沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月29日、30日、7月1日)

2007年6月29日(金) 朝刊 2面

 

ヘリパッド近く着工

 

 那覇防衛施設局の佐藤勉局長は二十八日の定例記者懇談会で、米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設について「七月以降、適切な時期に工事実施したいと考えている。現在、五月中旬から実施している工事着手前の現況調査の内容の最終確認を行っている」と述べ、近く着工する方針を明らかにした。

 

 

 移設される六カ所のヘリパッドのうち、本年度はN―4地区二カ所とH地区を整備する予定。区域ごとに施行予定だが、本年度施行分については、県道70号で分断されているため、同時施行するという。工事に際しては、すべての作業員に貴重な動植物に関するデータや作業上の注意事項などをまとめた「保護手帳」を配布、作業中は常時携帯させるという。

 

 

 また、嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題について佐藤局長は、来週前半にも土壌入れ替え作業に、県と施設局職員が立ち入りできるよう米軍と調整中であると明らかにした。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706291300_06.html

 

 

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月29日朝刊)

 

 

[「集団自決」意見書]

 

示された「県民の総意」

 

 高校歴史教科書の文部科学省の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除、修正された問題で、検定意見の撤回を求める意見書が県議会をはじめ、県内四十一市町村の全議会で可決された。

 

 

 五月十四日の読谷村議会が「賛成多数」、それ以外は「全会一致」で足並みをそろえた。

 

 

 全市町村での意見書可決は、二〇〇四年の沖国大への米軍ヘリ墜落事故で抗議決議・意見書を可決して以来だという。

 

 

 意見書は「沖縄戦における『集団自決』が『軍による強制・強要・命令・誘導等』なしには起こり得なかったことは否定することのできない事実」などと指摘している。

 

 

 全市町村議会が自主的に検定意見の撤回を求めたことは、地方自治と主権在民の立場から国への「異議申し立て」であることは言うまでもない。

 

 

 「史実を正しく伝え、二度と戦争を繰り返してはならない」という地域住民の思いがそのまま反映され「県民の総意」が強く打ち出されたといえる。

 

 

 県議会は当初、最大会派の自民党が党内で意見が折り合わなかったものの、最終的に「日本軍による関与があった」という点で一致した。全県民の声が集約され、一つのうねりとなって可決を後押ししたといえよう。

 

 

 政府・文科省は、この県民の総意を真摯に受け止め、検定の撤回と記述の回復を速やかに図ってもらいたい。

 

 

 文科省は、今なお「軍による直接的な命令があったかどうかは不明確。『強いられて』という表現は高校生には命令があったように誤解される」というが、それでは「集団自決」の事実がうやむやにされてしまいかねない。

 

 

 確かに、日本軍の直接の命令が渡嘉敷、座間味、慶留間の各島であったかどうかは定かでないし、大阪地裁で係争中の民事訴訟で当時の指揮官が命令の事実を否定するなどの動きもある。

 

 

 だが、言葉による命令があったかどうかということが、日本軍が「強いた」とみるかどうかを決定づけるものでは必ずしもないはずだ。

 

 

 当時の皇民化教育や軍国主義社会、さらに戦時下の極限状態の中で「いざという時は自決するように」と日本兵が手りゅう弾を配ったことには多くの住民の証言がある。

 

 

 少なくとも、広い意味での日本軍の関与、軍の圧力があったのは紛れもない事実といえる。

 

 

 歴史の事実は一つであり、変えられない。正しい歴史を示すことが未来への道標となる。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070629.html#no_1

 

 

 

 

 

琉球新報 社説

 

「撤回」要求決議 県民は軍命削除を許さない

 

 来年度から使用される高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制に関する記述が修正・削除された問題で28日、国頭村議会が「検定意見の撤回」を求める意見書を全会一致で可決した。これで県内41全市町村で撤回決議が可決された。

 先の県議会の撤回決議も含め、「検定意見の撤回」要求が、名実ともに「県民総意」となった。

 意見書で国頭村議会は「体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするもの」と批判している。県、他市町村の意見書も同様の趣旨だ。

 広大な米軍嘉手納基地を抱える嘉手納町は、基地被害にも触れ、戦後世代が増え、戦争体験者の減少が進む中で沖縄戦の実相を伝えることの大切さを指摘している。民を苦しめる「軍隊」の問題は、日米の国の違いはあれ、沖縄ではいまも続く「歴史」である。

 沖縄戦を直接体験した歴史の証言者が沖縄にはまだまだ健在だ。一部の研究者や官僚たちが「軍命があったとの明確な証拠はない」と言い張っても、「集団自決」で肉親を失った体験者たちの口は封じられない。

 賛成多数の読谷村を除く40市町村議会が、全会一致での「撤回」要求の可決だ。全議会の決議を、国は重く受け止めるべきだ。

 文科省は県の仲村守和教育長の撤回要請に、「集団自決で日本軍が関与したと思う」(布村幸彦審議官)と認めている。だが、検定意見の撤回には「政治家は口出しすべきではない」(伊吹文明文科相)として、応じる気配がない。

 文科相には教科書検定意見に対する「正誤訂正の勧告権」があると研究者は指摘している。政治の介入で改ざんされた教科書は、「正確な史実」によって是正されるべきである。だが、史実を突きつけ、史実を認めさせても、なお是正を拒む政治がそこにある。

 いまなぜ歴史教科書から「軍命」を削除しなければならないのか。ここ数年、国民保護法などの有事法制が整備されている。防衛庁の省昇格、集団的自衛権の行使に関する有識者懇の発足、米軍と自衛隊の融合を進める米軍再編特措法、憲法改正を狙う国民投票法の成立と続く。

 一連の政府の動き、政治の流れに「新たな戦争準備」を警戒する声もある。その動き、流れの中に、教科書検定問題がないか。

 悲惨な戦争を二度と日本が繰り返さないためにも、議会決議を県民運動に広げ、政府が歴史の史実を正しく後世に伝えるよう、強く求め続けたい。

 

 

(6/29 9:32)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25016-storytopic-11.html

 

 

 

 

 

2007年6月29日(金) 夕刊 7面

 

入港強行で質問状/与那国町長、外務省に送付へ

 

 【与那国】与那国町の祖納港に米海軍掃海艇二隻が入港した問題で、外間守吉町長は入港の目的を「友好親善」としながら「県の自粛」、「町長の反対」を無視する形で強行に入港した理由など十項目の質問を外務省北米局長に郵送する考えを固めた。入港の賛否をめぐり町内に混乱を招き、町民間に亀裂としこりが残ったことについての同省の見解も求めている。

 

 

 近く石垣市内で記者会見を開き、来週にも文書を郵送する予定。

 

 

 外間町長は「(外務省が説明するように)日米地位協定で定められているから入港できる、では済まされない。相手方が拒否する権利のない友好親善とは何か。政府として説明責任がある」と述べた。

 

 

 質問は、「開港ではない祖納港に入港するほどの重大な緊急性、必要性があったのか」「当初計画していた石垣港への入港は与那国町長の反対表明を無視して祖納港に入港したのはなぜか」―など。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706291700_05.html

 

 

 

 

 

2007年6月30日(土) 朝刊 24面

 

虐待通報記録せず/コザ児相 米国籍児死亡で

 

 うるま市で今年四月、米国籍の男児(8)が死亡した事件で、昨年十一月に男児を保護した市民がコザ児童相談所とうるま署に児童虐待の疑いがあると通報していたことに関連し、県の伊波輝美福祉保健部長は二十九日、「いくつかの課題や問題点があった。今後、外部専門家の意見を聴き、米軍人や外国人の相談の在り方も検討していく」との考えを明らかにした。

 

 

 同日行われた県議会六月定例会の一般質問で、兼城賢次氏(護憲ネット)の質問に答えた。

 

 

 また、伊波福祉保健部長は市民からの通報があった際の同所の対応について「夕方の勤務外で受付相談員がいなかったため、職員は所定の様式ではなくメモ用紙に記録した。本来ならメモを電話相談受付簿に記録すべきだが、それがなされず、記録として残っていない」と述べた。

 

 

 さらに、今後の児童虐待防止の取り組みについては「基地内の関係機関とのネットワークがないため、連絡会議を開催するなど連携を図りたい」との考えを示した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706301300_08.html

 

 

 

 

 

2007年6月30日(土) 朝刊 24面

 

東門市長/特派員に基地被害訴え

 

 【東京】東門美津子沖縄市長は二十九日、東京都内の日本外国特派員協会で講演し、米軍嘉手納基地から派生する基地被害などを説明した。この中で米軍人などによる事件が多く発生していることについて「中でも女性や子どもたちの被害は痛ましく、基地ある故の人権蹂躙は今なお沖縄の人々の心に深い傷跡を残している」と指摘した。

 

 

 こうした基地問題を踏まえて、「子どもが子どもらしく生きられる世界を求めて、大人たちに平和の構築を訴える」同市の取り組みとして、〇五年からキジムナーフェスタを開催、三回目が七月二十一日に開幕することもアピールした。

 

 

 東門市長はF15戦闘機の未明離陸による騒音被害やジェット燃料の流出事故などを挙げ、在日米軍再編について「基地機能の強化が優先される状況にあり、市民の不安と負担が増していることは極めて遺憾」と強調した。

 

 

 東門市長は「世界が失ったもの、大人たちが置き去りにしてきたものをすくい上げ、子どもたちの前に広げて見せる必要がある」と訴え、キジムナーフェスタ開催の意義を強調した。

 

 

 外国メディア約十社が参加した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706301300_09.html

 

 

 

 

 

2007年7月1日(日) 朝刊 27面

 

沖教組、検定撤回要求を決議/「集団自決」修正

 

 【北中城】沖教組(大浜敏夫委員長)の第四十三回定期大会が三十日、北中城村立中央公民館で開かれた。高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から、日本軍の関与が削除された問題で、「沖縄戦での日本軍による『集団自決』強制の事実を歪めた教科書検定に抗議し、検定意見の撤回を求める決議」を採択した。

 

 

 決議では今回の検定が日本軍による誘導と強制の事実を隠し、住民が自発的に自決したかのように書き直されたことは、日本軍による住民への加害を否定しようとするものであり、「戦争のできる国」づくりに導いていこうとする意図が見えると強く批判。

 

 

 沖縄戦の実相を子どもたちに伝えるため、沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定意見を直ちに撤回することを求めている。あて先は文科相と首相。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707011300_02.html

 

 

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