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沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月29日、30日)

2007年9月29日(土) 朝刊 1・27面

手榴弾配り自決命令/住民が初めて証言

検定撤回きょう県民大会

 一九四五年三月二十五日、座間味村の忠魂碑前に軍命で集まった住民に対し、日本兵が「米軍に捕まる前にこれで死になさい」と手榴弾を渡していたことが二十八日、同村在住の宮川スミ子さん(74)の証言で分かった。長年、座間味村の「集団自決(強制集団死)」について聞き取りをしてきた宮城晴美さん(沖縄女性史家)は「単純に忠魂碑前へ集まれでなく、そこに日本軍の存在があったことが初めて分かった」と指摘している。一方、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(主催・同実行委員会)が二十九日午後三時から、宜野湾海浜公園で開かれる。(又吉健次)

 忠魂碑前で日本兵が手榴弾を配ったとする証言は初めて。

 宮川さんは当時、座間味国民学校五年生。米軍が座間味島を空襲した四五年三月二十三日に、母のマカさんとともに家族で造った内川山の壕に避難していた。二十五日夜、マカさんが「忠魂碑の前に集まりなさいと言われた」とスミ子さんの手を引き壕を出た。

 二人は、米軍の砲弾を避けながら二十―三十分かけ、忠魂碑前に着いた。その際、住民に囲まれていた日本兵一人がマカさんに「米軍に捕まる前にこれで死になさい」と言い、手榴弾を差し出したという。スミ子さんは「手榴弾を左手で抱え、右手で住民に差し出していた」と話す。

 マカさんは「家族がみんな一緒でないと死ねない」と受け取りを拒んだ。スミ子さんはすぐそばで日本兵とマカさんのやりとりを聞いた。二人はその後、米軍の猛攻撃から逃れるため、あてもなく山中へと逃げた。

 聞き取りが当時の大人中心だったため、これまで証言する機会がなかった。スミ子さんは「戦前の誤った教育が『集団自決』を生んだ。戦争をなくすため、教科書には真実を記してほしい」と力を込めた。

 宮城さんは「日本軍が手榴弾を配ったことが、さらに住民に絶望感を与え、『集団自決』に住民を追い込んでいった」と話している。

 一方、県民大会の実行委員会は五万人以上の参加を呼び掛けており、九五年十月二十一日に開かれた米兵暴行事件に抗議の意思を示した県民大会以来十二年ぶりの規模となる。県議会や県婦人連合会、県遺族連合会など二十二団体の実行委員会と約二百五十(二十八日現在)の共催団体が超党派で加わっている。

 大会では実行委員長の仲里利信県議会議長や仲井真弘多県知事、「集団自決」の体験者、女性、子ども、青年団体などが文部科学省に抗議の意思を示す。文科省が高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制を削除させた検定意見の撤回を要求する。


     ◇     ◇     ◇     

市民広場利用 米軍が認めず/大会関係者怒り


 【宜野湾】二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で、大会実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)が大会当日に宜野湾市役所向かいの「市民広場」を駐車場として利用することについて、米軍が「中立の立場を維持する」として許可しないことが二十八日、分かった。同広場は普天間飛行場の提供施設内で、市に無償開放されている。超党派の県民大会での駐車場使用を米軍が許可しないことに同実行委からは「県民の思いを理解できない」など反発している。

 同広場は約二百台の駐車場があり、通常は市民らが野球やゲートボールなどを楽しんでいる。大会当日は会場までバスでピストン輸送する予定だった。

 同飛行場のリオ・ファルカム司令官(大佐)は「日本国内の重要かつ慎重を期する問題について、中立の立場を維持する必要性がある」と強調。「論争となっている日本国内の政策については、支持あるいは不支持と受け取られることを避けるというのが私たちの方針」と説明している。

 宜野湾市の伊波洋一市長は「あえてゲートを閉めれば不支持と受け止められる。県民感情を逆なでする行為だ」と憤慨。「直接、基地に関係するものでもなく、納得できない。通常通り開門するべきだ。閉鎖すれば大会の怒りは基地に向かうだろう」と話した。

 県民大会実行委員会の玉寄哲永副実行委員長は「大会は超党派で日本軍強制の事実が削除されたことに対し、記述の回復を求めるもの。政府の顔色をうかがい、県民の思いを理解できない米軍人の思考回路はまったく理解できない」と批判。小渡ハル子副実行委員長も「県民の土地を奪い取り使っているのに米軍は恥を知らないのか。だから米軍は県民に嫌われる。言語道断の話であり、県民をばかにしている」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291300_01.html

 

2007年9月29日(土) 朝刊 1・2面

文科相「検定の経緯精査」/意見変更可能性も

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は二十八日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題への対応で、沖縄タイムス社に「今回の検定に至る経緯や趣旨等については十分に精査していきたい」とコメントし、検定過程を詳しく調査する考えを明らかにした。

 文科省はこれまで「教科用図書検定調査審議会が決めたことには口出しできない」などとして、検定を問題視しない考えを示していた。

 渡海文科相が検定経緯の調査にまで踏み込んだコメントをしたことで、文科省側が検定結果を変更する可能性も出てきた。

 本紙は渡海文科相の就任後、沖縄戦の専門家がおらず文科省主導で審議が進んだ検定の経緯などについて質問書を提出。文科相が二十八日に文書で回答した。

 渡海文科相は「集団自決」についても書面で、「多くの人々が犠牲になったということについて、これからも学校教育においてしっかりと教えていかなければならない」とコメントした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291300_02.html

 

2007年9月29日(土) 朝刊 26・27面

歪曲許さぬ思いは一つ/遺族の願い切実

書かれるのはつらい それでも教科書に事実を 戦争を起こさぬため/山城美枝子さん

 「書かれるのは本当はつらい。でも事実を教科書にはっきりと書いてほしい」。座間味村の「集団自決(強制集団死)」で助役兼兵事主任だった父親・宮里盛秀さん=当時(33)=ら家族五人を亡くした山城美枝子さん(66)が、二十九日宜野湾海浜公園で行われる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加する。教科書記述から軍強制が消された現状と、軍に抗えなかった沖縄戦時下とを重ね、「時代が逆戻りしている」と危機感を抱く。記述が復活し「集団自決」の事実が全国で知られることを願う。(謝花直美)

 一九四五年三月二十六日座間味村・産業組合の壕で、役場職員とその家族ら六十七人が「集団自決」に追い込まれた。美枝子さんは、父母、七歳、六歳、十一カ月のきょうだい三人を失った。一人残され、常に家族のことを思いながら生きてきたが、公の場で語ることはこれまでなかった。

 平和への願いは強く、これまでも普天間包囲行動や米軍ヘリ墜落の抗議集会には孫の手を引いて参加した。今年三月、日本軍の強制が削除された検定結果が明らかになった後も、父・盛秀さんが、兵事主任として軍からの命令を住民に伝える立場だったため、「集団自決」問題について話すことには迷いがあった。

 しかし、沖縄戦の歴史を歪曲させないという怒りが県民の間にわき起こったことに「後押しされているように」思えた。

 九月本紙で、住民に「集団自決」の軍命を伝え、自らも子どもたちを手にかけなければならなかった父親の苦悩への思いを語った。「家族から一人残されたことは、父が思いを託すため」とも考えるようになった。

 美枝子さん自身、「集団自決」の記述に触れることで、心をかきむしられ、涙が止まらなくなる。子どもを抱き締め号泣した父親の心痛がありありと感じられるからだ。「書かれることも本当はつらい」。それでも、教科書には軍強制の記述をしっかり書くべきだと主張する。「事実は事実として受け止めなければならない。そうでなければ、時代があの時と同じに戻るのではないか」と懸念する。

 大会には、座間味村出身の夫功さん(74)とともに参加。記述復活はもちろんのこと「県民大会で全国の一人でも多くに戦争の醜さが伝えられれば」と期待する。


     ◇     ◇     ◇     

復帰前闘争つながる 「怒り」再び 「島ぐるみ」今回も/中根章さん


 全四十一市町村や県議会二度の意見書可決などを経て、開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」。沖縄戦を体験し、一九五〇年代の土地闘争や七〇年代の復帰闘争、九五年の県民大会などに参加した元県議の中根章さん(75)=沖縄市=は「史実改ざんに抗議する大会は復帰前の『島ぐるみ』の闘争とつながっている」と強調。「史実の歪曲を絶対に許してはならない。体験者、子、孫の世代が一斉に立ち上がってほしい」と話している。

 五〇年代半ば、米軍の強制的な土地接収に、県民の怒りは頂点に達していた。五六年七月、那覇高校で開かれた「四原則貫徹県民大会」は、十五万人が集まった。

 「すき間もないほどびっしりと人が運動場を埋めた。先祖代々の土地を奪われ、繰り返される事件や事故。民衆が一斉に抗議した瞬間だった」と振り返る。

 教科書検定の撤回を求める県民大会については「沖縄戦で日本軍の強制は『集団自決(強制集団死)』以外にもあった。日本兵は住民に捕虜になるより死ぬことを選ぶように教えてきた。この史実を否定することはできない」と憤る。

 大会には家族や知人ら六十人と参加する。「復帰前と同規模の住民が参加し、思いを一つにしたい」と話す。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月29日朝刊)

[県民大会の日に]

民意のうねり届けよう


体験を記憶のふちに沈め

 座間味島出身の宮城恒彦さん(73)は毎年一冊ずつ、慰霊の日にあわせて沖縄戦体験をつづった小冊子を発行している。一九八九年に第一号を出版して以来、一度も欠かしたことがない。

 八八年に母ウタさんが九十一歳で亡くなったことがきっかけだった。

 「母は娘のことを生涯悔やんで嘆いてましたから。なんか書き残さなくてはと思ったんです」

 座間味島の内川の壕で起きた「集団自決(強制集団死)」は一発の手りゅう弾から始まっている。二十人前後の住民が身を潜めていたらしい。

 宮城さん一家はウタさんと恒彦さんら子ども五人の計六人が行動をともにしていた。当時十九歳の姉は腹部をざっくりえぐり取られた。

 手りゅう弾で死ねなかった人たちが何人もいた。学校の校長はカミソリで妻を手にかけ、この後自分の首の動脈を一振りした。妻はかろうじて生き残ったが、夫はその場で息絶えた。

 瀕死の重症を負い、もだえ苦しむ娘を壕の中に置き去りにして死なせたことが戦後、ウタさんを苦しめる。

 「集団自決」は、渡嘉敷・座間味・慶留間などの慶良間諸島だけでなく、伊江村、読谷村、糸満市など県内各地で発生している。

 生き残った者はせい惨な体験を記憶のふちに沈め、戦後、悲しみに耐えて生きてきた。だが、内面の傷は癒えることがない。座間味島生まれの女性史研究家宮城晴美さんが祖父母の体験をつづっている。

 ある日、学校からの帰り祖父母の家に寄った。家の裏庭にあるヤギ小屋で不気味な鳴き声がするので物陰からのぞいたら、祖父がヤギを宙づりにしてほふっていた。

 祖母は晴美さんに向かって、祖父に聞こえるような声で「この人は首切り専門だから」と、いてつくような言葉を投げたという。

 米軍上陸後、祖父は妻と子どもたちの首をカミソリで切って「自決」を試みた。息子が即死し、祖母ものどに深い傷を負った。

 祖父は祖母に何を言われても反論せず、時々、夜のとばりが下りるころ、サンシンを持ち出して護岸で静かに民謡を歌っていたという(『母の遺したもの』)。


住民保護の視点を欠く


 「集団自決」はなぜ起きたのか。

 私たちはこの問いが、今を生きるウチナーンチュに突きつけられた逃れられない問いだと思っている。

 過去に向き合い、歴史体験から学ぶ姿勢がなければ、現在の風向きを知ることはできない。

 沖縄戦で多発した「集団自決」は基本的に旧日本軍の強制と誘導によって起こったもので、県議会の意見書が指摘するように「日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」である。

 米軍が上陸したとき、住民をどう保護すべきか。残念ながら旧軍は住民保護の視点を欠いた軍隊だった。

 本土決戦の時間稼ぎと位置づけられていた沖縄戦で重視されたのは、人と食糧を現地調達し軍官民共生共死の態勢を築くことだった。

 「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓。「死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよ」という軍人勅諭。投降や降伏を否定する軍の論理は住民に対しても求められ、指導層に浸透していった。

 米軍上陸後の住民対策は、司令官訓示や軍会報、「上陸防御教令(案)」、「島嶼守備隊戦闘教令(案)」、「国土決戦令」などに示されている。

 防諜に厳に注意すべし。沖縄語をもって談話しあるものは間諜として処分す。不逞の分子に対しては断固たる処置を講ぜよ。

 渡嘉敷島や座間味島は、特攻艇を秘匿した秘密基地だった。秘密保持が優先され一部住民には玉砕を想定してあらかじめ手りゅう弾が手渡されていた。そのような状況の中で米軍に包囲され、猛攻撃を受けたのである。


揺らぐ教科書への信頼


 日本軍の関与を示す記述を削除した文部科学省の教科書検定は、歴史的事実の核心部分を故意に無視したものと言わざるを得ない。

 文部科学省の教科書調査官が示した検定意見の原案に対し、審議会は、実質的な審議も具体的な議論もしないまま通してしまったという。

 調査官は、係争中の訴訟の一方の当事者の意見だけを取り入れて教科書に反映させようとしたことも明らかになっている。教科書への信頼さえ揺らぎかねないずさんな検定である。

 「見たくないものは見えない」という言葉がある。見たくないものを見ようとする意思がなければ、沖縄の民意を理解することはできない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070929.html#no_1

 

琉球新報 社説

検定県民大会 歴史わい曲は許さない/結集し撤回への総意示そう

 声を上げる。このことがいかに重要か。教科書検定意見撤回を求める県民大会の大きなうねりは、県子ども会育成連絡協議会会長の怒りの電話に端を発する。県婦人連合会、PTA連合会がまず結束。連携の輪は県内はもちろん、県外まで異例の広がりを見せている。

 そしてきょう、県民大会が開催される。実行委員会は当初5万人規模の参加を目標に掲げたが、歴史のわい曲を許さないという県民の決意は固く、目標を軽く超えるに違いない。

 国・文部科学省は、大会をしっかり見てほしい。県民の怒りがどれほどのものか。歴史をゆがめることがいかに愚かなことか。

責任は文科省に

 わたしたち県民がなぜ、こぞって反発しているのか。高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」記述から日本軍の強制・関与が削除・修正されたからだ。しかも、教科用図書検定調査審議会ではほとんど議論もなく、文科省の調査官が出した意見書に沿った内容で提言がなされた。さらに、審議会には沖縄戦を詳しく研究した専門家もいない。

 沖縄戦当時、住民は米軍の捕虜になれば、女性は辱めを受け、男性は惨殺されるという情報を信じさせられ、恐怖を植え付けられていた。生き残る選択肢はなかったに等しい。

 糸満市のカミントウ壕での「集団自決」から生き残った74歳の女性は証言する。壕内に砲弾が撃ち込まれたことで、入り口付近の日本兵2人が自決。直後、住民の「集団自決」が始まった。多くの家族が次々と手りゅう弾の信管を抜き、命を絶った。手りゅう弾を持っていたのは、家族の中に防衛隊として日本軍から渡されていた男たちがいたからだという。後は地獄のようなさまだ。「片目をえぐられた幼なじみ、内臓が出た人、足がもげて大声を上げて苦しんでいる少年」

 別の生き残り女性の体の中にはまだ弾の破片が4個残っている。「集団自決」で破裂した手りゅう弾のかけらだ。60年も前にあったらしいというあやふやな事ではない。女性の体にある破片は、恐ろしい事実をわたしたちに突き付けている。

 もし、当時の住民が「米軍に見つかったら決して抵抗せず、捕虜になりなさい。生き残れるかもしれない」と教えられていたら、どれほどの人が死なずにすんだか。恐怖に駆られた肉親同士が「早く死ななければ」と殺し合うことなど決してなかった。

 文科省側は、意見書を付すに当たり、沖縄の地を踏んで調査していない。あまりにもずさんだ。このような認識で、「集団自決」の実相をゆがめられてはたまらない。検定意見をまとめた文科省の責任はとてつもなく重い。

最終目的は記述復活

 就任したばかりの渡海紀三朗文科相は県民大会について「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのかを見極めて対応したい」と、これまでの文科相対応とは違う含みを持たせた発言をした。

 しかし見極める必要はない。沖縄側の主張ははっきりしているからだ。県と41市町村議会すべてが抗議決議し、大会には41首長すべてが出席する。実行委員会には老若男女、農林漁業、企業など多方面にわたる22団体が加わり、一致して検定意見の撤回を求めているのだ。

 それでも見極めたいというなら、ぜひ大会に参加して、じかに県民の訴えを聞き、意志の結集を肌で感じてほしい。「集団自決」から生き残ったお年寄りの苦痛に満ちた証言を聞いてほしい。

 大会では「子供たちに、沖縄戦における『集団自決』が日本軍の関与なしに起こり得なかったことが紛れもない事実であったことを正しく伝えること(中略)は我々に課せられた重大な責務である」と訴え「県民の総意として国に対して今回の教科書検定意見が撤回され、『集団自決』記述の回復が直ちに行われるよう」求める決議を採択する。

 思想信条を超え結集する大会は、歴史に刻まれるものとなろう。県民はそれほどの決意を持っている。

 確認しておきたいのは、わたしたち県民にとって、大会成功が目標の達成ではない。あくまで、日本軍強制の記述の復活、つまり検定意見の撤回が最終目標だ。大会は、文科省を動かす第一歩であり、撤回実現まで要求し続けたい。

(9/29 9:51)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27623-storytopic-11.html

 

2007年9月29日(土) 夕刊 1面

検定撤回へ結集/宜野湾・宮古・八重山で県民大会

 高校歴史教科書の検定で、文部科学省が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍の強制を示す記述を削除させたことに抗議する「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(主催・同実行委員会)が、二十九日午後三時すぎ、宜野湾海浜公園で開かれた。数万人が会場を埋め、実行委員長の仲里利信県議会議長らが登壇し、文科省に検定意見の撤回と記述回復を求めた。開会前、平和への思いを訴える読谷高校生の創作ダンスや渡嘉敷村の「集団自決」犠牲者を慰める鎮魂歌「白玉の塔」などがささげられた。宮古、八重山でも同時刻、郡民大会が開かれた。同日午前、沖縄戦終焉の地・糸満市摩文仁で「平和の火」が採火され、三十四キロ離れた会場まで百人以上が走り継いだ。

 実行委には県議会や県婦人連合会など二十二団体に二百四十七の共催団体が加わった。

 会場には家族連れや戦争体験者、学生などが詰め掛けた。那覇市の花城隆さん(74)、トヨさん(76)夫妻。共に沖縄戦の体験者として「政府は、なぜ『集団自決』の生き残りの証言を信じてくれないのか。『集団自決』の現場は見ていないが、同じ体験者として絶対許せない」と憤った。

 読谷村から来た山内昌善さん(71)=無職=は「私も戦争体験者。教科書が変えられたと聞き、居ても立ってもいられなかった」と話し、「日本軍は住民にいいことは何一つしてない。戦争の実相を正しく伝え、日本本土に強く訴えないと、沖縄は埋没してしまう」と訴えた。

 うるま市の伊保清一さん(72)=無職=は「最近の報道を見て、真実が伝えられていないと感じる。大会を通して、削除された部分を復活し、子どもや孫に真実を伝えてほしい」と語った。

 「平和の火」の採火式は、午前九時四十五分から行われ、県民大会実行委と糸満市、八重瀬町の関係者ら百人が参加した。

 糸満市の西平賀雄市長、玉城朗永市議会議長、市立米須小学校六年の玉城寿倫哉君の三人が、広場に設置された「平和の火」から採った火を仲里実行委員長の持つトーチに点火した。

 「平和の火」は、沖縄戦最初の米軍上陸地で、「集団自決」で多数の住民らが犠牲となった座間味村と被爆地広島の「平和の灯」、長崎の「誓いの火」から合火。

 平和を希求する火の前で、仲里実行委員長は「県民大会には、県内外から五万人以上が参加をいただき、史実を歪曲する文部科学省に検定意見の撤回を力強く求めていく」と決意を述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291700_01.html

 

2007年9月29日(土) 夕刊 4・5面

島の惨劇 後世に/決意胸に撤回訴え

 「平和の火」が、人の波が、会場に押し寄せた。二十九日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた宜野湾海浜公園。「集団自決(強制集団死)」が起きた座間味村と渡嘉敷村の住民らは船とバスを乗り継いで会場に着いた。愛する家族や親せきを失ったお年寄りらは「歴史を歪めさせない」「子どもたちに真実を伝える」と誓い合った。宮古、八重山を含む県内各地で、大勢の県民が決意と期待の声を上げた。大会前、小中高生らが燃えさかるトーチを手から手へつないだ。

 一九四五年三月二十六日に「集団自決(強制集団死)」が起きた座間味村の住民約五十人は二十九日午後一時すぎ、船とバスを乗り継ぎ「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれる宜野湾海浜公園に到着した。「集団自決」の体験者らは「多くの人が参加し、県民の声が全国に届く大会にしたい」と気持ちを新たにした。

 一行は同日午前、座間味港や阿嘉港から本島向けの船に乗り込んだ。阿嘉港から乗船した元村議の中村武次郎さん(77)は慶留間島で、家族三人のうち姉が「集団自決」で亡くなった。「記述が削除されては、島で何が起きたのか教えられなくなる。大会を成功させようと思い、参加を決めた」と力を込めた。

 沖縄戦当時の村助役兼兵事主任の兄、宮里盛秀さんと家族を亡くした宮平春子さん(81)の「集団自決」体験を県民大会で代読する元役場職員、宮里芳和さん(59)は「兄家族を失った宮平さんには熱い思いがある。宮平さんの万感胸に迫る思いを訴えようと、燃える気持ちだ」と少し緊張した面持ちだった。

 村実行委員会副委員長の仲村三雄村長(64)は「大戦中の尊い命を犠牲に、戦後は平和な座間味島を築いてきた。全国に県民の声が届く大会にしたい」と話した。

 宮里順之村議(72)は四五年三月、「集団自決」が起きた産業組合壕で、死ぬために「中に入れてほしい」と大人たちが押し問答したことを子ども心に覚えている。「『集団自決』があった座間味村から、多くの人が参加して大会を成功させたい」と力を込めた。

 四二年に徴兵され、「死んで座間味に帰ってくるはずだった」という宮里正太郎さん(87)。「会場に多くの人が集まっているが、これは問題の大きさを表している。今後の平和のためにも、真実を曲げてはいけない」と言い切った。


     ◇     ◇     ◇     

史実きちんと継承して/怒り 期待の声あふれ


 教科書検定撤回を求める県民大会の二十九日、県内各地で、史実歪曲への怒りと大会に寄せる期待の声が聞かれた。

 大宜味村の宮城光一さん(25)=公務員=は「戦前・戦中に軍を優先させる教育があって『集団自決(強制集団死)』は起きた。村内でも白浜事件という旧日本兵による住民虐殺があった。検定結果がそのままになると、自分たちのおじいさん、おばあさんの世代が亡くなった時に、そうしたことまで、すべてなかったことにされてしまうかもしれない」と危惧。「歴史をきちんと継承しないと戦争が再び起きてしまう」と意義を語った。

 宜野湾市真栄原の木村美乃さん(33)=主婦=は「集団自決」の体験を読み「危機感が、つらい体験者の重い口を開かせたのだろう」と感じるようになった。三年前、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故後に開かれた市民大会に足を運んだ。「参加することで抗議の気持ちを体で表せた」。今回は三歳の長男を含む家族三人で参加する。

 石垣市登野城の宮良洋子さん(65)は、家族と一緒に市総合体育館の八重山郡民大会に足を運ぶ。この問題を聞いたとき、「歴史をゆがめるようなことを絶対に許してはいけない」と強く思った。「子どもたちに真実を伝えるために一人一人が立ち上がり、県全体、本土にも広がり、検定意見の撤回につながってほしい」と期待している。

 宮古島市平良の与儀一夫さん(70)は「『集団自決』の問題が今出てくるのは、戦争の反省をしっかりしてこなかったからだと思う。(日本軍の強制を示す記述の)削除には怒りを感じる。戦争のことをしっかり整理しなければならない」と話す。

 戦争中は小学校低学年。宮古島でも「軍命」の名の下に飛行場建設や食料の調達がなされたことを肌で感じており、検定意見撤回のため同市内で開かれる郡民大会にも参加する。「一人一人の市民が積極的に参加して多くの人で宮古郡民大会を成功させたい」と話している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291700_02.html

 

2007年9月29日(土) 夕刊 4面

悲惨な思いつなぐ/平和の火リレー

 【糸満・豊見城】教科書検定意見の撤回と平和希求の思いを託し二十九日午前、県民大会会場の宜野湾海浜公園に向け出発した「平和の火リレー」。小中高生らが“平和のシンボル”を次々とつないだ。燃え上がるトーチを掲げ、力強く歩を進める走者に、沿道から温かい声援が送られた。

 糸満市の西平賀雄市長と玉城朗永市議会議長に交じり、リレー出発前に採火した同市立米須小六年の玉城寿倫哉君。「大人たちの話を聞いて沖縄戦の歴史を正しく教科書に残してほしいと思った」と話した。

 第一走者は、同市立高嶺中三年の生徒会メンバー五人。大会実行委員長の仲里利信県議会議長から「はい、どうぞ。お願いします」と声を掛けられトーチを手渡され、笑顔でスタートした。

 夏場を思わせる強い日差し。玉城寛之君を先頭に、行き交う車の声援に手を振り応えながら、軽い足取りで約一キロを走った。

 第二走者の市立兼城中学校三年のイラバニ・ロクサナさんら八人の生徒に「がんばれ」と声を掛け、トーチをつないだ玉城君。

 「気持ちよく走れた。大事なものを託されているということを胸に、平和な世の中になってほしいという思いで走った」と話し、額の汗をぬぐった。

 豊見城市役所から名嘉地交差点までの一・六キロの区間では、市議会全議員や市職員、豊見城高校野球部など約百人がリレーをつないだ。

 糸満市の子ども会からトーチを受け取った豊見城市議会の大城英和議長は「六十二年前の沖縄戦で起こった悲惨な出来事を胸に刻みながら、しっかりと走ってほしい」と走者らに呼び掛けた。

 豊見城高校野球部の屋我伸也さん(17)は「これから歴史を勉強する子どもたちのためにも真実を伝えてほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709291700_03.html

 

2007年9月30日(日) 朝刊 1面

11万人結集 抗議/検定撤回 9・29県民大会

 私たちは真実を学びたい。次世代の子どもたちに真実を伝えたい―。高校歴史教科書の検定で、文部科学省が沖縄戦「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除したことに抗議する「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(主催・同実行委員会)が二十九日午後、宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれた。大会参加者は当初予想を上回る十一万人(主催者発表)。宮古、八重山を含めると十一万六千人に達し、復帰後最大の“島ぐるみ”大会になった。大会では日本軍の命令、強制、誘導などの記述を削除した文科省に対し、検定意見撤回と記述回復を求める決議を採択した。

 戦争を体験した高齢者から子どもまで幅広い年代が参加、会場は静かな怒りに包まれた。県外でも東京、神奈川、愛媛などで集会が開かれ、検定意見撤回と記述回復を求める県民の切実な願いは全国に広がった。

 大会実行委員長の仲里利信県議会議長は「軍命による『集団自決』だったのか、あるいは文科省が言う『自ら進んで死を選択した』とする殉国美談を認めるかが問われている。全県民が立ち上がり、教科書から軍隊による強制集団死の削除に断固として『ノー』と叫ぼう」と訴えた。

 仲井真弘多県知事は「日本軍の関与は、当時の教育を含む時代状況の総合的な背景。手榴弾が配られるなどの証言から覆い隠すことのできない事実」とし、検定意見撤回と記述復活を強く求めた。

 「集団自決」体験者、高校生、女性、子ども会、青年代表なども登壇。検定撤回に応じず、戦争体験を否定する文科省への怒りや平和への思いを訴えた。

 渡嘉敷村の体験者、吉川嘉勝さん(68)は「沖縄はまたも国の踏み台、捨て石になっている。県民をはじめ多くの国民が国の将来に危機を感じたからこそ、ここに集まった。為政者はこの思いをきちっと受け止めるべきだ」とぶつけた。

 体験文を寄せた座間味村の宮平春子さん(82)=宮里芳和さん代読=は、助役兼兵事主任をしていた兄が「玉砕する。軍から命令があった」と話していたことを証言した。

 読谷高校三年の津嘉山拡大君は「うそを真実と言わないで」、照屋奈津美さんは「あの醜い戦争を美化しないで」とそれぞれ訴えた。

 会場の十一万人は体験者の思いを共有し、沖縄戦の史実が改ざんされようとする現状に危機感を募らせた。宮古、八重山の郡民大会に参加した五市町村長を含み、大会には全四十一市町村長が参加した。

 実行委は十月十五、十六日に二百人規模の代表団で上京し、首相官邸や文科省、国会などに検定意見の撤回と記述回復を要請する。

 仲里実行委員長は「県民の約十人に一人が参加したことになる。県民の総意を国も看過できないだろう」と、記述回復を期待した。


検定見直し国会決議も/超党派視野民主が検討


 民主党の菅直人代表代行は二十九日、政府や文部科学省に「集団自決(強制集団死)」で軍強制を削除した検定のやり直しを求め、応じない場合は超党派で国会決議案提出を検討する意向を示した。また、国会の委員会審議の参考人として「集団自決」体験者を招き、証言を直接聴取する考えも明らかにした。

 教科書検定撤回を求める県民大会に出席した後、記者団の取材に応じた菅代表代行は「臨時国会の代表質問や予算委員会審議で取り上げ、文科省の調査官のコントロールでねじ曲げられた検定のやり直しを求める」と強調。「検定の見直しや規則を変えることに応じなければ、国会の意思を問う」とした。野党共闘を軸に、与党にも働き掛け、超党派で提出する考えを示した。

 大会に出席した共産党の市田忠義書記局長は「県民大会の決議の趣旨であれば賛同する」、社民党の照屋寛徳副党首も「検定撤回を求め、国会の意思を示すべきだ」と賛同。国民新党の亀井久興幹事長も「決議に賛成したい」とし、野党各党とも国会決議案提出に賛成する意向だ。

 一方、与党側は、参加した公明党の遠山清彦宣伝局長が「撤回を求めるのは同じだが、国会決議で個別の検定を見直すことは今後の政治介入を許す危険性もあり、慎重に対応したい」との考え。自民党の県選出・出身でつくる「五ノ日の会」の仲村正治衆院議員は「今回の大会決議で要請することが先だ。今後の対応は党の協議次第だ」と述べるにとどまった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709301300_01.html

 

2007年9月30日(日) 朝刊 27面

人の波 怒り秘め/真実は譲らない

 私たちの歴史は変えさせない。二十九日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた宜野湾海浜公園には、主催者の予想をはるかに上回る十一万人が集まった。県民の十人に一人近くが参加し、復帰後最大の規模に膨れ上がった。「たとえ醜くても、真実を伝えたい」。沖縄戦で体験した地獄を語る勇気と、受け継ぐ覚悟。静かな会場に、世代を超えた県民の決意が満ちた。検定の標的にされた「集団自決(強制集団死)」の体験者は、失った家族に向けて涙ながらに成功を報告した。宮古、八重山の会場にも合わせて六千人が結集した。すべての視線が、文部科学省に向けられた。

 午後三時に大会が始まってからも、会場を目指す人の波は続いた。車いすのお年寄りと、乳児を乗せたベビーカーが、並んで進む。うるま市の山城真理子さん(54)は「大人から子どもまで、本当に県民こぞっての集まり」と、感激の面持ちを浮かべた。

 会場の広大な芝生は人で埋め尽くされ、周辺の敷地にも参加者があふれ返った。あらゆる木陰や車の陰に人、また人。

 「一九九五年の大会ではこの辺りまではいなかった。きょうは二倍いるんじゃないか」と驚く沖縄市の照屋哲さん(68)。ステージは遠く見えないものの、私語はほとんどない。訴えにじっと耳を傾け拍手を送った。

 家族連れや若い世代の姿も目立った。浦添市の下地正也さん(42)は、十二歳と八歳の息子の手を引いて参加。「まだ大会の意義は分からないと思うが、参加した記憶が残れば。これをきっかけに将来、自分で学んでほしい」と願いを込めた。

 球陽高校三年の真壁科子さん(17)は、チビチリガマがある読谷村から来た。一緒に参加した両親などから、「集団自決」への軍関与を聞かされて育った。「夢は教員。でも教科書が書き換えられてしまったら、悲劇をどう生徒に伝えればいいの」と、心配顔になった。

 体調が悪く、不参加を決めていた豊見城市の金城範子さん(64)は、朝起きてすぐに意を決し、足を運んだ。「私の後ろには、参加したくてもできない戦没者やお年寄りがたくさんいる。責任に押された」。最前列に一人で座り、「日本兵を恨みはしない。ただ、自分の名誉のために歴史全体を曲げることだけはしないでほしい」と訴えた。

 「きょうはうれしい一日だよ」。「集団自決」を体験した座間味村出身の宮城恒彦さん(73)は、帰路に就く人々を見詰めながら語った。「普段おとなしい県民のマグマが噴火した。何度踏みにじられても、沖縄の命運が懸かった問題では十万以上の人が動いた。戦争を体験していない世代が頼もしく見える」と、目を細めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709301300_02.html

 

2007年9月30日(日) 朝刊 3面

書き換え「許さず」/超党派で撤回要求

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」で軍強制を削除した高校歴史教科書検定問題に対し、二十九日、宜野湾海浜公園で開かれた県民大会には、各政党の本部幹部らが多数参加した。十一万人が結集した大会の意義をそれぞれが高く評価、沖縄戦の史実をねじ曲げる検定の撤回を求めた。

 民主党の菅直人代表代行は「『集団自決』で軍関与を否定した動きを許さないという県民の思いを強く感じた」との感想を述べた。大会の意義については「戦争を風化させ、ねじ曲げようとする一部の動きに、当事者が苦しい体験を勇気を出して発言した。多くの人々が集まったことは歴史的な意義があり、歴史の歪曲を止めるきっかけになる」と話した。

 遠山清彦公明党宣伝局長は「県民が怒るのは、文科省が学問的、客観的に運用した検定制度と、戦争体験者の体験がずれているからだ」と指摘した。文科省には、同党県本部が四月に求めた県民参加による「沖縄戦共同研究機関」の創設を強く要望。沖縄戦の公正、客観的な検証を求めた。県民からの直接ヒアリングなど、検定制度の見直しも必要との認識を示した。

 市田忠義共産党書記局長は「これまで日本政府も軍関与を認めていた。それを覆すのは許されない歴史の書き換えだ」として、国政の場で検定意見撤回に向けて働き掛けていく考えを示した。大会について「県民の平和へのエネルギーが一層伝わった。国民全体の問題として、党派を超えて、歴史の偽造は許されないという思いをますます強くした」と述べた。

 社民党の保坂展人平和市民委員長は「教科書問題は住民虐殺や慰安婦問題などと同様に、戦争を客観的に見られるのかという歴史観全体の問題だ」と指摘。「県民の大きな声を、福田政権がどう受け止めるのか、週明けの所信表明に注目したい」とした上で、「他の野党と連携し、渡海紀三朗文科相への質問で、全面撤回の契機となる見解、発言を引き出す努力をする」と述べた。


県民の不満が「爆発寸前に」

知事、政府に配慮求める


 仲井真弘多知事は二十九日の県民大会終了後、記者団の取材に応じ「私が初めて見たほど大勢の県民が集まった。ある種のマグマというかエネルギーというか、何かが爆発寸前にあるのではないかと予感させた大会だった」と述べ、沖縄戦の実相と異なる文部科学省の検定意見に対し、県民の不満が限界点にあるとの認識を示した。その上で検定意見の撤回に全力で取り組む意向をあらためて表明するとともに、「地方の意見に耳を傾ける、理解に努めるという、中央におられる人々の感性をもう一回磨いて、精妙にしていただく必要があるのではないかと思う」と指摘。政府に対し、県民感情に配慮するよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709301300_03.html

 

2007年9月30日(日) 朝刊 28面

22万の瞳にこたえよ/視点

 強い日差しの中、時折心地よい風が吹いた。会場に入りきれない人々は、公園や隣の建物、小道、雑木林の中に座り、遠くで聞こえるマイクの声にじっと聞き入った。ステージが遠くても、見えなくても、そこに集まった二十二万の瞳は、検定撤回を求めるスピーチが続く舞台を静かに見詰め続けていた。

 けれども、あなたはそこにはいなかった。

 内間敏子さん=当時(19)。りんとしたまなざし、ピンクのブラウスがよく似合ったあなたは、座間味国民学校の教師。音楽が好きで、あなたがオルガンで奏でた重厚なハーモニーに感動し、戦後音楽の道へ進んだ教え子もいた。そのことをあなたは知らない。一九四五年三月二十六日、座間味村の「集団自決(強制集団死)」で亡くなった。

 自ら手にかけなければならない子どもたちをぎゅっと抱きしめ、「こんなに大きくなったのに。生まれてこなければよかったね。ごめんね」と号泣した宮里盛秀さん=当時(33)。戦時下、座間味村助役兼兵事主任だったあなたは、「集団自決」の軍命を伝えることで、軍と住民の板挟みになり苦しんだ。「父が生きていれば、自分が見識がもっと広く、大局的な見方ができたらと悔やんでいたと思う」。一人残された娘の山城美枝子さん(66)は、あなたに代わって会場に立った。

 なぜ、あなたたちは死に追い詰められたのか。残された人々が、私たちに語ってくれたことで、真実が伝えられた。

 魂の底から震えるように、軍の命令で家族が手をかけ合った「集団自決」を話した。戦後、片時も忘れることができない体験。請われて語ることで自らも傷ついた。それでも、「集団自決」が、沖縄戦のようなことが再び起こらないように、奮い立ってくれた。

 しかし、軍強制を削除した教科書検定は、「集団自決」の真実と、残された人々の心痛をも全て消し去った。

 検定に連なる背景には、日本軍の加害を「自虐的」とし、名誉回復を目指す歴史修正主義の動きがある。「集団自決」は標的にされたのだ。

 軍の名誉を守るために「集団自決」の真実を否定し、苦しさを乗り越え語る人々の心を踏みにじる。沖縄と、そこに生きる人々を踏みつけなければ、回復できない名誉とは、なんと狭量で、薄っぺらであることか。

 時代が違えば、「集団自決」に追い込まれたのは、今、沖縄に生きる私たちだった。

 沖縄戦を胸に刻んできた体験者、沖縄戦を考えることが心に芽吹いた若者たち。「集団自決」で死んで行ったあなたを、残された人々を、決して一人では立たせないとの思いで結集した。

 十一万六千人もの人々が共に立ち、誓った。私たちの生きてきた歴史を奪うことは許さない。「集団自決」の事実を、沖縄戦の歴史を歪めることは許さない。舞台を静かに見据えた瞳はそう語っていた。

 政府は、この二十二万の瞳にこたえよ。(編集委員・謝花直美)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709301300_04.html

 

2007年9月30日(日) 朝刊 26面

沖縄戦事実 否定に怒り/解説

 十一万六千人。人口百三十七万人の沖縄県でこれだけの県民が集まった。東京都で考えれば、百八万人の集会に相当する。その意思表示を文部科学省はどう考えるのか。今後の対応を注視する。

 そもそも、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の開催は、沖縄からの民意や反論に文科省が真剣に対応してこなかったことが背景にある。

 「『集団自決』で日本軍の強制があったことを否定されれば、ガマからの追い出し、食料の強奪、スパイ容疑での虐殺など、そのほかの沖縄戦の住民被害を否定されたのと同じになる」。平良長政・大会実行委員会幹事が大会後に述べたように、県民は今回の教科書検定で、体験、記憶、学習を通じて共有してきた「沖縄戦の事実」が否定されたと感じたのだろう。

 県議会と全四十一市町村議会で検定意見撤回を求める意見書が採択されたのは、その民意の表れだ。

 「集団自決」に対する日本軍の強制があったことを証明するこれまでの研究に、体験者による新たな証言がいくつも加えられ、検定結果への反証として示されてきた。

 県議会、市町村議会、副知事、教育長、市民団体。沖縄は、こうした民意と反証を基に、何度も文科相に説明と対応を求めてきた。そのたびに文科省は、「審議会による学術的な審議に基づく決定で覆せない」と、事実と異なる「官僚答弁」に終始してきた。

 対応に当たるのは、検定の内実を詳しく知る課長でもなければ、決裁権を持ち、責任が問われる立場の局長や文科相でもない、中間管理職の審議官だった。

 六月、伊吹文明文科相(当時)は「検定結果について沖縄の皆さんの気持ちに沿わないようなことがあるんだろうと思う」と発言した。ここにボタンの掛け違いがある。

 県民はあいまいな感情で怒っているのではない。「事実を否定された」から怒り、その論拠も示している。

 渡海紀三朗・現文科相は県民大会について、「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのかを見極めて、対応したい」と発言した。期待したい。行政が過ちを認めないとき、それをただすのは政治の役割だ。

 文科省は県民大会であらためて示された事実と、事実歪曲への怒りを素直に受け止めるべきだ。(社会部・吉田啓)


     ◇     ◇     ◇     

検定抜本改善へ歴史的一歩/高嶋伸欣氏・琉大教授


 県民大会準備に参画していた一員として、何より勇気づけられるのは、参加者が十一万人を超えたことだった。主権在民のこの社会では、行政や政策に関連して主権者が何らかの形で意思表示をしなければ、民主主義の健全さは保てない。

 大会準備中、実行委員会は五万人という控えめな目標数を設定した。それには弱気すぎないかという声も少なくなかった。しかし、だからと言って自信をもって大丈夫と主張できる根拠を見出すのは困難だった。

 それが連休明けの九月二十五日から様相が一変し、県内だけでなく県外どころか国外からもメディアや市民運動からの照会、連携行動の情報が洪水のように押し寄せた。

 東京中心のメディアの場合、腰をあげるのが遅すぎた面もある。それだけに、いよいよ沖縄での盛り上がりぶりを知って、動かざるをえなくなったのだとも考えられた。メディアの世界でも。一地方にすぎない沖縄が中央に揺さぶりをかけたのだと見て取れる。

 この解釈は、県民大会会場に駆けつけていた全国からのメディアの姿によって、裏付けられていた。中央のメディアを揺さぶり、この件について今後は真剣に取り組まざるを得ないと認識させる状況づくりに、われわれも多少は参画できたのだと、誇りに思いたい。

 このことは、伊吹文明前文部科学大臣の詭弁同然の弁明を、これまでのところ結果的には容認してしまっていた中央のメディアを、著しく緊張させたことになる。来月中旬に予定されている実行委員会の東京行動では、今回の大盛会を背景に強気の交渉が予想される。文科省交渉では、これまで一切の面会を拒否していた初等中等教育局長や事務次官のレベルでは済まされない。文科大臣の面会は当然だ。首相官邸の場合、首相はともかくとしても、官房長官が政府総体としての対応を示すためにも出て来ざるを得ないと思える。

 それに、ここまで解決を遅らせた結果、問題の根本原因が検定制度の構造的欠陥、特にきわめて非民主的な強権性と密室性にあることまで、多くの人々が気付くに至った。国会では野党各党が、「集団自決」の検定意見撤回だけでなく、検定制度の見直しにまで踏み込んだ議論を、国会で展開する準備に着手したという。

 この事態は、今回の「集団自決」検定問題が、戦後の教育界で積年の論点となっていた教科書制度の抜本的再検討をいよいよ不可避にしたことを意味している。それは、当然ながら全国の教育関係者を巻き込む議論になる。

 一九六五年度から全面実施された小・中学校の教科書無償制は、日本の民主的な教育を支えるものとして国内外で高く評価されている。その無償制が高知県の母親たちを中心とした市民運動が発端だったと、教育関係者の間では語り継がれている。同様に、やがて教科書制度が大幅に民主化された時、それは沖縄の県民大集会で示されたエネルギーが発端だったと語り継がれることになる。

 われわれは今、新たな誇れる歴史をまた刻むことができた。それがこの九・二九県民大集会だった。(社会科教育専攻)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709301300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月30日朝刊)

[11万人の訴え]

政府の見解を問いたい


史実の改ざんを許すな


 宜野湾海浜公園を埋め尽くした老若男女。三〇度を超える日差しの中で特にお年寄りの姿が目立ち、親子連れ、本土からの参加者も多い。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加した人々は十一万人を超え、大会決議が採択されてからも人の流れは途切れることがなかった。

 一九九五年の米兵による暴行事件に抗議した「10・21県民総決起大会」の八万五千人を大きく上回ったのは、沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」から旧日本軍の関与を削除しようとする教科書検定の動きに対し県民の怒りがわき上がったからだ。

 沖縄戦の記憶は県民の心の奥深くに脈打っている。自分の親や子どもに手をかけ、親類などが「集団自決」した関係者にはさらに重くのしかかる。

 文部科学省の検定は、「集団自決」の問題だけでなく、軍と住民が「共生共死」の関係におかれた上に、旧軍が住民を守らなかったという沖縄戦の実相をゆがめようとする動きに映る。

 「十一万」という数字はそのことに対する異議である。文科省は抗議の声が参加できなかった多くの県民にも幅広くあり、島ぐるみの大会だということを見過ごしてはなるまい。

 「戦(いくさ)が終わったときも暑かったよ。世の中、段々おかしくなっていくようだし、きょうは何が何でも来ようと思っていたさぁ」

 午後一時すぎ、離島から船とバスを乗り継いで来たという年配者のグループはこう話した。

 参加者は決して政治的な意図を持った人たちではない。農業に従事する人、漁業者、公務員、会社員、婦人会の仲間、世代を超えて中学生、高校生だけのグループもいる。

 「教科書の問題は私たちの問題。戦争のことは知らないけど、『集団自決』という怖いことも真実は真実として教えてもらいたいし、次の人たちにも伝えていくべきだ」と話したのは宜野湾市内の女子高生だ。

 参加者の願いはそこにこそあり、沖縄戦の実相を史実として歴史教科書に記述し、そのことから平和の尊さを学ぼうということである。


歴史の修正試みる動き


 では、現在の高校歴史教科書に記述されている「集団自決」における旧軍の関与が、なぜ今回、書き換えられたのだろうか。

 二〇〇六年十二月の検定意見受け渡しで、文科省の教科書調査官は次のような意見をつけている。

 「『集団自決』をせざるを得ない環境にあったことは事実であろうが、軍隊から何らかの公式な命令がでてそうなったのではないということで見方が定着しつつある」

 本当にそうだろうか。体験者の証言はむしろ旧軍の関与を如実に示すとともに、手榴弾を配布して“玉砕”を強いたことも明らかにしている。

 伊吹文明前文科相は「文部科学省の役人も、私も、安倍総理(当時)も、一言も容喙(口出し)できない仕組みで日本の教科書の検定というのは行われている」と述べた。

 だが、これまでの文科省の対応を考えれば詭弁と言わざるを得ない。

 調査官の意見と前文科相の発言は、旧軍の関与を消し去ろうとする試み以外の何ものでもなく、そこには政治的な思惑さえ感じさせる。

 歴史を修正する試みであり、歴史を歪曲しようとする動きが県民の理解を得られるはずがない。


信頼を取り戻す努力を


 「どういう意見が出るのかを見極めて、対応させていただきたい」。渡海紀三朗文科相の発言だ。

 岸田文雄沖縄担当相も「この問題に対する県民の思いの深さをあらためて感じている。私も福田内閣もしっかり受け止めていかねばならない」と話す。

 長い間うちに秘め、親やきょうだいに手をかけるという凄惨な体験を口にしなければならない状況に追い込んだのは、言うまでもなく国である。

 高校生を代表した読谷高校の津嘉山拡大君、照屋奈津美さんは、おじいさんやおばあさんに聞いた戦争中のことを「それを嘘だというのですか」と問うた。旧軍関与の削除には「嘘を真実と言わないでください。私たちは真実を学びたい。そして次の子どもたちにも伝えていきたい」と訴えている。この声を政府はどう受け止めるのか。

 教科書の信頼を取り戻すには事実をゆがめず、史実を真摯に記すことだ。県民の訴えを政府がどう聞くのか。国会の動きとともに注視していきたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070930.html#no_1

 

琉球新報 社説

検定撤回県民大会 国は総意を見詰めよ/歪曲を許さない意志固く

 「歴史の改ざんや歪曲(わいきょく)は決して許してはならない。禍根を残すことになる」

 会場を埋め尽くした参加者の胸の内は、老若男女を問わず恐らく、この一点に集約されるのではないか。

 苛烈な62年前の沖縄戦で日本軍が住民に「集団自決」(強制集団死)を強制したとの教科書記述が削除・修正された問題で、文部科学省の検定意見に抗議する県民大会は、最大規模に膨れ上がった。宜野湾海浜公園を目指して四方八方から押し寄せる人々の波は、開始後も切れ目なく続いた。11万人。参加者は大会が終わるまでひきも切らなかった。

記憶の底に刻む

 名前もない小さな川が、同じ流れを求めて緩やかにうねる。大会はそんなドラマを連想させる趣があった。

 空前の規模ばかりではない。テレビの前で中継を見守った多くの人々を含め、信条や立場、世代を超え、県民があらためて歴史認識の共有を確認しあった。その意義は、計り知れない。沖縄の歴史と県民の記憶の底に、将来にわたってしっかりと刻み込まれるだろう。

 実行委員会に加わった22団体の代表をはじめ、高校生、戦争体験者らが次々に登壇、撤回要求に応じない文科省の姿勢を厳しく批判したのは当然だ。

 「軍の命令や強制、誘導によって集団自決があったのは隠しようのない事実だ」「史実として正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさないことが私たちの責務」

 国・文科省は、大会で発せられた声に対し、どう向き合うのだろうか。検定によって沖縄戦の実相をゆがめることへの怒りや痛苦に満ちた訴えを、真正面から受け止めるべきだ。島ぐるみの抗議を軽視することは許されない。

 いかなる改ざん、隠ぺい工作が行われたにしても、真実の姿を必死に伝えようとする県民の意志をくじくことはできない。規制や圧力が強まるほど、語り継ぎたい思いは増幅するに違いない。

 文科省は、このことを強く肝に銘じるべきだ。

 記述の削除・修正から大会に至るまでの経緯を、いま一度振り返ってみたい。

 発端は今年3月末、2008年度から使用される高校日本史教科書で文科省が修正を要求する検定意見を付したことだ。集団自決に日本軍の命令や強要があったと記述した5社、7冊の教科書に対し「沖縄戦の実態について誤解する恐れがある」との検定意見である。

 この結果、すべての教科書から集団自決をめぐる軍の強制の記述が消えた。

 肉親同士が殺し合い、自ら命を絶つほかに選択肢がなかったのが集団自決の本質だ。教科書から「日本軍」という主語が消されれば、その実相はつかむことができなくなる。

国の論理は転倒

 だが教科書会社は主語を削ったり、あいまいな表現に書き換えたりした。文科省から合格判定を得るために大幅に修正した。

 県民の怒りを買ったのは、検定撤回を迫る要請団らの再三の要求に対し、文科省が門前払い同様に扱ったことだ。教科用図書検定調査審議会が決めることを理由ににべもない姿勢に終始してきた。

 町村信孝官房長官は大会前日の28日、記者会見で「検定制度の客観性、信頼性を失わせないよう政治の立場からあまり物を言うべきではない」と述べた。

 この発言は理があるように見えなくもない。しかし、実態はあべこべこではないのか。国の論理が転倒していると言わざるを得ない。文科省こそが教科書への信頼を損ねている。多くの県民はそう考えている。審議会とは実は名ばかりで、実質的論議がなかったことは委員らも認めているからだ。

 記述の削除・修正は、文科省の事実上の書き換え指示なしには起こり得なかった、とわたしたちは強く主張したい。

 本土各地でも議会決議が相次いでいる。訂正申請に向けた執筆者の動きも見られる。執筆者には県民総意を踏まえ、手を取り合って記述復活に傾注してほしい。研究者の良心を、ぜひとも示してもらいたい。

 文科省には繰り返し注文しておきたい。県民の決意の重さを見誤ってはならない。検定制度の見直しも不可欠だ。

(9/30 10:10)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27661-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(9月27日、28日)

2007年9月27日(木) 朝刊 1面

渡海文科相「県民大会 見極め対応」教科書検定問題

決議注視の構え

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は二十六日、就任後初の閣議後会見で、二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について、「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのかを見極めて、対応させていただきたい」と述べ、大会の規模や決議の内容を注視し、対応を検討する考えを明らかにした。

 渡海文科相は、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を文部科学省が削除した高校歴史教科書の検定に対し、県内で強い反発が起こっていることについて「地元の皆さんが集会することは昨日聞いた。われわれ(山崎派)の中には沖縄の議員もいる。沖縄の人にとって実はそうなんだろうなというのが率直な印象だ」と述べ、県民感情に理解を示した。

 その上で「先の大戦で沖縄の方々が大変大きな犠牲を払われた。そういった方々の犠牲の上に現在があることを重く受け止めなければならない。これは大臣であろうが政治家であろうが関係なしに、日本国民はそういう思いを持たなければならないと常日ごろから強く思っている」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709271300_01.html

 

2007年9月27日(木) 朝刊 27面

実相伝える高校生決意/「教科書には真実だけを」

【読谷】宜野湾海浜公園で二十九日に開かれる「教科書検定意見の撤回を求める」県民大会で、県立読谷高校(本永清校長)三年の津嘉山拡大君(18)、照屋奈津美さん(同)が高校生代表として登壇、メッセージを朗読する。読谷村波平のチビチリガマでは、「集団自決(強制集団死)」により、八十人余の住民が命を落とした。学校や親族から悲惨な戦争の実相を学び、高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制が削除されることに危機感を持っている。大会では「教科書には真実だけを書いてほしい」との願いを込めた一つのメッセージを二人で朗読する。

 津嘉山君の曾祖母は戦争中、祖母をかばい、流れ弾に当たって命を落とした。生き残った祖母からは、よく悲惨な戦争の話を聞かされた。県民大会で発表するメッセージを読んだ祖母は「しっかり頑張りなさいよ」と背中を押した。

 戦時中、親せきがチビチリガマに避難していたという照屋さん。将来は高校日本史の教師になりたいという。「教科書が変えられれば、私たちが習ってきたこととは違うことを教えなければいけなくなってしまう」と、大会での発表を決意した。

 津嘉山君は「教科書検定問題は沖縄だけが盛り上がっていて、温度差を感じる。県外の人にも事実を見てほしい」。照屋さんは「今まで知らなかった人にも『集団自決』がどういうものだったかを学ぶ機会になってほしい」と話す。

 大会では、読谷高校のダンス部が平和を訴える創作ダンスを披露する。本番を間近に控え、練習にも力が入る。

 二年の上原未希子部長(17)は「創作ダンスには沖縄の声を聞いてほしいという願いを込めた。大勢の人に、平和を願う気持ちを伝えたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709271300_02.html

 

2007年9月27日(木) 朝刊 27面

沖縄の声 著名人も賛同

 平和・民主・革新の日本をめざす全国の会(全国革新懇)は二十六日、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍強制の記述を削除させた文部科学省の検定意見撤回などを求めるアピールに、野球評論家の張本勲さんら著名人四十六人が賛同したと発表した。同会は二十七日、文部科学省を訪ねアピール文と集めたメッセージなどを提出し、検定意見撤回を求める予定だ。

 著名人約三百人にアピール文への賛同願いを送付。同封したはがきに四十六人が賛同の意思を表示し、タレントのピーコさんら二十五人がメッセージを寄せた。同会の荒川和明事務室長は「芸能人が多く賛同してくれたのが印象的。平和の危機を感じる人が多く、声を上げるべきだと感じたのではないか」と話した。

 メッセージを寄せたのは、写真家の石川文洋さん、哲学者の鶴見俊輔さん、脚本家の小山内美江子さんら。ピーコさんは「有った真実をなかったとする。それも国の力で歪められたら怖しいことです。それは民主的な国でなく独裁の国です」と記している。

 教育再生会議委員でエッセイストの海老名香葉子さんは「真実を伝えなければ再びあやまちを繰り返すかもしれません。あの無惨は伝えきれぬほどです。戦争下の命令に従って死んで逝ったのです」。俳優の宝田明さんは「弱い立場の罪なき沖縄県民の嘘いつわりのない悲痛な心の叫ぶ声が正しくとらえられ、二度と戦争を起こさせないためにも、堂々と後の世代に伝えてゆくべき」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709271300_03.html

 

2007年9月27日(木) 朝刊 2面

殉国死でなく犠牲者だ/中山元文科相に聞く

政治家では撤回不可能

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題は、与党の自民党内にも文部科学省の対応を疑問視する声が上がる。自民党の「教育再生に関する特命委員会」の委員長を務め、同委で沖縄の教科書問題を取り上げた中山成彬元文部科学相に聞いた。(聞き手=東京支社・吉田央)

 ―委員会で沖縄の教科書検定問題を取り上げた理由は。

 「沖縄戦や南京大虐殺、従軍慰安婦問題を話し合うために私が二回、主宰して開いた。特に沖縄については私は何度も足を運んでいる場所で、このまま放っておけない思いがあった。沖縄戦をよく知っている仲村正治、嘉数知賢の両衆院議員らに声を掛け、文科省に検定の経緯を説明させた」

 ―「集団自決」に関する検定後の記述をどう受け止めるか。

 「日本の検定制度は中国や韓国など外に弱く、沖縄など内に強い。私は委員会で文科省の担当官に『沖縄県民という国内の人への思いやりがないじゃないか』と相当、怒った。なぜ今どき記述を直すのかと聞くと、向こうは『(大阪で)裁判中だから』という説明だった。裁判が終結していないときに、なぜ書き直すのか。沖縄の心情が分からないのかという憤りがあった」

 「自民党でも若い人が増えているし、そういう人たちに教えるためにも開きたかった。会合には四十人ほどの国会議員が参加していたが、沖縄の議員の戦争体験を聞いて涙ぐんでいた人もいた。参加者全員が同じ気持ちだったはずだ」

 ―あなたと同様に南京や慰安婦の教科書記述を追及している自由主義史観研究会は、「集団自決」を自発的な美しい殉国死と位置付けている。

 「確かに私は彼らと付き合いがあるし、南京や慰安婦問題で戦後、米国に一方的に刷り込まれた自虐史観を排除するべきだと思っている。人口二十万人の南京で、三十万人の虐殺なんてあるわけがない。しかし、それ(集団自決)は全く違う。何が美しいか。(自決した県民は)犠牲者だ。そこは間違っちゃいかん」

 ―県民が求める検定の撤回は可能か。

 「検定に文句は言うが、われわれ(政治家)では直せない。日本の検定制度はそういうものだ。執筆者と検定官が、小さな島で追い詰められて逃げ回った沖縄県民の気持ちをよく理解し、執筆に当たり、検定に当たることが必要だ」

 ―検定制度を見直す必要性は。

 「検定がないと誰でも教科書を作れてしまう。ある程度、調査する人(教科書調査官)がいないとえらいことになる。日本は国定教科書ではない」

 ―福田内閣の発足で政府の対応は変わるか。

 「変わらないのではないか。今の政権は参院選の結果を受け、歴史や国家より、政治とカネ、年金、格差是正など内向きの政治を志している」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709271300_04.html

 

2007年9月27日(木) 朝刊 2面

普天間代替 今の政府案が理想的/石破防衛相

沖合移動を困難視

 【東京】石破茂防衛相は二十六日、就任後初の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の移設で県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、「今の形が理想的。合理的な理由がない以上これを変更することは困難という点に何ら変わりはない」とあらためて困難視した。

 一方で石破氏は「一切聞く耳を持たぬつもりはない。本当に地元の方がどう言っているのか、実際に(航空機が)どのように飛ぶのか、大臣としてきちんとした認識を持ちたい」と述べ、今後、県や名護市の意向、代替施設の運用計画などについて自ら把握に努める考えを強調した。

 その上で「地元の理解と協力なくして基地の存続はあり得ない。日米同盟存続のためにも地元の理解が最も重要。『政府は誠心誠意やってない』と地元の方に受け止められるようなことは絶対にあってはならない」との認識を示した。

 今年一月から開かれていない普天間移設に関する協議会については「できるだけ早期に開かれるべきだ。それが開かれるような環境をきちんと整えていくことが政府の責任で、岸田文雄沖縄担当相とともに私の責任であると思っている」と説明。岸田沖縄相と連携しながら協議会の早期再開を目指す考えを示した。

 石破氏の着任に先立ち、外相に横滑りした高村正彦前防衛相は防衛省での離任式で、普天間の移設・返還について「米軍再編を実施していく上でのキーポイント」と指摘。その上で「自治体や住民との信頼関係が大切。日米合意に従い国の考えを丁寧に説明しつつ地元の意見も聞き、誠実に話し合い、一日も早く実現していただきたい」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709271300_05.html

 

2007年9月27日(木) 朝刊 2面

県議会きょうから代表質問

 県議会(仲里利信議長)九月定例会の代表質問が二十七日午前十時から始まる。二十八日までの二日間の日程で、初日は国場幸之助氏(自民)と佐喜真淳氏(同)が登壇し、米軍普天間飛行場の移設問題をめぐる環境影響評価(アセスメント)方法書についての今後の対応や、高校歴史教科書検定問題に対する仲井真弘多知事の見解などをただす。

 十月一日から四日までの日程で開催される一般質問には与野党二十五人が質問通告した。日程と質問者は次の通り。

 【一日】狩俣信子氏(護憲ネット)▽当銘勝雄氏(同)▽前田政明氏(共産)▽渡嘉敷喜代子氏(護憲ネット)▽新川秀清氏(同)▽外間久子氏(共産)

 【二日】嘉陽宗儀氏(共産)▽兼城賢次氏(護憲ネット)▽当山全弘氏(社大・結連合)▽奥平一夫氏(同)▽比嘉京子氏(同)▽玉城義和氏(無所属)

 【三日】當間盛夫氏(維新の会)▽赤嶺昇氏(同)▽吉田勝廣氏(無所属)▽辻野ヒロ子氏(自民)▽仲田弘毅氏(同)▽岸本恵光氏(同)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709271300_06.html

 

琉球新報 社説

飛行経路隠し 地元に対する背信行為だ

 政府は普天間代替施設周辺での陸域上空飛行は避けられないとの米側の意向を認識しながら、その事実を伏せて名護市など地元と協議していたことが米公文書で明らかになった。

 島袋吉和名護市長はその事実を知らされないまま、「名護市辺野古、豊原、安部地区上空の飛行ルートを回避する」との基本合意書に額賀福志郎防衛庁長官(当時)とともに署名し、政府の新沿岸案を基本的に受け入れた。

 その際、島袋名護市長は「市の考え方が受け入れられ、大変うれしい。長官に深い敬意を表する」とまで述べている。実際には、政府は市長を裏切っていたのである。

 米軍機の陸域上空飛行回避が日米で合意していないことが隠されていたとあっては、基本合意事項の実効性に大きな疑問符が付く。

 米側の陸域上空飛行要求は十分に予想されることではある。政府はその要求を拒否し、米側の了解を取り付けた上で、名護市などと基本合意文書を取り交わしたとでも言うのだろうか。

 地元にとって重要な問題であり、米側要求に対する対応を含め、政府は詳細に説明するべきだ。

 滑走路の沖合への移動を求める名護市の要求を突っぱねるなど、政府にはこの間、地元意向をしっかりとくみ取っていく姿勢が見えない。

 米側の意向を最優先していることがその背景にあり、今回の飛行経路隠しもその延長線上にあるのではないか。

 しかしながら、政府は島袋名護市長や東肇宜野座村長と民間地上空の飛行を回避することを約束した以上、それを実現する責任がある。地元との約束を軽く見ることがあってはならない。

 陸域上空の飛行を政府が容認するようなことがあれば、名護市や宜野座村だけでなく、県民への重大な背信行為である。陸域上空での飛行は認めない姿勢を貫き、米側からその確約を早急に取り付けることが求められる。

 政府の説明では、V字形滑走路2本はそれぞれ離陸専用と着陸専用だったが、米側は2本とも離着陸での使用を求めている。

 名護市などとの基本合意後、米側の新たな要求が次々と明らかになるのはどういうことだろう。まだ隠されている事項があるのでは、との疑念がわく。

 米公文書は移設計画の「すべての側面が明らかにされないなら、この計画は失敗に終わるだろう」としている。政府の場当たり主義的な姿勢によって、普天間の危険性除去が行き詰まった今の状況を暗示していると言えないか。

 政府は機会あるごとに「地元負担の軽減」を強調する。言葉だけでなく、県民要求に沿って行動に移すことが必要だ。

(9/27 10:34)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27547-storytopic-11.html

 

2007年9月28日(金) 朝刊 1面

知事 アセス意見提出も視野/手続き上の役割考慮

 県議会(仲里利信議長)九月定例会は二十七日午後も、代表質問が行われた。米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見への対応について、知念建次文化環境部長は「環境影響評価手続きでの役割を踏まえ、今後の対応を検討している」と述べ、提出も視野に検討していることを明らかにした。仲井真弘多知事は「アセス手続きにおける知事意見の位置付けなども考慮し、今後の対応を検討している」と述べた。いずれも佐喜真淳氏(自民)への答弁。

 知念文化環境部長は方法書の知事意見について、「市町村長意見を勘案し、住民等意見に配意しつつ、地域の環境保全に責任を有する立場から意見を述べるという環境影響評価手続きでの役割を踏まえ、今後の対応を検討している」と述べた。

 二〇一〇年に日本で開催が決定しているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に関する県の対応について、仲田秀光観光商工部長は「関係機関からの情報収集に努め、開催にかかわる地元負担や経済効果など、総合的な見地からAPECの誘致について検討している」と述べ、県開催に向けて意欲を示した。

 上原昭知事公室長は、中華航空機爆発炎上事故の課題について「那覇空港事務所の那覇空港緊急計画に定められた県や消防等への連絡が行われなかったため、対応に遅れが生じた」との認識を示し、今後、同事務所に対し、通信訓練の実施や連絡体制の内容の見直しを働き掛けていく考えを示した。国場幸之助氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281300_01.html

 

2007年9月28日(金) 朝刊 2面

住民意見書 377通受理/普天間代替環境アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は二十七日、郵送分(同日消印有効)を除く意見書の受け付けを終了、計三百七十七通を受理した。同局は近く意見概要を県などに送付する。これを受け、県は早ければ十二月上旬にも知事意見の提出期限を迫られる。方法書の受け取りを「保留」している県の対応が注目される。

 二〇〇四年の辺野古沖合への移設案(従来案)の方法書に対する意見書は計千百七十五通、郵送分を除く受付終了日の段階では八百四十六通が提出された。意見概要は受付終了日(六月十六日)から二カ月以上経過した八月末に、八百五十三件に集約して県などに送付されている。

 アセス手続きでは、県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で、知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に沖縄防衛局に提出。同局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県アセス条例は、知事意見をまとめるために、必要があれば期間内に県環境影響評価審査会の意見を聴くことができる、と規定。県が審査会に諮問するのかや、名護市などの対応も焦点になる。

 意見書は「飛行場の総面積が明示されていない」「V字形滑走路二本のそれぞれの幅が明示されていない」「航空機の種類についてMV22オスプレイなど具体的な機種の記載がない」「飛行ルートや演習内容が不明」など方法書の内容の不備を指摘している。


環境団体は156件を提出/ジュゴン監視団


 米軍普天間飛行場代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書に対する意見書の提出締め切り日となる二十七日、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団(東恩納琢磨団長)のメンバーらは沖縄防衛局を訪ね、計百五十六件の意見書を提出した。

 同監視団では同日提出分以外にも、メンバー個人で数件、郵送で提出しているという。

 同監視団と沖縄平和市民連絡会では同日、県議会に方法書の撤回などを求める陳情を提出した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281300_02.html

 

2007年9月28日(金) 朝刊 1面

あす宜野湾で県民大会

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が、二十九日午後三時から宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれる。二〇〇六年度の教科書検定で、高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題に対し、検定意見の撤回や記述の回復を求める。実行委員会(委員長、仲里利信県議会議長)は「県民の総意を示し、必ず検定意見を撤回させよう」と五万人以上の参加を目指している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281300_03.html

 

2007年9月28日(金) 朝刊 29面

北部農100人超参加 生徒が力

 【名護】「次世代に真実を伝えたい」「生徒が信用できる教科書であってほしい」―。北部農林高校の生徒会が、二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向けて、同校生徒の参加を呼び掛けている。今週から活動を始め、すでに四十人近くの生徒が参加の意思を見せ、教職員も家族を含めて六十人以上が参加を予定している。実際に教科書を使う学校現場から、教科書書き換えに異議を唱える声が広がっている。

高校生だから


 同校で二十、二十一日に開かれた校内リーダー研修で、教科書検定問題が話題に上り、生徒会から大会参加への声が上がった。生徒会長の島袋奈津子さん(三年)は「高校生だからこそできることがあるはず。学生は教科書は信頼できると思って学んでいるが、このままでは信じられなくなる。私たちに真実を教えてほしい」と訴える。


ポスター制作


 生徒会では、二十五日からポスターを各クラスに張り、校内放送で生徒の参加を呼び掛けている。副会長の平安山歩さん(三年)は「少しずつだけど、ほかの生徒たちにもこの問題への関心が高まっている」と、問題意識の広がりを実感している。

 当日は、学校の大型バスに乗り込み会場に駆けつける。顧問の金城育子教諭は「生徒たちが自主的に活動したことは意義深い。高校生でも、自分たちが感じたことや表現したいことを、行動で示せるという自信になる」と話し、生徒たちの活動に頼もしさを感じていた。


バス2台仕立てお年寄りを招待/うるま市の仲松隆さん

大会成功願う


 【うるま】「県民が一つになり声を上げなければ」―。県民大会に向け、うるま市高江洲の建築業、仲松隆さん(53)は個人で六十人乗りの大型バス二台をチャーターした。近所のお年寄りが移動手段に困っているため、バスを手配したという仲松さんは「多くの人が協力し、参加人数五万人を超えなければ」と大会の成功を願っている。

 九月上旬に参加した地域のグラウンドゴルフ大会で、お年寄りが会場までの交通手段がなく悩んでいるという話を耳にし、参加人数の確認より先にバスを予約した。

 その後、地域を回り、カンパと参加を呼び掛けた。人が集まるかという不安もあったというが、バス二台はすぐに満席となった。

 仲松さんは、幼いころから米軍の捕虜になって命を取りとめた父や、幼児のころ母親に置き去りにされてしまった親族から沖縄戦の話を聞き、「二度と悲惨な戦争を起こしてはいけない」という教えを学んだ。

 その教えは、四十歳を過ぎて授かった照平君(11)、直哉君(9)、佐也伽ちゃん(7)ら愛する子どもたちへ語り継いでいる。

 当日は子どもと妻の清美さん(45)の家族五人、そして戦争体験を経て平和を願う多くのお年寄りと会場へ向かう。「行政まかせでなく一般の人たちの意識を高めなければ、県民の声は政府に届かない」と言葉に強い思いを込めた。


体験者の証言代読


 「県民大会」実行委員会は二十七日、那覇市内で最終打ち合わせを行い、座間味島の「集団自決(強制集団死)」体験者の宮平春子さん(81)=座間味村=が式典であいさつ(代読)すると発表した。宮平さんは「日本軍の命令で集団自決が始まった。教科書には正しいことを書いてほしい」と訴えている。

 宮平さんに代わり、親類が代読する。宮平さんは「集団自決で亡くなった兄の子どもが生きていたら、もう六十歳以上になる。手にかける前に抱きしめ、号泣した兄のことを思い出すと今でも苦しい」と話した。

 宮平さんは今年七月の県議会文教厚生委員会の現地視察でも、自らの体験を証言している。宮平さんは一九四五年三月、当時村助役で兄の宮里盛秀さんが「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するよう言われている」と父・盛永さんに話した、と証言している。


那覇市長・議長ビラ配りPR


 那覇市の翁長雄志市長と市議会の安慶田光男議長、議員ら約五十人は二十七日、同市のパレットくもじ前で市民にビラ千枚を配り、県民大会への参加を呼び掛けた。

 翁長市長は「皆で結集し大会を成功させることで、日本の将来を築き上げよう。イデオロギーや党派を超えてウチナーンチュの気持ちを伝えていこう」と訴えた。

 同市は、二十八日まで市役所本庁一階に、大会への寄付金箱を設置している。


高知市議会が意見書を可決


 高校歴史教科書の検定意見について高知市議会は二十七日、国に検定意見撤回を求める意見書を賛成多数で可決した。

 意見書は「沖縄戦は決して遠い南の島の出来事ではない。戦争の実相を伝えることは、悲惨な戦争を再び起こさないための礎だ」と訴えている。

 沖縄戦では高知県出身者も多数死亡していることなどから民主、社民両党系会派が提案した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281300_04.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 1面

10年発言 撤回要求/嘉手納議会、抗議決議

 【嘉手納】米軍嘉手納基地司令官のブレット・ウィリアムズ准将が「未明離陸は十年は続くだろう」などと発言、未明離陸を継続する姿勢を示した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十八日午前、臨時会を開き、発言の撤回と謝罪を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。同司令官、駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事らに郵送する。

 同基地所属のF15戦闘機など計五機が地元の中止要求を無視し、十一日未明に離陸を強行したことを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)のメンバーが二十一日に抗議し、未明離陸回避を求めたことに対し、同司令官は「三沢や岩国で未明離陸を繰り返しても抗議はない。抗議があるのは沖縄だけ」などと発言した。

 意見書、抗議決議では、嘉手納基地を岩国基地(山口県)、三沢基地(青森県)と同一視した発言について「基地被害に苦しむ沖縄の実情を知らなすぎる。もっと地域住民の声を真摯に受け止めるべきだ」と批判。

 未明離陸を継続する姿勢を示したことについては「町民は神経をとがらせ、怒りと不安にかられている」として、発言の撤回、謝罪のほか、未明離陸の中止などを求めている。

 また、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などが非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している問題についても全会一致で抗議決議と意見書を可決した。

 「大量殺人兵器を装着した訓練を沖縄周辺の提供区域で実施すること自体、大きな問題。事前連絡や情報提供もなく町民無視の横暴な態度だ」などとして、同戦闘機の飛来、実弾訓練の中止、両爆弾の撤去などを求めている。

 あて先は駐日米国大使、在日米軍司令官、第一海兵航空団司令官。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_01.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 1面

医療費助成 宜野湾議会が条例可決/来月から中3まで無料

 【宜野湾】宜野湾市議会(伊波廣助議長)は二十八日の九月定例会最終本会議で、中学校卒業時までの入院費、四歳児までの通院費をそれぞれ無料にする医療費助成条例の一部改正案を全会一致で可決した。十月一日から施行する。

 県の基準では入院費が就学前まで、通院費は三歳児までとなっている。多くの市町村が県と同様の年齢に設定する中、中学三年までの入院費無料化は県内最長。所得制限も設けていない。三歳児の通院の際、各医療機関ごとに支払う一カ月千円の負担も市が賄う。

 市の財政負担は年間約四千万円、本年度は約千五百万円の見込み。国民健康保険の収納率を改善し、一般会計の繰り入れ分などを財源に充てるほか、オリジナル健康体操の普及など市民の健康増進に力を入れる。

 同市では、四歳までは通院、入院費、五歳から中学校卒業までは入院費の負担がなくなる。助成方法は償還払いのため、市民はいったん医療機関に費用を支払った後、市に申請して助成を受ける。

 また、同議会は駐留軍関係離職者等臨時措置法の再延長を求める意見書も可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_02.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 7面

検定撤回へ300人集結/都内集会 アピール採択

 【東京】二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」を支援する「県民大会プレ集会@首都圏」が二十七日夜、都内で開かれ、約三百人が参加した。県出身国会議員や沖縄戦研究者が、日本軍の強制や命令なしに「集団自決(強制集団死)」は起こり得なかったことを強調。「沖縄戦の事実を抹殺する検定意見の撤回をもとめる集会アピール」を満場一致で採択し、全国に運動を広げる方針を確認した。

 大阪で係争中の「大江・岩波沖縄戦裁判」で被告側を支援する首都圏・大阪の両団体と、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」が主催した。

 沖縄戦研究者の林博史関東学院大教授は、日本軍が駐留しなかった前島や浜比嘉島などでは「集団自決」が起きていなかった事例を指摘。「『集団自決』には日本軍が決定的な役割を果たし、渡嘉敷、座間味、慶留間の三島は軍の論理が最も典型的に表れた例だ」と強調し、教科書に軍の強制を明記する必要性を説明した。

 「すすめる会」の山口剛史事務局長(琉球大准教授)は「日本軍の強制記述の復活にとどまらず教科書検定制度にメスを入れ、全国の子どもたちとアジアの人たちにどういう教科書を示すかという運動を続ける必要がある」と述べ、長期的な運動体制の確立を訴えた。

 連帯あいさつをした山内徳信参院議員は「教科書が真実を語らなくなれば政府、政治は音を立てて戦争に向かっていく」と危機感を強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_03.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 7面

県民大会へ広がる連帯/姫路でもビラで訴え

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に連帯、兵庫県姫路市内で憲法九条を守るために活動している各団体が大会当日の二十九日と三十日、姫路駅前などで教科書検定問題や「大江・岩波沖縄裁判」について訴えるビラを配布と署名活動を行う。はりま文化9条の会の泥憲和さん(53)は「これは沖縄だけの問題ではない」と、意気込んでいる。

 泥さんはインターネットを通じ県民大会開催を知った。「沖縄では県民が一体となって大会に取り組んでいる。戦争の記憶が色濃く残っている沖縄。同じ日本人として、知らないことはおかしい。検定の先には改憲も見え隠れする」と指摘した。

 市内で活動する各団体に声を掛け、県民大会への連帯を決定した。活動に加わる姫路空襲を語り継ぐ会の高井今夫事務局長(56)は「『集団自決(強制集団死)』や南京大虐殺などの教科書問題は、九条の骨抜きにつながる。沖縄と本土ではいつも温度差があるが、同じ日本人として史実を共有していく必要がある」と、力強く語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_04.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 1面

「県民の怒り全国へ」/恩納村の稲嶺盛良さん

 「県民の怒りを全国に訴えたい」―。恩納村真栄田の稲嶺盛良さん(49)は、愛媛県松山市で検定意見撤回の活動を続けている義父の久保田一郎さん(76)に毎晩のように本紙の連載記事をファクスで送り続けている。八月から送り始めた記事は五十本以上。親子の草の根の連携が、愛媛県内で広がり、県議会や教育委員会への請願提出につながっている。(平良吉弥)

 稲嶺さんが送る記事は、座間味村や渡嘉敷村で起きた「集団自決(強制集団死)」の体験者の証言をつづった本紙の「命語い」や、教科書検定に抗議する戦争体験者の怒りを伝える連載「教科書改ざんただす」など。

 本土紙で教科書検定問題の記事が少ないことに不満を漏らした久保田さんを気遣った稲嶺さんが、毎晩のように記事を送るようになった。

 稲嶺さんは「沖縄に基地負担を押し付けても何とも思わない政府に不満があり、歴史改ざんも許せなかった。県外で活動する義父のために何かしたかった」と話す。

 久保田さんは「検定問題は沖縄だけの問題ではない。記事を読んで沖縄県民の怒りを共有している。頑張りたい」ときっぱり。

 今月十九日、久保田さんが代表を務める「愛媛?沖縄ゆいまーる」など三団体が愛媛県議会、松山市議会に検定意見撤回の意見書可決を求めて請願を提出。連携する別の市民団体も県教育委員会や二十ある市町教育委員会に検定撤回を文科省に要求することを求める内容の請願を出した。

 久保田さんは「陳情の採択は難しい状況だが、歴史の歪曲を許さない取り組みを愛媛県で続けていく」と話す。稲嶺さん、久保田さんは二十九日の県民大会に参加する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_05.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 1面

内閣で受け止め対応/沖縄相「丁寧に要請聞く」

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十八日午前の閣議後会見で、教科書検定意見撤回を求める県民大会が二十九日に開かれることについて「この問題に対する県民の思いの深さをあらためて感じている。私も福田内閣もしっかり受け止めていかなければならない」と述べ、内閣として対応するべき問題との認識を明らかにした。

 十月中旬に大会決議を受けた要請団が上京することを念頭に「できるだけ丁寧に、話や思いを聞かせていただかなければならないと思っている」と述べ、要請団と会談する意向を明らかにした。

 米軍嘉手納基地で未明離陸が相次ぎ、地元の反発が強まっていることには「未明離陸による騒音は地元の生活に直結する重大な出来事と認識している」と現状を問題視。「住民生活に極力、影響がないよう(米軍側に)最大限の配慮の働き掛けを続けないといけない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_06.html

 

2007年9月28日(金) 夕刊 1面

沖振法の延長 点検後に判断/県議会代表質問で知事

 県議会(仲里利信議長)九月定例会の代表質問二日目が二十八日午前、始まった。五年後に期限切れを迎える沖縄振興特別措置法(沖振法)延長について、仲井真弘多知事は「社会資本の整備状況や産業振興の制度などについてさまざまな角度から検証する必要がある。次年度から総点検作業を開始することにしており、同措置法の延長などについて適切に対応したい」と述べ、総点検作業の結果を見極めた上で延長の必要性を最終判断したいとの認識を示した。

 また、仲井真知事は二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について「九月十一日の庁議で全部局長に参加を呼び掛けた。多くの県民が参加され、大会が成功することを念願している」と述べ、大会の成功に期待感を表明した。いずれも當山弘氏(護憲ネット)の質問に答えた。

 この日は、高嶺善伸氏(護憲ネット)、前島明男氏(公明県民会議)、喜納昌春氏(社大・結連合)の三氏が質問に立つ予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709281700_07.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月24日、25日、26日)

2007年9月24日(月) 朝刊 1・2・21面

自民総裁に福田氏/沖縄問題は不透明

 自民党総裁選は二十三日午後、党所属国会議員と各都道府県連代表者による投開票を行い、福田康夫元官房長官(71)が投票総数の62・5%に当たる三百三十票を得て大勝、第二十二代総裁に選出された。

 自民党の新しい顔が二十三日、福田康夫元官房長官に決まり、父親と同じ七十一歳で首相の座に就く。麻生太郎幹事長と争った党総裁選。「国民の声を聞いていない」と、しらけムードも漂った。県内からは「沖縄に対する理解度が未知数」と戸惑いの中、基地問題や県民大会を控えた教科書検定問題の関係者からは、期待とあきらめの声が交錯した。

 米軍普天間飛行場の名護市移設を容認する荻堂盛秀同市商工会長は「(福田氏が)沖縄をどの程度理解しているか未知数だ。新しい総裁にはいつも期待するが、その都度期待はずれになっている」と、こう着状態の移設問題にやるせない様子。福田氏が北朝鮮問題で「対話」を強調する点を引き合いに、「基地問題でも地元の意向に耳を傾けてくれることに期待したい」と話した。

 移設先の辺野古区有志らでつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「米軍再編の方向性が大きく変わるとは思えない。粛々と移設作業を進めてほしい」と述べた。

 一方、ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「沖縄問題を変える人ではない」ときっぱり。県内の海兵隊がグアム移転後も沖縄に一万人残ることに「県民に対してうそをつく自公政権を変えるべきだ」と言い切った。

 ジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨事務局長は「安倍内閣を継承するだけのつなぎの総裁。沖縄問題も進展する期待もない」と語った。

 米軍機の未明離陸に抗議の声を上げ続けている、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「福田氏が、沖縄になじみがあるとは聞いていないが、沖縄の痛みを分かって、騒音被害や跡地利用問題など基地問題にこれから真剣に取り組んでもらいたい」とした。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「福田氏は、『地方との信頼回復』と言っているようだが、それならまず、伊吹文明文科相を留任させないでほしい。沖縄の意思を受け入れてもらいたい」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

沖縄相経験者では初/検定問題対応に注目


 【東京】自民党総裁に選出された福田康夫氏は、官房長官に就任した二〇〇〇年、沖縄開発庁長官を一カ月余り兼務した。沖縄担当相経験者が首相に就けば初めてのケースになる。〇四年五月まで務めた官房長官時代には、米兵による事件・事故への対応や沖縄振興などで稲嶺恵一前知事ら県関係者と頻繁に面談しており、「沖縄の課題を熟知している」と県選出国会議員。近隣諸国への配慮で靖国神社を参拝しない考えを示すなど、町村派では数少ない「ハト派」とされ、安倍政権が撤回を拒んだ高校歴史教科書の検定問題への対応も注目される。

 福田氏は二十五日に衆参両院の首相指名選挙を経て、首相に選出される見通し。県関係の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」会長の仲村正治衆院議員は、高校歴史教科書の検定問題に関する県民大会後に福田氏への直談判を申し入れる考えを示し、事態打開への期待感をにじませた。

 沖縄開発庁長官時代は任期が短かったこともあり目立った実績はないが、官房長官時代には小泉純一郎首相の施政方針演説(〇三年一月)に初めて盛り込まれた「沖縄科学技術大学院大学構想」を主導した。

 それまでは内閣府沖縄担当部局を中心に取り組んでいたが、「実現に向けて政府の体制確立が重要」と、政府一体で取り組む必要性を強調。政府内に大学院大構想の関係閣僚会合を立ち上げ、予算確保など座長として構想実現に道筋を付けた。

 〇一年六月に北谷町で起きた米兵による女性暴行事件では、容疑者の身柄引き渡しをめぐる日米交渉を指揮した。当時を知る政府関係者は「内閣の番頭として、基地問題の行方を心配していた」と明かす。

 普天間飛行場の名護市辺野古沖への代替施設建設をめぐる県と政府の協議が本格化していた〇三年五月には、県商工会議所連合会会長を務めていた仲井真弘多氏(現知事)とも会談。代替施設建設の際に県内企業の重点活用を求める仲井真氏に対し、「最善の努力をする」と理解を示した。

 一方、同月末には米紙が報じた在沖米海兵隊の兵力撤退計画を受け、県が独自に米国防総省に事実関係を照会したことに、「政府に聞いてくるなら話も分かるが、どこに問い合わせをしたのか。政府がそういう交渉をしている」と記者会見で不快感を表明。報道陣に「どれだけ権威がある情報なのか。よく確認してください。常識で」と述べるなど、クールで皮肉屋の一面をのぞかせた。

 福田氏の父で、元首相の故赳夫氏も沖縄振興に携わっていた。大蔵相時代に、復帰前の立法院与党だった民主党(当時)の吉元栄真副総裁らとパイプを築き、米軍統治下の沖縄への政府援助(日政援助)の拡大に取り組んだ経緯がある。


沖縄問題に指導力を/県政反応


 福田氏が次期首相となる自民党総裁に選出されたことに、県幹部らは「沖縄開発庁長官を務めた経験もあり、沖縄の実情にも理解がある」「リーダーシップを発揮して、基地問題など沖縄の課題解決に努めてほしい」と期待を寄せた。

 県幹部の一人は「沖縄は全国と比べても難しい問題が山積している。これらの課題解決は官僚主導では困難で、政治的な指導力が不可欠だ」と指摘。「福田新総裁は人柄的にも実直そうで、沖縄の抱える痛みを親身になって理解し、県民の期待に沿って課題解決を図ってくれるものと期待している」と述べた。

 別の幹部は「福田氏は沖縄をよく知っていると思うので期待できる。那覇空港の拡張整備など、沖縄振興の主要プロジェクトは着実に進めてほしい」と注文。

 安倍政権が掲げたアジア・ゲートウェイ構想の行方を懸念しつつ、「(福田氏は)アジア重視の視点を持っており、方向性は大きく変わらないと思う」との見方を示した。

 また、小泉改革の影響で広がった都市と地方の格差問題に触れ「地方が自立できるよう、財政面などを含め地方に配慮した政策を示してほしい」と期待する幹部もいた。


沖縄の課題解決に期待/仲井真知事コメント


 本日、福田康夫氏が自由民主党総裁に選出されましたことに、心からお祝いを申し上げます。

 福田氏は、沖縄開発庁長官を務められたことがあり、沖縄の実情も理解されているものと思います。

 総理に就任された暁には、基地問題の解決や自立型経済の構築など、沖縄の抱える諸課題の解決に向けてご尽力を賜りたいと思います。

 私も、できるだけ早い時期に直接お会いして、沖縄の諸課題をご説明申し上げたいと考えております。


「沖合移動に理解求める」/名護市長

 【名護】自民党新総裁に福田康夫氏が選出されたことについて、米軍普天間飛行場移設先の名護市の島袋吉和市長は二十三日、「党としての態勢を立て直し、沖縄問題にしっかり取り組んでもらいたい。名護市としてはこれまで同様、V字形滑走路をできるだけ沖合へ、というスタンスを申し上げる。地元の意向をくみ取っていただけるよう、ご理解とご協力をお願いしたい」と話した。

「普天間」解決は海兵隊の撤退で/宜野湾市長

 【宜野湾】自民党の新総裁に福田康夫元官房長官が選ばれたことについて、宜野湾市の伊波洋一市長は二十三日、「県民の基地への思いが分かる内閣をつくってほしい」と注文した。

 普天間飛行場問題については「新たな基地を建設せず、対話による安全保障を実現してほしい。沖縄から海兵隊が撤退できるよう道筋を付け、抜本的対策を講じるべきだ」と話した。

県関係5議員 福田氏に投票

 【東京】二十三日に投開票された自民党総裁選で、県選出・出身の自民党国会議員五人は、全員が福田康夫氏に投票した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_01.html

 

2007年9月24日(月) 朝刊 21面

県内首長、文科省を批判/専門家加え再審議を

 高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、文部科学省の教科書審議会に沖縄戦の専門家がおらず、同省の検定意見原案が議論もなく通ったことに、県内四十一市町村の首長は「記述に手を加えるならば専門家の意見を聞くべきだ」と同省を厳しく批判していることが二十四日、本紙のアンケート調査で明らかになった。また、目抜き通りでの大会告知、バス手配など大会の準備も各自治体で進んでいる。

 アンケートは二十一日までに回答を得た。日本軍の強制の記述削除について文科省は「学術的な検討を得た審議会の決定」と説明している。

 金城豊明豊見城市長は「もともとあった記述に手を加えるならば専門家の意見を聞くことが、学術的にも公正・中立ではないか」と指摘。城間俊安南風原町長は「文科省が審議過程を正当化する姿勢は疑問」とした上で、両首長ともに「集団自決」の日本軍の強制を否定する「文科省の意図を感じる」と訴えた。

 大浜長照石垣市長は「これまでも専門家の審議を経ずに歴史的事実を歪曲していないか」と懸念を表明。座間味村の仲村三雄村長は「沖縄戦の専門家もおらず『学術的な検討を経た』とは言語道断だ」と同省を厳しく批判した。

 教科書検定制度の在り方について知念恒男うるま市長は「審議会を公開し、公正な審議を行うべきだ」と主張。翁長雄志那覇市長は「文科省は検定意見を撤回し、今回出てきた新たな証言も含めて学術的に検討してはどうか」と訴えている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_02.html

 

2007年9月24日(月) 朝刊 2面

「普天間」県民意思が鍵/小川氏講演

 県経営者協会(知念榮治会長)の経営懇話会が二十一日午後、那覇市のかりゆしアーバンリゾート那覇であり、国際政治・軍事アナリストの小川和久氏が「国際水準から見た日本の危機管理」と題して講演した。

 小川氏は、現行の日米安全保障体制が国防上も軍事費面でも最良の選択肢との認識を示すとともに、危機管理の司令塔となる日本版国家安全保障会議(NSC)の早期創設の必要性を強調。

 膠着状態にある米軍普天間飛行場の移設問題については「県民が当事者としての危機感を持って政府と向き合い、動かさないといけない」と訴えた。

 小川氏は「日米同盟に頼らず、自立した軍事力で今のレベルの安全をキープするには、自衛隊員が現在の約五倍の百二十万人、軍事費も二十兆円は必要」と説明。「(日米同盟か、自主防衛路線がいいのか)コストとリスク面から国民に問うべきだ」と語った。

 返還同意から十年経過しながら進展しない普天間移設問題は「政府に戦略的思考がないのが原因」と指摘。縦割り思考の官僚に頼っては展望は開けず、政治が主導権を持って対応していかねばならない―と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709241300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月24日朝刊)

[福田自民党総裁]

難局打開は容易でない

緊急避難的な党首選び

 自民党総裁に福田康夫元官房長官が選ばれた。二十五日に国会で第九十一代首相に指名され、同日中にも新内閣を発足させる予定だ。

 緊急避難的な党首選びだった。

 総理総裁を目指すからには、本来、明確な政権構想が必要だ。こういうことをしたいという力強いビジョンを発表し、構想実現のための具体的な政策を提示して対立候補と論戦を展開することが求められる。

 だが、本格的な政策論争が展開されたとは言い難い。

 安倍政治の功罪を論じた上で、参院選の民意にどう答えるか、具体的に提示すべきであったが、安倍政治の総括は封印されたままだった。

 「政治とカネ」の問題にしろ年金問題にしろ、国民の信頼を回復するための具体的な処方せんはついに示されなかった。

 緊急登板を余儀なくされた福田氏にそこまで言うのは酷かもしれないが、正直な話、総理総裁になって何をしたいのかがあまり伝わってこなかった。

 選挙期間中に示された構想はあまりにも付け焼き刃的で、本人も認めるように「準備不足」はいかんともし難いものがあった。

 小泉純一郎前首相の郵政民営化、安倍晋三首相の憲法改正に代わる福田氏ならではの独自の政権構想を早急に練り直し、国民に示すべきである。

 福田氏の政権構想を吟味することもなく、党内九派閥のうち八つの派閥が雪崩を打って早々と福田氏支持を決めたのも今度の総裁選の大きな特徴だ。

 総裁選が告示された十四日に、派閥を率いる山崎拓、古賀誠、谷垣禎一の三氏がそろって福田氏に会い支持を伝えた。「小泉―安倍」路線の修正を期待しての支持表明である。

 勝ち馬に乗る心理も加わって、この流れが加速し、あとは消化試合の様相を呈した。

 八つの派閥がなぜ福田氏を支持したのか。その真意が実は国民の側からはよく分からない。派閥政治の復活を思わせる動きであった。

 麻生太郎幹事長が予想外に善戦したのは、古い自民党への回帰の動きを警戒したからではないだろうか。


アジア外交で路線転換

 総裁選で路線転換を明示する場面がなかったわけではない。

 第一に、対北朝鮮政策。麻生氏が「圧力」を強調したのに対し、福田氏は強硬一本やりの安倍路線の見直しを示唆し、「私の手でこの問題を解決したい」と強い意欲を見せた。

 第二に、靖国神社への参拝問題。「アジアの一員たることを機軸とする外交」を打ち出した福田氏は「相手が嫌がることをする必要はない」と踏み込んだ姿勢を見せた。

 第三に、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更問題。福田氏は、安倍首相が進めてきた憲法解釈の変更に慎重な姿勢を示した。

 安倍政治との違いは明確だ。国家主義的な政策を推し進めてきた安倍政治からの路線転換は、参院選に示された沖縄の民意とも合致する。新政権の取り組みを注視したい。

 ただ、テロ対策特別措置法については、臨時国会に新法を提出する考えを明らかにしており、野党と正面衝突する事態も予想される。なぜ、インド洋上での給油活動の継続が必要なのか、活動実態の情報開示が先決だ。

 福田氏は、構造改革路線の継続と改革の負の遺産に取り組む考えを明らかにした。財政再建と格差是正をどう両立させていくか、これまたかじ取りは容易でない。


「県民大会」にどう対応

 総裁選後の記者会見で福田氏は、全員野球を強調した。周囲の評価も「安定感」と「慎重さ」と「バランス感覚」という点で一致する。同じ派閥の小泉前首相とも安倍首相とも異なる資質だ。

 福田氏には何よりも、「小泉―安倍」路線の負の遺産に向き合い、政策転換に踏み出すことを求めたい。

 小泉政治は、地方の現実をあまりにも軽視し過ぎてきた。路線転換は決してバラマキ政治への復帰を意味しないし、古い自民党路線への回帰であってはならない。

 米軍再編問題や教科書検定問題など、沖縄県が抱える課題にどう取り組んでいくか。いずれも政府と地元との溝が深く、膠着状態にあるだけに、これまでの政権と異なる姿勢を示さなければ現状打開は難しい。

 二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への対応が最初の試金石だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070924.html#no_1

 

2007年9月25日(火) 朝刊 27面

県民大会の日にパネル展/東京から同時抗議

 検定意見撤回を求める思いを東京でも訴える―。「憲法9条―世界へ未来へ沖縄連絡会」(9条連、海勢頭豊共同代表)は県民大会と同日の二十九日、東京の品川区立総合区民会館で「告発!『集団自決』の軍命削除パネル展―軍隊は住民を守らない―」を開く。

 文部科学省の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍の強制についての記述が削除された問題を、沖縄タイムス紙面や、検定前と検定後の高校教科書を展示することでアピールする。今年で三回目を数え、約二千三百人の来場者が見込まれている「輝け9条!世界へ未来へフェスティバル」(主催・9条フェスタ二〇〇七事務局)の一環。

 「記事の流れを工夫した方がいいんじゃないか」「見出しを付けたら分かりやすいのでは」―。二十三日、9条連のメンバー十人が那覇市古島の教育福祉会館に集まり、パネル展に向けての話し合いを持った。東京に行くメンバーの中からは、「史実は絶対にゆがめさせない」「今行動しなければ、やられっ放しになる」などの声が上がる。

 会場で慶留間島の「集団自決」をテーマにした自作の平和絵本「松三の島」の読み聞かせを行うのは元教諭の知念智慧子さん。これまで小学校や児童館などで、千人以上の児童に沖縄戦の悲惨さを伝えてきた知念さんは「国の横暴は許さない。沖縄で県民大会に参加している気持ちで声を発したい」と意気込む。

 当日、県内に残る海勢頭共同代表は「今回の問題は県民だけじゃなく、国民の問題。軍国主義を正当化する流れを阻止しなければならないことを、しっかり強調してきてほしい」と期待を込めた。

 また、三十日に大田区産業プラザで開かれる同フェスティバルの総会では、「軍命」削除に抗議する内容の特別アピールが採択される予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_01.html

 

2007年9月25日(火) 朝刊 27面

旧日本軍の遺物? 火炎放射器出土/第32軍司令部壕

 旧日本軍のものとみられる火炎放射器が、那覇市首里にある第三二軍司令部壕から見つかり、糸満市の県平和祈念資料館で十月二十一日から開かれる企画展で一般公開される。同資料館によると、旧日本軍の火炎放射器が見つかるのは珍しいという。

 火炎放射器の高さは約四十七センチ、幅約三十九センチで、八月二十九日に壕内の第二坑道の中間地点で見つかった。種類などについては現在調査中という。

 戦跡遺跡や出土品発掘のために調査を進めていた県平和祈念資料館の城間美明主査は「旧日本軍の火炎放射器を見たのは初めて。企画展前に発見され、とても貴重な資料」と語った。

 沖縄戦研究家の久手堅憲俊さん(76)によると、見つかった火炎放射器は太平洋戦争初期に落下傘部隊用に使用されたもので、「県内に持ち込まれている数は少なく、司令部の守備兵が守備用に置いていたのでは」と分析する。

 同館の城間主査は「歴史を正しく伝えるのが私たちの責務。二十九日の(教科書検定意見撤回を求める)県民大会の後も若い世代に戦争の実態を伝えたい」と語った。

 同資料館で十月二十一日から始まるのは第八回特別企画展「沖縄戦と戦争遺跡?戦世(イクサユー)の真実を伝えるために?」で、火炎放射器以外に県内の戦争遺跡約百五十件を紹介する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_02.html

 

2007年9月25日(火) 朝刊 27面

自民幹事長 伊吹氏起用/関係者「心改めて」

 自民党幹事長に伊吹文明文部科学大臣が決まったことに「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らは二十四日、新しい文科相へ期待を込める一方で、伊吹幹事長には「心を改めて」とくぎを刺した。

 小渡ハル子副実行委員長(県婦人連合会長)は「党ナンバー2への就任を機に、沖縄の問題に理解を示し、心を改めてほしい」と話した。「検定意見撤回は県民の願い。自民党の県選出国会議員は福田康夫新総裁や伊吹新幹事長に強く要望してほしい」と期待した。

 県民大会実行委員の諸見里宏美県PTA連合会長は「文科相が変わるので状況は好転するかもしれない」と歓迎。その一方で「新大臣は今回も問題に理解を示し、検定意見の撤回に応じてほしい」と要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251300_03.html

 

琉球新報 社説

拉致問題 日本に吹く追い風生かせ

 北朝鮮による日本人拉致問題の解決を後押しする動きが米国内で相次いでいる。拉致問題への対応は、25日に発足する福田内閣にとっても重要な外交課題の一つだ。27日から北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議が始まる。

 日本への追い風をてこに、拉致問題の具体的な進展につなげることができるか。安倍晋三首相に代わって国政のかじ取りを担う福田康夫新首相は早速、指導力や外交手腕が問われることになる。

 米国からの追い風の一つは、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除問題で、ブッシュ政権を支える共和党が条件を付ける法案を提出する構えをみせていることだ。

 北朝鮮が核施設の無能力化や核計画を申告するかが6カ国協議の焦点になっている。北朝鮮がこれに応じた場合、米政府は年内に指定解除に踏み切る方針を固めているが、法案は、指定解除のハードルを下げないためいくつかの条項を盛り込んでいる。

 指定解除の「基準」として「日本人拉致被害者の解放」を真っ先に挙げた。法案は週明けにも提出される見通しだ。

 2つ目には、訪米中の町村信孝外相との会談でライス米国務長官が「北朝鮮との関係を発展させるために日本との関係を犠牲にすることはない」と述べたことだ。指定解除に際しては日米関係にも考慮し、慎重に対応する考えを伝えたものだ。

 ライス発言の背景には、米朝関係の進展に伴い北朝鮮による揺さぶり戦術で、日本が6カ国協議の枠組みから取り残される懸念が高まっていることへの配慮もあるとみられる。

 ただ事は単純ではない。6カ国協議を仕切って米朝関係進展を急ぐヒル国務次官補らに対する共和党保守派の不満や、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に期待する米国の思惑などが働いているのは間違いあるまい。

 とはいえ、日本は明るい兆しを生かさない手はない。政府は米国を中心に中韓、ロシアとも緊密な連携を重ね、どん詰まりの拉致問題に風穴を開けるべきだ。

(9/25 10:45)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27485-storytopic-11.html

 

2007年9月25日(火) 夕刊 1面

嘉手納議会、謝罪要求/未明離陸 司令官発言

 【嘉手納】米軍嘉手納基地司令官のブレット・ウィリアムズ准将が「未明離陸は十年は続く」などと発言した問題で、嘉手納町議会の基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)は二十五日、「住民を無視、軽視している」として、発言撤回と謝罪を求める抗議決議と意見書を二十八日の臨時会に提案することを決めた。

 岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などがクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している問題についても、同戦闘機の飛来、訓練中止、両爆弾の撤去などを求める抗議決議と意見書を提案する。

 嘉手納基地司令官は、F15機などの未明離陸に対して嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)メンバーが二十一日に抗議した際、「抗議があるのは沖縄だけ」「基地がある限り未明離陸は継続する。十年は続くだろう」などと発言した。

 委員会では、未明離陸について沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会が意見交換し、より効果的な活動方法を検討することも確認した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_01.html

 

2007年9月25日(火) 夕刊 5面 

悲劇体験 歌で伝える/元教諭源さん「事実残したい」

 元高校音楽教諭の源啓祐さん(68)=那覇市=が、渡嘉敷島で生まれ、「集団自決(強制集団死)」に巻き込まれた体験を基に作曲した歌を二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で披露する。当時六歳だった少年の目の前で繰り広げられた悲劇を「悲しい思い出だが、事実を後世に残したい」と語った。

 演奏されるのは、「白玉の塔」と「祈り」の二曲。

 源さんは約四年前に渡嘉敷島を訪れたとき、「集団自決」などで戦死した多くの犠牲者が眠る慰霊碑「白玉之塔」に記された一つの詩に心を打たれた。

 「忘れじと思う心は 白玉の塔に託して」。

 当時六歳。「集団自決」の起こった現場で人々が悲鳴を上げ、死んでいく情景を今でも忘れることができず、その思いを曲に込めた。二年前から三月二十八日に白玉之塔で開かれる慰霊祭で流している。

 西山で手榴弾を手にしたが不発だったため、母、弟とともに生きる道を選んだ。

 戦後も母親から「軍の命令で『集団自決』が起こった」「軍人の食糧確保のために住民は犠牲になった」ことを何度も聞かされたという。

 「白玉の塔」は、歌手の新垣寿賀子さん(45)に「地の底から死者たちが訴えるように低い声で歌ってほしい」と依頼した。戦争体験者の男性に歌ってほしいとお願いしたが、「あまりにも重過ぎて歌えない」と断られ、戦後生まれの新垣さんに託した。

 一方、「祈り」を七年前から県内外で歌う歌手の砂川京子さん(60)は、源さんの体験がつづられた歌詞を見つめ、「二番は涙が出て歌えなくなり、いつも歯を食いしばって歌う。この歌は源先生の心の叫びそのもの。どんなむごいことでも事実を隠してはいけない」と戦争の恐ろしさを再認識したという。

 歌詞には「集団自決」の文字は出てこないが、源さんは当時の情景を思い出し、「僕には歌えない」とつぶやいた。

 目の前で人々が命を絶った事実を「これはゲームのようなバーチャルの世界じゃない。若い人にも戦争の恐ろしさを知ってほしい」

 砂川さん、新垣さんも「みんなの心に響くよう、歌いたい」と声を合わせた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_02.html

 

2007年9月25日(火) 夕刊 1面

オスプレイ使用 政府「予定ない」/普天間代替で回答

 【東京】政府は二十五日の閣議で決定した答弁書で、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)で想定する「使用を予定する航空機の種類」はCH53、CH46、UH1、AH1の回転翼機と、C35、C12の航空機であることを明らかにした。垂直離着陸機MV22オスプレイは「米政府から現時点で何ら具体的な予定はないとの回答を得ている」と否定した。

 一方、在日米軍再編で新たな負担が生じる自治体に対し、防衛大臣裁量で配分される再編交付金の額や算定点数については「再編関連特定周辺市町村が指定されていない現時点で答えるのは困難」と明らかにしなかった。

 糸数慶子参院議員の質問主意書に答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709251700_03.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

出版社 訂正申請の方針/「集団自決」で文科省に

軍強制明記で一致

 【東京】教科書執筆者と教科書会社の編集者による「社会科教科書執筆者懇談会」が二十五日、都内で開かれた。文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除させた検定への対応で、日本軍の強制・強要・誘導を明確にするため、各社が十月末から十一月初めをめどに文科省への訂正申請を目指す方針を確認した。参加者によると、懇談会の再開は一九九〇年代半ば以来。「集団自決」の記述を削除された五社すべてを含む八社から二十五人が参加した。

 呼び掛け人で執筆者の石山久男さん(歴史教育者協議会委員長)によると、出席者からは「検定制度を見直すべきだ」「教科用図書検定調査審議会の審議委員の選び方が不透明で、不服を申し立てても同じ結果になる。第三者機関が必要だ」など検定の仕組みを問題視する意見が相次いだ。

 また、過去に懇談会の存在が文部省(当時)への歯止め役を果たしていたことを念頭に「執筆者や教科書会社間の連携が途絶えていたことも(日本軍の強制を削除した検定の)原因の一つだ。沖縄の人に申し訳ない」との反省の声も上がった。

 参加者は懇談会を定期的に開催することで一致。当面、訂正申請に向けた各社の動向を報告する。次回会合は、二十九日の県民大会の結果を受けた要請団の上京直後の十月十七日に開く。

 石山さんは十数年ぶりの懇談会再開に「参加者が予想以上に多く、問題意識を共有できたことに手応えを感じる」と述べ、運動の全国的な広がりに期待感を示した。

 呼び掛け人の一人で琉球大学の高嶋伸欣教授も参加、県民大会に向けた沖縄の動きなどを報告した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_01.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 1面

渡海文科相 柔軟姿勢/「県民感情考え慎重に」

 【東京】高校教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、福田内閣で初入閣した渡海紀三朗文部科学大臣は二十五日の会見で、沖縄側が検定意見の撤回を求めている問題について「県民感情を考えたときに、より慎重に取り扱っていかなければいけない」と柔軟に対応する考えを示唆した。

 渡海文科相は、同検定が歴史的事実を理解する専門家が参加し、内容を検討しているとの認識を示し、「政府がとやかく言うべきではないと正直思っている」とも発言。その上で「しかしながら、中身の問題については沖縄の中で非常に大きい。率直に私自身の実感だ。もう少し具体的事実がどうなのか精査した上で取り組みたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_02.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 2面

「再編変更」は困難視/石破氏、前内閣姿勢を踏襲

 【東京】福田内閣で防衛相に就任した石破茂氏は二十五日夜、首相官邸で会見し、米軍普天間飛行場の移設など在日米軍再編について「現在、政府として対応方針を示して米軍再編に取り組んでいる。今までこのやり方が最善であるということであり、合理的な理由がない限りこれを変更することは困難」と説明した。日米合意を堅持した安倍内閣のスタンスを踏襲する考えを示し、普天間代替施設(V字案)の沖合移動を求める県や名護市をけん制したものとみられる。石破氏は「基地を受け入れていただいている結果として、わが国の独立と世界の平和のために多大な貢献をしていただいている地元の方々のご理解を得るということは当然。一切聞く耳を持たぬ姿勢はあるべきではない。地元の理解を得るべく誠心誠意、最善の努力をしていきたい」との考えも強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_03.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

文科相発言に期待感/福田内閣発足

 福田新内閣が二十五日発足した。県内では新しい顔触れに戸惑いと期待が交錯した。渡海紀三朗文部科学相が「県民感情に配慮する」と発言したことに、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らは「県民の気持ちを受け止めてくれるのでは」と期待しつつ、一方で「(どういう人物か)よく分からない」との受け止めも。防衛庁長官を含め二度目の就任となる石破茂防衛相については「経験豊富で適任だ」「誰が大臣になろうと県民の要望には応えられない」と評価が分かれた。

 県民大会の仲里利信実行委員長は「初めて聞く名前だ」と話す。渡海文科相の発言には「県選出国会議員に日程調整をお願いし、十月の要請はお会いしたい」と期待を膨らませた。

 高P連の西銘生弘会長は「検定意見撤回を前向きに考えるという意味であれば、本当にありがたい」と歓迎。その上で「大会には多くの保護者や高校生を参加させ、県民がこれだけ真剣なんだと政府に伝えたい」と語った。

 沖子連の玉寄哲永会長は「どのように県民に配慮するかが重要だ。新大臣は検定意見を取り下げるという姿勢をはっきり示してほしい」と指摘した。

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で揺れる名護市。石破氏の防衛相就任に島袋吉和市長は「メディアでの発言や討論から沖縄問題にも詳しいのではないかとの印象を受ける。沖縄のスタンスをサポートできる大臣であってほしい」と期待感をにじませた。

 キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に賛成する荻堂盛秀名護市商工会長は「防衛問題に精通しており今の難しい局面で最も適任だと思う。地元の要望に耳を傾けてくれるのでは」と話した。

 一方、移設に反対するヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「米軍再編で沖縄の基地が強化される中、誰が大臣になろうとも政権が変わらない限り県民の要望に応えられない」とはき捨てた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_04.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

普天間代替施設「陸地上空で飛行も」/米政府の06年文書

海兵隊が見解

 米軍普天間飛行場代替施設の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、米海兵隊が二〇〇六年四月の防衛庁(当時)との協議で、「最大限可能な限り(海側に)回避するようにしても、航空機が陸地の上空を飛行する場合はあり得る」との見解を示していたことが二十五日、明らかになった。ジュゴン保護のため米連邦地裁で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している原告団が、米政府提出の文書の一部を翻訳し、公開した。

 海兵隊と防衛庁の協議は、現行の「V字形案」が示される直前に東京都内で行われた。

 会議後、米第三海兵隊遠征軍大佐が同遠征軍司令官に報告した文書によると、滑走路二本が中央より西側に寄ったX字形の「ヌカガ2」案を協議。文書末尾では「防衛庁が新たなるV字案を作成したのでこの計画(ヌカガ2)はこれ以上進展しないと思う」としている。添付図面で、案がI形、中央で交わるX形、交差部が西側に寄ったX字形案などが示されている。

 文書では、同計画について「最重要点は、地元沖縄の人々に対してオープンでなければならない」と指摘。その上で「この計画に対する地元沖縄の人々の容認がこの飛行場の建設における運用上の必要条件と結び付いているからである」と、情報開示の必要性も主張している。原告メンバーの真喜志好一さんは「V字案もこのX字案も基本的に変わらない。政府は、住民に集落上空は飛ばないと説明し、環境影響評価(アセス)方法書にも周辺地域上空の飛行を回避するとしている。米軍の主張からすると虚偽といえ、問題だ」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_05.html

 

2007年9月26日(水) 朝刊 31面

米軍車両、藻場通過/国の調査器材破壊

 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設に反対する市民団体のメンバーらは二十五日、現況調査のため沖縄防衛局が名護市辺野古沖に設置した調査器材の一部が破壊され、ジュゴンの餌となる藻場に残された水陸両用車の通行痕を撮影した。市民団体などによると、二十四日午後零時半ごろ、米海兵隊の水陸両用車十三台がキャンプ・シュワブからキャンプ・ハンセンに向け海上を移動、現場近くを通ったという。

 ジュゴンのはみ跡の調査のため、シュワブから約五百メートルの沖合で潜水した際に発見。ジュゴンなど海中生物の藻場の利用状況や鳴き声を調査するパッシブソナー(音波探知機)を設置するための架台が破壊されていた。本体は台風対策のため取り外されていた。

 撮影した「ジュゴンの里」の坂井満さんは「政府は環境調査のために器材を設置しているが、米軍は関係なしに訓練している。このような状況ではジュゴンを追い出しているようなものだ」と批判した。平和市民連絡会の当山栄事務局長は「調査機器が船の航行に危険を及ぼすと指摘してきた。機器のあるところで米軍が訓練するのは、日米両政府間の意思の疎通が図られていない証拠だ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261300_06.html

 

琉球新報 社説

福田政権始動 早期解散で民意問え

 福田康夫首相が25日就任し、福田政権が始動した。憲政史上初めて、故福田赳夫氏に続く親子2代の首相が誕生した。

 5千万件に及ぶ年金記録不備問題の解決に全力を挙げるとともに、都市と地方の格差の是正を図り、景気回復に取り組んでほしい。

 沖縄戦「集団自決」で日本軍による強制の記述を削除・修正した教科書検定問題では真実の継承を求める県民の声に耳を傾け文部科学相に撤回を指示してもらいたい。

 しかしながら、参院選で自民党が惨敗した中で誕生した政権であり、十分に民意を踏まえた内閣とは言い難い。早期に解散総選挙を実施し国民の審判を仰ぐべきだ。

派閥政治の復活

 福田政権で危惧(きぐ)されるのは、古い自民党の派閥政治が復活することだ。

 福田氏は自民党総裁就任後、党幹事長に伊吹文明、政調会長に谷垣禎一、総務会長に二階俊博、選挙対策委員長に古賀誠の各氏を起用した。党4役はいずれも、それぞれが率いる派閥の領袖である。

 組閣に際しても、最大派閥の町村派会長・町村信孝前外相を内閣の要となる官房長官に据えたほか、高村派を率いる高村正彦前防衛相を外相に充てた。

 総裁選で福田氏を支持した8派閥の領袖のうち6人までを党役員または閣僚として処遇している。

 福田氏は総裁選の前から、町村派名誉会長の森喜朗元首相と頻繁に意見交換していた。

 党内バランスを重視したと言えば聞こえはいいが、総裁に選出された経過から見ても、最大派閥の意向が人事を左右する「派閥政治」に先祖返りしていると言わざるを得ない。

 都市と地方の地域間格差、年金記録不備、政治とカネの問題、景気浮揚、財政再建など、国政には困難な課題が山積している。

 とりわけ、小泉純一郎、安倍晋三両氏の改革路線の結果生み出された格差の問題は深刻だ。「弱者」を生み出す現状は早急に改める必要がある。

 福田首相は、総裁選で打ち出した「地方の再生」「農山漁村の所得、雇用の増加」の実現に向けて、具体的な施策を早期に国民の前に提示すべきだ。

 外交面では、引き続き中国、韓国との関係改善を進めることが不可欠だ。

 対北朝鮮では、拉致被害者と家族の帰国、真相の究明、容疑者の引き渡しなどを早期に実現させることが求められる。

 景気浮揚のため公共事業費の増額を求める声が自民党内でも強まる中で、どう財政再建を進めるのか、手腕が問われている。

 国政のかじ取りに当たって、党利党略や派利派略に左右されることがあってはならない。

 あくまで国民の目線で政治を進めなければならない。

歴史の真実継承を

 教科書検定意見撤回の可能性について、伊吹自民党幹事長は文部科学相在任中「政治による教育への介入になるので難しい」との見解を最後まで崩さなかった。

 教科用図書検定調査審議会に検定意見の原案を示して修正を求める意見を出させたのは文科省である。にもかかわらず撤回を求められると審議会を盾にして拒むというやり方は責任逃れにほかならず、県民を愚弄(ぐろう)するものだ。

 文科省の教科用図書検定規則によると、文科相には発行者に対し訂正の申請を勧告する権限が与えられている。

 福田首相は、県選出・出身国会議員の意見も踏まえた上で、自らリーダーシップを発揮し文科相に訂正を勧告させるべきだ。歴史の歪曲(わいきょく)は絶対に許されない。

 沖縄は去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が行われ、20万人余が犠牲になった。戦後の米軍施政下で広大な土地が米軍基地として強制的に接収されている。

 復帰後35年を経た現在も、全国の米軍専用施設面積の4分の3が沖縄に集中している。県民は、日常的に基地から派生する事件・事故に脅かされている。

 中でも、市街地の真ん中に位置する普天間飛行場の危険性除去は緊急の課題だ。一刻も早い閉鎖状態の実現が求められている。

 安倍前政権は7月の参院選で国民から「ノー」という審判を突きつけられた。福田内閣もその延長線上の政権にすぎない。各分野で明確な政策を示した段階で、できるだけ早く衆院を解散し総選挙で民意を問うてもらいたい。

(9/26 10:23)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27512-storytopic-11.html

 

2007年9月26日(水) 夕刊 5面

住民の戦争体験 米国人が映像化/曙小・指導助手 ラドニー・リトルさん

 那覇市立曙小学校で外国語指導助手(ALT)として勤務する米国人のラドニー・リトルさん(30)が、沖縄戦と住民をテーマにドキュメンタリ―映画「命どぅ宝―Life is precious」を制作している。住民の悲惨な戦争体験を元ひめゆり学徒らのインタビューを交え、約二時間の映像で伝える。ラドニーさんは「これまで外国人が撮った沖縄戦は兵隊をメーンにしたものが多かった。住民に光を当てた作品で、沖縄の歴史や文化、人々の思いを紹介したい」と話している。(大濱照美)

 五年前、留学生として沖縄を訪れた。美しい海に心打たれすっかり沖縄ファンになったが、文化や歴史を学んでいく中で沖縄戦の話を聞きショックを受けたという。「米国では兵隊の勇ましい戦いぶりや、苦労話を学んだが、沖縄の住民がもっと大変だったと初めて知った」と振り返る。

 簡単なドキュメンタリーを作り始めたころ、母校コロラド大学の日本語講師で伊江島出身のリエコ・ニックアダムスさんから「沖縄戦は沖縄の人々にとって大切なこと。ちゃんと扱ってほしい」と言われ、本格的な作品制作を決意。賛同した友人のレイ・ガーナさん(30)、テリー・ゴングさん(30)と三人でカメラを手に、昨年の七月から県内各地の戦跡や資料館を飛び回った。

 「私の父もベトナム戦争に出兵したが、その体験を話してくれたことはない。体験者はつらい思いに耐えて語ってくれた。とても感謝している」とラドニーさん。

 今月十五日には、完成間近の作品を持って渡米し、約六千人が集まるコロラド州の祭りで上映した。

 「協力してくれた多くの人たちのためにも、十一月には完成させ県内や海外で上映したい」と意気込みを見せた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_02.html

 

2007年9月26日(水) 夕刊 5面

未来の教師 検定に意見/沖国大生、プラカード作製

 「嘘教えるの?」「GIVE ME Real Text(真実の教科書)」―。沖縄国際大学総合文化学部で教職課程を履修する三、四年生ら五十人以上が、教科書検定問題に意見する自作のプラカードやメッセージボードを持ち、二十九日の県民大会に参加する準備を進めている。実行委員の平良瑞希さん(21)は「学生だからこそ、今こういうことが言えるんだ、とアピールしたい」と意気込んでいる。

 大会への参加を決めたのは先週。佐藤敬明さん(23)は「将来教師になったとき、生徒にうそを教えるわけにはいかない」と強調する。二十五日には同大学内で他学部やほかの学年にも参加を呼び掛けるチラシを配布、実行委員会を立ち上げた。

 大会の会場では八つのゼミが、それぞれメッセージ入りのプラカードを掲げる。正午から参加者が意見を交換するメッセージボードを作製するほか、集まった友人などと、教科書検定問題について話し合う。平良尚也さん(21)は「自分たちもいずれは教える立場になる。少しでも分かりやすく伝えたい」と意気込んだ。

 学生たちの「世話人」を務める社会文化学科の吉浜忍教授は「声を上げて参加することは、将来教師になる者の素質として大事なこと」と目を細めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_03.html

 

2007年9月26日(水) 夕刊 1面

県民大会注視し対応/検定撤回で渡海文科相

 【東京】渡海紀三朗文部科学大臣は二十六日、就任後初閣議後の会見で、二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのか、見極めて対応させていただきたい」と述べ、大会規模や決議内容を注視する考えを明らかにした。

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を文科省が削除した高校歴史教科書の検定問題に県内で強い反発があることについて「沖縄の人にとって実はそうなんだろうなというのが率直な思い」と述べ、県民感情に理解を示した。

 その上で「先の大戦で沖縄の方々が大変大きな犠牲を払われたことについては、そういった方々の犠牲の上で現在があることを重く受け止めなければならない。そういう思いを持たなければならないと強く思っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709261700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月22日、23日)

2007年9月22日(土) 朝刊 1面

県内40首長参加へ/9・29県民大会

30自治体で実行委/「軍命明白」続々と

 二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に、県内四十一市町村長のうち四十首長が参加することが二十一日、沖縄タイムス社の首長アンケートで分かった。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述をめぐり、日本軍の強制が削除された問題については「軍命は明らか」などと厳しく批判。三十自治体が実行委を結成するなど、大会に向け機運が盛り上がっている。

 アンケートは十八日に質問文を送付、二十一日までに回答を得た。四十首長は県民大会や宮古、八重山の郡民大会に参加すると回答。多良間村長は村内行事のため欠席するという。

 日本軍の強制の記述削除を求めた文科省の検定意見について外間守吉与那国町長は「手榴弾は軍人の必需品であり、個人(県民)が持てる物ではない。軍命は明らかだ」と回答するなど、記述回復を求める意見が相次いだ。

 今年七月の県議会文教厚生委員会の聞き取り調査では、座間味村の「集団自決」体験者が軍命を証言した。仲村三雄村長は「軍の関与がなかったとは到底考えられない」と指摘。三百人余りが「集団自決」で命を落とした渡嘉敷村の小嶺安雄村長は「削除は納得できない」とした。

 読谷村の安田慶造村長は「真実を伝え、将来を正しく担う人間を育てなければいけない」と強調。新垣清徳中城村長は「児童・生徒に正しい判断力を身に付けさせるには、史実を正しく学ばせることが肝要だ」とするなど、教育面での影響に触れる首長も目立った。

 三十市町村は大会実行委を「発足した」または「今後発足する」と回答。宮古、八重山の五市町は郡民大会実行委に加わっている。「発足予定はない」とした自治体は、南北大東村や伊是名村、国頭村など。「防災無線で呼び掛けている」(宜野座村)との自治体もあり、ほとんどが住民に参加を促している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_01.html

 

2007年9月22日(土) 朝刊 27面

5私大学長 撤回要求

 県内の私立五大学で組織する県私立大学協会(会長・桜井国俊沖縄大学長)は二十一日、文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除させた問題で、検定の撤回と、記述の復活を求める声明を五大学の学長名で発表した。

 声明は、ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」との演説文を引用。

 「(軍命はなかったという)一方の当事者の主張のみを取り上げ、教科用図書検定調査審議会の検討経緯が明らかにされていないことなど同省の回答は容認できない」と指摘した。

 桜井会長は「自らの過去を反省するドイツに対し、日本政府は教科書問題や『従軍慰安婦』など不都合な真実を消し去ろうとするのは許せない」と批判。沖縄キリスト教学院大学・沖縄キリスト教短期大学の神山繁實学長は、元同短期大学学長で体験者の金城重明氏(78)から何度も証言を聞いたとし、「この経験があるからこそ平和を希求したい。歴史の真実をゆがめても美しい日本はつくれない」と語った。

 沖縄国際大学の渡久地朝明学長、名桜大学の瀬名波榮喜学長も連名している。

 同協会は、学生や教職員にも県民大会への参加を呼び掛けている。


国立市議会が意見書

 東京都の国立市議会(生方裕一議長、二十四人)は二十一日、教科書検定問題で、文部科学省に検定意見の撤回を求める意見書を賛成多数で可決した。

 意見書は「集団自決(強制集団死)」について「日本軍の関与がなければ起こり得ず、記述削除は体験者の数多くの証言を否定するものだ」と批判。その上で「教科書検定問題は、国立市をはじめ全国民の問題。悲惨な戦争を起こさないためにも、沖縄戦の実相を正しく伝えることは重要」としている。

 あて先は衆参両院議長、首相、文科相、沖縄担当相。同市議会には市民二人が意見書可決を求める陳情を提出。この日の最終本会議で、賛成一二対反対一一で可決した。

 陳情者代表の阿倍ひろみさん(51)は「市民の良識が示された。本土でも運動の輪を広げたい」と喜んだ。


土佐清水市の議会も意見書


 豊見城市の姉妹都市・高知県土佐清水市議会(仲田強議長、十六人)は二十一日、九月定例会最終本会議で、教科書検定問題について検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。あて先は首相、文科相、衆参両院議長など。

 今月上旬に豊見城市から意見書可決に賛同を求める要望書を受け、議会内で協議。与野党の枠組みを超えた全会一致での可決につながった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_02.html

 

2007年9月22日(土) 朝刊 1・2面

海兵隊移転グアム輸送費 年8800万ドル/沖縄1万人残留

 米国政府説明責任局(GAO)は、十二日に発表したグアムでの米軍強化に向けた計画の課題などに関する報告書で、米海兵隊がグアムから兵士や装備を展開する際の戦略的輸送コストとして、年間約八千八百万ドル(約百億円)を見積もっていることを明らかにした。米海兵隊が将来、グアムをアジアなどへ展開する戦略拠点に位置付けていることが浮かぶ。同報告書では、グアム移転後は「沖縄に約一万人の海兵隊兵士とその家族が残るとみられる」と明言している。

 報告書は、米国防総省が「グアムと沖縄における部隊の最適な配備の組み合わせを検討中」と説明。沖縄からグアムへの移転が決定している海兵隊部隊として、第三海兵遠征軍の指揮部隊、第三海兵師団司令部、第三海兵後方群司令部、第一海兵航空団司令部、第一二海兵連隊司令部を提示している。

 一方、沖縄に残る部隊は「司令部、陸上、航空、戦闘支援および基地支援能力といった海兵空地任務部隊」の要素から構成される、としている。

 グアムの将来の役割としては「米四軍を統合した太平洋のハブ基地」との位置付け。

 米海軍は原子力空母の定期配備を視野に、支援施設整備を検討していると指摘。これに伴い、アンダーセン空軍基地に空母艦載機を一時的に駐機させる施設も必要になるとしている。また、米陸軍はミサイル防衛の機動部隊の常駐を検討。規模や部隊、インフラなどは未定だが、ミサイル防衛の配備場所はアンダーセン空軍基地も想定されているという。

 報告書は、米国防総省担当者がイラクやアフガニスタンでの軍事行動などで、グアムでの軍事強化に財源を確保できるかを困難視している実情を指摘。また、「沖縄で普天間代替施設が建設されなければ、海兵隊のグアム移転が遅れる可能性がある」とする同担当者の見解を紹介し、再編計画を実行させるためには普天間代替施設を完成させる必要がある―と強調している。


     ◇     ◇     ◇     

[解説]

戦闘部隊の拠点に


 米国政府説明責任局(GAO)のグアムでの米軍強化に関する報告書で、米海兵隊がグアムから展開する際の戦略的輸送コストとして、年間八千八百万ドル近くの追加経費を見積もっていることが判明した。報告書は、米国防総省がグアム島を含む北マリアナ諸島で海兵隊の訓練場候補地を調査していることも指摘。グアムには、沖縄から移転する司令部要員だけでなく、「機動力」が不可欠な海兵隊戦闘部隊の拠点としての役割を期待していることがうかがえる。

 昨年九月に米太平洋軍が公表した「グアム統合軍事開発プラン」は、沖縄と米本国から九千七百人の海兵隊が移転すると予測。今回のGAOの報告書で、グアムでの空地の戦闘部隊を含めた海兵隊の一万人規模の旅団新設が現実味を帯びる。

 ただ、報告書はグアムでの海兵隊の「運用上の課題」が克服されていないことも指摘している。

 グアムの海兵隊をアジア地域に派遣する際、沖縄から向かうよりも時間がかかると説明した上で、例として「海上輸送を必要とする有事作戦の際、グアムの兵士や装備を輸送するため、船舶を佐世保基地(長崎県)またはほかの場所から展開させる」としている。

 司令部などのグアム移転後も沖縄に残る31MEU(海兵遠征部隊)は、日常的に佐世保基地の強襲揚陸艦エセックスと一体となって活動している。

 これをグアムの部隊のためにも運用するのは、機動力の維持に支障が出かねない。このため報告書は、グアムでの輸送能力向上の必要性を強調している。

 また、米国防総省の分析では、グアムの訓練場は規模と実用性に欠け、要件を満たす射撃場は一つもないと結論付けていることも指摘。実弾射撃訓練や水陸両用車の上陸訓練は訓練地確保が困難とみられ、沖縄の既存訓練場がグアムの部隊に使用される可能性も否めない。

 米軍はグアム、ハワイ、沖縄の三角形の地域で柔軟な危機対応を企図しているが、グアムでの運用が軌道に乗れば、海兵隊が沖縄からグアムにシフトしていく可能性もある。

 米国防総省は「グアムと沖縄における部隊の最適な配備の組み合わせを検討中」としており、グアムと沖縄の海兵隊の「軍事バランス」が今後の焦点になりそうだ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_03.html

 

2007年9月22日(土) 朝刊 27面

「軍の論理」に憤り/嘉手納司令官発言

 【中部】米軍嘉手納基地司令官のブレット・ウィリアムズ准将は二十一日、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)が十一日の未明離陸に抗議したことに対し、改善の姿勢を示さず、「基地がある限り未明離陸は継続する」と突き放した。同准将は「何度も抗議や要請を受けている」「抗議があるのは沖縄だけ。(未明離陸は)十年後も続くだろう」と発言、継続して実施する姿勢を示した。

 発言を受け、同飛行場に隣接する自治体の首長や住民から「高飛車な発言で、軍は絶対という感覚の発言だ」と怒りの声が上がった。

 三連協の抗議に初めて応対した同准将について、野国町長は「住民の実害を軽減するよう求めても、『運用上の理由や経費的な問題がある』と話がかみ合わない。むなしさを感じた」と語気を強めた。

 沖縄市の東門美津子市長は「沖縄の実態を分かっていない。軍は絶対的だという感覚の発言だ」と憤る。一方で「ここで引き下がるわけにはいかない。騒音に対する抗議行動を粘り強く続けていく」と話した。

 長年、未明離陸の解決に取り組んできた嘉手納町の宮城篤実町長は「現地の司令官で改善できないのは分かっている。抜本的な解決には日米両政府が真剣に取り組む必要がある」と指摘した。

 同基地に隣接する嘉手納町屋良地区に住む宮城巳知子さん(81)は「終戦直後から、嘉手納(基地)は米軍の都合で運用され、住民は騒音や事件、事故の危険性と隣り合わせだった。この我慢はいつまで続くのか」。騒音が県内で最も激しい地区の一つ、北谷町砂辺地区に住む松田静造さん(78)は「爆音から逃げたくても、簡単に引っ越せない人もいる。住民の気持ちは米軍へ届いていない」と憤った。

 ヘリの騒音を避け、宜野湾市から沖縄市へ移り住んだという幸地幸広さん(38)。「いったいどこへ引っ越せばいいのか。同じ人間として怒りを覚える。飛行機の真下で暮らしたら分かる」と怒りをにじませた。


FA18また緊急着陸/ロケット弾残し

 【嘉手納】二十一日午前十時四十分ごろ、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機一機が嘉手納基地を離陸前に装着したロケット弾一発を残したまま、同基地に緊急着陸した。

 目撃者によると、着陸後、数台の消防車が機体を取り囲み、一時騒然とした。兵器を担当する兵士が、左翼下のロケット弾装着部分を入念に点検していた。同機は着陸から約二十分後、自走して駐機場に戻った。

 FA18は今月十九日にも、別の機体がロケット弾一発を残し、嘉手納基地に緊急着陸した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月22日朝刊)

[洋上給油活動]

見直しも選択肢のうち

 もし自民党が参院選に勝って参議院で過半数を占めていたら、テロ対策特別措置法の延長問題はどうなっていただろうか。おそらく十分な議論もないまま四度目の延長がすんなり決まったことだろう。

 自民党の惨敗で事態は一転した。

 シーファー駐日米大使は、野党の理解を得るため「決断に必要なあらゆる情報を提供する用意がある」と述べ、野党議員に対しても機密情報を開示する考えのあることを明らかにした。自民党が選挙に勝っていたら、そんな話も出なかったに違いない。

 国連安全保障理事会はアフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)の任務を延長する決議案を賛成多数(ロシアは棄権)で採択した。

 この中には、アフガニスタンで米軍主導の「不朽の自由」作戦を行っている有志連合各国の貢献に対する「謝意」が盛り込まれている。

 この文言は日本などの働きかけで新たに挿入されたものだ。国連のお墨付きを得て、国内世論を動かし、民主党を説得する、ということなのだろう。

 参院選の選挙結果は、日本の政治状況をこれだけ変えたのである。

 この変化を「政治の混乱」と見る人もいるが、十分な議論もないまま強行採決を繰り返してきた政府与党の国会運営をあらため、議論を深める絶好の機会ととらえたい。

 テロ特措法は米中枢同時テロを受け、二〇〇一年十月に二年間の時限立法として成立した。これまでに三回延長を重ね、現行法は十一月一日で期限が切れる。

 防衛省によると、〇一年十二月の活動開始から八月三十日までに、十一カ国の艦艇に計七百七十七回、約二百二十億円相当の燃料を無償で提供してきた。米軍向けの給油回数が全体の半分近い。

 だが、これまで、詳しい活動内容は明らかにされてこなかった。どのような活動をしているのか国民には見えにくく、検証しようにもできないのが実態だ。

 海自から間接給油を受けた米軍空母がイラク戦争の空爆攻撃に参加したとの疑念も指摘されている。

 憲法が禁じる武力行使との一体化や集団的自衛権の行使に当たる活動実態がないのかどうか。依然として懸念が払拭されないだけに、詳細な情報開示が必要である。

 給油活動以外にアフガニスタン支援の選択肢はないのかどうか。この際、見直しも視野に幅広く議論すべきである。その場合にも当然のことながら憲法九条の存在が前提だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070922.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍司令官発言 異常さを理解できないのか

 午前4時半、就寝中に突然、猛烈な爆音にさらされたらどうなるか。自分の身に置き換えて考えれば、住民の苦痛がいかほどか容易に分かる。これが繰り返されれば、怒るのも当然である。

 しかし、米空軍嘉手納基地のブレット・ウィリアムズ第18航空団司令官には、このことが理解できないようだ。21日、北谷町、嘉手納町、沖縄市で構成する「嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会」(三連協)が、未明離陸について抗議した際、同司令官は「三沢や岩国では早朝や未明離陸を繰り返しても抗議はない。沖縄はなぜ抗議してくるのか」と質問したという。

 「なぜ」という問いには、数字で根拠を示せる。今月11日の嘉手納基地からの未明離陸の際、嘉手納町基地渉外課が「安保が見える丘」で騒音測定したところ90・1デシベルから最大で94・1デシベルを記録した。94デシベルというと、「騒々しい工場内」の騒音に相当する。8月28日の未明離陸では100デシベルを超え、最大で104・3デシベルに達した。異常な状態だ。

 未明の静けさの中で、いきなり切り裂くような爆音。司令官はこの状態を「正常」だと言いたいのだろうか。もしくは「我慢できる程度」だと住民に納得してほしいのか。ウィリアムズ司令官の無理解な発言はさらに続く。

 「何回も(中止)要請に来ているが、10年後も同じようなこと(未明離陸)が続くだろう」

 議会の決議、抗議行動が幾度もなされたが、ほとんど改善されない理由はこれだろう。改善の努力をしているが時間を要している、もしくは効果的な対策が見つからないのではなく、軍事最優先、住民生活犠牲はやむなしという姿勢なのだ。「10年後も」という表現は、今後も未明離陸をやめるつもりはないという意思の表れと受け取れる。

 米軍は重大事件が発生するたびに「良き隣人でありたい」と強調してきたが、今となってはむなしい言葉である。

 三連協は、全面飛行停止を要求しているのではない。基地の存在を現実的に判断し(1)午後10時から翌午前6時までの航空機飛行、エンジン調整の中止(2)他基地経由、時間調整による深夜・早朝飛行の回避|を求めただけなのだ。米軍が受け入れ難い要求だとは思えない。

 それさえ聞く耳を持たないという態度なら、米軍と、自治体・住民の対立の溝はいっそう深まろう。

 未明の離陸は絶対に認められない。米軍はすぐにでも考えを改めるべきである。ウィリアムズ司令官も発言を撤回してほしい。沖縄は米国の占領地ではない。

(9/22 10:02)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27392-storytopic-11.html

 

2007年9月22日(土) 夕刊 5面

授業前10分 教科書検定問題学ぶ/南風原高

 【南風原】二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の意義を学ぼうと、南風原高校(識名昇校長)は二十日から毎朝の「読書タイム」に、全学年約九百人の生徒が教科書検定問題などを取り上げた新聞記事を読む取り組みを始めた。二十八日まで続ける。県民大会には教諭らが「読書タイム」などを通して学んだ生徒のメッセージを書き込んだ横断幕を掲げて臨む。幅約四メートルの横断幕に、同校九百人の平和への思いを託す。(仲本利之)

 高校生の視点で検定問題を考えようと、国語科の仲村将義教諭を中心に数人の教諭らが沖縄タイムスなどに掲載された記事をピックアップ。八時五十分から十分間の「読書タイム」に、黙読し各自で問題の背景などを考えている。

 一年五組(担任・具志堅忠教諭)では二十一日、約四十人が、渡嘉敷島で起きた「集団自決」について金城重明さんの体験を紹介する記事などを読んだ。

 上里真央さん(15)は「『集団自決』が起きたことを沖縄だけでなく、日本全体の問題として考えてほしい。本当に起きた事を正しく伝えていかなければ、次の世代は沖縄戦で何が起きたのか分からなくなってしまう」と危惧した。

 一方、普段から新聞を読まず、あまり関心を示さない生徒もいるという。国語科の兼久直教諭は「もし自分の好きな彼氏が殺され、後で『殺しはなかったことになりました』と言われたらどう思うか?」と生徒らに問い掛ける。

 「たとえ関心を示さない生徒でも、身近な人に置き換えて考えれば、無関心では済まされない事だと分かってもらえる」と話す。

 同校は二十九日に学園祭を開く。生徒らが県民大会に参加できるよう学園祭の延期も検討したが、中間試験やインターンシップなど過密日程を抱え日程変更を断念した。県民大会には生徒らに代わって教諭らが参加する。


     ◇     ◇     ◇     

95年県民大会の剰余金447万寄付

 一九九五年十月の米兵暴行事件県民総決起大会の嘉数知賢実行委員長は二十二日午前、那覇市内で、同大会の剰余金約四百四十七万円を「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会に寄付した。

 嘉数実行委員長は「文部科学省は(日本軍の強制という)教科書の記述を意識的に改めている。沖縄の正しい歴史を後世に伝えるため役立ててほしい」と期待した。

 剰余金を受け取った「検定意見撤回県民大会」の仲里利信実行委員長は「有効に利用し、活気ある大会にするために役立てたい」と感謝した。同実行委は、運営経費を約一千万円と見込んでいる。今回の寄付のほか、二十日までに個人や団体から協賛金約二百五十一万円が集まっている。

 同県民総決起大会の玉城義和事務局長らは「十二年間、使い道が決まらなかったが、超党派の県民大会という内容が合致していることから寄贈を決めた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221700_01.html

 

2007年9月22日(土) 夕刊 4面

県出身兵士の戦死場所特定/中国で沖大・又吉教授

 沖縄出身の日本軍兵士が一九一四年(大正三年)の中国での青島出兵で七人、二九年(昭和三年)の済南事件で三人が戦死し、そのうち六人が亡くなった場所を又吉盛清沖縄大大学院教授が現地で確認した。青島事件では中国のドイツ利権を狙って旧日本軍が山東半島に上陸。済南事件では、済南で日本軍と蒋介石の国民党軍が衝突した。又吉教授は「日本の中国侵略に沖縄出身者が組み込まれていった実態が明らかになった」としている。

 又吉教授は二日から九日まで中国で調査。青島事件で豊見城村(当時)出身者が戦死した青島要塞の中央堡塁跡、西原村(同)出身者が死亡した小水清溝と、竹富村(同)出身者が死亡した東呉家村という集落跡をそれぞれ確認。済南事件で死亡した首里市(同)、平良町(同)、久米島具志川村(同)出身の三人が死亡した済南病院跡も特定した。

 いずれも靖国神社の合祀台帳、熊本兵団戦史、当時の新聞などを基に兵士の氏名、出身地、死亡場所・年月日を調べ、現地で聞き取りした。残る四人の死亡場所は特定できなかった。

 又吉教授によると、日本は、南洋のドイツ領にも進出し、それが、南洋移民につながるとみる。又吉教授は「アジアとの交流を考えると戦場体験を知らないままではいけない。沖縄人の戦場体験を明らかにすることで、相互理解につながるのではないか」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709221700_06.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 1面

「集団自決」直後を記録 米軍の公文書発見

関東学院大林教授 外科病院資料は初

 慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」直後の状況を記録した文書を、林博史・関東学院大学教授が二十二日までに、米国立公文書館で発見した。米軍の部隊日誌には「年をとった男がやりの上に倒れ」て「集団自決」したことなどが、生々しく記録されている。移動外科病院の資料が初めて確認され、「集団自決」によると見られるけが人の数も記録されていた。林教授は「自決直後の生々しい状況が記録されており、直後の記録としては貴重」としている。(編集委員・謝花直美)

 文書は慶良間諸島に上陸した米軍の作戦報告や部隊日誌など九ページ。今年夏、林教授が見つけた。

 慶留間島を攻撃した米軍の野砲第三〇四大隊部隊の日誌では、一九四五年三月二十六日午後十二時半に上陸完了、午後四時から民間人を収容し始めた。午後五時に「幾人かの民間人は自決した」と「集団自決」を記録。「彼らは、アメリカ軍が彼らの妻や娘たちをもてあそび、男たちに拷問を加えることを恐れていた」と、恐怖が刷り込まれていたことを記している。

 翌二十七日午後三時には、十二人が「集団自決」したガマで救助された二歳ぐらいの女児の記述がある。「女性や子どもたちはひもで首を絞められ、一人の年とった男はできそこないのやりの上に倒れることによってハラキリを行った(中略)子どもは首を絞められていたが、まだ生きていた。大隊の軍医が、その子の首のひもで作られたひどい火傷を治療した」

 座間味島へ上陸した第六八移動外科病院の作戦報告では、二十七日午前十一時半、スタッフは上陸すると、すぐに救急治療を開始。「海岸には多数の負傷した民間人がいた。初日だけで二百人の民間人の負傷者を治療した」。翌二十八日午後七時、さらに渡嘉敷島から六十五人の負傷者が運ばれてきた。「(日本軍の)狙撃手から銃撃を受ける中、海岸で緊急治療を施した」。日本軍が民間人の生命に配慮しなかったことを示す。

 病院は六月十九日までに、米軍将兵二百十二人、捕虜五十四人、民間人二百九十一人を治療。民間人の症状内訳は、病気十九人、負傷百八十九人、戦闘による負傷八十三人だった。

 林教授は病院記録について「本来米軍将兵の治療が任務だが、将兵の治療より、沖縄の民間人の治療にあたったことが示されている。負傷者の多くが『集団自決』関係ではないか」と指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_01.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 21面

自身の映像に「証言したい」/那覇で上映・講演会

 二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、「ドキュメント沖縄戦」(主催・沖縄戦記録フィルム一フィート運動の会)の上映会と講演会が二十二日、那覇市の久茂地公民館であった。県民大会を前に「集団自決(強制集団死)」に関する問い合わせが相次ぎ、無料の上映会を企画。六十七人が犠牲になった座間味村産業組合壕での「集団自決」後の映像が流れ、会場は重苦しい雰囲気に包まれ、すすり泣きが漏れた。一フィート運動の会の福地曠昭代表は「上映会で自身の映像を見て、証言したいと手を上げる新たな関係者も出てきている。こうした広がりを大会成功へつなげたい」と力を込めた。

 映像を見た座間味村慶留間島での「集団自決」体験者の與儀九英さん(78)=沖縄市=は「慶留間での悲惨な光景は頭に焼き付いている。映像を見て、むごたらしい惨劇が頭に浮かび複雑な気持ちになった」と声を落とした。「『集団自決』で未遂し、人相も変わるほど顔を腫らした人たちと一カ月ほど一緒に暮らしたこともある。何十年たっても忘れることはできない」と語った。

 上映会後、沖縄戦研究者の大城将保さんが「沖縄戦の真実とわい曲」と題し講演。沖縄戦の「集団自決」の記述から日本軍の強制が削除された文部科学省の教科書検定について、「靖国や従軍慰安婦などの問題で、旧日本軍の名誉回復を図ろうとする勢力が沖縄に乗り込んできた」と警鐘を鳴らした。

 その上で「彼らは沖縄戦を美化し、軍に責任はないと言いたいだけだ。自衛隊を強化するために、都合の悪い沖縄戦の真実にふたをしようとしている」と訴えた。

 検定問題の背景に、検定そのものの在り方と大阪地裁で起こされた「集団自決」訴訟の二つがつながっていると指摘。同訴訟で、座間味島駐屯の日本軍の戦隊長だった梅澤裕氏が軍命をめぐる著作での記述で名誉を傷つけられたと主張していることについて、「集団自決」で亡くなった当時の座間味村助役兼兵事主任の妹二人が、軍命があったことを初めて公の場で証言したことを挙げ、梅澤氏側の矛盾を突いた。

 大城さんは「人が人でなくなるほど極限まで追い詰められた沖縄戦の体験は底が深く、人前で語るには大変な勇気と心の整理が必要。体験者が黙っているのをいいことに軍命はなかったと言う人たちがいるが、体験者のこうした感情の理解なくしては沖縄戦の真実は分からない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_02.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 20面

声上げねば何も変わらず/9大学合同祭で討論会

 自分が行動しなければ、何も変わらない―。「第一回沖縄九大学合同大学祭」(主催・情熱大学実行委員会)の一環として、「学生沖縄サミット二〇〇七」討論会が二十二日、宜野湾海浜公園であった、県内の大学生七人が、文部科学省の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の日本軍強制の記述が削除された問題について議論し、二十九日の県民大会への参加を呼び掛けた。討論会に先駆け、県民大会実行委員で高教組の福元勇司書記長が、文科省の教科書検定から大会開催に至るまでの経緯を説明した。

 学生らは「集団自決」の体験者を招いて講演会を開くなどした自らの活動を報告。「大学生の平和活動への関心の薄さ」などをテーマに意見を出し合った。

 沖縄国際大二年の平田博之さんは「大学生が戦争に動員された時代もあった。いくら平和を願っても形に表さなければ、記述を書き換えようとする流れに乗ってしまう」と言葉に力を込めた。

 討論会を企画した琉球大四年の森田直広さんは「(県民大会に)まず行ってみよう、という状況をつくりたかった。多くの学生に関心を持ってほしい」と訴えていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_03.html

 

2007年9月23日(日) 朝刊 2面

米軍再編打開へ期待/自民党総裁選 県連 福田氏支持

 自民党総裁選で、二十二日に投開票された同党県連(外間盛善会長代行)の予備選挙は、福田康夫元官房長官が投票総数七十四票の八割近い五十八票を得て、麻生太郎幹事長の十六票の得票数を上回り、県連持ち分の三票すべてを獲得した。(与那原良彦)

 福田氏は、派閥で支持を決めた県選出・出身の自民党国会議員四人の票を固め、県議や市町村支部長、職域団体の票を集めて麻生氏を圧倒した。手堅い政治手腕が評価されると同時に、地方と中央の格差是正やこう着する米軍再編の打開など、小泉、安倍と続いた改革路線からの変更を求める期待が福田氏支持に集まった格好だ。

 七月の参院選沖縄選挙区で十二万七千余票差という歴史的大敗を喫した自民党県連は、党勢立て直しの途上にある。

 総務会では冒頭、池間淳総務会長と外間会長代行が、参院選での公認候補大敗や安倍晋三首相の辞意による突然の総裁選に陳謝した。ある幹部は「安倍首相が政権を放り出し、国民の信頼を損ねる結果になった。今回の総裁選は背水の陣だ」と危機感を訴えた。

 総務会出席者は「東京など大都市は好景気に沸くが、沖縄を含めた地方の疲弊は深刻だ。次期政権の最も重要な政治課題は、地方と中央の格差是正だ」と主張する。

 小泉、安倍政権で総務相、政調会長、外相、幹事長を歴任してきた麻生氏に対し、福田氏は官房長官辞任後は政権から離れていた。改革路線の修正に取り組めるのは福田氏ではないか―という声が強かった。県議の一人は「次期政権は解散総選挙までの選挙管理内閣になる。その点でも穏健な福田氏が適している」と評した。

 国会議員の多数派工作でも、福田氏の出身派閥である町村派に所属する嘉数知賢衆院議員が沖縄選対本部長を務め、県議や職域団体への支持拡大に奔走した。

 福田氏自身も執行部に直接、電話で支援を求めた。また、選対副本部長に就いた保岡興治衆院議員は、議員総会で「沖縄の自立経済の確立や米軍普天間飛行場移設など再編問題の解決に成果を挙げる」と訴えた。

 一方の麻生氏は、これまで支持していた下地幹郎衆院議員が離党していることも響いた。

 結果、県連持ち分の三票は福田氏に投じられることになったが、県連が新総裁(新首相)に求めるのは、県と政府の関係修復だ。

 十八日に与党県議団と懇談した仲井真弘多知事は、普天間飛行場の移設協議がこう着状態に陥っているとして、防衛省など政府に対する強い不満感を漏らしたという。

 県連関係者は「早期の局面打開を図るべきだ。この問題が長引けば、与党にも悪影響が出る」とし、次期首相のリーダーシップによる政策転換に期待を寄せる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709231300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月23日朝刊)

[米軍機未明離陸]

住民の声を受け止めよ

 米空軍嘉手納基地からF15戦闘機などの未明離陸が相次いでいる中、周辺三市町の首長、議会議長が、安眠を妨げられているとして、基地司令官に抗議と中止を申し入れた。だが、地元の切実な声に対しても司令官は聞く耳をもっていないようだ。

 ブレット・ウィリアムズ司令官(准将)は「嘉手納基地がある限り、未明離陸は続く。十年後も続くだろう」と指摘した。その上で、岩国や三沢など他の基地周辺自治体を例に挙げながら「抗議があるのは沖縄だけ」と答えたという。

 常日ごろ「良き隣人」でありたいと語ってきたのは米軍ではなかったか。今回の首長らへの対応は、事実上の門前払いであり、突き放したものとしか思えない。

 司令官は、基地被害に苦しむ沖縄の現実を知らなすぎる。基地を管理する立場であればこそ、もっと地元住民の声を真摯に受け止めるべきである。

 未明に離陸することに関し、司令官は、運用上の理由と経費の問題を示している。

 米軍機が太平洋を横断して米本国に向かう場合、「長時間飛行を続けるパイロットの安全のため、日中に目的地へ到着する必要がある」ため、未明離陸を実施しているのだという。

 嘉手納基地に関する騒音防止協定は、深夜・早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限している。ただし、「運用上の理由を除く」との例外規定があり、未明離陸はこの例外規定を適用したものとなっている。

 緊急時ならいざしらず、あらかじめ予定されている飛行を例外規定として適用し、未明離陸が常態化しているのである。これでは協定が有名無実化しているのも同然だ。

 米本国に向かうため、予定されていた未明の離陸が遅れ、午前中に離陸したケースが今年五月にあったことは、記憶に新しい。

 政府は日米合同委員会などを通じ、米側の例外規定の乱用をやめるよう求めるべきではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070923.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月23日朝刊)

[9・29県民大会]

再び山が動きつつある

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向けた取り組みが党派を超えた島ぐるみ運動の様相を見せている。

 県内四十一市町村長に対する本紙アンケートでは四十首長が県民大会への参加を表明した。

 県内の私立五大学で組織する県私立大学協会は連名で声明を発表。「一方の当事者の主張のみを取り上げ、審議会の検討経緯が明らかにされていないことなど文部科学省の回答は容認できない」と批判した。

 県内で市町村ごとに実行委員会を結成する動きが広がり、県知事、県教育長、県議会、県PTA連合会、労組など各種団体が大会への参加を呼び掛けている。民間では特別授業として生徒全員の参加を決めた専門学校もある。

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制を示す記述が削除されたことに対する県民の強い危機感の表れだろう。

 県外では、県内市町村と姉妹都市を結ぶ自治体などで意見書が相次いで可決され、全国の教育関係者でつくる団体がアピールを採択するなど、県民世論に呼応した動きも広がっている。

 検定意見撤回を求める県民大会の開催は、米兵による暴行事件を契機に、日米地位協定の見直しや基地整理縮小を求めた一九九五年の10・21県民大会にも匹敵する展開になってきた。

 安保再定義の動きに危機感を抱いた大田昌秀元知事が地位協定見直しを要請したのに対し、「議論が走りすぎ」と政府の対応は同様に冷淡だった。当時も県民の反発が一気に広がった。

 基地問題、沖縄戦に関する県民の感覚は鋭敏である。歴史体験の中ではぐくまれてきた共通の感覚だろう。党派を超えた県民大会は復帰後二度目になる。燎原の火のように広がってきた沖縄の怒り、県民の世論を政府はどう受け止めるのだろうか。

 県内六団体代表の撤回要請に対し、文部科学省の布村幸彦審議官は「審議会が決めたことに口出しできない」と説明してきた。伊吹文明文科相は「役人も安倍首相もこのことについては一言も容喙できない仕組みで教科書の検定は行われている」と述べ、面談にも応じようとはしなかった。

 その後、教科書審議会日本史小委員会では検討の実態がなく、文科省の調査意見が追認される形になっていたことが関係者の証言で判明し、県民の怒りに油を注ぐ結果になった。

 沖縄戦の「集団自決」の記憶は沖縄の琴線に触れる問題だ。なぜ怒りが渦巻き、再び山が動きだすのか。政府は県民世論から目をそらすことなく、正面から向き合うべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070923.html#no_1

 

琉球新報 社説

意見撤回県民大会 検定制度にもメスを

 なぜわれわれが文部科学省の教科書検定意見に反発し、その撤回を県民挙げて求めているのか。理由はいくつかある。まず沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)について、生存する体験者の証言などから旧日本軍の強制・関与があったのは事実であること。そして渡嘉敷・座間味島の事例が係争中という状況だけをもって、強制・関与の事実がすべての「集団自決」でなかったことにしたいという動きに危機感を感じていることだ。

 さらに今回の騒ぎで見えてきたのは、決して沖縄のみに特有の問題ばかりではないということ。つまり現行の教科書検定制度とは、現状は事実上の国定教科書ではないのか、という疑問だ。そう考えてくると、これは沖縄だけでなく全国にも当てはまる、普遍的な問題を含むことになる。

 29日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」まで1週間を切った。これまでに県内41全市町村議会で撤回決議が可決され、運動は島ぐるみの様相を呈してきた。最近、県内だけでなく本土の自治体でも撤回決議が相次いでおり、全国的に関心を集めつつある。この問題が単に沖縄という一地域の問題ではない、という認識が広がっているものとして、心から歓迎したい。

 戦前の日本では教科書は国が発行する国定教科書だった。時の政府の思想が色濃く反映され、極端な場合、偏った歴史観、ナショナリズムを国民に押し付ける恐れが強い。皇国史観で彩られた教科書が、戦前の日本国民を戦争に駆り立てていく上で重要な役割を果たしたのは紛れもない事実だろう。

 その反省の上に立ち、戦後は検定制度が導入された。この制度の下では、民間の出版社が教科書を作成し、文科省の検定と承認を受けることになる。提出された教科書は、教科用図書検定調査審議会で審査され、文科省に提言をするという流れだ。一見、問題ないかのように見える。しかし、この審議会がくせものだ。

 今回明らかになったのが、審議会とは名ばかりで、ほとんど議論もしなかったということだ。さらに沖縄戦研究者もいなかったというから、驚くほかない。最大の問題は提言自体が、あらかじめ文科省の調査官が出した意見書に沿うものだった、ということだ。

 つまり、極端に言えば国(文科省)の思う通りの教科書が作れるということになる。国定教科書ではないか、とされるゆえんだ。

 今年6月、教育改革関連3法が成立した。教育目標にわが国の歴史について「正しい理解に導き」とある。一連の流れを見ると「(国にとって)正しい歴史」の意味がよく理解できる。検定制度の在り方も問われるべきだろう。

(9/23 10:38)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27430-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(9月20日、21日)

2007年9月20日(木) 朝刊 27面 

史実守れ 世界の声抱え/女たちの会 米から帰国

 県内の基地問題を考える「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)のメンバーら六人が十九日、米のサンフランシスコで開かれた「第六回国際ネットワーク集会」から帰国した。韓国やフィリピンなど米軍基地を抱える各国の参加者から「沖縄に平和を」など連帯のメッセージが書かれた布約五十枚を託された=写真。二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に各国の思いをつなぎ合わせる。

 十年目を迎える同集会は、フィリピンや韓国のほか、グアムが初参加し、米軍基地を抱える国から約八十人が参加した。同会のメンバーらは沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に関し、教科書から日本軍の強制の記述が削除された問題を訴え、検定の方針を撤回させるため、県民大会が開かれることを説明した。

 参加者からは「基地を抱えているだけでも大変なのに、歴史を歪曲しようとするのか」と驚きの声が上がったという。

 高里代表は、沖縄戦と基地存続が共通問題であることを告げた。参加者から「沖縄に平和を」「正義がそこ(沖縄)にあるように」などと韓国語や英語などでつづられたメッセージが集まった。

 ハワイやグアムの参加者からは、これまで無視されていた過去を記したり見直したりすることが歴史の掘り起こしだが「沖縄の状況は逆だ」との意見も出たという。

 メッセージを手にしたメンバーらは、「今回のように、互いの課題をサポートしたい」と話した。


県教委6委員も


 県教育委員会の中山勲委員長は十九日、県民大会に、県教委の六委員全員が参加すると発表した。中山委員長は代表して、意見表明もする。

 中山委員長は「沖縄戦の実相を正しく後世に伝え、子どもたちが平和な国家や社会の形成者として育つためにも、県民とともに声を上げなければならないと考える」とした上で、「多くの県民が大会に参加し、思いを結集するよう強く呼び掛けたい」と語った。


粟国は全7議員


 【粟国】県民大会に向け、粟国村議会(玉寄文雄議長)は十九日までに、議員七人の全員参加を決めた。

 同村の上江洲誠吉村長も県民大会の参加を予定している。上江洲村長は、職員へは自主的な参加を呼び掛けている。


北中城が実行委


 【北中城】県民大会に向けた北中城村実行委員会の結成総会が十九日、同村役場であり、委員長に新垣邦男村長、副実行委員長に中村勇村議会議長らが就任した。大会当日に同公園でミニ集会を開く予定。新垣委員長は「何としても県民大会を成功させ、本土でも議論を深めることが必要だ」と話した。


南風原も実行委


 【南風原】南風原町は十九日、県民大会に向けた実行委員会を結成した。大会当日に大型バスを手配し、地域団体やPTAなど十三団体、労組員ら計二百三十人以上が参加することで一致した。城間俊安町長は「町、議会、町民が一体となって、子どもたちに真実を伝えるための運動を展開していきたい」と決意を示した。


労組連絡会結成


 県民大会に向け、連合沖縄や平和運動センターなどでつくる労働組合約三十団体による労組連絡会が十九日までに発足。代表は連合沖縄の仲村信正会長が就任した。同日、那覇市のパレット久茂地前で約三十人が参加を呼び掛けるビラを配布した。

 仲村代表は十八日に同市内で開かれた結成総会で「組合員を最大結集すると同時に、広く県民に参加してもらおう」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709201300_05.html

 

2007年9月20日(木) 朝刊 27面

ロケット弾残し緊急着陸/嘉手納FA18

 【嘉手納】十九日午後三時三十分ごろ、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機一機が飛行前に装着したロケット弾一発を残したまま、米軍嘉手納基地に緊急着陸した。同基地では、今月中旬ごろから、同機がたびたび実弾や模擬弾を装着して離陸するのが複数の目撃者によって確認されている。

 目撃者によると、同機は十九日午後二時三十分ごろに離陸、約一時間後に北谷町側から南側滑走路に着陸した。その後、数台の消防車や兵器を担当するとみられる整備兵数人が機体を取り囲み、一時騒然とした。同機は約十分後、ロケット弾装着部分などの点検を終え、自走して駐機場に戻った。

 各地で基地監視活動を行っている市民団体「リムピース」の頼和太郎さんは、状況的に「発射ボタンを押したが不発だったため、帰還したと考えられる」と指摘した。

 その上で「不発だった場合は緊急着陸という形で帰還することもあり得る。状況にもよるが、いつ発射してもおかしくない状態だった、という懸念もある」と話した。

 同基地では十三日には、AV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が、大型爆弾仕様のケースに小爆弾が数百個詰められたクラスター爆弾を装着し、離陸。約二時間後に帰還した際に同爆弾はなくなっていたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709201300_07.html

 

琉球新報 社説

「徳育」見送り 教科化よりも内容充実を

 中教審は政府の教育再生会議などが提言していた「徳育」の教科化を今回の学習指導要領の改定で見送る方針を固めた。同会議が打ち出していた正式な教科に準じる「新たな教科」への格上げも見送った。

 子どもたちに教育を通して、規範意識を身に付けさせることの重要性は論をまたない。しかし、教科書で画一的な価値観を教え込むことには違和感がある。

 現行の「道徳の時間」で身に付かなかったことを「徳育」として教科化すれば、成果が上がるといった論理は、あまりにも短絡的で、根拠に乏しい。教科化にこだわることなく、内容を充実させることを重視すべきである。

 教育現場で規範意識を身に付けさせるには、教師一人一人が日常的に子どもたちの心にいかに問い掛け、自ら考えさせるかにかかっている。

 中教審が教科化を見送り、指導内容の見直しによって道徳教育を充実させる方針を固めたのは、当然である。

 高い規範意識を求める安倍晋三首相の意向が、徳育の教科化に向けた動きを推し進めた。

 首相の辞任表明で影響力が弱まりはしたが、時の政権の偏った意向によって一時的であれ、教育の在り方を左右することは、あってはならない。

 2006年の改正教育基本法制定の過程で問題となった「愛国心」の押し付けと、「徳育」の教科化の動きは同一線上にあるのではないか。

 多様な価値観を認め合うことが求められている時代である。首相が目指す教育改革が自身の価値観の押し付けであれば、真の教育改革にはほど遠い。

 下村博文官房副長官(当時)は昨年、安倍政権が目指す教育について「(歴史教科書の)自虐史観は官邸のチェックで改めさせる。徳育教育が大きな課題だ」と述べている。

 「徳育」に対する政権の情熱と、高校歴史教科書での「集団自決」の日本軍強制を修正・削除した文科省の検定意見への対応は、根底でつながっているのではないか。

 「集団自決」記述の問題も、安倍政権の目指す教育の表れであろう。下村発言からして、官邸が教科書検定にかかわった可能性すら疑われる。

 ともあれ、「徳育」の教科化については避けることができた。しかし、子どもたちに正しい規範意識を身に付けさせることは、今後とも大きな課題である。

 それにはこれまでも指摘されているように、教育現場だけではなく、家庭、地域が一体となって取り組むことが最も大切である。

 道徳は教科書で教え込むようなものではない。

(9/20 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27316-storytopic-11.html

 

2007年9月20日(木) 夕刊 5面

F18、クラスター弾訓練/嘉手納基地

 【嘉手納】二十日午前九時すぎ、米軍嘉手納基地から、米海兵隊岩国基地(山口県)所属のF18戦闘攻撃機四機が、非人道的兵器として国連人権小委員会で製造、使用の禁止が決議されたクラスター爆弾などの実弾を搭載して離陸したのが確認された。約一時間後の午前十時二十分に機体に爆弾を残さず着陸した。クラスター爆弾は大型爆弾仕様のケースに小爆弾が数百個詰められた兵器で、沖縄近海の訓練区域で実弾訓練を行ったとみられる。

 目撃者によると、午前九時七分ごろに離陸したF18二機は、片翼の下に二発ずつ、計四発を装着。爆弾の先には実弾を意味する黄色い帯状の印が確認できたという。その後、二機が十時二十分に着陸した際に爆弾はなかった。

 また、千ポンド(五百キロ)爆弾を装着した別のF18二機も同九時十一分ごろに離陸し、同十時六分に帰還したときに爆弾はなかった。

 同基地では十三日にもAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機が、クラスター爆弾を積んで訓練を行っているのが確認されているという。十九日にも岩国基地所属のF18がロケット弾を残したまま緊急着陸した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709201700_04.html

 

2007年9月21日(金) 朝刊 27面

米軍、ナパーム類似弾使用/沖縄周辺訓練区域で

 【嘉手納】大規模な火災を引き起こし非人道的な兵器として国際的な非難を浴びているナパーム弾と同様の威力を持つ「焼夷弾MK77」を在沖米海兵隊が沖縄に貯蔵し、沖縄周辺の訓練区域で使用していることが二十日までに分かった。米軍はナパーム弾に使用されている混合物の種類が異なると説明しているが、専門家は「目的は一緒で、効果に違いはない」と指摘した。

 十三日に嘉手納基地を離陸した岩国基地(山口県)所属のFA18戦闘攻撃機が、焼夷弾MK77四発を沖縄周辺で使用したことを二十日、米軍は認めた。

 在沖米海兵隊は焼夷弾MK77の存在と使用を認めた上で「訓練は、海兵隊のパイロットや乗組員が日米同盟に基づく責任を遂行する態勢を維持するため必要不可欠」としている。

 米軍嘉手納基地では、今月中旬ごろからFA18やAV8ハリアー垂直離着陸攻撃機がナパーム弾同様、非人道的兵器として国連人権小委員会で製造・使用の禁止が決議されているクラスター爆弾を使用するなど、同基地を拠点とした実弾訓練が活発化している。

 軍事評論家の青木謙知氏は「混合物の違いはあっても、広範囲を焼き尽くすという目的は(ナパーム弾と)一緒だ」と説明する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211300_03.html

 

2007年9月21日(金) 朝刊 26面

真実残せ動き全国へ/松山市民が議会請願

 文部科学省の高校歴史教科書の検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述が削除された問題で、愛媛県松山市の市民団体が十九日、国に対して検定意見の撤回を求める意見書可決の請願を県議会、松山市議会、県教育委員会に提出した。同県東温市議会でも市議が意見書案を提案、神奈川県横須賀市でも市民団体が請願を提出しており、検定意見の撤回を求める動きは二十日までに県外で八自治体となるなど、草の根の動きが全国でも広がりつつある。

 愛媛県議会、松山市議会に請願書を提出したのは「愛媛?沖縄ゆいまーる」「沖縄戦を考える市民の広場」「とめよう戦争への道!100万人署名運動愛媛県連絡会」の三市民団体。「生き証人の証言は生きた教科書。動かすことのできない生き地獄の歴史が教科書から消されようとしている」とし、文科省の姿勢を批判している。

 「えひめ教科書裁判を支える会」など四市民団体は十九日、県教委に請願を提出。二十五日には県内全市町教委にも同様の要請を行う。同県東温市議会では二十日、文教委員会で意見書案が審議されたが、継続審議となった。

 神奈川県横須賀市議会には「かながわ歴史教育を考える市民の会」が請願書を提出。二十一日に教育経済常任委員会で審査される。


手製看板で参加訴え

沖子連の玉寄会長


 二十九日に開かれる県民大会に向け、県子ども会連絡育成会の玉寄哲永会長が、那覇市久茂地の交差点に立ち、帰宅途中の会社員や県庁職員らに大会への参加を訴えている。

 ベニヤ板で作った二枚の看板を前と後ろにした姿にいぶかしげな視線を送る人もいるが、すぐに気付き「私も参加します」と激励の声が多く寄せられている。玉寄会長は「多くの県民が参加して文部科学省に抗議の意思を示そう」と呼び掛けている。

 県民大会の副実行委員長も務める玉寄会長が街頭で大会の参加を呼び掛け始めたのは十三日から。雨天時を除いてこれまで三日間、午後五時から三十分―一時間ほど横断歩道の前に立つ。

 玉寄会長は「大会の前日まで訴え続けたい」と話し、汗をぬぐった。


浦添市長が参加呼び掛け


 【浦添】儀間光男浦添市長は二十日、浦添市議会九月定例会で、県民大会への市民の参加を呼び掛けるメッセージを発表した。

 市町村議会で、首長が住民に県民大会への参加を呼び掛けるのは初めて。

 儀間市長は、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」について、「日本軍による命令・強制・誘導等があったということは多くの県民の証言があり、私どもが経験した戦争の悲惨さから県民の証言が正しいと考えるべきだ」と指摘した。


中城村が実行委


 【中城】二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向けた中城村実行委員会が十九日、同村役場で結成された。委員長に新垣清徳村長、副実行委員長に新垣善功村議会議長らが就任。村内各団体に大会への参加を呼び掛ける。


沖縄市も結成


 【沖縄】沖縄市は二十日、県民大会に向けた実行委員会を発足した。市や市議会、市P連、市老人ク、市婦連など十六団体で構成。委員長に東門美津子市長が就任した。

 東門委員長は「市民一体となって大会を成功させるため、一人でも多くの市民が参加できる動きをつくりたい」と抱負を述べた。


座間味村でも


 【座間味】「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、座間味村実行委員会が二十日、発足した。委員長に金城英雄村議会議長を、副委員長に仲村三雄村長を選出した。

 委員会は、今回の教科書検定意見について「国家の間違いを教科書から消し去り、沖縄戦の実態を見えなくするものであり、到底、承服できるものではない」と批判している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211300_04.html

 

2007年9月21日(金) 朝刊 26面

自然保護協が撤回要求/「普天間」代替アセス方法書

 【東京】日本自然保護協会(東京都、田畑貞寿理事長)は二十日、米軍普天間飛行場代替施設に関する環境影響評価(アセスメント)方法書の撤回を求める意見書を沖縄防衛局の鎌田昭良局長に送付した。名護市キャンプ・シュワブ沿岸海域に生息するジュゴンや、白保地域が北限とされてきたアオサンゴなど、希少生物の保全が過小評価されていることを指摘。方法書の縦覧方法も極めて閉鎖的であると批判し、建設位置の選定のやり直しを求めている。

 同協会は意見書で「アセス法施行以来初めて、地元自治体が方法書の受領を拒否する異常事態で手続きが進められ、縦覧方法も極めて閉鎖的」として、住民による方法書の複写が許可されていない状況などを指摘した。

 また、大浦湾内の二カ所と辺野古漁港に作業ヤードの設置が予定されていることに「別の項目を立てて環境への影響を評価しなければいけないのに、(評価対象にせず)紛れ込ませて整理している」などとして、方法書の要件を満たしていないと訴えている。

 同協会理事の吉田正人江戸川大教授らは同日、環境省で記者会見し、代替施設で運用される航空機の名称が方法書に明記されていないことに「機種が特定されなければジュゴンや住民への騒音の影響を調べられないはずで、矛盾している」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211300_05.html

 

琉球新報 社説

焼夷弾MK77 国連決議反する暴挙だ

 国連の禁止決議を無視し、在沖米軍が高性能焼夷(しょうい)弾MK77を貯蔵、訓練に使用している事実が判明した。国連が製造と使用禁止を決議した非人道的兵器の一種だ。県民を危険にさらす暴挙であり、米軍は即刻、訓練使用をやめ、破棄すべきである。

 MK77という名前にピンとこなくても「ナパーム弾(油脂焼夷弾)」といえば分かるであろう。ベトナム、湾岸戦争などで使われた大量殺りく兵器である。その改良型がMK77だ。

 国連の人権小委員会は、劣化ウラン弾やクラスター爆弾などとともにナパーム弾も製造・使用禁止を求めている。米軍は1988年以降、ナパーム弾の廃棄を進めてきた。今回、沖縄周辺の提供訓練区域での訓練でMK77の使用を認めた在沖米海兵隊は、「MK77はナパーム弾と科学的に異なる」と釈明している。だが、ナパーム弾の燃料がガソリン、MK77が灯油の違いだ。一線の米兵らはMK77を「ナパーム」と呼んでいる。頭隠して尻隠さずの弁明にすぎない。

 国際的にも「非人道的」と非難される兵器を訓練で使い続ける。米国が国連や国際世論をいかに軽視しているか。その証左であろう。MK77ナパーム弾の殺傷能力は、すさまじい。使用された湾岸戦争での報告では、広範な地域が一瞬にして炎の海となり、炎にのみ込まれた人間や建物は徹底的に燃やし尽くされたという。

 化学剤が使用されているため消火は困難を極め、少量の焼夷剤の飛沫(ひまつ)を皮膚に浴びても「骨まで溶かす」ほど焼き尽くし、生き残っても重篤な後遺症を与える。

 その危険な兵器を米軍が訓練で使う。事故の絶えない在沖米軍である。訓練でミサイルの発射装置が故障する事故もあった。緊急着陸も多い。誤射も懸念される。人口密集地の上空を飛ぶ訓練機が事故を起こせば、戦場の悲劇は県民の上に降り注ぐことになる。

 米軍は、MK77に加えクラスター弾の訓練使用も認めている。国連が禁ずる兵器を自衛隊も保有している。あきれた話だ。日米両政府は国連決議を順守し、即刻、使用をやめ廃棄すべきだ。

(9/21 9:50)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27361-storytopic-11.html

 

2007年9月21日(金) 夕刊 1面

司令官「10年後も続く」/未明離陸

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など米軍機計五機が十一日未明に離陸した問題で、同基地周辺の三首長らで組織する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は二十一日午前、同基地を訪れ、司令官のブレット・ウィリアムズ准将に抗議し、未明離陸の中止を求めた。

 三連協の抗議に同准将が対応するのは初めて。三連協会長の野国昌春北谷町長によると、ブレット・ウィリアムズ准将は「何度も抗議や要請を受けているが、嘉手納基地がある限り未明離陸は継続して行われる。十年後も続くだろう」と今後も継続して実施する姿勢を示したという。

 「F22が本国へ帰還する際に日中に離陸した。未明離陸の回避は可能ではないか」という首長らの指摘に対しては、「パイロットなど人員の問題や費用の面で未明離陸は避けられない」と答えた。

 また、同准将は岩国や三沢など日本国内の米軍基地周辺での未明離陸は地元からの抗議がないことに触れ、「なぜ沖縄では抗議されるのか」と発言。これに対し、宮城篤実嘉手納町長は「他の在日米軍基地は居住地区から離れた場所にある。嘉手納基地では住民が実際に被害を受けている」と反論した。

 同基地で活発化しているクラスター爆弾やナパーム弾同様の威力を持つ焼夷弾MK77など実弾を使った訓練については「(基地の)管理は私の責任だが、米軍の各部隊の訓練計画を止める権限はない」と話したという。

 野国会長は「司令官の高飛車な発言を聞き、地元だけでの抗議では根本的な解決にならないと感じた。日米両政府で取り組むべき問題だ」と述べ、日本政府が問題改善に取り組むよう要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211700_03.html

 

2007年9月21日(金) 夕刊 7面 

巨大はがきで撤回アピール/浦添市職労

 【浦添】二十九日に宜野湾海浜公園で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への参加を促そうと、浦添市職員労働組合(久高政治委員長)は“巨大はがき”に、教科書検定意見を撤回する要求を書き込む運動を展開している。組合員や市民、県民大会会場で意見を募り、大会後、文部科学大臣に郵送する。

 はがきは縦百八十センチ、横九十センチで、ベニヤ板を白く塗って作られている。本物のはがきと同じく文部科学省の郵便番号や住所、送り主の浦添市職労の住所を書き込んでいる。

 「集団自決(強制集団死)」の生々しい様子を写した県実行委のポスターを切手に見立て、切手料金には、沖縄戦の戦死者数二十万六百五十六人(県教育文化資料センター調べ)が記されている。

 組合員を対象に、十九日から始まった検定撤回の要求を書き込む運動では、「子どもたちにウソの歴史を教えるのか」「勝手に歴史を変えるなよ。県民は怒っているぞ」などのメッセージが続々と集まっている。二十五日からは市役所一階ロビーで市民からメッセージを募り、計五枚を送る予定だ。

 久高委員長は「『集団自決』の日本軍の強制の削除は今後の子どもたちの教育にも大きな意味を持つ。意見を書き込む活動を通して、県民大会に参加する機運を盛り上げたい」と意気込みを語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709211700_05.html