普天間基地撤去の可能性はゼロか?

「普天間基地撤去の可能性はゼロか?」

<ある若い沖縄研究者>のご意見(末尾に掲載)は、失礼ですが、論評の必要もない、「研究者」としては、ひじょうに不十分な「いろは」からして問題がありすぎる文章です。しかし、ある意味では「典型的な」無意識(意識的とは思いたくないし、善意を信じたいので)の米帝国拝跪(おがんでひざまずくこと)深層心理の文章なので論評しておきます。

 かれはこう書いています。「一足飛びに在日米軍基地の無条件撤去を訴えるのは、実現可能 性の点からいえば限りなくゼロに近い。そのゼロに等しい主張を続けている間、沖縄に米軍基地が存在しつづけることを、私は許容したくありません。」
1(彼の「在日米軍基地の無条件撤去」という意味を「在日米軍基地の全面撤去」という意味であると理解した場合。)かれは、私の文書をお読みになっていないに等しいです。(読んだと言うに値しない、と言う趣旨です。念のため。)
『在日米軍基地の(全面)無条件撤去』を私は、主張してもいいし主張しています。64年以上の米軍駐留(半占領)をやめるように言うことを「一足飛び」などと最初から無理であるというニュアンスの言葉でいかに語ろうと、64年がどうして「一足飛び」なのかお聞きしたいものですが、それは、憲法上当然のことであり(「沖縄研究者」ならまさか伊達判決をお読みになっていないとは思いたくありません)外国軍の駐留が65年近くもの長期にわたって続いている異常さから見て主張して当然です。鳩山首相ですら、それを「異常」と表現しています。しかし、今回は、少なくとも、「普天間基地を撤去すること」を主張しているのです。「普天間基地の撤去」は、134ある在日米軍基地から一つ引くだけであるとともに、その一つはきわめて質的に重大であることを私は指摘したいと思います。主権者である国民の不可欠の一部である、65年間にもわたって基地に苦しめられている同胞宜野湾市民にとっても、米軍の世界支配思想の象徴である海兵隊基地である点で米軍にとっても。
 134マイナス1であるとともに、質的には、単なる1ではなく、世界1危険な軍事基地の撤去であるという点では、米軍の反人民性を減らす点からして、米軍にとって益こそあれ、マイナスにはなりません。ただ「支配者」であり続けたい海兵隊などの、あるいは極めて帝国主義的部分にとってはメンツを失うでしょうが。
 いずれにせよ、「研究者」なら研究者らしく、論敵(と言えば大げさですが)の意見を正確に承知して批判すべきです。繰り返しますが、私がOさんの「署名呼びかけ」の一部訂正を提起したのは、「本土の米軍基地への移設の可能性をさぐる」ということには賛同できない、と言うことだけで、その理由として、さしあたって少なくとも8点にわたって問題がある、と指摘しただけです。「一足飛びに在日米軍基地の(全面)無条件撤去」(全面撤去の意味と理解すればそういうこと)などということは、論敵の意見を論破するために、論敵が言ってもいないことを「誇張」して言っているかのようにして、その幻を「非現実的」として攻撃するという、あってはならない手法です。
2. あるいは、普天間基地の無条件撤去について、「実現可能性の点からいえば限りなくゼロに近い。」とでも言うのでしょうか?134の米軍基地のうち、ただ一つの米軍基地の無条件撤去を要求することも「一足飛び」で「非現実的」であるというのでしょうか?そういうお考えならば永久に基地はなくならないでしょう。
 在日米軍基地は、戦後65年近くの間にいくらでもなくなっています。砂川事件と伊達判決で有名な米軍立川基地もなくなって、国営公園などになっています。実現可能性がゼロなどと言うことは全くありません。
 無条件全面撤去がいけない、と言うことですが、「条件付き」の米軍の主張「条件」こそが、「移設」という名の「新基地建設」なのです。この条件付きこそが「くせ者」で、それに反対して、13年間沖縄県民が、死にものぐるいで闘い全国の心ある人たちが支持してきた「辺野古新基地反対」であったのです。「無条件」がいけないと言うことで米軍の新基地建設の対象になった土地の人たちの身にもなって下さい。その人たちは、普天間のために我慢しろとでも言うのでしょうか?無条件がいけないと言うことは条件を認めろ=基地を認めろと同義であることに、「論理の人」たるべき研究者がどうして気がつかないのでしょうか?
 「実現可能性の点からいえば限りなくゼロに近い。そのゼロに等しい主張を続けている間、沖縄に米軍基地が存在しつづけることを、私は許容したくありません。」と言うことは全く意味不明です。日米政府の条件=新基地建設こそ辺野古であれどこであれ「実現可能性の点からいえば限りなくゼロに近い」です。結局普天間はそのまま、が米海兵隊にとってはいいのです。
3. 一方で普天間基地撤去について、無理だといい(「可能性の点から言えば、ゼロに近い」ということ)、他方で「そのゼロに等しい主張を続けている間、沖縄に米軍基地が存在しつづけることを、私は許容したくありません。」と基地がなくなることを願望している、この論者の主張は何なのかさっぱり意味不明です。
 彼の私の論への「反論」は、彼の意に反して、要するに、ゲーツ米国防長官や岡田外相、北沢防衛相が言っているような『米軍再編』に無条件に従えば基地は減るという「現実的」論理.結論に落ち着かざるを得ないのです。それは辺野古に新基地を認めると言うことです。
 それは、行き着くところ、岡田外相や北沢防衛相と同じ「米軍崇拝信仰」であり、普天間の苦しみが理解できない人の言い分でしょう。普天間基地所在地の宜野湾市長伊波洋一氏は、普天間の苦しみを知っているので、そういう苦しみを他の国民に与えたくないと言うことで、国外移転(それは撤去と同じですが)だけを主張しています。彼を非現実的だとでも言うのでしょうか?非現実的なのは、「若い沖縄研究者」なる人物の方です。支離滅裂な「現実論」と言う「非現実論」でなく、彼の言う「非現実論」という本物の現実論を研究者は国民に訴え続けるべきです。それは「世界一危険な普天間基地撤去」です。13年の時間は条件付き撤去論の非現実性を、死にものぐるいの沖縄県民と全国民と海外の心ある方々の支援の実践が示しました。
 
 論者が「若い」と言うことでフェアでない手法を見過ごすことなく、きちんと指摘し二度とそういう手法をとってはならない、ことを理解してもらうとよいでしょう。
 「基地全面無条件撤去」は当然の主張で、非現実的という人こそ歴史のダイナミズムも、民族の主権も理解できない民族的誇りも何もない凡庸な人物です。しかし、今回の場合、私は、基地無条件全面撤去を主張していません。そのことを理解してから、いかなる偉そうな「論」も、出直して語るべきでしょう。

 多少きつい言葉になりましたが、直接でないので、貴兄から機会があったら、「研究者」と名乗る資格と、「論」というものの最低限度の条件は相手の言ってないことを言っているかのようにして批判しないことですよ、また、せめて自己の論の論理性ぐらいは確保して意見を述べなければ「研究者」の名が泣きますよ、と平山基生が言っていたとやんわりお伝え頂ければ幸いです。

 有り難うございました。

> 平山基生さま
>
> Oさんたちによる「普天間基地移設について」
> と題する賛同署名への依頼について、平山さんのご意見をあるMLで拝見し共感しました。
> (中略)

(以下引用)
> ーーーーーーーーーーーーーーー
> <ある若い沖縄研究者の意見>
>
> 先生のご友人や、平山さんがおっしゃっていることはもっともだと思います。
> 筋も通っていますし、まったくの正論です。
> ですが、ここで正論をふりかざすことによって、何が得られるのだろうかとも思います。
> これまでと同じような声明を出すことに、どのような意味があるのでしょうか?
> これまでにだされてきた声明が、何か沖縄の現状を変えたことはあったのでしょうか?
> いま必要なことは、鳩山首相を支える世論です。
> それは無条件に支えると言うことではありません。
> 普天間は辺野古にはつくらせない、という鳩山首相の意思を貫徹させるべく、支えていくということです。
> 経緯はどうあれ、在日米軍基地の問題を解決するためには、日本はアメリカと交渉をせざるを得ない立場にあります。
> その交渉のためのカードとして、「辺野古は駄目だ」という世論をつきつけることで、アメリカに譲歩させる。そのことが重要なのではないでしょうか。
> > マスコミが日米関係の悪化をことさらに述べ立てているなか、Oさんたちの声明を通して「辺野古への移設をするべきではない」という世論の存在を示すことに、私は意義を認めます。その声明に賛同したくないのであれば、しなければいいだけでしょう。それもまた、世論ですから。
> > とにかく、まずは辺野古につくらせないことが喫緊の課題であるべきです。
> 辺野古以外の地域に移設することになったとき、あらためてそれを阻止する運動をすればよいのであって、一足飛びに在日米軍基地の無条件撤去を訴えるのは、実現可能性の点からいえば限りなくゼロに近い。そのゼロに等しい主張を続けている間、沖縄に米軍基地が存在しつづけることを、私は許容したくありません。
> このように私が考えているのは、私が沖縄に肩入れしすぎている結果なのかもしれません。
> それでも、平山さんたちがおっしゃっていることの「正しさ」が、「近い」将来の沖縄の苦悩を除去することにつながらないであろうことを、私は憂慮します。
> 生意気なことばかり述べ立ててしまいましたが、このような意見があるということもご承知おきいただければと思い、返信いたしました。
> 失礼の段がございましたらご寛恕いただければ幸いです。
> それでは失礼いたします。
(以上引用終わり)

沖縄・日本から米軍基地をなくす草の根運動
運営委員長 平山基生(ひらやまもとお)
『米軍違憲 憲法上その存在を許すべからざるもの』
(平山基生著、本の泉社から緊急出版)
hirayama_moto@yahoo.co.jp
http://www.kusanone.org

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