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沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(5月3日 その2)

来月9日に県民大会 集団自決「軍命」削除

 2008年度から使用される高校歴史教科書の検定意見を受け、沖縄戦の「集団自決」から「日本軍の強制」が削除、修正されたことについて「沖縄戦の歴史歪(わい)曲を許さない!沖縄県民大会」の開催に向けた第1回実行委員会準備会が2日夜、那覇市の教育福祉会館で開かれた。準備会には沖教組、高教組など18団体、約60人が参加し、文科省に記述復活を求める県民大会を6月9日に那覇市の県民広場で開催することを決定した。
 準備会では冒頭、松田寛高教組委員長が「沖縄戦がゆがめられて全国の子どもに教えられるのは決して許されない。労組や市民団体だけでは教科書問題を解決することは難しい。県議会での闘いをつくり上げ政治問題化していきたい」と発言した。
 大会趣旨として、文科省にあらためて沖縄戦の実相を認めさせ、教科書図書検定基準にあるアジア諸国との近代の歴史に特別な配慮をする「近隣諸国条項」と同様の「沖縄条項」を認めさせていく方針を確認した。
 また準備会では事務局を高教組に置き、県内2教組で担うことを確認。実行委の拡大、県議会や市町村議会対策などが提起された。
 「沖縄戦の歴史歪(わい)曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史さんは「教科書の印刷は8月以降。それまでに撤回させたら教科書の書き換えは十分にあり得る」と訴えた。

(5/3 10:10) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23474-storytopic-1.html

沖縄タイムス 社説(2007年5月3日朝刊)

[還暦迎えた憲法]

平和の理念揺るがすな

「九条」守るために声を

 「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」を基本原則とする憲法が施行されて満六十年を迎えた。

 各種の世論調査でも分かるように憲法を取り巻く環境は変化し、特に「新憲法制定」を公約に掲げる安倍晋三首相の登場で憲法の改正手続きを定める国民投票法案が衆院を通過するなど大きく様変わりした。

 だが、憲法の何を変え、何を残そうとしているのか。私たちは憲法をどう受け止め、暮らしの中で向き合ってきたのか。憲法記念日にあたり、もう一度考えてみたい。

 首相が目指す「戦後レジームからの脱却」は、「戦争放棄」「武力不保持」を打ち出した九条の改正と集団的自衛権の解釈変更を基軸にしている。

 しかし、本紙が行った世論調査では、九条について「改正するべきでない」が二〇〇四年の40%から十六ポイント増えて56%になっている。逆に「改正すべきだ」が29%から24%に減った。

 これは「歴史的な大作業だが、私の在任中に憲法改正を成し遂げたい」と述べた安倍首相への県民の答えと言っていいのではないか。

 沖縄は戦後二十七年間も米施政権下にあり、復帰後も平和に暮らす権利を基地が侵してきた。基地はまた基本的人権をも蹂躙(じゅうりん)したと言っていい。

 だからこそ県民は九条護持を理由に、平和主義の理念を変えることへの危機感を示したのである。

 もちろん、変えるべきところ、付け足す必要があるところをきちんと議論することに異論はない。しかし九条改正には多くの国民が反対している。その点で首相と国民の憲法観は大きく乖離していると言わざるを得ない。

 首相が立ち上げた集団的自衛権についての憲法解釈変更を目指す有識者会議は、首相と同じ考えを持つ識者の集まりだ。これでは「まず解釈改憲ありき」ではないか。

 憲法は権力を持つ側が安易に変えるものではないはずだ。改正を急ぐ首相に疑惑の目が向いているのをなぜ直視しないのか、疑問というしかない。

 「平和の理念」を拡大解釈で揺るがしてはならず、そのためにも私たちにはしっかり声を上げる責任がある。

歴史の事実に目を閉ざすな

 共同通信社での憲法研究会で講演した日本国際ボランティアセンター前代表熊岡路也氏は、イラク戦争とNGO活動の動きを説明する中で、「国際協力では非軍事活動が大事だと確認されている」と述べている。

 紛争解決に求められているのは「当事国、周辺国との折衝や交渉」で、日本は「日本国憲法の理念をむしろ展開すべきだ」と話す。日本の安全に必要なのは「戦争できる国」に道を開く九条改正ではなく、集団的自衛権が行使できるよう憲法の解釈を変えることでもないというわけだ。

 アフガニスタンやイラクなどの紛争地域や各地で頻発するテロを考えれば、今こそ憲法前文と九条の理念が輝きを増していると言うべきだろう。

 「権力を持つ人を縛り」個人の権利と自由を守るのが立憲主義の理念であれば、国民には首相に対し平和憲法を順守するよう求める責任がある。

 私たちは日中戦争から太平洋戦争までの歴史の中で多くのことを学んできた。憲法の根幹にあるのは歴史から体感した“平和の尊さ”であり、理念を変える動きについては厳しく監視していかなければならない。

自らの憲法観が試される

 沖縄は十五日で一九七二年の復帰から三十五年を迎える。復帰時の県民の願いは「平和憲法」の下に戻ることにあった。さらに言えば、基本的人権が尊重されることへの希望であった。

 だが実態はどうだろう。米軍基地の「本土並み」という約束がほごにされ、憲法三原則の一つである基本的人権も十分に守られなかった。平和主義だけでなく憲法そのものの理念にかなうものではなかったのである。

 日米安保条約が憲法の理念を踏みにじったのは明白で、それが暮らしの隅々に影を落とし県民を不安に陥れているのは間違いない。

 憲法は確かに不磨の大典ではない。だが、首相の思惑で改憲を急ぐべきものでないのもまた確かだろう。

 改正教育基本法が成立し防衛省もできた。首相が集団的自衛権を模索するいま、私たちが歴史の岐路に立っているのは間違いない。だからこそ自らの憲法観が試されていることを肝に銘じたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070503.html
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沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(5月3日 その1)

沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 1面
旧軍飛行場/那覇市が4事業提案
 那覇市の翁長雄志市長は二日、二〇〇六年度に行った旧軍飛行場の用地問題事業可能性調査の報告書を発表した。地主会の要望をまとめ(1)那覇空港関連事業(2)那覇市の公的施設建設(3)総合健康増進施設建設(4)ファンド(民間参加型)事業―を提案。連休明けにも地主会に説明して了解を得た上で、県に要請する。具体的な提案を含めた市の報告書策定は初めて。

 実際に実施するのは一事業だが、複数の事業を合わせたり、ファンド事業のアイデア次第で新たな事業案が出る可能性もあるとしている。

 旧軍飛行場の用地問題は、一一年度に終了する沖縄振興計画で「戦後処理の課題」に位置付けられている。県は今月下旬にも報告書で示された事業案などを旧地主会や、旧軍飛行場のあるほかの市町村に対して説明会を開くとともに、事業案を検証。残り五年となった沖縄振興計画の中で解決するため今後、国との調整をどう進めるかなど検討する。

 市は、県の補助を受け団体補償による問題解決を求める「旧那覇飛行場用地問題解決地主会」と「旧小禄飛行場字鏡水権利獲得期成会」からヒアリングした。案は、県が示した(1)団体補償として検討(2)地主会の提案を中心に、慰藉や地域振興の観点を重視―などを前提に策定。事業の安定性、継続可能性を考慮し、有識者らでつくる検討委員会が地主会から挙がった計十一の案を四案に絞った。

 いずれも旧地主関係者の奨学金制度や雇用の優遇措置など「慰藉事業」を盛り込んでいる。

 翁長那覇市長は「事業案をさらに精査し、問題解決に向けて取り組んでいきたい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_03.html

沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 26面
憲法の危機は国民の危機/きょう那覇で講演会
 県憲法普及協議会などが主催する今年で四十二回目の憲法講演会が三日、那覇市民会館で開かれる。演壇に立つのは、米国生まれの詩人で絵本作家のアーサー・ビナードさん。東京で詩作を続けている。昨今の日本の改憲論議はどう映るのか。講演を前に二日、那覇市内で聞いた。(聞き手=社会部・粟国雄一郎)

 今の改憲論議は先を急ぎ過ぎていますね。日本の憲法は世界に誇る超一流の憲法。めったに生まれてこない一世紀に一度の奇跡です。ただ六十歳とまだ若い。シェークスピアの戯曲への評価が時代ごとに揺れ動くように不遇な時代もあります。

 「世界情勢と日本の立場が合わない」などと、憲法が現実と乖離しているといわれるが、乖離しているのは憲法ではなく、与党の政治家たち。三流の政治家を選んでそれに憲法を合わせるか。市民が力を出して、政治家を少しでも超一流の憲法に近づけられるか、それが試されている。

 アリストテレスが「いい法律があっても、実践しなければいい政治はない」と言ったが、今の日本を見透かしたような言葉です。日本で、憲法を生かす積極的な外交に取り組んだ政権はかつてない。古くなったなんていうけど、新品ですよ。一度たりとも使われていない、未使用。日本国憲法はすごい力を秘めているのに、まだ一度も試されていないんです。

 沖縄に目を向けて、沖縄が歩んできた道を真剣に考えると、日本国憲法に行き着く。と同時に、侵略戦争をしたアジアに対する答えでもある。それを捨てることは、いったん出したその答えを無効にすること。沖縄とアジアを消すことになる。

 憲法を捨てようとする動きと、沖縄の戦争を消そうとしているのはまったく同じ勢力です。教科書から「集団自決」の強制を消す動きと、憲法改正手続き法案のタイミングが重なりましたが偶然ではありません。

 憲法の危機は、沖縄をまったく知らない、歴史の奥に潜む因果関係を考えようとしない国民の危機です。

 講演会は、三日午後一時半から同四時まで、那覇市民会館大ホールで。演題は「『美しい国のラムネ』―プシュッと言葉の栓を開ける―」。高校生以下は無料、一般七百円、学生五百円。

 アーサー・ビナード 1967年7月、米ミシガン州生まれ。90年に来日、東京を拠点に詩作を続ける。2001年に詩集「釣り上げては」で中原中也賞。07年に「ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸」で日本絵本賞。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_04.html

修正主張は「合意内」 普天間移設で仲井真知事

 日本時間の2日未明にワシントンで開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、米軍普天間飛行場移設について県と名護市が求めている移設案の沖合移動に言及がなかったことに対して仲井真弘多知事は2日夕、記者団に対し「昨年の(米軍再編の)基本合意は尊重すべきだ。名護市の(要求)は基本合意の範囲内だ。『修正』というのも(受け)取り方だ」と述べ、県や名護市の主張が合意案に含まれるものだとの認識をあらためて示した。
 公約として政府に主張している(1)普天間飛行場の3年めどの閉鎖状態実現(2)現行V字移設案は容認できない|の2点について「まだ政府からきちっと返答をいただいていない。その2点を満たすような方向でのご返事をいただきたい」とあらためて要求した。
 その上で、政府から回答が示されないまま環境影響評価(アセスメント)手続きで方法書を送付してきた場合は「それは受け付けられない」との意思を重ねて示した。
 2プラス2の内容で沖縄に関連した部分については「(普天間移設で)技術専門的な設計の取り組みというが、取り組みがどうなのかはっきりしない。嘉手納より南の部分についてどうするのか分かりやすく出ていない」と指摘した。
 内容全般には「これまで1年たって、どんなふうに動いているかいないか、実情のチェックと情報交換という印象を受ける」と述べた。

(5/3 10:24) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23470-storytopic-3.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(5月2日、3日)

F15事故「欠陥機の証明」 嘉手納基地周辺3首長

けん引されて移動する前脚が折れて事故を起こしたF15戦闘機=1日午後5時38分、米軍嘉手納飛行場

 【中部】1日午前、米空軍嘉手納基地で起きたF15戦闘機の事故。相次ぐトラブルに基地周辺の首長は「F15は撤去してもらうしかない」「危険な状態は変わりない」と基地と隣り合わせの危険性をあらためて強調した。
 宮城篤実嘉手納町長は「飛び立つ前に大事に至らずに済んだ」と前置きしながら「F15は欠陥機ではないかという疑いがあり、そういう機種が主力戦闘機として置かれている。危険な状態は変わりない」と嘉手納基地の危険性を強調した。同町は午後、米軍に機体の整備点検と安全管理を徹底するよう申し入れた。
 野国昌春北谷町長は「今回の事故は人的な被害がなかったとはいえ、周辺の住民に不安を与えたのは間違いない。F15は撤去してもらうしかない」と強調し「事故は老朽化が進んでいる証拠であり、欠陥機だということを自ら証明しているようなものだ」と厳しく指摘した。
 東門美津子沖縄市長は「事故があるたびに再発防止と安全管理の徹底を強く申し入れてきたが、改善がみられない。緊張感が足りないのではないか。今後、市民に不安を抱かせないよう航空機整備の徹底をはかり、絶対に事故を起こさないよう強く要望する」とのコメントを発表した。
(5/2 9:56) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23447-storytopic-1.html

沖縄タイムス 社説(2007年5月2日朝刊)

[「集団自決」調査]

住民証言が軍関与裏付け
 文部科学省の教科書検定で、高校歴史教科書の沖縄戦をめぐる記述から、「集団自決」への日本軍の関与が削除された。一般住民による「集団自決」は沖縄戦の特徴だ。沖縄戦の実相を根本から揺るがす問題だけに大きな波紋を広げている。

 本紙が県内四十一市町村長を対象にした緊急アンケートで、回答した三十六人のうち三十二人が今回の検定結果に「反対」と答えた。四人は「どちらともいえない」とした。「賛成」と答えた首長はいなかった。

 ほとんどが記述削除を疑問視している。当然の結果だろう。数多くの住民証言が残された中で、沖縄戦の記憶をどう継承していくのかが、ますます重要で差し迫った課題になってきた。

 各市町村長は政治的な立場を超えて強い懸念を表明した。沖縄戦での「集団自決」は、住民の証言・記録を踏まえ大方の共通認識になっている。

 教科書検定では、「集団自決」について日本軍が強制したとの記述七カ所(五社七冊)に修正を求める検定意見が付いた。日本軍による「集団自決」の強制が明記されていたが、日本軍の関与を否定する表記となった。

 今回の検定意見に関して、文科省は「最近の学説状況の変化」や大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟での日本軍元戦隊長の証言などを根拠に挙げ、集団自決を日本軍が強要、命令したという記述について修正を求めた。

 これに対し、検定意見を疑問視する市町村長らは「記述削除は沖縄戦の実相を隠すもので、国民へ戦争への正しい認識を与えない」「歴史の真実が政治や政府によってゆがめられ、国の将来に大きな危惧を抱く」と懸念する。

 また、「住民の証言がある。軍の関与がなかったとはいえない」「軍関与の事実はさまざまな証言からも明らかだ」「軍の自決強要は証言で明らか。歴史を曲げた教科書による教育はおかしい」と、軍関与を否定する見解を住民の証言を根拠に批判している。

 沖縄戦の事実を率直に語り継ぐことの重要性を強調する意見も目立つ。

 県内には多くの沖縄戦体験者がおり市町村長らの警鐘は県民の声を代弁したものといえる。激しい地上戦に住民が巻き込まれ、死んでいった沖縄戦を象徴する、非戦闘員の「集団自決」の事実を矮小化してはならない。

 沖縄戦の記憶をめぐる問題は、教科書検定や「集団自決」裁判の問題につきるわけではない。愛国心がことさら強調され、「集団自決」を殉国の美談に仕立てる動きが広がる中で、県民が沖縄戦をどう位置付け、後世に語り継いでいくかが厳しく問われている。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070502.html#no_1

沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 1・27面
改憲賛否20対19/県議会議員
9条改正27人反対/きょう憲法施行60年
 施行六十年の憲法記念日を前に、沖縄タイムス社は県議会議員を対象に、憲法改正に関するアンケートを実施した(四十八人中、四十六人が回答)。「改正するほうがいい」との回答は二十人、「改正しないほうがいい」は十九人で、ほぼ拮抗している。改正賛成は二〇〇五年の調査に比べ六人減、改正反対は同数だった。一方で、基本原則を守るとする加憲などが七人に増え、全体的に慎重な考えを示す県議が目立つ結果になった。

 焦点になっている九条については、与党八人を含む「改正反対」が二十七人(前回二十六人)で、「改正賛成」の十二人(同二十一人)を大きく上回り、与党を含め「九条改正」に対する反対意見や慎重論などの抵抗感が県議会内で根強いことが明らかになった。

 「憲法改正に賛成する理由」(複数回答を含む)で最も多かったのは、「新しい権利、義務を加えるべきだ」が十七人。次いで「自衛隊の位置付け、役割を認めるべきだ」が十二人で、自衛隊の現状との乖離の是正や国際貢献の明記を求める声が相次いだ。「集団的自衛権を認めるべきだ」は四人。制定過程を問題視した「押し付け憲法だから」は二人だった。

 「憲法改正に反対する理由」(複数回答を含む)では、十一人が「平和の理念があり、世界に誇る平和憲法」を挙げ、平和主義を基本原則とした現行憲法の理念を強く支持。次に、「集団的自衛権の行使が認められ、軍事国家になる危険性がある」が七人で、現憲法が軍事同盟強化の歯止めになっているという認識を示した。「改悪の恐れがある」「大多数の支持を得て、社会に根付いている」がそれぞれ三人だった。

 憲法九条で禁じられている集団的自衛権について、政府が有識者会議で解釈変更の検討に着手する方針を示したことについて、反対を表明したのは二十六人で、慎重検討を含む賛成は十六人を上回った。与党・中立会派の「反対だが、検討必要」と答えたのは五人、公明の三人は「政府解釈見直しなら反対」を表明した。

改憲 参院選の争点に

 日本国憲法は三日、施行六十年を迎えた。この間一度の改正もなかったが、安倍晋三首相は在任中の改憲実現を目指す考えを表明、夏の参院選でその是非を問う構えだ。改憲手続きを定める国民投票法案も今月中の成立が確実。憲法改正が現実の政治課題となり、国民一人一人が真剣に向き合わなければならない時代に入りつつある。

 今後の憲法論議は、国民投票法成立を受け参院選後の臨時国会で両院に設置される憲法審査会に主舞台が移る。三年間は改憲案の提出、審査は凍結され、現行憲法の問題点などの調査が進められることになる。首相は改憲の必要性を訴える一方で、集団的自衛権行使に関する政府の憲法解釈見直しにも意欲を見せており、参院選ではこの点も争点になりそうだ。

     ◇     ◇     ◇     

平和憲法「世界に届け」/9条の会アピール

 三日の憲法記念日を前に県内の「九条の会」十団体が二日、「日本国憲法9条で21世紀に平和な世界を」と訴える初の共同アピールを発表した。

 アピールは、改憲手続きを定めた国民投票法案が衆議院を通過したことを踏まえ、「憲法九条がなければ、日本軍はベトナムやイラクで参戦していただろう」と指摘。国際社会で武力によらない平和構築が求められる中、「憲法九条を持っているわが国こそ、そのもう一つの道を世界に指し示すことができるのではないでしょうか」と九条の世界的可能性に言及した。

 県庁記者クラブで会見したネットワーク九条の会沖縄の世話人で、大学人九条の会代表の高良鉄美琉球大学大学院教授は「九条は国際的にも認められ、時代の先を行くもの。改憲したら『なぜ変えた』と私たちは責任を問われる」と、九条の意義を強調した。

 また、同席した「はえばる九条の会」の金城義夫会長が、南風原の九条の碑が近々完成することを明らかにし、慰霊の日の来月二十三日までに一般公開したい、とした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月3日(木) 朝刊 27面
沖縄戦歪曲 抗議の声を/来月9日 県民大会
 教科書検定で、高校歴史教科書から沖縄戦「集団自決」記述に関する日本軍の関与が削除された問題で、労組や市民団体は六月九日、那覇市の県民広場で五千人規模の県民抗議大会を開く。高教組(松田寛委員長)と沖教組(大浜敏夫委員長)、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(共同代表・高嶋伸欣琉大教授ら)が二日夕、那覇市の教育福祉会館で開いた「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」実行委員会の準備会で確認した。

 大会を契機に六月県議会で文部科学省へ修正意見の撤回を求める意見書を採択してもらい、教科書会社が軍関与を記述した申請時の教科書に戻すことを求めていく。準備会には約三十の労組や市民団体、野党県議らが参加した。

実相否定に批判

 準備会では、三月三十日に公表された検定意見について、「日本軍による」という主語をなくし、住民の「集団自決」を犠牲的精神の表れと位置付けて沖縄戦の実相を否定するものだ、と文科省を批判する声が相次いだ。

 参加者は「戦争の本質を覆い隠す教科書が全国の子どもたちに渡ることは許さない」と強調。教科書製本の日程上、書き換えはまだ現実的に可能だとして、県民に広く訴えていくことを申し合わせた。

与党に呼び掛け

 また、市民団体や労組だけの運動では限界があるとして、県政与党の自民党と公明党にも参加を呼び掛けていくことを決めた。

 県議会が、一九八二年に文部省(当時)が「住民虐殺」記述を削除しようとした動きに対し、同年九月に臨時議会を開き意見書を全会一致で採択。記述復活に道筋を付けた経験を踏まえ、同様の対応を求めていくことにした。

 意見書採択後は県議会としての要請団を組織して、政府に要請してもらう考え。

 一方、申請時の文章に戻すことを求める文科相あての署名活動にも取り組み、県内で二十万票を目標にする。

那覇議会審議へ

 教科書検定で歴史教科書から沖縄戦の「集団自決」で日本軍の関与が削除された問題で、那覇市議会(久高将光議長)は十五日に臨時議会を開き意見書について審議する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705031300_02.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(5月1日、2日)

沖縄タイムス 2007年5月1日(火) 朝刊 1面
国民保護計画策定3割 県内市町村
全国の3分の1
 戦争やテロなど有事の住民避難に備える国民保護法制で、国が目標とした三月末までに国民保護計画を策定したのは県内で十三市町村と、全体の三割にとどまることが分かった。全国の九割に比べると、慎重さが目立つ。国や県への協力が義務付けられる民間の指定地方公共機関は、全体の六割に当たる十五法人が国民保護業務計画を作成した。当初指定に難色を示した民放も、五社のうち二社が作成した。

 計画を策定した十三市町村のうち、離島があるうるま、本部、渡嘉敷、座間味、粟国、南大東、伊是名、久米島の八市町村はすべて、全島民の島外避難を想定。米軍牧港補給地区を抱える浦添市は、「基地従業員や米軍人・軍属の家族が基地外に避難の場合、迅速な対応が課題」とした。

 米原子力潜水艦が寄港するホワイトビーチや石油コンビナートがあるうるま市は、避難の準備から実行、復興まで段階ごとのマニュアルを独自に添付した。避難所では通常の食料に加えて離乳食やおかゆも用意、遺体安置に備えてひつぎやドライアイスを準備するなど、詳細に定めている。

 このほかに那覇市、糸満市、南城市、嘉手納町が国民保護計画を策定した。策定していない二十八市町村のうち、宜野湾、石垣、沖縄、読谷、北中城の五市村では前提となる条例も成立しておらず、時期のめどが立たない。

 一方、指定地方公共機関では県医師会、沖縄ガス、琉球エアーコミューター、海運八社、県トラック協会、沖縄セルラー電話が国民保護業務計画を作成し、県に報告した。

 警報の放送が義務付けられる民放五社のうち、沖縄テレビ放送とFM沖縄も計画を作成。いずれも民放連のモデルに沿って、「いかなる緊急事態にあっても市民の基本的人権および知る権利を守り、自由で自律的な取材・報道活動を貫く」と明記した。特に沖縄テレビは独自に「多くの住民の犠牲が出た沖縄戦の反省」を盛り込んだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705011300_01.html

沖縄タイムス 2007年5月1日(火) 朝刊 2面
普天間移設 反対決議を撤回へ/辺野古区
 【名護】米軍普天間飛行場移設予定地、名護市辺野古区の大城康昌区長は四月二十九日、区の最高意思決定機関である同区行政委員会(宮城利正委員長)に対し、一九九九年に代替施設のヘリポート陸上案と埋め立て案に反対した決議について撤回するよう提案した。同日の二〇〇七年度区民総会で明らかにした。反対決議の撤回を同区区長が明言したのは初めてで、行政委で決議が撤回されれば、移設作業にも影響を与えるとみられる。

 大城区長は、名護市がV字形滑走路案に合意し、市や県が同案を基本に進めている現状を指摘。「一九九九年の反対決議は現状にそぐわなくなっており撤回する」と話した。その上で「反対決議を撤回するからには、久辺三区や二見以北十区がこれまで求めてきた、(地域活性化事業などの)条件をしっかり実現してもらわなければいけない」として、名護市と協議して、国に振興策などを要望していく考えを示した。総会には、区民約二百四十人が参加したが、特に異論は出なかったという。

 五月から新役員体制になる行政委は、区長の方針を受けて近く決議撤回に向けて審議する予定。宮城安秀副委員長は「区長が出した方針であり、行政委としてはそれを全面的に支援していくことになると思う」と話し、決議撤回という区長の方針を支持する姿勢を見せている。

 県が普天間飛行場の移設候補地に、辺野古区を最有力候補としていた九九年九月、同区はヘリポート建設による危険性の増大や騒音被害の拡大、環境破壊への影響を懸念して、陸上案と埋め立て案の両案に反対する決議をした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705011300_04.html

沖縄タイムス 2007年5月1日(火) 夕刊 1面
F15移動中前脚折る 嘉手納
基地報道部「調査中」
 【嘉手納】米軍嘉手納基地で一日午前十時ごろ、同基地所属のF15戦闘機一機が同基地滑走路に向けて移動中に前輪脚(ノーズギア)が折れ、機体前部を滑走路に付けて停止した。事故原因など詳しい状況は不明。午後一時現在、同基地報道部は「事故による滑走路閉鎖はない。原因は調査中」としている。

 消防車などの緊急車両が行き交ったほか、迷彩服姿の約三十人の米兵が機体を取り囲んで作業するなど、現場は緊迫した雰囲気に包まれた。目撃者によると、午前十一時十分ごろに同機のものとみられる折れたノーズギアやタイヤを運ぶ様子が確認できた。

 同機は午前十時すぎ、南側滑走路東側の待機場所に向かう際、事故を起こした。事故後、操縦士一人が機体を降り、他の米軍要員とともに機体周辺で待機。約五分後、消防車など数台が周囲を取り囲み、迷彩服を着た米軍要員約三十人が周辺で機体を見守っていた。

 事故当時、南側滑走路の待機場所には四機のF15戦闘機が待機していたが、約十分後、離陸を取りやめ、格納庫へ戻った。

 事故直後にKC135空中給油機やF15が離着陸した。同基地に一時配備中の最新鋭のステルス戦闘機F22四機も同十時五十分ごろ離陸した。

 嘉手納町は同基地に事故原因など詳細を問い合わせており、「事実関係を確認後、今後の対応を検討したい」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705011700_03.html

米F15前輪折る 滑走路へ移動中前のめり

前のめりになった状態で止まったF15戦闘機。機体の周辺には米兵が集まった=1日午前11時5分ごろ、嘉手納基地

 1日午前10時すぎ、米軍嘉手納基地で、離陸のため駐機場から滑走路に向かって移動していた同基地所属のF15戦闘機が、滑走路手前の東側で前輪が折れ、機首部分を路面に接触させて前のめりの状態で停止した。緊急車両数台が機体周辺に駆け付け、操縦士を救助した。原因は不明。午後零時15分現在も、機体はそのままの状態で置かれている。
 嘉手納飛行場は現在、北側滑走路が補修中のため、南側滑走路一本だけが使用可能になっている。事故後も他のF15は離陸している。
 目撃者によると、滑走路東側で離陸前の最終点検をしたF15が滑走路方向に進んでいる途中で前のめりの状態で停止した。消防車両を含む緊急車両数台が駆けつけ、一時は騒然となった。
 操縦士は緊急車両で駆け付けた救助員によって救助されたが、けがをした様子は確認されていない。機首の接地で火災などは発生していない。
 事故機は昨年の機種更新で同基地に配備されていた。1984年製とみられる。
(5/1 16:03) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23435-storytopic-1.html

沖縄タイムス 2007年5月2日(水) 朝刊 23面
「F15は欠陥機」怒り/周辺首長撤退要求
 【嘉手納】米軍嘉手納基地で一日午前、前輪脚(ノーズギア)を折り、機体前部を滑走路上に付けたままで停止したF15戦闘機の事故で、事故機は同日午後五時五十分ごろ、けん引され格納庫に入った。相次ぐF15戦闘機のトラブルに同基地に隣接する沖縄市、嘉手納町、北谷町の首長は一斉に反発。「あらためて撤退を訴えていきたい」などと怒りをあらわにした。

 F15戦闘機は昨年一月に伊計島沖に墜落したほか、同三月と八月にはフレア照明弾を誤射。同五月には着陸時に滑走路から外れ、脇の緑地帯に突っ込んだ。米空軍F22Aラプターと空自の共同訓練が実施された四月二十八日にも緊急着陸した。

 多発するF15戦闘機の事故。地元、嘉手納町の宮城篤実嘉手納町長は「さまざまなトラブルを発生させている戦闘機が嘉手納基地に常駐している現状は、地域に不安を与えている」と指摘。今回の事故については「離陸する直前に故障が分かり、地域に被害を与えるという大事には至らずに済んだが、今後もF15の撤退を訴えていきたい」と述べた。

 「F15は欠陥機」と憤る野国昌春北谷町長は「もし離陸後に発生していたら大きな事故につながっていた」と話した。

 東門美津子沖縄市長は「これまでにも事故が発生するたびに再発防止と安全管理を徹底するよう強く申し入れてきたが改善が見られない。緊張感が足りないのではないか」と批判した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705021300_03.html

沖縄タイムス 2007年5月2日(水) 朝刊 23面
投票法に反対声明/9条の会沖縄
 憲法「改悪」に反対する市民団体「第9条の会・沖縄うまんちゅの会」は一日、県庁で記者会見し、憲法改正手続きを定める「国民投票法」の制定に反対する声明を発表した。同法案は今国会で成立する見通し。共同世話人代表の安里要江さんは「日本が再び戦争をしないためにも平和憲法を守らなければならない」と訴えた。

 声明では与党が衆院で審議を十分尽くさないままに強行採決したことを批判。「戦争をやれる国」へと日本を変えようとしていると強く抗議した。

 同法が制定された場合、「与党の計画通りに憲法改悪が強行される。基地の島沖縄が侵略戦争の出撃基地としてますます強化されていくことは火を見るより明らかだ」と指摘。「いまこそ全国民が憲法改悪・国民投票法制定反対の声を上げるべき時だ」と訴えている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705021300_10.html

「普天間」は合意通りに 日米安保協議委

 【東京】日米安全保障協議委員会では1日、2006年5月に合意した在日米軍再編の最終報告(ロードマップ)に沿って、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設など米軍再編を着実に進めていく意向を再確認した。
 普天間飛行場代替施設の滑走路に関し、名護市や県が沖合へ寄せるよう求めている修正について言及はなかった。米軍普天間飛行場の危険性除去に関する抜本的な解決策にも触れられなかった。
 目標の14年までに普天間飛行場代替施設を完成させることが、在沖米海兵隊のグアム移転や嘉手納飛行場より南の施設返還など再編全体の成功の「鍵」になることも強調された。
 共同発表では合意後、1年間の取り組みが進展として評価された。評価事項として挙げられたのは(1)2006年6月、日米合同委員会内に在日米軍再編総括部会を設置(2)普天間代替施設の環境現況調査開始(3)在沖米海兵隊のグアム移転に向けた協力―など。
 グアム移転に関しては(1)米国の環境影響評価手続きの開始(2)国際協力銀行(JBIC)が資金の出資などの業務を行う米軍再編推進法案の国会提出―などが掲げられた。
 さらに、1996年に合意された日米特別行動委員会(SACO)の最終報告に関し、06年9月の瀬名波通信施設、同年12月の楚辺通信施設、読谷補助飛行場の返還が進展したとして評価された。
(5/2 9:47)  琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23441-storytopic-1.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月30日)

沖縄タイムス 2007年4月30日(月) 朝刊 1・21面
軍関与削除、9割反対 本社が市町村長アンケート
賛成ゼロ懸念強く 
 文部科学省の教科書検定で、二〇〇八年度以降に使用する高校歴史教科書の沖縄戦記述から、「集団自決」への日本軍関与が削除されたことについて、沖縄タイムス社が実施した緊急アンケートで回答した三十六市町村長のうち三十二人(約九割)が検定結果に「反対」と考えていることが分かった。四市町村長が「どちらともいえない」としたが、「賛成」はゼロだった。日本軍に「集団自決」が強制された沖縄戦の実相がゆがめられようとする動きに対し、多くの首長が強い懸念を示している。

 アンケートは二十五日から二十九日にかけ、県内四十一市町村長を対象に実施。海外出張中の南城市長と北中城村長、「回答しない」とした嘉手納町長、粟国、多良間両村長以外の三十六人から回答を得た。

 検定結果について、三十二人が検定結果に「反対」と回答。「現場にいた住民たちの証言が残っており、強制は明らか」「戦争の醜い部分を覆い隠そうとしている」「事実は事実として、きちんと記述すべきだ」「歴史を曲げた教科書で、子どもたちに教育するのはおかしい」と日本軍関与の記述削除に強く反発した。

 うるま、西原、国頭、伊江の四市町村長は「どちらともいえない」としたが、「真実を教えるのが教育だ」「事実に基づいた記述であってほしい」などと沖縄戦の実相を正しく伝えるよう求めている。「本土とは認識の落差がある」との指摘もあった。

 教科書検定の結果については、仲井真弘多知事が十三日と二十日の定例記者会見で言及。この中で、「これまで明記されていたことが削除・修正されたことは遺憾である」との認識を示し、「沖縄戦をきちんと検証し、教科書に公正かつ正確に記述していただきたいと考えている」と述べた。

     ◇     ◇     ◇     

沖縄戦風化 悩む首長

 「若い世代に、平和に対する意識が薄れつつある」。沖縄タイムス社が実施した市町村長緊急アンケートで、沖縄戦の体験について「継承されている」と答えたのは回答者の四割にとどまり、「されていない」は、「不十分」を合わせると半数を超えた。平和行政を推進しつつも沖縄戦の風化に悩む姿が浮き彫りになり、学校での平和教育の重要性が指摘された。「『集団自決』や『従軍慰安婦問題』などアジア諸国との歴史研究で、平和の連携を深めるべきだ」と建設的な意見もあった。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704301300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月30日(月) 朝刊 20面
不発弾保管庫限界に/海洋投棄禁止条約受け
 海洋汚染を防止する「ロンドン条約九六年議定書」に伴い、不発弾の海洋投棄が今年四月から禁止されている。自衛隊は禁止後、米軍キャンプ・シュワブで陸上処理のみを行っている。二〇〇六年度の海洋投棄と陸上処理の割合は六対四。二、三月にほぼ処理したものの、四月以降、すでに読谷村の保管庫は約三分の一が埋まっている。同隊は「あと二カ月ほどで倉庫がいっぱいになるのでは」と懸念している。

 環境省と防衛省は、自衛隊が撤去した不発弾の最終処分を民間業者へ委託する方針で、防衛省広報は「委託する民間企業の決定は、今年の後半以降。業者も県内か県外かは未定」と話した。

 民間委託に伴い、「県民の手による不発弾の最終処分を考える会」は、最終処分をNPО事業が行い、その資金を難病を抱える子どもたちを救うために使いたいと提案。

 同会の具志堅隆松事務局長は「沖縄の戦後処理をすることによって医療支援を目指したい。費用は日本、米国が技術、沖縄が作業と分担したい」と命を助ける共同作業を提唱している。今後、県議会へ陳情書を提出することにしている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704301300_06.html

沖縄タイムス 2007年4月30日(月) 朝刊 20面
「警報も鳴らず突然」/首里壕生存者遺族と対面
 沖縄戦当時、首里の地下にあった日本軍壕の落盤から生き残った沖縄の民間人女性と日本兵の遺族が二十九日、初めて対面。遺族は、落盤の様子や最期の姿に聞き入った。戦没者の遺品や遺骨を収集し遺族に届ける活動をしているNPO法人「戦没者を慰霊し平和を守る会」(佐賀)などが仲介した。

 戦況が厳しくなった一九四五(昭和二十)年五月二十、二十一日、首里当蔵の地下に造られた第三十二軍電波警戒隊の壕が米軍の艦砲射撃で落盤。隊長の赤尾茂大尉はじめ多くの人が命を落とした、という。

 落盤から生き延びたのは電話交換手をしていた伊豆味栄子さん(84)と石川清子さん(84)、赤尾大尉の宿舎になっていた家の娘だった宮里遥子さん(78)=いずれも那覇市。

 石川さんは二十日、座って休憩していたときに落盤、顔は埋まらなかったため、助け出されたという。隣で横になっていた同僚は即死状態だった。石川さんは「警報なども鳴らず、突然サーっと土が崩れ落ちた」と、生々しく話した。

 伊豆味さんは二十一日、勤務中に落盤。兵隊二十二人とともに土を掘り、二日後に脱出した。「奥には、たくさんの兵隊さんがいたはずだが…」と振り返った。宮里さんは、母親から聞いた落盤で赤尾大尉が倒れる様子を話した。

 赤尾大尉の娘の入部澄代さん(70)=鹿児島県=は、じっと黙って三人の話に聞き入っていたが「皆さんに会えて、父の話を聞けてよかった」とほっとした様子。

 同NPOは、赤尾隊の壕を特定し遺骨収集につなげるため、二十九日、首里城周辺で電気探査などを行った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704301300_08.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月30日朝刊)

[憲法世論調査]

「九条」見直しに警戒感

なぜ「集団的自衛権」か

 憲法改正については「必要ない」(46%)とする人が「必要ある」(43%)を上回り、平和憲法の理念である九条は「改正すべきでない」(56%)が「改正すべき」(24%)の二倍以上に上ることが分かった。

 本社世論調査からは、改正論議に理解を示しつつ日本国憲法の「平和主義」の柱である九条「見直し」には警戒感が広がっていることが読み取れる。

 井端正幸沖国大教授が指摘するようにNHK、読売新聞などの調査でも「非改正派」が増えており、県民意識は同一線上にあると考えられる。

 これは安倍政権になって加速する改憲論議に、国民が慎重さを求めているとみていいのではないか。

 復帰して三十五年。県民意識の上で「本土化」が進んだのは確かだ。

 だが、県民には日米両政府が約束した「負担軽減」より、「機能強化」が目立つ在沖米軍基地の存在が改憲論議と重なるのも間違いあるまい。

 注目すべきなのは、「戦争放棄、交戦権の否認、戦力不保持」を唱える九条について「改正すべきでない」とする声が「改正すべき」を二倍以上も上回っていることだ。

 自衛隊の認知度については、災害復旧活動や救急医療搬送などで高まってきているのはいうまでもない。

 任務についても、憲法の範囲内で認められた「専守防衛」の枠内での行動形態が容認されたといっていい。

 だが、防衛庁が「省」に格上げされ、今また国民的な論議もないまま有識者だけで「集団的自衛権」の解釈改憲に取り組もうとする安倍晋三首相の姿勢は「まず九条の改正ありき」で突き進んでいるようにしか見えない。

 日米軍事同盟の強化が背景にあり、米軍に対する支援、協力をしやすくするための解釈改憲であるのは確かだ。

 九条で禁じられている集団的自衛権の行使について51%が「使えない立場を堅持する」と答えたのは、拡大解釈の動きに対する懸念だと言えよう。

 一方で「憲法解釈で使えるようにする」が24%、「九条を改正して使えるようにする」も15%あった。これは県民意識の変化と言うこともでき、その意味で注視する必要があろう。

「投票法案」は拙速避けよ

 衆議院で与党単独採決され参院に送付された国民投票法案与党修正案は、憲法を改正するための手続きを定める法律だ。

 しかし、法案の趣旨がきちんと国民、県民に浸透しているかどうか、疑問と言わざるを得ない。

 罰則規定はないが、特殊法人職員や公務員、私立学校教員などの「便益を利用した(憲法改正をめぐる)運動の禁止」規定は、国民として憲法をどう考えるのかに網をかぶせるものにはならないのかどうか。

 同法案を「早く定めるべきだ」としたのは七十代の29%が最も多かった。低いのは五十代の23%にすぎない。

 全年代で20%台だったのは「憲法改正論議が不十分」(全体で54%)というのが最大の理由であり、国民の理解を得ていない証しと言えよう。

 つまり七割もの人が法案に疑問を呈しているのであり、その意味を政府はきちんと分析する責務があろう。

 この問題では安倍内閣の支持層でも「(論議が)十分でない中で決める必要はない」が49%。自民支持層でも「早く決める」と「決める必要はない」が45%と同率だった。

 ここは性急に事を運ばず、国民の声に耳を傾けながら国会でもしっかりと論議することが求められているのだということを自覚してもらいたい。

「平和主義」の理念守れ

 沖縄は一九七二年の復帰から現在まで、約束された米軍基地の整理・縮小がほとんど進んでいない。

 普天間飛行場と同じように県内移設条件付きの返還が多いためで、九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で返還合意された十一施設のほとんどがなお滞ったままだ。

 安保条約を肯定し自衛隊容認派が増えたことで、県民意識が変化してきたのは事実である。

 だが、だからといって「戦争放棄」をうたう九条を守る意識に変化が生じたわけではない。

 むしろ沖縄戦に続く二十七年間の米軍支配、復帰後も存続する巨大基地が逆に憲法の必要性を意識させていることを忘れてはなるまい。

 県民の思いは憲法の平和主義の理念に込められているのであり、その意義をこれからも大切にしていきたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070430.html#no_1