米兵暴行事件、県議会、抗議決議へ 沖縄タイムス 関連記事・社説(2月14日)

2008年2月14日(木) 朝刊 1面

県議会、抗議決議へ/米兵暴行事件

軍に万全防止策要求/謝罪・基地縮小も

 米兵による女子中学生暴行事件を受け、県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)は十三日、「在沖米海兵隊員による少女暴行事件に関する抗議決議案」を全会一致で可決した。決議案は「人間としての尊厳を蹂躙する極めて悪質な犯罪。断じて許すことができない卑劣な行為」とし、米軍などに再発防止策に万全を期すことなどを求めている。同委員会で県警は一九九五年以降、米軍人関係者による強姦事件(未遂も含む)が十四件発生していることを明らかにした。抗議決議は十四日の本会議に上程、全会一致で可決される見込み。

 委員会で県基地対策課は、昨年九月現在の基地外の米軍用賃貸住宅の登録戸数は六千九十八戸、うち契約戸数は五千百七戸と説明。人数については把握できていないことを明らかにした。

 これに関連し、嘉陽宗儀委員(共産)が、米軍人が住民登録の対象外となっていることから、基地外の米軍人を日本側が把握できていない状況を指摘。

 これに対し、上原昭知事公室長は「米軍人の住民登録が可能かどうかは厳しいものがあるかと思うが、関係機関とも相談していきたい」との考えを示した。

 喜納昌春委員(社大)らは、県庁を訪れた米軍関係者らに対し、仲井真弘多知事が「抗議」ではなく、「要請」として対応した点を問題視。「知事はもっと突き放した対応をすべきだった」と指摘したのに対し、上原公室長は「(知事は)遺憾の意という表現だが、当然抗議の趣旨も含んでいる」と説明した。

 また、事件後の日米の対応について上原公室長は「対応は非常に早かった。事件の重大性を強く認識していると思う」との見解を述べた。

 決議案は(1)被害者及び家族への謝罪及び完全な補償(2)実効性ある具体的な再発防止策について万全を期す(3)米軍基地の一層の整理縮小を図るとともに、海兵隊を含む米軍兵力削減の推進―を要求。

 十五日に県内の日米関係機関、十八、十九の両日、東京都内の日米関係機関に申し入れを行う予定。


米大使ら知事に謝罪


 トーマス・シーファー駐日米国大使とブルース・ライト在日米軍司令官が十三日、県庁を訪ね、仲井真弘多知事と面談し、米兵暴行事件について「このような事件が起きたことを遺憾に思っている。再発防止のための手段は何でも取りたい」と謝罪し、再発防止策の徹底を約束した。仲井真知事は「県民の怒りはまだ収まっていない。再発防止を県民に分かるように徹底し、公開してもらいたい」と要望した。

 面談でシーファー大使は「今回の事件をいかに深刻に受け止めているか知事に伝えたいと思ってきた」と話し、被害少女と両親にあてた手紙を知事に託した。

 ライト在日米軍司令官は「在日米軍の軍人、軍属、家族を代表し、事件を心から悲しく思い、申し訳なく思っている」と謝罪した。

 仲井真知事は「このような事件が起きることで県民の怒りが頂点に達し、米軍と県民、基地に大きな影響が出ることを深刻に考えている」と強調したのに対し、シーファー大使は「知事の懸念はよく理解している」との認識を示した。

 面談後、シーファー大使は記者団に、米軍内の教育プログラムを見直す考えを示した。普天間移設問題への影響については「今大事なのは事実の判明に焦点を当てること。その後で影響が出てくることがあれば、その時点で対処していかなければいけない問題だ」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

「隊員教育の徹底を」/知事、再発防止で要望


 仲井真弘多知事は十三日、県庁を訪れた外務省の小野寺五典副大臣に対し、米兵による暴行事件に遺憾の意を表するとともに、「事件が二度と起きないよう、一層の綱紀粛正と隊員教育の徹底を含め、再発防止に万全を期し、その措置内容を県民に公表することを在沖米軍に対し、強く働き掛けていただきたい」と要請した。小野寺副大臣は「(要請内容は)外務大臣や官邸にも報告したい。先ほど面談した四軍調整官に対し、再発防止策が目に見える形で、(事件が)二度と起きないと県民が納得できるような体制をお願いしたいと申し上げた」と述べ、理解を求めた。

 小野寺副大臣はこれに先立ち、那覇市の外務省沖縄事務所で在沖米軍のリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)に会い、事件の真相究明と再発防止の努力を求めた。

 ジルマー中将は海兵隊員の教育プログラム見直しについて具体案の検討を配下の各部署に指示。また、基地外に居住する隊員の管理について何らかの対応が必要だとの認識を示したという。

 面談は、通訳を交えて約三十分間行われた。

 この中で小野寺副大臣は、基地外に住む隊員が逮捕されたことについて従来の対応では不十分ではないかと指摘。また「沖縄、日本が占領地という間違った印象を仮に持っている隊員がいるとすればそのようなことがないようしっかり教育してほしい」と求めた。

 ジルマー中将は「この二十四時間、海兵隊はほとんど機能していないくらい再発防止について検討している」と述べ、教育プログラム見直しに具体的に取り組む考えを示した。被害者に対しては「心を痛めている」と述べたという。

 沖縄での日程を終え記者会見した小野寺副大臣は、日本政府の問題意識については米側に「十分伝わったと思う」とした。この問題が「米軍再編に与える影響は決して少なくない」とも述べ、政府部内で再発防止に向け議論すると述べた。


知事・米大使・司令官会談要旨


 シーファー大使 このような事件が起こったことを本当に遺憾に思う。被害者の少女とご家族、関係者の方々に対して同情に堪えない。今回の件に関して全面的に協力させていただき、正義がもたらせるために、われわれができるすべてのことをすると約束する。

 再発防止のために必要な手段は何であれ取る用意がある。少女と家族が負われた傷が一日も早く癒やされるよう願っている。

 個人として被害に遭った少女と両親に手紙を書いた。知事から渡してほしい。

 ライト司令官 在日米軍すべてを代表し、今回の事件について本当に悲しいことだと思っている。権限の中でできることがあれば、このような事件が再び起きないように何でもしたい。今回のことに関して本当に心から悲しみ、申し訳なかったと思う。

 仲井真知事 今回の事件は女性の人権を蹂躙する極めて悪質な事件であり、決して許すことはできない。

 被害者が中学生でもあり、極めて悪質な事件と言わざるを得ない。強い怒りを覚える。極めて遺憾。

 このような事件が発生すると県民の怒りが頂点に達し、今後の米軍と県民、基地について非常に大きな影響が出ることを深刻に考えている。

 このような事件が二度と起こらないよう綱紀の粛正、隊員の教育の徹底、再発防止に県民がよく分かる形で万全を期していただきたい。

 シーファー大使 被害に遭った少女とご家族にできることがあれば何でもしたい。いかに私たちが申し訳なく思っているかを知っていただきたい。一日も早く幸せで、今までの生活に戻っていただけるように何か手を貸したい。

 仲井真知事 大使と司令官の誠意はきちっと受け止めたいと思うが、県民の怒りはまだ収まっていない。

 ぜひ再発防止を徹底し、県民に分かるように公開してほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802141300_01.html

 

2008年2月14日(木) 朝刊 2面 

国対応「生ぬるい」/綱紀粛正聞き飽きた

 「国の対応は生ぬるい」「綱紀粛正は聞き飽きた」。米兵による暴行事件の現場となった北谷町と沖縄市の両議会が十三日、日米両政府の機関をそれぞれ訪れ、異例の強いトーンで抗議した。繰り返される犯罪に不信感をあらわにし、目に見える改善の確約を要求した。本土でも集会が相次いで開かれ、抗議の波が広がった。日米政府は要人を沖縄入りさせて「迅速な対応」をアピール、事態の沈静化に躍起となった。

北谷町議会


 米兵暴行事件を受け、被害者の少女が保護された北谷町の町議会(宮里友常議長)正副議長と基地対策特別委員の計十一人が十三日、沖縄防衛局や外務省沖縄事務所などを訪れ、事件の容疑者と同じく基地外に住む米兵の人数の把握と公表や、日本政府が地元の意向を踏まえた上で再発防止策を考え、米国と協議するように要請した。

 宮里議長らは同日午前に決議した、日米両政府による再発防止の具体策作成などを求めた意見書を、沖縄防衛局の岡久敏明管理部長と、外務省沖縄事務所の田中賢治課長補佐に手渡した。

 各町議は、事件では米軍基地外に住む米兵が容疑者となっていること、同町には千数百戸の米兵や家族らが住む外国人住宅があることを示し、「基地の外に基地があるような状況」と説明した。

 また、同町議会が防衛省や外務省に対して、再三にわたり基地外に住む米兵数の調査、公表を求めてきたにもかかわらず「分からない」としか対応してこなかったことを批判、あらためて調査、公表するよう強く求めた。

 同町内でも米兵による女性暴行事件が起きており、「こういう事件を起こせば、米軍はもはや『良き隣人』ではない。住民すべてに恐怖を与えた」「われわれも日本国民として安心安全に住む権利がある」と訴えた。

 外務省沖縄事務所では田中課長補佐が「外務省も政府レベルで再発防止や綱紀粛正を米国側に強く申し入れた」などと説明したが、各町議は「『申し入れ』という生ぬるい言葉ではなく抗議してほしい」、「同様の事件が繰り返されており、綱紀粛正という言葉は聞き飽きた」と、怒りが収まらない様子だった。


沖縄市議会


 被害者が連れ去られた現場の沖縄市議会(喜友名朝清議長)も意見書可決後の十三日午後、抗議行動を展開した。同市では一月に米兵による強盗致傷事件が発生、議会が再発防止を要請したばかり。議員から「先月の時点で真摯に対応していれば今回の事件は防げたのではないか」「口約束でなく目に見える具体策が必要」と厳しい指摘が相次いだ。

 沖縄防衛局や外務省沖縄事務所への要請で、基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長らは「責任を明確に抜本的対策を講じるべきだ」、「県民が納得する対応がなければ、日米安保の賛否に関係なく反基地の動きが広がる」とくぎを刺した。また同議会も基地外に住む米兵の行動管理をただしてきたことを指摘。「政府は基地を抱える自治体をどう思っているのか」と強い口調で迫る場面もあった。

 沖縄防衛局の真部朗局長は「米軍に働き掛けて実効性ある対策を実現したい」。外務省沖縄事務所の田中賢治課長補佐は「日米政府の高いレベルでこれから検討が始まる」と述べ理解を求めた。


県婦連も要請


 県婦人連合会(小渡ハル子会長)の各地区会長ら十三人は十三日、沖縄防衛局を皮切りに、仲井真弘多知事や仲里利信県議会議長、安里カツ子副知事をそれぞれ訪れ、米兵に対する綱紀粛正や、米軍基地の整理・縮小などを要請した。


県P連が決議


 県PTA連合会(諸見里宏美会長)の理事二十人は十三日、第六回定例理事会開催に先駆けて開いた緊急理事会で、被害者への謝罪と補償や、加害米兵への厳しい処罰を求めた「米兵犯罪の再発防止を求める緊急要請」決議を採択した。


容疑者の拘置決定/那覇地検が10日間


 那覇地検は十三日午前、強姦容疑で逮捕、送検された在沖米海兵隊キャンプ・コートニー所属の二等軍曹タイロン・ハドナット容疑者(38)=北中城村島袋=の拘置を那覇地裁に請求。同地裁は同日、同容疑者の拘置を認める決定をした。期間は十日間。(一部地域既報)

 ハドナット容疑者は、容疑を否認する一方、事件の波紋が広がっている事態に反省しているという趣旨の供述をしていることが十三日、分かった。

 

     ◇     ◇     ◇     

全国に憤り広がる


 県教育委員会(伊元正一委員長)は十三日の定例会で、米兵による暴行事件で米軍に対し、厳重な抗議と一層の綱紀粛正、兵員教育の徹底を求めるコメントを発表した。十五日午後にも全委員六人で在沖米国総領事や在沖米四軍調整官事務所などを訪れ、抗議行動を行う。全委員が直接米軍などに抗議をするのは異例。

 定例会では、仲村守和教育長が事件の概要や県教育庁、学校側の対応を説明。被害に遭った女子生徒と一緒にいた生徒の家をスクールカウンセラーが訪問するなど、心理面でのケアに当たっているとした上で「関係生徒の心のケアの実施計画を立て、対応していく」と語った。

 コメントは抗議を強める意味を込めて全員が起立し、伊元委員長が読み上げた。「女性の尊厳を踏みにじるものであり、特に被害者が中学生であることを考えれば、本県の児童・生徒の安全に責任を持つものとして極めて遺憾」と事件を糾弾。

 県教委として「PTAをはじめ地域、警察、関係機関との連携を深め、今後二度とこのような事件が起こらないよう、児童・生徒の安全確保に努める」と決意を表明した。

 委員からは「抗議の意味をいかに米軍側に分からせるのかが重要」との意見や「抗議行動と並行し、生徒が自分を守るための指導も今後は効果的に取り組む必要がある」などの指摘があった。

 県教委の委員が米軍に抗議行動を行うのは今回で三度目。二〇〇〇年七月、〇一年一月にそれぞれ発生した米海兵隊員による中学生へのわいせつ事件で再発防止を求めている。


関西の女性たち怒りの緊急結集


 【大阪】関西在住の女性たちで組織する「三月行動をよびかける女たち」(長崎由美子共同よびかけ人)は十三日夕、大阪市北区の大阪・神戸米国総領事館前で緊急の抗議行動を展開した。

 同組織は二〇〇四年三月、イラク戦争への自衛隊派遣に抗議し結成され、「とめたいんや戦争!守るんや命!」を合言葉に毎年三月に反戦集会を開いている。

 この冬一番の冷え込みとなった総領事館前には、約三十人が横断幕やプラカードを手に結集。「米兵による犯罪、基地被害は沖縄だけの問題ではない。女性の立場から沖縄の人々と連携し、強い憤りと抗議の意思を表明する」と気勢を上げた。

 この後、ラッセル総領事への面会を求めたが受け入れられず、応対に出た職員に「基地の全面撤去を求める」内容のブッシュ米大統領と在沖米軍四軍調整官あての抗議文を手渡した。

 同団体事務局の松野尾かおるさんは「米兵の犯罪は基地、軍隊がある限りなくならない。沖縄の怒りに無関心でいることはできない」と唇を震わせた。


関東反戦地主会 米大使館に抗議


 【東京】「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」など市民団体のメンバーらは十三日夜、都内の駐日米大使館を訪れ、暴行事件に抗議するとともに、「米軍再編は沖縄の基地負担軽減にならない」と、在沖米軍基地の撤去を求めた。大使館への接近を阻止しようとする警官隊と一時もみ合いになった。

 大使館近くに集まったメンバー約二十人は「沖縄は守られているのではなく、逆に生活を破壊されている」「痛ましい事件をゼロにできないなら米国に撤退せよ」などと訴えた。


「基地撤去を」日教組が決議


 日教組は十三日、全国代表者会議で事件に抗議する特別決議を行った。決議文は凶悪事件への強い憤りと怒りを表明し「日米地位協定の抜本的見直しはもとより、基地の撤去を早急にすすめるよう強く求める」としている。

 また、沖教組中頭支部は同日、事件の起こった地元として、抗議声明を発表。早急に対策を講じる必要を訴えた。「未成熟な中学生は社会全体で守り育てなければいけない存在」とし、本人・家族への心のケアなど全面的な支援を強く求めた。


米軍関係者の女性暴行

95年以降も14件摘発


 県警の資料を基に沖縄タイムスがまとめた統計では、十三年前の米兵暴行事件が起きた一九九五年から二〇〇七年までの間に、県警が摘発した軍人や軍属、家族ら米軍関係者による女性暴行事件は十四件、十七人あった。

 凶悪犯罪(殺人、強盗、放火、強姦)も四十三件、六十三人に上った(数字はいずれも未遂事件を含む)。

 刑法犯総数は八百件、八百六十四人。うち暴行や傷害、脅迫などの粗暴犯は百件、百人だった。構成比が最も高いのは窃盗犯で、三百八十五件、四百十七人に上った。

 最近では、沖縄市内の飲食店での二十代の女性従業員を殴り、性的暴行を加えたとして、嘉手納基地内に住む米兵の息子が強姦致傷の疑いで逮捕された。

 今年一月には、海兵隊員二人が沖縄市内でタクシー運転手を瓶やこぶしなどで殴り、運賃を払わず逃げたとして、強盗致傷容疑で逮捕される事件も起きている。運転手は頭部裂傷など全治一カ月の重傷を負った。


米、誠意アピール躍起

知事淡々、目線は文書


 米兵による暴行事件を受け、米政府は十三日、大使と在日米軍トップという日本国内の二人の責任者を県庁に派遣、「誠意」のアピールに心を砕いた。一方、仲井真弘多知事は淡々とした対応に終始し、会談にはぎこちない雰囲気が漂った。

 応接室に通されたシーファー駐日大使とライト在日米軍司令官は四分間、立ったまま一言も話さず、仲井真知事の入室を待った。ピンクのかりゆしウエア姿で登場した知事は、握手で応えた。

 シーファー大使は会談で被害者あての手紙を託し、「きのう米本国から戻り、昨夜もけさも対応を協議した」と、全力の対応を強調した。ただ、「謝罪」という言葉を直接使うことは避けた。

 仲井真知事は大使の手紙をどう扱うか戸惑った様子を見せた後に受け取ると、前日ジルマー四軍調整官に伝えたのとほぼ同様のせりふを読み上げた。厳しい言葉が躍るが、目線はほとんど手元の文書に注がれたまま。一通り終わると顔を上げ、「県民の強い怒り」という言葉には力を込めた。

 報道陣七十人以上の前で、「真摯な対応」を印象付けた米側。この後、外務省沖縄事務所で小野寺五典外務副大臣と面談したジルマー四軍調整官は「われわれは事件を大変に深刻に受け止めており、シーファー大使の訪問もそれを示している」と強調した。


知事の「怒り」/県民意思を体現せよ


 米兵による暴行事件に対する仲井真弘多知事の言動が分かりにくい。事件の謝罪に訪れる日米の要人らに対し、「県民の怒りは頂点に達している」とのコメントを読み上げた知事自身は怒っているのか、そうでないのか。「素早い対応をしていただいた誠意を多としたい」と相手に配慮をにじませるあまり、県民の目には知事の「怒り」が伝わってこない。

 今回の事件に対し、知事の対応は素早かった。事件発覚直後の十一日午前には、記者団の前でコメントを発表。「(事件に)強い怒りを覚える」と強い調子の言葉を口にしたが、日米両政府が最も懸念する米軍普天間移設問題への波及には「直接の影響はないと思う」と否定し、率先して「火消し役」を演じた。

 十二、十三の両日、謝罪のため、県庁を相次いで訪れた米国要人に対しても、仲井真知事は終始冷静な対応をとった。「今後の基地問題に深刻な影響を与えかねない」と再発防止を促したが、普天間移設をめぐる防衛省の強引な対応には時に激しく、語気荒く発言した知事の姿は今回は見られない。

 仲井真知事は就任以来、事務方が用意したあいさつ文はほとんど読まず、「自身の言葉」にこだわってきた。それが「仲井真カラー」でもあった。だが、今回の事件に関しては一転し、用意されたペーパーを棒読みに近い形で、しかも、同じ「言葉」を使い回し応対する姿が目立つ。

 こうした対応の裏には、懸案の普天間移設問題でようやく政府と間に生まれた「協調関係」を崩したくない、事態を荒らげたくないとの思いもにじむ。知事サイドは「怒り心頭でも人間の礼節を欠いてはいけない」(県首脳)と強調するが、知事がどちらに顔を向けて対応しているのか、県民にはやはり見えにくい。

 知事の言葉の一つ一つは、個人の思いを超えて「県民意思」として受け止められる。仮に、本来の意思とは別に誤ったメッセージとして内外に発信されれば、県益そのものを損なうほど、知事の言葉の持つ意味は重い。

 知事が、事件に対する県民の怒りを共有しているのなら、県民意思を体現し、自らの言葉で語るべきではないか。(政経部・稲嶺幸弘)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802141300_02.html

 

2008年2月14日(木) 朝刊 3面

日米政府 特効薬なく/95年を反省 迅速対応

 米兵による暴行事件を受けて十二、十三の両日、日米両政府と米軍の高官クラスが相次いで仲井真弘多知事を訪ね、謝罪を繰り返した。一九九五年九月四日の米兵による暴行事件では、モンデール駐日米国大使が遺憾の意を表明したのが発生から十七日後。宝珠山昇防衛施設庁長官は二十五日後に来県したが、大田昌秀知事(当時)に門前払いされた。対応が後手に回り県民の怒りを増幅させた当時の「反省」を踏まえた今回の措置だが、実効性のある再発防止の特効薬は打ち出せず、日米に「謝罪詣で」以上の打開策が見当たらないのが実情だ。

初動を重視


 米側は十二日の在沖米軍トップのジルマー四軍調整官(中将)、メア在沖米国総領事に続き、十三日は日本に駐在する米政府と米軍のトップに当たるシーファー駐日米大使、ライト在日米軍司令官が県庁を訪問。

 日本側も国会対応中の高村正彦外相の代理として小野寺五典副大臣が、町村信孝官房長官の指示を受け、十三日早朝の便で来県した。

 いずれも仲井真知事に「遺憾の意」を伝え、綱紀粛正や再発防止に言及。日本政府関係者は「九五年は日米の反応が鈍く、県民感情を悪化させた。今回は初動を重視した」と解説する。

 西宮伸一北米局長が事件翌日の十一日、ドノバン次席公使に電話を入れ、遺憾の意と併せて過去の経緯や基地に対する県民感情を伝えた。このため外務省筋は、シーファー大使の異例の来県を「事態を深刻に受け止めている表れ」と解説する。

 嘉手納基地で勤務経験があるライト司令官、沖国大に普天間飛行場のヘリが墜落した当時の在沖米海兵隊基地司令官を務めたフロック副司令官ら、在日米軍トップが「沖縄問題を知っている」(同)ことも迅速な対応につながったとみている。


頼みは米国


 九五年は三容疑者の身柄が米軍の手中にあったため、引き渡し問題がわき起こり、日米地位協定の改正がクローズアップされた。大田知事が事件発生から十五日後の九月十九日に東京で河野洋平外相と会談し、地位協定の見直しを強く要求したにもかかわらず、河野氏が「現時点で見直す考えはない」とあっさり断言したことも県民の怒りに火を付けた。

 容疑者の身柄が日本側にある今回は地位協定問題が直接、焦点になっていないため、「とにかく誠心誠意謝罪するしかない」(防衛省幹部)。

 石破茂防衛相は十二日の閣議後会見で、「具体的にどうすべきか、日米両政府の責任でもある」と述べ、日本政府として実効性ある再発防止策に具体的に関与する必要性を初めて指摘した。

 しかし、周辺は「怒りに任せて勢いで言ったんだろう。実際事務レベルでは何も検討されておらず、一義的に米国がやることだ」と、再発防止が米国頼みで、事態の沈静化を見守るしかない現状を指摘した。(東京支社・吉田央、島袋晋作)


1995年の日米政府対応


1995年9月4日

 本島北部で米兵による暴行事件が発生

同11日

 オニール在沖米国総領事が県を訪れ、謝罪

同19日

 大田昌秀知事が上京し、河野洋平外相に日米地位協定見直しを求めたが、「現時点で見直す考えはない」と拒否。バーンズ米国務省報道官が会見で「ショックであり、極めて遺憾」と表明

同21日

 モンデール駐日米国大使が米国政府としての遺憾の意を表明し、被害者と家族、県民に謝罪。クリントン大統領が「怒りを感じており、事件を極めて遺憾に思う」と表明

同29日

 宝珠山昇防衛施設庁長官が来県し、大田知事との会談を働き掛けたが実現できず

10月4日

 在沖米海兵隊は4、5の両日を「反省の日」とし、訓練中止などの措置

同14日

 米軍が沖縄市の飲食店街の立ち入りを午前零時から同6時まで禁止するオフ・リミッツの措置

同21日

 宜野湾海浜公園で県民総決起大会が開かれ、約8万5千人が結集

11月11日

 衛藤征士郎防衛庁長官が来県し、大田知事と会談。衛藤長官は新たに設置する協議機関で、基地の整理・統合・縮小に取り組む意向

同30日

 駐日米国大使館のデミング公使が来県し、大田知事と会談

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802141300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年2月14日朝刊)

[知事所信表明]

決然たる姿勢で臨め

 仲井真弘多知事は県議会二月定例会で県政運営の基本方針を示す所信表明を行った。冒頭、米兵による暴行事件に触れ「強い憤りを覚える」と抗議。米軍に対し綱紀粛正、隊員教育の徹底などを求める意向を示した。

 一九九五年の米兵による暴行事件を糾弾する県民総決起大会の際、大田昌秀知事(当時)は「行政の責任者」として「大切な幼い子どもの人間としての尊厳を守ることができなかった」と県民に陳謝した。あってはならない事件が再び起きたのである。事態は深刻だ。通り一遍の抗議や要請では済まない。県は決然たる態度で臨むべきだ。

 県政最大の課題である普天間代替施設問題について、知事は代替施設の沖合移動や普天間の「三年目途の閉鎖状態の実現」へ向けて取り組む姿勢を示した。だが、めどは立っていない。

 ここへ来て防衛省の強硬姿勢は一変し、対話ムードが生まれてきた。県は同省の環境影響評価(アセスメント)方法書の追加資料提出を評価したが、県環境影響評価審査会は慎重な審査が必要との姿勢を崩していない。

 一連の手続きを見ていて気になるのは、県が移設推進に前のめりになっている気配が感じられることだ。今回の事件の発覚直後の対応を見ても、知事のセンスを疑問視する県民は少なくないはずだ。前のめりの余波がこんなところにも表れているのではないか。

 日米地位協定見直しにも触れ、「米側に裁量を委ねる形となる運用改善だけでは不十分で、抜本的に見直す必要がある」と訴えた。そうであれば、どこをどう見直すのかを明確にし、具体的な行動を起こす必要がある。

 一方、沖縄振興では民間主導の自立型経済の構築に全力を挙げる構えを見せたが、就任後二度目の所信表明ということを考慮すれば迫力不足だ。今後一層の「選択と集中」が迫られる。知事の手腕が問われているのである。

 県の台所事情は一段と厳しくなった。今回の予算編成では約三百九十億円の収支不足が生じ、何とか帳尻を合わせた。給与特例条例案など削減努力は多としても、焼け石に水の状態だ。

 同規模の収支不足は今後も続く。県債発行などに頼る綱渡りの予算編成は今後も持続可能なのか。行財政改革などを含む抜本的改革が必要だ。

 沖縄振興計画終了、地方分権・道州制論議の進展を踏まえ、県は沖縄二十一世紀ビジョンの策定に着手した。新年度は県にとって正念場の年になる。

 基地と経済は両輪の政策課題だ。知事は県民の声を受け止め、経済重視にとどまることなく基地問題でも主張すべきは明快に主張していくべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080214.html#no_1

 

2008年2月14日(木) 夕刊 1面

「県民の気持ち分かる」/知事要請に首相

 【東京】在沖米海兵隊員による女子中学生暴行事件を受け、仲井真弘多知事は十四日午後、首相官邸に福田康夫首相、町村信孝官房長官を訪ね、事件に対する遺憾の意を伝えた上で、米軍の綱紀粛正の徹底と再発防止策の公表を米側に働き掛けるよう要請した。これに対し福田首相は「県民の気持ちはよく分かる。要請を最大限受け止めて取り組む」と述べたという。政府は再発防止策として、米軍基地周辺の繁華街などに地元自治体の了解を得た上で防犯カメラを設置する方向で検討に入った。

 仲井真知事によると、町村長官も「要望にこたえられるよう頑張る」と述べたという。日米地位協定の改定については要請しなかったほか、米軍普天間飛行場の移設問題についても言及しなかったという。

 仲井真知事は要請後、記者団に対し「県民の鬱積した怒りが燃え上がっていることを伝えた。綱紀粛正や再発防止策は、県民が納得できるものをつくってほしい」と具体的な再発防止策の必要性を強調した。

 仲井真知事は引き続き内閣府に岸田文雄沖縄担当相を訪ね、同様に要請した。

  再発防止策では、沖縄県に派遣された小野寺五典外務副大臣が同日午前に町村氏に報告、町村氏は「関係省庁と詰めてほしい」と指示した。

 小野寺氏は報告で、防犯カメラに関し「既に一部自治体でやっているようだが、主要なところに設置する(べきだ)。プライバシー問題で反対意見もあるようで、自治体の協力が得られれば検討に値する」と伝えた。

 また小野寺氏は、在日米軍が独自に実施している部隊幹部による見回り活動について「日本の警察が一緒になってパトロールするのも一案ではないか」と提案した。


海兵隊 全隊員に倫理指導


 米兵による暴行事件を受け米海兵隊は十四日、沖縄を含む日本国内に駐留する全隊員に行動規範や法令順守を徹底させる綱紀粛正策として、「倫理と指導」と題したトレーニングを開始した。十五日まで二日間実施。

 在沖縄米海兵隊の広報担当者によると、指導内容は(1)基地を受け入れる日本と良好な関係を維持することの重要性(2)性的暴行などの非行を防ぐ行動を隊員同士が互いに取る責任(3)日米両国の法律に従うことが絶対的に必要であること―などが中心となる。

 また指導的立場にある海兵隊員に対しては、個人的または職務上の行動を通して範を示し、配下の隊員の行動を導くよう求めていくという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802141700_01.html

 

2008年2月14日(木) 夕刊 1・4面

「米軍の綱紀粛正疑問」/県議会が抗議決議

 米兵による女子中学生暴行事件を受け、県議会(仲里利信議長)は十四日午前、「在沖米海兵隊員による少女暴行事件に関する抗議決議」と意見書を全会一致で可決した。決議は、米軍人による凶悪事件が後を絶たない状況に触れ、「米軍の綱紀粛正への取り組みや軍人への教育のあり方に疑問を抱かざるを得ない」として、被害者と家族への謝罪と完全な補償、再発防止策に万全を期すことなどを求めている。

 十五日に県内の日米関係機関、十八、十九日に都内の日米関係機関に直接申し入れを行い、十九日夕に記者会見を開く予定。

 抗議決議は「女性に対する暴行は肉体的、精神的苦痛を与えるだけでなく、人間としての尊厳を蹂躙する極めて悪質な犯罪であり、県民に強い衝撃と多大な不安を与えている」と指摘。「特に被害者が無抵抗な少女であることを考えれば、断じて許すことができない卑劣な行為」と断じた。

 さらに、昨年十月に嘉手納基地内に住む米軍人の家族による強姦致傷事件、先月七日には普天間基地所属の米兵による強盗致傷事件など凶悪事件が相次いでいる点を指摘。「またもやこのような事件が発生したことに対し、激しい憤りを禁じ得ない」と訴えている。

 その上で(1)被害者および家族への謝罪および完全な補償(2)実効性のある具体的な再発防止策について万全を期す(3)米軍基地の一層の整理縮小を図るとともに、海兵隊を含む米軍兵力削減の推進―を要求している。

 抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官、在日米軍沖縄地域調整官、在沖米総領事、在沖米海兵隊基地司令官あて。意見書は内閣総理大臣、外務、防衛、沖縄担当大臣あて。


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[解説]

実効性ある綱紀粛正を


 在沖米海兵隊による暴行事件に対する県議会の抗議決議は、女子中学生が被害者になった米軍人犯罪への怒りを示し、実効性のある綱紀粛正と米軍基地の目に見える形の整理縮小を日米両政府に突きつけた。

 市町村議会の抗議決議が相次ぐ中、基地問題の早急な解決を求める県民世論をさらに高め、全県的な抗議行動に拍車が掛かりそうだ。

 決議案を審議した県議会米軍基地関係等特別委員会(親川盛一委員長)は、「実効性がある再発防止策」という案文に、「具体的な」という文言を加えた。米軍側の綱紀粛正が形骸化していることへの強い不満とともに、「これ以上の事件再発は絶対に許さない」という憤りを強調した形だ。

 米軍構成員による女性暴行事件は、一九九五年の米兵暴行事件以降も十四件発生している。野党委員は「基地あるがゆえの事件。海兵隊はすべて撤退すべきだ」とし、普天間飛行場移設を盛り込んだ米軍再編を進める県の姿勢を批判する。

 自民党県連の外間盛善会長代行らも十三日に在沖米総領事館を訪れ、「綱紀粛正の徹底がなければ、日米安保の根幹を揺るがす」とケビン・メア総領事に迫った。

 抗議決議が全会一致で可決されたことで、超党派の県民大会を求める動きが強まるのは必至だ。

 ただ、「決議の趣旨で、日米両政府に早急な基地の整理縮小を求めるべきだ」と主張する野党側に対し、与党側は「米軍再編の推進で、現実的な整理縮小を進めるべきだ」と慎重な構えだ。

 普天間飛行場の移設問題でも、与野党のスタンスは違う。抗議決議で実効性ある再発防止策や兵力削減で一致しても、具体的な方向性の相違は明確で、県民大会の実現は不透明だ。

 軍特委では、喜納昌春氏(社大)が「事件を防げなかった責任は国や県だけでなく、県議会にもある」と発言した。事件の再発防止に向けては、県議会の具体的かつ実効性ある対応も問われる。(政経部・与那原良彦)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802141700_02.html

 

2008年2月14日(木) 夕刊 4・5面

再発防止へ地域一丸/中頭地区で小中校長会

 米兵による暴行事件を受け、県内の校長会の緊急会議が十四日午前、相次いで開かれ、集団登下校や巡回活動の徹底などを確認。学校や地域、行政が一丸となって子どもたちの安全確保に取り組むことになった。出席した校長らから「卑劣な行為で許せない」「まず被害者の心のケアを」「もっと踏み込んだ対策が必要だ」などと、綱紀粛正が徹底されない米軍への怒りや、少女を気遣う声が上がった。

 【中部】中頭地区十市町村の小中学校長を対象にした緊急校長会が十四日午前、沖縄市知花の中頭教育事務所であり、児童・生徒の安全指導と安全確保の徹底について話し合った。参加したのは中頭地区の小学校七十校と中学校三十九校の学校長と教育委員会関係者の約百二十人。

 重々しい雰囲気の中で進められた会議では、「不審者と思われる人に近づかない」「大声で助けを求める」など五項目の徹底、さらに登下校時や帰宅後の安全確保について「集団登下校を心掛ける」などを確認。児童・生徒の危機回避能力の育成については警察など専門機関と連携した防犯教室を実施していく。中頭教育事務所の比嘉源勇所長は「まずは被害を受けた生徒の心のケアも考えなければならない。中頭地区六万人以上の児童・生徒の命を預かるものとして、二度と事件が起きないように取り組みを強化しよう」と呼び掛けた。

 参加した恩納村立安富祖中学校の與那覇清徳校長は「未成年は大人が守らないといけない存在。米兵がどういった存在なのかも小学生から教える必要があるのではないか」と指摘。うるま市立田場小学校の栄門忠光校長は「日常的に安全指導を行っていても事件が起こる。もっと踏み込んだ対策が必要であり、職員とともに子どもたちをどのように守るか考えたい」と話した。

 一方、事件の発生した自治体の教育長は沖縄タイムスの取材に応じ、「人間の尊厳を踏みにじる蛮行であり絶対に許せない。子どもたちを守るためにも米軍基地の根本的な問題から解決しなければならない。事件のたびに綱紀粛正をすると言いながら、一向に反省が見られない米軍に怒りしかない」と厳しく批判した。


「日常から意識を」/県立学校緊急校長会


 県教育庁の県立学校緊急校長会は十四日午前、沖縄市の県立総合教育センターで開かれた。県立高校、特別支援学校の全校長七十六人が出席。仲村守和教育長は「大切に保護、育成されるべき若年者に向けられた卑劣な行為に対して強い憤りを覚え、決して許すことはできない」と述べ、児童・生徒の安全指導や安全確保の徹底に向けて、学校、保護者、地域が連携した取り組みを行うことの重要性を再確認した。

 さらに仲村教育長は「児童・生徒が自ら健康、安全に気を配る姿勢を身に付けさせること、危険回避能力を醸成していくことが重要。日常生活で安全に関する問題意識を持たすようにしなければならない」と語った。

 県高校校長協会長の仲皿正伸・開邦高校校長は「今回の事件はどこでも起こりえたことで、腹わたが煮えくり返る思いがする。生徒には不審者にはついていかないなど、危険回避の意識の徹底に取り組んでいきたい」と話した。

 昨年七月、校内に米軍車両が侵入する事件が起きた県立沖縄高等養護学校の塩浜康男校長は「米軍の綱紀粛正は徹底されているのか疑問だ。米軍車両が校舎に侵入した後、米軍に綱紀粛正の徹底を申し入れたが、前原高校にも侵入する事件が起き大変ショックを受けた。米軍の綱紀粛正はその場逃れのことではないか」と憤った。

 県教育委員会は十五日午後、在沖米総領事館や四軍調整官事務所などを訪れ、抗議行動を行う。


沖縄市が地域パトロール強化へ


 【沖縄】米兵による暴行事件を受け、沖縄市(東門美津子市長)は十三日、これまで市教育委員会が行ってきた地域のパトロールを強化し、平日だけでなく日曜・祝日(午後四時から同十時まで)も実施することを決めた。

 これまでのパトロールは、ボランティアや退職教職員などを活用し、平日の下校時間帯(午後二時から同四時まで)は週三回、夜間(午後九時から同十一時まで)は日曜・祝日を除く毎日行っていた。

 沖縄市は、今回の事件が休日に起きたことから、教育委員会と連携して市民健康課の職員が日曜・祝日に巡回。特に繁華街を重点的に行う。

 パトロールを実施する同委員会市青少年センターの川崎義隆所長は「今回の事件は街中で起きた。中心市街地の危険にも目を向け、子どもの安心・安全を守りたい」と話した。


防犯強化向け情報共有確認

沖縄市臨時庁議


 【沖縄】沖縄市は十四日午前、臨時庁議を開き、事件の経緯や今後の対応などを協議し、行政と地域が連携して事件の再発防止に向けた情報共有化を図ることなどを確認した。同日午後からは沖縄署や市PTA連合会など関係機関で組織する市地域安全推進協議会を開き防犯対策を再検討する。

 庁議では、教育委員会が市内にある小学校十五校と中学校八校に安全指導の徹底を指導したことや青色点灯車両によるパトロールの強化を報告。市経済文化部からは、自警団の設置を検討していることなどの説明があった。また市消防本部は、携帯電話での一一九番通報で通報者の居場所が特定できる新発信機導入を二〇〇九年度に予定していることを説明した。

 また市では十五歳以下の子どもの割合が全国の市で最も高いことから今年五月に「こどものまち宣言」を予定している。


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各地で謝罪求め抗議


 米兵による暴行事件を受けて十四日、中部市町村会が定例会で、日米地位協定の改定を求める要請文などを可決した。また、容疑者の自宅がある北中城村はじめ、浦添市や豊見城市の各議会でもそれぞれ全会一致で事件の再発防止を求める抗議決議などを可決した。


中部市町村会 米軍の教育徹底訴え


 【中部】中部市町村会(会長・知念恒男うるま市長)は十四日、北中城村のホテルで開いた定例会で、米軍人や軍属、家族への教育の徹底と再発防止、地位協定の抜本的改定を行うよう求める抗議文と要請文を全会一致で可決した。

 知念会長は「今後、県内から米軍関係者による事件・事故が起こらないよう強い決意を持って取り組んでいこう」と呼び掛けた。

 抗議文では米軍人や軍属らの事件が発生するたび、再発防止を強く訴えてきたにもかかわらず、今回の事件が発生したことに「極めて遺憾」と指摘。

 繰り返される米軍関係者の事件を批判し、「女性の人権が侵害される痛ましい凶悪な事件が起きたことに対し、強い怒りを持って抗議する」と訴えている。

 同会のメンバーらは定例会後、来県中の参議院沖縄・北方特別委員会(市川一朗委員長)と面談し、要請した。


北中城村議会

「悲しみ計り知れず」


 【北中城・中城】北中城村議会(中村勇議長)は十四日午前、臨時会を開き、事件の再発防止、被害者への謝罪と補償などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。また、中城村議会(新垣善功議長)も同日午前の議会運営委員会で、十五日に臨時会を開くことを決めた。臨時会で抗議決議と意見書の両案を審議する。

 北中城村議会の抗議決議は、暴行事件について「被害を受けた少女や家族らの悲しみは計り知れない。(米軍の)綱紀粛正策の実効性がまったく見えない」と犯行を糾弾した。その上で、実効性のある犯罪防止策を示し、米軍は再発防止に全力で取り組むよう要求している。

 発議理由で比嘉義彦議員は、逮捕されたタイロン・ハドナット容疑者が同村島袋に住むことから「容疑者は通学路近くに住んでおり、事件を知ってぞっとした。村民の人権を守る立場から米軍に厳重に抗議したい」と訴えた。また、新垣邦男村長も「女性の人権を蹂躙する重大犯罪だ。村内に住んでいたことも村民に不安を与えている」として、関係機関への抗議を検討するとした。

 抗議決議と意見書のあて先は、容疑者が所属するキャンプ・コートニー司令官や在沖米国総領事、首相、防衛相、外相など。


浦添市議会

県民の人権蹂躙 責任所在明確に


 【浦添】浦添市議会(大城永一郎議長)は十四日、臨時議会を開き、事件に関する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。抗議決議案と意見書は、「今回の事件は、県民に大きな衝撃と恐怖を与えるとともに女性の人権はもとより、県民の人権をも蹂躙する極めて悪質な犯罪であり、断じて許すことができない」と批判。(1)被害者への謝罪と完全な補償(2)米軍構成員等の教育の徹底と事件の再発防止、解決策の公表(3)被疑者所属の組織の管理体制と責任の所在を明らかにすること―を求めている。


豊見城市議会

米兵の蛮行社会に衝撃


 【豊見城】豊見城市議会(大城英和議長)は十四日午前、臨時議会を開き、米軍による事件・事故の再発防止などを求める意見書と抗議決議を全会一致で可決した。

 意見書と抗議決議は「米兵による蛮行は県民に強い衝撃と不安を与えている」と強く指摘。その上で、在沖米軍、軍属らの綱紀粛正を図ることや、日米地位協定の抜本的な見直し、一層の基地の整理・縮小などを要請している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802141700_03.html

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