2007年5月24日(木) 朝刊 3面
シュワブ調査「サンゴ大幅な破壊ない」/北原長官が答弁
【東京】北原巖男防衛施設庁長官は二十三日の衆院外務委員会で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に伴う現況調査のため那覇防衛施設局が海底に設置した機器によってサンゴの一部が損傷を受けた問題について「サンゴを大幅に破壊したとか損傷したとは考えていない」と述べ、被害は軽微との認識を示した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。
海底への機器設置作業に海上自衛隊の潜水士が参加した法的根拠は、防衛省設置法四条一九号とした。
設置法四条は防衛省の所掌事務を規定し、一九号は「条約に基づいて日本国にある外国軍隊(駐留軍)の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること」とされている。
北原長官は条文の解釈について「一九号に基づいて行うところの(普天間飛行場の)移設の一環」として、海自が「官庁間協力」したとの見解を説明した。
照屋氏は「一九号を縦からも斜めからも表からも裏からも読んだが、三十五年間弁護士をした僕でもそんな解釈にはならない」と批判。官庁間協力についても「防衛施設庁は防衛省の外局だ」と指摘し、適用を問題視した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705241300_05.html
2007年5月24日(木) 朝刊 2面
野党反発「自治体分裂」/米軍再編法成立
西銘氏 出来高払いに反対
【東京】「米軍再編推進法案」が二十三日の参院本会議で可決、成立したことを受け、県選出、出身の国会議員のうち民主、社民の野党各党はそろって反発。「出来高払い」の交付金制度の在り方などをめぐって、自民党の西銘順志郎氏も問題点を指摘、異例の反対姿勢を示した。無所属の島尻安伊子氏は賛成した。
七月の参院選に立候補する西銘氏は地元での選挙活動のため本会議を欠席したが、交付金制度について「いろいろな議論があったと思うが、防衛省のさじ加減で交付金が決められ、恣意的な運用が懸念される。もう少し練ってもいい法案だと思う」との認識を示した。
喜納昌吉氏(民主)は「アメとムチをちらつかせる手法は、自治体の分裂を起こす。それ以前の問題として、県内に基地負担を押し付け続ける米軍再編は問題だ」と強調した。
大田昌秀氏(社民)は「成立したことを極めて残念に思う。政府は基地負担の軽減をしきりに強調するが、実態として外来機が移駐するなど、負担が続く状況は変わらない」と述べ、法案の実効性に疑問を呈した。
島尻氏は「海兵隊のグアム移転を含めた沖縄の負担軽減のため、賛成した」とする一方、「全国の基地を抱える自治体が同じ思いを持っていると思うが、感情を刺激するような感想は持っている」と語った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705241300_06.html
社説(2007年5月24日朝刊)
[米軍再編法成立]
地域の自立心むしばむ
在日米軍再編への協力の度合いに応じて関係自治体に交付金を支給することを柱とした米軍再編推進法(駐留軍等再編円滑実施特措法)が参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。
同法では防衛相が関係自治体を「再編関連特定周辺市町村」に指定し、(1)再編計画(政府案)の受け入れ(2)環境影響評価(アセスメント)の着手(3)施設整備の着工(4)工事完了・運用開始―の四段階に分け、「再編交付金」を上積みする仕組みになっている。
再編計画に協力する自治体に交付金を支給し、拒む自治体は冷遇し圧力をかける「出来高払い」方式であり、日米合意の受け入れを強く迫る「アメとムチ」の政策としか言いようがない。
同法には、特に負担の重い市町村を「再編関連振興特別地域」に指定し、公共工事の補助率に特例を設け、沖縄の場合、国の負担を最大95%とする沖縄振興特別措置法適用も盛り込んだ。
また、在沖米海兵隊のグアム移転に伴う融資などを可能にするため、国際協力銀行(JBIC)の業務に特例も設定している。
一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で普天間飛行場返還などに合意したが、進展がなかったとして、政府は再編計画を推進する立法措置が必要と判断した。
まずは昨年五月に合意した米軍再編最終報告の実施ありきだ。だが県内では地元の頭越しの日米合意という手法に批判の声が強い。地元に配慮した十分な審議が尽くされたとは言えまい。
この問題では名護市が政府のV字形案の沖合移動を求めたのに対し、防衛省首脳が名護市への交付は「ゼロ」と発言し、久間章生防衛相は交付対象になるとの考えを示すなど、防衛省の姿勢や認定基準はあいまいだ。
普天間飛行場の移設先の環境調査に掃海母艦など海上自衛隊の投入の動きも合わせると、米軍再編の日米合意を優先する政府の強硬姿勢が際立つ。
同法は二〇一七年三月末までの時限立法。再編実施が遅れる場合は交付金の交付期間を最大五年間延長する。だが、地元の摩擦を強める強硬姿勢だけで再編が進展するかどうか疑問だ。
最も懸念されるのは住民同士の対立だ。反対する自治体や住民に賛成派の矛先が向けられることも考えられる。その実態は沖縄狙い撃ちの法律であり、沖縄の基地負担の経緯を軽視するような強硬姿勢には憤りを覚える。
分権が進む一方、地方の財政事情は悪化している。再編交付金は基地関係自治体の国依存をより強め、地域の自立心をむしばむ結果を招くだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070524.html#no_1
2007年5月24日(木) 夕刊 5面
与那原議会も意見書/「集団自決」修正検定
【与那原】教科書検定で高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する日本軍の関与が削除された問題で、与那原町議会(又吉忍夫議長)は二十四日午前臨時会を開き、検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は内閣総理大臣、文部科学大臣、衆参両議院議長ら。
意見書では、文科省の検定姿勢変更について「沖縄戦体験者の数多くの証言による歴史的事実を否定しようとするもの」と批判。過去の教科書検定裁判の判決を引用しながら「軍による『自決』の強制は明確」と述べている。
さらに「検定結果は沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を覆い隠すもので、沖縄の未来を担う子どもはおろか、日本全国の子どもたちにこのような教科書が渡ることは到底容認できない」と抗議。その上で、検定意見の速やかな撤回と記述の復活を求めている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705241700_05.html