2007年3月29日(木) 朝刊 1面
米総領事、沖合移動に理解/普天間移設で地元配慮表明
修正は不透明
ケビン・メア在沖米国総領事は二十八日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設問題で、県や名護市が南西沖合側への移動を求めていることについて「地元の意見に十分配慮し、できるだけ沖合に寄せる必要があると認識した上で移設計画を確定する」と述べた。浦添市の在沖米国総領事館で記者団に明らかにした。名護市や県は歓迎の意向を示しており、日本政府が同様の見解を公式に示せば、政府と地元の移設協議が加速する可能性もある。
メア総領事は、建設計画(マスタープラン)策定にあたって、名護市が求める南西沖合側への移動に配慮する意向を表明する一方で「修正するという意味ではない」とも強調。実際に建設場所が沖合に修正されるかどうかは不透明だ。
名護市の島袋吉和市長は同日、「われわれ市当局、市議会が求めている考え方に米国政府の責任者が理解を示す発言をしたことは、今後の政府との協議会の場で、名護市の案が理解を得られる方向に進んでいくと思う。これは大きな前進だ」と歓迎した。
仲井真弘多知事は「個人の意見なのかそうでないかを見極める必要がある」としながらも、メア総領事の発言について「県や地元が求めている内容ではある」と評価した。
代替施設についてメア総領事は、二〇〇五年に日米が合意した在日米軍再編に関する「中間報告」の段階で「地元への騒音などの影響を最小限にすることで合意している」とし、今回の見解表明が、米国のスタンスの変更ではないことを強調。仲井真知事が求めている「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」については「三年内閉鎖は難しい。移設をできるだけ早く加速する方がいい。できるだけ早く飛行場の周辺住民の懸念を解決するための努力をする用意はある」と述べた。
また、米軍再編最終報告に盛り込まれた嘉手納基地より南の基地返還の時期について「一四年を目指している普天間代替施設の完成と海兵隊移転が完全に終わるまで待つ必要はない」と述べ、前倒しで一部基地の返還を検討していることを明らかにした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703291300_02.html
2007年3月29日(木) 朝刊 2面
外相、微修正を示唆/辺野古V字案
沖合へ大幅移動には難色
【東京】麻生太郎外相は二十八日の衆院沖縄・北方特別委員会で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設について「地元と防衛省、米国みんなでそこそこのところで落ち着く案を最終的には探らないといけない」と述べ、県や名護市の意向を踏まえV字形滑走路案を微修正する必要性を示唆した。西銘恒三郎氏(自民)への答弁。
仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長がV字案の修正を求めていることには「海の方にずらすと(辺野古沖の従来案が)なかなか動かなかった経緯がある。どの程度の形にどうするかはこれから詰めなければいけない」と述べ、沖合への大幅移動には難色を示した。一方で「2プラス2で昨年合意した案を基本とし、きちんとした形で実行に移していかなければならない」と強調、V字案を基本とする考えに変わりはないとした。
西銘氏は「久間章生防衛相、麻生外相、仲井真知事、島袋市長の四者の政治決断が大きな役割になる」と指摘。
麻生外相は自身の立場を米国に置き換え「四者で話をする機会がどこかになきゃいかんと思う」と同意した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703291300_03.html
2007年3月30日(金) 朝刊 31面
パラオ虐殺 県人犠牲/1944年 ハンセン病施設
機密保持たてに旧日本軍
アジア・太平洋戦争中、旧南洋群島のパラオで、日本軍がハンセン病患者を虐殺した事件があり、沖縄県出身男性も犠牲になっていたことが、三十日までに分かった。ハンセン病問題を研究する藤野豊富山国際大助教授が三月上旬、パラオ共和国を訪問、被害者と同じ療養所にいた生存者の証言で確認した。藤野助教授は「強制収容された島の近くに、日本軍の軍事機密とされる海域があった。患者が逃走したため、米軍の捕虜になると情報が漏れると殺害した。沖縄戦の住民殺害と同じ構図だ」と指摘した。(編集委員・謝花直美)
コロール市在住の男性、オデュ・レンゴスさん(86)の証言で、県出身男性が虐殺されたこと、氏名や教師だったことも分かった。一九四四年にパラオの大空襲後、隔離されていたゴロール島から逃走した。藤野助教授が入手した南洋庁文書には「沖縄人一人アリタルモ昭和十九年七月二十五日空襲以降所在不明」と記録されていたが、氏名は判明していなかった。
藤野助教授の聞き取りでは、レンゴスさんは患者が逃げた理由を「日本陸軍に食糧を奪われ、島で生活できなくなったため」と説明。逃走した患者十六人はバベルダオブ島のグラスマオ村に潜んでいた時に日本兵と警察に捕まった。
レンゴスさんらは、その場に穴を掘るように命じられた。それが自らを殺害し埋める穴と気付き、慌てて逃げたが、逃げ遅れた二人は殺害された。
その後、患者らは散り散りになり、レンゴスさんは偽名を使いながら地元民や親せきを頼りながら逃げ続けた。しかし、沖縄出身と朝鮮半島出身の二人は、ゴロール島に戻ったところを日本軍に殺害された。レンゴスさんはその事実を地元民の警察官助手から聞いた。
降伏後、南洋庁が米軍に提出したハンセン病患者に関する報告では、逃走患者中、十人が「嘉留島守備隊長ニ引渡シ同島ニ収容セルガソノ後ノ消息不明」と説明。しかし、レンゴスさんの証言では戦後に生存していたのは四、五人、残りは虐殺されたと見られる。
藤野助教授は「ゴロール島の対岸には、日本海軍基地があった。四四年には陸軍守備隊が駐屯し、軍事上の重要性をさらに増した」と指摘。情報が漏れることを恐れ、虐殺が起きたとみる。三十日には、厚生労働省に戦争犯罪として調査するよう要請する予定だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703301300_01.html
2007年3月30日(金) 朝刊 2面
合意案変更ではない/那覇施設局長
佐藤勉那覇防衛施設局長は二十九日の定例記者懇談会で、ケビン・メア在沖米国総領事が米軍普天間飛行場代替施設の滑走路の位置確定に当たって地元の意向に配慮する考えを示したことについて「日米で合意した案を変更するといったものではないと認識している」と指摘し、環境影響評価(アセスメント)前の修正には応じられない姿勢をあらためて示すとともに、地元の意向に配慮するとの総領事の見解に同調する考えを示した。
佐藤局長は海域での現況調査に必要な公共用財産使用協議の同意申請を県に提出したことについて「普天間移設のために必要となるサンゴの状況などの各種データを得るために、環境影響評価に基づく調査とは別個に海上で現況調査を行う」と説明。アセスに基づく調査ではないことを強調する一方、普天間飛行場代替施設建設に向けたデータ収集が目的であることを認めた。
代替施設建設に向けた今後の取り組みについては「環境影響評価法に基づく手続きを早期に開始すべく県、名護市の理解を得て、方法書を提出の上、環境現況調査に着手したい」と述べ、早期のアセス実施を模索する意向を表明。
その上で「今後、県と話がついてアセス手続きに入るようになったときに、今回の調査データをアセスに活用できるか否かを県と協議して決める」とし、現況調査の結果を将来的にアセスに取り込むため、県と協議する考えを示した。
また、使用協議書で県に示した調査概要で、海洋生物調査としてサンゴの産卵調査や海草藻場の分布調査、海生ほ乳類(ジュゴンなど)の鳴き声の記録があるほか、海象調査として海水の向きや速度、塩分濃度、波高、濁度の調査が含まれていることを明らかにした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703301300_02.html