「嘉手納基地 燃料流出か/排水溝内に発電機落下 」沖縄タイムス、琉球新報(1月16日から19日)

2008年1月16日(水) 朝刊 1・22面

「集団自決は村の独断」/防衛研 公開資料に所見

問題なしと削除せず/軍命ねつ造と断定も

 【東京】慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が所蔵資料に「戦隊長命令はなかった」と見解を付けて公開していた問題で、別の複数の資料にも「集団自決は村役場の独断」として、軍命を否定する「所見」などを付していたことが十五日、分かった。復帰前に琉球政府立法院議員が戦隊長命令があったと書いた著書を掲載した報道資料には、資料評価の「参考」として「事実をねつ造している」と断定している。どちらも一般公開されており、識者は「極めて重大な問題だ」と批判している。

 同研究所は「役場の独断」とした所見は「資料内容の要約を記述したもので、事実関係を評価したものではない」(図書館史料室の廣瀬琢磨室長)として、削除しない考え。「事実のねつ造」とした「参考」は「資料を確認していないのでコメントできない」(同)としている。

 今回、判明した資料は(1)「渡嘉敷島及び座間味島における集団自決の真相」(2)「『島民』の集団自決は軍命令だった」―の二点。

 「渡嘉敷―」は(1)沖縄戦時に渡嘉敷村駐在所巡査だった比嘉喜順氏が「軍命でなければ赤松(嘉次)隊長の命令でもございません」などと記した手紙(2)座間味島に駐屯した海上挺進第一戦隊の梅沢裕戦隊長が「助役の命令が飛び、各所で惨劇(集団自決)が始まった」として、戦隊長命令は補償金のために遺族が考えたとの趣旨を書いた手記―を一冊にまとめた。

 この資料に永江太郎調査員が二〇〇〇年十月十八日付で「両島の事件が村役場の独断であり、戦後補償のために軍命令とした経緯に関する当事者の貴重な証言」とする「所見」を添付。林吉永戦史部長の印鑑もある。

 廣瀬室長は「あくまで記述者個人の見解であり、戦史部や防衛省の見解ではない」としている。

 「『島民』―」は(1)琉球政府立法院議員だった山川泰邦氏が戦隊長命令を明記した著書を掲載した「週刊読売」(一九六九年八月十五日)(2)直接の戦隊長命令は確認できていないとする、作家・曽野綾子氏の著書「ある神話の背景」の連載(第六回)を掲載した雑誌「諸君」(七二年三月号)―の記事を複製した。

 戦史室編さん官の川田久四郎氏が七二年八月二十二日に作成。「資料評価上参考となる事項」として「読売」には「早く言えば軍誹謗の記事。ねつ造」、「諸君」には「正確でこれが真相であろう」と指摘している。

 一方、防衛研究所は、すでに判明していた手記の見解は「不適切」だとして、七日に削除した。


一面的な見方を公開資料に添付


 日本軍の戦争責任に詳しい林博史・関東学院大教授の話 明らかになった資料をセットで考えると、防衛研究所が一九七〇年代の非常に早い段階から「軍命はねつ造である」という見解を持ち、現在に至るまで一貫していることが分かる。非常に一面的な沖縄戦の見方を一般公開している資料に添付しているのも、資料保存の方法として問題が大きい。


     ◇     ◇     ◇     

文科副大臣、検定撤回を困難視


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)は十五日午後、文部科学省に池坊保子副大臣を訪ね、「『集団自決』への日本軍による強制」の教科書への明記や検定意見撤回を引き続き要請した。要請に対し、池坊副大臣は「これまで誠実に県民の方々の気持ちに対応してきた」と、再要請に応じるのは困難との見方を示した。

 要請で仲里委員長は、「検定意見の撤回は絶対に譲れない。撤回に向けて今後も取り組み続ける」と粘り強く求め続けていく考えを強調した。

 しかし、池坊副大臣は「(記述の修正で)文言も増えているし、百二十点だ」と評価。その上で「常識的に考えても再度このようなことはないものだと自分は確信する」と述べたが、「軍の強制」に関する記述復活については明言は避けた。

 仲里委員長は「家永裁判、今回の教科書検定問題と、十年越しにこういうことが起こっているので、『ああそうですか』と受けるわけにはいかない」と再発防止の担保も求めたが、明確な回答はなかった。

 要請後、仲里委員長は今後の対応について「持ち帰って実行委員会で協議したい」と述べた。要請には玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会長、小渡ハル子・県婦人連合会長らも同行した。


五ノ日の会 検定撤回再び難色


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、県民大会実行委員会の構成団体のうちの六団体の代表が十五日午後、衆院議員会館で、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」と面談し、問題の解決に理解を求めた。五ノ日の会は、検定意見の撤回に向けた協調には難色を示す一方で、相互が意思疎通を図り、問題解決の道筋を探る必要性を指摘し、代表側も了承した。

 六団体を代表して要請したのは、県婦人連合会の小渡ハル子会長と、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長。両会長は同問題の経緯を説明した上で、「文部科学省の検定意見はまだ撤回されていない」として、国会議員らの強い働き掛けを求めた。

 五ノ日の会会長の仲村正治衆院議員は「われわれは実行委員会と行動を共にし、政府への要望や国会の委員会でも強く要求してきた。(文科省の結論は)県民の八、九割の希望に応えていると判断し、われわれも評価した」などと述べ、検定意見の撤回に向けた協調体制の確立には難色を示した。

 一方で、複数の議員は、団体側が記者会見を開き、五ノ日の会の対応を批判していることに触れ、「話し合いの場はいつでも持つ。一方的に批判すれば感情的になる。今後も相談してほしい」と相互が綿密に意見交換する必要性を説いた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_01.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 23面

国に根強い軍命否定論/氷山の一角か

沖縄戦で起きた「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛研究所が所蔵する複数の資料に戦隊長命令を断定的に否定する見解が付されていることが明らかになった。中には復帰直後の時期に「(戦隊長命令は)事実のねつ造」と強いトーンで書かれたものもあり、三十五年以上前から政府・防衛庁(当時)内に「軍命否定論」が根強く存在していることがうかがえ、問題の底流にあると言えそうだ。

 防研には約十五万冊の戦史が保管されており、これまで判明した部分は「氷山の一角」の可能性が高い。図書館史料室は「すべての資料をチェックするのは不可能だ」と認めており、利用者に予断を与える見解がさらに多くの資料に付されているとみられる。

 今回、問題になったのは、資料を作成した担当者が入手の経緯や日付、出典などを記す「経歴表」の内容だ。

 本来は閲覧する研究者などの参考になるよう、資料保存の価値判断を示す目的で付されているが、「早く言えば軍誹謗の記事」など、明らかに事実関係の評価と受け止められる記載がある。

 防研側は「記述者個人の見解」「利用者の大半は専門家で予断は持たない」などと強調するが、一般の利用者からすれば、組織的に認められたものだと判断する危険性は高い。資料を広く一般公開している以上、「普通の市民」の目線で収集、保存に当たる必要があるのではないか。

 「集団自決」のように事実関係の評価が専門家の間でも分かれている事案であれば、なおさら慎重な判断が求められる。

 閲覧者向けの必要最低限のデータを提供し、歴史認識は利用者(国民)の判断に委ねるという、基本原則を徹底する必要がある。(東京支社・吉田央)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_02.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 1・23面

嘉手納基地 燃料流出か/排水溝内に発電機落下

 【中部】米空軍嘉手納基地内のF15戦闘機駐機場近くで、航空機用の発電機が排水溝内に倒れて破損し、タンクから最大六十五ガロン(二百四十リットル)のディーゼル燃料が基地外へ流出した可能性のあることが十五日、分かった。同基地の流出確認から一日半が経過した同日午後、沖縄防衛局を通じて県や周辺自治体へ「周辺環境への影響はない」との説明が行われた。同基地では、昨年五月にも約一万五千リットルの燃料流出事故が発生しており、米軍のずさんな管理体制や通報の遅れに反発の声が出ている。

 県基地対策課は同日、沖縄防衛局を通じ、事故原因の究明と速やかな回収作業の実施などを申し入れた。

 米軍や沖縄防衛局によると、発電機には六十五ガロンのディーゼル燃料が入った状態で、十四日午前二時に駐機場へ運ばれた。同日午前八時半に発電機が排水溝内に倒れているのが見つかった。

 タンクには転落の際に破損し、穴が開いたとみられ、燃料は残っていなかったという。米軍の説明によると、発電機が倒れた理由や、転落する前に燃料がすべて使用されていたのか、破損した穴から流出したのかは分かっていない。

 排水溝は一・六キロの距離で比謝川へつながっている。同基地は「基地外へ流出していたとしても、十四日に降った雨により、燃料は排水溝内で薄まっている。周辺住民への影響はない」とした。

 嘉手納町屋良の比謝川取水ポンプ場を管理する県企業局は十五日午後、比謝川と嘉手納基地内の嘉手納井戸群に職員を派遣。目視・臭気調査を実施したが、異常は確認されなかった。

 沖縄防衛局から県などへ通知があったのは十五日午後三時ごろ。同基地によると、事故内容は十四日中に在日米軍に報告したという。地元への連絡が一日後だった理由について、同基地は「報告内容は在日米軍、在日米大使館、日本政府の順に通知。環境問題が発生したときの通報手順に沿ったものだ」と説明している。


     ◇     ◇     ◇     

周辺住民、環境への影響懸念


 【中部】「燃料流出の有無が、なぜ分からないのか」―。最大約二百五十リットルのディーゼル燃料が比謝川に流出した可能性もある嘉手納基地での航空機用発電機の排水溝への落下事故。同基地では昨年五月、バルブの締め忘れで約一万五千リットルものジェット燃料流出事故が起きたばかり。周辺住民からは環境への懸念だけでなく、米軍の管理体制の甘さを指摘する声も上がった。

 比謝川沿いに住み、ボランティアで川の清掃に取り組んでいる沖縄市越来の勝連盛守さん(71)は「多くの市民が、きれいな水が流れる川にしようと努力する中で、流出したのであれば絶対に許せない。市民の飲み水、川の生き物などに影響がないか、とても心配だ」と不安げに話した。

 嘉手納基地に隣接する嘉手納町東区の島袋敏雄区長は「流出したのか、しなかったのか、なぜ分からないのか。米軍の管理体制に問題があるのではないか」と指摘した。

 北谷町女性連合会の桃原雅子会長は「騒音でも悩まされているのに、生活にかかわる水でも問題が出てきては家庭の主婦として心配」と懸念。「基地があるために事件・事故が起きている。日々危険と隣り合わせだ。今後こういうことが起こらないよう米軍も政府も対応してほしい」とした。

 航空機用発電機は沖縄市域の排水溝に落ちた。東門美津子市長は「燃料漏れの有無について正確な情報がない。事実関係を把握した上でコメントしたい」と述べた。関係自治体への連絡が、落下事故の確認から約一日後だったことには「通報遅れによって、市民が被害に巻き込まれる可能性がある。米軍は迅速に通報すべきだ」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_03.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 22面

「ひめゆり」アニメ作品に/人物・背景の原画募集

 ひめゆり平和祈念資料館が来年の開館二十周年に向け、元学徒の体験をアニメーション作品にする。原画作者をプロ・アマ問わず公募し、寄せられた絵を基に物語を構成する計画。「小学生にも伝わる、長く色あせない作品にしたい。力を貸してほしい」と呼び掛けている。

 同館は元学徒の高齢化が進む中で体験を次世代に継承しようと、ここ数年アニメ制作の構想を温めていた。展示の解説文が読めない子ども向けに、館内で上映する短編に仕上げる。

 募集するのは、登場人物や背景の原画。参考シーンを設定するが、題材や表現手法は自由に選んでもらう。

 アニメ監督ら専門家の審査で採用を決め、可能なら制作への参加も要請する。採用されなかった作品も含め、同館で展示する予定。

 十五日記者会見した本村つる館長は「子どもに分かり、大人も感動するような作品にできたら」と抱負を語った。審査員も務める映画監督の柴田昌平さんは「応募は中学生、高校生でも可能。新しい発想のアニメにしたい」と意欲を見せた。

 原画の募集は六月末まで。詳しい要綱は同館のホームページ(http://www.himeyuri.or.jp/)にも掲載する。問い合わせは同館、電話098(997)2100。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_04.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 2面

臨時国会を振り返る/検定問題 政府追及

 【東京】安倍晋三前首相の突然の辞任から波乱の幕開けとなった第百六十八回臨時国会が十五日、閉会した。沖縄関係では、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、検定意見の撤回などをめぐる論争が繰り広げられた。基地問題で官僚らの問題発言も相次ぎ、収賄容疑で逮捕された守屋武昌前事務次官の証人喚問では在沖米軍基地に絡む利権も取りざたされた。防衛省は問題発言した防衛政策局長ら守屋前次官側近の人事刷新に着手するなど、波紋を広げた。

 昨年九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を受け、民主党は文部科学省に審議のやり直しなどを求める国会決議可決を目指した。しかし、参院民主が慎重姿勢を崩さず、実現には至らなかった。

 一方、県民大会については福田康夫首相が十月十二日の衆院決算行政監視委員会で「十一万人の県民大会があった事実も(政府が)重く受け止める一つの理由だったかもしれない」と答弁。県民大会参加者数をめぐっては一部全国紙が主催者発表の参加者数に疑問を投げていたが、政府は「十一万人」と認めた形となった。

 教科書会社からの訂正申請を受け、十二月下旬に修正記述が確定した後も同問題をめぐる論戦は続いた。文科省の布村幸彦審議官は今月十日の参院内閣委員会で、検定意見を撤回する考えがないことを再度強調した。

 質問に立った糸数慶子氏(無所属)は「渡海紀三朗文部科学相は談話を出したが、記述改ざんの再発防止措置に触れておらず、文科省・政府の沖縄戦に対する理解に問題がある」と批判した。

 昨年十月二十九日の衆院テロ防止特別委員会では、守屋氏の証人喚問があった。在日米軍再編を主導し、県内の基地問題に精通していた守屋氏に対し、照屋寛徳衆院議員(社民)は利権疑惑を追及したが、守屋氏は「そういうことはしていない」と全面否定した。

 米軍再編では、防衛省の金澤博範防衛政策局長が十一月十六日の衆院安全保障委員会で、普天間代替施設(V字案)の運用をめぐる住宅地上空飛行に関する地元説明について「今の段階で必要ない」と明言。関係自治体などが反発した。

 在沖米海兵隊のグアム移転に伴い日米がそれぞれ整備する家族住宅の価格も問題になり、石破茂防衛相は十二月十日の決算委員会では「どう見ても高すぎる」と経費を精査する考えを示した。

 一方、福田康夫首相は十月三十日の衆院テロ防止特別委員会で、二〇〇四年に沖縄国際大に米軍大型輸送ヘリが墜落した事故について「かすかに覚えています」と答弁。

 地元からは「その程度の認識しかないのは情けない」(伊波洋一宜野湾市長)などと不満の声が上がった。(東京支社・島袋晋作)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_06.html

 

2008年1月16日(水) 朝刊 2面 

「欠陥機容認できず」/三連協、米軍に抗議文

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日に飛行を再開したことについて、沖縄、嘉手納、北谷の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は十五日、「度重なる事故を起こした欠陥機の飛行再開は容認できない」として、F15の飛行中止と、即時撤去を求める抗議文を同基地司令官などに送付した。

 三連協はF15飛行再開の連絡を受けた後、十一日に同基地を訪ね、ジョン・ハッチソン広報局長に中止の要請文を手渡していた。

 今回の抗議文では飛行が再開された十四日、F15が二度、緊急着陸したことなどを指摘。「安全性が保障されていない。入念な点検を行ったはずなのに、住民の不安を払拭していない」と反発している。野国昌春会長(北谷町長)は「F15は嘉手納基地に配備された当初から事故が多く、欠陥が指摘されてきた。飛行再開は住民に騒音と事故への不安という大きな負担を押し付けるものだ」と米軍を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月16日朝刊)

[基地負担の軽減]

現状洗い直し再論議を

 米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開した。F15の未明離陸といい今回の飛行再開といい、地域住民にさまざまな影響を与えているにもかかわらず、政府の反応は鈍い。

 この二つの事例が象徴しているのは「基地の自由使用」という古くて新しい問題だ。

 住民生活を脅かしたり不安に陥れたりするような米軍の行動や基地の運用に対して、どのようにすれば歯止めをかけることができるのか。地位協定に基づく日米協議の場は、こうした問題を解決する場として果たして十分に機能しているのか。

 基地と住民の接点で生じる摩擦の解決方法について、再度、根本のところから問い直さない限り、事態の進展は望めないだろう。

 このことは実は、県が掲げる普天間飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態の実現」とも深くかかわっている。

 沖縄返還交渉の際、米軍部が強く求めたのは、施政権返還後の「基地の自由使用」だった。行動の自由を制約されたくないという思いは、今も米軍の中に根強い。

 「抑止力の維持」「錬度の向上」「運用上の必要性」などを理由にした米軍の基地運用に対し、外務省は、それが住民生活に影響を与えることが分かっていても、「ノーとはいえない」という姿勢を繰り返してきた。

 この構図を変えるのは容易なことではない。

 沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、政府は昨年八月、普天間飛行場を離着陸するヘリの新しい飛行ルートを発表した。

 見過ごすことができないのは、この新飛行ルートに対し、防衛施設庁(当時)が「現状で取り得る最善の措置」だと指摘、この案が「三年をめどにした普天間飛行場の閉鎖」要求への回答である、と見なしている点だ。

 日米合同委員会のような既存の協議機関では、この種の問題の抜本的な解決が難しいことを示している。

 そうであるなら、県は、F15の未明離陸問題や普天間飛行場の危険性の除去問題を議論できるような新たな協議の場を日米両政府に要求すべきではないか。

 米軍再編は、基地と住民の接点で生じる摩擦の解消に、果たしてどの程度効果があるのか。米軍再編計画の影で現実に生じている被害や摩擦が放置されているのは問題だ。

 住民生活にとっての深刻度を精査し、早期解決の必要な事案をまとめた上で、あらためて負担軽減を要求する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080116.html#no_1

 

2008年1月16日(水) 夕刊 1面

F15飛行再開/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開したことを受け、北谷町議会(宮里友常議長)は十六日午前、臨時会を開き、米本国で墜落したF15の事故原因公表と即時撤去を求める抗議決議、意見書両案を全会一致で可決した。F15が県内や米本国で墜落事故を起こしていることを問題視し、「明らかに機体の老朽化や構造的欠陥がある」として飛行再開の中止を訴えている。

 F15の飛行再開に対する抗議決議は県内で初めて。同議会は、嘉手納基地司令官などへの直接抗議を予定している。

 抗議決議は、米本国での墜落事故以降、同基地所属のF15二機で機体の構造を支えるロンジロン(縦通材)に亀裂が見つかったことを指摘。「県内で八件、米本国でも過去半年間で四件の墜落事故を起こしている。構造的欠陥が原因であり、飛行再開は周辺住民に大きな不安と恐怖を与える」と強く反発している。

 飛行が再開された十四日は、F15二十四機が南北の滑走路を使用して訓練を実施したが、そのうちの二機が緊急着陸した。沖縄、嘉手納、北谷の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は十五日、「安全性が保障された飛行再開といえない」として米軍へ抗議している。

 同議会は、七日に沖縄市内で起きた米兵二人によるタクシー強盗致傷事件に対する抗議決議、意見書の両案を可決した。「北谷町でも二〇〇六年に同様の事件が発生した。依然として米軍人の犯罪は続発しており、実効性がない米軍の対応に不信感はぬぐい去れない」とし、米軍に綱紀粛正を要求した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161700_01.html

 

2008年1月16日(水) 夕刊 5面

タクシー強盗/沖縄市議会 米軍に抗議

 【沖縄】沖縄市美原で起きたタクシー強盗致傷事件で米海兵隊員二人が同容疑で逮捕されたことを受け、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十六日午前の臨時会で、被害者への完全な補償と再発防止を求める抗議決議と意見書案を全会一致で可決した。直後には、北中城村石平の米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、「今後二度とこのような凶悪事件を起こさないでほしい」と抗議した。午後には在沖米国総領事と外務省沖縄事務所を訪ね、抗議と要請を行う。

 同議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長らは「事件の再発防止など、実効性のない米軍の対応に不信感がある」と抗議した。

 応対したラリー・ホルコム大佐は「海兵隊としても驚いており、現在、事件の背景を追究している。大変申し訳なく思う」と謝罪したという。

 抗議決議では「安全であるはずの住宅街で発生した凶悪犯罪であり、被害者の心中を察すると断じて許されるものではない」と糾弾している。

 抗議決議のあて先は在日米軍司令官など。意見書のあて先は首相、外務大臣、防衛大臣など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801161700_04.html

 

2008年1月17日(木) 朝刊 1・23面

審査会、書き直し要求/普天間アセス方法書

不備理由に委員総意/現況調査中止も明記

 「審査会の総意で方法書の書き直しを求める」―。米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が十六日、那覇市の県総合福祉センターであり、事業者の沖縄防衛局に対し方法書の不備を理由に書き直しを要求する答申案をまとめた。方法書手続きのやり直しを強制する法適用は避けたが、県環境政策課は答申が要求する書き直しについて「アセス調査前に一括で提出してもらう」とし、実質的に方法書の書き直しに当たるとの考えを明らかにした。答申に従えば、防衛局が意向を示している「アセス本調査の二月実施」は困難になる。

 審査会は、昨年十二月に一部県条例に基づき答申された飛行場部分と、十六日に審査された国のアセス法に基づく埋立部分を合わせて、十八日に答申する予定。答申を受けて仲井真弘多知事は二十一日、知事意見を提出する。

 答申案は、防衛局が辺野古沖などですでに実施している現況調査について、「調査を中止させる必要がある」と断定。今後、アセス本調査に反映させることを示唆している点について「本調査の実施期間は、調査項目ごとに少なくとも方法書書き直し後一年以上を通して行うべきだ」と明記する方針を固めた。

 これに対し、県環境政策課も「調査期間に関しては今後の知事意見でも一年間以上はやってもらうように述べる予定」と説明し、アセス調査の短縮化には応じない姿勢を示した。

 また、追加説明で方法書の中身を後出しする防衛局の姿勢について、委員からは「追加説明では本来方法書手続きで保証する公告縦覧が担保されない。これでは方法書に住民の意見が反映できず不十分だ」との批判が相次いだ。

 これに対し、方法書の書き直しを事業者に強制することについて同課は「答申の趣旨が知事意見に反映されれば、それは事業者としてやってもらえるものと思っている」と説明。一方、書き直した方法書の公表については、「手続き上、公告縦覧の再実施は困難」とした上で、「方法書を書き直した時点で、事業者がメディアを通して自ら公表し、住民に開示するなどの方法がある」と指摘した。


     ◇     ◇     ◇     

方法書「落第」突き付け/防衛局に不信噴出


 米軍普天間飛行場の代替施設建設問題で、県環境影響評価審査会は十六日夜の会合で、沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)方法書にあらためて「落第点」を突き付けた。委員からは「事業内容が、後出しジャンケンでまた出てくるのではないか」「振り回されている」などと不信の声が噴出。この日は出席しなかった防衛局だが、情報を積極的に示そうとしない姿勢が常に議論の“陰の主役”となった。

 知事への答申内容を議論する最後の会合。傍聴者と報道陣合わせて九十人以上が詰め掛け、那覇市の県総合福祉センターの一室は、汗ばむほどの熱気に包まれた。いすが足りず、三時間立ったまま議論の行方を見守った人も多くいた。

 委員の疑問は、十一日になって防衛局が明らかにした沖縄近海からの海砂千七百万立方メートルの採取に集まった。前門晃委員(琉大教授)は「県内の砂浜の砂がほとんどなくなってしまう。環境対策ができる量ではない。この計画は駄目だ」と危機感を示した。

 宮城邦治副会長(沖国大教授)は「防衛省には相当進んだ青写真があると思う。次の段階で内容が相当ずれる可能性がある」と、防衛局が現段階で示している概要の信頼性に疑問を投げ掛けた。

 他の委員も「防衛局が悪意を持って答申内容をとらえたら困る」「対策の検討を求めても、本当に検討するかどうか」などと発言。情報を小出しにしてきた防衛局との決定的な溝が、浮き彫りになった。

 防衛局に方法書の書き直しを求めることが法的に可能かどうかをめぐり、審査会事務局の県と傍聴席の市民団体が論争する場面も。津嘉山正光会長(琉大名誉教授)が「もともと(詳細が)方法書にないのがおかしい」と防衛局の落ち度を指摘し、審査会の総意として実質的に書き直しを求めることでまとまった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171300_01.html

 

2008年1月17日(木) 朝刊 23面

墜落同型ヘリ7機普天間に/追加配備 可能性も

 【宜野湾】沖縄国際大学に墜落したCH53D大型輸送ヘリコプターの同型機七機が十六日、米軍普天間飛行場で確認された。十五日夜に飛来した米空軍の大型輸送機C5ギャラクシーなどで輸送したとみられる。

 同型機は、部隊配備計画(UDP)の一環で、昨年十一月に四機をローテーション配備。米海兵隊報道部は一月までに、同型機十機と約百五十人の兵士らを同飛行場を含む国内にローテーション配備するとしており、今後同型機が追加配備される可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月17日朝刊)

[「集団自決」見解]

これでは予断を与える

 防衛省防衛研究所が所蔵する沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する資料に、同研究所の戦史部が渡嘉敷、座間味両島で「隊長命令はなかった」との見解を付けて公開していた。

 両島の「集団自決」をめぐって、大阪地裁で係争中の訴訟でも戦隊長命令の有無などが争点になっている。

 にもかかわらず、政府機関が原告側の主張に沿った見解だけを一方的に付けるのはバランスを欠いている。

 手記「集団自決の渡嘉敷戦」「座間味住民の集団自決」は、元大本営参謀が陸上自衛隊の幹部学校で「沖縄戦における島民の行動」の演題で講演した際の講演録に添付されていたという。

 両資料について、見解は「事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれた」と断定。渡嘉敷島巡査の証言、宮城晴美さんの著書を挙げ「命令は出されていないことが証明されている」と言い切っている。

 別の複数の資料にも、軍命を否定する「所見」や、資料評価の「参考」が付されていたことが明らかになった。

 その後、同研究所は手記に付された見解を「不適切」として削除した。

 しかし、「所見」などについては、「あくまで記述者個人の見解であり、戦史部や防衛省の見解ではない」(同研究所図書館史料室長)としている。

 こうした見解は利用者に予断を与えかねない。同研究所の公式見解と受け取る人もいるはずだ。「集団自決」の評価を一方的に押し付ける恐れがあり、配慮に欠けると言わざるを得ない。

 一九六八年に発刊された『戦史叢書 沖縄方面陸軍作戦』(防衛庁防衛研修所戦史部著)では、慶良間の「集団自決」について「戦闘員の煩累を絶つため崇高な犠牲的精神により自らの生命を絶つ者も生じた」と記されている。

 県内の研究者の間では以前から、「崇高な犠牲的精神」という表現が問題にされてきた。

 今回の教科書検定の訂正申請の際、文部科学省は専門家九人から意見を聴取したが、防衛研究所戦史部客員研究員は「軍の強制と誘導による集団自決とは言えない」との考えを伝えた。

 文科省の検定意見といい防衛研究所の見解といい、政府は一貫して日本軍の責任を希薄化する姿勢を見せてきた。沖縄地元の研究者や住民側証言との落差が際立っている。

 沖縄戦では住民を巻き込んだ激しい地上戦が展開された。「集団自決」や、日本軍による「住民殺害」が起きたことが大きな特徴である。重要な史実の評価をめぐって、国内においてさえ、こうも歴史認識が懸け離れていることに暗然とする。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080117.html#no_1

 

琉球新報 社説

続く基地被害 当事者意識のない米軍

 米空軍嘉手納基地のF15戦闘機駐機場で、航空機用発電機が排水溝に落下し、ディーゼル燃料が漏れたとみられる事故があった。最大で約246リットルが漏れ、排水溝を通じて基地外の比謝川に流出した可能性がある。

 14日からは、欠陥が疑われるF15戦闘機が県民の反対を無視して飛行を再開し、民間地域上空で爆音をまき散らしている。

 空からは爆音、陸上では燃料漏れでは、県民はたまったものではない。

 発表によると、発電機は14日午前2時ごろに駐機場に搬入され、同日午前8時半ごろ、比謝川に接続する排水溝に落下していた。

 発電機カートのブレーキの故障で、排水溝に落下したという。米軍の機器の管理・保守体制はどうなっているのだろうか。

 米軍の運用規定からすれば、タンク容量の75%に当たる約246リットルが入っていた可能性があるが、発見時にはタンクに穴が開き、中は空だったという。

 解せないのは、嘉手納基地報道部は流出した可能性がある量を最大で246リットルとしていることだ。タンクにどれだけの量が入っていたのか、関係者に話を聞けば、分かりそうなものである。

 発表時点で流出量が確定できないということは、燃料管理のずさんさを証明したことにほかならない。

 事故覚知から1日以上たって発表したことも見逃せない。あまりに遅すぎる。

 報道部は「環境にかかわる問題は在日米軍上層部に報告し、上層部から防衛省を通じ沖縄防衛局に連絡される規定なので、時間がかかった」としている。

 情報が流れる過程で、滞った部署があったとしか考えられない。スムーズにいっても、発表まで1日以上かかるとすれば、現行の報告システム自体に問題があるということである。

 影響を受ける恐れのある県民に対して即座に、知らせることが筋である。その方向で日米両政府は改善するべきだ。

 嘉手納基地は発電機落下現場や比謝川で油臭や油膜が確認されなかったとして「14日の激しい雨などで燃料は薄められたと考えられる。地域住民に危険をもたらすものではないと結論付けた」と発表した。

 事故の詳細がはっきりしない時点で、住民に危険がないと断定するのは疑問だ。

 発表は事実関係を説明しただけだった。それだけでは不十分と言わざるを得ない。

 少なくとも、地域住民に不安を与えたことに対する謝罪があってしかるべきである。文化の違いの問題ではない。当事者意識、責任感の問題である。

(1/17 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30558-storytopic-11.html

 

2008年1月17日(木) 夕刊 1面

防衛局長に真部氏就任/再編顔触れ一新

 【東京】石破茂防衛相は十七日の臨時閣議で、収賄罪で起訴された守屋武昌前事務次官に近いとされる、金澤博範防衛政策局長(52)を事実上更迭、後任に高見澤將林運用企画局長(52)を充てるなどの幹部人事を報告、承認された。同日付の発令。

 高見澤氏の後任には徳地秀士北関東防衛局長(52)を充て、徳地氏の後任には鎌田昭良沖縄防衛局長(51)を起用。真部朗報道官(50)を二代目の沖縄防衛局長に充てることを正式に決めた。真部氏が兼務していた米軍再編調整官には丸井博情報本部情報官(48)を起用した。

 今回の人事では、米軍再編で在沖米軍基地関係を担当した課長クラスも異動。米軍再編を担当する顔触れが一新する。

 真部氏は一九五七年十月生まれ、富山県出身。東大法学部卒業後、八二年防衛庁入庁。防衛政策課長などを歴任。二〇〇一年八月から〇二年四月まで内閣府沖縄担当部局にも出向、県内自治体とかかわった経験もある。


方針変更なし

石破防衛相


 【東京】石破茂防衛相は十七日午前の臨時閣議後の会見で、米軍再編を担当する幹部を一新した防衛省人事について「政府全体として今のスタンスで取り組んでいるので、防衛省として変更があるということはない」と強調した。米軍再編の在り方については抑止力維持に関する論議を重視していく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171700_03.html

 

2008年1月17日(木) 夕刊 5面

嘉手納議会が抗議決議/F15飛行再開

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開したことを受け、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十七日午前、臨時会を開き、F15の飛行再開の中止と同基地からの即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。

 また今月七日から十一日まで、同基地で行われた即応訓練に対しても、町民から多くの苦情が寄せられているなどとして、同訓練を今後一切行わないことなどを求め、同様に可決した。同町議会は同日午後、同基地を訪ね、直接抗議する。

 F15に関する抗議決議では、米本国での墜落事故原因として指摘されているロンジロン(縦通材)の亀裂について、嘉手納基地所属機二機で発見され、現在もロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないなどとして、十七機の飛行停止を継続していることなどを問題視。

 「構造的欠陥を有するF15の安全性は、いかなる点検・修理を施されようが確保されるものではない」と指摘した。


沖縄市議会 抗議決議へ


 【沖縄】米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行再開した問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十七日午前、基地に関する調査特別委員会を開き、同機の全面撤退を求める抗議決議と意見書案を二十一日の臨時会に提案することを決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171700_05.html

 

2008年1月17日(木) 夕刊 5面

荷車のブレーキ原因/発電機破損

 【沖縄】米空軍嘉手納基地内のF15戦闘機駐機場近くで航空機用発電機が破損し、タンクから最大六十五ガロン(約二百五十リットル)のディーゼル燃料が基地外へ流出した可能性のある問題で、同基地報道部は十六日、発電機の破損原因が荷車(カート)のブレーキの故障だったことを明らかにした。基地外への燃料流出の有無やタンクの破損状況などについては、まだ分かっていない。

 米軍によると、専門家が発電機を調べたところ、荷車のブレーキが故障していたことを確認。そのため発電機が舗装面から排水路の溝に落ち、倒れて破損したと結論付けている。同問題について沖縄市と嘉手納町は同日午前、担当者が事故現場周辺の比謝川流域の環境調査を目視で行ったが、油膜や油のにおいは確認されなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801171700_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月18日朝刊)

[アセス審査答申]

やはり書き直しが必要だ

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う防衛省の環境影響評価(アセスメント)方法書について、県環境影響評価審査会は、きょう仲井真弘多知事に審査会としての意見を答申する。

 方法書の書き直しを求める厳しい内容の答申になりそうだ。

 答申案取りまとめの段階で吹き出したのは、沖縄防衛局のこれまでのやり方、方法書の内容に対する不信感や疑問、強い調子の批判だった。

 沖縄防衛局は十一日、百五十ページ余の追加資料を審査会に提出した。埋め立てに用いる土砂のうち約千七百万立方メートルは、本島周辺の海底土砂を購入し使用することがこの時、初めて明らかになった。この事実は重大だ。

 環境への影響が懸念されるこれほどの内容であれば、当然、方法書作成の最初の段階で盛り込み、公告・縦覧に供した上で、住民等の意見を聞くべきであった。にもかかわらず、審査終盤のこの時期に提出したことは、方法書そのものの重大な瑕疵だと言わざるを得ない。

 市民団体の計算によると、この海砂量は、海岸線から百メートル沖までの砂浜の砂を一メートルの深さで延長百七十キロにわたって掘り取った量に相当する。

 しかも、海砂の採取場所も採取方法もまだ決まっていないという。

 もし、事業の熟度がアセス方法書を審査する段階に至っていないのであれば、事業計画の具体的内容が明らかになるまで待ち、その段階で再度、手続きをやり直すのが筋である。

 法や条例で規定する事項が一応記載されているにしても、形式的要件だけを具備すればいいというものではないからだ。

 このような重要な問題が資料の追加によって処理されれば、環境アセスは結局、形骸化せざるを得ないだろう。

 埋め立て区域の護岸の工法について沖縄防衛局は、三案を検討した結果、二〇一四年までに完成させるため工期が最も短い方式を採用した、と説明している。

 工期よりも大事なのは環境である。工期に間に合わせるために環境問題を後回しにするようなことがあれば、それこそ問題だ。

 審査会の答申を受け、仲井真知事は二十一日に沖縄防衛局に意見を提出する。

 昨年十二月に提出した知事意見は、県条例の対象となる飛行場部分、今回は環境影響評価法が適用される埋め立て部分に対する知事意見である。

 専門家の集まりである審査会の答申を尊重し、知事は方法書の書き直しを明確に求めるべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080118.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間アセス 環境軽視の姿勢を改めよ

 県環境影響評価審査会が16日、普天間移設先の環境アセスに、再審査を求めた。理由をひと言で言えば、沖縄防衛局が出したアセス方法書が「ずさんすぎる」からだ。方法書からは移設優先、環境軽視の国の姿勢も透けて見える。猛省を促したい。

 再審査を求めた審査会の答申は冒頭、普天間代替施設建設に伴う埋め立て事業を「現況の自然への回復が困難な不可逆性の高い事業」と位置付けている。

 その上で「現在事業者が実施している環境現況調査は生物的環境への影響が懸念されることから、影響を十分に検討させた上で中止させる必要がある」と明記している。正論である。

 名護市東海岸のキャンプ・シュワブ沖への普天間代替施設建設では、広大な沿岸海域の埋め立てが予定されている。

 同海域には米国の環境機関も「保護」を求める天然記念物のジュゴンが生息している。それだけでも矛盾を抱えている。

 沖縄の財産である豊かな海を埋め立て、米軍基地を造るのは日本政府、防衛省である。しかも、日本国民の税金を投入してである。

 深刻な環境破壊が指摘され、計画中止を求める中で、建設が強行される。にもかかわらず、沖縄防衛局が出した基地建設に伴う環境影響評価方法書は、当初わずか7ページにすぎなかった。

 審査会が、審議で説明を求めるたびに「新事実」が飛び出した。

 15日には、代替施設建設のために使用される海砂の量が、現在の採取量の12年分に相当することも、審査の過程で表面化した。

 1700万立方メートルもの海砂採取で、「約170キロメートルの海岸線で砂がなくなる」「自然の砂浜がなくなってしまう」と、環境保護団体からは強い懸念と抗議の声も出ている。

 一事が万事である。観光立県・沖縄は、青い海、白い砂浜が観光資源である。本紙社会面に連載中の「やんばる 光と影」では、砂が減り産卵場所を失いつつあるウミガメの現状が報告されている。

 環境省の過去の海浜調査では、1978年度から18年間で沖縄では82キロメートルの砂浜が消え、人工護岸が急増していた。

 基地建設も含め、埋め立て事業による海砂の過剰採取に、そろそろ歯止めも必要であろう。

 代替施設建設では、陸域の造成、土砂採取も予定されている。影響は海にとどまらない。破壊を食い止めるために「アセス」がある。

 今回の答申で巨大な基地建設が爆音や演習被害、墜落事故などの危険にとどまらず、沖縄全体の自然環境への甚大な影響も指摘された。

 審査会の答申を、国はもちろん、県知事も真摯(しんし)に受け止めるべきである。

(1/18 10:10)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30593-storytopic-11.html

 

2008年1月18日(金) 夕刊 1面

書き直し求め答申/普天間アセス

県も防衛局批判

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十八日午前、「アセス調査前に方法書を書き直し、公表・審査等の措置を取らせるべきだ」とし、調査前の方法書の書き直しと追加分の公表を求める三十七項目の意見を仲井真弘多知事に答申した。答申を受け取った知念建次文化環境部長は「答申の直前に事業の根幹に当たる資料が提出されたことは遺憾」と資料を後出しした沖縄防衛局の対応を批判した。

 県は知事意見を二十一日に沖縄防衛局に提出する見通し。

 答申では、方法書の著しい不備を指摘し、「書き直しさせる必要がある」と断じた。また、沖縄防衛局がアセス前に予定地周辺海域などで実施している現況調査についても「ジュゴンやサンゴ類等の生物的環境への影響が懸念されることから中止する必要がある」と要求した。

 津嘉山会長は「方法書で具体的な内容がなく、審査できない状況だった。ぜひ今後、きちんと審査ができる形で出してもらいたい」とし、方法書書き直しの実効性について県に協力を求めた。

 知念部長は「答申の趣旨はよく理解している。知事意見に対しても、沖縄防衛局に対してもきちんと申し入れする」と述べ、書き直しの実効性の担保を求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801181700_01.html

 

2008年1月18日(金) 夕刊 1面

米軍再編 前政権を踏襲/福田首相施政方針

 【東京】福田康夫首相は施政方針演説で、在日米軍再編の取り組みについて「抑止力維持と負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾けつつ地域の振興に全力をあげて取り組みながら、着実に進める」と表明した。

 沖縄への言及はこの部分のみで文言は安倍晋三前首相による昨年の施政方針演説とほぼ同じ内容。米軍普天間飛行場の移設問題で沖縄側との「対話路線」を進める福田政権だが、国会冒頭で表明する基本方針に当たる演説では前政権の姿勢を踏襲した格好だ。

 二〇〇六年一月の小泉純一郎元首相の演説では、米軍再編のほか、沖縄科学技術大学院大学設立に意欲を示す発言もあった。

 地方再生では「観光の振興は地方活性化の目玉」と位置付け、政府内に「観光庁」を設置する方針を説明。海外から観光客を呼び込む取り組みを強化する方針を示した。

 外交分野への言及では、「日米同盟はわが国外交の基軸であり、信頼関係を一層強めていくとともに、その基礎となる人的・知的交流をさらに進める」と指摘し、日米関係を引き続き最重要視する考えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801181700_02.html

 

2008年1月18日(金) 夕刊 1面

金武議会 訓練中止決議/都市型施設移設遅れ

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」にある米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設の移設作業が遅れている問題で、同町議会(松田義政議長)は十八日午前、レンジ4施設の暫定使用の即時中止と施設の解体・撤去を求め、基地機能強化に反対する抗議決議と意見書、要請決議を全会一致で可決した。

 抗議決議では、「政府と米軍は、町民の置かれている状況と度重なる抗議を無視し、軍事演習を昼夜分かたず実施し、同施設から派生する住民の不安・恐怖は悪化の一途をたどっている」と指摘。「現状が引き延ばされるのは、町民を愚弄した人権感覚の欠落した差別行為だ」と政府と米軍の対応を厳しく批判した。

 同施設は二〇〇七年度内で移設を完了する予定だったが、沖縄防衛局は金武町に対し、米軍との調整が難航し、〇九年度中ごろまでずれ込むと説明している。

 さらに、「レンジ3」付近で二月にも着工が予定されている最大千二百メートルの射程に対応するグリーンベレーの小銃(ライフル)用射撃場の建設についても、中止を求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801181700_03.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 1面

陸自、3月訓練開始 ハンセン共同使用

来月にも日米合意

 【東京】在日米軍再編に伴う陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の米軍キャンプ・ハンセン共同使用に関し、政府は十八日までに、日米地位協定第二条四項aに基づく共同使用手続きに着手した。二月までに使用エリアの共同使用について日米合意し、閣議決定する予定。これを受け、陸自は三月中に訓練を開始する見通しだ。訓練開始で共同使用は「完了」とみなされ、米軍再編の進ちょくに応じて同基地を抱える三町村に支払われる「再編交付金」は、二〇〇八年度に上限の約二億円が支払われることになる。

 防衛省は、米軍が使用しない期間を前提に、陸上自衛隊第一混成団が九州の演習場で行ってきた中隊規模程度の訓練を、キャンプ・ハンセンで実施するとしている。

 共同使用では、ロープ降下、警戒・防護、行進などを中心とした戦闘訓練を、二百人程度の部隊が二十一週間ほど金武町と宜野座村のエリア内で実施。

 また、レンジ3、4を除く金武町エリア内の既存射撃場で百人程度が九週間、小火器などを使用した射撃訓練を行う。

 さらに、金武町と恩納村の計二カ所の施設で最大百人が年一週間程度、不発弾処理などの訓練を行うという。

 三月に実施する訓練は予算をそれほど必要としないロープ降下、警戒・防護、行進などの比較的軽度なものとみられ、射撃訓練は〇八年度以降となる見通しだ。

 儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長は昨年十一月十三日、負担増になるとして反対していた従来の姿勢を一転させ、共同使用を受け入れると発表。

 これを受け、防衛省は十二月、再編交付金について、四段階に分けられる米軍再編の進ちょく状況のうち、第一段階の「受け入れ」を満たしていると判断。上限額の10%分(二千万円)を〇七年度分として内定した。

 再編交付金について定めた「米軍再編推進法」は省令で、四月一日時点の進ちょくを基準に、その年度の交付額を決定するとしている。三月末までに訓練を開始して共同使用の実績をつくれば第四段階の「再編の完了」が満たされ、〇八年度は上限の約二億円になる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_01.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 1面

検定撤回実行委解散 自民が方針

県連提案へ「役割終えた」

 自民党県連(外間盛善会長代行)は十八日、議員総会を開き、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)について、「記述が修正され、一定の成果を得た。県民大会実行委の役割は終え、活動に区切りをつけるべきだ」として解散を求める方針を決めた。

 十五日に実施した政府への要請行動を報告する次回の実行委の幹事会などで、幹事を務める同県連の伊波常洋政調会長が解散を提案する見通しだ。

 議員総会では、「記述の訂正で、県民大会の決議は事実上認められた」「今後の問題は、実行委を解散して、対応を検討すべきだ」などの意見が出たという。

 一方、実行委の仲里委員長は十五日の要請で、「検定意見の撤回は絶対に譲れない。撤回に向けて今後も取り組み続ける」と発言していた。

 仲里委員長は十八日、沖縄タイムス社の取材に対し「(自民県連からの要請があれば)多くの方々の意見を聞いた上で、実行委員会の中で協議していきたい」と語った。

 県選出・出身の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)も検定意見撤回に向けた協調に慎重な姿勢を示しており、自民党県連の実行委の解散提起で、今後、超党派の要請行動は困難になるものとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_02.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 27面

「民意に背向けるな」/実行委員らが反発

 「到底県民には受け入れられない。民意に背を向けるわけには行かない。解散はありえない」。小渡ハル子県婦人連合会長と玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長の実行委両副委員長は強い口調で解散を否定した。

 「昨年末、実行委員会存続を確認したばかり。結果が不十分だったから先日も東京行動した。その直後に、なぜ一定の成果があったと言うのか」と玉寄副委員長。小渡副委員長は「何の権利があって解散を求めるのか」と声を荒らげた。

 青春を語る会の中山きく代表(白梅同窓会長)は「教科書執筆者が今後も訂正申請を出すと聞き、心強く感じていただけに驚いた。ここで解散したら、沖縄の思いはその程度だったのかと言われる」と、声を落とした。

 「教育にかかわる問題なのだから、もっと長い目で見なければならない」と、県PTA連合会の諸見里宏美会長。「私たち大人は、毅然とした態度を示す意味でも、簡単には妥協できない」と決意を新たにした。

 座間味の体験者宮城恒彦さん(74)は「教科書問題は、県民の問題で、自民党の問題ではない。ここで解散してはいけない。教科書執筆者は十一月に、また訂正申請をしようというのに、地元沖縄でこんな足をすくうようなことをしてはいけない」と語気を強めた。

 教科書検定撤回運動に取り組んできた琉球大学の山口剛史准教授(36)は「四月から使う教科書は、県民大会で求めたことが一切認められていない。政党としての判断はあるだろうが、県民の願いや本当の利益を考え、県民の声を正面から受け止めてほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_03.html

 

2008年1月19日(土) 朝刊 27面

ツアー企画 戦跡ガイド 神奈川在住・外間さん

 県外の高校生らが参加した「平和といやしの島々めぐりの旅」の一行三十四人が十八日、南風原町の南風原陸軍病院壕や糸満市摩文仁の「平和の礎」の戦跡を巡り、沖縄戦への理解を深めた。神奈川県在住で、八重瀬町東風平出身の元高校教師、外間喜明さん(63)が「沖縄と本土の平和の懸け橋になりたい」とツアーを企画、三年前から取り組んでいる。

 陸軍病院壕前では、外間さんが十九歳で亡くなった沖縄師範本科四年生の宮良英加さんが米兵の捕虜に食糧を与えたエピソードを紹介。「平和主義者で、『戦争のない時代に生まれたかった』と言った彼の存在を広めたい」と語った。壕で亡くなった宮良さんの無念の思いを「生きたくても、生きられなかった」と話し、涙した。

 高校一年生の岡本いずみさん(16)は「壕の中は怖くて、こんなことがあったんだって驚いた。人を変えてしまう戦争をしてはいけないと思った」と話した。

 一行は、二十一日まで県内各地の戦跡などを回る。二十日には宮良さんの出身地の石垣市で当時を知る友人や、おいと交流する。

 沖縄戦で父と兄を亡くした外間さん。沖縄を紹介する本を自費出版するなど、平和活動に取り組んでいる。「平和と命の尊さを確認する旅にしたい」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801191300_11.html

 

琉球新報 社説

首相施政方針 「国民本位」は当然/普天間問題でも誠実対応を

 「国民」が計50回も登場し、「環境」は23回使われた。18日午後、衆院本会議で行われた福田康夫首相就任後初の施政方針演説である。「国民本位の行財政への転換」を強調し、国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるためとしてかなりのスペースを割いた。さらに「低炭素社会への転換」として地球環境問題への取り組みに力を入れることを宣言した。

 「福田カラー」が見えないと批判され続けた首相が打ち出した二本柱と言えそうだが、「国民本位」も「環境問題」もあまりに当然すぎる政治姿勢であり、国民には強烈なメッセージとして伝わってこない。

指導力を発揮せよ

 「国民本位」化として、食品表示などに絡む偽装問題が続発する中で消費者行政担当相の常設を打ち出したのは意欲的に見える。これは将来、「消費者庁」創設を念頭に消費者行政を一元化する狙いがある。食品表示偽装の背景には、内閣府や厚生労働省、農水、経済産業省などが絡む縦割り消費行政の弊害があるため、一元化によってその弊害をなくそうという判断だろう。

 それはいい。しかし実現の可能性はというとかなり厳しそうだ。施政方針では「すでに検討を開始しており、なるべく早期に具体像を

固める予定です」と表現した。組織防衛に腐心する関係府省が、やすやすと一元化の流れに乗るはずがない。具体案を示せなかったのは、調整が早くも難航していることの証左であるという指摘もある。

 反発の強い関係府省を説き伏せ、一元化し得るのか。それは首相が強烈なリーダーシップを発揮できるかどうかにかかっている。「相手の話を聞く」姿勢を堅持する首相だが、それは相手による。国民のためとなれば、少々強引な進め方も決断しなければならないだろう。妥協に妥協を重ねて、実効性のないスローガンだけを掲げる結果にだけはしてほしくない。

 今国会最大の焦点になる揮発油税率について首相は「現行税率を維持する必要がある」と訴えたが、その理由については道路整備事業や温暖化対応について説明しただけで、重い負担を続ける国民にとっては物足りない。民主党が展開する「ガソリン値下げ隊」の方が消費者の心にすっと入ってきそうだ。維持の姿勢を堅持するのなら、より分かりやすい説明を求めたい。

 「低炭素社会への転換」は、7月に開催される主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)をにらんでのことだろう。その前提になるのは京都議定書による温室効果ガス6%削減の約束履行である。しかし、それは困難視されている。

 施政方針では、本年度中に京都議定書の目標達成計画を改定して取り組むとしたが、遅きに失した感もある。とは言え、地球環境問題への取り組みは人類の義務である。

不誠実ではないか

 演説では明治時代の著名な農村指導者である石川理紀之助の「何よりも得難いのは信頼である。進歩とは、厚い信頼でできた巣の中ですくすく育つのだ」という言葉を引用し、政治への信頼回復の重要性を強調した。その上で、「信頼という巣を、国民と行政、国民と政治の間につくってまいりたい」と述べた。確かに国民と政治が相互理解という絆(きずな)で結ばれるのは「信頼」であろう。逆に政治が信頼を失うのは、公約違反、不誠実な対応、裏切りである。

 沖縄の米軍基地問題では、政府の不誠実な対応が露骨に見えてくる。普天間移設先の環境影響評価(アセスメント)問題もそうだ。県環境影響評価審査会に諮問された方法書は薄っぺらであまりにもずさんなものだった。移設ありきで、環境軽視の政府の姿勢は、「地球環境問題への真摯(しんし)な取り組みが必要です」と述べた首相演説と矛盾する。

 さらに「自立と共生」を掲げる首相ならば、米軍基地の大部分を沖縄に押し付ける現状は「共生」とは認め得ないであろう。

 支持率浮揚のために「国民本位」を連呼して、関心を引きたいのは分かる。その姿勢が国民生活の現実を踏まえ、腰を据えた真剣なものなのかどうかは今後の具体化にかかっている。

 株価低迷、原油高騰、格差問題、不安定な雇用など、マイナスの要素は数多くある。政治が信頼を得るためには、これらを克服し、活力ある国民生活を実現する以外にない。

(1/19 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30617-storytopic-11.html

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