米側、県外移設は「不可能」/反対決議県議要請 新基地建設 野党4党に反対訴え/県議会要請団 沖縄相は林幹雄氏 米原潜放射能漏れ/4カ月後発覚、渦巻く不信 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月30日から8月3日)

2008年7月30日(水) 朝刊 2面

米側、県外移設は「不可能」/反対決議県議要請

 【東京】県議会の野党五会派の代表は二十九日午後、在日米国大使館、在日米軍司令部をそれぞれ訪れ、県議会六月定例会で可決した名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議を手渡し、同建設計画の撤回を求めた。米側の担当者は「作戦上沖縄以外への移設は不可能」(司令部)、「海兵隊のグアム移転とパッケージ」(大使館)などと従来の否定的な姿勢を崩さなかった。

 新里米吉団長ら要請団は「基地の固定化や環境破壊につながる新基地建設には断固反対し、世界に誇れる自然環境後世に残し引き継ぐことこそが県民の責務」とする決議文を提出し、「決議は民意だ」と建設計画の撤回を要求。

 米国大使館で対応したレイモンド・グリーン安全保障政策課長は「普天間飛行場の移転は、日米両政府が合意した在日米軍再編最終報告で、在沖海兵隊のグアム移転、嘉手納以南六基地の返還とパッケージとなっている」と理解を求めたという。

 横田基地の在日米軍司令部では、企画・政策担当のバーンサイド中佐が対応。(1)充実した日米安全保障関係は日本の安全のために必要(2)普天間飛行場は抑止力のために必要(3)普天間飛行場周辺の県民に配慮して辺野古移設を決めた(4)米軍再編は最終的に基地を減らすものとして県民のためになる―と指摘したという。

 これらに対し、要請団からは「米軍再編は県民の意思を無視して日米両政府が合意した。それを押しつけられている県民は納得していない」などの意見が上がったが、両機関の担当者は「責任者に伝える」と述べるにとどめたという。

 要請団は三十日、衆参両院議長あてに同様の内容の意見書を提出。そのほか、野党各党の幹部らにも要請する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301300_06.html

 

2008年7月30日(水) 朝刊 2面

米の禁止区域は「厳格」/宜野湾市長、ホノルル市助役から情報収集

 米軍普天間飛行場の早期返還や危険性除去を要請するため米国ハワイ州を訪問中の伊波洋一宜野湾市長は二十九日(現地時間二十八日)、ホノルル市のウェイン・ハシロ助役を訪ね、米軍と住民との関係や軍への要請方法などについて意見交換した。

 宜野湾市によると、ハシロ助役はホノルル市が年に四回、騒音など基地から派生する問題について軍と話し合う場を設けていることを説明。海兵隊や陸、海、空軍の四軍すべてが地域住民との定期会合を開いていることにも触れ、「通常は住宅地上空で飛行訓練は行われない。特別な訓練の場合は軍から住民へ事前に告知がされる」と述べた。

 普天間飛行場のクリアゾーン(利用禁止区域)に約三千六百人が生活する宜野湾市の現状を聞き、「ハワイでは危険な地域への住宅の建築を許可することはあり得ない。日米がどのような協議をしたか分からないが、米本国ならば軍主導で対策を講じる」と米軍の対応の違いに驚いたという。

 面談後、伊波市長は「米本国ではクリアゾーンが認知され、厳格に守られていることが明確になった。同時に、沖縄では住民がないがしろにされていることもはっきりした」と述べた。

 要請団は三十日(現地時間二十九日)、米国連邦議会議員のニール・アバクロンビー下院議員事務所やハワイ大学沖縄センターを訪れる予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301300_07.html

 

2008年7月30日(水) 朝刊 24面

沖縄を極める/検定委が公式ガイド発刊

 十月十三日に実施される第一回「沖縄大好き検定」を前に、同検定の公式ガイドブック(沖縄大好き検定委員会編、ぴあMOOK)がこのほど発刊された。沖縄の自然、歴史、文化の各分野を十二ジャンルに分け、「首里城」「沖縄学」「ひめゆりの塔」などの解説や重要項目を付した内容。

 同検定の阿南満三事務局長は「読んで知識が身に付く内容。意外と知らないことが多く、あらためて沖縄のことが勉強できる」と話している。

 ガイドブックは二百五十ページ余りの分量。本番の検定の問題の約70%が同書から出題される。監修には検定委員会の尚弘子氏(委員長)、田名真之氏(委員)が当たり、巻末には琉球・沖縄の略年表や検定の想定問題も収められている。ガイドブックの問い合わせはぴあ、電話03(3265)1424。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301300_08.html

 

2008年7月30日(水) 夕刊 5面

宜野湾議会が決議/普天間危険除去

 【宜野湾】宜野湾市議会(伊波廣助議長)は三十日午前、臨時会を開き、米軍普天間飛行場の危険性除去と早期返還を求める意見書を全会一致で可決した。八月一日に与野党議員十人で構成する要請団が県、四軍調整官、沖縄防衛局などに要請行動を展開し、同五日は上京して外務省、防衛省に危険性除去を訴える。

 同議会の危険性除去、返還を求める意見書を可決するのは二〇〇六年三月以来。議会運営委員会で意見書案提案を協議、臨時会を開いた。

 意見書は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)返還合意から十二年が経過しても二〇〇四年八月に沖縄国際大学で米軍ヘリ事故が起きるなど、同飛行場の危険性が放置されていると強調。今年六月の普天間爆音訴訟で同飛行場の騒音が違法と認定されたことにも触れ、「いつ大惨事を引き起こすか予断を許さない状況での飛行場運用を放置することは許されない」とし、危険性除去と早期返還を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301700_03.html

 

2008年7月30日(水) 夕刊 4面

参院議長「努力する」/辺野古新基地反対意見書

 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設計画撤回などを求め、要請行動を展開する県議会野党会派の要請団は三十日午前、参議院に江田五月議長を訪ね、六月定例会で可決した「辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」を手渡し、理解を求めた。

 江田議長は「県民の多大な苦労を忘れるわけにはいかない。県民の中には本土とどうしてこんなに格差があるのかという沈痛な気持ちがあると思うので、基地問題を含めて努力していきたい」と述べた。

 要請団はそのほか六月定例会で可決した「後期高齢者医療制度の廃止等に関する意見書」を提出。江田議長は「日本中で高齢者を中心に疑問の声が上がっているが、議長の立場としては、国会で議論を深めてほしいし、皆さんの中でもしっかり議論してほしい」と述べるにとどめた。

 要請団は同日午後、民主、共産、社民、国民新の野党四党の幹部と面談し、普天間飛行場の移設計画の撤回や後期高齢者医療制度の廃止に向けた協力を求める予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301700_07.html

 

2008年7月30日(水) 夕刊 4面

うるま議会 抗議決議/原潜寄港年間最多

 【うるま】うるま市議会(島袋俊夫議長)は三十日午前、臨時会を開き、米原子力潜水艦のホワイトビーチ寄港が年間最多の二十六回に上ったことについて「長年、市民を不安に陥れている行為は人権軽視だ」とする抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。

 抗議決議は「例年に比べ、ホワイトビーチへの寄港頻度が突出している状況は異常だ。原因については『運用上の理由』で明らかにされないままだ」と日米両政府を批判。その上で「いかなる理由があるにせよ、原子力を用いるすべての軍艦を寄港させないよう要求する」とし、原潜寄港の禁止、寄港理由について明確に説明する―ことなどを求めている。あて先は首相、防衛相、在日米軍司令官、四軍調整官など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301700_08.html

 

2008年7月31日(木) 朝刊 2面

新基地建設 野党4党に反対訴え/県議会要請団

 【東京】県議会野党会派の要請団は三十日午後、都内で民主党の鳩山由紀夫幹事長と面談し、六月定例会で可決した「辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」、「後期高齢者医療制度の廃止等に関する意見書」を手渡し、今後の協力を要請した。

 要請団は「参院での決議は、全会一致は困難だろうが、何らかの形で民意を反映できるようにお願いしたい」と要望した。

 鳩山氏は「基地を国内に常時置く必要はない。普天間飛行場の返還を急ぐとともに、県外や国外に移設地を早く見つけるべきだ」と持論を展開したが、意見書の取り扱いについては「考えさせていただく」とするにとどめた。

 要請団は、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の自見庄三郎副代表らとも面談し、同様に要請した。

 三十一日は外務省、防衛省、厚生労働省、内閣府などを訪ね、意見書を手渡す予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807311300_04.html

 

2008年7月31日(木) 朝刊 24面

日弁連が中止要求/泡瀬埋め立て

 日本弁護士連合会(宮〓誠会長)は、沖縄市や県、国が進める泡瀬干潟埋め立て事業の中止を緊急に求める意見書を二十八日、内閣府に提出した。県、沖縄市にも同日付で郵送した。三十日、同会公害対策・環境保全委員会委員が県庁で会見し、公表した。

 意見書では、護岸内への土砂搬入が始まり、埋め立てが本格化していることに「工事が進めば、海草の消滅、サンゴの死滅など生態系に回復困難な損害を与える」と危機感を示し、事業の即刻中止を求めた。

 理由として(1)泡瀬干潟がラムサール条約登録湿地となる基準を満たす国際的に重要な湿地である(2)環境アセスメント後に希少種が発見されている(3)事業がバブル期に策定され、二〇〇一年度以降の企業進出予測の資料がなく、経済的な合理性にも疑問が残る―などと指摘した。

 また東門美津子沖縄市長が昨年示した「第一区域は継続、第二区域は推進困難」との方針に対し、第一区域の必要性の根拠となる市の土地利用計画が、第二区域の存在が前提になっていることや、計画変更に伴う新たなアセス予定がないことを批判した。

 意見書提出は二〇〇二年に次いで二度目。同連合会が今年三月に行った現地聞き取り調査などを基に、今月十八日の理事会で採択された。

※(注=〓はへんが「山」でつくりが「竒」)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807311300_08.html

 

2008年8月1日(金) 朝刊 2面

新規に島尻養護改築/09年度国庫支出金要請

 県は三十一日の庁議で、二〇〇九年度国庫支出金の要請方針を決めた。旧軍飛行場用地の対策事業について、特別調整費の活用による事業費の確保を盛り込んだ点が特徴だ。沖縄振興計画の期間内(一一年度まで)に事業完結する考えを示している。主な新規事業としては、糸満市・豊見城市清掃施設組合の灰溶融施設の整備、老朽化している島尻養護学校の増改築など、ハードを中心に十二事業を挙げた。来週にも仲井真弘多知事らが上京し、内閣府に要請する。

 八月末の各省庁への概算要求までに、雇用対策や観光振興、IT関連分野などで新規事業が盛り込まれるとみられる。

 要請では、沖縄振興計画に基づく諸施策を総合的に推進し、「中長期にわたる沖縄の将来像を展望しつつ、残された課題への対応と発展に向けた取り組みを力強く推進する」と強調。高率補助など特例措置の継続も求めている。

 新たに盛り込んだ旧軍飛行場用地問題の対策については、「同用地の存在によってコミュニティーが分散され、地域の伝統・文化の進展が阻害された地域で活性化を図る」と特別な振興策の必要性を強調。特別調整費の枠内での対応を要請する。

 新規事業では、糸満市・豊見城市清掃施設組合で灰溶融施設を整備する。高温で焼却灰を処理して生成される「溶融スラグ」は、建築資材として再資源化できるという。また、島尻養護学校の増改築、竹富町立竹富診療所に勤務する看護師の住宅を新たに整備し、医療環境の維持を目指す。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808011300_04.html

 

2008年8月2日(土) 朝刊 27面

増す負担 切実訴え/改造内閣

 「年金を滞りなくもらえる体制を」「安心して出産できるように」「新基地建設はいらない」。福田首相が一日、初めて断行した内閣改造。年金問題や医療格差、食料品・燃料の値上げに加え、基地の過重負担にあえぐ県民からは、切実な訴えが相次いだ。

 那覇市の下地勇さん(65)は六月から年金をもらい始めたばかり。「年金が、滞りなく受け取れる体制を整えてほしい」と求める。留任が決まった舛添要一厚労相については「言っていることとやっていることが違い、がっかりすることも多いが、継続的に責任を持って問題に対応してほしい」と要望した。

 那覇市内で買い物をしていた同市の会社員、儀間真弓さん(34)は、「ガソリンはまだしも、食料品の値上がりは事前に対策が打てたのではないか。もっと庶民の視点に立ってほしい」と訴えた。「沖縄担当相がしょっちゅう変わるのも問題。沖縄を理解してくれる、地元の人がなればいいのに、と思う」と話した。

 主婦の宮城礼子さん(58)=名護市=は、医療の地域格差是正を望む。「娘が出産するとき、中部の病院まで行き、移動に時間がかかって大変心配だった。安心して出産できる環境になってほしい」と話した。

 公務員の内間和昭さん(42)=名護市=も「子どもが三人おり、北部の医療過疎化を懸念している。自然を壊し、米兵の犯罪が増える辺野古への新基地建設は反対。沖縄担当相には基地の負担を理解し、離島・へき地の事情に配慮した政治を行ってほしい」と話した。

 栄養士の屋良智子さん(28)=同=は「職業柄、限られた予算の中で栄養あるものを作る努力をしているが、最近の値上げには参っている。北部病院の産婦人科問題など、地方行政だけでは解決困難なものに取り組み、女性に優しい政治をしてほしい」と期待した。

 那覇市の会社経営、竹内博さん(62)は、「女性が少ないし、新鮮味に欠け、官僚に流されている感じがする。国民の一人一人が好景気の実感を持てるようにしてほしかった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021300_01.html

 

2008年8月2日(土) 朝刊 1面 

沖縄相は林幹雄氏

 【東京】福田改造内閣で防衛相と沖縄相に決まった二人は一日午後、首相官邸で相次いで会見した。

 防衛相に就任する林芳正氏は米軍普天間飛行場の移設について「普天間周辺の危険性除去や航空機の騒音軽減を図るなど、県民の負担を軽減させるという意味で、ぜひともやっていかなければならない」と述べ、解決に意欲を示した。

 林氏は「(普天間問題は)協議会を設けて何回も協議を重ねてきた。協議会の下には二つのワーキングチームもつくって事務方にも入ってもらってやっている。その中で誠意を持って進めるというのが基本的なスタンスだ」との見解を強調した。

 一方、沖縄相に決まった林幹雄氏は、沖縄問題に対する姿勢について「自立型経済の構築に向けた取り組みを進めるとともに、在日米軍施設の集中による県民の負担を軽減したい」と述べた。

 普天間飛行場移設問題についても「全力を尽くす決意だ」との見解を示した。


     ◇     ◇     ◇     

空港拡張へ知事期待感


 仲井真弘多知事は一日、内閣改造に伴うコメントを発表し、沖縄担当相に就任する林幹雄氏に沖縄科学技術大学院大学の設置に向けた取り組み強化や、那覇空港拡張整備の早期実現などへの期待感を強調した。

 「できるだけ早い時期に直接お会いしたい」として、早期の会談に意欲を示した。

 観光・情報通信産業のさらなる振興や雇用の安定、新石垣空港と伊良部架橋の整備促進なども挙げ、「沖縄振興計画に基づく諸施策の推進に尽力賜りたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021300_02.html

 

2008年8月2日(土) 朝刊 2面 

米海兵隊訓練受け入れ確認/下地氏要請に比大統領

 下地幹郎衆院議員は一日、フィリピン・マニラ市内のマラカニアン宮殿(大統領府)でアロヨ大統領と会談し、在沖米海兵隊の訓練移転の受け入れを要請した。下地氏によると、アロヨ大統領は「受け入れたい。フィリピン側に何も問題はない」との見解を示した。下地氏は二〇〇二年にも同様にアロヨ大統領と会談したが、同大統領は「受け入れるという意見は変わっていない。法的にも最高裁の見解を確認しており、問題ない」と説明したという。

 その上で大統領は〇三年六月、小泉純一郎元首相との首脳会談の際、「小泉総理から在沖米海兵隊の話を持ち出した」と明かした。一方で同年十月の米比首脳会談でブッシュ大統領は「日本政府から聞いていない」と述べたと言い、アロヨ大統領は日米比で訓練移転の構想を共有できていない現状を指摘。実現に向けて「日本政府が米政府に実務的に話し掛け、具体的に進めるべきだ」と述べたという。

 下地氏は「県民の負担軽減につながる新たな米軍再編が生まれる」と会談の手応えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021300_04.html

 

2008年8月2日(土) 夕刊 5面

「微量でも看過できぬ」/米原潜放射能漏れ

うるま市長 海水検査を要望

 米国のテレビ報道で二日、明らかとなった米海軍原子力潜水艦の放射能漏れ。米側から通報を受けた外務省は、報道されるまで原潜が寄港していた長崎・佐世保に連絡していなかった。「なぜ公表しないのか」。米軍施設がある各地の市民たちは不信感を募らせた。神奈川・横須賀に配備される原子力空母でも五月に火災が発生したばかりで、専門家は規律の緩みを指摘した。

 放射能漏れを起こした米原子力潜水艦ヒューストンが沖合に一時停泊していたうるま市の知念恒男市長(67)は二日、「重大な問題で看過できない。放射能漏れは微量でもあってはならないことだ」と懸念を示した。

 県基地対策課によると、ヒューストンは三月十二日に補給などのため米海軍基地のホワイトビーチ沖に二十四分間停泊。その際の放射能調査は平常値だったという。

 ホワイトビーチでは今年に入って原潜の寄港回数が急増。過去最多だった昨年の二十四回をすでに上回る二十六回を記録。うるま市議会は七月三十日、原潜寄港に反対する抗議の決議と意見書を可決している。

 知念市長は「放射能漏れや海洋汚染が起きたとしたら重大な問題だ。微量であっても(一度)看過されれば歯止めが利かなくなってしまう」と指摘。急増するホワイトビーチへの寄港に関しても「米軍は回数急増についての説明責任を果たし、海水の検査をきちんと行ってほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021700_01.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 1・27面

米原潜放射能漏れ/4カ月後発覚 渦巻く不信

発表信用できない/沖縄でも・・・

 米原子力潜水艦ヒューストンが佐世保基地で放射能漏れを指摘されたのは、うるま市の米海軍ホワイトビーチに寄港してから、わずか十日後だった。四カ月後の発覚と通報の遅れ。「米軍も日本政府も信用できない」、「沖縄でも事故があったのではないか」。生活を脅かす「危険な兵器」と隣り合わせの日常を、あらためて突き付けられた地元では、怒りと不信感が渦巻いた。

 「重大な問題で看過できない。放射能漏れは微量でも、あってはならないことだ」。知念恒男うるま市長は強い懸念を示した。原潜の寄港回数が過去最多を更新、市議会は三十日に抗議決議をしたばかり。「米軍は回数急増の説明責任を果たし、海水検査をきちんと行ってほしい」と求めた。

 市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「米軍が事実を隠していたことは問題。外務省の公表遅れを見ても、もっと覆い隠された部分はたくさんあるだろう」と怒る。「寄港反対を求め、事実を明らかにしたい」とし、議会として抗議を含めた今後の対策を検討する予定。

 ホワイトビーチを抱えるうるま市平敷屋区の西新屋光男自治会長は、「入港のたび放射能漏れが気になる。安全に生活するために、米軍はちゃんとした情報を公開してほしい」と訴えた。

 県平和委員会の大久保康裕事務局長は、ヒューストンが米政府から核攻撃の認証を受け、特殊部隊と連動して動く「特別な原潜」と指摘。県内基地がすでに米軍の即応体制に組み込まれているとし、「憲法より日米安保、住民生活より軍事を優先する体質が、危険物質のずさんな管理、情報隠蔽を生む」と批判した。

 平和運動センターの山城博治事務局長は、横須賀に入港予定だった米原子力空母の火災を例に「日米政府の発表をうのみにできない。県や地方自治体、第三者機関が調査するべきだ」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

米原潜放射能漏れ/県、迅速な説明要望


 米海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦ヒューストン(六〇八二トン)から微量の放射性物質を含む水が漏れていた問題で、外務省北米局の西宮伸一局長は二日、仲里全輝副知事に対し電話で冷却水漏れの状況を説明した。仲里副知事は、情報提供を速やかに行うよう要望した。

 西宮局長はハワイで冷却水漏れが検出されたが、寄港した佐世保基地(長崎県)や、うるま市勝連のホワイトビーチで漏れた事実は確認できておらず、漏れていても微量で人体や環境に影響はないと説明したという。

 仲里副知事は「沖縄でも長崎でも何の異常も見つかっていないと聞いた」とした上で、「微量でも漏れたのは管理に問題があるのではないか。こういう場合は迅速に説明してほしい」と述べ、米海軍の管理と外務省の通報態勢に疑問を投げ掛けた。

 米軍によると、ヒューストンは七月にハワイで行った定期検査で水漏れが発覚し、放射性物質が検出された。三月十二日午後にホワイトビーチにも入港し、二十四分間沖合に停泊。その後、佐世保基地に寄港した。ホワイトビーチへの原潜寄港年間回数は今年七月末で、過去四十年間最多の二十六回に達している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_01.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 1面

白化の危機免れ/宜野湾沖にサンゴ群落

 一九九八年に沖縄のサンゴ礁を壊滅的状態に陥れた白化現象。その影響を免れ、成長し続ける大規模なサンゴ群落が宜野湾市沖の「大山長瀬」で見つかった。

 同群落を保全しようと、NPO法人県ダイビング安全対策協議会が二日、調査を行った。かなり潮の流れがあったが、二回の潜水で、根全体を覆う長さ九十メートル余りのサンゴを撮影。一メートル四方に仕切り、種類などを調べた。

 調査に同行した琉球大学熱帯生物圏研究センターの酒井一彦准教授は「とても貴重な群落。サンゴの大きさや枝ぶりから白化以前の可能性が極めて高い。卵の供給源になっている」とし、早い潮流がサンゴを白化から守ったのではと推測する。浅場から深い場所までサンゴが密生する景観に、近年沖縄本島では少なくなった「沖縄本来の海だ」と強調し、保護を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_02.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 2面

沖縄関係大臣 初の閣議後会見

沖合移動は困難/林芳正防衛相

 【東京】林芳正防衛相は二日の初閣議後の会見で、米軍普天間飛行場の代替施設の沖合移動について「今の政府案は、安全性や騒音、環境への影響など、いろいろ考慮しながら米側と合意したもの。合理的な理由なく変更するのは難しいと思っている」と述べ、環境影響評価(アセスメント)の結果を踏まえて判断するとの従来見解を踏襲した認識を示した。

 その上で「それをきちっと詰めていくために協議会を八回やっている。その下にワーキングチームもつくり、さらに詳細を詰めていく。地元の方も入っているので、きちっと詰めた議論をしていきたい」と述べた。また、沖縄視察については「政治家個人としては委員会の視察等で沖縄に行っており、ある程度、沖縄の感じは肌で分かっているつもりでいる。行ってただ勉強するという立場でなくなったので、そういうことも踏まえてどうしたらいいのか考えたいと思う」と述べるにとどめた。


国際約束 変えられない/高村正彦外相


 【東京】外相に留任した高村正彦氏は二日の閣議後会見で、米軍普天間飛行場代替施設の沖合移動について「よほど合理的な理由がない限り、国際約束を安易に変えることはできない。私が合理的であると思う理由がないと、相手方を説得することだってできない」と述べ、自身が納得しない限り困難との見解を示した。高村氏は「絶対にノーというわけではないかもしれない」と沖合移動の可能性に含みを持たせつつ、「日米合意案は、地元の要望を受けた上で、米側と交渉した。自然環境、生活環境、実行可能性を総合的に判断して国際約束ができている」と否定的な見解を重ねて強調した。

 一方、普天間飛行場の危険性除去については、「(昨年八月時点で)すでに精いっぱいのものを出している」と、昨年八月に日米合意した危険性除去策を指摘。日米合意の履行を日本側が検証した上で、必要があれば米側と交渉するとの立場を示した。


那覇空港増設 国交省と協力/林幹雄沖縄担当相


 【東京】林幹雄沖縄担当相は二日、初閣議後に会見し、那覇空港の滑走路増設について「地元の声を十分に聞き入れながら、国土交通省とも積極的に進めていきたい」と述べ、現滑走路からの間隔を千三百十メートル以上離すことを求めている県の要望に配慮する考えを示唆した。

 沖縄訪問については「百聞は一見にしかずということもあり、一日も早く訪れたい。できれば八月は国会がないと思うので日程調整したい」と述べ、今月中の来県に意欲を見せた。

 米軍普天間飛行場の移設問題に関して「基本的にわれわれは地元と政府との橋渡し役だと認識している」との見解を示した。

 その上で、二〇一四年の完成目標に向けて「地元の意見を真摯に受け止めながら、誠意を持って協議を進めていきたい」と述べた。

 県内の振興策については「沖縄科学技術大学院大学の構想を進めていくことと同時に、インフラの整備を着実に進めていきたい」との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_03.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 2面

伊波宜野湾市長の訪米/要請効果に疑問の声

 米軍普天間飛行場の危険性除去を要請するため七月二十八日から私費で米ハワイ州を訪れていた宜野湾市の伊波洋一市長が一日、帰国した。現地では州議員や市民団体と意見交換したが、同飛行場を管轄する米太平洋軍総司令部への直訴は門前払いに終わった。一方、同市議会は同日、超党派の要請団で県や沖縄防衛局を訪ね、危険性除去と返還を求めたが、従来通りの回答しか得られていない。市長と市議会がそれぞれの思惑で要請活動を続けるが、市民からは、効果を疑問視する声も上がっている。(中部支社・銘苅一哲)

 今回の訪米で市長は、出発前に司令官の面談を断られていた。現地でも要請書の受け取りを拒否されたものの、伊波市長は「米軍が無視したいほどの問題。今後もクリアゾーンに焦点を絞り矛盾を追及する」と今後も安全基準の面から米側に対して早期返還を求めていく考えを強調した。

 一方、市議会は七月三十日に飛行場問題の解決を求める意見書を全会一致で可決。一日は超党派で県内要請行動を展開し、五日からは上京して政府や自民、公明などの政党へ直訴する予定だ。

 伊波市長の訪米の効果を疑問視する市議会野党はこれまで、三月定例会で市が提案した訪米費用を募る基金条例を否決。六月定例会でも提案された一般会計補正予算からも訪米予算を削除し、伊波市長は私費で渡米した。

 ある野党議員は「市長は米側への要請よりも日本政府への働き掛けに力を入れるべきだ」と批判。同時に「危険性除去は全市民の願い。市長の訪米を否定したままでは市民に示しがつかないため、議会での要請行動を計画した」と明かす。

 早稲田大学の江上能義教授(行政学)は「市長と議会がバラバラに行動するのでは要請先へのインパクトは小さい」と指摘。両者の政治的な立場の違いに理解を示した上で、「市民の代表ならば壁を越えて協力し、共に行動を起こすべきだ」と要請行動の在り方に疑問を投げ掛けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月3日朝刊)

[福田改造内閣(下)]

「県外移設」の道を探れ


 福田改造内閣で沖縄政策に何らかの変化は出てくるだろうか。ほとんどないというのが大方の見方ではないか。

 福田康夫首相には当初から、過重な米軍基地の負担軽減や経済振興策にかける「特別な思い」が感じられず、改造内閣の沖縄関係閣僚の布陣で、この姿勢が変わったとは見えないからだ。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸域への移設計画で、政府と県、地元の協議会を主宰する官房長官の町村信孝氏、対米交渉に当たる外相の高村正彦氏はともに留任。町村氏は県との妥協を模索する「協調派」、高村氏は対米関係重視の「強硬派」とされる。

 防衛相は石破茂氏から初入閣の林芳正氏に代わった。外交・内政に精通するといわれ、日米地位協定の改定に積極姿勢を示したことがある。

 林氏にはまず、戦後六十三年がたっても、依然として米軍基地が沖縄に集中する現実を実際に訪れて肌で感じ、認識してもらいたい。

 沖縄のどこに新しい基地をつくる余地があるのか。県議会は辺野古沿岸域への移設に反対する決議と意見書を野党の賛成多数で可決している。直近の県議選で示された民意であり、尊重するべきだ。

 先の移設に関する協議会では、普天間飛行場の危険性除去と代替施設の建設計画・環境影響評価(アセスメント)を円滑に進めるための二つのワーキングチームを設置することで合意した。ワーキングチームは政府、県、地元で構成するが、早くも思惑の違いが露呈している。

 これまで町村氏が県寄りの姿勢を示していることもあって、県は町村氏残留に安堵しているようだ。滑走路の沖合移動を求めている仲井真弘多知事は「移動させますよ、という暗黙の了解があるから協議がスタートする」と期待感をにじませている。これに石破前防衛相は「沖合移動に道を開いたということにはつながらない」と即座に否定。高村氏も強硬な否定派だ。政府と県は「同床異夢」ともいえるような状況だ。

 移設予定地の辺野古沿岸域は、「自然環境の保全に関する指針」で、県自ら「評価ランク1」に分類している。

 国の天然記念物で国際保護獣のジュゴンが生息。新たなサンゴ群落も確認され、これらを破壊して新たな基地をつくることが沖縄の負担軽減につながるのか。

 海洋環境は世界に誇る沖縄の生命線といえる。多くの観光客が訪れるのも、海の素晴らしさにひかれてのことだ。

 一度失われた自然環境は元に戻せない。かけがえのない環境を大規模に破壊して新しい基地を建設することになれば、沖縄は自ら宝を壊してしまうことに等しい。

 解散・総選挙、米大統領選挙が近づく。政治状況の変化の可能性も見据え県外移設の選択肢を捨ててはならない。

 沖縄担当相は岸田文雄氏から初入閣の林幹雄氏へ。原油高騰で県内各業界は危機的だ。六月の完全失業率は8・4%。十四カ月ぶりの8%台で深刻さを増している。離島県に配慮した政策が必要であり、早急に取り組んでほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080803.html#no_1

 

琉球新報 社説    

原潜放射能漏れ 日米両政府は説明責任を 2008年8月3日

 恐れていたことが現実になった。米原潜の放射能漏れが明らかになったのだ。環境や人体に影響はないほど微量(米海軍)とはいうものの、量の問題ではなかろう。漏れたこと自体が絶対あってはならないことで、憂慮すべきことだろう。

 米軍の原子力艦船は沖縄のホワイトビーチにも頻繁に寄港しており、今回の事故は県民にとっても人ごとではない。日米両政府は事故原因を詳しく調べて結果を速やかに公表すべきだ。また、事故の再発防止策を徹底すべきだ。

 米海軍は1日、グアムを母港とする米攻撃型原子力潜水艦ヒューストンが今年3月下旬、米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)に寄港した際、放射性物質を含む水が漏れていたと明らかにした。同船は3月12日にはうるま市のホワイトビーチにも寄港している。原潜の寄港後、国や県が合同で放射能調査を実施しているが、その際に異常はなかったという。

 しかし、額面通りには受け取れない。漏れてはいるが微量で検査に引っ掛からない、という可能性もあろう。第一、少ない量でも何十年も続けば拡散・蓄積するという可能性はないのか。うるま市の知念恒男市長が「微量であっても(一度)看過されれば歯止めが利かなくなってしまう」と指摘するのも、当然のことだ。両政府には国民に説明する責任がある。

 ホワイトビーチへの米原潜の寄港は、過去最多を更新している。今年に入って26回。県が統計を取り始めた1968年以降最多だった昨年の24回を、既に7月時点で上回っている。さらに、64年以降、原子力艦船の日本各地への寄港は1200隻以上にも上る。こうした状況を見れば、安全性への国民の懸念は全国に及ぶことになる。うるま市議会でも7月30日、寄港に反対する抗議決議を全会一致で可決したばかりだ。

 今回の事故を米海軍が把握したのは7月24日。日本政府に通報したのが同31日(日本時間8月1日)だから、1週間も遅れたことになる。しかも、米CNNが報じた後に仕方なく確認している。もし、報道がなければ公表していたかどうか。米側の不誠実な態度は許されるものではない。

 「臭いものにはふた」。こんな体質をまたもや見せつけてしまったのが外務省だ。1日に米側から通報を受けていながら、官邸はもちろん地元の佐世保市やうるま市には伝えていない。「人体に影響がないから」が理由というのだから、あきれるほかない。「問題になるレベルのものではない」(日本政府高官)という発言と合わせて、危機管理意識のお粗末さには、りつぜんとするばかりだ。

 安保の土台を危うくしているのは、外務省自身ではないのか。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134840-storytopic-11.html

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