沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月25日から28日)

2007年11月25日(日) 朝刊 1・2・27面

北部振興費執行へ調整/移設協議題合意条件

 【東京】政府は二十四日までに、本年度分の執行が凍結されている北部振興事業費(百億円)を、次回の普天間飛行場移設協議会の議題で関係省庁と地元が合意することを条件に、解除する方向で調整に入った。この条件が整えば、二〇〇八年度予算にも百億円を計上し、振興策の枠組みを継続する。防衛相や沖縄担当相ら閣僚レベルではまだ認識が一致していないが、県や名護市との「対話路線」を重視する首相官邸の意向とみられる。

 十一月七日に第四回協議会が十カ月ぶりに開かれ、政府と地元は次回の協議会を十二月の第三週(十日―十四日)に開く方向で日程調整している。

 政府関係者は二十四日、沖縄タイムス社の取材に「次回協議会の議題と日程が正式に決まることが、執行の条件だ」との見通しを示した。

 北部振興費の執行条件は「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」こととされる。

 内閣府幹部は「十一月、十二月と間を置かずに関係者が同じテーブルに着けば、協議が円滑に進んでいるといえる」と判断している。

 一方、複数の防衛省幹部は「協議会で地元が普天間移設に関して、何らかの譲歩や妥協を表明することが条件だ」として、議題の中で、従来より踏み込んだ移設への協力姿勢を示す必要があるとの考えを崩していない。関係者によると、予算凍結の解除には、財務省も難色を示しており、関係省庁間ではまだ認識が一致していない。

 ただ、政府内の調整役を務める首相官邸は、県と名護市が普天間代替施設のV字形滑走路案(政府案)の沖合移動を要求している現状に危機感を募らせている。このため、政府案に理解を求める手段の一環として、北部振興事業費の執行に傾いているもようだ。


[ことば]


 普天間飛行場移設問題 日米両政府は1996年、米軍普天間飛行場の返還、移設で合意。99年、移設先は名護市辺野古沿岸域と決まった。しかし着工が遅れ、両政府は2006年、移設先を同市のキャンプ・シュワブ沿岸部に変更、V字形に滑走路2本を建設すると合意した。これに伴い、政府と県などは建設計画や振興策などを話し合う協議会を設置した。


     ◇     ◇     ◇     

解説/北部振興費執行


 政府が予算執行を凍結している北部振興事業費を解除する方向で調整を始めた背景には、首相官邸の意向がある。普天間飛行場移設で地元の軟化を促すため振興予算を?カード?に事態打開を模索しているのが現状だ。一方、防衛省や財務省は地元の譲歩がないまま「執行ありき」で協議を続けることに強く難色を示しており、政府内で調整が難航するのは必至だ。

 今月七日に約十カ月ぶりに再開した普天間移設協議会は、主宰者を町村信孝官房長官に変更し、官邸主導を鮮明にした。

 首相官邸が進展を急ぐのは、北部振興費の凍結が続けば、公有水面の埋め立て許可を持つ仲井真弘多知事が態度を硬化させ、普天間移設そのものが頓挫しかねないとの危機感があるからだ。

 地元にとっても来年度予算の計上まで止められると、北部振興事業の枠組みそのものが消滅する恐れがあり、十二月下旬の予算編成直前がぎりぎりのタイミングとなる。

 しかし、名護市辺野古沖移設の従来案を進める過程で、二〇〇〇年度から年間百億円の予算が毎年計上されたにもかかわらず、移設が進まなかった「反省」から、防衛省などの警戒感は強い。

 ゲーツ米国防長官も町村氏に沖合移動に強い難色を示しており、政府の譲歩は困難な情勢だ。

 県政、市政とも国と激しく対立するのは本意ではなく、次回協議会で何らかの歩み寄りを示す可能性もある。(東京支社・吉田央、島袋晋作)


名護市長は期待感


 米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり政府が凍結していた本年度の北部振興策百億円を執行をする方向で調整に入ったことに、島袋吉和名護市長は二十四日「政府から連絡がないのでコメントはできない」とした上で、「北部各市町村はそれぞれ事業を計画しており、早めに予算執行してほしいというのは以前から申し上げている通りだ」と期待する考えを示した。

 上原康作北部振興会会長(国頭村長)は「政府が継続を決めたのなら大変喜ばしい。当初は十年間の予定だった北部振興策。いろいろ利害関係はあるが、まずは信頼関係を築かなければならない。これが大きなきっかけになって(移設問題も)、いい方向に動くのではないか」と話した。

 県の仲里全輝副知事は「政府からはまったく聞いていない」と断った上で、「普天間代替施設については、県も名護市も日米合意を踏まえるという立場であり、北部振興策の凍結解除は当然」との認識を示した。一方で「(普天間移設問題と)バーターにしようというのであれば話は別。凍結解除されようが、知事はこれまでの(沖合移動の)主張は譲らないと思う」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_03.html

 

2007年11月25日(日) 朝刊 2面

F15あす飛行再開/米判断「見切り発車」

 米国内でのF15戦闘機墜落事故を受け四日以降、同型機全機の飛行を停止してきた米空軍は二十一日に解除を発表。嘉手納基地所属のF15戦闘機は二十六日から点検を終えた機が順次飛行を再開する。今回の事故が約三週間に及ぶ飛行停止を招いたのは、機体の「構造的欠陥」の可能性が指摘されたためだ。三十年以上に及ぶ運用実績や構造検査技術の向上で、耐用期間(距離)が延長されてきたF15の性能への「過信」はないのか。老朽化との因果関係が解明されないまま、飛行再開に踏み切る米空軍の判断には「見切り発車」の懸念もぬぐえない。(政経部・渡辺豪)

 事故は十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。「操縦席の後方付近の胴体が損傷したため飛行不能となって墜落した」という。事故原因について米空軍は「初期段階の調査は、航空機に構造上の欠陥が起きた可能性を示している」と指摘した。


構造上の欠陥


 「構造上の欠陥」について航空評論家の青木謙知氏は「設計や素材の不適切など本質的な問題を指す。今回は広く『老朽化』の意味で使われたのではないか。F15の設計寿命が予測以上に持たなかったという懸念が生じた可能性もある」と解説する。

 米空軍は一九七四年にF15の配備を開始。米本土以外に日本、アラスカ、ハワイ、英国、中東に配備し、約七百機を保有している。このうち約五百機は約二十五年前に製造された旧型。ミズーリ州の墜落機も二十七年前に製造されたという。

 F15C、D型機を保有する嘉手納基地は昨年一月、全五十四機の機体更新を発表。七八年に製造された機体を、米国ラングレー基地の別タイプのエンジンの機種に順次更新しているが、機体の製造年は七八―八五年。更新後もミズーリ州の事故機と同型、同製造年代の機体を含んでいる可能性がある。

 F15は全国に約二百機を配備している航空自衛隊の主力戦闘機でもあり、二〇〇八年度中には空自那覇基地にも配備予定。事故と経年劣化の因果関係の解明は米軍機への影響にとどまらない。


リスク承知で


 「われわれは最優先の義務である自国の防衛のため、危険を受け入れる」 事故調査委員会による調査の「継続中」に飛行再開が決まった二十一日、ラングレー基地のコールリー大将はパイロットらに「リスク」を承知で任務を再開するようげきを飛ばした。

 米空軍の飛行停止措置が約三週間に及ぶのは極めて異例だ。これは米軍自らが今回の事故の深刻さを認識している証しでもある。だが、米空軍としては運用面で飛行停止の長期化には限界があり、早期に解除せざるを得ない状況に置かれていたのが実情だ。

 飛行停止期間が長期に及んだ理由について青木氏は(1)事故機が予備役の州空軍が使用する、かなり古い型の機体だったため、老朽化の影響を慎重に判断する必要に迫られた(2)「空中分解」という事故の特異性―を指摘。その上で、米空軍が飛行再開に踏み切った経緯については「事故原因は調査中でも、問題が疑われる部位の特定は可能。同型機の非破壊検査で異常が見つからず、事故機固有の問題である可能性が高いと判断したのだろう」とみる。

 しかし、「事故機固有の問題」と結論付ける証拠が提示されない限り不安は解消されない。

 米空軍は〇四年にF15の購入を中止し、F22への更新を図っている。だが、予算の制約のため、米国議会は米空軍からの三百八十一機の更新要求に対し、百八十三機のF22の購入認可にとどめている。F22はこれまでに九十七機導入されているが、今回のF15の事故で「F22の導入が促進される」との見方も出ている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_08.html

 

2007年11月25日(日) 朝刊 26面 

「軍は国体守る組織」/平和大会「集団自決」シンポ

 国内の米軍基地の撤去を訴える「2007年日本平和大会IN沖縄」(主催・同実行委員会)は二十四日、県内各地で分科会やシンポジウムを開いた。

 そのうち、那覇市内では「『集団自決(強制集団死)』問題をどう考えるか 戦争の真実をゆがめる動きを許すな」シンポジウムがあり、県内外から参加した約八十人が沖縄戦の実相を学び、高校歴史教科書の「集団自決」記述から日本軍による強制を削除した検定問題について意見を交わした。

 パネリストには沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授、沖縄タイムス社の謝花直美編集委員、琉球大の山口剛史准教授、県平和委員会の大久保康裕事務局長が参加。安仁屋名誉教授と山口准教授はそれぞれの研究から、「軍隊は住民ではなく国体を守る組織だ」と主張した。

 「集団自決」生存者への取材を重ねてきた謝花編集委員は「生き残った苦しみがある中で、語ることの意味を受け止めながら真実を伝えたい」と話し、大久保事務局長は「有事法制の整備を進めたい日米両政府にとって、戦争を経験した沖縄県民の存在が長年の課題になっている」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_10.html

 

2007年11月26日(月) 朝刊 1面

米F15きょう飛行再開

嘉手納基地3週間ぶり周辺自治体反発強く

 【嘉手納】米本国での墜落事故を受け、飛行停止していた米軍嘉手納基地のF15戦闘機が二十六日、三週間ぶりに飛行を再開する。同基地は「入念な点検を終えた機体から順次再開する」としているが、周辺自治体は事故の詳細や原因が明らかにされないままの飛行再開に、反発を強めている。

 事故は今月二日に米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属のF15戦闘機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。米空軍は「構造上の欠陥が起きた可能性がある」とし、世界各地に展開しているF15に飛行停止命令を出した。嘉手納基地では四日から飛行を停止していた。

 同基地は十七日から、詳細な整備調査チェックリストと照らし合わせ、一機に付き十五時間以上かけて点検している、と説明。飛行性能を確認後、二十六日から順次飛行を再開するという。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十二日にF15の飛行再開中止、同機の撤去を求めて同基地司令官らに抗議、要請した。嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十六日に基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261300_01.html

 

琉球新報 社説

北部振興策 格差是正が原点のはずだが

 北部振興策はいつから変質したのであろうか。戦後長きにわたる苦難の歩みで生じた県外との経済格差や、県内における地域格差の是正が原点のはずだが、「軍事基地の負担増」と引き換えという政府側の切り札にされてしまっている。

 これはおかしい。外交努力を怠り、半世紀余も県民に基地の重圧を強いていながら、政府が沖縄に対して高圧的な態度に出るのはどういうことだろう。地元に「アメとムチ」をちらつかせ、予算を凍結するとか、解除するとかいう手法は理解に苦しむ。

 問題の本質をすり替えては、事は永遠に解決しない。基地受け入れと経済振興策は基本的にリンク(関連)しないということを、関係各省にはあらためて確認してもらう必要がある。

 米兵による少女乱暴事件から1年が経過した1996年9月。当時の橋本龍太郎首相は「沖縄問題についての首相談話」を閣議決定し、沖縄政策協議会の設置を表明した。談話にはこうある。

 「過ぐる大戦で沖縄県民が受けた大きな犠牲と、県勢の実情、今日まで県民が耐えた苦しみと負担の大きさを思うとき、私たちの努力が十分なものであったか謙虚に省みるとともに、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを痛感している」

 さらに「地位協定の見直しや米軍基地の整理・縮小を求める県民投票に込められた県民の願いを厳粛に受け止める」とし、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国と協議していく姿勢を強調した。

 首相談話は「反省」と「痛みの解消」を基調としており、アメとムチ論は読み取れない。実際、基地と振興策のリンクを問う記者団に、橋本氏は「(そんな質問は)悲しい」と答えている。首相の姿勢に、県民は沖縄政策の新しい出発点を感じたものだ。

 確かに、基地と振興策は切り離せないとの見解はあるだろう。しかし、それは、振興策が基地の整理・縮小につながるという意味でのリンク論であり、負担増と引き換えということではあるまい。

 こうした原点は、なし崩しにされていく。小泉政権になると、普天間飛行場移設計画の進み具合に応じ、北部振興策を講じる出来高システムが表面化。安倍政権では沖縄担当相が「移設問題は進まないのに、北部振興は国で受けるという形にはならない」と、堂々とリンク論を張る変質ぶりだ。

 そこには、県民の思いを「謙虚に省みる」姿勢がみじんも感じられない。北部振興策は、県内の均衡ある発展のために講じられるものである。予算の凍結解除は当然だ。明確な理由もなく当初方針を変えないでもらいたい。

(11/26 9:40)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29230-storytopic-11.html

 

2007年11月26日(月) 夕刊 1面

F15 3週間で飛行再開/事故原因は未公表

 【嘉手納】米本国でF15戦闘機が墜落したことを受け、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15が二十六日午前、約三週間ぶりに飛行を再開した。午後一時までに、約十五機が離陸し、このうち、一機が緊急着陸した。さらに一機が同基地着陸後にトラブルが発生したとみられ、機体のチェックを受けた。嘉手納町屋良では、離陸時に最高で九四・六デシベル(騒々しい工場内に相当)の騒音を計測。事故当時の詳細や原因を公表しないまま、飛行を強行した米軍に対する周辺自治体や議会、住民の反発は一層強まっている。

 F15は同基地南側滑走を使用、同日午前九時二十分ごろ、二機が相次いで離陸したのを皮切りに、飛行訓練を再開。いずれも沖縄本島周辺の訓練区域で飛行訓練を実施したとみられる。

 離陸時の騒音は、ほとんどが多くの人が不快に感じる八〇デシベル(地下鉄の車内の音に相当)以上を計測した。

 嘉手納基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで組織する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の野国昌春会長(北谷町長)は同日午前会見し、「米軍は三週間で機体の点検をしたというが、我々と米軍の安全の認識にずれがあり、住民の不安は解消されていない。点検内容や事故原因を情報公開すべきだ。三連協で抗議を検討したい」と述べた。

 出張中の東門美津子沖縄市長は「周辺自治体の強い中止要請の声を無視し、いまだ事故原因が確定しない中での運用は断じて容認できるものではない」とコメントした。

 三連協は今月二十二日にもF15を「欠陥機」と指摘し、嘉手納基地から撤去するよう同基地司令官らに抗議、要請していた。

 墜落事故は二日に米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属のF15戦闘機が戦闘訓練中に墜落した。

 米空軍は当初「初期段階の調査は、航空機に構造上の欠陥が起きた可能性を示している」と指摘。世界各地に展開しているF15に飛行停止命令を出し、嘉手納基地のF15も四日から飛行を停止していた。

 沖縄平和運動センターなどの市民団体は、二十六日正午すぎから嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で集会を開き、事故原因を明かさずに飛行を再開した米軍に抗議した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261700_01.html

 

2007年11月26日(月) 夕刊 5面

安全に疑問 怒る住民/強行米軍に不信感

 【中部】本当に安全なのか―。嘉手納基地のF15戦闘機が二十六日午前、事故原因を明かさないまま約三週間ぶりに飛行を再開し、住宅地に騒音をまき散らした。午後一時までに一機が緊急着陸、別の一機も着陸後にトラブルを起こし、安全性になお疑問も。周辺住民らは「理解し難い」「沖縄で墜落する可能性もある」と不信感を募らせている。同機の訓練移転先の県外住民からも「納得し難い」の声が上がった。

 F15は、沖縄市方面へ飛び立ち、爆音がとどろいた。同市議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝会長は「墜落原因も分からない中で飛行再開し、緊急着陸も引き起こした。市民の不安は大きくなるばかりだ」と話し、二十七日に基地特委を開催し抗議する方向で対応を協議する。

 飛行ルート下にある沖縄市知花自治会の田島清信会長(61)は、トラブルを繰り返したことに「問題を抱えるF15の飛行再開はけしからん話だ。住民を軽視してはいないか」と憤った。

 北谷町砂辺区に住む主婦の宮平弘子さん(67)は、騒音被害に苦しみ、二月に区内の別の場所に引っ越した。「事故の原因も分からず、住宅の上を飛ばれるのは不安でしょうがない。住民はいつも無視されている」と怒りをあらわにした。約千世帯、三千人が暮らす嘉手納町東区の島袋敏雄自治会長(62)は「事故原因などが見えない中で、地域に何の説明もなく再開するのは理解し難い」と強調した。

 一方、県外の関係者からも飛行再開に批判の声が上がった。

 米本国での墜落事故直後の五日から、嘉手納基地のF15が参加して訓練が行われる予定だった空自小松基地(石川県)。小松基地騒音訴訟原告団長の広瀬光夫さん(73)は「小松のF15はまだ飛行再開していないが、いくら抗議しても対応してくれない」と強調。

 「黙っていたら何をするか分からない。絶えず声を上げていきたい」と話した。


消防車出動 一時騒然と

緊急着陸


 【嘉手納】二十六日午前に飛行を再開した米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機のうち、二機に相次いでトラブルが発生した。午前十時三十五分ごろに一機が緊急着陸。正午ごろには、着陸したもう一機の機体にもトラブルが発生した。両機ともに基地内の消防車など緊急車両に囲まれ、一時騒然とした。

 両機ともに北谷町方向から南側滑走路に着陸。同基地によると、緊急着陸した機体は「予防的な着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明している。

 目撃者によると、正午ごろに着陸したF15は、装備していた訓練用照明弾(フレアー)にトラブルが発生したとみられ、兵器を扱う要員がフレアーを回収している姿が確認された。両機とも、消防車からの放水はなく、自走して格納庫に戻った。


「欠陥機」撤去訴え

市民団体が抗議集会


 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行再開に対し、沖縄平和運動センターと中部地区労は二十六日、嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で緊急集会を開き、F15の撤去を求めて抗議した。集会に参加した県内の労組メンバーや議員ら約六十人は、滑走路に向かってこぶしを突き上げ、「F15を即時撤去せよ」「住民を危険にさらすな」とシュプレヒコールを上げた。

 同センターの山城博治事務局長は「欠陥機F15はいつ住民の頭上に墜落しないとも限らない。米本国での事故原因を明らかにしないまま、飛行を再開した米軍に怒りをもって抗議する」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261700_02.html

 

2007年11月26日(月) 夕刊 4面

「泡瀬」是非の声 市長に届けよう/若者が市民の意見募集

 【沖縄】「泡瀬の海の埋め立てについて、市民の声を市長に届けたい」沖縄市の中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業について「市民みんなで考えよう」と、市内に住む二十代から三十代の若者らで組織するグループが二十五日、市上地のコザ・ミュージックタウン前で買い物客や通りを行き交う人たちから東門美津子沖縄市長あてのメッセージを募った。

 事業の是非について東門市長は「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて年内に結論を出す」と公約。早ければ十一月末にも結論を出すとみられることから「『推進』とか『中止』の立場ではなく、まずは市民みんなで考える時間も必要」と企画。集まったメッセージは結論の判断材料にしてほしいと、二十八日にも東門市長に手渡す。

 用意したメッセージ記入用紙は二千五百枚。二十五日は中高生や親子連れから約六十人分のメッセージを回収した。

 思いを書き込んだ比嘉柳斗さん(19)=市安慶田=は「埋め立てるお金を、福祉などもっとほかのところに使ってもいいと思う」。一番街で働く男性は「自然を壊すのは良くないが、活性化し食べていくためには必要」とそれぞれの思いをつづった。

 企画した桑江直哉さん(33)=市泡瀬=は「政治家や学識経験者などが環境や経済で議論しているが、将来を担う若い人たちが意見を言える場がない。民主主義がないのが問題だと思う」。久場良美さん(24)=市嘉間良=は「市の将来を左右する事業なのに市民の関心が薄いのは問題。みんなが関心を持ってほしい」と呼び掛けた。

 メンバーは引き続き十二月二十五日までメールやファクスなどでメッセージを募り、同二十八日に東門市長に手渡す予定。

 ファクスは020(4622)2741、メールアドレスはinfo@193-project.com

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711261700_04.html

 

2007年11月27日(火) 朝刊 29面

「体験者の参考人出席を」/県民大会実行委員

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の一部主催団体が、「集団自決」体験者らの国会への参考人出席を目指して、準備を始めた。「集団自決」への軍の強制があったことを示す証言を国会議事録に残し、同じ検定が繰り返されないようにすることが狙いだ。

 県子ども会育成連絡協議会(沖子連)や県婦人連合会などが中心となり、「集団自決」体験者の吉川嘉勝さんや県民大会実行委員長の仲里利信・県議会議長、沖縄戦研究者の安仁屋政昭・沖縄国際大名誉教授の国会への参考人出席を目指して動いている。

 大会実行委は十月中に二度にわたり上京し、渡海紀三朗文科相らに検定意見撤回と、「集団自決」への軍の強制を示す教科書記述の回復などを要請した。国は記述回復には前向きな姿勢をみせたが、検定意見撤回などには難色を示した。

 沖子連の玉寄哲永会長らは、「集団自決」体験者らの軍の強制についての証言を国会議事録に残し、沖縄戦について、同じような教科書検定が繰り返されることへの歯止めにしたいと考えた。

 すでに、県選出の超党派の国会議員から協力の約束を取り付けた。仲里議長らも了承しており、今国会中に、沖縄北方問題特別委員会への参考人出席が実現するよう働き掛けを強めている。

 玉寄会長は「教科書会社も軍強制を示す記述で訂正申請している。私たちもできる限りのことをして、沖縄戦の本当の姿を伝えていかなければいけない」と話した。

 また、琉球大の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授は二十六日までに、この教科書検定問題をめぐり沖縄で、十一万六千人が参加した県民大会が開催されたことを、小・中・高校の社会科教科書の年表などに付け加えるよう、各教科書会社に要請文を送った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271300_02.html

 

2007年11月27日(火) 朝刊 29面

騒音70デシベル以上92回/F15飛行再開

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した二十六日、嘉手納町屋良では多くの人が不快に感じる騒音(七〇デシベル以上)を午後五時までに九十二回計測した。同日は少なくても約二十五機のF15が離陸、うち二機にトラブルが発生するなど、安全面にも疑問を残す結果となった。

 同基地では二十六日、F15のほか、FA18戦闘攻撃機、P3C対潜哨戒機などが離着陸を繰り返した。嘉手納町によると、同町屋良に設置している騒音測定器は、二十六日午前零時から十七時間で九十二回の騒音を計測。最高値は午前十一時五十七分に九四・六デシベル(騒々しい工場内に相当)だった。

 飛行を停止していた今月四日―二十五日までの期間中、一日平均の騒音発生回数は六一回。十月の一日当たりの平均騒音発生件数は九〇・八回で、同町は「通常の基地運用に戻りつつある」と指摘した。

 F15は午前十時三十五分ごろに一機が緊急着陸。正午ごろには、別の機体が着陸後にトラブルを起こした。目撃者によると、訓練用照明弾(フレアー)を取り外す様子が確認されたという。

 同基地報道部は緊急着陸について「予防的な着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明した。

 沖縄平和運動センターと中部地区労は二十六日、通称「安保の見える丘」で緊急集会を開いた。同センターの山城博治事務局長は「いつ住民の頭上に墜落しないとも限らない。米本国での事故原因を明らかにしないまま、飛行を再開した米軍に大きな怒りをもって抗議する」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271300_03.html

 

2007年11月27日(火) 朝刊 28面

「干潟守れ」300人集会/泡瀬埋め立て

 【沖縄】「世界に誇れる泡瀬干潟を守ろう!」市民集会(主催・市民集会実行委員会)が二十六日夕、沖縄市農民研修センターで開かれた。中城湾港泡瀬沖合を埋め立てる東部海浜開発事業に反対する市民ら約三百人が参加。東門美津子沖縄市長に一期工事の中断、見直しを要請するアピール文を採択した。

 大会はパネルディスカッションなどを通し、同干潟が希少種の生息地であるほか、埋め立て事業が市民に財政的な負担を押し付けると指摘した。

 桑江テル子実行委員長は「泡瀬干潟を破壊してはいけない。東門市長は多角的な視点で精査し、勇気を出して計画を抜本的に見直してほしい」と要望した。

 アピール文は、沖縄市や県の将来、自然環境保全にとって何が大切なのかを根本から問い直そうと呼び掛けている。那覇市から参加した宇地原睦恵さん(54)は「自然は一度壊したら戻らない。将来に残すためにも、止められるものは止めたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271300_10.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月27日朝刊)

[F15飛行再開]

地域住民を軽視するな

 米国での墜落事故を受けて、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が三週間ぶりに飛行を再開した。

 米軍は事故原因などについて詳細を明らかにしていない。F15の未明離陸が度々強行された後だけに、基地周辺の住民や自治体が不安や米軍不信を増幅させ、憤るのは当然だ。

 米ミズーリ州空軍所属のF15が今月二日に事故を起こした際、機体は空中分解して墜落した。米空軍は「航空機に構造上の欠陥が起きた可能性」を示唆していた。

 F15戦闘機は一九七四年から配備が始まった。米空軍は約七百機を保有しており、このうち約五百機が約二十五年前に製造された旧型とされる。

 米空軍が飛行停止措置に踏み切ったのは、ミズーリ州での墜落事故が単純な事故ではなく、F15の構造上の欠陥が関与していると事態を深刻に受け止めた証左ではないのか。

 専門家らが指摘するように、F15の設計寿命に絡む「老朽化」が原因だった可能性は捨てきれない。米国内の報道によると、事故調査は継続中で、墜落原因について決定的な証拠はないと米軍も認めている。

 嘉手納基地にはF15五十四機が配備されており、エンジンの機種更新などを進めている矢先の事故である。事故原因が判明しないにもかかわらず飛行を再開したのであれば、住民を軽視した乱暴な決定としかいいようがない。

 これまでの米軍の説明を総合すると嘉手納基地所属のF15の半分近くが機体変更を終えていないことになる。同報道部によると、米空軍のチェックリストと照合し、一機に約十五時間以上かけて点検作業をしたようだ。

 しかし、老朽化によるものか、事故機固有の原因によるものかがはっきりしない中で、軍事上の理由から飛行再開に踏み切るというのは一体どういうことなのか、理解し難い。

 F15墜落事故を受け、嘉手納町議会、沖縄市議会はF15の撤去を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決。嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は事故原因が特定されていないことを問題視した上で、同機の飛行中止と即時撤去を嘉手納基地司令官らに要請した。

 要請の中で、F15は欠陥機だと指摘し「安全性が保障されたとは言えず、周辺住民の不安を払しょくし得る状況にはない」と反発している。

 米軍は住民を軽視することなく事故原因について情報を公開し、原因が不明であれば飛行を中止すべきである。政府も米軍に事故原因についての詳細な説明を強い姿勢で求めるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071127.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15飛行再開 即時中止を強く求める

 米空軍は26日、嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行を再開した。

 米国でのF15C型戦闘機の墜落事故を受けたF15機の飛行全面停止措置から約3週間。事故原因が明らかにされないまま飛行再開に踏み切った。露骨な「軍の論理」優先主義だ。

 地元住民や自治体が強く求めた原因究明までの飛行再開中止に耳を傾ける姿勢はみじんもない。直ちに中止するよう求める。県民の安全を全く顧みないF15戦闘機部隊は嘉手納基地から撤退させるほかない。

 F15戦闘機のトラブルは今に始まったことではない。2000年に墜落事故を起こしたほか、04年には空中での接触事故が起きている。うるま市伊計島の海上に墜落した昨年の事故は、記憶もまだ生々しい。

 F15機は使用開始から35年が経過している。老朽化した戦闘機の運用には安全性を懸念する声が根強い。

 うるま市の事故の際には、墜落からわずか2日後に飛行再開を強行するなど、目に余る米軍の対応が県民の強い憤りを買った。パイロットが緊急脱出するほどの事態だったにもかかわらず操縦に問題があったのか、機体に構造的な欠陥があったのか、米側から明確な説明はなかった。

 今回のF15飛行停止措置は、今月2日に米ミズーリ州で発生した空中分解の末に墜落した事故がきっかけだ。

 すべてのF15機の飛行を止める前代未聞の措置に踏み切ったのだから、よほどの異常事態であったに違いない。そう推察するのが常識である。

 再開までの約3週間、米国でどのような調査が行われ、機体の検査・分析結果から何が判明したのか、米軍は詳細を明らかにする責任がある。

 政府も政府である。国内民間機が事故やトラブルを起こせば、たとえ小さなトラブルでも徹底的に原因を調べ、疑いがあれば同型機への入念な点検を欠かさないはずだ。

 航空機の場合、万に一つのミスも許されない。飛行の安全性が保証されなければならないのは、民間機であれ軍用機であれ何ら変わりない。少なくとも飛行再開について県民を納得させるだけの合理的な説明を求めるのが筋である。

 嘉手納基地では飛行再開のこの日の朝、F15 13機が次々に飛び立った。その際、嘉手納町議会の基地対策特別委員会が離陸準備をしていたうちの1機が何らかの原因でUターンしたことを確認している。

 危険極まりない飛行を認めるわけにはいかない。即時中止を強く求める。

(11/27 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29266-storytopic-11.html

 

2007年11月27日(火) 夕刊 1面

名護市がアセス意見書/普天間代替

 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)で、名護市は二十七日午後、アセス方法書に対する知事意見の判断材料となる地元意見を県に提出する。宜野座村は二十八日に提出する。

 仲井真弘多知事は、アセス方法書について県環境影響評価審査会に諮問しており、同審査会の答申と名護市などの意見を合わせ、十二月二十一日の提出期限までに知事意見をまとめる。

 名護市の意見は、安全性や騒音の影響軽減の観点から可能な限り、代替施設の沖合への移動を求める。

 また、ケーソン(コンクリート箱)や護岸ブロック製作場設置のために大浦湾西側海域と辺野古漁港周辺を埋め立てることによる影響、辺野古ダム周辺での埋め立て用土砂採取のための掘削作業によるダムへの影響などの懸念を盛り込んでいる。意見は前文を含めて全八ページ。

 意見素案の検討に当たった基地対策委員会委員長の末松文信副市長は「住民意見概要や地域の要望を網羅した形で意見を述べている。知事にはこの意見を踏まえてやっていただきたい」と話した。市基地対策室の担当者らが二十七日午後、県庁を訪ね、意見を提出する。

 宜野座村は、政府との基本合意を基に「村内上空を飛行しないように調査を行ってほしい」との意見を盛り込む。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271700_03.html

 

2007年11月27日(火) 夕刊 5面

林教授、意見で「軍の強制」強調/「集団自決」問題

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、沖縄戦を含めた日本軍の戦争犯罪について研究している林博史関東学院大教授が二十七日、教科用図書検定調査審議会に提出した意見を自身のホームページで公表した。文科省は教科書会社からの「集団自決」に関する記述の訂正申請について、可否を判断するため林教授らから意見を聴いている(公表内容の詳細は二十八日朝刊に掲載)。

 林教授は、文科省から公表を控えるよう求められていたが「秘密裏に検定を行ったことが、今回のようなゆがんだ検定につながった」と考え、「検定過程を広く市民に公開し、その中で検定手続きが行われるべきだ」と公表に踏み切った。

 林教授は提出意見の中で、自著「沖縄戦と民衆」(大月書店)では、日本軍がアジア各地で現地住民に行った残虐行為が日本軍将兵らを通じて沖縄住民らに伝えられ、米軍につかまる恐怖心をあおった影響も「集団自決」の背景にあったと指摘していること、日本軍がいた地域では、スパイとして殺されるため住民が自主的な判断で投降できる状況になく、日本軍の存在が「集団自決」に重要な役割を果たしたと結論付けていることなどを説明した。

 また、多くの日本軍将兵が住民にあらかじめ手榴弾を配り「いざというときには自決せよ」と言い渡していたことは、実質的に日本軍による命令だと指摘。「集団自決」が日本軍の強制と誘導によるものであることを繰り返し強調した。その上で、教科書審議会は検定意見を撤回し、「集団自決」への日本軍の強制を明記した記述を認めるべきとの考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271700_05.html

 

2007年11月27日(火) 夕刊 5面

北谷でも騒音146回/F15飛行再開

 【北谷】米本国での墜落事故を受け、飛行を中止していた嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した二十六日、北谷町砂辺での騒音発生回数が飛行中止期間の一日平均の約三・四倍に当たる百四十六回を記録していたことが分かった。同日午後四時ごろには、今月最大となる騒音レベルの一一一・六デシベルが計測された。

 同町によると、飛行中止していた今月四日から二十五日までの二十二日間、データが取得できなかった三日間を除く十九日間の、一日平均騒音発生回数は四十二回だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711271700_07.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 1・2面

県審査会 普天間アセス追加質問へ/防衛局に事実上の書き直し要求

 米軍普天間飛行場の代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は二十七日、方法書の不備とみなされた三十二項目六十九問について、事業者の沖縄防衛局に追加説明を求める質問書の提出を決めた。事実上の方法書書き直し要求にあたる異例の措置。質問書前文には「誠意ある回答がなければ方法書としてみなせない」趣旨の条件も付け加えるという。

 質問書では(1)使用する航空機の飛行航路と訓練内容や機種の詳細(2)滑走路を千六百メートルやV字にした根拠(3)大浦湾を大規模に埋め立てる作業ヤードの必要性―など、方法書で示されていない事業内容の詳細と環境影響評価の具体的方法について説明を求める。

 委員からは「事実上の書き直しであり、(回答があれば)住民などへ公開する必要がある」との意見が出た。

 津嘉山会長は「方法書と同様の公告縦覧による公開は時間的に厳しいが、公開方法は検討する」と述べた。

 同方法書に関してはこれまで「事業内容が何一つ示されておらず、審査のしようがない」「国会で明かされる事業内容との整合性がない」などの批判が相次いでいた。

 県は質問書の回答期限を、次回審査会が開かれる三十日に予定。審査会は、飛行場施設に関する方法書への知事意見提出が十二月二十一日に迫っているため、埋め立て部分(知事意見提出締め切り来年一月二十一日)と分離して答申を出す可能性も示唆した。


     ◇     ◇     ◇     

沖合移動へ合理性構築


 米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)手続きで、名護市がアセス方法書に対する意見を県に出した。使用航空機の機種や運用、航空機弾薬搭載場など関連施設の情報開示、施設建設による環境への影響を厳しく問う内容だ。背景には、「方法書の内容では十分理解できない」(名護市)との国への不信がある。


詳細調査求める


 最も多い要求項目を並べたのは、名護市が求める「沖合移動」の根拠となる航空機騒音の軽減に関する調査だ。

 アセスでの騒音データに関して、沖縄防衛局が新たなデータ収集をしない考えを示していることを懸念。

 名護市試案の位置を含めて可能な限り沖合に出した位置での予測・評価を要求し、新たに航空機による試験飛行の実施を求めている。

 その上で、普天間飛行場の航空機騒音の現況把握を求め、定常状態のみならず、複数編隊の飛行や施設上空でのホバリングなど「最も大きな影響を受ける条件も対象」とした。

 玉城政光政策推進部長は「(軍民共用空港の)沖合案では約二キロの位置で地元住民は了解した。政府案の位置では地元は納得しない」と説明。試験飛行の実施により「(沖合移動の)合理的根拠を構築する」考えだ。

 加えて、航空機の種類、飛行時間、回数、経路を明らかにし、準備書に記載することを求めた。

 人間の耳には聞こえにくいが、不眠や頭痛などの影響を受けるとされる低周波音の調査も要求している。


政府主導に反発


 埋め立て用土砂を採取する辺野古ダム周辺では、環境アセスを実施する必要があるとしている。海域生物や生態系についても、作業ヤード設置での潮流変化の恐れから調査地点の追加、ウミガメ類の上陸調査、絶滅が危惧されるジュゴンの環境保全措置の策定を求めている。

 昨年四月の政府との基本合意以降、移設計画は政府主導で進められてきた。政府から情報が開示されない中で、米国側から訓練時の住宅地上空の飛行や最新鋭機オスプレイの配備計画が明らかになった。基地移設には市民から根強い反発があり、市長支持者の中にも、政府の強引な手法に対する反発が広がりつつある。名護市は、地元の理解を得るためにはこうした要望が不可欠だと判断した。(北部支社・石川亮太)


名護、試験飛行を要求


 【名護・宜野座】米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)手続きで、名護市と宜野座村は二十七日、アセス方法書に対する知事意見の判断材料となる地元意見を県に提出した。

 島袋吉和名護市長は、安全性や騒音軽減など住民生活への影響を最小限に抑える観点から「可能な限り沖合に移動する必要がある」と強調。試験飛行の実施による騒音検証を求めている。

 また、「(方法書に)記載されている事業内容では、どのような環境影響があるのか十分理解することができない」とも指摘。

 使用航空機の機種、飛行経路、関連施設の構造、事業の具体的内容を明らかにした上で、アセス項目や手法の選定、効果的な環境保全措置を検討することを求めた。

 東肇宜野座村長は、政府との基本合意書に基づき、村民の生活、教育、自然環境に悪影響を与えず、農業、漁業、観光産業やIT産業へも影響がないよう、宜野座村上空の飛行ルートからの回避を県知事意見に反映するよう求めている。

 仲井真弘多知事は、諮問している県環境影響評価審査会の答申と、名護市などの意見を合わせて知事意見をまとめ、来月二十一日までに沖縄防衛局に提出する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_02.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 1・27面

岩国から海兵隊600人/3日開始米軍訓練

 【中部】米軍嘉手納基地は十二月三日から七日までの五日間、同基地と米海兵隊普天間飛行場を拠点に即応訓練を実施すると、周辺自治体や県に事前通告していたことが二十七日、分かった。同基地の第一八航空団に加え、米海兵隊岩国航空基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加する。空軍と海兵隊が共同で行う大規模な即応訓練は異例。

 嘉手納基地では、米本国での墜落事故に伴い飛行を停止していたF15戦闘機が飛行再開を強行したばかりで、周辺自治体の反発が強まりそうだ。

 県は二十七日、周辺住民へ影響が及ばないよう同基地に申し入れた。米軍からの通知を受けた嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)と宜野湾市は米軍への抗議を検討している。

 米軍は訓練の規模など詳細を明らかにしていない。即応訓練は来月三日に開始され、同四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などの使用が予定されている。米軍は「使用器具は地元地域への影響を抑える場所に設置する」というが、どこに、どのような訓練器具が設置されるかは不明だ。

 野国会長は「米軍再編以降も基地負担は増加している。これほどの大規模訓練を本土の米軍基地で実施すれば大問題になる。なぜ沖縄のみが差別的基地負担を強いられるのか」と語気を強めた。


     ◇     ◇     ◇     

「負担軽減に逆行」


 【中部】「負担軽減に逆行する」―。二十七日、米軍が発表した来月三日からの嘉手納基地と普天間飛行場での即応訓練。県外の基地から三十機の戦闘機と六百人の米兵も加わる大規模な訓練に、周辺自治体の住民や議会関係者は驚き、怒った。米本国での墜落事故を受け飛行停止していた嘉手納基地のF15戦闘機が二十六日から飛行を再開したばかり。訓練激化の動きに住民の不安はピークに達している。

 嘉手納町屋良の知念正直さん(72)は空軍と海兵隊の共同即応訓練について「軍事ばかりが優先され、住民は軽視されている」と語気を強めた。

 普天間飛行場に隣接する宜野湾市宜野湾区。区内に沖縄国際大学があり、三年前のヘリ墜落事故の記憶は今も消えない。仲村清区長は「住宅街に近い場所で訓練をするのではなく、国外でやってほしい」と訴えた。

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「再三抗議決議をしても米軍には届かないのか。負担は増えるばかりで、生活が脅かされている」と批判。二十八日にも議会の対応を協議する。

 嘉手納町議会は十二月議会でF15飛行再開に抗議決議することを決定している。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「立て続けの大掛かりな訓練はもってのほか。F15が飛び、FA18が飛ぶことになれば爆音被害が余計にひどくなる。本当に腹立たしい」と怒り心頭だった。

 北谷町議会の照屋正治基地対策特別委員会委員長は「F15が訓練移転してもFA18が来るのであれば、基地の機能強化だ」と反発した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_03.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 2面

第1区域 埋め立て続行/沖縄市・東部海浜開発

 【沖縄】「東部海浜開発事業」について、沖縄市は二十七日までに、工事が進む第一区域(約九十六ヘクタール)を現行通り進めることを決めた。市議会十二月定例会が始まる来月六日までに全市議三十人に説明し、その後に記者会見を開いて同事業に対する考えを発表する。

 二〇〇二年に始まった国の埋め立て工事は、外周護岸全延長約四千五十メートルのうち約千五百メートルが暫定竣工。第一区域は、早ければ〇七年度に外周護岸の工事を終え、一二年にも埋め立てが完了する。

 複数の関係者は「第一区域は工事が進んでおり中止は難しい」との見解を示した。

 しかし、一三年ごろ着工予定の第二区域については、一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかり、絶滅危惧種の生息地が含まれるため、事業中止の可能性も含めて、県や国と調整を進めるとした。

 また、バブル期の一九九二年調査を基に推計され、大型ホテルなどが予定されている土地利用計画についても今後、時代に合った見直しを検討する。

 東門美津子市長は、早ければ三十日にも開かれる市議会全員協議会や記者会見の場で、最終結論などを発表するとみられる。

 同事業について沖縄市民は、環境問題で「中止」を求める意見と、市の活性化につながるとして「推進」する意見で二分されている。

 東門市長は「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ、二〇〇六年四月市長選で推進派候補を破って当選した。

 就任後は、公募で選んだ市民と学識経験者で組織する東部海浜開発事業検討会議を設置。今年七月には同検討会議から埋立後の企業立地の見込みや環境問題などの情報を精査した報告書を受け取り、「年内に結論を出す」としていた。


160億円投入 中止できず


 東部海浜開発事業について、沖縄市は第一区域の埋め立てを認めることを決めた。同区域が二〇一二年にも埋め立てが完了するほか、すでに〇五年度までに沖縄市だけで約十九億五千万円、県と国を合わせると総額約百六十億円もの税金が投入されており、「後戻りできない」と判断した。

 「推進」「中止」の要請を相次いで受けた東門美津子市長は、八月には市の部長クラス全員から意見聴取した。

 意見のほとんどが「推進か事業縮小を含めた見直し」で、中止は一人もいなかった。その点も、第一区域については認めざるを得ないと判断する要因になったとみられる。

 一方で、第二区域については(1)一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる(2)絶滅危惧種の生息地域―との理由から、埋立事業者の国、県などと調整を続ける構えだ。市幹部や市議からは、二〇一三年ごろに工事が始まる第二区域は「市長の任期を越える話」だとして、結論先送りを唱える意見もある。

 東門市長は、早ければ三十日にも市長判断を正式発表するが、来月六日からの市議会定例会では、反対派議員の反発が予想される。

 加えて、「第二区域も推進すべきだ」と考える野党議員も追及の姿勢を見せている。

 東門市長は、結論に至るまでの経緯、市の財政負担、土地利用の見直しなどを含めたすべての課題を詳しく説明する必要がある。それが、「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断」するとした公約を果たすことになる。(中部支社・吉川毅)


[ことば]


 東部海浜開発事業 国と県が中城湾港新港地区の港湾整備のために浚渫した土砂を利用して約187ヘクタールの人工島をつくり、その後、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して市経済の活性化を図る計画。埋立造成の総事業費は約489億円。沖縄市の負担は、土地購入費約184億円、インフラ整備約91億円が見込まれている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_04.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 2面

全駐労、30日に再スト/団交不調で方針

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円削減を提案した問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千八百人)は二十七日午後、防衛省と四回目の団体交渉に臨んだ。

 全駐労側は手当削減分の補償を求めたが、防衛省側から前向きな回答はなく、全駐労は三十日に第二波の全国統一ストライキを決行する方針を固めた。

 ストの対応は三役に一任された。二十九日予定の防衛省との最終交渉が決裂した場合、三役がストを正式決定する。二十一日の前回ストは始業時から四時間だったが、三十日は一般職種の就労時間となる八時間に延長し、実質的に終日二十四時間ストになる。

 全駐労によると、二十七日の団体交渉で防衛省は「政府内の調整が進んでいない」として回答を保留。全駐労側が引き続きの調整を要望したのに対し、「努力する」と述べるにとどめたという。

 全駐労側は「前向きな回答は得られておらず、ストは避けられない」と判断した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_09.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 26面

訴訟にもっと関心を/「集団自決」シンポ

 大阪地裁で行われた「集団自決」訴訟の本人尋問の様子を傍聴者が報告し、新たに浮かんだ訴訟の問題点などを話し合う緊急シンポジウム「沖縄戦の実相を問う」(沖縄戦の歴史歪曲を許さず沖縄から平和教育をすすめる会主催)が二十七日、那覇市の教育福祉会館で開かれ、約五十人が参加した。

 今月九日の本人尋問を傍聴した沖縄平和ネットワークの津多則光・沖国大非常勤講師らが報告した。

 津多さんは、原告の座間味島・海上挺進第一戦隊の元隊長、梅澤裕さん(90)の証言とほかの証拠の矛盾点などを指摘し、「六十二年後の今でも戦隊長の意識のままでいることが表れている」と批判した。

 同ネットワークの村上有慶共同代表は、「集団自決」教科書検定問題とも連動している訴訟への県内外の関心が低い現状を話し、「この訴訟にもし負ければ、沖縄戦の真実がゆがめられることになる。法廷内だけの戦いに任せるのではなく、沖縄が声を上げ全国に伝えなくては」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_10.html

 

2007年11月28日(水) 朝刊 26面

日米共同使用の受け入れ撤回を/金武町で反対集会

 【金武】米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊による共同使用を、地元の儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長が受け入れたことを受け、市民団体のメンバーら約五十人が二十七日、金武町役場で抗議集会を開いた。参加者らは「軍事演習強化反対」「日米の軍事一体化反対」などとシュプレヒコールを繰り返し、受け入れ撤回を求めた。

 沖縄平和運動センター、北部地区労、自治労北部総支部が主催。同センターの崎山嗣幸議長は「三首長の受け入れは住民を裏切る行為。日米の軍事一体化は許されない」と三町村長の姿勢を批判。北部地区労の仲里正弘議長は「金で受け入れる行為は許されない」。自治労北部総支部の宮城保委員長は「北部への基地の集約は許されない」と強調した。

 集会後各団体の代表者らが、出張中の儀武剛金武町長に代わって比嘉貴一企画課長に撤回を求める要請書を手渡し、あらためて儀武町長との面会を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281300_11.html

 

2007年11月28日(水) 夕刊 1面

FA18嘉手納に4機着/海兵隊・空軍合同訓練

 【嘉手納】十二月三日から七日まで、米軍嘉手納基地と普天間飛行場を拠点に、米海兵隊岩国基地(山口県)所属の部隊が参加して行われる空軍と海兵隊の合同即応訓練に使用するとみられるFA18戦闘攻撃機約三十機の一部が二十八日午前までに嘉手納基地に到着していることが分かった。

 同基地報道部は、訓練に使用するFA18が到着していることは認めたが、機数や到着期日は明らかにしていない。

 嘉手納町屋良の「道の駅かでな」からは、外来機がよく使用するという同基地内の駐機場に、少なくとも四機のFA18が駐機しているのが確認された。

 目撃者などによると、二十七日午後三時すぎまで、同駐機場にこの四機は駐機していなかったという。別のFA18に、訓練用の模擬爆弾を装着している様子も見られた。

 今回の即応訓練は、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機三十機と、海兵隊員約六百人、嘉手納基地の第一八航空団が参加する。海兵隊員は二十九日に到着する。空軍と海兵隊が共同で実施する大規模な即応訓練は極めて異例という。

 即応訓練は来月三日に開始。四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などが使用される予定。FA18は即応訓練終了後、来月十二日まで同基地を拠点に別の訓練を行うという。


 米軍からの通知を受けた嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)と宜野湾市は即応訓練の情報収集を急いでおり、米軍への抗議を検討している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711281700_01.html

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