沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月12日)

2007年7月12日(木) 朝刊 1・27面

 

官房長官、撤回要求に応じず/「集団自決」修正

 

 【東京】塩崎恭久官房長官は十一日午後の記者会見で、県議会が高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与を削除した教科書検定の撤回を求める意見書を再可決したことについて、要求に応じる考えはないことを示した。政府の姿勢に県内関係者は「誠意が感じられない」「これで引き下がるわけにはいかない、目標達成まで戦う」と反発している。

 

 塩崎長官は、県議会での異例の再可決について「それなりの重たい意味がある。それはそれで(意見書を)拝見する」と重要性を認めた。しかし、「日本は国定教科書ではない。検定制度というものの中で今回のようなことがあった」とも述べ、政府として教科用図書検定調査審議会の決定を尊重する考えを強調した。

 

 「集団自決」への日本軍の関与に対する見解を問われると、「歴史的な問題だから政府としてコメントすることではない。ましてや個人的な意見を述べるようなものではない」と言及を避けた。

 

     ◇     ◇     ◇     

 

県内反発 決意新た

 

 「検定撤回まで次々手段を考える」「県民の怒りの火に油を注いだ」。「集団自決(強制集団死)」への軍関与を削除させた文部科学省の教科書検定の撤回を求める意見書を県議会が再可決したその日に、官房長官が「拒否姿勢」を明らかにしたことに、県議や撤回運動を進める関係者から怒りや徹底抗戦の決意の声が次々と上がった。

 

 発言を聞いた県議会の仲里利信議長は「そうですか、と引き下がるわけにはいかない。要請に来ても無駄、ということだろうが、次々に訴えるステップを考えていく。政府と戦う覚悟だ」と断言。新たな県民大会開催の動きにも触れ「戦争を引き起こすことになる書き換えは、後世のためにも許さない。それが県民の意思だ」と話した。

 

 県議会文教厚生委員会の前島明男委員長も「こんな発言が出ること自体ナンセンスだ。全県民的戦いで、政府の態度は許せないということを突き付けていく。座間味・渡嘉敷で生き証人の話を聞いたことで、ますます許せないと思うようになった」と決意を新たにした。

 

 検定撤回の運動を進めてきた高嶋伸欣琉球大教授は「今回の意見書は政府の誠意のなさを問題にしているのに、文面も見ずにこんな発言をするとは。絵に描いたような無神経さにあきれた」と塩崎発言を酷評。「沖縄の怒りの火に油を注いだ。さらに議論や反発は大きくなる」と運動の広がりに期待した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121300_02.html

 

 

 

2007年7月12日(木) 朝刊 1面

 

小池防衛相、あらためて困難視/V字形沖合移動

 

 【東京】小池百合子防衛相は十一日、沖縄タイムス社などのインタビューで、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの移設で同市や県が求めるV字形滑走路の沖合移動について、「修正を求める方々に政府案について理解を求めたい」と述べ、困難との考えをあらためて示した。

 

 小池防衛相は「沖縄担当大臣として沖縄の声をくみ上げる役目を担ってきた」と述べつつ、「いろいろな考え方を包含してV字形ができている」として、住宅上空を飛ばさないでほしいとの地元要望や環境への影響を考慮した上での案だと強調。「サンゴや藻場を守る環境、騒音、飛行場としての実効性など、いろいろな観点から説明し、理解を得たい」と語った。

 

 一方、環境影響評価(アセスメント)方法書の提出については、「沖縄の方々の理解を得ることが大事だ。そういう手順を踏みながら、皆さんの考えもしっかり受け止めながら進めたい」と、丁寧に地元を説得する考えを示した。

 

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の再開については「早期に開く必要がある」と述べつつ、具体的な時期や議題には触れなかった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121300_04.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月12日朝刊)

 

[参院選公示]

 

安倍政治を問う選挙だ

 

年金問題が主要争点に

 

 第二十一回参議院選挙が十二日公示され、二十九日に投開票される。

 

 安倍政権が発足して九カ月。安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、国民投票法制定、教育基本法改正、防衛庁の省への昇格などに力を注いできた。

 

 一方で社会保険庁の年金記録不備問題や「政治とカネ」をめぐる問題が矢継ぎ早に表面化し、閣僚の失言も相次いだ。

 

 「安倍政治」をどう評価するか。年金などの個別の争点と同時に問われなければならないのは、「安倍政治」の功罪である。

 

 沖縄選挙区には自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と、野党統一候補で元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が立候補し、与野党の一騎打ちになる見通しだ。

 

 県内では、普天間飛行場移設を中心とする米軍再編のほか、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題が新たに浮上している。経済振興も大きな課題だ。

 

 西銘氏は「自立への一議席」を強調し、沖縄の自立的発展へ向けた経済振興策を中心に訴えている。

 

 年金問題については、完全支払いに向け一年以内に記録不備を精査し、納めた人が漏れなく受けられるようにすると強調する。

 

 糸数氏は「平和の一議席」と訴え、憲法問題や平和、県民の暮らし、安全などに力点を置いている。

 

 年金問題では政府の対応を批判し、年金記録を確認できる年金通帳と基礎年金を税金で賄う方式が必要だと主張する。

 

 安倍政権発足後、昨年十一月の県知事選、四月の参院補選で自公の公認・推薦候補が当選した。三連勝を目指す与党陣営は、今回の選挙に勝利することによって「仲井真県政が盤石になり、基地問題でも政府に対する発言力が増す」とみる。

 

 背水の陣で臨む野党陣営は、安倍政権の支持率低下、教科書検定問題の浮上などを「追い風」と受け止めている。「タカ派色の強い安倍政権に沖縄からノーの声を上げる」ことで国政の流れを変えたいとしている。

 

 この国の将来と沖縄の針路について論ずべき課題は多い。有権者の投票意欲をかき立てる論戦を期待したい。

 

「政治とカネ」どう評価

 

 安倍政権発足後、佐田玄一郎行政改革担当相が政治資金収支報告書への虚偽記載で辞任。巨額の光熱水費問題で批判された松岡利勝農相は、国会での追及には答えず、疑惑を抱えたまま自殺した。

 

 改正政治資金規正法成立後も赤城徳彦農相の政治団体の事務所費問題が新たに浮上した。政治とカネの問題があらためて注目を浴びている。

 

 「年金選挙」といわれる今回の参院選で、政治とカネの問題も見過ごせない争点だ。

 

 国民投票法が成立したことによって三年後には改憲の発議が可能になった。自民党は参院選の公約の中に「二〇一〇年に改憲発議を目指す」と明記している。年金問題が浮上したためにかき消された感があるが、憲法改正問題についての有権者の判断が問われる選挙でもあることを肝に銘じたい。

 

 参院選の改選議席は一二一(選挙区七三、比例代表四八)。安倍内閣の支持率が低落する中で、自民、公明の与党が計六十四議席以上を獲得し、非改選を加え過半数(百二十二議席)を維持できるかどうかが大きな焦点となる。

 

政治の行方決める一票

 

 自民党幹部は参院選を「中間評価」と位置付け、どんな結果でも首相退陣は必要ないとしている。だが、野党が過半数を獲得した場合、安倍首相の進退問題に発展する可能性がある。

 

 一方、民主党の小沢一郎代表は、野党が過半数を獲得できなければ政界を引退すると表明している。自ら退路を断って政治決戦に臨む構えだ。民主党が敗れた場合、党内の意見の違いが表面化し、分裂の危機を迎えることが予想される。

 

 争点の切実さといい、選挙結果が政局にもたらす影響といい、今度の参院選は、政治の行方を決める極めて重要な選挙といえる。

 

 それだけに、候補者の政治姿勢や政策をよくよく吟味し、「私の一票が政治を動かす」という自覚を持って大事な一票を投じたい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070712.html#no_1

 

 

 

琉球新報 社説

 

参院選公示 信を問われる安倍政権/争点は年金だけではない

 

 第21回参院選が12日に公示される。29日の投開票に向けて、年金記録不備問題や政治とカネの問題、憲法改正などを争点に選挙戦が繰り広げられる。

 最大の焦点は与党が64議席以上を獲得し非改選を加え過半数を維持するか、野党が逆転するかである。

 自民党内には参院選を、安倍晋三首相が次の衆院選で信を問う前の「中間選挙」と位置付ける声がある。参院を軽んじることがあってはならない。今参院選は昨年9月の安倍内閣発足後初の大型国政選挙である。選挙結果は安倍政権に対する国民の評価ともいえる。

 各地域の課題解決にもつながる重要な選挙でもある。有権者は各党、各候補者の政策を十分に検討し、貴重な一票を投じてほしい。

憲法問題も重要

 今参院選では改選121議席(選挙区73、比例代表48)を争う。共同通信社の集計では選挙区に220人、比例代表に11の政党・政治団体から159人の計379人が立候補する見通しである。

 最大の争点は年金記録不備問題だ。基礎年金番号に統合されず、誰のものか分からない年金の加入記録は約5千万件に上り、うち約30万件が「生年月日不明」である。さらにオンラインに未入力の記録が約1430万件ある。

 国民の年金制度への信頼は地に落ちたと言っていい。多くの党が選挙公約の一番目に「年金問題の解決」を挙げているのは当然といえよう。

 問題はそれぞれの政策の実効性であり、さらには年金受給者と加入者の痛みをどれだけ真剣に考えているかである。

 国民の多くが老後の支えを公的年金に頼っている。支給開始年齢が引き上げられるなどの改定にも国民は耐えてきた。にもかかわらず、国に支払い記録がなく、受給できないケースが出ている。

 政府のこの間の対応は後手に回った感が否めない。参院選直前になって対応策を示してはいるが、国民の不安解消につながるかは不透明である。

 年金記録不備問題だけでなく、憲法改正問題も重要である。

 与党の重点政策では年金問題に押しやられ、十番目に「新しい時代にふさわしい憲法をめざす」と憲法改正を掲げた。2010年以降の国会を視野に入れ、国民的な議論を深めていくとの表現にとどめている。

 しかし早ければ、3年後には国会で与党が憲法改正を発議することが予想される。今参院選の当選議員は任期中に改正作業にかかわることになろう。

 国民投票法の成立など、憲法改正に向けた環境づくりが着々と進んでいる。九条改正を焦点にした憲法改正問題は今後、正念場を迎えることからも、今回の参院選は極めて重要な意味を持つ。

棄権せず投票を

 政治とカネの問題も重要な争点である。

 辞任した佐田玄一郎前行革担当相の不透明な事務所経費処理、自殺した松岡利勝前農相の光熱水費に対する国民からの批判などを受けて改正政治資金規正法が成立した。

 しかし、その後も赤城徳彦農相に関係する政治団体が実体のない事務所に多額の経費を計上していたことが発覚するなど、政治とカネをめぐる問題が安倍内閣では相次いでいる。

 柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言、久間章生前防衛相の「原爆投下はしょうがなかった」との発言もあった。これら問題発言への国民の評価も注目される。

 沖縄選挙区(改正一議席)は現職の西銘順志郎氏=自民公認、公明推薦=と前職の糸数慶子氏=無所属、社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=の一騎打ちとなる見通しである。

 年金記録約5千万件の記録照合と通知を来年3月をめどに完了させるなどの政府方針を西銘氏が評価するのに対し、糸数氏は制度の抜本改革などが必要として評価していない。米軍普天間飛行場移設問題では西銘氏が「県内移設も一つの選択肢」としているのに対し、糸数氏は「県内移設は認めない」と対立。それぞれの政策の違いも鮮明になっている。

 基地問題など県民生活に密接にかかわる問題は国政の課題でもある。参院選は国政選挙とはいえ、身近な選挙である。

 有権者は棄権することなく、自らの意思を投票で示してほしい。

 

(7/12 9:46)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25376-storytopic-11.html

 

 

 

2007年7月12日(木) 夕刊 1面

 

西銘・糸数氏 第一声/参院選公示 29日投開票

 

 第二十一回参院選は十二日公示され、二十九日の投開票に向けて、十七日間の選挙戦がスタートした。沖縄選挙区(改選数一)は、自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と野党統一候補で無所属の元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が立候補を届け出た。西銘、糸数の両候補は那覇市内の選対本部前で出発式を行い、集まった支持者の前で第一声を上げ、選挙カーで街頭に繰り出した。両候補の一騎打ちの公算が大きく、与野党が総力戦を繰り広げる。年金問題や改憲論議、米軍普天間飛行場移設などの基地問題、経済振興などが主な争点。安倍政権の沖縄問題も問われ、約百六万二千人の有権者がどう審判を下すか注目される。

 

 西銘陣営の出陣式は那覇市牧志の選対本部前で行われた。妻・澄子さんからたすきを掛けられた西銘氏は年金問題について「政府が責任を持って受給できるようにしなければならない」と指摘。仲井真県政との連携を強調し「国政の安定なくして県政の発展なし。力強い支援を」と訴えた。仲井真弘多知事や仲村正治衆院議員、稲嶺恵一前知事、古謝景春南城市長らが激励し、勝利に向け団結を求めた。「ホップ、ステップ、ジャンプ、ニシメ」のコールで気勢を上げ、遊説に出発した。

 

 糸数氏は那覇市銘苅の選対本部事務所前で午前八時半から出発式。赤のジャケット姿の糸数氏が登場すると、詰め掛けた大勢の支持者から拍手と歓声がわいた。

 

 糸数氏は「平和と暮らし、命を守る闘いだ。なんとしても勝利したい」と力強く訴えた。民主党県連の喜納昌吉代表、社民党県連の照屋寛徳委員長、社大党の喜納昌春委員長、共産党県委員会の赤嶺政賢委員長らが支援を呼び掛けた。糸数氏は支持者から魔よけのサンを受け取り、遊説に飛び出した。

 

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西銘順志郎候補

産業の拡充発展図る

 

 年金問題など大変厳しい風が吹いている。しかし、保険料を支払った多くの方がもれなく年金を受給できるように責任を持ってやらなくてはいけない。

 

 責任政党の自由民主党、公明党の役割だ。これを県民・国民に訴えたい。社会保険庁を解体する。野党はこれに反対している、どちらが県民、国民のことを考えているか。年金問題はもう大丈夫だというシステムをつくる。

 

 昨年誕生した仲井真知事が約束したことをしっかり実現しなくてはいけない。沖縄の将来を考えるとき、観光客一千万人の誘客は素晴らしい発想。だが、水や食料を今の倍以上にしないと観光客に提供できない。

 

 観光産業のすそ野は広く、ダム建設、農林水産業を拡充発展しなくてはならない。その意味でも大変大事な選挙。それを成し遂げるにしても国政が安定していなければできない。国政の安定なしに県政の発展なし。これをテーマに戦い続ける。

 

糸数慶子候補

「普天間」は国外移転

 

 消えた年金問題で安倍首相が発言した一年以内の解決が実現する保証はない。記録が確認できる年金手帳と、基礎年金の税方式が必要だ。消費税引き上げにも反対する。

 

 世界にアピールすべき優れた平和憲法は私たちの生活に何の不都合もない。安倍政権は環境権やプライバシー権の追加を訴えるが、辺野古の海へ自衛隊を派遣し沖縄の環境を破壊した。普天間飛行場は県内の新基地建設でなく国外へ移転すべきだ。

 

 県内の低所得と高い失業率を解消するために、本土の大手ゼネコン中心の公共工事に歯止めをかけ、基地返還跡地の有効利用で経済効果と雇用の場をつくる。県内の農業の根幹を揺るがす豪州とのEPAに真っ向から反対する。

 

 歴史教科書問題で政府は、沖縄戦での集団自決への軍の関与を否定した。亡くなった多くの人に報いるためにも、県民の思いを平和の一議席として国政に届けたい。

 

 西銘順志郎(にしめ・じゅんしろう) 1950年生まれ、与那原町出身。立正大学卒業後、73年琉球海運入社。県知事秘書、県観光連盟副会長などを経て、2001年7月の参院選沖縄選挙区で初当選。内閣府大臣政務官などを歴任。06年からは自民党県連会長。

 

 糸数慶子(いとかず・けいこ) 1947年読谷村生まれ。読谷高校卒業後、バス会社に入社、平和ガイドとして沖縄を紹介。92年県議選で初当選、3期12年務める。2004年7月参院選沖縄選挙区で初当選。06年11月の県知事選に出馬した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121700_01.html

 

 

2007年7月12日(木) 夕刊 5面

 

薬品影響? 北部で奇形生物/米軍枯れ葉剤散布

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していたことが発覚し、豊かな自然環境の汚染が懸念されている。県は過去の周辺河川の調査で、ダイオキシン濃度が環境基準値を下回ったと説明、現在追加調査の予定はない。一方、周辺の山では体が溶けたような奇形の両生・爬虫類が発見されており、自然保護団体は「米軍の薬品の影響ではないか」と、踏み込んだ調査を求めている。

 

 県は二〇〇四、〇五の両年度、基地排水水質等監視調査で、北部訓練場周辺、東村の新川川を調べた。ダイオキシン類の濃度は〇四年度が一リットル当たり〇・〇七九ピコグラム(最も毒性の強いダイオキシン換算)、〇五年度が〇・一一ピコグラムで、環境基準値の一ピコグラムを下回った。

 

 〇五年度は川底の泥など底質も調査し、基準値一グラム当たり百五十ピコグラムを下回る〇・三九ピコグラムだった。

 

 二〇〇〇年度、〇一年度は、ダイオキシン類対策特措法に基づき新川川、国頭村の安波川、普久川などの水質を調査したが、結果は同様に基準値内だった。

 

 一方、四十年近く北部の山を見てきた「山原の自然を歩む会」の玉城長正会長は、「十五―二十年ほど前から奇形の動物を見つける機会が増えた。北部訓練場の隣接地域に集中しており、内部で何か薬品がまかれている影響では」と危惧する。

 

 イボイモリやナミエガエルなどの絶滅危惧種も、「顔や指先がドロドロに溶けた状態」で発見される。リュウキュウヤマガメの甲羅だけが、傷もつかずに散乱しているケースもあるという。「イノシシが捕食する時のように甲羅が割られていない。体が完全に溶けた感じだ」

 

 土をはう両生・爬虫類は、特に土壌の汚染の影響を受けやすい。玉城会長は「奇形の多さは土地に異常がある証拠。枯れ葉剤との因果関係ははっきりしないが、原因究明のために、詳しい調査が必要だ」と求めている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121700_04.html

 

 

2007年7月12日(木) 夕刊 5面

 

居住前「騒音知らず」/「普天間」訴訟

 

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民が、国に夜間飛行の差し止めと損害賠償を求めている普天間爆音訴訟の原告本人尋問が十二日午前、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で開かれた。同飛行場周辺に転居した住民三人に対し、国側は爆音被害を知りながら転居したのではないかとする「危険への接近」を主張。住民らは通勤や生活環境を考えて転居したなどと証言した。

 

 宜野湾市役所職員の大城紀夫さん(54)=同市野嵩=は、通勤に便利なため浦添市から転居したなどと説明。その後、ヘリや航空機の離着陸ルートの真下周辺で住居を購入した理由について「経済面も考えて購入した。住んでみて初めて、夜間の騒音のひどさを自覚するようになった」と述べた。

 

 会社員の森山敏子さん(58)は、東京都から帰郷する際、騒音を知らず宜野湾市真栄原に引っ越した。真栄原区内のW値(うるささ指数)75の地域から、W値80の高層住宅に移ったことについて、勤務先や子どもの通学距離を考え、住宅の設計段階で購入を決めたと証言。「高層住宅ではヘリの旋回が間近に感じられ、航空機のエンジン調整音も直接響いてくる。生活を始めて、住宅地と基地の近さを感じた」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121700_05.html

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