月別アーカイブ: 2007年12月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月5日から7日)

2007年12月5日(水) 朝刊 1・2・23面

防衛局、大半回答せず/普天間アセス追加説明

「評価不可能」と審査会

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が四日、宜野湾市内で開かれ、沖縄防衛局は緊急時などには住宅地上空を飛行する可能性に言及した上で「例外的な飛行ニーズはあらかじめ示すことは困難」とし、具体的な説明を避けた。

 騒音区域や飛行経路も準備書段階まで提示できないとした。津嘉山会長は「このままで環境影響評価を審査するのは不可能」と指摘。審査会メンバーから追加説明を求める意見が相次ぐ異例の展開となった。

 同審査会が方法書の追加説明を求めた質問書に沖縄防衛局が口頭で回答。三十五項目七十六問の質問の大半で具体的な回答は得られなかった。沖縄防衛局は後日、文書で回答するとしている。

 沖縄防衛局は戦闘航空機装弾場について、滑走路南側の突起部分に検討していることを認めた。大型岸壁については、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行う軍港機能を持つものは建設する予定はない、と回答した。

 使用協定に関しては普天間飛行場と同様、午後十時から午前六時の間の飛行は運用上必要なものに限定する方向で米側と調整する意向を明らかにした。

 代替施設の使用機種については「現在普天間飛行場で運用されているCH53、CH46、UH1、AH1ヘリを想定。固定翼機はC53、C12作戦連絡機を想定している」としたが、垂直離着陸機オスプレイの配備について触れなかった。また、海域のボーリング調査は実施しない方針を明らかにした。沖縄防衛局は代替施設の位置や規模の変更の可能性については「現在の政府案は生活環境や自然環境、実行可能性についてバランスが取れており、最も適切。合理的な理由なくして変更は困難」との認識を強調。

 しかし、審査会メンバーから、名護市辺野古沖を埋め立てる従来計画と比較しても事業内容の説明に不備な点が多いことを指摘され、沖縄防衛局職員が「事業についての熟度は今回よりも(従来計画が)高かったのではないか」と認める場面もあった。


     ◇     ◇     ◇     

[フォローアップ]

背景に過剰な「隠ぺい体質」


 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の県環境影響評価審査会で、沖縄防衛局が審査会からの質問の大半の回答を保留し、審査の空転を招きかねない事態となった背景には、防衛省の過剰な「隠ぺい体質」がある。代替施設の付帯設備や緊急時などの住宅地上空飛行、垂直離着陸機オスプレイ配備については、いずれも米側の関係者の証言や文書で判明した経緯がある。米側との交渉を優先する半面、地元の反応に神経をとがらせ、開示できる情報まで伏せてきた政府の姿勢が問われている。


課題先送り


 代替施設の使用機種について沖縄防衛局は、今回もオスプレイの配備には触れなかったが、米軍関係者は普天間所属ヘリの後継機としての配備を繰り返し明言している。

 また、戦闘航空機装弾場についても沖縄防衛局は方法書で明記せず、今回初めて位置を「滑走路南側の突起部分」と説明。大型岸壁については、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行う軍港機能を持つものは建設する予定はない、と否定する一方、故障機の運搬方法については「今後米側と協議していく」としか回答しなかった。

 しかし、ケビン・メア在沖米国総領事は会見で、故障したヘリなどを運搬するための船舶(バージ船)の接岸場所を確保することを日米で確認していることを明言。接岸場所についても、航空燃料を運搬する給油艦が出入りする桟橋部分とは別に、「直線の防波堤部分」を検討していることを明らかにしている。

 緊急時などの住宅上空飛行の可能性についても、政府が国会答弁で否定していた段階で、メア総領事は認めている。

 普天間代替施設建設を推進したいのは米側も同様だが、米政府関係者には地元に一定の情報は開示し、理解を求めた方が「解決の早道」との認識がある。むしろ日本政府の「課題先送り」体質が、地元との信頼関係を失わせ、事態を混迷、複雑化させているのが実情だ。


県「誠意を」


 仲里全輝副知事は四日、「(審査会の質問に対する回答が)誠意あるものだったのかは確認していないのでコメントできない」としながらも、「現段階で米側と協議中のものや軍事機密の関係で説明できないものもあるだろうが、なぜ情報開示できないかを丁寧に説明することが大切。誠意をもって対応してほしい」と要望。副知事が防衛省の「誠意」の重要性に力点を置く背景には、審査会が厳しい答申を出せば知事意見に反映せざるを得ず、結果的に移設作業が遅れることを懸念するためだ。

 県の立場は、滑走路の沖合移動や「普天間の閉鎖状態」を条件としながらも、沖合移動は「日米合意の範囲内」で要求しており、早期移設という点では政府と一致している。

 県幹部は「次回協議会で県としては審査会で問題になっていることは何かを政府に説明する。これはアセスの進ちょく状況の説明になり、協議としては『前進』の形になる」との見通しを提示。審査会の審議状況が次回協議会の進展ともリンクしている。(政経部・渡辺豪)


委員ら批判・苦言


 沖縄防衛局は四日、アセス方法書の不備について追加説明を求めた県環境影響評価審査会の質問書に「ほぼゼロ回答」で通した。委員からは「このままでは評価不可能だ」「方法書を出す段階ではない」など厳しい意見が相次ぎ、具体的な審議に入れない異例の事態となった。津嘉山正光会長は「正式な文書回答を待って、審議に値するかどうか検討したい」とし、口頭説明を基にした審議は困難と判断、予定終了時間の三十分前に会議を打ち切った。(1面参照)

 質問者に対する沖縄防衛局の口頭説明は約一時間半。ほとんどの項目で「現状では、これ以上具体的に示すことは困難」と繰り返した。

 説明後、津嘉山会長は「各委員とも具体的な回答をいただいていないという印象」と強い懸念を表明。「少なくとも国会で発言されたり、報道で明らかになった部分については説明いただきたい」とし、正式な文書回答での説明を重ねて求めた。

 委員の一人、堤純一郎琉大教授は、飛行場の騒音評価で具体的な数字が明らかにされなかったことを疑問視。「残念ながらこのままでは評価できない」と突き放した。

 宮城邦治副会長(沖国大教授)は、新石垣空港のアセス方法書や二〇〇四年に提出された普天間代替施設の方法書と比較。「あまりに事業や施設内容が分からなさ過ぎる。もう少ししっかりした協議の上で、方法書を出す必要があったのでは」と苦言を呈した。

 備瀬ヒロ子委員(都市科学政策研究所代表取締役)も「このレベルの情報では審議のしようがなく、方法書を提出するタイミングが早いのでは」と話した。

 一部、回答を追加した内容についても「大浦湾を大規模に埋め立てて造る作業ヤードの必要性が十分に説明されなかった」「ヤードや飛行場部分の埋め立て土をどこから持ってくるのか分からない」など厳しい指摘が相次いだ。

 沖縄防衛局は「近日中に文書回答を送る」と説明したが、文書回答は、口頭説明とほぼ同様の内容となる見込み。「それで足りなければ今後できる限り資料を出させていただきたい」とし、具体的な事業や調査内容をどれだけ明かせるかは言及しなかった。

 津嘉山会長は「前回(〇四年に答申した普天間アセス方法書)と比べても後退した感は否めない」と批判。「文書回答を踏まえて審議する」と具体的な審議は次回に持ち越した。


[解説]

揺らぐアセスの信頼性


 米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴うアセス方法書の不備について追加説明を求めた県環境影響評価審査会の質問書に、沖縄防衛局は口頭説明にとどめ、ほとんど具体的に回答しなかった。アセス手続きや工期を優先し、方法書の審議を早急に進めようとする意図が垣間見える。今後、審査会は事業内容や施設概要を知らされないまま、審議に入る極めて異例の事態が想定される。沖縄防衛局の対応はアセス手続きの信頼性をも、揺るがしかねない。

 委員らは、代替施設の使用目的や施設規模が明らかにされず、環境調査に必要なデータもないまま、アセス手法の審議を余儀なくされている。

 方法書の在り方を批判する厳しい答申となった前回方法書(二〇〇四年)よりさらに後退したといわれる内容に「このまま通してしまっては審査会が無能化する」(委員)と困惑を隠さない。

 一方で飛行場部分に関する知事意見提出の締め切りが二十一日に迫る。審査会答申は、知事意見の検討時間を考慮すると「来週中にも答申案の検討に入らなければならない」(県環境政策課)。手続き重視の方法書にどのような意見を述べることができるのか。現行アセス法下での審査会の存在意義が問われている。(社会部・黒島美奈子)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_01.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 1面

代替・沖合移動/知事「総合的に判断」

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は四日午後も代表質問が続行された。仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書に対する知事意見の中で代替施設の沖合移動を求めていくかについて「生活環境および自然環境への影響を検討し、総合的な観点から判断する」との認識を示した。その上で、「法および条例で、事業者は知事意見を勘案しなければならないと規定されている。事業者の沖縄防衛局は適切に対処されるものと理解している」と述べ、知事意見で沖合移動を要求した場合、政府は地元の意向を尊重するべきだとの考えを表明した。

 また、沖縄にインターネットの国際的相互接続ポイントを整備する沖縄GIX構築事業について、仲井真知事は年内の供用開始を予定しているとし「インターネット接続事業者のほか海外向けビジネスを行う情報通信企業に対し、高品質な通信環境の提供が可能となり、新たな情報通信産業の集積とこれに伴う雇用増が見込まれる」と述べた。いずれも小渡亨氏(自民)への答弁。

 県発注工事をめぐる談合問題で、建設業界が求めている損害賠償金の十年間分割払い方式について、首里勇治土木建築部長は「原則として一括・全納となっているが、県としては、企業の経営状況も勘案した上で、十年間分割払いとすることが可能か、検討していきたい」と答えた。外間盛善氏(自民)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_02.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 23面

夜も爆音 燃料漏れも/嘉手納基地 訓練2日目

 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点に行われている米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練は四日も引き続き行われ、一時的に岩国基地(山口県)から移駐しているFA18戦闘攻撃機が日没後も飛行訓練を繰り返し、住宅地域に騒音を響かせた。ロケット弾や模擬弾を装着して飛行する機体も確認された。

 飛行したFA18のうち、少なくても六機は日没後に離陸。午後七時四十分ごろを皮切りに、南側滑走路から沖縄市上空に向けて相次いで飛び立った。推力増強装置(アフターバーナー)を使用する機体もあった。

 同日午後七時ごろには、FA18が使用している駐機場で消防車などの緊急車両が出動、一時騒然とした。目撃者によると、FA18は給油中だったことから、燃料が漏れた可能性もある。

 飛行停止中のF15戦闘機が点検を受けている様子も確認された。訓練は岩国基地からFA18約三十機と海兵隊約六百人が参加。七日まで行われる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_05.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 2面

米軍PACK3 国道横断/読谷

 【読谷】米陸軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊が四日午後、嘉手納弾薬庫地区(読谷村)から同村親志の国道58号を横断、同地区内の「トレーニングエリア・ワン」に移動した。配備後、初めての移動訓練で、車両二十九台と兵員八十人が公道を渡った。

 沖縄防衛局や在沖米陸軍などによると、PAC3部隊は四日、嘉手納弾薬庫地区を東西に分断する国道58号を横断。五日に、トレーニングエリア・ワンから嘉手納弾薬庫地区に戻る、という。

 PAC3は嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に配備されている。移動そのものが訓練で、トレーニングエリア・ワンでは機器の運用に必要な通信環境や障害物の有無などを確認するとみられる。

 当初、PAC3部隊は四日未明、嘉手納基地からトレーニングエリア・ワンに向かう予定だったが変更したもようだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_07.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 22面

「集団自決」修正/撤回否定に批判集中

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定意見の撤回などを文部科学省に要請した市民団体や支援組織が四日午後、参院議員会館内で報告集会と記者会見を開いた。民主、共産、社民の野党国会議員十五人を含む約百人が参加した。文科省の布村幸彦大臣官房審議官が検定意見の撤回を「考えていない」と否定したことに批判が集中。市民の代表は「私たちの税金で働いている人がこんなことを言うのは許せない」と憤りをあらわにした。

 県高教組の松田寛委員長は「(布村審議官は検定意見が)『制度上問題ない』の一点張りだった」と指摘。

 その上で「(審議会での審議という)制度を通過すれば(記述が)間違ってもいいという考え方が全く理解できない」と述べ、手続き論に終始する文科省の姿勢を批判した。

 教科書全国ネット21の俵義文事務局長は「文科省の姿勢は検定意見を絶対に撤回しないが、沖縄が怒っているので訂正申請でけりをつけようとしている。官僚は絶対に過ちを犯さないという前提がある」と述べ、疑義を呈した。

 「沖縄戦教科書検定意見の撤回を求める市民の会―東京―」の阿部ひろみ代表は「審議会で公正な審議がされたという(布村審議官の)考えに本当にびっくりした」と指摘し、教科書調査官の原案を議論がないまま追認した教科用図書検定調査審議会の在り方に警鐘を鳴らした。


検定意見撤回に難色/要請団に文科省審議官


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める市民団体や国会議員などが四日、文部科学省で布村幸彦大臣官房審議官に要請した。出席者によると、布村審議官は「検定意見の撤回は考えていない」とあらためて明言、検定の正当性主張した。一方で、「今回の訂正申請の審議が終わり次第、検定制度全体の在り方について検討したい」と制度の見直しに初めて言及したという。(一部地域既報)

 要請には都内各地で検定意見の撤回を求める「市民の会―東京―」(阿部ひろみ代表)、「沖縄戦首都圏の会」、琉球大の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授が参加し、それぞれが要請書を手渡した。


「自決」記述復活 反対決議を採択/政治介入に反対の会


 【東京】「教科書検定への政治介入に反対する会」(小田村四郎代表)は四日、都内で集会を開き、文部科学省が教科書会社の訂正申請を受け、記述復活することに反対する決議を採択した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_08.html

 

2007年12月5日(水) 朝刊 22面

「ちゅらごん」と呼んで/尾に傷ある辺野古ジュゴン

 WWFJ(世界自然保護基金)と「じゅごんの里」は四日、名護市の辺野古沖と大浦湾などで目撃された尾びれに傷のあるジュゴンの名前が「ちゅらごん」に決まったと発表した。

 全国三千二百四十二点の応募作品から選ばれた。「雄・雌のどちらでも使える」「みんなが呼びやすい」などが理由となった。

 清らかさを意味する「ちゅら」と、ジュゴンの「ごん」を合わせたという。

 両団体が米軍普天間飛行場の移設計画が進む名護市辺野古と、ジュゴンに関心を持ってもらおうと、七月から十月まで募集。「ちゅらごん」には二十九人の応募があったという。

 特別審査員の女優、川原亜矢子さんやミス日本グランプリの萩美香さんなどの意見も踏まえ、決定した。

 「じゅごんの里」の東恩納琢磨代表は「夢のある名前が付いてよかった。より身近な存在に感じることができるのではないか」と期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月5日朝刊)

[大規模即応訓練]

かすんでいく負担軽減

 米軍再編の狙いは何なのか。日米交渉の過程で私たちは政府サイドから「抑止力の維持と沖縄の負担軽減」という決まり文句を耳にたこができるほど聞いてきた。

 だが、昨年五月の日米合意以降に沖縄で顕在化しつつあるのは、負担軽減とはおよそ反対の事態だ。

 嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区には昨年九月、地対空迎撃ミサイル・パトリオット(PAC3)が配備された。

 青森県の航空自衛隊車力分屯基地への移動式レーダー(Xバンド・レーダー)配備やイージス艦「シャイロー」の西太平洋展開とあわせ、弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備が急速に進んだことになる。

 同基地では、F15戦闘機の未明離陸が、地元三自治体の中止要請にもかかわらず強行され、日米特別行動委員会(SACO)で伊江島補助飛行場への訓練移転が合意されたはずのパラシュート降下訓練まで実施された。

 そして今度は、米空軍と米海兵隊による大掛かりな合同即応訓練である。嘉手納基地を拠点に三日から始まった同訓練には山口県・岩国基地からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加するという。

 パトリオット部隊による初の機動展開訓練(移動訓練)も四日から始まっている。

 基地が攻撃されたことを想定した有事即応訓練は恒常的に実施されている。だが、今回の訓練は、これまでの空軍による訓練とは性質が違う。軍の垣根を越えた統合運用の推進、という考えに基づくものだ。

 米軍だけでなく自衛隊も昨年三月から統合運用体制に移行し、陸・海・空自衛隊の一体的な運用を重視するようになった。米軍と自衛隊の一体化の動きも活発だ。

 作戦や部隊の「統合化」という流れの中で今回の訓練が実施されている、とみるべきだろう。

 日米が進める「統合化」と「基地の共同使用」は、沖縄に何をもたらすのか。少なくともそれが負担軽減の取り組みだとは、誰も思わないだろう。

 日米合意によると、厚木基地からFA18戦闘攻撃機の部隊が岩国基地に移駐することになっている。負担軽減の名の下に実施される全国規模の「訓練移転=玉突き再編」は、果たして目的にかなった妥当な政策なのだろうか。

 昨年二月に発表された米国防総省の「四年ごとの国防政策見直し」(QDR)は、テロの脅威だけでなく、中国に対しても警戒感をあらわにした。

 負担軽減がかすんでいく現実に強い危機感を覚えざるを得ない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071205.html#no_1

 

琉球新報 社説

射爆場提供拒否 危険除去は全面返還しかない

 久米島町・鳥島射爆撃場の町有地について、平良朝幸久米島町長が米軍への提供を拒否する方針を打ち出した。同射爆撃場では恒常化している。

 在韓米軍による訓練は、韓国の実弾射撃場が2005年に閉鎖された後、恒常化した。地元の久米島町や県には何の説明もないまま、閉鎖された施設の代替機能を担わされた格好だ。

 住民が知らない間に、在韓米軍の部隊による射爆撃場の利用が進み、事実上、負担が増大したことになる。町長が憤るのは当然だ。

 在韓米軍のホームページによると、鳥島射爆撃場を利用する操縦士は「(爆弾が)実際にどう機能するかを目の当たりにできる」と、その有用性を強調している。

 県民にとっては迷惑この上ない。訓練の頻度が高まれば、事故の危険性も増大するからだ。

 鳥島射爆撃場周辺の海域では1987年7月、夜間訓練をしていた米軍のFA18戦闘機がマレーシア船籍の貨物船「ポメックス・サガ号」に模擬弾を撃ち込み、操舵手(そうだしゅ)が右腕を切断する事故が起きた。

 米軍は当時、模擬弾発射の理由について、船影を島と誤認したと説明していた。

 訓練中のAV8Bハリアー機が95年末から96年初頭にかけて、同射爆撃場で劣化ウランを含む徹甲焼夷(しょうい)弾1520発を誤って使用していたことも、その後明らかになっている。

 射爆撃場を利用する部隊が増えたことで、標的を間違えるような重大事故が再び起きはしないか。懸念は強まる一方だ。

 鳥島射爆撃場は久米島の北方約28キロにあり、約4万1千平方メートルのすべてが町有地だ。にもかかわらず、使用する部隊や訓練の概要など詳細は一切公表されていない。住民は完全に蚊帳の外に置かれている。

 射爆撃場でどんなに危険な兵器が使用されても、現状では知るすべがない。いつ何時、劣化ウラン弾などによって環境が汚染されないとも限らない。

 訓練水域周辺は好漁場として知られ、パヤオ(浮魚礁)も設置されている。ひとたび事故が起きてからでは取り返しがつかない。

 こうした危険を完全に取り除くには射爆撃場の全面返還しか道はない。

 久米島町議会は2005年、06年と鳥島射爆撃場の早期返還を求める抗議決議を可決した。県漁連も昨年から、鳥島と久米島の射爆撃場水域の返還を国に要請している。

 政府は、地元の声に真剣に耳を傾け、鳥島射爆撃場の早期返還を米国に要求すべきだ。

(12/5 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29497-storytopic-11.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 1面

泡瀬埋め立て第2区域は推進困難/沖縄市長

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合を埋め立てる「東部海浜開発事業」について、東門美津子沖縄市長は五日午後、臨時庁議を開き、「第一区域の工事は現行通り進める。土地利用計画は見直す。第二区域については推進は困難。具体的計画の見直しが必要」との方針を市幹部に伝えた。同日中に市議会議員に説明した後、記者会見を開いて正式発表する。

 市はこれまでに、「第一区域(約九十六ヘクタール)は工事が進んでおり、中止は難しい」などと判断。宿泊六施設が予定されている土地利用計画についても、バブル期の一九九二年調査を基に推計されたことから今後、時代に合った見直しを検討するとしていた。二〇一三年ごろ着工予定の第二区域については、一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかり、絶滅危惧種の生息地が含まれることから、人工島の変更や中止も含めて県や国と調整が残るとして、最終結論は市幹部や市議会の与党議員にも伝えていなかった。東門市長は、市議会十二月定例会が始まる六日までに、全市議三十人に説明する考えを示していた。

 東門市長は、推進と中止で市民の意見が割れる同事業について「市民にすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ、〇六年四月市長選で推進派候補を破って当選した。

 就任後は、公募で選んだ市民と学識経験者で組織する東部海浜開発事業検討会議を設置。今年七月には同会議から埋め立て後の企業立地の見込みや環境問題などを精査した報告書を受け取り、「判断材料にして年内に結論を出す」としていた。


[ことば]


 東部海浜開発事業 国と県が中城湾港新港地区の港湾整備のために浚渫した土砂を利用して約187ヘクタールの人工島を造り、その後、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して経済活性化を図る計画。埋め立て造成の総事業費約489億円。沖縄市は土地購入費約184億円とインフラ整備約91億円を見込む。国の埋め立て工事は2002年に始まり、全体の約半分に当たる第1区域は、12年にも埋め立てが完了する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_01.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 1・5面

2カ国語絵本で「集団自決」紹介

 【南風原】南風原高校の英語教師、宮城千恵さん(48)が英語と日本語の二カ国語で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を語る絵本「A Letter from Okinawa」(沖縄からの手紙)を出版した。渡嘉敷島の「集団自決」で両親を失った千恵さんの母・幸子さん(80)の体験をモチーフに、素朴な絵で島の暮らしぶりや沖縄戦の実相を表現する。千恵さんは「絵本は子どもたちに身近な存在。英語で表現することで、沖縄戦の真実を世界中に伝えていきたい」と希望を託す。(仲本利之)

 二〇〇二年から〇四年にかけ、北アイルランドとハンガリーへ留学し、平和教材を使った英語指導法を研究した千恵さん。世界中の歴史を学ぶ現地小中高校生の指導用に作った「集団自決」を題材にした紙芝居が絵本の原作となった。授業で使うと両国の子どもたちが「なぜ沖縄戦では、愛する家族同士が殺し合わなければならなかったの」と、強い疑問を投げ掛けてきたという。

 物語は千恵さんの母・幸子さんが渡嘉敷島で少女時代を過ごしたことから始まる。その後、進学のため沖縄本島に渡り、瑞泉学徒隊に動員され、悲惨な沖縄戦を体験。その後、両親が「集団自決」で亡くなったことを知らず、戦後何度も手紙を書き続ける。

 外国人が読んでも分かりやすいストーリーを心掛け、沖縄国際大学のピーター・シンプソン准教授から英語表現などの助言を受けた。絵は石垣市立白保中学校の平良亮教頭が描いた。

 絵本には読者の「書き込み」ページもあり、幸子さんになった気持ちで亡くなった両親に手紙を書いたり、戦争の悲惨さを絵で表現することで、主体的に「集団自決」について考えられるよう工夫を凝らした。

 両親を奪った沖縄戦について、多くを語りたがらないという幸子さん。娘の絵本について「千恵が絵本を通じて平和の思いを伝えていこうとするのを、天国にいる私の両親もそっと見守っているはず」と話す。

 絵本は十一月二十三日に発刊。沖縄学販が取り扱い、県内書店や各学校向けに販売するほか、欧州や米国での出版も計画している。問い合わせは同社、電話098(854)1620。


     ◇     ◇     ◇     

「訂正」審議結果「自ら説明する」/文科相が意向


 【東京】渡海紀三朗文部科学相は五日午前の衆院文部科学委員会で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述に関する教科書会社からの訂正申請を受けた審議結果の公表について、教科用図書検定調査審議会の委員が同席した上で自らが公の場で説明する意向を明らかにした。保坂展人氏(社民)への答弁。

 渡海文科相は「ある委員に登場していただける前提の下で、私自身が説明する必要があると考えている。この問題を就任以来、扱ってきた私としてそういう責任があると考えている」と述べた。

 審議会で結論が出た際、首相談話を出すかどうかについては「総理自身が決めることだ」と述べるにとどめた。

 林博史関東学院大教授が、自身のホームページ上で文科省に「著書(『沖縄戦と民衆』)を歪曲して検定意見をつけた」と抗議していることには「検定意見は最近の著書を総合的に判断してつけられた。林氏の著書もそのうちの一つであることは間違いないが、それのみによってではない」と説明した。石井郁子氏(共産)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_02.html

 

2007年12月5日(水) 夕刊 5面

即応訓練 苦情3件/嘉手納基地 緊急着陸も

 【嘉手納】米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練が実施されている米軍嘉手納基地で五日午後一時までに、町民から訓練に伴う三件の苦情が嘉手納町に寄せられていることが分かった。同基地では岩国基地(山口県)から一時的に移駐しているFA18戦闘攻撃機が繰り返し飛行訓練を実施するなど、訓練が活発化している。また、午前十時三十分ごろ、FA18一機が緊急着陸した。

     ◇     ◇     ◇     

PAC3訓練 読谷村で続く/嘉手納弾薬庫


 【中部】米陸軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊の移動訓練は五日も引き続き行われた。目撃者によると、同日午前九時ごろ、嘉手納弾薬庫地区(読谷村)を東西に分断している同村親志の国道58号を、西側から東側に横断する車両数十台が目撃された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712051700_05.html

 

2007年12月6日(木) 朝刊 1面

「事業縮小」決断 泡瀬埋め立て

東門市長、1区容認2区困難視

 【沖縄】国と県が中城湾港泡瀬沖合を埋め立てて人工島をつくり、沖縄市が大型ホテルなどを誘致して活性化を目指す「東部海浜開発事業」について、東門美津子沖縄市長は五日、市役所で記者会見、人工島(約百八十七ヘクタール)の埋め立て計画のうち「現在工事中の第一区域(約九十六ヘクタール)は推進。第二区域(約九十一ヘクタール)は推進困難」と正式発表した。長年にわたり市民の意見が「推進」と「中止」に割れている同事業に「縮小」の判断を下した。

 東門市長は、第一区域については二〇一二年にも埋め立て完了することなどを挙げ、「工事の進ちょく状況からみて推進せざるを得ない」と判断。「沖縄市の経済活性化へつなげるため、今後二、三年かけて社会経済状況を見据えた土地利用計画にしたい」との方針を示した。

 一三年ごろ着工予定の第二区域は、(1)一部が米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる(2)絶滅危惧種の生息地域であり干潟への影響が大きい│などと説明した上で「推進困難」とした。しかし、沖合に浮かぶ第一区域には陸地と結ぶアクセス道路か、橋建設が必要なことから、第二区域にある干潟部分の一部埋め立てもあるとし、国や県と協力して課題解決当たる考えを強調した。

 市の今後の対応としては、市民参画による会議を設置して土地利用計画を見直し、国と県と事務協議を重ねることで計画の変更を図る。また市財政の負担軽減には「国と県に土地利用への参画と支援を強く要望し、土地利用の円滑な推進により地域経済の活性化を図る」と説明した。

 東門市長は二〇〇六年四月の市長選で、「事業は市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ推進派候補を破って当選。就任後は公募した市民と学識経験者で組織する同事業検討会議を設置し、今年七月には同検討会議から、埋め立て後の企業立地の見込みや環境問題などの情報を精査した報告書を受け取り、「結論の判断材料にする」としていた。

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2007年12月6日(木) 朝刊 27面

あいまいさ 市民戸惑い/泡瀬埋め立て・市長判断

 【沖縄】「すべてを埋め立ててこそ活性化につながる」「自然環境に配慮するなら、一期工事こそ中止するべきだ」。沖縄市泡瀬沖合に埋め立てた人工島に、大型ホテルなどを誘致して経済活性化につなげる同市の東部海浜開発事業。市民を二分する難題だけに、東門美津子市長が五日発表した決断は「一期区域は推進、二期は推進困難」とあいまいさも残る。

 市民からは賛否とともに戸惑いの声も上がった。

 同市東海岸の活性化を図る「東部海浜開発事業」を強力に推進してきたのは、市泡瀬区の人たちだ。市泡瀬在住で「プライド泡瀬」の當眞嗣蒲会長(67)は「埋め立ては活性化につながる。市長判断は歓迎だ」と喜ぶ。

 バブル景気時代に策定された市の土地利用計画の見直しは必要と指摘しつつ、「経済活性化は人工島のすべてを埋めてこそ成り立つ。中途半端ではいけない」と、二期工事の完全実施を求めた。

 市議三十人のうち、八割に当たる二十四人は推進派。市東部開発事業推進議員連盟の新里八十秀会長は「あの言い方になっただけで、市長は事業推進が妥当と考えたのだろう」と歓迎。「数の横暴で事業を進めたくない。市長と相談しながら二期も進めたい」と話した。

 一方、埋め立て反対派は東門市長の決断に怒りを爆発させた。「泡瀬干潟を守る連絡会」の前川盛治事務局長は「市長は市民の要請に応えていない。抗議すべき内容だ」と言い切った。

 埋め立て容認の一期区域こそクビレミドロなどの貴重種、新種が生息すると指摘。環境に配慮して二期工事を縮小するとの説明に「環境に配慮するなら一期工事は中断するべきだ」という。

 東門市長の肉声を聞こうと記者会見場に駆けつけた市泡瀬の会社員、桑江直哉さん(33)は「東門さんは無責任だ。決断は、賛否両派の意見を聞いた形を取っただけではないか」と戸惑う。

 街頭で市民の声を集め市長に手渡したばかり。その二日後の決断に「本当に市民の声を聞いて判断したのか分からない」と不満を漏らした。


守る会、中断訴え


 【沖縄】沖縄市の東部海浜開発事業で東門美津子市長が「埋め立て容認」の姿勢を表明したことに抗議する集会が五日、同市役所前広場で開かれた。

 泡瀬干潟を守る連絡会の会員らが参加、今後も工事中断を求め活動することを確認。ガンバロー三唱で気勢を上げた。守る会の小橋川共男共同代表は「建設推進派候補を破って東門市長は当選した。決断は市民の意思を反映していない」とあいさつ。

 拡声器を市役所に向け、市職員と市民に泡瀬埋め立ての不当性を訴えた。

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2007年12月6日(木) 朝刊 27面

「やはり欠陥機だ」/F15飛行停止

 【中部】米空軍がF15戦闘機について、三度目の飛行停止措置を講じていたことが明らかになった五日、五十三機のF15が配備されている米軍嘉手納基地周辺自治体や議会からは「やはり欠陥機だ」などと怒りの声が相次いだ。

 同基地のF15は十一月二十八日に二度目の飛行停止命令が出されて以降、飛行はしていない。

 沖縄、嘉手納、北谷の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(会長・野国昌春北谷町長)は事故後、米軍側に三度抗議しF15の撤去を訴えた。野国会長は「十一月の飛行再開は完全な見切り発車で、危険な状態で住宅街の上を飛んでいたということになる。米軍は正確な情報を基に運用すべきだ」と語気を強めた。

 沖縄市議会は十五日開会の定例会でF15問題を追及する抗議決議の審議を予定。基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「議会としては劣化している戦闘機を撤去してほしい。何か起きてからでは大変。県も嘉手納基地の状況を把握してほしい」と強調した。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会委員の金城利幸町議は「ここまで欠陥が度重なると、F15だけに限らず、他の航空機に対する不安も募る一方だ」と指摘。日米両政府に対し、町民の不安と危険を解消するよう訴えた。

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2007年12月6日(木) 朝刊 27面

64歳比嘉さん 大臣奨励賞/「私の主張」作文コンクール

 通信制高校で学んだことなどを発表する第二十五回「私の主張」作文コンクール(主催・全国私立通信制高等学校協会)で、那覇市の県立泊高校通信制二年の比嘉ひとみさん(64)=沖縄市=が、最高賞の文部科学大臣奨励賞を受賞した。比嘉さんは「家族や先生たち、学校で知り合った友人の協力がなければ楽しい高校生活は送れなかった。コンクールに挑戦する機会を与えてくれた先生方に感謝したい」と喜んでいる。

 比嘉さんのテーマは「チャンスと挑戦」。沖縄戦で父親と離別した比嘉さんは、中学校の卒業式の前日に義父を肺炎で失い、弟二人を進学させるために自身の進学を断念した。その後、結婚して娘が生まれたが、病気のため軽い知的障害が残り、親の会の活動や子育てに悪戦苦闘するうちに三十年余りが過ぎていた。

 進学の夢を捨てられない中、二年前に息子から「今の機会を逃すと、もっと歳を取ってからでは難しいよ」との言葉に後押しされて泊高校通信制に。勉強する機会に恵まれたこと、生徒会活動や友人との出会いなど高校生活の喜びを応募作につづった。

 比嘉さんは「賞を受賞できるとは思わなかったので驚いた。一生涯学び続けたい」と喜んだ。

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2007年12月6日(木) 夕刊 1面 

F15亀裂 計4機に/3度目飛行停止

欠陥拡大 点検長期化も

 F15戦闘機の三度目の飛行停止措置に関し、米空軍は五日、これまでの点検作業によって計四機で、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)に亀裂が確認されたことを明らかにした。事故調査委員会は、欠陥を抱えた機体が当初想定していたよりも大幅に拡大する可能性を指摘。飛行停止が長期化する見通しを示している。マイケル・ワイン米空軍長官は「航空機部隊の老朽化と亀裂の問題拡大は決して良い兆候ではない」と指摘、今回のF15の欠陥判明を深刻に受け止めている。

 米空軍によると、コンピューターのシミュレーション結果でも、ロンジロンの亀裂によって、墜落事故につながる構造的な問題が発生する可能性が示されたという。

 また、新たな停止措置を受け、検査終了後も結果やデータ分析が義務付けられることから、米空軍は「従来のようにすぐに飛行が再開されることはない」としている。

 ロイター通信によると、ワイン長官はF15について「いずれかの時期に飛行を中止し、新世代の戦闘機を購入しなければならない」と述べ、後継機のF22戦闘機の追加購入の必要性を指摘した。

 欠陥部は機体上部の操縦席風防ガラス付近の「ロンジロン」と呼ばれる縦通材。ロンジロンは、機体にかかる「曲げ荷重」への耐性補強のため胴体を貫く縦通材のうち、特に強度の大きな構造部材。

 飛行停止の発端となった事故は十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。

 事故機はロンジロン付近に問題があるとの見方が強まり、米空軍は同四日以降、全機の飛行を停止。同二十一日には解除を発表し、嘉手納基地でも点検を終えた機が同二十六日から順次飛行を再開した。

 しかし、同二十八日に点検中の別の二機で新たに同部位で亀裂が見つかり、同日以降、E型機を除く飛行を再停止していた。

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2007年12月6日(木) 夕刊 1面

北部振興策 凍結解除へ/アセス進展へ合意後

 【東京】本年度分の執行が凍結されている北部振興事業費(百億円)について政府は六日までに、十二日に予定されている次回の普天間飛行場移設協議会で「移設に向けた環境影響評価(アセスメント)を円滑に実施すること」を県と確認した上で、協議会終了後に凍結解除の手続きに入る方針を固めた。同時に、内閣府が概算要求している二〇〇八年度の北部振興事業費(同額)を年末の政府予算案内示に計上する方針だ。

 アセスをめぐっては、今月二十一日に県条例に基づく知事意見の提出期限を迎える。政府はこれまでアセス前段階の環境現況調査に着手していたが、知事意見を踏まえ、早ければ来年一月にもアセス法に基づく正式な調査に入る。

 次回協議会で、県と国がアセス手続きの「円滑な」進展に向けて協力する方針を確認することで、政府が「移設に関する協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」とする北部振興事業の執行条件が満たされたと判断するもようだ。

 政府関係者によると、この方針はすでに県にも伝えられ、県側も大筋で了承している。このため本年度分の執行と〇八年度予算計上が実現する可能性が高まっている。

 町村信孝官房長官は五日午後の定例会見で、「〇七年度予算なので(執行を)いつまでも動かさないということではない」と執行に前向きな姿勢を示した。ただ、「現在、何ら関係者間で結論が出たという状態ではない。最終調整中だ」と述べ、協議会を踏まえて正式に決定する考えを示した。


「事業執行は当然」知事 名護市長


 仲井真弘多知事は六日、凍結されている北部振興事業で、政府が普天間飛行場移設にかかるアセス手続きの円滑実施を前提に執行する方針を固めたことについて「(県は事業が)凍結しているという状態を認めているわけではない。(執行は)当然なことで、直ちに解除するべきだ」と述べた。

 また、アセス手続きの「円滑」な進展を前提とすることについて、「防衛省がこちら(地元の)の言い分を聞けば(手続きは)進むし、聞かなければ何も進まないということだ」との認識を示した。

 島袋吉和名護市長は「正式な連絡は受けていないが、市として移設協議会にも参加して協議を進めて(移設作業に)協力している。当然、執行されるべきものだと思っている」と話した。

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2007年12月7日(金) 朝刊 1・2・31面

嘉手納F15 2機亀裂/世界で確認の5機中

住民、一層不安と反発

 米本国での墜落事故を受け、機体の点検作業中の米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機二機で、事故原因とみられる機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の亀裂が見つかっていたことが六日、分かった。米空軍が世界各地に展開しているF15で、同部位に亀裂が確認されたのは現段階で計五機。今後も増える可能性がある。墜落事故に直結する欠陥を抱える機体が日常的に嘉手納基地を離着陸していたことが判明し、基地周辺住民の不安と反発がさらに高まっている。

 同基地によると、十一月二十八日の二度目の飛行停止措置を受け、約五十機の所属機のうち三十機の整備点検を済ませた段階で、二機のロンジロン上部に亀裂を確認したという。

 米空軍は相次ぐ欠陥機の報告を受け、「これまで点検を行った個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性を示している」として、三回目となる飛行停止措置を四日(米本国で三日)に決定した。

 米空軍航空戦闘軍司令官のジョン・コルリー大将は既に点検を済ませ、飛行可能となっていた同航空戦闘軍所属のすべてのF15A、B、C、D型機の再停止を指示。さらに、その他すべての米空軍のF15A、B、C、D型機の飛行停止を勧告した。

 嘉手納基地のF15はC型が大半で、一部D型を含んでいる。F15を運用する第18航空団は、二度目に出された整備指導要領に沿って点検を続けている途中だったが、今後は「新たに明確な指示を受け取り次第、それを点検手順に加える」と説明。

 「飛行運用を再開する前に、各機を入念に点検し、問題となる可能性のある部分を特定し、適宜対応する作業に全力で取り組む」としているが、欠陥機の拡大で飛行停止期間が長期化する可能性もある。

 F15戦闘機の三度目の飛行停止措置に関し、米空軍は五日、これまでの点検作業によって計四機でロンジロンの亀裂を確認した、と発表。

 嘉手納基地によると、この四機は嘉手納所属の欠陥機二機のうち一機しかカウントされておらず、少なくとも現段階で計五機のF15に欠陥が判明したことになる。


     ◇     ◇     ◇     

周辺首長、撤退を要求/「住民不安ぬぐえず」


 【中部】嘉手納基地所属のF15戦闘機二機から亀裂が見つかった問題で、同基地周辺の沖縄市、嘉手納町、北谷町の三首長は、F15の「撤退」を強く求めた。

 三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は「米軍の安全な戦闘機という発言や、飛行再開の際に十五時間以上費やした点検は何の意味を持つのか。F15とその後継機を含め、嘉手納基地にこれ以上の戦闘機配備は許されない」と述べた。

 東門美津子沖縄市長は「私たちが危険を指摘していたことが明らかになった。絶対に飛行させてはならず、速やかに撤退すべきだ」と語気を強めた。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「F15はこれまで再三事故を繰り返している。明らかな欠陥機が住宅地上空を飛行していては、住民の不安はぬぐえない。あらためて全面的な撤去を求めたい」と強調した。


住民ら驚き 恐怖に/「点検意味なし」の声も


 【中部】墜落につながる亀裂が見つかったF15戦闘機五機のうち、二機が嘉手納基地所属だったことを知った基地周辺の住民らは六日、驚き、憤った。「いつ事故が起きてもおかしくない」「もう全面撤去しかない」。基地に隣接する一市・二町の議会は米軍と日本政府への怒りを募らせた。

 沖縄市議会(喜友名朝清議長)は六日に、F15の全面撤退を求める抗議決議をしたばかり。基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「やっぱり欠陥機だった。危険な戦闘機が上空を飛んでいたのかと思うと怖い」と米軍を批判。来週に予定される委員会で協議する方針だ。

 嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日の十二月定例会最終本会議でF15の即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を審議する。基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、「もはや点検の意味もない」と声を荒らげた。

 北谷町議会(宮里友常議長)は三日、抗議決議を全会一致で可決。F15の撤去を求め、十日に外務省沖縄事務所、沖縄防衛局に要請する。基地対策特別委員会の照屋正治委員長は「米軍の情報は信用できない。今後の飛行再開は容認できない」と反発した。

 北谷町砂辺区の松田正二区長は「一番安全な戦闘機と説明するF15で欠陥が見つかったなら、砂辺の上を飛んでいるF15以外の飛行機はもっと危険だ。米軍は事故が起きる前提で基地を運用している」と憤った。

 沖縄市池原自治会の玉城勇会長は「爆音だけでも大変なのに、事故を起こすような飛行機を飛ばすなんてどうなっている」と語気を強めた。「日米安保を盾に沖縄は植民地化されている。政府はしっかりと対応し、飛ばすことを止めさせるべきだ」と訴えた。

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2007年12月7日(金) 朝刊 1・31面

文科省、軍命明記回避を要請/再申請指針示す

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で文部科学省が今月四日、訂正申請した教科書会社の担当者を同省に呼び、記述内容をあらためて再申請させるための教科書審議会の「指針」を示し、その中で「軍の命令」を明記しないよう求めていたことが六日、分かった。関係者によると、同省の教科書調査官が各社に「軍から直接、命令した事例は確認できていない」と伝えたという。

 訂正申請した六社のうち一社は六日、「日本軍の強制」を再度明記した上で、「集団自決」の背景に日本軍が住民に米軍の捕虜になることを許さなかった事情があるなどの説明を加え、週明けにも再申請する方針を決めた。ほかに二社は、再申請を決めているという。

 「指針」は軍命の明記を禁じたほか、「集団自決」に複合的な要因があったと明示するよう要望。具体的には(1)天皇中心の国家への忠誠を強いた皇民化教育の存在(2)軍が住民に手榴弾を配った事実(3)沖縄戦は軍官民が一体となった地上戦―などの特殊事情を説明するよう求めたという。

 これらを明記することで「軍の強制」をうかがわせる記述を可能にすることが狙いとみられる。ただ、「軍の強制」や「『日本軍』の主語」を記述していいかどうかは明らかにしておらず強制性を明確に記述できるか不透明だ。

 再申請を受け、教科用図書検定調査審議会は再度、複数回の会合を開く見通し。結論は当初の見通しより遅れ、今月下旬になるとみられる。


     ◇     ◇     ◇     

強制「絶対譲れぬ」/県内反発 記述求める


 「集団自決(強制集団死)」の軍強制が削除された教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が「日本軍の命令」など直接的な関与を避けた表現の範囲内で、教科書会社に記述の再申請をさせる方針を決めたことに、同問題に取り組む団体や研究者、体験者から強い批判が上がった。「軍の強制を認めないなら意味がない」「検定意見の押し付けには変わりがない」と怒りが渦巻いた。一方で、「執筆者は勇気を持って真実を書いて」と支援する声もあった。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「『集団自決』が起きた背景をきちんと書き込めというのであれば『軍の強制』という記述を認めるべきだ。それでなければ文科省は何のために出版社の訂正申請を認めたのか分からない。強制の事実を薄めるようなことがあってはならない」と警戒した。

 沖縄戦研究者として審議会に意見書を提出した林博史・関東学院大学教授は「軍強制の記述が認められないなら、皇民化教育や『軍官民共生共死』について書いても、元の検定と同じで、とても認められない」と指摘する。沖縄戦全般についても「住民が日本軍によって追い詰められたことが沖縄戦の特徴。そこを書かせないのは、『集団自決』を含めて沖縄県民の犠牲の本質を歪曲するものだ」と批判した。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さんは「『日本軍が』という主語と『強要』『強制』の表現は絶対に譲れない。まだ心配が続く」とため息をついた。文科省が再度訂正申請を求めたことに、「ここまで執着する背景には、政治的な圧力や意図があるのではないか。教科書会社や執筆者は苦しいだろうが、勇気を持って真実を貫いてほしい。歴史がどちらが正しいか証明する」と力を込めた。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の共同代表、高嶋伸欣・琉球大学教授は「昨年度の検定で突然、不当な意見をつけたことに対し、沖縄の人々の怒りを正面から受け止めていない」とあきれた。「軍が住民を追い込んだことに疑問の余地はない。検定意見の扱い方は、日本軍の責任を薄めようとしているだけ。検定意見を押し付けている事態は変わらない」と憤った。

 沖縄戦研究者の大城将保さんは「(日本軍の関与を削除するよう求めた検定意見は)完全な事実誤認であり、沖縄の県民世論への配慮や、政治的な落としどころをもってして済む話ではない。検定意見を撤回しなければ抜本的な解決にはならず、あいまいにしておけばまた繰り返される恐れがある」と指摘。

 アジア近現代史への配慮を定めた検定基準の「近隣諸国条項」を念頭に「沖縄戦については本土ではまだまだ知られていない部分があるので、検定意見の撤回と併せ、沖縄条項を設ける必要がある」と話した。


記述訂正申請 書き直し要求


 文部科学省が高校日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会が六日までに、教科書会社からの記述訂正の申請に対し、記述の書き直しを求める方針を決めていたことが分かった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_02.html

 

2007年12月7日(金) 朝刊 2面

県、納得いく説明要求/普天間アセス

 県議会(仲里利信議長)十一月定例会は六日、一般質問初日が行われた。

 米軍普天間飛行場の代替施設にかかる環境影響評価(アセスメント)方法書を審議する県環境影響評価審査会が沖縄防衛局に対して、追加説明を求めていることなどへの県の対応について、知念建次文化環境部長は「審査会が事業者に送付した質問書は、建設計画や代替施設の運用形態、アセスの使用などについて具体的に明らかにするよう求めており、近日中に文書で回答が行われることと考えている」と説明した。

 その上で「県としてはその回答も踏まえ、今後とも納得いく回答を求めていく。説明で納得できない場合は、知事意見でしっかり指摘していきたい」と述べた。喜納昌春氏(社大・結連合)の質問に答えた。

 米軍基地内での温室効果ガス排出について、知念文化環境部長は「本県の温室効果ガス排出量に影響を与えていると考えており、その削減を図ることが重要。基地内における削減取り組み要請については、在沖米軍基地環境保全担当者会議等における米軍の対応等も踏まえ、渉外知事会へ提起していけるかどうか検討したい」との考えを示した。

 玉城義和氏(無所属)への答弁。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月7日朝刊)

[泡瀬埋め立て]

見えない「将来見通し」


「後戻りはできない」


 沖縄市泡瀬の沖合を出島方式に埋め立てる「東部海浜開発事業」について東門美津子市長は、工事が進む第一区域(約九十六ヘクタール)を推進し、第二区域(約九十一ヘクタール)については「困難だ」として見直すことを表明した。

 第一区域は二〇一二年にも埋め立てが終わることになっている。

 工事の進ちょく状況は「後戻りできないほど進んで」(市幹部)おり、「自然保護も政治理念の一つ」とする市長も中止できないと判断したようだ。

 同事業では、議会の三十人中二十四人が推進の立場である。埋め立てについては一時期市民、与野党がともに推進した経緯があり、自然保護を訴えて当選した市長が第一区域を容認したのは苦渋の決断とみていい。

 だが、市長を指示する自然保護団体は周辺海域で約百十種を超える貴重な魚介類や藻の生息を示しながら、「クビレミドロなど貴重種が多いのは第一区域」とし即時中断を求めている。

 市長が会見でこの問題に時間を割かなかったのは残念といわざるを得ない。なぜ、第一区域を容認したのか。具体的な理由について、もっと突っ込んだ説明をすべきであった。

 第二区域についての説明はこうだ。

 まず、約三分の一が米軍泡瀬通信施設の保安水域であり、埋め立てで新たな提供施設はつくりたくない。そして、絶滅危惧種クビレミドロなど貴重な動植物の生息地域で、埋め立てると干潟への影響が大きい。

 この二つが「困難」の理由で、埋め立てを最小限にするには第二区域の変更しかなかったということだろう。

 第二区域が完成すると、周辺の上下水道を含むインフラ整備に九十一億円、用地購入に百八十四億円かかる。

 だが、厳しい財政環境の中で、歳入が確約できない事業への財政拠出が説得力を欠くのは言うまでもない。

 第一区域については、人工ビーチやホテルの数、景観計画、隣接する県総合運動公園と連動した観光・スポーツコンベンション・エリアとしての青写真を描き直す必要があるはずだ。

 将来に禍根を残さぬためにも、何が必要で何がいらないのか。市は情報を開示し、市民の協力を得るとともに議会でも論議を深める必要があろう。


生活排水流さぬ工夫を


 泡瀬干潟には下水溝から生活排水が流れ込んでいる。干潟と連動する比屋根湿地なども例外ではなく、周辺地域からの影響もあるという。

 湿地にはマングローブなどがあり、干潟とともに野鳥の飛来地になっている。だが、近づくとヘドロのにおいが鼻を突くところも多い。つながりのある干潟に浄化作用があるとはいえ、このままでは海域への影響を抑えることはできないのではないか。

 出島は陸域から五十メートル離れているが、埋め立てによる潮流の変化も懸念材料だ。比屋根湿地の真向かいの海域で海水が滞留するという指摘もあるからだ。

 そうなれば湿地を含めた周辺地域の環境が悪化するのは明らかで、運動公園前の海岸線にも負の影響を及ぼしかねない。生息する魚介類、藻などへの影響は一層高まるはずだ。

 反対派が強く訴える点であり、この問題への対処法も市は具体的に示さなければなるまい。

 自然との共生は言葉で言うほど簡単ではない。生活排水を安易に流さずごみも投棄しない。

 市民としての最低限の義務であり、環境に配慮する上での努めだということを忘れてはならない。


開発主義に頼らぬ策で


 市長が第一区域の作業を容認したとはいえ、解決すべき課題は先送りされたままだ。今回の場合、事業を追認したにすぎず、市の将来設計を描くことにはならない。

 これまでも企業誘致など土地利用における十分な見通しがないまま埋め立て、土地を塩漬けにした例は数多い。

 沖縄市は同じ轍を踏んではならず、だからこそ課題を徹底的に洗い出し、市民も参画した論議が重要になる。

 残された自然をどう守っていくか。埋め立て事業が地域の活力につながるのか検証することも重要になる。市民一人一人に求められているのは、この問題への積極的な関与であり、声を上げることで行政を動かすことだ。

 開発主義に頼らず、どう地域を活性化に導いていくか。海という自然を県民の財産としてどう保全していくか。このことも合わせて、市民で考える糧にしたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071207.html#no_1

 

琉球新報 社説

泡瀬埋め立て 市長はもっと語るべきだ

 沖縄市の泡瀬埋め立て事業で、東門美津子沖縄市長は5日、「規模縮小」の方針を打ち出した。環境、財政問題に配慮した判断のようだが、あいまいさは否めず、肝心の同事業への同市のビジョンが見えてこない。市長の指導力と説明不足の印象がぬぐえない。

 事業は沖縄市泡瀬沖合の約187ヘクタールを埋め立ててホテルや人工ビーチ、マリーナなどのリゾート施設や住宅などを整備するものだ。

 埋め立て事業は5つの大きな懸案課題を抱えてきた。

 第1が環境問題。最大の課題だ。泡瀬干潟はトカゲハゼ、クビレミドロなど希少種や絶滅危惧(きぐ)種の宝庫で、サンゴの大群落など海洋生物の貴重な生息域となっている。

 事業は、生態系を含む環境影響評価(アセス)を基にしたはずだが、10年以上経過し「当時のアセスの不備」も指摘されている。

 5日の泡瀬訴訟では、絶滅危惧種の保護で「専門家の意見は聴取していない」との証言も出るなど、事業計画のずさんさも露呈した。

 今回の「縮小」も生態系への影響回避には不十分との声が残る。

 第2が地域振興の課題。沖縄市の中心市街地は「シャッター通り」と呼ばれ、再活性化が課題だ。公共事業削減が続く中で、泡瀬埋め立て事業は沖縄市だけでも290億円の財政投資だ。大型事業への市民の期待は大きい。

 第3が財政問題。活性化の切り札となる事業だが、企業立地や売却益など事業収益が伸び悩めば、逆に財政破たんを招きかねない。

 第4が基地問題。隣接する米軍泡瀬通信施設の保安水域の一部が、埋め立て事業にかかる。このため埋め立て地の一部を、新たに米軍に提供することになる。東門市政にとって米軍への新基地提供は政治姿勢の根幹を揺るがしかねない。

 5つ目が産業振興。泡瀬埋め立て事業を中止すれば、産業立地の中核地・中城湾港新港地区の航路づくりが暗礁に乗り上げる。航路しゅんせつで生じる土砂が行き場を失うからだ。事業縮小は国、県の産業振興政策にも影を落とす。

 課題の中に、基地を抱える自治体の地域活性化の課題が凝縮されている。環境、財政、産業振興の課題克服は、積年の「基地依存経済」の呪縛(じゅばく)を解く鍵ともなる。

 5日の会見で示された「規模縮小」の市長判断は、苦渋の選択かもしれないが環境も破壊し、事業効果も不十分な、両にらみの中途半端な決断に映る。市民を納得させるのは難しいだろう。決断の経緯や根拠など詳細な説明が必要だ。

 市長は一層の指導力と調整力、そして決断力で市民の負託に応える義務がある。同時に、解決の鍵は市民が握る。市政を左右する課題克服と政策決定の場に、市民を大いに引き込んでほしい。

(12/7 10:08)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29552-storytopic-11.html

 

2007年12月7日(金) 夕刊 1面

住民から苦情相次ぐ/大規模即応訓練

 【嘉手納・読谷】米軍嘉手納基地で米空軍と米海兵隊の大規模合同即応訓練が行われている米軍嘉手納基地周辺の嘉手納町と読谷村で七日までに、計十件の苦情が寄せられていることが分かった。両町村は同日までに、同基地司令官に対し、訓練の中止を求めて文書で抗議した。

 嘉手納町には即応訓練に伴う深夜、早朝に鳴り響く拡声器放送やサイレン音に対し「睡眠薬を飲んでも眠れない」「無神経な演習はすぐやめさせてくれ」など、不安を訴える苦情が相次いでいる。

 同訓練は米空軍と米海兵隊の合同で行われ、岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊員約六百人が参加。FA18の離着陸の際の騒音のほか、サイレンや英語での拡声器放送が民間地域にも鳴り響いているのが確認されている。嘉手納町は七日、読谷村は六日に抗議文書を送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071700_02.html

 

2007年12月7日(金) 夕刊 1面

文科相「承知していない」/軍命明記回避

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は七日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で教科用図書検定調査審議会が文科省を通じて教科書会社に伝えた「指針」の内容について、「出されたかどうか承知していない」と述べ、言及を避けた。

 同省の教科書調査官は各社に「指針」を示し、「軍から直接命令した事例は確認できていない」と伝え、軍の命令を明記しないよう求めたという。「指針」の妥当性について渡海文科相は「通常の検定の範囲で(審議委員が)学問的、専門的な調査をする中で行われていると理解してほしい」とした。

 審議会が結論を出す時期が遅れていることには「今やっている作業は来年の春の教科書に間に合うようにお願いしており、審議会の先生もそれを念頭に審議していると思っている」と述べた。

 

     ◇     ◇     ◇     

仲里議長、指針を批判


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍強制を削除した教科書検定問題で、教科用図書審議会が「指針」をまとめ、文部科学省が「軍の命令」を明記しないよう教科書会社に求めていたことについて、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は七日午前、「(軍命否定は)戦争を知らない人が言うこと。あのような、今死ぬか殺されるか、あるいは生きるかという、生と死のがけっぷちにある状況の中で、証拠がある。(軍命を明記しないという指示は)ナンセンスでばかげたこととしか言いようがない」と批判した。

 その上で「(軍命を示す)証言ははたくさんある。検定意見の撤回と記述の回復ということは、いささかも揺るぎはないし、その実現に向けて、今後も頑張っていきたい」と話した。

 一方、仲村守和教育長は教科用図書検定調査審議会の指針について、「内容について詳しいことは承知していない」とした上で、「県教育委員会としては検定意見の撤回と記述の回復がなされ、来年度も記述が回復された教科書で高校生が学習できることを期待している」と述べた。同日の県議会一般質問で、兼城賢次氏(護憲ネットワーク)に答弁した。


知事「大変失礼」/藤岡氏の議長批判


 新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝拓殖大教授が先月末、県庁記者クラブで会見し、沖縄戦時に日本兵から毒のおにぎりを渡されたとする仲里利信県議会議長の証言は「作り話」と批判したことについて、仲井真弘多知事は七日午前、県議会の一般質問で見解を問われ、「報道の通りであったとすれば大変失礼で理解不可能。大変疑問に感ずる発言」と批判した。

 仲村守和教育長も「(仲里議長の発言は)『歴史は正しく語り継がなければならない』との強い思いから、自らの沖縄戦体験に基づいて語られたものだと思う。つくる会会長の発言が報道の通りであれば極めて疑問であり、理解し難い」と同様に批判した。当山全弘氏(社大・結連合)への答弁。

 仲里議長はこれまでに「壕の中で泣きやまない幼い妹らを殺すよう、日本軍兵士から毒入りのおにぎりを渡された」と証言している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712071700_03.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月1日から4日)

2007年12月1日(土) 夕刊 5面

嘉手納基地 北側滑走路の運用再開

 【嘉手納】今年一月から改修工事のため、使用を中止していた米軍嘉手納基地の北側滑走路の運用が三十日から始まった。目撃者などによると、同日午後に少なくとも二機の空中給油機が同滑走路から離陸する状況が確認された。滑走路は嘉手納町屋良の住宅地に近く、周辺住民は騒音負担の増加を懸念している。

 沖縄防衛局によると、北側滑走路の改修工事は二十七日に終了。同基地渉外部は使用時期については「未定」と説明していたという。

 北側滑走路では三十日午前十一時ごろ、飛行停止中のF15戦闘機を使用して、強制的に機体を停止させるため、滑走路上に設置されたワイヤを点検している様子が確認された。また、午後にはKC130空中給油機、KC135空中給油機が滑走路を使用し、北谷町方向から沖縄市方向に向けて離陸した。

 同基地では、三日から岩国基地(山口県)所属の海兵隊と空軍の合同即応訓練が実施されることに伴い、FA18戦闘攻撃機約三十機が一時的に移駐している。

 同町は「訓練期間中はただでさえ騒音増加が懸念される。この上、北側滑走路を使用すると、住民の騒音負担は増加するのでは」とみている。

 嘉手納町屋良の島袋敏雄区長は「(屋良地区から遠い)南側滑走路を使っていても騒音は激しかった。これ以上の騒音は地域住民の健康にも大きな被害を与える」と不安そうな表情を浮かべた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712011700_04.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 2面

跡利用へ法整備指摘/嘉手納で米軍再編シンポ

 【嘉手納】「米軍再編とどう向き合うか」をテーマにしたシンポジウム(主催・沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会)が一日、嘉手納町中央公民館であり、米軍基地を抱える宜野湾、嘉手納、北谷の三市町首長らが基地返還後の跡地利用などで意見交換した。宮城篤実嘉手納町長は、未明離陸の強行など周辺住民の意思に反して嘉手納基地が運用されるのは、施設管理権が米軍にあるからだと指摘。「管理権が自衛隊に代わることで、問題解決が実現可能になるのではないか」と問題提起した。

 しかし、地元自治体だけでは問題解決できないとして、「抜本的な解決策を持たない私たちができることは抗議行動だ」などと述べた。

 野国昌春北谷町長は、同町が跡地利用の成功自治体と評価される一方で、キャンプ桑江北側部分から米軍が廃棄した銃弾や油送管が相次いで発見されるなど、環境問題が跡地利用の障害になっている現状を報告。三年以内とされる返還給付金の期限延長も国は考慮するべきだ―と訴えた。

 伊波洋一宜野湾市長は米軍の資料を基に、普天間飛行場の航空機と海兵隊員はグアムに移転すると主張。名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設がなくても「普天間」は撤去可能だとの見解を示した。

 パネルディスカッションでは桜井国俊沖大学長が、一九九〇年代にフィリピンで米軍基地の跡地利用にかかわった経験を基に「米軍の情報提供がなければ、どこに何が埋まっているのか分からず、手も足も出ない」と報告。日米地位協定の改定などを通して「嘉手納以南」の大規模返還に備えるべきだと指摘した。

 仲地博琉大教授は、普天間飛行場やキャンプ・キンザーなどの大規模返還を実現するためにも「新たな法整備が必要だ」として、市町村から強力に働き掛けることを呼び掛けた。

 「跡地開発によっては軍用地料よりも高額な経済効果が得られる」と指摘したのは照屋寛之沖国大教授。また、我部政明琉大教授は日本のねじれ国会、米大統領選、イラク戦争の泥沼化で「米軍再編の先行きは不透明だ」と現状を分析した。

 シンポジウムには、本島中部の自治体職員や議会議員、市民らが多数参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_03.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 2面

「普天間」着地点見えず/SACO最終報告11年

 在沖米軍基地の整理・縮小を目的とした日米特別行動委員会(SACO)最終報告から、二日で十一年を迎えた。SACO事案は今年六月、地元合意が唯一得られていなかった金武町のギンバル訓練場の返還に関連し、同町がヘリパッドをブルービーチ訓練場へ移設する条件を受け入れたことで道筋をつけた。ただ、「五―七年以内」とされた普天間飛行場の返還は、在日米軍再編へ移行したものの、代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐって政府と地元の調整が難航し、解決のめどが立っていない。(東京支社・島袋晋作)

地元は同意


 SACOと米軍再編がすべて実現すれば、返還規模は五千二百五十ヘクタール以上になり、在日米軍専用基地に占める在沖米軍基地の割合は約70%になる見込みだ。

 SACO事案のうち返還規模が最大で、二〇〇二年度末までを予定していた北部訓練場の部分返還(約三千九百八十七ヘクタール)について、日米は今年三月までにヘリパッドの移設数を七カ所から六カ所に減らすなどして、南側三カ所(東村、国頭村)の着工に合意した。

 移設反対を主張し、今年四月に当選した伊集盛久東村長も就任後の五月に容認姿勢に転じた。これらを受けて政府は七月から工事に着手。残り三カ所(国頭村)も含め、〇八年度中の完了を目指す。

 ギンバル訓練場(約六十ヘクタール)の返還については、跡地利用の大きな財源となる「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)が本年度末に期限を迎えることを踏まえ、儀武剛金武町長は〇八年度予算概算要求直前の六月定例会で受け入れを表明。防衛省は「SACO事案は地元同意がすべて得られたことになる」と歓迎した。


返還計343ヘクタール


 SACO事案は,これまで一九九八年に安波訓練場(約四百八十ヘクタール)の共同使用を解除した。

 〇三年にはキャンプ・桑江北側部分(三十八・四ヘクタール)返還を実現。〇六年は瀬名波通信施設(約六十一ヘクタール)、楚辺通信所(約五十三ヘクタール)、読谷補助飛行場(約百九十一ヘクタール)が全面返還され、返還面積は合計で約三百四十三ヘクタールになる。

 瀬名波通信施設はトリイ通信施設に、楚辺通信所はキャンプ・ハンセンにそれぞれ移設され、どちらも県内の既存米軍基地内に収容された。読谷補助飛行場のパラシュート降下訓練は、伊江島補助飛行場に移転した。

 那覇港湾施設(約五十五ヘクタール)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖への移設は米軍再編に移行。国、県、地元などでつくる移設協議会は今年八月、追加整備される集積場を含む代替施設の位置や形状、面積について、浦添埠頭地区の沖合に隣接する逆L字形(四十九ヘクタール)とすることで合意した。


こう着続く


 普天間飛行場(約四百八十ヘクタール)の返還は米軍再編に移行。日米は、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部にV字形の滑走路を建設することで合意したが、県や名護市は滑走路を沖合に移動するよう要求し続けている。政府は今年十月、地元の反対を押し切って、移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書を提出。こう着状態が続く。

 米軍再編ではこのほか、牧港補給地区(約二百七十ヘクタール)、キャンプ桑江(約六十八ヘクタール)、第一桑江タンクファーム(約十六ヘクタール)を全面返還する。キャンプ瑞慶覧(約六百四十ヘクタール)は部分返還だが面積は決まっていない。

 これら「嘉手納以南」の返還で、日米は米軍再編最終報告(ロードマップ)に基づき、返還の「詳細な計画」を今年三月末までに作成する予定だったが、キャンプ瑞慶覧の返還交渉が難航し、見通しが立っていない。

 キャンプ瑞慶覧については、石破茂防衛相が十一月八日に会談したゲーツ米国防長官に対し、「県民にとって、目に見えるものとして、きちんと示さなければならない。長官のリーダーシップをお願いしたい」と最大規模の返還と早期解決を求めている。

 日米は普天間飛行場を一四年までにシュワブに移設した後に返還する方針。ほかの五基地の返還時期は、早ければ同年までに完了する在沖米海兵隊八千人のグアムへの移転後になる見通しだ。返還に伴い、第一桑江タンクファームの機能は普天間代替施設に併設。キンザーの倉庫機能は、嘉手納弾薬庫地区などに移設する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_04.html

 

2007年12月2日(日) 朝刊 27面

レノン命日合わせ 沖縄から平和発信へ共感の輪

 元ビートルズのジョン・レノンの命日に当たる十二月七日二十四時(八日午前零時)に時を合わせ「平和への思いを共有しよう」。那覇市でイベント関係の仕事をしている新城義満さん(54)の呼び掛けに共感の輪が広がっている。千五百枚のビラ=写真=を世界各地に配布。新城さんは、自分のいる場所で「電気を消して暗くしたり、ろうそくを灯したり自分のやり方で平和を考えてほしい」と話している。

 平和を訴えたレノンは一九八〇年十二月八日にニューヨークの自宅前で射殺された。レノンファンの新城さんは、以前から命日には、自然に友人たちと彼をしのんで曲を聴いたり演奏したりしていたという。ミニライブを何年も続けている友人たちもいた。「思いを一つにできないか」と考えて呼び掛けた。

 千五百枚作ったビラを、十一月半ばごろから県内各地だけでなく、東京や大阪、米国サンフランシスコの友人らにも郵送。「面白い」「無理なくできる」と好意的に受け止められているという。ビラには「この呼び掛けは沖縄から始まっています」とも書かれている。新城さんは「沖縄は(平和を求める)大きな声を出す資格がある」と話している。

 新城さん自身は、その時は「いつものミュージックバーで、いつもの仲間と過ごすと思う」。どれだけの人の思いが重なるのか楽しみという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712021300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月2日朝刊)

[アセス方法書]

そのままでは通らない

 米軍普天間飛行場の代替施設建設のため沖縄防衛局が県に提出した環境影響評価(アセスメント)方法書に対し、市民団体や自然保護団体だけでなく、地元自治体や県の諮問機関からも、厳しい意見や批判が相次いでいる。

 アセス方法書は、法律に基づいて移設先で実施する環境影響評価の調査方法などを記したものである。

 名護市は、航空機騒音に関して、事細かに方法書の疑問点をまとめ、県に意見書を提出した。

 政府案よりもさらに沖合での航空機騒音の予測・評価、米軍大型ヘリによる試験飛行、装弾場など関連施設の情報開示―などを求めている。

 その上で、住民生活への影響を最小限に抑えるため「可能な限り沖合に移動する必要がある」と、沖合移動を強調しているのが特徴だ。

 県環境影響評価審査会は、方法書の不備を指摘し、沖縄防衛局に追加説明を求める質問書を提出した。疑問点は代替施設の運用形態など三十五項目七十六問に及ぶ広範なものだ。

 国がまとめたアセス方法書は、たとえて言えば、出来の悪い答案みたいなものである。とても及第点は与えられない。

 方法書をめぐって、なぜ、こうした事態が生じているのか。私たちは、地元を無視した日米合意が必然的に招いた結果、だと受け止めている。

 橋本竜太郎元首相が「(普天間移設は)地元の頭越しには進めない」と明言して以来、地元の合意、了解を前提にして作業を進めることが政府の基本姿勢だった。

 ところが、あらたに日米が合意したV字形滑走路案は、地元への相談もなく、事後的に地元合意の形式を無理に整えただけの、実質的には不合意といっていい代物だった。

 強引さとあいまいさが当初からつきまとっていたのだ。問題はそれだけにとどまらない。

 代替施設建設をめぐって、情報開示を阻む二つの壁の存在が明らかになった。一つは作戦運用に絡む軍事機密という壁。もう一つは地元の反発を招きかねない「不都合な事実」を公表しないという隠ぺい体質の壁だ。

 アセス方法書に対して「知りたいことが盛り込まれていない。判断のしようがない」という厳しい意見が相次いでいることを政府はどう考えているのか。

 代替施設の建設スケジュールは日米が決めたもので、これにも地元はかかわっていない。計画表にこだわるあまり、無理を重ねれば、ひずみはますます大きくなるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071202.html#no_1

 

2007年12月3日(月) 朝刊 1面

きょうから即応訓練/米空軍・海兵隊

 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点にした米空軍と米海兵隊の合同即応訓練が三日、始まる。岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と六百人の海兵隊員が参加する。嘉手納基地が大規模な部隊を受け入れ、合同で即応訓練を実施するのは今回が初めて。同基地によると七日まで行われる。周辺自治体は「基地の機能強化だけが進んでいる」などと反発している。

 参加するFA18戦闘攻撃機や要員は、二日までにほとんどが嘉手納基地に到着したとみられる。

 四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などを使用するという。

 即応訓練は有事の対応を確認する訓練。嘉手納基地では従来、同基地兵士が他基地からの部隊役となり、実施してきた。

 訓練について、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備、F15戦闘機や外来機による未明離陸など、負担軽減に逆行しているとして、訓練の中止を求め、四日に同基地司令官に直接抗議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031300_04.html

 

2007年12月3日(月) 夕刊 1面

嘉手納で大規模訓練/米空軍・海兵隊合同即応

 【中部】米軍嘉手納基地を拠点に、米空軍と米海兵隊合同の即応訓練が三日午前、始まった。海兵隊岩国基地(山口県)からFA18戦闘攻撃機約三十機と海兵隊約六百人が参加。同機は午後一時までに十七機が飛行し、このうち二機が緊急着陸した。嘉手納町屋良の騒音測定器は最高値九一・一デシベル(騒々しい工場内に相当)を計測。「機能強化ばかりが進んでいる」として訓練に反対していた周辺自治体は、強行した米軍に反発を強めている。訓練に反対する市民団体は「安保の見える丘」で抗議集会を開き、シュプレヒコールを繰り返した。

 同日午前に緊急着陸した機体は、滑走路のワイヤにフックを掛けて停止したため、緊急性が高かったとみられるが、同基地報道部は「機体にトラブルはなかった」としている。

 当初、普天間飛行場も使用するとしていたが、同日午後一時現在、目立った動きはない。

 FA18は午前八時三十分ごろ、一機が同基地南側滑走路から離陸したのを皮切りに、十七機が相次いで飛行。沖縄本島周辺の訓練区域で訓練を実施したとみられる。嘉手納町屋良では、同日午後一時までに、多くの人が不快に感じる70デシベル以上の騒音を七十三回計測した。

 また、FA18に実弾を装着している様子も確認された。在沖海兵隊は沖縄タイムス社の取材に対し、FA18は実弾を使用した訓練を実施することを明らかにしたが、爆弾の種類については「運用上の保安のため」公表していない。

 岩国基地の所属機は今年九月にも、非人道的兵器として国際的に非難を受けているクラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使用した訓練を実施している。

 訓練の中止を求め、四日に同基地司令官に直接抗議する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「外来機が参加する大規模訓練が県外で行われれば、大問題になるはずだ。容認できない。沖縄だけが基地負担を押し付けられている。嘉手納基地の使用協定見直しを国レベルで協議しなければ、根本的な解決にならない」と述べた。

 即応訓練は有事の対応を確認する訓練。嘉手納基地では従来、同基地の兵士が他基地からの部隊役となり、実施してきた。同基地が大規模な部隊を受け入れ、合同で即応訓練を実施するのは今回が初めて。四日ごろからサイレンや拡声器放送、地上爆発模擬装置(GBS)などを使用。訓練は七日まで行われる。


     ◇     ◇     ◇     

北谷議会が抗議決議


 【北谷】米軍空軍と海兵隊による大規模な合同即応訓練が始まった三日午前、北谷町議会(宮里友常議長)は臨時会を開き、訓練に対する抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。海兵隊岩国基地(山口県)の隊員約六百人とFA18戦闘攻撃機約三十機が参加するなど、嘉手納基地での初の大規模合同訓練を、「基地機能強化につながる」と問題視し、訓練の中止を求めている。嘉手納基地司令官などへの直接抗議を予定している。

 抗議決議は、基地負担軽減が掲げられた二〇〇六年の日米再編協議以降の嘉手納基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)配備、未明離陸やパラシュート降下訓練の強行を指摘し、「基地負担の軽減とは程遠い状況にある」と米軍を批判している。

 合同訓練については、「明らかに一方的な基地機能の強化につながる。度重なる訓練に強い憤りを覚えている」と強く反発。基地負担軽減の実行、地位協定の改善・見直し、騒音防止協定の抜本的な見直しを訴えた。

 また、米本国の墜落事故を受けて飛行中止している嘉手納基地所属のF15戦闘機についても、事故原因の公表とF15の即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。


嘉手納も中止要求へ


 【嘉手納】嘉手納町議会(伊礼政吉議長)の基地対策特別委員会が三日午前開かれた。同日始まった米軍の大規模即応訓練について「町民の騒音被害の増大が考えられる」として、十日開会の町議会十二月定例会冒頭に、訓練中止などを求める抗議決議と意見書の両案を提出することを決めた。

 基地特委では「空軍の通常訓練だけでも騒音被害は大きい。さらに海兵隊が加わっては大変だ」「住民地域に近い北側滑走路の修復工事も終了したようだ。騒音被害増大が考えられ、即応訓練は中止するべきだ」などの意見が相次いだ。

 十二日以降に嘉手納基地への抗議行動および県選出国会議員に対する要請活動を行い、同様の大規模訓練が今後行われないよう求める方針だ。

 また、米国でのF15戦闘機墜落事故を受け、嘉手納基地のF15が二度にわたり飛行停止措置を講じた問題も協議。即応訓練の中止と併せ、F15の飛行停止と即時撤去を求める抗議決議、意見書の両案提出も決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031700_01.html

 

2007年12月3日(月) 夕刊 5面

墜落の恐怖 住民怒り/FA18緊急着陸

 【中部】嘉手納基地を拠点に大規模な合同即応訓練が始まった三日早朝、飛行ルートにある北谷町では戦闘機の騒音が響いた。訓練中のFA18戦闘攻撃機一機が離陸後、緊急着陸する事態も発生。例を見ない合同訓練のスタートに、危険と隣り合わせの生活を強いられる住民の不安は高まっている。

 「わじわじーして、落ちたらどうするのか」。北谷町砂辺区の松田正二区長はFA18一機が緊急着陸したと聞き、憤りを隠せない。「欠陥機というのははっきりしている。やりたい放題だ」と語気を強めた。「政府は沖縄、特に砂辺に負担を押し付け、切り捨てているとさえ思う。何の対応もしない政府の姿勢は爆音よりも腹立たしい」と語った。同区公民館の女性職員(47)は「電話が中断するほどの騒音。訓練とはいえ、住民のことを考えてほしい。他市町村から来る子どもも怖がっている。訓練は無人島にでも持って行ってもらいたい」と訴えた。

 同じく砂辺区の松田文子さん(73)は「本当にやかましい。うるさいときは電話も聞こえないし、テレビもジリジリして見えない。夫婦一緒に住んでいるが、訓練を早くやめてほしい」と強調した。

 宜野湾市の普天間飛行場では同日午前十一時までに戦闘機の離着陸はなかった。しかし、嘉手納基地同様、即応訓練の「拠点」として挙げられており、七日までの期間中に訓練が行われる可能性もある。

 喜友名地区の知念参雄自治会長は「今のところ目に見える被害はないが、何で沖縄ばかりなのかという気持ち」と批判。「米軍は全く無神経。沖縄で集中的にやって来るんじゃないかと心配だ」と訓練の恒常化を警戒した。

 嘉手納町屋良区では早朝に飛行機の騒音はほとんどなかった。屋良小学校の近くに住む主婦(42)は「区民は訓練の実施に敏感になっている。近くに学校もある。いつ飛行機が落ちるか分からない状況の中で生活するのは大変だ。訓練などすぐにやめてほしい」と話していた。


     ◇     ◇     ◇     

「有事想定許さない」/市民団体 即応訓練に抗議


 【嘉手納】米海兵隊岩国基地(山口県)のFA18戦闘攻撃機約三十機と要員約六百人が参加し、米軍嘉手納基地で三日午前始まった「即応訓練」に反対する集会が同日午後、通称「安保の見える丘」で開かれた。参加者らは「嘉手納基地での演習は許さないぞ」「欠陥機F15戦闘機は出てゆけ」とシュプレヒコールを繰り返し、抗議の意思を示した。

 沖縄平和運動センター、中部地区労などが主催、市民団体や県議ら約百十人が参加した。

 沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「即応訓練は、沖縄における有事を想定し嘉手納基地を出撃拠点とする大規模なもの。訓練は絶対許されない」と語気を強めた。

 中部地区労の金城広郁事務局長は「海兵隊ヘリコプターは沖国大に墜落したが、今度は欠陥機のF15を私たちの屋根の上に落とすつもりなのか」と批判した。

 一行は午後五時まで監視行動を続ける予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712031700_02.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 1面

PAC3初の機動訓練/車両、国道58号移動

 嘉手納基地に配備されている米陸軍の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊は四、五の両日、初の機動展開訓練(移動訓練)を嘉手納弾薬庫地区内で実施する。四日未明、機器などを搭載した米軍車両二十九台、兵員八十人が次々と嘉手納基地を出発。国道58号を北上し、嘉手納弾薬庫地区に向かう。同弾薬庫地区内で機器の運用上必要な通信環境や障害物の有無などを確認するとみられる。

 公道を使った部隊移動について、外務省は「日米地位協定五条で認められた『施設間移動』に当たり問題ない」としているが、周辺自治体は米軍の訓練が活発化する現状に、「基地機能強化」「負担増」と反発を強めている。

 沖縄防衛局は三日、嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に隣接する嘉手納町、北谷町、沖縄市、読谷村、恩納村と県に通知。県基地対策課は同日、訓練で周辺住民に著しい影響を与えないよう配慮するとともに、国道58号を移動する際は交通渋滞などの支障や影響を与えないよう、口頭で沖縄防衛局を通じて米軍に申し入れた。沖縄防衛局によると、車両に弾薬は搭載せず、訓練は模擬弾を使用する。嘉手納基地で三日から始まった米空軍と米海兵隊の合同即応訓練とは「関連しない」としている。

 政府関係者によると、PAC3は射程が約二十キロと短く、特定の基地を守る場合は対象の近くに展開する必要があるため、平時に機動展開訓練を実施する必要があるとしている。昨年七月に北原巌男防衛施設庁長官(当時)が県に説明した際、公道を使用した移動訓練が行われる可能性に触れた上で「頻繁ではない」と説明していた。今後、キャンプ・ハンセンなど県内の他の米軍基地にも定期的に展開訓練を実施する可能性がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_03.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 27面

負担軽減「感じない」/米軍即応訓練

 【中部】「負担軽減など一度も感じたことがない」。米海兵隊FA18戦闘攻撃機の爆音とともに三日、嘉手納基地で始まった即応訓練に、周辺住民の政府不信が高まっている。四日には「即応」に加え、同基地パトリオット部隊が国道58号で移動訓練を実施、隣接する嘉手納弾薬庫地区では爆発装置を使用した訓練も行われる。住民の怒りの声をよそに、訓練の集中・激化はさらに続く気配だ。

 岩国基地(山口県)のFA18が爆音をまき散らした北谷町砂辺に住む渡慶次保さん(74)は、「米軍機の爆音にさらされ、毎日が苦しい。政府は沖縄の『負担軽減』を口にするが、そんなの一度も感じたことがない。訓練が重なっている今だからこそ、国レベルで対応してほしい」と訴えた。同区の伊礼勇さん(70)は知人から「砂辺は人が住む場所ではない」と言われた経験がある。「ベトナム戦争や湾岸戦争では、嘉手納から離陸する飛行機が昼夜を問わず爆音を響かせた。住民は無視されっぱなしだ」と話した。

 嘉手納町屋良の沢岻安一さん(67)は相次ぐ訓練に「抗議の声が届かないのか。しかし、黙るわけにはいかない」と話した。「相次ぐ訓練は戦争の前触れではないか」と話す沖縄市知花の島袋善祐さん(72)は「米軍の『訓練』は、平和のためではなく人殺しのためだ。沖縄戦を経験した一人として、最近の米軍の行動には怒りがわいてくる」と声を荒らげた。


沖縄近海に実弾投下か


 【嘉手納】米軍嘉手納基地を拠点に、米空軍と米海兵隊合同の大規模即応訓練が始まった三日、FA18戦闘攻撃機は約三十機が離陸、このうち、少なくとも四機が実弾を装着して飛行した。実弾を装着した四機は、いずれも二時間以内に嘉手納基地に帰還。着陸時に実弾がなくなっていたことから、沖縄本島周辺で投下したとみられる。

 嘉手納町屋良では最高値で九一・一デシベル(騒々しい工場内に相当)の騒音を計測した。同町が屋良地区に設置している騒音測定器は、三日午前零時から午後五時までの十七時間で、七〇デシベル以上の騒音を百回計測した。

 同町屋良の通称「安保の見える丘」で同日午後、開かれた緊急の抗議集会で、主催した沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「即応訓練は沖縄での有事を想定し、嘉手納基地を出撃拠点とする大規模なものだ。訓練を許すことはできない」と米軍を非難した。

 同基地によると、訓練は七日まで。サイレン音や地上爆発模擬装置(GBS)などを使用する訓練は四日から行われる。


きょう爆発装置訓練


 【嘉手納】在沖米空軍は四日午前七時半から昼ごろまで、米軍嘉手納弾薬庫地区内の通称シルバーフラッグサイトで、「エックスプローセブ・シミュレーター」(模擬爆発装置)を使用した訓練を実施する。沖縄防衛局から三日午後、連絡を受けた嘉手納町によると、模擬爆発装置約二十発や発煙筒を使用する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_04.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 26面

教科書検定 撤回求め東京で集会

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める全国集会(主催・東京沖縄県人会、沖縄戦首都圏の会)が三日夜、都内の九段会館で開かれ、関東・関西など各地から約一千人(主催者発表)が参加した。

 文部科学省に(1)検定意見の撤回を可能にする検定規則の制定(2)教科用図書検定調査審議会で審議中の教科書会社六社による訂正申請を認めて記述を回復―などを求めるアピールを全会一致で採択した。

 渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明さん(沖縄キリスト教短大名誉教授)は「日本軍が天皇から授かった武器である手榴弾を配ったのは、住民への死の強要にほかならない」と自決の強制性を訴えた。

 一九九一年度の公民教科書検定で引用されたコラムに検定意見が付き、九六年度に文部省、厚生省(ともに当時)の謝罪を勝ち取った暉峻淑子埼玉大名誉教授は、検定意見の根拠が厚生省社会局長の国会答弁だったことを説明。

 「孤独な闘いだったが、私が引き下がったら日本の民主主義と科学的な真実が後退すると思った。文部省の課長に抗議して『外に雨がザーザー降っていても局長が晴れと言えばその通りですか』と聞くと『はい、そうです』と言われた」と述べ、検定意見に固執する国の姿勢を批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_07.html

 

2007年12月4日(火) 朝刊 26面

カメさんの闘いコントに 生誕100年でFEC

 「カメさん」の愛称で親しまれ、那覇市長や衆院議員を務めた故瀬長亀次郎さん(一九〇七―二〇〇一年)の生誕百周年を記念した「カメジローからのメッセージ 講演と文化の夕べ」が三日、浦添市てだこホールで開かれ、約七百人が訪れた。

 演芸集団FEC(山城智二代表)は「お笑いカメジロー」で、瀬長さんの演説や、獄中から出所する場面などを描いた五つのコントを披露。沖縄のため、米側の圧政と戦った瀬長さんをコミカルに表現し、会場から大きな笑い声が起こった。

 山城代表は瀬長さんが両親の仲人を務めたことや、自身が瀬長さんをテーマにした映画に出演したエピソードを紹介。「コント制作のために資料などを読み直し、あらためて偉大さを感じた。上の世代から渡されたバトンを若い世代につないでいきたい」と語った。

 瀬長さんの二女・内村千尋さんは「基地のない沖縄を目指した父のメッセージを多くの方に受け取ってほしい」とあいさつした。

 琉球大学の比屋根照夫名誉教授が「瀬長亀次郎と私たち」をテーマに講演したほか、ロビー内には瀬長さんの遺品や那覇市長時代などの写真、新聞などが展示された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041300_12.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月4日朝刊)

[防衛省改革会議]

癒着の病巣にメスを

 収賄容疑で守屋武昌前事務次官が逮捕される中、防衛省の抜本改革に向けた有識者による「防衛省改革会議」が開かれた。

 官邸主導にしたのは、もはや防衛省には自らの手で組織を洗い出し、立て直す能力がないとみたからだろう。

 一九九八年の装備品調達をめぐる汚職や二〇〇五年の談合を含めた一連の事件を思い起こせば、同省にはびこる病巣はあまりにも根深い。

 中間報告は来年二月に出るが、国防を担う組織としてどうあるべきか。抜本的な改革案の提示を期待したい。

 論議する柱は(1)装備品調達の透明性(2)情報保全体制の確立(3)文民統制(シビリアンコントロール)の三つだ。

 防衛省の武器から制服に至る装備品の予算は年間約二兆円規模に上る。

 最大の課題はその契約の在り方といっていい。武器を含め自衛隊だけが使用する特殊なものが多いだけに約七割が随意契約になっているからだ。

 装備品に軍事機密が絡むなど、他省庁の契約と異なるのは確かである。だが、それが業者との癒着の温床になっているのなら、競争入札によって透明性を高めるのは当然であり、それが国の責任だといえよう。

 商社「山田洋行」が対潜哨戒機の装備品納入の際に行った水増し請求もそれによって派生した問題だ。

 増田好平事務次官は、今後は商社の見積書をメーカー側に照会することを明らかにしたが、基本的な作業をしていなかったのであれば由々しき問題であり、あきれ果てるしかない。

 発注から納入まで業者にまる投げしてきた“つけ”は明らかだ。防衛省は事後的なチェックも含め、対応を強化する必要がある。

 在沖米海兵隊のグアム移転で米側は約百億ドルの拠出を要求している。本当に必要な額なのか、査定根拠など詳細な情報開示が欠かせない。

 海上自衛隊の補給艦がインド洋で展開していた米艦船などへの燃料補給活動では、海上幕僚幹部の課長(当時)が補給量の誤りに気付きながら上司に報告。誤った数量を石破茂防衛相が国会答弁している。

 給油問題では保管すべきデータの廃棄もあった。情報の保全の在り方とともに文民統制の問題とも深くかかわる問題といっていい。

 文民統制は憲法の機軸だ。自衛隊を統制するのは文民であり、制服組ではないということを忘れてはなるまい。

 装備品調達の在り方を含めて防衛省の組織図をどう見直していくのか。構造的な弊害を一掃するためにも大胆にメスを入れるべきだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071204.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍即応訓練 これ以上の負担はノーだ

 日々を安穏に過ごしたい。当然の欲求や願いである。何はさておき優先されねばならない。

 米空軍第18航空団は3日、嘉手納基地を拠点に海兵隊岩国基地所属のFA18戦闘機との合同即応訓練を開始した。訓練のため岩国から移動してきた海兵隊員は約600人。FA18戦闘機は30機に上る予定だ。

 基地への攻撃を想定した異例の大規模訓練に伴い、嘉手納近辺では午前8時半ごろからFA18戦闘機が立て続けに離陸し、爆音をまき散らした。

 野放図な訓練が繰り返される中で、欠陥機の疑いの濃い危険な飛行や未明離陸などの中止を求める地元の切実な声は、一顧だにされない。米軍再編のお題目であるはずの「負担軽減」は、かけらすら実感されない。

 一方で昨年10月に地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)が初めて配備されたのを皮切りに、最新鋭戦闘機F22 12機が一時配備され、日米特別行動委員会(SACO)合意に反してパラシュート降下訓練が強行される。逆行した動きばかりが目立つ現状のひどさは、誰の目にも明らかである。

 大規模即応訓練によって地元の怒りや不安が沸点に達していることは、次のようなコメントが明確に物語っている。

 「沖縄の基地から派兵され、本土の基地で大規模な訓練が実施されるとしたらこんなローカルな問題では済まないはずだ」(野国昌春北谷町長)

 地元にこれ以上、負担や犠牲を強いるのは認めるわけにはいかない。即応訓練を7日まで継続する構えでいるが、きょう以降、即応訓練を即刻中止すべきだ。

 懸念されるのは、大規模即応訓練が常態化することだ。県民の恐れや地元の懸念が、一過性に終わらず常態化の気配を見せているのが腹立たしい。

 伊江島に限定されるはずのパラシュート降下訓練にしろ、「運用上の所要のため」を理由に、航空機騒音の規制措置を有名無実化させる未明離陸の問題もしかりである。

 即応訓練に対しても、米軍は常態化の機をうかがっていると見るべきだろう。

 米軍には地元の訴えに耳を傾けたり、訓練への影響に配慮するなど抑制的な姿勢はまったく見られない。それどころか、嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会などの抗議や要請、地元議会の抗議決議可決をやり過ごせば、後は思いのままに基地を運用できる。そんな姿勢さえうかがえる。

 であれば、抗議や要請にも工夫が必要ではないか。県との緊密な連携を含め、取り組みを一段と強化し、日米政府を動かす方法を検討したい。

(12/4 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29458-storytopic-11.html

 

2007年12月4日(火) 夕刊 5面

検定制度見直し言及/撤回要請に文科省審議官

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める都内在住の市民団体や県関係の国会議員などが四日午前、文部科学省で布村幸彦大臣官房審議官に要請した。出席者によると、布村審議官は「検定意見が間違っているとは思わない」と反論する一方、「検定制度の見直しは考えている」と制度見直しに初めて言及したという。

 要請には都内各地で検定意見の撤回を求める「市民の会―東京―」(阿部ひろみ代表)、「沖縄戦首都圏の会」、琉球大学の高嶋伸欣教授と山口剛史准教授が参加し、それぞれが要請書を手渡した。県関係の野党国会議員四人も参加した。

 文科省が今回の検定の責任を認めて謝罪することや、検定意見が誤っていた場合の是正措置を検定規則に明記するよう求める声が相次いだ。

 布村審議官の「見直し」発言を受け、高嶋教授が「審議会の透明性向上だけでなく制度全体の見直しなのか」とただしたところ、同審議官は否定しなかったという。

 照屋寛徳衆院議員(社民)は「文科省は検定の責任を率直に認めて謝罪してほしい。このようなおろかなこと(検定)を繰り返してはならない」と述べ、謝罪や記述の完全な回復を求めた。

 「市民の会」の阿部代表は、訂正申請の内容の公開や教科用図書検定調査審議会委員の選任を見直すよう求めた。

 一方、同時刻に文科省前で「市民の会」と「新しい歴史教科書をつくる会」が集会を開き、現場は一時、騒然とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712041700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月29日、30日)

2007年11月29日(木) 朝刊 1・27面

嘉手納F15飛行再停止/墜落事故に新情報

周辺住民の不安高まる

 【嘉手納】米軍嘉手納基地報道部は二十八日夕、同基地所属のF15戦闘機全五十三機の飛行を再停止すると発表した。米国で起きた墜落事故に伴い、事故調査当局が発見した「新たな情報」に基づき、太平洋空軍司令官が指示した。停止期間は明らかにしていない。同基地のF15は、事故原因を公表しないまま二十六日に三週間ぶりに飛行再開を強行したばかり。事故に起因する度重なる飛行停止に、周辺住民の不安は高まっている。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は二十六日に同機の撤去、飛行中止を求めて同基地司令官らに抗議していた。野国会長は「F15の危険性が明らかになった。嘉手納基地からの撤去と同時に、日本政府にも、安全性が検証されないまま飛行を再開した米軍の責任を追及するよう求めたい」と述べた。

 嘉手納基地は「新たな情報の分析が終了後、飛行停止期間や事故に関連した機体整備を受けることになるだろう」と説明している。外務省は駐日米大使館に飛行停止の原因などを照会したが、回答はないという。

 嘉手納基地のF15は、来月三日から同基地を拠点に行われる空軍と海兵隊の合同即応訓練に参加予定だったが、飛行停止措置が解除されなければ参加しないとみられる。


     ◇     ◇     ◇     

「またか」住民憤り/安全性に深まる疑問


 【中部】「米軍はいいかげんな判断で、飛行再開したのか」―。飛行開始からわずか三日目、嘉手納基地は二十八日、F15戦闘機を再び飛行停止にした。同基地は、飛行停止措置を解除する際に、「空軍は安全な飛行運用を最重要視している」と発表したばかり。F15の安全性に、基地周辺住民の疑問は深まる一方だ。

 飛行ルート下で、ごう音にさらされる北谷町砂辺区の松田正二区長は「今回、停止措置を取った原因も明らかにされていない。飛行機が落ちてからでは、どうにもならない」と指摘する。「もう抗議文だけでは解決できない。区民として声を上げるしかない」と憤った。

 砂辺区の主婦、中村喜江子さん(71)は「また飛行中止するということは、ここ数日は危険な状態で飛行していた、ということ。いつ事故が起きてもおかしくないのでは」と話した。

 嘉手納町基地対策協議会評議員の宮城清記さん(82)は「県や市町村の幹部、議会はもっと真剣に考えなければならない。万が一の事が起きてからでは遅い」と強調した。


米2機が緊急着陸

嘉手納基地


 【嘉手納】米軍嘉手納基地で二十八日午前十一時すぎ、同基地所属のF15戦闘機二機が相次いで緊急着陸した。二機は北谷町方向から同基地南側滑走路に午前十一時十五分ごろから三十分にかけて相次いで着陸。一時騒然とした。

 同基地報道部は「予防のための着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711291300_01.html

 

2007年11月29日(木) 朝刊 2面

ヘリ輸送船の接岸確認/普天間代替

 ケビン・メア在沖米国総領事は二十八日の定例記者会見で、米軍普天間飛行場代替施設について、故障したヘリなどを運搬するための船舶(バージ船)接岸場所の確保を日米で確認していたことを明らかにした。接岸場所については、航空燃料を運搬する給油艦が出入りする桟橋部分とは別に、「直線の防波堤部分」を検討。メア総領事は「(日本政府は)だいたい(接岸位置を)決めていると思う」との認識を示した。

 代替施設の港湾機能をめぐっては、石破茂防衛相が衆院安全保障委員会で、ヘリが故障した際の船舶を使った移送について「それによって港湾施設というか、船舶に関する施設の所要も異なる」と述べ、検討する考えを示唆していた。

 メア総領事は「石破防衛相の言ったことはもちろん否定しない」とした上で、「飛行機が故障したらトラックで運ぶことは難しいので、修理するために代替施設からバージ船で別の場所へ運ぶ必要がある、というのは(日米で)検討していた」と説明した。

 接岸場所については「たぶん燃料用の桟橋とは別の所。マスタープランの中で検討している。特別の施設ではなくて場所が必要。例えば普通は防波堤は傾斜しているが、真っすぐだったらそこにバージ船が(接岸)できるという話」と述べた。

 一方で、「港や岸壁を造るという話ではない」とし、恒常的に貨物などを積み降ろしする船舶の利用は想定していないことを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711291300_04.html

 

2007年11月29日(木) 朝刊 2面

嘉手納即応訓練/在沖海兵隊も参加

 米空軍嘉手納基地報道部は二十八日、岩国基地(山口県)の米海兵隊とともに、来月三日から実施予定の即応訓練について、嘉手納基地所属の空軍要員と在沖海兵隊員すべてが参加することを明らかにした。嘉手納基地の輸送機も訓練に加わる。嘉手納基地で米海兵隊と合同で即応訓練を実施するのは今回が初めてという。

 同報道部は「嘉手納基地は前方展開基地として、他の基地から来る部隊を受け入れ、紛争地や被災地に派遣する任務も持つ」と説明。有事や人道支援の際の経由基地として、他基地からの支援部隊の受け入れ態勢を確認するのが、今回の訓練の主目的だという。

 これまでの即応訓練では、嘉手納基地の部隊が、他の基地からの派遣部隊役を演じていたが、今回はより現実に近い形で実施するため、実際に岩国基地の部隊を受け入れることにしたという。

 嘉手納基地の部隊や戦闘機が普天間飛行場に展開することはない、としている。


     ◇     ◇     ◇     

三連協など抗議へ


 【中部】嘉手納基地周辺自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十八日、北谷町役場で幹事会を開き、嘉手納基地などで予定されている大規模な即応訓練に抗議することを決めた。訓練期間中の来月四日に嘉手納基地を訪ね、同基地司令官に直接抗議する。

 同協議会事務局によると、抗議では嘉手納基地の負担軽減がうたわれた二〇〇六年の在日米軍再編以降も、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備や、F15戦闘機や外来機による未明離陸などで負担軽減に逆行している現状を指摘し、訓練の中止を訴える。外務省沖縄事務所、沖縄防衛局も訪れる予定だ。

 また、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は二十八日、基地に関する調査特別委員会を開いて、即応訓練とF15戦闘機の飛行再開問題について対応を協議した。来月四日に再度、基地特委を開き、抗議決議と意見書の両案を市議会十二月定例会に提案する方向で調整することが決まった。北谷町議会(宮里友常議長)は二十九日午後、基地対策特別委員会を開き抗議する方向で対応を協議する。

 即応訓練は、米軍嘉手納基地を拠点に、第一八航空団と海兵隊岩国基地(山口県)の部隊などが十二月三日から七日まで予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711291300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月29日朝刊)

[守屋前次官逮捕]

防衛利権にメス入れよ


業者とずぶずぶの関係

 この役所は、どこか変だ。背任、汚職、談合といった臭気漂う事件が後を絶たない。

 一九九八年九月、防衛庁調達実施本部の背任・汚職事件で元調達実施本部長ら幹部が逮捕され、昨年一月には防衛施設庁の官製談合事件で同庁の技術審議官が逮捕され、そして今回である。

 再発防止のため倫理規程を設け、部下に対して李下に冠を正さずの教えを説いた当の幹部が、その裏で業者から過剰なゴルフ接待を受けていたことが発覚し、妻とともに収賄容疑で逮捕された。

 防衛庁が「省」に昇格したのは一月のことだ。だが、「省」にふさわしい風格を備えているかといえば、はなはだ疑問だ。

 逮捕された守屋武昌前事務次官は、贈賄容疑で再逮捕された防衛商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者から、今年四月までに三百回以上ゴルフ接待を受けていたという。

 業者丸抱えの、北海道や九州へのゴルフ旅行。還暦祝いの現金二十万円。守屋容疑者はゴルフ接待にたびたび妻を同伴。宮崎容疑者から夫婦そろってゴルフセットを贈られたこともある。

 収賄罪の公訴時効に掛からない五年間に限っても、接待の総額は五百万円に上るという。なぜ、これほどまでに過剰な接待が繰り返されたのか。

 東京地検特捜部は、航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン納入などで有利に取り計らってもらうことを期待して接待を繰り返したとみている。

 守屋容疑者は二回の証人喚問で便宜供与を否定した。だが、接待を受けるだけの関係というのは常識的にも考えにくい。

 山田洋行は対潜哨戒機の装備品納入の際、見積書を偽造して水増し請求をしたにもかかわらず処分を受けなかったことも明らかになっている。

 防衛装備品の調達は、防衛秘密という名のベールに包まれ、外部からはうかがい知れないことが余りにも多い。

 宮崎容疑者が着服したとされる約一億円の資金はどこに流れたのか。この際、防衛利権をめぐる疑惑に徹底してメスを入れてもらいたい。


「普天間」を取り仕切る


 歴代の防衛庁幹部の中で、守屋容疑者ほど沖縄と縁の深い人はいない。

 日米両政府が米軍普天間飛行場の返還に合意した一九九六年から、今年八月に退職するまで、十一年余りもこの問題にかかわり続けてきた。

 沖縄通を自称し、県選出の国会議員や市町村長、建設業者とも太いパイプを築いた。

 九六年の日米合意を主導したのは外務省だったが、米軍再編をめぐる日米交渉で普天間代替施設の新たな合意案をまとめたのは防衛庁である。その中心にいたのが守屋容疑者だった。

 自民党の防衛族に食い込み、政治家の力を上手に利用して問題を処理する能力にたけていた。その種の実行力が評価され、「守屋さんがいないと米軍再編は難しい」という守屋頼みの風潮が省内に広がった。

 だが、豪腕ぶりの裏で、どのようなことが行われていたのか。

 普天間代替施設の沖合移動を求める地元名護市に対して、「名護の主張は地元業者の埋め立て利権」だと言い放ったのは守屋容疑者である。

 国会の証人喚問で県選出の議員は、米軍再編にからむ沖縄の防衛利権問題を取り上げた。追及は不発に終わったが、本人が逮捕された以上、普天間代替施設をめぐる日米の方針転換の背景に政官業のどのような動きがあったのか、詳細な検証が必要だ。


国会運営が視界不良に


 福田康夫首相は、二十八日に開かれた自衛隊高級幹部会同で「国民の信頼が大きく揺らいでおり、本当に残念だ」と述べ、綱紀粛正を指示した。

 石破茂防衛相は、逮捕を受けて会見し、装備品調達の在り方を再検討する考えを示した。当然だろう。

 なぜ、この種の事件が繰り返し起きるのか。防衛省は今回の事件を守屋容疑者個人の問題に押し込めてはならない。病巣を摘出するための徹底した組織点検が求められており、抜本的な改革案を示さなければならない。

 前次官の逮捕は、国会運営にも大きな影響を与えずにはおかないだろう。

 国会を再延長し、新テロ対策特別措置法案を衆院で再議決するという選択肢はもはや消えたとみるべきだ。もし強行すれば国会は収拾がつかないほど混乱し、ハプニング解散が一気に現実味を帯びることになるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071129.html#no_1

 

琉球新報 社説

大規模米軍訓練 これが地元の負担軽減か

 米空軍嘉手納基地の第18航空団が、海兵隊岩国基地所属のFA18戦闘機30機、岩国所属の海兵隊員約600人と合同で12月3日から7日まで嘉手納、普天間両基地を拠点に即応訓練を実施する。

 沖縄以外の基地から30機もの戦闘機が参加するのは、県基地対策課も「聞いたことがない」とする異例な大規模訓練である。

 合同訓練は日常的に米軍機の騒音にさらされている基地周辺住民に、さらなる苦痛を強いるものであり、断じて容認できない。

 在日米軍再編の目的の1つは「地元の負担軽減」である。しかしながら、嘉手納基地での未明離陸の強行やパラシュート降下訓練など、それと逆行する動きが相次いでいる。

 それに加え、県外基地との大規模な合同訓練である。これが地元の負担軽減の実態なのか。基地機能や訓練強化は、県民への裏切り行為と言わざるを得ない。

 嘉手納基地は合同訓練に当たって「地元への影響を可能な限り抑える」などとしているが、訓練を実施する以上、限界はある。同基地の話をそのまま受け取るわけにはいかない。10月の訓練では午後10時から午前6時まではサイレンを鳴らさないと嘉手納町に伝えながら、午前5時前から大音量でサイレンを使用した。F15は午前6時台から爆音をまき散らし、住民生活に大きな影響を与えたのである。

 政府の対応も疑問だ。沖縄防衛局は嘉手納基地に対して機体の整備や点検、安全管理の徹底をあらためて求めただけである。

 基地周辺住民の生活を守るとの考えが、政府にあるのだろうか。

 岩国基地を監視するリムピースの田村順玄さんは「米軍再編で沖縄からの訓練移転先には補償があるのに、30機分に見合う迷惑補償料もない」と指摘している。

 岩国基地所属のFA18戦闘機は恒常的に嘉手納基地を使用しており、沖縄の負担は軽減されるどころか、増す一方である。

 「沖縄の負担軽減」を目に見える形で実現することに、政府は本腰を入れるべきだ。

(11/29 9:41)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29315-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

守屋前次官逮捕 行政への信頼回復を急げ

 前防衛事務次官の守屋武昌容疑者が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。防衛商社「山田洋行」元専務宮崎元伸容疑者からゴルフなどの過剰な接待を受けた見返りに装備品調達などで便宜を図った疑いである。

 守屋容疑者は国会の証人喚問で、頻繁にゴルフ接待などを受けたことは認めたものの「便宜を図ったことはない」と否定している。

 だが、山田洋行の不正経理事件で、有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕された元執行役員今治友成容疑者は特捜部の調べに、今年4月の守屋容疑者へのゴルフ接待は「装備品の受注で恩恵を受けたいとの趣旨だった」と、わいろ性を認めているという。

 航空自衛隊次期輸送機のエンジン発注をめぐって、守屋容疑者は宮崎容疑者側に有利な発言を繰り返したとの証言もある。守屋容疑者がいくら便宜供与を否定しても、疑念を持つ国民は多い。事件の全容解明を急いでもらいたい。

 膨大な防衛予算をめぐっては、激しい商社間の競争があるとされる。「億単位の交際費を武器にした防衛省や政治家への食い込み工作はすさまじかった」との関係者の指摘もある。

 特捜部は2006年、防衛施設庁発注工事の官製談合を摘発。複数の国会議員や防衛官僚の周辺も極秘裏に捜査したが、立件には至らなかった。

 守屋容疑者らの逮捕を突破口に、防衛利権で私腹を肥やした政治家はいないのかについても解明してもらいたい。

 守屋容疑者は米軍普天間飛行場の代替施設建設計画などで、中心的な役割を果たした。在日米軍再編に関して不明朗な部分がなかったか、政府として検証する必要がある。

 不正を防止するため、装備品調達の方法も改善が必要だ。商社を介さずにメーカーと直接取引することも検討すべきだ。

 接待を禁止する自衛隊員倫理規定(2000年施行)は、官房長だった守屋容疑者が中心になって作成した。にもかかわらず自ら倫理規定に違反し、業者と癒着し続けていたのである。

 取引業者からそのような接待や金品を受け取ることの異常さを、防衛事務次官まで上り詰める人物が認識できないはずはない。

 自らを律することのできない人物を異例の長さの4年余も、旧防衛庁、防衛省の事務方トップに据えた歴代内閣の責任も大きい。

 大物次官として君臨した守屋容疑者の逮捕で、福田康夫首相が掲げる「政治と行政への信頼回復」はさらに厳しさを増した。

 信頼回復に今後、どう道筋をつけるのか。新テロ対策特別措置法案以前に、福田政権が取り組むべき問題である。

(11/29 9:43)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29316-storytopic-11.html

 

2007年11月30日(金) 朝刊 1面

全駐労きょう再スト

防衛省、譲歩で来週妥結か

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の手当削減を提案している問題で、全駐労(約一万六千八百人)の山川一夫委員長ら三役は二十九日、防衛省を訪れ、手当削減分の補償を引き続き求めた。全駐労によると、防衛省側は具体的な回答を避けつつも、「来週には双方が歩み寄って決着したい」と述べ、防衛省も譲歩する形で来週に妥結する可能性を明らかにしたという。

 同三役は「政府が努力している姿勢は見えたが、具体的な回答はなく、ストを回避する理由がない」と判断した。

 三十日に第二波の全国統一ストライキを決行することを正式決定し、全国の地区本部に伝達した。

 前回は始業時から四時間だったが、三十日のストは一般職種の就労時間となる八時間に延長。実質的に終日二十四時間のストになる。


沖縄地区本部6400人がストへ/ゲート40カ所でピケ


 全駐労中央本部の第二波スト決定を受け、県内では沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)の組合員約六千四百人が、三十日の始業から八時間のストに入る。

 今回は、第一波のストで対象外だった警備関係の組合員もストに参加するため、米軍自身が基地内警備を行う必要が生じるが、地区本部の座間味寛書記長は「台風時にも米軍自ら警備を行うことはあり、基地機能への影響は最小限にとどまる」としている。消防部門の組合員は今回も対象外。

 このほか、通常使用されるゲート四十カ所で組合員がピケを張り、非組合員にも参加を呼び掛ける。

 牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の城間ゲートでは午前と午後の二回決起集会を行い、諸手当削減分の補償などを訴える予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301300_02.html

 

2007年11月30日(金) 朝刊 2面

着手 3月以降に遅れ/シュワブ内・施設移築工事

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴い、沖縄防衛局が十二月から着手を予定していた名護市キャンプ・シュワブ内の隊舎や管理棟、倉庫など既存施設の移築工事が、来年三月以降にずれ込む見通しであることが二十九日、分かった。沖縄防衛局は十一月末の設計業務の履行期限を来年二月末に延長。延長理由について防衛省は「実施設計の調整を進める中で、米側との調整で時間を要している」と説明している。

 キャンプ・シュワブの代替施設予定地付近にある倉庫や工場、管理棟などの既存施設は、普天間代替施設建設に伴って、シュワブ内の内陸部分に移築予定。

 沖縄防衛局は今年三月、シュワブ内の移築に関する建築・設備・土木設計や、下士官宿舎の新設工事にかかる建築・土木設計の入札を実施。履行期限を十一月末までとする契約を業者と締結していた。

 既存施設の移築にかかる建設工事の着手時期について防衛省は「設計が終わらないと着手できない。設計業務の終了後、適切に着手していきたい」とし、来年三月以降にずれ込む可能性を示した。

 防衛省が作成した普天間代替施設事業の概略工程表は「隊舎等の建物の建設工事」は十二月からの着手を明示している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301300_03.html

 

2007年11月30日(金) 朝刊 2面

首長反発「欠陥機証明」/「これ以上飛行許さぬ」

 【中部】米国ミズーリ州で今月二日に墜落したF15戦闘機に関して、ロンジロンと呼ばれる主要構造物の亀裂が事故原因と判明した件で、嘉手納基地周辺の嘉手納、北谷、沖縄の三自治体の首長らは「F15は欠陥機との指摘が証明された」と反発している。

 三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は事故後に三度、米側にF15撤去を求めた。会長を務める野国昌春北谷町長は「具体的な原因が明らかになり、F15が欠陥機という私たちの指摘が証明された。これ以上の飛行は許されない」と訴えた。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、事故原因が特定されないまま、一度は飛行再開したことに「不安を抱えたまま住宅地上空を飛行したことは断じて許せない。構造的な欠陥が生じた機体は、今すぐにでも撤去を求めたい」と述べた。

 沖縄市議会「基地に関する調査特別委員会」の与那嶺克枝委員長は「米軍は、専門家が指摘する“背骨が折れるような”老朽化した機体を飛行させたのか。米軍は安全だと言うが、他の部分にも問題があるかもしれない」と懸念した。


飛行再停止 北谷議会、抗議へ


 【北谷】北谷町議会(宮里友常議長)は二十九日、基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開き、米国での墜落事故を受けて飛行を中止している嘉手納基地所属のF15戦闘機に関する問題への対応を協議した。同基地が二十六日のF15飛行再開後、米国の事故調査当局の情報に基づき、二十八日から二度目の飛行停止を講じたことを問題視。十二月三日の臨時会へF15の即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を提出することを決めた。

 また、同委員会では十二月三日から同基地で予定されている、空軍と海兵隊による大規模な即応訓練に対する抗議決議、意見書の両案を提出することも決まった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月30日朝刊)

[F15飛行再停止]

事故への対応が異常だ

 在沖米空軍が嘉手納基地に配備するF15戦闘機の飛行を再び停止した。

 米本国で起きた墜落事故を調査した事故調査当局の「新たな情報」に基づく措置だが、明らかにされた事故原因が操縦席付近の金属性構造部材の亀裂だというから言葉を失う。

 米ミズーリ州でF15が飛行中に空中分解したのは今月二日のことだ。それを受けて、米空軍は嘉手納基地所属の五十三機を三週間飛行停止にした。地元住民の怒りを無視して飛行を再開したのは二十六日。再停止はそれから二日しかたっていない。

 事故原因が確定せず再発防止も施されないままでは、リスクを負いながら訓練を続けるのに等しく、それ自体が異常といっていい。

 民間では事故原因が明確に確定されぬ場合は、明らかになるまで同型機の飛行を差し止めるのが常識である。その間の飛行再開はあり得ない。

 軍の論理では通っても民間の論理では絶対に許されるものではない。危険性を承知で飛行を再開させた米軍の手法は非常識と言わざるを得ない。

 F15戦闘機はまた、航空自衛隊の主力機でもある。事故原因は自衛隊機とも深くかかわっているはずであり、事故原因を自衛隊がどう分析するのか。防衛省は説明する責任があろう。

 もう一つ、嘉手納基地のF15に政府がどう注文を付けるのか。危険性が明らかになった以上、県民が厳しい目で見ていることを忘れてはなるまい。

 この問題とともに懸念されるのは、十二月三日から七日まで嘉手納基地と普天間飛行場を拠点に行われる海兵隊と空軍の合同即応訓練である。

 嘉手納飛行場では給油機や偵察機、F15などが凄まじい爆音を日常的にまき散らし、周辺住民の暮らしを脅かしている。

 それが、山口県岩国基地からFA18戦闘攻撃機約三十機が飛来し、海兵隊員約六百人と嘉手納基地の第一八航空団が大規模な即応訓練を実施するというのである。

 爆音やエンジン調整音に加えて、早朝からサイレンを鳴らし、拡声器による放送、地上爆発模擬装置を使用すれば、周辺住民が我慢の限度を超えるのは火を見るより明らかだろう。

 事故機と同型機の扱いをめぐって住民の不安が高まる中で大規模な訓練を実施していいものか。政府には米軍の基地使用についてもっと声を上げてもらいたい。

 FA18戦闘攻撃機は即応訓練を終えた後も十二日まで居残るというが、地域住民を軽視した訓練は許されないことを肝に銘じるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071130.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15飛行再停止 米軍も認めた「欠陥機」

 米軍は28日、主力戦闘機F15の飛行再停止を決めた。再停止は、嘉手納基地にも配備されているF15C型機の点検で、機体の骨格となる「縦通材」に2カ所の亀裂が見つかったのが理由だ。

 県民の不安と批判を無視し、「点検による安全確保」を強調し、飛行再開の決定からわずか7日後の再停止だが、この間欠陥機の飛行は再開され、再停止までの2日間、米軍は県民を危険にさらしたことになる。重大な判断ミスである。

 実戦配備を除くF15戦闘機が、全機飛行停止となったのは、今月2日のミズーリ州空軍所属の同機の墜落事故が理由だった。

 同事故は、僚機と空戦演習中に操縦席の後部で胴体が破断し、墜落している。幸いにも操縦士は、脱出し難を逃れている。

 訓練中に空中分解する異常事態を重視した米軍は、全機飛行停止措置を取り、事故原因の究明に当たった。

 その結果、経年劣化や構造疲労破壊の疑いが指摘された。だが、確たる原因は未解明のまま。事故原因の十分な分析や解明を待たず、米軍は「欠陥機」との指摘にも耳をふさぎ、飛行再開の暴挙に出た。

 安全が確保されるまで飛行停止を求める県民の訴えは、「アジア太平洋地域における平和と安定の維持に引き続き貢献する」との米軍の空虚な論理に踏みにじられた。

 墜落の危険が指摘される欠陥機で、アジアの平和と安定など守れるはずもない。それどころか、嘉手納基地を含め、周辺に住民がひしめく住宅地の上空を、欠陥機が飛行する恐怖こそが、平和と安定を脅かす元凶である。

 今回見つかった「縦通材」の亀裂は、飛行中に空中分解を引き起こす原因につながる可能性が指摘されている。

 21日の飛行再開決定に当たり、米軍は「米空軍は安全な飛行を常に最重要視している」(嘉手納基地)と強調した。だが、県統計では米軍機の事故は、復帰後34年間で422件発生し、うち151件がF15戦闘機によるものだ。事故の36%を占める。爆音禍の主原因もF15戦闘機である。

 F15戦闘機も含め、米軍機の墜落事故は昨年1件だが、重大事故につながる米軍機の「不時着事故」は昨年も24件、一昨年は57件も起きている。

 基地を抱える沖縄は、米軍が引き起こす事件、事故に巻き込まれる危険と常に隣り合わせている。

 米軍は、事故を起こすたびに再発防止と綱紀粛正を約束してきたが、米軍の事件・事故が「ゼロ」となった年は、復帰後35年間、一度もない。

 日米両政府は事態の重大さを認識し、県民を危険にさらす欠陥機の撤去を真剣に検討すべきである。

(11/30 9:50)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29348-storytopic-11.html

 

2007年11月30日(金) 夕刊 1面

全駐労、実質終日スト

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)特別協定協議で日本側が基地従業員の手当削減を提案している問題で、全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長、約一万六千人)は三十日、全国の米軍施設で始業から八時間の第二波ストライキを始めた。一般職種の就労時間は八時間で、実質的に二十四時間ストとなる。

 このうち沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)は組合員約六千四百人を対象にストを指令。浦添市の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)城間ゲート前では同日午前、組合員のほか、連合沖縄など関係労組代表など、組合発表で千二百人が集まり気勢を上げた。與那覇委員長は「防衛省は『政府案に理解を』との一方的姿勢から『早期解決のため汗をかきたい』と変化してきた」と交渉経過を報告。また「交渉は来週がヤマ場。さらに前進するためにストを決行する」と結束を呼び掛けた。

 同ゲートを含め県内四十カ所のゲートでピケが張られた。今回は警備関係の組合員もストに入ったが、同本部によると、同日午前の段階で県内各米軍施設に大きな混乱は起きていないという。

 全駐労は、今後の政府の対応次第では、十二日の沖縄に始まり十四日の神奈川まで各地で順次八時間のストを行う第三波リレーストも行うとしており、週明けからの交渉が注目される。


「誠心誠意対応」

防衛相、譲歩を示唆


 【東京】石破茂防衛相は三十日午前の閣議後会見で、全駐労が第二波の全国統一ストライキを実施していることについて「(従業員の)不利益をいかに極小化するかということについて誠心誠意やっている。歩み寄れるところは何なのかということは、当事者として関心を持っている」と述べ、全駐労との交渉で譲歩する可能性を示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301700_01.html

 

2007年11月30日(金) 夕刊 1面

知事「予想より遅れ」普天間移設

就任1年控え 膠着打開に期待

 仲井真弘多知事は三十日午前の定例記者会見で、県政の最重要課題である米軍普天間移設問題について「予想よりも遅れている。地域の納得、協力、理解はどうしても必要。ここがなかなか(政府側に)通じない」と指摘。一方で「われわれの気持ちはそれなりに政府も受け止め始めていると思う」と述べ、膠着状態の打開に期待感を示した。来月十日の就任一年を前に感想を語った。普天間問題については当初、就任から数カ月で政府との協議が軌道に乗る、との認識があったと話した。

 県政全般について仲井真知事は「十四の柱からなる私の政策の(実現に向け)ほとんどのことに一応勉強、研究、種まきなりのウオーミングアップに手を付けてきたと考えている。財政がタイト(厳しい)な中で、一つ一つ丁寧に手を付けてこれたのではないかと思う」と語った。

 普天間移設問題で、沖縄側が要求してきた政府案の沖合移動を拒否し続けてきた防衛省の守屋武昌前次官が収賄容疑で逮捕されたことについては「知事としても、個人的にもいろんな感想があるがノーコメントにしたい」と具体的な言及は避け、「(守屋前次官とは)考えがぴたっと一緒でないと感じたこともままあった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301700_02.html

 

2007年11月30日(金) 夕刊 1面

普天間協 来月12日有力

 【東京】政府は三十日までに、次回の米軍普天間飛行場移設に関する協議会について、十二月十二日夕を軸に開く方向で調整を始めた。関係閣僚の日程が整わない場合、十二―十四日の範囲で検討する。仲井真弘多知事が登壇する県議会十一月定例会の一般質問が十二月十一日に終了するため、県は十二日以降であれば知事の出席が可能と内閣府に伝達していた。

 政府は、十二月第四週(十七―二十一日)の半ばに二〇〇八年度予算案の内示を予定している。〇八年度の北部振興事業費の計上や本年度分の執行を判断するためには、予算案の確定前に協議会を開き、「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」との条件が整っているかどうかを見極める必要があるとして、第三週の開催で調整していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711301700_03.html

 

2007年12月1日(土) 朝刊 2面

普天間協12日軸に調整/政府、北部振興最終判断へ

 【東京】政府は三十日までに、次回の米軍普天間飛行場移設に関する協議会を十二日夕を軸に開く方向で調整を始めた。関係閣僚の日程が整わない場合は、十二―十四日の範囲で検討する。

 仲井真弘多知事が登壇する県議会定例会の一般質問が十一日に終了するため、県は十二日以降であれば知事の出席が可能と内閣府に伝達していた。政府は今後、県や名護市との議題調整などを通じ、凍結されている北部振興事業費の執行に踏み切るかどうかを最終判断する。

 政府は、十二月第四週(十七―二十一日)の半ばに二〇〇八年度予算案の内示を予定している。

 〇八年度の北部振興事業費の予算計上や本年度分執行を判断するためには、予算案の確定前に協議会を開き、「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」との条件が整っているかを見極める必要があるとして、第三週の開催で調整していた。普天間移設は、環境影響評価(アセスメント)の妥当性をめぐって、県環境影響評価審査会がアセス方法書の不備とみなされた項目について、事業者の沖縄防衛局に追加説明を求める質問書を提出。

 事実上の方法書書き直し要求に当たる異例の措置を取っており、協議会でも焦点になりそうだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712011300_06.html