2007年4月5日(木) 朝刊 27面
「やはり政府はうそを」オスプレイ配備隠し
政府は、やはりうそをついていた―。普天間代替施設へのMV22オスプレイ配備計画を政府が隠していたことが四日明らかになり、移設先の名護市の市民団体などから怒りの声が噴出した。「事実を認めるべきだ」「計画を白紙に戻せ」。ヘリパッドが集落近くに移設される東村の住民にも、不安は広がった。一方、名護市は「事実を確認してから」と慎重な姿勢を見せた。
移設先の大浦湾に面した名護市東海岸に住む沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長。「国はこれまで市民や県民をだまし続けてきた。闇から闇に葬り去ることは許されず、国は事実を認めるべきだ」と激しく批判した。
オスプレイに対する住民の不安を訴え、「これまでの説明と違うのだから、住民や自治体への説明からやり直すべきだ。今の状態で事前調査を強行すべきではない」と、国の現況調査の中止を求めた。
ヘリ基地反対協議会の大西照雄共同代表は「国の秘密主義、やりたい放題は許されない。県民はだまされてはいけない」と強調した。
政府は一九九七年の名護市民投票以来、「具体的な配備計画は承知していない」と繰り返してきた。SACO合意を究明する県民会議の真喜志好一さんは「オスプレイには力学上の根本的な矛盾がある。政府自身がその危険を認識したからこそ、情報を隠してきた。沖縄を植民地扱いしている」と憤った。
沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「日米両政府は基地さえ造ってしまえば、何でも持ってこられると考えている。オスプレイ配備の事前合意が明らかになり、反対運動はさらに強まる」と警告した。
「事実なら大変なことだ」。北部訓練場の一部返還に伴いヘリパッドが移設される東村高江の仲嶺武夫区長は、不安を募らせる。「訓練が普天間代替施設と連動されることは明らかだ。政府が情報を隠しているなら、国民をだますやり方で許せない」と批判した。
一方、名護市の幹部は「初めて聞く話だ。ただ、(SACO合意からオスプレイの文言が)最終的に削除されたということは、配備が合意に至っていないということではないか。詳しいことは事実関係を確認してからでないと答えられない」と述べるにとどめた。
[視点]
県民脅かす卑屈な交渉
オスプレイ配備計画をめぐる交渉過程で浮かび上がったのは、政府の卑屈な態度だ。復帰をめぐる密約から普天間移設まで、対外的に説明できない米国との約束が積み上がり、県民の安全を脅かし続けている。
共同通信が入手した文書によると、米側さえ配備計画の公表を求めたにもかかわらず、政府はそれを押しとどめ、国民にも背を向けた。
現行案のV字形滑走路でも、米側は「双方向からの着陸はあり得ると伝えた」と明らかにしたが、政府は「乗員の生命にかかわる場合だけ」と限定して説明し、問題をうやむやにしている。
政府が米側の要望を丸のみし、説明責任を回避し続ける限り、普天間移設や日米安保体制に対する県民の信頼は失われるばかりだ。
代替施設の完成時にオスプレイが配備されるのは、もはや明らかだ。政府が本当に移設を「負担軽減の最善策」と信じるなら、非を認めた上で、情報を開示することは無理な注文ではない。「密約」が次々に米側文書で明らかになるような政府の姿勢を許し続けるのかどうか、国民の側も問われている。(社会部・阿部岳)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_03.html
2007年4月5日(木) 朝刊 27面
岩波書店・大江さん抗議/高校教科書検定
「集団自決」訴訟は継続中 原告側の訴えだけで修正
【東京】二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で文部科学省が沖縄戦の「集団自決」記述に関し、日本軍の関与を否定する意見を付し教科書会社に修正させたことについて、岩波書店と作家の大江健三郎さんらは四日、連名で抗議声明を発表した。岩波書店と大江さんは沖縄戦時に慶良間諸島で起きた「集団自決」をめぐって、当時の日本軍戦隊長らと民事訴訟で係争中だが、今回の検定が元戦隊長側の主張のみを取り上げて修正の根拠の一つにしていると非難。近く声明文を伊吹文明文科相に郵送する予定だ。
声明は(1)訴訟は継続中(2)集団自決に軍命があったことは多くの文献などで明らか(3)住民が軍命があったと認識していたことは戦隊長側も認めている―と指摘している。
同日、岩波書店の宮部信明編集部長、岡本厚編集副部長、代理人の秋山幹男弁護士が文科省で会見。大江さんは出席しなかったが「心から賛同する、私の名前で出してほしい」と話しているという。
文科省が今回の検定で参考にしたとして報道機関に提出した沖縄戦関連の「著作物等一覧」には、同訴訟を「沖縄集団自決冤罪訴訟」と元戦隊長ら原告やその支援者が使用する呼称をそのまま明記していた。
訴訟を担当する岡本副部長は会見で、文科省が今回の検定から修正意見を付したことや、近年、軍命を否定する著作物が発刊されていないことを指摘した上で「原告の訴え自体に文科省の修正が対応していると考えざるを得ない」との見方を示した。
文科省が訴訟での元戦隊長の主張を修正の根拠にしていることについて「中立公正に訴訟を取り上げるべきだ。非常に乱暴なやり方だ」と強く非難した。
秋山護士も「隊長命令がいつどこであったかどうかについては争いの対象になっているが、軍の関与、強制というレベルの事実は(裁判の)証拠上はっきりしている。それらを検討した上で検定したとは到底思えない」と疑問を呈した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_04.html
007年4月5日(木) 朝刊 2面
「普天間」解決と経済振興で激論/宜野湾市長選 公開討論会
【宜野湾】二十二日投開票の宜野湾市長選に向け市民の関心を高めようと、「公開討論会」が四日、市民会館で開かれた。立候補予定者で、革新系無所属の現職伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=、無所属新人の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=が、米軍普天間飛行場問題や経済振興策を中心に主張を展開した。主催は宜野湾青年会議所、日本青年会議所沖縄ブロック協議会。
島袋純琉球大教授が司会を務め、市の課題、迅速な対応が求められる施策など五点を議論した。
基本演説で、両者とも普天間飛行場の危険性除去や移設を念頭に持論を展開。伊波氏は「基地問題解決のためには米国を訪れ、直接訴えていく必要がある。引き続き市政を担い課題解決に取り組みたい」とアピール。
外間氏は「国や県に主張すべきは主張し、要求すべきことは要求したい。跡地利用に向けてしっかりと国、県と対話していきたい」と訴えた。
早急に取り組む重要施策は「普天間飛行場の早期の危険性除去と返還、跡地利用計画の策定」(外間氏)、「大山田イモ地区保全計画と連動した大山小過大規模校の解決」(伊波氏)を優先課題に挙げた。
クロス討論で、危険性除去への対応を問われた外間氏は「騒音データや過去の事故を調べ、有効な手法を研究したい」と回答。大山小問題の解決で、校区再編から分離新設校設置への方針転換を問われた伊波氏は「校区再編では新たな問題が生じるためであり、矛盾はない」などと答えた。
最後のアピールでは、伊波氏が「小学生までの入院費無料化を実施」と明言。外間氏は「公共事業導入で、生活環境の改善」を訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_05.html
2007年4月5日(木) 夕刊 4面
普天間移設問題「環境にも配慮」/小池首相補佐官が講演
小池百合子首相補佐官は四日、那覇市内のホテルで開かれた講演会(主催・沖縄経済同友会)で、米軍普天間飛行場の移設問題について「仲井真弘多知事は三年以内の早期閉鎖を求めている。そのためにもキャンプ・シュワブ沖への日米合意案を進めていかなくてはいけない」と述べた。その上で「環境の観点からも日米合意は藻場を守るということでよく考えられた案。地域の声も受け止めながら、その後の跡地利用をどう進めるかを考える重要な時期だ」との考えを示した。
沖縄振興計画が後期五年の折り返しの節目を迎えることについて「沖縄にはビジョンが必要。沖縄の文化やシーサー、かりゆしウエアなどを世界にアピールし、観光地というだけでなく、プラスアルファの文化を発信することが重要」と述べ、戦略的な観光振興を促した。那覇空港の拡張に関しては「アジアのハブ空港に十分なり得る。観光客の受け入れ態勢の点検も必要で、(早期建設に向けて)もっと声を上げるべき」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051700_03.html
2007年4月6日(金) 朝刊 1面
F22・空自、共同訓練へ
沖縄空域数週間内/南西混も参加
嘉手納基地に暫定配備されている米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが今月中旬にも、沖縄周辺空域で沖縄の南西航空混成団を含む航空自衛隊との空対空の日米共同訓練を計画していることが五日、分かった。実施時期について嘉手納基地は「数週間以内」としている。空自は来週にも正式発表する方向で調整を進めている。F22の配備は騒音面でも周辺住民の不満が高まっており、嘉手納基地の機能強化につながる日米共同訓練実施には反発も予想される。
空自南西航空混成団と嘉手納基地所属の第一八航空団の日米共同訓練は一九七九年以降、三十四回行われている。今回の訓練でF22が第一八航空団の一部として参加するのかは不明。
空自からは那覇基地所属のF4のほか、石川県の第六航空団など沖縄以外の部隊が参加する方向で調整が進んでいる。
F22と空自の共同訓練について、外務省の西宮伸一北米局長は「特定の施設・区域に一時的に展開している米軍の航空機が、各種訓練に参加すること自体は日米地位協定上、排除されない」との見解を示している。
F22を運用するウェイド・トリバー司令官は嘉手納配備が始まった二月、嘉手納基地所属のF15戦闘機やE3空中警戒管制機と沖縄周辺海域で訓練することや、三沢基地(青森県)所属の米軍F16戦闘機との訓練計画を発表。一方で、空自との訓練については「(現時点は)計画にない」としていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_01.html