたい」と話したという。

 沖縄防衛局は「地方自治体から要請があれば、具体的な状況を確認した上で法律に基づいて対応したい」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_07.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 29面

基地内労働の被害・支援者/パワハラ根絶へ会結成

 米軍基地で働く日本人従業員へのパワーハラスメントが相次いでいるとして、当事者や関係者は二十日、「基地労働者パワハラ被害者及び支援者の会」を結成した。同日までに従業員や支援者七十人が賛同している。設立の準備段階で、各職場で実施したアンケートでは、回収した六十三人のうち二十六人が「パワハラ被害を経験した」と回答。うち十一人が「自殺も考えた」とするなど深刻な実態も浮き彫りになった。

 同会では被害根絶のため、当事者と支援者が連携し、関係機関などへの訴えを強化していく方針だ。

 同日、北中城村内で開かれた結成総会では、パワハラ被害を受けたとして上司を提訴している元従業員の安村司さんを代表に選出。安村代表は「基地従業員の雇用主は沖縄防衛局だが、実際は米軍に雇われているのと同じだ。人事権を米軍が握っている以上、防衛局も労組も限界があり、多くの仲間が被害に遭っている」と指摘。「支援者の力を借り、苦しんでいる人を助けたい」とあいさつした。

 同会では、独自にアンケートを進めながら、防衛局のほか、全駐労、沖駐労の両組合などに徹底調査を求めていく。その上で、会員同士の連携強化で、基地従業員の労働環境の実態を明らかにし、相談窓口の設置など具体的な救済策を検討する。

 参加した男性は「上司から理不尽な命令を受け、事実無根の始末書にサインを強要された。人事部門に弁明書を出したが、(どちらの言い分が正しいか)判断するのは、命令を出した上司と説明され、精神疾患になった」と声を震わせた。別の男性も「身に覚えのないことで文書を作成され、数カ月の出勤停止を命じられた。声を上げることで社会問題として提起したい」と訴えた。


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63人中26人「経験」・11人「自殺考えた」

職場内調査


 「基地労働者パワハラ被害者及び支援者の会」が設立準備の一環で実施したアンケートでは、回収した六十三人中約四割の二十六人が被害経験があると回答。うち十人が現在も時々、または頻繁に受けていると答えた。回答者の約二割に当たる十一人がパワハラ被害で自殺を考えた、または実際に自殺未遂をしたと回答した。

 被害に遭い、過去に体調を崩した、または現在も崩していると答えた人も二十四人に上った。

 また職場で自分以外にパワハラを受けている人を知っているかとの問いには、二十五人が知っているとした。

 同会の安村司代表は「思っていた以上に、非常に深刻な状況だ。サンプル数は少ないが、公正を期すため各職種の各職場でランダムに調査した結果だ。これ以上被害者を増やさないために、職場の環境改善に向けて声を上げていきたい」と話した。

 アンケートは、同会設立の趣旨に賛同する従業員らが、この一週間で百数十人に配布。約百人から回答があったが、数十人分が会に届いておらず、手元にある六十三人分について、まとめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_01.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 1面

国に文書提示命令/沖国大ヘリ墜落

 二〇〇四年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落をめぐり、那覇市の長嶺哲さん(42)が国を相手に、日米両政府の協議内容を記した文書の公開を求めた訴訟の控訴審に絡み、福岡高裁(西理裁判長)は二十日までに、国側に文書の不開示部分を裁判所に提示するよう命じた。

 決定理由で同高裁は「文書を所持する国の任意の協力が得られない以上、(不開示部分を)裁判所が直接見分する術がなければ、一方当事者の国や諮問機関の意見に依拠してその是非を判断せざるを得ず、最終的な判断権を裁判所に委ねた制度の趣旨にもとること甚だしい」とした。

 〇六年十一月の一審福岡地裁判決は「米側の同意なく公表すれば、米国との信頼関係が損なわれると容易に予想される」などとして、国側の主張を踏襲する形で長嶺さんの公開請求を退けていた。

 NPO法人・情報公開クリアリングハウス(東京)の三木由希子理事は「外交・防衛に関する情報の非公開規定は、行政側に広く裁量が認められており、司法に公開を求めて争う場がありながら、裁判所は情報の中身を見ずに判断している。今回の決定は画期的な判断だ」と話している。

 外務省は「(裁判官が非公開で文書を見分するインカメラ審理は)情報公開法では認められていない手続きだと考えており、法務省とも相談して異議を申し立てたい」としている。


[ことば]


 沖国大ヘリ墜落事故 2004年8月、米海兵隊所属の大型輸送ヘリコプターが沖縄国際大(宜野湾市)に墜落、炎上し米兵3人が重軽傷を負った。学生や住民にけがはなかったが、ヘリの部品や壊れた校舎のコンクリート片が周辺民家などにも飛散した。原因調査や捜査をめぐっては米軍側が県警の現場検証を拒否するなど批判を呼んだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_02.html

 

2008年5月21日(水) 朝刊 28面

「集団自決」で創作劇/志真志小で来月上演

 宜野湾市立志真志小学校(喜納裕子校長)で、慰霊の日(六月二十三日)に向けた特設授業で上演する創作劇「ヒルサキツキミソウ」の準備が進められている。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をテーマにした物語で、日本軍の命令で、家族に手をかけざるを得なかった史実を、児童や教諭らが演じる。上演は六月二十日午前十時から同校体育館で。(平良吉弥)

 脚本を書いた同校の宮城淳教諭(55)は「『集団自決』で亡くなった人たちは、どんなに悔しくても、今はもう訴えることができない。犠牲者の気持ちになって演じることで、命や平和の大切さを感じてほしい」と話している。

 二十年以上前から沖縄戦や対馬丸についての物語を書いてきた宮城教諭。十作目となる今回は、高校歴史教科書から日本軍の強制を示す記述を削除した文部科学省の教科書検定問題を受け、創作を思い立った。

 「集団自決」のあった島から、犠牲となった三人の子どもの霊が宿る石を女子児童が持ち帰り、学校の給食室に隠したことからストーリーが展開する。

 米軍の艦砲射撃が始まり、日本軍から手りゅう弾が渡され、軍命で家族が命を絶つ直前の場面などを子どもやその両親の霊を通し、現代の子どもたちが「集団自決」の実相に触れる。

 いじめ、ドメスティックバイオレンス(DV)など現代の問題も取り上げ、命や人権の大切さも訴える。

 四年生から六年生までの児童二十二人や喜納校長をはじめ、教諭ら約十人が出演する。中城小学校音楽教諭の佐渡山安信さんが作曲した歌を約六百六十人の全児童と教職員が合唱し、保護者らに披露する。

 二十日に志真志小で行われた初げいこで宮城教諭は「集団自決」で首にけがを負った幼い少女の写真や沖縄戦の「集団自決」で亡くなったとみられる住民たちの写真を児童に示しながら、当時の状況を説明。「『集団自決』で一家全滅のケースもある。亡くなった人の気持ちになり、一生懸命練習しみんなに伝えましょう」と訴えた。

 六年生の平良佳大君(12)は「曾祖母が八歳の時に竹やりで訓練したり、一生懸命走って逃げた話を聞いた。命令さえなければたくさんの人が亡くならなかったと思う」と話した。

 五年生の高良利乃さん(10)も「戦争の話は怖いけど、せりふをきちんと覚えて上手に演技したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年5月21日朝刊)

[暴行事件見舞金]

「逃げ得」は許されない


 神奈川県で二〇〇二年、オーストラリア人女性が米兵に暴行された。女性は事件後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にさいなまれながらも、三月に北谷町で開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に参加し勇を鼓して演壇に上がった。

 「私は性犯罪の被害者。私は恥ずかしいことありません。私は悪くない」―被害女性の痛切な訴えは参加者の心を揺さぶった。

 事件から六年。性暴力の被害を受けたこの女性に対し、日本政府は三百万円の見舞金を支払うことを決めた。

 被害女性にようやく救済の手がさしのべられたことは歓迎すべきことである。ただ、どこか釈然としない。

 被害女性は「米兵は私に謝罪しておらず、逃げたままだ。米兵も米軍も責任を持たず、日本で税金を払っている人の負担になるのはおかしい」と語っているという。今回の決定を評価しつつ、それでもなお釈然としない感情が残るのは、被害女性が指摘した問題があるからだ。

 事件後、加害者の米兵が不起訴処分になったため、女性は損害賠償請求の民事訴訟を起こした。東京地裁は〇四年十一月、女性の訴えを認め、米兵に三百万円の支払いを命じた。

 だが、米兵は裁判中に帰国し、賠償金を支払っていない。

 米兵などによる公務外の事件・事故は、原則として加害者個人が賠償責任を負うことになっている。加害者が本国に逃げ帰り、賠償がうやむやになるケースが以前は目立って多かった。

 被害者救済のためには、賠償能力のない米兵や賠償金支払いに応じない米兵に代わって、日米両政府が責任を持って損害賠償に当たる仕組みが不可欠だ。そのような制度は現行の地位協定にもあることはある。

 公務外の不法行為に対して米軍は、日本側が作成した事件の報告書に基づいて被害者に慰謝料を支払うことになっている。この規定自体、恩恵的で不十分なものだが、今回は、民事裁判の判決が出た時点で米国内法(外国人請求法)の時効が成立していたという。

 このため、政府は一九六二年の総理府令に基づく見舞金制度を活用して被害女性を救済したというわけである。

 同制度は、補償金や慰謝料の額について日米双方の主張に隔たりがあったり、米兵の故意、過失などが立証できない場合に適用されるという。

 九五年の米兵による暴行事件を契機に地位協定問題が浮上し、日米両政府は、米兵による公務外の不法行為についていくつかの運用改善策を打ち出した。それによって被害者の不利益が大幅に改善されたのは間違いないが、まだ十分だとはいえない。

 被害者救済のために政府が、支払いのないまま「宙に浮いた慰謝料」の穴埋めをしたのはいいとしても、本来支払うべき加害者や米軍の賠償責任を結果として不問にしたのは腑に落ちない。

 制度の不備な点を洗い直し、再度改善に努めてもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080521.html#no_1