ハンセン大規模山火事 うるま市、米車両が学校に侵入 「集団自決」訴訟、元隊長の請求棄却など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(3月26日から28日)

2008年3月26日(水) 朝刊 2面

「地位協定改定案」/実現へ政府の「壁」厚く

 民主、国民新、社民の野党三党による日米地位協定改定案が二十五日、まとまった。三党は週明けにも政府への要請行動を展開する予定だが、政府は「運用改善で対応する」との立場を崩さず、福田康夫首相も「改定は考えていない」とかたくなだ。二十三日に開かれた地位協定改定を決議した米軍の事件・事故に抗議する県民大会が超党派にならず、仲井真弘多知事が参加を見送るなど、足並みの乱れもあり、改定実現に向けた壁は厚い。

国会決議模索


 「県民大会でも地位協定の改正を図るべきだという参加者の思いが強かった」

 三党の実務レベル協議で社民党から参加した照屋寛徳衆院議員は、改定は県民の総意であるとの見解を強調し、合意を歓迎した。

 野党内には政府への要請行動に合わせ、地位協定改定を後押しする国会決議を模索する動きも浮上するなど、機運が高まっている。

 しかし、三党合意に町村信孝官房長官は二十五日の会見で「政府としては地位協定を見直す考えは全くない。運用の改善ですべてのことが対応できると思っている」と突き放す。

 ある政府関係者も「改定まで踏み込むと、米側の要望まで入ってきて収拾がつかなくなる。実際に日米合同委員会合意で対応できる部分は大きい。県民大会が仮に六千人を大きく上回り、超党派になってたとしても、政府の対応は変わらなかっただろう」とみる。


パンドラの箱


 与党内の一部でも、地位協定改定に向けた動きが出始めている。

 自民党は来月にも沖縄振興委員会と外交調査会の合同部会を開き、地位協定改定の論議を始めたい考えだ。党関係者は「党幹部と仲井真弘多知事との事前の調整は済んでいる」と説明。今秋に予定している仲井真知事の訪米までに意見を集約させたい思惑がある。

 一方、地位協定改定を政府に要請し、県民大会に参加した公明党。しかし、党本部関係者は「運用改善ならホワイトハウスで完結するが、改定なら米議会まで巻き込むことになる。改定案を持ち込めば、超党派で反対される。まさに“パンドラの箱”だ」と慎重だ。

 同関係者は「将来的に改定を考えていかなければいけないという思いはあるが、今の段階で県本部との温度差があるのは事実」と党内事情を説明する。

 地位協定改定をめぐり、野党内には「三党の合意により、与党も無視できない状況になる。そうなれば政府も無視できないはず」との見方があるが、ある与党関係者は「議院内閣制を敷いている以上、難しい」と厳しい見通しを示した。(東京支社・島袋晋作、西江昭吾)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_03.html

 

2008年3月26日(水) 朝刊 27面

模擬裁判で争点整理/「集団自決」訴訟

 「集団自決(強制集団死)」訴訟の判決を前に、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」が二十五日、那覇市の教育福祉会館で集会を開いた。

 集会では、訴訟の経過や双方の主張、争点を分かりやすく伝えようと、模擬裁判が開かれた。同会会員が裁判官や原告、被告双方の弁護士に扮し、当時の戦隊長による直接の軍命の有無とその根拠、「集団自決」に使われた手榴弾の配布の事実や戦隊長の関与などをめぐり、法廷さながらの緊迫したやりとりを演じた。

 裁判官役が「なぜ『集団自決』が起きたと考えるのか」と問い掛けると、原告側役は「『戦隊長命令、軍命があったから死んだ』というのはあまりにも軽率だ。米軍に対する恐怖心や家族愛、狭い島での同調圧力が働いた」と主張した。

 被告側役は「当時は、戦陣訓や三二軍による『軍官民共生共死』の方針が徹底されていた。大変に貴重な武器だった手榴弾が戦隊長の許可なしに住民に渡されることは考えられない」と反論した。

 最後に、裁判官役が「沖縄戦では軍と住民の関係が如実に現れた。この教訓をどう学び、どう生かすかが問われている」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_04.html

 

2008年3月26日(水) 朝刊 2面

陸上自衛隊 沖縄訓練場/工期遅れ8月完成

 米軍の旧東恩納弾薬庫地区に新設する陸上自衛隊の沖縄訓練場と、泡瀬ゴルフ場の代替施設建設の完成がともに遅れることが二十五日までに分かった。沖縄訓練場は今月末に完成予定だったが、ことし八月ごろになる見通し。沖縄防衛局は「不発弾処理や天候不良で工期が長引いている」と明らかにしたが、工期日程について「三月末を予定していた工事の完了が遅れる見込みとなった。関係機関や請け負い業者と調整中」と述べている。

 沖縄訓練場は陸自が小火器射撃訓練施設として建設。陸自第一混成団は現在九州に移動して行っている訓練を沖縄訓練場で効率的に行える、と歓迎。完成の遅れに伴っては「〇八年度の運用計画に支障は出ない」と説明している。

 泡瀬ゴルフ場の移設は二〇〇八年度中の完了を予定していたが、沖縄防衛局は埋蔵文化財を発見したため、〇九年秋ごろまで遅れると説明した。造成工事中にうるま市側で民家跡や古墳群などの埋蔵文化財が発見された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_08.html

 

2008年3月26日(水) 朝刊 2面

米軍基地内 空き家1割

 【東京】外務省の西宮伸一北米局長は二十五日の参院内閣委員会で、県内の米軍基地内の空き家は約一割であるとの米側からの説明を明らかにした。

 西宮局長によると、今年一月末時点で八千百三十九戸の住宅があり、米軍関係者の入居率は約八割。しかし、改装などで、使用することができない住宅が約九百戸あり、米側は「これら使用不可能な住宅を考慮すると入居率は九割になる」と説明しているという。

 糸数慶子氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261300_09.html

 

2008年3月26日(水) 夕刊 5面

悲劇の日、「集団自決」犠牲者に史実継承誓う/座間味

 【座間味】沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」が起こった座間味島で二十六日午前、仲村三雄座間味村長や村民らが、高月山中腹にある平和の塔前で、犠牲者を悼み史実の継承を誓った。

 座間味島では、六十三年前のこの日に米軍が上陸、「集団自決」が起きた。

 仲村村長は「昨年は教科書検定問題もあり、平和ガイドブック編さんの過程でも村民の新たな証言も得た。歴史を風化させたくないという村民の思いが強くなっている」とあいさつ。三十三回忌を区切りとして慰霊祭は中止していたが、今後は戦後六十五年、七十年など五年おきに行う意向を示した。

 参拝に訪れた男性は「中学生のころまでは毎年訪れていたが、久しぶりに来た。若者もお参りしやすい機会をつくるのはいいことだと思う」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261700_04.html

 

2008年3月26日(水) 夕刊 1面

米兵脱走 県内5人/05年以降警察庁把握分

 【東京】警察庁の小野正博審議官は二十六日午前の衆院外務委員会で、神奈川県横須賀市のタクシー運転手刺殺事件で浮上した脱走米兵への対応に関連し、二〇〇五年以降に米軍から日本側に脱走兵の逮捕要請が九件あり、その中に在沖米兵五人が含まれていることを明らかにした。笠井亮氏(共産)、照屋寛徳氏(社民)への答弁。

 笠井氏は、警察庁が一九六八年、米側からの逮捕要請があった場合の報告を義務付ける通達を出しているにもかかわらず、二〇〇四年以前の統計を把握していないことを問題視。これに対し、高村正彦外相は「関係省庁で情報共有し、米からも情報を得る仕組みをつくりたい」と考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803261700_06.html

 

2008年3月27日(木) 朝刊 1・31面

ハンセン大規模山火事/一時民間地に600メートル

05年に次ぐ被害

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセンレンジ4付近で二十六日午後一時半ごろ、大規模な山火事が発生した。ピーク時には民間地まで推定約六百メートル前後まで火の手が迫った。現場に近い伊芸区の住民らによると、ガラス窓を揺らすほどの爆発音の直後に火災が発生。同区では煙のにおいが立ち込め、灰が降るなどの被害が出ている。日没のため、ヘリによる消火活動は中断されており、二十七日午前零時現在、鎮火は確認されていない。

 町関係者によると、二〇〇五年に約八十ヘクタールを焼失した山火事に次ぐ規模で、これほど民間地に近い火災は近年では珍しいという。火災原因や焼失面積は調査中。

 火災現場は、レンジ4の都市型戦闘訓練施設に近い山間部。米軍から沖縄防衛局に入った連絡では、発生現場は「レンジ3」の爆発物処理場(EOD1)付近だとしている。

 伊芸区によると、今年に入り、レンジ4付近で大きな爆発音を伴う火災が三回発生した。同区は、通常レンジ3のEOD1だけで行われている爆破訓練を、レンジ4付近で実施している疑いがあるとして、沖縄防衛局に確認する方針。

 伊藝達博副町長は「詳しい状況を調べている。二十七日の議会で状況を報告し、二十八日にも抗議する。EOD訓練が原因だとしたら許せない」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

爆発音・煙 集落襲う/頻発「処理訓練か」


 【金武】突然の爆発音とともに強風が吹き、火が燃え広がった。二十六日に発生した金武町キャンプ・ハンセンでの大規模火災。約一キロの範囲に点在する火の手は、民間地まで約六百メートルに迫った。数時間に及ぶ米軍ヘリの消火活動も追いつかず、日没になっても炎を上げ燃え続けた。伊芸区には焦げたような煙のにおいが立ち込め、黒い灰が飛び散った。

 今年に入り、頻繁に起きている爆発音を伴う山火事に、地元では「住民に知らされないまま、爆発物処理訓練をしているのでは」と、不安が広がっている。

 前回二回の山火事の原因について、沖縄防衛局は「実弾射撃訓練」と発表。だが、伊芸区の池原政文区長は「実弾射撃訓練ならあんな爆音はしない。米軍はいつも真実を言わない。爆発物処理訓練が、どんどん民間地に近づいている」と危機感を募らせる。

 北風に乗った灰は、集落内の道路や民家、子どもたちが遊ぶグラウンドにも降ってきた。

 自宅にいた照屋藤さん(85)は「ドドンと何かが爆発したようなすごい音がして家から飛び出した」。町内のグラウンドで野球の練習をしていた新垣祐介くん(金武中二年)は「ここまで黒い灰が飛んできたのは初めて。ヘリの音もうるさくて煙のにおいも臭い」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271300_01.html

 

2008年3月27日(木) 朝刊 31面

父の願い 私が語る/座間味「集団自決」の日

 沖縄戦下の座間味島で「集団自決(強制集団死)」が起き、百七十七人が犠牲になってから二十六日で六十三年。島では遺族らが戦没者をまつる平和の塔などを訪れ、鎮魂の祈りをささげた。「集団自決」の記述から日本軍の強制性を削除する教科書検定問題で激しくせめぎ合ったこの一年。「歴史を曲げないで」という揺るがない思いが、住民の心に深く根を張った。(上原綾子)

 「歴史から真実を消さない。それが生き残った者の役目です」。宮平春子さん(81)は昨年、戦時中に座間味村助役兼兵事主任だった兄の故宮里盛秀さんが、日本軍から軍命を受けたと初めて公に重い口を開いた。助役が軍命を出したと元戦隊長らが主張している「集団自決」訴訟が、教科書から軍の強制を削る根拠にされ、黙っていられなかったからだ。

 「三月二十六日は一生忘れられない。軍命がなければ、兄が愛するわが子たちに手をかけることはなかった」。そう言うと、自然と涙があふれた。

 この日に合わせ、夫や孫とともに島に渡った盛秀さんの次女、山城美枝子さん(66)=宜野湾市。両親ときょうだい三人を「集団自決」で亡くし、一人生き残った。

 戦時中は三歳。家族のぬくもりはほとんど記憶にないという。あのころの自分の年齢に近い孫の鳳翔ちゃん(2)を抱きながら、「さまざまな人の証言で、当時の背景を知ることができた。父は戦争のない世の中をつくってほしいとメッセージを発していると思う。代弁者になりたい」と目頭を熱くした。

 宮平さんと山城さんは平和の塔を参拝した後、盛秀さんらの位牌がある宮村文子さん(82)宅を訪れ、仏壇に手を合わせた。二十八日に大阪地裁で判決が出る「集団自決」訴訟について「しっかり見守りたい」と山城さん。宮平さんは「兄さんたちの死を無駄にはしない」と、この日何度も口にした言葉を再び自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271300_04.html

 

2008年3月27日(木) 朝刊 2面

名護市、アセス認可

 沖縄防衛局の真部朗局長は二十六日の定例会見で、防衛省が十五日から始めた普天間飛行場の代替移設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)調査について、名護市が二十一日までに、必要な認可を出したことを明らかにした。

 真部局長は「移設そのものに対して理解を持って協力していただいた」と評価した。

 真部局長は二十五日、名護市の島袋吉和市長と宜野座村の東肇村長を訪ね、在日米軍再編の協力に応じて支払う再編交付金の支給決定を説明。島袋市長は真部局長に対し、「(移設に関する)協議会での議論の結果に基づき適切に対応していきたい」とあらためて表明したという。

 名護市が沖合移動を求めていることについて真部局長は「滑走路の長さや代替施設の位置について、お考えがあることは承知している」との認識を示しながらも、「(名護市の姿勢は)基本的に前向き。新たな判断材料を頂いた」と再編交付金の指定に踏み切った理由を説明した。

 防衛省は三十一日付の官報で告示する見通し。本年度分は名護が約三億九千四百万円、宜野座が約六千六百万円。来年度はアセス調査開始を受け、名護が約九億八千六百万円、宜野座が約一億六千六百万円になる見通し。

 年度末で本年度分の支払いが不可能なため、来年度に一括で支払う。

 アセス調査について反対派が阻止行動を展開していることについては「大きな支障は生じていない。対応できない場合は従来通り、警察や海上保安庁と連携して対応していきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271300_07.html

 

2008年3月27日(木) 夕刊 1・5面

10時間半燃え鎮火/ハンセン

 金武町の米軍キャンプ・ハンセンで発生した大規模な山火事は二十六日午後十一時五十四分ごろ、鎮火した。米軍から沖縄防衛局を通し連絡を受けた県基地対策課が二十七日午前、発表した。約十時間半かけて燃え、ピーク時には火の手が民間地に推定六百メートルまで迫った。県や沖縄防衛局によると、火災原因や焼失面積は米軍が調査を行っており、明らかになっていない。

 石川署によると、二十六日午後二時四十五分ごろには、約二万二千五百平方メートルが焼失。同日午後七時二十分ごろには、沖縄自動車道に約五百メートルの地点まで燃え広がったという。

 火災現場はレンジ4の都市型戦闘訓練施設に近い山間部。米軍から沖縄防衛局に入った連絡では爆発物処理場(EOD1)付近という。


     ◇     ◇     ◇     

金武町が抗議へ


 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセンのレンジ4付近で発生した大規模火災について、町は二十七日、沖縄防衛局に抗議することを決めた。儀武剛町長は「伊芸区民の心情を考えると大変遺憾」と話した。

 町は同日午前に開かれた町議会三月定例会の予算特別委員会冒頭で、火災について説明。沖縄防衛局が通常爆破訓練の行われているレンジ3の「爆発物処理場(EOD1)付近」としている火災発生場所ついて、「レンジ4の都市型訓練施設の裏手」と説明。議員から「EOD1と発生場所が離れている。詳細な調査が必要」と指摘があった。

 同町議会米軍基地問題対策調査特別委員会の知名達也委員長は「レンジ3の射撃場建設に対する抗議決議をしたばかりで、すぐこのような問題が起こり、米軍への強い怒りを感じる」と話した。

 同町議会はレンジ3に関する抗議決議を二十八日、同局に持っていく際、山火事についても抗議する。


シュワブも火災


 【名護】米軍から沖縄防衛局に入った連絡によると、二十七日午後零時半ごろ、名護市のキャンプ・シュワブ内のレンジ10付近で原野火災が発生した。火災原因は調査中。同午後一時現在、米軍が消火活動を行っている。


一夜明け山肌無残/地元、赤土流出懸念


 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセンの大規模な山火事から一夜明けた二十七日、火災現場に近い同町伊芸区の住民からは、火災で露出した赤土の流出などの被害を懸念する声が上がっている。

 現場となった同訓練場レンジ4付近の山間部では、真っ黒に焼けただれた斜面から赤土がむき出しになっていた。同区の男性(63)は「火事で木々が焼けて、赤土が流出しやすくなる。河川や海への悪影響が心配だ」と、不安げな表情を見せた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803271700_02.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 1・29面

米車両?学校に侵入/うるま市 ビデオに映像

 【うるま】二十七日午後一時五十九分ごろ、うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長・百二十四人)内に米軍関係とみられる車両が侵入し、校内で方向転換して引き返した。けが人や器物の破損はなかった。

 同校では昨年七月十八日に米軍の装甲車が侵入、同八月には近隣の前原高校でも同様のトラブルが起こっており、教育関係者や住民から怒りの声が上がっている。

 学校関係者によると、二人乗りで車幅の広い深緑色の車両が侵入、車内には迷彩色の服を着た外国人とみられる男二人が乗っていた。

 監視カメラには県道224号から車両が入り、駐車場で方向転換して引き返す様子が撮影されていた。所要時間は約一分半だった。

 塩浜校長は「(米軍車両であれば)二度目なので怒り心頭だ」。知念恒男うるま市長は「教育現場でこのようなことが起こるのは許されない」と述べた。

 

     ◇     ◇     ◇     

知事、強い不快感


 仲井真弘多知事は二十七日夜、二十六日から二十七日にかけて米軍基地内で山火事が二件起こり、米軍とみられる車両がうるま市の県立沖縄高等養護学校に侵入したことに、「多過ぎる。米軍は緩んでいるのではないか」と強い不快感を示した。

 その上で「民間企業であれば、しばらく営業停止だ」と憤りを示した。県庁で沖縄タイムス社の質問に答えた。

 米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会直後に相次ぐ不祥事に「(綱紀粛正が)徹底していないのか。ちょっと理解に苦しむ」とした。


「3度目」怒り心頭/学校職員らに衝撃


 【うるま】「開いた口がふさがらない。怒り心頭だ」。二十七日、うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長)で起こった米軍関係とみられる車両侵入のトラブルに、教育関係者はあきれ、憤った。春休みの静かな校内に突然、入り込んできた車両を目撃した学校職員らは「どう対応したらいいのか」と衝撃を受けている。

 仲村守和県教育長は声を震わせながらコメントを発表。「許し難い。米軍車両が学校の敷地内に入るのは前代未聞のこと。県民大会も開かれる中で三度起きた。米軍の綱紀粛正という言葉は疑わしい」と怒った。さらに「直ちに再発防止に向けた具体的な方策を示すようあらためて関係機関に強く求めたい」と話し、米軍当局に直接抗議する考えを示した。

 うるま市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「(再発は)沖縄の心を踏みにじる行動で、許せない。防止するには日米地位協定の改定しかない」と語気を強めた。同議会は二十八日に委員会を開いて今後の対応を協議する。

 高教組の松田寛委員長は「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会が開かれたばかりだ。あきれて物も言えない」と語気を強めた。県高校PTA連合会の西銘生弘会長も「春休みであっても学校の敷地内に入ったことは許せない。どんな抗議をしても何の変化もない、聞く耳を持たないなんて、強い占領意識の表れだ。詳細を把握して、すぐに抗議したい」と憤った。

 一方、沖縄防衛局は二十七日、在沖米海兵隊外交政策部(G5)と四軍調整官事務所に事実関係を照会していると説明。同日、同校を訪れ、監視カメラのビデオを入手。二十八日にもG5を訪問し、米軍関係者とともに映像を検証し、車両を特定する考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_01.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 1面

「集団自決」訴訟きょう地裁判決

 慶良間諸島で起きた住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、「沖縄ノート」などの著作で命令を出したと記され名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の元戦隊長らが作家の大江健三郎氏と岩波書店に出版の差し止めなどを求めた訴訟の判決が二十八日午前、大阪地裁(深見敏正裁判長)で言い渡される。

 二〇〇五年八月の提訴から約二年七カ月。住民に「集団自決」を命じた事実はないと主張する元軍人らに、軍や戦隊長による強制と命令があったことは真実と、岩波側が反論してきた。沖縄戦の史実をめぐる争いに、大阪地裁がどのような判断を示すか注目される。

 訴えているのは、座間味島に駐屯していた海上挺進第一戦隊の隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の海上挺進第三戦隊の隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(75)。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_03.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 28面

戦死した父と“再会”/形見の万年筆 壕で発見

 【糸満】沖縄戦で亡くなった父の名が刻印された万年筆が見つかったとの知らせを頼りに、北海道から二女の千葉郁子さん(68)らが沖縄入りし二十七日、糸満市宇江城にある発見場所の壕などを訪れた。終戦から六十三年を経て届いた形見の品を握り締め、「バイオリンが好きだった父」に思いをはせた。(与那嶺功)

 万年筆の刻銘を確かめた千葉さんは「父がそばに居るような気がして胸がいっぱい。家で待っている母に早く見せたい」と涙ぐんだ。

 万年筆は戦没者の遺骨収集を続けている修養団(本部・東京)メンバーが今年二月、日本兵を祭る「山雨の塔」地下の自然壕で見つけた。刻銘の「槙武男」から、所有者が北海道新得町出身と判明、千葉さんらの訪問につながった。

 壕内に入り「迎えに来ましたよ」と心で呼び掛けたという千葉さん。故郷の酒と水、お菓子を供えた。「暗く狭苦しくて息も詰まりそう。どうやって生きていたのかを思うと切なくなる」と表情を曇らせた。

 修養団沖縄支部の宮城英次会長から万年筆を受け取った、千葉さんは「本当にありがとうございました」と深々と頭を下げて感謝していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_04.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 2面

野党3党 改定案に調印/日米地位協定

 【東京】民主党の鳩山由紀夫幹事長、社民党の重野安正幹事長、国民新党の亀井久興幹事長は二十七日、国会内で会合を開き、三党で取りまとめた日米地位協定の改定案に調印し、正式に了承した。三党は三十一日以降に外務省などに改定を求めて要請する予定だ。また、政府に前向きな対応を促すため、野党が多数を占める参院を中心に、地位協定改定を求める国会決議を目指す動きも出ている。

 改定案は(1)基地外居住米軍関係者への外国人登録義務(2)被疑者の拘禁は原則日本の施設で行う(3)起訴前の身柄引き渡し要請に対する米軍の同意(4)施設返還時の環境汚染浄化は米国の責任(5)基地使用計画を八年ごとをめどに提出―などが柱となっている。

 県内で起きた米兵による暴行事件を受け、三党は実務レベルで協議を重ね、二十五日までに大筋で合意していた。

 調印後の記者会見で、鳩山幹事長は「住民の思いを受け止めた案。一刻も早く改定されるよう努力していきたい」と意欲を示した。

 重野幹事長も「対等の目線で沖縄が見られるよう、互いに協力する」と強調。亀井幹事長は「政府に受け入れてもらえるよう、努力していく」と述べた。


改定「必要ない」/外務省北米局長が答弁


 【東京】外務省の西宮伸一北米局長は二十七日の参院内閣委員会で、民主、社民、国民新の野党三党がまとめた日米地位協定の改定案について、「改正する必要があるとは考えていない。その時々の問題に、より機敏に対応していくためには、運用改善で対応していくことが合理的」と述べ、今後も運用改善で対応していくとの従来見解を繰り返した。糸数慶子氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_05.html

 

2008年3月28日(金) 朝刊 2面

シュワブ 射撃で火事/米軍演習場

 名護市の米軍キャンプ・シュワブのレンジ10付近で二十七日午後零時半ごろ、山火事が発生し、同日午後二時五十二分に鎮火した。沖縄防衛局から電話連絡を受けた県基地対策課が発表した。

 米軍所属のヘリコプター一機が消火を行った。沖縄防衛局によると、火災原因は実弾射撃訓練によるもので、焼失面積は明らかになっていない。

 また、金武町の米軍キャンプ・ハンセンで二十六日に発生した大規模な山火事の原因について、米軍から連絡を受けた沖縄防衛局は、廃弾処理によるものと発表した。

 在沖米海兵隊報道部は同日、沖縄タイムスに対し、出火原因を「訓練でなく、定期的に行うレンジのメンテナンス作業に伴うもの」と説明。米海兵隊消防が消火活動を行い、鎮火したのは二十七日午前十時二十五分だとした。正式な焼失範囲については、現段階で出せないとしている。

 同報道部は「この火災は海兵隊の演習場に制限されており、地元住民に危険は絶対にない。重大な損害はない」と述べた。

 山火事の原因が廃弾処理という説明について、伊芸区の池原政文区長は「廃弾処理がどんどん民間地に近づいている。(今年に入って)レンジ4で起きた前の二回の火災も、同じ爆発音が聞こえた。それらも廃弾処理ではないか。沖縄防衛局は米軍の発表をうのみにせず、独自で調査して住民に真実を伝えてほしい」と求めた。


     ◇     ◇     ◇     

伊芸区が抗議/演習場の撤去を要請


 金武町伊芸区の池原政文区長や同区行政委員会の登川松榮議長らは二十七日、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所を訪れ、キャンプ・ハンセンのレンジ3付近で今月着工した米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場建設の即時中止と、二十六日に同区周辺で発生した山火事などの演習被害に抗議し、同区に隣接する全演習場の即時撤去を要請した。

 沖縄防衛局の真部朗局長は「日米安保条約の下、新たな訓練施設や演習場は必要と認識しており、中止や撤去を要求することは難しい」と返答。米軍の存在や活動で影響を受けていることは承知している―と述べた上で、「生活環境に対する影響を最小限にするのが私どもの責務。努力が不十分であれば反省して取り組みたい」と理解を求めた。

 池原区長は、廃弾処理が廃弾処理場でなく、集落に近いレンジ4付近で行われているのではないかと指摘し、「窓ガラスが割れるような振動で、騒音も九〇デシベル以上。しっかり調べてほしい」と求めた。

 外務省沖縄事務所は田中賢治課長補佐が対応し、「レンジ3は構造上も安全性が確認できている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月28日朝刊)

[ハンセン山火事]

被害への丁寧な対応を

 米軍キャンプ・ハンセンで、演習に伴う山火事が多発している。二十六日午後に発生した山火事は、十時間あまりも燃え続け、一時は民間地の数百メートルまで火の手が迫ったという。

 鎮火後の火災現場は、見るからに痛々しい。青々とした若葉が失われ、黒く焼けただれた山肌は赤土がむき出しになっている。

 米軍、那覇防衛施設局(当時)、県の三者が本格的にハンセンの火災防止対策に乗り出したのは、三十年以上も前のことである。演習中、初期消火のためヘリを待機させたり、演習場内の火災多発地域に防火帯を設けたり、伊芸地区の水源かん養林への延焼を防ぐため境界に標識を設置したりした。

 だが、照明弾、えい光弾を使った訓練や爆破訓練、迫撃砲などの実弾射撃訓練を実施しているため、山火事そのものを防ぐのは難しい。

 山火事だけではない。ハンセンのレンジ3と呼ばれる演習区域では、米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設も始まった。金武町議会は二十四日、施設建設に反対する決議を可決したばかりである。

 レンジ4にある都市型戦闘訓練施設(コンバットタウン)は、伊芸区の民家からおよそ三百メートルしか離れていないため、民間地域から離れた別の場所に移すことが決まっている。当初計画では三月末に移転工事が完了する予定であったが、大幅に遅れ、来年秋にずれ込む見通しだ。

 多発する山火事、新しい訓練施設の建設、都市型戦闘訓練施設の移設作業の遅れ、陸上自衛隊による共同使用の開始。およそ負担軽減とは正反対の事態が次から次に生起している現実を見過ごすことはできない。

 米軍は、ゲリラとの市街戦を想定した訓練も、非戦闘員救出訓練も、各種の火器を用いた実弾射撃訓練も、すべては、ハンセンで認められた通常の訓練であり、錬度維持のために欠かせない訓練、だと強調する。

 だが、地元住民はこうした訓練によって山火事、騒音、被弾、跳弾、赤土汚染などの被害を日常的に被っているのである。

 確かに、金武町、宜野座村、恩納村の三町村は、自衛隊の共同使用を受け入れる見返りに米軍再編交付金を受けることになったが、演習に伴う被害の発生まで認めたわけではない。

 防衛省や外務省は、こうした被害に慣れっこになって、ありきたりの対応で済ましている面がないかどうか、自己点検が必要だ。周辺住民の負担を軽減するため、政府には被害への丁寧な対応を求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080328.html#no_2

 

琉球新報 社説

米軍基地火災 県民の命を危険にさらすな 2008年3月28日

 米軍被害が拡大し、歯止めがかからない。米兵犯罪に続き、26日には米軍キャンプ・ハンセンで、27日にはキャンプ・シュワブと基地内での火災が相次いでいる。県民の命を危険にさらす米軍に強く抗議したい。

 演習被害とみられる基地内火災だが、火災原因は「まだ報告がない」(県)ため不明だ。

 26日のハンセンの火災では、煙とすすが金武町伊芸区の集落にまで流れ込んでいる。一帯には焦げたにおいが漂っていたという。

 火災は午後1時すぎに発生し、米軍はヘリコプター2機を使い消火に当たったが、鎮火は午後11時54分。日没でヘリでの消火を断念した米軍は、地上からの消火を続け、ようやく消し止めている。夕闇の中で、燃えさかる火の手に、周辺住民は不安を募らせた。

 その鎮火から半日もたたないうちに、27日正午すぎ、今度はキャンプ・シュワブのレンジ10付近での火災である。米軍はヘリ1機を派遣し、消火に当たり、午後3時前に鎮火している。

 米軍基地内の火災は、昨年は20件と、前年の8件から倍増している。火災原因は「実弾演習によるものが多い」(県)というが、詳細は米軍の報告を待つしかない。

 県は火災発生のたびに原因究明と再発防止、住民に不安を与えないよう抗議と申し入れを繰り返してきた。だが、事態は改善どころか今年に入ってむしろ悪化している。

 基地内火災の怖さは、消火活動に県や基地所在自治体がかかわれないことだ。

 靴の上からかゆい足をかく、まさに隔靴掻痒(かっかそうよう)のじれったさがあり、命を危険にさらす火災を、黙って眺めているしかない悔しさがある。

 これも日米地位協定が定める米軍の強大な「管理権」(三条)によるものである。

 住民の命が危険にさらされる中で、繰り返される基地内火災の消火活動に県や当該自治体が関与できない。国民を守るはずの「日米安保」や「米軍駐留」が、むしろ国民を危険にさらしている。日米両政府には再発防止はもちろんだが、納得のいく説明を求めたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130575-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

秘密漏えい 知る権利脅かす揺さぶり 2008年3月28日

 国民の「知る権利」と「報道の自由」が危機にさらされている。「防衛秘密漏えい」の自衛隊法違反での一等空佐の書類送検だが、防衛省の狙いは、新聞記者への情報提供の阻止。防衛秘密を盾に「知る権利」を脅かす行為である。警戒が必要だ。

 陸上自衛隊警務隊は、防衛省情報本部の課長だった一等空佐を自衛隊法違反容疑で26日までに東京地検に書類送検している。

 南シナ海で起きた中国潜水艦の事故情報を2005年5月、読売新聞記者に漏らしたことが「防衛秘密漏えい」に当たるとしている。

 防衛秘密漏えい罪は、01年の自衛隊法改正で新設された。守秘義務違反は1年以下の懲役、または3万円以下の罰金だが、防衛秘密漏えい罪は「5年以下の懲役」と罰則が重くなっている。

 しかも自衛隊員にとどまらず、他の国家公務員、民間業者にまで対象が拡大されている。

 今回の立件は、取材を受けた公務員の刑事責任を追及する従来にはない極めて異例の措置だ。

 識者は「今後、メディアや外部に漏らすとこうなるぞ」との「組織内部に対する脅しのようなもので、情報公開の壁となる」と警鐘を鳴らしている。

 知る権利に直結する報道機関への情報提供を、「スパイ事件並みに摘発し、“見せしめ”にする意図も見え隠れしている」との指摘もある。

 今回は「記者」の立件は見送られたが、取材記者もいつ「教唆」で立件されるとも限らない。言論封殺と思想弾圧を行った戦前の「治安維持法」を想起させる脅威である。

 一等空佐が漏らしたとされる日本近海での中国潜水艦の事故の情報は、果たして防衛秘密に当たるのであろうか。むしろ国民が知っておくべき内容である。秘密指定の基準もあいまいで、「何でも秘密」の防衛省の隠ぺい体質も見え隠れする。

 「防衛秘密」は07年6月末現在で約9千件あり、ほかに守秘義務を課されるいわゆる「省秘」は9万9千件にも上る。

 米国から供与された装備品などの性能に関する事項は「特別防衛秘密」とされ、一般国民も含め探知・収集、未遂犯も対象で、最高「10年以下の懲役」である。

 刑罰の重さ、知る権利の確保の観点からは、防衛秘密の指定基準の明確化と第三者機関による指定基準や中身の監査も必要であろう。

 日米両政府は、昨年「日米軍事情報包括保護協定」を締結。秘密保全の新法制定の動きもある。

 「知る権利の侵害に対する国民の鈍感さ」に、強い危機感を抱く識者もいる。「新たな戦前」を招かないためにも、国民による防衛省の監視体制を強化したい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130576-storytopic-11.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 1面 

元隊長の請求棄却/「集団自決」訴訟

軍命に真実相当性/大阪地裁「深く関わった」

 沖縄戦時に座間味、渡嘉敷島で起きた「集団自決(強制集団死)」は戦隊長が命じたとする本の記述をめぐる「集団自決」訴訟の判決が二十八日午前、大阪地裁で言い渡された。深見敏正裁判長は、大江健三郎氏(73)の「沖縄ノート」について、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏への名誉棄損の成立を認めず、原告の請求を棄却した。梅澤氏が住民に「集団自決(強制集団死)」を命じたとする「太平洋戦争」(故家永三郎著)の記述にも真実相当性を認め、原告梅澤氏の訴えを退けた。原告側敗訴の判決で、梅澤氏らは控訴する。

 判決は、梅澤氏の自決命令について、「自決命令があった」などとする体験者の証言を「実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するもの」と認め、自決に軍所有の貴重な武器だった手榴弾が使われたことなどを指摘。「各書籍の記述どおりの自決命令」をそのまま認めることには「伝達経路等が判然としないため、躊躇を禁じえない」としたものの、「梅澤氏が集団自決に関与したものと推認できる」とした。

 また、赤松氏の自決命令について、赤松氏がスパイ容疑で住民を処刑したことを指摘。米軍上陸後、北山陣地近くに集合した住民の元へ手榴弾を持った防衛隊員が現れた行動を「赤松氏が容認したとすれば、赤松氏が自決命令を発したことが一因ではないかと考えざるを得ない」とした。

 さらに、「集団自決」に関する学説状況や「集団自決」への日本軍による強制を示す記述を認めてきた二〇〇五年度までの教科書検定の対応、大江氏、家永氏の取材状況などから「真実であると信じるについて相当な理由がある」と両著の記述の正当性を認め、慶良間諸島での日本軍の駐留状況などからも「『集団自決』については日本軍が深く関わったものと認める」とした。

 一方、「『集団自決には軍命があった』という住民の話は、遺族年金をもらうための捏造」などとした、原告側証人の証言や文書は「証人の経歴や文書作成の経緯に照らして採用できない」とした。

 沖縄戦での「集団自決」に対する日本軍の強制を示す記述を、高校の日本史教科書から削除させた二〇〇六年度の教科書検定で、文部科学省が根拠の一つに挙げており、今後の同省の対応が注目される。


     ◇     ◇     ◇     

知事、妥当と認識/「体験伝えていくべき」


 仲井真弘多知事は二十八日午前、「集団自決」訴訟判決で原告側の請求が棄却されたことについて、「正確には判決の中身を読ませていただきたい」とした上で、「やっぱりそういうものだったのか」と述べ、判決が妥当との認識を示した。

 「集団自決(強制集団死)」に関しては、「証言されている一人一人は大変な勇気を持って表現されている。痛恨の体験をされた人々の気持ち、その社会的背景を含めて、きちっと伝えていくべきだと思う」との見解を述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_01.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 7面

「新証言 聞いてくれた」/大江さん冷静に評価

 六十三年前の沖縄戦。慶良間諸島で起きた住民の「集団自決(強制集団死)」への軍関与の史実について二十八日、司法が踏み込んだ判断を示した。被告の大江健三郎さんは、著書を「しっかり読んで下さった」と評価。被告側支援者らは、涙を浮かべて喜び、元戦隊長ら原告は、顔をこわばらせた。被告側を支援してきた県内の関係者らは「判決は当然。ほっとした」「次は教科書の記述復活だ」と、一様に歓迎した。悲劇の舞台の一つ渡嘉敷島は、くしくも六十三回目の「あの日」。遺族らが犠牲者の名を刻んだ白玉之塔に手を合わせた。

 「裁判所が私の『沖縄ノート』を正確に読んで下さった」「新しい証人の声をよく聞いてくれた」。判決の言い渡し後、大阪司法記者クラブで開かれた会見。作家の大江健三郎さん(73)は原告側の訴えを一蹴した司法判断について、落ち着いた表情でよどみなく言葉を連ねた。

 「個人の名を挙げて、彼を罪人としたり、悪人としたりしていない」と著書の記述が元戦隊長個人を誹謗・中傷したものではないとあらためて強調した。

 また、「裁判の背景に大きな政治的な動きがあった」と指摘。二〇〇三年の有事法制の成立、〇五年の「集団自決」訴訟の提起、〇七年の教科書検定で「集団自決」の記述から軍の強制性が削除された問題が、一連の流れの中で起きたと述べた。

 一方、昨年九月に宜野湾市で開かれた教科書検定意見の撤回を求める県民大会について、「あの十一万人の集会が本土の人間に、この問題がどのようなものであるか知らしめた」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_02.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 7面

検定撤回 決意新た/体験者ら「歴史正す一歩」

 渡嘉敷島での体験者吉川嘉勝さんは(69)は「県民としてほっとしている。渡嘉敷、座間味だけでなく、県民大会など県民全体が団結して行動し、発言してきた結果だ。しかし原告側は控訴するだろう。予断を許さない。引き続き沖縄戦の真実を全国に訴えていきたい」と語った。吉川さんは多くの島民の犠牲者の名前を刻んだ渡嘉敷島の白玉之塔に手を合わせ、裁判結果を静かに報告した。

 座間味島で「集団自決」を体験した宮城恒彦さん(74)は「請求棄却は当然。被告の訴えが認められなければ大変なことになる。座間味の人たちが体験した、地獄絵の事実は簡単に曲げられない。この判決は、歴史を正すための一歩になる」と評価した。

 琉球大学の高嶋伸欣教授は「積極的に踏み込んだ判決で、評価できる。裁判所も県民大会などに表れた沖縄の声を聞かざるを得なくなった」と指摘。「文科省の検定意見の不当性もますます明白になり、あらためて撤回と謝罪を求めていく」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

犠牲の島民思い ひと時も忘れず/渡嘉敷


 【渡嘉敷】沖縄戦で住民の「集団自決(強制集団死)」が起きた渡嘉敷島で二十八日、慰霊祭が行われた。六十三年前のこの日、集団自決で住民三百二十九人、島全体では約五百人の命が失われた。犠牲者を祭る白玉之塔には早朝から遺族や住民らが参拝に訪れ、御霊の冥福を祈った。

 「請求棄却」の判決について小嶺安雄村長は「村内でもいろんな意見を持つ住民がおり、村としての公式なコメントは控えさえていただきたい」と答えた。

 娘二人を亡くした北村登美さん(96)は「六十三年間、ひとときも忘れたことはない。犠牲になった家族や島民のことを思うと涙をこらえることができない」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_03.html

 

2008年3月28日(金) 夕刊 1面

米軍車両侵入 防止策要請へ/知事が批判

 仲井真弘多知事は、米軍関係とみられる車両が県立沖縄高等養護学校(うるま市)敷地に無断侵入したことについて、二十八日の定例会見で「どうしてこういうことが起こるのか。きちっと詰めれば解決できる話だ」と述べ、近く在沖米軍トップのリチャード・ジルマー四軍調整官に防止策を申し入れる考えを示した。

 仲井真知事は二月十日の米兵暴行事件以降、米軍や米軍関係者による事件・事故が十八件起こっていることを指摘。「綱紀、仕事の仕方、組織の問題などいろいろあるだろうと想像させられる。軍隊ではいいんだという話はあり得ない」と米軍の対応を批判した。


     ◇     ◇     ◇     

うるま議会 現場視察/臨時議会で抗議決議へ


 【うるま】うるま市田場の県立沖縄高等養護学校(塩浜康男校長・生徒百二十四人)内に米軍関係とみられる車両が侵入した問題で、うるま市議会の島袋俊夫議長らは二十八日、同校を訪れ、現場を検証、塩浜校長からも状況を聞いた。同議会は基地対策特別委員会を招集し、抗議行動などを協議。うるま市側も抗議行動を検討している。

 島袋議長は「米軍は昨年の車両侵入で抗議した際に徹底した指導を約束した。短期間に連続して発生しており由々しき事態だ」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_04.html

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