県民大会、米軍へ6000人抗議 地位協定改定案、野党3党が合意など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(3月23日から25日)

2008年3月23日(日) 朝刊 1・29面

沖縄の怒り全国に訴え/きょう午後 県民大会

大会実行委決議案確認/米兵事件続発

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」(主催・同実行委員会)が、二十三日午後二時から北谷町の北谷公園野球場前広場(雨天時は同公園屋内運動場=北谷ドーム)で開かれる。

 大会は宮古島、石垣市でも同時開催される。

 二十二日、大会を呼び掛けた六団体による幹事会が那覇市の県教育会館で行われ、日米地位協定の抜本改定などを要求する決議案やプログラムを最終確認した。

 関係者らは「県民の痛みと怒りを全国へ広げる大会にしたい」と強調した。

 大会では、開催地の野国昌春北谷町長のほか、東門美津子沖縄市長、翁長雄志那覇市長が登壇し、あいさつする。

 三市町長を含め少なくとも十三市町村長が参加する予定。二十二日までに、市民団体や労組など九十五団体から大会の趣旨に賛同する協賛金が集まった。

 大会決議案は、戦闘機、ヘリの墜落事故や爆音、さらに女性への性暴力事件が起きた今年二月以降も凶悪事件が頻発していることを指摘し、「基地被害により県民の人権が侵害されている」と厳しく批判。

 その上で、日米両政府に対し、(1)日米地位協定の抜本改正(2)米軍による人権侵害の根絶(3)実効性ある再発防止策(4)米軍基地の整理・縮小と兵力削減―の四項目を求める内容となっている。

 また、女性団体や教育、労働団体、地域住民代表、性暴力の被害者らが壇上に立ち、それぞれの立場から抗議の意思を表明する。

 大会実行委は今月八日に正式発足。超党派の大会を目指し県議会へ要請を繰り返したが、自民党県連は組織参加を見送り、仲井真弘多県知事も二十一日、不参加を表明した。

 実行委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長は「米兵による事件の背後に人権問題がある。県民の痛みと怒りを全国へ広げていける大会にしたい」と決意を述べた。

 実行委は大会終了後、四月中旬をめどに上京し要請行動を行う予定。


     ◇     ◇     ◇     

犯罪被害 共闘誓う/神奈川の事件当事者


 「基地がなければ起こらない事件で、米軍に対する思いは私たちも同じ。一緒に闘っていると感じたい」。在日米軍による犯罪・事故の被害者の会の山崎正則さん(60)=横須賀市=と椎葉寅生さん(69)=横浜市=が、「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に参加するため二十二日、来県した。山崎さんは、米兵の犯行で妻を失った。椎葉さんは米軍戦闘機墜落事故の被害者だ。沖縄と基地への思いを共有するために二十三日、二人は北谷公園に向かう。

 「米軍は再発防止を何度も言うが事件は減らない。妻の事件の時も『二度とこのようなことは起こさない』と言い、外出禁止などやったが何にもならない」。山崎さんは、不満を一気に話した。

 二〇〇六年一月、山崎さんの妻は、金目当ての米空母乗員に惨殺された。山崎さんは同年十一月、日本政府や米軍の管理責任を問い損害賠償を求める裁判を起こし、現在も係争中だ。「私だって大変だった。被害者が声を出すのは勇気のいること」と被害者を思いやり、「国の政策で基地を置くなら、基地から出すな。米軍任せでは駄目だ」と、国の責任を厳しく問う。

 椎葉さんは一九七七年、自宅近くに米軍機が墜落、自宅を失い妻も全身にやけどを負った。「横須賀でも、沖縄と同じように、次から次へと事件や事故が起こっている。どこの県民というのではなく、同じような被害を受けている者として、一緒に闘いたい。被害者がもっと腹を立てて、怒らないといけない」と話した。

 「私たちのような被害者を二度とつくらないでほしい。不幸にして被害者になった人がいたら、やれるだけのことをしてあげたい」。二人は、昨年六月に二人の仲間と同会を立ち上げた。「沖縄で、多くの人に勇気をもらって帰り、向こうでまた頑張りたい。それが、また沖縄の人たちを元気づけることになればと思う」。二人は静かに、参加し連帯することの意義を話した。


「被害者名」記し批判/産経・世界日報にチラシ


 二十二日に県内で宅配された産経新聞と世界日報の折り込みチラシに、米兵による暴行事件の被害者の実名とも読める氏名を記載して被害者を批判する文書が含まれていたことが分かった。チラシの折り込みを依頼した国旗国歌推進県民会議の惠忠久会長は「氏名を記したのは軽率だったかもしれない」と話し、世界日報は販売店にチラシの回収を命じた。

 チラシには被害者を批判する文章のほか、「県民大会を開かせるな、自民党、公明党は絶対に参加すべきではない」などとした惠会長の主張がA4紙二枚に記されている。

 惠会長は、数百部を同日の両紙朝刊に折り込むよう販売店に依頼したという。記載された名前は実名ではないが、惠会長は実名かどうか把握しておらず、「チラシはある文章を引用して作ったが、名前を記すことの意味はよく考えていなかった。被害者の人権を指摘されれば多少、軽率だったかもしれない」と述べた。

 沖縄タイムスの取材に対し、世界日報の黒木正博編集局長は「同日夕方ごろ、沖縄の販売店から報告を受けた。不穏当な表現だと考え、すぐに回収を命じた」と話した。

 産経新聞社大阪本社の広報担当は「折り込み広告は販売店が判断して入れている。公序良俗等に反するものは控えるよう販売店には言っている。内容の確認をしていないが、もし事実なら遺憾に思う」としている。

 県人権協会の永吉盛元事務局長は「被害者である、という立場をまったく理解していない。本当に実名を出していたとしたら、甚だしい人権侵害で悪意に満ちた態度だ」と憤った。「言論の自由があると言うかもしれないが、私たちの社会で到底許されるものではない」と述べ、強い抗議が必要との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803231300_01.html

 

2008年3月23日(日) 朝刊 28面

「集団自決」跡を見学/1フィート運動の会

 沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会(福地曠昭代表)は二十二日、「集団自決(強制集団死)」を現地で学ぼうと、渡嘉敷島平和ツアーを行った。同会設立二十五周年記念企画の一環。参加者十二人は、「集団自決」体験者吉川嘉勝さんの案内で同島内を回り、「集団自決」跡地、日本軍本部跡地、白玉の塔、慰安所だった建物などを見学した。

 「集団自決」跡碑の前では、吉川さんが当時の状況を説明。命令がなければ自決場に向かわなかったこと、「天皇陛下万歳」の声で惨劇が始まったこと、母親の言葉でその場から逃げだしたことなどを話した。参加者は、沢に下り現場まで歩き、当時の様子に思いをめぐらせた。

 福地代表は「実際の場で話を聞くと、わずか一キロほど離れた所の地獄のような騒ぎを日本軍が気付かなかったわけがない、とつくづく思う」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803231300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月23日朝刊)

[きょう県民大会]

相次ぐ事件もはや限界

 米兵による事件が沖縄だけでなく全国の米軍基地所在地で相次いでいる。

 二〇〇六年一月、神奈川県横須賀市で日本人女性が殺害され、米空母キティーホークの乗組員が逮捕された。容疑者が犯行を認めた直後の一月、北谷町のキャンプ瑞慶覧ではタクシー強盗事件が起きた。事件の連鎖は今年に入ってからも顕著だ。

 一月に沖縄市で起きた米海兵隊員二人によるタクシー強盗致傷、二月の米兵による女性暴行、名護市辺野古の民家への住居侵入。横須賀市では三月十九日、タクシー運転手が刺殺されるという事件が起きた。

 車内に残されていたクレジットカードが米兵のものと判明したため、米軍は、この米兵を脱走罪で拘束し、事件との関係を調べている。

 夜間外出制限、隊員の着任研修、繁華街の巡回。米軍はさまざまな再発防止策を打ち出してきたが、効果をあげているとは言い難い。

 アフガニスタンやイラクでの戦場経験と、帰還後の犯罪の関連性を指摘する声もある。

 米国防総省の報告書によると、〇六年十月から〇七年九月までの米軍兵士による性暴力事件は二千六百八十八件に達し、このうち約60%がレイプ事件だった。

 多発する米兵犯罪が住民の安全を脅かし、不安に陥れている。

 蛮行を許してはならない。「命と尊厳」を守るため声を上げよう―そんな切羽詰まった思いから、二十三日、「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」が開かれる。

 大会参加をめぐって態度を保留していた仲井真弘多知事は、大会前々日になって「被害者への配慮」などを理由に参加を見送ることを決めた。

 県議会与党のうち自民党県連はいち早く不参加を表明。公明党県本は参加する方針を明らかにした。与党の中で態度が割れた。

 今回のようなケースでは、県知事や政党が県民大会に参加することも、不参加を表明することも、ともに政治的意思表示になる。不参加という名の政治的意思表示は、沈静化には役立っても、問題解決を促す力にはなり得ないだろう。

 地位協定の抜本的見直しに向け訪米を検討していると言いながら、その一方で、大会に参加しないというのは、なんともちぐはぐだ。

 深刻な被害を受けている地域がそれぞれ声を上げなければ、事態はいつまでたっても改善されない。

 県民大会をその第一歩と位置づけたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080323.html#no_1

 

琉球新報 社説

きょう県民大会 知事の不参加は残念だ 2008年3月23日

 1995年の県民大会から、沖縄における米兵による事件・事故は減ったのだろうか。何も変わらない、というのが現状ではないだろうか。今回の女子中学生に対する暴行事件を見ても、過去の教訓が生かされているとは到底、言い難い。

 日米両政府、米軍とも、やることなすこと、同じことの繰り返しだ。事件が起きるたびに「綱紀粛正」「兵士教育の徹底」など再発防止策を掲げるが、どれだけの効果があったのだろう。「その場しのぎ」「ほとぼりが冷めるのを待つ」。多くの県民が両政府の態度をこう見ているとしても仕方がないのではないか。

 もちろん、今回も軍属を含む外出禁止措置など、いくつかの再発防止策が取られた。ただ、その後も次から次へと米兵絡みの事件が発生したのも事実だ。小手先の対処策では、もはやどうにもならないことは、過去の事例を見ても明らかだろう。両政府は基本的なところで現実から目をそらしているとしか思えない。

 当局がそうであれば、われわれにできることは、抗議の声を上げ続けていくことだ。そうすることで、このような社会を変えていくしかない。何もしないのは現状を容認することにしかならない。

 きょう開かれる「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」(同実行委主催)に、仲井真弘多知事が不参加を決めた。被害者への配慮、を理由の一つに挙げている。為政者として、当然の気配りだろう。意思を固めるまで散々悩んだことと思う。

 しかし、その判断はやはり、残念としか言いようがない。米兵によるこの種の犯罪で、表面化するのは氷山の一角だという指摘もある。声も上げられない被害者。そんな被害者のためにも、むしろ知事が先頭に立ち、代わって抗議の声を上げるべきではないのか。知事が大会に参加することで、被害者が傷つくとは思えない。

 大会のスローガンは再発防止策の徹底はもちろん、日米地位協定の改定、基地の整理縮小などであり、「私が言っているのとほとんど同じ」(仲井真知事)。そうであるなら、なおさら知事は参加の道を選ぶべきだった。知事は夏にも訪米し、協定改定など直接米国政府に訴えるという。大会不参加は、その決意のトーンダウンを印象付けることにならないか。

 玉寄哲永実行委員長は「知事の参加の有無で、大会の意義は変わらない。今回は県民の人権を取り戻す闘い」と語る。その通りだろう。参加団体の数の多寡、超党派かどうか。これらで、大会の性格が左右されるはずもない。協定改定から基地の整理縮小、さらには基地の撤去まで。一人一人が愚直に声を上げ続けていくしかない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130390-storytopic-11.html

 

2008年3月24日(月) 朝刊 1面

米軍へ6000人抗議/地位協定の改定訴え

宮古・石垣でも600人

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」(主催・同実行委員会)が二十三日、北谷町の北谷公園野球場前広場で開かれた。激しい雨の中、女性団体や教育関係、労組などの市民団体、地域住民ら六千人(主催者発表)が参加。続発する米兵犯罪や基地被害を厳しく批判し、日米地位協定の抜本改定などを求める大会決議を採択した。宮古島市、石垣市でも同時開催され、六百人が怒りの声を上げた。

 県民大会に呼応し、東京都内でもデモ行進などが行われ、米兵による事件・事故に抗議した。

 実行委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会会長は「この大会は人権を保障させる運動の第一歩になる。沖縄の怒りを日米政府へぶつけよう」と呼び掛けた。

 二〇〇二年に神奈川県で米兵に暴行された被害女性が登壇。「被害者として黙っていられない。心の傷は残っているが、この場に来て私は一人じゃないと思えた」と語り掛けた。会場は静まり返った。

 開催地の野国昌春北谷町長、東門美津子沖縄市長、翁長雄志那覇市長ら本島中部を中心に十市町村長が出席したほか、国会議員や県議らも参加した。

 大会決議は、一九九五年の米兵暴行事件後に約束された再発防止や基地の整理・縮小が守られていないことを批判。日米両政府に(1)日米地位協定の抜本改正(2)米軍による県民の人権侵害を根絶するため政府が行動を起こすこと(3)米軍人への厳しい綱紀粛正と実効性ある再発防止策(4)基地の一層の整理・縮小と兵力削減―の四項目を要求した。

 実行委は、構成九十九団体の代表らに呼び掛け要請団を結成し、四月十日をめどに、首相官邸や衆参両院議長、外務省、防衛省、在日米大使館に要請行動する予定。


[ことば]


 地位協定改定要求 1995年11月、大田昌秀知事は10項目の地位協定見直しを政府に要求。その後、米軍が地位協定に基づく「施設間の移動」と主張していた民間地域での行軍を禁止、被害者補償に備え米兵の全マイカーを任意自動車保険に加入させることなどが実現したが、多くは稲嶺恵一、仲井真弘多知事の代へ持ち越された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803241300_01.html

 

2008年3月24日(月) 朝刊 22・23面

「安心を返して」/「涙雨」静かな怒り

 「沖縄に、安全で安心な暮らしを返してほしい」。二十三日、北谷町の北谷公園野球場前広場であった県民大会。県民が繰り返し訴え続けてきた願いを胸に、強い雨と風の中、約六千人(主催者発表)が集まった。米兵による犯罪の被害者らの怒りや悲しみを込めた訴えに会場は静まり、涙する人も。後を絶たない米兵の事件・事故と、防げない日米両政府に抗議と怒りが広がった。

 大会開会の一時間ほど前から勢いを増した雨に強い風。参加者は傘を差し、雨がっぱを着込んでも吹き込む雨や寒さに耐えながら、アスファルトの広場やぬかるんだ芝生、雨宿りした野球場の軒下から舞台に視線を注いだ。

 「県知事は地位協定の抜本的な改定を求め米国に行くのに、県民の声を反映させることもなく手ぶらで行くのか」。大会実行委の玉寄哲永委員長は、参加しなかった仲井真弘多知事や自民党県連の姿勢にいつになく怒りをあらわにした。

 翁長雄志那覇市長は穏やかな口調ながら、地位協定見直しに消極的な町村信孝官房長官や日本政府の対応に「どこの国の官房長官かと思う」などと、厳しい言葉を重ねた。

 高まる檀上のボルテージに拍手や指笛、「そうだ」の掛け声が飛んだ。

 神奈川県内で米海軍所属の米兵に性的暴行を受けたオーストラリア出身のジェーンさん(仮名)が話し始めると、会場は静けさに覆われた。

 米兵に暴行を受け、心に一生の傷を負ったこと。「助けてくれる」と思った日本政府が捜査でも裁判でも助けてくれなかったことを語り、「私は性犯罪被害者です。私は恥ずかしくない。私は悪くないから」、「何も悪くない沖縄、何も悪くない私」と訴えた。

 率直に体験や気持ちを語るジェーンさんの言葉に、参加者はうつむいてじっと聴き入ったり、まぶたを手でぬぐったりした。

 「平和のための行動を進めていきましょう」。

 ジェーンさんの訴えに応じるように、地位協定の抜本的見直しや在沖米軍基地の整理・縮小の促進などを求める六千人の「ガンバロー」のこぶしが、雨空へ力強く突き上げられた。


     ◇     ◇     ◇     

勇気の訴え共鳴/性暴力被害者・ジェーンさん


 「性暴力の被害者として、黙っていられない」。二〇〇四年に神奈川県内で米海軍横須賀基地所属の米兵に暴行されたジェーンさん(仮名、四十代)は、犯罪を問うため闘ってきた六年間の思いを語った。訴えは、六千人に染み入った。

 オーストラリア出身のジェーンさんは来日三十年で東京に在住。加害者の米兵相手に民事訴訟を提起、東京地裁は賠償金の支払いを命じたが、米兵は審理中に帰国し行方知れずに。

 「暴行されたとき、殺された方がましだと思った。何年たっても忘れられない」。帽子にサングラスで登壇したジェーンさん。時折叫ぶように語った。

 二月の暴行事件後のライス米国務長官来日に触れ「きちんと謝罪するというなら、加害者の米兵を日本に戻して」と訴えた。

 大会参加に葛藤もあった。自分に恥ずべきことはないとの信念と、顔や名前を隠して登壇することへの悩み。小学生の息子に「家族の名前を出していい? ママのことでいじめがあるかも知れないよ」と尋ねてみた。息子は「大丈夫。お母さんは何も悪くない。僕が守ってあげる」。涙が止まらなかったという。

 ずっと一人で闘ってきたジェーンさんが、日米政府、警察から掛けてほしかった言葉だった。「悪いものは悪い、正しいものは正しい」。訴え続ける勇気になった。

 大会後、壇上のジェーンさんのもとに、女性が駆け寄り、握手を求めた。「自分もずっと苦しんできた」と打ち明け「今日から強く生きていきたい」と語ったという。「涙が出た。つないだ手を放したくなかった」

 「私たちの活動を世界が注目している。今日、私は一人ではないという気持ちになれた。一緒にやっていきましょう」。そう締めくくったジェーンさんを温かい拍手が包んだ。


「声上げ日米動かす」/宮古・八重山でも集会


 【宮古島・八重山】米兵による事件・事故に抗議する宮古集会と、八重山郡民大会が二十三日、宮古教育会館、石垣市役所前広場でそれぞれ開かれ、日米地位協定の抜本改正などを求める決議案を採択した。

 宮古集会(主催・同実行委)には二百八十人(主催者発表)が参加。実行委員長の伊志嶺亮宮古島市長は、一九九五年の県民大会以後も米兵による暴行事件が起こっているとし、「われわれの声を日米両政府に届けるよう、宮古からも訴えていきたい」と述べた。

 下地昌明多良間村長は強い憤りを示し「米軍の再発防止策は不十分だ」と批判。宮古島市婦人連合会の下地正子会長は「米軍基地を子や孫の世代に残してはいけない」と訴えた。

 八重山郡民大会(主催・同実行委員会主催)には約三百五十人が結集。実行委員長の本底充連合沖縄八重山地域協議会議長は「一人一人の怒りを大きなうねりに、日米両政府を動かそう」と強調。大浜長照石垣市長は「基地があるから米兵の事件・事故が起きる。根底から考える必要がある」、大盛武竹富町長は「日米両政府は再発防止の具体策を示すべきだ」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803241300_02.html

 

2008年3月24日(月) 朝刊 3面

知事不在 批判も/県、協定改定に重点

 「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」は約六千人(主催者発表)が参加したが、仲井真弘多知事や自民党県連は参加せず、「超党派」の集会とはならなかった。県は同大会の意義を評価しつつ、与党を中心に日米地位協定の抜本的改正に取り組む姿勢を強調。一方、政府は知事の不参加などを理由に「これまでの県民大会とは重みが違う」と冷静に受け止めている。

 県民大会に約六千人が参加したことについて県首脳は「ある程度のインパクトはある。特に日米地位協定の抜本的改正については県民の思いが強い」と評価。

 日米地位協定の改正は県も最大の政治課題に挙げる。だが、大会の主催者あいさつでは、参加を見送った自民党などが厳しく批判された。

 別の県幹部は「参加しなかったことで、県民から『知事は何をしているのか』と言われかねない」と指摘。「地位協定改定に向けた具体的なプランを早めに打ち出す必要があるだろう」と話す。

 仲井真知事は今秋に訪米を予定。自民党県連も訪米前の県民大会開催を検討している。県幹部は「自民党を中心に超党派で大会を開き、県選出の与党国会議員とも連携しながら進めていかなければならない」と全県を網羅した運動の必要性を強調する。

 知事周辺は「政府が『運用改善』を繰り返すのは、政府自身が現状に問題があると認識しているからだ」と指摘する。「理念的な改正案でなく、日米両政府がテーブルに着くような実態に即した改正案に踏み込む必要がある」と今後の県の方向性を示唆した。


県民の思い強い

仲里副知事


 仲井真知事は大会参加を見送ったものの、仲里全輝副知事が会場に姿を見せた。「あんまり少ないとアピールにならない。どういう状況か気になった」と説明した仲里副知事。「雨が降る中、傘やかっぱ姿で六千人参加したというのは、それだけ県民の思いが強いということ。日米両政府も米軍当局もしっかり評価するべきだ」との認識を示した。

 日米地位協定の改正などを掲げたスローガンを「実行委員会は最大公約数的な県民の立場で整理しており、高く評価する」と話す。

 だが、知事が参加を見送った経緯に触れ「県民大会というには参加団体が網羅されていなかった。参加できる条件が整わなかったことは残念だった」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

政府、影響力を疑問視

「不参加で重み変わった」


 【東京】二十三日の県民大会を受け、政府内には「しっかり受け止める」と一定の配慮を示す声がある一方、主催者発表六千人の参加者数や、仲井真弘多知事らの不参加を理由に挙げ、「重みが違ってきた」と、基地問題や日米地位協定の改定問題など、日米間の懸案事項に対する影響は小さいとの見方が支配的だ。

 ある防衛省幹部は、大会決議を尊重する姿勢を示しつつ、仲井真知事や県選出・出身の自民党国会議員らが参加を見合わせたことに、「知事らの不参加で重みが変わった。こちら(政府)の受け止め方も変わる」と、深刻な事態は避けられたとの認識を示した。

 野党の日米地位協定改定案策定など、協定改定をめぐる論議が盛り上がりつつある中、別の関係者も知事や自民党県連の欠席が大会の影響力を弱めたとの考え方で、「誰に言われても、地位協定は変えられない」と、協定改定に対する政府方針に変更がないことを強調した。

 また、ある内閣府幹部は、「よく相談して超党派体制が取れるようにした方が良かったが、主催者側が急ぎ過ぎた」と指摘。協定見直し決議も「今回の事件との直接的な因果関係は弱い。(政府内には)何で協定の話になるのか、という思いはある」と疑問を呈した。


東京でも同時150人抗議集会


 【東京】米兵事件に抗議する県民大会に呼応する緊急行動集会(主催・同実行委)が二十三日、都内であり、約百五十人が「米兵による性暴力を許さない」などと憤りの声を上げた。デモ行進では「基地ある限り安心安全な沖縄はない」と訴えた。一方、米軍北部訓練場のヘリパッド移設に反対する東村高江区の住民らを支援するイベントも中野駅北口広場で開催した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803241300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年3月24日朝刊)

[3・23県民大会]

尊厳をかけた問い掛け


被害者「私は悪くない」

 戦後も六十二年が過ぎ、沖縄の人々はいや応なしに米軍基地との共存を強いられてきた。おびただしい米兵による犯罪、数え上げればきりがない。

 北谷公園野球場前広場で開催された「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」(主催・同実行委員会)では、米軍人らによる凶悪事件を糾弾する怒りの声が広がった。

 悪天候にもかかわらず、大会には約六千人(主催者発表)が参加。肌寒い中で参加者は傘やかっぱで強い雨をしのぎ、熱気を帯びた大会となった。

 今回の県民大会では、神奈川県で米海軍所属の米兵に暴行を受けた被害者の肉声が初めて響き渡った。

 「私は性犯罪の被害者。私は恥ずかしいことありません。私は悪くない」

 オーストラリア人のジェーンさん(仮名)はPTSD(心的外傷後ストレス障害)にさいなまれながらも、黙ってはいられないと沖縄に足を運んだという。被害者の生の悲痛な叫びは大会参加者の心を揺さぶった。

 一九九五年の10・21県民総決起大会の際は米兵による暴行事件に怒った約八万五千人の県民らが結集し、米軍人の綱紀粛正、日米地位協定の見直し、基地の整理縮小―を求めた。

 党派を超えた県民の一致した声が日米両政府をゆるがせ、普天間飛行場の全面返還という日米政府の決断を導き出す契機になったのである。

 しかし、今回は超党派の足並みが乱れた。県政与党の自民党県連が不参加を決定したのに続き、肝心の仲井真弘多知事も参加を見送った。

 県政与党の公明党県本部は大会参加へとかじを取った。本島中北部の基地所在市町村の首長や那覇市長らは立場を超えて、地位協定の抜本改正を求める声に賛同し、大会に参加した。

 地位協定の抜本改正という点では一致しつつも、「被害者への配慮」を最優先したというのが主な不参加の理由だ。しかし、県知事は何を根拠にして日米両政府に要請しようというのか。

 長年の間に、米兵による理不尽な犯罪さえも日常の光景に溶け込み、私たちの人権感覚はすっかり鈍麻したのではないかと、考えさせられる。


対策の「実効性」を問う


 最近の米兵による犯罪は目に余る。女性への性的暴行やタクシー強盗、住居侵入、偽ドル偽造、覚せい剤使用…。米軍が夜間外出禁止令を発令しても事件が続いて発生している。

 イラク開戦から五年を経て、米兵の死者数は約四千人に上る。AP通信によると、米軍の報告書でアフガン戦争以来七年で複数回戦場に行った兵士の四人に一人以上が精神面で問題を抱えていることが明らかにされた。

 興奮して騒いだ後、急に黙り込む、酔うと殺気だった目つきになる―。イラク帰還兵の異常な行動を感じるという県内基地従業員の証言もある。

 出口が見えないまま、長期化する米国の対テロ戦争が影を落とし始めているのではないか。こんな疑念を払しょくすることができない。

 大会では(1)米軍優先の日米地位協定の抜本改正(2)米軍による人権侵害を根絶するため政府はその責任を明確にし、実効ある行動を起こすこと(3)米軍人の綱紀粛正策を厳しく打ち出し、実効性ある具体的な再発防止策を示すこと(4)米軍基地の一層の整理縮小と海兵隊を含む米軍兵力の削減―を要求していくことを決議した。

 「実効性」を重ねて強調しているのは、これまでの防止策には効果がなく、犯罪がとどまる気配がないことに対する県民の不信の現れである。


県民の声を一つにして


 イラク戦争で米国の威信は深く傷ついた。だが、大統領選の行方が注目され、変化の兆しが見えてきた。

 沖縄の保守系議員は軍事安全保障重視の思考にとらわれ、内向きになっていないか。被害を受ける県民の声を代弁するのが重要な務めのはずだ。

 日米両政府は地位協定改正には否定的だ。知事が訪米要請をしても、らちが明かないのは目に見えている。

 この問題への対応を県内の党派対立に矮小化すれば、「現実的な対応」で、振興策と引き換えに被害もやむを得ないという誤ったメッセージになりかねない。

 勇気を振り絞って表に出た被害者の声をしっかり受け止めたい。知事は県民の声を一つにまとめ上げ、主張すべきはきっちりと主張していくべきだ。

 県民は小手先の再発防止策ではなく、抜本的な対策を求めている。爆発寸前の県民の怒りといらだちを日米両政府は真摯に受け止めてもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080324.html#no_1

 

琉球新報 社説

米兵抗議県民大会 人間の尊厳を守れる国に/政府は「痛み」取る責務果たせ 2008年3月24日

 会場に降りしきる雨が、残忍な事件や悲惨な事故で半世紀余にわたり、犠牲や泣き寝入りを強いられた人々の涙雨に見えて仕方がなかった。北谷町で23日に開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」は、主催者発表で約6000人が集まり、理不尽な基地被害への県民の怒りの大きさを見せつけた。

 県民の切なる願いは、憲法がうたう基本的人権が保障され、平穏な暮らしを取り戻したい―そのことに集約されるだろう。広大な基地に万余の米兵が居座る沖縄の現実は、願いから程遠いが、日米両政府は「沖縄の痛み」を正面から受け止め、これを取り除くという責務を果たしてもらいたい。

「治外法権」の現実

 沖縄駐留の米兵らに県民が人権を踏みにじられた例は、枚挙にいとまがない。本土復帰後も凶悪な殺人事件をはじめ、粗暴な犯行が後を絶たない。戦闘機やヘリ墜落など大事故の検証もしかりで、今なお「治外法権」の様相だ。

 1995年秋、沖縄本島北部で買い物帰りの女児が複数の米兵に拉致され乱暴された痛ましい事件では、くすぶり続けた県民の怒りが爆発した。日米両政府に対し、強く異議を申し立てる過去最大規模の総決起大会が開かれ、安保体制を揺さぶった。

 大会あいさつ冒頭で、当時の大田昌秀知事は「行政を預かる者として、本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」と謝罪。高校生代表の女生徒は「やりきれない思いで胸がいっぱい。軍隊のない、悲劇のない平和な島を返して」と訴えた。

 知事の言葉は本来、日米両政府のトップが真っ先に口にすべきことだろう。少女の尊厳も守れない政治家に国防など論じる資格はないと考えるし、国際社会に対して主権国家だと胸を張れまい。

 あれから13年。残念ながら基地沖縄の現実は、さほど変わっていない。米兵らによる事件・事故は相次ぎ、今回の大会開催の契機となった女子中学生暴行事件が起きた。「綱紀粛正」「再発防止」の連呼がむなしく聞こえる。

 しかし、あきらめるわけにはいかない。県民は愚直と言われようが、繰り返し、理不尽な現状からの脱却を訴え続ける必要がある。そうしないと、この小さな島は巨大な軍事基地で人権侵害のるつぼと化し、取り返しのつかない状態になってしまうだろう。

 今回の県民大会では、4点の要求決議が採択された。米軍優先である日米地位協定の抜本改正、米軍による人権侵害根絶への政府の責任明確化と実効ある行動、厳しい綱紀粛正策と具体的な再発防止策の提示、基地の一層の整理縮小と海兵隊を含む米軍兵力の削減―がそれだ。

民意を見誤る恐れ

 これらは県民からすれば極めて当然の要求であり、日米両政府は実現に全力を挙げるべきだ。人権が踏みにじられる状況はこれ以上放置できないし、期限を切って協議してほしい。

 心配な点もある。13年前と違い、大会に知事や県議会議長らの姿が見えなかったことだ。仲井真弘多知事は大会2日前になって「契機となった事件の被害者と家族をそっとしておいたらどうか」などと述べ、参加しない考えを表明した。

 県議会の仲里利信議長も、自民党県連の不参加決定を受ける形で「超党派でなく、議長としても、一県議としても参加できない」と説明した。

 知事や議長の不参加は、返す返すも残念である。今回の大会を野党色が強いと見るなら、与党第一党が参加してこそ、そのイメージも払えるというものだろう。実際には県婦人連や県子ども会育成連絡協など社会教育団体が参加しており、不参加は選挙を控えて勘繰りすぎとの印象が否めない。

 いずれにしろ、知事らの不参加は「沖縄は一枚岩ではない」ととられ、日米両政府から見くびられる恐れがある。沖縄から誤ったメッセージを発信してしまう危険性をはらんでおり、今後、知事が訪米して基地問題を訴えても説得力を欠くことになりかねない。

 ただ、日米両政府も今回の大会を見くびると、民意を見誤ることになる。基地の重圧は尋常ではない。県民の怒りは沸点に達しており、負担軽減の約束が裏切られたとの思いが充満している。両政府は訴えの一つ一つに耳を傾け、抜本的な解決策を示すべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-130421-storytopic-11.html

 

2008年3月24日(月) 夕刊 1面

知事、一定の評価/県民大会

 仲井真弘多知事は二十四日午前、北谷町で二十三日に開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に六千人が参加したことについて、「雨の中でよく集まったと思う」と述べ、一定の評価をした。県庁で記者団の質問に答えた。

 大会で採択された日米地位協定の抜本改正などを求める決議については「スローガンは(以前から)僕も申し上げた。(県の姿勢と)同じだと思う」として、決議の趣旨には賛同する考えを示した。

 日米地位協定の改定に消極姿勢を示す日米両政府に、大会決議が与える影響については「主催者の方もおられるし、ちょっと言いにくい」と述べ、明言を避けた。


     ◇     ◇     ◇     

6千人結集「意義ある」

名護市長


 島袋吉和名護市長は二十四日、雨の中六千人が集まった県民大会について、「あれだけの人が集まって怒りの声を上げたことは意義がある」と評価した。

 大会で、日米地位協定の抜本的改正や米軍人への厳しい綱紀粛正、再発防止などを求めたことについては「米軍は事件が起きるたびに綱紀粛正を言ってきたが、効果は見られない。徹底した綱紀粛正を行い、目に見える形で効果を出してもらいたい。県民の怒りの声は、米軍や日本政府に届いたのではないか」と、徹底した再発防止策の実現と地位協定の改正を求めた。

 県民大会へは前日までに参加を明言し、当日も会場付近まで足を運んでいたが、雨が降り風邪気味だったため、車中でラジオ中継を聞いていたという。


政府消極的「運用改善で」


 【東京】町村信孝官房長官は二十四日午前の定例会見で、米兵事件に抗議する県民大会で決議した日米地位協定改定の要求について、「先般の事件で地位協定で何か支障があったかといえば、その点はなかったと思っており、引き続き運用改善を図っていきたい」と消極的見解を繰り返した。

 高村正彦外相も、同日午前の参院予算委員会で、日米地位協定が世界の米軍駐留国の地位協定より運用改善面で進んでいることを強調し、「これからも運用改善を積み重ねて、機動的に対応していきたい」との考えをあらためて示した。

 一方で県民大会の感想については「県民に多大な負担をかけていることをあらためて強く認識した。米兵の事件・事故の再発防止に取り組んでいかなければならないという決意を新たにした」と語った。山内徳信氏(社民)に答弁した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803241700_01.html

 

2008年3月24日(月) 夕刊 5面

新射撃場に反対決議/金武町議会が全会一致

 【金武】金武町議会(松田義政議長)は二十四日午前の三月定例会で、米軍がキャンプ・ハンセン「レンジ3」付近で予定している最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場建設に反対する抗議決議、意見書、要請決議案をそれぞれ全会一致で可決した。

 決議では「負担の軽減がなされぬまま、米陸軍射撃場建設が強行されたことは町民を愚弄するなにものでもない」と指摘している。

 「射撃場建設の即時中止」、「レンジ4における暫定使用の即時中止と解体撤去」「伊芸地域の米軍基地の全面返還」の三つを求めている。

 意見書のあて先は首相、外相、防衛相など。抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官など。

 同議会が射撃場建設に反対する抗議決議案を可決するのは昨年八月に続き二回目。今月十五日には、同町伊芸区が同様の抗議決議文を決議している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803241700_06.html

 

2008年3月25日(火) 朝刊 1面

洗機場移設 大幅遅れ/嘉手納基地大・中型用

年頭に代替着工

 【東京】住宅地への洗浄水飛散が問題となっていた米軍嘉手納基地の洗機場移設をめぐり、大・中型機用の代替施設の着工が約半年遅れ、予定していた年度内の完成が大幅にずれ込むことが二十四日、分かった。関係者によると昨年七月の着工予定が、米側の意向で設計が直前に変更されたほか、立ち入り手続きが大幅に遅れたことで、工事開始が今年一月にずれ込んだことが要因という。(東京支社・島袋晋作)

 防衛省の担当者は、「移設は地元のニーズも高い。工事を急ぎ、なるべく早く完成させたい」と説明。八カ月間を予定していた工期を約二カ月短縮し、七月ごろの完成を目指しているが、その間は現在の洗機場が使われることになる。

 現在の洗機場は、嘉手納町屋良の住宅地に近接する海軍駐機場内にあるが、風向きによって大量の水しぶきが住宅地に飛散し、住民の苦情が相次いでいた。

 日米特別行動委員会(SACO)最終報告に基づき、海軍駐機場とともに沖縄市側へ移設されることが決まっていたが、移設完了は二〇一〇年度以降となる見込みとされた。このため、嘉手納町が洗機場の移設を切り離し、早急に実施するよう日米に働き掛けて作業が始まった経緯がある。

 このうち、F15戦闘機などを対象とした小型機用の洗機場は、滑走路南側の空軍駐機場エリアに〇六年に完成し、すでに運用が始まっている。

 一方、移設が遅れている大・中型機用の洗機場は嘉手納町役場から南に約八百メートル離れた地区に移設する計画。

 KC135空中給油機などを対象にしており、ポンプ棟を一棟建設するほか、洗浄水を噴射するノズルや貯水槽などを含んだ洗機施設を整備する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251300_01.html

 

2008年3月25日(火) 朝刊 2面

首相、地位協定改定に否定的/衆院予算委で初見解

 【東京】福田康夫首相は二十四日の参院予算委員会で、日米地位協定の改定について「考えていない。地位協定がある中で、いかにして運用改善するかということに力を入れている」との見解を示した。福田首相が公式の場で地位協定改定に否定的な姿勢を示すのは初めて。

 高村正彦外相も、同日午前の同委員会で、日米地位協定が世界の米軍駐留国の地位協定より運用改善面で進んでいると強調し、「これからも運用改善を積み重ねて機動的に対応していきたい」との考えをあらためて示した。山内徳信氏(社民)への答弁。

 一方高村氏は、二○○六年十月から○七年九月までの米軍兵士による性暴力事件が、二千六百八十八件に上ると指摘した米国防総省の報告に関する井上哲士氏(共産)の質問に対し、「性犯罪防止の取り組みの一環として、性犯罪の透明性をできるだけ高めるために行われているものと承知しており、(件数を)一概に論ずることは困難」と指摘。

 これに対し井上氏は「事件が多いからアメリカは対策を取っている。それを一概に論じれないというのはおかしい。きちんとした認識を持つ必要がある」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251300_05.html

 

2008年3月25日(火) 朝刊 27面

そそり立つサンゴの壁 名護市大浦湾 WWFJ調査

 【名護】名護市大浦湾で二十四日、衛星利用測位システム(GPS)測量や潜水によるアオサンゴ群落の形状、分布、環境調査が行われた。同群落は昨年九月に発見された。調査は世界自然保護基金(WWF)ジャパンが初参加し、二十二日から行われている。

 目崎茂和南山大学教授は「内湾にこれだけのサンゴ群落があるのは珍しい。また十数メートルもそそり立った壁を形成しているのは見たことがない。形状的には世界でもまれではないか」と群落の希少性を強調。

 沖縄リーフチェック研究会の安部真理子会長は「普天間飛行場代替施設の建設が始まると海流が変わる恐れがあり、赤土も発生する。群落の生態系に影響がないわけではない」と同湾周辺の動きを危惧した。

 調査を総括したWWFジャパンの花輪伸一さんは「今回得たデータは大浦湾の三次元マップ作成や、市民版アセスを正しく行うための基礎資料としたい」と意気込んだ。

 調査は二十四日で終了した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251300_06.html

 

2008年3月25日(火) 朝刊 2面

「修学旅行に配慮を」/県議会特別委

要請決議案提出へ

 県議会の米軍基地関係、少子高齢化対策、観光振興・新石垣空港建設促進の特別委員会が二十四日、開かれた。観光・新石垣委では、四月からの航空運賃値上げに伴う本土修学旅行客への影響を考慮し、航空会社へ配慮を求める決議議案を本会議に提出することを決めた。

観光・新石垣


 観光振興・新石垣空港建設促進特別委員会(国場幸之助委員長)は、航空四社に修学旅行客への影響が出ないよう、団体割引料金の設定などで配慮を求める決議案を議員提案で提出することを決めた。四月一日からの航空運賃値上げで修学旅行の減少傾向がさらに進むとの懸念があるためで、各委員連名で二十六日の本会議に要請決議案を提出する。

 県の有識者委員会が導入の是非を検討しているカジノについて、仲田秀光観光商工部長は「(県への導入が決まった場合)県内の人を入れないなどの手法も考えている」と述べ、青少年などへの影響を防ぐため、何らかの入場制限を検討する意向を示した。外間久子氏(共産)との質疑で述べた。


少子高齢対策


 少子高齢化対策特別委員会(吉田勝廣委員長)は、二〇〇八年度県予算の保育関係事業費の削減について審議した。

 同関係事業費では(1)認可外保育施設認可化促進事業の休止(2)地域子育て支援拠点事業の補助基準額10%減額(3)センター型からひろば型への移行による削減―などについて、県私立保育園連盟から削減しないよう陳情が出ている。赤嶺昇氏(維新の会)は「少子化対策に逆行している」と批判した。

 伊波輝美福祉保健部長は財政難の中で厳しい予算編成を強いられたと説明。一方で認可外保育園への米代支給新設などを挙げ「全体として保育費関連予算は6・9%伸びた」と成果を強調した。

 赤嶺氏は「認可外保育園への米代支給の芽出しは評価するが、子ども一人当たり十一円の額は支援としてあまりにも少なすぎる。増額が必要」と述べた。


米軍基地関係


 米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)は、防衛省が嘉手納基地周辺の騒音測定調査(コンター見直し作業)を実施している件で、新嘉手納爆音訴訟原告団(仲村清勇会長)が対象地域の拡大を求めている陳情について審議した。

 県側は、政府が二十八年ぶりに進めている見直し作業について、渉外知事会を通して、防音工事対象区域の拡大を要請していると説明。また県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)を通じ、住宅防音工事の助成制度の拡充拡大を要請していると述べた。

 また防衛省が二〇〇六年までに厚木飛行場(神奈川県)周辺の第一種区域を見直した件について報告。対象区域面積が計約七千七百ヘクタールから約一万五百ヘクタールに増加、対象世帯も十四万七千世帯から二十四万四千世帯に増加したと説明した。金城勉氏(公明)への答弁。

 二十三日の県民大会について、上原昭知事公室長は「六千人の参加は一定の成果があったと思う」と評価。知事の不参加について、「県民の声をくみ取ることはいろんな手法で可能。こういう大会や県議会などあらゆる場でくみ取って政府や米軍にぶつけていく」と述べた。嘉陽宗儀氏(共産)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251300_07.html

 

2008年3月25日(火) 夕刊 1面

地位協定改定案 野党3党が合意

週明けにも政府要請

 【東京】日米地位協定の改定案をめぐる民主、国民新、社民の野党三党の実務レベルによる第三回会合が二十五日午前、都内で開かれ、米軍の基地使用計画提出の期間など相違のあった複数の項目で合意し、成案の概要をまとめた。

 今後、文言を擦り合わせ、三党幹事長クラスが二十七日に正式合意する。三十一日以降に政府への要請行動を展開する予定。民主、国民新、社民の三党は、米軍人・軍属の基地外居住に関し、外国人登録法を義務付けることや、起訴前の身柄引き渡しへの同意―などで一致。施設返還時の原状回復義務でも、環境汚染の浄化は米国が責任を負うとすることも確認した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251700_02.html

 

2008年3月25日(火) 夕刊 1面

「県民の思い受け止める」/沖縄相、県民大会で

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十五日午前の閣議後会見で、二十三日に開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」について、「県民の思いを重く受け止めなければいけない。政府が打ち出した再発防止策をできるだけ早く具体化し、実施にこぎ着けることが最大の役割だ」と述べた。

 さらに「政府全体として、従来の防止策の趣旨が貫徹されていたか検証することも必要」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251700_03.html

 

2008年3月25日(火) 夕刊 5面

自衛隊「共同使用を」/ごみ搬入道 倉浜組合に申し入れ

 【沖縄】沖縄市にある倉浜衛生施設組合が旧東恩納弾薬庫地区内で建設中の新焼却炉へのごみ搬入道について、沖縄防衛局と自衛隊が、同地区内で建設中の射撃場への進入路に利用したいと、申し入れていたことが二十五日までに分かった。同組合の運営委は結論を出していない。

 二十四日の市議会二月定例会で、普久原朝健議員が「補助金がおりたかもしれないのに共同使用の提案をけったため、(ごみ搬入道路の建設費が)市民の負担になった」などと指摘。

 島袋芳敬副市長は「管理者(沖縄市、宜野湾市、北谷町の首長)を中心に防衛庁に(ごみ搬入道路の)補助金を要請したが、該当しないとのことだった。二市一町で整備することになり、その搬入路を自衛隊が使わせてほしいと申し入れがあった」とし、共同使用と道路建設の補助金は別問題と説明した。

 新焼却炉建設のために現在利用している米軍パイプラインは、ごみ搬入道路としての使用を米軍に断られたため、同組合が独自でごみ搬入道路(約三百九十メートル)を建設している。事業費は四億九千万円。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200803251700_04.html

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