沖縄タイムス・琉球新報 関連記事(5月19日朝刊)

沖縄タイムス 2007年5月19日(土) 朝刊 1・26・27面
海自の支援継続へ/辺野古海域調査
首相は問題視せず/きょう機材設置完了も
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局は十八日夕までに、サンゴの産卵状況を調べる着床具の大半と、海象調査機器の一部の設置を進めていたことが分かった。十九日も海上自衛隊の潜水要員の支援を受ける予定だが、同日中に着床具の全三十九地点での設置が完了する可能性もある。安倍晋三首相は十八日夜、調査に海上自衛隊の掃海母艦が参加したことに関し「行うべき調査を行ったということだ。知識、技術を持っている自衛隊が協力した」と述べ、問題ないとの認識を示した。
 防衛省の山崎信之郎運用企画局長は十八日の衆院安全保障委員会で、掃海母艦「ぶんご」の派遣について「沖合に停泊し、潜水夫を派遣することで三年前の(従来案の)ような妨害活動が減るのではないかと考えた」と説明。多数の潜水士を沖合から動員する狙いがあったことを明らかにした。辻元清美氏(社民)への答弁。
 仲井真弘多知事は同日、海自の調査参加に、「海上自衛隊が参加するような状況とは考えられない」とコメント。その上で「特殊な任務を持つ海上自衛隊が関与すべき事態かどうか疑問。反自衛隊感情を助長するようなことは避けるべきだ」とした。県内の政党、市民グループからは反発や疑問の声が上がっている。
 安倍首相は地元で反発の声が上がっていることについて「今後とも地元の皆さまに対しては誠意を持って説明をしていかなければならない」と述べた。
 一方、久間章生防衛相は衆院安保委で初日の作業について、「大きく構えて小さい部分だけで対応した」と述べた。「ぶんご」の派遣命令を十一日に下したことを明らかにし、「掃海母艦は機雷を除去するための船で、攻撃型の船とは違う。ソフトな感じだ」との考えを示した。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 施設局は六月初めにも始まるサンゴの産卵期に間に合わせるため着床具の設置作業を優先した。
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対立の海 混乱続く/反対派、捨て身の抵抗
 【名護】身を乗り出して作業船にしがみつく反対派と、引き離そうと試みる海上保安庁職員。普天間飛行場の代替施設建設のための海域調査は十八日、自衛隊員の投入で反発を強めた反対派と厳戒態勢で警備に当たった海上保安庁との間の緊張が高まった。現職の自衛隊員からも「あまり強硬にやってほしくない」と県民感情への影響を懸念する声も聞かれた。
 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う海域現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局によるサンゴの産卵状況を調べる着床具の設置作業が行われた十八日午後、現場の辺野古沖周辺では、警備に当たった海上保安庁が調査に反対する市民団体に「作業中の業者とトラブルがあった」と任意聴取を申し入れるなどし、対立が続いた。
 調査終了後、市民団体が集会を終えた午後六時ごろ、辺野古漁港に中城海上保安署の職員十数人が訪れた。「午後四時三十五分ごろ、辺野古沖で作業中の潜水士が『市民団体側の漁船に乗船のダイバーから、水中でレギュレーターを外された』と訴えている。関係者に事情を聴きたい」と、任意聴取を申し入れた。
 集会で「私たちに協力した漁船を海保が拿捕した」と報告があった直後だけに、市民らが同保安署職員を取り囲み、説明を求めるなど騒然とした。
 第十一管区海上保安本部によると、「同施設局の委託を受けた業者がトラブルを訴えたので調べている。何の容疑に当たるのかは定かではない」状況だといい、市民団体は「事実関係がはっきりしていないのに答えられない」と反発した。
 海保は関係漁船を現場に足止めして、被害を訴えた潜水士らに任意聴取して現場確認をしたが、ダイバーからの任意聴取はこの日はあきらめた。
 現場海域で、作業監視のために潜水した市民団体の平良夏芽さん(44)は「海保こそ、エンジン付きのゴムボートをダイバーの真上に通過させるなど、危険な行為を繰り返していた」と指摘した。
海自威圧 一斉反発/「強行せず県民守れ」
 「県民を守るのが自衛隊の仕事ではないのか」「威圧して、あきらめさせるつもりか」。事前調査への海自の導入に、中南部の住民からも反発の声が相次いだ。
 糸満市摩文仁の平和の礎。沖縄戦戦没者の刻銘に囲まれ、平和ガイドの横田眞利子さん(55)は「きょうは案内で行けないが、気持ちは辺野古に向いている」と語った。「国を守るための自衛隊が、何で県民にこんなことをするの」
 同市の農産物直売店にいた赤嶺仁一さん(83)は、二十歳のころ沖縄戦を経験した。「総理は戦争経験がないでしょ」とはき捨て、「基地は全部本土に持って行ったらいい」。手にしたつえで物を払うしぐさをした。
 豊見城市商工会の会合に出た建設設備会社代表、上原直彦さん(35)。「海自を投入してまで強行し、本当に環境に配慮した調査になるのか疑問だ」と首をかしげる。「経済活動も、美しい環境が大前提。住民の気持ちをしっかりと聞き入れた上で調査すべきだ」と、真剣なまなざしで語った。
 「自衛隊本来の業務から考えると、やっていることが違うのではないか」。八重瀬町のスーパーで買い物をしていた金城由政さん(50)は「地元住民が納得するわけがない」と語気を強めた。
 うるま市の女性(35)には三人の男の子がいる。「海自の参加は威圧的な感じがする。子どもたちが大人になるころ、世の中はどうなってしまうのか」と、不安そうな表情を浮かべた。
 那覇市のパレットくもじ前にいた大学生の外間ゆかりさん(21)は「自衛隊まで出てくれば、基地は確実に造られてしまう」と危機感を募らせ、「本当は県民を守ってほしいのに」と嘆いた。
 一方、普天間飛行場に土地を持つ宜野湾市の男性(80)は「本来ならスムーズに調査を進めてほしいが、自衛隊の投入はやむを得ない」。早期移設を望み、「一日も早く自分の土地を使いたい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705191300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月19日(土) 朝刊 3面
F22少数ならグアム経由可能/嘉手納広報議会に説明
 【中部】今月十日、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター二機が嘉手納基地からの未明離陸を中止し、日中グアムに向け離陸した件で、同基地のダニー・ジョンソン広報局長は十八日、嘉手納町議会の一行に「少数機であればグアムでも支援できる」と述べた。未明離陸について米側は「施設や対応できる兵員のいないグアム島などの米軍基地の中継は難しい」と説明、難色を示していた。
 未明離陸の中止要求で面談した田仲康榮町議会基地対策特別委員長によると、ジョンソン広報局長は「グアム経由の本国帰還は経費が掛かり、また支援施設も整っていない。少数機であれば支援できるが、大量の機体では対応は難しい」と説明した、という。
 田仲委員長は「米側の未明離陸の根拠の一角が崩れた」と指摘。その上で「経費などは、あくまで米軍内部の問題。早朝の爆音など、住民被害をいかになくすかを基本に考えるべきだ」とした。
 「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は、「住民の声を軽視した深夜・早朝の飛行はやめ、今後は少数ずつグアム経由で離陸させればいいことだ」と述べた。
 嘉手納町議会の一行は同日、那覇防衛施設局や米国総領事館などで未明離陸、F22再配備の中止を求めた。外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「操縦士の負担や経費面などの問題もある。改善の可能性を検討する」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705191300_05.html

海自の警備行動選択肢 防衛相、認識示す
 【東京】久間章生防衛相は18日午後の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場代替施設の環境現況調査(事前調査)に動員されている海上自衛隊が警備行動をする可能性について「海上の治安状況がよほど悪化した場合には法律上、絶対ないとは言えない」と述べ、法的には可能との認識を示した。その上で「そこまでは想定されていないのでする必要はないと思う。そういう手順も取っていない」と述べた。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 「海上自衛隊はどういう場合に警護活動ができるのか」という赤嶺氏の質問に対し、防衛省の山崎信之郎運用企画局長は「通常の海上での警備活動ということだ。人命や公共の秩序の維持のため特別の必要がある場合、総理大臣の承認を得て自衛隊が一種の警察活動はできることになっている」と説明した。
 自衛隊法第82条の「海上警備行動」を指したものとみられる。だがこれまで発動されたのは、1999年の能登半島沖不審船射撃事件と、2004年の石垣島沖での中国「漢級」原潜による領海侵犯事件の2件だけだ。
 久間防衛相は掃海母艦「ぶんご」を派遣した理由について「結果として(作業に加わったのは)潜水士だけになったが、万一の事態を考えて対応した」と説明。「遭難者が出たり、混乱が生じた時には救難用のボートを出すことも考えられた。これから先もあるかもしれないが、ああいう形で収まりほっとしている」と述べた。辻元清美氏(社民)への答弁。
(琉球新報 5/19 9:48)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23869-storytopic-3.html

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