月別アーカイブ: 2007年7月

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(7月13日、14日、15日)

2007年7月13日(金) 朝刊 1面

 

ミサイル防衛情報 共有/嘉手納PAC3

 

日米訓練で弾道確認

 

 【東京】米軍と自衛隊が六日に日本近海で実施した弾道ミサイル防衛(BMD)の合同訓練で、双方のイージス艦が得た着弾予想地点などの情報が、弾道ミサイル迎撃用の地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)を運用する米軍嘉手納基地の迎撃部隊にも送られていたことが、十二日までに分かった。在日米軍再編で合意した「BMDおよび運用協力の強化」が、沖縄でも現実化していることが浮き彫りになった。

 

 訓練では米軍二隻、自衛隊一隻のイージス艦を日本海に展開。自衛隊はデータ送信の中継役として空中警戒管制機(AWACS)も飛ばした。

 

 米軍イージス艦が弾道ミサイル発射情報を感知したと想定。この情報を「LINK16」と呼ばれるネットワークシステムで日米のイージス艦が共有し、それぞれレーダーでミサイルを探知・追尾した。軌道や着弾予想地点などの情報はAWACSに送られ、国内の空自施設を経由して自衛隊・統合幕僚監部、首相官邸へ伝達された。

 

 一方、米軍はイージス艦が集めた情報を嘉手納基地に配備されている米陸軍第一防空砲兵連隊第一大隊に送信。追尾から迎撃に至る情報の流れを確認した。

 

 PAC3の運用をめぐっては、同大隊司令官のマシュー・マイケルソン中佐が今年二月、自衛隊との合同訓練を米軍内部で検討していることを地元メディアに明らかにしている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707131300_03.html

 

 

2007年7月13日(金) 朝刊 2面

 

第31海兵、グアム移転想定/現地政府内部資料

 

中部視察団にも説明

 

 【グアム12日=下里潤】普天間飛行場所属機などで構成する第三一海兵遠征部隊(31MEU)がグアムへの移転を想定していることが十二日、グアム政府の内部資料で明らかになった。グアム・アンダーセン空軍基地のジョエル・ウェスタ副司令官(大佐)も同日、中部地区十市町村長らの視察団に対し「六十五?七十機の海兵隊航空機と千五百人の海兵航空戦闘部隊がグアムに拠点を置く」と話しており、普天間のヘリ部隊がグアムに移設される可能性が出てきた。

 

 内部資料は「米兵駐留の増加可能性」と題され、部隊名や兵隊の人数などがリストアップされている。31MEUは「来ることが想定される」グループに分類されており、二千人の海兵隊員が記されている。

 

 31MEUと行動をともにする海軍佐世保基地(長崎県)の強襲揚陸艦エセックスや、ジュノーなどの戦艦も記されており、グアムの軍事拠点化が進展していることがうかがえる内容だ。

 

 ウェスタ副司令官は「どの部隊が来るのか決まっていない」としたものの、「海兵隊の航空戦闘機能の受け入れ態勢は整っている」と強調。同基地内の密林を切り開き、実戦部隊が使用する海兵隊の弾薬庫も建設する計画を示した。

 

 視察に参加した伊波洋一宜野湾市長は「(米軍再編で示された)司令部だけが移転するという政府の説明が打ち破られた。仮に名護市辺野古に代替施設が造られれば、実戦部隊がグアムから沖縄へ訓練に来ることになる」と指摘。千五百人の海兵航空戦闘部隊の移転などが記された米太平洋軍の「グアム統合軍事開発計画」を基に再編が進んでいるとの認識を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707131300_04.html

 

 

2007年7月13日(金) 朝刊 2面

 

トリイ通信施設 一部返還を合意/日米合同委 時期は未定

 

 【東京】日米両政府は十二日の合同委員会で、読谷村のトリイ通信施設の一部(約三万八千二百二十平方メートル)の返還に合意した。返還時期は未定で、防衛施設庁が今後、地元と調整する。

 

 返還地は、トリイ通信施設の東端を通る国道58号バイパスで分断されて残っていた部分。米側が「不要」と判断し、配水管などと併せて返還を提案していた。

 

 そのほか、うるま市のキャンプ・マクトリアス内に設置された空調機の騒音軽減のための遮音壁設置、同市の陸軍貯油施設内の倉庫建設についても合意した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707131300_05.html

 

 

琉球新報 社説

 

再編交付金 問われる防衛相の「変節」

 

 就任早々、米軍再編の「日米合意案」の強行姿勢を打ち出し、波紋を広げた小池百合子防衛相だが、今度は再編交付金の名護市支給に「判断保留」ときた。沖縄担当相時代には、北部振興策廃止の閣議決定に反対までしてくれた。なのに、この「変節」ぶりは、いかがなものか。

 あの久間章生前防衛相さえ、「受け入れを表明し、環境現況調査でも県の同意書に市の同意も付いた。そのような協力をしてもらっている。対象にならないとは考えられない」と、交付金の支給に前向きだった。

 小池氏は、沖縄通の大臣だった。「かりゆしウエア」の全国普及にも率先着用で、貢献してくれた。那覇空港の沖合展開にも「国に要求する権利がある」と県を支援してくれた。

 それが、一体どうしてしまったのだろう。防衛大臣に就任した途端、前任者よりも厳しい態度で県民に挑んでいる。

 「変節」の背景には守屋武昌防衛次官の存在が指摘されている。守屋氏は異例の就任満4年を8月に迎える。“ミスター防衛省”の異名を持つ実力者だ。

 名護市>への再編交付金支給問題では、久間前大臣は前向きだが、守屋次官は一貫して否定的だ。小池大臣の発言は、久間前大臣ではなく、守屋次官に寄っている。

 前任者の不適切発言による辞任で、突然の防衛相就任である。就任直後だ。不慣れで、官僚の準備した文書を読み上げるのが精いっぱいということか。しかし、それではトップとしての資質が問われる。

 防衛省は「文民統制」が要である。制服組(武官=自衛隊)と違い、守屋次官は背広組(文官)。だが、イラクへの自衛隊派遣、国民保護法など一連の有事法制、米軍再編法の制定の裏に守屋次官の活躍がある。制服組以上に“軍の論理”に精通する次官だ。

 小池大臣に求められるのは、文民統制の徹底である。それは軍の論理だけでなく、民の論理でも防衛を考え、実行すること。端的に言えば「平和憲法」の理念を、防衛省・自衛隊に徹底させることだ。

 理念が揺らぐから、「変節」を生む。沖縄に知友も多い小池大臣である。迷った時は沖縄の声、地元の声に耳を傾けてほしい。

 そもそも普天間移設問題は、住宅過密地にある「危険な基地の撤去」「沖縄の負担軽減」にあった。それが、いつしか新基地建設の話にすり替わり、新基地建設に異議を唱える自治体や地域住民を抑えるため「アメとムチの法」となる米軍再編法まで制定された。

 強行採決で制定された法である。「政府の恣意(しい)的運用」が懸念されたが、現実になりつつある。小池防衛相の発言には、今後も注視したい。

 

(7/13 10:16)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25403-storytopic-11.html

 

 

2007年7月14日(土) 朝刊 2面

 

防衛相、合意案で一致/米軍再編

 

 【東京】小池百合子防衛相は十三日夜、ゲーツ米国防長官と就任後初めて電話会談し、在日米軍再編について「日米合意に従った形で早期に実施する」ことを確認した。

 

 小池氏はこれまで報道各社のインタビューで、米軍普天間飛行場の移設をめぐって県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について「日米合意案に基づいて理解を求めていく」などとしており、今回日米双方が県や名護市の要求をあらためて困難視した格好だ。

 

 米軍再編について小池氏は、ゲーツ長官に対し「私は沖縄担当として(閣僚を務めた経験があり)これまでの経緯を重々承知している」と説明し、日米合意の実現に向けた意欲を示した。

 

 小池氏によると、会談のテーマはゲーツ長官から「日米間にさまざまな課題がある」と切り出し、米軍再編の促進やミサイル防衛(MD)の連携、情報の共有などで意見交換したという。

 

 小池氏は会談後、記者団に対し、訪米時期について「現実的には参院選が終わってからできるだけ早い時期になる」と述べ、八月にも予定していることを明らかにした。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707141300_04.html

 

 

琉球新報 社説

 

イラク情勢 早期撤退で泥沼脱出を

 

 イラク情勢が泥沼化する中、米軍の出口戦略が見つからない。大義名分のない戦争に突入したブッシュ政権に、内外での四面楚歌(そか)という事態が明らかになりつつある。ベトナム戦争を教訓にするまでもなく、ここに至っては、イラクからの早期の撤退が求められる。米国にとって、そのことこそが泥沼化を抜け出す唯一の方策だということに、ブッシュ政権は早く気付くべきだ。

 米下院本会議は12日、イラクに駐留する米軍の主要部隊を遅くとも来年4月1日までに撤退させることを定めた、新たな法案の採決を行った。その結果、223対201の賛成多数で可決された。

 法案では、イラク撤退の対象は米外交施設の警護やイラク治安部隊に対する訓練、アルカイダの掃討作戦に従事する兵士を除く全駐留米兵。法案成立後、120日以内、または来年4月1日までの撤退を規定している。

 ブッシュ大統領はこれに先立ち、イラク政策に関する中間報告で一定の進展を強調。「撤退は支持率を上げるには役立つかもしれないが、長い目で見れば米国の安全に重大な影響をもたらす」と当面の撤退はないと言明している。今回の法案可決により、議会多数派の野党民主党は大統領に徹底抗戦する意思を一段と鮮明にした。

 また、民主党のリード上院院内総務は「大統領はイラク政策の失敗を認め、アルカイダ打倒に集中すべきだ」と声明を発表、大統領に政策転換を強く求めている。実は、イラク政策については身内からも異論が続出しているのが現状だ。来年の改選を控え、地元に戻ってイラク政策の不人気ぶりを目の当たりにした共和党の上院議員らから“造反”が相次いでいる。

 これ以上、イラク国民の犠牲者を増やすわけにはいかない。米軍撤退でかえって内戦が激化するという懸念もあろうが、逆に米軍の存在がいたずらに緊張をあおる、という側面も否定できない。

 「異民族支配」の不合理さは、われわれ県民が身をもって体験している。困難はあろうと、誇りを持って自治を実現してほしい。そのためにも米軍の早期撤退が必要だ。

 

(7/15 10:55)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25461-storytopic-11.html

 

 

琉球新報 社説

 

枯れ葉剤使用 地位協定の改正しかない

 

 このままやぶの中、とうわけにはいかない。ことはあまりに重大だ。在沖米軍が1960年代、沖縄本島北部訓練場でダイオキシンを含む枯れ葉剤を使用していたとされる問題で、米側は13日までに「(枯れ葉剤が)使用、貯蔵されていたことを示す資料、証言や記録はない」と回答してきた。防衛施設庁と外務省が明らかにした。

 施設庁の地引良幸次長は、米側への照会以外の対応を聞かれ「それ以外に手法がないので、まずは米側に確認するのが第一だ」と述べている。つまり、自ら現地調査なり、事実を究明する気はないということになる。案の定、日本政府としては新たに土壌調査、水質調査を求める予定はないとも明言した。日米ともこれで幕引き、としたいのだろうが県民としては到底、納得できるものではない。

 今後も米側に対し、あらゆる手だてを講じて事実の究明を求めてほしい。もちろん、日米地位協定を盾に米側が難色を示してくるのは十分、予想できる。よもや日本政府がその土俵に、安易に乗るようなことがあってはならない。そうであるならば、やはりわれわれとしては不平等の根源である地位協定の改正を、強く訴えていかざるを得ない。

 枯れ葉剤の散布に関しては、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定されていたことがこのほど、米退役軍人省の公式文書で明らかになった。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは環境の中では消えず、一般に土壌汚染は長期間続く。発がん性があり猛毒とされ、ベトナム戦争では、枯れ葉剤が米軍によって大量に散布された。この地域ではがんや先天性異常児、流産、死産などが多発。また帰還米兵にも被害が出ている。

 北部で散布との報道の直後、ショッキングなニュースが飛び込んできた。当のやんばるで、国指定天然記念物リュウキュウヤマガメや県指定天然記念物ナミエガエルなどから異変が見つかった、というのだ。一部の爬(は)虫(ちゅう)類や両生類に、目や口の周りがただれたり、足の指が溶けるなどの異常が観察されていた。

 関係者によると、異変は10数年前から見られた。確認場所は、大宜味村と東村の境界にある玉辻山から国頭村の与那覇岳にかけた沢筋や、広域基幹林道の奥与那線の周辺など、北部訓練場を取り巻くように広範囲にわたっている。

 もちろん、これが枯れ葉剤の散布と関係がある、とは断定できない。まず必要なのは、事実の確認であり、汚染の実態を調べることだ。「記録がない」が即「事実がない」とはならない。いたずらに不安をあおるつもりはないが、徹底的な調査とその公表以外、県民の懸念を解消する方法はない。

 

(7/15 10:57)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25462-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月12日)

2007年7月12日(木) 朝刊 1・27面

 

官房長官、撤回要求に応じず/「集団自決」修正

 

 【東京】塩崎恭久官房長官は十一日午後の記者会見で、県議会が高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与を削除した教科書検定の撤回を求める意見書を再可決したことについて、要求に応じる考えはないことを示した。政府の姿勢に県内関係者は「誠意が感じられない」「これで引き下がるわけにはいかない、目標達成まで戦う」と反発している。

 

 塩崎長官は、県議会での異例の再可決について「それなりの重たい意味がある。それはそれで(意見書を)拝見する」と重要性を認めた。しかし、「日本は国定教科書ではない。検定制度というものの中で今回のようなことがあった」とも述べ、政府として教科用図書検定調査審議会の決定を尊重する考えを強調した。

 

 「集団自決」への日本軍の関与に対する見解を問われると、「歴史的な問題だから政府としてコメントすることではない。ましてや個人的な意見を述べるようなものではない」と言及を避けた。

 

     ◇     ◇     ◇     

 

県内反発 決意新た

 

 「検定撤回まで次々手段を考える」「県民の怒りの火に油を注いだ」。「集団自決(強制集団死)」への軍関与を削除させた文部科学省の教科書検定の撤回を求める意見書を県議会が再可決したその日に、官房長官が「拒否姿勢」を明らかにしたことに、県議や撤回運動を進める関係者から怒りや徹底抗戦の決意の声が次々と上がった。

 

 発言を聞いた県議会の仲里利信議長は「そうですか、と引き下がるわけにはいかない。要請に来ても無駄、ということだろうが、次々に訴えるステップを考えていく。政府と戦う覚悟だ」と断言。新たな県民大会開催の動きにも触れ「戦争を引き起こすことになる書き換えは、後世のためにも許さない。それが県民の意思だ」と話した。

 

 県議会文教厚生委員会の前島明男委員長も「こんな発言が出ること自体ナンセンスだ。全県民的戦いで、政府の態度は許せないということを突き付けていく。座間味・渡嘉敷で生き証人の話を聞いたことで、ますます許せないと思うようになった」と決意を新たにした。

 

 検定撤回の運動を進めてきた高嶋伸欣琉球大教授は「今回の意見書は政府の誠意のなさを問題にしているのに、文面も見ずにこんな発言をするとは。絵に描いたような無神経さにあきれた」と塩崎発言を酷評。「沖縄の怒りの火に油を注いだ。さらに議論や反発は大きくなる」と運動の広がりに期待した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121300_02.html

 

 

 

2007年7月12日(木) 朝刊 1面

 

小池防衛相、あらためて困難視/V字形沖合移動

 

 【東京】小池百合子防衛相は十一日、沖縄タイムス社などのインタビューで、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの移設で同市や県が求めるV字形滑走路の沖合移動について、「修正を求める方々に政府案について理解を求めたい」と述べ、困難との考えをあらためて示した。

 

 小池防衛相は「沖縄担当大臣として沖縄の声をくみ上げる役目を担ってきた」と述べつつ、「いろいろな考え方を包含してV字形ができている」として、住宅上空を飛ばさないでほしいとの地元要望や環境への影響を考慮した上での案だと強調。「サンゴや藻場を守る環境、騒音、飛行場としての実効性など、いろいろな観点から説明し、理解を得たい」と語った。

 

 一方、環境影響評価(アセスメント)方法書の提出については、「沖縄の方々の理解を得ることが大事だ。そういう手順を踏みながら、皆さんの考えもしっかり受け止めながら進めたい」と、丁寧に地元を説得する考えを示した。

 

 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の再開については「早期に開く必要がある」と述べつつ、具体的な時期や議題には触れなかった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121300_04.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月12日朝刊)

 

[参院選公示]

 

安倍政治を問う選挙だ

 

年金問題が主要争点に

 

 第二十一回参議院選挙が十二日公示され、二十九日に投開票される。

 

 安倍政権が発足して九カ月。安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、国民投票法制定、教育基本法改正、防衛庁の省への昇格などに力を注いできた。

 

 一方で社会保険庁の年金記録不備問題や「政治とカネ」をめぐる問題が矢継ぎ早に表面化し、閣僚の失言も相次いだ。

 

 「安倍政治」をどう評価するか。年金などの個別の争点と同時に問われなければならないのは、「安倍政治」の功罪である。

 

 沖縄選挙区には自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と、野党統一候補で元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が立候補し、与野党の一騎打ちになる見通しだ。

 

 県内では、普天間飛行場移設を中心とする米軍再編のほか、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題が新たに浮上している。経済振興も大きな課題だ。

 

 西銘氏は「自立への一議席」を強調し、沖縄の自立的発展へ向けた経済振興策を中心に訴えている。

 

 年金問題については、完全支払いに向け一年以内に記録不備を精査し、納めた人が漏れなく受けられるようにすると強調する。

 

 糸数氏は「平和の一議席」と訴え、憲法問題や平和、県民の暮らし、安全などに力点を置いている。

 

 年金問題では政府の対応を批判し、年金記録を確認できる年金通帳と基礎年金を税金で賄う方式が必要だと主張する。

 

 安倍政権発足後、昨年十一月の県知事選、四月の参院補選で自公の公認・推薦候補が当選した。三連勝を目指す与党陣営は、今回の選挙に勝利することによって「仲井真県政が盤石になり、基地問題でも政府に対する発言力が増す」とみる。

 

 背水の陣で臨む野党陣営は、安倍政権の支持率低下、教科書検定問題の浮上などを「追い風」と受け止めている。「タカ派色の強い安倍政権に沖縄からノーの声を上げる」ことで国政の流れを変えたいとしている。

 

 この国の将来と沖縄の針路について論ずべき課題は多い。有権者の投票意欲をかき立てる論戦を期待したい。

 

「政治とカネ」どう評価

 

 安倍政権発足後、佐田玄一郎行政改革担当相が政治資金収支報告書への虚偽記載で辞任。巨額の光熱水費問題で批判された松岡利勝農相は、国会での追及には答えず、疑惑を抱えたまま自殺した。

 

 改正政治資金規正法成立後も赤城徳彦農相の政治団体の事務所費問題が新たに浮上した。政治とカネの問題があらためて注目を浴びている。

 

 「年金選挙」といわれる今回の参院選で、政治とカネの問題も見過ごせない争点だ。

 

 国民投票法が成立したことによって三年後には改憲の発議が可能になった。自民党は参院選の公約の中に「二〇一〇年に改憲発議を目指す」と明記している。年金問題が浮上したためにかき消された感があるが、憲法改正問題についての有権者の判断が問われる選挙でもあることを肝に銘じたい。

 

 参院選の改選議席は一二一(選挙区七三、比例代表四八)。安倍内閣の支持率が低落する中で、自民、公明の与党が計六十四議席以上を獲得し、非改選を加え過半数(百二十二議席)を維持できるかどうかが大きな焦点となる。

 

政治の行方決める一票

 

 自民党幹部は参院選を「中間評価」と位置付け、どんな結果でも首相退陣は必要ないとしている。だが、野党が過半数を獲得した場合、安倍首相の進退問題に発展する可能性がある。

 

 一方、民主党の小沢一郎代表は、野党が過半数を獲得できなければ政界を引退すると表明している。自ら退路を断って政治決戦に臨む構えだ。民主党が敗れた場合、党内の意見の違いが表面化し、分裂の危機を迎えることが予想される。

 

 争点の切実さといい、選挙結果が政局にもたらす影響といい、今度の参院選は、政治の行方を決める極めて重要な選挙といえる。

 

 それだけに、候補者の政治姿勢や政策をよくよく吟味し、「私の一票が政治を動かす」という自覚を持って大事な一票を投じたい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070712.html#no_1

 

 

 

琉球新報 社説

 

参院選公示 信を問われる安倍政権/争点は年金だけではない

 

 第21回参院選が12日に公示される。29日の投開票に向けて、年金記録不備問題や政治とカネの問題、憲法改正などを争点に選挙戦が繰り広げられる。

 最大の焦点は与党が64議席以上を獲得し非改選を加え過半数を維持するか、野党が逆転するかである。

 自民党内には参院選を、安倍晋三首相が次の衆院選で信を問う前の「中間選挙」と位置付ける声がある。参院を軽んじることがあってはならない。今参院選は昨年9月の安倍内閣発足後初の大型国政選挙である。選挙結果は安倍政権に対する国民の評価ともいえる。

 各地域の課題解決にもつながる重要な選挙でもある。有権者は各党、各候補者の政策を十分に検討し、貴重な一票を投じてほしい。

憲法問題も重要

 今参院選では改選121議席(選挙区73、比例代表48)を争う。共同通信社の集計では選挙区に220人、比例代表に11の政党・政治団体から159人の計379人が立候補する見通しである。

 最大の争点は年金記録不備問題だ。基礎年金番号に統合されず、誰のものか分からない年金の加入記録は約5千万件に上り、うち約30万件が「生年月日不明」である。さらにオンラインに未入力の記録が約1430万件ある。

 国民の年金制度への信頼は地に落ちたと言っていい。多くの党が選挙公約の一番目に「年金問題の解決」を挙げているのは当然といえよう。

 問題はそれぞれの政策の実効性であり、さらには年金受給者と加入者の痛みをどれだけ真剣に考えているかである。

 国民の多くが老後の支えを公的年金に頼っている。支給開始年齢が引き上げられるなどの改定にも国民は耐えてきた。にもかかわらず、国に支払い記録がなく、受給できないケースが出ている。

 政府のこの間の対応は後手に回った感が否めない。参院選直前になって対応策を示してはいるが、国民の不安解消につながるかは不透明である。

 年金記録不備問題だけでなく、憲法改正問題も重要である。

 与党の重点政策では年金問題に押しやられ、十番目に「新しい時代にふさわしい憲法をめざす」と憲法改正を掲げた。2010年以降の国会を視野に入れ、国民的な議論を深めていくとの表現にとどめている。

 しかし早ければ、3年後には国会で与党が憲法改正を発議することが予想される。今参院選の当選議員は任期中に改正作業にかかわることになろう。

 国民投票法の成立など、憲法改正に向けた環境づくりが着々と進んでいる。九条改正を焦点にした憲法改正問題は今後、正念場を迎えることからも、今回の参院選は極めて重要な意味を持つ。

棄権せず投票を

 政治とカネの問題も重要な争点である。

 辞任した佐田玄一郎前行革担当相の不透明な事務所経費処理、自殺した松岡利勝前農相の光熱水費に対する国民からの批判などを受けて改正政治資金規正法が成立した。

 しかし、その後も赤城徳彦農相に関係する政治団体が実体のない事務所に多額の経費を計上していたことが発覚するなど、政治とカネをめぐる問題が安倍内閣では相次いでいる。

 柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言、久間章生前防衛相の「原爆投下はしょうがなかった」との発言もあった。これら問題発言への国民の評価も注目される。

 沖縄選挙区(改正一議席)は現職の西銘順志郎氏=自民公認、公明推薦=と前職の糸数慶子氏=無所属、社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=の一騎打ちとなる見通しである。

 年金記録約5千万件の記録照合と通知を来年3月をめどに完了させるなどの政府方針を西銘氏が評価するのに対し、糸数氏は制度の抜本改革などが必要として評価していない。米軍普天間飛行場移設問題では西銘氏が「県内移設も一つの選択肢」としているのに対し、糸数氏は「県内移設は認めない」と対立。それぞれの政策の違いも鮮明になっている。

 基地問題など県民生活に密接にかかわる問題は国政の課題でもある。参院選は国政選挙とはいえ、身近な選挙である。

 有権者は棄権することなく、自らの意思を投票で示してほしい。

 

(7/12 9:46)

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25376-storytopic-11.html

 

 

 

2007年7月12日(木) 夕刊 1面

 

西銘・糸数氏 第一声/参院選公示 29日投開票

 

 第二十一回参院選は十二日公示され、二十九日の投開票に向けて、十七日間の選挙戦がスタートした。沖縄選挙区(改選数一)は、自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と野党統一候補で無所属の元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=が立候補を届け出た。西銘、糸数の両候補は那覇市内の選対本部前で出発式を行い、集まった支持者の前で第一声を上げ、選挙カーで街頭に繰り出した。両候補の一騎打ちの公算が大きく、与野党が総力戦を繰り広げる。年金問題や改憲論議、米軍普天間飛行場移設などの基地問題、経済振興などが主な争点。安倍政権の沖縄問題も問われ、約百六万二千人の有権者がどう審判を下すか注目される。

 

 西銘陣営の出陣式は那覇市牧志の選対本部前で行われた。妻・澄子さんからたすきを掛けられた西銘氏は年金問題について「政府が責任を持って受給できるようにしなければならない」と指摘。仲井真県政との連携を強調し「国政の安定なくして県政の発展なし。力強い支援を」と訴えた。仲井真弘多知事や仲村正治衆院議員、稲嶺恵一前知事、古謝景春南城市長らが激励し、勝利に向け団結を求めた。「ホップ、ステップ、ジャンプ、ニシメ」のコールで気勢を上げ、遊説に出発した。

 

 糸数氏は那覇市銘苅の選対本部事務所前で午前八時半から出発式。赤のジャケット姿の糸数氏が登場すると、詰め掛けた大勢の支持者から拍手と歓声がわいた。

 

 糸数氏は「平和と暮らし、命を守る闘いだ。なんとしても勝利したい」と力強く訴えた。民主党県連の喜納昌吉代表、社民党県連の照屋寛徳委員長、社大党の喜納昌春委員長、共産党県委員会の赤嶺政賢委員長らが支援を呼び掛けた。糸数氏は支持者から魔よけのサンを受け取り、遊説に飛び出した。

 

     ◇     ◇     ◇     

 

西銘順志郎候補

産業の拡充発展図る

 

 年金問題など大変厳しい風が吹いている。しかし、保険料を支払った多くの方がもれなく年金を受給できるように責任を持ってやらなくてはいけない。

 

 責任政党の自由民主党、公明党の役割だ。これを県民・国民に訴えたい。社会保険庁を解体する。野党はこれに反対している、どちらが県民、国民のことを考えているか。年金問題はもう大丈夫だというシステムをつくる。

 

 昨年誕生した仲井真知事が約束したことをしっかり実現しなくてはいけない。沖縄の将来を考えるとき、観光客一千万人の誘客は素晴らしい発想。だが、水や食料を今の倍以上にしないと観光客に提供できない。

 

 観光産業のすそ野は広く、ダム建設、農林水産業を拡充発展しなくてはならない。その意味でも大変大事な選挙。それを成し遂げるにしても国政が安定していなければできない。国政の安定なしに県政の発展なし。これをテーマに戦い続ける。

 

糸数慶子候補

「普天間」は国外移転

 

 消えた年金問題で安倍首相が発言した一年以内の解決が実現する保証はない。記録が確認できる年金手帳と、基礎年金の税方式が必要だ。消費税引き上げにも反対する。

 

 世界にアピールすべき優れた平和憲法は私たちの生活に何の不都合もない。安倍政権は環境権やプライバシー権の追加を訴えるが、辺野古の海へ自衛隊を派遣し沖縄の環境を破壊した。普天間飛行場は県内の新基地建設でなく国外へ移転すべきだ。

 

 県内の低所得と高い失業率を解消するために、本土の大手ゼネコン中心の公共工事に歯止めをかけ、基地返還跡地の有効利用で経済効果と雇用の場をつくる。県内の農業の根幹を揺るがす豪州とのEPAに真っ向から反対する。

 

 歴史教科書問題で政府は、沖縄戦での集団自決への軍の関与を否定した。亡くなった多くの人に報いるためにも、県民の思いを平和の一議席として国政に届けたい。

 

 西銘順志郎(にしめ・じゅんしろう) 1950年生まれ、与那原町出身。立正大学卒業後、73年琉球海運入社。県知事秘書、県観光連盟副会長などを経て、2001年7月の参院選沖縄選挙区で初当選。内閣府大臣政務官などを歴任。06年からは自民党県連会長。

 

 糸数慶子(いとかず・けいこ) 1947年読谷村生まれ。読谷高校卒業後、バス会社に入社、平和ガイドとして沖縄を紹介。92年県議選で初当選、3期12年務める。2004年7月参院選沖縄選挙区で初当選。06年11月の県知事選に出馬した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121700_01.html

 

 

2007年7月12日(木) 夕刊 5面

 

薬品影響? 北部で奇形生物/米軍枯れ葉剤散布

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していたことが発覚し、豊かな自然環境の汚染が懸念されている。県は過去の周辺河川の調査で、ダイオキシン濃度が環境基準値を下回ったと説明、現在追加調査の予定はない。一方、周辺の山では体が溶けたような奇形の両生・爬虫類が発見されており、自然保護団体は「米軍の薬品の影響ではないか」と、踏み込んだ調査を求めている。

 

 県は二〇〇四、〇五の両年度、基地排水水質等監視調査で、北部訓練場周辺、東村の新川川を調べた。ダイオキシン類の濃度は〇四年度が一リットル当たり〇・〇七九ピコグラム(最も毒性の強いダイオキシン換算)、〇五年度が〇・一一ピコグラムで、環境基準値の一ピコグラムを下回った。

 

 〇五年度は川底の泥など底質も調査し、基準値一グラム当たり百五十ピコグラムを下回る〇・三九ピコグラムだった。

 

 二〇〇〇年度、〇一年度は、ダイオキシン類対策特措法に基づき新川川、国頭村の安波川、普久川などの水質を調査したが、結果は同様に基準値内だった。

 

 一方、四十年近く北部の山を見てきた「山原の自然を歩む会」の玉城長正会長は、「十五―二十年ほど前から奇形の動物を見つける機会が増えた。北部訓練場の隣接地域に集中しており、内部で何か薬品がまかれている影響では」と危惧する。

 

 イボイモリやナミエガエルなどの絶滅危惧種も、「顔や指先がドロドロに溶けた状態」で発見される。リュウキュウヤマガメの甲羅だけが、傷もつかずに散乱しているケースもあるという。「イノシシが捕食する時のように甲羅が割られていない。体が完全に溶けた感じだ」

 

 土をはう両生・爬虫類は、特に土壌の汚染の影響を受けやすい。玉城会長は「奇形の多さは土地に異常がある証拠。枯れ葉剤との因果関係ははっきりしないが、原因究明のために、詳しい調査が必要だ」と求めている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707121700_04.html

 

 

2007年7月12日(木) 夕刊 5面

 

居住前「騒音知らず」/「普天間」訴訟

 

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民が、国に夜間飛行の差し止めと損害賠償を求めている普天間爆音訴訟の原告本人尋問が十二日午前、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で開かれた。同飛行場周辺に転居した住民三人に対し、国側は爆音被害を知りながら転居したのではないかとする「危険への接近」を主張。住民らは通勤や生活環境を考えて転居したなどと証言した。

 

 宜野湾市役所職員の大城紀夫さん(54)=同市野嵩=は、通勤に便利なため浦添市から転居したなどと説明。その後、ヘリや航空機の離着陸ルートの真下周辺で住居を購入した理由について「経済面も考えて購入した。住んでみて初めて、夜間の騒音のひどさを自覚するようになった」と述べた。

 

 会社員の森山敏子さん(58)は、東京都から帰郷する際、騒音を知らず宜野湾市真栄原に引っ越した。真栄原区内のW値(うるささ指数)75の地域から、W値80の高層住宅に移ったことについて、勤務先や子どもの通学距離を考え、住宅の設計段階で購入を決めたと証言。「高層住宅ではヘリの旋回が間近に感じられ、航空機のエンジン調整音も直接響いてくる。生活を始めて、住宅地と基地の近さを感じた」と話した。

 

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ご支援・メッセージありがとうございます

 全国の会員、支援者の方々から毎月のように多くのご支援をいただいています。カンパに添えられたメッセージの一部をお礼の意味をこめたコメントとともにご紹介いたします。

○「基地はいらない」DVD1本、残りは草の根運動資金 北海道 T様

 〔恵庭事件の地からのご支援に心から感謝いたします。〕

○「基地はいらない どこにも」DVD1つください。残金はカンパします。子どもたちの未来のために。できることから。みなさんのご尽力に、勇気づけられます。 北海道 Y様

〔ありがとうございました。こどもたちのために、がんばりましょう。無理しないで。努力して〕

○再雇用職員で働いています。ボーナスも出ず、苦しいですが、こんな世の中です。安倍内閣のやることはすべて信用できず、不安ばかりです。軍事費に私達の税金が使われるのが一番腹が立ちます。早く基地のない 米から 真に独立した国、平和な日本にしたいです! 東京都 T様

〔苦しい中、多額のカンパを、またまた頂きありがとうございます。高島様のいわれるとおりです!なんとしても、運動を継続し飛躍のチャンスをつかみたいと考えています。〕

○ニュースNo39「安保からの脱却」だいサンセイです。木っ葉みじんに破壊又は粉砕すべき「戦後レジーム」は日米安保だと思います。 下関市 F様

 〔自由法曹団長松井繁明さんの「安保からの脱却」という文章へは、久保様など多くの方から共感のご感想が寄せられました。〕

○川崎、生田の地にも 9条の会が草の根活動を広げています。「基地はいらない どこにも」DVD1本購入したく、申し込みます。残額は会の活動資金に充当して下さい。川崎市 Y様

 〔心から感謝いたします。メッセージ抜きで、ご送金頂いた方々にもあわせて心からのお礼を申し上げます。〕

○憲法9条を守るべく、軍事費の予算増加は、人々を豊かに導くことは不可能と考える。東京 M様

 〔軍事費はいりませんね。死の商人が再びバッコし始め、血税をむさぼっていること、軍部の再出現、国民の無数の草の根の結集によって、食い止めなければなりませんね。カンパに心から感謝いたします。〕

麻布ヘリ基地撤廃実行委員長と懇談しました

 先日(7月2日)麻布ヘリ基地撤去実行委員会委員長川崎悟氏とお会いして、東京都心のど真ん中にある麻布ヘリ基地の撤去問題について懇談しました。

 足下の米軍基地、東京・六本木の新国立美術館の横にある麻布ヘリ基地は、米軍が東京都と青山公園の一部を一時使用するとの約束を反故にして居座った、ヘリ基地です。

 このヘリ基地を撤去する要求は、保守革新を超えた戦後一貫した地元の要求になっています。

 時間をみつけて麻布の減り基地の問題についてもふれていきたいと思います。

沖縄タイムス 関連記事・社説(7月10日夕刊、7月11日)

2007年7月10日(火) 夕刊 1面

 

調査官、住民聴取せず/「集団自決」修正

 

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除された教科書検定問題で、政府は十日、閣議決定した答弁書で教科用図書検定調査審議会に提出する調査意見書を取りまとめた文部科学省の教科書調査官が、住民の証言を聴取していなかったことを明らかにした。検定決定後の表現については「日本軍の関与がなかったと誤解される恐れがある記述はない」とし、記述内容を正当化した。赤嶺政賢氏(共産)の質問主意書に答えた。

 

 

 「集団自決」が慶良間諸島だけでなく県内各地で発生したことの見解は「審議会では渡嘉敷島、座間味島に限らず、沖縄における『集団自決』全般に関して審議がなされた」と述べた。

 

 

 しかし、六月十三日に文科省に聞き取りをした自民党県連の伊波常洋政調会長によると、布村幸彦審議官は「審議会では両島の事例のみを議論し、本島での『集団自決』は対象にしなかった」と述べたとされ、見解に食い違いが生じている。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

超党派の県民大会計画/沖子連など検定撤回求め

 

 

 高校歴史教科書の沖縄戦に関する記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が文部科学省の検定で削除された問題で、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)と県婦人連合会(小渡ハル子会長)、県PTA連合会(諸見里宏美会長)の三者は県内の幅広い団体に呼び掛け、検定撤回と記述の復活などを求める超党派の県民大会を計画している。「原爆の日」の八月六日か九日にも開きたい、としている。

 

 

 社会活動をする各団体に呼び掛け、実行委員会を組織する方針。十八日には、さらに参加団体を増やした会合を開き、実行委員会結成に向け具体的な日程や内容などを協議する。

 

 

 大会は、超党派を目指し、二十九日の参院選挙後、仲井真弘多知事や仲里利信県議会議長にも参加を呼び掛ける予定。一九九五年に開かれた米兵暴行事件に抗議する県民大会並みに県民の総意を表現したい、としている。

 

 

 沖子連の玉寄会長は「明らかに軍命があったのに、教科書から削除するのは許し難い。県民の総意で、抗議の意思を突きつけたい」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101700_01.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 夕刊 5面

 

グアム視察へ中部首長出発

 

 【中部】米軍再編で在沖海兵隊が移転されるグアムの状況を調べる中部地区十市町村長らの視察団(団長・東門美津子沖縄市長)が十日午前、那覇空港を出発した。十三日に帰国する。

 

 

 アンダーセン、アプラの両基地を視察するほか、フェリックス・カマチョ州知事やマーク・フォーブス議長を表敬。グアム商工会議所や建設業協会なども訪れる。初日はグアム県人会と意見交換する。

 

 

 東門団長は「基地を抱える中部市町村では住民が負担を感じている。移転先の状況を視察し、行政に反映させる一歩としたい」と決意を語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101700_03.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 朝刊 1面

 

県議会 きょう意見書再可決/「集団自決」修正問題

 

 県議会(仲里利信議長)は十一日午前、六月定例会最終本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与を削除した文部科学省の検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書を採決する。全会一致で可決される見通し。

 

 

 県議会は六月二十二日に検定意見の撤回などを求める意見書を全会一致で可決しており、一定例会で、同じテーマの意見書を二度可決するのは初めて。検定撤回に向けた強い県民意思を示す狙いがある。

 

 

 本会議ではまた、県食品の安全安心の確保に関する条例案や十一月に開館する県立博物館・美術館の指定管理者を「文化の杜」共同企業体(代表・平良知二沖縄タイムス社専務)に指定するための議決案などを採決する。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111300_04.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 朝刊 2面

 

枯れ葉剤 米軍「調査」/北部訓練場散布

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題で、那覇防衛施設局の佐藤勉局長は十日の共産党県委員会(赤嶺政賢委員長)の申し入れに対し、施設局から在沖米海兵隊と在沖米陸軍に照会するとともに、防衛省から在日米軍司令部に照会していると説明。米側は「調査する」と回答したことを明らかにした。

 

 

 その上で佐藤局長は「米側から回答を受け、事実を開示することが県民の不安払拭につながる」との認識を示した。

 

 

 一方、同問題で外務省の重家俊範沖縄担当大使は、外務省北米局が在日米国大使館に事実関係を確認中であることを明らかにした上で「重大な報道(問題)なので、米軍からの回答をできるだけ早く得たいと思っている」と述べた。

 

 

 また、米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設について佐藤局長は「(着工に)必要な手続きはすべて行ったと認識している。今後とも清々粛々と工事を進めていきたい」とあらためて推進する姿勢を示した。

 

 

使用・保有 証拠なし

 

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題で、ケビン・メア在沖米国総領事は十日、米国防総省が二〇〇四年に米下院議会に提出した文書に「米軍が過去に沖縄で枯れ葉剤を使用または保有したという記録や証拠はない」との調査結果が盛り込まれていることを明らかにした。

 

 

 メア総領事によると、同文書は〇四年に下院議会からの質問を受け、米軍が調査。沖縄での現地調査は行われなかったという。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111300_05.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月11日朝刊)

 

 

[「検定撤回」再可決]

 

歴史の改ざんを許すな

 

 県議会はきょうの本会議で、文部科学省の検定により高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除されたことについて、検定意見書の撤回と記述回復を求める意見書を可決する。

 

 

 同一の問題で、会期中に二度同じ意見書を可決するのは初めてのことだ。

 

 

 異例といっていいが、歴史的事実に目を背けようとする文科省への県民の怒りである。文科省は、歴史を改ざんする動きに県民が警鐘を鳴らしていることを認識する必要がある。

 

 

 県議会が最初に意見書を可決したのは、六月二十二日の本会議だ。県内四十一市町村議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会も同様の意見書を可決、採択し、六団体で文科省に要請した経緯がある。

 

 

 今回の可決は、県民の総意で行った要請が、「教科用図書検定審議会が決定したことに、口を挟むことはできない」(布村幸彦文科省審議官)として拒否されたことが理由になっている。

 

 

 だが、それよりも大きいのは、県議会文教厚生委員会が実施した渡嘉敷島、座間味島での聞き取り調査で、重く口を閉ざしていた体験者から新たな証言を得たからだ。

 

 

 その多くは、旧日本軍の関与なしに「集団自決」は起こり得なかったというお年寄りたちの肉声である。沖縄戦という歴史の底に横たわる事実は、私たちがきちんと受け止めていかなければならない深いテーマを含んでいる。

 

 

 生々しい証言からは、教科書から沖縄戦の実相が削られることへの怒りが見て取れる。それはまた、「親や兄弟、叔父、叔母たちの悲惨な体験だけでなく、自分の記憶までも否定しようとする動きを許すわけにはいかない」という強い意思とも重なる。

 

 

 仲里利信県議会議長は本紙のインタビューに、「検定結果は、(集団自決による)死者を冒〓している。歴史の事実を否定するとまた戦争への道を歩んでしまう」と答えている。

 

 

 その上で「一部の人たちが戦争を美化し、歴史の事実を歪曲するということは祖父、父、弟を失った者として決して許すことはできない」とも述べた。

 

 

 県子ども会育成連絡協議会、県婦人連合会、県PTA連合会が検定の撤回を求める県民大会を呼び掛けているが、史実をゆるがせにしないためにも党派を超え、県民が一丸となって訴えていくことが重要だ。

 

 

 沖縄戦にどう向き合い、史実を語り継いでいくか。私たち一人一人の意識が問われていることを自覚したい。

 

 

※(注=〓は「さんずい」に「売」の旧字)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070711.html#no_1

 

 

 

2007年7月11日(水) 夕刊 1・5面

 

「検定撤回」再可決/「集団自決」修正

 

県議会「県民の総意」

 

 

 県議会(仲里利信議長)の六月定例会は十一日午前、最終本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与を削除した文部科学省の検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。県議会事務局によると、一定例会で、同じテーマの意見書を二度可決するのは初めて、という。文科省が検定意見の撤回に一貫して難色を示す中、二度目の意見書可決で、検定意見の撤回を求める強い県民意思があらためて示された。県議会では同意見書を衆参両院議長、内閣総理大臣、文部科学大臣、沖縄及び北方対策担当大臣あてに送付する予定。

 

 

 本会議では、同意見書案を全会一致で可決した文教厚生委員会の前島明男委員長が文案を読み上げ、提案理由を説明した。その後、採決し全会一致で可決した。

 

 

 意見書は、県議会や県内四十一市町村の全議会で意見書を可決したことを受けて、県や県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会など六団体の代表の要請に対し、文科省が意見書撤回と記述の回復を拒否した経緯に触れ「同省の回答は到底容認できるものでない」と厳しく批判。

 

 

 また、県議会や県内四十一市町村のすべての議会で意見書が可決されたことを挙げ、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことはまことに遺憾である」と指摘している。

 

 

 さらに、「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、平和を希求し、悲惨な戦争を再び起こさないようにするため」とし、検定意見の撤回と記述回復を再度要請するとしている。

 

 

 意見書採決の際、自民会派の小渡亨氏(54)が退場した。小渡氏は「同じ意見書を二度出すのは逆に効果が薄れ、議会の権威が損なわれると感じたため」と理由を語った。

 

 

文化の杜 管理者に県立美術館 県議会可決

 

 

 県議会六月定例会の最終本会議ではこのほか、県食品の安全安心の確保に関する条例案や十一月に開館する県立博物館・美術館の指定管理者を「文化の杜」共同企業体(代表・平良知二沖縄タイムス社専務)に指定するための議決案など、計二十三議案を可決した。

 

 

 また、二〇〇八年五月に期限切れを迎える「駐留軍関係離職者等臨時措置法」の有効期限延長に関する意見書を全会一致で可決した。

 

 

重く受け止める

 

 

 仲井真弘多知事 県議会で教科書検定に関する意見書が全会一致で再度採択されたことは、県民の総意だと極めて重く受け止めている。沖縄戦の「集団自決」で、当時の教育を含む社会状況の総合的な背景、および戦時下の極限状態の中、手りゅう弾が配られるなど広い意味での日本軍の関与があったものと思っており、その記述が、削除・修正されたことは、誠に遺憾である。今後とも、県議会をはじめ地方六団体で歩調を合わせて対応していきたい。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

冷たい対応「許せぬ」/誠意ない国へ憤り

 

 

 「国の対応は許せない」。一度目の県民の総意にも冷ややかな国や文科省の態度が県民の怒りを呼び、過去に例のない「二度目の意思」が示された。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」記述から軍の関与が削除された教科書検定問題で、県議会は十一日、県民の総意を重く受け止めるよう求め、検定意見撤回と記述回復を求める意見書を再び可決した。一九八二年の「住民虐殺」削除問題当時もなかった全市町村議会の意見書可決に続き、異例の形で県民の意思が示され続けている。

 

 

 四日に県内の行政・議会の五団体の代表とともに文科省への要請を行った安里カツ子副知事は「(教科書検定問題は)二度も意見書が可決されるくらい県民にとって重要なこと」と述べた。

 

 

 国の対応に「国会など都合もあるが、それなりの人に対応してほしかった。終始、『理解してほしい』との返事だったので、沖縄と温度差があると感じた。要請から帰ってきて、本当に憤りを感じ、あらためて事の重大さを認識した。(今後要請することがあれば)誠意をもって対応してほしい」と話した。

 

 

 共に要請した県市議会議長会の島袋俊夫うるま市議会議長は「県議会の最初の意見書の時は、モタモタして、何をしているんだという感じだった。今回は、国の態度に怒りを感じ、県議会の委員会が現地で独自調査もして、集約した意見書。これこそ本当の県民の総意」と意義を強調した。

 

 

 同じく同行した県町村議会議長会の神谷信吉会長(八重瀬町議会議長)は「イデオロギーの問題ではなく、県民の目線で何度でも訴えなければいけない。一過性に終わらせないためにも重要」と話した。

 

 

 新たに超党派の県民大会開催の計画を明らかにした県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の意思を訴えるために県民大会に向けて大きな弾みになる。議長や議員の皆さんにも早めに協力を呼び掛けたい」と歓迎した。

 

 

 検定撤回の運動を中心的に進めてきた高嶋伸欣琉球大教授は「文科省の冷淡な態度に、県民が怒るのは当然。選挙を控えたこの時期に決議されるのも意義深い。県民が一致団結したらここまでやるんだ、というかつての復帰運動を思わせる動きになってきたように感じる」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111700_01.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 夕刊 1面

 

防衛相「規模最大に」/キャンプ瑞慶覧返還

 

 【東京】小池百合子防衛相は十一日午前、トーマス・シーファー駐日米国大使と防衛省内で会談し、在日米軍再編などについて意見交換した。小池防衛相は「嘉手納以南」の六基地の全面・一部返還で、米側との調整が難航しているキャンプ瑞慶覧の返還規模について、「最大の規模で返還されることが重要だ」と述べ、最大限の返還を求めた。

 

 

 一方、小池防衛相は普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、「地元の考え方、今後の将来図を総合的に踏まえて早期に実現できるようにやっていきたい」と意欲を示した。

 

 

 その上で「自分は環境大臣もしていたので環境も保全しながら、安全保障という観点をきっちりと守っていくことも重要だと思っている」と語った。

 

 

 在沖米海兵隊のグアム移転については、「財政面で国民の納得を得て進めていくことが重要で、効率化に配慮していくことが必要。日米の合意に従って早期に実現したい」との認識を示した。

 

 

 これらに対しシーファー大使は「きっちり進めていくことが大事だ」と述べるにとどめ、具体的な言及はしなかった。

 

 

 「嘉手納以南」の返還については、グアムに移転する海兵隊の部隊名や兵員数の内訳が確定しないことなどから、キャンプ瑞慶覧は返還区域の具体的な協議が進んでいない。日米両政府は米軍再編最終報告で、返還の「詳細な計画」を二〇〇七年三月末までに作成する予定だったが、いまだに見通しが立っていない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111700_03.html