沖縄タイムス 関連記事(4月6日?7日)

2007年4月6日(金) 朝刊 1・29面
基地・経済 論戦火ぶた/参院補選
 五日告示された参院沖縄選挙区補欠選は、いずれも新人で無所属の会社代表の金城宏幸氏(68)、諸派の前連合沖縄会長の狩俣吉正氏(57)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦、諸派で那覇市議の島尻安伊子氏(42)=自民、公明推薦=の三人による選挙戦が確定した。三氏は本島各地で遊説活動を繰り広げ、支持を訴えた。事実上、狩俣氏と島尻氏の一騎打ち。狩俣氏は「自公政権で格差が拡大した」と批判。島尻氏は「生活者の視点による政治改革を」とアピールした。
 米軍普天間飛行場の移設問題や経済振興の在り方などを争点に、十七日間の選挙戦がスタート。七月の参院選の前哨戦として、百五万有権者の選択に全国の注目が集まる。
 二十二日に投票、即日開票される。
 狩俣氏は那覇市での出発式の後、市内で街頭演説。県庁前での演説会で「格差のない安心した社会をつくる。沖縄の基地の整理・縮小を求めていくことをしっかり国会でやっていきたい」と、格差是正や米軍基地の整理・縮小に取り組むことを強調した。その後、本島中南部でスポット演説を行い、夜は、宮古郷友同志会の激励総決起大会に参加した。
 島尻氏は那覇市での出陣式の後、浦添市や宜野湾市、沖縄市へと北上。名護市までの十五カ所で街頭演説を繰り広げた。宜野湾市の長田交差点では「台所を基本に考え、暮らしの問題を主に訴えていく」と一貫した姿勢を強調。「台所には知恵と要求が多く詰まっている。それを国政の場で訴え、沖縄県の家計のためにも頑張っていきたい」と決意を述べた。
 金城氏は県庁前広場で演説し「普天間飛行場の移設先は、勝連沖人工島が適地だ」とし、県財政が苦しい現状について、「借金返済のため、東シナ海と尖閣諸島の資源を開発する」と訴えた。
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遊説奔走
 五日告示した参院沖縄選挙区補欠選。狩俣吉正さん(57)と島尻安伊子さん(42)は選挙カーで街へ繰り出した。沿道の声援に手を振って応えながら、本島を南北に駆け抜けた。
狩俣さん
昼食10分 充実初日
 告示日に五十七歳の誕生日を迎えた狩俣さん。「勝利に結び付けばいいけどね」と笑顔で選挙戦をスタートさせた。
 午前中は那覇市内を回った。正午にはパレットくもじ前で国民新党の亀井静香代表代行らの応援演説を受け、「ハイサイ」と登壇。「格差をなくして安心な社会をつくりましょう」と語り掛けるように訴えた。
 昼食は午後1時すぎ。十分で弁当をかき込み、選挙カーで南部の選対支部を巡った。その後、西原町役場前で支持者と握手を交わし、夕方には沖縄市のプラザハウス前で演説に立った。
 精力的な遊説に、郷友会婦人部が用意した縁起担ぎのフチャギを食べ損ねたが、「昨日、一生懸命食べましたから」と苦笑い。初日の感触については「今は無我夢中です」と話した。
島尻さん
北上 15カ所で熱弁
 大太鼓が鳴り響く中、選挙カーに駆け足で乗り込み、選対本部のある那覇市を午前九時二十五分に出発した島尻さん。
 午前中は、浦添市で小池百合子前沖縄担当相、宜野湾市で中川秀直幹事長らと立会演説。その後、北上しながら約十五カ所で演説した。
 「台所から政治を変える」「もっとよりよい暮らしへ」をキャッチフレーズに「全国でも、一番子育て政策が進んでいる県になるよう取り組んでいきたい」と支持を訴えた。
 午後はうるま市石川で魚汁を食べた後、うるま市石川から演説をスタート。金武町のJAおきなわ金武支店前、宜野座村旧役場前で演説した。各スポットに到着するなり、支持者一人一人に駆け寄り笑顔で握手。勝利に向け力強くガンバロー三唱した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_02.html

2007年4月6日(金) 朝刊 1・29面
沖縄原告、敗訴確定/靖国訴訟
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝は政教分離を定めた憲法に違反し、人格権を侵害されたとして沖縄戦の遺族らが国と前首相に損害賠償を求めた「沖縄靖国訴訟」で、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)は五日、請求棄却の一、二審判決を支持、原告の上告を退ける決定をした。
 参拝が合憲か違憲かの判断は示されないまま、原告敗訴が確定した。
 沖縄戦の遺族ら原告は、肉親が知らぬ間に靖国神社に祭られ、戦闘に協力した者として賛美されているのは耐えがたい苦痛で、前首相の参拝により苦痛はさらに深まったと主張したが、二審・福岡高裁那覇支部は「参拝が違憲だとしても、原告の権利の侵害は認められず、損害賠償請求を棄却する結論は変わらない」として憲法判断を示さなかった。
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原告、門前払いに怒り/「司法の独立放棄だ」
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝の違憲性を問うた沖縄靖国訴訟で、最高裁は五日、原告の上告を退けた。「司法の独立を放棄した」「あまりに形式的だ」。原告団の間には、門前払いに怒りと無力感が広がった。
 「司法が憲法判断をせずに、一体この国は本当に民主国家なのか」。原告団長の金城実さん(68)は落胆を隠さない。「集団自決」の軍命を否定する訴訟や教科書検定を挙げ、「沖縄戦の隠蔽が進む中で裁判所はまたも目をつぶった」と憤る。
 沖縄戦で母と兄を亡くした副団長の川端光善さん(71)は、一審で証言に立った。「沖縄戦の実態や、家族が戦争責任者と一緒に祭られた痛みを訴えたが、裁判官は『それは裁判と何の関係もない』という態度だった。政府を守るという立場ありきだ」。悔しさを押し殺しつつ、「敗訴で終わりではない。靖国神社に合祀取り下げを求める訴えを起こすことも考えていく」と前を向いた。
 事務局長の西尾市郎さん(59)は「憲法判断を避けたのは、司法が危険な方向に進み始めた証しだ」と批判。その上で、一審で裁判官が南部戦跡を訪れたことを「これまでの靖国に関する訴訟で一度もなかった」と、成果に挙げた。
 琉大法科大学院の高良鉄美教授(憲法)は「司法が政治と同じベクトルを向けば、少数者の権利は多数決の中で放置されてしまう。戦争の反省に立った政教分離原則の重みからすれば、棄却するにしても憲法判断に踏み込み、一石を投じるべきだった」と指摘した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_03.html

2007年4月7日(土) 朝刊 1面
普天間移設で独自性を強調/伊波氏・外間氏 対談
 【宜野湾】十五日告示、二十二日投開票の宜野湾市長選に出馬を表明している無所属で現職の伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=、無所属新人で前市教育委員会教育部長の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=は六日、沖縄タイムス中部支社で対談した。両氏は、普天間飛行場の危険性除去や移設先、経済活性化策などでそれぞれの政策構想を主張、互いの独自性を強調した。
 伊波氏は普天間飛行場が米国の安全基準に合致せず、危険性は明白になっていると主張。「グアム移設は可能だ。税金を投入しながら、国民が抱える危険性を除去しないことは道理が通らない」と訴えた。
 外間氏は県と協力し、普天間飛行場の危険性除去を一日も早く実現したいと説明。「移設先のベストは国外、県外。国と県、名護市による協議の推移を見守りたい」と述べ、移設先で見解が異なった。
 経済活性化策について、外間氏は「基地周辺整備事業で高率補助の公共事業を推進し、生活環境も改善する」と強調。伊波氏は「西海岸地区で五十万―七十万人の観光客を集客し、企業誘致による地域活性化」を提起した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704071300_02.html

2007年4月7日(土) 朝刊 25面
市民200人、抗議集会/「集団自決」修正
「軍命 確かに聞いた」
 二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍が関与したことを表す記述を文部科学省が削除させたことについて、県内の市民団体が六日、那覇市古島の教育福祉会館で緊急抗議集会を開いた。「集団自決」の生き残りの参加者は「(日本)軍の命令を確かに聞いた」と証言。軍の関与を否定した検定に対し「はらわたが煮えくり返る思いだ」と怒りをあらわにした。約二百人の参加者からは「声を上げなければ、沖縄戦の実相がゆがめられるばかりだ」など、危機感を訴える声が相次いだ。
 渡嘉敷島の「集団自決」で生き残った女性(83)は、日本軍が各家庭の男性に手りゅう弾を配り、日本軍の命令で島民が集合させられて「自決」を強いられたことなど、当時の状況を詳しく証言した。
 「手りゅう弾で死ねなかった人たちはカミソリで切りつけ合っていました。軍の命令だから集合するように、と確かに聞いたんです。誰も死ぬことなんか望んでいなかった」。女性は切
々と当時を振り返り、「教科書の書き換えを許してはいけない。沖縄戦を子孫に語り継がなくてはいけない」と訴えた。
 本島中部の高校教諭の男性(55)は「日本軍の強制は明らかなのに、事実がこれほど簡単にねじ曲げられてしまう現状は怖い。戦場にされた沖縄から声を上げなければ、数の暴力に押し流されてしまうばかりだ」と危機感をあらわにした。
 集会は「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(高嶋伸欣・福地曠昭共同代表)が主催。「沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を隠蔽する暴挙は許せない」とし、検定の修正指示撤回を求めるアピールを採択した。
識者「歪曲」加速を懸念
 高嶋伸欣琉球大学教授は「いま声を上げなければ、次は沖縄戦の住民虐殺の否定にもつながりかねない」と懸念。「現場の教員は教科書問題自体を教材に取り上げ、子どもたちに考えさせるなどの工夫も必要だ」と強調した。
 山口剛史琉大准教授は、大阪地裁で元軍人らが岩波書店などを訴えている「集団自決訴訟」について、「原告が検定を利用して(勝訴)判決を勝ち取ろうとするのは問題だ」と影響を危惧。裁判の行方を注視するよう呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704071300_03.html

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