沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月28日、29日)

沖縄タイムス 社説(2007年4月28日朝刊)

[戦後補償判決]

償いが信頼回復への道
 中国人の元従軍慰安婦とその遺族が国に損害賠償を求めた訴訟と、中国人の元労働者が西松建設(東京)に強制連行・労働の賠償を求めた訴訟の上告審判決が相次いで言い渡された。

 二つの訴訟で、最高裁は「一九七二年の日中共同声明で中国人個人の賠償請求権は放棄され、裁判では行使できない」との初判断を示し、いずれも原告敗訴の判決を言い渡した。

 日中共同声明では、日本は過去の戦争で中国に与えた損害について「責任を痛感し、深く反省する」と表明。第五項で「中国政府は、両国国民の友好のために日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としている。

 第二次大戦中の従軍慰安婦、南京大虐殺、強制連行などをめぐる戦後補償訴訟は、中国人や韓国人らが一九九〇年代から各地で提訴し、市民団体「戦後補償ネットワーク」のまとめでは計約六十件に上っている。

 これまでに原告勝訴は一審六件、二審は西松建設強制連行・労働訴訟など二件にとどまるが、旧日本軍の不法行為はほぼ認定され、企業側と和解した例もある。

 こうした中で、今回の最高裁判決は、中国側にとって政府のみならず個人にも請求権がないとする初判断であり、今後、中国人らの個人的な請求は退けられる可能性が高くなった。

 この判断は、中国と日本の間に新たなあつれきを生みかねない。中国側の弁護士協会などは「最高裁判決はでたらめだ」と強く抗議。「日本政府や関連企業の責任をあいまいにし、政府や関連企業の責任回避を手助けした」などと反発しているからだ。

 ただ、最高裁は強制連行・労働訴訟の判決の末尾で、被害者らの精神的・肉体的苦痛などを指摘し、関係者の「救済に向けた努力」が期待されると述べている。

 戦争被害を救済できない司法の限界を示し、国や被告企業に自発的解決を促したといえるが、元慰安婦訴訟にはこうした付言はなかった。

 司法による個人救済の道を閉ざした最高裁判決で、戦後補償の問題は司法の手を離れ政治的解決に委ねられる。政府は今後、中国側への新たな対応を迫られるのは必至だ。

 「一日も早く日本政府による謝罪と賠償を実現させたかった」というのが、敗訴が確定した被害者と遺族たちの偽らざる気持ちであろう。

 原告たちへ「償う」意味は、結局、日本の信頼回復につながるといえるのではないか。政府、西松建設などの「誠意」ある対応を期待したい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070428.html#no_1

沖縄タイムス 2007年4月29日(日) 朝刊 1面
憲法改正反対46%/本社世論調査
賛成43%を上回る/9条改正反対は5割超
 施行六十年の憲法記念日を前に、沖縄タイムス社が二十一、二十二の両日に実施した電話による県内世論調査で、憲法改正について「必要ない」と答えた人は全体の46%で、「必要ある」の43%をやや上回った。二〇〇四年四月の前回調査で「必要ない」は29%で、「必要ある」は50%だった。憲法改正の焦点になっている九条については「改正するべきではない」が56%(前回40%)、「改正するべきだ」24%(同29%)。国会で足早に進む改憲論議に、慎重な考えを示す人の割合が増えている現状が浮かび上がった。

 改憲に反対した人に理由を聞くと「平和理念があるから」が最も多く67%、「国民の義務が重くなりそうだから」15%、「生活に根付いているから」13%だった。前回調査は「平和理念」66%、「生活」7%でそれぞれ微増。年代別に見ると、反対は五十代が最も多い。

 改憲に賛成の理由は「新しい権利や制度を加えた方がよいから」は57%(前回26%)、「アメリカの押し付け憲法だから」21%(同38%)、「自衛隊の位置付けを明確にした方がよいから」16%(同28%)。年代別で賛成に最も多かったのは三十代だった。

 改憲容認派の51%が改正は「緊急な課題」と考えている。

 九条について「改正するべきだ」と答えた人のうち、戦争放棄をうたう一項の改正が「必要」の回答は43%、「必要ない」は49%。戦力の不保持を定めた二項は「必要」が69%、「必要ない」は21%だった。

 憲法改正の手続きを定める国民投票法について、「議論が十分でない中で決める必要はない」54%と「憲法改正につながるため、決める必要はない」13%を合わせて、全体の約七割が今国会での同法成立に否定的な意見を持っている。「手続きを定めることは必要」の答えは26%だった。

 内閣支持率は40%で、不支持44%をやや下回った。内閣支持者のうち57%が憲法改正に賛成、逆に不支持の64%が反対だった。

 安倍晋三首相が憲法解釈の見直しを検討している「集団的自衛権」の行使について、「使えない立場を堅持する」が51%でほぼ半数を占めた。一方で「憲法解釈で使えるようにする」(24%)と「九条を改正して使えるようにする」(15%)で行使容認派は約四割に上った。

 調査の方法 県内の有権者を対象に、二十一と二十二の両日、コンピューターで無作為に抽出した番号に電話するRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)により実施し、八百人から回答を得た。回答者の内訳は男性49%、女性51%。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704291300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月29日(日) 朝刊 27面
座り込み3年人の鎖/辺野古移設
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する地元住民や市民団体が辺野古漁港近くで始めた座り込み行動が三周年を迎えたことを受け、ヘリ基地反対協議会は二十八日午後、移設予定地の同市キャンプ・シュワブで包囲行動を行った。二十四日から那覇防衛施設局が着手したV字形滑走路案の現況調査(事前調査)に反対し、移設撤回を強く求めた。

 包囲行動には地元住民のほか、平和、環境、労働団体員ら千人(主催者発表)が参加。降りしきる雨の中、シュワブのフェンス沿いに並んで手を取り合い、「違法な事前調査はやめろ」「辺野古の海を守るぞ」などと気勢を上げた。

 反対協の安次富浩代表委員は「闘いを続けていけば必ず勝利できる」と訴えた。

 夫と子ども三人と参加した二見以北十区の会の渡具知智佳子共同代表は「子どもたちの未来に基地は必要ない。子どもたちが誇りを持てる故郷を残そう」と呼び掛けた。

     ◇     ◇     ◇     

講和55年 決意の炎

 【国頭】平和憲法を発展させることを誓う「四・二八辺戸岬集会」が二十八日、本土復帰運動の象徴、辺戸岬で行われた。沖縄が本土から切り離されたサンフランシスコ講和条約発効から五十五年、復帰三十五年の節目に沖縄平和運動センターなどが開いたもので、世代を超えて平和の発信に決意を新たにした。

 北部地区労の元議長、大城堅靖さん(72)は「国民投票法の制定などアメリカと一緒に戦争ができる国を目指す憲法の改悪が行われようとしている」と指摘。また、高校教諭の良原栄里奈さん(27)は「教科書から集団自決を削除し、何のための、誰のための愛国心なのか。悲惨な沖縄戦を未来に伝えたい」と声をからした。集会では、米軍再編による沖縄の基地機能の強化、固定化を阻止し、戦争放棄と非武装の平和憲法を発展させることを誓う宣言を採択した。

 五年ぶりとなる辺戸岬集会には約二百人が参加した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704291300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月29日朝刊)

[再編合意1年]

政府の欺瞞性浮き彫り
 米軍基地の抑止力向上と住民の負担軽減を盛り込んだ在日米軍再編最終報告の日米合意から間もなく一年を迎える。満一年となる五月一日には、ワシントンで日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれ「再編の着実な実施」を協議する見通しだ。

 これに先立ち、安倍晋三首相とブッシュ大統領は二十七日、日米首脳会談で「かけがえのない日米同盟」の強化を確認した。その上で首相は、米軍再編は両政府間合意の着実な実施が重要とし、普天間飛行場の移設を「合意通り実施する」と述べた。

 合意通りとは、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設する政府案のことである。

 だが、県、名護市が、V字形滑走路の位置を南西沖合へずらすよう求めるなど政府との調整は難航している。現普天間飛行場の危険性除去に伴う「三年内閉鎖」問題も絡んで、協議は宙に浮いた状態だ。

 首相の言う「合意通り実施」できるかどうかはなお不透明であり、政府と県、名護市の双方にとって正念場はこれからといえよう。

 この一年間を顧みると、政府の「二枚舌」とも言えるような不誠実な対応が随所に見られ、住民の負担軽減の欺瞞性を浮き彫りにしている。

 V字形滑走路について、政府は当初「集落上空は飛ばない」と説明していた。V字形はそのための案だったが、「有事に備えた訓練などで双方向飛行や住宅上空の飛行は避けられない」と変化させた。

 普天間代替施設の主力機となるMV22オスプレイの配備計画については「聞いていない」と繰り返してきた。

 しかし、一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告草案にオスプレイの配備が明記されたことが米公文書などで明らかになった。

 嘉手納基地に暫定配備のはずの最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターも、「今後の朝鮮半島情勢次第では再配備の可能性が十分ある」(在日米軍司令官・ライト中将)ことが分かり、地元では常駐化を懸念している。

 一方、負担軽減策の目玉といえる在沖米海兵隊のグアム移転に伴う嘉手納基地以南の六施設返還計画は、再編合意で示された「二〇〇七年三月末」を過ぎてもまだまとまっていない。

 以上の点から見ても、今回の再編が負担軽減より抑止力向上を優先しているのは明白である。

 再編を強引に進めるため、情報開示を遅らせたり、都合の悪いことを隠したりするのは地元軽視であり、県民の不信感を増幅させるだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070429.html#no_1

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