沖縄タイムス・琉球新報 関連記事・社説(5月23日朝刊 その2)

沖縄タイムス 社説(2007年5月23日朝刊)
[サンゴ損傷]
本末転倒の破壊行為だ
 本末転倒の破壊行為といわざるを得ない。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で、那覇防衛施設局による海域の環境現況調査(事前調査)で生きたサンゴが損傷された。
 ジュゴンネットワーク沖縄とジュゴン保護基金委員会が撮影し公表した写真は、施設局が海底に設置した調査機器の鉄柱がサンゴに突き刺さり、割れているのがはっきり確認できる。
 施設局の現況調査の目的は、これから始まるサンゴの産卵状況を調べることにあったはずだ。
 新聞に掲載された痛々しいサンゴを見ると、サンゴを破壊しておきながら産卵状況を調べるという施設局の説明に異議を唱えたくなる。慎重さと配慮に欠けた調査と、自ら証明したものと思うからだ。
 普天間飛行場の移設をめぐる最近の防衛省は、県民を上から押さえつける強硬姿勢ばかりが目立つ。
 調査支援目的のために法的根拠もあいまいなまま海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を派遣し、潜水要員を投入した。これでは県民を掃海母艦で脅していると見られても仕方がない。
 掃海母艦にしろ、潜水要員にせよ、防衛省も県民の怒りの度合いを予測した上での決定であれば、この程度は、まだ沖縄の許容範囲ととらえているのかもしれない。
 裏を返せば、県民がそのように見られているということである。県民に対する自信とおごり。それが怒りの目で見られていることを忘れては、しっぺ返しを食うことになるのではないか。
 サンゴ損傷で抗議を受けた那覇防衛施設局の佐藤勉局長は「事実関係を調べたい」と答えている。当然だろう。
 施設局は同海域百十二カ所に調査機器を設置している。サンゴ損傷の経緯を調査し公表するとともに、残りの点検も、反対派が抗議行動を繰り返す中で実力で移設作業を進める事業者としての最低限の務めである。全カ所の結果を明らかにするまでは、海域の調査は中止するべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070523.html#no_2

県、施設局に報告要求へ 辺野古沖サンゴ損傷
 米軍普天間飛行場移設先の環境現況調査(事前調査)の機器設置でサンゴを損傷させたと環境保護団体が指摘している問題で、県は22日午後、関係各課で会議を開き、那覇防衛施設局に設置状況を文書で報告するよう求めることを確認した。調査海域の使用同意の際に県が求めた配慮事項でも、施設局が報告することになっていた調査機器の設置方法や工程などがまだ報告されておらず、
こちらも併せて督促する。
 県が4月末に施設局の海域使用に同意した際、添付した配慮事項では「調査の具体的な調査工程、調査期間、調査時期、調査機器設置方法、環境配慮の内容については、決定次第、県に報告すること」と求めていた。だが18日からの機器設置着手後、22日現在も施設局から報告されていない。
 県によると、施設局からは「同時並行で実施しており、報告項目がそろっていない」との回答があった。機器設置の18日にも県は報告を求めていた。
 県の配慮事項では、藻場・サンゴ類への配慮として「調査地点付近の藻場・サンゴ類および海底地盤の状況について、写真とあわせて図示し記録すること」と要望していた。
 施設局はこれまで、機器の設置などについては県と調整して進めていくと説明していた。
 22日の会議には、海域使用に関係する返還問題対策課と文化課、水産課、環境政策課、海岸防災課から担当者が出席した。(滝本匠)
(琉球新報 5/23 9:45)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23981-storytopic-3.html

琉球新報 社説
サンゴ損傷・作業方法は適切だったか
 自然環境を調べるために自然を破壊したのでは本末転倒としか言いようがない。那覇防衛施設局が普天間飛行場代替施設移設先の環境現況調査(事前調査)のため名護市辺野古沖に設置した機器によって、サンゴが損傷していたと環境保護団体が明らかにした。
 ジュゴンネットワーク沖縄、ジュゴン保護基金委員会の両団体が公表した写真によると、サンゴの産卵状況を調べる着床具を固定する鉄筋が、生きたサンゴを貫通、亀裂を生じさせていた。
 那覇防衛施設局は、早急に事実関係を調査し、詳細を明らかにすべきだ。
 そもそも、この環境現況調査自体、機器の設置場所など詳細を一切公表しないままに実施されていることが大きな問題だ。これでは作業の仕方や調査方法が適切なのかどうか、誰にも分からない。
 作業に協力したとされる海上自衛隊の潜水士が具体的にどのような作業に携わったのか、何人が参加したかについても防衛省は明らかにしていない。
 分かっているのは、サンゴ調査機器39カ所、海生生物調査用ビデオカメラ14カ所、パッシブソナー(音波探知機)30カ所、海象調査用機器29カ所の計112カ所に機器を設置するということぐらいだ。
 しかも、これらを発表したのは施設局ではなく公共用財産使用協議に同意した県である。政府は説明責任を一切果たしておらず、事前調査の全容は秘密のベールに包まれている。
 県は、海域使用に同意した際、ジュゴンやサンゴへの配慮を要望した。その中で「調査機器の設置に当たっては、調査地点周辺の藻場・サンゴ類および海底地盤への影響を低減するため、調査機器設置前の現地踏査の結果を勘案して設置位置の調整を行うこと」などと求めていた。
 施設局は、これをどう受け止めたのか。サンゴを傷つけないための適切な対策を講じたのか、あるいは講じなかったのか。
 那覇防衛施設局は「機器を設置するときはサンゴのない場所を選んで作業するという手順になっている」と説明しているが、作業手順が守られていなかった可能性がある。
 環境団体の間からは「サンゴに詳しい業者ではなく、自衛隊員が作業に入ったためサンゴを損傷したのではないか」と指摘する声さえ出ている。疑問は尽きない。
 施設局は調査機器の設置場所を公表すると同時に、自衛隊、民間の潜水士の数、それぞれが担当した地点などを含め、明らかにすべきである。すべてを覆い隠した秘密の調査では、県民の不信を増幅させるだけだ。
(5/23 9:52)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23987-storytopic-11.html

「集団自決」の軍関与削除 座間味、渡嘉敷撤回意見書へ
 【座間味・渡嘉敷】座間味村議会(金城英雄議長)、渡嘉敷村議会(島村武議長)は22日、全員協議会を開き、教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する記述で日本軍による命令などの表現が削除されたことに対し、検定意見を撤回するよう国に求める意見書を提案することを決めた。座間味村は29日に臨時議会を開き、意見書を全会一致で可決する見通し。渡嘉敷村は6月14日開会の6月定例会に提案。初日の14日に全会一致で可決する見通し。
 沖縄戦で旧日本軍の秘密部隊、海上特攻隊が置かれた座間味、渡嘉敷の両村では「集団自決」が起きた。座間味村は米軍が上陸した1945年3月26日、座間味島、慶留間島、屋嘉比島で手りゅう弾やかみそりなどを使った「集団自決」が発生。
村長をはじめ村職員、住民ら多数が死亡した。
 渡嘉敷村では同月28日に「集団自決」が起き、人口1500人のうち、200―300人が犠牲になったとされる。「軍命があった」と証言する住民もいる。
 文科省は検定姿勢変更の理由の一つとして、当時の座間味島の指揮官の「自決命令はない」との訴訟提起を挙げている。
(琉球新報 5/23 10:02)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23993-storytopic-1.html

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