「(金武町)伊芸区、訓練中止を要求/レンジ4移設遅れ」沖縄タイムス、琉球新報社説「戦闘訓練施設 住民の安全軽視は許せない 」 (1月10日、11日)

2008年1月10日(木) 朝刊 1面

調査着手向け本格調整/普天間アセス

次回移設協合意見通し

 【東京】政府は九日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査の二月初めの着手に向け、県と本格調整に入った。仲井真弘多知事が同日、首相官邸で町村信孝官房長官、二橋正弘副長官と会談し、同調査について話し合う次回の普天間移設協議会の早期開催を確認した。同協議会で県は、政府が調査で求めているサンゴ類採捕などを許可するとみられる。

 県は調査前に、事業内容についての調査手法や予測評価などの再審査・公表を求めている。政府高官は同日、「防衛省にもっと詳しく説明するように言っている。そう難しい問題は残っていない」と指摘。アセス調査の着手については「次回協議会で合意できると思う。もうそんなに障害はない。お互いに進めようという姿勢になっている」との見通しを示した。

 次回協議会は、二十一日の知事意見提出後の今月下旬に開催する方向で調整。県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動についても意見が交わされる見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_03.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 2面

北部訓練場 北側3カ所建設合意

日米、ヘリパッド移設で

 【東京】日米両政府は九日の合同委員会で、米軍北部訓練場の返還に伴って移設されるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)六カ所のうち、未着工だった北側三カ所(国頭村)の建設に合意した。今後、業者との契約手続きを経て着工する。

 南側三カ所(国頭村、東村)について、日米は昨年三月に建設に合意し、七月に着工していた。防衛省は工期について「おおむね二年」としており、二〇〇九年七月ごろの完成を目指している。

 防衛省によると、ヘリパッドは六カ所ともそれぞれ直径四十五メートルの円形。両端に十五メートルの「無障害地帯」を整備するという。今回合意した北側の三カ所は、契約ベースで四億円を見積もっている。日米は、北部訓練場について日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、既存のヘリパッド移設を条件に、約三千九百八十七ヘクタールを部分返還することで合意している。

 防衛省は、米側へのヘリパッドの引き渡しは「六カ所すべてが完成後」としており、返還時期は〇九年七月以降となる見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_04.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 2面

伊芸区、訓練中止を要求/レンジ4移設遅れ

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設移設問題で、移設完了が二〇〇七年度末から〇九年度中ごろまでずれ込むことについて、同施設に隣接する伊芸区行政委員会は九日、沖縄防衛局から説明を受けた。移設終了まで暫定使用が続くとの説明に、委員らは「これ以上、訓練による被害を我慢しろというのか」と反発し、暫定使用の中止を求めた。

 防衛局の赤瀬正洋企画部長らは、工事のための訓練中止を米軍が拒否したことなどから工期が一年半ほど遅れると説明。「早朝や夜間訓練で住民が被害を受けないよう、米軍に配慮を申し入れる。工事に関して米軍から協力は得ているが、できる限り早期に移設できるよう、今後も努力したい」と、暫定使用の延長に理解を求めた。

 委員らは「住民は一日も早い訓練中止を求めている」「正月三が日にも夜間訓練をしていた。米軍が約束を守るとは思えない」などとして訓練の早期中止を求めた。

 区行政委員会の登川松栄議長は「区民は、いつどこから弾が飛んでくるか分からない状態で生活している」と訴え、町や町議会と協力し、同局などに訓練の即時中止と早期移設を求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_05.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 1面

軍強制明記へ11月再申請/執筆者ら活動継続

意見撤回求め声明

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科書会社の執筆者や編集者らでつくる「社会科教科書執筆者懇談会」は九日、都内で第四回会合を開き、検定意見の撤回と「日本軍の強制」記述の明記などを求める声明を発表し、活動を継続する方針で一致した。教科書に「軍強制」を明記するため九月にも会合を開き、十一月をめどに再度の訂正申請を目指す。

 今後は名称を社会科教科書懇談会に変更し、教育関係者や市民に広く門戸を開いて存続する。

 声明では、文部科学省が昨年十二月に承認した教科書会社六社の訂正申請について「軍の強制を認めず責任をあいまいにしており、執筆者として到底、納得できない」「検定意見撤回が重要であることがあらためて示された」などとした。

 声明には教科書検定制度の改善要望も盛り込み(1)教科書調査官、教科用図書検定調査審議会(検定審)委員の人選の透明化(2)検定審の審議公開―などを求めている。

 出席者からは「検定制度を段階的に廃止する必要がある」「検定審が記述を認めない場合、学術的根拠を口頭ではなく明文化するべきだ」などの声が挙がり、声明に反映させることにした。

 二〇〇六年度検定で「集団自決」の記述に検定意見が付された五社のうち、四社の執筆者、編集者ら十五人が参加した。

 懇談会は昨年九月の初会合以降、各社の訂正申請に向けた情報交換や認識共有の場として機能してきた。参加した複数の執筆者が訂正申請前に記者会見して記述の内容を明らかにするなど、検定審議の密室性に一石を投じる役割も果たした。

 懇談会呼び掛け人で歴史教育者協議会の石山久男委員長(実教出版執筆者)は会合終了後、「これまでの取り組みの経過をまとめ、今後の課題の方向性も見えた。懇談会の活動継続の足がかりになる」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月10日朝刊)

[防衛利権]

疑惑は晴れたといえるか

 前防衛次官汚職事件に絡み、「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事に対する参考人質疑が参院外交防衛委員会で行われた。同協会は防衛族議員らが理事を務める外務省所管の社団法人である。

 秋山氏をめぐっては、防衛商社「山田洋行」が米国メーカー二社の代理店契約を維持するため、秋山氏側に三十万ドル(約三千五百万円)を支払うと記載したり、防衛族議員を通じて米政府元高官に働き掛けたとする内部文書があることが分かっている。

 また、旧防衛庁が発注した毒ガス弾の処理調査事業で、下請けに入った山田洋行から一億円を受け取ったのではないかとの疑惑もある。

 質疑で秋山氏はいずれも全面否定した。だが、疑惑は晴れたといえるのかどうか。有力防衛族議員や元米国高官らとの深い親交をうかがわせる証言があり、防衛利権の「闇」を垣間見せることになったのではないか。

 秋山氏が顧問料として月約百万円を得ている米国企業の存在も浮かび上がった。同社の実態は不透明とされ、山田洋行側からコンサルタント料として送金を受けている。

 秋山氏は、山田洋行側が「アメリカの多岐にわたる人脈を持っているところに着目したのではないか」と説明したが、これは何を意味するのか。

 防衛装備品はミサイルや戦闘機をはじめとする兵器類など巨額に上る。「防衛機密」といわれれば価格が適正かどうか判断が難しい。

 取引には防衛商社が介在し、米メーカーの見積書を水増しして請求する実態が次々判明。兵器売り込みを図る防衛産業に巣くう構造的な問題といえるものだ。言うまでもなく、予算はすべて私たちの税金で賄われている。

 国の防衛政策は国民の支持なくしては成り立たないはずだ。防衛利権の「闇」を解明しない限り、防衛に対する国民の信頼は失われるばかりだろう。

 東京地検はすでに同協会を家宅捜索している。不正がないかどうか徹底的に解明してほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080110.html#no_2

 

琉球新報 社説

防衛利権疑惑 「政」の徹底的な解明を

 防衛商社「山田洋行」の不明朗な資金の流れの鍵を握るとみられる社団法人「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事が参院外交防衛委員会で参考人質疑を受けた。

 秋山氏は、山田洋行から米メーカーの代理権維持工作で資金提供を受けたのではないかなどの疑惑を全面否定した。

 ただ、秋山氏は関係するアドバック・インターナショナル・コーポレーションが山田洋行からコンサルタント料を受領していることや、久間章生元防衛相、額賀福志郎財務相との宴席は認めた。

 質問した各議員とも、報道の事実確認がほとんどで、新たな追及材料に乏しかった感は否めない。疑惑解明が進んだとは言い難い。

 巨額の防衛利権は国防機密という厚いベールに包まれている。前防衛次官の逮捕以降、利権に政治家が群がり、甘い汁を吸っているとの国民の疑念、不信はさらに強まっている。

 大物防衛次官と防衛商社元専務の逮捕で「官」と「業」の疑惑は徐々に解明されつつある。だが、「政」の実態を暴かなければ、防衛利権の全容解明にはならない。

 山田洋行をめぐる事件を全面解決しなければ、“闇”はさらに深まる可能性がある。

 秋山氏については、東京地検が山田洋行から交流協会側に1億円を提供した疑いがある問題で、協会周辺に対する専従捜査班を設置している。

 日米の防衛産業関係の人脈が広く、政官界とのパイプ役とされる秋山氏や、場合によっては疑惑を持たれた政治家に、国会としてもさらに事情を聴く機会を設け、疑惑を徹底解明する必要がある。

 日米平和・文化交流協会は、定款では米国との文化交流に関するセミナー開催や調査研究などを事業としている。しかし、防衛庁(当時)発注の旧日本軍毒ガス弾処理事業の調査業務を行うなど、定款外の事業を行っていた。

 多くの国民は、防衛族議員らが理事を務める交流協会の役割に疑念の目を向けている。「政」につながる疑惑解明の機会を逃してはならない。

(1/10 9:36)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30370-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

戦闘訓練施設 住民の安全軽視は許せない

 金武町のキャンプ・ハンセン内レンジ4の米陸軍都市型戦闘訓練施設の暫定使用が予定より約1年半近くも大幅に延び、2009年10月ごろまで続くことが分かった。

 国は、現訓練施設は「早ければ」ことし3月までに移転すると地元に説明していたが、実際はその倍近くである。

 「早ければ」の前提付きだったかどうかの問題ではない。地元は3月で移転が完了すると受け止めていたのである。国は地元との約束をほごにしたと言わざるを得ない。

 訓練施設は民間地からより遠く離れたレンジ16付近に移設されることになっている。

 それに伴って工事されるA、B、Cの3地区のうち、B、C地区での訓練停止を米軍が拒否したことで、工事が遅れていることが暫定使用延長の理由である。

 今回、あらためてはっきりしたことは、米軍は訓練を優先し、日本政府は結果的にそれを追認するということである。

 そこには最も肝心な「住民の安全」への視点が欠けている。住民の安全軽視は許されない。

 そもそも、戦闘訓練施設の移設で日米両政府が合意したのは、住民への危険を除去する必要があることを認めたからではなかったか。

 地元から「米軍と外務省などが協議し、自分たちで示した方針を守らないのか」との怒りの声が上がるのも当然である。

 現施設は最も近い民家から約300メートルしか離れていない。ところが、使用されるM24ライフルは有効射程が約1100メートルあり、民間地への流弾被害が懸念される状況にある。

 住民に危険を及ぼす恐れのある訓練施設を放置してはならない。その基本に立てば、本来なら即座に使用を停止し、施設を撤去するのが筋である。

 それが無理ならば、次善の策として訓練施設をスムーズに移設させることが日米両政府の責務である。

 現状では、米軍の訓練優先に歯止めをかけるのは国しかない。しかし、政府にはその姿勢がうかがえない。

 防衛省は「3地区での訓練中止を米側と合意していたわけではない」としている。米軍が訓練停止に応じなければ、暫定使用は長期化することは当初から分かっていたはずである。

 政府はその事実を1年近く隠していた、と言われても仕方ないだろう。「調整や協議を継続中だった」との説明で、納得できるものではない。

 暫定使用が4年近くも続くことは、それだけ住民が危険にさらされる期間が長くなるということである。国は国民の安全を守る義務を果たしたと言えるだろうか。

(1/10 9:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30371-storytopic-11.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 1面

F15、14日飛行再開/残り16機は分析中

嘉手納基地の39機

 米空軍嘉手納基地報道部は十日午前、米本国での墜落事故をきっかけに機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の欠陥が判明し、飛行停止措置が取られている同基地所属のF15戦闘機の飛行訓練を十四日から再開する、と発表した。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。同報道部によると、世界規模の一斉点検の結果、事故機以外に計九機でロンジロンの亀裂を確認。うち二機が嘉手納基地所属機だった。また、点検した米空軍全体のF15の約40%でロンジロンの厚みが不足し、不適合とみなされていたことも判明した。

 同報道部によると、同基地所属機は三十九機が飛行可能で、残り十六機については米本国でロンジロンの厚さの測定データを分析中。分析の完了には約四週間かかる見込みで、その後に追加検査や修理を検討するという。

 同基地のブレット・ウィリアムズ司令官は十日、「検査の結果、安全に任務を達成し、日本を守ることができると確信している」とのコメントを発表した。

 米空軍は訓練に復帰するF15は空軍が保有する全体の60%で、訓練内容も限定的としているが、詳細は明らかにしていない。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。

 事故を受け、米空軍は同四日以降、同型機全機の飛行を停止。同二十一日にはいったん解除し、嘉手納基地所属のF15戦闘機は同二十六日から点検を終えた機が順次飛行を再開した。

 しかし、事故原因とみられるロンジロンの亀裂が事故機以外で確認され、同二十八日に飛行を再停止。米空軍は相次ぐ欠陥機の報告を受け、「これまで点検を行った個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性を示している」として、三回目となる米空軍のF15A、B、C、D型機の飛行停止措置を昨年十二月三日に決定。新たな点検作業を義務付けていた。

 嘉手納基地のF15はC型が大半でD型は数機。同基地では今月上旬から、点検を終えたとみられるF15が滑走路上を移動(タキシング)する準備訓練が行われていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_01.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 5面

ぬぐえぬ不信 地元怒り/F15飛行再開

 【中部】「構造的欠陥がなくなったと言えるのか」。十四日からの飛行再開が決まった嘉手納基地のF15戦闘機。昨年十一月の米本国での墜落事故以降、「人間でいうと、背骨が折れるようなもの」(航空評論家)という重大な欠陥が見つかった。飛行再開で騒音増加も懸念され、同基地を抱える地元自治体の首長は「危険な戦闘機の飛行中止を求める」と強く反発した。

 嘉手納基地では十日午前十時五十分ごろ、F15戦闘機が駐機場から滑走路に向け移動した。同基地では数日前から、整備要員を含め、飛行再開に向けた訓練とみられる動きが確認されている。

 宮城篤実嘉手納町長は「どのような整備点検が行われたのか分からない中では、安全性が確認されたことにはならない」と指摘。十一日に同基地司令官からF15に関する説明を受けることになっており、その席で「司令官に町民の不安を直接訴えたい」と述べた。

 北谷町の野国昌春町長は「縦通材に亀裂が見つかった経緯がある。どんなに整備をしても構造的欠陥はなくならないのではないか」と懸念。「住民の負担を増加させる飛行再開は容認できない」と強く反対した。

 東門美津子沖縄市長は「F15は今後も墜落の可能性をはらんでいる。構造的欠陥のある同機の安全性はいかなる点検をしたにせよ、市民の不安がぬぐい去れるものではない」と米軍を批判。「引き続き飛行中止と即時撤去を求める」と強調した。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は十日午後、幹事会を開き対応を協議する。嘉手納、北谷の両町議会も同日、基地対策特別委員会を開き、対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_02.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 5面

平和祈り元学徒と交流/元衛生兵・小木曽さん

 沖縄戦時に衛生兵だった小木曽郁男さん(88)=神奈川県=が九日、糸満市の糸洲の壕(ウッカーガマ)で、当時看護隊だった私立積徳高等女学校の元学徒らと那覇市の沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザで再会した。

 当時、壕内にいた衛生兵で存命しているのは小木曽さんただ一人。戦後も、壕内で自決した隊長の遺骨を収集するなど交流を続けており、「久々に会えてうれしい」と喜んだ。

 小木曽さんと元学徒らは、豊見城城址内の旧日本軍第二四師団第二野戦病院に所属。沖縄戦が終わるまで、行動を共にした。壕内で自決した隊長の遺体を埋めた小木曽さん。「暗黒の洞穴にずっと葬っておくわけにはいかない」と、戦後二十五年目に元学徒らと遺骨を収集した。

 悲惨な体験から六十年余り。当時の様子を涙ながらに語る小木曽さんに、仲里ハルさん(81)ら元学徒も目頭を押さえた。

 病室勤務だった田崎芳子さん(80)は「小木曽さんと再会できることは何ともいえない喜び。生きる素晴らしさを実感している」と語った。

 小木曽さんは、来県するたびに糸満市糸洲の壕を訪れる。「無念の思いで亡くなった仲間のためにもう一度入りたかった」と今回は七日から子や孫ら五人と自身が戦中過ごした壕を訪れた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_06.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 2面

三連協、撤去要求を決定/F15飛行再開

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開することを受け、同基地周辺の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十日、嘉手納町役場で幹事会を開き、飛行再開の中止、同機の撤去を求めて抗議する方針を決めた。

 三連協のメンバーは、十一日午前に嘉手納基地内でF15の点検状況や飛行再開について、同基地から説明を受けることになっており、その際に抗議する予定という。

 三連協幹事会によると、抗議ではF15の安全性について、住民の不安が払拭されていないことや墜落事故再発の懸念を指摘。飛行再開は容認できないなどとして、F15の即時撤去を訴える。

 F15は昨年十一月に米本国で墜落。事故原因調査の過程で、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の欠陥が判明した。

 嘉手納基地のF15は昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶりの飛行再開となる。同基地によると、所属機のうち、三十九機が飛行可能で、残り十六機については、米本国でロンジロンの厚さの測定データを分析中という。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_02.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 1面

検定撤回を再度否定/教科書問題

文科省審議官「今後は内容即し判断」

 【東京】文部科学省の布村幸彦大臣官房審議官は十日の参院内閣委員会で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した二〇〇六年度教科書検定の検定意見を撤回する考えがないことをあらためて強調した。糸数慶子氏(無所属)への答弁。

 布村審議官は、教科用図書検定調査審議会(検定審)が昨年、教科書会社六社からの訂正申請を審議する際の指針として取りまとめた「基本的とらえ方」について「検定意見と齟齬を来すものではなく、検定意見を変更したりするものではない」と述べ、検定意見の事実上の撤回にも当たらないとの認識を示した。「検定意見が今後も生き続けるのか」との質問には「今後の検定で、どのような検定意見を付すかは、その時点で具体的な記述内容に即して判断される」と述べるにとどめた。

 糸数氏は「渡海紀三朗文部科学相は談話を出したが、記述改ざんの再発防止措置に触れておらず、文科省・政府の沖縄戦に対する理解に問題がある」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_04.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 29面

危険と収入 業界ジレンマ/米兵・タクシー強盗致傷

 七日未明、沖縄市美原の住宅街で発生した米兵二人によるタクシー強盗致傷事件。被害に遭った運転手の男性(59)は当日、基地内を出入りする「ベースタクシー」として運行していた。米兵を客とする業務に日々不安を感じる運転手も少なくないという。しかし、確実な収入が見込めるとあって、タクシー業界は、危険と隣り合わせの状況でも運行せざるを得ないジレンマに悩まされている。(中部支社・銘苅一哲、吉川毅)

 男性は頭などに全治一週間のけがを負い、休職を余儀なくされ、心にも深い傷を負った。米軍関係者は十日午後、会社を訪れ男性に直接謝罪し、見舞いを手渡したという。

 しかし、夫を傷つけられた妻は「事件以降、本人も私も精神的に疲れています。今はそっとしておいてほしい」とやつれた表情で話した。

 沖縄署によると、同署管内では昨年、米軍構成員の犯罪が四十件発生した。月に数回発生する事件は窃盗や傷害の割合が多く、中でも、常に現金を持ち、客と密室になるタクシーの運転手が被害者になるケースは少なくないという。

 「今もあの恐怖が夢に出てくる」。二〇〇六年一月七日、北谷町の在沖米海兵隊キャンプ瑞慶覧内の路上で発生した米兵によるタクシー強盗事件。被害者の男性乗務員(64)は、首にナイフを突き付けられた感触が今も忘れられないと話す。

 「今回の事件は、私が被害に遭った二年前とちょうど同じ日に起きた。新聞報道を見て自分の事件を思い出し、震えが止まらなかった」

 男性は乗務員歴三十年。今でもタクシーを走らせ、日々不安を感じながらも後部座席に米兵を乗せている。

 「行き先があいまいで何度も行き先を変更する、人気がない暗い場所で急に停車を求める米兵は要注意だ。事件後も何度か身に危険を感じたことがあるが、私にはタクシーの仕事しかできないし、生活のためには辞められない」と話す。

 今回被害に遭った運転手が勤務するタクシー会社は、入札で米軍に入域料を払い、入域証明書を受けた「ベースタクシー」として基地内に出入りできる。

 基地内での運行は、一九九〇年ごろから月額約三千―五千円の入域料を支払う制度に変更された。

 二〇〇四年に入札制度が実施され入域料は数万円に高騰しているが、ベースタクシーの一台当たりの売り上げは県内業界で常に上位。認可台数はキャンプごとに十数台から数百台と決められている。

 ベースタクシーを運行するある会社の関係者は「小さな会社ではベースタクシーの恩恵は大きい。同業者が米兵絡みの事件に巻き込まれるたびに怒りが込み上げるが、米軍を批判すると次の入札が不利になるのではないか」とジレンマに複雑な表情を浮かべた。

 一方、米兵相手に営業していた別の会社は、数年前に乗務員が強盗被害に遭い、ベースタクシーをやめた。

 同会社の運行管理者は「事件の多くは米兵絡み。売り上げを伸ばすよりも、優先するのは乗務員の安全だ」と話した。


到底許せぬ/タクシー協が抗議


 沖縄市で起きた在沖米海兵隊員によるタクシー強盗致傷事件で、県ハイヤー・タクシー協会の伊集盛先会長、被害者の勤務先の社長らは十日、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対して米軍への抗議を申し入れた。「悪質な事件の続発は到底許せない。厳正な処罰、再発防止を求める」とした。

 伊集会長は「一歩間違えれば生命にかかわる事件。運転手はもとより、その家族も心配している」と指摘した。防衛局の鎌田昭良局長は「極めて悪質。四軍調整官にも直接申し入れた」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月11日朝刊)

[F15飛行再開]

不安は解消されていない

 米国での墜落事故で機体構造に欠陥があることが分かり、検査のため飛行停止になっていた米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開する。

 限定的な飛行を除くと約二カ月ぶりの再開だ。米空軍は「検査の結果、安全に任務を達成できる」としているが、基地周辺の自治体、住民は「構造的欠陥がなくなったと言えるのか」と事故の再発などに不安を募らせる。

 飛行再開によって基地の騒音激化も懸念されている。安全に関する情報開示が不十分なまま、負担を強いる飛行再開は納得できない。

 昨年十一月二日に起きた米ミズーリ州でのF15墜落事故を受け、米空軍は

詳細な整備点検を実施した結果、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の亀裂という構造上の欠陥が明らかになった。

 嘉手納基地報道部によると、世界規模の一斉検査によって事故機以外に九機に縦通材の亀裂を確認し、うち二機が同基地所属だったという。

 同基地所属のF15は五十五機だが、三十九機は飛行可能で、残り十六機は米本国で縦通材の厚さを分析しているという。結果によっては、欠陥機が増える可能性がないとは言えない。

 看過できないのは、点検した米空軍全体のF15の約40%で縦通材の厚みが不適合とみなされていたことだ。言い換えれば、事故発生前まで四割の「欠陥機」が世界中を飛行していたことになる。重大な事故がなかったこと自体が不思議なくらいだ。

 米空軍は、これまで事故原因を確定できない段階で飛行再開するという決定をしてきた。今回も、詳細な事故原因、安全対策を公表しないまま飛行再開を強行しようとしている。住民感情を顧みない、訓練優先の米軍の姿勢であり、住民が憤るのは当然であろう。

 米空軍は住民の安全を最優先するという考えに立つべきだ。政府も地元の反発を考慮して、米空軍に強い姿勢で臨むべきである。安全確保に疑問が残るF15の飛行再開は許されない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080111.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月11日朝刊)

[テロ新法再議決]

消化不良の論戦の末に

 臨時国会最大の焦点である新テロ対策特別措置法案は、きょうの参院本会議で否決され、このあと衆院本会議で与党の三分の二以上の賛成で再可決、成立する見通しである。

 異例ずくめの展開だった。

 衆院で与党が、参院で野党が、それぞれ過半数を占めるという「ねじれ現象」の下で、与党も野党も確たる展望が持てないまま、五里霧中の状態で国会を運営してきた。

 与党は昨年十一月一日で失効したテロ対策特別措置法に代わり対テロ新法を国会に提出。会期を再延長して法案の成立を目指した。

 民主党はアフガニスタンの民生支援を柱にしたアフガニスタン復興支援特別措置法案を対案として国会に提出。政府案と民主党案が国会審議のまな板に上った。

 私たちが今国会に期待したのは、「テロとの戦い」に関する骨太の議論である。

 イラク戦争について米国では、「あれは間違いだった」との見方が急速に広がっている。そのような意見が今や主流になりつつある。

 世界保健機関(WHO)によると、二〇〇三年三月のイラク戦争開戦から約三年間で、米軍の攻撃や自爆テロ、宗派対立などで死亡したイラク人は推計で十五万一千人に上るという。

 アフガニスタンではタリバンが再び勢力を拡大させ、テロ行為が後を絶たない。

 「テロとの戦い」とはそもそも何か。軍事力に頼ってテロをなくすことはどれだけ有効なのか。現状を踏まえて日本が今後、国際社会で果たすべき役割は何なのか。ねじれ国会の下での法案審議は、9・11テロ後の「テロとの戦い」について根本から問い直し、議論する絶好の機会だった。

 だが、国会は解散・総選挙をにらんだ与野党の駆け引きが目立ち、後世に残るような論戦が展開されたとは言い難い。

 「憲法の規定に従って粛々と再議決すればいい」という与党の主張は、理屈としては理解できるにしても、やはり問題があるといわざるを得ない。

 対テロ新法に対しては国民世論が真っ二つに割れている。直近の民意が衆院ではなく参院にあることを考えればなおさらのこと、衆院での再議決には慎重であるべきだ。

 民主党も民主党だ。同党の政府案に対する対応の混乱や独自法案取りまとめ段階の混乱は、政権担当能力を疑わせるものだった。

 消化不良のまま再議決を迎えるのは残念というほかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080111.html#no_1

 

2008年1月11日(金) 夕刊 1面

亀裂のF15は更新機

 嘉手納基地第一八整備群司令官のジョン・ハリス大佐らは十一日、ロンジロン(縦通材)に亀裂の見つかった同基地所属のF15二機は、いずれも同基地が二年前から実施している古い機体の更新計画によって配備された機体だったことを明らかにした。二機ともにC型機で、操縦席後方のロンジロンのつなぎ目付近で一カ所ずつ亀裂が確認された。

 また、同基地所属機でロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していない機体は計十七機(亀裂を確認した二機を含む)に上ると説明した。

 亀裂の見つかった二機のうち一機は一九八一年製造でラングレー基地(バージニア州)、もう一機は八五年製造でエレメンドルフ基地(アラスカ州)から配備された。

 同基地は十日に十六機がデータ分析中と発表したが、さらに一機でロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないことが判明したため、十七機をデータ分析(二―四週間)に回している、という。

 ロンジロンの厚さが仕様書と合致していない原因について、ハリス大佐は「製造元の責任」との見方を示した。

 同基地によると、嘉手納基地の計五十七機のF15のうち、十一日までに五十六機の点検が終了。一機は別の検査と重なったため遅れており、全機の点検終了は三月までかかる見通しだという。

 一方、飛行停止のきっかけとなった昨年十一月二日の米国ミズーリ州で発生した墜落事故について、米空軍は十一日までに、右側の上部ロンジロンが仕様書と合致していなかったため亀裂が生じたことが原因―とする事故調査委員会の報告書を発表した。


78―85年製機に問題

米空軍HP製造上の欠陥と発表


 【嘉手納】米空軍は十日(現地時間)、米ミズーリ州での墜落事故をきっかけに飛行停止措置がとられているF15戦闘機について、胴体と操縦席をつなぐロンジロンで製造上の欠陥が見つかったことを公式ホームページ(HP)で発表した。一九七八―八五年製造の機体に問題があったとしている。

 米空軍によると、操縦席を胴体に固定する四本のロンジロンのうち一本で製造上の欠陥が見つかった。米ミズーリ州で昨年十一月に発生した墜落事故では、ロンジロンに7G(通常の七倍の重力加速度)の負荷がかかり操縦席から分離。他三本のロンジロンも分離したという。飛行停止期間中にF15全機を検査した結果、事故機以外の九機で縦通材に同様な亀裂が見つかった。

 七八―八五年に製造したF15のうちA、B、C、D型機に製造上の欠陥が見つかったと指摘。亀裂の見つかった九機のうち数機は、修理経費の問題から次会計年度以降、使用しないという。

 太平洋空軍が所有するF15の98%が検査を終え、65%は訓練に復帰できるとも発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111700_01.html

 

2008年1月11日(金) 夕刊 7面

地元3市町が抗議/F15飛行再開

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開することを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十一日、同基地内で所属機の点検状況や再開の経緯の説明を受けた。宮城篤実嘉手納町長によると、機体の構造を支えるロンジロン(縦通材)に亀裂が見つかった二機は同基地で部品を交換するという。三連協は「住民の不安は払拭されていない」などとして、飛行再開の中止と同機の撤去を求め、抗議した。

 三連協は「構造的欠陥を有するF15の安全性はいかなる点検にせよ確保されるものではない」と指摘。「飛行再開により、嘉手納基地周辺での墜落事故が懸念され、周辺住民の不安は計り知れず、断じて容認できない」などとする抗議文を同基地のジョン・ハッチソン広報局長に手渡した。

 宮城町長によると、同広報局長は「安全という確認ができている」と述べ、飛行再開の方針をあらためて示した。

 機体の点検状況については、第一八整備群のジョン・ハリス大佐らが説明。ロンジロンに亀裂が見つかった二機は部品を取り換えるなどと説明したが、飛行再開や修理の時期については明言しなかったという。

 宮城町長は七日から同基地で行われている即応訓練についても中止を求めた。


嘉手納議会 反対決議へ


 【嘉手納】F15戦闘機の飛行再開を受け、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十一日午前、基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、十七日の臨時議会で同機の飛行再開中止と即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を提出することを決めた。

 米軍は同基地所属のF15は三十九機が飛行可能で、残り十六機は機体構造のデータを計測中としているが、委員からは「飛行再開する三十九機の点検は地上で行ったもので、実際に飛行した場合にトラブルが発生するのではないか」「再開しない約四割は欠陥が残っている可能性がある」などと不安を残したままの飛行に反対する意見が相次いだ。

 また、同基地で実施されている即応訓練についても、「昨年十一月の即応訓練の際にも米軍へ抗議したが、改善がみられない」とし、訓練とそれに伴う外来機の飛行を中止する抗議決議、意見書両案の提案を決めた。

 北谷町議会(宮里友常議長)でも十一日午後、基地対策委員会を開き対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111700_02.html

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