沖縄タイムス 関連記事・社説(5月9日、10日)

2007年5月9日(水) 夕刊 1・5面
F22離陸、あす未明
 嘉手納基地から十日に米本国へ帰還する米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプター十二機が、同日午前三時以降の時間帯に離陸を予定していることが九日分かった。騒音防止協定の趣旨に反する未明離陸に地元の反発が高まっている。那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所は同日、嘉手納基地に未明離陸の実施方針を確認の上、再検討を申し入れた。

 嘉手納基地報道部は九日午後、「航空機の早朝離陸について慎重に検討し、地元住民に与える騒音についても理解している。しかし、運用上の必要性から航空機の早朝離陸を実施する」と正式発表した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は同日午前、未明離陸について「周辺住民の深刻な問題になっており、できるだけ行わないよう(嘉手納基地へ)再検討を求めた」と明らかにした。

 F22配備の際、米空軍は騒音軽減への努力を明言しており、米側の姿勢に地元の不信感も高まりそうだ。

 F15戦闘機が嘉手納基地から米本国へ向かう場合、米軍は未明離陸を繰り返している。この際、米軍は「パイロットの飛行の安全を確保するため、米本国に日中に到着しなければならず、それには嘉手納基地を未明に離陸する必要がある」と説明。空中給油も日中に行う必要があるという。

 今年二月にF22が嘉手納基地へ配備された際には、ハワイの米空軍基地にいったん集結後、日中に嘉手納基地へ到着している。

 米空軍は米バージニア州ラングレー基地所属のF22十二機を、パイロットや整備要員など約二百五十人とともに嘉手納基地へ配備した。

F15訓練移転 次回は小松

 【東京】在日米軍再編に伴う嘉手納基地のF15戦闘機訓練の本土への移転で、防衛施設庁は九日午前、十六―二十三日の日程で、航空自衛隊小松基地(石川県)で実施すると発表した。米軍と空自の共同訓練で、三月上旬に実施した築城基地(福岡県)での訓練移転に続き、二回目。

 嘉手納基地からF15五機程度と要員約八十人が参加。空自側からは小松の第六航空団や百里(茨城県)の第七航空団などからF15十二機程度がそれぞれ参加する。そのほか訓練支援のため米軍のC17大型輸送機一機が事前に飛来、先遣隊などを輸送する予定だ。

 築城基地で実施されたものと同じ、「タイプ1」と呼ばれる小規模訓練で、今回は小松沖空域で空対空の戦闘機戦闘訓練、防空戦闘訓練を実施する。土、日曜日は訓練を行わないとしている。

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「最後まで安眠妨げ」/三連協、反対声明へ

 【中部】米軍嘉手納基地に一時配備中の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが米本国への撤収で十日未明に離陸することについて、周辺首長は九日、「最後まで住民の安眠を妨げている。断じて許せない」などと一斉に反発の声を上げた。

 嘉手納町役場で九日午前開かれた沖縄、嘉手納、北谷の一市二町の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」総会では、急きょF22未明離陸について話し合った。米軍側からの正式な発表があり次第、同日午後にも同協議会として未明離陸に反対する声明を発表する予定だ。

 嘉手納町の宮城篤実町長は正式に連絡を受けていないと前置きした上で「配備された時から懸念していた。未明離陸の爆音は町民に与える不安が大きい。今後の対応は実際の爆音のデータを見て考えたい」と述べた。

 北谷町の野国昌春町長は「F22の一時配備による騒音被害は確実に増えた。米軍は運用上の必要性を理由にするだろうが、住民の安眠を妨害する理由にはならない。せめて撤退する際には騒音防止協定を守るべきだ」と強い口調で批判した。

 沖縄市の東門美津子市長は「もし事実であるならば、住民の安眠を妨害する未明離陸について三連協できちんと抗議したい」と強調。「F22とF15の爆音のうるささは変わらなかった。再配備の可能性もあることについては、基地の機能強化であり認められない」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091700_02.html

2007年5月10日(木) 朝刊 1面
三連協「住民軽視」/F22未明離陸中止求め声明
県「遺憾の意」
 【中部】最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが米本土への撤収のため、十日未明に嘉手納基地を離陸することを受け、沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)」は九日、「基地周辺住民の負担を軽視した基地運用」として未明離陸の中止を求める共同声明を発表した。一方、県基地対策課は同日、那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に口頭で「遺憾の意」を伝え、飛行プランの見直しなどを米側に働き掛けるよう要請した。

 嘉手納基地がパイロットの安全運航を考慮し、日中に目的地へ着陸するための運用上の必要性を未明離陸の理由に挙げていることに、三連協は「過重な騒音被害を受ける基地周辺住民の負担を軽視した基地の運用であると言わざるを得ない」と糾弾。深夜・早朝の飛行に強く反対している。

 「三連協は航空機騒音規制措置に基づき未明離陸の見直しを求めてきたが、米軍、国は飛行制限の措置を講じず、基地周辺地域では依然として騒音が発生している」と指摘。

 同協議会会長の野国昌春北谷町長は「早朝の爆音被害は大きい。住民は未明の離陸で幾度となく被害を受けてきた」と強い口調で話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101300_03.html

2007年5月10日(木) 朝刊 3面
PAC3撤去 一致/三連協
 【中部】沖縄、嘉手納、北谷の一市二町の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)」は九日、嘉手納町役場で二〇〇七年度総会を開き、同基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備反対やF15戦闘機の即時撤去などを盛り込んだ本年度の活動方針を決定した。新会長に北谷町の野国昌春町長を選任した。

 野国会長は「嘉手納基地を取り巻く三市町にとって、騒音や事件事故など基地被害の悩みは尽きない。三連協で連携を取り、可能な限り住民の負担を軽減したい」と意欲を示した。

 〇二年から五年間会長を務めた嘉手納町の宮城篤実町長は「基地による被害が起きる中、三連協の存在意義が高まっている。それぞれの自治体で責任を持ち、野国町長を中心に活動したい」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101300_04.html

2007年5月10日(木) 朝刊 2面
きょう平和行進 特別コース 国頭―名護17キロ
 県内各地を歩き平和や基地問題について考える「5・15平和行進」の復帰三十五年特別コースが十日、国頭村役場前を出発、大宜味村役場前、羽地中学校前などを通り、名護市役所までの約十七・二キロメートルで行われる。

 同日午前八時半にスタート、住民や組合員など約百人が本島北部を歩く。

 午後六時から名護市役所前広場で「辺野古移設NO!許すな憲法改悪!全国集会」を開催、県内外から約千人が参加し、基地の県内移設反対や憲法改正反対を訴える。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705101300_05.html

社説(2007年5月10日朝刊)

[米機の未明離陸]

日中離陸を真剣に考えよ
 嘉手納基地に暫定配備されている米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが十日午前三時ごろから、米本国に向け離陸するという。

 同基地報道部は、未明の離陸が安眠の妨げになることについて理解しているとしつつも、「運用上の必要性」と理由を説明している。

 日ごろ、「良き隣人」を声にする米軍だが、県民の日常生活に深刻な影響を与える深夜・未明の米軍機離着陸については、一向に聞く耳を持たない。未明の離陸はやめてもらいたい。

 日中離陸は十分可能ではないだろうか。工夫すれば方法があるはずだが、その疑問に米軍は十分答えていない。

 F22の嘉手納基地への到着は、ハワイを出発した後、昼ごろだった。風向きや風速、天候などを勘案した上、他の基地経由で本国に戻る可能性について、十分検討したのであろうか。

 季節によってはアラスカ経由もあっていいのではないか。沖縄から南方で米本国からは遠くなるが、グアム経由もあってもいい。

 グアムは準州とはいえ両方とも米国であり、航空機の離陸がどの時間帯であろうとも、地域住民の理解は得られるであろう。

 ハワイ経由で本国に向かうパイロットの安全性確保のため、未明の離陸というのが米軍側の説明だが、県民の騒音禍という犠牲を強いたことをいつまでも続けることは、許されることではない。日米間で締結された嘉手納基地騒音防止協定は、有名無実化としているのではないか。

 嘉手納基地に隣接する嘉手納町が今年二月に公表した基地被害の聞き取り調査では、滑走路に最も近い東区の43%の住民が騒音などで「耳鳴りがする」と訴えるなど、健康面で被害が出ている。また、未明離陸などで「一度起きたら寝付きにくい」が50%もおり、このまま放置していいものではない。

 米軍の「運用上の理由」ということで、未明の航空機離陸をいつまでも容認するわけにはいかない。日米双方があらゆる方策を真剣に考えるべきだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070510.html#no_2

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