沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 1面
旧軍飛行場/那覇市が4事業提案
那覇市の翁長雄志市長は二日、二〇〇六年度に行った旧軍飛行場の用地問題事業可能性調査の報告書を発表した。地主会の要望をまとめ(1)那覇空港関連事業(2)那覇市の公的施設建設(3)総合健康増進施設建設(4)ファンド(民間参加型)事業―を提案。連休明けにも地主会に説明して了解を得た上で、県に要請する。具体的な提案を含めた市の報告書策定は初めて。
実際に実施するのは一事業だが、複数の事業を合わせたり、ファンド事業のアイデア次第で新たな事業案が出る可能性もあるとしている。
旧軍飛行場の用地問題は、一一年度に終了する沖縄振興計画で「戦後処理の課題」に位置付けられている。県は今月下旬にも報告書で示された事業案などを旧地主会や、旧軍飛行場のあるほかの市町村に対して説明会を開くとともに、事業案を検証。残り五年となった沖縄振興計画の中で解決するため今後、国との調整をどう進めるかなど検討する。
市は、県の補助を受け団体補償による問題解決を求める「旧那覇飛行場用地問題解決地主会」と「旧小禄飛行場字鏡水権利獲得期成会」からヒアリングした。案は、県が示した(1)団体補償として検討(2)地主会の提案を中心に、慰藉や地域振興の観点を重視―などを前提に策定。事業の安定性、継続可能性を考慮し、有識者らでつくる検討委員会が地主会から挙がった計十一の案を四案に絞った。
いずれも旧地主関係者の奨学金制度や雇用の優遇措置など「慰藉事業」を盛り込んでいる。
翁長那覇市長は「事業案をさらに精査し、問題解決に向けて取り組んでいきたい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_03.html
沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 26面
憲法の危機は国民の危機/きょう那覇で講演会
県憲法普及協議会などが主催する今年で四十二回目の憲法講演会が三日、那覇市民会館で開かれる。演壇に立つのは、米国生まれの詩人で絵本作家のアーサー・ビナードさん。東京で詩作を続けている。昨今の日本の改憲論議はどう映るのか。講演を前に二日、那覇市内で聞いた。(聞き手=社会部・粟国雄一郎)
今の改憲論議は先を急ぎ過ぎていますね。日本の憲法は世界に誇る超一流の憲法。めったに生まれてこない一世紀に一度の奇跡です。ただ六十歳とまだ若い。シェークスピアの戯曲への評価が時代ごとに揺れ動くように不遇な時代もあります。
「世界情勢と日本の立場が合わない」などと、憲法が現実と乖離しているといわれるが、乖離しているのは憲法ではなく、与党の政治家たち。三流の政治家を選んでそれに憲法を合わせるか。市民が力を出して、政治家を少しでも超一流の憲法に近づけられるか、それが試されている。
アリストテレスが「いい法律があっても、実践しなければいい政治はない」と言ったが、今の日本を見透かしたような言葉です。日本で、憲法を生かす積極的な外交に取り組んだ政権はかつてない。古くなったなんていうけど、新品ですよ。一度たりとも使われていない、未使用。日本国憲法はすごい力を秘めているのに、まだ一度も試されていないんです。
沖縄に目を向けて、沖縄が歩んできた道を真剣に考えると、日本国憲法に行き着く。と同時に、侵略戦争をしたアジアに対する答えでもある。それを捨てることは、いったん出したその答えを無効にすること。沖縄とアジアを消すことになる。
憲法を捨てようとする動きと、沖縄の戦争を消そうとしているのはまったく同じ勢力です。教科書から「集団自決」の強制を消す動きと、憲法改正手続き法案のタイミングが重なりましたが偶然ではありません。
憲法の危機は、沖縄をまったく知らない、歴史の奥に潜む因果関係を考えようとしない国民の危機です。
講演会は、三日午後一時半から同四時まで、那覇市民会館大ホールで。演題は「『美しい国のラムネ』―プシュッと言葉の栓を開ける―」。高校生以下は無料、一般七百円、学生五百円。
アーサー・ビナード 1967年7月、米ミシガン州生まれ。90年に来日、東京を拠点に詩作を続ける。2001年に詩集「釣り上げては」で中原中也賞。07年に「ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸」で日本絵本賞。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_04.html
修正主張は「合意内」 普天間移設で仲井真知事
日本時間の2日未明にワシントンで開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、米軍普天間飛行場移設について県と名護市が求めている移設案の沖合移動に言及がなかったことに対して仲井真弘多知事は2日夕、記者団に対し「昨年の(米軍再編の)基本合意は尊重すべきだ。名護市の(要求)は基本合意の範囲内だ。『修正』というのも(受け)取り方だ」と述べ、県や名護市の主張が合意案に含まれるものだとの認識をあらためて示した。
公約として政府に主張している(1)普天間飛行場の3年めどの閉鎖状態実現(2)現行V字移設案は容認できない|の2点について「まだ政府からきちっと返答をいただいていない。その2点を満たすような方向でのご返事をいただきたい」とあらためて要求した。
その上で、政府から回答が示されないまま環境影響評価(アセスメント)手続きで方法書を送付してきた場合は「それは受け付けられない」との意思を重ねて示した。
2プラス2の内容で沖縄に関連した部分については「(普天間移設で)技術専門的な設計の取り組みというが、取り組みがどうなのかはっきりしない。嘉手納より南の部分についてどうするのか分かりやすく出ていない」と指摘した。
内容全般には「これまで1年たって、どんなふうに動いているかいないか、実情のチェックと情報交換という印象を受ける」と述べた。
(5/3 10:24) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23470-storytopic-3.html