沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月26日)

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 2面
知事・市長・防衛相会談10分 進展なし
移設、政府ペース
 米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、二十五日に防衛省内で行われた仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長と久間章生防衛相の会談は、わずか十分間で終了した。日米首脳会談や、外務、防衛閣僚の日米安全保障協議委員会(2プラス2)前の事態打開を模索した県は、逆に政府内の「壁の厚さ」を思い知らされる形となった。

 一方で政府は、海域の事前調査着手や公共用財産使用協議書への県の同意など、移設進ちょくの「実績」を着々と積み上げており、政府のペースでなし崩し的に移設が進むことも懸念される。

読み違え

 公式会談の約三時間前。会談を控えた仲井真知事らが滞在する都内のホテルを久間防衛相が訪ねた。

 意見交換の中身は明らかでないが、防衛省幹部はこの面談に着目し、久間防衛相が環境アセスメント後の滑走路の移動に関し、何らかの「口約束」をした可能性を指摘。「アセス後の修正なら『政治的配慮』はあるかもしれないが、アセス前の修正はない」との認識を示す。

 同幹部は知事らの上京前から「安倍(晋三)総理はぶれていない。知事は読み間違えている」と繰り返し、アセス前の滑走路の位置修正にこだわる仲井真知事のスタンスに疑問符を付けていた。

 同幹部は、沖縄の政府中枢への影響力低下を指摘。主要政治家の力を頼りに、県の意思を通そうとする歴代の保守県政の手法が現状では通用しないことを強調する。

 仲井真知事は参院補選中、中川秀直自民党幹事長らを介し、安倍首相に滑走路の沖合移動を求める名護市の意向を伝えていた。

 久間防衛相は周辺に「実施段階で設計を変える分には修正とはいえない」などと柔軟姿勢を示していたという。

 知事、市長、防衛相の思惑は一致していたが、水面下では防衛省の事務方が、安倍首相周辺にV字形滑走路の沖合移動に応じないよう強く働き掛けていた経緯がある。

 今月下旬から来月初めにかけ、日米首脳会談や2プラス2など日米の重要会議が続く。自民党国防族は「(V字形滑走路の)修正はできない。日米首脳会談にも影響する」とタイミングの悪さも指摘する。

長期戦?

 「総理も大臣も事務方に洗脳され、米側とも共同戦線を張っている。それを打ち破るのは並大抵ではない」。県首脳は久間防衛相との会談結果をこう振り返る。

 県首脳は今回の会談で、地元が求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の危険除去策で具体的な成果は得られなかったことを示唆した上で、今後の移設問題への取り組みについて「時間がかかるかもしれない。長期戦に持ち込んだ方が沖縄にとってはいいのでは」と主張。

 一方で「アセス前の修正」にこだわり、アセス方法書の提示も拒んできたこれまでのスタンスについて「いろいろ戦略はあると思う。戦略をどうつくるかだ」と言及。今回の会談結果を受け、政策実現を図る手法の転換も示唆する。

 国側は2プラス2後に、アセス方法書提示のタイミングを模索するとみられるが、滑走路の位置の移動にこだわる名護市のスタンスの行方も焦点になりそうだ。(東京支社・島袋晋作、政経部・渡辺豪)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_03.html

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 27面
「海域使用 同意撤回を」/辺野古調査
アセス監視団、県に抗議
 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う名護市キャンプ・シュワブ沿岸海域の現況調査で、県が那覇防衛施設局の海域使用に同意したことについて、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団(東恩納琢磨団長)は二十五日、県環境政策課に抗議するとともに撤回するよう要請した。

 土田武信副団長は「アセス手続きに入る前の現況調査は脱法行為だ」と指摘、県の見解をただした。また、県が同意文書の内容を一部開示しなかったことに対し、異議を申し立てた。

 これに対し、下地寛課長は「海域の使用は要件がそろっておれば認めざるを得ない」などと答えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_04.html

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 2面
「住民感情踏まえ対応」/F22沖縄常駐化に外相
 【東京】麻生太郎外相は二十五日の衆院外務委員会で、米軍嘉手納基地に一時配備されている最新鋭ステルス戦闘機F22Aの常駐化について「恒常化されるとは聞いていない。(周辺住民の)気持ちは理解できるので、それを踏まえて対応したい」との認識を示した。照屋寛徳氏(社民)の質問に答えた。

 同機の配備をめぐっては二十四日、在日米軍トップのライト司令官(空軍中将)が今後の朝鮮半島情勢次第で、再配備の可能性は十分あるとの認識を示していた。

 照屋氏は同機の常駐化が、基地周辺住民の負担増になると指摘し、外相の姿勢をただした。麻生外相は「(配備は)五月末に終わると承知している。仮定の問題には答えられない」とも述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_05.html

核情報を収集か 米偵察機が飛来

放射能測定の機能を持った電子情報偵察機RC135U=25日、米空軍嘉手納基地

 【嘉手納】米空軍嘉手納基地に放射能測定の特殊な機能を持った電子情報偵察機RC135Uが3月中旬から飛来していたことが25日、確認された。同機は米国ネブラスカ州・オファット空軍基地の所属。核関連の情報収集を行う専門の偵察機として米国にも2機しかない。昨年10月にも嘉手納基地への飛来が確認されている。一時配備されているF22戦闘機を含め嘉手納基地へ米空軍の最新鋭機飛来が相次いでいる。
(4/26 9:52) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23285-storytopic-3.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月26日朝刊)

[米軍用地訴訟]

基地被害も判断すべき
 米軍嘉手納基地内にある軍用地の強制使用で、土地を共有して基地への提供を拒否している新崎盛暉氏ら一坪反戦地主会のメンバーらが防衛相に対し、米軍用地特措法に基づく使用認定の取り消しを求めた訴訟で、那覇地裁(大野和明裁判長)は二十四日、原告の訴えを棄却した。

 判決は、土地の強制使用が適正かどうかを判断する使用認定について「首相の政策的・技術的な裁量にゆだねられている」と指摘。認定の際、考慮すべき事情として(1)わが国の安全と極東などの国際情勢(2)所有者や周辺地域の住民の負担や被害の程度(3)代替地等の提供の可能性―などを列挙している。

 嘉手納飛行場については「わが国が提供する米軍基地のなかでも、最重要で代替地を提供する可能性も極めて乏しい」としている。その上で「首相がした使用認定に裁量の逸脱、乱用があるとまではいえない」と結論付けた。

 住民の基地被害や負担について直接的な言及はなく、「基地が集中していることによって生じているとされる種々の問題」あるいは「原告の主張する諸事情」と記述している。

 裁判所は、判決言い渡しにあたって日夜激しい爆音被害に苦しんでいる嘉手納基地周辺の住民についてどこまで考えたことがあるだろうか。

 使用認定の際、考慮すべき事情として「住民の負担や被害の程度」を挙げながら、基地負担や被害について何の判断も示していない。判決は基地被害を無視していると言っていい。

 県内の米軍用地をめぐっては、一九九五年に代理署名を拒否した大田昌秀知事(当時)を相手に、国が職務執行命令訴訟を提起。最高裁大法廷は九六年八月、強制使用手続きを定めた米軍用地特措法を合憲と判断した。那覇地裁は、こうした最高裁判決を踏襲。住民の負担と被害に関する文言など引用部分も多い。

 もともとある判例に沿った判断だ。これでは結論ありきの感はぬぐえない。司法はもっと積極的に沖縄の実態に照らして判断すべきではないか。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070426.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年4月26日朝刊)

[「海域調査」同意]

基本姿勢をなぜ崩すのか
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、仲井真弘多知事と島袋吉和名護市長が防衛省内で久間章生防衛相と会談した。

 仲井真知事は、環境影響評価(アセスメント)の前段となる現況調査(事前調査)のための海域使用に同意したことを伝えた。久間防衛相は謝意を示し、今後の手続きへの協力を求めた。

 県や名護市が求めているV字形滑走路の修正について、久間防衛相は「いろいろな経緯を経て今のV字形になっており、最良のものだ」との認識を示し、V字形を基本に作業や手続きを進めていく必要性を強調した。

 普天間飛行場の危険性除去については「移設を早く進めないといけない。(移設完了までの間)いろいろな工夫を考えていきたい」と述べた。

 県は、V字形滑走路を沖合南西に移動させる名護市の修正案や、普天間飛行場の「三年内閉鎖状態」の見通しもたたない中で、同意に踏み切った。

 V字形案について、仲井真知事は現行のままでは賛成できないと何度も明言してきた。これが選挙公約の大きな柱ではなかったのか。今回の調査をどのように位置付けているのか、県民にきちんと説明すべきだ。

 政府はアセス前の滑走路の位置修正には応じないとの姿勢を示してきた。このままでは地元の意向が反映されないまま外堀が着々と埋められ、なし崩しの移設作業が進むことになる。

 県は当初、事前調査について「次の段階の環境アセスにつながるもので、V字形案などについて地元の意向も踏まえて協議した後にやるべき」との立場だった。基本姿勢をなぜ崩すのか。

 同意した背景には、早期移設が普天間の最大の危険性除去につながるとの考えが基本にあるようだ。現況調査の範囲も広く、あえて拒否する理由もないというのであれば問題だろう。

 県政にとってはジレンマだ。しかし何の担保もないまま危険性除去や政府案修正に淡い期待を抱くのは危うい。県が追い詰められ、現行案の既成事実化に手を貸す結果を招きかねない。

 日米首脳会談や日米安全保障協議委員会(2プラス2)を目前に控え、政府は米軍再編推進法案の成立などを含め、普天間移設の着実な進展を米側にアピールする狙いもあるだろう。

 知事選、参院補選で辺野古移設を推進する候補が連続当選し、政府も気をよくしているはずだ。

 だが、宜野湾市長選で伊波洋一氏が大差で当選したように、県内移設を根本から疑問視する声は決して小さくはない。県民世論を読み誤り、強硬姿勢で臨めば県民の反発を買うだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070426.html#no_1

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