沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(7月13日、14日、15日)

2007年7月13日(金) 朝刊 1面

 

ミサイル防衛情報 共有/嘉手納PAC3

 

日米訓練で弾道確認

 

 【東京】米軍と自衛隊が六日に日本近海で実施した弾道ミサイル防衛(BMD)の合同訓練で、双方のイージス艦が得た着弾予想地点などの情報が、弾道ミサイル迎撃用の地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)を運用する米軍嘉手納基地の迎撃部隊にも送られていたことが、十二日までに分かった。在日米軍再編で合意した「BMDおよび運用協力の強化」が、沖縄でも現実化していることが浮き彫りになった。

 

 訓練では米軍二隻、自衛隊一隻のイージス艦を日本海に展開。自衛隊はデータ送信の中継役として空中警戒管制機(AWACS)も飛ばした。

 

 米軍イージス艦が弾道ミサイル発射情報を感知したと想定。この情報を「LINK16」と呼ばれるネットワークシステムで日米のイージス艦が共有し、それぞれレーダーでミサイルを探知・追尾した。軌道や着弾予想地点などの情報はAWACSに送られ、国内の空自施設を経由して自衛隊・統合幕僚監部、首相官邸へ伝達された。

 

 一方、米軍はイージス艦が集めた情報を嘉手納基地に配備されている米陸軍第一防空砲兵連隊第一大隊に送信。追尾から迎撃に至る情報の流れを確認した。

 

 PAC3の運用をめぐっては、同大隊司令官のマシュー・マイケルソン中佐が今年二月、自衛隊との合同訓練を米軍内部で検討していることを地元メディアに明らかにしている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707131300_03.html

 

 

2007年7月13日(金) 朝刊 2面

 

第31海兵、グアム移転想定/現地政府内部資料

 

中部視察団にも説明

 

 【グアム12日=下里潤】普天間飛行場所属機などで構成する第三一海兵遠征部隊(31MEU)がグアムへの移転を想定していることが十二日、グアム政府の内部資料で明らかになった。グアム・アンダーセン空軍基地のジョエル・ウェスタ副司令官(大佐)も同日、中部地区十市町村長らの視察団に対し「六十五?七十機の海兵隊航空機と千五百人の海兵航空戦闘部隊がグアムに拠点を置く」と話しており、普天間のヘリ部隊がグアムに移設される可能性が出てきた。

 

 内部資料は「米兵駐留の増加可能性」と題され、部隊名や兵隊の人数などがリストアップされている。31MEUは「来ることが想定される」グループに分類されており、二千人の海兵隊員が記されている。

 

 31MEUと行動をともにする海軍佐世保基地(長崎県)の強襲揚陸艦エセックスや、ジュノーなどの戦艦も記されており、グアムの軍事拠点化が進展していることがうかがえる内容だ。

 

 ウェスタ副司令官は「どの部隊が来るのか決まっていない」としたものの、「海兵隊の航空戦闘機能の受け入れ態勢は整っている」と強調。同基地内の密林を切り開き、実戦部隊が使用する海兵隊の弾薬庫も建設する計画を示した。

 

 視察に参加した伊波洋一宜野湾市長は「(米軍再編で示された)司令部だけが移転するという政府の説明が打ち破られた。仮に名護市辺野古に代替施設が造られれば、実戦部隊がグアムから沖縄へ訓練に来ることになる」と指摘。千五百人の海兵航空戦闘部隊の移転などが記された米太平洋軍の「グアム統合軍事開発計画」を基に再編が進んでいるとの認識を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707131300_04.html

 

 

2007年7月13日(金) 朝刊 2面

 

トリイ通信施設 一部返還を合意/日米合同委 時期は未定

 

 【東京】日米両政府は十二日の合同委員会で、読谷村のトリイ通信施設の一部(約三万八千二百二十平方メートル)の返還に合意した。返還時期は未定で、防衛施設庁が今後、地元と調整する。

 

 返還地は、トリイ通信施設の東端を通る国道58号バイパスで分断されて残っていた部分。米側が「不要」と判断し、配水管などと併せて返還を提案していた。

 

 そのほか、うるま市のキャンプ・マクトリアス内に設置された空調機の騒音軽減のための遮音壁設置、同市の陸軍貯油施設内の倉庫建設についても合意した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707131300_05.html

 

 

琉球新報 社説

 

再編交付金 問われる防衛相の「変節」

 

 就任早々、米軍再編の「日米合意案」の強行姿勢を打ち出し、波紋を広げた小池百合子防衛相だが、今度は再編交付金の名護市支給に「判断保留」ときた。沖縄担当相時代には、北部振興策廃止の閣議決定に反対までしてくれた。なのに、この「変節」ぶりは、いかがなものか。

 あの久間章生前防衛相さえ、「受け入れを表明し、環境現況調査でも県の同意書に市の同意も付いた。そのような協力をしてもらっている。対象にならないとは考えられない」と、交付金の支給に前向きだった。

 小池氏は、沖縄通の大臣だった。「かりゆしウエア」の全国普及にも率先着用で、貢献してくれた。那覇空港の沖合展開にも「国に要求する権利がある」と県を支援してくれた。

 それが、一体どうしてしまったのだろう。防衛大臣に就任した途端、前任者よりも厳しい態度で県民に挑んでいる。

 「変節」の背景には守屋武昌防衛次官の存在が指摘されている。守屋氏は異例の就任満4年を8月に迎える。“ミスター防衛省”の異名を持つ実力者だ。

 名護市>への再編交付金支給問題では、久間前大臣は前向きだが、守屋次官は一貫して否定的だ。小池大臣の発言は、久間前大臣ではなく、守屋次官に寄っている。

 前任者の不適切発言による辞任で、突然の防衛相就任である。就任直後だ。不慣れで、官僚の準備した文書を読み上げるのが精いっぱいということか。しかし、それではトップとしての資質が問われる。

 防衛省は「文民統制」が要である。制服組(武官=自衛隊)と違い、守屋次官は背広組(文官)。だが、イラクへの自衛隊派遣、国民保護法など一連の有事法制、米軍再編法の制定の裏に守屋次官の活躍がある。制服組以上に“軍の論理”に精通する次官だ。

 小池大臣に求められるのは、文民統制の徹底である。それは軍の論理だけでなく、民の論理でも防衛を考え、実行すること。端的に言えば「平和憲法」の理念を、防衛省・自衛隊に徹底させることだ。

 理念が揺らぐから、「変節」を生む。沖縄に知友も多い小池大臣である。迷った時は沖縄の声、地元の声に耳を傾けてほしい。

 そもそも普天間移設問題は、住宅過密地にある「危険な基地の撤去」「沖縄の負担軽減」にあった。それが、いつしか新基地建設の話にすり替わり、新基地建設に異議を唱える自治体や地域住民を抑えるため「アメとムチの法」となる米軍再編法まで制定された。

 強行採決で制定された法である。「政府の恣意(しい)的運用」が懸念されたが、現実になりつつある。小池防衛相の発言には、今後も注視したい。

 

(7/13 10:16)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25403-storytopic-11.html

 

 

2007年7月14日(土) 朝刊 2面

 

防衛相、合意案で一致/米軍再編

 

 【東京】小池百合子防衛相は十三日夜、ゲーツ米国防長官と就任後初めて電話会談し、在日米軍再編について「日米合意に従った形で早期に実施する」ことを確認した。

 

 小池氏はこれまで報道各社のインタビューで、米軍普天間飛行場の移設をめぐって県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について「日米合意案に基づいて理解を求めていく」などとしており、今回日米双方が県や名護市の要求をあらためて困難視した格好だ。

 

 米軍再編について小池氏は、ゲーツ長官に対し「私は沖縄担当として(閣僚を務めた経験があり)これまでの経緯を重々承知している」と説明し、日米合意の実現に向けた意欲を示した。

 

 小池氏によると、会談のテーマはゲーツ長官から「日米間にさまざまな課題がある」と切り出し、米軍再編の促進やミサイル防衛(MD)の連携、情報の共有などで意見交換したという。

 

 小池氏は会談後、記者団に対し、訪米時期について「現実的には参院選が終わってからできるだけ早い時期になる」と述べ、八月にも予定していることを明らかにした。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707141300_04.html

 

 

琉球新報 社説

 

イラク情勢 早期撤退で泥沼脱出を

 

 イラク情勢が泥沼化する中、米軍の出口戦略が見つからない。大義名分のない戦争に突入したブッシュ政権に、内外での四面楚歌(そか)という事態が明らかになりつつある。ベトナム戦争を教訓にするまでもなく、ここに至っては、イラクからの早期の撤退が求められる。米国にとって、そのことこそが泥沼化を抜け出す唯一の方策だということに、ブッシュ政権は早く気付くべきだ。

 米下院本会議は12日、イラクに駐留する米軍の主要部隊を遅くとも来年4月1日までに撤退させることを定めた、新たな法案の採決を行った。その結果、223対201の賛成多数で可決された。

 法案では、イラク撤退の対象は米外交施設の警護やイラク治安部隊に対する訓練、アルカイダの掃討作戦に従事する兵士を除く全駐留米兵。法案成立後、120日以内、または来年4月1日までの撤退を規定している。

 ブッシュ大統領はこれに先立ち、イラク政策に関する中間報告で一定の進展を強調。「撤退は支持率を上げるには役立つかもしれないが、長い目で見れば米国の安全に重大な影響をもたらす」と当面の撤退はないと言明している。今回の法案可決により、議会多数派の野党民主党は大統領に徹底抗戦する意思を一段と鮮明にした。

 また、民主党のリード上院院内総務は「大統領はイラク政策の失敗を認め、アルカイダ打倒に集中すべきだ」と声明を発表、大統領に政策転換を強く求めている。実は、イラク政策については身内からも異論が続出しているのが現状だ。来年の改選を控え、地元に戻ってイラク政策の不人気ぶりを目の当たりにした共和党の上院議員らから“造反”が相次いでいる。

 これ以上、イラク国民の犠牲者を増やすわけにはいかない。米軍撤退でかえって内戦が激化するという懸念もあろうが、逆に米軍の存在がいたずらに緊張をあおる、という側面も否定できない。

 「異民族支配」の不合理さは、われわれ県民が身をもって体験している。困難はあろうと、誇りを持って自治を実現してほしい。そのためにも米軍の早期撤退が必要だ。

 

(7/15 10:55)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25461-storytopic-11.html

 

 

琉球新報 社説

 

枯れ葉剤使用 地位協定の改正しかない

 

 このままやぶの中、とうわけにはいかない。ことはあまりに重大だ。在沖米軍が1960年代、沖縄本島北部訓練場でダイオキシンを含む枯れ葉剤を使用していたとされる問題で、米側は13日までに「(枯れ葉剤が)使用、貯蔵されていたことを示す資料、証言や記録はない」と回答してきた。防衛施設庁と外務省が明らかにした。

 施設庁の地引良幸次長は、米側への照会以外の対応を聞かれ「それ以外に手法がないので、まずは米側に確認するのが第一だ」と述べている。つまり、自ら現地調査なり、事実を究明する気はないということになる。案の定、日本政府としては新たに土壌調査、水質調査を求める予定はないとも明言した。日米ともこれで幕引き、としたいのだろうが県民としては到底、納得できるものではない。

 今後も米側に対し、あらゆる手だてを講じて事実の究明を求めてほしい。もちろん、日米地位協定を盾に米側が難色を示してくるのは十分、予想できる。よもや日本政府がその土俵に、安易に乗るようなことがあってはならない。そうであるならば、やはりわれわれとしては不平等の根源である地位協定の改正を、強く訴えていかざるを得ない。

 枯れ葉剤の散布に関しては、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定されていたことがこのほど、米退役軍人省の公式文書で明らかになった。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは環境の中では消えず、一般に土壌汚染は長期間続く。発がん性があり猛毒とされ、ベトナム戦争では、枯れ葉剤が米軍によって大量に散布された。この地域ではがんや先天性異常児、流産、死産などが多発。また帰還米兵にも被害が出ている。

 北部で散布との報道の直後、ショッキングなニュースが飛び込んできた。当のやんばるで、国指定天然記念物リュウキュウヤマガメや県指定天然記念物ナミエガエルなどから異変が見つかった、というのだ。一部の爬(は)虫(ちゅう)類や両生類に、目や口の周りがただれたり、足の指が溶けるなどの異常が観察されていた。

 関係者によると、異変は10数年前から見られた。確認場所は、大宜味村と東村の境界にある玉辻山から国頭村の与那覇岳にかけた沢筋や、広域基幹林道の奥与那線の周辺など、北部訓練場を取り巻くように広範囲にわたっている。

 もちろん、これが枯れ葉剤の散布と関係がある、とは断定できない。まず必要なのは、事実の確認であり、汚染の実態を調べることだ。「記録がない」が即「事実がない」とはならない。いたずらに不安をあおるつもりはないが、徹底的な調査とその公表以外、県民の懸念を解消する方法はない。

 

(7/15 10:57)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25462-storytopic-11.html

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