2007年5月9日(水) 朝刊 1面
F22、あす米国へ撤収
嘉手納基地に暫定配備中の米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが、今月十日に米本国へ撤収する方針であることが八日、分かった。在日米軍トップのブルース・ライト司令官ら米側関係者は、今後の朝鮮半島情勢次第でF22の嘉手納基地への再配備の可能性を示している。
同基地からF15戦闘機が米本国へ向かう場合、米空軍は未明離陸を繰り返しているが、今回のF22の離陸時間が未明または早朝にかかるかは不明だ。
米空軍は今年二月、米バージニア州ラングレー基地所属のF22十二機を、パイロットや整備要員など約二百五十人とともに嘉手納基地へ配備。
十二機は同基地配備後、五百八十回以上の飛行訓練を実施。先月二十七日には、沖縄周辺空域で南西航空混成団のF4戦闘機など航空自衛隊機と初の日米共同訓練を行った。
F22はレーダーに捕捉されにくいステルス性が特徴。超音速の機動力や地上への攻撃能力に優れている。
嘉手納へ再配備も
メア総領事、可能性示す
米国のケビン・メア駐沖縄総領事は八日、共同通信とのインタビューで、嘉手納基地に一時配備されている最新鋭のステルス戦闘機F22Aについて「具体的な配備計画はないが(今後)ローテーションで来てもびっくりすることではない」と述べ、今後も同基地へ暫定的に配備する可能性を示した。
米軍はF22Aを二月から五月までの予定で米本土から嘉手納基地に一時配備しており、基地周辺の住民から「基地の機能強化だ」と反対する声も上がっている。
メア総領事は「F22Aは次世代戦闘機なので目立ったが、嘉手納基地にはこれまでもいろいろ(戦闘機が)ローテーションで来ている」と強調。さらに東アジア情勢の変化などを例に挙げ「脅威があれば、米側は一番防衛力のあるもので日本を防衛する。日米安全保障条約へのコミットメントを果たすためには一番いいものを使う」と述べた。
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普天間「実行の時期」/メア総領事
米軍普天間飛行場の代替施設建設について米国のケビン・メア駐沖縄総領事は八日、共同通信とのインタビューで「日米両政府で滑走路の位置も詳しく交渉した。(もう)交渉する時期ではなく計画を実行する時期だ」と述べ、県などが求める建設位置の変更に否定的な考えを示した。
普天間飛行場の代替施設は昨年五月、日米両政府がキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路をつくり移設する案で合意。一方、県や名護市は騒音などを理由に滑走路の位置を沖合にずらすよう要求し、久間章生防衛相も環境影響評価(アセスメント)実施後に問題が判明した場合には微修正が可能との認識を示していた。
メア総領事は滑走路の位置について、環境への影響に十分配慮したと強調し「(環境アセス後も)そんなに変える必要はないと思う」と指摘。県などがアセス前に滑走路位置の変更を求めていることについては「なぜ変更しなければいけないのか、理屈がないと意味がない」と述べた。
日本政府が四月から環境アセスの前段となる事前調査に向け作業に着手したことについては「かなり順調に進んでいると思う」と評価した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_03.html
2007年5月9日(水) 朝刊 29面
「集団自決」修正/退職教職員3団体が抗議声明
二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍が関与したことを表す記述を文部科学省が削除させたことについて、退職教職員らでつくる三つの団体は八日、県庁で記者会見をし、記述修正指示の撤回を求める抗議声明を発表した。近く首相、文部科学相らに送付する。
声明を出したのは県退職教職員会(山城成剛会長)、県高等学校障害児学校退職教職員会(崎浜秀俊会長)、中頭退職教職員会(嶺井巌会長)の三団体。合わせて約千百人の会員は、ほとんどが沖縄戦体験者という。
声明は、文科省の指示について「『集団自決』を『殉国美談』として歪曲し、『戦争のできる国民づくり』に教育を利用する動きにほかならない」と批判。「戦前、皇民化教育を担わされ、『お国のために喜んで死ぬ』教育をしてきた痛苦な体験から看過することはできない」としている。
嶺井会長は、沖縄戦で少年兵として召集され、日本軍に壕を追い出された自身の体験を話し、「日本軍は住民を守るより、むしろ殺していった。『集団自決』の軍関与も明らかだ」と強調。崎浜会長は「沖縄の教職員は『教え子を再び戦場に送らない』を合言葉にしてきた。教育が危険な方向に向かうのを黙って見ていられない」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_05.html
2007年5月9日(水) 朝刊 2面
在沖海兵隊 削減は朝鮮情勢次第/モチヅキ氏講演
米国ジョージワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授が八日、宜野湾市内のホテルで「日米同盟と東アジアの安全保障」をテーマに講演。在日米軍再編で日米が合意した在沖海兵隊の八千人削減を評価した上で、朝鮮半島情勢の好転や、フィリピンやオーストラリアなど周辺諸国で米海兵隊の受け入れが可能になれば、さらなる在沖海兵隊の削減は可能との認識を示した。
モチヅキ氏は「遠征部隊とされる海兵隊が訓練や展開可能な基地をより多く持つことは、米軍の戦略的な面からも好ましい」と分析。
また、台湾海峡問題について「最近の台湾の国内政治を見ると、軍事力を含む有事の危機の可能性は以前よりかなり低下している」と見る一方、朝鮮半島情勢については「今、非常にデリケートな局面を迎えている」と警戒。朝鮮半島情勢の好転が在沖海兵隊削減のポイントとの見方を示した。
さらに、東アジアの安全保障情勢について、日米が中国の台頭にどう対応するかが重要と強調。「日米と中国が互いに相手の動きを見ながら軍の近代化を図る傾向がある」と軍備競争の動きに懸念を表明。
その上で、「日米、中国の三国が協議し、相互の安全保障上の利益を探り、軍事力増強に歯止めをかけるべき」と訴えた。
日米同盟については「同床異夢」の逆の「異床同夢」の状態にあると警鐘。日米は東アジアの安全保障に日米安保が重要との認識で一致する一方、武力行使に対する考え方など個別の問題の価値観や優先順位で違いがあると指摘した。
モチヅキ氏は日米安保強化によって在沖海兵隊の削減は可能との論文を過去に発表。沖縄の基地問題の解決の方向性などを議論する「沖縄クエスチョン」の米側座長を務めている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_07.html
2007年5月9日(水) 朝刊 2面
嘉手納包囲 参加呼び掛け/13日
十三日に米軍嘉手納基地を「人間の鎖」で包囲する5・13嘉手納基地包囲行動実行委員会は八日、県庁で会見し、県民へのアピールを行った。基地包囲行動では、同基地の機能強化に抗議し、名護市辺野古への新基地建設反対などを訴える。
嘉手納基地の包囲行動は沖縄サミット開催に合わせた二〇〇〇年以来七年ぶり四回目。普天間飛行場包囲行動と合わせると八回目となる。当日は午後三時から同基地の周囲約十八キロを、約二万人で三回包囲する。
今回から浦添市など八市町村に地域実行委員会を立ち上げ、それぞれに包囲エリアを割り当てた。実行委は社民、社大、共産、民主の各政党や連合沖縄、沖縄平和運動センターなど十団体で幹事団体を構成。
崎山嗣幸共同代表は「嘉手納基地は県民が反対する中で、基地機能が強化されている。県民が手をつないで基地のない平和を希求する県民意思を宣言しよう」と多くの参加を呼び掛けた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200705091300_10.html