超党派結集目指す「県民大会」へなど  沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(2月15日、16日)

2008年2月15日(金) 朝刊 1面

外出禁止強化も検討/日米政府 防止策着手

在日米軍司令官1カ月以内に結論

 【東京】日米両政府は十四日までに、米兵による女子中学生暴行事件を受けた再発防止策の検討に着手した。米側は在日米軍トップのライト司令官が同日夜の会見で、米兵の夜間外出禁止の強化や特定地域・店舗への立ち入り禁止拡大について「すべて検討対象だ」と表明し、一カ月以内に結論を出す考えを明らかにした。一方、日本側は米軍と県警が共同でパトロールする案や、米軍基地周辺の繁華街などに地元自治体の了解を得た上で防犯カメラを設置する案を検討している。

 日本側の案は県に派遣された小野寺五典外務副大臣が首相官邸に町村信孝官房長官を訪ねて報告。町村氏は「関係省庁と相談し、詰めてほしい」と指示した。

 小野寺氏は米軍が実施している基地外のパトロールについて、「警察が一緒になってパトロールをするのも一案ではないか」と提案。防犯カメラについても「プライバシー問題で反対意見もあるようで、自治体の協力が得られれば検討に値する」と伝えた。

 パトロールについては下地幹郎衆院議員(無所属)が自治体関係者と県警、米軍の三者による実施を十二日の衆院予算委員会で提案し、福田康夫首相が検討する意向を示していた。

 防犯カメラは緊急時の警察への通報用インターホンを備えた「スーパー防犯灯」の設置などを検討。緊急通報ボタンを押すとブザーが鳴り、所管の警察署などのモニターに映像が流れる仕組みで、二〇〇六年一月に神奈川県横須賀市で発生した米兵による強盗殺人事件を受け、同市が国の補助金で昨年四月、事件発生場所や繁華街などに八基設置している。

 一方、ライト司令官は会見で、被害者や家族に対して「まったく容認できない行為で強い痛みを感じる」とあらためて遺憾の意を表明。その上で性的虐待や暴行に関する教育強化の必要性を指摘し、「このような行為には断固とした処分を下していく」と述べた。

 在日米軍は陸海空、海兵隊すべての司令官らで構成する作業部会を十三日に設置しており、ライト氏は「できるだけ早く、二週間から四週間で済ませたい」と検討作業を急ぎ、結論を出す考えを強調。その上で再発防止策検討の進行状況を県など関係自治体に逐次報告していく意向を示した。

 日米地位協定の見直しについては「今回の事件とは直接関係なく、その問題は議論していない」と述べ、否定的な見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151300_01.html

 

2008年2月15日(金) 朝刊 1面

知事、再編へ影響懸念/防止策公表要請に首相「県民の気持ち分かる」

 【東京】米兵による暴行事件を受け、仲井真弘多知事は十四日午後、首相官邸に福田康夫首相、町村信孝官房長官を訪ね、事件への遺憾の意を伝えた上で、米軍の綱紀粛正の徹底と再発防止策の公表を米側に働き掛けるよう要請した。福田首相は「県民の気持ちはよく分かる。要請を最大限受け止めて取り組む」と述べた。

 一方、仲井真知事は続く岸田文雄沖縄担当相との会談で、「基地に波及しかねないと危惧している」と述べ、在日米軍再編への影響に懸念を示した。

 町村長官は同日午後の記者会見で、政府が繁華街への防犯カメラの設置や日米の警察による共同パトロールを検討していることを念頭に「(知事に)今後、さらにどういうものが検討できるか真剣に考えたいという話をした」と説明した。

 岸田沖縄相は「重大な犯罪だ。県民の憤りはいかばかりかと推察する。政府として真剣に受け止め、米側に強く働き掛けなければならない」と述べた。

 仲井真知事は福田首相への要請後、記者団に対し「県民の鬱積した怒りが燃え上がっていることを伝えた。綱紀粛正や再発防止策は県民が納得できるものを作ってほしい」と具体的な再発防止策の必要性を強調した。

 仲井真知事は、岸田沖縄相との会談後、記者団に「基地への波及の懸念」が米軍普天間飛行場移設を指すかどうかを問われると、「そこまで具体的じゃない。グアムへの海兵隊移転の話、再編の話など基地の話はいろいろある」と述べ、米軍再編全般の進ちょくへの懸念であることを説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151300_02.html

 

2008年2月15日(金) 朝刊 27面

犯罪絶て 住民決起/沖縄市、大会開催へ

 【沖縄】米兵による暴行事件を受け、沖縄市内の各種団体で組織する市地域安全推進協議会(大城信男会長)は十四日、沖縄市役所で緊急に会議し、行政と地域が連携した住民大会の開催を全会一致で決めた。週明けに実行委員会設立を検討し、開催日や会場などを調整する。

 参加者は「市民が行動しなければ何も変わらない」など、米兵絡みの事件が後を絶たない現状に強い危機感を表明。市民が一丸となって、日米両政府と米軍に再発防止を迫ることを確認した。北谷町にも連携を呼び掛ける方針だ。

 大城会長(市自治会長協議会会長)は「今、市民みんなが立ち上がらなければならない。単なるあいさつだけの大会にはせず、市内の児童・生徒や保護者にも参加を呼び掛けて安全指導もしながら、住民の声を米軍や国に強く訴えたい」と語気を強めた。

 会議には、沖縄市の東門美津子市長や沖縄署、市PTA連合会など市内の関係団体の代表ら十四人の委員が参加。市婦人連合会の比嘉洋子会長は「戦後六十年以上たっても変わらない現実が、子や孫の世代まで続いてはならない。文書だけでの抗議ではなく、アクションを起こさなければ私たちの叫びは伝わらない」と涙ながらに訴えた。

 沖縄地区少年補導員協議会の古波蔵兌会長は「住民の怒りを議会の決議だけに任せるのではなく、市民が声を上げなければいけない」。市PTA連合会の仲田朝俊会長は「同じような事件が起きるたびに抗議しても何も変わらない現実がある。抗議文だけで再発防止や綱紀粛正といった実効性は図られるのか疑問だ」と述べ、住民大会の意義を強調した。

 東門市長は「米軍基地があるから何度も事件が起きる。痛ましい事件について、責任のある国に対応策をしっかり要望していくことが必要だ。安心安全を取り戻すため、市民とともに取り組んでいかなければならない」と呼び掛けた。


県内、効果を疑問視

対策不十分 協定改定しかない


 ライト在日米軍司令官が十四日、暴行事件の再発防止策として米兵の夜間外出禁止令強化などを検討すると表明したことに対し、県内では実効性への疑問の声や批判が相次いだ。

 県の上原昭知事公室長は「一九九五年の米兵暴行事件のあとで米軍は再発防止策を取ったが、再び事件が起きたということは対策が不十分だったということだ。もっと努力してほしい」と厳しく注文を付けた。

 別の県幹部も「米兵への教育プログラムの内容を充実させたり、回数を増やすなど実効性のある対策を講じるべきだ」と指摘する。

 中部市町村長会長の知念恒男うるま市長は「このような事件や事故が後を絶たない今、やっぱり求められるのは日米地位協定の改定だ」と強調。

 その上で、「米兵の再教育などの再発防止策だけでは、一時的なものになる可能性がある。従来のように“運用上の問題”で片付けられては問題は解決しない」と、一歩踏み込んだ対応策を求めた。

 米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部移設に反対するヘリ基地建設反対協議会の大西照雄代表委員(64)は「戦後、今回のような問題が起こると立ち入り禁止や外出禁止の制限が繰り返されてきた。古い常とう手段だ」と批判。「事件が繰り返し起こるのは効果のある対策ではないということだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151300_03.html

 

2008年2月15日(金) 朝刊 3面

日米地位協定 外相「運用改善で対処」

 【東京】高村正彦外相は十四日の衆院予算委員会で、日米地位協定の改定について「さらに運用の改善で対処する以外ない」と述べ、改定は困難との立場をあらためて示した。原口一博氏(民主)への答弁。

 高村氏は地位協定について、「米軍が世界に駐留している中で、運用上にしても、身柄が起訴前に引き渡される国は日本だけ。そういう意味で地位協定の運用は日本が一番進んでいる」と述べ、他の米軍駐留国より有利であるとの認識を強調。

 また、県警が容疑者を緊急逮捕した今回の事件で、身柄の引き渡しは争点とならず、地位協定の問題は生じていないとの認識を説明。その上で今回の事件の問題点について「それ(地位協定)よりも教育プログラムとか再発防止策とかそういったこととの因果関係があるのではないか」との見方を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151300_04.html

 

琉球新報 社説

情報開示 防衛局は秘密主義改めよ

 防衛省の行き過ぎた秘密主義が、また明らかになった。沖縄県でも収集開示できる「米軍情報」を、沖縄防衛局は収集すらできず、開示にも消極的という失態を露呈した。これでは、沖縄に「局」を置く意味がない。猛省と対応改善を求めたい。

 事態は、米軍女子中学生暴行事件に関連して「発覚」した。

 事件の容疑者が基地外に居住していたことから「基地外、内に住む米国人の数」を明らかにするよう、北谷町議会が沖縄防衛局に求めた。

 事件の再発防止や防犯対策の関連から、凶悪事件が起きた地元からすれば、必要最低限の情報開示の要請である。

 これに対して、対応した沖縄防衛局の担当課長は「仮に米側に照会しても教えてもらえるか分からない」と答えている。

 ところが同じ情報を、沖縄県は米軍から収集し、県議会軍特委で「2007年9月時点で、基地外貸し付け住居は6098戸。うち契約数は5107戸」と明確に答えている。

 国と県の「情報収集力」の違いであろうか。北谷町議会は、過去にも数回、同じ質問を防衛局に投げ掛けたが、回答はないという。

 防衛局の消極的な対応は、自治体にとどまらない。12日の共産党の赤嶺政賢衆院議員の質問にも真部朗局長が「増えていると思う。具体的な数字は調べて分かり次第答える」と返答している。

 情けない話だが、国の防衛を預かる防衛省の情報収集力は「その程度」である。

 一昨年は、県内での防衛関係予算の発注の関連で、「県内、県外企業の受発注比率」を求めた元国家公務員に「開示できない」と、那覇防衛施設局(当時)は拒否。同じ資料を、県は即座に開示している。

 資料は、県や基地所在市町村に落ちる防衛予算が、地域振興や地元企業にどれだけ貢献しているかを検証するための「研究資料」として請求された。

 「防衛秘密の前に、情報に対する感度の鈍さ、収集力と活用力が問題」との同OBの指摘も、今となってはうなずける話である。

 在日米軍は、日本と極東アジアの安全と安定のために日本に駐留している。その専用施設の75%を沖縄に押し付ける日米両政府だが、沖縄では国どころか、一人の女子中学生の人権も守れない。

 その上、米軍と交渉すべき日本政府の出先機関は、再発防止や被害救済を訴える県民の切実な声には、「分かったら教える」である。

 復帰後だけでも5千件を超え、なお繰り返される米兵犯罪の裏側に、そんな政府の弱腰外交もある。

 守るべきは何か。寄るべきはどこか。防衛局には再考を促したい。

(2/15 9:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-31362-storytopic-11.html

 

2008年2月15日(金) 夕刊 1面

県民大会 超党派望む 知事が見解示す

海兵隊削減優先を強調

 仲井真弘多知事は十五日午前の定例会見で、米兵による女子中学生暴行事件を受けた県民大会について「県民大会である以上は教科書問題の大会のように党派を超え、各界各層、年代を超えてという形が分かりやすい」と述べ、超党派による開催が望ましいとの見解を示した。また、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部移設と「パッケージ」とされる海兵隊八千人のグアム移転について、「今回の事件を機会に、八千人の削減は(移設とは別に)進めてくれと言いやすくはなった」と言及。海兵隊削減と普天間移設を切り離して実施すべきとの考えを示した。

 県民大会が開催された場合の対応について仲井真知事は「そこまでまだ詰めて考えていない。各界各層のいろんな意見を踏まえて判断したい」と述べるにとどめた。

 同事件が普天間移設問題に与える影響について「直接の影響はない」と発言したことについては「海兵隊員八千人のグアム移転は事件を踏まえ、むしろ徹底して進めるべきだ」との考えがあったと説明。

 その上で「パッケージ論」について、「もともと(日米の普天間返還合意)の時に決めた話は、普天間の危険性除去のための移設だった。パッケージだという話はこの二、三年のことで、ここのつなぎがよく分からないところは前からあった」と指摘した。

 事件後、県内の米海兵隊基地の全面撤退を求める意見が出ていることについて「事件を契機に全部なくなるのが解決というのは、極めて非現実的な論理」との認識を示した。

 米軍事件の再発防止策として、防犯カメラの設置やパトロール強化が検討されていることについては「これまでも具体的に検討されたことがあるが、プラス、マイナス両面をもう一度洗い直す必要がある」として慎重姿勢を示した。


県民大会開催を検討/平和センター 各団体に呼び掛け


 米兵による暴行事件を受け、沖縄平和運動センターは十四日の幹事会で、社会教育団体や労組に呼び掛け、抗議の県民大会開催を論議する会合を週明けにも開くことを決めた。米軍の綱紀粛正や再発防止策などの要求を掲げ、大規模な集会を模索する。

 崎山嗣幸議長は「県民の人権蹂躙が繰り返される状況を許すことはできず、インパクトを与える大会が必要だ。各団体とテーブルに着き、突破口を開きたい」と語った。

 同センターは、教科書検定に関する県民大会で中心的役割を果たした県子ども会育成連絡協議会(沖子連)、県婦人連合会(沖婦連)にも参加を呼び掛ける。両団体は、協議に加わった上で超党派の大会開催を訴える考え。

 沖子連の玉寄哲永会長は「夢ある世代を悪夢に落とし込むような犯罪は許せない。超党派で開催できるか、話を聞きたい」と語った。沖婦連の小渡ハル子会長も「一日も早い開催が必要」とした上で、「本来は県や県議会が音頭を取るべきではないか」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151700_01.html

 

2008年2月15日(金) 夕刊 7面

知事、批判に「心外だ」/語気強める場面も

「それは心外だ」。十五日午前、県庁で開かれた定例会見で仲井真弘多知事は、政府や米側への対応について「怒りが見えにくいとの批判もある」と質問され、顔をしかめた。一方、県民大会開催や自身の参加については「考える時間が欲しい」と判断を留保した。

 午前十時に始まった記者会見。知事は「私も二人の娘を持つ身で、被害者の少女の気持ちを思うとやり切れない」と話すと、米兵暴行事件以外の話題を切り上げ、質問を受けた。

 米兵暴行事件を受けた県民大会の開催についての考えを問われると、「一九九五年の米兵暴行事件のことを考えればあり得るが、被害者の心の回復を第一に考えたい」と答え、「事件発生後、三、四日の話であるので考えていなかった。考える時間をください」と述べた。

 米軍基地再編への影響については、海兵隊員八千人のグアム移転を、米軍普天間飛行場の県内移設とは分けて政府、米側に求める意向を示す一方で、米海兵隊基地の県内からの全面撤去を政府に要求することは「非現実的な論理で、考えていない」と否定した。

 シーファー駐日米大使や、在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官(中将)と面談した際の対応について、「知事の怒りが伝わりにくいとの批判が県民からあるが」と問われ、「そういう批判が出ているんですか。私はちょっとよく分からない。心外だとしかいいようがありませんね」と語気を強める場面もあった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151700_02.html

 

2008年2月15日(金) 夕刊 1面

基地外居住の米兵対策が柱/再発防止で沖縄相

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は十五日午前の会見で、米兵暴行事件を受けた再発防止策について「今回は基地外に居住している米兵の犯罪ということなので、基地外居住の在り方も論点になるのかなと思う。これは新しい観点だと思っている」と述べ、基地外に居住する米兵対策が焦点となるとの認識を示した。

 その上で「(米兵による事件・事故を受け)いろいろな対応策が今までも検討され、講じられてきたが、実行されていたのか、効果があったのかも検証してみる必要がある」と述べ、既存のワーキンググループで議論する必要があると指摘した。

 高村正彦外相は同会見で、米側に対してすでに、基地外に居住する軍人の数を照会していると説明。「何人かは、はっきり分かっていないが、(基地外の)貸家の賃貸契約数はだいたい把握している」と述べた。

 日本側への容疑者の身柄引き渡しをめぐる日米地位協定の見直しについて同外相は、これまでの運用改善で対処できるとの認識をあらためて強調。米側への働き掛けについて「いくら忌まわしい事件だからといって、それ(運用改善)以上のことを日本が外交上要求するのかどうか」と述べ、消極的な姿勢を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802151700_03.html

 

2008年2月16日(土) 朝刊 1・27面

超党派 結集目指す「県民大会」へ19日論議

沖子連・婦連が音頭

 米兵による女子中学生暴行事件を受け、昨年九月に開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の呼び掛け団体が十九日、事件に抗議する県民大会の開催に向け、会議を持つことを決めた。県子ども会育成連絡協議会(沖子連)、県婦人連合会(沖婦連)が音頭を取り、七団体以上が出席する見通し。超党派の結集を目指し、大会の要求事項や開催方法を議論する。

 十九日、那覇市の婦連会館で開かれる会議には、県老人クラブ連合会、県高校PTA連合会、県青年団協議会、青春を語る会、未来を語る会の各団体も出席する意向を示している。

 日時、場所や実行委員会の形式など、開催方法全般が議題となる。要求事項の案としては、超党派の枠組み実現を念頭に、基地の整理縮小や海兵隊グアム移転の早期実現などが挙がっている。

 会議を設定した沖子連の玉寄哲永会長は「事件が県民にとって我慢ならないということを超党派で訴える。知事が求める地位協定見直しも応援したい」と語った。沖婦連の小渡ハル子会長は「政治色がない大会を、できるだけ早く実現したい」と強調した。

 一方、県民大会開催を模索してきた沖縄平和運動センターは、「子どもの尊厳や人権にかかわる問題で、中核となるにふさわしい団体が動きだした」と歓迎。今後、呼び掛けがあれば協力していくことにしている。


     ◇     ◇     ◇     

県民大会へ高まる熱


 「対症療法では駄目だ」「抜本的な対策を求めたい」。米兵による暴行事件への怒りと被害少女への気遣いを共有しながら、県民大会へ向けた動きが再び始まろうとしている。教科書検定問題の県民大会にかかわった団体から「県民の怒りを見せよう」「問題発生を防ぐ取り組みが必要」などの声が上がった。一九九五年の暴行事件に抗議する県民大会や昨年の教科書検定意見の撤回を求める県民大会と同様の県民総ぐるみの大会になるのか。すべてはこれからだ。

 「十三年前に、米軍が真剣に取り組んでいたら、今回の事件はなかったはずだ。米軍は、日本と沖縄を軽く見ているのではないか」。県高校PTA連合会の西銘生弘会長は、米軍の取り組みを批判。「県民の怒りを見せて、地位協定見直しや基地の整理・縮小、いずれは撤退する方向にさせたい」と大会開催に期待した。

 「米兵の事件・事故が起こるたびにこれではいけないと思っていた。九月の県民大会のように、みんなで立ち上がらなければ」と青春を語る会の中山きく代表。同会は元女子学徒隊でつくり、戦争体験を語り継ぐ活動をしている。「六十四年前の十・十空襲の時も、最初に基地がたたかれ、それから那覇の町がやられた。基地はない方がいい」と断言した。

 旧制学校同窓会でつくる沖縄の未来を語る会の大浦敬文事務局長も会議に参加する。事件への怒りを共有しつつ「教科書も基地も、対症療法より問題発生を防ぐ取り組みが重要だ。継続的に話し合っていく場の設定も訴えたい」と語った。

 県老人クラブ連合会の花城清善会長は個人的な見解としながらも、「いたいけな子どもに大の大人が、あんなことをするとは許せない。憤りを感じる。いずれは、会として参加する方向になるだろう」と話した。花城さんは、宜野湾市軍用地等地主会の会長を務めたこともある。「地主の話とは別問題。県民として子や孫のことを考え、このままでいいのか、ということ」と話した。

 県青年団協議会は、理事の間でもまだ事件への対応は話し合っていないというが、照屋仁士会長は「被害者も自分たちと同じ若者。何ができるか検討したい」と前向きだ。しかし「会員には軍雇用員もいる、米軍人の友人もいる。人が悪いというわけでなく、綱紀粛正ができない仕組みに問題があるのではないか」と語り、取り組みの難しさをのぞかせた。


県教委、米軍に抗議


 県教育委員会(伊元正一委員長)は十五日、米海兵隊外交政策部(G5)や在沖米国総領事館、沖縄防衛局、外務省沖縄事務所などを訪ね、抗議と再発防止の徹底を申し入れた。伊元委員長は「事件発生はこれまでの綱紀粛正や兵員教育がまったく生かされていないと言わざるを得ない」と非難し、隊員教育の徹底と効果的な対策とその公表を強く訴えた。

 抗議行動をしたのは、伊元委員長、東良和、中山勲、比嘉梨香、鎌田佐多子の四委員。伊元委員長は「今回の事件に厳重に抗議し、在沖米軍に綱紀粛正、隊員教育の徹底を強く働き掛けてほしい」と要請。外務省事務所の倉光秀彰副所長は「政府、米軍も今回の問題を深刻に受け止めている。要請の内容はしっかりと東京に伝えたい」と話した。

 伊元委員長らは「二度と事件が起きないよう、再発防止策がどのようになされるかきちんとみていきたい」と話した。

 県教委の委員が米軍に抗議行動を行うのは二〇〇〇年七月、〇一年一月にそれぞれ発生した米海兵隊員による女子中学、女子高校生へのわいせつ事件に続き三度目。


女団協が要請

開催求め県へ


 米兵による暴行事件を受け、三十一団体でつくる県女性団体連絡協議会の安里千恵子会長らは十五日、県に対し、抗議の県民大会開催を申し入れた。上原昭知事公室長は「各界各層の声を聞く必要がある」と答えるにとどめた。

 沖縄防衛局、外務省沖縄事務所も訪れた一行は、「米軍人による(性暴力)事件が起きた日を人権を考える日にしたなら、毎日がそうなってしまう」と、被害の積み重ねに憤りをぶつけた。「私たちは基地内に入れないのに、米兵はどこにでも住める。沖縄全体が米国のようだ」と、軍人の基地外居住に疑問の声も上がった。


19日女性集会

北谷


 米兵暴行事件を受け、緊急女性集会「危険な隣人はいらない!」が、十九日午後六時半から北谷町桑江の「ちゃたんニライセンター」で開かれる。呼び掛け団体は北谷町女性連合会、北谷町老人クラブ連合会など二十六団体(十五日現在)。連絡先は「すぺーす・結」、電話098(864)1539。


沖縄弁護士会「抜本的対策を」


 沖縄弁護士会(新垣剛会長)は十五日、抗議声明を発表した。米兵の犯罪について「県民が広大な基地と隣り合わせで生活させられている構造的な問題」と指摘。日米両政府に対し、「基地の整理・縮小こそが重要であることをあらためて厳しく自覚するべきだ」として、抜本的な対策を求めた。

 また「助けを求め続けたという被害者の心のケアが切迫した課題」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161300_01.html

 

2008年2月16日(土) 朝刊 1面

基地外居住を厳格化/政府、再発防止策構築へ

 【東京】高村正彦外相は十五日夜、外務省で記者会見し、米兵による暴行事件を受けた日本政府としての再発防止策を来週中にも取りまとめると発表した。

 基地外に住む米兵が事件を起こしたことを重視。基地外居住に何らかの基準や条件を付したり、基地内居住者より厳しい順守事項を設けたりする案を検討していることを明らかにした。

 政府内には基地外居住米兵の実態を把握する仕組みづくりの必要性を指摘する意見も出ており、関係省庁間で最終調整する。

 高村外相はハドナット容疑者が三十八歳だったことを念頭に「今までの再発防止策は基地内に住む若い人たちを対象にしていたが、広範でより包括的なものを目指す」と強調。綱紀粛正の対象を基地外居住者や、指導的立場の年齢にも広げる考えを示唆した。

 外務省は現在、米軍に基地外の居住を許可する基準を照会しており、結果を受けて条件の厳格化などを提案する可能性もある。米側が設置した四軍の各司令官でつくる作業部会のメンバーを来週以降に沖縄に派遣し、外務省沖縄事務所や県、基地所在市町村、在沖米軍などでつくるワーキングチームと再発防止策を協議する方針を説明。

 その上で「ワーキングチームを将来レベルアップするかどうかの議論は当然、あっていい」と述べ、構成メンバーを格上げする考えを示した。

 再発防止策は一義的には米軍が策定するが「日本側がやるものもあるかもしれない。今まで以上に緊密にやりたい」と述べ、日本側が主体的に関与する姿勢を明確にした。

 日本側がこれまでに検討している防犯カメラ設置は「自治体によって、やりたいところと勘弁してくれというところもある」と述べ、市町村の意向を踏まえて対応するとした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161300_02.html

 

2008年2月16日(土) 朝刊 3面

4野党協議 実現へ/地位協定改定 民主・国民新が確認

 【東京】米兵による暴行事件を受け、民主、国民新の両党に社民、共産を加えた野党四党による日米地位協定改定案の協議が実現する見通しが十五日、強まった。民主、国民新は同日昼、国会内で開いた政策協議で地位協定の見直し案を両党でまとめることで一致。国民新の亀井久興幹事長は社民、共産にも協議を呼び掛ける意向を示した。両党は応じる考えを示しており、改定案の調整が加速しそうだ。

 民主党との政策協議で国民新党側は、米兵暴行事件を受けた国会決議について「国会が重大に受け止めているという意思表示になる。野党として動くべきだ」と国会提出を提案。亀井幹事長によると、民主側は「少し検討させてほしい」と回答したという。

 亀井幹事長は協議後、記者団に地位協定改定案について「民主もすでにある程度のものを用意しているようだ。うちもまとめたが、何が何でもこだわることはない」と同党の改定案に固執しない考えを強調。

 「社民党の意見も取り入れ、共産党もこの問題について反対ではないだろうから、意見を聞いたほうがいいと思う」と述べ、四党協議に柔軟姿勢を示した。

 国民新は衆院で連立会派を組む政党「そうぞう」代表の下地幹郎衆院議員を中心に、改定案を作成した。

 社民党は十四日午前に開いた常任幹事会で、衆院議員時代の東門美津子沖縄市長を中心に取りまとめた改定案を念頭に、野党各党に見直しを働き掛ける方針を確認。

 共産党の赤嶺政賢衆院議員は十五日夕、「呼び掛けがあれば応じる。沖縄弁護士会が作成した案を軸に協議することになるだろう」との見通しを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161300_03.html

 

2008年2月16日(土) 朝刊 2面

切り離しは「無理」/海兵隊削減と普天間移設

 【東京】米兵暴行事件を受け、仲井真弘多知事が、米海兵隊のグアム移転を優先し、「パッケージ」で相互に関連する普天間飛行場移設と切り離して実施すべきだとの考えを示したことについて、防衛省首脳は十五日、困難との見方を示した。

 「早く進めろというなら分かるが、(両者を)切り離すのは無理だ」と述べ、米軍再編計画全体を早期に進めることで対応する考えを強調した。

 早期開始を目指す普天間移設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査に与える影響については「あれはあれ、これはこれだ。事件でアセスに影響を与えてはならない」と述べ、計画通り進める考えを示した。

 調査着手に向けた仲井真知事の今後の判断について、事件による影響を懸念した上で、「だからこそ事件の再発防止について日本政府も米側と一緒に検討しなければならない」と述べ、再発防止策などに積極的に関与することで影響を極力避けたい意向を強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161300_04.html

 

2008年2月16日(土) 朝刊 27面

「集団自決」強制明記 指導書作成/県教育庁、証言加え各校へ

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を明示する記述を削除させた教科書検定問題で、県教育庁は「集団自決」への軍強制を示したこれまでの教科書を使った沖縄戦の授業の指導事例集を作成し、四月からの新学期までに県内各高校に配布する。県平和祈念資料館が作成した沖縄戦体験者の証言集や、平和教育指導の手引書を新たに編集して県内各学校に配り、平和教育の充実を図る。

 県教育庁は教科書検定で、四月から高校で使われる日本史教科書の沖縄戦の「集団自決」をめぐる記述が「日本軍に『集団自決』を強いられたり」から「日本軍の関与によって集団自決に追い込まれた」などと書き換えられたことから、現場の教諭に「どう教えればいいのか」と混乱が起きることを懸念した。

 「沖縄戦の史実が教室で正しく伝えられるように」と、「集団自決」への軍強制を明記した今までの教科書を使った日本史の授業などの事例を二十例ほど集め、授業の参考にしてもらおうと指導事例集を作り始めた。

 また、二〇〇六年三月に県平和祈念資料館が発行した沖縄戦体験者の証言集「体験者が語る戦争―平和への証言」を県内の小、中学校と高校、特別支援学校に一冊ずつ配った。高校には四月中にさらに四十冊を配り、平和学習の授業に活用してもらうという。

 一九九三年にまとめられた「平和教育指導の手引き」も、改訂版発行のための準備委員会をつくり、新たに編集。二〇〇八年度中の発行と県内の幼稚園や小、中学校、高校と特別支援学校への配布を目指す。六月二十三日の慰霊の日までに配布を間に合わせたい意向だ。

 仲村守和教育長は「これまでも平和教育を進めてきたが、一層の充実を図りたい。教科書検定問題もあり、沖縄戦の実相を正しく伝えていきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161300_06.html

 

2008年2月16日(土) 夕刊 5面

怒 従業員・地主も/米兵暴行事件

 米兵による暴行事件は、基地従業員や地主などの間にも、強い憤りを呼び起こしている。基地とのかかわりで生活を支え、沖縄の「矛盾の縮図」とも言える難しい立場。だが、事件の凶悪さに「一緒に働くことに恐怖を感じる」「収入と事件は別。絶対に許せない」と、県民の抗議の輪に加わっている。

 「人の殺し方を自慢げに話す人や、いつもすきを狙うような鋭い眼光の人がいて、緊張する。訓練された兵士は、スイッチが入ったら止められない」。四十代の男性基地従業員は、声を潜めた。「こういう職場で収入を得ることに、引け目も感じる」と、複雑な心境を漏らした。

 全駐労沖縄地区本部は、加盟する沖縄平和運動センターによる十二日の緊急抗議集会にも参加。與那覇栄蔵委員長は「特に女性組合員は心配でたまらないはずだ。沖縄の縮図と言われる基地の職場からも凶悪事件に強く抗議していく」と強調した。

 容疑者が所属するキャンプ・コートニーの軍用地主の男性(70)は「危険があっても、もうかるからいいと話す地主もいたが、地料に頼ってはいけない」ときっぱり。「基地はなくし、沖縄も自立した方がいい」と力を込めた。

 県軍用地等地主会連合会の喜友名朝昭会長(78)は、事件現場となった北谷町の住民でもある。「土地を貸したのではなく、土地を占領され、勝手に使われているだけ。沖縄を属国のように扱う軍人のおごりを正すのは当然だ」と言い切った。

 「まただ。話にならない」。沖縄市のゲート通りでライブハウスを経営する男性(57)は憤った。三十八歳の容疑者の逮捕で外出禁止の対象が若い兵士から拡大する可能性もあり、「経営への影響が予測できない」と、いら立ちをのぞかせた。


市民団体 声明相次ぐ


 米兵による暴行事件を受けて、第9条の会・沖縄うまんちゅの会(安里要江共同世話人など)は十五日、事件を糾弾する抗議声明を発表、在沖米軍四軍調整官と総理大臣、外務大臣あてに送付した。

 声明は、軍隊の訓練で「人間性を喪失してしまった海兵隊によっておこされた」と指摘し、「そこに米軍犯罪が続発する必然性がある。沖縄の実態を不問にし再発防止などを繰り返す、欺瞞的な態度は許せない」と糾弾した。

 住基ネットに反対する市民ネットワーク沖縄(上江洲由美子世話人代表)も同日、抗議声明を出した。駐日米大使、在沖米総領事、総理大臣、外務大臣、防衛大臣、沖縄防衛局長あてに郵送した。

 声明は、官房長官が防犯カメラ設置などを表明したことに、人権と活動の自由を侵す恐れがあり、犯罪防止効果を上げていないと指摘。その上で、「犯罪の温床となっている軍事基地そのものをなくさない限り事件事故はなくならない」とし、基地撤去を要求している。


読谷村議会が防衛局に抗議/外務省事務所にも


 読谷村議会(前田善輝議長)の議員十五人は十五日午後、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所を訪れ、日米地位協定の見直しと米軍基地の撤去などを求める意見書を提出した。

 各担当との面会では、議員団から「この中には米軍基地の容認派もいたが、事件の悪質さを考えると、基地の撤去を盛り込まざるを得ない」、「米兵による犯罪がゼロにならない背景は、『日米地位協定で守られている』という、危機意識のなさ。地位協定のせいで、被害者の尊厳は傷つけられた」など、次々と非難の声が上がった。


子どもの安全指導呼び掛け/国頭・校長緊急集会


 【北部】暴行事件を受け、国頭教育事務所は十五日、国頭村立保健センターであった「国頭地区小・中学校長研究大会」の冒頭、緊急集会を開き、渡久地健所長が、児童・生徒の登下校や休日の過ごし方の指導徹底や、地域と連携した安全対策を呼び掛けた。

 国頭地区の小中学校七十一校の校長が参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161700_01.html

 

2008年2月16日(土) 夕刊 4面

教科書検定など「沖縄の動き伝えたい」/スペイン新聞記者

 スペイン・カタルーニャ地方の日刊紙「ラ・バンガルディア」のラファエル・ポワ・デフェリウ記者(51)が、米軍基地問題や「集団自決(強制集団死)」教科書検定問題の取材で来沖し、十四日、沖縄タイムス社の謝花直美編集委員にインタビューした。「日本がアジアの一員となるのか、米国に追随した軍事国家になるのかの岐路に立つ中、歴史や基地の問題が凝縮する沖縄の動きを伝えたい」と訪れた。

 デフェリウ記者は、米兵暴行事件に対する県民の怒りや政府の反応、「集団自決」教科書検定問題が起きた背景や、沖縄県民の自意識などを質問。

 謝花編集委員は「『集団自決』教科書検定の背景には、戦争体験者が少なくなる中で、戦争のイメージを良くして自衛隊をさらに軍隊に近づけ、日本を戦争できる国にしようとの歴史修正主義者の思惑が背景にあり、安倍政権の意向が働いた」と説明した。

 デフェリウ記者は「歴史の流れに翻弄され、沖縄の人々のアイデンティティーが揺れ動いてきたことは、軍事政権の抑圧を受けたカタルーニャとも共通しており興味深い」と話した。十七日まで滞在し、名護市辺野古や東村の高江地区なども訪れるという。

 取材結果は、三月中に別冊特集で報じられる予定。同紙はバルセロナ市内発行の日刊紙では最大の約三十万部を発行しているという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200802161700_03.html

コメントを残す