沖縄タイムス 関連記事・社説(7月10日夕刊、7月11日)

2007年7月10日(火) 夕刊 1面

 

調査官、住民聴取せず/「集団自決」修正

 

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除された教科書検定問題で、政府は十日、閣議決定した答弁書で教科用図書検定調査審議会に提出する調査意見書を取りまとめた文部科学省の教科書調査官が、住民の証言を聴取していなかったことを明らかにした。検定決定後の表現については「日本軍の関与がなかったと誤解される恐れがある記述はない」とし、記述内容を正当化した。赤嶺政賢氏(共産)の質問主意書に答えた。

 

 

 「集団自決」が慶良間諸島だけでなく県内各地で発生したことの見解は「審議会では渡嘉敷島、座間味島に限らず、沖縄における『集団自決』全般に関して審議がなされた」と述べた。

 

 

 しかし、六月十三日に文科省に聞き取りをした自民党県連の伊波常洋政調会長によると、布村幸彦審議官は「審議会では両島の事例のみを議論し、本島での『集団自決』は対象にしなかった」と述べたとされ、見解に食い違いが生じている。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

超党派の県民大会計画/沖子連など検定撤回求め

 

 

 高校歴史教科書の沖縄戦に関する記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が文部科学省の検定で削除された問題で、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)と県婦人連合会(小渡ハル子会長)、県PTA連合会(諸見里宏美会長)の三者は県内の幅広い団体に呼び掛け、検定撤回と記述の復活などを求める超党派の県民大会を計画している。「原爆の日」の八月六日か九日にも開きたい、としている。

 

 

 社会活動をする各団体に呼び掛け、実行委員会を組織する方針。十八日には、さらに参加団体を増やした会合を開き、実行委員会結成に向け具体的な日程や内容などを協議する。

 

 

 大会は、超党派を目指し、二十九日の参院選挙後、仲井真弘多知事や仲里利信県議会議長にも参加を呼び掛ける予定。一九九五年に開かれた米兵暴行事件に抗議する県民大会並みに県民の総意を表現したい、としている。

 

 

 沖子連の玉寄会長は「明らかに軍命があったのに、教科書から削除するのは許し難い。県民の総意で、抗議の意思を突きつけたい」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101700_01.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 夕刊 5面

 

グアム視察へ中部首長出発

 

 【中部】米軍再編で在沖海兵隊が移転されるグアムの状況を調べる中部地区十市町村長らの視察団(団長・東門美津子沖縄市長)が十日午前、那覇空港を出発した。十三日に帰国する。

 

 

 アンダーセン、アプラの両基地を視察するほか、フェリックス・カマチョ州知事やマーク・フォーブス議長を表敬。グアム商工会議所や建設業協会なども訪れる。初日はグアム県人会と意見交換する。

 

 

 東門団長は「基地を抱える中部市町村では住民が負担を感じている。移転先の状況を視察し、行政に反映させる一歩としたい」と決意を語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101700_03.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 朝刊 1面

 

県議会 きょう意見書再可決/「集団自決」修正問題

 

 県議会(仲里利信議長)は十一日午前、六月定例会最終本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与を削除した文部科学省の検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書を採決する。全会一致で可決される見通し。

 

 

 県議会は六月二十二日に検定意見の撤回などを求める意見書を全会一致で可決しており、一定例会で、同じテーマの意見書を二度可決するのは初めて。検定撤回に向けた強い県民意思を示す狙いがある。

 

 

 本会議ではまた、県食品の安全安心の確保に関する条例案や十一月に開館する県立博物館・美術館の指定管理者を「文化の杜」共同企業体(代表・平良知二沖縄タイムス社専務)に指定するための議決案などを採決する。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111300_04.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 朝刊 2面

 

枯れ葉剤 米軍「調査」/北部訓練場散布

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題で、那覇防衛施設局の佐藤勉局長は十日の共産党県委員会(赤嶺政賢委員長)の申し入れに対し、施設局から在沖米海兵隊と在沖米陸軍に照会するとともに、防衛省から在日米軍司令部に照会していると説明。米側は「調査する」と回答したことを明らかにした。

 

 

 その上で佐藤局長は「米側から回答を受け、事実を開示することが県民の不安払拭につながる」との認識を示した。

 

 

 一方、同問題で外務省の重家俊範沖縄担当大使は、外務省北米局が在日米国大使館に事実関係を確認中であることを明らかにした上で「重大な報道(問題)なので、米軍からの回答をできるだけ早く得たいと思っている」と述べた。

 

 

 また、米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設について佐藤局長は「(着工に)必要な手続きはすべて行ったと認識している。今後とも清々粛々と工事を進めていきたい」とあらためて推進する姿勢を示した。

 

 

使用・保有 証拠なし

 

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題で、ケビン・メア在沖米国総領事は十日、米国防総省が二〇〇四年に米下院議会に提出した文書に「米軍が過去に沖縄で枯れ葉剤を使用または保有したという記録や証拠はない」との調査結果が盛り込まれていることを明らかにした。

 

 

 メア総領事によると、同文書は〇四年に下院議会からの質問を受け、米軍が調査。沖縄での現地調査は行われなかったという。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111300_05.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月11日朝刊)

 

 

[「検定撤回」再可決]

 

歴史の改ざんを許すな

 

 県議会はきょうの本会議で、文部科学省の検定により高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除されたことについて、検定意見書の撤回と記述回復を求める意見書を可決する。

 

 

 同一の問題で、会期中に二度同じ意見書を可決するのは初めてのことだ。

 

 

 異例といっていいが、歴史的事実に目を背けようとする文科省への県民の怒りである。文科省は、歴史を改ざんする動きに県民が警鐘を鳴らしていることを認識する必要がある。

 

 

 県議会が最初に意見書を可決したのは、六月二十二日の本会議だ。県内四十一市町村議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会も同様の意見書を可決、採択し、六団体で文科省に要請した経緯がある。

 

 

 今回の可決は、県民の総意で行った要請が、「教科用図書検定審議会が決定したことに、口を挟むことはできない」(布村幸彦文科省審議官)として拒否されたことが理由になっている。

 

 

 だが、それよりも大きいのは、県議会文教厚生委員会が実施した渡嘉敷島、座間味島での聞き取り調査で、重く口を閉ざしていた体験者から新たな証言を得たからだ。

 

 

 その多くは、旧日本軍の関与なしに「集団自決」は起こり得なかったというお年寄りたちの肉声である。沖縄戦という歴史の底に横たわる事実は、私たちがきちんと受け止めていかなければならない深いテーマを含んでいる。

 

 

 生々しい証言からは、教科書から沖縄戦の実相が削られることへの怒りが見て取れる。それはまた、「親や兄弟、叔父、叔母たちの悲惨な体験だけでなく、自分の記憶までも否定しようとする動きを許すわけにはいかない」という強い意思とも重なる。

 

 

 仲里利信県議会議長は本紙のインタビューに、「検定結果は、(集団自決による)死者を冒〓している。歴史の事実を否定するとまた戦争への道を歩んでしまう」と答えている。

 

 

 その上で「一部の人たちが戦争を美化し、歴史の事実を歪曲するということは祖父、父、弟を失った者として決して許すことはできない」とも述べた。

 

 

 県子ども会育成連絡協議会、県婦人連合会、県PTA連合会が検定の撤回を求める県民大会を呼び掛けているが、史実をゆるがせにしないためにも党派を超え、県民が一丸となって訴えていくことが重要だ。

 

 

 沖縄戦にどう向き合い、史実を語り継いでいくか。私たち一人一人の意識が問われていることを自覚したい。

 

 

※(注=〓は「さんずい」に「売」の旧字)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070711.html#no_1

 

 

 

2007年7月11日(水) 夕刊 1・5面

 

「検定撤回」再可決/「集団自決」修正

 

県議会「県民の総意」

 

 

 県議会(仲里利信議長)の六月定例会は十一日午前、最終本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与を削除した文部科学省の検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。県議会事務局によると、一定例会で、同じテーマの意見書を二度可決するのは初めて、という。文科省が検定意見の撤回に一貫して難色を示す中、二度目の意見書可決で、検定意見の撤回を求める強い県民意思があらためて示された。県議会では同意見書を衆参両院議長、内閣総理大臣、文部科学大臣、沖縄及び北方対策担当大臣あてに送付する予定。

 

 

 本会議では、同意見書案を全会一致で可決した文教厚生委員会の前島明男委員長が文案を読み上げ、提案理由を説明した。その後、採決し全会一致で可決した。

 

 

 意見書は、県議会や県内四十一市町村の全議会で意見書を可決したことを受けて、県や県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会など六団体の代表の要請に対し、文科省が意見書撤回と記述の回復を拒否した経緯に触れ「同省の回答は到底容認できるものでない」と厳しく批判。

 

 

 また、県議会や県内四十一市町村のすべての議会で意見書が可決されたことを挙げ、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことはまことに遺憾である」と指摘している。

 

 

 さらに、「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、平和を希求し、悲惨な戦争を再び起こさないようにするため」とし、検定意見の撤回と記述回復を再度要請するとしている。

 

 

 意見書採決の際、自民会派の小渡亨氏(54)が退場した。小渡氏は「同じ意見書を二度出すのは逆に効果が薄れ、議会の権威が損なわれると感じたため」と理由を語った。

 

 

文化の杜 管理者に県立美術館 県議会可決

 

 

 県議会六月定例会の最終本会議ではこのほか、県食品の安全安心の確保に関する条例案や十一月に開館する県立博物館・美術館の指定管理者を「文化の杜」共同企業体(代表・平良知二沖縄タイムス社専務)に指定するための議決案など、計二十三議案を可決した。

 

 

 また、二〇〇八年五月に期限切れを迎える「駐留軍関係離職者等臨時措置法」の有効期限延長に関する意見書を全会一致で可決した。

 

 

重く受け止める

 

 

 仲井真弘多知事 県議会で教科書検定に関する意見書が全会一致で再度採択されたことは、県民の総意だと極めて重く受け止めている。沖縄戦の「集団自決」で、当時の教育を含む社会状況の総合的な背景、および戦時下の極限状態の中、手りゅう弾が配られるなど広い意味での日本軍の関与があったものと思っており、その記述が、削除・修正されたことは、誠に遺憾である。今後とも、県議会をはじめ地方六団体で歩調を合わせて対応していきたい。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

冷たい対応「許せぬ」/誠意ない国へ憤り

 

 

 「国の対応は許せない」。一度目の県民の総意にも冷ややかな国や文科省の態度が県民の怒りを呼び、過去に例のない「二度目の意思」が示された。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」記述から軍の関与が削除された教科書検定問題で、県議会は十一日、県民の総意を重く受け止めるよう求め、検定意見撤回と記述回復を求める意見書を再び可決した。一九八二年の「住民虐殺」削除問題当時もなかった全市町村議会の意見書可決に続き、異例の形で県民の意思が示され続けている。

 

 

 四日に県内の行政・議会の五団体の代表とともに文科省への要請を行った安里カツ子副知事は「(教科書検定問題は)二度も意見書が可決されるくらい県民にとって重要なこと」と述べた。

 

 

 国の対応に「国会など都合もあるが、それなりの人に対応してほしかった。終始、『理解してほしい』との返事だったので、沖縄と温度差があると感じた。要請から帰ってきて、本当に憤りを感じ、あらためて事の重大さを認識した。(今後要請することがあれば)誠意をもって対応してほしい」と話した。

 

 

 共に要請した県市議会議長会の島袋俊夫うるま市議会議長は「県議会の最初の意見書の時は、モタモタして、何をしているんだという感じだった。今回は、国の態度に怒りを感じ、県議会の委員会が現地で独自調査もして、集約した意見書。これこそ本当の県民の総意」と意義を強調した。

 

 

 同じく同行した県町村議会議長会の神谷信吉会長(八重瀬町議会議長)は「イデオロギーの問題ではなく、県民の目線で何度でも訴えなければいけない。一過性に終わらせないためにも重要」と話した。

 

 

 新たに超党派の県民大会開催の計画を明らかにした県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の意思を訴えるために県民大会に向けて大きな弾みになる。議長や議員の皆さんにも早めに協力を呼び掛けたい」と歓迎した。

 

 

 検定撤回の運動を中心的に進めてきた高嶋伸欣琉球大教授は「文科省の冷淡な態度に、県民が怒るのは当然。選挙を控えたこの時期に決議されるのも意義深い。県民が一致団結したらここまでやるんだ、というかつての復帰運動を思わせる動きになってきたように感じる」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111700_01.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 夕刊 1面

 

防衛相「規模最大に」/キャンプ瑞慶覧返還

 

 【東京】小池百合子防衛相は十一日午前、トーマス・シーファー駐日米国大使と防衛省内で会談し、在日米軍再編などについて意見交換した。小池防衛相は「嘉手納以南」の六基地の全面・一部返還で、米側との調整が難航しているキャンプ瑞慶覧の返還規模について、「最大の規模で返還されることが重要だ」と述べ、最大限の返還を求めた。

 

 

 一方、小池防衛相は普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、「地元の考え方、今後の将来図を総合的に踏まえて早期に実現できるようにやっていきたい」と意欲を示した。

 

 

 その上で「自分は環境大臣もしていたので環境も保全しながら、安全保障という観点をきっちりと守っていくことも重要だと思っている」と語った。

 

 

 在沖米海兵隊のグアム移転については、「財政面で国民の納得を得て進めていくことが重要で、効率化に配慮していくことが必要。日米の合意に従って早期に実現したい」との認識を示した。

 

 

 これらに対しシーファー大使は「きっちり進めていくことが大事だ」と述べるにとどめ、具体的な言及はしなかった。

 

 

 「嘉手納以南」の返還については、グアムに移転する海兵隊の部隊名や兵員数の内訳が確定しないことなどから、キャンプ瑞慶覧は返還区域の具体的な協議が進んでいない。日米両政府は米軍再編最終報告で、返還の「詳細な計画」を二〇〇七年三月末までに作成する予定だったが、いまだに見通しが立っていない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111700_03.html

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